骨アンカー固定装置
【課題】より迅速に、より容易に、かつより小さな力で骨に挿入することができ、かつ骨から容易に取り外すこともできる骨アンカー固定装置を提供する。
【解決手段】外面を有する中空シャフト(2,3)と、複数のかえし要素(52)を有するかえし担体(5)とを備える、骨の中でのアンカー固定のための無ねじ山骨アンカー固定装置(1)を提供する。シャフト(2,3)およびかえし担体(5)は、第1の構成ではかえし担体(5)のかえし要素(52)がシャフト(2,3)の外面(31)を越えて突出しないように、かつ第2の構成ではかえし担体(5)のかえし要素(52)がシャフト(2,3)の外面(31)を越えて突出するように、互いに対して移動させることができる。第1から第2の構成へのかえし担体(5)の移動方向は骨アンカー固定装置(1)の挿入方向とは反対である。
【解決手段】外面を有する中空シャフト(2,3)と、複数のかえし要素(52)を有するかえし担体(5)とを備える、骨の中でのアンカー固定のための無ねじ山骨アンカー固定装置(1)を提供する。シャフト(2,3)およびかえし担体(5)は、第1の構成ではかえし担体(5)のかえし要素(52)がシャフト(2,3)の外面(31)を越えて突出しないように、かつ第2の構成ではかえし担体(5)のかえし要素(52)がシャフト(2,3)の外面(31)を越えて突出するように、互いに対して移動させることができる。第1から第2の構成へのかえし担体(5)の移動方向は骨アンカー固定装置(1)の挿入方向とは反対である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外面を有する中空シャフトと、複数のかえし要素を有するかえし担体とを備える、特に骨の中でのアンカー固定のための、大腿骨への適用のための骨アンカー固定装置に関する。シャフトおよびかえし担体は、第1の構成ではかえし担体のかえし要素がシャフトの外面を越えて突出しないように、かつ第2の構成ではかえし担体のかえし要素がシャフトの外面を越えて突出するように、互いに対して移動させることができる。第1から第2の構成へのかえし担体の移動方向は骨アンカー固定装置の挿入方向とは反対であり、骨アンカー固定装置にはねじ山がない。骨アンカー固定装置は、たとえば骨粗鬆症の大腿骨に適用されてもよい。
【背景技術】
【0002】
骨アンカー固定装置の公知の形態は、ねじを骨に螺合するためのねじ山を有するシャフトを備える骨ねじである。骨ねじはねじ回しを用いて手作業で骨の中に挿入されるが、これは時間がかかりかつ力を要するプロセスである。さらに、ねじを骨の中に挿入するプロセスにおいて、骨自体に高い圧力が作用することがあり、このことは、たとえば、神経外科、脊椎外科、小児外科、または外傷外科などのある臨床適用例では望ましくない。特に骨粗鬆症については、周囲の骨構造に作用するそのような高い圧力は大いに問題である。
【0003】
特許文献1は、ねじ山および中空部分を有する、第1骨部分と第2骨部分とを骨折部位を横切って結合する外科的ファスナアセンブリであって、中空部分内で可動の挿入物によって保持される4つの細長いピンを誘導するための4つの開口を有する、外科的ファスナアセンブリを開示する。これらのピンは、挿入物が工具によって軸方向に引き戻されると骨構造と係合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2001/0000186号A1
【特許文献2】国際公開WO2002/034107号A2
【特許文献3】国際公開WO2004/026158号A1
【特許文献4】国際公開WO2009/106951号A1
【特許文献5】国際公開WO2003/032852号A2
【特許文献6】米国特許第5,643,321号A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明の目的は、従来の骨ねじおよび骨釘よりもより迅速に、より容易に、かつより小さな力で骨の中に挿入することができ、かつ骨から容易に取り外すこともできる骨アンカー固定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の目的は、請求項1に記載の骨アンカー固定装置によって解決される。さらなる発展例を従属請求項に与える。
【0007】
発明に従う骨アンカー固定装置は、骨の中に準備されたボア穴の中に骨アンカー固定装置を押込むことによって骨の中での迅速かつ確実なアンカー固定を容易にする。骨アンカー固定装置の挿入の際は、かえし担体を形成する挿入物のかえし要素は、シャフトの外面よりも遠くない骨アンカー固定装置の中空シャフトの開口中に延在する。骨アンカー固定装置の挿入後、かえし担体およびシャフトは、かえし担体のかえし要素が中空シャフトの開口の中で広がりかつシャフトの外面を越えて突出するように互いに対して移動される。したがって、かえし要素は、骨アンカー固定装置が引抜かれたり緩んだりしないようにする。本発明の骨アンカー固定装置は、必要により、挿入物のかえし要素が最大でもシャフトの外面までしか開口の中に延在しないように単に再び中空シャフトおよびかえし担体を互いに対して移動させることによって容易に取り外すことができる。すなわち、この構成では、かえし要素はシャフトの外面を越えて突出しない。この構成では、かえし要素は周囲の骨構造と係合しないため、かえし効果は存在しない。
【0008】
かえし要素は可撓性であってもよく、たとえばニチノールなどの任意の可撓性材料から作られる。この材料から作られるかえし要素の変形が完全に可逆であることがニチノールの一つの利点である。
【0009】
この可逆のかえし接続により、無ねじ山骨アンカー固定要素は、挿入の際に、損傷させるような力を骨に対して加えず、確実な装着を与える。したがって、本発明は、周囲の骨構造に直接に作用するねじ山またはねじによる損傷がないため、骨粗鬆症の患者に特に好適である。かえし要素は骨構造を貫通するが、この貫通は、たとえば、より多くの周囲の骨構造を破壊するであろうかえし要素の拡張または揺動(swinging-out)よりも穏やかである。さらに、本発明に従う骨アンカー固定装置の埋込みプロセスは非常に速い。なぜならこれを螺合する必要がなく、単に挿入するだけでよいからである。発明に従う骨アンカー固定装置は製造も容易である。
【0010】
発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面と関連して以下の詳細な説明を参照することによって明らかになり、最もよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1a】骨接合板に装着される、第1の実施形態に従う第1の構成の骨アンカー固定要素の斜視図である。
【図1b】骨接合板に装着される、第1の実施形態に従う第2の構成の骨アンカー固定装置の斜視図である。
【図2】第1の実施形態に従う第1の構成の骨アンカー固定装置の斜視図である。
【図3】第1の実施形態に従う第1の構成の骨アンカー固定装置を接続ねじとともに示す斜視図である。
【図4】図3に示す骨アンカー固定装置の分解斜視図である。
【図5a】図1aに示す骨アンカー固定装置の拡大部分の斜視図である。
【図5b】図1bに示す骨アンカー固定装置の拡大部分の斜視図である。
【図6a】第1の実施形態に従う第1の構成の骨アンカー固定装置の側面図である。
【図6b】第1の実施形態に従う第1の構成の骨アンカー固定装置の断面図である。
【図6c】第1の実施形態に従う第2の構成の骨アンカー固定装置の側面図である。
【図6d】第1の実施形態に従う第2の構成の骨アンカー固定装置の断面図である。
【図7a】骨に挿入された、第1の実施形態に従う第1の構成の骨アンカー固定装置の前方部分の断面図である。
【図7b】骨に挿入された、第1の実施形態に従う第2の構成の骨アンカー固定装置の前方部分の断面図である。
【図8a】第2の実施形態に従う製造構成のかえし担体の斜視図である。
【図8b】第2の実施形態に従う第1の構成のかえし担体の斜視図である。
【図8c】第2の実施形態に従う第2の構成のかえし担体の斜視図である。
【図9a】第2の実施形態に従う第1の構成の骨アンカー固定装置の拡大部分の斜視図である。
【図9b】第2の実施形態に従う第2の構成の骨アンカー固定装置の拡大部分の斜視図である。
【図10a】第2の実施形態に従う第1の構成の骨アンカー固定装置の側面図である。
【図10b】第2の実施形態に従う第1の構成の骨アンカー固定装置の断面図である。
【図10c】第2の実施形態に従う第2の構成の骨アンカー固定装置の側面図である。
【図10d】第2の実施形態に従う第2の構成の骨アンカー固定装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1から図7bを参照して、発明の第1の実施形態に従う骨アンカー固定装置1を説明する。図1aおよび図1bに見られるように、無ねじ山骨アンカー固定装置1、特に大腿骨アンカー1は、骨接合板100に接続可能である。骨接合板100は、たとえば、ねじで骨に固定される板状体と、骨アンカー固定装置1の部分を収容可能な管状体とを備える。板状体および管状体は、図1aおよび図1bに見られるように、角度付けられた態様で互いに一体に接続されてもよい。
【0013】
図2は、実質的に円筒形の中空シャフト部分2と実質的に円筒形の中空頭部分3とを備えるシャフトを有する骨アンカー固定装置1を示す。シャフト部分2は、第1の端23と、第2の端24と、少なくとも1つの同軸溝21とを有し、溝21は、第1の端23から、第2の端24からの予め定められた距離まで延在する。溝21は、シャフト部分2の第2の端24までの距離のところに穴22を備える。シャフト部分2および頭部分3は一体に形成され、頭部分3の外径はシャフト部分2の外径よりも大きい。シャフト部分2と頭部分3とを別個の部品として設ける、および/またはそれらを同じ直径で設けることも可能である。
【0014】
図3および図4にロッキングねじ4を示す。これを用いて骨アンカー固定装置1を雌ねじ山25(図6b、図6dを参照)を介して骨接合板100に固定することができる。図4に見られるように、骨アンカー固定装置1は、シャフト部分2の溝21の穴22と協働するように構成されるピン71を有するスリーブ7をさらに備える。ピン71は、たとえばばね力(図示せず)に抗してスリーブ7の内側に押すことができる、たとえばスナップファスナであり得る。スリーブ7は中空シャフト部分2の中に嵌合する。すなわち、スリーブ7の外径は中空シャフト部分2の内径と同じであるかそれよりもわずかに小さい。これは、たとえば、図6bおよび図6dに見ることができる。ピン71はシャフト部分2の溝21の穴22の中に嵌合し、シャフト部分2の内側から穴22の中にパチンと嵌ることができる。これにより、スリーブ7は、中空シャフト部分2中にも挿入可能なねじ6用留め具として働く。スリーブ7により、ねじ6はシャフト部分2の第1の端23に向けて移動しないようになる。ねじ6が第2の端24の方向に移動しないようにするため、シャフト部分2と一体に当接部分26(図6b、図6d)を設け、これは、ねじ6の頭部の当接部を形成する。この当接部により、ねじ6は第1の端23からシャフト部分2の中にのみ挿入可能である。
【0015】
さらに、第1の端55と、第2の端56と、シャフト部材53と、頭部材51と、シャフト部材53に接続される複数のかえし要素52とを有する、挿入物の形態のかえし担体5を設ける。かえし担体5の頭部材51は、円筒形部分と先端を形成する円錐形状部分とを備える。
【0016】
図5aに見られるように、頭部分3は、複数の周方向溝33を有する外面31を備える。図5aには3つの溝33を示す。溝33は円形セグメント形状の断面を有する。各々の溝33の底部に、互いに対して同じ距離で周方向に分散し、動作の際にはかえし要素52を誘導するように中空頭部分3の壁を通って延在する開口32が設けられる。図5aで、各々の溝33の中に4つの開口32を示す。このことは、開口32が互いに対して90°の角度の向きに位置決めされることを意味する。より多くのまたはより少ない溝33、より多くのまたはより少ない開口32を設けたり、それらの角度付けられた向きについて異なるように開口32を配置したりすることもできる。図5a、図5bに見られるように、かえし担体5の頭部51は骨アンカー固定装置1の先端を形成する。
【0017】
図6aおよび図6bに見られるように、第1の構成の骨アンカー固定装置1を示す。骨アンカー固定装置1は、その第1の端23に雌ねじ山25を備える。雌ねじ山25はロッキングねじ4(図4)と協働して、たとえば骨接合板100に骨アンカー固定装置1を固定することができる。中空シャフト部分2の中にスリーブ7を設け、スリーブ7は、ねじ6を回すための工具(図示せず)と係合するための係合構造63を有するねじ6用の留め具を形成する。かえし担体5は、一部は頭部分3の中に、一部はシャフト部分2の中に設けられる。かえし担体5の第1の端55に隣接して、シャフト部材53は、ねじ6の雄ねじ山を係合するための雌ねじ山54を有するねじ切り穴を有する。
【0018】
第1の構成で、かえし担体5の頭部51の円錐形状部分は頭部分3の外側円形端縁と同一平面にある。これにより、頭部51の円錐形状部分は、この第1の構成で、骨アンカー固定装置1の先端を形成する。シャフト部分2とかえし担体5との相対的位置を参照すると、当接部分26とかえし担体5の第1の端55との間に第1の距離が存在する。さらに、かえし担体5のシャフト要素53に接続されるかえし要素52は頭部分3の外面31よりも遠くない頭部分3の開口32の中に延在する。この構成で、かえし要素52は頭部分3の外面31を越えて突出しない。したがって、第1の構成では、骨アンカー固定装置1は、図7aに見られる、骨にドリルで開けた穴の中に容易に導入することができる。
【0019】
図6cおよび図6dに示す第2の構成では、かえし担体5は、図6aおよび図6bに示す第1の構成を参照して、ねじ6およびスリーブ7のより近くに位置決めされる。シャフト部分2とかえし担体5との相対的位置をさらに参照すると、当接部分26とかえし担体5の第1の端55との間に第2の距離が存在し、第1の構成の第1の距離は第2の構成の第2の距離よりも大きい。第2の距離はほぼ0である可能性がある。この構成では、挿入物5のかえし要素52は曲げられ、頭部分3の外面31を越えて開口32を通って突出する。この構成では、骨アンカー固定装置1は、図7bに見られるように骨の中に固定される。この固定は可逆である。かえし要素52が過大に荷重を受けるまたはせん断することがないように、シャフト部分2とかえし担体5との互いに対する相対的位置、すなわち第2の構成ではかえし要素52の移動およびしたがって変形は、第2の構成を得る場合にねじ6が完全に螺合するように雌ねじ山54のドリル深さを寸法決めすることによって限定される。シャフト2に対するかえし担体5の無段階移動のために、第1の構成と第2の構成との間に多数の中間構成が存在する。
【0020】
特に図6bおよび図6dに見られるように、かえし要素52は、かえし要素52の所望の剛性が得られるように、かえし要素52の実際の寸法および用いる材料に基づいて、製造プロセスで選択される角度だけかえし担体5のシャフト部材53の表面から突出する。かえし要素52は、実質的に円形の断面を有する短いピンとして設計可能なかえし要素が圧力嵌め接続によって挿入されるボア穴をドリルで開けることにより、かえし担体5のシャフト部材53に装着される。たとえば接着接合によって異なるやり方でかえし担体5にかえし要素52を装着することもできる。それらの構成および装着により、かえし要素52は、かえし担体5に対しておよびそれらが誘導される頭部分3の開口32にも対して弾性変形可能である。かえし要素52は、矢状、筆毛状、またはモミの木状の構成に配置され、「矢」は先端51に向いている。
【0021】
任意の生体適合性材料から骨アンカー固定装置1を作ることができる。好ましくは、チタン、ステンレス鋼、およびそれらの合金などの生体適合性金属、または生体適合性プラスチック材料を用いることができる。シャフト部分2および頭部分3は、かえし担体5と同じ材料から、またはかえし要素52が必要な弾性を有することが異なる材料によって確実にされることが望まれる場合は異なる材料から作ることができる。しかしながら、好ましくは、かえし担体5および/またはかえし要素52は、形状記憶特性および/もしくは超弾性特性を有する形状記憶合金から作られるか、またはステンレス鋼もしくはチタン合金のようなばね状の特性を有する材料から作られる。たとえば、ニチノールなどのニッケル−チタン合金がかえし要素52のための使用に好適である。
【0022】
骨アンカー固定装置は以下のように組立てる。まず、第1の端23から(図6a−図6dでは上から)ねじ6をシャフト部分2に挿入する。当接部分26はねじ6をその定位置に保持する。その後、第1の端23からスリーブ7をシャフト部分2に挿入し、ピン71が穴22にパチンと嵌る。これにより、今度はねじの頭部がスリーブ7と当接部分22との間で軸方向に固定され、この誘導構造によってしか回転できなくなる。次に、頭部分3から(図6a−図6dでは底部から)、かえし要素52が、開口32の中に延在するが外面31を越えて突出しないように頭部分3の中に挿入される。ねじ6は、ねじ6の係合構造63中にスリーブ7を通してシャフト部分2の第1の端23から挿入される工具(図示せず)によって、かえし担体5の雌ねじ山54に螺合される。
【0023】
使用の際、骨アンカー固定装置1は、骨に設けられる、ドリルで開けられたボア穴に挿入される。次に、ねじ6を工具(図示せず)で回し、これにより、ねじおよびナット接続によりかえし担体5をシャフト部分2の第1の端23の方向に移動させる。これにより、かえし要素52は頭部3の開口32を通ってさらに移動し始め、頭部分3の表面31を越えて突出する。これにより、骨アンカー固定装置1が骨の中に固定される。その可撓性によりおよび開口32の形状により、かえし要素52は骨アンカー固定装置の長手方向軸に垂直な方向に曲がる。この曲げにより、かえし要素52が周囲の骨構造を貫通する。かえし要素52は作られたチャネルの中で拡張し、その結果、周囲の骨構造の損傷は最小限となる。かえし要素52に尖った先端を設けることができる。
【0024】
図8aから図10dに骨アンカー固定装置の第2の実施形態を示す。そのようなシステムおよび装置の機能は発明の第1の実施形態で説明したのと同じである。かえし担体の構築のみが異なる。
【0025】
図8aから図8cに、かえし要素52′を有する実質的に円筒形の中空のスリーブ状の本体を備える、第2の実施形態に従うかえし担体5′を示す。実質的に矩形の断面を有するかえし要素52′は、たとえばレーザ切断により円筒体の壁から切抜かれる。好ましくは、かえし担体5′は、たとえばニチノールなどの形状記憶材料から作られる。図8aに、かえし要素52′が広がっていないがかえし担体5′の円筒体の表面の残余と同一平面上にあるその製造構成でかえし担体5′を示す。図8bに、かえし要素52′が一部広がっている第1の構成でかえし担体5′を示す。図8cに、かえし要素52′が完全に広がっているその第2の構成でかえし担体5′を示す。
【0026】
図9aおよび図9bは図5aおよび図5bに対応し、溝21′を有するシャフト部分2′と、複数の溝32′および外面31′および先端51′を有する頭部分3′とを備える骨アンカー固定装置1′を示す。
【0027】
図10aおよび図10bに見られるように、かえし担体5′は、先端51′と第1の端55′および第2の端56′を有するシャフト部材53′との間にクランプ留めされる。先端51′は雌ねじ山511を備え、シャフト部材53′の第2の端56′が、先端51′の雌ねじ山511を係合してかえし担体5′をクランプ留めするように構成される雄ねじ山を形成する。かえし担体5′の壁は、シャフト部材53′の周方向部分と先端51′の周方向部分とによって支持され、支持周方向面の外径とかえし担体5′の外径とは実質的に同じであるため、構築体全体を骨アンカー固定要素1′の頭部分3′に挿入することができる。
【0028】
第1の実施形態と同様に、かえし担体5′に対するシャフト部分2′および頭部分3′の移動を行なう。シャフト部材53′は、その第1の端55′上にねじ6′と協働する雌ねじ山54′を備える。ねじ6′は当接部分26′とスリーブ7′との間に固定され、第1の実施形態と同様に、シャフト部分2′および頭部分3′に対してかえし担体5′を移動させるための回転移動しか行なうことができない。
【0029】
図10aおよび図10bは、第1の実施形態を参照して説明した第1の構成と同じ第1の構成の骨アンカー固定装置1′を示し、図10cおよび図10dは、第1の実施形態を参照して説明した第2の構成と同じ第2の構成の骨アンカー固定装置1′を示す。
【0030】
発明に従う骨アンカー固定装置および特に大腿骨アンカーは、特に骨粗鬆症の骨に用いるための、図1aおよび図1bに示すような骨接合板とともに用いることができる。また、従来の骨ねじの代わりにまたは骨アンカー固定の態様で用いられる従来のピンの代わりに骨アンカー固定装置を用いることができるすべてのさらなる適用例が想到可能である。剛性のかえし要素を設けることもできる。そのような場合、開口は、かえし要素を誘導するための長い穴または凹部として構成すべきである。
【0031】
さらに、当接部分とともにねじを支持するためのスリーブの代わりに、ねじを支持し、かつ工具の通過およびねじの係合構造との係合を可能にする他の要素を用いることができる。たとえば、スナップリングを用いることができる。
【符号の説明】
【0032】
1 骨アンカー固定装置、2、2′、3、3′ 中空シャフト、5、5′ かえし担体、6、6′ ねじ、52、52′ かえし要素。
【技術分野】
【0001】
本発明は、外面を有する中空シャフトと、複数のかえし要素を有するかえし担体とを備える、特に骨の中でのアンカー固定のための、大腿骨への適用のための骨アンカー固定装置に関する。シャフトおよびかえし担体は、第1の構成ではかえし担体のかえし要素がシャフトの外面を越えて突出しないように、かつ第2の構成ではかえし担体のかえし要素がシャフトの外面を越えて突出するように、互いに対して移動させることができる。第1から第2の構成へのかえし担体の移動方向は骨アンカー固定装置の挿入方向とは反対であり、骨アンカー固定装置にはねじ山がない。骨アンカー固定装置は、たとえば骨粗鬆症の大腿骨に適用されてもよい。
【背景技術】
【0002】
骨アンカー固定装置の公知の形態は、ねじを骨に螺合するためのねじ山を有するシャフトを備える骨ねじである。骨ねじはねじ回しを用いて手作業で骨の中に挿入されるが、これは時間がかかりかつ力を要するプロセスである。さらに、ねじを骨の中に挿入するプロセスにおいて、骨自体に高い圧力が作用することがあり、このことは、たとえば、神経外科、脊椎外科、小児外科、または外傷外科などのある臨床適用例では望ましくない。特に骨粗鬆症については、周囲の骨構造に作用するそのような高い圧力は大いに問題である。
【0003】
特許文献1は、ねじ山および中空部分を有する、第1骨部分と第2骨部分とを骨折部位を横切って結合する外科的ファスナアセンブリであって、中空部分内で可動の挿入物によって保持される4つの細長いピンを誘導するための4つの開口を有する、外科的ファスナアセンブリを開示する。これらのピンは、挿入物が工具によって軸方向に引き戻されると骨構造と係合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2001/0000186号A1
【特許文献2】国際公開WO2002/034107号A2
【特許文献3】国際公開WO2004/026158号A1
【特許文献4】国際公開WO2009/106951号A1
【特許文献5】国際公開WO2003/032852号A2
【特許文献6】米国特許第5,643,321号A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明の目的は、従来の骨ねじおよび骨釘よりもより迅速に、より容易に、かつより小さな力で骨の中に挿入することができ、かつ骨から容易に取り外すこともできる骨アンカー固定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の目的は、請求項1に記載の骨アンカー固定装置によって解決される。さらなる発展例を従属請求項に与える。
【0007】
発明に従う骨アンカー固定装置は、骨の中に準備されたボア穴の中に骨アンカー固定装置を押込むことによって骨の中での迅速かつ確実なアンカー固定を容易にする。骨アンカー固定装置の挿入の際は、かえし担体を形成する挿入物のかえし要素は、シャフトの外面よりも遠くない骨アンカー固定装置の中空シャフトの開口中に延在する。骨アンカー固定装置の挿入後、かえし担体およびシャフトは、かえし担体のかえし要素が中空シャフトの開口の中で広がりかつシャフトの外面を越えて突出するように互いに対して移動される。したがって、かえし要素は、骨アンカー固定装置が引抜かれたり緩んだりしないようにする。本発明の骨アンカー固定装置は、必要により、挿入物のかえし要素が最大でもシャフトの外面までしか開口の中に延在しないように単に再び中空シャフトおよびかえし担体を互いに対して移動させることによって容易に取り外すことができる。すなわち、この構成では、かえし要素はシャフトの外面を越えて突出しない。この構成では、かえし要素は周囲の骨構造と係合しないため、かえし効果は存在しない。
【0008】
かえし要素は可撓性であってもよく、たとえばニチノールなどの任意の可撓性材料から作られる。この材料から作られるかえし要素の変形が完全に可逆であることがニチノールの一つの利点である。
【0009】
この可逆のかえし接続により、無ねじ山骨アンカー固定要素は、挿入の際に、損傷させるような力を骨に対して加えず、確実な装着を与える。したがって、本発明は、周囲の骨構造に直接に作用するねじ山またはねじによる損傷がないため、骨粗鬆症の患者に特に好適である。かえし要素は骨構造を貫通するが、この貫通は、たとえば、より多くの周囲の骨構造を破壊するであろうかえし要素の拡張または揺動(swinging-out)よりも穏やかである。さらに、本発明に従う骨アンカー固定装置の埋込みプロセスは非常に速い。なぜならこれを螺合する必要がなく、単に挿入するだけでよいからである。発明に従う骨アンカー固定装置は製造も容易である。
【0010】
発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面と関連して以下の詳細な説明を参照することによって明らかになり、最もよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1a】骨接合板に装着される、第1の実施形態に従う第1の構成の骨アンカー固定要素の斜視図である。
【図1b】骨接合板に装着される、第1の実施形態に従う第2の構成の骨アンカー固定装置の斜視図である。
【図2】第1の実施形態に従う第1の構成の骨アンカー固定装置の斜視図である。
【図3】第1の実施形態に従う第1の構成の骨アンカー固定装置を接続ねじとともに示す斜視図である。
【図4】図3に示す骨アンカー固定装置の分解斜視図である。
【図5a】図1aに示す骨アンカー固定装置の拡大部分の斜視図である。
【図5b】図1bに示す骨アンカー固定装置の拡大部分の斜視図である。
【図6a】第1の実施形態に従う第1の構成の骨アンカー固定装置の側面図である。
【図6b】第1の実施形態に従う第1の構成の骨アンカー固定装置の断面図である。
【図6c】第1の実施形態に従う第2の構成の骨アンカー固定装置の側面図である。
【図6d】第1の実施形態に従う第2の構成の骨アンカー固定装置の断面図である。
【図7a】骨に挿入された、第1の実施形態に従う第1の構成の骨アンカー固定装置の前方部分の断面図である。
【図7b】骨に挿入された、第1の実施形態に従う第2の構成の骨アンカー固定装置の前方部分の断面図である。
【図8a】第2の実施形態に従う製造構成のかえし担体の斜視図である。
【図8b】第2の実施形態に従う第1の構成のかえし担体の斜視図である。
【図8c】第2の実施形態に従う第2の構成のかえし担体の斜視図である。
【図9a】第2の実施形態に従う第1の構成の骨アンカー固定装置の拡大部分の斜視図である。
【図9b】第2の実施形態に従う第2の構成の骨アンカー固定装置の拡大部分の斜視図である。
【図10a】第2の実施形態に従う第1の構成の骨アンカー固定装置の側面図である。
【図10b】第2の実施形態に従う第1の構成の骨アンカー固定装置の断面図である。
【図10c】第2の実施形態に従う第2の構成の骨アンカー固定装置の側面図である。
【図10d】第2の実施形態に従う第2の構成の骨アンカー固定装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1から図7bを参照して、発明の第1の実施形態に従う骨アンカー固定装置1を説明する。図1aおよび図1bに見られるように、無ねじ山骨アンカー固定装置1、特に大腿骨アンカー1は、骨接合板100に接続可能である。骨接合板100は、たとえば、ねじで骨に固定される板状体と、骨アンカー固定装置1の部分を収容可能な管状体とを備える。板状体および管状体は、図1aおよび図1bに見られるように、角度付けられた態様で互いに一体に接続されてもよい。
【0013】
図2は、実質的に円筒形の中空シャフト部分2と実質的に円筒形の中空頭部分3とを備えるシャフトを有する骨アンカー固定装置1を示す。シャフト部分2は、第1の端23と、第2の端24と、少なくとも1つの同軸溝21とを有し、溝21は、第1の端23から、第2の端24からの予め定められた距離まで延在する。溝21は、シャフト部分2の第2の端24までの距離のところに穴22を備える。シャフト部分2および頭部分3は一体に形成され、頭部分3の外径はシャフト部分2の外径よりも大きい。シャフト部分2と頭部分3とを別個の部品として設ける、および/またはそれらを同じ直径で設けることも可能である。
【0014】
図3および図4にロッキングねじ4を示す。これを用いて骨アンカー固定装置1を雌ねじ山25(図6b、図6dを参照)を介して骨接合板100に固定することができる。図4に見られるように、骨アンカー固定装置1は、シャフト部分2の溝21の穴22と協働するように構成されるピン71を有するスリーブ7をさらに備える。ピン71は、たとえばばね力(図示せず)に抗してスリーブ7の内側に押すことができる、たとえばスナップファスナであり得る。スリーブ7は中空シャフト部分2の中に嵌合する。すなわち、スリーブ7の外径は中空シャフト部分2の内径と同じであるかそれよりもわずかに小さい。これは、たとえば、図6bおよび図6dに見ることができる。ピン71はシャフト部分2の溝21の穴22の中に嵌合し、シャフト部分2の内側から穴22の中にパチンと嵌ることができる。これにより、スリーブ7は、中空シャフト部分2中にも挿入可能なねじ6用留め具として働く。スリーブ7により、ねじ6はシャフト部分2の第1の端23に向けて移動しないようになる。ねじ6が第2の端24の方向に移動しないようにするため、シャフト部分2と一体に当接部分26(図6b、図6d)を設け、これは、ねじ6の頭部の当接部を形成する。この当接部により、ねじ6は第1の端23からシャフト部分2の中にのみ挿入可能である。
【0015】
さらに、第1の端55と、第2の端56と、シャフト部材53と、頭部材51と、シャフト部材53に接続される複数のかえし要素52とを有する、挿入物の形態のかえし担体5を設ける。かえし担体5の頭部材51は、円筒形部分と先端を形成する円錐形状部分とを備える。
【0016】
図5aに見られるように、頭部分3は、複数の周方向溝33を有する外面31を備える。図5aには3つの溝33を示す。溝33は円形セグメント形状の断面を有する。各々の溝33の底部に、互いに対して同じ距離で周方向に分散し、動作の際にはかえし要素52を誘導するように中空頭部分3の壁を通って延在する開口32が設けられる。図5aで、各々の溝33の中に4つの開口32を示す。このことは、開口32が互いに対して90°の角度の向きに位置決めされることを意味する。より多くのまたはより少ない溝33、より多くのまたはより少ない開口32を設けたり、それらの角度付けられた向きについて異なるように開口32を配置したりすることもできる。図5a、図5bに見られるように、かえし担体5の頭部51は骨アンカー固定装置1の先端を形成する。
【0017】
図6aおよび図6bに見られるように、第1の構成の骨アンカー固定装置1を示す。骨アンカー固定装置1は、その第1の端23に雌ねじ山25を備える。雌ねじ山25はロッキングねじ4(図4)と協働して、たとえば骨接合板100に骨アンカー固定装置1を固定することができる。中空シャフト部分2の中にスリーブ7を設け、スリーブ7は、ねじ6を回すための工具(図示せず)と係合するための係合構造63を有するねじ6用の留め具を形成する。かえし担体5は、一部は頭部分3の中に、一部はシャフト部分2の中に設けられる。かえし担体5の第1の端55に隣接して、シャフト部材53は、ねじ6の雄ねじ山を係合するための雌ねじ山54を有するねじ切り穴を有する。
【0018】
第1の構成で、かえし担体5の頭部51の円錐形状部分は頭部分3の外側円形端縁と同一平面にある。これにより、頭部51の円錐形状部分は、この第1の構成で、骨アンカー固定装置1の先端を形成する。シャフト部分2とかえし担体5との相対的位置を参照すると、当接部分26とかえし担体5の第1の端55との間に第1の距離が存在する。さらに、かえし担体5のシャフト要素53に接続されるかえし要素52は頭部分3の外面31よりも遠くない頭部分3の開口32の中に延在する。この構成で、かえし要素52は頭部分3の外面31を越えて突出しない。したがって、第1の構成では、骨アンカー固定装置1は、図7aに見られる、骨にドリルで開けた穴の中に容易に導入することができる。
【0019】
図6cおよび図6dに示す第2の構成では、かえし担体5は、図6aおよび図6bに示す第1の構成を参照して、ねじ6およびスリーブ7のより近くに位置決めされる。シャフト部分2とかえし担体5との相対的位置をさらに参照すると、当接部分26とかえし担体5の第1の端55との間に第2の距離が存在し、第1の構成の第1の距離は第2の構成の第2の距離よりも大きい。第2の距離はほぼ0である可能性がある。この構成では、挿入物5のかえし要素52は曲げられ、頭部分3の外面31を越えて開口32を通って突出する。この構成では、骨アンカー固定装置1は、図7bに見られるように骨の中に固定される。この固定は可逆である。かえし要素52が過大に荷重を受けるまたはせん断することがないように、シャフト部分2とかえし担体5との互いに対する相対的位置、すなわち第2の構成ではかえし要素52の移動およびしたがって変形は、第2の構成を得る場合にねじ6が完全に螺合するように雌ねじ山54のドリル深さを寸法決めすることによって限定される。シャフト2に対するかえし担体5の無段階移動のために、第1の構成と第2の構成との間に多数の中間構成が存在する。
【0020】
特に図6bおよび図6dに見られるように、かえし要素52は、かえし要素52の所望の剛性が得られるように、かえし要素52の実際の寸法および用いる材料に基づいて、製造プロセスで選択される角度だけかえし担体5のシャフト部材53の表面から突出する。かえし要素52は、実質的に円形の断面を有する短いピンとして設計可能なかえし要素が圧力嵌め接続によって挿入されるボア穴をドリルで開けることにより、かえし担体5のシャフト部材53に装着される。たとえば接着接合によって異なるやり方でかえし担体5にかえし要素52を装着することもできる。それらの構成および装着により、かえし要素52は、かえし担体5に対しておよびそれらが誘導される頭部分3の開口32にも対して弾性変形可能である。かえし要素52は、矢状、筆毛状、またはモミの木状の構成に配置され、「矢」は先端51に向いている。
【0021】
任意の生体適合性材料から骨アンカー固定装置1を作ることができる。好ましくは、チタン、ステンレス鋼、およびそれらの合金などの生体適合性金属、または生体適合性プラスチック材料を用いることができる。シャフト部分2および頭部分3は、かえし担体5と同じ材料から、またはかえし要素52が必要な弾性を有することが異なる材料によって確実にされることが望まれる場合は異なる材料から作ることができる。しかしながら、好ましくは、かえし担体5および/またはかえし要素52は、形状記憶特性および/もしくは超弾性特性を有する形状記憶合金から作られるか、またはステンレス鋼もしくはチタン合金のようなばね状の特性を有する材料から作られる。たとえば、ニチノールなどのニッケル−チタン合金がかえし要素52のための使用に好適である。
【0022】
骨アンカー固定装置は以下のように組立てる。まず、第1の端23から(図6a−図6dでは上から)ねじ6をシャフト部分2に挿入する。当接部分26はねじ6をその定位置に保持する。その後、第1の端23からスリーブ7をシャフト部分2に挿入し、ピン71が穴22にパチンと嵌る。これにより、今度はねじの頭部がスリーブ7と当接部分22との間で軸方向に固定され、この誘導構造によってしか回転できなくなる。次に、頭部分3から(図6a−図6dでは底部から)、かえし要素52が、開口32の中に延在するが外面31を越えて突出しないように頭部分3の中に挿入される。ねじ6は、ねじ6の係合構造63中にスリーブ7を通してシャフト部分2の第1の端23から挿入される工具(図示せず)によって、かえし担体5の雌ねじ山54に螺合される。
【0023】
使用の際、骨アンカー固定装置1は、骨に設けられる、ドリルで開けられたボア穴に挿入される。次に、ねじ6を工具(図示せず)で回し、これにより、ねじおよびナット接続によりかえし担体5をシャフト部分2の第1の端23の方向に移動させる。これにより、かえし要素52は頭部3の開口32を通ってさらに移動し始め、頭部分3の表面31を越えて突出する。これにより、骨アンカー固定装置1が骨の中に固定される。その可撓性によりおよび開口32の形状により、かえし要素52は骨アンカー固定装置の長手方向軸に垂直な方向に曲がる。この曲げにより、かえし要素52が周囲の骨構造を貫通する。かえし要素52は作られたチャネルの中で拡張し、その結果、周囲の骨構造の損傷は最小限となる。かえし要素52に尖った先端を設けることができる。
【0024】
図8aから図10dに骨アンカー固定装置の第2の実施形態を示す。そのようなシステムおよび装置の機能は発明の第1の実施形態で説明したのと同じである。かえし担体の構築のみが異なる。
【0025】
図8aから図8cに、かえし要素52′を有する実質的に円筒形の中空のスリーブ状の本体を備える、第2の実施形態に従うかえし担体5′を示す。実質的に矩形の断面を有するかえし要素52′は、たとえばレーザ切断により円筒体の壁から切抜かれる。好ましくは、かえし担体5′は、たとえばニチノールなどの形状記憶材料から作られる。図8aに、かえし要素52′が広がっていないがかえし担体5′の円筒体の表面の残余と同一平面上にあるその製造構成でかえし担体5′を示す。図8bに、かえし要素52′が一部広がっている第1の構成でかえし担体5′を示す。図8cに、かえし要素52′が完全に広がっているその第2の構成でかえし担体5′を示す。
【0026】
図9aおよび図9bは図5aおよび図5bに対応し、溝21′を有するシャフト部分2′と、複数の溝32′および外面31′および先端51′を有する頭部分3′とを備える骨アンカー固定装置1′を示す。
【0027】
図10aおよび図10bに見られるように、かえし担体5′は、先端51′と第1の端55′および第2の端56′を有するシャフト部材53′との間にクランプ留めされる。先端51′は雌ねじ山511を備え、シャフト部材53′の第2の端56′が、先端51′の雌ねじ山511を係合してかえし担体5′をクランプ留めするように構成される雄ねじ山を形成する。かえし担体5′の壁は、シャフト部材53′の周方向部分と先端51′の周方向部分とによって支持され、支持周方向面の外径とかえし担体5′の外径とは実質的に同じであるため、構築体全体を骨アンカー固定要素1′の頭部分3′に挿入することができる。
【0028】
第1の実施形態と同様に、かえし担体5′に対するシャフト部分2′および頭部分3′の移動を行なう。シャフト部材53′は、その第1の端55′上にねじ6′と協働する雌ねじ山54′を備える。ねじ6′は当接部分26′とスリーブ7′との間に固定され、第1の実施形態と同様に、シャフト部分2′および頭部分3′に対してかえし担体5′を移動させるための回転移動しか行なうことができない。
【0029】
図10aおよび図10bは、第1の実施形態を参照して説明した第1の構成と同じ第1の構成の骨アンカー固定装置1′を示し、図10cおよび図10dは、第1の実施形態を参照して説明した第2の構成と同じ第2の構成の骨アンカー固定装置1′を示す。
【0030】
発明に従う骨アンカー固定装置および特に大腿骨アンカーは、特に骨粗鬆症の骨に用いるための、図1aおよび図1bに示すような骨接合板とともに用いることができる。また、従来の骨ねじの代わりにまたは骨アンカー固定の態様で用いられる従来のピンの代わりに骨アンカー固定装置を用いることができるすべてのさらなる適用例が想到可能である。剛性のかえし要素を設けることもできる。そのような場合、開口は、かえし要素を誘導するための長い穴または凹部として構成すべきである。
【0031】
さらに、当接部分とともにねじを支持するためのスリーブの代わりに、ねじを支持し、かつ工具の通過およびねじの係合構造との係合を可能にする他の要素を用いることができる。たとえば、スナップリングを用いることができる。
【符号の説明】
【0032】
1 骨アンカー固定装置、2、2′、3、3′ 中空シャフト、5、5′ かえし担体、6、6′ ねじ、52、52′ かえし要素。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨の中でのアンカー固定のための骨アンカー固定装置(1,1′)であって、
外面を有する中空シャフト(2,2′,3,3′)と、
複数のかえし要素(52,52′)を有するかえし担体(5,5′)とを備え、
前記シャフト(2,2′,3,3′)および前記かえし担体(5,5′)は、第1の構成では前記かえし担体(5,5′)の前記かえし要素(52,52′)が前記シャフト(2,2′,3,3′)の外面(31,31′)を越えて突出しないように互いに対して移動させることができ、
前記シャフト(2,2′,3,3′)および前記かえし担体(5,5′)は、第2の構成では前記かえし担体(5,5′)の前記かえし要素(52,52′)が前記シャフト(2,2′,3,3′)の前記外面(31,31′)を越えて突出するように互いに対して移動させることができ、
前記第1から前記第2の構成への前記かえし担体(5,5′)の移動方向は前記骨アンカー固定装置(1,1′)の挿入方向と反対であり、
前記骨アンカー固定装置(1,1′)の前記外面はねじ山を有しない、骨アンカー固定装置(1,1′)。
【請求項2】
前記骨アンカー固定装置(1,1′)はねじ(6,6′)を備え、前記かえし担体(5,5′)は雌ねじ山(54,54′)を備え、前記第1から前記第2の構成への移動は前記ねじ(6,6′)を回転させることによって達成可能である、請求項1に記載の骨アンカー固定装置(1,1′)。
【請求項3】
前記シャフト(2,2′,3,3′)は複数の開口(32,32′)を有し、前記第2の構成で、前記かえし要素(52,52′)は前記開口(32,32′)によって誘導される、請求項1または2に記載の骨アンカー固定装置(1,1′)。
【請求項4】
前記第1の構成で、前記かえし要素(52,52′)は前記開口(32,32′)によって誘導される、請求項1から3のうち1項に記載の骨アンカー固定装置(1,1′)。
【請求項5】
前記かえし担体(5,5′)は前記シャフト(2,2′,3,3′)の中に挿入可能である、請求項1から4のうち1項に記載の骨アンカー固定装置(1,1′)。
【請求項6】
前記シャフト(2,2′,3,3′)は頭部分(3,3′)とシャフト部分(2,2′)とを備える、請求項1から5のうち1項に記載の骨アンカー固定装置(1,1′)。
【請求項7】
前記かえし担体(5,5′)はシャフト部材(53,53′)と頭部材(51,51′)とを備え、前記頭部分(51,51′)は前記骨アンカー固定装置(1,1′)の先端を形成する、請求項1から6のうち1項に記載の骨アンカー固定装置(1,1′)。
【請求項8】
前記かえし担体(5′)はスリーブである、請求項1から7のうち1項に記載の骨アンカー固定装置(1′)。
【請求項9】
前記かえし要素(52,52′)はピンである、請求項1から8のうち1項に記載の骨アンカー固定装置(1,1′)。
【請求項10】
前記かえし要素(52′)および前記かえし担体(5′)は一体に接続される、請求項1から9のうち1項に記載の骨アンカー固定装置(1′)。
【請求項11】
前記かえし要素(52,52′)はニチノールなどの形状記憶材料から作られる、請求項1から7のうち1項に記載の骨アンカー固定装置(1,1′)。
【請求項12】
前記かえし要素(52,52′)は筆毛状または矢状の構成に配置され、前記「矢」は前記アンカー固定装置(1,1′)の先端に向いている、請求項1から11のうち1項に記載の骨アンカー固定装置(1,1′)。
【請求項13】
前記ねじ(6,6′)は、前記ねじ(6,6′)が回転移動しか行なえないように軸方向に保持され固定される、請求項1から12のうち1項に記載の骨アンカー固定装置(1,1′)。
【請求項14】
前記ねじの頭部は第1の当接部(26,26′)と第2の当接部(7,7′)との間に軸方向に固定される、請求項1から13のうち1項に記載の骨アンカー固定装置(1,1′)。
【請求項15】
前記かえし要素(52,52′)および開口(32,32′)は、前記第2の構成で前記かえし要素(52,52′)が周囲の骨構造を貫通するように協働する、請求項2から14のうち1項に記載の骨アンカー固定装置(1,1′)。
【請求項1】
骨の中でのアンカー固定のための骨アンカー固定装置(1,1′)であって、
外面を有する中空シャフト(2,2′,3,3′)と、
複数のかえし要素(52,52′)を有するかえし担体(5,5′)とを備え、
前記シャフト(2,2′,3,3′)および前記かえし担体(5,5′)は、第1の構成では前記かえし担体(5,5′)の前記かえし要素(52,52′)が前記シャフト(2,2′,3,3′)の外面(31,31′)を越えて突出しないように互いに対して移動させることができ、
前記シャフト(2,2′,3,3′)および前記かえし担体(5,5′)は、第2の構成では前記かえし担体(5,5′)の前記かえし要素(52,52′)が前記シャフト(2,2′,3,3′)の前記外面(31,31′)を越えて突出するように互いに対して移動させることができ、
前記第1から前記第2の構成への前記かえし担体(5,5′)の移動方向は前記骨アンカー固定装置(1,1′)の挿入方向と反対であり、
前記骨アンカー固定装置(1,1′)の前記外面はねじ山を有しない、骨アンカー固定装置(1,1′)。
【請求項2】
前記骨アンカー固定装置(1,1′)はねじ(6,6′)を備え、前記かえし担体(5,5′)は雌ねじ山(54,54′)を備え、前記第1から前記第2の構成への移動は前記ねじ(6,6′)を回転させることによって達成可能である、請求項1に記載の骨アンカー固定装置(1,1′)。
【請求項3】
前記シャフト(2,2′,3,3′)は複数の開口(32,32′)を有し、前記第2の構成で、前記かえし要素(52,52′)は前記開口(32,32′)によって誘導される、請求項1または2に記載の骨アンカー固定装置(1,1′)。
【請求項4】
前記第1の構成で、前記かえし要素(52,52′)は前記開口(32,32′)によって誘導される、請求項1から3のうち1項に記載の骨アンカー固定装置(1,1′)。
【請求項5】
前記かえし担体(5,5′)は前記シャフト(2,2′,3,3′)の中に挿入可能である、請求項1から4のうち1項に記載の骨アンカー固定装置(1,1′)。
【請求項6】
前記シャフト(2,2′,3,3′)は頭部分(3,3′)とシャフト部分(2,2′)とを備える、請求項1から5のうち1項に記載の骨アンカー固定装置(1,1′)。
【請求項7】
前記かえし担体(5,5′)はシャフト部材(53,53′)と頭部材(51,51′)とを備え、前記頭部分(51,51′)は前記骨アンカー固定装置(1,1′)の先端を形成する、請求項1から6のうち1項に記載の骨アンカー固定装置(1,1′)。
【請求項8】
前記かえし担体(5′)はスリーブである、請求項1から7のうち1項に記載の骨アンカー固定装置(1′)。
【請求項9】
前記かえし要素(52,52′)はピンである、請求項1から8のうち1項に記載の骨アンカー固定装置(1,1′)。
【請求項10】
前記かえし要素(52′)および前記かえし担体(5′)は一体に接続される、請求項1から9のうち1項に記載の骨アンカー固定装置(1′)。
【請求項11】
前記かえし要素(52,52′)はニチノールなどの形状記憶材料から作られる、請求項1から7のうち1項に記載の骨アンカー固定装置(1,1′)。
【請求項12】
前記かえし要素(52,52′)は筆毛状または矢状の構成に配置され、前記「矢」は前記アンカー固定装置(1,1′)の先端に向いている、請求項1から11のうち1項に記載の骨アンカー固定装置(1,1′)。
【請求項13】
前記ねじ(6,6′)は、前記ねじ(6,6′)が回転移動しか行なえないように軸方向に保持され固定される、請求項1から12のうち1項に記載の骨アンカー固定装置(1,1′)。
【請求項14】
前記ねじの頭部は第1の当接部(26,26′)と第2の当接部(7,7′)との間に軸方向に固定される、請求項1から13のうち1項に記載の骨アンカー固定装置(1,1′)。
【請求項15】
前記かえし要素(52,52′)および開口(32,32′)は、前記第2の構成で前記かえし要素(52,52′)が周囲の骨構造を貫通するように協働する、請求項2から14のうち1項に記載の骨アンカー固定装置(1,1′)。
【図1a】
【図1b】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図6d】
【図7a】
【図7b】
【図8a】
【図8b】
【図8c】
【図9a】
【図9b】
【図10a】
【図10b】
【図10c】
【図10d】
【図1b】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図6d】
【図7a】
【図7b】
【図8a】
【図8b】
【図8c】
【図9a】
【図9b】
【図10a】
【図10b】
【図10c】
【図10d】
【公開番号】特開2013−63268(P2013−63268A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−200473(P2012−200473)
【出願日】平成24年9月12日(2012.9.12)
【出願人】(511211737)ビーダーマン・テクノロジーズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディートゲゼルシャフト (30)
【氏名又は名称原語表記】BIEDERMANN TECHNOLOGIES GMBH & CO. KG
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年9月12日(2012.9.12)
【出願人】(511211737)ビーダーマン・テクノロジーズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディートゲゼルシャフト (30)
【氏名又は名称原語表記】BIEDERMANN TECHNOLOGIES GMBH & CO. KG
【Fターム(参考)】
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