説明

骨内インプラント

【課題】ヒトまたは動物の骨に適用される骨内インプラント及びその製造方法の提供。
【解決手段】選択された金属もしくは選択された金属合金またはセラミックで製造された表面を有し、該金属及び金属合金のそれぞれが、クロム、ニオブ、タンタル、バナジウム、ジルコニウム、アルミニウム、コバルト、ニッケル、ステンレス鋼、またはその合金から選択され、該表面は滑らかなまたは粗いテキスチャーを有し、該表面が、少なくとも1つのホスホン酸基、またはその誘導体であって、好ましくは薬学的に許容されるその塩またはエステルまたはアミドを保有する、少なくとも1つの薬学的に許容される有機化合物で処理されているインプラント及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトまたは動物の骨に適用される、選択された金属または選択されたセラミックの骨内インプラントに関し、前記インプラントは、滑らかなまたは粗い表面テキスチャーを有し、前記表面が少なくとも1つのホスホン酸基またはその誘導体を保有する少なくとも1つの選択された有機化合物で処理されている。
【0002】
本発明の意味において選択された金属表面とは、金属、たとえばクロム、ニオブ、タンタル、バナジウム、ジルコニウム、アルミニウム、コバルト、ニッケル、ステンレス鋼、またはその合金で製造されている。金属チタンおよび金属チタン合金の表面は除かれる。
【0003】
本発明の意味においてセラミック表面とは、好ましくは金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物、金属酸窒化物、金属炭窒化物および/または金属酸炭化物で製造されている。このような金属の酸化物、炭化物、窒化物、酸窒化物、炭窒化物、または酸炭化物の例は、クロム、ニオブ、タンタル、バナジウム、ジルコニウム、アルミニウム、コバルト、ニッケル、ステンレス鋼、またはその合金のものであり、チタン炭化物、チタン窒化物、チタン酸窒化物、チタン炭窒化物、および/またはチタン酸炭化物も含まれる。
【0004】
本発明によるインプラントは、医療、より具体的には、整形外科において損傷または疾患のある骨を置換または強化するために、および歯科において義歯を固定するために、ならびに骨固定された補聴器の固定のために、補綴物として用いることができる。本発明に従って改質された表面は、骨結合強度を驚くほど増強することが示されている。
【0005】
損傷または疾患のある骨を置換または強化するための医療における補綴物として、または義歯として用いられるインプラントが知られている。これらのインプラントは、腐食しない材料で製造し、体による拒絶をもたらす免疫反応を生じることなく周囲組織と適合性でなければならない。以下、「表面」または「接触表面」という用語は、本発明に従う処理がまだされていない定義された金属またはセラミックのインプラント表面を指し、「改質された表面」という用語は、本発明に従う処理がされた前記表面を指す。
【0006】
スクリュー、プレート、釘、ピンおよび人工補綴物としてヒトおよび動物の骨格構造へ特別に形成された部品の形状のインプラント装置が、失った構造部の永続的な置換または永続的な固定装置としての手段であることが知られている。インプラント装置が接触骨表面に永続的に付着されたままであるべきような場合には、優れた「骨結合」が必要である。
【0007】
インプラント用に選択された金属および選択されたセラミック材料を用いることが知られている。注意深く製造すると、インプランはその表面によって、骨再生に対して受動性のままであり、それ自体は炎症や軟組織発生または封入などの有害な反応を誘発することがないという意味で生体適合性を示す。インプラントと骨組織との間で得られる境界面は、通常、厚さ約100nm〜1μmのたんぱく質層から成り、骨組織がインプラントと直接的な分子接触をすることを防ぐ。
【0008】
骨内インプラントの技術の現状は、異なるアプローチ例えば(i)骨とインプラントとの機械的な結合を与えるインプラント表面の適切な粗さの生成、および/または(ii)インプラント表面のコーティング、例えば、治癒経過および骨とインプラントの親密な接触を改善するための人工的なヒドロキシアパタイトに基づいている。
【0009】
高い表面粗さが骨組織におけるインプラントの機械的安定性を増大させることが知られている。機械的な表面処理はトポグラフィーを大幅に変化させるが、表面の化学的性質は実質的に変化しないままである。高い表面粗さを有するインプラントの不利な点は、純粋な機械的な固定が微動に対してきわめて感受性が高く、機械的な固定の劣化を引き起こしうること、またインプラントの骨結合時間が比較的長いことである。
【0010】
インプラントの表面を人工的なヒドロキシアパタイトでコーティングすることにより骨結合時間が減少する。しかし、荷重を受けるインプラントで長期安定性のあるヒドロキシアパタイトコーティングを得ることは、不可能ではないが、きわめて困難である。コーティングとインプラントとの間の境界面はしばしば崩壊し、またはコーティングは剥げて取れてしまう。
【0011】
現在、本願明細書で定義されている選択された金属またはセラミック表面を有する骨内インプラントの表面を、少なくとも1つのホスホン酸基[−P(O)(OH)2]またはその誘導体を保有する少なくとも1つの有機化合物で処理した場合、本願明細書で以下に説明されるように、処理した表面は、処理しない表面に比べて骨結合強度の驚くほどの改善および骨結合時間の驚くほどの短縮を示し、ヒドロキシアパタイトコーティングを有する表面で知られる不都合な点がないことが明らかにされている。
【0012】
本発明は、特許請求の範囲において規定されている。本発明は、具体的には、ヒトまたは動物の骨に適用される骨内インプラントであって、前記インプラントは、選択された金属もしくは選択された金属合金またはセラミックで製造された表面を有し、前記金属、金属合金のそれぞれが、クロム、ニオブ、タンタル、バナジウム、ジルコニウム、アルミニウム、コバルト、ニッケル、ステンレス鋼、またはその合金から選択され、前記表面は滑らかなまたは粗いテキスチャーを有し、前記表面が、少なくとも1つのホスホン酸基、またはその誘導体であって、好ましくは薬学的に許容されるそのエステル、アミドまたは塩、を保有する少なくとも1つの薬学的に許容される有機化合物で処理されていることを特徴とするインプラントに関する。
【0013】
本発明はさらに、前記表面が少なくとも1つのホスホン酸基、またはその誘導体であって、好ましくはそのエステルまたはアミドまたは塩、を保有する薬学的に許容される少なくとも1つの有機化合物で処理されることを特徴とする、本発明によるインプラントを製造するための方法に関する。
【0014】
本発明により処理される骨内インプラントの金属表面は、クロム、ニオブ、タンタル、バナジウム、ジルコニウム、アルミニウム、コバルト、ニッケル、ステンレス鋼、またはその合金で製造される。インプラントを製造するためのこのような金属および金属合金は、例えば、Bremeら、Metals as biomaterials、1〜71ページ(1998)、John Wiley & Sons Ltd.(英国、Chichester); J. B. Park and R. S. Lakes, Biomaterials、An Introduction(1992)、第2版、Plenum Press(ニューヨーク)79〜115ページおよび293〜354ページ;R.Schmidt、Comportment des materiaux dans les milieux biologiques、Applications en medecine et biotechnologie、第7巻(1999)294〜343ページ、Press polytechniques et universitaires romandes(スイス、ローザンヌ)に記載されており、その関連する内容を参照として本明細書に取り込む。
【0015】
あるいは、本発明により処理される骨内インプラントの表面はセラミックで製造することができる。このようなセラミック表面は、例えば、熱的にまたは化学的に処理され、またはプラズマや別の適切な方法で処理されている金属表面である。このような処理は公知であり、文献に記載されており、例えば、クロム、ニオブ、タンタル、バナジウム、ジルコニウム、アルミニウム、コバルト、ニッケル、ステンレス鋼、またはその合金の酸化物表面、炭化物表面、窒化物表面、酸窒化物表面、炭窒化物表面、または酸炭化物表面である。チタン炭化物、チタン窒化物、チタン酸炭化物、チタン炭窒化物、および/またはチタン酸炭化物も含まれる。本発明から除外されるのは、チタン酸化物で製造された表面である。
【0016】
このような表面およびその製造は公知であり、例えば、H.Benderら、Surf.Interface Anal.第14巻(1989)337ページ以降において記載されている。金属酸化物で製造される好ましいセラミック表面は、アルミニウム酸化物またはジルコニウム酸化物またはケイ素酸化物、好ましくはアパタイト類、好ましくはヒドロキシアパタイトまたはフルオロアパタイト、またはアパタイト様材料、好ましくはトリカルシウムリン酸塩、またはブラッシュ石型層、例えば、Bremeら、Metals as biomaterials、219〜264ページ(1998)、J.A.Helsenら編集、John Wiley & Sons Ltd.(英国、Chrichester);またはJ.B.Park and R.S. Lakes、Biomaterials、An Introduction(1992)、第2版、Plenum Press(ニューヨーク)、117〜140ページ、および169〜183ページ;またはR.Schmidt、Comportment des materiaux dans les milieux biologiques、Applications en medecine et biotechnologie、第7巻(1999)、306〜314ページ、Presses polytechniques et universitaires romandes(スイス、ローザンヌ)に記載されているものである。
【0017】
本発明の範囲内で用いることができる他のセラミック表面は、例えば、ケイ酸ガラス、またはホウ素シリカガラス、またはバイオガラス、例えば、R.Schmidt、Comportment des materiaux dans les milieux biologiques、Applications en medecine et biotechnologie、第7巻(1999)、306〜314ページ、Presses polytechniques et universitaires romandes(スイス、ローザンヌ)、およびその内容を参照として本明細書に取り込む上記の他の引用文献において記載されているもので製造されるガラス状表面であってよい。
【0018】
本発明の範囲内で用いられる好ましい有機化合物は、少なくとも1つのホスホン酸基、またはその誘導体であって、好ましくはそのエステルまたはアミドまたは塩である。好ましいインプラントは、一般式(I):
A−[P(O)(OH)2p (I)、
(式中、AはA1またはA2を意味し、
1は、n個の炭素原子を有する直鎖状、分枝鎖状または環状の、飽和または不飽和の炭化水素残基の残基であり、該残基はヒドロキシルおよび/またはカルボキシルによって置換され、および場合により1つ以上の酸素原子および/またはイオウ原子および/または窒素原子によって中断されていてよく、p個のホスホン酸基を保有し、ここで
nは1〜70、好ましくは1〜40、好ましくは1〜22の数であり、
pは1、2、3、4、5、または6、好ましくは1、2、3、4、または5、好ましくは1、2、3、または4であるか;あるいは
AはA2を意味し、A2はアミノ酸の残基またはタンパク質もしくはポリペプチドのそれぞれのアミノ酸配列の残基、好ましくはトランスフォーミング成長因子ベータ(TGF−β)のスーパーファミリーの残基であり;または特定の薬物分子の残基であり、ここで
各残基A2がp個のホスホン酸基を保有し、
2がアミノ酸の残基またはタンパク質もしくはポリペプチドのそれぞれのアミノ酸配列の残基であるとき、pは1〜6、好ましくは1、2、3、または4、好ましくは1、2、または3であり;または
2は本来いかなるホスホン基も有さず、場合によりA1に対して示された定義に属する特定の薬物分子の残基であるとき、pは1、2、3、4、5、または6、好ましくは1、2、または3、好ましくは1である)、
または薬学的に許容されるその誘導体であって、好ましくは薬学的に許容されるそのエステル、アミドまたは塩、に対応する少なくとも1つの有機化合物、またはこの化合物の混合物で処理されている。
【0019】
一般式(I)の化合物(i)および(ii)は、以下であることが好ましい:
【0020】
(i)AがA1の意味を有する場合、nが1であり、pが2であるとき、Aは好ましくは−CH2−であり;またはnが1であるとき、pは好ましくは3または4、好ましくは3であり;またはnが2〜10のとき、各ホスホン酸基、またはホスホン酸エステル基、またはホスホン酸アミド基が同じ分子内の異なる炭素原子に結合されているという条件で、pは好ましくは2であり;またはnが2〜10であるとき、pは好ましくは3、4、5、または6、好ましくは3、4、または5、好ましくは3または4であり;またはnが11〜70であるとき、pは好ましくは2、3、4、5、または6、好ましくは2、3、4、または5、好ましくは2、3、または4である。
【0021】
(ii)AがA2の意味を有する場合:A2は本来いかなるホスホン基も有さず、場合によりA1に対して示された定義に属する特定の薬物分子の残基である場合には、pは好ましくは1または3〜6、好ましくは1である。
【0022】
本明細書に指定された、特に酸または塩としてのホスホン酸化合物は、インプラントの表面と共有結合を形成し、それにより著しくかつ予想外の程度に前記表面の骨結合特性を改善することが考えられる。しかし、本発明はこの説明に拘束されない。
【0023】
1は、式−(Cn2n+2-p)−[式中、nは1〜70、好ましくは1〜40、好ましくは1〜22を意味する]の飽和炭化水素の残基であることが好ましい。好ましくは、式(I)の化合物の遊離酸または塩の形態であり、薬学的に許容される塩が、好ましくはアルカリ塩、好ましくはナトリウム塩またはカリウム塩である。
【0024】
1が飽和炭化水素の残基[例えば、1〜70個の炭素原子を有するアルキル鎖(C1〜C70−アルキル)]である式(I)の化合物の例は、モノホスホン酸、例えばメタンホスホン酸、エタンホスホン酸、プロパンホスホン酸、またはポリホスホン酸、例えばメチレンジホスホン酸、エタン−1,2−ジホスホン酸、プロパン−1,3−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、プロパン−1,1,3−トリホスホン酸、ブタン−1,1,4−トリホスホン酸、ペンタン−1,1,5−トリホスホン酸、ペンタン−2,2,5−トリホスホン酸、ヘキサン−2,2,6−トリホスホン酸、ペンタン−1,1,5,5−テトラホスホン酸、ヘプタン−1,4,4,7−テトラホスホン酸、プロパン−1,1,3,3−テトラホスホン酸、またはノナン−1,5,5,9−テトラホスホン酸である。
【0025】
1が不飽和炭化水素の残基である式(I)の化合物の例は、不飽和のモノホスホン酸類およびポリホスホン酸類、例えばその化合物を参照として本明細書に組み込む、H.Fleisch、Bisphosphonates in bone disease,from the laboratory to the patient 2000、第4版、The Parthenon Publishing Group、31〜33ページに示されているものである。
【0026】
薬学的に許容されるエステルを用いる場合は、好ましくは2つ前の段落に示した酸のホスホン酸イソプロピルエステルまたはホスホン酸エチルエステルが好ましい。このようなエステルのさらなる例は、メチレンジホスホン酸テトライソプロピル、エタン−1,1,2−トリホスホン酸ヘキサエチル、ブタン−1,1,4−トリホスホン酸ヘキサイソプロピル、ペンタン−1,1,5−トリホスホン酸ヘキサイソプロピル、ペンタン−2,2,5−トリホスホン酸ヘキサイソプロピル、ヘキサン−2,2,6−トリホスホン酸ヘキサイソプロピル、プロパン−1,1,3,3−テトラホスホン酸オクタイソプロピル、ヘプタン−1,4,4,7−テトラホスホン酸オクタイソプロピル、ノナン−1,5,5,9−テトラホスホン酸オクタイソプロピルである。
【0027】
2がタンパク質それぞれのポリペプチドの残基である式(I)の化合物の例は、例えば、A.B.Roberts、M.B.Sporn、Handbook of Experimental Pharmacology、95(1990)419〜472ページ、またはD.M.Kingsley、Genes and Development、8(1994)133〜146ページ、およびその中の引例において記載されているような、成長因子のスーパーファミリーの全メンバー、特にTGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4、およびTGF−β5が含まれるトランスフォーミング成長因子ベータ(TGF−β)の形態の化合物であり、その場合、ぺプチド鎖がアルキルホスホン酸基、またはその誘導体であって、好ましくはそのエステル、アミドまたは塩、を含むように改変されている。この意味では、式(I)の化合物は、成長因子のスーパーファミリーのメンバー、好ましくはTGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4、およびTGF−β5によって規定されたトランスフォーミング成長因子ベータ(TGF−β)を表し、ここでつねにぺプチド鎖が少なくとも1つのアルキルホスホン酸基、またはその誘導体であって、好ましくはそのエステル、アミドまたは塩、を含むように改変されている。
【0028】
Aが骨形態形成タンパク質(BMP)(TGFファミリーのサブファミリーである)の残基である式(I)の化合物の例は、例えば、J.M.Wozneyら、Science、242(1988)1582〜1534;A.J.Celesteら、Proc.Natl.Acad.Sci.米国87(1990)9843〜9847;E.Ozkaynakら、J.Biol.Chem.267(1992)25220〜25227;Takaoら、Biochem.Biophys.Res.Com.219(1996)656〜662;WO93/00432;WO94/26893;WO94/26892;WO95/16035およびその中の引例において見出されるBMP−2(BMP−2a)、BMP−3、BMP−4(BMP−2b)、BMP−5、BMP−6、BMP−7(OP−1)、BMP−8(OP−2)、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、BMP−13の化合物であり、この場合、ペプチド鎖がアルキルホスホン酸基、またはその誘導体であって、好ましくはそのエステル、アミドまたは塩、を含むように改変されている。これらの化合物を参照として本明細書に組み込む。この意味では、式(I)の化合物は、骨形態形成タンパク質(BMP)、好ましくはBMP−2(BMP−2a)、BMP−3、BMP−4(BMP−2b)、BMP−5、BMP−6、BMP−7(OP−1)、BMP−8(OP−2)、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、BMP−13を表し、ここでペプチド鎖が少なくとも1つのアルキルホスホン酸基、またはその誘導体であって、好ましくはそのエステル、アミドまたは塩、を含むように改変されている。
【0029】
2がアミノ酸の残基である式(I)の化合物の例は、例えば、O.Fabuletら、Phosphorus、Sulphur、Silicon and Related Elements、101、225〜234(1995)に記載された2−アミノ−4,4−ビス−(ジエトキシ−ホスホリル)−酪酸;例えば、I.G.Andronovaら、Russ.J.Gen.Chem.66、1068〜1071(1996)に記載された2−アミノ−5−(ジエトキシ−ホスホリル)−ペンタン酸;例えば、X.Y.Jiaoら、Synth.Commun.22、1179〜1186(1992)およびその中の引例に記載された2−アミノ−4−ホスホノ酪酸である。さらに別の例は、例えば、L.Stryer、Biochemistry、第3版(1988)、17〜22ページに記載された主要な20種のアミノ酸すべてであり、その場合、アミノ酸はアルキルホスホン酸基と類似の方法で改変されており、好ましくは、式(I)の化合物は主要な20種のアミノ酸、好ましくはアルギニン、グリシン、アスパラギン酸、アラニン、バリン、プロリン、セリン、スレオニン、システイン、またはリジンの1つであり、ここでそのアミノ酸は少なくとも1つのアルキルホスホン酸基、またはその誘導体であって、好ましくはそのエステル、アミドまたは塩、を含むように改変されている。これらの化合物を参照として本明細書に組み込む。
【0030】
2がペプチドの残基である式(I)の化合物の例は、RGD含有ペプチド類、RGDSペプチド類、GRGDSペプチド類、RGDVペプチド類、RGDEペプチド類、および/またはRGDTペプチド類を含むが、これらに限定されない。このようなペプチド類は、例えば、Y.Hirano、J.Biomed.Materials Res.、25(1991)、1523〜1534ページまたはWO98/52619およびその中の引例に記載されている。本発明の範囲内には、細胞接着または細胞接着予防などの特定の生物活性を有することが知られている類似のペプチド類も含まれ、これらは上記したペプチド類と同様に調製される。この意味では、式(I)の化合物は、少なくとも1つのアルキルホスホン酸基、またはその誘導体であって、好ましくはそのエステル、アミドまたは塩、を含むように改変されているRGD含有ペプチド、好ましくはRGDSペプチド、GRGDSペプチド、RGDVペプチド、RGDEペプチド、および/またはRGDTペプチドである。
【0031】
2が特定の薬物分子の残基である式(I)の化合物の例は、例えば、H.Fleisch、Bisphosphonates in bone disease,from the laboratory to the patient 2000、第4版、The Parthenon Publishing Group、31〜33ページ、およびその中の引例に記載された1−ヒドロキシ−3−(1−ピロリジニル)−プロピリデンジホスホン酸、シクロヘプチルアミノメチレンジホスホン酸、1−ヒドロキシ−2−イミダゾ−(1,2−a)−ピリジン−3−イル−エチリデンジホスホン酸、1−ヒドロキシ−2−(3−ピリジニル)−エチリデンジホスホン酸、(4−クロロフェニル)チオ−メチレンジホスホン酸、または1−ヒドロキシ−2−(1H−イミダゾール−1−イル)エチリデンジホスホン酸、および関連する化合物である。これらの化合物を参照として本明細書に含める。
【0032】
式(I)の好ましい化合物は、上記の残基A2を含有するものであり、好ましくはアミノ酸の残基、またはタンパク質もしくはポリペプチドのそれぞれのアミノ酸配列の残基、好ましくはトランスフォーミング成長因子ベータ(TGF−β)のスーパーファミリーの残基、好ましくは骨形態形成タンパク質(BMP)である。
【0033】
本発明によるインプラントを製造するために、すなわち、インプラントの表面を式(I)の少なくとも1つの化合物またはこれらの化合物の混合物で処理するためにとるべき以下のステップが推奨される。まず、望ましくない分子それぞれの不純物を表面から除去するために、洗浄浴中でインプラントを洗浄する。最初に脱脂剤、例えばアルコール、クロロホルムなどの有機溶媒、および別の有機溶媒および/または水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム系のアルカリ水溶液などの無機洗剤などでインプラントを処理することが好ましい。その後、インプラントを、好ましくは少なくとも15Mohmcmの伝導率抵抗を有する純水中、好ましくは蒸留超純水中で注意深くリンスする。洗浄とリンスの後、インプラントを窒素ガス流または乾燥または熱気流で乾燥し、管理条件下に保管する。あるいは、脱脂の後、表面を洗浄するためにインプラントをさらにグロー放電プラズマ中で処理することができる。次いで、インプラントの清浄な表面を式(I)の少なくとも1つの化合物またはそのエステルもしくは塩で、すなわち、少なくともかかる化合物の1つまたはかかる化合物の混合物で処理する。化合物または前記化合物の混合物を、ブラッシング、溶射、浸漬、またはグロー放電プラズマ補助蒸着を含む蒸発などの適切な手段によって、インプラントの表面に導入する。ホスホン酸化合物またはそのエステルもしくは塩を、好ましくは極性溶媒中で溶解し、溶媒の重量に対して約1.0×10-5mol/10ml〜5×10-2mol/10ml、好ましくは約5×10-4mol/10ml〜2.0×10-2mol/10mlの濃度の溶液を得ることが好ましい。濃度は、インプラントの表面にa)単一分子層の一部または全体(1%〜100%、好ましくは50%〜100%)が形成されるようになることが好ましい。好ましい溶媒は蒸留純水である。インプラントを十分に長い時間、好ましくは数分〜数時間、溶液と接触させたまま放置する。その後、インプラントを純水で注意深くリンスし、プラスチックまたは金属の清浄なパッケージング材料、好ましくは排気され、または窒素などの不活性気体または本明細書に上記規定された純水などの不活性液体で充填された気密パッケージングで包装することが好ましい。前記純水は無機塩、好ましくはアルカリ塩、例えば塩化アルカリ、硫酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、好ましくはナトリウム塩および/またはカリウム塩、および/または式(I)の化合物またはそのエステルもしくは塩を、好ましくは蒸留水である溶媒の約1.0×10-5mol/10ml〜5×10-2mol/10ml、好ましくは約5×10-4mol/10ml〜2.0×10-2mol/10mlの濃度で含有することができる。
【0034】
分析的調査、例えば、X線光電子分光分析(XPS)またはNMRでは、式(I)のホスホン酸化合物をインプラントの表面に接触させると、即時吸収が起こることがわかっている。表面とホスホン酸化合物との間に強力な結合が形成され、化学的な表面の改質が得られる。本明細書に上記したいくつかの異なるポリホスホン酸類、塩類、エステル類、およびアミド類が合成された。本発明によるこれらの化合物で製造された歯科用インプラントは優れた結果を示した。
【0035】
本発明によるインプラントは、スクリュー、プレート、釘、ピン、および特別に形成された部品の形状であってよく、医療、より具体的には、整形外科において損傷または疾患のある骨を置換または強化するために、および歯科において義歯を固定するために、ならびに骨固定された補聴器をヒトまたは動物の骨格構造に固定するために、補綴物として用いてもよい。体組織のそれぞれの骨に結合されるインプラントの表面域は、滑らかなまたは粗い表面テキスチャーを有することができる。このような表面テキスチャーは公知であり、例えば、表面を機械的に、および/または酸で、および/または電解的に、および/またはグロー放電プラズマで、および/またはプラズマ溶射で処理することによって、および/または電気加工によって得ることができる。このような材料および方法は、種々の文献、例えば、B.O.Aronssonら、J.Biomed.Mater.Res.35(1997)、49ページ以降に記載されており、その内容を参照として本明細書に組み込む。
【0036】
pが3〜6、好ましくは3または4であり、nが4〜70、好ましくは4〜40、好ましくは4〜22である一般式(I)による化合物、その塩類またはエステル類またはアミド類は新規である。このような化合物の例は、ブタン−1,1,4−トリホスホン酸、ペンタン−1,1,5−トリホスホン酸、ペンタン−2,2,5−トリホスホン酸、ヘキサン−2,2,6−トリホスホン酸、ペンタン−1,1,5,5−テトラホスホン酸、ヘプタン−1,4,4,7−テトラホスホン酸、またはノナン−1,5,5,9−テトラホスホン酸である。
【0037】
ブタン−1,1,4−トリホスホン酸ヘキサイソプロピルおよびヘプタン−1,4,4,7−テトラホスホン酸オクタイソプロピルのそれぞれの化合物、これらの化合物の混合物は、アルカリ金属、好ましくはナトリウム、テトラ低級アルキルメチレンジホスホン酸エステル、好ましくはメチレンジホスホン酸テトライソプロピルが、活性水素原子を有しない有機溶媒、好ましくは乾燥ヘキサンまたはベンゼンまたはトルエンの存在下で、少なくとも化学量論的な量のジハロメタン、好ましくはジブロモメタンと反応して得られる。
【0038】
この反応は、一般に10〜48時間、好ましくは18〜36時間の時間内で反応が終了するまで、30℃〜125℃、好ましくは40℃〜110℃の範囲内の温度で行われることが好ましい。
【0039】
次いで、この反応生成物に、ジイソプロピル−3−ブロモプロパンと反応させたトリイソプロピルホスファイトの精製生成物を添加する。次いで、得られた化合物の混合物を、従来の方法、例えばカラムクロマトグラフィで分離することができる。
【0040】
類似の方法で、1,4−ジブロモブタンを過剰の範囲のモル比1:6〜1:0.5でトリイソプロピルホスファイトと反応させることによって、意外にも新しい化合物、ペンタン−1,1,5−トリホスホン酸ヘキサイソプロピルおよびノナン−1,5,5,9−テトラホスホン酸オクタイソプロピルが生成される。さらに、類似の方法で、3−ブロモプロピルホスホン酸ジイソプロピルを当量のエタン−1,1−ジホスホン酸テトライソプロピルと反応させることによって、ペンタン−2,2,5−トリホスホン酸ヘキサイソプロピルおよびペンタン−2,2,6−トリホスホン酸ヘキサイソプロピルを得た。
【0041】
この方法はさらに、これらの生成物を、1〜12時間、好ましくは1〜6時間からなる時間、過剰のモルのHCl中でそれらを還流することによって類似の酸類を生成する加水分解によって特徴づけられる。次いで、化合物をP25で真空下に乾燥させることが好ましい。
【0042】
以下の実施例は、本発明を説明するが、これを限定することはない。
【0043】
実施例1(アルカンポリホスホン酸の合成)
米国特許第3,400,176号明細書、B.A.Arbusov,Pure Appl.Chem.9(1967)、307〜353ページ、およびその中の引例に従って、メチレンジホスホン酸を合成した。NMR(1H、31P、13C)、質量分光法による元素分析、およびその融点によって化合物を同定した。これらのデータすべては、O.T.Quimbyらの文献、Metalated methylendiphosphonate esters, preparation, characterization and synthesis applications、J.of Organomet.Chem.13、199〜207(1968)と一致した。
【0044】
プロパン−1,1,3,3−テトラホスホン酸を、メチレンジホスホン酸テトライソプロピルから合成した。テトラホスホン酸溶液を真空下に濃縮し、真空下にP25で乾燥させた。1H、31P、および13CのNMRの結果(D2O)は、所定の文献データと一致した。
【0045】
類似の方法で、プロパン−1,3−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、ブタン−1,1,4−トリホスホン酸、ペンタン−1,1,5−トリホスホン酸、ペンタン−2,2,5−トリホスホン酸、ヘキサン−2,2,6−トリホスホン酸、ペンタン−1,1,5,5−テトラホスホン酸、またはヘプタン−1,4,4,7−テトラホスホン酸を合成した。
【0046】
実施例2
A)直径4mm、長さ10mmを有するスクリューの形状のチタン製の歯科用インプラントを従来の方法で製造した。体内に植え込まれる表面には、EP0 388 575に従って、平均粒径0.25〜0.5mmを用いて表面をサンドブラストした後、比が2:1:1の塩酸/硫酸/水の混合物を含有する水性酸性混合物の混合物で約80℃の温度下、約5分間処理することによって、0.15MのNaClによる水性電解液中でボルタメトリ法で測定すると、研磨表面に比べて約3.6倍粗いインプラントの表面が得られた。次いで、インプラントの表面を窒素プラズマで化学処理し、B.−O.Aronssonら、J.Biomed.Mater.Res.35(1997)、49ページ以降に記載されたチタン窒化物表面を得た。処理したインプラントのそれぞれの表面を15分間、30℃下に2回蒸留水中で超音波処理し、純水で洗浄した後、水中で(3回)10分間、超音波処理し、次いで純へキサンですすぎ洗いをし、真空(10mmHg、室温)下で乾燥させた。
【0047】
B)次いで、上記のA)において製造したインプラントを(i)メチレンジホスホン酸[蒸留水10ml当たり1.5×10-3mol]、(ii)エタン−1,1,2−トリホスホン酸[蒸留水中、6.2×10-4mol/10ml]、(iii)ペンタン−1,1,5−トリホスホン酸[蒸留水中、1.2×10-4mol/10ml]、(iv)ペンタン−1,1,5−トリホスホン酸カリウム塩[蒸留水中、1.2×10-4mol/10ml]の水溶液に入れ、室温下に15分間、放置した。次いで、インプラントを純水ですすぎ洗いをした。
【0048】
製法B(i)、B(ii)、B(iii)、およびB(iv)に従って調製されたインプラントを、子ブタの上顎に植え込んだ。骨結合していた顎からインプラントを外すために必要なトルクとして骨結合を測定した。比較試験の結果を未処理インプラントについて示した。結果を表1に示す。類似の結果を本明細書の上記の別のホスホン酸について得た。XPSおよびToF−SIMSによる分析は、分子(単)層がインプラント表面上およびチタン窒化物表面上に形成され、表面の粗さがこの挙動に影響しそうにないことを示した。
【0049】
【表1】

【0050】
この結果は、未処理インプラントに比べて、本発明によるインプラントの骨結合の改善を示している。
【0051】
実施例3
インプラントの最初のチタン表面がアルゴングロー放電プラズマ中のメタンで処理して、チタン炭化物の表面を得た点を除いて、実施例2を繰り返した。処理は、B.O.Aronssonら、J.Biomed.Mater.Res.35(1997)、49ページ以降に記載されたとおりに行った。表1に示したものと類似の試験結果が得られた。
【0052】
実施例4
インプラントがジルコニウムで製造され、ジルコニウム酸化物表面を有するとともに、式(I)に記載の化合物が、グリシン分子のアミン末端をホスホン酸塩基の1つに結合することによって改変されているエタン−1,1,3−トリホスホン酸である点を除いて、実施例2を繰り返した。表1に示した類似の試験結果が得られた。
【0053】
実施例5
式(I)に記載の化合物が、GRGDS細胞結合ポリペプチドのアミン末端をホスホン酸塩基の1つに結合することによって改変されているエタン−1,1,3−トリホスホン酸である点を除いて、実施例2および3を繰り返した。表1に示した類似の試験結果が得られた。
【0054】
実施例6
式(I)に記載の化合物が、ヒト骨形態形成タンパク質2型(BMP−2)のアミン末端(メチオニン)をホスホン酸塩基の1つに結合することによって改変されているエタン−1,1,3−トリホスホン酸である点を除いて、実施例2および3を繰り返し、表1に示したのと類似の試験結果を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトまたは動物の骨に適用される骨内インプラントであって、前記インプラントは、選択された金属もしくは選択された金属合金またはセラミックで製造された表面を有し、前記金属、金属合金のそれぞれが、クロム、ニオブ、タンタル、バナジウム、ジルコニウム、アルミニウム、コバルト、ニッケル、ステンレス鋼、またはその合金から選択され、前記表面は滑らかなまたは粗いテキスチャーを有し、
前記表面が、少なくとも1つのホスホン酸基、またはその誘導体であって、好ましくは薬学的に許容されるそのエステル、アミドまたは塩、を保有する少なくとも1つの薬学的に許容される有機化合物で処理されていることを特徴とするインプラント。
【請求項2】
インプラントの表面が、クロム、ニオブ、タンタル、バナジウム、ジルコニウム、アルミニウム、コバルト、ニッケル、ステンレス鋼、またはその合金の酸化物表面、炭化物表面、窒化物表面、酸窒化物表面、炭窒化物表面、または酸炭化物表面から選択されるセラミックで製造されることを特徴とする、請求項1に記載のインプラント。
【請求項3】
インプラントの表面が、チタン炭化物、チタン窒化物、チタン酸窒化物、チタン炭窒化物および/またはチタン酸炭化物で製造されることを特徴とする、請求項1に記載のインプラント。
【請求項4】
インプラントの表面が、金属酸化物、好ましくはアルミニウム酸化物またはジルコニウム酸化物またはケイ素酸化物で製造され、好ましくはアパタイト類、好ましくはヒドロキシアパタイトまたはフルオロアパタイト、またはアパタイト状材料、好ましくはトリカルシウムリン酸塩、またはブラッシュ石型層で製造されることを特徴とする、請求項1に記載のインプラント。
【請求項5】
インプラントの表面が、ガラス状材料、好ましくはケイ酸ガラスまたはホウ素シリカガラスまたはバイオガラスで製造されることを特徴とする、請求項1に記載のインプラント。
【請求項6】
インプラントの表面が、一般式(I):
A−[P(O)(OH)2p (I)
(式中、AはA1またはA2を意味し、
1は、n個の炭素原子を有する直鎖状、分枝鎖状または環状の、飽和または不飽和の炭化水素残基の残基であり、前記残基はヒドロキシルおよび/またはカルボキシルによって置換され、および場合により1つ以上の酸素原子および/またはイオウ原子および/または窒素原子によってさらに中断されていてもよく、p個のホスホン酸基を保有し、ここで
nは1〜70、好ましくは1〜40、好ましくは1〜22の数であり、
pは1、2、3、4、5、または6、好ましくは1、2、3、4、または5、好ましくは1、2、3、または4であるか;あるいは
AはA2を意味し、
2は、アミノ酸の残基またはタンパク質もしくはポリペプチドのそれぞれのアミノ酸配列の残基、好ましくはトランスフォーミング成長因子ベータ(TGF−β)のスーパーファミリーの残基であり;または特定の薬物分子の残基であり、ここで
各残基A2がp個のホスホン酸基を保有し、
2がアミノ酸の残基またはタンパク質もしくはポリペプチドのそれぞれのアミノ酸配列の残基であるとき、pは1〜6、好ましくは1、2、3、または4、好ましくは1、2、または3であり;または
2は本来いかなるホスホン基も有さず、場合によりA1に対して示された定義に属する特定の薬物分子の残基であるとき、pは1、2、3、4、5、または6、好ましくは1、2、または3、好ましくは1である)、
または薬学的に許容されるその誘導体であって、好ましくは薬学的に許容されるそのエステル、アミドまたは塩、に対応する少なくとも1つの有機化合物、またはこの化合物の混合物で処理されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項7】
AがA1の意味を有する場合、nが1であり、pが2であるとき、Aは−CH2−であり;またはnが1であるとき、pは3または4、好ましくは3であり;またはnが2〜10であるとき、各ホスホン酸基またはその誘導体、好ましくはホスホン酸エステル基が同じ分子内の異なる炭素原子に結合されているという条件で、pは2であり;またはnが2〜10であるとき、pは3、4、5、または6、好ましくは3、4、または5、好ましくは3または4であり;またはnが11〜70であるとき、pは2、3、4、5、または6、好ましくは2、3、4、または5、好ましくは2、3、または4である、請求項6に記載のインプラント。
【請求項8】
AがA2の意味を有する場合、A2は本来いかなるホスホン基も有さず、場合によりA1に対して示された定義に属する特定の薬物分子の残基である場合には、pは1または3〜6、好ましくは1である、請求項6に記載のインプラント。
【請求項9】
1が式−(Cn2n+2-p)−[式中、nは1〜70、好ましくは1〜40、好ましくは1〜22を意味する]の飽和炭化水素残基である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項10】
式(I)の化合物がアルカリ塩、好ましくはナトリウム塩またはカリウム塩であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項11】
式(I)の化合物が、モノホスホン酸、好ましくはメタンホスホン酸、エタンホスホン酸、プロパンホスホン酸、またはポリホスホン酸、好ましくはメチレンジホスホン酸、エタン−1,2−ジホスホン酸、プロパン−1,3−ジホスホン酸、プロパン−1,3−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、ブタン−1,1,4−トリホスホン酸、ペンタン−1,1,5−トリホスホン酸、ペンタン−2,2,5−トリホスホン酸、ヘキサン−2,2,6−トリホスホン酸、ペンタン−1,1,5,5−テトラホスホン酸、ヘプタン−1,4,4,7−テトラホスホン酸、プロパン−1,1,3,3−テトラホスホン酸、またはノナン−1,5,5,9−テトラホスホン酸から、または不飽和モノホスホン酸およびポリホスホン酸から選択されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項12】
薬学的に許容されるエステルが、ホスホン酸イソプロピルまたはホスホン酸エチルエステルであることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項13】
エステルが、メチレンジホスホン酸テトライソプロピル、エタン−1,1,2−トリホスホン酸ヘキサエチル、ブタン−1,1,4−トリホスホン酸ヘキサイソプロピル、ペンタン−1,1,5−トリホスホン酸ヘキサイソプロピル、ペンタン−2,2,5−トリホスホン酸ヘキサイソプロピル、ヘキサン−2,2,6−トリホスホン酸ヘキサイソプロピル、プロパン−1,1,3,3−テトラホスホン酸オクタイソプロピル、ヘプタン−1,4,4,7−テトラホスホン酸オクタイソプロピル、ノナン−1,5,5,9−テトラホスホン酸オクタイソプロピルの群から選択されることを特徴とする、請求項12に記載のインプラント。
【請求項14】
式(I)の化合物が、成長因子のスーパーファミリーのメンバーによって規定されたトランスフォーミング成長因子ベータ(TGF−β)、好ましくはTGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4、およびTGF−β5を表し、ここでつねにぺプチド鎖が少なくとも1つのアルキルホスホン酸基、またはその誘導体であって、好ましくはそのエステル、アミドまたは塩、を含むように改変されている、請求項1に記載のインプラント。
【請求項15】
式(I)の化合物が、骨形態形成タンパク質(BMP)、好ましくはBMP−2(BMP−2a)、BMP−3、BMP−4(BMP−2b)、BMP−5、BMP−6、BMP−7(OP−1)、BMP−8(OP−2)、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、BMP−13を表し、ここでペプチド鎖が少なくとも1つのアルキルホスホン酸基、またはその誘導体であって、好ましくはそのエステル、アミドまたは塩、を含むように改変されている、請求項1に記載のインプラント。
【請求項16】
式(I)の化合物、が2−アミノ−4,4−ビス−(ジエトキシ−ホスホリル)−酪酸、2−アミノ−5−(ジエトキシ−ホスホリル)−ペンタン酸、および/または2−アミノ−4−ホスホノ酪酸から選択される、請求項1に記載のインプラント。
【請求項17】
式(I)の化合物が、主要な20種のアミノ酸、好ましくはアルギニン、グリシン、アスパラギン酸、アラニン、バリン、プロリン、セリン、スレオニン、システイン、またはリジンの1つから選択され、そのアミノ酸が少なくとも1つのアルキルホスホン酸基、またはその誘導体であって、好ましくはそのエステル、アミドまたは塩、を含むように改変されている、請求項1に記載のインプラント。
【請求項18】
式(I)の化合物が、RGD含有ペプチド、好ましくは、少なくとも1つのアルキルホスホン酸基、またはその誘導体であって、好ましくはそのエステル、アミドまたは塩、を含むように改変されているRGDSペプチド、GRGDSペプチド、RGDVペプチド、RGDEペプチド、および/またはRGDTペプチドである、請求項1に記載のインプラント。
【請求項19】
式(I)の化合物が、1−ヒドロキシ−3−(1−ピロリジニル)−プロピリデンジホスホン酸、シクロヘプチルアミノメチレンジホスホン酸、1−ヒドロキシ−2−イミダゾ−(1,2−a)−ピリジン−3−イル−エチリデンジホスホン酸、1−ヒドロキシ−2−(3−ピリジニル)−エチリデンジホスホン酸、(4−クロロフェニル)チオ−メチレンジホスホン酸、1−ヒドロキシ−2−(1H−イミダゾール−1−イル)エチリデンジホスホン酸、および関連する化合物から選択される、請求項1に記載のインプラント。
【請求項20】
前記表面が、薬学的に許容される少なくとも1つの式(I)の有機化合物またはその塩もしくはエステルもしくはアミドで処理されることを特徴とする、請求項1〜19のいずれか一項に記載のインプラントを製造するための方法。
【請求項21】
スクリュー、プレート、釘、ピン、および特別に形成された部品の形状における請求項1〜20のいずれか一項に記載のインプラントであって、医療、より具体的には、整形外科において損傷または疾患のある骨を置換または強化するために、および歯科において義歯を固定するために、または骨固定された補聴器をヒトまたは動物の骨格構造に固定するために、補綴物として用いることができるインプラント。
【請求項22】
前記インプラントが、プラスチックまたは金属のパッケージング材料、好ましくは場合により排気され、または不活性気体もしくは不活性液体で充填された気密パッケージングで包装されていることを特徴とする、請求項21に記載のインプラント。
【請求項23】
前記パッケージングが、無機塩および/または式(I)の化合物またはその塩もしくはエステルを、好ましくは水の約1.0×10-5mol/10ml〜5×10-2mol/10ml、好ましくは約5×10-4mol/10ml〜2.0×10-2mol/10mlの濃度で含有する純水で充填されていることを特徴とする、請求項22に記載のインプラント。
【請求項24】
pが3〜6、好ましくは3または4であり、nが4〜70、好ましくは4〜40、好ましくは4〜22である、請求項1〜19のいずれか1つの請求項に記載の式(I)に記載の化合物、その塩またはエステル。
【請求項25】
ブタン−1,1,4−トリホスホン酸、ペンタン−1,1,5−トリホスホン酸、ペンタン−2,2,5−トリホスホン酸、ヘキサン−2,2,6−トリホスホン酸、ペンタン−1,1,5,5−テトラホスホン酸、ヘプタン−1,4,4,7−テトラホスホン酸、またはノナン−1,5,5,9−テトラホスホン酸、その塩またはエステルまたはアミドである、請求項24に記載の化合物。
【請求項26】
対応するエステルを酸の存在下で加水分解することを特徴とする、請求項24および25に記載のそれらの酸の形態の化学化合物を製造するための方法。

【公開番号】特開2010−162363(P2010−162363A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−61275(P2010−61275)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【分割の表示】特願2002−542445(P2002−542445)の分割
【原出願日】平成13年11月19日(2001.11.19)
【出願人】(502151956)ユニヴェルシテ・ドゥ・ジュネーブ (5)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE GENEVE
【出願人】(503183293)ウペエフエル・エコル・ポリテクニック・フェデラル・ドゥ・ローザンヌ (11)
【氏名又は名称原語表記】EPFL ECOLE POLYTECHNIQUEFEDERALE DE LAUSANNE
【Fターム(参考)】