説明

骨同化作用を有するタンパク質のための薬物送達方法

本発明は、副甲状腺ホルモン関連タンパク質(PTHrP)アナログを含有する保存安定組成物、ならびに骨粗鬆症を治療するため、骨質量を増やすため、または骨の質を増大させるためのPTHrPアナログおよび本明細書に記載のPTHrP組成物を使用する方法を提供する。該組成物は、滅菌形態で保存安定性であり、一般に、室温で少なくとも数週間保存され得、ヒト患者への簡便な非経口投与が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2006年10月3日に出願された米国特許仮出願第60/848,960号の恩恵を主張する。上記出願の全教示は、本明細書中に参照によって援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
副甲状腺ホルモン関連タンパク質(「PTHrP」)は、139〜173アミノ酸タンパク質である。PTHrPおよび特定のアナログは、骨粗鬆症および関連障害の治療において骨量および骨の質の向上に有用であることが公知である。しかしながら、薬剤としてのこれらのタンパク質の商業的使用には、保存安定性および調製の容易さに関して許容され得る製剤の開発が必要である。
【0003】
さらに、現在利用可能な骨粗鬆症薬は、高カルシウム血症および骨吸収の刺激の増加などの望ましくない副作用のために、適切な用量範囲に制限がある。これらの望ましくない副作用およびその結果生じる用量制限により、これらの薬物により達成され得る有益な効果が減少する。従って、望ましくない副作用を増加することなく有益な効果を増加させる用量で投与可能な化合物について必要性がある。
【発明の概要】
【0004】
(発明の概要)
本発明は、骨粗鬆症を治療するため、骨量を増加するためまたは骨の質を増加するための、副甲状腺ホルモン関連タンパク質(PTHrP)アナログを含む保存安定性の組成物、ならびに本明細書に記載の該アナログおよび該アナログを含む組成物の使用方法を提供する。該組成物は、滅菌形態で保存安定性であり、一般に室温で少なくとも数週間保存され得、ヒト患者への簡便な非経口投与が可能になる。
【0005】
一態様において、本発明は被検体(例えば、ヒト)への投与に適当な保存安定性組成物を提供する。該組成物は、PTHrPアナログおよび該組成物のpHを2〜7に維持するための有効量のバッファを含む。特定の態様において、PTHrPは[Glu22,25、Leu23,28,31、Aib29、Lys26,30]hPTHrP(1〜34)NH2(配列番号:2)である。
【0006】
別の態様において、本発明は被検体への投与に適当な保存安定性組成物を含む密封容器を提供する。該組成物は、PTHrPまたはそのアナログおよび該組成物のpHを2〜7に維持するための有効量のバッファを含む。特定の態様において、PTHrPアナログは[Glu22,25、Leu23,28,31、Aib29、Lys26,30]hPTHrP(1〜34)NH2(配列番号:2)である。
【0007】
別の態様において、本発明は、PTHrPまたはそのアナログおよび組成物のpHを2〜7に維持するための有効量のバッファを含む保存安定性組成物を含む、1つまたは1つより多くのの単回使用容器を含む薬物送達デバイスを提供する。特定の態様において、PTHrPアナログは[Glu22,25、Leu23,28,31、Aib29、Lys26,30]hPTHrP(1〜34)NH2(配列番号:2)である。
【0008】
別の態様において、本発明は、PTHrPまたはそのアナログおよび組成物のpHを2〜7に維持するための有効量のバッファを含む保存安定性組成物を含む、1つまたは1つより多くのの反復使用容器を含む薬物送達デバイスを提供する。特定の態様において、PTHrPアナログは[Glu22,25、Leu23,28,31、Aib29、Lys26,30]hPTHrP(1〜34)NH2(配列番号:2)である。
【0009】
別の態様において、本発明は、被検体の治療に充分な時間、典型的には約3ヶ月〜36ヶ月、40〜160μgの量の単回皮下日用量の[Glu22,25、Leu23,28,31、Aib29、Lys26,30]hPTHrP(1〜34)NH2(配列番号:2)を被検体に投与する工程を含む、治療を必要とする被検体における骨粗鬆症の治療方法を提供する。ある態様において、治療期間は約3ヶ月〜18ヶ月である。
【0010】
別の態様において、本発明は、被検体の治療に充分な時間、典型的には3ヶ月〜36ヶ月、40〜160μgの量の単回皮下日用量の[Glu22,25、Leu23,28,31、Aib29、Lys26,30]hPTHrP(1〜34)NH2(配列番号:2)を被検体に投与する工程を含む、治療を必要とする被検体における骨量の増加または骨の質の増加の方法を提供する。ある態様において、治療期間は約3ヶ月〜18ヶ月である。
【0011】
本発明のPTHrPおよびアナログの組成物は、ホルモン組成およびホルモン活性に関して、保存安定性を発揮する。さらに、これらの組成物は、高カルシウム血症または骨吸収の刺激などの望ましくない副作用を低減または排除して、一般に、現在利用可能な骨粗鬆症薬よりも高用量で投与可能である。このことは、用量の増加による有益な生理学的効果の増加という利点を有し、治療期間の長さの減少をもたらし得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、全く化学安定剤なしで、5℃および25℃で24ヶ月にわたる配列番号:2の安定性を示すグラフである。
【図2】図2は、5℃ 25℃および40℃で24ヶ月にわたる凍結乾燥した配列番号:2の安定性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(発明の詳細な説明)
天然のhPTHrP(1〜34)の配列は以下の通りである:
Ala Val Ser Glu His Gln Leu Leu His Asp Lys Gly Lys Ser Ile Gln Asp Leu Arg Arg Arg Phe Phe Leu His His Leu Ile Ala Glu Ile His Thr Ala (配列番号:1)。
【0014】
特定の態様において、PTHrPアナログは[Glu22,25、Leu23,28,31、Aib29、Lys26,30]hPTHrP(1〜34)NH2(配列番号:2)である。
【0015】
第6,921,750号、5,955,574号、6,544,949号、5,723,577号および5,696,095号には他のPTHrPアナログが記載されており、それぞれの全内容は参照によって本明細書中に援用される。
【0016】
本明細書において使用する場合、「バッファ」は、薬学的に許容され得、本発明の組成物を所望のpH範囲に維持し得る任意の酸または塩の組合せである。開示される組成物中のバッファは、約2〜約7、約3〜約6、約4〜約6、約4.5〜約5.6の範囲または約5.1にpHを維持する。適切なバッファとしては、上記のpH範囲を維持し得る任意の薬学的に許容され得るバッファ、例えば酢酸、酒石酸 リン酸またはクエン酸バッファなどが挙げられる。一態様において、バッファは酢酸または酒石酸バッファである。別の態様において、バッファは酢酸バッファである。一態様において、バッファは酢酸および酢酸ナトリウムである。
【0017】
開示される組成物において、バッファの濃度は、通常約0.1mM〜約1000mM、約0.2mM〜約200mM、約0.5mM〜約50mM、約1mM〜約10mMの範囲または約6mMである。
【0018】
本明細書で使用する場合、抗菌剤は、本発明の組成物中の、例えばバクテリア、ウイルスおよび真菌を含む増殖または微生物を阻害、予防または遅延する、被検体への投与に適した薬学的に許容され得る保存料である。本発明の組成物および方法における使用に適切な抗菌剤としては、限定されないが、クレゾール、ベンジルアルコール、フェノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロロブタノール、フェニルエチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、チオメルサールおよび硝酸フェニル水銀および酢酸フェニル水銀が挙げられる。一態様において、抗菌剤はm-クレゾール、クロロクレゾールまたはフェノールである。別の態様において、抗菌剤はクロロクレゾールまたはフェノールである。別の態様において、抗菌剤はフェノールである。
【0019】
本明細書で使用する場合、抗菌剤の有効量は、本発明の組成物中の、例えばバクテリア、ウイルスおよび真菌を含む増殖または微生物を阻害、予防または遅延するのに有効な量である。本発明の組成物において、抗菌剤の量は、典型的には約0.1〜約20mg/ml、約0.2〜約30mg/ml、約0.2〜約10mg/ml、約0.25〜約5mg/ml、約0.5〜約50mg/ml、約1〜約10mg/mlの範囲、約3mg/mlまたは約5mg/mlである。
【0020】
本発明の組成物は、典型的に、投与の用意ができた、投与前に再構成する必要のない滅菌、保存安定性および薬学的に許容され得る水溶液である。本発明の組成物は被検体への投与に適切であり、これは該組成物が薬学的に許容可能で非毒性であり、ペプチドの生物学的効果またはホルモン効果に不利に作用するようないかなる成分も含まないことを意味する。本発明の組成物は、例えばどのような細胞も含まない。
【0021】
本明細書で使用する場合、PTHrPの量、純度が、以下の条件:(1) 5℃で2年間にわたり保存;または(2) 25℃で30日間にわたり保存の一方で元の量の約95%よりも高く維持されている場合、本発明の組成物は保存安定性である。
【0022】
該組成物は、通常、典型的に長期間の保存に適切な密封容器、バイアルまたはカートリッジ中に保存される。「長期間の保存に適切」とは、バイアル、容器またはカートリッジを少なくとも3ヶ月間25℃で維持した場合に、本発明の組成物の内容物を漏らさない、または微生物などの外部成分の侵入を許容しないことを意味する。
【0023】
本発明の組成物は、好ましくは注射、典型的には皮下注射で投与される。
【0024】
本発明の組成物は、単回用量または反復用量の密封容器、バイアルまたはカートリッジに保存することができる。典型的には、密封容器、バイアルまたはカートリッジは、典型的に患者が自分自身でペプチドを投与し得る単回もしくは反復用量注射ペンまたは薬物送達デバイスを用いた使用に適切である。密封容器には、1回以上の用量の本発明のペプチドが含まれ得、それぞれの用量が本明細書に記載されるペプチドの有効量を含む。
【0025】
単回用量注射ペンまたは薬物送達デバイスは、典型的に、本明細書に記載される組成物中に単回用量の有効量のPTHrPを含む密封容器を使用する、使い捨てデバイスである。反復用量注射ペンまたは薬物送達デバイスは、典型的に、本明細書中に記載される組成物中に1回より多くの用量の有効量のそのPTHrPを含む。反復用量ペンは、典型的に、所望の容量の、本明細書に記載される保存安定性組成物を投与するように調整することができる。特定の態様において、反復用量注射ペンは、一本の針を多数回使用することで生じ得る微生物夾雑物の侵入が容器またはカートリッジ内に入ることを防ぐ。
【0026】
本明細書で使用する場合、注射ペンはまた2つの容器を含み得、そのうちの1つの容器が以下に記載されるような凍結乾燥粉末状の本明細書に記載されるPTHrPを含み、第2の容器が凍結乾燥粉末の再構成用の液体を含む。2つの容器の内容物は投与の前に混合することができる。
【0027】
上述のように、本発明の組成物は注射により投与され得る。本発明の組成物の注射に適切な容量としては、約0.5〜約1ml、約0.1〜約1ml、約0.02〜約0.04ml、約0.1〜約5.0μl、または約0.1〜約1.0μlが挙げられる。
【0028】
本発明の組成物において、ペプチドの濃度は約20mg/ml〜約20,000mg/ml、約100mg/ml〜約10,000mg/ml、約300mg/ml〜約300mg/ml、約500mg/ml〜約2000mg/mlおよび約2mg/mlである。
【0029】
また、本発明の組成物は、当該技術分野で公知の凍結乾燥技術を用いて凍結乾燥することができ、投与前に再構成可能な粉末として保存することができる。用語「凍結乾燥」は、本明細書で使用する場合、フリーズドライすることであるか、または組成物が凍結された状態にある際に典型的に高真空下で昇華させることによる、組成物または本発明からの溶媒、好ましくは水混和性の溶媒、より好ましくは水の除去に関する脱水技術である。典型的には、凍結乾燥は、可変性温度制御を有する乾燥チャンバー、水を回収する冷却器および乾燥チャンバー内を減圧するための減圧システムを備えた凍結乾燥設備(凍結乾燥機)中で実行される。
【0030】
用語「凍結乾燥組成物」は、本明細書で使用される場合、上記の凍結乾燥法の後に作製されるか残留する、固体残渣または粉末を意味する。本発明の凍結乾燥組成物は、典型的には、さらに薬学的に許容され得る賦形剤を含む。用語「薬学的に許容され得る賦形剤」は、本明細書で使用される場合、凍結乾燥前に溶液に添加されて凍結乾燥ケーキの色、質感、強度および体積などの特性を高める物質のことをいう。薬学的に許容され得る賦形剤は、例えば、バッファおよびpH調整剤、結晶性バルク賦形剤、安定剤、および張性増加剤であり得る。
【0031】
特定の好ましい態様において、薬学的に許容され得る賦形剤は、結晶性バルク賦形剤である。用語「結晶性バルク賦形剤」または「結晶性バルク剤」は、本明細書で使用する場合、凍結乾燥ケーキに嵩および構造をもたらす賦形剤を意味する。これらの結晶性バルク剤は不活性であり、ペプチドとは反応しない。また、結晶性バルク剤は凍結乾燥条件下で結晶化し得る。
【0032】
適切な結晶性バルク剤の例としては、水溶性ポリマーなどの親水性賦形剤;マンニトール、ソルビトール、キシリトール、グルシトール、ズシトール(ducitol)、イノシトール(inositiol)、アラビニトール、アラビトール、ガラクチトール、イジトール、アリトール、マルチトール、フルクトース、ソルボース、グルコース、キシロース、トレハロース、アロース、デキストロース、アルトロース、ラクトース、グルコース、フルクトース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、スクロース、マルトース、ラクトース、ラクツロース、フコース、ラムノース、メレジトース、マルトトリオース、ラフィノース、アルトリトール、それらの任意の活性形態(D-またはL-型)および対応するラセミ体などの糖;乳酸塩、グルコン酸塩、グリセリルホスフェート、クエン酸塩、一塩基および二塩基性リン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩および酒石酸塩などのカルシウム塩、ならびにアルミニウムおよびマグネシウムの同様の塩などの無機塩、ミネラルおよびミネラル有機体の両方;従来の単糖類および二糖類ならびに対応する多価アルコールなどの炭水化物;アルブミンなどのタンパク質;グリシンなどのアミノ酸;乳化脂肪およびポリビニルピロリドンが挙げられる。好ましい結晶性バルク剤は、グリシン、マンニトール、デキストラン、デキストロース、ラクトース、スクロース、ポリビニルピロリドン、トレハロース、グルコースおよびそれらの組合せからなる群より選択される。特に有用なバルク剤としてはデキストランが挙げられる。
【0033】
本明細書で使用する場合、安定剤は、ペプチドの化学的、生物学的またはホルモン安定性を維持する組成物である。安定剤の例としては、糖類、好ましくは単糖または二糖、例えばグルコース、トレハロース、ラフィノース、またはスクロース;例えばマンニトール、ソルビトールまたはイノシトールなどの糖アルコール、グリセリンもしくはプロピレングリコールなどの多価アルコールまたはそれらの混合物を含むポリオールおよびアルブミンが挙げられる。
【0034】
本明細書に記載される組成物を使用して、被検体における骨成長を刺激することができる。従って、該組成物は、骨粗鬆症および骨折などの骨成長の欠失に関連する疾患または障害の治療に有用である。一態様において、本発明は、有効量の本明細書に記載される組成物を被検体に投与する工程を含む、被検体における骨粗鬆症の治療方法である。
【0035】
本明細書で使用される場合、「治療」は、予防的な処置および治療的な処置の両方を含み得る。例えば、治療的な処置は、骨粗鬆症の進行の遅延 阻害または予防、骨粗鬆症に関する症状の軽減または排除を含み得る。予防的な処置は、骨粗鬆症の開始の予防、阻害または遅延を含み得る。
【0036】
本明細書で使用する場合、有効量とは、所望の応答を発揮するのに充分な量のことをいう。本発明において、所望の生物学的応答とは、被検体の骨損失の割合の減少および/または骨量もしくは骨の質の増加のことである。
【0037】
本発明の組成物および方法での使用に適した用量としては、約40〜約160μg、約80〜約120μg 約80〜約100μg;または約40〜約50μg、約50〜約60μg、約60〜約70μg、約70〜約80μg、約80〜約90μg、約90〜約100μg、約100〜約110μg、約110〜約120μg、約120〜約130μg、約130〜約140μg、約140〜約150μg、約150〜約160μg;または40〜約45μg、約45〜約50μg、約50〜約55μg、約55〜約60μg、約60〜約65μg、約65〜約70μg、約70〜約75μg、約75〜約80μg、約80〜約85μg、約85〜約90μg、約90〜約95μg、約95〜約100μg、約100〜約105μg、約105〜約110μg、約110〜約115μg、約115〜約120μg、約120〜約125μg、約125〜約130μg、約130〜約135μg、約135〜約140μg、約140〜約145μg、約145〜約150μg、約150〜約155μg、約155〜約160μgが挙げられ、1日に1回、2日に1回、1週間に2回1週間に1回、2週間に1回、1ヶ月に1回投与される。投与は脈注射、例えば1ヶ月に1回であり得、本明細書に記載される組成物の単回用量の脈放出を生じる。
【0038】
上述の用量が1日に1回、1週間に1回等で投与される場合、典型的には用量は同じ量である。
【0039】
本明細書で使用される場合、被検体は動物、例えばヒトなどの哺乳動物であり得る。
【0040】
薬学的に許容され得る塩は、ヒトなどの被検体への投与に適した塩である。本発明のペプチドは、適当な有機または無機塩基と反応して塩基付加塩を形成し得る充分に酸性の1つ以上のプロトンを有し得る。塩基付加塩としては、アンモニウムまたはアルカリまたはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩などの無機塩基、ならびにアルコキシド、アルキルアミド、アルキルおよびアリールアミンなどの有機塩基に由来のものが挙げられる。従って、本発明の塩の調製に有用なかかる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸カリウム等が挙げられる。アミンなどの充分な塩基性基を有する本発明のペプチドは、有機または無機酸と反応して酸付加塩を形成し得る。塩基性基を用いて化合物から酸付加塩を形成するために一般に使用される酸は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸等の無機酸、およびp-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、p-ブロモフェニル-スルホン酸、カルボン酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、酢酸等の有機酸である。かかる塩の例としては、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、リン酸塩、一水素リン酸塩、二水素リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソブチル酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオール酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン-1,4-ジオン酸塩、ヘキシン-1,6-ジン酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、γ-ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、マンデル酸塩等が挙げられる。
【0041】
本発明の組成物は、典型的には、高カルシウム血症などの副作用を何ら示さないかまたは低減された副作用を示し、典型的には、上記の用量で、骨吸収の刺激を増加しない。この副作用の減少により、市販される骨粗鬆症薬よりも高用量の投与が可能になる。
【0042】
本発明の組成物は、本明細書に記載のように注射によって投与可能である。
【0043】
本発明の組成物は単独で、または再吸収阻害療法剤、例えばビスホスホネートおよびカルシトニンなどのさらなる治療剤と併用して投与してもよい。
【実施例】
【0044】
実施例1は、安定剤なしで、低酢酸濃度(1mM)でのGlu22,25、Leu23,28,31、Aib29、Lys26,30]hPTHrP(1〜34)NH2(配列番号:2)の安定性を示す。
【0045】

【0046】
製剤は0.1mlあたり100mcgの (配列番号:2)を送達した。(配列番号:2)を希酢酸バッファを含む注射用水に溶解し、pHを5.1にして使用した。
【0047】
図1に示すように、結果から、5℃で24ヶ月にわたり、優れた化学安定性が認められる。この溶液は、安定剤または保存料を含まず、6mMの酢酸バッファのみを含む。
【0048】
(配列番号:2)についてまとめると、溶液に良好な安定性を付与するために、安定剤は必要ない。
【0049】
実施例2: (配列番号:2)の凍結乾燥形態におけるクエン酸バッファの使用。
【0050】

【0051】
表2の溶液をNaCl 0.9%で再構成して:
(200μl〜1.6mlの注射により)10〜80μg/日の用量を提供する2ml(=50μg/ml)の1つのバイアル、または
(250μl〜2mlの注射により)5〜40μg/日の用量を提供する5ml(=20μg/ml溶液)の1つのバイアルを得た。
【0052】
クエン酸を使用してpHを調整し、凍結乾燥の際にケーキ形成を補助するバルク剤を提供するためにデキストランを使用した。
【0053】
記載された溶液をガラスバイアル中で凍結乾燥し、種々の温度で24ヶ月まで保存した。種々の保存時間で取り出した試料で、[Glu22,25、Leu23,28,31、Aib29、Lys26,30]hPTHrP(1〜34)NH2(配列番号:2)の含有量、純度および物理的性質の試験を行った。ペプチド濃度について、結果を残存%で図2に示す。図2のデータは、2〜8℃で24ヶ月にわたり優れた安定性を示す。
【0054】
実施例3: 種々の保存料を比較するためのGlu22,25、Leu23,28,31、Aib29、Lys26,30]hPTHrP(1〜34)NH2(配列番号:2)の製剤のスクリーニング
以下の表3より、メチルパラベン(Methyparaben)およびベンジルアルコールは、沈殿および/または保存料の活性の不活性化が見られたので、Glu22,25、Leu23,28,31、Aib29、Lys26,30]hPTHrP(1〜34)NH2(配列番号:2)と共に使用するには適切な保存料ではないと示される。
【0055】

【0056】
有効な抗菌活性について推奨される濃度で種々の異なる保存料を添加して、[Glu22,25、Leu23,28,31、Aib29、Lys26,30]hPTHrP(1〜34)NH2(配列番号:2) 2mg/ml、酢酸バッファ6mMおよび注射用水を含む溶液を調製した。種々の成分を注射用水に溶解して室温で溶液を調製し、<30分間の攪拌により確実に溶解させた。0.2ミクロンのフィルターを通して溶液を濾過し、ガラスバイアルに充填し、ゴム製ストッパーを付して適当な位置でクリンプし、完全に密封した。
【0057】
メチルパラベンを含む溶液は、溶液の作製直後に沈殿および不活性化したために許容されにくいものであった。その後、溶液を25℃で3ヶ月まで、および5℃で4.5ヶ月まで保存して、実施例5に記載されるように保存料有効性試験を繰り返した。
【0058】
実施例4: 種々の濃度のGlu22,25、Leu23,28,31、Aib29、Lys26,30]hPTHrP(1〜34)NH2(配列番号:2)組成物の抗菌保存料有効性の評価(安定性試験)
【0059】

【0060】
欧州薬局方、5.1.3章「Efficacite de la conservation anti-microbienne」(抗菌有効性試験)に従って溶液を試験し、保存料の有効性を検証した。
【0061】





【0062】
表5は、フェノール、クロロクレゾールおよびベンジルアルコールの全てが、バクテリアおよび酵母/カビの両方について、作製の直後にコンプライアントな結果を生じることを示す。3ヶ月および4.5ヶ月の保存の後、フェノールおよびクロロクレゾールについて、バクテリアおよび酵母/カビの両方に対して保存料の効果が維持される。しかし、ベンジルアルコールについては、データが黄色ブドウ球菌に対して不充分な殺菌の割合を示すので(表5)、バクテリアに対する効果はコンプライアントではない。
【0063】
実施例5: 種々の製剤の化学安定性
表6は、実施例4に記載された製剤の化学安定性を詳細に示す。
【0064】

【0065】
表6からわかるように、[Glu22,25、Leu23,28,31、Aib29、Lys26,30]hPTHrP(1〜34)NH2(配列番号:2)溶液の安定性は、選択された保存料により大きな影響は受けない。表7は、同一の製剤についての各保存料の含有量を詳細に示す。
【0066】

【0067】
表7からわかるように、クロロクレゾールは低い安定性を有する保存料であり、5℃および25℃での保存両方の場合で保存料含有量の低下が大きい。
【0068】
本発明は、その例示的態様に関して特に示され記載されるが、形態および詳細における種々の変更は、添付の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲から逸脱することなく本発明においてなされ得ることを当業者は理解しよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 配列[Glu22,25、Leu23,28,31、Aib29、Lys26,30]hPTHrP(1〜34)NH2(配列番号:2)を有するPTHrPアナログ;および
b) pHを2〜7に維持するのに有効な量のバッファー
を含む、被験体への投与に適した保存安定組成物。
【請求項2】
バッファーが、酢酸バッファー、酒石酸バッファー、リン酸バッファーおよびクエン酸バッファーからなる群より選択される、請求項1記載の保存安定組成物。
【請求項3】
バッファーが酢酸バッファーである、請求項2記載の保存安定組成物。
【請求項4】
バッファーが酢酸および酢酸ナトリウムである、請求項3記載の保存安定組成物。
【請求項5】
pHが3〜7に維持される、請求項1記載の保存安定組成物。
【請求項6】
pHが4〜6に維持される、請求項5記載の保存安定組成物。
【請求項7】
pHが4.5〜5.5に維持される、請求項6記載の保存安定組成物。
【請求項8】
密封容器内に存在する、請求項1記載の保存安定組成物。
【請求項9】
20℃で少なくとも28日間安定である、請求項8記載の保存安定組成物。
【請求項10】
化学安定剤を含まない、請求項1記載の保存安定組成物。
【請求項11】
、さらに、有効量の抗菌剤を含む、請求項1記載の保存安定組成物。
【請求項12】
抗菌剤が、クレゾール、フェノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム(benxthonium)、クロロブタノール、フェニルエチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、チメロサール、硝酸フェニル水銀および酢酸フェニル水銀からなる群より選択される、請求項11記載の保存安定組成物。
【請求項13】
抗菌剤がフェノールまたはクロロクレゾールである、請求項12記載の保存安定組成物。
【請求項14】
抗菌剤がフェノールである、請求項13記載の保存安定組成物。
【請求項15】
配列[Glu22,25、Leu23,28,31、Aib29、Lys26,30]hPTHrP(1〜34)NH2(配列番号:2)を有するPTHrPアナログを20〜20,000mg/mL含む、請求項1記載の保存安定組成物。
【請求項16】
、配列[Glu22,25、Leu23,28,31、Aib29、Lys26,30]hPTHrP(1〜34)NH2(配列番号:2)を有するPTHrPアナログを100〜10,000mg/mL含む、請求項15記載の保存安定組成物。
【請求項17】
、配列[Glu22,25、Leu23,28,31、Aib29、Lys26,30]hPTHrP(1〜34)NH2(配列番号:2)を有するPTHrPアナログを300〜3,000mg/mL含む、請求項16記載の保存安定組成物。
【請求項18】
、配列[Glu22,25、Leu23,28,31、Aib29、Lys26,30]hPTHrP(1〜34)NH2(配列番号:2)を有するPTHrPアナログを500〜2,000mg/mL含む、請求項17記載の保存安定組成物。
【請求項19】
本質的に、
a) 配列[Glu22,25、Leu23,28,31、Aib29、Lys26,30]hPTHrP(1〜34)NH2(配列番号:2)を有するPTHrPアナログ;および
b) pHを2〜7に維持するのに有効な量のバッファー
からなる被験体への投与に適した保存安定組成物。
【請求項20】
本質的に、
a) 配列[Glu22,25、Leu23,28,31、Aib29、Lys26,30]hPTHrP(1〜34)NH2(配列番号:2)を有するPTHrPアナログ;
b) pHを2〜7に維持するのに有効な量のバッファー;および
c) 有効量の抗菌剤
からなる被験体への投与に適した保存安定組成物。
【請求項21】
本質的に、
a) [Glu22,25、Leu23,28,31、Aib29、Lys26,30]hPTHrP(1〜34)NH2(配列番号:2);および
b) pHを2〜7に維持するのに有効な量のバッファー
からなる被験体への投与に適した保存安定組成物。
【請求項22】
[Glu22,25、Leu23,28,31、Aib29、Lys26,30]hPTHrP(1〜34)NH2(配列番号:2)が500〜20,000mg/mLの濃度で存在し、バッファーが酢酸および酢酸ナトリウムバッファーであり、pHが4.5〜5.5である、請求項21記載の保存安定組成物。
【請求項23】
本質的に、
a) 500〜20,000mg/mLの濃度の[Glu22,25、Leu23,28,31、Aib29、Lys26,30]hPTHrP(1〜34)NH2(配列番号:2);
b) 酢酸および酢酸ナトリウムバッファー;ならびに
c) 1〜10mg/mLの範囲の濃度のフェノール
からなり、
pHが4.5〜5.5である、
被験体への投与に適した保存安定組成物。
【請求項24】
a) 配列[Glu22,25、Leu23,28,31、Aib29、Lys26,30]hPTHrP(1〜34)NH2(配列番号:2)を有するPTHrPアナログ;および
b) pHを2〜7に維持するのに有効な量のバッファー
を含む、被験体への投与に適した保存安定組成物を含む、密封容器。
【請求項25】
a) 配列[Glu22,25、Leu23,28,31、Aib29、Lys26,30]hPTHrP(1〜34)NH2(配列番号:2)を有するPTHrPアナログ;および
b) pHを2〜7に維持するのに有効な量のバッファー
を含む、1つまたは1つより多くの単回使用容器を備えた、薬物送達デバイス。
【請求項26】
a) 配列[Glu22,25、Leu23,28,31、Aib29、Lys26,30]hPTHrP(1〜34)NH2(配列番号:2)を有するPTHrPアナログ;および
b) pHを2〜7に維持するのに有効な量のバッファー
を含む、1つまたは1つより多くの反復使用容器を備えた、薬物送達デバイス。
【請求項27】
a) 配列[Glu22,25、Leu23,28,31、Aib29、Lys26,30]hPTHrP(1〜34)NH2(配列番号:2)を有するPTHrPアナログ;
b) pH2〜7を維持するのに有効な量のバッファー;および
c) 有効量の抗菌剤
を含む、1つまたは1つより多くの反復使用容器を備えた、薬物送達デバイス。
【請求項28】
被験体に[Glu22,25、Leu23,28,31、Aib29、Lys26,30]hPTHrP(1〜34)NH2(配列番号:2)を約40μg/週〜約1120μg/週の量で投与する工程を含む、治療を必要とする被験体における骨粗鬆症の治療方法。
【請求項29】
被験体に[Glu22,25、Leu23,28,31、Aib29、Lys26,30]hPTHrP(1〜34)NH2(配列番号:2)を約280μg/週〜約1120μg/週の量で投与する工程を含む、治療を必要とする被験体における骨粗鬆症の治療方法。
【請求項30】
被験体がヒトである、請求項28記載の方法。
【請求項31】
投与様式が皮下注射を含む、請求項20記載の方法。
【請求項32】
(配列番号:2)が単回用量で週1回投与される、請求項28記載の方法。
【請求項33】
(配列番号:2)が単回用量で週2回投与される、請求項28記載の方法。
【請求項34】
各単回用量が等しい量である、請求項33記載の方法。
【請求項35】
(配列番号:2)が単回用量で1日1回投与される、請求項28記載の方法。
【請求項36】
(配列番号:2)の単回(sdingle)用量が約80μg〜約100μgである、請求項35記載の方法。
【請求項37】
各単回用量が等しい量である、請求項36記載の方法。
【請求項38】
被験体に約40μg〜約50μgの[Glu22,25、Leu23,28,31、Aib29、Lys26,30]hPTHrP(1〜34)NH2(配列番号:2)を1日1回投与する工程を含む、治療を必要とする被験体における骨粗鬆症の治療方法。
【請求項39】
約40μg〜約45μgが投与される、請求項38記載の方法。
【請求項40】
被験体がヒトであり、投与様式が皮下注射を含む、請求項39記載の方法。
【請求項41】
被験体に約70μg〜約80μgの[Glu22,25、Leu23,28,31、Aib29、Lys26,30]hPTHrP(1〜34)NH2(配列番号:2)を1日1回投与する工程を含む、治療を必要とする被験体における骨粗鬆症の治療方法。
【請求項42】
約75μg〜約80μgが投与される、請求項41記載の方法。
【請求項43】
被験体がヒトであり、投与様式が皮下注射を含む、請求項42記載の方法。
【請求項44】
被験体に約40μg〜約50μgの[Glu22,25、Leu23,28,31、Aib29、Lys26,30]hPTHrP(1〜34)NH2(配列番号:2)を1日1回投与する工程を含む、骨質量を増大させる必要がある被験体において骨質量を増大させる方法。
【請求項45】
約40μg〜約45μgが投与される、請求項44記載の方法。
【請求項46】
被験体がヒトであり、投与様式が皮下注射を含む、請求項45記載の方法。
【請求項47】
被験体に約70μg〜約80μgの[Glu22,25、Leu23,28,31、Aib29、Lys26,30]hPTHrP(1〜34)NH2(配列番号:2)を1日1回投与する工程を含む、骨質量または骨の質の増大の処置を行う必要がある被験体において、該処置を行う方法。
【請求項48】
約75μg〜約80μgが投与される、請求項47記載の方法。
【請求項49】
被験体がヒトであり、投与様式が皮下注射を含む、請求項48記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−505835(P2010−505835A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531434(P2009−531434)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【国際出願番号】PCT/US2007/021216
【国際公開番号】WO2008/063279
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(509094908)ラジウス ヘルス,インコーポレイテッド (2)
【出願人】(309035198)イプセン ファーマ エス.エイ.エス. (1)
【Fターム(参考)】