説明

骨塩量測定装置

【課題】定量的に決定された石灰化領域を骨塩量の測定対象から除外して骨塩量を測定することを目的とする。
【解決手段】骨塩分布データ生成部24は、X線検出部12から出力された検出値に基づいて、骨塩分布データを生成し、関心領域データ抽出部26に出力する。関心領域データ抽出部26は、骨塩分布データから関心領域データを抽出し、石灰化領域設定部28および測定値演算部30に出力する。石灰化領域設定部28は、関心領域データに基づいて、その関心領域データに対する石灰化領域データを生成する。石灰化領域データは、関心領域データが示す各画素の位置に、各画素が石灰化領域に属するか否かの情報を対応付けたものである。測定値演算部30は、石灰化領域データを参照し、関心領域データに対し、石灰化領域を除外した積算処理を実行し、被検体16内の対象骨の骨塩量を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨塩量測定装置に関し、特に、測定結果の信頼度を向上させた装置に関する。
【0002】
骨粗鬆症等の診断を行うための評価値として骨塩量および骨密度があり、X線によってその測定を行う骨密度測定装置が広く用いられている。骨密度測定装置は、X線発生器から発せられ被検体を透過したX線をX線検出器によって検出し、その検出結果に基づいて被検体の骨塩量を測定する。さらに、X線発生器への骨の投影面積である骨面積を求め、骨塩量を骨面積で除すことで骨密度を求める。
【0003】
骨密度測定装置が骨塩量を測定する方法には二重エネルギーX線吸収測定法(DXA:Dual X−ray Absoptiometry)がある。この測定法は、エネルギーが異なる2種類のX線のそれぞれについて被検体に対するX線画像データを取得し、これらのX線画像データから骨塩分布データを求めるものである。骨塩分布データは、被検体内の骨塩の3次元空間分布を平面上に投影した骨塩分布画像を表す。骨密度測定装置は、骨塩分布データに基づいて診断対象の骨の骨塩量、骨面積、骨密度等を求め、ディスプレイに数値表示すると共に、骨塩分布画像をディスプレイに表示する。
【0004】
なお、特許文献1には、石灰化検出方法および装置が記載されている。この方法および装置においては、被写体の放射線画像を表す画像データに基づいて放射線画像上の各画素について各画素を含む所定領域内の分散値が算出される。そして、この分散値と所定の閾値との比較が行われ、分散値が所定の閾値より大きい画素を含む所定範囲の放射線画像が石灰化領域として検出される。特許文献2には、X線CT装置が記載されている。このX線CT装置は、異なるエネルギースペクトルを有する2種類のX線を用い、被検体内の物質を分離して表示するデュアルエネルギー断層像を取得する。特許文献2には、デュアルエネルギー断層像の生成に際して、2種類のX線のそれぞれに対する加算加重係数に応じて、石灰化した部位等を強調する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−215183号公報
【特許文献2】特開2009−82174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
骨は、カルシウム化合物、コラーゲン等のミネラル(骨塩)を成分とし、骨密度測定装置は、診断対象の骨に含まれる骨塩の質量を骨塩量として測定する。圧迫骨折、骨変形等があった場合、骨にはカルシウム化合物が集中的に分布した石灰化領域が生じることがある。この石灰化領域は、骨塩分布が突出して大きい領域であり、骨の診断という観点からは特異な領域であるため、骨塩量の測定対象から除外される。
【0007】
従来、石灰化領域については定量的な定義がなされていなかった。そのため、ユーザは、ディスプレイに表示された骨塩分布画像を参照し、骨密度測定装置の操作によって石灰化領域を設定していた。しかし、このように石灰化領域を設定したのでは、ユーザによって測定値にばらつきが生じるという問題が生じる。
【0008】
本発明は、このような課題に対してなされたものであり、定量的に決定された石灰化領域を骨塩量の測定対象から除外して骨塩量を測定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、被検体を透過したX線に基づいて、骨塩量の分布を表す骨塩分布データを取得する骨塩分布取得手段と、前記骨塩分布データから前記被検体内の関心領域に対応する関心領域データを抽出する抽出手段と、前記関心領域データに対し、データ値が所定の範囲外にある石灰化領域を指定する領域指定手段と、前記関心領域データに対し、前記石灰化領域を除外した積算処理を実行し、前記被検体内の対象骨の骨塩量を求める積算処理手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
このような構成によれば、骨の診断という観点からは特異な領域である石灰化領域を除外した上で、骨塩量が求められる。これによって、求められる骨塩量の信頼度を向上させることができる。
【0011】
また、本発明に係る骨塩量測定装置は、望ましくは、前記関心領域データに基づいて、前記対象骨につき前記石灰化領域を除外した骨面積を求める面積算出手段と、前記骨塩量と前記面積とに基づいて骨密度を求める骨密度算出手段と、を備える。
【0012】
このような構成によれば、骨の診断という観点からは特異な領域である石灰化領域を除外した上で、骨密度が求められる。これによって、求められる骨密度の信頼度を向上させることができる。
【0013】
また、本発明に係る骨塩量測定装置は、望ましくは、前記関心領域データに基づいて、前記石灰化領域と、前記石灰化領域でない関心領域内の領域とを区別して表示する画像データを生成する画像生成手段、を備える。
【0014】
この構成においては、石灰化領域と、石灰化領域でない関心領域内の領域との区別は、例えば、石灰化領域と、石灰化領域でない領域とで異なる色彩を付することで行われる。また、このような構成によれば、測定値に寄与させた領域を視覚的にユーザに把握させることができる。
【0015】
また、本発明に係る骨塩量測定装置は、望ましくは、前記石灰化領域は、前記関心領域データのデータ値と所定の石灰化閾値との比較に応じて定まる領域であり、前記領域指定手段は、前記関心領域データに基づく関心領域画像を表示する画像表示手段と、前記関心領域画像が表示されているときに、ユーザの操作に基づいて前記関心領域画像が含む複数の画素のうちいずれかを指定し、指定した画素の画素値に基づいて前記石灰化閾値を取得する石灰化閾値取得手段と、を備える。
【0016】
また、本発明に係る骨塩量測定装置は、望ましくは、前記石灰化領域は、前記関心領域データのデータ値と所定の石灰化閾値との比較に応じて定まる領域であり、前記領域指定手段は、前記関心領域データについてデータ値のばらつき値を求める手段と、前記ばらつき値に基づいて前記石灰化閾値を求める閾値算出手段と、を備える。
【0017】
また、本発明に係る骨塩量測定装置は、望ましくは、前記石灰化領域は、前記関心領域データのデータ値と所定の石灰化閾値との比較に応じて定まる領域であり、前記領域指定手段は、前記関心領域データについてデータ値の平均値を求める手段と、前記平均値に基づいて前記石灰化閾値を求める閾値算出手段と、を備える。
【0018】
このような構成によれば、石灰化領域を規定する石灰化閾値を定量的に決定することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、定量的に決定された石灰化領域を骨塩量の測定対象から除外して骨塩量を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る骨密度測定装置の構成を示す図である。
【図2】骨塩分布画像の例を概念的に示した図である。
【図3】数値表示の例を示す図である。
【図4】ディスプレイに表示される領域分け骨塩分布画像の例を示す図である。
【図5】領域分けの無い骨塩分布画像の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1には本発明の実施形態に係る骨密度測定装置の構成が示されている。骨密度測定装置は、被検体16を透過したX線に基づいて、骨塩の三次元空間分布を平面に投影した骨塩分布データを取得する。骨密度測定装置は、骨塩分布データに基づいて骨密度を求め、求められた骨密度をディスプレイ34に表示する。
【0022】
骨密度測定装置の具体的な構成について説明する。骨密度測定装置は、X線発生部10、X線検出部12、被検体定置台18、プロセッサ22、ディスプレイ34、システムコントローラ38、および操作部36を備える。プロセッサ22内には、X線検出部12の検出値に基づいて骨塩分布データを生成する骨塩分布データ生成部24、骨塩分布データから処理対象のデータを抽出する関心領域データ抽出部26、抽出されたデータに基づいて骨密度等を求める測定値演算部30、石灰化領域を設定する石灰化領域設定部28、および、画像データを生成する画像生成部32が構成される。
【0023】
X線発生部10は、X線放射方向を上に向けて配置されている。X線検出部12は、検出面14が下に向けられX線発生部10に対向させて配置されている。X線発生部10とX線検出部12との間には、X線を透過する材料で形成された被検体定置台18が配置されている。被検体定置台18上には被検体16が定置され、X線発生部10の上方から被検体定置台18の上方にかけては、X線ビームが走査される診断空間20が形成される。
【0024】
操作部36は、キーボード、マウス、トラックボール等の情報を入力する機構を含み、ユーザの操作に基づいてシステムコントローラ38に動作を指示する情報を与える。システムコントローラ38は、与えられた情報に基づいて、X線発生部10、X線検出部12およびプロセッサ22を制御する。これによって、X線発生部10、X線検出部12およびプロセッサ22は、操作部36における操作に応じた処理を実行する。
【0025】
本実施形態に係る骨密度測定装置による診断の対象骨は、腰椎、前腕部、踵骨等である。ここでは、腰椎をなす個々の椎骨を診断の対象骨とした例につき、骨密度測定装置が実行する処理について説明する。X線発生部10、X線検出部12、および骨塩分布データ生成部24は、二重エネルギーX線吸収測定法に基づいて被検体16の骨塩分布データを取得する。この測定法においては、エネルギーが異なる2種類のX線ビームのそれぞれについて被検体16に対する吸収率分布データが求められ、各吸収率分布データから骨塩分布データが求められる。ここで、吸収率分布データは、被検体16を透過するX線に対する吸収率の分布を検出面14上に表したものである。
【0026】
被検体16は、X線発生部10とX線検出部12との間に腰部が位置するよう、被検体定置台18上に定置される。X線発生部10は、放射するX線ビームのエネルギーを第1の値E1とし、診断空間20内においてX線ビームを走査する。X線検出部12は、検出面14上の各検出位置においてX線を検出し、各検出位置における検出値を骨塩分布データ生成部24に出力する。骨塩分布データ生成部24は、X線検出部12から出力された各検出値に基づいて、エネルギーE1に対する吸収率分布データA1を求める。
【0027】
また、X線発生部10は、放射するX線ビームのエネルギーを第2の値E2とし、診断空間20内においてX線ビームを走査する。X線検出部12は、検出面14上の各検出位置においてX線を検出し、各検出位置における検出値を骨塩分布データ生成部24に出力する。骨塩分布データ生成部24は、X線検出部12から出力された検出値に基づいて、エネルギーE2に対する吸収率分布データA2を求める。
【0028】
なお、吸収率分布データA1およびA2は、X線ビームのエネルギーを時分割で交互に切り替えることで求めてもよい。すなわち、X線発生部10が走査するX線ビームのエネルギーを、E1およびE2で交互に切り替え、検出面14上の各検出位置においてエネルギーE1のX線およびエネルギーE2のX線を交互に検出することで吸収率分布データA1およびA2を求めてもよい。
【0029】
骨塩分布データ生成部24は、吸収率分布データA1およびA2に基づいて、骨塩の3次元空間分布が検出面14に投影された骨塩分布データを求める。本実施形態において求められる骨塩分布データは、骨塩量を表す画素値と検出面14上の位置を表す情報とを対応付けた画素データの集合として表される。骨塩分布データ生成部24は、骨塩分布データを関心領域データ抽出部26および画像生成部32に出力する。
【0030】
図2には、骨塩分布画像の例が概念的に示されている。網掛けを施した領域に囲まれた白色の領域は腰椎を示す。腰椎は、第1椎骨から第5椎骨の5つの椎骨からなり、図2には、第1椎骨L1の一部、第2椎骨L2、第3椎骨L3、第4椎骨L4、および第5椎骨L5の一部が示されている。一般に、これらの椎骨のうち第2椎骨から第4椎骨が対象骨とされる。
【0031】
関心領域データ抽出部26は、対象骨の領域を含む領域として骨塩分布画像上に関心領域を設定する。関心領域の設定は、骨塩分布データに基づく画像認識処理に基づいて行われる。すなわち、関心領域データ抽出部26は、対象骨の領域を認識し、対象骨の領域を含むよう関心領域を設定する。例えば、図2に示される骨塩分布画像については、関心領域データ抽出部26は、椎骨L2〜L4の領域を含む長方形の領域として、それぞれ、関心領域R2〜R4を設定する。
【0032】
なお、関心領域の設定は、ユーザの操作によって行ってもよい。この場合、画像生成部32は、骨塩分布データに基づいてディスプレイ34に骨塩分布画像およびカーソルを表示させる。ユーザは、ディスプレイ34を参照しつつ操作部36を操作し、カーソルによって長方形を描く等して骨塩分布画像上に関心領域を設定する。システムコントローラ38は、操作部36から関心領域の範囲を示す情報を読み込み、その情報を関心領域データ抽出部26に与える。
【0033】
関心領域データ抽出部26は、関心領域における骨塩分布を表す関心領域データを骨塩分布データから抽出し、石灰化領域設定部28および測定値演算部30に出力する。例えば、図2に示される骨塩分布画像については、領域R2における骨塩分布を表すL2関心領域データを骨塩分布データから抽出し、石灰化領域設定部28および測定値演算部30に出力する。同様に、関心領域データ抽出部26は、関心領域R3における骨塩分布、および関心領域R4における骨塩分布をそれぞれ表す、L3関心領域データおよびL4関心領域データを骨塩分布データから抽出し、L3関心領域データおよびL4関心領域データを石灰化領域設定部28および測定値演算部30に出力する。
【0034】
石灰化領域設定部28は、関心領域データ抽出部26から出力された関心領域データに基づいて、その関心領域データに対する石灰化領域データを生成する。石灰化領域データは、関心領域データが示す各画素の位置に、各画素が石灰化領域に属するか否かの情報を対応付けたものである。例えば、画素の位置をxy座標を以て表し、その画素が石灰化領域に属するか否かをフラグ情報Fを以て表す場合、石灰化領域データは、(x,y,F)として表される情報の集合となる。ここでフラグ情報は、例えば、画素が石灰化領域に属する場合は値として1を有し、石灰化領域に属さない場合は値として0を有する。
【0035】
石灰化領域設定部28が石灰化領域データを生成する具体的な処理について説明する。石灰化領域設定部28は、関心領域データ抽出部26から出力された関心領域データに基づいて石灰化閾値を求める。石灰化閾値は、関心領域データが示す各画素の位置が、石灰化領域に含まれるか否かを判定するための閾値である。すなわち、関心領域データが示す画素のうち、画素値が石灰化閾値以上である画素の位置は石灰化領域に含まれるものとなる。後述のように、石灰化領域設定部28は、関心領域データに含まれる各画素データの画素値と石灰化閾値との比較に基づいて石灰化領域データを生成する。
【0036】
石灰化閾値は次のような処理によって求められる。石灰化領域設定部28は、関心領域データが示す総ての画素データを母集団とした標準偏差σを求める。ここで、標準偏差σは、分散σ2=Σ{(Pi−m)2/N}の平方根である。ただし、Piは各画素データの画素値、mは関心領域データに含まれる総ての画素データを母集団とした場合の画素値の平均値、Nは母集団の数である。
【0037】
石灰化領域設定部28は、求められた標準偏差σに予め定められた定数kを乗じ、平均値mを加算した値を石灰化閾値として求める。すなわち、石灰化領域設定部28は、T=m+k・σとして石灰化閾値Tを求める。ここで、定数kは、正規分布における信頼区間を規定する定数である。例えば、定数kを1.96とすれば、95%信頼区間以上の画素値を有する画素データが石灰化領域を示すものとなる。また、定数kを2.32とすれば、98%信頼区間以上の画素値を有する画素データが石灰化領域を示すものとなる。
【0038】
定数kは予め石灰化領域設定部28が記憶しているものでもよいし、ユーザの操作によって設定されるものであってもよい。ユーザの操作によって定数kを設定する場合、システムコントローラ38は、ユーザによる操作部36の操作に基づいて定数kを読み込む。そして、読み込んだ定数kを石灰化領域設定部28に与える。
【0039】
ここでは、標準偏差に基づいて石灰化閾値を求める例を示したが、標準偏差に代えて、関心領域データが示す画素値のばらつきを示すその他の値、例えば、分散を用いてもよい。
【0040】
また、予め定められた定数Aを用い、T=A・mとして石灰化閾値Tを求めてもよい。定数Aは予め石灰化領域設定部28が記憶しているものでもよいし、ユーザの操作によって設定されるものであってもよい。さらに、このような統計的処理によらず、ユーザの操作によって石灰化閾値が直接設定されてもよい。ユーザの操作による各数値の設定は、上述の定数kを設定する場合と同様の処理によって行うことができる。
【0041】
また、ディスプレイ34に表示された骨塩分布画像をユーザが参照し、ディスプレイ34に表示されたカーソルによって指定された画素の画素値を石灰化閾値とする処理が行われてもよい。この場合、画像生成部32は、骨塩分布データに基づいてディスプレイ34に骨塩分布画像およびカーソルを表示させる。システムコントローラ38は、操作部36においてカーソルによる画素の指定がなされると、カーソルの位置情報を石灰化領域設定部28に与える。石灰化領域設定部28は、与えられた位置情報が示す位置に対応する関心領域データの画素値を取得し、この画素値を石灰化閾値とする。骨密度が高い程輝度を大きくした骨塩分布画像の場合、石灰化の傾向が強い領域程、明るく表示される。ユーザは、表示された明るさの程度によって、石灰化閾値を決定することができる。
【0042】
石灰化領域設定部28は、関心領域データに含まれる各画素データについて、画素値が石灰化閾値以上であるか否かを判定する。そして、画素値が石灰化閾値以上である画素データの位置に対しては、石灰化領域である旨の情報を対応付け、画素値が石灰化閾値未満である画素データの位置に対しては、石灰化領域でない旨の情報を対応付けた石灰化領域データを生成し、その石灰化領域データを測定値演算部30および画像生成部32に出力する。
【0043】
石灰化領域設定部28は、このような処理に基づいて、図2に示される例については、L2関心領域データ、L3関心領域データおよびL4関心領域データのそれぞれについて石灰化閾値を求める。そして、各関心領域について石灰化領域データを生成し、測定値演算部30および画像生成部32に出力する。
【0044】
測定値演算部30が、対象骨の骨塩量、骨面積および骨密度を求める処理について説明する。測定値演算部30は、対象骨の領域から石灰化領域が除外された領域について骨塩量および骨面積を求め、骨塩量を骨面積で除すことで骨密度を求める。
【0045】
測定値演算部30は、具体的には、関心領域データおよび石灰化領域データに基づいて次のような処理を実行する。測定値演算部30は、石灰化領域データを参照し、関心領域データに含まれる画素データの集合から、石灰化領域の画素を表すものを除外し、演算対象画素データ群を抽出する。そして、演算対象画素データ群に含まれる画素データの画素値を積算して骨塩量を求める。また、測定値演算部30は、演算対象画素データ群に含まれる画素データのうち、画素値が所定の閾値を超えるものの個数を求め、その個数に単位画素当たりの面積を乗じて骨面積を求める。測定値演算部30は、骨塩量を骨面積で除すことで骨密度を求め、これらの値を画像生成部32に出力する。画像生成部32は、骨塩量、骨面積および骨密度をディスプレイ34に数値表示させる。
【0046】
測定値演算部30は、このような処理に基づいて、図2に示される例については、関心領域R2〜R4のそれぞれについて骨塩量、骨面積および骨密度を求め、これらの値を画像生成部32に出力する。また、測定値演算部30は、関心領域R2〜R4を併せた領域を1つの関心領域とし、その関心領域について骨塩量、骨面積および骨密度を求め、これらの値を画像生成部32に出力する。画像生成部32は、関心領域R2〜R4のそれぞれ、および関心領域R2〜R4を併せた領域について、骨塩量、骨面積および骨密度をディスプレイ34に数値表示させる。
【0047】
図3には、数値表示の例が示されている。この表示は、骨塩分布画像と共に、または、骨塩分布画像とは別の画像として表示されてもよい。上から、第2椎骨L2、第3椎骨L3、第4椎骨L4、および第2〜第4椎骨を合わせた領域L234のそれぞれについて、骨塩量、骨面積および骨密度が数値表示されている。
【0048】
このような処理によれば、石灰化閾値を定量的に決定し、石灰化閾値に基づいて定量的に石灰化領域を定義することができる。そして、骨の診断という観点からは特異な領域である石灰化領域を骨塩量の測定対象から除外した上で、骨塩量、骨面積および骨密度を測定することができる。
【0049】
画像生成部32は、骨塩量、骨面積および骨密度をディスプレイ34に数値表示させる他、石灰化領域の表示態様を通常の骨塩の表示態様とは異なるものとした領域分け骨塩分布画像をディスプレイ34に表示させる。例えば、画像生成部32は、関心領域データおよび石灰化領域データに基づいて、関心領域内における通常の骨塩の領域を第1の色彩を以て示し、関心領域内における石灰化領域を第2の色彩を以て示す領域分け骨塩分布画像の画像データを生成し、その画像データに基づく画像をディスプレイ34に表示させる。例えば、第1の色彩は青色とし、第2の色彩を白色とすることで、関心領域および石灰化領域を明確に区別することができる。
【0050】
このような画像表示処理によれば、骨塩量、骨面積および骨密度を求める際に除外された石灰化領域を、視覚的に示すことができる。
【0051】
図4には、ディスプレイ34に表示される領域分け骨塩分布画像の例が示されている。図4の右上がり斜線の網掛けの領域は、骨塩が存在しない領域を示す。また、図4の格子状の網掛けの領域は、通常の骨塩の領域を示し、網掛けが施されていない領域は、石灰化領域を示す。
【0052】
なお、画像生成部32は、図5に示す領域分けの無い骨塩分布画像(関心領域内における通常の骨塩の領域、および、石灰化領域を共通の色彩とした画像)を初期画像としてディスプレイ34に表示させ、操作部36における操作に応じて領域分け骨塩分布画像をディスプレイ34に表示させてもよい。また、領域分けの無い骨塩分布画像または領域分け骨塩分布画像のいずれかを操作部の選択操作に応じてディスプレイ34に表示させてもよい。
【符号の説明】
【0053】
10 X線発生部、12 X線検出部、14 検出面、16 被検体、18 被検体定置台、20 診断空間、22 プロセッサ、24 骨塩分布データ生成部、26 関心領域データ抽出部、28 石灰化領域設定部、30 測定値演算部、32 画像生成部、34 ディスプレイ、36 操作部、38 システムコントローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を透過したX線に基づいて、骨塩量の分布を表す骨塩分布データを取得する骨塩分布取得手段と、
前記骨塩分布データから前記被検体内の関心領域に対応する関心領域データを抽出する抽出手段と、
前記関心領域データに対し、データ値が所定の範囲外にある石灰化領域を指定する領域指定手段と、
前記関心領域データに対し、前記石灰化領域を除外した積算処理を実行し、前記被検体内の対象骨の骨塩量を求める積算処理手段と、
を備えることを特徴とする骨塩量測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の骨塩量測定装置において、
前記関心領域データに基づいて、前記対象骨につき前記石灰化領域を除外した骨面積を求める面積算出手段と、
前記骨塩量と前記面積とに基づいて骨密度を求める骨密度算出手段と、
を備えることを特徴とする骨塩量測定装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の骨塩量測定装置において、
前記関心領域データに基づいて、前記石灰化領域と、前記石灰化領域でない関心領域内の領域とを区別して表示する画像データを生成する画像生成手段、
を備えることを特徴とする骨塩量測定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の骨塩量測定装置において、
前記石灰化領域は、
前記関心領域データのデータ値と所定の石灰化閾値との比較に応じて定まる領域であり、
前記領域指定手段は、
前記関心領域データに基づく関心領域画像を表示する画像表示手段と、
前記関心領域画像が表示されているときに、ユーザの操作に基づいて前記関心領域画像が含む複数の画素のうちいずれかを指定し、指定した画素の画素値に基づいて前記石灰化閾値を取得する石灰化閾値取得手段と、
を備えることを特徴とする骨塩量測定装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の骨塩量測定装置において、
前記石灰化領域は、
前記関心領域データのデータ値と所定の石灰化閾値との比較に応じて定まる領域であり、
前記領域指定手段は、
前記関心領域データについてデータ値のばらつき値を求める手段と、
前記ばらつき値に基づいて前記石灰化閾値を求める閾値算出手段と、
を備えることを特徴とする骨塩量測定装置。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の骨塩量測定装置において、
前記石灰化領域は、
前記関心領域データのデータ値と所定の石灰化閾値との比較に応じて定まる領域であり、
前記領域指定手段は、
前記関心領域データについてデータ値の平均値を求める手段と、
前記平均値に基づいて前記石灰化閾値を求める閾値算出手段と、
を備えることを特徴とする骨塩量測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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