説明

骨密度減少抑制組成物

【課題】 骨粗鬆症の予防、又は進行の遅延効果があり、低コストで使いやすい骨密度減少抑制組成物を提供する。
【解決手段】 重合度が11以上のリン酸化糖類、カルシウム、及びマグネシウムを含有する骨密度減少抑制組成物。イソフラボン類、フラクトオリゴ糖のうち少なくとも一方を含有する前記骨密度減少抑制組成物。重合度が11以上のリン酸化糖類が、リン酸化デキストリン、リン酸化多糖、リン酸化澱粉、還元リン酸化デキストリンから選ばれる1又は2以上の物質である前記骨密度減少抑制組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨粗鬆症の予防、及びその進行の遅延、骨の弱体化の予防、及びその弱体化の進行の遅延に有効な骨密度減少抑制組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、急激な高齢化社会が進む中で、高齢者が元気に暮らせる社会が望まれている。高齢者が生活の質を高く保ち元気に暮らすためには寝たきりにならないことが大切である。寝たきりに移行する原因の一つとして、骨粗鬆症による骨折が挙げられる。
骨粗鬆症は女性ホルモンの減少や加齢により、破骨細胞による骨吸収が骨芽細胞による骨形成を大幅に上回る状況になり、それが続いた時に骨密度が減少し、骨が折れやすくなる疾病である。自覚症状のないまま進行していくので、気づいた時にはかなり進行している場合が多い。骨粗鬆症にはいくつかの型があることが知られており、典型的なものは閉経後の女性によく見られる高回転型の骨粗鬆症である。そのメカニズムは女性ホルモンの減少により、炎症性サイトカインが増加し、その結果破骨細胞が大幅に増加して骨吸収が促進される。骨芽細胞も増加するが、破骨細胞の増加の方が著しく、破骨細胞>骨芽細胞のバランスとなるため、骨密度の低下が進行し骨折しやすい状態になると言われている。現在、日本には1,000万人の骨粗鬆症患者がいると言われている。
【0003】
また、年齢を問わず、偏食やダイエット等によるバランスが取れていない食生活により骨の弱体化現象の増加が問題になっている。
カルシウムは骨を構成する大切な元素の一つであり、カルシウムの摂取不足は、骨粗鬆症や骨の弱体化の主な原因とされている。厚生労働省の国民栄養調査によれば、日本国民の摂取する全ての栄養素の中、カルシウムのみが所要量に達していないとされている。また、その状況はここ二十数年来変わっていない。さらには、男女問わず20〜40代のカルシウム不足を危惧する声も多い。カルシウムは各種食品に満遍なく存在するわけではなく、かなり偏在しているので、所要量を満足するためには、カルシウムの摂取を意識した食事を心がける必要がある。このようなカルシウム不足を解消するために、各種カルシウム強化食品やサプリメントなどが開発されているが、若年時から意識的にカルシウム摂取を心がける必要がある。
【0004】
これまでに骨粗鬆症を予防する効果があるとして、カルシウム吸収を助ける物質や、骨密度の減少を抑制する物質、骨量を向上させるとされる物質がいくつか見出されている。例えば小腸管内でカルシウムを可溶化状態に維持することにより吸収率を高めるとされているカゼインホスホペプチド(およびゲニステインを併用するもの:特許文献1)、腸内細菌により資化され有機酸が生成することにより腸内pHが酸性側に傾くことによりカルシウムが可溶化し吸収されやすくなるとされている難消化性オリゴ糖(ガラクトオリゴ糖:特許文献2、フラクトオリゴ糖:特許文献3など)、その他β−グルコオリゴ糖(特許文献4)、コンドロイチンおよびイソフラボンを併用するもの(特許文献5)、ダイフラクトースアンハイドライド(特許文献6)、コンドロイチン類、コラーゲン、グルコサミン、ビタミンCの4種を併用するもの(特許文献7)、乳由来の塩基性タンパク質画分(特許文献8)、温州みかん由来のカロテノイドとフラボノイド(及びその誘導体)を併用するもの(特許文献9、10)などである。
また、本発明者らは、特許文献11により、リン酸オリゴ糖、リン酸デキストリンの多価金属塩類組成物が、カルシウム吸収促進に効果があることを示唆している。これらの多くは価格が高価であったり、味質や水への溶解度の問題で食品・飲料への利用が制限されたり、さらには効果を得るには多くの摂取量が必要になる等の問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開2001−302539号公報
【特許文献2】特許第3179090号公報
【特許文献3】特開平7−252156号公報
【特許文献4】特開平11−299453号公報
【特許文献5】特開2002−58452号公報
【特許文献6】特開2004−161619号公報
【特許文献7】特開2005−232089号公報
【特許文献8】特開平8−151331号公報
【特許文献9】特開2006−83151号公報
【特許文献10】特開2006−104090号公報
【特許文献11】特開2002−145893号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
骨粗鬆症の予防、又は進行の遅延効果があり、低コストで使いやすい骨密度減少抑制組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成をとる。
即ち、本発明の第1は、重合度が11以上のリン酸化糖類、カルシウム、及びマグネシウムを含有する骨密度減少抑制組成物である。
【0008】
本発明の第2は、イソフラボン類、フラクトオリゴ糖のうち少なくとも一方を含有する本発明の第1に記載の骨密度減少抑制組成物である。
【0009】
本発明の第3は、重合度が11以上のリン酸化糖類が、リン酸化デキストリン、リン酸化多糖、リン酸化澱粉、還元リン酸化デキストリンから選ばれる1又は2以上の物質である本発明の第1〜2のいずれかに記載の骨密度減少抑制組成物である。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、骨粗鬆症の予防、又は進行の遅延効果があり、低コストで使いやすく、特に高回転型骨粗鬆症に対して有効な骨密度減少抑制組成物を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、重合度が11以上のリン酸化糖類とカルシウム、マグネシウムを組み合わせることで、骨粗鬆症、特に高回転型骨粗鬆症を抑制する効果があることを見出し、本発明の完成に至った。なお、高回転型骨粗鬆症とは、女性ホルモンの減少や加齢によって骨吸収が骨形成を上回ることによって発生する骨粗鬆症である。
なお、本発明においては、その構成する糖の重合度が10以下の糖類をオリゴ糖、重合度11以上の糖類を、重合度が低い順にデキストリン、多糖、澱粉(ほとんど未分解)と称する。
【0012】
本発明における骨密度減少抑制組成物に含まれる重合度11以上のリン酸化糖類は、リン酸化デキストリン、リン酸化多糖、リン酸化澱粉、リン酸化還元デキストリン等から任意に選択可能であり、その製法は問われない。また、これらのリン酸化糖類には、重合度11以上のものが10%以上含まれることが望ましい。
重合度11以上のリン酸化デキストリン、リン酸化多糖、リン酸化澱粉、リン酸化還元デキストリンとしては、デキストリン、多糖、澱粉、還元デキストリン(以下総称して多糖類と呼称する)にリン酸基が結合したものすべてが挙げられる。
本発明で使用するリン酸化多糖類は、リン酸化澱粉、リン酸化多糖、リン酸化デキストリンを、酵素、酸、熱で低分子化するか、多糖類を直接リン酸化することで得られる。還元物の場合は、リン酸化多糖類を還元するか、還元物を直接リン酸化することで得られる。多糖類としてはコーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉などの穀物類の澱粉、馬鈴薯澱粉やタピオカ澱粉などの根系類の澱粉など広く一般に使用されている澱粉、及びその分解物である多糖、デキストリンが使用できる。また、多糖類はその構成糖としてグルコース以外の糖、例えば、果糖、マンノース、ガラクトースなどの六炭糖、キシロース、アラビノース、リボースなどの五炭糖、砂糖、ラクト−ス、トレハロース、キシロビオ−ス、メリビオ−ス、キトビオ−ス、ラクチュロ−ス、ゲンチオビオ−ス、パラチノ−ス、トレハルロ−ス、コウジビオ−ス、ニゲロ−ス、ラミナリビオ−ス、カップリングシュガ−、フラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、セロオリゴ糖、キシロオリゴ糖などのオリゴ糖やデキストリンのほか、グルコースを構成糖とするものの結合状態の異なるセロビオ−ス、ラミナリビオース、ゲンチオビオースなどのオリゴ糖や、デキストランやセルロースなどの多糖を含むこともできる。
なお、本発明の骨密度減少抑制組成物には、上記のリン酸化デキストリン以外にも、リン酸化単糖、リン酸化オリゴ糖や、または、リン酸化糖アルコール、リン酸化還元オリゴ糖等のリン酸化糖、及びリン酸化されていない単糖、オリゴ糖、デキストリン、多糖、澱粉などが含まれていてもよい。
【0013】
糖類のリン酸化方法は、公知の方法から任意に選択できるが、澱粉や糖類にリン酸塩を混合し、加熱反応させることが一般的に行われる。またホスホリラーゼなどの酵素を用いてリン酸化する方法も可能である。
リン酸化に引き続き、低分子化を行う場合も公知の方法から任意に選択できるが、アミラーゼなどの酵素を用いて低分子化する方法、または酸による方法が一般的である。
また、必要に応じて脱色、脱塩、未反応物の除去等精製を行うこともできる。
【0014】
本発明に使用するカルシウムとしては、特に限定はしないが、第一リン酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、塩化カルシウム、卵殻カルシウム、貝殻カルシウム、乳清カルシウム、魚骨粉、リン酸化オリゴ糖カルシウム、ドロマイト等が任意に使用できる。この中でも、炭酸カルシウム、ドロマイト、乳酸カルシウムが特に好ましい。
本発明に使用するマグネシウムとしては、特に限定はしないが、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、リン酸三マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、グルタミン酸マグネシウム、ドロマイト等が使用できる。この中でも、特に酸化マグネシウム、ドロマイト、塩化マグネシウムが特に好ましい。
【0015】
なお、本発明の骨密度減少抑制組成物を、医薬品、又は医薬品に添加して使用する場合は、使用するカルシウム及びマグネシウムは日本薬局法で認められているものを使用する。また、飲食物、又は飲食物に添加して使用する場合は、食品添加物として認められているものか食品扱いのカルシウム及びマグネシウムを使用する。
また、本発明の骨密度減少抑制組成物中におけるカルシウムとマグネシウムの比率は、特に限定しないが、質量比で2:1に近い方が望ましい。
【0016】
また、本発明の骨密度減少抑制組成物には、イソフラボン類を添加することがさらに好ましい。イソフラボンは、骨吸収と骨形成のバランスを改善する物質として知られており、本発明と組み合わせるとより有効である。
本発明で使用するイソフラボン類としてはダイゼイン、ゲニステイン、グリシテイン等のアグリコン、それらの配糖体、または両者の混合物のいずれでもよく、ヘスペリジン、ナリンジン、ルチンなどはそれらのアグリコン単独、またはアグリコンとの混合物でもよい。
また、本発明の骨密度減少組成物には、フラクトオリゴ糖を添加することがさらに好ましい。
その他、本発明には、必要に応じて任意の成分を添加することが可能である。
添加する成分としては、ポリフェノール類、小腸で消化されにくく、大腸で腸内細菌に醗酵を受けて有機酸を生成して腸内環境を整える作用のある難消化性オリゴ糖等があげられる。ポリフェノール類としては前述のイソフラボンの他、ヘスペリジン、ナリンジン、ルチン、レスベラトロール等があげられる。また難消化性糖類としては、前述のフラクトオリゴ糖の他、キシロオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、アラビノオリゴ糖、マンノオリゴ糖等が挙げられる。
その他の成分としては、コラーゲン又はその加水分解物が挙げられる。コラーゲンに関しては、動物、魚等の原料は特に限定しないが、ゼラチンに加工されたものが好ましい。また、コラーゲンの加水分解物の場合、分子量300〜10000程度のものが好ましい。あmた、ビタミンK、カゼインホスホペプチド、β−クリプトキサンチン、ポリグルタミン酸等が有効である。ビタミンKはK1、K2、K3のいずれでもよく、カゼインホスホペプチド、β−クリプトキサンチン、ポリグルタミン酸は特に製法は問わない。
【0017】
発明の骨密度減少抑制組成物は、そのまま単独で、もしくは他の食品や飲料、医薬品に添加して使用することが可能である。また動物用飼料に添加して使用することができる。
【0018】
本発明の骨密度減少抑制組成物を医薬として用いる場合には、錠剤、顆粒剤、散剤、丸剤、液剤、カプセル剤等の任意の薬剤形態に加工して用いることが可能である。また、加工時には薬学的に許容される製剤用添加剤を更に添加することが可能である。
【0019】
本発明の骨密度抑制剤を動物用の飼料として用いる場合には、養豚用飼料、養牛用飼料、養鶏用飼料等の任意の家畜飼料、ペットフード、各種配合飼料に添加して用いることができる。
なお、動物に本発明の骨密度減少抑制組成物を投与する方法としては、飼料等に配合して経口的に摂取させる方法が一般的である。また、水溶性であることから、水などの飲料に加えて摂取させる方法も選択できる。
【0020】
本発明の骨密度減少抑制組成物を食品や飲料に添加して用いる場合には、一般の食品・加工食品、飲料の他、健康食品、特定保健用食品等の任意の食品又は飲料に添加して用いることができる。該飲食品は特に限定されるものでなく、例えば、米飯、パン、麺類、シリアル類、などの主食、牛乳、ヨーグルト、チーズ、アイスクリーム等の乳製品、和菓子、洋菓子、チョコレート、飴、ガム等の菓子類、ハム、ソーセージ等の畜肉製品、竹輪、かまぼこ、はんぺん等の練り製品、煮豆、納豆、味噌、醤油等の豆加工食品、その他サプリメント、ミックス粉、レトルト食品、冷凍食品に利用でき、飲料としては炭酸飲料、果汁飲料、野菜飲料、コーヒー飲料、スポーツ飲料、乳性飲料、茶飲料、豆乳飲料等に利用できる。
このような飲食品は、有効成分として本発明の骨密度減少抑制組成物を含有するので、摂取することで、骨の弱体化、骨粗鬆症を予防し、進行の遅延を図る上で有利である。
【0021】
本発明の骨密度減少抑制組成物を食品等に配合する場合、リン酸化糖類を1日分として0.1〜5g摂取できるように配合することが望ましい。
また、本発明の骨密度減少抑制組成物にフラクトオリゴ糖を添加する場合、1日分として0.5〜20g摂取できるように配合することが望ましい。
また、本発明の骨密度減少抑制組成物にイソフラボンを添加する場合は、食品安全委員会により、日常の食生活に加えて摂取するイソフラボンの摂取量は、アグリコン換算で1日当りの摂取量が30mg以下とすれば安全性上の問題はないとされているため、1日分として3〜30mg摂取できるように配合することが望ましい。
【0022】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
【0023】
[リン酸化糖の調製]
コーンスターチ(王子コーンスターチ製、水分13質量%)1200kgを一定の流速でタービュライザに導入し、同時に第一リン酸ナトリウム・2水塩25kgと無水第二リン酸ナトリウム4.6kgを水に溶解して全量477kgのリン酸溶液(pH6.0)を一定の流速で添加して均一に混合した。このリン酸混合澱粉をフラッシュ・ドライヤーで水分6質量%となるまで乾燥し、得られたリン酸含浸澱粉(リン含量0.5質量%、pH5.6)500kgを流動層加熱機(王子コーンスターチ製)に投入した。加熱した熱風を供給して流動加熱し、排気される熱風は流動層の系外に排出した。加熱開始後、30分で175℃まで昇温し、熱風の排気はそのまま系外に排出し続けて、175℃で120分加熱反応した。加熱反応終了後、送風を冷風に切り替え、更に熱風の排気を系外に排出し続けて、品温を100℃以下にまで冷却した。回収されたリン酸化澱粉(結合リン含量0.4質量%、リン酸化率81%)は450kgであった。
次に、得られたリン酸化澱粉の低分子化を行った。70℃の水71Lに塩化カルシウム二水和物34gを溶解した後、攪拌しながら前述のリン酸化澱粉8kgを徐々に添加しながら溶解した。水酸化ナトリウムでpH6.0とした後、ターマミル(Termamyl Classic、ノボザイムズ社製)を対澱粉0.05質量%添加し、5分間保持した。粘度が下がり始めると同じリン酸化澱粉4.5kgを徐々に追加添加した。水酸化ナトリウムでpH6.0に再調整後、追加した澱粉に対してターマミルを0.05質量%添加して10分保持した。次に、調製したリン酸化澱粉分散液をジェットクッカーにて温度110℃、滞留時間5分の条件で処理した。この操作を4回繰り返して、50kgのリン酸化澱粉を処理した。ジェットクッカー処理した液をタンクに集め、60℃まで冷却後、ターマミルを対澱粉0.05質量%追加添加し、60℃、3時間反応させた。酵素反応は塩酸でpH3.5に調整し、終了させた。
得られた酵素分解液に粉末活性炭(PM−KIとPM−SXの等量混合物、三倉化成社製)を対固形分10質量%添加し、60℃、2時間攪拌保持した。その後、セラミック濾過機(0.2μm、トライテック社製)で残渣と活性炭を除去した。濾液には無機リンが多く含まれているので、NF膜(日東電工社製、NTR−7450)で脱塩・濃縮処理を行い、無機リン比率を10%まで減少させた。更に、水酸化ナトリウムでpH6.2(1質量%溶液で測定)に調整してから、0.45μmのポリスルフォンのメンブレンフィルター(ロキテクノ社製)で濾過後、スプレードライヤー(ニロ社製)で乾燥粉末化した。
得られたリン酸化糖類組成物Aは36kgであり、重合度が11以上のリン酸化糖類の含有率は40%であった。また、含まれるリン酸化糖の平均重合度は17であった。
以上で得たリン酸化糖組成物A(以下試料A)を、以下の動物実験により評価した。
【0024】
[動物試験]
試験動物として11週齢、雌のF344/DuCrlCrljラット(日本チャールズリバー(株))を用い、1週間の環境馴化飼育後、12週齢において試験を開始した。
馴化飼育の最終日にラットを1群10匹からなる7群に分け、卵巣摘出手術を行った。
翌日より、飼料(基本飼料はAIN−93M:オリエンタル酵母工業(株)、Ca含量0.5質量%(炭酸Ca使用)、Mg含量0.05質量%(酸化Mg使用))に、調製例で作製した試料A、フラクトオリゴ糖(明治製菓製)、大豆イソフラボン(Jオイルミルズ製、イソフラボン含有率80%)を表1に示す摂取量になるように配合し、自由摂取させて4週間飼育した。4週間後、エーテル麻酔下で放血安楽死させ、左脛骨を採取し、70%エタノールに5日間保存後、骨密度をDXA(Dual-Energy X-ray Absorptiometry)法にて測定した。その結果を図1に示す。対照群に対してそれぞれt−検定を行った。
【0025】
【表1】

【0026】
[動物実験の評価]
図1に示されるように、試料Aの単独摂取群において、骨粗鬆症モデルラットの通常Ca食の条件では効果が認められなかったが、試料Aを与えた群は対照群よりも骨密度の減少が少ない傾向にあった。また、特に試料Aとフラクトオリゴ糖の併用摂取群、及び試料Aとイソフラボンの併用摂取群においては対照群に対し、p<0.05で有意に骨密度の減少抑制効果が認められた。
以上、本発明の重合度11以上のリン酸化糖類は、フラクトオリゴ糖やイソフラボンと併用すると、卵巣を摘出した骨粗鬆症モデルラットにおいて骨密度の減少を抑制することが確かめられた。従って、これらを含有する骨密度減少抑制組成物は、高回転型骨粗鬆症の予防および進行の遅延に有効に寄与することは明らかである。
【0027】
<実施例1>
表2に示した組成で各成分を混合し、殺菌処理後、容器へ充填して骨密度減少抑制作用を有する清涼飲料を作製した。
【0028】
【表2】

【0029】
表3に示した組成で各成分を混合し、成型後、オーブンで焼き上げて骨密度減少抑制作用を有するクッキーを作製した。
【0030】
【表3】

【0031】
表4に示した組成で各成分を混合して生地を調製後、定法に従い醗酵と焼成を行って、骨密度減少抑制作用を有する菓子パンを作製した。
【0032】
【表4】

【0033】
表5に示した組成で各成分を混合し、打錠し、骨密度減少抑制作用を有する錠剤を作製した。
【0034】
【表5】

【0035】
表6に示した組成で各成分を混合し、定法により醗酵させ、骨密度減少抑制作用を有するヨーグルトを作製した。
【0036】
【表6】

【0037】
表7に示した組成で各成分を混合し、加熱、加圧下成型し、骨密度減少抑制作用を有するペットフードを作製した。
【0038】
【表7】

【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】動物試験の結果を表す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合度が11以上のリン酸化糖類、カルシウム、及びマグネシウムを含有することを特徴とする骨密度減少抑制組成物。
【請求項2】
イソフラボン類、フラクトオリゴ糖のうち少なくとも一方を含有することを特徴とする請求項1記載の骨密度減少抑制組成物。
【請求項3】
重合度が11以上のリン酸化糖類が、リン酸化デキストリン、リン酸化多糖、リン酸化澱粉、還元リン酸化デキストリンから選ばれる1又は2以上の物質であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の骨密度減少抑制組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2010−150144(P2010−150144A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−326809(P2008−326809)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000122243)王子コーンスターチ株式会社 (17)
【Fターム(参考)】