説明

骨密度測定装置

【課題】骨密度およびそれを基礎付けた測定量を骨の診断に適した態様で表示することを目的とする。
【解決手段】骨密度測定装置は、被検体を透過したX線に基づいて、骨塩の三次元空間分布を平面に投影した骨塩分布データを取得する。骨密度測定装置は、骨塩分布データに基づいて骨塩量、骨面積および骨密度を求め、求められた骨塩量、骨面積および骨密度をディスプレイに表示する。診断の対象骨は、例えば、腰椎をなす第2椎骨、第3椎骨および第4椎骨である。ディスプレイには、第2〜第4椎骨の骨密度D2〜D4、骨面積S2〜S4、および骨塩量C2〜C4を縦軸とし、検査時を横軸とした画像が表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨密度測定装置に関し、特に、同一被検体につき複数回の検査によって求められた骨密度を表示する装置に関する。
【0002】
骨粗鬆症等の診断を行うための評価値として骨密度があり、X線によってその測定を行う骨密度測定装置が広く用いられている。骨密度測定装置は、X線発生器から発せられ被検体を透過したX線をX線検出器によって検出し、その検出結果に基づいて被検体の骨塩分布を測定する。骨密度測定装置は、測定された骨塩分布に基づいて骨塩量および骨面積を求める。そして、骨塩量を骨面積で除すことで骨密度を求め、ディスプレイ等に骨密度を表示する。ここで、骨密度を求める元となった骨塩量および骨面積は、従来において表示させてはいなかった。
【0003】
なお、以下の特許文献1には、X線画像データに基づいて対象骨の骨量(骨密度)、および骨構造の解析を行い、将来の骨折リスクを数値的に表す方法およびシステムが記載されている。引用文献2には、腰椎の骨密度または骨塩量を測定する装置が記載されている。この装置は、骨密度の高い後方要素を測定対象から排除することで適切な測定値を取得する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平9−508813号公報
【特許文献2】特表平10−509075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
骨密度は、骨塩量を骨面積で除した値であるため、骨の大きさに個体差がある複数の被検体の間で骨の状態を比較するために適した測定値である。しかし、同一被検体につき複数回の検査が行われ、骨の状態の変化の診断を行う場合には、骨密度のみの表示では適切な診断を行うことが困難となることがある。例えば、先の検査と後の検査の間に圧迫骨折等によって骨が変形すると、先の検査で測定された骨面積と後の検査で測定された骨面積とが異なり、骨塩量が一定であっても骨密度が変化してしまう。また、検査ごとに被検体の体位が異なる場合には、測定される骨面積が検査ごとに異なり、骨塩量が一定であっても骨密度が見かけ上変化してしまう。したがって、測定された骨密度が変化した場合、その変化が骨塩量の変化に起因するものであるのか、骨面積の変化に起因するものであるのかを特定することは困難である。
【0006】
本発明は、骨密度およびそれを基礎付けた測定量を骨の診断に適した態様で表示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、被検体に対しX線を透過させることにより、骨塩の分布を表す全体分布データを取得する骨塩分布取得手段と、前記全体分布データから前記被検体内の対象骨に対応する部分分布データを抽出する抽出手段と、前記抽出手段によって抽出された部分分布データに対する積算処理に基づいて、前記対象骨についての骨塩量を求める積算処理手段と、前記部分分布データにおける前記対象骨の面積を求める面積算出手段と、前記骨塩量と前記面積とに基づいて骨密度を求める骨密度算出手段と、同一被検体につき複数回の検査によって求められた複数の骨密度および複数の面積を時間軸上に表示する表示手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
骨密度は、骨塩量と対象骨の面積とに基づいて求められる。したがって、表示手段が実行する処理によれば、骨密度が変化した場合において、骨密度の変化が面積の変化に起因するか否かを示すことができる。部分分布データにおける対象骨の面積は、例えば、X線が検出される面における対象骨の投影面積として定義される。この面積は、実際の投影面積に所定比率を乗じた値であってもよい。
【0009】
本発明に係る骨密度測定装置においては、望ましくは、前記表示手段は、前記複数の骨密度および前記複数の面積と共に、同一被検体につき複数回の検査によって求められた複数の骨塩量を時間軸上に表示する。
【0010】
骨塩量の変化に伴って骨密度が変化した場合には、骨密度および面積を表示するのみでは、骨塩量の変化は不明となり、骨密度の変化の原因を特定することが困難となることがある。そこで、骨密度および面積と共に、骨塩量を時間軸上に表示することにより、骨密度の変化の原因を適格に表示することができる。
【0011】
本発明に係る骨密度測定装置においては、望ましくは、前記対象骨は個々の椎骨であり、前記抽出手段は、前記個々の椎骨について前記部分分布データを抽出し、前記積算処理手段は、前記個々の椎骨について骨塩量を求め、前記面積算出手段は、前記個々の椎骨について面積を求め、前記骨密度算出手段は、前記個々の椎骨について骨密度を求め、前記表示手段は、前記個々の椎骨について、同一被検体につき複数回の検査によって求められた複数の骨密度および複数の面積を時間軸上に表示する。
【0012】
この構成においては、個々の椎骨について、同一被検体につき複数回の検査によって求められた複数の骨密度および複数の面積が時間軸上に表示される。そのため、複数の椎骨の状態を相互に比較することができる。これによって、例えば、複数の椎骨のうちいずれかに圧迫骨折等があったことをユーザに把握させることができる。また、検査ごとに被検体の体位が変化した場合には、求められる面積は、複数の椎骨の総てにおいて変化する。そのため、この構成によれば、複数の椎骨の総てについて面積が変化したことを表示し、検査ごとに被検体の体位が変化したことをユーザに把握させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、骨密度およびそれを基礎付けた測定量を骨密度の変化の診断に適した態様で表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る骨密度測定装置の構成を示す図である。
【図2】骨塩分布データが表す骨塩分布を概念的に示した図である。
【図3】記憶部に記憶される情報の構成を示す図である。
【図4】骨密度表示モードにおいて表示される画像の例を示す図である。
【図5】骨塩量および骨面積の変化に対し、骨密度が増加するか否かを示す図である。
【図6】骨密度/骨面積表示モードにおいて表示される画像の例を示す図である。
【図7】骨密度/骨面積・個別表示モードにおいて表示される画像の例を示す図である。
【図8】骨密度/骨面積/骨塩量・個別表示モードにおいて表示される画像の例を示す図である。
【図9】第2椎骨についての骨密度、骨面積、および骨塩量を縦軸に示し、検査時を横軸に示した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1には本発明の実施形態に係る骨密度測定装置の構成が示されている。骨密度測定装置は、被検体16を透過したX線に基づいて、骨塩の三次元空間分布を平面に投影した骨塩分布データを取得する。骨密度測定装置は、骨塩分布データに基づいて骨密度を求め、求められた骨密度をディスプレイ26に表示する。
【0016】
骨密度測定装置の具体的な構成について説明する。骨密度測定装置は、X線発生部10、X線検出部12、ブッキーテーブル18、プロセッサ22、記憶部24、ディスプレイ26、システムコントローラ28、および操作部30を備える。プロセッサ22内には、X線検出部12の検出値に基づいて骨塩分布データを生成する骨塩分布データ生成部32、骨塩分布データから測定対象のデータを抽出する部分分布データ抽出部34、抽出されたデータに基づいて骨密度等を求める測定値演算部36、および、画像データを生成する画像生成部38が構成される。
【0017】
X線発生部10は、X線放射方向を上に向けて配置されている。X線検出部12は、検出面14が下に向けられX線発生部10に対向させて配置されている。X線発生部10とX線検出部12との間には、X線を透過する材料で形成されたブッキーテーブル18が配置されている。ブッキーテーブル18上には被検体16が定置され、X線検出部12の上方からブッキーテーブル18の上方にかけては、X線ビームが走査される診断空間20が形成される。
【0018】
操作部30は、キーボード、マウス、トラックボール等の情報を入力する機構を含み、ユーザの操作に基づいてシステムコントローラ28に動作指示情報を与える。システムコントローラ28は、動作指示情報に基づいて、X線発生部10、X線検出部12およびプロセッサ22を制御する。これによって、X線発生部10、X線検出部12およびプロセッサ22は、操作部30における操作に応じた処理を実行する。
【0019】
一般に、骨密度の測定を行う検査は、同一被検体について所定期間ごとに行われる。ここでは、腰椎をなす個々の椎骨を診断の対象骨とした例につき、骨密度測定装置が実行する処理について説明する。
【0020】
X線発生部10、X線検出部12、および骨塩分布データ生成部32は、二重エネルギーX線吸収測定法に基づいて被検体16の骨塩分布データを取得する。この測定法においては、エネルギーが異なる2種類のX線ビームのそれぞれについて被検体16に対する吸収率分布データが求められ、各吸収率分布データから骨塩分布データが求められる。ここで、吸収率分布データは、被検体16を透過するX線に対する吸収率の分布を検出面14上に表したものである。
【0021】
検査において被検体16は、X線発生部10とX線検出部12との間に腰部が位置するよう、ブッキーテーブル18上に定置される。X線発生部10は、放射するX線ビームのエネルギーを第1の値E1とし、診断空間20内においてX線ビームを走査する。X線検出部12は、検出面14上の各検出位置においてX線を検出し、各検出位置における検出値を骨塩分布データ生成部32に出力する。骨塩分布データ生成部32は、X線検出部12から出力された各検出値に基づいて、エネルギーE1に対する吸収率分布データA1を求める。
【0022】
次に、X線発生部10は、放射するX線ビームのエネルギーを第2の値E2とし、診断空間20内においてX線ビームを走査する。X線検出部12は、検出面14上の各検出位置においてX線を検出し、各検出位置における検出値を骨塩分布データ生成部32に出力する。骨塩分布データ生成部32は、X線検出部12から出力された検出値に基づいて、エネルギーE2に対する吸収率分布データA2を求める。
【0023】
骨塩分布データ生成部32は、吸収率分布データA1およびA2に基づいて、骨塩の3次元空間分布が検出面14に投影された骨塩分布データを求める。本実施形態において求められる骨塩分布データは、骨塩量を表すピクセル値と検出面14上の位置を表す情報とを対応付けたピクセルデータの集合として表される。骨塩分布データ生成部32は、骨塩分布データを部分分布データ抽出部34に出力する。
【0024】
図2には、骨塩分布データが表す骨塩分布が概念的に示されている。ハッチングを施した領域に囲まれた白色の領域は腰椎に対応する。腰椎は、第1椎骨から第5椎骨の5つの椎骨からなり、図2には、第1椎骨L1の一部、第2椎骨L2、第3椎骨L3、第4椎骨L4、および第5椎骨L5の一部が示されている。ここでは、第2椎骨から第4椎骨が対象骨とされる。
【0025】
骨密度を求める演算処理は、図1に示す部分分布データ抽出部34および測定値演算部36が実行する。部分分布データ抽出部34は、各椎骨の領域を含む領域として骨塩分布面上に関心領域R2〜R4を設定する。そして、骨塩分布データから関心領域R2〜R4に対応する部分分布データを抽出し、測定値演算部36に出力する。測定値演算部36は、各部分分布データのピクセル値を積算し、各椎骨について骨塩量を求める。また、測定値演算部36は、各部分分布データに基づいて各椎骨の骨面積を求め、骨塩量を骨面積で除すことで骨密度を求める。測定値演算部36は、求められた各測定値を検査年月日の情報に対応付けて記憶部24に記憶する。
【0026】
なお、各測定値は、ディスプレイ26に数値表示してもよい。この場合、測定値演算部36は、各測定値を画像生成部38に出力する。画像生成部38は、各測定値をディスプレイ26に数値表示させる。
【0027】
部分分布データ抽出部34および測定値演算部36が実行する具体的な処理について説明する。部分分布データ抽出部34は、複数の椎骨が連なる方向を示す腰椎直線Aを骨塩分布面上に設定する。腰椎直線Aの設定は、例えば、骨塩の分布を直線近似する演算によって行われる。図2には、このようにして設定された腰椎直線Aが示されている。
【0028】
部分分布データ抽出部34は、腰椎直線A上においてピクセル値が極小になる極小点を設定し、極小点を通る分割直線を設定する。分割直線は、腰椎直線Aに垂直であり腰椎直線Aから所定の距離だけ離れた位置で終端する。これによって、2つの椎骨に対応する2つの領域の間に分割直線が設定される。図2には、第1椎骨L1と第2椎骨L2との間、第2椎骨L2と第3椎骨L3との間、第3椎骨L3と第4椎骨L4との間、および、第4椎骨L4と第5椎骨L5との間にそれぞれ設定された、分割直線D12、D23、D34およびD45が示されている。
【0029】
部分分布データ抽出部34は、さらに、各分割直線の両側の終端を通り、腰椎直線Aに平行な2本の境界線B1およびB2を設定する。部分分布データ抽出部34は、分割直線D12、分割直線D23、境界線B1およびB2によって囲まれる領域を第2椎骨関心領域R2として設定する。また、分割直線D23、分割直線D34、境界線B1およびB2によって囲まれる領域を第3椎骨関心領域R3として設定する。さらに、分割直線D34、分割直線D45、境界線B1およびB2によって囲まれる領域を第4椎骨関心領域R4として設定する。
【0030】
部分分布データ抽出部34は、各関心領域における骨塩分布を表す部分分布データを骨塩分布データから抽出し、測定値演算部36に出力する。すなわち、部分分布データ抽出部34は、第2椎骨関心領域R2における骨塩分布を表すL2部分分布データを骨塩分布データから抽出し、測定値演算部36に出力する。同様に、部分分布データ抽出部34は、第3椎骨関心領域R3における骨塩分布、および第4椎骨関心領域R4における骨塩分布をそれぞれ表す、L3部分分布データおよびL4部分分布データを骨塩分布データから抽出し、L3部分分布データおよびL4部分分布データを測定値演算部36に出力する。
【0031】
ここでは、骨塩分布データに対する演算処理に基づいて関心領域を設定する処理について説明した。このような処理の他、ユーザの操作に基づいて関心領域の設定が行われてもよい。この場合、骨塩分布データ生成部32は画像生成部38に骨塩分布データを出力し、画像生成部38はディスプレイ26に骨塩分布の画像を表示させる。ユーザは、ディスプレイ26に表示された骨塩分布の画像を参照しながら操作部30を操作し、腰椎直線A、分割直線D12、D23、D34、D45および境界線B1およびB2を設定する。システムコントローラ28は、操作部30における操作に基づいて、関心領域を設定する処理を部分分布データ抽出部34に行わせる。
【0032】
測定値演算部36は、L2部分分布データ、L3部分分布データ、およびL4部分分布データに基づいて、第2椎骨、第3椎骨および第4椎骨のそれぞれについて骨密度を求める。
【0033】
測定値演算部36は、L2部分分布データに基づいて第2椎骨の骨塩量C2を求める。すなわち、L2部分分布データのピクセル値を積算することで、第2椎骨の骨塩量C2を求める。次に、測定値演算部36は、L2部分分布データに基づいて第2椎骨の骨面積S2を求める。すなわち、L2部分分布データに含まれるピクセルデータのうち、ピクセル値が所定の閾値を超えるピクセルデータの個数を求める。そして、求められた個数に1ピクセルデータ当たりの面積を乗じることで第2椎骨の骨面積S2を求める。測定値演算部36は、第2椎骨の骨塩量C2をその骨面積S2で除すことで、第2椎骨の骨密度D2を求める。
【0034】
測定値演算部36は、第2椎骨に対する処理と同様の処理によって、L3部分分布データに基づいて、第3椎骨の骨塩量C3、骨面積S3および骨密度D3を求める。また、測定値演算部36は、第2椎骨に対する処理と同様の処理によって、L4部分分布データに基づいて、第4椎骨の骨塩量C4、骨面積S4および骨密度D4を求める。さらに、測定値演算部36は、骨密度D2〜D4の平均値を骨密度平均値DAとして求める。
【0035】
測定値演算部36は、骨密度平均値DA、ならびに、各椎骨ついて求められた骨塩量、骨面積および骨密度を、検査年月日の情報に対応付けて記憶部24に記憶させる。
【0036】
骨密度の測定を行う検査は、同一被検体について所定期間ごとに行われ、骨密度測定装置は、各検査において得られた各測定値を検査年月日の情報に対応付けて記憶部24に記憶する。図3には、記憶部24に記憶される情報の構成が示されている。各列には、検査年月日の情報が記録され、上から骨塩量C2〜C4、骨面積S2〜S4、骨密度D2〜D4および骨密度平均値DAが記録されている。
【0037】
次に、各検査において得られた測定値群のうちいずれかをディスプレイ26に表示する処理について説明する。骨密度測定装置は、操作部30における操作に応じて、複数回の検査に亘って取得された測定値群のうち操作に応じて指定されたものを時間(検査時)に対応付けて表示する。操作部30においては、表示すべき測定値が取得された期間の指定、表示モードの指定等が行われる。システムコントローラ28は、操作部30における操作に応じて画像生成部38を制御する。画像生成部38は、表示に必要な情報を記憶部24から読み込み、指定された表示モードによる表示を行う。
【0038】
表示モードの1つとして骨密度表示モードがある。骨密度表示モードでは、検査時を横軸とし、第2椎骨から第4椎骨についての骨密度の平均値である骨密度平均値DAを縦軸とした表示が行われる。図4には、骨密度表示モードにおいてディスプレイ26に表示される画像の例が示されている。骨密度表示モードでは、骨密度平均値DAを表示する代わりに、第2椎骨から第4椎骨のそれぞれの骨密度を個別に表示してもよい。
【0039】
図4に示される例では、第3回目の検査から第4回目の検査にかけて骨密度平均値DAが増加している。したがって、被検体の骨塩量がこの時期に増加した可能性がある。しかし、骨密度平均値の増加の要因には、骨塩量の増加の他、圧迫骨折等による骨の変形、検査ごとの被検体の体位の変化等がある。そのため、骨密度平均値が増加したことを理由として、被検体の骨塩量が増加したものと判断することは困難である。
【0040】
図5は、このような問題点を一般化して示したものである。この図においては、骨塩量の変化の程度と骨面積の変化の程度との各組み合わせについて、骨密度が増加するか減少するかが示されている。骨塩量および骨面積の変化の程度は、減少、微弱減少、変化なし、微弱増加、または増加のいずれかに分類されている。
【0041】
ケース1および2は、骨塩量が微弱減少した場合または骨塩量が変化しなかった場合において、骨密度が増加する場合を示している。例えば、骨塩量が微弱減少した場合には、骨面積が減少した場合に骨密度が増加する(ケース1)。
【0042】
ケース3〜6は、骨塩量が微弱増加または増加した場合において、骨密度が増加する場合、および、骨塩量が減少または微弱減少した場合において、骨密度が減少する場合を示している。例えば、骨塩量が増加した場合には、骨面積が減少した場合、微弱減少した場合、変化しなかった場合、および微弱増加した場合のいずれの場合にも、骨密度が増加する(ケース4)。また、骨密度が減少した場合には、骨面積が微弱減少した場合、変化しなかった場合、微弱増加した場合、および増加した場合のいずれの場合にも、骨密度が減少する(ケース5)。
【0043】
ケース7および8は、骨塩量が変化しなかった場合または微弱増加した場合において、骨密度が減少する場合を示している。例えば、骨塩量が微弱増加した場合には、骨面積が増加した場合に骨密度が減少する(ケース8)。
【0044】
ケース3〜6では、骨塩量の増減傾向と骨密度の増減傾向が一致する一方、ケース1、2、7および8では、骨塩量の増減傾向と骨密度の増減傾向は一致しない。そのため、骨密度を検査時に対応付けて表示したのみでは、骨の状態の変化を詳細に診断することは困難である。
【0045】
そこで、本実施形態に係る骨密度測定装置は、このような問題点を解消するため、骨密度/骨面積表示モードでの表示を行う。この表示モードでは、骨密度平均値に加えて、各椎骨の骨面積が表示される。
【0046】
図6には、骨密度/骨面積表示モードにおいてディスプレイ26に表示される画像の例が示されている。この例では、第3回目の検査から第4回目の検査にかけて第2椎骨の骨面積S2が減少している。この変化は、第3椎骨および第4椎骨の骨面積の変化よりも著しい。この表示によれば、第2椎骨の骨面積S2の減少によって骨密度平均値DAが増加した可能性が高いことをユーザに把握させることができる。
【0047】
骨密度の時間変化をより詳細に表す表示モードとして、骨密度測定装置は、骨密度/骨面積・個別表示モードによる表示を行う。この表示モードでは、上述の骨密度/骨面積表示モードのように骨密度平均値を縦軸に表示する代わりに、第2椎骨、第3椎骨および第4椎骨のそれぞれの骨密度を縦軸に表示する。
【0048】
図7には、骨密度/骨面積・個別表示モードにおいてディスプレイ26に表示される画像の例が示されている。この例では、第3回目の検査から第4回目の検査にかけて第2椎骨の骨面積S2が減少し骨密度D2が増加している。この変化は、第3椎骨および第4椎骨の骨面積および骨密度の変化よりも著しい。この表示によれば、第2椎骨の骨面積S2の減少によって第2椎骨の骨密度D2が増加したことをユーザに把握させることができる。骨密度/骨面積・個別表示モードによれば、第2椎骨から第4椎骨のそれぞれの骨密度および骨面積が個別に表示される。これによって、各椎骨の状態の変化をユーザに把握させることがでできる。
【0049】
上記のように、骨密度は、骨塩量を骨面積で除した値として定義されるため、骨塩量の変化が著しくない場合には、骨面積が減少すると骨密度は増加し、骨面積が増加すると骨密度は減少する。しかし、骨塩量の変化が著しい場合には、骨面積と骨密度との間に必ずしもこのような関係は成立しない。したがって、骨密度および骨面積の表示のみでは、ユーザが骨密度が変化した原因を特定することが困難となることがある。
【0050】
そこで、本実施形態に係る骨密度測定装置は、骨密度/骨面積/骨塩量・個別表示モードによる表示を行ってもよい。この表示モードでは、上述の骨密度/骨面積・個別表示モードにおいて表示される各椎骨の骨密度および骨面積に加えて、各椎骨の骨塩量が縦軸に表示される。
【0051】
図8には、骨密度/骨面積/骨塩量・個別表示モードにおいてディスプレイ26に表示される画像の例が示されている。被検体および検査条件は、図7に示される場合と同一である。この例においては、第3回目の検査から第4回目の検査にかけて第2椎骨の骨面積S2が減少し骨密度D2が増加している一方、骨塩量C2の変化は著しくない。この表示によれば、第2椎骨の骨密度D2の増加が骨面積S2の減少に起因するものであることをユーザに把握させることができる。
【0052】
なお、骨密度/骨面積/骨塩量・個別表示モードにおいては、各椎骨の骨密度の表示と共に、または、各椎骨の骨密度の表示に代えて、骨密度平均値を表示してもよい。また、各椎骨についての測定値を表示することに代えて、第2椎骨、第3椎骨および第4椎骨のうちユーザの操作に応じて指定された1つの椎骨について、骨密度、骨面積、および骨塩量を縦軸に表示してもよい。
【0053】
図9(a)および(b)には、第2椎骨について骨密度D2、骨面積S2、および骨塩量C2を縦軸に表示した例が示されている。図9(a)に示される例では、第3回目の検査から第4回目の検査にかけて第2椎骨の骨面積S2が減少し骨密度D2が増加している一方、骨塩量C2の変化は著しくない。この表示によって、第2椎骨の骨密度D2の増加は骨面積S2の減少に起因するものであることをユーザに把握させることができる。図9(b)に示される例では第2回目から第4回目の検査にかけて第2椎骨の骨密度D2および骨塩量C2が増加しているのに対し、骨面積S2の変化は著しくない。この表示によって、第2椎骨の骨密度D2の増加は骨塩量C2の増加に起因するものであることをユーザに把握させることができる。
【符号の説明】
【0054】
10 X線発生部、12 X線検出部、14 検出面、16 被検体、18 ブッキーテーブル、20 診断空間、22 プロセッサ、24 記憶部、26 ディスプレイ、28 システムコントローラ、30 操作部、32 骨塩分布データ生成部、34 部分分布データ抽出部、36 測定値演算部、38 画像生成部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に対しX線を透過させることにより、骨塩の分布を表す全体分布データを取得する骨塩分布取得手段と、
前記全体分布データから前記被検体内の対象骨に対応する部分分布データを抽出する抽出手段と、
前記抽出手段によって抽出された部分分布データに対する積算処理に基づいて、前記対象骨についての骨塩量を求める積算処理手段と、
前記部分分布データにおける前記対象骨の面積を求める面積算出手段と、
前記骨塩量と前記面積とに基づいて骨密度を求める骨密度算出手段と、
同一被検体につき複数回の検査によって求められた複数の骨密度および複数の面積を時間軸上に表示する表示手段と、
を備えることを特徴とする骨密度測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の骨密度測定装置において、
前記表示手段は、前記複数の骨密度および前記複数の面積と共に、同一被検体につき複数回の検査によって求められた複数の骨塩量を時間軸上に表示することを特徴とする骨密度測定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の骨密度測定装置において、
前記対象骨は個々の椎骨であり、
前記抽出手段は、前記個々の椎骨について前記部分分布データを抽出し、
前記積算処理手段は、前記個々の椎骨について骨塩量を求め、
前記面積算出手段は、前記個々の椎骨について面積を求め、
前記骨密度算出手段は、前記個々の椎骨について骨密度を求め、
前記表示手段は、前記個々の椎骨について、同一被検体につき複数回の検査によって求められた複数の骨密度および複数の面積を時間軸上に表示することを特徴とする骨密度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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