説明

骨強化補助食品

【課題】日常生活では不足しがちなカルシウムをおいしく手軽に摂取することができ、ミネラルバランスに優れ、骨密度を効果的に高めることができ、骨粗鬆症の改善に役立つ骨強化補助食品を提供する。
【解決手段】
黒豆Bの周囲を覆うように、カルシウム粉末及びドロマイト粉末を含むミネラル層1と、小麦粉を含む生地配合を焙煎して形成される生地層2と、豆乳粉末や抹茶等を含む調味配合を硬化油脂で固めて形成される外層3とを備えている。黒豆30重量部に対し、カルシウム粉末は2重量部以上5重量部以下配合され、ドロマイト粉末は30重量部以上45重量部以下配合され、豆乳粉末は5重量部以上15重量部以下配合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルシウムを効果的に体内に吸収させることができ、骨粗鬆症の発症予防及び維持、改善に役立つ骨強化補助食品に関する。
【背景技術】
【0002】
カルシウムは骨を構成する主要成分であるにもかかわらず、日常の食生活では不足しがちな栄養素であるため、骨密度の低下に起因する骨量の減少、さらには骨強度の脆弱化が顕著になるなど骨粗鬆症が問題視されている。
【0003】
そのため、カルシウムを手軽にバランスよく摂取できる手段が求められており、例えばその一つとしてカルシウムを添加した豆菓子が提案されている(特許文献1)。
【0004】
一般に豆菓子は、大豆等の周りに寒梅粉や小麦粉を糖蜜で層状に付着させ、焙煎した後、味付けすることによって製造されるが(例えば、特許文献2)、そこでの豆菓子は、まず、ミルクカルシウムを混合した糖蜜を豆の表面に塗布してから、その上に小麦粉やもち米粉を付着させて層状に形成し、焙煎する。焙煎後、更にその外面に糖蜜でココアを付着させ、乾燥して製造している。
【0005】
このように、風味に癖のあるミルクカルシウムの外側を小麦粉やココア等の層で被覆すればその風味が緩和されるため、カルシウムを手軽に食することができるようになる。
【0006】
尚、カルシウムはマグネシウムとともに摂取するのが好ましく、特にカルシウム:マグネシウムの比率が2:1となるように摂取するのが好ましいとされている。
【特許文献1】特開2004−121060号公報
【特許文献2】特開2007−195529号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
カルシウムは体内に吸収され難いという性質があるため、特許文献1の豆菓子のように、単にカルシウムを配合するだけでは、せっかくカルシウムを取り込んでも十分に活かし切れないおそれがあるし、ミネラルバランスが崩れてかえって悪影響を生じるおそれもある。
【0008】
特に骨粗鬆症を発症しているような場合には骨代謝のバランスが崩れているため、そのバランスが回復しないと、単にカルシウムを多く摂取するだけでは十分な改善効果を得るのは難しい。
【0009】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、日常生活では不足しがちなカルシウムをおいしく手軽に食べることができるうえ、ミネラルバランスに優れ、体内に効率よく吸収させることができ、骨密度を効果的に高めて骨粗鬆症の改善にも役立つ骨強化補助食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明者らは骨密度の増強に効果があるとされる様々な素材を選び出し、その組み合わせや配合比率について鋭意検討を行った結果、大豆、カルシウム粉末、ドロマイト粉末、豆乳粉末を主体的に組み合わせた所定の配合比率を見い出した。
【0011】
すなわち、本発明の骨強化補助食品は、大豆30重量部に対して、カルシウム粉末を2重量部以上5重量部以下配合し、ドロマイト粉末を30重量部以上45重量部以下配合し、豆乳粉末を5重量部以上15重量部以下配合するものである。
【0012】
この骨強化補助食品によると、詳細は後述するが、骨密度の増強、特に骨粗鬆症の改善に有意な効果が得られることが実証された。
【0013】
その理由としては、大豆や豆乳粉末には骨粗鬆症の抑制に有効なイソフラボンが豊富に含まれており、また、カルシウム粉末とドロマイト粉末とを上記比率に配合することで、カルシウムとマグネシウムの比率がミネラルバランスに優れるほぼ2:1となるため、骨代謝のバランスが改善されてカルシウムの吸収が促進され、骨密度が増加したものと考えられる。
【0014】
更に、上記配合には粉乳を10重量部以上40重量部以下配合するのが好ましい。粉乳にはカルシウムの吸収を促進する乳糖が含まれているため、骨密度の増強をより確かなものとすることができる。
【0015】
更に、上記配合には抹茶を配合するとよい。そうすれば、抹茶の風味によってカルシウムやドロマイトの風味をよくマスキングすることができるので、おいしく食べることができる。また、抹茶にはカテキンが含まれているため、血圧上昇抑制や血糖値調節等の作用も期待できる。
【0016】
また、柑橘系カルシウムを配合することもできる。ここでいう柑橘系カルシウムとは、柑橘類に含まれるカルシウムのことをいい、例えば柑橘類の皮にはカルシウムが比較的多く含まれていることから、そのカルシウムの粉末や粒、チップなどを上記カルシウム粉末に代替させることができる。柑橘系カルシウムであれば、それ自体、酸味のある調味料としても利用できるため、より食べ易くすることができる。
【0017】
カルシウムの吸収を強化するために、更にカゼインホスホペプチド(単にCPPともいう)を1重量部以上4重量部以下配合することもできる。そうすれば、風味を損なうことなく、より安定してカルシウムを体内に吸収させることができ、骨密度をより確実に増強させることができる。
【0018】
CPP以外にも、フラクトオリゴ糖やクエン酸リンゴ酸カルシウム、ポリグルタミン酸、リン酸水素カルシウム、リン酸化オリゴ糖カルシウム、第二リン酸カルシウム、乳タンパク分解物(CPP−ACP)などの素材を配合することもできる。そうすれば、よりカルシウムの吸収を促進させることができる。
【0019】
このような配合の骨強化補助食品の具体例としては、例えば、豆菓子様に形成するのが好ましい。
【0020】
すなわち、上記大豆の周囲を覆うように複数の層を形成し、上記複数の層が、上記カルシウム粉末及びドロマイト粉末を含み、上記大豆の外側に形成される第1層と、小麦粉を含む生地配合を焙煎して上記第1層の外側に形成される第2層と、上記豆乳粉末を含む調味配合を常温で硬化する油脂(単に硬化油脂ともいう)で固めて上記第2層の外側に形成される第3層とを備える構成とする。
【0021】
この構成の骨強化補助食品によれば、手軽に食べることができるし、カルシウムの摂取量も粒単位で計算できるため、老人や子供でも適切なカルシウム量を誤ることなく摂取できる。
【0022】
そして、食べ難くて比較的硬い食感を呈するカルシウム粉末等の層を最も内側に位置させ、その外側に比較的柔らかくて脆いサクサクとした食感の第2層を形成するとともに、更にその外側に硬化油脂で固めたほどよい硬さの第3層を形成することで、心地よい歯応えで噛み込むことができ、咀嚼力の低下した老人等であっても硬さを苦にせずおいしく食べることができる。もちろん、癖のある風味が第3層の調味配合でマスキングされる利点もある。
【0023】
特に、口に含んだときに体温で硬化油脂が柔らかくなるため、粉末の調味配合が溶け出してよりいっそうマスキング効果が発揮される。また、硬化油脂が第1層や第2層の吸湿を防ぐので、異なる食感を安定して維持することができる。
【0024】
この場合、上記大豆と第1層との間に、穀粉の層を形成するとよい。そうすることで、大豆の外側に安定して第1層を形成することができ、高品質な骨強化補助食品を安定して量産できるようになる。
【0025】
また、上記第2層と第3層の間には、澱粉の層を形成するとよい。そうすることで、第2層の外側に安定して第3層を形成することができ、より高品質な骨強化補助食品を安定して量産できるようになる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明によれば、おいしく手軽に摂取することができるうえ、ミネラルバランスに優れ、骨密度を効果的に高めることができ、骨粗鬆症の発症予防及び維持、改善にも役立つ骨強化補助食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0028】
図1に本発明の骨強化補助食品の一例を示す。この骨強化補助食品は豆菓子様に形成したものであり、粒状の黒豆(黒大豆)Bの周囲を覆うようにそれぞれ配合の異なる複数の層が形成されていて、外径が10mm〜20mm程度の略球形をしている。
【0029】
かかる形態の骨強化補助食品は多数個まとめて包装されており、その包装材に表示された指針に基づいて、適切なカルシウム量を個数単位で手軽に摂取できるように構成されている。より簡便かつ適切にカルシウムが摂取できるように、例えば、一日分の所定数の骨強化補助食品を一袋ずつ個別に包装しておいてもよい。
【0030】
大豆の一品種である黒豆Bには、骨粗鬆症の抑制に有効なイソフラボンが豊富に含まれており、その色は種皮に含まれるアントシアニン系の色素による。この実施形態では、黒豆Bはその形状を活かすように粉砕等せずに粒形状のままで使用されている。尚、本実施形態では黒豆Bを用いたが、これに代えて一般的な大豆やその他の黄大豆や青大豆のような色大豆を用いてもよい。
【0031】
その黒豆Bの外側には、所定配合のカルシウム粉末及びドロマイト粉末や、これら粉末を結着させる糖蜜などの結着素材を含むミネラル層1(第1層)が形成されている。黒豆Bとミネラル層1との間には、ミネラル層1を安定して形成させるために穀粉の層Fが形成されている。
【0032】
カルシウム粉末は、炭酸カルシウム等、無機系のカルシウムの粉末であり、例えば、卵殻や牛骨、魚骨など特にその素材は限定されないが、本実施形態では牡蠣殻を所定処理して食品用に粉末に加工したものを使用している。牡蠣殻由来のカルシウム粉末であれば、カルシウム以外にも海洋由来の微量ミネラル成分が含まれている点で優れている。一方、ドロマイト粉末は、鉱物のドロマイトを食品用として粉末に加工したものであり、それ自体カルシウムとマグネシウムとが比較的バランスよく含有されている。
【0033】
カルシウムとマグネシウムの配合比率は、一般に知られているようにカルシウム2重量部に対してマグネシウム1重量部とするのがミネラルバランス上好ましいことから、ここでは全ての素材を配合した後における総量としてのカルシウムとマグネシウムのミネラルバランスがほぼ2:1となるように、ドロマイト粉末とカルシウム粉末との配合比率が設定されている。
【0034】
具体的には、黒豆30重量部に対して、カルシウム粉末を2重量部〜5重量部、ドロマイト粉末を30重量部〜45重量部、それぞれ配合すればよい。
【0035】
カルシウム粉末とドロマイト粉末との配合比率がこの範囲を外れると、ミネラルバランスが崩れてしまい、他の素材との配合比率を調整してもミネラルバランスと風味との両立が困難になる。また、黒豆に対する両粉末の配合比率がこれよりも大きくなると、ミネラル層1が厚くなり過ぎて、噛み込んだときの歯応えや風味に違和感を生じるようになる。
【0036】
そして、このように配合することで、黒豆Bに豊富に含まれているイソフラボンと、バランスに優れたカルシウム及びマグネシウムとの相乗効果により、骨代謝のバランスが改善されるともに、カルシウムの吸収が促進されることとなる。
【0037】
ミネラル層1の表面を覆っているのは、小麦粉や寒梅粉などからなる生地配合を焙煎して形成される生地層2(第2層)であり、この生地層2にも又、これら粉末を結着させる糖蜜などの結着素材が含まれている。この生地層2は焙煎による膨化によって比較的柔らかな脆い物性となっているため、噛み込んだときにサクサクとした食感を与えるとともに、老人等でも噛み易くなっている。
【0038】
そして、この生地層2の表面は澱粉の層Sで覆われている。この層Sは、この外側の外層3(第3層)を安定して形成させるために設けられている。
【0039】
外層3は、この骨強化補助食品の最外層であり、豆乳粉末、全脂粉乳や脱脂粉乳等の粉乳、風味の強い抹茶やレモンの皮の粉末(柑橘系カルシウム)などからなる調味配合を硬化油脂で固めることによって形成されている。この調味配合には、カルシウムの吸収性を向上させるために、粉状のCPPを配合することもできる。カルシウムの吸収を促進する素材として、例えばフラクトオリゴ糖やクエン酸リンゴ酸カルシウム、ポリグルタミン酸、リン酸水素カルシウム、リン酸化オリゴ糖カルシウム、第二リン酸カルシウム、乳タンパク分解物(CPP−ACP)などのCPP以外の素材を配合してもよい。
【0040】
豆乳粉末は豆乳を加工した水溶性の粉体であり、骨粗鬆症の抑制に有効なイソフラボンが豊富に含まれている。一方、粉乳は牛乳を加工した水溶性の粉体であり、まろやかな風味を与えるだけでなくカルシウムも比較的多く含まれているため、カルシウム粉末に代わるカルシウム供給源としても機能するうえ、カルシウムの吸収を促進する乳糖が含まれていることから、より骨密度を増強させることができる。
【0041】
具体的には、黒豆30重量部に対して、豆乳粉末は5重量部〜15重量部配合するのが好ましく、粉乳は10重量部〜40重量部配合するのが好ましい。
【0042】
そうすれば、全体的にカルシウムが吸収され易いミネラルバランスとなり、よりよい風味が得られるとともに、これらの吸湿によるべたつきを抑制しながら外層を適度な厚みに形成することができる。
【0043】
渋みや苦味のある抹茶は、カルシウム粉末やドロマイト粉末の風味によく合うため、これらの癖のある風味を効果的にマスキングすることができる。また、抹茶はカテキンを豊富に含んでいることから、血圧上昇抑制や血糖値調節等の作用も期待できる。
【0044】
具体的には、黒豆30重量部に対して、抹茶は20重量部〜40重量部配合するのが好ましい。そうすれば、十分なマスキング効果が得られるし、製造工程においても他の吸湿性の素材が均一に分散し易くなって作業性も向上する。
【0045】
レモンの皮の粉末にはカルシウムが豊富に含まれているため、カルシウムの供給源として利用することができ、カルシウム粉末の一部をこれに代替することができる。また、酸味のある特有の風味によってカルシウム粉末等を効果的にマスキングすることができる。
【0046】
具体的には、黒豆30重量部に対して、レモンの皮の粉末は10重量部〜30重量部配合するのが好ましい。これとともにレモンの実の粉末を配合してもよい。そうすれば、その風味を活かしておいしく食べることができる。レモンに代えて、あるいはレモンと併用してその他のカルシウム含量の多い柑橘類、例えば、ユズやスダチなどを用いてもよい。
【0047】
CPPは、カルシウムの吸収を促進させるために広く利用されているが、本実施形態では、そのCPPを粉体にして、黒豆30重量部に対して1重量部〜4重量部配合するのが好ましい。そうすれば、硬化油脂との組み合わせで食べたときによく分散してその機能を効率よく発揮させることができる。一方、これより多くなると、吸湿してべたつきが生じ易くなるし、製造時の作業性も悪くなる。
【0048】
硬化油脂は、常温では固化する油脂であり、本実施形態では大豆の硬化油脂を使用している。その融点は、50℃を超えるとマスキングや食べ易さに支障が出るため40℃〜50℃が好ましい。
【0049】
すなわち、この硬化油脂で粉状の調味配合を固めて外層3を形成したことで、層が多少厚くなっても程よい硬さを保持することができ、生地層2との組み合わせによって歯応えが良好になるため、老人等でも違和感を感じることなく黒豆B及びミネラル層1を一気に噛み砕くことができるようになっている。
【0050】
更に、口に含んだときには体温で硬化油脂が柔らかくなって抹茶等の調味配合が溶け出すため、ミネラル層1の風味がより効果的にマスキングされ、おいしく食べることができる。また、硬化油脂はミネラル層1や生地層2の吸湿を防ぐため、食感を安定して維持することができるし、吸湿性が比較的高い粉乳やCPPを最外層に配合してもべたつかず扱い易い。
【0051】
次に、この骨強化補助食品の製造方法について、図2のフローチャートに従って説明する。図に示すように、この製造方法における工程は、作業性、生産性が向上するように、第1工程と第2工程とに分かれていて、各工程別にバッチ単位で一括処理できるように構成されている。
【0052】
第1工程では、骨強化補助食品の核となる焙煎した黒豆Bがつくられる。
【0053】
まず、水温等を考慮して適宜調整しながら5〜15時間、生の黒豆Bを水中に浸漬して膨潤させる(浸漬工程)。次に、余分な水分を除去するため、浸漬した黒豆Bを取り出して温風を吹き付け、その表面を乾燥させる(乾燥工程)。その後、膨潤して柔らかくなった黒豆Bをドラム型の焙煎装置を用いて焙煎する(豆焙煎工程)。焙煎条件としては、例えば140℃〜200℃、10分〜30分であり、その範囲で好みの風味に応じて適宜調整することができる。
【0054】
第2工程では、焙煎した黒豆Bの外側に複数の層を形成する。
【0055】
まず、ドラム状の専用の装置を用いて焙煎した黒豆Bに対して所謂粉巻きを行い、ミネラル層1及び生地層2を形成する。
【0056】
焙煎した黒豆Bの表面に直接ミネラル層1を安定して形成させることが難しいため、ミネラル層1の形成に先立って、黒豆Bの表面が満遍なく覆われる程度に穀粉の層Fを形成する(穀粉層形成工程)。そうすることで、個々の黒豆Bに所定のミネラル層1を安定して形成させることができる。尚、穀粉には小麦粉や米粉、そば粉などが利用できるが、ここでは小麦粉が用いられている。
【0057】
そして、この穀粉の層Fで被覆された黒豆Bに所定比率で配合したカルシウム粉末とドロマイト粉末とを糖蜜を添加しながら加えていき、その表面にミネラル層1を形成させる(ミネラル層形成工程)。続いて、小麦粉や寒梅粉で構成される生地配合を同様に操作してミネラル層1の外側に生地層2を形成させる(生地層形成工程)。
【0058】
生地層2が形成されると、次に、流動式の焙煎装置を用いて焙煎する(生地層焙煎工程)。循環する熱風で焙煎する流動式の焙煎装置を用いることで、多量に処理しても個々の生地層2を均一に加熱することができるため、安定した品質で量産できる。ここでの焙煎条件としては、例えば150℃〜200℃、10分〜30分とすることができる。
【0059】
生地層2を焙煎した後は、常温まで冷却してその表面に澱粉の層Sを形成する(澱粉層形成工程)。この澱粉の層Sは次の外層3を安定して形成させるためのものであり、生地層2の表面が満遍なく覆われている程度に形成すればよい。
【0060】
そして、その澱粉の層Sの外側に、予め所定の配合比率で抹茶や粉乳、豆乳粉末等を均一に混合しておいた調味配合と、加温して液化させた固形油脂とを用いて粉巻きを行い、外層3を形成させる(外層形成工程)。
【0061】
生地層2の表面に直接外層3を形成すると外層3の形成が不安定になるが、この澱粉の層Sを形成することで全体的にバランスよく外層3を形成させることができる。尚、このとき、豆乳粉末や粉乳、CPPは比較的吸湿性が高くダマになり易いが、抹茶やレモンの皮の粉末と混合することで容易に均一に分散させることができ、一粒当たりの配合量を均一にすることができる。
【0062】
こうして製造される骨強化補助食品は、食べ易いうえ、例えば100g当たりにカルシウムが約4200mg、マグネシウムが約2100mg含まれるなど、最終的に最適なミネラルバランスとなるため、必要なときに必要なだけ手軽にバランスよくカルシウムを摂取することができる。
【0063】
(実施例)
図3に、本発明の骨強化補助食品の実施例1〜5を示す。実施例1は、基本となるカルシウム粉末やドロマイト粉末、豆乳粉末等に、抹茶を配合したものである。実施例2は、抹茶とともにCPPを加えたものである。実施例3は、抹茶に代えてレモンの皮の粉末を加えてカルシウム粉末の一部を代替したものである。実施例4は、レモンの皮の粉末を加えてカルシウム粉末の一部を代替するとともにCPPを加えたものである。実施例5は、更に抹茶を加えて、風味を調整したものである。尚、表中の数値の単位は重量部である。
【0064】
上記製造方法により各実施例の骨強化補助食品を製造して試食した結果、いずれもカルシウム粉末やドロマイト粉末の風味を感じることもなく、好ましい歯応えが得られ、おいしく食べることができた。また、カルシウムとマグネシウムの含有比率もほぼ2:1の優れたミネラルバランスとなっていた。
【0065】
(検証実験)
骨強化補助食品の骨密度に対する影響について、生後18週令の成熟マウスを用いて検証実験を行った。本実験では、健全な雄雌のマウスと、強制的に骨粗鬆症を発症させるために、生後12週令に性腺(精巣及び卵巣)を摘出したマウス(骨粗鬆症モデルマウスともいう)とを用いた。
【0066】
食餌としては、目標とするカルシウム摂取量を満たす0.9%Ca含有粉末餌(日本クレア株式会社製、目標Ca餌ともいう)と、平成15年度の国民健康・栄養調査結果に基づいてCa摂取量の不足状態を再現した0.63%Ca含有粉末餌(日本クレア株式会社製、不足Ca餌ともいう)と、上記実施例1及び実施例2の各骨強化補助食品をそれぞれ粉砕したもの(実施例1餌、実施例2餌ともいう)とを使用した。
【0067】
実験では、健全なマウスに対し、目標Ca餌を給餌する群(A群)、健全なマウスに対し、不足Ca餌を給餌する群(B群)、健全なマウスに対し、不足Ca餌に目標とするカルシウム摂取量を満たすまで実施例1餌を加えたものを給餌する群(C群)、骨粗鬆症モデルマウスに対し、不足Ca餌を給餌する群(D群)、骨粗鬆症モデルマウスに対し、不足Ca餌に目標とするカルシウム摂取量を満たすまで実施例1餌を加えたものを給餌する群(E群)、骨粗鬆症モデルマウスに対し、不足Ca餌に目標とするカルシウム摂取量を満たすまで実施例2餌を加えたものを給餌する群(F群)とに分け、それぞれ所定の条件の下で飼育した後、骨密度測定装置により大腿骨における海綿骨及び皮質骨の骨密度と骨塩量とを計測した(n=60)。
【0068】
その結果を図4〜図9に示す。図4及び図5は、雄性マウス及び雌性マウスにおける全骨密度及び全骨塩量の計測結果である。そして、図6及び図7は、同様に海綿骨密度及び海綿骨塩量の計測結果であり、図8及び図9は、同様に皮質骨密度及び皮質骨塩量の計測結果である。尚、各図における記号「*」は、A群と比べて有意(p<0.05)であることを示しており、記号「#」はD群と比べて有意(p<0.05)であることを示している。
【0069】
各図の(a)に示されるように、骨粗鬆症を強制的に発症させたマウスに実施例1餌や実施例2餌を給餌したE群及びF群の骨密度は、図6〜図9に示すように、海綿骨及び皮質骨いずれにおいても増加の傾向が認められた。中でも特に皮質骨において顕著な増加が認められ、A群及びD群と比べて有意に増加する傾向が認められた。
【0070】
その結果、図4及び図5に示すように、雄雌いずれの場合も他の群に比べて全骨密度が増加する傾向が認められた。健全なマウスに実施例1餌を給餌したC群についても、E群やF群ほどではないが実施例1餌を給餌しなかったB群に比べると全般的に高くなる傾向が認められた。
【0071】
各図の(b)に示されるように、骨塩量についても骨密度とほぼ同様の結果であり、特にE群及びF群では全般的に有意に増加する傾向が認められた。
【0072】
上記検証試験はマウスを用いたものであるが、例えば、同年齢の平均骨量に対して93.1%の骨量であった高齢者が、6ヶ月間継続して毎日所定量の骨強化補助食品を食べることでその値が98.9%に増加したとの結果が得られている。また、同様に78%の骨量であった高齢者が、4ヶ月の期間でその値が82%に増加したとの結果が得られるなど、人に対しても実際に優れた効果が確認されている。
【0073】
従って、本発明の骨強化補助食品によれば、骨密度の増強、特に骨粗鬆症の改善に優れた効果を得ることができ、しかも、スナック菓子のごとく手軽に無理なく継続して食べることができるので、カルシウム不足の解消に極めて効果的である。
【0074】
本発明にかかる骨強化補助食品は、前記の実施の形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。例えば、上記実施形態では豆菓子様に形成したが、必ずしもその必要はなく、ブロック状に加工して焼き菓子様に形成してもよいし、粉末状にしてあってもよい。また、流動食等としても利用できるように、粉末化した後に水分を加えて液状、あるいはゲル状に加工してあってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】骨強化補助食品の一例を示す概略断面図である。
【図2】骨強化補助食品の製造工程を示すフローチャートである。
【図3】骨強化補助食品の各実施例を示す表である。
【図4】雄性マウスにおける検証試験結果を示すグラフである。(a)は全骨密度、(b)は全骨塩量を示している。
【図5】雌性マウスにおける検証試験結果を示すグラフである。(a)は全骨密度、(b)は全骨塩量を示している。
【図6】雄性マウスにおける検証試験結果を示すグラフである。(a)は海綿骨密度、(b)は海綿骨塩量を示している。
【図7】雌性マウスにおける検証試験結果を示すグラフである。(a)は海綿骨密度、(b)は海綿骨塩量を示している。
【図8】雄性マウスにおける検証試験結果を示すグラフである。(a)は皮質骨密度、(b)は皮質骨塩量を示している。
【図9】雌性マウスにおける検証試験結果を示すグラフである。(a)は皮質骨密度、(b)は皮質骨塩量を示している。
【符号の説明】
【0076】
1 ミネラル層(第1層)
2 生地層(第2層)
3 外層(第3層)
B 黒豆(大豆)
F 穀粉の層
S 澱粉の層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大豆30重量部に対して、
カルシウム粉末が2重量部以上5重量部以下配合され、
ドロマイト粉末が30重量部以上45重量部以下配合され、
豆乳粉末が5重量部以上15重量部以下配合されていることを特徴とする骨強化補助食品。
【請求項2】
請求項1に記載の骨強化補助食品であって、更に、
粉乳が10重量部以上40重量部以下配合されていることを特徴とする骨強化補助食品。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の骨強化補助食品であって、更に、
抹茶が配合されていることを特徴とする骨強化補助食品。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一つに記載の骨強化補助食品であって、更に、
柑橘系カルシウムが配合されていることを特徴とする骨強化補助食品。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一つに記載の骨強化補助食品であって、更に、
カゼインホスホペプチドが1重量部以上4重量部以下配合されていることを特徴とする骨強化補助食品。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか一つに記載の骨強化補助食品であって、更に、
フラクトオリゴ糖、クエン酸リンゴ酸カルシウム、ポリグルタミン酸、リン酸水素カルシウム、リン酸化オリゴ糖カルシウム、第二リン酸カルシウム、乳タンパク分解物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の素材が配合されていることを特徴とする骨強化補助食品。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一つに記載の骨強化補助食品であって、
上記大豆の周囲を覆うように複数の層が形成されていて、
上記複数の層が、
上記カルシウム粉末及びドロマイト粉末を含み、上記大豆の外側に形成される第1層と、
小麦粉を含む生地配合を焙煎して上記第1層の外側に形成される第2層と、
上記豆乳粉末を含む調味配合を常温で硬化する油脂で固めて上記第2層の外側に形成される第3層と、を備えていることを特徴とする骨強化補助食品。
【請求項8】
請求項7に記載の骨強化補助食品であって、更に、
上記大豆と第1層との間に、穀粉の層を備えていることを特徴とする骨強化補助食品。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載の骨強化補助食品であって、更に、
上記第2層と第3層との間に、澱粉の層を備えていることを特徴とする骨強化補助食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−268386(P2009−268386A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−120307(P2008−120307)
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【出願人】(507270171)株式会社イシカワ (3)
【Fターム(参考)】