説明

骨形成タンパク質の濃縮されたタンパク質製剤およびその使用方法

【課題】BMPを含む生理的条件で本質的に不溶性であるタンパク質の高度に濃縮された水性タンパク質製剤、ならびに、そのような製剤を使用して、骨格および非骨格障害、損傷および疾患を治療する方法を提供する。
【解決手段】本発明は、高度に濃縮された、すなわち、当技術分野で知られているものより少なくとも約2倍から約5倍、好ましくは約3倍濃縮された、タンパク質のこれまでに記載されていない水性製剤を容易に実現する方法および試薬を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、生理的条件(例えば、生理的pHおよびイオン強度)で一般に不溶性であるタンパク質の、高度に濃縮された水性製剤の、これまでに記載されていない製剤に関する。より具体的には、本発明は、骨形成タンパク質の高度に濃縮されたタンパク質製剤およびその治療用途に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
タンパク質ベースの治療剤は、様々な障害、損傷および疾患に非常に有効であることが証明されている。タンパク質ベースの治療剤に関連する性能についての課題は別として、タンパク質プロセシングについての考慮事項、例えば、2〜3例を挙げると、製造の容易さおよびコスト、安定性および有効期間、ならびに投与方法、投与量および有効な投与形態などを含めて、多数の他の種類の課題が、そのような治療剤の開発の間に生じる。
【0003】
ある特定の治療上重要なタンパク質は、特に困難であるが、これは、それだけに限らないが、生理的pHなどの生理的条件下で、これらが本来不溶性であるためである。この不溶性は、非常に濃縮された水溶液が望ましい場合悪化する。生理的条件で本質的に不溶性であるタンパク質の1つのクラスは、システインノットタンパク質のTGF−βスーパーファミリーである。同様に作用するサブファミリーには、骨形成タンパク質(BMP)、例えば、BMP−2、BMP−7(OP−1としても知られる)、GDF−5(CDMP−1およびMP−52としても知られる)、GDF−6(BMP−13およびCDMP−2としても知られる)が含まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、それだけに限らないが、BMPを含めた、そのようなタンパク質の高度に濃縮された水性タンパク質製剤を提供することである。さらなる目的は、そのような製剤を使用して、骨格および非骨格障害、損傷および疾患を治療する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
本発明は、高度に濃縮された、すなわち、当技術分野で知られているものより少なくとも約2倍から約5倍、好ましくは約3倍濃縮された、タンパク質のこれまでに記載されていない水性製剤は、本明細書に開示される方法および試薬を使用して容易に実現することができるという発見に基づく。簡単に言えば、少なくとも約4mg/mlのタンパク質水溶液は、イオン強度、pHおよび緩衝系の特定の組合せを使用して実現することができ、この特定の可溶化条件の溶解度マトリックスにより、高い回収率でそのようなタンパク質製剤が、非常に効率的に製造される。特に重要なことに、本発明の高度に濃縮されたタンパク質製剤により、臨床医が有効用量のタンパク質を最小投与容量で、局所的または全身的に投与することが可能になり、それによって、生理的に制約された部位、例えば、関節内(intrajoint)または椎間板内(intra−intervertebral disc)部位への投与が可能になる。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
水性担体と、
少なくとも約10mg/mlの濃度で該担体中に可溶化した骨形成タンパク質と
を含む、骨形成タンパク質の製剤。
(項目2)
前記タンパク質濃度が約20mg/ml超である、項目1に記載のタンパク質製剤。
(項目3)
前記水性担体が、少なくとも約10mMのイオン強度を有する、項目1に記載のタンパク質製剤。
(項目4)
前記水性担体が、約100mM以下のイオン強度を有する、項目3に記載のタンパク質製剤。
(項目5)
前記水性担体が、約50mM以下のイオン強度を有する、項目3に記載のタンパク質製剤。
(項目6)
前記水性担体が、約20mM以下のイオン強度を有する、項目3に記載のタンパク質製剤。
(項目7)
前記水性担体が、約10mM以下のイオン強度を有する、項目1に記載のタンパク質製剤。
(項目8)
前記水性担体が、少なくとも約2のpHを有する、項目1に記載のタンパク質製剤。
(項目9)
前記水性担体が、約5以下のpHを有する、項目4に記載のタンパク質製剤。
(項目10)
前記水性担体が、約3のpHを有する、項目8に記載のタンパク質製剤。
(項目11)
前記タンパク質濃度が約20〜60mg/mlであり、前記イオン強度が約0〜50mMであり、前記pHが約2.5〜4である、項目4または9に記載のタンパク質製剤。
(項目12)
前記タンパク質が、20mg/ml超の濃度のBMP−7であり、前記イオン強度が約10mMであり、前記pHが約3.5である、項目11に記載のタンパク質製剤。
(項目13)
前記製剤が、約4℃から約25℃の温度で可溶化している、項目11に記載のタンパク質製剤。
(項目14)
安定化賦形剤をさらに含む、項目1に記載のタンパク質製剤。
(項目15)
前記安定化賦形剤が、糖、ポリオール、界面活性剤、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される、項目13に記載のタンパク質製剤。
(項目16)
前記水性担体が、リン酸カリウム、プロピオン酸、乳酸、トリフロロ酢酸および酢酸からなる群から選択される単一酸性基型、またはグルタミン酸ナトリウムおよびコハク酸ナトリウムからなる群から選択される二酸性基型の緩衝液を含む、項目1に記載のタンパク質製剤。
(項目17)
前記製剤が、凍結乾燥された凍結乾燥物または再構成された凍結乾燥物である、項目1に記載のタンパク質製剤。
(項目18)
前記タンパク質がシステインノットタンパク質である、項目1に記載のタンパク質製剤。
(項目19)
前記タンパク質が、タンパク質のTGF−βスーパーファミリーのメンバーではない、項目18に記載のタンパク質製剤。
(項目20)
前記タンパク質が単量体または二量体である、項目18に記載のタンパク質製剤。
(項目21)
前記タンパク質の分子量が25〜50kdである、項目18に記載のタンパク質製剤。
(項目22)
前記タンパク質が、約5〜10の範囲のpIを有する塩基性タンパク質である、項目18に記載のタンパク質製剤。
(項目23)
前記タンパク質が、PDGF、VEGFおよびNGFからなるシステインノットタンパク質の群から選択される、項目18に記載のタンパク質製剤。
(項目24)
前記タンパク質が、TGF−βスーパーファミリーのメンバーである、項目1に記載のタンパク質製剤。
(項目25)
前記タンパク質が、タンパク質のTGF−βスーパーファミリーのBMPサブファミリーのメンバーである、項目1に記載のタンパク質製剤。
(項目26)
前記タンパク質が、BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、GDF−5、GDF−6、GDF−7、および前述の任意の1つの配列変異体からなる群から選択される、項目25に記載のタンパク質製剤。
(項目27)
前記タンパク質が、GDF−5、GDF−6およびGDF−7からなる群から選択される、項目25に記載のタンパク質製剤。
(項目28)
前記タンパク質が、BMP−7からなる群から選択される、項目25に記載のタンパク質製剤。
(項目29)
前記タンパク質が、保存C−末端システインリッチドメイン内に、BMPサブファミリーのメンバーと少なくとも約50%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質である、項目1に記載のタンパク質製剤。
(項目30)
骨格組織の障害、損傷または疾患の治療方法であって、
該治療を必要とする対象に、項目1に記載のタンパク質製剤を投与するステップであって、該タンパク質製剤は、前記骨格組織の障害、損傷または疾患を治療するのに有効な用量であるステップを含む方法。
(項目31)
前記骨格組織が、石灰化した骨格組織または石灰化していない骨格組織である、項目16に記載の方法。
(項目32)
前記タンパク質製剤が、代謝性骨疾患、骨関節炎、骨軟骨疾患、関節リウマチ、骨粗鬆症、骨折、パジェット病、歯周病、および象牙質形成からなる群から選択される、骨格組織の障害、損傷または疾患を治療するのに有効な量である、項目31に記載の方法。
(項目33)
前記タンパク質製剤が、骨関節炎、骨軟骨疾患または欠損、軟骨疾患または欠損、関節リウマチ、外傷誘発性および炎症誘発性軟骨変性、年齢関連性軟骨変性、関節軟骨の損傷および疾患、全層軟骨欠損、表層性軟骨欠損、全身性エリテマトーデスの後遺症、強皮症の後遺症、歯周組織再生、椎間板のヘルニア形成および破壊、椎間板の変性疾患、骨軟骨症、ならびに靭帯、腱、滑液包、滑膜および半月板組織の損傷および疾患からなる群から選択される、石灰化していない骨格組織の障害、損傷または疾患を治療するのに有効な量である、項目31に記載の方法。
(項目34)
前記タンパク質製剤が、外傷誘発性および炎症誘発性軟骨変性、関節軟骨の損傷、全層軟骨欠損、表層性軟骨欠損、椎間板のヘルニア形成および破壊、損傷による椎間板の変性、ならびに靭帯、腱、滑液包、滑膜および半月板組織の損傷からなる群から選択される組織損傷を寛解させるのに有効な量である、項目30に記載の方法。
(項目35)
前記疾患が骨関節炎である、項目30に記載の方法。
(項目36)
前記有効用量が、膝、腰または関節の滑膜腔に投与される、項目30に記載の方法。
(項目37)
前記疾患が変性椎間板疾患である、項目30に記載の方法。
(項目38)
前記有効用量が、椎間板内腔、髄核または線維輪に投与される、項目37に記載の方法。
(項目39)
前記投与ステップが局所的または全身的である、項目30に記載の方法。
(項目40)
前記有効用量が、約100マイクロリットルから3ml中、約1mgから30mgである、項目30に記載の方法。
(項目41)
投与前に、前記タンパク質製剤を、適当なマトリックス材料と混合するステップをさらに含む、項目30に記載の方法。
(項目42)
前記タンパク質が、BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、GDF−5、GDF−6、GDF−7、および前述の任意の1つの配列変異体からなる群から選択される、項目30に記載の方法。
(項目43)
前記タンパク質がBMP−7である、項目30に記載の方法。
(項目44)
前記投与ステップが、手術前または手術後に実施される、項目30に記載の方法。
(項目45)
前記投与ステップが1回より多く実施される、項目30に記載の方法。
(項目46)
非骨格組織の治療方法であって、該方法は、該治療を必要とする対象に項目1に記載のタンパク質製剤を投与するステップを含み、ここで該タンパク質製剤が、該非骨格組織の障害、損傷または疾患を治療するのに有効な用量である、方法。
(項目47)
肝疾患、肝臓切除、肝切除、腎疾患、慢性腎不全、中枢神経系虚血または外傷、ニューロパチー、運動ニューロン損傷、樹状細胞欠損および異常、パーキンソン病、眼疾患、眼球瘢痕、網膜瘢痕、および消化管の潰瘍性疾患、線維症、線維性障害、強皮症、および肺線維症からなる群から選択される、非骨格組織の障害、損傷または疾患を治療するのに有効な量である、項目46に記載の方法。
(項目48)
凍結乾燥骨形成タンパク質と再構成希釈剤を含むキットであって、該タンパク質と該希釈剤は、別々の容器中にあり、希釈剤の量は、少なくとも約10mg/mlの濃度の可溶化タンパク質の製剤のために十分であるキット。
(項目49)
マトリックスをさらに含む、項目48に記載のキット。
(項目50)
前記可溶化タンパク質をコーティングするのに適した移植可能なデバイスをさらに含む、項目48に記載のキット。
(項目51)
濃縮形態の凍結乾燥組換え骨形成タンパク質を製造するための方法であって、
(1)組換え骨形成タンパク質の処理溶液を提供するステップであって、該処理溶液中のタンパク質の体積当たりの重量は、凍結乾燥のために指定された体積当たりの重量未満であるステップと、
(2)該処理溶液中のタンパク質の体積当たりの重量を調節することによって、凍結乾燥溶液を作製するステップであって、該凍結乾燥溶液中のタンパク質の体積当たりの重量は、該処理溶液のそれより大きいステップと、
(3)凍結乾燥に適したバイアルに、指定された体積の該凍結乾燥溶液を充填するステップと、
(4)該凍結乾燥溶液を凍結乾燥することによって、濃縮形態の凍結乾燥組換え骨形成タンパク質を製造するステップと
を含む方法。
(項目52)
再構成希釈剤中で前記凍結乾燥組換え骨形成タンパク質を再構成するステップであって、希釈剤の体積は、ステップ3における体積と同じであるステップをさらに含む、項目51に記載の方法。
(項目53)
再構成希釈剤中で前記凍結乾燥組換え骨形成タンパク質を再構成するステップであって、希釈剤の体積は、ステップ3における体積未満であるステップをさらに含む、項目51に記載の方法。
(項目54)
前記濃縮形態が処理後に実現され、少なくとも10mg/mlの濃度で可溶化した骨形成タンパク質を含む、項目51に記載の方法。
(項目55)
項目51に記載の濃縮形態の組換え骨形成タンパク質。
(項目56)
凍結乾燥骨形成タンパク質と再構成希釈剤とを含む障害、損傷または疾患を治療するためのキットであって、該タンパク質と該希釈剤は、別々の容器中にあり、さらに該キットはそれぞれある量の希釈剤を含む複数の別々の容器を含み、その結果、該希釈剤の量は、障害、損傷または疾患の治療において使用するための、少なくとも約2mg/mlから約60mg/mlの濃度の範囲の可溶化タンパク質製剤を調製するのに十分であるキット。
(項目57)
前記可溶化タンパク質製剤の濃度と体積は、前記障害、損傷または疾患を治療するためにカスタマイズされている、項目56に記載のキット。
(項目58)
濃縮形態の骨形成タンパク質を調製するための方法であって、
(1)骨形成タンパク質の処理溶液を提供するステップであって、該処理溶液中のタンパク質の体積当たりの重量は、凍結乾燥のために指定された体積当たりの重量と同じであるステップと、
(2)凍結乾燥に適したバイアルに、指定された体積の該処理溶液を充填し、それによって凍結乾燥溶液を作製するステップと、
(3)該凍結乾燥溶液を凍結乾燥するステップと、
(4)凍結乾燥した凍結乾燥溶液を、指定された体積の再構成希釈剤と一緒に包装するステップであって、該希釈剤の体積は、ステップ3の指定された充填体積未満であるステップと
を含む方法。
(項目59)
前記処理溶液中のタンパク質の体積当たりの重量を調節することによって、調節された凍結乾燥溶液を作製するステップであって、該調節された凍結乾燥溶液中のタンパク質の体積当たりの重量は、該処理溶液のそれより大きいステップをさらに含む、項目58に記載の方法。
(項目60)
凍結乾燥した、または他の再構成可能な非液体形態での濃縮形態のタンパク質を調製するための方法であって、
(1)タンパク質の処理溶液を提供するステップであって、該処理溶液中のタンパク質の体積当たりの重量は、凍結乾燥または他の再構成可能な非液体形態のために指定された体積当たりの重量と同じであるステップと、
(2)指定された体積の該処理溶液を入れるための凍結乾燥(または他の形態)に適したバイアルを提供し、それによって凍結乾燥(または他の形態)溶液を作製するステップと
を含み、
該処理溶液および該凍結乾燥(または他の形態)溶液のそれぞれにおける、タンパク質の体積当たりの重量は、少なくとも2mg/mlである方法。
(項目61)
凍結乾燥形態の凍結乾燥溶液、または再構成可能な形態の他の非液体形態を提供するステップ
をさらに含む、項目60に記載の方法。
(項目62)
凍結乾燥形態を再水和するか、もしくは他の再構成可能な非液体形態を再構成するための、指定された体積の希釈剤を提供するステップであって、該希釈剤の体積は、少なくとも2mg/mlを有する水性タンパク質製剤の調製を可能にするのに十分であるステップをさらに含むか、または、凍結乾燥形態を再水和するか、もしくは他の再構成可能な非液体形態を再構成することによって、少なくとも2mg/mlを有する水性タンパク質製剤を作製するための指示書を提供するステップをさらに含む、項目60または61に記載の方法。
【0006】
一態様では、本発明は、高濃度の骨形成タンパク質(BMP)の水性製剤である。以下で本明細書に企図されるように、他の類似のタンパク質を、本発明の製剤に使用することができる。好適な実施形態では、タンパク質製剤は、水性担体および少なくとも約10mg/mlの濃度で、前記担体中に可溶化した骨形成タンパク質を含む。ある特定の好適な実施形態のタンパク質濃度は、約20mg/ml超、約25mg/ml超、約30mg/ml超、および約40mg/ml超である。ある特定の実施形態では、タンパク質濃度は、約10から60mg/mlの範囲である。
【0007】
好適な一タンパク質製剤では、水性担体のイオン強度は、少なくとも約10mMである。別のタンパク質製剤では、水性担体のイオン強度は、約100mM以下である。さらに別のタンパク質製剤では、水性担体のイオン強度は、約10mM以下、約20mM以下、および約50mM以下である。
【0008】
本発明のタンパク質製剤のある特定の好適な実施形態は、少なくとも約2のpHを有する水性担体を含む。他の実施形態では、約5以下のpHを有する。より好適な実施形態では、約3のpHを有する。ある特定の実施形態では、pHは、約2から約5の範囲である。
【0009】
本発明によれば、好適なタンパク質製剤は、約20〜60mg/mlのタンパク質濃度、約0〜50mMのイオン強度、および約2.5〜4のpHを有する。より好適な製剤は、20mg/ml超の濃度、約10mMのイオン強度、約3.5のpHで、BMP−7として本明細書に記載されるタンパク質を含む。
【0010】
前述の実施形態のそれぞれに関しては、タンパク質製剤は、約25℃の温度で可溶化している。本発明のタンパク質製剤は、均一溶液であることが好ましく、すなわち、溶液は、タンパク質沈殿物をまったく含まないことが好ましい。
【0011】
さらに他の実施形態では、タンパク質製剤は、安定化賦形剤、例えば、それだけに限らないが、糖、ポリオール、界面活性剤、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される賦形剤などをさらに含む。ある特定の他の実施形態では、タンパク質製剤は、リン酸カリウム、プロピオン酸、乳酸、トリフルオロ酢酸および酢酸からなる群から選択される、単一酸性基型;またはグルタミン酸ナトリウムおよびコハク酸ナトリウムからなる群から選択される、二酸性基型の緩衝液である水性担体を含む。本明細書で企図されるように、本発明の製剤は、凍結乾燥することができ、または再構成された凍結乾燥物(lyophilate)とすることができる。
【0012】
より一般には、本発明の高濃度製剤において使用するのに適したタンパク質は、単量体または二量体とすることができ、約25〜50kdの分子量を有することができ、約5〜10のpI範囲を有することができる。一般に、最も適当なタンパク質は、それだけに限らないが、生理的pHなどの生理的条件下で、難溶性を有する疎水性タンパク質である。
【0013】
本明細書の他の箇所で詳細に説明されるように、ある特定の好適なタンパク質製剤は、システインノットタンパク質として知られるタンパク質を含むことができる。例示的なシステインノットタンパク質には、PDGF、VEGFおよびNGFが含まれる。他の好適な実施形態では、タンパク質製剤は、タンパク質のTGF−βスーパーファミリーのメンバーを含む。より好適な実施形態では、タンパク質製剤は、タンパク質のTGF−βスーパーファミリーのBMPサブファミリーのメンバーを含む。特に好適なBMPSには、1つまたは複数のBMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、GDF−5、GDF−6、GDF−7が含まれ、前述の任意の1つの配列変異体をさらに含む。本明細書で企図される変異体には、それだけに限らないが、保存C−末端システインリッチドメイン内にBMPサブファミリーのメンバーと、少なくとも約50%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質が含まれる。より詳細には、好適なBMPは、BMP−2、GDF−5、GDF−6およびGDF−7である。BMP−7が最も特に好適である。
【0014】
別の態様では、本発明は、骨格および非骨格組織の障害、損傷および疾患の治療方法を提供する。例えば、骨格組織の障害、損傷または疾患の一好適な治療方法は、その必要のある対象に、上述のタンパク質製剤の任意の1つを投与するステップであって、前記タンパク質製剤は、前記骨格組織の障害、損傷または疾患を治療するのに有効な用量であるステップを含む。ある特定の好適な方法では、骨格組織は石灰化しており、他の好適な方法では、これは、石灰化していない骨格組織である。
【0015】
好適な実施形態により、代謝性骨疾患、骨関節炎、骨軟骨疾患、関節リウマチ、骨粗鬆症、骨折、パジェット病、歯周病、および象牙質形成からなる群から選択される、骨格組織の障害、損傷または疾患を有効に治療することができる。他の好適な実施形態により、骨関節炎、骨軟骨疾患または欠損、軟骨疾患または欠損、関節リウマチ、外傷誘発性および炎症誘発性軟骨変性、年齢関連性軟骨変性、関節軟骨の損傷および疾患、全層軟骨欠損、表層性軟骨欠損、全身性エリテマトーデスの後遺症、強皮症の後遺症、歯周組織再生、椎間板のヘルニア形成(hierniation)および破壊、椎間板の変性疾患(例えば、変性椎間板疾患)、骨軟骨症、ならびに靭帯、腱、滑液包、滑膜および半月板組織の損傷および疾患からなる群から選択される、石灰化していない骨格組織の障害、損傷または疾患を有効に治療することができる。
【0016】
ある特定の他の好適な実施形態により、外傷誘発性および炎症誘発性軟骨変性、関節軟骨の損傷、全層軟骨欠損、表層性軟骨欠損、椎間板のヘルニア形成および破壊、損傷による椎間板の変性、ならびに靭帯、腱、滑液包、滑膜および半月板組織の損傷からなる群から選択される組織外傷を有効に治療することができる。
【0017】
別の実施形態では、本発明は、非骨格組織の治療方法であって、その必要のある対象に、1つまたは複数の前述のタンパク質製剤を投与するステップであって、前記タンパク質製剤は、前記非骨格組織の障害、損傷または疾患を治療するのに有効な用量であるステップを含む方法を提供する。そのような方法は、肝疾患、肝臓切除(liver resection)、肝切除(hepatectomy)、腎疾患、慢性腎不全、中枢神経系虚血または外傷、ニューロパチー、運動ニューロン損傷、樹状細胞欠損および異常、パーキンソン病、眼疾患、眼球瘢痕、網膜瘢痕、消化管の潰瘍性疾患、線維症、線維性障害、強皮症、および肺線維症からなる群から選択される、非骨格組織の障害、損傷または疾患を治療するのに有効である。
【0018】
本発明による治療にとって最も好適な疾患は、骨関節炎である。骨関節炎および関節組織の他の障害、損傷または疾患では、有効用量のタンパク質製剤を、滑膜腔、例えば、それだけに限らないが、膝、腰または関節(articulating joint)などの滑膜腔に投与することができる。好適な一実施形態では、タンパク質製剤は、滑膜腔中に直接注射することによって投与される。
【0019】
本発明による治療にとって最も好適な別の疾患は、変性椎間板疾患であり、本明細書ではIVD疾患とも呼ばれる。この疾患の場合では、有効用量を、例えば、髄核または線維輪中に直接注射することによって、椎間板内腔(intradiscal space)に投与することができる。
【0020】
一般に、本発明の方法は、投与を局所的または全身的とすることができる投与ステップを伴う。好適な方法では、有効用量のタンパク質は、約100マイクロリットルから3ml中、約1mgから30mgである。より好適な方法では、BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、GDF−5、GDF−6、GDF−7、および前述の任意の1つの配列変異体からなる群から選択されるタンパク質の製剤が使用される。最も好適な方法では、BMP−7の製剤が使用される。
【0021】
他の実施形態では、本方法は、手術前または手術後に実施することができる。ある特定の他の実施形態では、投与ステップは、1回を超えて実施することができる。
【0022】
本発明の他の実施形態では、上述した方法は、投与前に、前記タンパク質製剤を適当なマトリックス材料と混合するステップをさらに含む。さらに他の実施形態では、上述した方法は、1つまたは複数の以前に述べたタンパク質製剤を用いて移植可能な医療用デバイスをコーティングするステップをさらに含む。
【0023】
さらに別の態様では、本発明は、凍結乾燥骨形成タンパク質と再構成希釈剤を含むキットを企図し、このタンパク質と希釈剤は、別々の容器中にあり、希釈剤とタンパク質の量は、少なくとも約10mg/mlの濃度の可溶化タンパク質の製剤に十分であるだけである。ある特定の実施形態では、キットは、マトリックスをさらに含む。他の実施形態では、キットは、タンパク質を用いてコーティングするのに適した移植可能なデバイスをさらに含む。
【0024】
さらなる態様では、本発明は、障害、損傷または疾患(それだけに限らないが、本明細書の他で記載される障害、損傷および/または疾患など)を治療するためのキットを提供し、これは、凍結乾燥タンパク質、好ましくは骨形成タンパク質と再構成希釈剤を含む。好適な実施形態では、タンパク質と希釈剤は、別々の容器中にあり、さらにキットは、それぞれ一量の希釈剤を含む複数の別々の容器を含み、その結果、キット中の希釈剤の量は、障害、損傷または疾患の治療に使用するための、少なくとも約2mg/mlから約60mg/mlの濃度の範囲の可溶化タンパク質製剤を調製するのに十分である。さらなる実施形態では、可溶化タンパク質製剤の濃度と体積は、特定の標的障害、損傷または疾患を治療するためにカスタマイズされている。
【0025】
別の態様では、本発明は、濃縮形態の凍結乾燥組換え骨形成タンパク質を製造するための方法であって、(1)組換え骨形成タンパク質の処理溶液を提供するステップであって、前記処理溶液中のタンパク質の体積当たりの重量は、凍結乾燥用に指定された体積当たりの重量未満であるステップと、(2)前記処理溶液中のタンパク質の体積当たりの重量を調節することによって、凍結乾燥溶液を作製するステップであって、前記凍結乾燥溶液中のタンパク質の体積当たりの重量は、処理溶液のタンパク質の体積当たりの重量より大きいステップと、(3)凍結乾燥に適したバイアルに、指定された体積の前記凍結乾燥溶液を充填するステップと、(4)前記凍結乾燥溶液を凍結乾燥することによって、濃縮形態の凍結乾燥組換え骨形成タンパク質を製造するステップとを含む方法を提供する。関連する実施形態では、本方法は、再構成希釈剤中で前記凍結乾燥組換え骨形成タンパク質を再構成するステップであって、希釈剤の体積は、上記で特定したステップ3における体積と同じであるステップをさらに含む。別の関連する実施形態では、本方法は、再構成希釈剤中で前記凍結乾燥組換え骨形成タンパク質を再構成するステップであって、希釈剤の体積は、上記で特定したステップ3における体積未満であるステップをさらに含む。ある特定の好適なキットの実施形態では、濃縮形態は、処理後に達成され、少なくとも10mg/mlの濃度で可溶化した骨形成タンパク質を含む。最も好適な実施形態では、キットは、直前に示した方法によって調製された濃縮形態の組換え骨形成タンパク質を含む。
【0026】
さらに別の態様では、本発明は、濃縮形態の骨形成タンパク質を調製するための方法であって、
(1)骨形成タンパク質の処理溶液を提供するステップであって、前記処理溶液中のタンパク質の体積当たりの重量は、凍結乾燥のために指定された体積当たりの重量と同じであるステップと、
(2)凍結乾燥に適したバイアルに、指定された体積の前記処理溶液を充填し、それによって凍結乾燥溶液を作製するステップと、
(3)前記凍結乾燥溶液を凍結乾燥するステップと、
(4)凍結乾燥した凍結乾燥溶液を、指定された体積の再構成希釈剤と一緒に包装するステップであって、前記希釈剤の体積は、ステップ3の指定された充填体積未満であるステップと
を含む方法を提供する。
【0027】
この方法の好適な一実施形態では、この方法は、処理溶液中のタンパク質の体積当たりの重量を調節することによって、調節された凍結乾燥溶液を作製するステップであって、前記調節された凍結乾燥溶液中のタンパク質の体積当たりの重量は、処理溶液のそれより大きいステップをさらに含む。
【0028】
さらに別の態様では、本発明は、凍結乾燥した、または他の再構成可能な非液体形態での濃縮形態のタンパク質を調製するための方法であって、
(1)タンパク質の処理溶液を提供するステップであって、前記処理溶液のタンパク質の体積当たりの重量は、凍結乾燥または他の再構成可能な非液体形態のために指定された体積当たりの重量と同じであるステップと、
(2)指定された体積の前記処理溶液を入れるための凍結乾燥(または他の形態)に適したバイアルを提供し、それによって凍結乾燥(または他の形態)溶液を作製するステップと
を含み、
処理溶液および凍結乾燥(または他の形態)溶液のそれぞれにおける、タンパク質の体積当たりの重量は、少なくとも2mg/mlである方法を提供する。
【0029】
好適な実施形態では、この方法は、凍結乾燥溶液の凍結乾燥形態、または他の非液体形態の再構成可能な形態を提供するステップをさらに含むことができる。別の好適な実施形態では、この方法は、凍結乾燥形態を再水和するか、もしくは他の再構成可能な非液体形態を再構成するための、指定された体積の希釈剤を提供するステップであって、前記希釈剤の体積は、少なくとも2mg/mlを有する水性タンパク質製剤の調製を可能にするのに十分であるステップをさらに含み、または、凍結乾燥形態を再水和するか、もしくは他の再構成可能な非液体形態を再構成することによって、少なくとも2mg/mlを有する水性タンパク質製剤を作製するための指示書を提供するステップをさらに含むことができる。
【0030】
本発明は、本明細書に記載される方法の任意の1つに従って調製されるタンパク質製剤は、障害、損傷または疾患、例えば、それだけに限らないが、本明細書の他で記載される障害、損傷および/または疾患などを治療するのに使用することができることを企図する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明による、ある特定の例示的な水性タンパク質製剤を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(詳細な説明)
本発明は、高度に濃縮された、すなわち、当技術分野で知られているものより少なくとも約2倍から約5倍、好ましくは約3倍濃縮された、タンパク質のこれまでに記載されていない水性製剤は、本明細書に開示されている方法および材料を使用して容易に実現することができるという発見に基づく。簡単に言えば、少なくとも約4mg/mlのタンパク質水溶液は、イオン強度、pHおよび緩衝系の特定の組合せを使用して実現することができ、この特定の可溶化条件の溶解度マトリックスにより、高い回収率でそのようなタンパク質製剤が、非常に効率的に製造される。特に重要なことに、本発明の高度に濃縮されたタンパク質製剤により、臨床医が有効用量のタンパク質を最小投与容量で、局所的または全身的に投与することが可能になり、それによって、生理的に制約された部位、例えば、関節内または椎間板内部位への投与が可能になる。
【0033】
タンパク質製剤の考察
本発明のある特定の好適な実施形態では、タンパク質濃度は、約10mg/mlから約60mg/mlの範囲である。ある特定の他の好適な実施形態では、タンパク質濃度は、少なくとも約4mg/mlであるが、約100mg/ml以下である。特に好適な範囲は、約20から約40mg/mlである。より好適な範囲は、約10から約30mg/mlである。最も好適な範囲は、約5から約30mg/mlである。現在最も好適な実施形態では、濃度は、少なくとも約10mg/mlである。最も好適な濃度は、約15mg/mlである。現在、さらにより好適な実施形態では、濃度は約20mg/mlである。別の好適な実施形態では、濃度は約20mg/ml超である。さらに別の好適な実施形態では、濃度は約25mg/ml超である。BMP−7の場合では、最も好適な濃度範囲は、約10から約40mg/mlであり、最も好適な濃度は約20mg/mlである。室温(約25℃)で維持された場合、いずれの前述の本発明のタンパク質製剤中にも、タンパク質沈殿物がまったく観察されないことが好ましい。さらに、本明細書に示される教示に従って調製および製剤化される場合、前述のタンパク質製剤は、可溶化形態ならびに凍結乾燥形態で安定である。
【0034】
上述したタンパク質製剤の、ある特定の好適な実施形態では、イオン強度は、少なくとも約10mMから約100mM以下の範囲である。ある特定の他の好適な実施形態では、イオン強度は、少なくとも約20mMであるが、約50mM以下である。特に好適な範囲は、約25mMから約40mMである。より好適な範囲は、約10mMから約20mMである。最も好適な範囲は、約0から約20mMである。現在最も好適な実施形態では、イオン強度は約l0mMである。現在、さらにより好適な実施形態では、イオン強度は約5mMである。最も好適なイオン強度は、約0mMである。BMP−7の場合では、最も好適な範囲は、約0から約50mMであり、最も好適なイオン強度は約10mMである。室温(約25℃)で維持される場合、いずれの前述のタンパク質製剤中にも、沈殿物がまったく観察されないことが好ましい。
【0035】
好適な一タンパク質製剤では、水性担体のイオン強度は、少なくとも約10mMである。別の好適なタンパク質製剤では、水性担体のイオン強度は、0から約100mMである。さらに別の好適なタンパク質製剤では、水性担体のイオン強度は、0から約10mM、0から約20mM、および0から約50mMである。
【0036】
上述したタンパク質製剤のある特定の好適な実施形態では、好適なpH範囲は、少なくとも約2から約5以下である。ある特定の他の好適な実施形態では、pHは少なくとも約2であるが、約4以下である。特に好適な範囲は、約3から約4である。より好適な範囲は、約2.5から約3.5である。最も好適な範囲は、約2.5から約4である。現在最も好適な実施形態では、pHは約2.5である。現在、さらにより好適な実施形態では、pHは約3である。最も好適なpHは、約3.5である。BMP−7の場合では、最も好適なpH範囲は、約2.4から約4であり、最も好適なpHは約3.5である。約4℃から約25℃の範囲の温度で維持される場合、いずれの前述のタンパク質製剤中にも、沈殿物がまったく観察されない。
【0037】
上述したタンパク質製剤のある特定の好適な実施形態では、好適なpI範囲は、少なくとも約5から約10以下である。ある特定の他の好適な実施形態では、pIは少なくとも約7であるが、約9以下である。特に好適な範囲は、約6.5から約9である。より好適な範囲は、約7.5から約8.5である。最も好適な範囲は、約6.5から約10である。現在、さらにより好適な実施形態では、pIは、約6.5から約9である。BMP−7の場合では、最も好適なpI範囲は、約6.5から約9であり、最も好適なpIは約9である。室温(約25℃)で維持される場合、いずれの前述のタンパク質製剤中にも、タンパク質沈殿物がまったく観察されないことが好ましい。
【0038】
本発明のタンパク質製剤は、酸緩衝液を使用して製剤化することができる。具体的には、単一酸性緩衝液ならびに二重酸性緩衝液を、首尾よく使用することができる。水性担体は、リン酸カリウム、プロピオン酸、乳酸、トリフロロ酢酸(trifloroacetic acid)および酢酸からなる群から選択される単一酸性基型、またはグルタミン酸ナトリウムおよびコハク酸ナトリウムからなる群から選択される二酸性基型の緩衝液を含む。より好適な酸には、乳酸、TFA、リン酸カリウムが含まれる。乳酸は最も好適である。本発明を実行する場合、他の酸、例えば、クエン酸、アスコルビン酸、およびリン酸ナトリウムも容易に使用することができる。
【0039】
本発明のタンパク質製剤のある特定の実施形態は、糖、ポリオールおよび界面活性剤からなる群から選択される安定化賦形剤をさらに含む。グルコース、スクロース、ラフィノース、トレハロース、ラクトースは、好適な糖の中にある。ラクトースは好適である。トレハロースは最も好適である。マンニトールおよびソルビトールは、好適なポリオールの中にある。マンニトールは最も好適である。糖またはポリオールの好ましい濃度は、約0%から10%の範囲であり、2.5%から10%が最も好ましい。Tween80、Tween20、およびPluronic F−68は、安定化賦形剤として有用な、好適な非イオン性界面活性剤の中にある。Tween80およびTween20は、最も好適である。これらの界面活性剤の濃度は、約0.01%から約0.1%の範囲である。一般に、本発明で有用な非イオン性界面活性剤濃度の範囲は、約0.005%から約10%である。任意の1つまたは複数の前述の安定化賦形剤の組合せが、本発明で企図されている。
【0040】
骨形成タンパク質(BMP)および他の好適なタンパク質
本発明では、有用で好適なタンパク質は、1つまたは複数の以下の特徴を有することが企図されている。タンパク質は、単量体または二量体である。タンパク質は塩基性である。タンパク質は、約5から約10、好ましくは約6から約9または約5から約7または約7.5から約9のpIを示す。タンパク質の分子量は、約25kdから約50kdである。タンパク質は疎水性である。タンパク質は、特に約4mg/mlを超える濃度で、生理的条件下で不溶性である。本発明は、システインノットタンパク質として知られる1つの種類の好適なタンパク質を企図する。(McDonaldら、A Structural Superfamily of Growth Factors Containing a Cystine Knot Motif、Cell 73巻:421〜424頁(1993年)を参照されたい)。本発明は、タンパク質のTGF−βスーパーファミリーとして知られる、別のより好適な種類のタンパク質を企図する。さらに、本発明は、骨形成タンパク質(BMP)として知られる、別の最も好適な種類のタンパク質をさらに企図する。
【0041】
上述したように、BMPは、本発明の目的に好適な例示的なタンパク質である。BMPは、TGF−βスーパーファミリーに属する。TGF−βスーパーファミリータンパク質は、6つの保存システイン残基を特徴とするサイトカインである。ヒトゲノムは、TGF−βスーパーファミリータンパク質をコードする、約42のオープンリーディングフレームを含む。TGF−βサブファミリーには、それだけに限らないが、TGF(例えば、TGF−β1、TGF−β2、およびTGF−β3)、アクチビン(例えば、アクチビンA)およびインヒビン、マクロファージ阻害性サイトカイン−1(MIC−1)、ミュラー管抑制物質、抗−ミュラーホルモン、および雑種細胞株由来神経栄養因子(GDNF)が含まれる。構造的に、そのようなタンパク質は、疎水性シグナル配列、数百アミノ酸のN−末端プロ領域、および可変N−末端領域を含む成熟ドメイン、および保存された6または7つのシステイン骨格を有する、特徴的なシステインモチーフを有する約100アミノ酸を含む高度に保存されたC末端領域を含む、大きな前駆体ポリペプチド鎖として発現されたホモ二量体またはヘテロ二量体である。これらの構造的に関連したタンパク質は、様々な発生事象に関与するものとして同定された。本明細書で使用される場合、「TGF−βサブファミリー」、「TGF−β」、「TGF−βリガンド」およびこれらの文法的な均等物は、別段の具体的な指定のない限り、TGF−βサブファミリーメンバーを指す。
【0042】
TGF−βスーパーファミリータンパク質は、配列類似性および、これらが活性化する特定のシグナル伝達経路に基づいて、BMPサブファミリーとTGF−βサブファミリーに少なくとも分けることができる。BMPサブファミリーには、それだけに限らないが、BMP−2、BMP−3(オステオゲニン)、BMP−3b(GDF−10)、BMP−4(BMP−2b)、BMP−5、BMP−6、BMP−7(OP−1、骨形成タンパク質−1)、BMP−8(OP−2)、BMP−8B(OP−3)、BMP−9(GDF−2)、BMP−10、BMP−11(GDF−11)、BMP−12(GDF−7)、BMP−13(GDF−6、CDMP−2)、BMP−15(GDF−9)、BMP−16、GDF−1、GDF−3、GDF−5(CDMP−1、MP−52)、およびGDF−8(ミオスタチン)が含まれる。本発明の目的に関して、好適なスーパーファミリータンパク質には、BMP−2、−4、−5、−6および−7、ならびにGDF−5、−6、および−7、ならびにMP−52が含まれる。特に好適なタンパク質には、BMP−2、BMP−7ならびにGDF−5、−6、および−7が含まれる。最も好適な例示的なBMPは、BMP−7である。好適なBMPは、そのC−末端領域中に、6または7つのシステイン保存領域を有することができる。BMPは、他の動物種中にも存在する。さらに、ヒト集団の異なるメンバーの中で、BMP配列中に対立遺伝子変異が存在し、これまでに発見され、特徴づけられたBMPの中で種変異が存在する。本明細書で使用される場合、「BMPサブファミリー」、「BMP」、「BMPリガンド」およびこれらの文法的な均等物は、別段の具体的な指定のない限り、BMPサブファミリーメンバーを指す。
【0043】
TGF−βスーパーファミリーは、さらにはシステインノットサイトカインスーパーファミリーのサブセットである。システインノットサイトカインスーパーファミリーの追加のメンバーには、それだけに限らないが、血小板由来成長因子(PDGF)、血管内皮成長因子(VEGF)、胎盤成長因子(PIGF)、ノギン、ニューロトロフィン(BDNF、NT3、NT4、およびβNGF)、ゴナドトロピン、フォリトロピン、ルトロピン、インターロイキン−17、およびコアギュロゲン(coagulogen)が含まれる。
【0044】
ある特定のこれらの好適なタンパク質、ならびにその化学的および物理的性質を記述している刊行物として、BMP−7およびOP−2(米国特許第5,011,691号;米国特許第5,266,683号;Ozkaynakら、EMBO J.、9巻、2085〜2093頁(1990年);OP−3(WO94/10203(PCT US93/10520))、BMP−2、BMP−4、(WO88/00205;Wozneyら、Science、242巻、1528〜1534頁(1988年))、BMP−5およびBMP−6、(Celesteら、PNAS、87巻、9843〜9847頁(1991年))、Vgr−1(Lyonsら、PNAS、86巻、4554〜4558頁(1989年));DPP(Padgettら、Nature、325巻、81〜84頁(1987年));Vg−1(Weeks、Cell、51巻、861〜867頁(1987年));BMP−9(WO95/33830(PCT/US95/07084);BMP−10(WO94/26893(PCT/US94/05290));BMP−11(WO94/26892(PCT/US94/05288);BMP−12(WO95/16035(PCT/US94/14030));BMP−13(WO95/16035(PCT/US94/14030));GDF−1(WO92/00382(PCT/US91/04096))およびLeeら、PNAS、88巻、4250〜4254頁(1991年);GDF−8(WO94/21681(PCT/US94/03019));GDF−9(WO94/15966(PCT/US94/00685));GDF−10(WO95/10539(PCT/US94/11440));GDF−11(WO96/01845(PCT/US95/08543));BMP−15(WO96/36710(PCT/US96/06540));MP−121(WO96/01316(PCT/EP95/02552));GDF−5(CDMP−1、MP52)(WO94/15949(PCT/US94/00657)および(WO96/14335(PCT/US94/12814))およびWO93/16099(PCT/EP93/00350));GDF−6(CDMP−2、BMP13)(WO95/01801(PCT/US94/07762))およびWO96/14335およびWO95/10635(PCT/US94/14030));GDF−7(CDMP−3、BMP12)(WO95/10802(PCT/US94/07799)およびWO95/10635(PCT/US94/14030))が挙げられる。上記刊行物は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0045】
用語「形態形成タンパク質」は、真の形態形成活性を有するタンパク質のTGF−βスーパーファミリーに属するタンパク質を指す。例えば、そのようなタンパク質は、前駆細胞を誘発することによって、増殖させ、かつ/または局所的な環境要因に応じて、軟骨、骨、腱、靭帯、神経または他の種類の分化した組織の形成に導く分化経路における事象のカスケードを開始することができる。したがって、本発明において有用な形態形成タンパク質は、異なる環境において異なって挙動することができる。ある特定の実施形態では、本発明の形態形成タンパク質は、ホモ二量体種またはヘテロ二量体種とすることができる。用語「骨形成タンパク質(OP)」は、前駆細胞を誘発することによって、軟骨および/または骨を形成することもできる形態形成タンパク質を指す。骨は、膜内骨または軟骨内骨であってもよい。ほとんどの骨形成タンパク質は、BMPサブファミリーのメンバーであり、したがってBMPでもある。しかし、逆関係は真となることはできない。本発明によれば、DNA配列相同性またはアミノ酸配列同一性によって同定されるBMPは、骨形成タンパク質であるために、機能的バイオアッセイにおいて、実証できる骨形成または軟骨形成活性も有していなければならない。適切なバイオアッセイは、当技術分野で周知である。特に有用なバイオアッセイは、異所性骨形成アッセイ(例えば、米国特許第5,011,691号;米国特許第5,266,683号を参照されたい)である。
【0046】
構造的には、BMPは、二量体のシステインノットタンパク質である。各BMPモノマーは、複数の分子内ジスルフィド結合を含む。追加の分子間ジスルフィド結合は、ほとんどのBMPにおいて二量体化を媒介する。BMPは、ホモ二量体を形成することができる。一部のBMPは、ヘテロ二量体を形成することができる。BMPは、長いプロドメイン、1つまたは複数の切断部位、および成熟ドメインを含むプロタンパク質として発現される。プロドメインは、BMPの正しい折り畳みおよびプロセシングを助長すると考えられている。さらに、すべてではないが一部のBMPにおいて、プロドメインは、成熟ドメインを非共有結合的に結合することができ、阻害剤として作用することができる(例えば、Thiesら、(2001年)Growth Factors 18巻:251〜259頁)。
【0047】
BMPは、長いプロドメイン、1つまたは複数の切断部位、および成熟ドメインを含むプロタンパク質として自然に発現される。次いで、このプロタンパク質は、細胞機構により処理されることによって、二量体の成熟したBMP分子を生じる。プロドメインは、BMPの正しい折り畳みおよびプロセシングを助長すると考えられている。さらに、すべてではないが一部のBMPにおいて、プロドメインは、成熟ドメインを非共有結合的に結合することができ、シャペロン、ならびに阻害剤として作用することができる(例えば、Thiesら、(2001年)Growth Factors、18巻:251〜259頁)。
【0048】
本明細書でさらに企図されるように、用語「BMP」は、DNA相同性およびアミノ酸配列同一性に基づいて定義される、タンパク質のTGF−βスーパーファミリーのBMPサブファミリーに属するタンパク質を指す。本発明によれば、タンパク質は、BMPサブファミリーを特徴づける、保存C−末端システインリッチドメイン内に、既知のBMPサブファミリーメンバーと少なくとも50%のアミノ酸配列同一性を有する場合、BMPサブファミリーに属する。BMPサブファミリーのメンバーは、全体的に、50%未満のDNAまたはアミノ酸配列同一性を有することができる。本明細書で使用される場合、用語「BMP」は、アミノ酸配列変異体、ドメインスワップされた変異体、ならびに/または天然に存在する骨形成タンパク質の切断片(truncation)および活性断片、ならびに2つの異なるモノマーBMPペプチドから形成されるヘテロ二量体タンパク質、例えば、BMP−2/7、BMP−4/7、BMP−2/6、BMP−2/5、BMP−4/7、BMP−4/5およびBMP−4/6ヘテロ二量体などであるタンパク質も包含する。適当なBMP変異体およびヘテロ二量体として、US2006/0235204;WO05/097825;WO00/020607;WO00/020591;WO00/020449;WO05/113585;WO95/016034およびWO93/009229に示されているものが挙げられる。
【0049】
本明細書で企図されるように、有用なBMPには、BMP−2、BMP4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、GDF−5、GDP−6、またはGDF−7のC−末端システインドメインと、少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、および最も好ましくは少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を共有する相同体または変異体である配列を含むものが含まれる。本明細書で企図されるように、好適なBMPは、保存的アミノ酸置換を含む変異体を含めた、任意のそのようなBMPの生物学的に活性な変異体が含まれる。本発明で要求されるのは、これらの変異体が、天然型に匹敵する生物学的活性を保持することだけである。本明細書で使用される場合、用語「BMP関連タンパク質」または「BMP関連タンパク質(複数)」は、前述のタンパク質の任意の1つまたはすべてを意味する。
【0050】
本発明で有用なタンパク質には、対立遺伝子の、系統発生的対応物および1つまたは複数の上述の特性を示す、これらの他の変異体を含めた、1つまたは複数の上記に特定した好ましい特徴を示す、任意の公知の天然に存在する天然タンパク質も含まれる。変異体には、様々なグリコシル化パターン、さまざまなN−末端を有する型、ならびに天然タンパク質の活性な切断型、または変異型が含まれる。有用なタンパク質には、生合成的に生成されたもの(例えば、「突然変異タンパク質(mutein)」または「突然変異タンパク質(mutant protein)」)も含まれる。さらに、本明細書で企図されるタンパク質には、本明細書の他で記載される、保存的アミノ酸変化を含む変異体を含めた、任意の上記に列挙したタンパク質の生物学的に活性な変異体、および、以下に定義される、保存された7つのシステイン骨格またはドメインを有する、骨形成的に(osteogenically)活性なタンパク質が含まれる。例えば、有用な骨形成タンパク質には、BMP−7のC−末端の7つのシステインドメインと、少なくとも70%のアミノ酸配列相同性を共有する配列を含むものも含まれる。候補アミノ酸配列のその7つのシステインドメインに対する相同率(percent homology)を求めるために、候補配列と、ドメインの配列が整列される。整列は、例えば、Needlemanら、J.Mol.Biol.48巻:443頁(1970年)に記載されているダイナミックプログラミングアルゴリズム、およびDNAstar,Inc.によって製造されている、市販のソフトウェアパッケージであるAlign Programを用いて行うことができる。両供給源による教示は、本明細書に参照により組み込まれている。最初の整列は、関連タンパク質のファミリーの多重配列整列と比較することによって洗練され得る。候補配列と7つのシステインドメインの間の整列が行われ、洗練されると、相同率スコアが計算される。2つの配列の整列されたアミノ酸残基は、その互いの類似性について順次比較される。類似性要因には、類似のサイズ、形状および電荷が含まれる。アミノ酸類似性を求める、特に好適な一方法は、参照により本明細書に組み込まれている、Dayhoffら、Atlas of Protein Sequence and Structure、5巻:345〜352頁(1978年&補遺)に記載されている、PAM250マトリックスである。類似性スコアは、整列された対でのアミノ酸類似性スコアの合計として最初に計算される。挿入および欠失は、相同率および同一性の目的に対しては無視される。したがって、ギャップペナルティーは、この計算において使用されない。次いで素スコアは、候補配列と7つのシステインドメインのスコアの幾何平均によって、これを除することによって正規化される。幾何平均は、これらのスコアの積の平方根である。この正規化された素スコアが相同率である。
【0051】
さらに、他の有用なタンパク質には、BMPサブファミリーの7つのシステインドメインと60%超の同一性を共有する配列を含むものも含まれる。ある特定の好適な実施形態では、有用な骨形成タンパク質には、天然に存在する基準形態形成タンパク質のすべて、または一部と少なくとも70%(例えば、少なくとも80%)の配列相同性または「類似性」を共有するアミノ酸配列を有するものが含まれる。好適な基準タンパク質は、ヒトBMP−7である。他の既知の骨形成タンパク質も、基準配列として使用することができる。一実施形態では、候補アミノ酸配列は、Alignプログラム(DNAstar,Inc.)などのコンピュータプログラムによって実施されることが好都合である、Needlemanら、J.Mol.Biol.、48巻:443〜453頁(1970年)の方法を使用することによって、基準アミノ酸配列と整列することができる。候補配列中の内部ギャップおよびアミノ酸挿入は、候補配列と基準配列の間の相同性または同一性のレベルを計算する目的に対しては無視される。「アミノ酸配列相同性」は、アミノ酸配列同一性と類似性の両方を含むと本明細書で理解される。相同配列は、同一および/または類似のアミノ酸残基を共有し、類似の残基は、整列された基準配列中の対応するアミノ酸残基の、保存的置換または「許容点突然変異」である。したがって、基準配列と70%のアミノ酸相同性を共有する候補ポリペプチド配列は、整列された残基の任意の70%が、基準配列中の対応する残基と同一であり、またはこの残基の保存的置換であるものである。ある特定の特に好適な形態形成ポリペプチドは、ヒトBMP−7のC−末端の7つのシステインドメインと少なくとも60%(例えば、少なくとも65%)のアミノ酸配列同一性を共有する。
【0052】
本明細書で使用される場合、「保存的置換」は、対応する基準残基と物理的または官能的に類似している残基である。すなわち、保存的置換およびその基準残基は、類似のサイズ、形状、電荷、共有結合または水素結合などを形成する能力を含めた化学的性質を有する。好適な保存的置換は、Dayhoffら、(1978年)、5 Atlas of Protein Sequence and Structure、補遺3、22章、354〜352頁、Natl.Biomed.Res.Found.、Washington,D.C.20007において、許容点突然変異について定義された判定基準を満たすものである。保存的置換の例は、以下の群内の置換である:(a)バリン、グリシン;(b)グリシン、アラニン;(c)バリン、イソロイシン、ロイシン;(d)アスパラギン酸、グルタミン酸;(e)アスパラギン、グルタミン;(f)セリン、トレオニン;(g)リシン、アルギニン、メチオニン;および(h)フェニルアラニン、チロシン。用語「保存的な変異体」または「保存的な変異」は、所与の親アミノ酸配列中のアミノ酸残基の代わりに置換アミノ酸残基を使用することも含み、親配列に特異的な抗体は、得られた置換ポリペプチド配列にも特異的であり、すなわち、この配列と「交差反応」または「免疫反応」する。
【0053】
濃縮タンパク質製剤の製造:一般的な考察
本発明の方法により、製造中のタンパク質プロセシングの容易さが増大すると同時に、製造過程の生成物損失が低減し、本発明の高品質な、最終の所望の高濃度タンパク質製剤が得られる。そのような製剤は、科学者および工程技師によってごく普通に使用される、当技術分野で認められている方法と比較した場合、より高い回収率、凝集の低減を明白に示し、充填レベルの正確さの改善を可能にする。
【0054】
例示的な方法は、低濃度(20mg/mL以下)の好適なタンパク質であるBMP−7を処理し(調製、充填、凍結乾燥、および仕上げ作業)、同時に再構成することによって、所望の目的とする、より高いタンパク質濃度(20から40mg/mL)にすることができる生成物を得ることを記載するものに従う。本発明のこの方法により、すべての製造作業を、より低いタンパク質濃度で実施することが可能になり、これにより、取り扱われる溶液の粘度がより低いため、処理の容易さが増大し、製造中の製造過程損失も低減される(一定の体積損失分には、処理中に使用される濃度がより低いため、より少ない質量のタンパク質が含まれているため)。処理中に使用される濃度がより低いことにより、処理中に高タンパク質濃度が使用される場合に観察されるような、劇的な粘度の増大を生じることなく、生成物を冷蔵温度(2から8℃)で貯蔵し、処理することも可能になる。
【0055】
通常、製剤は、最終の所望の目標と同じ濃度で処理され、充填される。例えば、投与のための目標タンパク質濃度が40mg/mLである場合、タンパク質製剤(適切な安定化賦形剤の存在下)は、一般に、40mg/mLで充填され、凍結乾燥された生成物は、凍結乾燥(lyophilization)(凍結乾燥(freeze−drying))前の充填体積と同じ体積の希釈剤で再構成される。
【0056】
本明細書に開示される方法では、様々な手法が使用される。例えば、投与のために40mg/mLで1mLのタンパク質溶液を得ることが望まれる場合、処理(上流の製造)は、より低い濃度、例えば20mg/mLで行われる。充填量は、20mg/mLで2mLであり、生成物は、凍結乾燥後に1mLの再構成希釈剤で再構成される。したがって、製造(処理)作業は、最終の目標より低い濃度で行われ、以下の利点をもたらす:(a)これにより、取り扱われる溶液の粘度がより低いため、処理の容易さが増大し、(b)これにより、製造中の製造過程損失も低減され(一定の体積損失分には、処理中に使用される濃度がより低いため、より少ない質量のタンパク質が含まれているため)、(c)処理中に使用される濃度がより低いことにより、処理中に高タンパク質濃度が使用される場合に観察されるような、劇的な粘度の増大を生じることなく、製造過程の中間体を冷蔵温度(2から8℃)で貯蔵(および/または処理)することも可能になる(図1を参照されたい)。
【0057】
本発明の例示として、別の例によれば、投与のために、C mg/mLのタンパク質濃度で、V mLの目標体積が望まれる場合、タンパク質調製/充填/仕上げ作業は、V×N mLの充填体積とともに、C/N mg/mLで行うことができ、凍結乾燥した生成物は、V mLの再構成希釈剤で最終的に再構成される(ここでN(N>1)は、適当な倍率であり、これは、タンパク質溶液の粘度および加工性に基づいて適切に選択することができる)。Nは、約2に等しいことが好ましい。好適な範囲は、N=約2から約4であり、別のより好適な範囲は、N=約2から約10である。
【0058】
この方法により、すべての製造作業を、より低いタンパク質濃度で実施することが可能になり、これにより、取り扱われる溶液の粘度がより低いため、処理の容易さが増大し、製造中の製造過程損失も低減される(一定の体積損失分には、処理中に使用される濃度がより低いため、より少ない質量のタンパク質が含まれているため)。処理中に使用される濃度がより低いことにより、処理中に高タンパク質濃度が使用される場合に観察されるような、劇的な粘度の増大を生じることなく、生成物を冷蔵温度(2から8℃)で貯蔵し、処理することも可能になる。
【0059】
さらに、上記利点は、より高い品質特性を有する生成物(例えば、処理が、より低いタンパク質濃度で行われる場合、凝集などのクリティカルな物理化学的なタンパク質特性は、タンパク質がより高濃度で処理される場合よりも低くなる傾向がある)、およびより低いコストの製品(上記に論じたような、タンパク質のより少ない質量損失、およびより高い品質生成物による、より低いCOGS)をもたらす役割も果たす。
【0060】
上述したプロトコルは、約10から約60mg/mlの範囲のタンパク質製剤を製造するのに実施されて成功している。さまざまなイオン強度、pHおよびタンパク質濃度(mg/ml)の滴定マトリックスを使用して、水性担体中のタンパク質の高度に濃縮された製剤は、沈殿のリスクを伴うことなく可能であることが発見された。一般に、イオン強度が減少すると、pHも同時に減少し、それによって本明細書の他で記載される1つまたは複数の緩衝系を含む水性担体中で可溶化タンパク質を維持する。すなわち、イオン強度とpHが同時に下方に滴定される滴定マトリックスを使用して、水性担体中で、これまでに記載されていない高濃度で可溶化タンパク質を維持するのに適した条件を実現することが可能である。他で説明されるように、ある特定の好適な緩衝系を使用する、タンパク質濃度、pHおよびイオン強度のある特定の好適な組合せにより、当技術分野で以前に説明されているどんなものとも異なる、非常に安定な、濃縮タンパク質の水性製剤がもたらされる。以前に説明したように、安定化賦形剤を場合により使用することができる。
【0061】
さらに別の製造態様では、本発明は、濃縮形態の骨形成タンパク質を調製するための方法であって、
(1)骨形成タンパク質の処理溶液を提供するステップであって、前記処理溶液中のタンパク質の体積当たりの重量は、凍結乾燥のために指定された体積当たりの重量と同じであるステップと、
(2)凍結乾燥に適したバイアルに、指定された体積の前記処理溶液を充填し、それによって凍結乾燥溶液を作製するステップと、
(3)前記凍結乾燥溶液を凍結乾燥するステップと、
(4)凍結乾燥した凍結乾燥溶液を、指定された体積の再構成希釈剤と一緒に包装するステップであって、前記希釈剤の体積は、ステップ3の指定された充填体積より小さいステップと
を含む方法を提供する。
【0062】
この方法の好適な一実施形態では、この方法は、処理溶液中のタンパク質の体積当たりの重量を調節することによって、調節された凍結乾燥溶液を作製するステップであって、前記調節された凍結乾燥溶液中のタンパク質の体積当たりの重量は、処理溶液のそれより大きいステップをさらに含む。
【0063】
さらに別の製造態様では、本発明は、凍結乾燥した、または他の再構成可能な非液体形態での濃縮形態のタンパク質を調製するための方法であって、
(1)タンパク質の処理溶液を提供するステップであって、前記処理溶液中のタンパク質の体積当たりの重量は、凍結乾燥または他の再構成可能な非液体形態のために指定された体積当たりの重量と同じであるステップと、
(2)指定された体積の前記処理溶液を入れるための凍結乾燥(または他の形態)に適したバイアルを提供し、それによって凍結乾燥(または他の形態)溶液を作製するステップと
を含み、
処理溶液および凍結乾燥(または他の形態)溶液のそれぞれにおける、タンパク質の体積当たりの重量は、少なくとも2mg/mlである方法を提供する。
【0064】
好適な実施形態では、この方法は、凍結乾燥溶液の凍結乾燥形態、または他の非液体形態の再構成可能な形態を提供するステップをさらに含むことができる。別の好適な実施形態では、この方法は、凍結乾燥形態を再水和し、もしくは他の再構成可能な非液体形態を再構成するための、指定された体積の希釈剤を提供するステップであって、前記希釈剤の体積は、少なくとも2mg/mlを有する水性タンパク質製剤の調製を可能にするのに十分であるステップをさらに含み、または、凍結乾燥形態を再水和し、もしくは他の再構成可能な非液体形態を再構成することによって、少なくとも2mg/mlを有する水性タンパク質製剤を作製するための指示書を提供するステップをさらに含むことができる。
【0065】
要約すると、本発明は、本明細書に教示される方法の任意の1つに従って調製されるタンパク質製剤は、障害、損傷または疾患、例えば、それだけに限らないが、本明細書の他で記載される障害、損傷および/または疾患などを治療するのに使用することができることを企図する。
【0066】
キット
本発明は、骨格組織または非骨格組織の障害、損傷、または疾患を治療するのに有用なキットも提供する。このキットは、疾患、特に骨関節炎および骨軟骨疾患によって影響された関節を治療するのに、および損傷または疾患によって影響された椎間板を治療するのに特に有用である。好適な実施形態では、本発明のキットは、1つまたは複数のタンパク質製剤、および1つまたは複数の再構成希釈剤を含む。場合により、本発明のキットは、1つまたは複数の追加の生物学的に活性な薬剤をさらに含むことができる。特に好適な実施形態では、タンパク質はBMPである。さらにより特に好適な実施形態では、タンパク質はBMP−7である。本発明のキットは、損傷もしくは疾患の部位での局所的移植用のタンパク質と混合するためのマトリックス、または移植前にタンパク質をコーティングするのに適した移植可能な医療用デバイスも含むことができる。さらなる態様では、本発明は、障害、損傷または疾患(それだけに限らないが、本明細書の他で記載される障害、損傷および/または疾患など)を治療するためのキットも提供し、これは、凍結乾燥タンパク質、好ましくは骨形成タンパク質と再構成希釈剤を含む。好適な実施形態では、タンパク質と希釈剤は、別々の容器中にあり、さらにキットは、それぞれ一量の希釈剤を含む複数の別々の容器を含み、その結果、キット中の希釈剤の量は、障害、損傷または疾患の治療において使用するための、少なくとも約2mg/mlから約60mg/mlの濃度の範囲の可溶化タンパク質製剤を調製するのに十分である。さらなる実施形態では、可溶化タンパク質製剤の濃度と体積は、特定の標的障害、損傷または疾患を治療するためにカスタマイズされている。
【0067】
治療的介入および治療方法
骨格障害の場合では、いくつかの要因が、外傷および炎症疾患を含めた、哺乳動物における軟骨変性の原因、または一因となる場合がある。炎症反応作用から生じる細胞の損傷は、関節の疾患(例えば、関節リウマチ(RA)および骨関節炎(OA))における、軟骨機能の低下または軟骨機能の喪失の原因として関係づけられている。さらに、全身性エリテマトーデス(SLE)および強皮症などの自己免疫疾患も、結合組織の劣化を特徴とする場合もある。骨関節炎(OA)などの一部の軟骨変性疾患の場合、関節軟骨の正常な老化を病的なOA過程に変える機構は、現在未知である。前述の疾患のそれぞれは、本発明の物質および方法を用いて有効に治療することができる。
【0068】
前述のように、本発明のBMP製剤は、骨格の疾患または損傷を治療するのに有効に使用することができる。例えば、この製剤は、開放骨折または閉鎖骨折などの骨折を治療するのに使用することができる。閉鎖骨折を治療するためには、製剤は、骨折部位に注射されることが好ましい。開放骨折、重大なサイズ欠損(size defect)または持続性の癒着不能については、製剤は、骨折部位での外科的移植によって投与することができる。両方の場合において、製剤は、単独、または適当な担体、マトリックスもしくは足場、例えば、骨セメント、リン酸カルシウム材料、ゲル材料もしくはコラーゲンマトリックスなどと組み合わせて投与することができる。適当な担体、マトリックスおよび足場には、米国特許第6,919,308号、同第6,949,251号、および同第7,041,641号に開示されているものが含まれる。
【0069】
好適な実施形態では、本発明のBMP製剤は、軟骨劣化または軟骨欠損をもたらす疾患または損傷を治療するのに使用することができる。例えば、製剤は、軟骨欠損部位、例えば、変性椎間板、または腱、靭帯もしくは半月板を含めた他の線維軟骨組織などに適用することができる。そのような方法は、米国特許第6,958,149号に説明されている。本発明の製剤は、公開PCT出願WO05/115438に示されているような関節軟骨、例えば、膝、肘、腰、または肩を含めた、滑膜関節などの関節の軟骨ライニングなどの欠損または変性を治療するのにも使用され得る。この実施形態では、製剤は関節の滑膜腔中に注射されることが好ましい。別の実施形態では、本発明の製剤は、関節内の関節軟骨欠損部位、例えば軟骨欠損または骨軟骨欠損などを治療するのに使用される。そのような関節軟骨欠損は、骨関節炎または関節リウマチなどの疾患過程の結果、または関節の損傷による場合がある。この実施形態では、この製剤は、関節腔中に注射することができ、またはこれは、外科的に移植することができる。例えば、この製剤は、単独で、1つまたは複数の追加の活性薬剤、支持マトリックスもしくは足場、または骨髄間質細胞と組み合わせて欠損内に配置することができる。この製剤は、適当なカバー、例えば、筋弁またはコラーゲン膜などの生体吸収性膜で場合により覆うことができる。
【0070】
当業者によって理解されるように、治療組成物において記載される化合物の濃度は、制限されることなく、投与される薬剤の投与量および投与経路を含めたいくつかの要因に応じて変動する。投与される薬剤の好適な投与量は、それだけに限らないが、疾患の種類と程度、組織喪失または欠損、特定の患者の全体的な健康状態、選択される化合物の相対的な生物学的効力、化合物の配合、製剤中の賦形剤の存在と種類、および投与経路を含めた変量にも依存すると思われる。本発明は、個体に提供することができ、ここで一般的な用量は、1日当たり体重1kg当たり約10ngから約1gの範囲であり、好適な用量範囲は、体重1kg当たり約0.1mgから100mgであり、より詳細には、好適な投与量範囲は10〜1000μg/用量である。特に好適な実施形態では、10〜1000μgのBMP−7の用量が、骨関節炎に悩む個体に投与される。
【0071】
軟骨の修復および再生は、現在の整形外科の主な障害の1つである。この重要性は、非常に大きく、これは、軟骨の損傷および変性障害、例えば、骨関節炎、椎間板変性および半月板裂傷などは、米国における成人集団の中で、身体障害の主な原因であるためである。
【0072】
軟骨は、コラーゲン線維、プロテオグリカン、および他の非コラーゲン性タンパク質の細胞外マトリックス中に包埋された軟骨細胞からなる結合組織である。2つの形態の軟骨、すなわち関節軟骨、および非関節軟骨が存在する。関節軟骨は、薄層の結合組織であり、これは、関節内の骨の両端を覆う。非関節軟骨は、線維軟骨および弾性軟骨が含まれ、椎間板、半月板、気管、喉頭、鼻、耳および肋骨が含まれる。
【0073】
軟骨の機能は、耐荷重性を和らげ、摩耗を阻止し、ほとんど摩擦のない関節の移動を可能にすることである。外傷、異常な摩耗または疾患によって多くの場合生じる軟骨組織の欠損により、疼痛および凝りに至る場合があり、未治療のままにしておくと進行し、最終的に関節全体の交換が必要となる場合がある。例えば、関節軟骨欠損により、関節表面が早期に劣化することが多く、最終的に骨軟骨欠損、骨関節炎またはその両方が生じる場合がある。
【0074】
骨関節炎は、マトリックス成分の合成と分解の平衡が、妨害され、異化作用に向けて移行するため、損傷した軟骨細胞外マトリックスの修復を試みたが、徐々に失敗する過程であるとみなされている。
【0075】
軟骨組織の、それ自体を再生する能力は、その無血管性のために厳しく制限されている。軟骨組織およびその下にある骨の両方を伴う骨軟骨欠損の修復は、限られた程度にしか起こらず、血液および/または骨髄によって欠損中に運ばれた幹細胞と成長因子および分化因子の両方の存在によって促進される。動物研究では、これらの欠損は、一部修復し、骨および軟骨の新規層が形成されるが、軟骨マトリックスの巨大分子組織化および生化学的特徴は不完全である。II型コラーゲンではなくI型コラーゲン、およびデルマタン硫酸含有プロテオグリカンなどの軟骨特異的ではないプロテオグリカンは、修復組織を構成し、時間とともに原線維性および変性変化をもたらす。さらに、軟骨下骨中に浸透しない軟骨欠損の修復は、限られた程度にさえも起こらない。
【0076】
さらに、軟骨欠損の外科治療は、複雑であり、限られた成功しかないことが示されている。例えば、関節軟骨欠損は、関節鏡検査手法を用いて治療され、遊離体は創傷清拭され、移行範囲は平滑化される。しかし、この方法単独では、症状の軽減は長続きしないことが多い。膝の置換は、かなりの量の骨を切除することが必要になることが多く、複数の手術を必要とすることが多い。
【0077】
半月板は、膝関節内部の骨の両端の間に位置する小さな蹄鉄形状組織であり、これは、衝撃吸収剤として作用する。それぞれの膝の中に、膝の両側上に2つの半月板が存在する。これらは、若者においては通常強く、年齢とともに脆くなり、より容易に裂ける。断裂は、前十字靭帯(ACL)損傷に非常に一般的である。半月板の線維軟骨は、関節のヒアリン軟骨のように、特に中間および内側の無血管領域において治癒能力が限られている。小さな断裂の現在の治療は、これらが多くの不便を生じない場合、これらをそのままにしておくことである。半月板断裂を治療するための外科的な選択肢は、損傷の性質および程度、ならびに最も重要なことに、その位置を含めたいくつかの要因に依存する。高度に血管新生した滑膜と一体化した血管新生した領域における断裂は、縫合による修復に成功している。部分的または全半月板切除術は、半月板の無血管性の3分の2(avascular two thirds)以内の症候性断裂に対する通常の外科治療である。後部半月板領域における断裂は、臨床的にみられる最も一般的な種類である。開放の、関節鏡検査の、全または部分的な半月板切除術が使用されるかどうかに関係なく、骨関節炎は、手術して数年後以内のこれらの患者に頻繁に起こる後遺症である。したがって、修復の一般的な形態は、裂けた小片を部分的にのみ除去すること、およびステープルで留めることによって軟骨を修復することである。残念ながら、この手順後の治癒過程は遅い。さらに、修復が順調でない場合、裂けた半月板全体を引き続いて除去しなければならない。
【0078】
持続性で、多くの場合衰弱性の背痛の主な原因は、椎間板(IVD)変性であり、変性椎間板疾患(DDD)としても知られる。椎間板が変性するにつれて、これらは隣接する椎骨が圧縮されたようにさせ、厳しい疼痛をもたらすことが多い。
【0079】
靭帯結合としてのIVDは、隣接する椎体の間の連結を提供し、体重を支えるクッションとして作用し、これは軸方向にかかる脊椎負荷を散逸する。これらの生体力学機能は、IVDの独特の構造によって可能になり、これは、中央の水和したプロテオグリカンリッチゼラチン状髄核を囲む外側のコラーゲンリッチ線維輪からなる。上方と下方の軟骨終板、すなわちヒアリン様軟骨の薄層は、椎間板内の椎体の界面を覆う。
【0080】
腰椎椎間板変性は、地域社会に対して相当な社会的および経済的負担を示し、これは、腰痛(LBP)として顕在化する。人口の80%もの人が、一生の間にLBPの少なくとも1つの重要なエピソードを経験し、労働人口のおよそ2.5%は、LBPの結果として年内に病気休暇をとると推定されている。現代西洋諸国におけるLBPの直接コストは、90億ドルと推定されており、そのほとんどは、一般医、理学療法士および他の伝統的な開業医に診てもらうことに費やされる(Williams D Aら、(1998年)Health care and indemnity costs across the natural history of disability in occupational low back pain、Spine、23巻:2329〜36頁)。外科処置を含めた全間接支出は、10倍高くなる場合がある(MaetzelおよびLi(2002年)The economic burden of low back pain:a review of studies published between、1996年および2001年、Best Prac Res Clin Rheumatol、16巻:23〜30頁;Walkerら、(2003年)The economic burden、Proceedings of the Spine Society of Australia Annual Scientific Meeting、Canberra、Australia)。
【0081】
椎間板変性(Disc degeneration)は、自然の現象であり、これは、ほとんどの場合、骨格の成熟の時間から起こる(Vernon−Roberts(1992年)Age−related and degenerative pathology of intervertebral discs and apophyseal joints:The lumbar spine and back pain.4版、Jayson M I V編、Churchill Livingstone、Edinburgh、2章、17〜41頁)。これは、年齢の進行と一致するが、多くの場合、特に脊椎の腰椎における疼痛、および制限された可動性にも関連する。LBPの症状は、患者がその生活様式を修正することによって、制限された可動性に適応するにつれて、時間とともに自然に回復することが多い。しかし、多くの場合、外科的な介入を必要とする重大な要因が残る。慢性LBPのための従来の「非常に信頼できる標準的な」外科治療は、1つまたは複数の有痛性レベルを固定するための脊椎固定術である。固定術は、長期の入院および専門医の外科的な専門知識を必要とするため高価であり、ほとんどのこれらの患者は、短期間の疼痛の軽減を経験するが、現在では、固定術は、最良の転帰を提供しないという証拠が存在する。長期研究により、脊椎固定術は、固定部位に隣接するレベルで、変性を実際に促進することが示されている(Lee(1988年)Accelerated degeneration of the segment adjacent to a lumbar fusion、Spine 13巻:375〜7頁)。人工装具が、関節炎の、および骨折した腰および膝に機能を回復させるために、50年前に開発されたのと同様に、慢性の変性のために有痛性および関節炎となった椎間板に完全な機械的機能を回復させる目的で、装具が現在開発中である(Szpaalskiら(2002年)V Spine arthroplasty: a historical review、Eur Spine J、11巻:S65〜S84頁)。しかし、試行が行われている無数のモデルのいずれかが長期間利点を提供することになるかを知るのは尚早である。
【0082】
さらに、以下に説明されるように、タンパク質製剤、好ましくは本発明のBMP製剤は、非骨格組織の疾患または損傷を治療するのに使用することができる。本発明によってさらに企図されるように、BMPは、骨形態形成および骨または骨軟骨と異なる、哺乳動物中の様々な組織のための組織形態形成の発生カスケードを誘導することができる。この形態形成活性には、前駆細胞の増殖および分化を誘導する能力、ならびに骨、軟骨、石灰化していない骨格または結合組織、および他の成体組織の形成をもたらす事象の経過を通じて分化表現型を支持し、維持する能力が含まれる。
【0083】
例えば、BMPは、代謝性骨疾患において、骨量の減少を防止し、かつ/または骨量を増加させるための治療に使用することができる。骨形成タンパク質を使用して、代謝性骨疾患において、骨量の減少を防止し、かつ/または骨量を増加させるため治療の一般的な方法は、米国特許第5,674,844号に開示されており、その開示は、参照により本明細書に組み込まれている。本発明のBMPは、歯周組織再生に使用することができる。骨形成タンパク質を使用して歯周組織を再生するための一般的な方法は、米国特許第5,733,878号に開示されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれている。BMPは、肝臓再生に使用することができる。骨形成タンパク質を使用して肝臓を再生するための一般的な方法は、米国特許第5,849,686号に開示されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれている。BMPは、慢性腎不全の治療に使用することができる。骨形成タンパク質を使用して慢性腎不全を治療するための一般的な方法は、米国特許第6,861,404号に開示されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれている。BMPは、中枢神経系虚血または外傷後の機能回復を高めるために使用することができる。骨形成タンパク質を使用して、中枢神経系虚血または外傷後の機能回復を高めるための一般的な方法は、米国特許第6,407,060号に開示されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれている。BMPは、樹状成長を誘導するのに使用することができる。骨形成タンパク質を使用して樹状成長を誘導するための一般的な方法は、米国特許第6,949,505号に開示されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれている。BMPは、神経細胞接着を誘導するのに使用することができる。骨形成タンパク質を使用して神経細胞接着を誘導するための一般的な方法は、米国特許第6,800,603号に開示されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれている。BMPは、パーキンソン病を治療および予防するのに使用することができる。骨形成タンパク質を使用してパーキンソン病を治療および予防するための一般的な方法は、米国特許第6,506,729号に開示されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれている。
【0084】
別の例として、BMPは、象牙質形成を誘導するのに使用することができる。これまで、損傷に対する歯髄組織の予測不可能な応答は、歯学において基本的臨床的問題である。さらに別の例として、BMPは、中枢神経系(CNS)に対する再生効果を誘導することができ、修復は、ラット脳穿刺モデルを使用して評価することができる。
【0085】
生理活性補助薬剤(co−agent)
本発明は、本発明のタンパク質製剤と同時投与することができる「生理活性補助薬剤」も企図し、これには、それだけに限らないが、同化剤、抗喘息薬、例えば、アンチプロテインクテリアル(antiproteincterial)および抗菌剤を含めた抗感染薬、抗炎症剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍薬、抗骨吸収剤、抗肥満剤、解熱剤および鎮痛剤、鎮痙剤、抗血栓剤、抗ヒスタミン剤、生物学的製剤、気管支拡張剤、細胞毒性薬、診断剤、エリスロポエチン剤(erythropoietic agent)、免疫調節剤、ミネラルサプリメント、末梢血管拡張剤、刺激薬、組織成長剤、ビタミン、または抗原物質が挙げられる。
【0086】
より詳細には、同時投与に好適な生理活性補助薬剤には、それだけに限らないが、成長因子、ホルモン、抗血管新生因子、デキストロメトルファン、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、アミノ酸、ホルモン、インターフェロン、サイトカイン、およびワクチンが含まれる。同時投与することができる他の代表的な生理活性補助薬剤として、それだけに限らないが、ペプチド薬、タンパク質薬、抗原、抗感染薬、例えば、抗生物質、抗菌剤、抗ウイルス剤、アンチプロテインクテリアル、駆虫薬、抗真菌物質およびこれらの組合せなど、抗アレルギー薬、ステロイド性抗炎症剤、鎮痛薬、非ステロイド性抗炎症剤、ならびに栄養剤が挙げられる。
【0087】
生理活性補助薬剤は、細胞および組織の増殖および生存を促進し、または機能性細胞、例として、血液細胞、ニューロン、筋肉、骨髄、骨細胞および組織などの活性を増大することができる物質、またはその代謝前駆体とすることもできる。例えば、同時投与することができる生理活性補助薬剤には、制限されることなく、神経成長促進物質、例として、ガングリオシド、ホスファチジルセリン、神経成長因子、脳由来神経栄養因子が含まれる。生理活性補助薬剤は、軟性または線維性結合組織についての成長因子、例として2〜3例を挙げると、線維芽細胞成長因子、上皮成長因子、内皮細胞成長因子、血小板由来成長因子、インスリン様成長因子、歯周靱帯細胞成長因子とすることもできる。
【実施例】
【0088】
(実施例I)
骨関節炎
A.骨関節炎の予防のためのヒツジモデル
ヒツジは、骨関節炎のモデルとして使用することができるが、これは、1つの損傷衝撃後に、これらの動物において進行性骨関節炎が発生することが示されているためである。すべてのヒツジに、一般的な麻酔を投与し、無菌法を使用して、3cmの関節切開により、両大腿脛骨関節に到達することを可能にする。バネを装填した機械的デバイスを使用することによって、中央大腿顆の体重負荷領域に両側の衝撃損傷を作り出す(30Mpa、直径6mm×2)。これらの切開部を通常に閉鎖した後、ヒツジのそれぞれの膝に、BMP、好ましくはBMP−7の濃縮タンパク質製剤を関節内注射する。ヒツジを、手術をして12週間後に屠殺し、関節組織の詳細な評価(パラ生体(paravital)染色、TUNEL染色、組織検査、軟骨、硫酸化GAG分析、生体力学の圧痕試験)を行う。組織切片を調製し、軟骨の生理機能を評価する。硫酸化グリコサミノグリカン濃度を、軟骨の生理機能および健康の徴候として測定する。対照群は、原線維性および表面の侵食を示し、BMP処置群は、損傷の徴候をほとんど示さないか、まったく示さないことが予期される。BMP処置した関節は、対照より健康で光沢のあるように見え、骨関節炎病変部の再生および修復を示すことが期待される。
【0089】
これらの実験により、BMPでの顕著な改善、そうでなければ完全な保護が実証される。
【0090】
B.骨関節炎のモルモットおよびウサギモデル
ハートレイ系モルモット(自然発症)およびウサギACL−切除(誘発)骨関節炎モデルを利用する。年齢3、6、または9カ月の14匹のモルモットの右膝に、BMPの濃縮溶液を、3週間間隔で12週間の期間注射する。左膝は、未処置の対照として役割を果たす。10羽のニュージーランド白ウサギにおいて、左のACLを切除し、12週間の評価期間の間に3週間間隔で、BMPまたは対照溶液を関節中に注射する。すべての動物において、右膝は、ACLを切除されていない未処置の対照として役割を果たす。両モデルにおけるすべての動物は、改良Mankinスケール(modified Mankin scale)を使用して、関節炎の変化の肉眼像および組織学的証拠を評価することによって、変性の重症度を等級分けする。BMP−7処置は、早期で、モルモットにおける変性を予防するのに大きな効果を有することが予期される。ウサギACL切除モデルでは、BMP処置は、12週間の評価期間で、処置した部位中の変性の重症度においてわずかな改善を示すことが予期される。これらの結果は、BMP、好ましくはBMP−7は、早期の関節炎変化を予防または減速させることにおいていくらかの有益な効果を有することを示す。
【0091】
C.骨関節炎と診断されている患者を、本発明のタンパク質製剤で処置する。ある特定の患者には、水性担体のみを投与する。ある特定の臨床研究では、約100マイクロリットル中約1mgから約3ml中約30mgの範囲の用量を投与する。他の臨床研究では、約100マイクロリットル中約2mgから約3ml中約60mgの範囲の用量を投与する。投与は、それだけに限らないが、膝および腰関節を含めた様々な関節継ぎ目の滑膜腔中に施す。少なくとも1mgのBMP、好ましくはBMP−7の濃縮タンパク質製剤を投与されている患者は、その症状の回復を示すことが予期される。少なくとも1mgのBMP、好ましくはBMP−7の濃縮タンパク質製剤を投与されている患者は、骨関節炎に関連する関節劣化の修復を示すことがさらに予期される。
【0092】
(実施例II)
変性椎間板疾患
A.椎間板修復および再生のヒツジモデル
ヒツジにおいて制御された外側環状欠損(outer annular defect)を実験的に誘発することにより、ヒトにおける椎間板変性の発展を病理学的および生化学的に詳細に再現する一連の事象を開始する。組成変化には、病変部位の細胞によって合成されるコラーゲンの量および種類の変化(Kaapaら、1994年a、b、1995年、Kaapa E.ら、(1995年)Collagen synthesis and types I,III,IV,and VI collagens in an animal model of disc degeneration、Spine 20巻、59〜67頁;Kaapa Eら、(1994年)Collagens in the injured porcine intervertebral disc、J.Orthop.Res.12巻、93〜102頁;およびKaapa Eら、(1994年)Proteoglycan chemistry in experimentally injured porcine intervertebral disk、J.Spin.Dis.7巻、296〜306頁)、損傷した椎間板における、大きな高浮遊密度アグレカン型プロテオグリカンの減少および小さなDS置換プロテオグリカンである、デコリンおよびビグリカンのレベルの上昇(Melrose J.ら、(1992年)A longitudinal study of the matrix changes induced in the intervertebral disc by surgical damage to the annulus fibrosus、J Orthop Res 10巻:665〜676頁;Melrose J.ら、(1997年)Topographical variation in the catabolism of aggrecan in an ovine annular lesion model of experimental disc degeneration、J Spinal Disord 10巻:55〜67頁;およびMelrose J.ら、(1997年)Elevated synthesis of biglycan and decorin in an ovine annular lesion model of experimental disc degeneration、Eur Spine J 6巻:376〜84頁)が含まれる。椎間板変性の結果としての、軟骨終板(CEP)への血管供給の変化(Moore R Jら、(1992年)Changes in endplate vascularity after an outer anulus tear in the sheep、Spine 17巻:874〜878頁)および実験的な環状欠損に隣接する椎骨のリモデリング(Moore R Jら、(1996年)Remodeling of vertebral bone after outer anular injury in sheep、Spine 21巻:936〜940頁)、「修復された」病変部に影響された椎間板の生体力学的応答能の変化(Latham J Mら、(1994年)Mechanical consequences of annular tears and subsequent intervertebral disc degeneration、J Clin Biomech 9巻:211〜9頁)、および脊椎椎間関節の骨関節炎変化(Moore R Jら、(1999年)Osteoarthrosis of the facet joints resulting from anular rim lesions in sheep lumbar discs、Spine 24巻:519〜525頁)も注目した。
【0093】
ヒツジの環状病変モデル
ヒツジを手術前に24時間絶食させ、1gのチオペントンの静脈内注射を用いて麻酔を誘導する。側面単純X線フィルムを採用することによって、正常な腰椎解剖学的構造を確認する。全身麻酔は、気管内挿管後に2.5%のハロタンによって維持し、パルス酸素測定および終末換気CO測定によってモニターする。肋骨から腸骨稜の左側腹部を滅菌手術のために準備する。ヒツジに、1200mgのペニシリンの筋肉内注射を投与する。脊椎の横突起のすぐ前方の左側で皮膚を切開し、前筋スプリッティング(anterior muscle−splitting)法を使用して、鈍的切開によって腰椎を露出する。血管および神経の解剖を注意して行い、出血は、必要に応じて直圧または電気メスによって制御する。合計12匹の2歳のヒツジに、#11メスの刃を使用して、頭側終板に平行で隣接する左前外側の線維輪を通じて切開することにより、測定すると長さ4mm×深さ5mmになる病変を作り出すことによって、ヒツジのL1−L2、L3−L4およびL5−L6椎間板に、制御された環状病変を与える。介在する腰椎椎間板(L2−L3、L4−L5)は切開しない。切開した椎間板に、3つの療法、すなわち(I)処置なし、(II)ラクトース溶液または(III)BMP−7含有ラクトースの1つを投与する。すべてのヒツジにおいて、L3−L4椎間板の環状病変には、処置をまったく行わない。4匹のヒツジにおいて、L1−L2椎間板をラクトース溶液のみで処置し、L5−L6椎間板をラクトースとBMP−7で処置する。残りの4匹のヒツジでは、L1−L2とL5−L6の椎間板の処置を逆にすることによって、脊椎のレベルに関連する、任意の潜在的な結果の偏りも回避する。引き続く機械的検査におけるFSUの十分な足場を可能にするために、処置した椎間板の間に手術していない椎間板が残っていなければならない(以下を参照されたい)。針金縫合を使用することによって、X線および形態学的同定の両方で後に同定する目的のために、頭側の手術したレベルを識別する。3匹の追加の手術していない動物も、生体力学研究のための対照として使用する。
【0094】
環状切開後の変性は、ヒツジにおいてよく確立しており(Osti O Lら、(1990年)Volvo Award for Basic Science、Annulus tears and intervertebral disc degeneration.An experimental study using an animal model、Spine 15巻:762〜7頁)、12週間後最短期間のX線撮影の、および組織化学的な証拠を示すことを予期することができる。環状病変を誘発して3カ月後に、ヒツジは、6.5gのペントバルビタールナトリウムを静脈内注射することによって殺し、腰椎のX線写真を撮ることによって、椎間板の石灰化を評価し、切除し、処理して、生体力学的(n=8)、および組織化学的(n=4)分析を行い、生体力学試験の後、同じ椎間板をゾーンで解剖して組成分析を行う。BMP−7で処置した動物は、未処置の動物より少ない変性を示すことが予期される。
【0095】
B.椎間板の修復に対するBMP−7のインビボ効果を2つのウサギモデルで研究する。一方のモデルは、Lipsonら、Spine 6巻:194頁(1981年)に記載されているように、線維輪の穿刺−創傷を伴い、他方のモデルは、Katoら、Clin.Orthop.253巻:301頁(1990年)に記載されているように、椎間板内のC−ABC注射を伴う。簡単に言えば、穿刺−創傷方法については、ニュージーランド白ウサギの線維輪中に切開を行う。それぞれのウサギの2つの椎間板を処置し、一方の椎間板はBMP−7で処置し、他方は水性担体で処置する。椎間板内の注射モデルについては、ニュージーランド白ウサギの腰椎椎間板を露出し、BMP−7または水性担体を椎間板中に注射する。処置後の様々な時間で、ウサギを安楽死させ、椎間板腔の修復に対するBMP−7の効果を、当技術分野で公知である方法によって評価する。これらの方法には、磁気共鳴画像法、機械的試験、組織学的分析、および修復された椎間板中の様々な細胞外マトリックス成分の生化学的研究が含まれる。BMP−7で処置した動物は、未処置の動物より改善された椎間板の健康および少ない変性を示すことが予期される。
【0096】
C.変性椎間板疾患と診断された患者は、本発明のタンパク質製剤で治療される。
【0097】
腰痛、特に椎間板造影像(discogram)を使用して診断された椎間板起因の疼痛を示す患者に、本発明のタンパク質製剤を投与することにより、そのような疼痛が寛解すると予期される。好適な治療様式では、そのような患者は、本発明のタンパク質製剤の少なくとも1つの椎間板内注射を投与される。そのような患者は、本発明のタンパク質製剤で治療されていない他の患者と比較して、疼痛の寛解を示す。BMP−7治療は、そのような患者に特に有用であることが予期される。
【0098】
(実施例III)
非骨格組織の修復
非骨格組織の障害、損傷、または疾患を有する患者に本発明のタンパク質製剤を投与すると、そのような障害、損傷、または疾患が寛解および/または修復することが予期される。本明細書の他で説明されるように、ある特定の好適な形態形成タンパク質を含有するタンパク質製剤は、それだけに限らないが、腎臓および肝臓などの軟部組織の修復に有用となり、2〜3例を挙げると眼(opthamologic)および神経の欠損の治療に有用となる。全身経路または局所投与による投与により、未処置の対象と比べて改善がもたらされることが予期される。
【0099】
(実施例IV)
損傷後の予防投与
ある特定の障害、損傷または疾患は、外科的介入の前の本発明のタンパク質製剤を用いた治療から利益を得ることが予期される。予防投与は、手術後の治癒の可能性を促進し、正常または正常に近い生理機能の回復を促進することが予期される。例えば、DDDに罹患している患者の場合では、手術前の、BMP、好ましくはBMP−7の濃縮製剤を用いた治療は有益となることが予期される。ある特定の患者では、複数の前外科的な治療が有益となる。手術前に治療された患者は、手術と同時に治療を受ける。ある特定の他の患者は、手術後の複数の治療から利益を得る。前述の状況のそれぞれにおいて、治療された患者は、未治療の患者より良好な椎間板の健康を示すことが予期される。
【0100】
(実施例V)
ある特定の好適な水性担体中のある特定の高濃度(20から40mg/mL)のBMP−7の調製
以下の例示的な方法により、製造の間のタンパク質プロセシングの容易さが増大すると同時に、製造過程の生成物損失が低減し、最終の所望の高濃度の本発明のタンパク質製剤を得る。
【0101】
本実施例により、低濃度(20mg/mL以下)でBMP−7を処理し(調製、充填、凍結乾燥、および仕上げ作業)、同時に、再構成されて所望の目的のより高いタンパク質濃度(20から40mg/mL)になることができる生成物を得るための方法を概説する。この方法により、すべての製造作業を、より低いタンパク質濃度で実施することが可能になり、これにより、取り扱われる溶液の粘度がより低いため、処理の容易さが増大し、製造中の製造過程損失も低減される(一定の体積損失分には、処理中に使用される濃度がより低いため、より少ない質量のタンパク質が含まれているため)。処理中に使用される濃度がより低いことにより、処理中に高タンパク質濃度が使用される場合に観察されるような、劇的な粘度の増大を生じることなく、生成物を冷蔵温度(2から8℃)で貯蔵し、処理することも可能になる。
【0102】
通常、製剤は最終の所望の目標と同じ濃度で処理され、充填される。例えば、投与のための目標タンパク質濃度が40mg/mLである場合、タンパク質製剤(適切な安定化賦形剤の存在下)は、一般に、40mg/mLで充填され、凍結乾燥された生成物は、凍結乾燥(lyophilization)(凍結乾燥(freeze−drying))前の充填体積と同じ体積の希釈剤で再構成される。
【0103】
本文書に開示される方法では、様々な手法が使用される。例えば、投与のために40mg/mLの1mLのタンパク質溶液を得ることが望まれる場合、処理(上流の製造)は、より低い濃度、例えば20mg/mLで行われる。充填量は、20mg/mLで2mLであり、生成物は、凍結乾燥後に1mLの再構成希釈剤で再構成される。したがって、製造(処理)作業は、最終の目標より低い濃度で行われ、以下の利点をもたらす:(a)これにより、取り扱われる溶液の粘度がより低いため、処理の容易さが増大し、(b)これにより、製造中の製造過程損失も低減され(一定の体積損失分には、処理中に使用される濃度がより低いため、より少ない質量のタンパク質が含まれているため)、(c)処理中に使用される濃度がより低いことにより、処理中に高タンパク質濃度が使用される場合に観察されるような、劇的な粘度の増大を生じることなく、製造過程の中間体を冷蔵温度(2から8℃)で貯蔵(および/または処理)することも可能になる(図1を参照されたい)。
【0104】
同様に、本発明の開示の同じ精神において、投与のために、C mg/mLのタンパク質濃度で、V mLの目標体積が望まれる場合、タンパク質調製/充填/仕上げ作業は、V×N mg/mLの充填体積とともに、C/N mg/mLで行うことができ、凍結乾燥した生成物は、V mLの水で最終的に再構成される(ここでN(N>1)は、適当な倍率であり、これは、タンパク質溶液の粘度および加工性に基づいて適切に選択することができる)。
【0105】
この方法により、すべての製造作業を、より低いタンパク質濃度で実施することが可能になり、これにより、取り扱われる溶液の粘度がより低いため、処理の容易さが増大し、製造中の製造過程損失も低減される(一定の体積損失分には、処理中に使用される濃度がより低いため、より少ない質量のタンパク質が含まれているため)。処理中に使用される濃度がより低いことにより、処理中に高タンパク質濃度が使用される場合に観察されるような、劇的な粘度の増大を生じることなく、生成物を冷蔵温度(2から8℃)で貯蔵し、処理することも可能になる。
【0106】
さらに、上記利点は、より良好な品質特性を有する生成物(例えば、処理が、より低いタンパク質濃度で行われる場合、凝集などのクリティカルな物理化学的なタンパク質特性は、タンパク質がより高濃度で処理される場合よりも低くなる傾向がある)、およびより低いコストの製品(上記に論じたような、タンパク質のより少ない質量損失、およびより高い品質生成物による、より低いCOGS)をもたらす役割も果たす。
【0107】
上述したプロトコルは、約10から約60mg/mlの範囲のタンパク質製剤を製造するのに実施されて成功している。さまざまなイオン強度、pHおよびタンパク質濃度(mg/ml)の滴定マトリックスを使用して、水性担体中のタンパク質の高度に濃縮された製剤は、沈殿のリスクを伴うことなく可能であることが発見された。一般に、イオン強度が増加すると、pHは減少し、それによって本明細書の他で記載される1つまたは複数の緩衝系を含む水性担体中で可溶化タンパク質を維持する。以前に説明したように、安定化賦形剤を使用することができる。
【0108】
(実施例VI)
0.75mLの再構成後の体積を有する5%のトレハロース中の30mg/mLのBMP−7
バルクのBMP−7を、50mMの酢酸(pH=3.0)中2mg/mLの出発材料として得た。接線流濾過(またはクロスフロー濾過)は、タンパク質濃度および緩衝液の交換のために実施した。緩衝液交換は、10mMの乳酸緩衝液(pH=3.0)に対して実施し、10X(すなわち、約10倍)のダイフィルトレーションボリューム交換(difiltration volume exchange)を実施することによって、99.9%超の緩衝液交換効率を実現した。トレハロース(2.5% w/v)を、ダイアフィルトレーション中、またはダイアフィルトレーション後に添加することができる。この実施例では、トレハロースは、限外濾過およびダイアフィルトレーション(UF/DF)後に添加した。タンパク質濃度は、10mMの乳酸緩衝液+2.5% w/vのトレハロース中で15mg/mLに調節した。その後、1.5mLの溶液をそれぞれの3mLのバイアル中に充填し、凍結乾燥した。凍結乾燥(lyophilization)(つまり凍結乾燥(freeze−drying))後に、薬剤的にエレガントなケーキをタンパク質製剤として得、これを、0.75mgの注射用蒸留水(WFI)で再構成した。これにより、5%のトレハロース中30mg/mLのBMP−7の溶液を得た。得られた生成物は、意図された臨床用途に適した望ましい生成物品質特性、例えば、それだけに限らないが、許容限界内の凝集および酸化のレベルなどを有していた。
【0109】
均等物
本発明は、その精神または本質的な特徴から逸脱することなく、他の具体的な形態で具体化することができる。したがって、本実施形態は、例示的であって限定的ではないとみなされるべきであり、前述の説明によってではなく、添付の特許請求の範囲によって示されている本発明の範囲であり、したがって、特許請求の範囲の意味および等価の範囲内に入るすべての変更は、その中に包含されることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【図1】
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【公開番号】特開2013−67665(P2013−67665A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2013−9028(P2013−9028)
【出願日】平成25年1月22日(2013.1.22)
【分割の表示】特願2010−508409(P2010−508409)の分割
【原出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【出願人】(595148888)ストライカー コーポレイション (52)
【氏名又は名称原語表記】STRYKER CORPORATION
【Fターム(参考)】