骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子、及びWnt遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を検出する方法
【課題】本発明の目的は、脱毛症と遺伝子におけるエピジェネティックな変化との関係を解明し、脱毛症の予防や治療、脱毛症リスクの判定、脱毛症治療及び/又は予防薬の薬剤応答性判定のための手段を提供することにある。
【解決手段】生体試料の骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子、及びWnt遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を検出する方法;被験者の生体試料の骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子、及びWnt遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を判定して、前記被験者の脱毛症の発症リスクを予測、或いは前記被験者の骨形成タンパク質促進剤、エフリン促進剤、及びWnt促進剤に対する応答性を判定する方法;前記各方法に用いられるプライマーセット、キット
【解決手段】生体試料の骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子、及びWnt遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を検出する方法;被験者の生体試料の骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子、及びWnt遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を判定して、前記被験者の脱毛症の発症リスクを予測、或いは前記被験者の骨形成タンパク質促進剤、エフリン促進剤、及びWnt促進剤に対する応答性を判定する方法;前記各方法に用いられるプライマーセット、キット
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子、及びWnt遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脱毛症の発症メカニズムの研究の過程で、脱毛症発症者の毛包では骨形成タンパク質(BMP、Bone Morphogenetic Protein)のファミリーに属するBMP2やBMP5が増加し、毛髪のケラチンの生合成を促進する効果を有することが明らかにされている(特許文献1(特開2005−2068号公報))。BMP2やBMP5のように、発毛を促す因子、又は脱毛において減少する因子(発毛因子)が存在することが解明されてきた。
【0003】
また、BMPの受容体は複数の種類があるが、そのうち骨形成タンパク質受容体1A型(BMPR1A)に関して、BMPR1Aノックアウトマウスは、四肢の体毛が減少することが知られている(非特許文献1(Development,2004Apr;131(8):1825−33))。
【0004】
エフリン受容体ファミリーはエフリンと結合し、発生段階の制御や細胞の恒常性維持を行っていることが報告されている。エフリン受容体ファミリーのうちEphA4は、ヒトの9番染色体上の8685668から8776445に位置し、下流のシグナルはSrcキナーゼやRhoAファミリーGTPaseにより伝達される。EphA4は脱毛症患者由来毛乳頭細胞での発現低下が明らかにされているGPI膜結合型タンパク質Ephrin−A3の受容体である(非特許文献2(Journal of Dermatological Science,36,25−32))。また、EphA4は毛包において発現していることが確認されている。
【0005】
Wntタンパク質は腫瘍形成、細胞運命、パターン形成の調節などのいくつかの発生上の過程に関与する一連のタンパク質である。WntはFz受容体を介し、β−cateninの核内移行を促すことで転写調節を行う。Wntタンパク質の一つであるWnt10の遺伝子は、12番染色体上の49359123から49365543に位置する。Wnt10bは毛包の形成及び発達に関与することが明らかにされている(非特許文献3(Biochem.Biophys.Res Commun.342,28−35,2006))。
【0006】
一方、様々な疾患原因のひとつとして、DNAのメチル化を代表とするエピジェネティックな変化が明らかになりつつある。例えば特許文献2(特表2004−529630号公報)には、生体試料の遺伝子のシトシンのメチル化レベルから、前立腺癌などの診断及び治療のための遺伝子パネルが得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−2068号公報
【特許文献2】特表2004−529630号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Development,2004Apr;131(8):1825−33
【非特許文献2】Journal of Dermatological Science,36,25−32
【非特許文献3】Biochem.Biophys.Res Commun.342,28−35,2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら脱毛症とエピジェネティクスとの関係についてこれまで検討された例はなかった。本発明の目的は、脱毛症と遺伝子におけるエピジェネティックな変化との関係を解明し、脱毛症の予防や治療、脱毛症リスクの判定、脱毛症治療及び/又は予防薬の薬剤応答性判定のための手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上述の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子、及びWnt遺伝子中のメチル化領域のメチル化度に、個体間で相違があることを見出した。具体的には、脱毛症リスクの高いヒトの生体試料では骨形成タンパク質受容体遺伝子の特定の領域、エフリン受容体遺伝子、及びWnt遺伝子のメチル化度が高く、一方、脱毛症リスクが低いヒトの生体試料では前記メチル化度が低いことを見出した。また前記骨形成タンパク質受容体遺伝子の特定の領域とは別の特定の領域では、脱毛症リスクの高いヒトの生体試料ではメチル化度が低く、脱毛症リスクが低いヒトの生体試料ではメチル化度が高いことを見出した。また脱毛症の発症には関わらず、加齢によっても骨形成タンパク質受容体遺伝子のメチル化が亢進されることが示唆された。骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子、及びWnt遺伝子において、メチル化度が脱毛と関係していることについては、これまで知られていなかった。
【0011】
以上のことから、毛根由来ゲノムの骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子、又はWnt遺伝子のメチル化度を測定することで、毛髪提供者の脱毛症リスクの判断、脱毛症治療及び/又は予防剤に対する応答性などの判断に応用できる技術を提供し得ることを見出し、本発明に到達した。
【0012】
本発明は、以下の〔1〕〜〔25〕を提供するものである。
〔1〕生体試料の骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子及びWnt遺伝子から選ばれる1又は2以上の遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を検出する方法。
〔2〕 前記生体試料は、抜去毛である、上記〔1〕に記載の方法。
〔3〕前記生体試料は、毛根を含む抜去毛である、上記〔1〕に記載の方法。
〔4〕前記骨形成タンパク質受容体遺伝子が、骨形成タンパク質受容体1A型遺伝子である、上記〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の方法。
〔5〕前記骨形成タンパク質受容体遺伝子中のメチル化領域が、下記の(A−1)〜(A−18)のいずれかの塩基配列の領域である、上記〔4〕に記載の方法。
(A−1)配列表の配列番号1に記載の塩基配列の全部又は一部を含む塩基配列
(A−2)配列表の配列番号1に記載の塩基配列の全部又は一部からなる塩基配列
(A−3)配列表の配列番号2に記載の塩基配列の全部又は一部を含む塩基配列
(A−4)配列表の配列番号2に記載の塩基配列の全部又は一部からなる塩基配列
(A−5)配列表の配列番号3に記載の塩基配列の全部又は一部を含む塩基配列
(A−6)配列表の配列番号3に記載の塩基配列の全部又は一部からなる塩基配列
(A−7)配列表の配列番号8に記載の塩基配列の全部又は一部を含む領域
(A−8)配列表の配列番号8に記載の塩基配列の全部又は一部からなる領域
(A−9)配列表の配列番号9に記載の塩基配列の全部又は一部を含む領域
(A−10)配列表の配列番号9に記載の塩基配列の全部又は一部からなる領域
(A−11)配列表の配列番号10に記載の塩基配列の全部又は一部を含む領域
(A−12)配列表の配列番号10に記載の塩基配列の全部又は一部からなる領域
(A−13)配列表の配列番号11に記載の塩基配列の全部又は一部を含む領域
(A−14)配列表の配列番号11に記載の塩基配列の全部又は一部からなる領域
(A−15)配列表の配列番号12に記載の塩基配列の全部又は一部を含む領域
(A−16)配列表の配列番号12に記載の塩基配列の全部又は一部からなる領域
(A−17)配列表の配列番号13に記載の塩基配列の全部又は一部を含む領域
(A−18)配列表の配列番号13に記載の塩基配列の全部又は一部からなる領域
〔6〕前記エフリン受容体遺伝子が、EphA4遺伝子である上記〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の方法。
〔7〕前記メチル化領域が、下記の(C−1)〜(C−6)のいずれかの塩基配列の領域である、上記〔6〕に記載の方法。
(C−1)配列表の配列番号14に記載の塩基配列の全部又は一部を含む塩基配列
(C−2)配列表の配列番号14に記載の塩基配列の全部又は一部からなる塩基配列
(C−3)配列表の配列番号15に記載の塩基配列の全部又は一部を含む塩基配列
(C−4)配列表の配列番号15に記載の塩基配列の全部又は一部からなる塩基配列
(C−5)配列表の配列番号16に記載の塩基配列の全部又は一部を含む塩基配列
(C−6)配列表の配列番号16に記載の塩基配列の全部又は一部からなる塩基配列
〔8〕前記Wnt遺伝子が、Wnt10b遺伝子である上記〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の方法。
〔9〕前記メチル化領域が、下記の(E−1)〜(E−6)のいずれかの塩基配列の領域である、上記〔8〕に記載の方法。
(E−1)配列表の配列番号17に記載の塩基配列の全部又は一部を含む領域
(E−2)配列表の配列番号17に記載の塩基配列の全部又は一部からなる領域
(E−3)配列表の配列番号18に記載の塩基配列の全部又は一部を含む領域
(E−4)配列表の配列番号18に記載の塩基配列の全部又は一部からなる領域
(E−5)配列表の配列番号19に記載の塩基配列の全部又は一部を含む領域
(E−6)配列表の配列番号19に記載の塩基配列の全部又は一部からなる領域
〔10〕前記メチル化領域を、メチル化されている塩基を認識するプライマー及び/又はメチル化されていない塩基を認識するプライマーを用いて増幅させてから、メチル化度を判定する、上記〔1〕〜上記〔9〕のいずれか一項に記載の方法。
〔11〕前記プライマーが、以下の(B−1)〜(B−8)から選ばれるポリヌクレオチドである、上記〔10〕に記載の方法。
(B−1)配列表の配列番号4に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(B−2)配列表の配列番号4に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(B−3)配列表の配列番号5に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(B−4)配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(B−5)配列表の配列番号6に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(B−6)配列表の配列番号6に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(B−7)配列表の配列番号7に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(B−8)配列表の配列番号7に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
〔12〕前記プライマーが、以下の(D−1)〜(D−8)から選ばれるポリヌクレオチドである、上記〔10〕に記載の方法。
(D−1)配列表の配列番号20に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(D−2)配列表の配列番号20に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(D−3)配列表の配列番号21に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(D−4)配列表の配列番号21に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(D−5)配列表の配列番号22に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(D−6)配列表の配列番号22に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(D−7)配列表の配列番号23に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(D−8)配列表の配列番号23に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
〔13〕前記プライマーが、以下の(F−1)〜(F−8)から選ばれるポリヌクレオチドである、上記〔10〕に記載の方法。
(F−1)配列表の配列番号24に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(F−2)配列表の配列番号24に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(F−3)配列表の配列番号25に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(F−4)配列表の配列番号25に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(F−5)配列表の配列番号26に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(F−6)配列表の配列番号26に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(F−7)配列表の配列番号27に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(F−8)配列表の配列番号27に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
〔14〕前記メチル化領域をプライマーにより増幅させてから、増幅産物をシーケンシングしてメチル化度を判定する、上記〔1〕〜上記〔9〕のいずれか一項に記載の方法。
〔15〕前記プライマーが、以下の(G−1)〜(G−16)から選ばれるポリヌクレオチドである、上記〔14〕に記載の方法。
(G−1)配列表の配列番号28に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−2)配列表の配列番号28に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−3)配列表の配列番号29に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−4)配列表の配列番号29に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−5)配列表の配列番号30に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−6)配列表の配列番号30に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−7)配列表の配列番号31に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−8)配列表の配列番号31に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−9)配列表の配列番号32に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−10)配列表の配列番号32に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−11)配列表の配列番号33に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−12)配列表の配列番号33に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−13)配列表の配列番号34に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−14)配列表の配列番号34に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−15)配列表の配列番号35に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−16)配列表の配列番号35に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
〔16〕被験者から採取された生体試料の骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子及びWnt遺伝子から選ばれる1又は2以上の遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を検出し、健常者の生体試料の前記メチル化領域のメチル化度と差がある場合には、前記被験者の脱毛症の発症リスクが高いと判定する、前記被験者の脱毛症の発症リスクを予測する方法。
〔17〕被験者から採取された生体試料の骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子及びWnt遺伝子から選ばれる1又は2以上の遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を検出し、健常者の生体試料の前記メチル化領域のメチル化度と差がある場合には、前記被験者の脱毛症治療及び/又は予防剤に対する応答性が高いと判定する、前記被験者の脱毛症治療及び/又は予防剤に対する応答性を予測する方法。
〔18〕前記脱毛症治療及び/又は予防剤が、骨形成タンパク質促進剤、エフリン促進剤、Wnt促進剤である、上記〔17〕に記載の方法。
〔19〕前記骨形成タンパク質促進剤及びエフリン促進剤が、6−ベンジルアミノプリンであることを特徴とする、上記〔18〕記載の方法。
〔20〕骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子及びWnt遺伝子から選ばれる1又は2以上の遺伝子のメチル化領域中のメチル化されている塩基を認識するプライマー及び/又はメチル化されていない塩基を認識するプライマーを含む、生体試料の骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子、及びWnt遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を検出するためのプライマーセット。
〔21〕前記プライマーが、下記の(B−1)〜(B−8)、(D−1)〜(D−8)、及び(F−1)〜(F−8)から選ばれる1又は2以上のプライマーである、上記〔20〕に記載のプライマーセット。
(B−1)配列表の配列番号4に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(B−2)配列表の配列番号4に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(B−3)配列表の配列番号5に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(B−4)配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(B−5)配列表の配列番号6に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(B−6)配列表の配列番号6に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(B−7)配列表の配列番号7に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(B−8)配列表の配列番号7に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(D−1)配列表の配列番号20に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(D−2)配列表の配列番号20に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(D−3)配列表の配列番号21に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(D−4)配列表の配列番号21に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(D−5)配列表の配列番号22に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(D−6)配列表の配列番号22に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(D−7)配列表の配列番号23に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(D−8)配列表の配列番号23に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(F−1)配列表の配列番号24に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(F−2)配列表の配列番号24に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(F−3)配列表の配列番号25に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(F−4)配列表の配列番号25に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(F−5)配列表の配列番号26に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(F−6)配列表の配列番号26に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(F−7)配列表の配列番号27に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(F−8)配列表の配列番号27に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
〔22〕上記〔20〕又は上記〔21〕に記載のプライマーを含む、生体試料の骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子及びWnt遺伝子から選ばれる1又は2以上の遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を検出するために使用されるキット、試薬又は検出システム。
〔23〕前記メチル化領域中メチル化領域を増幅するためのプライマーを含む、生体試料の骨形成タンパク質受容体遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を検出するためのプライマーセット。
〔24〕前記プライマーが、下記の(G−1)〜(G−16)から選ばれる1又は2以上のプライマーである、上記〔23〕に記載のプライマーセット。
(G−1)配列表の配列番号28に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−2)配列表の配列番号28に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−3)配列表の配列番号29に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−4)配列表の配列番号29に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−5)配列表の配列番号30に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−6)配列表の配列番号30に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−7)配列表の配列番号31に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−8)配列表の配列番号31に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−9)配列表の配列番号32に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−10)配列表の配列番号32に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−11)配列表の配列番号33に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−12)配列表の配列番号33に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−13)配列表の配列番号34に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−14)配列表の配列番号34に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−15)配列表の配列番号35に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−16)配列表の配列番号35に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
〔25〕上記〔23〕又は上記〔24〕に記載のプライマーを含む、生体試料の骨形成タンパク質受容体遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を検出するために使用されるキット、試薬又は検出システム。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、生体試料の骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子、及びWnt遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を検出する方法が提供され、該方法は、脱毛症の発症リスクの予測や、脱毛症治療及び/又は予防薬に対する応答性の判定への応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、実施例1の提供者Aのメチル化増幅の結果を示す図である。
【図2】図2は、実施例1の提供者Bのメチル化増幅の結果を示す図である。
【図3】図3は、実施例1の提供者Cのメチル化増幅の結果を示す図である。
【図4】図4は、実施例1のコントロールゲノムのメチル化増幅の結果を示す図である。
【図5】図5は、実施例1の提供者Aの非メチル化増幅の結果を示す図である。
【図6】図6は、実施例1の提供者Bの非メチル化増幅の結果を示す図である。
【図7】図7は、実施例1の提供者Cの非メチル化増幅の結果を示す図である。
【図8】図8は、実施例1のコントロールゲノムの非メチル化増幅の結果を示す図である。
【図9】図9は、実施例2の解析条件1〜5の増幅領域の配置を示す図である。
【図10】図10は、実施例3の提供者FのEphA4メチル化増幅の結果を示す図である。
【図11】図11は、実施例3の提供者FのEphA4非メチル化増幅の結果を示す図である。
【図12】図12は、実施例3の提供者GのEphA4メチル化増幅の結果を示す図である。
【図13】図13は、実施例3の提供者GのEphA4非メチル化増幅の結果を示す図である。
【図14】図14は、実施例3のEphA4のコントロールDNAのメチル化増幅の結果を示す図である。
【図15】図15は、実施例3のEphA4のコントロールDNAの非メチル化増幅の結果を示す図である。
【図16】図16は、実施例3の提供者FのWnt10bメチル化増幅の結果を示す図である。
【図17】図17は、実施例3の提供者FのWnt10b非メチル化増幅の結果を示す図である。
【図18】図18は、実施例3の提供者GのWnt10bメチル化増幅の結果を示す図である。
【図19】図19は、実施例3の提供者GのWnt10b非メチル化増幅の結果を示す図である。
【図20】図20は、実施例3のWnt10bのコントロールDNAのメチル化増幅の結果を示す図である。
【図21】図21は、実施例3のWnt10bのコントロールDNAの非メチル化増幅の結果を示す図である。
【図22】図22は、実施例3の提供者Fのβ−cateninメチル化増幅の結果を示す図である。
【図23】図23は、実施例3の提供者Fのβ−catenin非メチル化増幅の結果を示す図である。
【図24】図24は、実施例3の提供者Gのβ−cateninメチル化増幅の結果を示す図である。
【図25】図25は、実施例3の提供者Gのβ−catenin非メチル化増幅の結果を示す図である。
【図26】図26は、実施例3のβ−cateninのコントロールDNAのメチル化増幅の結果を示す図である。
【図27】図27は、実施例3のβ−cateninのコントロールDNAの非メチル化増幅の結果を示す図である。
【図28】図28は、実施例3にて増幅した領域に対応するゲノム配列とプライマーの設計領域を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の方法においては、生体試料の骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子及びWnt遺伝子から選ばれる1又は2以上の遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を検出する。
【0016】
生体試料とは、ヒト又はヒト以外の哺乳動物の身体から分離された試料を意味する。生体試料の例としては、抜去毛、血液、尿などが例示されるが、このうち抜去毛が好ましい。抜去毛とは、ヒト又はヒト以外の哺乳動物の身体から抜去(分離)された試料を意味する。身体の部位は特に限定されないが、通常は頭部である。ヒト又はヒト以外の哺乳動物が脱毛症を発症しているか否か、脱毛症のリスクがあるか否かについても特には問わない。脱毛症としては、男性型脱毛症、老人性脱毛症、薬剤に起因する脱毛症、皮膚損傷に起因する脱毛症、びまん性脱毛症(女性に多い)、皮脂の過酸化に起因する脱毛症などがある。
【0017】
生体試料が抜去毛の場合、ヒト又はヒト以外の哺乳動物の個体の1本の毛髪であればよいが、2本以上であってもよい。通常は、5〜50本である。2本以上の毛髪の場合は、通常は同じ個体から抜去された毛髪である。
【0018】
毛髪は、毛根(皮膚の中に埋もれている部分)、毛包(毛根を包む鞘状の部分)、毛球(毛包の下部の球状の部分)、毛幹(皮膚の表面に出た部分)などの部位から構成される。生体試料としての抜去毛はこれらのうち1又は2以上の毛髪の部位を含むものであってもよいが、毛根を含むことが好ましい。
【0019】
抜去毛の長さは特には限定されないが、取り扱い上の理由などにより、短く裁断されたもの(例えば5mm前後)であってもよい。また、衛生上の理由などにより、エタノールなどアルコールで洗浄しておいてもよい。
【0020】
本発明においてメチル過度の検出対象となる遺伝子は、骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子及びWnt遺伝子から選ばれる1又は2以上の遺伝子である。
【0021】
骨形成タンパク質受容体遺伝子とは、骨形成タンパク質(BMP)の受容体(BMPR)をコードする遺伝子を意味する。BMPRには1型(1A型、1B型)、2型などのファミリーがあるが、本発明においては1A型(BMPR1A)が好ましい。BMPR1A遺伝子の塩基配列は、核酸データベース(GenBank)に登録されており、アクセス番号はNM_004329である。
【0022】
エフリン受容体遺伝子とは、エフリンの受容体(Eph)をコードする遺伝子を意味する。EphはサブクラスA(EphA)及びB(EphB)に分類され、サブクラスAは9種類(EphA1、EphA2、EphA3、EphA4、EphA5、EphA6、EphA7、EphA8、EphA10)、サブクラスBは5種類(EphB1、EphB2、EphB3、EphB4、EphB6)が知られている。本発明においては、EphA4が好ましい。EphA4遺伝子の塩基配列は、核酸データベース(GenBank)に登録されており、アクセス番号はNM_004438である。
【0023】
Wnt遺伝子は、Wntタンパク質をコードする遺伝子である。Wntタンパク質は、分泌性のタンパク質群であり、発生において、体軸形成、パターン形成、細胞の運命決定や運動性の制御、細胞増殖や組織における極性支配、神経新生などを含む多様な役割を果たす。Wntタンパク質はWnt2B、Wnt3、Wnt3A、Wnt5B、Wnt6、Wnt7B、Wnt8A、Wnt8B、Wnt10A、Wnt10B、Wnt11、Wnt14、Wnt14B/Wnt15等が知られている。本発明においてはWnt10bが好ましい。 Wnt10b遺伝子の塩基配列は、核酸データベース(GenBank)に登録されており、アクセス番号はNM_003394である。
【0024】
本発明においては、骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子及びWnt遺伝子から選ばれる1又は2以上の遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を検出する。メチル化度とは、メチル化の発生の度合いを意味し、メチル化された塩基の量、メチル化された塩基の数、メチル化された塩基の部位などにより表される。メチル化された塩基とは、メチル化修飾のなされた塩基(通常はシトシン)を意味する。メチル化度の検出は、メチル化度の定量、判定、検体間での比較と言い換えることも可能である。
【0025】
本発明においてメチル化度が「高い」とは、メチル化された塩基の量が多いことを意味し、メチル化度が「低い」とは、メチル化された塩基の量が少ないことを示す。量の多少は、異なる抜去毛試料間、或いは市販のコントロールとの間で、メチル化度を比較することにより、相対的に決定されうる。
【0026】
遺伝子中のメチル化領域とは、塩基のメチル化が生じ得る領域を意味し、通常は遺伝子内のCpGアイランド(CpGサイト)を含む領域である。
【0027】
メチル化領域の長さは特に制限はないが、通常は5塩基以上、例えば10塩基以上、好ましくは15塩基以上、より好ましくは100塩基以上である。上限も特に制限はないが、通常は3000塩基以下、好ましくは2500塩基以下、より好ましくは2100塩基以下である。メチル化領域は、各遺伝子の一部又は全部であればよい。メチル化領域が各遺伝子の一部である場合には、通常、上述のようにCpGアイランドを1つ以上含む領域が選抜される。該領域におけるCpGアイランドの存在頻度は特に制限されないが、より高いことが好ましく、具体的には、1%以上、好ましくは2%以上、より好ましくは5%以上、さらにより好ましくは10%以上であることが好ましい。また、メチル化領域は、後述するようにメチル化度の検出にあたりメチル化領域を増幅する方法を採用する場合、プライマーが設計しやすい(例えば、非特異的な増幅が起こり難い、プライマー同士の増幅やダイマーが形成されにくい、など)領域であることが好ましい。
【0028】
BMPR1A遺伝子の場合のメチル化領域の好ましい例としては、以下の領域が挙げられる。なお、以下の塩基番号は、BMPR1A遺伝子の転写開始点を0とした場合の番号である。
(A−1)上流−967bから−846bまでの121b(配列表の配列番号1参照)の全部又は一部を含む領域
(A−2)前記塩基配列(配列表の配列番号1参照)の全部又は一部からなる領域
(A−3)上流−1000bから転写開始点0までの1000b(配列表の配列番号2参照)の全部又は一部を含む領域
(A−4)前記塩基配列(配列表の配列番号2参照)の全部又は一部からなる領域
(A−5)上流−2000bから転写開始点0までの2000b(配列表の配列番号3参照)の全部又は一部を含む領域
(A−6)前記塩基配列(配列表の配列番号3参照)の全部又は一部からなる領域
(A−7)上流−1,106bから−723bまでの384b(配列表の配列番号8参照)の全部又は一部を含む領域
(A−8)前記塩基配列(配列表の配列番号8参照)の全部又は一部からなる領域
(A−9)上流−249bから+66bまでの315b(配列表の配列番号9参照)の全部又は一部を含む領域
(A−10)前記塩基配列(配列表の配列番号9参照)の全部一部からなる領域
(A−11)上流−743bから−578bまでの166b(配列表の配列番号10参照)の全部又は一部を含む領域
(A−12)前記塩基配列(配列表の配列番号10参照)の全部又は一部からなる領域
(A−13)下流+67bから+333bまでの267b(配列表の配列番号11参照)の全部又は一部を含む領域
(A−14)前記塩基配列(配列表の配列番号11参照)の全部又は一部からなる領域
(A−15)上流−1106bから+333bまでの1,439b(配列表の配列番号12参照)の全部又は一部を含む領域
(A−16)前記塩基配列(配列表の配列番号12参照)の全部又は一部からなる領域
(A−17)上流−2000bから+333bまでの2,333b(配列表の配列番号13参照)の全部又は一部を含む領域
(A−18)前記塩基配列(配列表の配列番号13参照)の全部又は一部からなる領域
【0029】
(A−1)〜(A−18)の領域のうち、(A−1)〜(A−16)の領域が好ましく、(A−1)〜(A−4)及び(A−7)〜(A−16)の領域がより好ましく、(A−1)〜(A−4)及び(A−7)〜(A−14)の領域がさらに好ましく、(A−1)、(A−2)、(A−7)〜(A−14)の領域がさらにより好ましい。(A−1)〜(A−18)の領域は、それぞれ、或いは組み合わせて、脱毛症リスクの遺伝子マーカーとして有用である。
【0030】
EphA4遺伝子の場合のメチル化領域の好ましい例としては、、バイサルファイト処理前のEphA4遺伝子のうち、以下の領域が挙げられる。なお、以下の塩基番号は、Eph4A遺伝子の翻訳開始コドンATGのAを1とした場合の番号である。
(C−1)上流−127bから+75bまでの202b(配列表の配列番号14参照)の全部又は一部を含む領域
(C−2)前記塩基配列(配列表の配列番号14参照)の全部又は一部からなる領域
(C−3)上流−800bから+200bまでの1000b(配列表の配列番号15参照)の全部又は一部を含む領域
(C−4)前記塩基配列(配列表の配列番号15参照)の全部又は一部からなる領域
(C−5)上流−1800bから+200bまでの2000b(配列表の配列番号16参照)の全部又は一部を含む領域
(C−6)前記塩基配列(配列表の配列番号16参照)の全部又は一部からなる領域
(C−1)〜(C−6)の領域のうち、(C−1)〜(C−4)の領域が好ましく、(C−1)〜(C−2)の領域がより好ましい。(C−1)〜(C−6)の領域は、それぞれ、或いは組み合わせて、脱毛症リスクの遺伝子マーカーとして有用である。
【0031】
Wnt10b遺伝子の場合のメチル化領域の好ましい例としては、バイサルファイト処理前のWnt10b遺伝子のうち、以下の領域が挙げられる。なお、以下の塩基番号は、Wnt10b遺伝子の翻訳開始コドンATGのAを1とした場合の番号である。
(E−1)上流−295bから−190bまでの106b(配列表の配列番号17参照)の全部又は一部を含む領域
(E−2)前記塩基配列(配列表の配列番号17参照)の全部又は一部からなる領域
(E−3)上流−1231b(UTR始点)から−1bまでの1231b(配列表の配列番号18参照)の全部又は一部を含む領域
(E−4)前記塩基配列(配列表の配列番号18参照)の全部又は一部からなる領域
(E−5)上流−2000から−1までの2000b(配列表の配列番号19参照)の全部又は一部を含む領域
(E−6)前記塩基配列(配列表の配列番号19参照)の全部又は一部からなる領域
(E−1)〜(E−6)の領域のうち、(E−1)〜(E−4)の領域が好ましく、(E−1)〜(E−2)の領域がより好ましい。(E−1)〜(E−6)の領域は、それぞれ、或いは組み合わせて、脱毛症リスクの遺伝子マーカーとして有用である。
【0032】
メチル化度の検出の方法は特に限定されないが、バイサルファイト処理によることができる。バイサルファイト処理とは、生体試料のゲノムDNAをバイサルファイト(亜硫酸水素塩)で処理することを意味する。バイサルファイト処理により、DNA中の非メチル化シトシンはウラシルに変換され、メチル化シトシンは変換されずに維持される。よって、前記のバイサルファイト処理を行う場合のメチル化度の検出は、元の遺伝子と比較してウラシル(シーケンス反応上ではチミンとして表現されることもある)に置換されているか否かを判定することで、行い得る。すなわち、バイサルファイト処理後の試料のシトシンとウラシル(チミン)の量の、処理前の試料のそれらとの相違を調べることにより、メチル化度を検出できる。
【0033】
バイサルファイト処理は、例えば、市販のキット(例えばEZ DNA Methylation−Gold Kit(ZYMO RESEARCH,D5005))を用いて、キットに添付の説明書に記載の条件に従って進め得る。
【0034】
また、生体試料のゲノムDNAのうちメチル化領域を増幅する方法も例示され、前記バイサルファイト処理と組み合わせることが好ましい。
【0035】
増幅の方法としては、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法が例示される。好ましい態様の一つとしては、メチル化及び非メチル化されている塩基を特異的にPCR法により増幅してメチル化の様子を解析する方法(メチル化特異的PCR法、MSP法)が好ましい。上記メチル化領域のうち、(A−1)、(A−2)、(C−1)、(C−2)、(E−1)及び(E−2)の解析にはMSP法を利用することが好ましい。
【0036】
MSP法を用いる場合、増幅に用いるプライマー(プライマーセット)は、メチル化領域を増幅可能なように設計され得る。すなわち例えば、メチル化領域の5´末端側の部分の塩基配列と3´末端側の部分の塩基配列、さらにこれらの部分に相補的な塩基配列にハイブリダイズできるような塩基配列を適宜設計することができる。このうち、メチル化されている塩基を認識するプライマー(メチル化プライマー)及び/又はメチル化されていない塩基を認識するプライマー(非メチル化プライマー)を用いることが好ましく、これら両方を用いることがより好ましい。メチル化プライマーを用いて増幅すると、メチル化されている塩基を含む領域を増幅することができ、非メチル化プライマーを用いて増幅すると、メチル化されていない塩基を含む領域を増幅することができるので、それぞれのプライマーによる増幅量をハイブリダイゼーションなどにより容易に確認することができる。
【0037】
メチル化プライマーは、メチル化領域を含む領域の少なくとも一部の塩基配列又はこれに相補的な塩基配列を含むものとして設計され得る。非メチル化プライマーは、メチル化領域を含む領域に含まれるCpGサイト中のシトシンをウラシル(又はチミン)に置き換えた配列又はこれに相補的な塩基配列を含むものとして設計され得る。プライマーの長さは特には限定されないが、通常は8〜50塩基、好ましくは10〜40塩基、より好ましくは15〜30塩基である。
【0038】
MSP法におけるプライマーの好ましい例としては以下のものが挙げられる:配列表の配列番号4に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド(B−1);配列表の配列番号4に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド(B−2);配列表の配列番号5に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド(B−3);配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド(B−4);配列表の配列番号6に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド(B−5);配列表の配列番号6に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド(B−6);配列表の配列番号7に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド(B−7);配列表の配列番号7に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド(B−8)。前記ポリヌクレオチドのうち、(B−1)、(B−2)、(B−3)及び(B−4)はメチル化プライマーであり、(B−5)、(B−6)、(B−7)及び(B−8)は非メチル化プライマーである。(B−1)〜(B−8)のプライマーは、前記した配列番号1に記載の塩基配列を含む領域(A−1)、又は配列番号1に記載の塩基配列からなる領域(A−2)の増幅に用いられ得る。すなわち、(B−1)〜(B−8)のプライマーは、配列番号1に記載の塩基配列のうち塩基番号1〜23番目の領域、及び塩基番号97〜121番目の領域にアニールし得る。
【0039】
また、MSP法におけるプライマーの好ましい例としては以下のものが挙げられる:配列表の配列番号20に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド(D−1);配列表の配列番号20に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド(D−2);配列表の配列番号21に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド(D−3);配列表の配列番号21に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド(D−4);配列表の配列番号22に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド(D−5);配列表の配列番号22に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド(D−6);配列表の配列番号23に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド(D−7);配列表の配列番号23に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド(D−8)。前記ポリヌクレオチドのうち、(D−1)、(D−2)、(D−3)及び(D−4)は非メチル化プライマーであり、(D−5)、(D−6)、(D−7)及び(D−8)はメチル化プライマーである。(D−5)〜(D−8)のプライマーは、前記した配列番号14に記載の塩基配列を含む領域(C−1)、又は配列番号14に記載の塩基配列からなる領域(C−2)の増幅に用いられ得る。すなわち、(D−5)〜(D−8)のプライマーは、配列番号14に記載の塩基配列のうち塩基番号1〜20番目の領域、及び塩基番号178〜202番目の領域にアニールし得る。また、(D−1)〜(D−4)のプライマーは、配列番号43に記載の塩基配列(EphA4の翻訳開始コドンAを1としたときの、上流−127〜+73までの200b)のうち塩基番号1〜20番目の領域、及び塩基番号174〜200番目の領域にアニールし得る(図28)。
【0040】
さらに、MSP法におけるプライマーの好ましい例としては、以下のものが挙げられる:配列表の配列番号24に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド(F−1);配列表の配列番号24に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド(F−2);配列表の配列番25に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド(F−3);配列表の配列番号25に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド(F−4);配列表の配列番号26に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド(F−5);配列表の配列番号26に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド(F−6);配列表の配列番号27に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド(F−7);配列表の配列番号27に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド(F−8)。前記ポリヌクレオチドのうち、(F−1)、(F−2)、(F−3)及び(F−4)は非メチル化プライマーであり、(F−5)、(F−6)、(F−7)及び(F−8)はメチル化プライマーである。(F−1)〜(F−8)のプライマーは、前記した配列番号17に記載の塩基配列を含む領域(E−1)、又は配列番号17に記載の塩基配列からなる領域(E−2)の増幅に用いられ得る。すなわち、(F−1)〜(F−4)のプライマーは、配列番号17に記載の塩基配列の塩基番号1〜30番目の領域、及び塩基番号90〜106番目の領域にアニールし得る。(F−1)〜(F−4)のプライマーは、配列番号42に記載の塩基配列(Wnt10b(NM_003394)の翻訳開始コドンのAを1とした場合の上流−297bから−184bまでの114b)の塩基番号1〜33番目の領域、及び塩基番号91〜114番目の領域にアニールし得る(図28)。
【0041】
一方、生体試料のゲノムDNAのうちメチル化領域を増幅する方法としては、上述のMSP法と並んで本発明におけるメチル化解析の好ましい態様の一つである。バイサルファイトシーケンス法とは、バイサルファイト処理がなされたゲノムDNAのうちメチル化領域を含む領域を、通常のPCRにより増幅し、増幅産物のシーケンスを行い、得られるシーケンスデータ中のメチル化部位を解析する方法である。上記メチル化領域のうち、(A−7)〜(A−14)の解析には、バイサルファイトシーケンス法によることが好ましい。
【0042】
バイサルファイトシーケンス法に用いるプライマーの別の好ましい例としては、以下のものが挙げられる:配列表の配列番号28に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド(G−1);配列表の配列番号28に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド(G−2);配列表の配列番号29に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド(G−3);配列表の配列番号29に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド(G−4)配列表の配列番号30に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド(G−5);配列表の配列番号30に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド(G−6);配列表の配列番号31に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド(G−7);配列表の配列番号31に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド(G−8);配列表の配列番号32に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド(G−9);配列表の配列番号32に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド(G−10);配列表の配列番号33に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド(G−11);配列表の配列番号33に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド(G−12);配列表の配列番号34に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド(G−13);配列表の配列番号34に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド(G−14);配列表の配列番号35に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド(G−15);配列表の配列番号35に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド(G−16)。(G−1)〜(G−4)のプライマーは、前記した配列番号8に記載の塩基配列を含む領域(A−7)、又は配列番号8に記載の塩基配列からなる領域(A−8)の増幅に用いられ得る。(G−5)〜(G−8)のプライマーは、前記した配列番号9に記載の塩基配列を含む領域(A−9)、又は配列番号9に記載の塩基配列からなる領域(A−10)の増幅に用いられ得る。(G−9)〜(G−12)のプライマーは、前記した配列番号10に記載の塩基配列を含む領域(A−11)、又は配列番号10に記載の塩基配列からなる領域(A−12)の増幅に用いられ得る。(G−13)〜(G−16)のプライマーは、前記した配列番号11に記載の塩基配列を含む領域(A−11)、又は配列番号10に記載の塩基配列からなる領域(A−12)の増幅に用いられ得る。
【0043】
上記(B−1)〜(B−8)、(D−1)〜(D−8)、(F−1)〜(F−8)、(G−1)〜(G−16)のプライマーには、前記メチル化領域を増幅可能な範囲での改変を加えたもの、すなわち例えば、数塩基程度(例えば1〜3塩基、好ましくは1塩基程度)の欠失、付加、置換、挿入等をしたものも含まれる。
【0044】
生体試料の骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子及びWnt遺伝子から選ばれる1又は2以上の遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を検出するにあたり、通常は前処理として、生体試料のゲノムDNAを抽出する。抽出法は常法によることができ、市販キット(例えばISOHAIR(ニッポンジーン、319−03401))を用いて、前記キットの説明書に記載の条件に従って行い得る。ゲノムDNAについては、必要に応じて、制限酵素による断片化、精製(タンパク質の除去)など、遺伝子解析の際の一般的な前処理を行い得る。制限酵素は適切なもの(例えばBamHI)を適宜選択して用い得る。精製は、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール、エタノールなどの溶媒で抽出して行うことができる。
【0045】
メチル化度の解析にあたり、公開ウェブサイトQUMA(Quantification tool for Methylation Analysis,http://quma.cdb.riken.jp/top/index_j.html)等の解析サイトを利用してもよい。また、ゲル電気泳動後に染色し、バンドの発光強度を比較してもよい。
【0046】
なお、メチル化度の検出の方法は、上述したバイサルファイト法やメチル化領域の増幅に限定されず、メチル化領域の塩基配列のシークエンサーによる決定、制限酵素の特異的認識配列を利用したCOBRA(Combined Bisulfite Restriction Analysis)法などによってもよい。
【0047】
本発明の方法は、脱毛症の発症リスクの予測に用いることができる。すなわち、被験動物(ヒト又はヒト以外の哺乳動物)の生体試料の骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子及びWnt遺伝子から選ばれる1又は2以上の遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を検出し、健常者の生体試料の前記メチル化度と差がある場合には、前記被験者の脱毛症の発症リスクが高いと判定することができる。
【0048】
脱毛症の発症リスクの予測とは、まだ脱毛症を発症していない被験者が、将来脱毛症を発症するリスクを有しているか否かを予測することを意味する。健常者の生体試料の前記メチル化度との間で「差がある」とは、被験者のメチル化度を分子に、健常者のメチル化度を分母にして両者の比を算出した場合に、その比が0.8以下、ないしは1.2以上となる場合において差があることを意味する。上記比は、0.7以下ないしは1.3以上であることが好ましく、0.6以下ないしは1.4以上であることがより好ましい。メチル化領域が(A−1)、(A−2)、(A−7)〜(A−10)、(C−1)、(C−2)、(E−1)及び(E−2)の場合には、被験者について測定されたメチル化度が、健常者のメチル化度よりも高い場合には脱毛症の発症リスクが高いと予測され、メチル化度が低い場合には脱毛症の発症リスクが低いと予測される。メチル化領域が(A−11)〜(A−14)の場合には、被験者について測定されたメチル化度が、健常者の同様のメチル化領域のメチル化度よりも低い場合には脱毛症の発症リスクが高いと予測され、高い場合には脱毛症の発症リスクが低いと予測される。なお、被験者が高齢(例えば40代以上)の場合には、低年齢の場合よりも、健常者との比較においてメチル化度に差がある傾向にあるので、脱毛症の発症リスクの予測の際には、被験者の年齢をある程度考慮する必要がある。
【0049】
脱毛症の発症リスク予測における被験者は特に限定されないが、目的を考慮すると、脱毛症をまだ発症していないヒト(通常は男性)が適当である。健常者とは、脱毛症の兆候がないヒト(性別は問わない)が適当である。加齢により遺伝子のメチル化が亢進される可能性があり、中でもBMPR1A遺伝子においてその傾向が強いため、健常者は高齢者でない(例えば30代以下、好ましくは20代以下)であることが好ましい。健常者のメチル化領域のメチル化度は、予め測定しておくことが好ましい。
【0050】
また、本発明の方法は、脱毛症治療及び/又は予防薬、中でも骨形成タンパク質促進剤(BMP促進剤:BMPの産生を促進する成分)、エフリン促進剤(エフリンの産生を促進する成分)、及びWnt促進剤(Wntの産生を促進する成分)に対する応答性の判定に用いることができる。すなわち、被験者に脱毛症治療及び/又は予防薬を投与し、毛髪試料を採取し、前記毛髪試料の骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子及びWnt遺伝子から選ばれる1又は2以上の遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を検出し、健常者の生体試料の前記メチル化領域のメチル化度と差がある場合には、前記被験者の前記脱毛症治療及び/又は予防薬に対する応答性があると判定することができる。メチル化領域が上記(A−1)、(A−2)、(A−7)〜(A−10)の場合には、被験者について測定されたメチル化度が、健常者のメチル化度よりも高い場合には、BMP促進剤に対する応答性が高い(BMP促進剤を投与した場合の治療効果が期待される)と判定され、メチル化度が低い場合には、BMP促進剤に対する応答性が低い(BMP促進剤を投与した場合にも治療効果が期待されない)と判定される。メチル化領域が(A−11)〜(A−14)の場合には、被験者について測定されたメチル化度が、健常者の同様のメチル化領域のメチル化度よりも低い場合には、BMP促進剤に対する応答性が高いと予測され、高い場合にはBMP促進剤に対する応答性が低いと予測される。メチル化領域が上記(C−1)、(C−2)の場合には、被験者について測定されたメチル化度が、健常者のメチル化度よりも高い場合には、エフリン促進剤に対する応答性が高い(エフリン促進剤を投与した場合の治療効果が期待される)と判定され、メチル化度が低い場合には、エフリン促進剤に対する応答性が低い(エフリン促進剤を投与した場合にも治療効果が期待されない)と判定される。
【0051】
薬剤応答性の判定における被験者は特に限定されないが、脱毛症の兆候があるヒト、脱毛症を発症しているヒト、或いは脱毛症を近い将来発症すると予測されるヒトが適当であり、通常は男性である。健常者とは、脱毛症の兆候がないヒト(性別は問わない)が適当である。加齢により遺伝子のメチル化が亢進される可能性があり、中でもBMPR1A遺伝子においてその傾向が強いため、健常者は高齢者でない(例えば30代以下、好ましくは20代以下)であることが好ましい。健常者のメチル化領域のメチル化度は、予め測定しておくことが好ましい。
【0052】
脱毛症治療及び/又は予防薬としてはBMP促進剤、エフリン促進剤、及びWnt促進剤が好ましいが、これに限定されず、本メチル化領域の脱メチル化剤などが例示される。BMP促進剤については、BMPR遺伝子の被験者のメチル化度が健常者のメチル化度と差がある場合、発毛因子であるBMP遺伝子とのシグナル伝達が阻害されている可能性があり、その治療にはBMP促進剤が効果を奏するものと推測される。エフリン促進剤については、エフリン受容体遺伝子のメチル化度が高い場合、発毛因子であるエフリン遺伝子とのシグナル伝達が阻害されている可能性があり、その治療にはエフリン促進剤が効果を奏するものと推測される。BMP促進剤及びエフリン促進剤としては、6−ベンジルアミノプリンが例示される。
【0053】
前述した、骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子、及びWnt遺伝子のメチル化領域中のメチル化されている塩基を認識するプライマー(メチル化プライマー)及び/又はメチル化されていない塩基を認識するプライマー(非メチル化プライマー)及び/又はメチル化領域のメチル化度を検出するためのプライマー、好ましくは(B−1)〜(B−8)、(D−1)〜(D−8)、(F−1)〜(F−8)から選ばれる1又は2以上のプライマーは、生体試料の骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子、及びWnt遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を検出するために使用されるキット、試薬又は検出システムに含まれる一つとしても有用である。また、骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子、及びWnt遺伝子のメチル化領域を増幅するプライマー、好ましくは(G−1)〜(G−16)から選ばれる1又は2以上のプライマーは、生体試料の骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子、及びWnt遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を検出するために使用されるキット、試薬又は検出システムに含まれる一つとしても有用である。係るキット、試薬又は検出システムは、脱毛症の発症リスクの予測や、骨形成タンパク質促進剤、エフリン促進剤、及びWnt促進剤に対する応答性の予測のために用いることができる。係るキット、試薬又は検出システムは、必要に応じて、容器、酵素、その他検出のために用いる各種試薬等を含んでいてもよい。
【実施例】
【0054】
実施例1
(1)ゲノムDNAの抽出
ゲノム提供者A(20代男性、男性型脱毛症進行者)、B(20代男性、脱毛症の兆候なし)及びC(40代男性、脱毛症の兆候なし)の3名の頭部から毛髪5本を抜き、エタノールにて洗浄した。毛髪のうち毛根約2cmを5mm程度に裁断し、ISOHAIR(ニッポンジーン、319−03401)を用いてゲノムDNAを抽出した。詳細な操作は、ISOHAIR添付のプロトコールに従った。
【0055】
得られたゲノムDNAをBamHIにて断片化し、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール、エタノールにて精製した。260nmの吸光度の値からDNA濃度を測定し、200ngの断片化ゲノムDNAを対象に、バイサルファイト処理(非メチル化シトシンをウラシルに変換する処理)を行った。バイサルファイト処理は、EZ DNA Methylation−Gold Kit(ZYMO RESEARCH,D5005)を用い、詳細な操作は添付のプロトコールに従った。
【0056】
(2)メチル化/非メチル化特異的PCR
BMPR1A遺伝子(NM_004329)の転写開始点を0とし、上流−967bより−846bまでの領域(配列番号1参照)を増幅できるようなプライマーを設計した。上記領域はCpGアイランドを一部に含んでいる。プライマーとしては、CpGアイランドのメチル化シトシンを認識するプライマー(メチル化プライマー)と、メチル化されていないシトシンを認識するプライマー(非メチル化プライマー)を、それぞれ設計した。プライマーの塩基配列を表1に示す。表1中、太字は上記領域のCpGアイランドに相当する部分を、傍点は同領域のメチル化シトシンに相当する部分を意味する。
【0057】
【表1】
【0058】
本プライマーを用いて、PCRを行った。具体的には、メチル化プライマー及び非メチル化プライマーのそれぞれについて、以下の組成のPCR反応液を調製し、95℃、30秒間の熱処理後、熱変性(94℃、30秒)→アニーリング(メチル化プライマー:57.4℃、非メチル化プライマー:56.0℃、いずれも30秒)→伸長(72℃、30秒)の3ステップを、メチル化プライマーを用いた場合は35回、非メチル化プライマーを用いた場合は30回繰り返した。なお、メチル化プライマーを用いたPCR反応をメチル化増幅、非メチル化プライマーを用いたPCR反応を非メチル化増幅とする。
【0059】
またメチル化/非メチル化特異的な増幅が行われているかどうかを確認する目的で、メチル化/非メチル化コントロールゲノム(EpiTect PCR Control DNA,QIAGEN,59695)を用いて同様にPCRを行った。
【0060】
PCR反応液組成
TaKaRa Ex Taq HS(タカラバイオ、RR006A) 0.1μL
10×Ex Taq Buffer(タカラバイオ) 2 μL
dNTP Mixture(タカラバイオ) 1.6μL
プライマー(10pmol each/μL) 0.8μL
ゲノムDNA((1)にて調製) 2.5μL
蒸留水(DW) 13μL
(合計 20μL)
【0061】
PCR後の増幅産物を、2.5%アガロースゲルに電気泳動し、ゲルスター(タカラバイオ)溶液中でDNAを染色した。UV照射により発光するバンドの強度を比較分析した。結果を表2及び図1〜図8に示す。なお、表2に示すバンド強度は、バンドの発光強度をゲル解析ソフトLabworksにより数値化したものである。
【0062】
メチル化増幅、非メチル化増幅のいずれの場合にも、バンド強度に個人差が認められた。具体的には、20代男性同士(被験者Aと被験者B)の比較では、脱毛症進行者である被験者Aにおいて、メチル化増幅ではバンドが観察され非メチル化増幅ではバンドがほとんど見えなかったことから(図1、図5、表2)、メチル化の傾向が強く同時に非メチル化が弱い傾向であった。一方、脱毛症が認められなかった被験者Bと被験者Cの比較では、メチル化増幅では被験者Cにおいて増幅産物のバンドが多少ではあるが観察されたが(図3)、被験者BではB1のレーンで薄いバンドが観察されたのみで、B2のレーンでは観察されなかった(図2)。これに対し、非メチル化増幅では被験者Cよりも被験者Bにおいて比較的はっきりとしたバンドが観察された(図6、図7)。このことから、脱毛症が認められない者同士の比較では、加齢によりメチル化の傾向が強く、非メチル化の傾向が弱いことが判明した。
【0063】
【表2】
【0064】
実施例2
(1)ゲノムDNAの抽出
ゲノム提供者D(20代男性、男性型脱毛症進行者)及びE(20代男性、脱毛症の兆候なし)の頭部から毛髪5本を抜き、エタノールにて洗浄した。毛髪のうち毛根約2cmを5mm程度に裁断し、ISOHAIR(ニッポンジーン、319−03401)を用いてゲノムDNAを抽出した。詳細な操作は、ISOHAIR添付のプロトコールに従った。
【0065】
得られたゲノムDNAをBamHIにて断片化し、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール、エタノールにて精製した。260nmの吸光度の値からDNA濃度を測定し、200ngの断片化ゲノムDNAを対象に、バイサルファイト処理(非メチル化シトシンをウラシルに変換する処理)を行った。バイサルファイト処理は、EZ DNA Methylation−Gold Kit(ZYMO RESEARCH,D5005)を用い、詳細な操作は添付のプロトコールに従った。
【0066】
(2)バイサルファイトシーケンス法
BMPR1A(NM_004329)の転写開始点を0とし、上流−1,200bから+400bまでの領域を対象としたバイサルファイトシーケンス条件を5つ設定した(図9)。各条件に対応するプライマーを設計した。バイサルファイトシーケンス条件の詳細及びプライマーの配列を表3に示す。
【0067】
【表3】
【0068】
バイサルファイトシーケンスは、(2−1)PCR、(2−2)クローニング、(2−3)シーケンス及び(2−4)データ解析の順に実施した。
【0069】
(2−1)PCR
表1に示すプライマーを用いて、PCRを行った。具体的には、以下の組成のPCR反応液を調製し、95℃、30秒間の熱処理後、熱変性(94℃、30秒)→アニーリング(57℃〜65℃)→伸長(72℃、30秒)の3ステップを40回繰り返した。
【0070】
〔PCR反応液組成〕
TaKaRa Ex Taq HS(タカラバイオ、RR006A) 0.2μL
10×Ex Taq Buffer(タカラバイオ、RR006A) 6 μL
dNTP Mixture(タカラバイオ、RR006A) 4.8μL
センスプライマー(10pmol/μL) 3 μL
アンチセンスプライマー(10pmol/μL) 3 μL
ゲノムDNA((1)にて調製) 2 μL
DW(蒸留水) 41 μL
(合計 60 μL)
【0071】
(2−2)クローニング
(a)DNA精製
(2−1)で得られたPCR産物を2.5%アガロース(タカラバイオ、5003)電気泳動し、ゲルスター(タカラバイオ、F0535)で染色した後、目的のバンドを切り出した。これを細かく裁断し、Quantum Prep Freeze’N Squeeze DNA Gel extraction Spin Column(BIORAD、732−6166)のフィルターカップに充填した。−20℃に5分間以上放置し、室温にて13,000×g、3分間遠心分離した。フィルターカップを通過して溶出したDNA溶液に、100%エタノールを2.5倍量、3M酢酸ナトリウムを1/10倍量添加し、−80℃に15分間放置した。15,000rpmで15分間遠心分離し、得られた白色ペレットを70%エタノールで洗浄後、17μLの蒸留水(以下、DWと言う)に溶解した。
【0072】
(b)ライゲーション
(a)で精製したDNA溶液の全量を用いて、ライゲーション反応を行った。ライゲーション反応は、Mighty Cloning Reagent Set(Blunt EndI)(タカラバイオ、6027)を用いて行った。精製DNA溶液(17μL)に10×Blunting Kination Bufferを2μL、Blunting Kination Enzyme Mixを1μL添加し、37℃で10分間インキュベートした。この反応液にDWを80μL添加して全量100μLとした後、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(25:24:1、v/v)(GIBCO,15593−031)を100μL添加して、混合した。室温で12,000rpm、5分間遠心操作を行い、DNAを含む上層を採取した。
【0073】
100%エタノールを2.5倍量、3M酢酸ナトリウムを1/10倍量添加し、−80℃に15分間放置した。15,000rpmで15分間遠心分離し、得られた白色ペレットを70%エタノールで洗浄後、10μLのTE緩衝液(pH8.0、ナカライテスク、32739−31)に溶解した。
【0074】
(c)トランスフォーメーション
(b)で得られたDNA溶液5μLに、pUC118 HincII/BAPを1μL加え、混合した。Ligation Mighty Mixを6μL加え混合した後、16℃で1時間インキュベートした。この6μLを、50μLのE.coli JM109 Competent Cell(タカラバイオ、9052)に加え、穏やかに混合した後、氷中で30分間放置した。その後42℃で45秒間インキュベートし、氷中2分間放置した。そこに、あらかじめ37℃に保温しておいたSOC培地を444μL添加し、37℃で1時間振とうした。アンピシリン(Sigma、A9393)を50μg/mL含むLB寒天培地(90mm dish)に30μL播種し、37℃で一昼夜培養した。得られたコロニーについてコロニーPCRを実施し、インサートの確認を行った。
【0075】
(d)プラスミド抽出
プラスミドの抽出は、QIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN,27106)を用いて行った。コロニーPCRにてインサートが確認されたコロニーを、アンピシリンを50μg/mL含む2.5mL LB培地に加え、37℃で一昼夜振とう培養した。得られた菌液を6,000rpm、10分間遠心分離し、上清を除去して、菌ペレットを得た。ここに250μLのBuffer P1を加えて懸濁の後、2mLマイクロチューブに移した。250μLのBuffer P2を加え、4〜6回転倒混和し、350μLのBuffer N3を加えて、さらに4〜6回転倒混和した。13,000rpmにて10分間遠心操作し、白色ペレットを除いた上清をQIAprepスピンカラムにアプライした。13,000rpmで1分間遠心分離し、カラム透過液を除去した。
【0076】
ここに500μLのBuffer PBを添加し、遠心分離して透過液を除去した。さらにカラムに750μLのBuffer PEを加え、遠心分離して透過液を除去した。残留しているバッファーを除去するため、再度遠心操作を行った後、カラムを1.5mLコレクションチューブに移した。Buffer EBを50μL加え、1分間放置した後、遠心分離にてカラムより溶出してきた液をプラスミド溶液として回収した。このプラスミド溶液に、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール精製、エタノール精製を行い、20μLのDWに溶解して、その後のシーケンスに用いた。
【0077】
(2−3)シーケンス
(2−2)で得られたプラスミドについて、インサート(解析対象領域)のシーケンスを行った。シーケンスにはタカラバイオのプレミックスシーケンスを利用した。シーケンス用プライマーには、M13 Primer M4(5’−GTTTT CCCAG TCACG AC−3’、配列番号44)を用いた。全量15μLに、プラスミドDNAが約300〜600ng、プライマーが7.5pmol含まれるように調整し、タカラバイオに送付した。
【0078】
(2−4)データ解析
(2−3)で得られたシーケンス結果の解析は、バイサルファイトシーケンスデータの解析が容易に行える公開ウェブサイトQUMA(Quantification tool for Methylation Analysis,http://quma.cdb.riken.jp/top/index_j.html)を利用した。各サンプル24個前後のクローンのシーケンス結果を用いて解析を行ったが、解析対象として不適切な配列である場合は、解析対象から除外した。その際の判断基準は、(1)バイサルファイト処理による未変換Cが5以下であること、(2)バイサルファイト処理による変換Cが95%以上であること、(3)ミスマッチ配列が10以下であること、及び(4)配列同一性が90%以上であること、とした。
【0079】
結果を表4に示す。
【0080】
【表4】
【0081】
解析対象領域1及び4では、被験者D(脱毛症兆候者)で被験者E(脱毛症の兆候なし)よりもメチル化度が高かった。一方、解析領域2及び5では、被験者D(脱毛兆候者)で被験者E(脱毛症の兆候なし)よりメチル化度が低かった。一方、解析対象領域3では、被験者同士での差は見出せなかった。
【0082】
実施例3
(1)ゲノムDNAの抽出
ゲノム提供者F(20代男性、男性型脱毛兆候者)、G(20代男性、脱毛症の兆候なし)の頭部から毛髪5本を抜き、エタノールにて洗浄した。毛根約2cmを5mm程度に裁断し、ISOHAIR(ニッポンジーン、319−03401)を用いてゲノムDNAを抽出した。詳細な操作は、ISOHAIR添付のプロトコルに従った。
【0083】
得られたゲノムDNAをBamHIにて断片化し、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール、エタノールにて精製した。260nmの吸光度の値からDNA濃度を測定し、200ngの断片化ゲノムDNAを対象に、バイサルファイト処理(非メチル化シトシンをウラシルに変換する処理)を行った。バイサルファイト処理は、EZ DNA Methylation−Gold Kit(ZYMO RESEARCH,D5005)を用い、詳細な操作は添付のプロトコールに従った。
【0084】
(2)メチル化/非メチル化特異的PCR
EphA4(NM_004438)の翻訳開始コドンAを1とした場合の、上流−127から+75までを増幅するプライマーを設計した。プライマーには本領域のCpG領域を含み、このCpG領域のメチル化シトシンを認識するメチル化プライマーと、メチル化されていないシトシンを認識する非メチル化プライマーをそれぞれ設計した(図28)。図28の下線部分は各プライマーに対応する配列領域を示す。プライマーの配列を表5に示す。
【0085】
また、Wnt10b(NM_003394)の翻訳開始コドンAを1とした場合の、上流−295から−190までを増幅するプライマーを設計した。プライマーには本領域のCpG領域を含み、このCpG領域のメチル化シトシンを認識するメチル化プライマーと、メチル化されていないシトシンを認識する非メチル化プライマーをそれぞれ設計した。プライマーの配列を表5に示す。
さらに、コントロールとしてのβ−cateninの解析用に、beta−catenin(NM_001098209)の翻訳開始コドンAを1とした場合の、−813bから−705bまでを対象としたプライマーを設計した。
【0086】
【表5】
【0087】
本プライマーを用いて、PCRを行った。具体的には以下の組成のPCR反応液を調製し、94℃、5分間の熱処理後、熱変性(94℃、15秒)→アニーリング(EphA4 非メチル化プライマー:51℃、メチル化プライマー:56℃ Wnt10b 非メチル化プライマー:60℃、メチル化プライマー:58℃、いずれも30秒)→伸長(72℃、15秒)の3ステップを40回繰り返した。
【0088】
〔PCR反応液組成〕
酵素(TAKARA ExTaq HS:タカラバイオ、又はHs StarTaq plus:QIAGEN) 0.1μL
10×reaction Bf 2 μL
dNTP mix 1.6μL
プライマー Forward(0.56 pmol/μL) 6.5μL
プライマー Reverse(0.56pmol/μL) 6.5μL
バイサルファイト処理DNA((1)にて調製) 0.3μL
滅菌水 10.5μL
(合計 20 μL)
【0089】
またメチル化/非メチル化特異的な増幅が行われているかどうかを確認する目的で、メチル化/非メチル化コントロールゲノム(EpiTect PCR Control DNA,QIAGEN,59695)を用いて同様にPCRを行った。
【0090】
PCR後の増幅産物を、2.5%アガロースゲルに電気泳動し、ゲルスター(タカラバイオ)溶液中でDNAを染色した。UV照射により発光するバンドの強度を比較分析した。EphA4のメチル化解析結果を表6及び図10〜図15に、それぞれ示す。Wnt10bのメチル化解析結果を表7及び図16〜図21に、それぞれ示す。またβ−cateninのメチル化解析の結果を表8及び図22〜図27に、それぞれ示す。
【0091】
EphA4、Wnt10b両方共に、被験者F(脱毛症兆候あり)において、被験者G(脱毛症兆候なし)よりもメチル化度が高いことが明らかになった。一方で発毛因子のひとつであるβ−cateninのメチル化状態は、被験者F及びGともに完全な非メチル化状態であることが明らかとなった。
【0092】
【表6】
【0093】
【表7】
【0094】
【表8】
【符号の説明】
【0095】
図4と8中のMとUは、それぞれ、メチル化コントロールゲノムを鋳型とした場合の増幅産物、非メチル化コントロールゲノムを鋳型とした場合の増幅産物の結果を示す。
【配列表フリーテキスト】
【0096】
配列番号1〜3及び8〜13:骨形成タンパク質受容体遺伝子のメチル化領域の塩基配列の例
配列番号4〜7:骨形成タンパク質受容体遺伝子のメチル化及び非メチル化プライマーの塩基配列の例
配列番号14〜16:エフリン受容体遺伝子のメチル化領域の塩基配列の例
配列番号17〜19:Wnt遺伝子のメチル化領域の塩基配列の例
配列番号20〜23:エフリン受容体遺伝子のメチル化及び非メチル化プライマーの例
配列番号24〜27:Wnt遺伝子のメチル化及び非メチル化プライマーの例
配列番号28〜35:骨形成タンパク質受容体遺伝子のバイサルファイトシーケンス用プライマーの塩基配列の例
配列番号36〜37:実施例2で用いた骨形成タンパク質受容体遺伝子のバイサルファイトシーケンス用プライマーの塩基配列の例
配列番号38〜41:実施例3で用いたβ−カテニンのメチル化及び非メチル化プライマーの例
配列番号42:Wnt遺伝子の非メチル化プライマーによる増幅領域の例
配列番号43:エフリン受容体遺伝子の非メチル化領域の塩基配列の例
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子、及びWnt遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脱毛症の発症メカニズムの研究の過程で、脱毛症発症者の毛包では骨形成タンパク質(BMP、Bone Morphogenetic Protein)のファミリーに属するBMP2やBMP5が増加し、毛髪のケラチンの生合成を促進する効果を有することが明らかにされている(特許文献1(特開2005−2068号公報))。BMP2やBMP5のように、発毛を促す因子、又は脱毛において減少する因子(発毛因子)が存在することが解明されてきた。
【0003】
また、BMPの受容体は複数の種類があるが、そのうち骨形成タンパク質受容体1A型(BMPR1A)に関して、BMPR1Aノックアウトマウスは、四肢の体毛が減少することが知られている(非特許文献1(Development,2004Apr;131(8):1825−33))。
【0004】
エフリン受容体ファミリーはエフリンと結合し、発生段階の制御や細胞の恒常性維持を行っていることが報告されている。エフリン受容体ファミリーのうちEphA4は、ヒトの9番染色体上の8685668から8776445に位置し、下流のシグナルはSrcキナーゼやRhoAファミリーGTPaseにより伝達される。EphA4は脱毛症患者由来毛乳頭細胞での発現低下が明らかにされているGPI膜結合型タンパク質Ephrin−A3の受容体である(非特許文献2(Journal of Dermatological Science,36,25−32))。また、EphA4は毛包において発現していることが確認されている。
【0005】
Wntタンパク質は腫瘍形成、細胞運命、パターン形成の調節などのいくつかの発生上の過程に関与する一連のタンパク質である。WntはFz受容体を介し、β−cateninの核内移行を促すことで転写調節を行う。Wntタンパク質の一つであるWnt10の遺伝子は、12番染色体上の49359123から49365543に位置する。Wnt10bは毛包の形成及び発達に関与することが明らかにされている(非特許文献3(Biochem.Biophys.Res Commun.342,28−35,2006))。
【0006】
一方、様々な疾患原因のひとつとして、DNAのメチル化を代表とするエピジェネティックな変化が明らかになりつつある。例えば特許文献2(特表2004−529630号公報)には、生体試料の遺伝子のシトシンのメチル化レベルから、前立腺癌などの診断及び治療のための遺伝子パネルが得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−2068号公報
【特許文献2】特表2004−529630号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Development,2004Apr;131(8):1825−33
【非特許文献2】Journal of Dermatological Science,36,25−32
【非特許文献3】Biochem.Biophys.Res Commun.342,28−35,2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら脱毛症とエピジェネティクスとの関係についてこれまで検討された例はなかった。本発明の目的は、脱毛症と遺伝子におけるエピジェネティックな変化との関係を解明し、脱毛症の予防や治療、脱毛症リスクの判定、脱毛症治療及び/又は予防薬の薬剤応答性判定のための手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上述の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子、及びWnt遺伝子中のメチル化領域のメチル化度に、個体間で相違があることを見出した。具体的には、脱毛症リスクの高いヒトの生体試料では骨形成タンパク質受容体遺伝子の特定の領域、エフリン受容体遺伝子、及びWnt遺伝子のメチル化度が高く、一方、脱毛症リスクが低いヒトの生体試料では前記メチル化度が低いことを見出した。また前記骨形成タンパク質受容体遺伝子の特定の領域とは別の特定の領域では、脱毛症リスクの高いヒトの生体試料ではメチル化度が低く、脱毛症リスクが低いヒトの生体試料ではメチル化度が高いことを見出した。また脱毛症の発症には関わらず、加齢によっても骨形成タンパク質受容体遺伝子のメチル化が亢進されることが示唆された。骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子、及びWnt遺伝子において、メチル化度が脱毛と関係していることについては、これまで知られていなかった。
【0011】
以上のことから、毛根由来ゲノムの骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子、又はWnt遺伝子のメチル化度を測定することで、毛髪提供者の脱毛症リスクの判断、脱毛症治療及び/又は予防剤に対する応答性などの判断に応用できる技術を提供し得ることを見出し、本発明に到達した。
【0012】
本発明は、以下の〔1〕〜〔25〕を提供するものである。
〔1〕生体試料の骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子及びWnt遺伝子から選ばれる1又は2以上の遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を検出する方法。
〔2〕 前記生体試料は、抜去毛である、上記〔1〕に記載の方法。
〔3〕前記生体試料は、毛根を含む抜去毛である、上記〔1〕に記載の方法。
〔4〕前記骨形成タンパク質受容体遺伝子が、骨形成タンパク質受容体1A型遺伝子である、上記〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の方法。
〔5〕前記骨形成タンパク質受容体遺伝子中のメチル化領域が、下記の(A−1)〜(A−18)のいずれかの塩基配列の領域である、上記〔4〕に記載の方法。
(A−1)配列表の配列番号1に記載の塩基配列の全部又は一部を含む塩基配列
(A−2)配列表の配列番号1に記載の塩基配列の全部又は一部からなる塩基配列
(A−3)配列表の配列番号2に記載の塩基配列の全部又は一部を含む塩基配列
(A−4)配列表の配列番号2に記載の塩基配列の全部又は一部からなる塩基配列
(A−5)配列表の配列番号3に記載の塩基配列の全部又は一部を含む塩基配列
(A−6)配列表の配列番号3に記載の塩基配列の全部又は一部からなる塩基配列
(A−7)配列表の配列番号8に記載の塩基配列の全部又は一部を含む領域
(A−8)配列表の配列番号8に記載の塩基配列の全部又は一部からなる領域
(A−9)配列表の配列番号9に記載の塩基配列の全部又は一部を含む領域
(A−10)配列表の配列番号9に記載の塩基配列の全部又は一部からなる領域
(A−11)配列表の配列番号10に記載の塩基配列の全部又は一部を含む領域
(A−12)配列表の配列番号10に記載の塩基配列の全部又は一部からなる領域
(A−13)配列表の配列番号11に記載の塩基配列の全部又は一部を含む領域
(A−14)配列表の配列番号11に記載の塩基配列の全部又は一部からなる領域
(A−15)配列表の配列番号12に記載の塩基配列の全部又は一部を含む領域
(A−16)配列表の配列番号12に記載の塩基配列の全部又は一部からなる領域
(A−17)配列表の配列番号13に記載の塩基配列の全部又は一部を含む領域
(A−18)配列表の配列番号13に記載の塩基配列の全部又は一部からなる領域
〔6〕前記エフリン受容体遺伝子が、EphA4遺伝子である上記〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の方法。
〔7〕前記メチル化領域が、下記の(C−1)〜(C−6)のいずれかの塩基配列の領域である、上記〔6〕に記載の方法。
(C−1)配列表の配列番号14に記載の塩基配列の全部又は一部を含む塩基配列
(C−2)配列表の配列番号14に記載の塩基配列の全部又は一部からなる塩基配列
(C−3)配列表の配列番号15に記載の塩基配列の全部又は一部を含む塩基配列
(C−4)配列表の配列番号15に記載の塩基配列の全部又は一部からなる塩基配列
(C−5)配列表の配列番号16に記載の塩基配列の全部又は一部を含む塩基配列
(C−6)配列表の配列番号16に記載の塩基配列の全部又は一部からなる塩基配列
〔8〕前記Wnt遺伝子が、Wnt10b遺伝子である上記〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の方法。
〔9〕前記メチル化領域が、下記の(E−1)〜(E−6)のいずれかの塩基配列の領域である、上記〔8〕に記載の方法。
(E−1)配列表の配列番号17に記載の塩基配列の全部又は一部を含む領域
(E−2)配列表の配列番号17に記載の塩基配列の全部又は一部からなる領域
(E−3)配列表の配列番号18に記載の塩基配列の全部又は一部を含む領域
(E−4)配列表の配列番号18に記載の塩基配列の全部又は一部からなる領域
(E−5)配列表の配列番号19に記載の塩基配列の全部又は一部を含む領域
(E−6)配列表の配列番号19に記載の塩基配列の全部又は一部からなる領域
〔10〕前記メチル化領域を、メチル化されている塩基を認識するプライマー及び/又はメチル化されていない塩基を認識するプライマーを用いて増幅させてから、メチル化度を判定する、上記〔1〕〜上記〔9〕のいずれか一項に記載の方法。
〔11〕前記プライマーが、以下の(B−1)〜(B−8)から選ばれるポリヌクレオチドである、上記〔10〕に記載の方法。
(B−1)配列表の配列番号4に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(B−2)配列表の配列番号4に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(B−3)配列表の配列番号5に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(B−4)配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(B−5)配列表の配列番号6に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(B−6)配列表の配列番号6に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(B−7)配列表の配列番号7に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(B−8)配列表の配列番号7に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
〔12〕前記プライマーが、以下の(D−1)〜(D−8)から選ばれるポリヌクレオチドである、上記〔10〕に記載の方法。
(D−1)配列表の配列番号20に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(D−2)配列表の配列番号20に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(D−3)配列表の配列番号21に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(D−4)配列表の配列番号21に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(D−5)配列表の配列番号22に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(D−6)配列表の配列番号22に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(D−7)配列表の配列番号23に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(D−8)配列表の配列番号23に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
〔13〕前記プライマーが、以下の(F−1)〜(F−8)から選ばれるポリヌクレオチドである、上記〔10〕に記載の方法。
(F−1)配列表の配列番号24に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(F−2)配列表の配列番号24に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(F−3)配列表の配列番号25に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(F−4)配列表の配列番号25に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(F−5)配列表の配列番号26に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(F−6)配列表の配列番号26に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(F−7)配列表の配列番号27に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(F−8)配列表の配列番号27に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
〔14〕前記メチル化領域をプライマーにより増幅させてから、増幅産物をシーケンシングしてメチル化度を判定する、上記〔1〕〜上記〔9〕のいずれか一項に記載の方法。
〔15〕前記プライマーが、以下の(G−1)〜(G−16)から選ばれるポリヌクレオチドである、上記〔14〕に記載の方法。
(G−1)配列表の配列番号28に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−2)配列表の配列番号28に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−3)配列表の配列番号29に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−4)配列表の配列番号29に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−5)配列表の配列番号30に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−6)配列表の配列番号30に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−7)配列表の配列番号31に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−8)配列表の配列番号31に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−9)配列表の配列番号32に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−10)配列表の配列番号32に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−11)配列表の配列番号33に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−12)配列表の配列番号33に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−13)配列表の配列番号34に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−14)配列表の配列番号34に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−15)配列表の配列番号35に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−16)配列表の配列番号35に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
〔16〕被験者から採取された生体試料の骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子及びWnt遺伝子から選ばれる1又は2以上の遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を検出し、健常者の生体試料の前記メチル化領域のメチル化度と差がある場合には、前記被験者の脱毛症の発症リスクが高いと判定する、前記被験者の脱毛症の発症リスクを予測する方法。
〔17〕被験者から採取された生体試料の骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子及びWnt遺伝子から選ばれる1又は2以上の遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を検出し、健常者の生体試料の前記メチル化領域のメチル化度と差がある場合には、前記被験者の脱毛症治療及び/又は予防剤に対する応答性が高いと判定する、前記被験者の脱毛症治療及び/又は予防剤に対する応答性を予測する方法。
〔18〕前記脱毛症治療及び/又は予防剤が、骨形成タンパク質促進剤、エフリン促進剤、Wnt促進剤である、上記〔17〕に記載の方法。
〔19〕前記骨形成タンパク質促進剤及びエフリン促進剤が、6−ベンジルアミノプリンであることを特徴とする、上記〔18〕記載の方法。
〔20〕骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子及びWnt遺伝子から選ばれる1又は2以上の遺伝子のメチル化領域中のメチル化されている塩基を認識するプライマー及び/又はメチル化されていない塩基を認識するプライマーを含む、生体試料の骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子、及びWnt遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を検出するためのプライマーセット。
〔21〕前記プライマーが、下記の(B−1)〜(B−8)、(D−1)〜(D−8)、及び(F−1)〜(F−8)から選ばれる1又は2以上のプライマーである、上記〔20〕に記載のプライマーセット。
(B−1)配列表の配列番号4に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(B−2)配列表の配列番号4に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(B−3)配列表の配列番号5に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(B−4)配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(B−5)配列表の配列番号6に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(B−6)配列表の配列番号6に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(B−7)配列表の配列番号7に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(B−8)配列表の配列番号7に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(D−1)配列表の配列番号20に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(D−2)配列表の配列番号20に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(D−3)配列表の配列番号21に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(D−4)配列表の配列番号21に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(D−5)配列表の配列番号22に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(D−6)配列表の配列番号22に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(D−7)配列表の配列番号23に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(D−8)配列表の配列番号23に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(F−1)配列表の配列番号24に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(F−2)配列表の配列番号24に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(F−3)配列表の配列番号25に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(F−4)配列表の配列番号25に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(F−5)配列表の配列番号26に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(F−6)配列表の配列番号26に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(F−7)配列表の配列番号27に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(F−8)配列表の配列番号27に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
〔22〕上記〔20〕又は上記〔21〕に記載のプライマーを含む、生体試料の骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子及びWnt遺伝子から選ばれる1又は2以上の遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を検出するために使用されるキット、試薬又は検出システム。
〔23〕前記メチル化領域中メチル化領域を増幅するためのプライマーを含む、生体試料の骨形成タンパク質受容体遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を検出するためのプライマーセット。
〔24〕前記プライマーが、下記の(G−1)〜(G−16)から選ばれる1又は2以上のプライマーである、上記〔23〕に記載のプライマーセット。
(G−1)配列表の配列番号28に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−2)配列表の配列番号28に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−3)配列表の配列番号29に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−4)配列表の配列番号29に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−5)配列表の配列番号30に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−6)配列表の配列番号30に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−7)配列表の配列番号31に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−8)配列表の配列番号31に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−9)配列表の配列番号32に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−10)配列表の配列番号32に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−11)配列表の配列番号33に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−12)配列表の配列番号33に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−13)配列表の配列番号34に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−14)配列表の配列番号34に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−15)配列表の配列番号35に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−16)配列表の配列番号35に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
〔25〕上記〔23〕又は上記〔24〕に記載のプライマーを含む、生体試料の骨形成タンパク質受容体遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を検出するために使用されるキット、試薬又は検出システム。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、生体試料の骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子、及びWnt遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を検出する方法が提供され、該方法は、脱毛症の発症リスクの予測や、脱毛症治療及び/又は予防薬に対する応答性の判定への応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、実施例1の提供者Aのメチル化増幅の結果を示す図である。
【図2】図2は、実施例1の提供者Bのメチル化増幅の結果を示す図である。
【図3】図3は、実施例1の提供者Cのメチル化増幅の結果を示す図である。
【図4】図4は、実施例1のコントロールゲノムのメチル化増幅の結果を示す図である。
【図5】図5は、実施例1の提供者Aの非メチル化増幅の結果を示す図である。
【図6】図6は、実施例1の提供者Bの非メチル化増幅の結果を示す図である。
【図7】図7は、実施例1の提供者Cの非メチル化増幅の結果を示す図である。
【図8】図8は、実施例1のコントロールゲノムの非メチル化増幅の結果を示す図である。
【図9】図9は、実施例2の解析条件1〜5の増幅領域の配置を示す図である。
【図10】図10は、実施例3の提供者FのEphA4メチル化増幅の結果を示す図である。
【図11】図11は、実施例3の提供者FのEphA4非メチル化増幅の結果を示す図である。
【図12】図12は、実施例3の提供者GのEphA4メチル化増幅の結果を示す図である。
【図13】図13は、実施例3の提供者GのEphA4非メチル化増幅の結果を示す図である。
【図14】図14は、実施例3のEphA4のコントロールDNAのメチル化増幅の結果を示す図である。
【図15】図15は、実施例3のEphA4のコントロールDNAの非メチル化増幅の結果を示す図である。
【図16】図16は、実施例3の提供者FのWnt10bメチル化増幅の結果を示す図である。
【図17】図17は、実施例3の提供者FのWnt10b非メチル化増幅の結果を示す図である。
【図18】図18は、実施例3の提供者GのWnt10bメチル化増幅の結果を示す図である。
【図19】図19は、実施例3の提供者GのWnt10b非メチル化増幅の結果を示す図である。
【図20】図20は、実施例3のWnt10bのコントロールDNAのメチル化増幅の結果を示す図である。
【図21】図21は、実施例3のWnt10bのコントロールDNAの非メチル化増幅の結果を示す図である。
【図22】図22は、実施例3の提供者Fのβ−cateninメチル化増幅の結果を示す図である。
【図23】図23は、実施例3の提供者Fのβ−catenin非メチル化増幅の結果を示す図である。
【図24】図24は、実施例3の提供者Gのβ−cateninメチル化増幅の結果を示す図である。
【図25】図25は、実施例3の提供者Gのβ−catenin非メチル化増幅の結果を示す図である。
【図26】図26は、実施例3のβ−cateninのコントロールDNAのメチル化増幅の結果を示す図である。
【図27】図27は、実施例3のβ−cateninのコントロールDNAの非メチル化増幅の結果を示す図である。
【図28】図28は、実施例3にて増幅した領域に対応するゲノム配列とプライマーの設計領域を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の方法においては、生体試料の骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子及びWnt遺伝子から選ばれる1又は2以上の遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を検出する。
【0016】
生体試料とは、ヒト又はヒト以外の哺乳動物の身体から分離された試料を意味する。生体試料の例としては、抜去毛、血液、尿などが例示されるが、このうち抜去毛が好ましい。抜去毛とは、ヒト又はヒト以外の哺乳動物の身体から抜去(分離)された試料を意味する。身体の部位は特に限定されないが、通常は頭部である。ヒト又はヒト以外の哺乳動物が脱毛症を発症しているか否か、脱毛症のリスクがあるか否かについても特には問わない。脱毛症としては、男性型脱毛症、老人性脱毛症、薬剤に起因する脱毛症、皮膚損傷に起因する脱毛症、びまん性脱毛症(女性に多い)、皮脂の過酸化に起因する脱毛症などがある。
【0017】
生体試料が抜去毛の場合、ヒト又はヒト以外の哺乳動物の個体の1本の毛髪であればよいが、2本以上であってもよい。通常は、5〜50本である。2本以上の毛髪の場合は、通常は同じ個体から抜去された毛髪である。
【0018】
毛髪は、毛根(皮膚の中に埋もれている部分)、毛包(毛根を包む鞘状の部分)、毛球(毛包の下部の球状の部分)、毛幹(皮膚の表面に出た部分)などの部位から構成される。生体試料としての抜去毛はこれらのうち1又は2以上の毛髪の部位を含むものであってもよいが、毛根を含むことが好ましい。
【0019】
抜去毛の長さは特には限定されないが、取り扱い上の理由などにより、短く裁断されたもの(例えば5mm前後)であってもよい。また、衛生上の理由などにより、エタノールなどアルコールで洗浄しておいてもよい。
【0020】
本発明においてメチル過度の検出対象となる遺伝子は、骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子及びWnt遺伝子から選ばれる1又は2以上の遺伝子である。
【0021】
骨形成タンパク質受容体遺伝子とは、骨形成タンパク質(BMP)の受容体(BMPR)をコードする遺伝子を意味する。BMPRには1型(1A型、1B型)、2型などのファミリーがあるが、本発明においては1A型(BMPR1A)が好ましい。BMPR1A遺伝子の塩基配列は、核酸データベース(GenBank)に登録されており、アクセス番号はNM_004329である。
【0022】
エフリン受容体遺伝子とは、エフリンの受容体(Eph)をコードする遺伝子を意味する。EphはサブクラスA(EphA)及びB(EphB)に分類され、サブクラスAは9種類(EphA1、EphA2、EphA3、EphA4、EphA5、EphA6、EphA7、EphA8、EphA10)、サブクラスBは5種類(EphB1、EphB2、EphB3、EphB4、EphB6)が知られている。本発明においては、EphA4が好ましい。EphA4遺伝子の塩基配列は、核酸データベース(GenBank)に登録されており、アクセス番号はNM_004438である。
【0023】
Wnt遺伝子は、Wntタンパク質をコードする遺伝子である。Wntタンパク質は、分泌性のタンパク質群であり、発生において、体軸形成、パターン形成、細胞の運命決定や運動性の制御、細胞増殖や組織における極性支配、神経新生などを含む多様な役割を果たす。Wntタンパク質はWnt2B、Wnt3、Wnt3A、Wnt5B、Wnt6、Wnt7B、Wnt8A、Wnt8B、Wnt10A、Wnt10B、Wnt11、Wnt14、Wnt14B/Wnt15等が知られている。本発明においてはWnt10bが好ましい。 Wnt10b遺伝子の塩基配列は、核酸データベース(GenBank)に登録されており、アクセス番号はNM_003394である。
【0024】
本発明においては、骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子及びWnt遺伝子から選ばれる1又は2以上の遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を検出する。メチル化度とは、メチル化の発生の度合いを意味し、メチル化された塩基の量、メチル化された塩基の数、メチル化された塩基の部位などにより表される。メチル化された塩基とは、メチル化修飾のなされた塩基(通常はシトシン)を意味する。メチル化度の検出は、メチル化度の定量、判定、検体間での比較と言い換えることも可能である。
【0025】
本発明においてメチル化度が「高い」とは、メチル化された塩基の量が多いことを意味し、メチル化度が「低い」とは、メチル化された塩基の量が少ないことを示す。量の多少は、異なる抜去毛試料間、或いは市販のコントロールとの間で、メチル化度を比較することにより、相対的に決定されうる。
【0026】
遺伝子中のメチル化領域とは、塩基のメチル化が生じ得る領域を意味し、通常は遺伝子内のCpGアイランド(CpGサイト)を含む領域である。
【0027】
メチル化領域の長さは特に制限はないが、通常は5塩基以上、例えば10塩基以上、好ましくは15塩基以上、より好ましくは100塩基以上である。上限も特に制限はないが、通常は3000塩基以下、好ましくは2500塩基以下、より好ましくは2100塩基以下である。メチル化領域は、各遺伝子の一部又は全部であればよい。メチル化領域が各遺伝子の一部である場合には、通常、上述のようにCpGアイランドを1つ以上含む領域が選抜される。該領域におけるCpGアイランドの存在頻度は特に制限されないが、より高いことが好ましく、具体的には、1%以上、好ましくは2%以上、より好ましくは5%以上、さらにより好ましくは10%以上であることが好ましい。また、メチル化領域は、後述するようにメチル化度の検出にあたりメチル化領域を増幅する方法を採用する場合、プライマーが設計しやすい(例えば、非特異的な増幅が起こり難い、プライマー同士の増幅やダイマーが形成されにくい、など)領域であることが好ましい。
【0028】
BMPR1A遺伝子の場合のメチル化領域の好ましい例としては、以下の領域が挙げられる。なお、以下の塩基番号は、BMPR1A遺伝子の転写開始点を0とした場合の番号である。
(A−1)上流−967bから−846bまでの121b(配列表の配列番号1参照)の全部又は一部を含む領域
(A−2)前記塩基配列(配列表の配列番号1参照)の全部又は一部からなる領域
(A−3)上流−1000bから転写開始点0までの1000b(配列表の配列番号2参照)の全部又は一部を含む領域
(A−4)前記塩基配列(配列表の配列番号2参照)の全部又は一部からなる領域
(A−5)上流−2000bから転写開始点0までの2000b(配列表の配列番号3参照)の全部又は一部を含む領域
(A−6)前記塩基配列(配列表の配列番号3参照)の全部又は一部からなる領域
(A−7)上流−1,106bから−723bまでの384b(配列表の配列番号8参照)の全部又は一部を含む領域
(A−8)前記塩基配列(配列表の配列番号8参照)の全部又は一部からなる領域
(A−9)上流−249bから+66bまでの315b(配列表の配列番号9参照)の全部又は一部を含む領域
(A−10)前記塩基配列(配列表の配列番号9参照)の全部一部からなる領域
(A−11)上流−743bから−578bまでの166b(配列表の配列番号10参照)の全部又は一部を含む領域
(A−12)前記塩基配列(配列表の配列番号10参照)の全部又は一部からなる領域
(A−13)下流+67bから+333bまでの267b(配列表の配列番号11参照)の全部又は一部を含む領域
(A−14)前記塩基配列(配列表の配列番号11参照)の全部又は一部からなる領域
(A−15)上流−1106bから+333bまでの1,439b(配列表の配列番号12参照)の全部又は一部を含む領域
(A−16)前記塩基配列(配列表の配列番号12参照)の全部又は一部からなる領域
(A−17)上流−2000bから+333bまでの2,333b(配列表の配列番号13参照)の全部又は一部を含む領域
(A−18)前記塩基配列(配列表の配列番号13参照)の全部又は一部からなる領域
【0029】
(A−1)〜(A−18)の領域のうち、(A−1)〜(A−16)の領域が好ましく、(A−1)〜(A−4)及び(A−7)〜(A−16)の領域がより好ましく、(A−1)〜(A−4)及び(A−7)〜(A−14)の領域がさらに好ましく、(A−1)、(A−2)、(A−7)〜(A−14)の領域がさらにより好ましい。(A−1)〜(A−18)の領域は、それぞれ、或いは組み合わせて、脱毛症リスクの遺伝子マーカーとして有用である。
【0030】
EphA4遺伝子の場合のメチル化領域の好ましい例としては、、バイサルファイト処理前のEphA4遺伝子のうち、以下の領域が挙げられる。なお、以下の塩基番号は、Eph4A遺伝子の翻訳開始コドンATGのAを1とした場合の番号である。
(C−1)上流−127bから+75bまでの202b(配列表の配列番号14参照)の全部又は一部を含む領域
(C−2)前記塩基配列(配列表の配列番号14参照)の全部又は一部からなる領域
(C−3)上流−800bから+200bまでの1000b(配列表の配列番号15参照)の全部又は一部を含む領域
(C−4)前記塩基配列(配列表の配列番号15参照)の全部又は一部からなる領域
(C−5)上流−1800bから+200bまでの2000b(配列表の配列番号16参照)の全部又は一部を含む領域
(C−6)前記塩基配列(配列表の配列番号16参照)の全部又は一部からなる領域
(C−1)〜(C−6)の領域のうち、(C−1)〜(C−4)の領域が好ましく、(C−1)〜(C−2)の領域がより好ましい。(C−1)〜(C−6)の領域は、それぞれ、或いは組み合わせて、脱毛症リスクの遺伝子マーカーとして有用である。
【0031】
Wnt10b遺伝子の場合のメチル化領域の好ましい例としては、バイサルファイト処理前のWnt10b遺伝子のうち、以下の領域が挙げられる。なお、以下の塩基番号は、Wnt10b遺伝子の翻訳開始コドンATGのAを1とした場合の番号である。
(E−1)上流−295bから−190bまでの106b(配列表の配列番号17参照)の全部又は一部を含む領域
(E−2)前記塩基配列(配列表の配列番号17参照)の全部又は一部からなる領域
(E−3)上流−1231b(UTR始点)から−1bまでの1231b(配列表の配列番号18参照)の全部又は一部を含む領域
(E−4)前記塩基配列(配列表の配列番号18参照)の全部又は一部からなる領域
(E−5)上流−2000から−1までの2000b(配列表の配列番号19参照)の全部又は一部を含む領域
(E−6)前記塩基配列(配列表の配列番号19参照)の全部又は一部からなる領域
(E−1)〜(E−6)の領域のうち、(E−1)〜(E−4)の領域が好ましく、(E−1)〜(E−2)の領域がより好ましい。(E−1)〜(E−6)の領域は、それぞれ、或いは組み合わせて、脱毛症リスクの遺伝子マーカーとして有用である。
【0032】
メチル化度の検出の方法は特に限定されないが、バイサルファイト処理によることができる。バイサルファイト処理とは、生体試料のゲノムDNAをバイサルファイト(亜硫酸水素塩)で処理することを意味する。バイサルファイト処理により、DNA中の非メチル化シトシンはウラシルに変換され、メチル化シトシンは変換されずに維持される。よって、前記のバイサルファイト処理を行う場合のメチル化度の検出は、元の遺伝子と比較してウラシル(シーケンス反応上ではチミンとして表現されることもある)に置換されているか否かを判定することで、行い得る。すなわち、バイサルファイト処理後の試料のシトシンとウラシル(チミン)の量の、処理前の試料のそれらとの相違を調べることにより、メチル化度を検出できる。
【0033】
バイサルファイト処理は、例えば、市販のキット(例えばEZ DNA Methylation−Gold Kit(ZYMO RESEARCH,D5005))を用いて、キットに添付の説明書に記載の条件に従って進め得る。
【0034】
また、生体試料のゲノムDNAのうちメチル化領域を増幅する方法も例示され、前記バイサルファイト処理と組み合わせることが好ましい。
【0035】
増幅の方法としては、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法が例示される。好ましい態様の一つとしては、メチル化及び非メチル化されている塩基を特異的にPCR法により増幅してメチル化の様子を解析する方法(メチル化特異的PCR法、MSP法)が好ましい。上記メチル化領域のうち、(A−1)、(A−2)、(C−1)、(C−2)、(E−1)及び(E−2)の解析にはMSP法を利用することが好ましい。
【0036】
MSP法を用いる場合、増幅に用いるプライマー(プライマーセット)は、メチル化領域を増幅可能なように設計され得る。すなわち例えば、メチル化領域の5´末端側の部分の塩基配列と3´末端側の部分の塩基配列、さらにこれらの部分に相補的な塩基配列にハイブリダイズできるような塩基配列を適宜設計することができる。このうち、メチル化されている塩基を認識するプライマー(メチル化プライマー)及び/又はメチル化されていない塩基を認識するプライマー(非メチル化プライマー)を用いることが好ましく、これら両方を用いることがより好ましい。メチル化プライマーを用いて増幅すると、メチル化されている塩基を含む領域を増幅することができ、非メチル化プライマーを用いて増幅すると、メチル化されていない塩基を含む領域を増幅することができるので、それぞれのプライマーによる増幅量をハイブリダイゼーションなどにより容易に確認することができる。
【0037】
メチル化プライマーは、メチル化領域を含む領域の少なくとも一部の塩基配列又はこれに相補的な塩基配列を含むものとして設計され得る。非メチル化プライマーは、メチル化領域を含む領域に含まれるCpGサイト中のシトシンをウラシル(又はチミン)に置き換えた配列又はこれに相補的な塩基配列を含むものとして設計され得る。プライマーの長さは特には限定されないが、通常は8〜50塩基、好ましくは10〜40塩基、より好ましくは15〜30塩基である。
【0038】
MSP法におけるプライマーの好ましい例としては以下のものが挙げられる:配列表の配列番号4に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド(B−1);配列表の配列番号4に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド(B−2);配列表の配列番号5に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド(B−3);配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド(B−4);配列表の配列番号6に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド(B−5);配列表の配列番号6に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド(B−6);配列表の配列番号7に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド(B−7);配列表の配列番号7に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド(B−8)。前記ポリヌクレオチドのうち、(B−1)、(B−2)、(B−3)及び(B−4)はメチル化プライマーであり、(B−5)、(B−6)、(B−7)及び(B−8)は非メチル化プライマーである。(B−1)〜(B−8)のプライマーは、前記した配列番号1に記載の塩基配列を含む領域(A−1)、又は配列番号1に記載の塩基配列からなる領域(A−2)の増幅に用いられ得る。すなわち、(B−1)〜(B−8)のプライマーは、配列番号1に記載の塩基配列のうち塩基番号1〜23番目の領域、及び塩基番号97〜121番目の領域にアニールし得る。
【0039】
また、MSP法におけるプライマーの好ましい例としては以下のものが挙げられる:配列表の配列番号20に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド(D−1);配列表の配列番号20に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド(D−2);配列表の配列番号21に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド(D−3);配列表の配列番号21に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド(D−4);配列表の配列番号22に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド(D−5);配列表の配列番号22に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド(D−6);配列表の配列番号23に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド(D−7);配列表の配列番号23に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド(D−8)。前記ポリヌクレオチドのうち、(D−1)、(D−2)、(D−3)及び(D−4)は非メチル化プライマーであり、(D−5)、(D−6)、(D−7)及び(D−8)はメチル化プライマーである。(D−5)〜(D−8)のプライマーは、前記した配列番号14に記載の塩基配列を含む領域(C−1)、又は配列番号14に記載の塩基配列からなる領域(C−2)の増幅に用いられ得る。すなわち、(D−5)〜(D−8)のプライマーは、配列番号14に記載の塩基配列のうち塩基番号1〜20番目の領域、及び塩基番号178〜202番目の領域にアニールし得る。また、(D−1)〜(D−4)のプライマーは、配列番号43に記載の塩基配列(EphA4の翻訳開始コドンAを1としたときの、上流−127〜+73までの200b)のうち塩基番号1〜20番目の領域、及び塩基番号174〜200番目の領域にアニールし得る(図28)。
【0040】
さらに、MSP法におけるプライマーの好ましい例としては、以下のものが挙げられる:配列表の配列番号24に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド(F−1);配列表の配列番号24に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド(F−2);配列表の配列番25に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド(F−3);配列表の配列番号25に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド(F−4);配列表の配列番号26に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド(F−5);配列表の配列番号26に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド(F−6);配列表の配列番号27に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド(F−7);配列表の配列番号27に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド(F−8)。前記ポリヌクレオチドのうち、(F−1)、(F−2)、(F−3)及び(F−4)は非メチル化プライマーであり、(F−5)、(F−6)、(F−7)及び(F−8)はメチル化プライマーである。(F−1)〜(F−8)のプライマーは、前記した配列番号17に記載の塩基配列を含む領域(E−1)、又は配列番号17に記載の塩基配列からなる領域(E−2)の増幅に用いられ得る。すなわち、(F−1)〜(F−4)のプライマーは、配列番号17に記載の塩基配列の塩基番号1〜30番目の領域、及び塩基番号90〜106番目の領域にアニールし得る。(F−1)〜(F−4)のプライマーは、配列番号42に記載の塩基配列(Wnt10b(NM_003394)の翻訳開始コドンのAを1とした場合の上流−297bから−184bまでの114b)の塩基番号1〜33番目の領域、及び塩基番号91〜114番目の領域にアニールし得る(図28)。
【0041】
一方、生体試料のゲノムDNAのうちメチル化領域を増幅する方法としては、上述のMSP法と並んで本発明におけるメチル化解析の好ましい態様の一つである。バイサルファイトシーケンス法とは、バイサルファイト処理がなされたゲノムDNAのうちメチル化領域を含む領域を、通常のPCRにより増幅し、増幅産物のシーケンスを行い、得られるシーケンスデータ中のメチル化部位を解析する方法である。上記メチル化領域のうち、(A−7)〜(A−14)の解析には、バイサルファイトシーケンス法によることが好ましい。
【0042】
バイサルファイトシーケンス法に用いるプライマーの別の好ましい例としては、以下のものが挙げられる:配列表の配列番号28に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド(G−1);配列表の配列番号28に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド(G−2);配列表の配列番号29に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド(G−3);配列表の配列番号29に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド(G−4)配列表の配列番号30に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド(G−5);配列表の配列番号30に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド(G−6);配列表の配列番号31に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド(G−7);配列表の配列番号31に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド(G−8);配列表の配列番号32に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド(G−9);配列表の配列番号32に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド(G−10);配列表の配列番号33に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド(G−11);配列表の配列番号33に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド(G−12);配列表の配列番号34に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド(G−13);配列表の配列番号34に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド(G−14);配列表の配列番号35に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド(G−15);配列表の配列番号35に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド(G−16)。(G−1)〜(G−4)のプライマーは、前記した配列番号8に記載の塩基配列を含む領域(A−7)、又は配列番号8に記載の塩基配列からなる領域(A−8)の増幅に用いられ得る。(G−5)〜(G−8)のプライマーは、前記した配列番号9に記載の塩基配列を含む領域(A−9)、又は配列番号9に記載の塩基配列からなる領域(A−10)の増幅に用いられ得る。(G−9)〜(G−12)のプライマーは、前記した配列番号10に記載の塩基配列を含む領域(A−11)、又は配列番号10に記載の塩基配列からなる領域(A−12)の増幅に用いられ得る。(G−13)〜(G−16)のプライマーは、前記した配列番号11に記載の塩基配列を含む領域(A−11)、又は配列番号10に記載の塩基配列からなる領域(A−12)の増幅に用いられ得る。
【0043】
上記(B−1)〜(B−8)、(D−1)〜(D−8)、(F−1)〜(F−8)、(G−1)〜(G−16)のプライマーには、前記メチル化領域を増幅可能な範囲での改変を加えたもの、すなわち例えば、数塩基程度(例えば1〜3塩基、好ましくは1塩基程度)の欠失、付加、置換、挿入等をしたものも含まれる。
【0044】
生体試料の骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子及びWnt遺伝子から選ばれる1又は2以上の遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を検出するにあたり、通常は前処理として、生体試料のゲノムDNAを抽出する。抽出法は常法によることができ、市販キット(例えばISOHAIR(ニッポンジーン、319−03401))を用いて、前記キットの説明書に記載の条件に従って行い得る。ゲノムDNAについては、必要に応じて、制限酵素による断片化、精製(タンパク質の除去)など、遺伝子解析の際の一般的な前処理を行い得る。制限酵素は適切なもの(例えばBamHI)を適宜選択して用い得る。精製は、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール、エタノールなどの溶媒で抽出して行うことができる。
【0045】
メチル化度の解析にあたり、公開ウェブサイトQUMA(Quantification tool for Methylation Analysis,http://quma.cdb.riken.jp/top/index_j.html)等の解析サイトを利用してもよい。また、ゲル電気泳動後に染色し、バンドの発光強度を比較してもよい。
【0046】
なお、メチル化度の検出の方法は、上述したバイサルファイト法やメチル化領域の増幅に限定されず、メチル化領域の塩基配列のシークエンサーによる決定、制限酵素の特異的認識配列を利用したCOBRA(Combined Bisulfite Restriction Analysis)法などによってもよい。
【0047】
本発明の方法は、脱毛症の発症リスクの予測に用いることができる。すなわち、被験動物(ヒト又はヒト以外の哺乳動物)の生体試料の骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子及びWnt遺伝子から選ばれる1又は2以上の遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を検出し、健常者の生体試料の前記メチル化度と差がある場合には、前記被験者の脱毛症の発症リスクが高いと判定することができる。
【0048】
脱毛症の発症リスクの予測とは、まだ脱毛症を発症していない被験者が、将来脱毛症を発症するリスクを有しているか否かを予測することを意味する。健常者の生体試料の前記メチル化度との間で「差がある」とは、被験者のメチル化度を分子に、健常者のメチル化度を分母にして両者の比を算出した場合に、その比が0.8以下、ないしは1.2以上となる場合において差があることを意味する。上記比は、0.7以下ないしは1.3以上であることが好ましく、0.6以下ないしは1.4以上であることがより好ましい。メチル化領域が(A−1)、(A−2)、(A−7)〜(A−10)、(C−1)、(C−2)、(E−1)及び(E−2)の場合には、被験者について測定されたメチル化度が、健常者のメチル化度よりも高い場合には脱毛症の発症リスクが高いと予測され、メチル化度が低い場合には脱毛症の発症リスクが低いと予測される。メチル化領域が(A−11)〜(A−14)の場合には、被験者について測定されたメチル化度が、健常者の同様のメチル化領域のメチル化度よりも低い場合には脱毛症の発症リスクが高いと予測され、高い場合には脱毛症の発症リスクが低いと予測される。なお、被験者が高齢(例えば40代以上)の場合には、低年齢の場合よりも、健常者との比較においてメチル化度に差がある傾向にあるので、脱毛症の発症リスクの予測の際には、被験者の年齢をある程度考慮する必要がある。
【0049】
脱毛症の発症リスク予測における被験者は特に限定されないが、目的を考慮すると、脱毛症をまだ発症していないヒト(通常は男性)が適当である。健常者とは、脱毛症の兆候がないヒト(性別は問わない)が適当である。加齢により遺伝子のメチル化が亢進される可能性があり、中でもBMPR1A遺伝子においてその傾向が強いため、健常者は高齢者でない(例えば30代以下、好ましくは20代以下)であることが好ましい。健常者のメチル化領域のメチル化度は、予め測定しておくことが好ましい。
【0050】
また、本発明の方法は、脱毛症治療及び/又は予防薬、中でも骨形成タンパク質促進剤(BMP促進剤:BMPの産生を促進する成分)、エフリン促進剤(エフリンの産生を促進する成分)、及びWnt促進剤(Wntの産生を促進する成分)に対する応答性の判定に用いることができる。すなわち、被験者に脱毛症治療及び/又は予防薬を投与し、毛髪試料を採取し、前記毛髪試料の骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子及びWnt遺伝子から選ばれる1又は2以上の遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を検出し、健常者の生体試料の前記メチル化領域のメチル化度と差がある場合には、前記被験者の前記脱毛症治療及び/又は予防薬に対する応答性があると判定することができる。メチル化領域が上記(A−1)、(A−2)、(A−7)〜(A−10)の場合には、被験者について測定されたメチル化度が、健常者のメチル化度よりも高い場合には、BMP促進剤に対する応答性が高い(BMP促進剤を投与した場合の治療効果が期待される)と判定され、メチル化度が低い場合には、BMP促進剤に対する応答性が低い(BMP促進剤を投与した場合にも治療効果が期待されない)と判定される。メチル化領域が(A−11)〜(A−14)の場合には、被験者について測定されたメチル化度が、健常者の同様のメチル化領域のメチル化度よりも低い場合には、BMP促進剤に対する応答性が高いと予測され、高い場合にはBMP促進剤に対する応答性が低いと予測される。メチル化領域が上記(C−1)、(C−2)の場合には、被験者について測定されたメチル化度が、健常者のメチル化度よりも高い場合には、エフリン促進剤に対する応答性が高い(エフリン促進剤を投与した場合の治療効果が期待される)と判定され、メチル化度が低い場合には、エフリン促進剤に対する応答性が低い(エフリン促進剤を投与した場合にも治療効果が期待されない)と判定される。
【0051】
薬剤応答性の判定における被験者は特に限定されないが、脱毛症の兆候があるヒト、脱毛症を発症しているヒト、或いは脱毛症を近い将来発症すると予測されるヒトが適当であり、通常は男性である。健常者とは、脱毛症の兆候がないヒト(性別は問わない)が適当である。加齢により遺伝子のメチル化が亢進される可能性があり、中でもBMPR1A遺伝子においてその傾向が強いため、健常者は高齢者でない(例えば30代以下、好ましくは20代以下)であることが好ましい。健常者のメチル化領域のメチル化度は、予め測定しておくことが好ましい。
【0052】
脱毛症治療及び/又は予防薬としてはBMP促進剤、エフリン促進剤、及びWnt促進剤が好ましいが、これに限定されず、本メチル化領域の脱メチル化剤などが例示される。BMP促進剤については、BMPR遺伝子の被験者のメチル化度が健常者のメチル化度と差がある場合、発毛因子であるBMP遺伝子とのシグナル伝達が阻害されている可能性があり、その治療にはBMP促進剤が効果を奏するものと推測される。エフリン促進剤については、エフリン受容体遺伝子のメチル化度が高い場合、発毛因子であるエフリン遺伝子とのシグナル伝達が阻害されている可能性があり、その治療にはエフリン促進剤が効果を奏するものと推測される。BMP促進剤及びエフリン促進剤としては、6−ベンジルアミノプリンが例示される。
【0053】
前述した、骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子、及びWnt遺伝子のメチル化領域中のメチル化されている塩基を認識するプライマー(メチル化プライマー)及び/又はメチル化されていない塩基を認識するプライマー(非メチル化プライマー)及び/又はメチル化領域のメチル化度を検出するためのプライマー、好ましくは(B−1)〜(B−8)、(D−1)〜(D−8)、(F−1)〜(F−8)から選ばれる1又は2以上のプライマーは、生体試料の骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子、及びWnt遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を検出するために使用されるキット、試薬又は検出システムに含まれる一つとしても有用である。また、骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子、及びWnt遺伝子のメチル化領域を増幅するプライマー、好ましくは(G−1)〜(G−16)から選ばれる1又は2以上のプライマーは、生体試料の骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子、及びWnt遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を検出するために使用されるキット、試薬又は検出システムに含まれる一つとしても有用である。係るキット、試薬又は検出システムは、脱毛症の発症リスクの予測や、骨形成タンパク質促進剤、エフリン促進剤、及びWnt促進剤に対する応答性の予測のために用いることができる。係るキット、試薬又は検出システムは、必要に応じて、容器、酵素、その他検出のために用いる各種試薬等を含んでいてもよい。
【実施例】
【0054】
実施例1
(1)ゲノムDNAの抽出
ゲノム提供者A(20代男性、男性型脱毛症進行者)、B(20代男性、脱毛症の兆候なし)及びC(40代男性、脱毛症の兆候なし)の3名の頭部から毛髪5本を抜き、エタノールにて洗浄した。毛髪のうち毛根約2cmを5mm程度に裁断し、ISOHAIR(ニッポンジーン、319−03401)を用いてゲノムDNAを抽出した。詳細な操作は、ISOHAIR添付のプロトコールに従った。
【0055】
得られたゲノムDNAをBamHIにて断片化し、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール、エタノールにて精製した。260nmの吸光度の値からDNA濃度を測定し、200ngの断片化ゲノムDNAを対象に、バイサルファイト処理(非メチル化シトシンをウラシルに変換する処理)を行った。バイサルファイト処理は、EZ DNA Methylation−Gold Kit(ZYMO RESEARCH,D5005)を用い、詳細な操作は添付のプロトコールに従った。
【0056】
(2)メチル化/非メチル化特異的PCR
BMPR1A遺伝子(NM_004329)の転写開始点を0とし、上流−967bより−846bまでの領域(配列番号1参照)を増幅できるようなプライマーを設計した。上記領域はCpGアイランドを一部に含んでいる。プライマーとしては、CpGアイランドのメチル化シトシンを認識するプライマー(メチル化プライマー)と、メチル化されていないシトシンを認識するプライマー(非メチル化プライマー)を、それぞれ設計した。プライマーの塩基配列を表1に示す。表1中、太字は上記領域のCpGアイランドに相当する部分を、傍点は同領域のメチル化シトシンに相当する部分を意味する。
【0057】
【表1】
【0058】
本プライマーを用いて、PCRを行った。具体的には、メチル化プライマー及び非メチル化プライマーのそれぞれについて、以下の組成のPCR反応液を調製し、95℃、30秒間の熱処理後、熱変性(94℃、30秒)→アニーリング(メチル化プライマー:57.4℃、非メチル化プライマー:56.0℃、いずれも30秒)→伸長(72℃、30秒)の3ステップを、メチル化プライマーを用いた場合は35回、非メチル化プライマーを用いた場合は30回繰り返した。なお、メチル化プライマーを用いたPCR反応をメチル化増幅、非メチル化プライマーを用いたPCR反応を非メチル化増幅とする。
【0059】
またメチル化/非メチル化特異的な増幅が行われているかどうかを確認する目的で、メチル化/非メチル化コントロールゲノム(EpiTect PCR Control DNA,QIAGEN,59695)を用いて同様にPCRを行った。
【0060】
PCR反応液組成
TaKaRa Ex Taq HS(タカラバイオ、RR006A) 0.1μL
10×Ex Taq Buffer(タカラバイオ) 2 μL
dNTP Mixture(タカラバイオ) 1.6μL
プライマー(10pmol each/μL) 0.8μL
ゲノムDNA((1)にて調製) 2.5μL
蒸留水(DW) 13μL
(合計 20μL)
【0061】
PCR後の増幅産物を、2.5%アガロースゲルに電気泳動し、ゲルスター(タカラバイオ)溶液中でDNAを染色した。UV照射により発光するバンドの強度を比較分析した。結果を表2及び図1〜図8に示す。なお、表2に示すバンド強度は、バンドの発光強度をゲル解析ソフトLabworksにより数値化したものである。
【0062】
メチル化増幅、非メチル化増幅のいずれの場合にも、バンド強度に個人差が認められた。具体的には、20代男性同士(被験者Aと被験者B)の比較では、脱毛症進行者である被験者Aにおいて、メチル化増幅ではバンドが観察され非メチル化増幅ではバンドがほとんど見えなかったことから(図1、図5、表2)、メチル化の傾向が強く同時に非メチル化が弱い傾向であった。一方、脱毛症が認められなかった被験者Bと被験者Cの比較では、メチル化増幅では被験者Cにおいて増幅産物のバンドが多少ではあるが観察されたが(図3)、被験者BではB1のレーンで薄いバンドが観察されたのみで、B2のレーンでは観察されなかった(図2)。これに対し、非メチル化増幅では被験者Cよりも被験者Bにおいて比較的はっきりとしたバンドが観察された(図6、図7)。このことから、脱毛症が認められない者同士の比較では、加齢によりメチル化の傾向が強く、非メチル化の傾向が弱いことが判明した。
【0063】
【表2】
【0064】
実施例2
(1)ゲノムDNAの抽出
ゲノム提供者D(20代男性、男性型脱毛症進行者)及びE(20代男性、脱毛症の兆候なし)の頭部から毛髪5本を抜き、エタノールにて洗浄した。毛髪のうち毛根約2cmを5mm程度に裁断し、ISOHAIR(ニッポンジーン、319−03401)を用いてゲノムDNAを抽出した。詳細な操作は、ISOHAIR添付のプロトコールに従った。
【0065】
得られたゲノムDNAをBamHIにて断片化し、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール、エタノールにて精製した。260nmの吸光度の値からDNA濃度を測定し、200ngの断片化ゲノムDNAを対象に、バイサルファイト処理(非メチル化シトシンをウラシルに変換する処理)を行った。バイサルファイト処理は、EZ DNA Methylation−Gold Kit(ZYMO RESEARCH,D5005)を用い、詳細な操作は添付のプロトコールに従った。
【0066】
(2)バイサルファイトシーケンス法
BMPR1A(NM_004329)の転写開始点を0とし、上流−1,200bから+400bまでの領域を対象としたバイサルファイトシーケンス条件を5つ設定した(図9)。各条件に対応するプライマーを設計した。バイサルファイトシーケンス条件の詳細及びプライマーの配列を表3に示す。
【0067】
【表3】
【0068】
バイサルファイトシーケンスは、(2−1)PCR、(2−2)クローニング、(2−3)シーケンス及び(2−4)データ解析の順に実施した。
【0069】
(2−1)PCR
表1に示すプライマーを用いて、PCRを行った。具体的には、以下の組成のPCR反応液を調製し、95℃、30秒間の熱処理後、熱変性(94℃、30秒)→アニーリング(57℃〜65℃)→伸長(72℃、30秒)の3ステップを40回繰り返した。
【0070】
〔PCR反応液組成〕
TaKaRa Ex Taq HS(タカラバイオ、RR006A) 0.2μL
10×Ex Taq Buffer(タカラバイオ、RR006A) 6 μL
dNTP Mixture(タカラバイオ、RR006A) 4.8μL
センスプライマー(10pmol/μL) 3 μL
アンチセンスプライマー(10pmol/μL) 3 μL
ゲノムDNA((1)にて調製) 2 μL
DW(蒸留水) 41 μL
(合計 60 μL)
【0071】
(2−2)クローニング
(a)DNA精製
(2−1)で得られたPCR産物を2.5%アガロース(タカラバイオ、5003)電気泳動し、ゲルスター(タカラバイオ、F0535)で染色した後、目的のバンドを切り出した。これを細かく裁断し、Quantum Prep Freeze’N Squeeze DNA Gel extraction Spin Column(BIORAD、732−6166)のフィルターカップに充填した。−20℃に5分間以上放置し、室温にて13,000×g、3分間遠心分離した。フィルターカップを通過して溶出したDNA溶液に、100%エタノールを2.5倍量、3M酢酸ナトリウムを1/10倍量添加し、−80℃に15分間放置した。15,000rpmで15分間遠心分離し、得られた白色ペレットを70%エタノールで洗浄後、17μLの蒸留水(以下、DWと言う)に溶解した。
【0072】
(b)ライゲーション
(a)で精製したDNA溶液の全量を用いて、ライゲーション反応を行った。ライゲーション反応は、Mighty Cloning Reagent Set(Blunt EndI)(タカラバイオ、6027)を用いて行った。精製DNA溶液(17μL)に10×Blunting Kination Bufferを2μL、Blunting Kination Enzyme Mixを1μL添加し、37℃で10分間インキュベートした。この反応液にDWを80μL添加して全量100μLとした後、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(25:24:1、v/v)(GIBCO,15593−031)を100μL添加して、混合した。室温で12,000rpm、5分間遠心操作を行い、DNAを含む上層を採取した。
【0073】
100%エタノールを2.5倍量、3M酢酸ナトリウムを1/10倍量添加し、−80℃に15分間放置した。15,000rpmで15分間遠心分離し、得られた白色ペレットを70%エタノールで洗浄後、10μLのTE緩衝液(pH8.0、ナカライテスク、32739−31)に溶解した。
【0074】
(c)トランスフォーメーション
(b)で得られたDNA溶液5μLに、pUC118 HincII/BAPを1μL加え、混合した。Ligation Mighty Mixを6μL加え混合した後、16℃で1時間インキュベートした。この6μLを、50μLのE.coli JM109 Competent Cell(タカラバイオ、9052)に加え、穏やかに混合した後、氷中で30分間放置した。その後42℃で45秒間インキュベートし、氷中2分間放置した。そこに、あらかじめ37℃に保温しておいたSOC培地を444μL添加し、37℃で1時間振とうした。アンピシリン(Sigma、A9393)を50μg/mL含むLB寒天培地(90mm dish)に30μL播種し、37℃で一昼夜培養した。得られたコロニーについてコロニーPCRを実施し、インサートの確認を行った。
【0075】
(d)プラスミド抽出
プラスミドの抽出は、QIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN,27106)を用いて行った。コロニーPCRにてインサートが確認されたコロニーを、アンピシリンを50μg/mL含む2.5mL LB培地に加え、37℃で一昼夜振とう培養した。得られた菌液を6,000rpm、10分間遠心分離し、上清を除去して、菌ペレットを得た。ここに250μLのBuffer P1を加えて懸濁の後、2mLマイクロチューブに移した。250μLのBuffer P2を加え、4〜6回転倒混和し、350μLのBuffer N3を加えて、さらに4〜6回転倒混和した。13,000rpmにて10分間遠心操作し、白色ペレットを除いた上清をQIAprepスピンカラムにアプライした。13,000rpmで1分間遠心分離し、カラム透過液を除去した。
【0076】
ここに500μLのBuffer PBを添加し、遠心分離して透過液を除去した。さらにカラムに750μLのBuffer PEを加え、遠心分離して透過液を除去した。残留しているバッファーを除去するため、再度遠心操作を行った後、カラムを1.5mLコレクションチューブに移した。Buffer EBを50μL加え、1分間放置した後、遠心分離にてカラムより溶出してきた液をプラスミド溶液として回収した。このプラスミド溶液に、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール精製、エタノール精製を行い、20μLのDWに溶解して、その後のシーケンスに用いた。
【0077】
(2−3)シーケンス
(2−2)で得られたプラスミドについて、インサート(解析対象領域)のシーケンスを行った。シーケンスにはタカラバイオのプレミックスシーケンスを利用した。シーケンス用プライマーには、M13 Primer M4(5’−GTTTT CCCAG TCACG AC−3’、配列番号44)を用いた。全量15μLに、プラスミドDNAが約300〜600ng、プライマーが7.5pmol含まれるように調整し、タカラバイオに送付した。
【0078】
(2−4)データ解析
(2−3)で得られたシーケンス結果の解析は、バイサルファイトシーケンスデータの解析が容易に行える公開ウェブサイトQUMA(Quantification tool for Methylation Analysis,http://quma.cdb.riken.jp/top/index_j.html)を利用した。各サンプル24個前後のクローンのシーケンス結果を用いて解析を行ったが、解析対象として不適切な配列である場合は、解析対象から除外した。その際の判断基準は、(1)バイサルファイト処理による未変換Cが5以下であること、(2)バイサルファイト処理による変換Cが95%以上であること、(3)ミスマッチ配列が10以下であること、及び(4)配列同一性が90%以上であること、とした。
【0079】
結果を表4に示す。
【0080】
【表4】
【0081】
解析対象領域1及び4では、被験者D(脱毛症兆候者)で被験者E(脱毛症の兆候なし)よりもメチル化度が高かった。一方、解析領域2及び5では、被験者D(脱毛兆候者)で被験者E(脱毛症の兆候なし)よりメチル化度が低かった。一方、解析対象領域3では、被験者同士での差は見出せなかった。
【0082】
実施例3
(1)ゲノムDNAの抽出
ゲノム提供者F(20代男性、男性型脱毛兆候者)、G(20代男性、脱毛症の兆候なし)の頭部から毛髪5本を抜き、エタノールにて洗浄した。毛根約2cmを5mm程度に裁断し、ISOHAIR(ニッポンジーン、319−03401)を用いてゲノムDNAを抽出した。詳細な操作は、ISOHAIR添付のプロトコルに従った。
【0083】
得られたゲノムDNAをBamHIにて断片化し、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール、エタノールにて精製した。260nmの吸光度の値からDNA濃度を測定し、200ngの断片化ゲノムDNAを対象に、バイサルファイト処理(非メチル化シトシンをウラシルに変換する処理)を行った。バイサルファイト処理は、EZ DNA Methylation−Gold Kit(ZYMO RESEARCH,D5005)を用い、詳細な操作は添付のプロトコールに従った。
【0084】
(2)メチル化/非メチル化特異的PCR
EphA4(NM_004438)の翻訳開始コドンAを1とした場合の、上流−127から+75までを増幅するプライマーを設計した。プライマーには本領域のCpG領域を含み、このCpG領域のメチル化シトシンを認識するメチル化プライマーと、メチル化されていないシトシンを認識する非メチル化プライマーをそれぞれ設計した(図28)。図28の下線部分は各プライマーに対応する配列領域を示す。プライマーの配列を表5に示す。
【0085】
また、Wnt10b(NM_003394)の翻訳開始コドンAを1とした場合の、上流−295から−190までを増幅するプライマーを設計した。プライマーには本領域のCpG領域を含み、このCpG領域のメチル化シトシンを認識するメチル化プライマーと、メチル化されていないシトシンを認識する非メチル化プライマーをそれぞれ設計した。プライマーの配列を表5に示す。
さらに、コントロールとしてのβ−cateninの解析用に、beta−catenin(NM_001098209)の翻訳開始コドンAを1とした場合の、−813bから−705bまでを対象としたプライマーを設計した。
【0086】
【表5】
【0087】
本プライマーを用いて、PCRを行った。具体的には以下の組成のPCR反応液を調製し、94℃、5分間の熱処理後、熱変性(94℃、15秒)→アニーリング(EphA4 非メチル化プライマー:51℃、メチル化プライマー:56℃ Wnt10b 非メチル化プライマー:60℃、メチル化プライマー:58℃、いずれも30秒)→伸長(72℃、15秒)の3ステップを40回繰り返した。
【0088】
〔PCR反応液組成〕
酵素(TAKARA ExTaq HS:タカラバイオ、又はHs StarTaq plus:QIAGEN) 0.1μL
10×reaction Bf 2 μL
dNTP mix 1.6μL
プライマー Forward(0.56 pmol/μL) 6.5μL
プライマー Reverse(0.56pmol/μL) 6.5μL
バイサルファイト処理DNA((1)にて調製) 0.3μL
滅菌水 10.5μL
(合計 20 μL)
【0089】
またメチル化/非メチル化特異的な増幅が行われているかどうかを確認する目的で、メチル化/非メチル化コントロールゲノム(EpiTect PCR Control DNA,QIAGEN,59695)を用いて同様にPCRを行った。
【0090】
PCR後の増幅産物を、2.5%アガロースゲルに電気泳動し、ゲルスター(タカラバイオ)溶液中でDNAを染色した。UV照射により発光するバンドの強度を比較分析した。EphA4のメチル化解析結果を表6及び図10〜図15に、それぞれ示す。Wnt10bのメチル化解析結果を表7及び図16〜図21に、それぞれ示す。またβ−cateninのメチル化解析の結果を表8及び図22〜図27に、それぞれ示す。
【0091】
EphA4、Wnt10b両方共に、被験者F(脱毛症兆候あり)において、被験者G(脱毛症兆候なし)よりもメチル化度が高いことが明らかになった。一方で発毛因子のひとつであるβ−cateninのメチル化状態は、被験者F及びGともに完全な非メチル化状態であることが明らかとなった。
【0092】
【表6】
【0093】
【表7】
【0094】
【表8】
【符号の説明】
【0095】
図4と8中のMとUは、それぞれ、メチル化コントロールゲノムを鋳型とした場合の増幅産物、非メチル化コントロールゲノムを鋳型とした場合の増幅産物の結果を示す。
【配列表フリーテキスト】
【0096】
配列番号1〜3及び8〜13:骨形成タンパク質受容体遺伝子のメチル化領域の塩基配列の例
配列番号4〜7:骨形成タンパク質受容体遺伝子のメチル化及び非メチル化プライマーの塩基配列の例
配列番号14〜16:エフリン受容体遺伝子のメチル化領域の塩基配列の例
配列番号17〜19:Wnt遺伝子のメチル化領域の塩基配列の例
配列番号20〜23:エフリン受容体遺伝子のメチル化及び非メチル化プライマーの例
配列番号24〜27:Wnt遺伝子のメチル化及び非メチル化プライマーの例
配列番号28〜35:骨形成タンパク質受容体遺伝子のバイサルファイトシーケンス用プライマーの塩基配列の例
配列番号36〜37:実施例2で用いた骨形成タンパク質受容体遺伝子のバイサルファイトシーケンス用プライマーの塩基配列の例
配列番号38〜41:実施例3で用いたβ−カテニンのメチル化及び非メチル化プライマーの例
配列番号42:Wnt遺伝子の非メチル化プライマーによる増幅領域の例
配列番号43:エフリン受容体遺伝子の非メチル化領域の塩基配列の例
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料の骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子及びWnt遺伝子から選ばれる1又は2以上の遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を検出する方法。
【請求項2】
前記生体試料は、抜去毛である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抜去毛は、毛根を含む抜去毛である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記骨形成タンパク質受容体遺伝子が、骨形成タンパク質受容体1A型遺伝子である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記骨形成タンパク質受容体遺伝子中のメチル化領域が、下記の(A−1)〜(A−18)のいずれかの塩基配列の領域である、請求項4に記載の方法。
(A−1)配列表の配列番号1に記載の塩基配列の全部又は一部を含む塩基配列
(A−2)配列表の配列番号1に記載の塩基配列の全部又は一部からなる塩基配列
(A−3)配列表の配列番号2に記載の塩基配列の全部又は一部を含む塩基配列
(A−4)配列表の配列番号2に記載の塩基配列の全部又は一部からなる塩基配列
(A−5)配列表の配列番号3に記載の塩基配列の全部又は一部を含む塩基配列
(A−6)配列表の配列番号3に記載の塩基配列の全部又は一部からなる塩基配列
(A−7)配列表の配列番号8に記載の塩基配列の全部又は一部を含む領域
(A−8)配列表の配列番号8に記載の塩基配列の全部又は一部からなる領域
(A−9)配列表の配列番号9に記載の塩基配列の全部又は一部を含む領域
(A−10)配列表の配列番号9に記載の塩基配列の全部又は一部からなる領域
(A−11)配列表の配列番号10に記載の塩基配列の全部又は一部を含む領域
(A−12)配列表の配列番号10に記載の塩基配列の全部又は一部からなる領域
(A−13)配列表の配列番号11に記載の塩基配列の全部又は一部を含む領域
(A−14)配列表の配列番号11に記載の塩基配列の全部又は一部からなる領域
(A−15)配列表の配列番号12に記載の塩基配列の全部又は一部を含む領域
(A−16)配列表の配列番号12に記載の塩基配列の全部又は一部からなる領域
(A−17)配列表の配列番号13に記載の塩基配列の全部又は一部を含む領域
(A−18)配列表の配列番号13に記載の塩基配列の全部又は一部からなる領域
【請求項6】
前記エフリン受容体遺伝子が、EphA4遺伝子である請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記メチル化領域が、下記の(C−1)〜(C−6)のいずれかの塩基配列の領域である、請求項6に記載の方法。
(C−1)配列表の配列番号14に記載の塩基配列の全部又は一部を含む塩基配列
(C−2)配列表の配列番号14に記載の塩基配列の全部又は一部からなる塩基配列
(C−3)配列表の配列番号15に記載の塩基配列の全部又は一部を含む塩基配列
(C−4)配列表の配列番号15に記載の塩基配列の全部又は一部からなる塩基配列
(C−5)配列表の配列番号16に記載の塩基配列の全部又は一部を含む塩基配列
(C−6)配列表の配列番号16に記載の塩基配列の全部又は一部からなる塩基配列
【請求項8】
前記Wnt遺伝子が、Wnt10b遺伝子である請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記メチル化領域が、下記の(E−1)〜(E−6)のいずれかの塩基配列の領域である、請求項8に記載の方法。
(E−1)配列表の配列番号17に記載の塩基配列の全部又は一部を含む領域
(E−2)配列表の配列番号17に記載の塩基配列の全部又は一部からなる領域
(E−3)配列表の配列番号18に記載の塩基配列の全部又は一部を含む領域
(E−4)配列表の配列番号18に記載の塩基配列の全部又は一部からなる領域
(E−5)配列表の配列番号19に記載の塩基配列の全部又は一部を含む領域
(E−6)配列表の配列番号19に記載の塩基配列の全部又は一部からなる領域
【請求項10】
前記メチル化領域を、メチル化されている塩基を認識するプライマー及び/又はメチル化されていない塩基を認識するプライマーを用いて増幅させてから、メチル化度を判定する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記プライマーが、以下の(B−1)〜(B−8)から選ばれるポリヌクレオチドである、請求項10に記載の方法。
(B−1)配列表の配列番号4に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(B−2)配列表の配列番号4に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(B−3)配列表の配列番号5に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(B−4)配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(B−5)配列表の配列番号6に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(B−6)配列表の配列番号6に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(B−7)配列表の配列番号7に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(B−8)配列表の配列番号7に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
【請求項12】
前記プライマーが、以下の(D−1)〜(D−8)から選ばれるポリヌクレオチドである、請求項10に記載の方法。
(D−1)配列表の配列番号20に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(D−2)配列表の配列番号20に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(D−3)配列表の配列番号21に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(D−4)配列表の配列番号21に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(D−5)配列表の配列番号22に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(D−6)配列表の配列番号22に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(D−7)配列表の配列番号23に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(D−8)配列表の配列番号23に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
【請求項13】
前記プライマーが、以下の(F−1)〜(F−8)から選ばれるポリヌクレオチドである、請求項10に記載の方法。
(F−1)配列表の配列番号24に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(F−2)配列表の配列番号24に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(F−3)配列表の配列番号25に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(F−4)配列表の配列番号25に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(F−5)配列表の配列番号26に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(F−6)配列表の配列番号26に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(F−7)配列表の配列番号27に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(F−8)配列表の配列番号27に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
【請求項14】
前記メチル化領域をプライマーにより増幅させてから、増幅産物をシーケンシングしてメチル化度を判定する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記プライマーが、以下の(G−1)〜(G−16)から選ばれるポリヌクレオチドである、請求項14に記載の方法。
(G−1)配列表の配列番号28に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−2)配列表の配列番号28に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−3)配列表の配列番号29に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−4)配列表の配列番号29に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−5)配列表の配列番号30に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−6)配列表の配列番号30に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−7)配列表の配列番号31に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−8)配列表の配列番号31に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−9)配列表の配列番号32に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−10)配列表の配列番号32に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−11)配列表の配列番号33に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−12)配列表の配列番号33に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−13)配列表の配列番号34に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−14)配列表の配列番号34に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−15)配列表の配列番号35に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−16)配列表の配列番号35に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
【請求項16】
被験者生体試料の骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子及びWnt遺伝子から選ばれる1又は2以上の遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を検出し、健常者の生体試料の前記メチル化領域のメチル化度と差がある場合には、前記被験者の脱毛症の発症リスクが高いと判定する、前記被験者の脱毛症の発症リスクを予測する方法。
【請求項17】
被験者から採取された生体試料の骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子及びWnt遺伝子から選ばれる1又は2以上の遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を検出し、健常者の生体試料の前記メチル化領域のメチル化度と差がある場合には、前記被験者の脱毛症治療及び/又は予防剤に対する応答性が高いと判定する、前記被験者の脱毛症治療及び/又は予防剤に対する応答性を予測する方法。
【請求項18】
前記脱毛症治療及び/又は予防剤が、骨形成タンパク質促進剤、エフリン促進剤、及びWnt促進剤である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記骨形成タンパク質促進剤及びエフリン促進剤が、6−ベンジルアミノプリンであることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子及びWnt遺伝子から選ばれる1又は2以上の遺伝子のメチル化領域中のメチル化されている塩基を認識するプライマー及び/又はメチル化されていない塩基を認識するプライマーを含む、生体試料の骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子、及びWnt遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を検出するためのプライマーセット。
【請求項21】
前記プライマーが、下記の(B−1)〜(B−8)、(D−1)〜(D−8)、及び(F−1)〜(F−8)から選ばれる1又は2以上のプライマーである、請求項20に記載のプライマーセット。
(B−1)配列表の配列番号4に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(B−2)配列表の配列番号4に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(B−3)配列表の配列番号5に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(B−4)配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(B−5)配列表の配列番号6に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(B−6)配列表の配列番号6に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(B−7)配列表の配列番号7に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(B−8)配列表の配列番号7に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(D−1)配列表の配列番号20に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(D−2)配列表の配列番号20に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(D−3)配列表の配列番号21に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(D−4)配列表の配列番号21に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(D−5)配列表の配列番号22に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(D−6)配列表の配列番号22に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(D−7)配列表の配列番号23に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(D−8)配列表の配列番号23に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(F−1)配列表の配列番号24に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(F−2)配列表の配列番号24に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(F−3)配列表の配列番号25に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(F−4)配列表の配列番号25に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(F−5)配列表の配列番号26に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(F−6)配列表の配列番号26に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(F−7)配列表の配列番号27に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(F−8)配列表の配列番号27に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
【請求項22】
請求項20又は21に記載のプライマーを含む、生体試料の骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子及びWnt遺伝子から選ばれる1又は2以上の遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を検出するために使用されるキット、試薬又は検出システム。
【請求項23】
前記メチル化領域中メチル化領域を増幅するためのプライマーを含む、生体試料の骨形成タンパク質受容体遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を検出するためのプライマーセット。
【請求項24】
前記プライマーが、下記の(G−1)〜(G−16)から選ばれる1又は2以上のプライマーである、請求項23に記載のプライマーセット。
(G−1)配列表の配列番号28に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−2)配列表の配列番号28に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−3)配列表の配列番号29に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−4)配列表の配列番号29に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−5)配列表の配列番号30に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−6)配列表の配列番号30に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−7)配列表の配列番号31に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−8)配列表の配列番号31に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−9)配列表の配列番号32に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−10)配列表の配列番号32に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−11)配列表の配列番号33に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−12)配列表の配列番号33に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−13)配列表の配列番号34に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−14)配列表の配列番号34に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−15)配列表の配列番号35に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−16)配列表の配列番号35に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
【請求項25】
請求項23又は24に記載のプライマーを含む、生体試料の骨形成タンパク質受容体遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を検出するために使用されるキット、試薬又は検出システム。
【請求項1】
生体試料の骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子及びWnt遺伝子から選ばれる1又は2以上の遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を検出する方法。
【請求項2】
前記生体試料は、抜去毛である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抜去毛は、毛根を含む抜去毛である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記骨形成タンパク質受容体遺伝子が、骨形成タンパク質受容体1A型遺伝子である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記骨形成タンパク質受容体遺伝子中のメチル化領域が、下記の(A−1)〜(A−18)のいずれかの塩基配列の領域である、請求項4に記載の方法。
(A−1)配列表の配列番号1に記載の塩基配列の全部又は一部を含む塩基配列
(A−2)配列表の配列番号1に記載の塩基配列の全部又は一部からなる塩基配列
(A−3)配列表の配列番号2に記載の塩基配列の全部又は一部を含む塩基配列
(A−4)配列表の配列番号2に記載の塩基配列の全部又は一部からなる塩基配列
(A−5)配列表の配列番号3に記載の塩基配列の全部又は一部を含む塩基配列
(A−6)配列表の配列番号3に記載の塩基配列の全部又は一部からなる塩基配列
(A−7)配列表の配列番号8に記載の塩基配列の全部又は一部を含む領域
(A−8)配列表の配列番号8に記載の塩基配列の全部又は一部からなる領域
(A−9)配列表の配列番号9に記載の塩基配列の全部又は一部を含む領域
(A−10)配列表の配列番号9に記載の塩基配列の全部又は一部からなる領域
(A−11)配列表の配列番号10に記載の塩基配列の全部又は一部を含む領域
(A−12)配列表の配列番号10に記載の塩基配列の全部又は一部からなる領域
(A−13)配列表の配列番号11に記載の塩基配列の全部又は一部を含む領域
(A−14)配列表の配列番号11に記載の塩基配列の全部又は一部からなる領域
(A−15)配列表の配列番号12に記載の塩基配列の全部又は一部を含む領域
(A−16)配列表の配列番号12に記載の塩基配列の全部又は一部からなる領域
(A−17)配列表の配列番号13に記載の塩基配列の全部又は一部を含む領域
(A−18)配列表の配列番号13に記載の塩基配列の全部又は一部からなる領域
【請求項6】
前記エフリン受容体遺伝子が、EphA4遺伝子である請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記メチル化領域が、下記の(C−1)〜(C−6)のいずれかの塩基配列の領域である、請求項6に記載の方法。
(C−1)配列表の配列番号14に記載の塩基配列の全部又は一部を含む塩基配列
(C−2)配列表の配列番号14に記載の塩基配列の全部又は一部からなる塩基配列
(C−3)配列表の配列番号15に記載の塩基配列の全部又は一部を含む塩基配列
(C−4)配列表の配列番号15に記載の塩基配列の全部又は一部からなる塩基配列
(C−5)配列表の配列番号16に記載の塩基配列の全部又は一部を含む塩基配列
(C−6)配列表の配列番号16に記載の塩基配列の全部又は一部からなる塩基配列
【請求項8】
前記Wnt遺伝子が、Wnt10b遺伝子である請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記メチル化領域が、下記の(E−1)〜(E−6)のいずれかの塩基配列の領域である、請求項8に記載の方法。
(E−1)配列表の配列番号17に記載の塩基配列の全部又は一部を含む領域
(E−2)配列表の配列番号17に記載の塩基配列の全部又は一部からなる領域
(E−3)配列表の配列番号18に記載の塩基配列の全部又は一部を含む領域
(E−4)配列表の配列番号18に記載の塩基配列の全部又は一部からなる領域
(E−5)配列表の配列番号19に記載の塩基配列の全部又は一部を含む領域
(E−6)配列表の配列番号19に記載の塩基配列の全部又は一部からなる領域
【請求項10】
前記メチル化領域を、メチル化されている塩基を認識するプライマー及び/又はメチル化されていない塩基を認識するプライマーを用いて増幅させてから、メチル化度を判定する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記プライマーが、以下の(B−1)〜(B−8)から選ばれるポリヌクレオチドである、請求項10に記載の方法。
(B−1)配列表の配列番号4に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(B−2)配列表の配列番号4に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(B−3)配列表の配列番号5に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(B−4)配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(B−5)配列表の配列番号6に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(B−6)配列表の配列番号6に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(B−7)配列表の配列番号7に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(B−8)配列表の配列番号7に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
【請求項12】
前記プライマーが、以下の(D−1)〜(D−8)から選ばれるポリヌクレオチドである、請求項10に記載の方法。
(D−1)配列表の配列番号20に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(D−2)配列表の配列番号20に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(D−3)配列表の配列番号21に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(D−4)配列表の配列番号21に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(D−5)配列表の配列番号22に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(D−6)配列表の配列番号22に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(D−7)配列表の配列番号23に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(D−8)配列表の配列番号23に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
【請求項13】
前記プライマーが、以下の(F−1)〜(F−8)から選ばれるポリヌクレオチドである、請求項10に記載の方法。
(F−1)配列表の配列番号24に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(F−2)配列表の配列番号24に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(F−3)配列表の配列番号25に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(F−4)配列表の配列番号25に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(F−5)配列表の配列番号26に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(F−6)配列表の配列番号26に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(F−7)配列表の配列番号27に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(F−8)配列表の配列番号27に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
【請求項14】
前記メチル化領域をプライマーにより増幅させてから、増幅産物をシーケンシングしてメチル化度を判定する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記プライマーが、以下の(G−1)〜(G−16)から選ばれるポリヌクレオチドである、請求項14に記載の方法。
(G−1)配列表の配列番号28に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−2)配列表の配列番号28に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−3)配列表の配列番号29に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−4)配列表の配列番号29に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−5)配列表の配列番号30に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−6)配列表の配列番号30に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−7)配列表の配列番号31に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−8)配列表の配列番号31に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−9)配列表の配列番号32に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−10)配列表の配列番号32に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−11)配列表の配列番号33に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−12)配列表の配列番号33に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−13)配列表の配列番号34に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−14)配列表の配列番号34に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−15)配列表の配列番号35に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−16)配列表の配列番号35に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
【請求項16】
被験者生体試料の骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子及びWnt遺伝子から選ばれる1又は2以上の遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を検出し、健常者の生体試料の前記メチル化領域のメチル化度と差がある場合には、前記被験者の脱毛症の発症リスクが高いと判定する、前記被験者の脱毛症の発症リスクを予測する方法。
【請求項17】
被験者から採取された生体試料の骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子及びWnt遺伝子から選ばれる1又は2以上の遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を検出し、健常者の生体試料の前記メチル化領域のメチル化度と差がある場合には、前記被験者の脱毛症治療及び/又は予防剤に対する応答性が高いと判定する、前記被験者の脱毛症治療及び/又は予防剤に対する応答性を予測する方法。
【請求項18】
前記脱毛症治療及び/又は予防剤が、骨形成タンパク質促進剤、エフリン促進剤、及びWnt促進剤である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記骨形成タンパク質促進剤及びエフリン促進剤が、6−ベンジルアミノプリンであることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子及びWnt遺伝子から選ばれる1又は2以上の遺伝子のメチル化領域中のメチル化されている塩基を認識するプライマー及び/又はメチル化されていない塩基を認識するプライマーを含む、生体試料の骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子、及びWnt遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を検出するためのプライマーセット。
【請求項21】
前記プライマーが、下記の(B−1)〜(B−8)、(D−1)〜(D−8)、及び(F−1)〜(F−8)から選ばれる1又は2以上のプライマーである、請求項20に記載のプライマーセット。
(B−1)配列表の配列番号4に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(B−2)配列表の配列番号4に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(B−3)配列表の配列番号5に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(B−4)配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(B−5)配列表の配列番号6に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(B−6)配列表の配列番号6に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(B−7)配列表の配列番号7に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(B−8)配列表の配列番号7に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(D−1)配列表の配列番号20に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(D−2)配列表の配列番号20に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(D−3)配列表の配列番号21に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(D−4)配列表の配列番号21に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(D−5)配列表の配列番号22に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(D−6)配列表の配列番号22に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(D−7)配列表の配列番号23に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(D−8)配列表の配列番号23に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(F−1)配列表の配列番号24に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(F−2)配列表の配列番号24に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(F−3)配列表の配列番号25に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(F−4)配列表の配列番号25に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(F−5)配列表の配列番号26に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(F−6)配列表の配列番号26に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(F−7)配列表の配列番号27に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(F−8)配列表の配列番号27に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
【請求項22】
請求項20又は21に記載のプライマーを含む、生体試料の骨形成タンパク質受容体遺伝子、エフリン受容体遺伝子及びWnt遺伝子から選ばれる1又は2以上の遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を検出するために使用されるキット、試薬又は検出システム。
【請求項23】
前記メチル化領域中メチル化領域を増幅するためのプライマーを含む、生体試料の骨形成タンパク質受容体遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を検出するためのプライマーセット。
【請求項24】
前記プライマーが、下記の(G−1)〜(G−16)から選ばれる1又は2以上のプライマーである、請求項23に記載のプライマーセット。
(G−1)配列表の配列番号28に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−2)配列表の配列番号28に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−3)配列表の配列番号29に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−4)配列表の配列番号29に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−5)配列表の配列番号30に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−6)配列表の配列番号30に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−7)配列表の配列番号31に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−8)配列表の配列番号31に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−9)配列表の配列番号32に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−10)配列表の配列番号32に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−11)配列表の配列番号33に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−12)配列表の配列番号33に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−13)配列表の配列番号34に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−14)配列表の配列番号34に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(G−15)配列表の配列番号35に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(G−16)配列表の配列番号35に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
【請求項25】
請求項23又は24に記載のプライマーを含む、生体試料の骨形成タンパク質受容体遺伝子中のメチル化領域のメチル化度を検出するために使用されるキット、試薬又は検出システム。
【図9】
【図28】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2011−147443(P2011−147443A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285138(P2010−285138)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 日本研究皮膚科学会第35回年次学術大会・総会 プログラム・抄録集 発行日 平成22年11月5日 [研究集会名等] 日本研究皮膚科学会第35回年次学術大会・総会 和歌山県民文化会館 公開日 平成22年12月3日
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 日本研究皮膚科学会第35回年次学術大会・総会 プログラム・抄録集 発行日 平成22年11月5日 [研究集会名等] 日本研究皮膚科学会第35回年次学術大会・総会 和歌山県民文化会館 公開日 平成22年12月3日
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】
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