説明

骨形成促進剤および抗骨粗鬆症剤

【課題】 安全でありかつ優れた骨粗鬆症予防および改善作用を有する食品素材を提供すること。
【解決手段】 本発明は、マイタケから得られ得る骨形成促進活性を有する物質を有効成分として含む骨形成促進剤を提供し、該物質は、水存在下で親水性溶媒に可溶性であり、そして水と二層を形成し得る溶媒および水の共存下で水溶性である。本発明の骨形成促進剤は、乾燥または生のマイタケを水存在下で親水性溶媒に浸漬して、抽出液を得る工程;および該抽出液とC4〜C6アルコール水溶液とを混合して、水層を得る工程;を包含する方法によって製造され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨形成促進剤および抗骨粗鬆症剤に関する。より詳細には、マイタケから得られ得る比較的水溶性の物質を含有する薬剤および飲食物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の高齢者人口の増加に伴い、例えば、閉経後の女性に多く見られる骨粗鬆症などの骨の脆弱化による腰背痛や骨折の発生率が上昇している。これらは、高齢者が寝たきりとなる大きな要因となり得、高齢者の生活の質にも大きな影響を及ぼす。
【0003】
骨粗鬆症の発生メカニズムは、まだ十分には明らかになっていない。骨粗鬆症の発症要因としては、カルシウム摂取不足、ビタミンD不足、運動不足、副甲状腺ホルモンやカルシトニンなどの骨代謝を調節するホルモンのアンバランスなどが挙げられる。そこで、骨を強化する目的で、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、乳酸カルシウムなどのカルシウム塩や乳清カルシウム、卵殻などの天然カルシウム剤を、単独で、あるいはカゼインホスホペプチドなどのカルシウム吸収促進効果を有する材料と共に摂取することが提案されている。しかし、これらのカルシウム塩や天然カルシウム剤を飲食物に添加して摂取しても、カルシウムの吸収率は50%以下であり、半分以上のカルシウムは吸収されずに体外に排出される。
【0004】
さらに、性ホルモンの低下も骨粗鬆症の原因として挙げられる。骨はバランスのとれた吸収と形成とを絶えず繰り返している(リモデリング)が、閉経後にはホルモンなどのバランスの変化により、骨吸収が骨形成を上回ると考えられる。したがって、骨粗鬆症を予防する方法としては、骨吸収を抑制し骨量を一定に保って、あるいは体内の骨量を高めて、骨を強化することが有効と思われる。
【0005】
このように骨粗鬆症が閉経後に多いことから、低下した女性ホルモンを補うことも骨粗鬆症の予防や改善に有効と考えられる。このような物質として大豆イソフラボンやザクロエキスが知られている。しかし、大豆イソフラボンやザクロエキスなどによる女性ホルモン様作用は、更年期症状を緩和するが、女性ホルモンとしての活性が低く、骨粗鬆症の予防や改善についての確実な効果は確認されていない。
【0006】
体内の骨量を高めるための骨形成促進剤としては、神経成長因子(特許文献1)、ハス胚芽(非特許文献1)、キノコから単離・精製された(22E,24R)−エルゴスタ−7,22−ジエン−3β,5α,6β−トリオール(特許文献2)などが知られている。また、ヒラタケ、シモコシ、キシメジ、マイタケなどのキノコの抽出物が、骨形成に関係する初期マーカーであるアルカリホスファターゼの活性を誘導することも知られている。さらに、その活性本体としてシモコシの脂溶性画分(クロロホルム層)から、上記の化合物が単離・精製されたことが報告されている(非特許文献2、図2を参照のこと)。これらの骨形成促進剤は、安全性や安定性の確認が不十分であり、骨粗鬆症の予防・改善効果についても得られにくいようである。また、スイカズラ科ニワトコ属植物の抽出物、カワラケツメイから得られる抽出物などが骨吸収作用を抑制することが報告されている(特許文献8および特許文献9)が、骨粗鬆症の予防・改善効果について確実な効果を見出したか否かにまでは確認されていない。
【特許文献1】特開平7−242564号公報
【特許文献2】特開2002−284689号公報
【特許文献3】特開平5−336920号公報
【特許文献4】特開平9−238697号公報
【特許文献5】特開2000−319192号公報
【特許文献6】特開2003−093018号公報
【特許文献7】特開2004−189737号公報
【特許文献8】特開平7−101868号公報
【特許文献9】特開2001−72598号公報
【非特許文献1】川嶋善仁,「フード・スタイル・21(FOOD Style21)」,2003年6月,7巻,6号,88−90頁
【非特許文献2】畠恵司(Keishi Hata)ら,「バイオロジカル・アンド・ファーマシューティカル・ブリテン(Biol.Pharm.Bull.)」,2002年,25巻,8号,1040−1044頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、安全でありかつ優れた骨粗鬆症予防および改善作用を有する食品素材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、従来から食習慣のあるマイタケからの水溶性画分が、骨形成促進活性を有することを見出し、本発明を完成した。
【0009】
本発明は、マイタケから得られ得る骨形成促進活性を有する物質を有効成分として含む骨形成促進剤を提供し、該物質は、水存在下で親水性溶媒に可溶性であり、そして水と二層を形成し得る溶媒および水の共存下で水溶性である。
【0010】
1つの実施態様では、上記マイタケは、乾燥または生のマイタケである。
【0011】
さらなる実施態様では、上記物質は、マイタケ抽出物である。
【0012】
本発明はまた、骨形成促進剤の製造方法を提供し、該方法は、
乾燥または生のマイタケを水存在下で親水性溶媒に浸漬して、抽出液を得る工程;および
該抽出液とC4〜C6アルコール水溶液とを混合して、水層を得る工程;
を包含する。
【0013】
1つの実施態様では、上記C4〜C6アルコール水溶液は飽和ブタノール水溶液である。
【0014】
ある実施態様では、上記方法は、上記水層をカラムに吸着させて、30(V/V)%から99.8(V/V)%のC1〜C3アルコール水溶液で溶出する画分を得る工程、をさらに包含する。
【0015】
本発明はまた、マイタケから得られ得る物質を有効成分として含む抗骨粗鬆症剤を提供し、該物質は、水存在下で親水性溶媒に可溶性であり、そして水と二層を形成し得る溶媒および水の共存下で水溶性である。
【0016】
本発明はさらに、マイタケから単離された物質を含有する飲食物を提供し、該物質は、水存在下で親水性溶媒に可溶性であり、そして水と二層を形成し得る溶媒および水の共存下で水溶性である。
【0017】
本発明はまた、水存在下で親水性溶媒に可溶性であるマイタケ抽出物を含有する、飲食物を提供する。
【0018】
本発明はまた、マイタケから得られ得る物質を有効成分として含有する、骨の健康が気になる方の食品である旨の表示を付した飲食物を提供し、該物質は、水存在下で親水性溶媒に可溶性であり、そして水と二層を形成し得る溶媒および水の共存下で水溶性である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、優れた骨芽細胞分化誘導作用ならびに骨粗鬆症予防および改善作用を有する骨形成促進剤および抗骨粗鬆症剤が提供される。本発明の骨形成促進剤および抗骨粗鬆症剤は、簡単な工程で食用のマイタケから得ることが可能であるため、安全かつ安価である。さらに、本発明によれば、日常的な骨粗鬆症予防および改善に有用なマイタケ由来の物質を含む飲食物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(骨形成促進剤)
本発明の骨形成促進剤は、マイタケから得られ得る骨形成促進活性を有する物質を有効成分として含み、該物質は、水存在下で親水性溶媒に可溶性であり、そして水と二層を形成し得る溶媒および水の共存下で水溶性である。例えば、本発明の骨形成促進剤は、水存在下で親水性溶媒によって抽出されるマイタケ抽出物に含まれ得、水と二層を形成し得る溶媒および水の共存下で水溶性であり、そして骨形成促進活性を有する物質を有効成分として含有する。
【0021】
用語「水存在下で親水性溶媒に可溶性」とは、一般的に、任意の物質が親水性溶媒の水溶液に可溶性であることをいう。親水性溶媒と水との割合は、特に限定はない。本発明においては、含水材料中に存在する任意の物質が、この含水材料を親水性溶媒中に浸漬することにより、溶媒中に溶解される場合も包含する。含水材料に溶媒を加えると、親水性溶媒中に含水材料中の水が混ざるため、親水性溶媒は水の存在下にあることになる。含水材料の例としては、生の植物体、具体的には生のキノコの子実体が挙げられる。さらに、親水性溶媒としては、メタノール、エタノール、アセトンなどが挙げられる。親水性溶媒は、単独で用いてもよく、または2種以上混合して用いてもよい。
【0022】
用語「水と二層を形成し得る溶媒および水の共存下で水溶性」とは、任意の物質が、水と二層を形成し得る溶媒および水で分配した場合に、水層に移行することをいう。ここで、水と二層を形成し得る溶媒とは、水と共存する場合に二層に分離し得る溶媒をいい、特に限定されない。無極性溶媒のように水と完全に混ざらない溶媒であってもよく、あるいはある程度の大きさの疎水性基を有する極性溶媒であってもよい。このような溶媒としては、例えば、C4〜C6アルコール(ブタノールなど)、クロロホルム、ヘキサンなどが挙げられ、単独で用いてもよく、または2種以上混合して用いてもよい。
【0023】
用語「骨形成促進活性」とは、当業者が通常用いるのと同様の意味で用いられる。具体的には、骨形成に関与する骨芽細胞自体を活性化する活性、前骨芽細胞から骨芽細胞への分化を誘導する活性などが挙げられる。これらの活性は、当業者が通常行う方法によって測定され得る。例えば、骨芽細胞の活性化については、石灰化を指標とし得、そして分化の誘導は、アルカリホスファターゼ(ALP)の活性の上昇を指標とし得る。
【0024】
本発明に用いられる骨形成促進活性を有する物質とは、マイタケ(Grifola frondosa)から得ることができる物質であるが、必ずしもマイタケから得た物質でなくてもよい。すなわち、マイタケから得られる物質と同様の「水存在下で親水性溶媒に可溶性であり、水と二層を形成し得る溶媒および水の共存下で水溶性」という物理的・化学的挙動を示し、かつ骨形成促進活性を有する物質であれば、本発明に用いられ得る。このような物質は、マイタケ以外のキノコまたはキノコ以外の材料に由来してもよく、あるいは化学的に合成したものであってもよい。マイタケ以外のキノコとしては、例えば、シャカシメジ(Lyophyllum fumosum)、ムラサキシメジ(Lepista nuda)、シモコシ(Tricholoma auratum)、キシメジ(Tricholoma flavovirens)、シモフリシメジ(Tricholoma portentosum)、スギヒラタケ(Pleurocybella porrigens)、ムキタケ(Panellus serotinus)、ヌメリササタケ(Cortinarius pseudosalor)、シロヒメホウキタケ(Ramariopsis kuntzei)、トンビマイタケ(Meripilus giganteus)、マンネンタケ(Ganoderma lucidum)などが挙げられる。これらは、子実体または菌糸体のいずれであってもよい。
【0025】
用語「マイタケ抽出物」とは、マイタケから任意の手段によって抽出された物質をいう。例えば、「水存在下で親水性溶媒に可溶性であるマイタケ抽出物」とは、水存在下で親水性溶媒を用いてマイタケから抽出される物質をいう。「マイタケメタノール抽出物」または「マイタケエタノール抽出物」とは、マイタケからそれぞれメタノールまたはエタノールを用いて抽出される物質をいう。
【0026】
本発明の骨形成促進剤に含まれる有効成分は、一般的には、マイタケから容易に得ることができる。マイタケ(舞茸、学名=Grifola frondosa)は、主に日本の東北地方の山に自生するサルノコシカケ科のキノコの一種である。これまでに、マイタケについては、肥満、高血圧、および高脂血症の治療用食品になり得ること(特許文献3)、抗腫瘍効果を有すること(特許文献4)、チロシナーゼ阻害活性を有すること(特許文献5)、消化酵素阻害効果を有すること(特許文献6)、抗真菌剤となり得ること(特許文献7)などが報告されている。さらに、上述のように非特許文献2には、マイタケのリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)抽出物に弱いアルカリホスファターゼ(ALP)誘導活性があること、およびマイタケのメタノール抽出物に強いALP誘導活性があることが記載されている。さらに、非特許文献2には、シモコシのメタノール抽出物から、脂溶性である(22E,24R)−エルゴスタ−7,22−ジエン−3β,5α,6β−トリオールがALP誘導の活性本体として同定および単離されたことが記載されている。このことから、マイタケの脂溶性画分に強いALP活性を促進する物質があると推測できる。しかし、本発明者らの研究によれば、マイタケのメタノール抽出物中の脂溶性画分は、ALP活性があまり強くない。逆に、発明者らは、生のマイタケのメタノール抽出画分について、さらに飽和ブタノール/水の混液で処理した場合に、ALP活性が水層画分に移行し、この画分が骨形成促進剤として作用し得ることを見出した。すなわち、本発明の骨形成促進剤の有効成分は、上記のシモコシから単離されたトリオールとは、全く異なる挙動を示す成分である。
【0027】
上記のように、本発明の骨形成促進剤に含まれる有効成分は、マイタケから容易に得ることができる。したがって、以下、マイタケを用いてこの成分を得る場合を例に挙げて、本発明の骨形成促進剤の製造方法を具体的に説明する(図1を参照のこと)。
【0028】
材料であるマイタケは、子実体および菌糸体のどちらを用いてもよい。
【0029】
マイタケの子実体を用いる場合は、生のものあるいは乾燥させたもののいずれを用いてもよい。まず、生または乾燥マイタケの子実体を、当業者が通常用いる手段(例えば、ミキサーなど)によって切断、摩砕、または粉砕して、その表面積を増大させる。次いで、水の存在下でエタノール、メタノール、アセトンなどの親水性溶媒に浸漬する。生の材料を用いる場合は、材料中の水分量が多いため(約80〜90%)、親水性溶媒のみまたは親水性溶媒の水溶液のいずれに浸漬してもよい。一般的には、生マイタケ1質量部に対して親水性溶媒1〜10質量部が用いられる。乾燥マイタケを用いる場合は、親水性溶媒に水を加える必要があるため、通常20〜80(v/v)%の親水性溶媒の水溶液が用いられる。例えば、乾燥マイタケ1質量部に対して10〜100質量部の親水性溶媒水溶液が用いられ得る。
【0030】
マイタケの菌糸体は、通常、マイタケ菌を固体培地上で培養して得られる菌糸体を、固体培地のまま用い得る。まず、菌糸体を含む固体培地を粉砕し、水の存在下で親水性溶媒に浸漬する。この場合も、固体培地中の水分量が多いため、親水性溶媒のみまたは親水性溶媒の水溶液のいずれに浸漬してもよい。使用する溶媒の量は、上記の子実体の場合と同様である。
【0031】
上記のようにマイタケを水の存在下で親水性溶媒に浸漬して、抽出が行われる。必要に応じて、攪拌または振盪しながら抽出してもよい。あるいは、マイタケをこのような溶媒とともにホモジナイズしてもよい。抽出温度は特に制限はなく、例えば、4℃〜95℃、あるいは25℃〜50℃である。抽出時間も特に制限はなく、例えば、30分〜1週間、あるいは1時間〜48時間である。
【0032】
上記抽出操作後、例えば、濾過によって、不溶物と抽出液とを分離する。抽出液を、当業者が通常用いる手段によって減圧下で濃縮する。
【0033】
次いで、得られた濃縮物に、水と二層を形成し得る溶媒および水を加え、攪拌または振盪する。ここで用いる水と二層を形成し得る溶媒は、上記のようにブタノール、クロロホルム、ヘキサンなどである。この攪拌または振盪のプロセスにおける温度および時間は特に限定されない。例えば、温度は、10℃〜50℃または25℃〜40℃であり、そして時間は、10分〜48時間または30分〜12時間である。攪拌または振盪後、水と二層を形成し得る溶媒および水の混液を静置してあるいは遠心分離によって水層と溶媒層とに分離させ、水層を回収する。回収した水層は、当業者が通常用いる手段(例えば、エバポレーション、凍結乾燥、スプレードライなど)によって濃縮・乾燥され得る。
【0034】
このようにして得られる画分を、本明細書では「準水溶性画分」という。この準水溶性画分は、マイタケを親水性溶媒単独または親水性溶媒の水溶液で抽出して得られる抽出物を、さらに水と二層を形成し得る溶媒および水の混液で分配した場合に、水層に移行する物質を含む。この物質は、骨形成促進活性の指標であるALP活性や石灰化活性を有する。また、細胞内のカルシウム濃度を上昇させ、そして動物実験において骨量低下を抑制する効果も有する。したがって、準水溶性画分は、本発明の骨形成促進剤の有効成分となり得る。
【0035】
この準水溶性画分は、クロマトグラフィーなどの当業者が通常用いる手段によってさらに精製して用いてもよい。例えば、吸着クロマトグラフィーによって精製する場合は、準水溶性画分を水に溶解してカラムに供し、例えば、水/メタノールの段階的グラジエント、あるいはC1〜C3アルコール(例えば、メタノール、エタノールおよび/またはプロパノール)またはその水溶液、好ましくは30(V/V)%〜99.8(V/V)%のC1〜C3アルコール水溶液、より好ましくは40(V/V)%〜99.5(V/V)%のC1〜C3アルコール水溶液などによって溶出し、濃縮・乾燥することにより、さらにALP活性の高い精製画分を得ることができる。この精製画分も、骨形成促進活性の指標であるALP活性や石灰化活性を有する。また、精製画分は、細胞内のカルシウム濃度を上昇させ、そして動物実験において骨量低下を抑制する効果も有する。したがって、精製画分は、マイタケから得られ得る骨形成促進活性を有する物質であり得、本発明の骨形成促進剤に含まれる有効成分である。
【0036】
本明細書では、本発明の骨形成促進剤に含まれる有効成分をマイタケから得る場合について上記のように詳細に説明したが、マイタケ以外の材料から同様にして有効成分が得られ得ることは、当業者には容易に理解し得ることである。
【0037】
(抗骨粗鬆症剤)
上記のようなマイタケから得られ得る(上記において骨形成促進活性を有することが説明された)物質はまた、本発明の抗骨粗鬆症剤としても有用である。本発明の抗骨粗鬆症剤は、上記物質を有効成分として含有し、骨粗鬆症の予防および/または改善に有効に寄与する。骨粗鬆症は、通常、生体内の骨形成と骨吸収との間のバランスが崩れることにより発症する疾患であることが知られている。本発明に用いられる当該マイタケから得られ得る物質は、上記のような骨形成促進剤としてだけでなく、このような生体内の骨形成と骨吸収とのバランスを効果的に維持することができ、その結果として、骨粗鬆症の発症を予防または治療することができる。
【0038】
本発明の骨形成促進剤および抗骨粗鬆症剤の投与経路は、通常、経口投与であるが、静脈内投与、皮下投与であってもよい。経口投与に適する製剤として、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、溶液剤、シロップ剤などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの製剤中には、薬学的に受容可能な賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着香料、着色剤、コーティング剤などが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0039】
本発明の骨形成促進剤および抗骨粗鬆症剤の投与量は、患者の年齢および体重、改善すべき症状、投与経路などによって異なるが、主治医の判断によって適宜決定され得る。本発明の骨形成促進剤および抗骨粗鬆症剤に含まれる有効成分は、例えば、マイタケに由来する成分であるため、食品として使用されてきたものであり、その投与量を厳格に規定する必要はないが、通常、マイタケから得られ得る骨形成促進活性を有する物質の乾燥粉末換算で1日あたり、例えば、0.1mg〜10g、または1mg〜1g、あるいは10mg〜1gである。
【0040】
(飲食物)
本発明の飲食物は、上記のようにしてマイタケから単離された、水存在下で親水性溶媒に可溶性であり、そして水と二層を形成し得る溶媒および水の共存下で水溶性である物質を含む。この物質は、マイタケの準水溶性画分または精製画分であり得る。あるいは、本発明の別の飲食物は、水存在下で親水性溶媒に可溶性であるマイタケ抽出物を含有する。いずれも、上記のようなマイタケ由来の骨形成促進活性を有する成分を含むため、骨粗鬆症の予防や改善に有用であり得る。
【0041】
本発明の飲食物には、骨粗鬆症予防・改善効果を有するといわれている食品素材、例えば、大豆、ザクロなどの抽出物やコラーゲン、食品添加物(例えば、カルシウム、マグネシウム、ビタミンD、K、コラーゲンなど)を同時に含有することができる。また、本発明の飲食物に用いるためのマイタケの準水溶性画分または精製画分あるいはマイタケ抽出物を調製する場合に、必要に応じて、単独で、あるいはデンプン、デキストリンなどの賦形剤や他の食品添加物とともに、スプレードライ、凍結乾燥などによって乾燥粉末化してもよい。また、本発明の飲食物は、例えば、甘味料、香辛料、調味料、防腐剤、保存料、殺菌剤、酸化防止剤などの食品に通常用いられる添加剤を含有してもよい。飲食物の形状は、溶液状、懸濁液状、シロップ状、顆粒状、クリーム状、ペースト状、ゼリー状などの所望の形状であり得、あるいは必要に応じて成形してもよい。本発明の飲食物は、必要に応じて、骨形成促進作用を有する旨あるいは骨粗鬆症の予防や改善に有用であり得る旨の表示とともに提供され得る。
【0042】
本発明の飲食物中に含まれるマイタケの準水溶性画分または精製画分あるいはマイタケ抽出物の割合は、特に限定されず、当該飲食物の使用目的、使用形態、および使用量に応じて適宜選択することができる。通常、飲食物100質量部あたり0.001〜99質量部、または0.01〜50質量部、あるいは0.1〜20質量部である。
【0043】
本発明に用いられる、上記のようなマイタケから得られ得る物質であって、水存在下で親水性溶媒に可溶性であり、そして水と二層を形成し得る溶媒および水の共存下で水溶性である物質は、例えば、骨の健康が気になる方の食品(または飲食物)である旨の表示を付した飲食物として用いることができる。このような機能の表示を付した飲食物の例としては、特定保健用食品が挙げられる。なお、上記機能の表示は、骨の健康が気になる方の食品のみに限定されない。このような表示に付されるべき他の機能の例としては、骨粗鬆症の予防および/または改善を達成する食品または飲食物;骨粗鬆症のリスクを軽減または低減し得る飲食物;骨形成を促進する食品または飲食物;などが挙げられる。表示は、使用者にとって上記のような機能が実質的に理解され得る様式で表されておればよく、例えば、当該食品の外装または内装パッケージ、商品カタログ、ポスターなどに対して行われ得る。
【実施例】
【0044】
(実施例1)マイタケ抽出物の調製1
市販の生マイタケ約300g×3をミキサーで破砕し、各500mLのメタノール、エタノール、または水を加え、40℃にて24時間静置した。それぞれ濾過によって不溶物を除去して、溶媒をエバポレーションによって留去し、凍結乾燥によって乾燥させて、それぞれメタノール抽出物、エタノール抽出物、および水抽出物を得た。それぞれの収量を表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
(実施例2)マイタケ抽出物の調製2
乾燥マイタケ((財)十日町地域地場振興センター製)をミキサーで粉砕し、粉末10gに対してそれぞれエタノール、65(V/V)%エタノール、または50(V/V)%エタノール250mLを加え、40℃にて24時間静置した。それぞれ濾過によって不溶物を除去して、溶媒をエバポレーションによって留去し、凍結乾燥によって乾燥させて、それぞれの抽出物を得た。それぞれの収量を表2に示す。
【0047】
【表2】

【0048】
(実施例3)マイタケの準水溶性画分または精製画分の調製
市販の生マイタケ2.6kgをミキサーで粉砕し、メタノール4.2Lに浸漬し、40℃にて24時間静置して抽出を行った。抽出後、濾過し、濾液をエバポレーションによって濃縮し、さらに凍結乾燥によって乾燥させて、マイタケメタノール抽出物を69.75g得た。得られたマイタケメタノール抽出物に、35倍量の水飽和n−ブタノール/水(1:1)を加えて分液後、それぞれをエバポレートして濃縮し、水飽和n−ブタノール層から得られた抽出物はデシケーターで乾燥し、水層から得られた抽出物は凍結乾燥によって乾燥させて、飽和ブタノール層から3.57g(脂溶性画分)および水層から54.8g(準水溶性画分)のそれぞれの抽出画分を得た(表3)。
【0049】
【表3】

【0050】
水層から得られた抽出画分(準水溶性画分)を水に溶解して、さらにダイアイオンHP−20カラム(三菱化学(株)製)にかけて、水(0%メタノール)、20%メタノール、40%メタノール、50%メタノール、60%メタノール、80%メタノール、および99.8%メタノールで順次溶出し、得られた分画をそれぞれエバポレーションによって濃縮した。各画分の収量を表4に示す。
【0051】
【表4】

【0052】
(実施例4)骨芽細胞分化誘導効果の評価
1mLのαMEM(Gibco製)培地中でMC3T3−E1細胞(独立行政法人理化学研究所の細胞バンクより購入)を2×10細胞/mLとなるように調製し、24穴プレートに播種し、3日間培養を行った。次いで、10mM HEPES、10mM β−グリセロリン酸2ナトリウム塩、および10%牛胎児血清(FCS)を含有するαMEM[分化培地]中、以下の表5に記載の種々の試料を種々の濃度に調製し、それぞれのウェルに加えた。添加後、3日おきに各試料を含有する分化培地を交換し、6日間培養を行った。6日後、培養液を捨て、0.25M スクロースで細胞を3回洗浄し、1ウェルあたり0.9mLの50mM炭酸緩衝液(pH9.8)、25mMスクロース、および1mM MgCl[反応緩衝液]を添加して、30℃で10分間インキュベートした。次いで、2.5mM p−ニトロフェニルリン酸2ナトリウム塩を1ウェルあたり0.1mL加えて室温で15分間振盪し、反応生成物(p−ニトロフェノール)の量をOD420nmの吸光度により測定して、アルカリホスファターゼ(ALP)活性を求めた。コントロール(試料添加なし)のALP活性を100%とした場合の結果を表5に示す。
【0053】
【表5】

【0054】
生マイタケからのメタノール抽出物およびエタノール抽出物の添加によりALP活性が誘導されたが、水抽出物ではALP活性が抑制された。また、乾燥マイタケについては、エタノールのみによる抽出物ではALP活性の誘導は見られなかったが、エタノール水溶液による抽出物では、ALP活性が誘導されていた。さらに、マイタケのメタノール抽出物を飽和ブタノール/水で分液すると、ALP活性を誘導する成分は水画分に移行し、さらにカラムから40%以上のメタノールで溶出される画分(精製画分)に移行することが明らかとなった。
【0055】
(実施例5)石灰化の定性的測定
石灰化の定性的測定はアリザリンレッドS染色法により以下のように行った。1mLのαMEM培地中でMC3T3−E1細胞を2×10細胞/mLとなるように調製し、24穴プレートに播種し、3日間培養を行った。次いで、10mM HEPES、10mM β−グリセロリン酸2ナトリウム塩、および10%FCSを含有するαMEM[分化培地]中、以下の表6に記載の種々の試料を種々の濃度に調製し、それぞれのウェルに加えた。添加後、3日おきに各試料を含有する分化培地を交換し、9日間または18日間培養を行った。測定時には培養液を捨て、PBSで細胞を3回洗浄し、50%エタノールを用いて細胞を固定し、アリザリン試薬(10mLのミリQ水に28%アンモニア水10μLおよび0.1gのアリザリンレッドSを溶解したもの)を1ウェルあたり0.5mL加えて染色した。石灰化の評価は、試料無添加の細胞と比較して目視で行った。ポジティブコントロールとして、Miyakeら(Biosci. Biopharm. Biochem., 2003, 67(6), 1199-1205)により報告されているイプリフラボン+ケンフェロールを用いた。結果を表6に示す。
【0056】
【表6】

【0057】
生マイタケ由来のHP20からの40%メタノール溶出画分(精製画分)は、MC3T3−E1細胞の石灰化を誘導していることが定性的に明らかとなった。
【0058】
(実施例6)石灰化の定量的測定
石灰化の定量的測定はOCPC法を用い、カルシウムCテストワコー(WAKO製)を使用して以下のように行った。1mLのαMEM培地中でMC3T3−E1細胞を2×10細胞/mLとなるように調製し、24穴プレートに播種し、3日間培養を行った。次いで、10mM HEPES、10mM β−グリセロリン酸2ナトリウム塩、および10%FCSを含有するαMEM[分化培地]中、以下の表6に記載の種々の試料を調製し、それぞれのウェルに加えた。添加後、3日おきに試料を含有する分化培地を交換し、10日間または15日間培養を行った。測定時には培養液を捨て、PBSで細胞を3回洗浄し、1ウェルあたり0.5mLの1N HClを加えてカルシウムを溶出し、溶出液5μL、緩衝液500μL、および発色試液50μLをよく混合して室温で10分間静置した後、OD570nmの吸光度を測定し、カルシウム濃度を求めた。結果を表7に示す。
【0059】
【表7】

【0060】
生マイタケ由来のHP20からの40%メタノール溶出画分(精製画分)は、MC3T3−E1細胞においてカルシウム濃度を著しく上昇させ、石灰化を促進していることが明らかとなった。
【0061】
(実施例7)骨量低下抑制効果の試験
6週齢のWistar系雌ラット(日本チャールズリバーより購入)を、まずA群とB群とに分けた。次いで、A群のラットに卵巣摘出手術を行い、骨粗鬆症モデルラットを作成し、これをさらに、コントロール群、マイタケ準水溶性画分1%含有飼料投与群、マイタケ準水溶性画分5%含有飼料投与群、およびCa含有飼料投与群の4群に分けた。一方、B群のラットについては、卵巣を摘出することなく切開および縫合のみを行い、卵巣を摘出していない群(Sham群)とした。Ca無添加飼料を基本飼料として、コントロール群およびSham群に8週間自由摂取させた。マイタケ準水溶性画分含有飼料投与群は、基本飼料に上記実施例3で調製したマイタケ準水溶性画分を1%または5%添加した飼料を摂取させた。Ca含有飼料投与群には、AIN−93M配合精製飼料(オリエンタル酵母(株)製)を用いて飼料を摂取させた。飼育終了日にラットの体重を測定した後、解剖して採血し、そして右脚大腿骨の摘出を行った。大腿骨に付着した組織片を取り除いた後、100℃で24時間乾燥して重量を測定した。結果を表8に示す。
【0062】
【表8】

【0063】
卵巣摘出ラットの大腿骨で生じる骨量低下は、飼料中にマイタケ準水溶性画分を1%または5%添加することによって、有意に抑制されることがわかった。
【0064】
(実施例8)顆粒状食品
上記実施例3で得たマイタケ準水溶性画分を用いて、以下の組成を有する顆粒状食品を調製した。以下の各成分を流動造粒機中で混合した後、水を噴霧して造粒し、入風温度80℃で乾燥した。
【0065】
成分 質量(g)
マイタケ準水溶性画分 0.6
大豆サポニン 2.0
黒酢エキス 2.0
リンゴファイバー 2.0
レシチン 1.0
フラクトオリゴ糖 2.0
果糖 1.0
粉末酢 0.1
シクロデキストリン 1.0
蜂蜜 1.0
骨粉 1.0
デキストリン 4.9
【0066】
(実施例9)茶飲料
上記実施例3で得たマイタケ準水溶性画分を用いて、以下の組成を有する茶飲料を調製した。
【0067】
成分 質量(g)
マイタケ準水溶性画分 0.5
緑茶粉末 10.0g
熱水 1000mL
ビタミンC 0.3
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の骨形成促進剤および抗骨粗鬆症剤は、本発明の骨形成促進剤および抗骨粗鬆症剤は、簡単な工程で食用のマイタケから得ることが可能であるため、安全かつ安価である。さらに、本発明の飲食物は、骨粗鬆症予防および改善に有用なマイタケ由来の物質を含むため、日常的に摂取することにより、骨粗鬆症を予防および改善することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】マイタケからのアルカリホスファターゼ促進活性を示す物質の精製プロセスのフローチャートである。
【図2】シモコシからのアルカリホスファターゼ促進活性を示す物質の精製プロセスのフローチャートである。(従来技術)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイタケから得られ得る骨形成促進活性を有する物質を有効成分として含む骨形成促進剤であって、該物質が、水存在下で親水性溶媒に可溶性であり、そして水と二層を形成し得る溶媒および水の共存下で水溶性である、骨形成促進剤。
【請求項2】
前記マイタケが、乾燥または生のマイタケである、請求項1に記載の骨形成促進剤。
【請求項3】
前記物質が、マイタケ抽出物である、請求項1または2に記載の骨形成促進剤。
【請求項4】
骨形成促進剤の製造方法であって、
乾燥または生のマイタケを水存在下で親水性溶媒に浸漬して、抽出液を得る工程;および
該抽出液とC4〜C6アルコール水溶液とを混合して、水層を得る工程;
を包含する、方法。
【請求項5】
前記C4〜C6アルコール水溶液が飽和ブタノール水溶液である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記水層をカラムに吸着させて、30(V/V)%から99.8(V/V)%のC1〜C3アルコール水溶液で溶出する画分を得る工程、をさらに包含する、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
マイタケから得られ得る物質を有効成分として含む抗骨粗鬆症剤であって、該物質が、水存在下で親水性溶媒に可溶性であり、そして水と二層を形成し得る溶媒および水の共存下で水溶性である、抗骨粗鬆症剤。
【請求項8】
マイタケから単離された物質を含有する飲食物であって、該物質が、水存在下で親水性溶媒に可溶性であり、そして水と二層を形成し得る溶媒および水の共存下で水溶性である、飲食物。
【請求項9】
水存在下で親水性溶媒に可溶性であるマイタケ抽出物を含有する、飲食物。
【請求項10】
マイタケから得られ得る物質を有効成分として含有する、骨の健康が気になる方の食品である旨の表示を付した飲食物であって、該物質が、水存在下で親水性溶媒に可溶性であり、そして水と二層を形成し得る溶媒および水の共存下で水溶性である、飲食物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−143639(P2006−143639A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−335102(P2004−335102)
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(000214272)長瀬産業株式会社 (137)
【Fターム(参考)】