説明

骨形成促進及び骨吸収抑制剤

【課題】骨形成促進及び骨吸収抑制作用を有する骨形成促進及び骨吸収抑制剤、さらには
、骨形成促進及び骨吸収抑制用飲食品、医薬品又は飼料の提供。
【解決手段】チトクロームP-450、プラスミノーゲン、トランスフェリン及びプラスミン
のいずれか1種以上を有効成分とする骨形成促進及び骨吸収抑制剤。また、チトクロームP
-450、プラスミノーゲン、トランスフェリン及びプラスミンのいずれか1種以上を配合し
た骨形成促進及び骨吸収抑制用飲食品、医薬品又は飼料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チトクロームP-450及び/又はトランスフェリンを有効成分とする骨形成促進及び骨吸収抑制剤に関する。また、本発明は、チトクロームP-450及び/又はトランスフェリンを配合した骨形成促進及び骨吸収抑制用飲食品、医薬又は飼料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢者人口の増加に伴い、骨粗鬆症、骨折、腰痛等の各種骨疾患が増加する傾向にある。骨組織においては、絶えず骨形成と骨吸収が営まれており、若い時には骨形成と骨吸収のバランスが保たれているが、加齢に伴い種々の原因でそのバランスが骨吸収に傾く(アンカップリング)。そして、この状態が長期間続くと骨組織が脆くなり、骨粗鬆症、骨折、腰痛等の各種骨疾患を生じることになる。このアンカップリングを防止することができれば、骨粗鬆症、骨折、腰痛等の各種骨疾患を予防することができると考えられている。
【0003】
従来より、アンカップリングを防止し、各種骨疾患を予防あるいは治療する方法として、(1)食餌によるカルシウム補給、(2)軽い運動、(3)日光浴、(4)薬物治療等が行われている。食餌によるカルシウム補給には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム等のカルシウム塩や卵殻、魚骨粉等の天然カルシウム剤が使用されている。しかし、これらは必ずしも経口摂取に適している素材であるとはいえない。
軽い運動はジョギングや散歩等が良いとされるが、体が弱っている場合は軽い運動も厄介なものであり、まして寝たきりの老人では殆ど運動できない。日光浴は活性型ビタミンD3の補給という点では良いとされているが、これだけでは不充分である。薬物投与には、1α−ヒドロキシビタミンD3やカルシトニン製剤等が使用されており、骨粗鬆症の治療には有効であるということが知られている。しかし、これらの物質は医薬そのものであり、食品素材としても使用可能なものではない。
【0004】
一方、本発明者らは、食品素材として使用可能な骨強化作用や骨吸収抑制作用を有する物質を得るために、乳清タンパク質中に存在する骨強化及び骨吸収抑制因子を探索し続けてきた。その結果、逆浸透膜や電気透析等の処理により、乳清タンパク質の水溶性画分から乳清由来の塩を除去したタンパク質及びペプチド混合物に骨強化作用があることを見出した (例えば、特許文献1参照。)。そして、このタンパク質及びペプチド混合物の水溶液をエタノール処理、加熱処理、加塩処理、限外濾過膜処理して得られる画分に骨芽細胞増殖促進作用及び骨強化作用があることを見出した(例えば、特許文献2及び3参照。)。また、乳中に微量にしか存在しない塩基性タンパク質に骨芽細胞増殖促進作用、骨強化作用及び骨吸収抑制作用があることを見出した(例えば、特許文献4参照。)。
【0005】
本発明者らは、更に探索を進め、骨形成促進及び骨吸収抑制作用を有する成分の分離精製を試み、その物質を同定したところ、既知物質であるプロトロンビン、チトクロームP-450、プラスミノーゲン、トランスフェリン、トロンビン及びプラスミンであることを確認した。そしてこれらの物質を骨形成促進及び骨吸収抑制剤として利用することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
プロトロンビンは、分子量約7.2kDaのタンパク質であり、血液凝固II因子とも呼ばれる。ビタミンK依存性血液凝固因子の1つであり、ビタミンK存在下で第X因子によりトロンビンに分解される。生じたトロンビンはフィブリノーゲンをフィブリンへと分解し、フィブリンが架橋することによって血液が凝固する。プロトロンビンは、血液を始め、全身組織中に広く分布していることが知られており、ヒトやウシでは乳中にも存在していることが報告されている。
プロトロンビンやトロンビンの骨強化及び骨吸収抑制等の骨への作用についてはこれまで報告されていない。
【0006】
チトクロームP-450(CytochromeP-450)は、還元型で一酸化炭素を結合して450nm付近にソーレー吸収帯を示す一群のプロトヘムタンパク質の総称である。機能的には、各種のステロイドホルモン、胆汁酸、プロスタノイドの合成・分解反応、脂肪酸のω酸化、ビタミンDの活性化反応、無数の外来薬物や体内に取り込まれた環境汚染物質等の酸化的解毒反応に関与している。
【0007】
プラスミノーゲン(Plasminogen)は、プラスミンの前駆体であり、動物血漿中に存在し、プラスミノーゲンアクチベーターによって分子内のArg-Val結合が切断されて活性なプラスミンとなる。分子量約91,000の一本鎖の糖タンパク質であり、プラスミン等のプロテアーゼによってN末端側のペプチドが切断されて分子量約82,000の修飾プラスミノーゲンとなる。
【0008】
トランスフェリン(Transferrin)は、血中の輸送鉄と結合する分子量約75,000のタンパク質で、鉄結合性グロブリンとも呼ばれる。幼若赤血球はトランスフェリンと結合した鉄に対する受容体を有しており、血清鉄がヘモグロビンの合成に利用されるためにはトランスフェリンと結合していなければならない。トランスフェリンについては膜結合型トランスフェリン様タンパク質が軟骨細胞の形成を促進すると開示されているが、軟骨細胞の形成促進であり、骨形成促進とはメカニズムが全く異なっている (例えば、特許文献5及び6参照。)。
【0009】
プロトロンビン、チトクロームP-450、プラスミノーゲン、トランスフェリン、トロンビン及びプラスミンのいずれについても骨形成を促進したり、骨吸収を抑制する働きについて記載した文献は見られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平4-183371号公報
【特許文献2】特開平5-176715号公報
【特許文献3】特開平5-320066号公報
【特許文献4】特開平8-151331号公報
【特許文献5】特開2002-20311号公報
【特許文献6】再公表特許WO01/013951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、食品素材としても使用可能な、長期的に経口摂取することができ、安全な物質であって、骨形成促進及び骨吸収抑制作用を有する、骨形成促進及び骨吸収抑制剤を得ることを課題とする。また、本発明は、骨形成促進及び骨吸収抑制用飲食品、医薬品又は飼料を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、これらの問題点を鑑み、広く食品素材に含まれている骨強化作用を示す物質について、鋭意、探索を進め、骨芽細胞増殖促進作用及び骨吸収抑制作用を有するタンパク質について、骨形成促進及び骨吸収抑制作用を有する成分の分離精製を試み、その物質を同定したところ、既知物質であるプロトロンビン、チトクロームP-450、プラスミノーゲン、トランスフェリン、トロンビン及びプラスミンであることを確認した。そしてこれらの物質を骨芽細胞増殖促進及び骨吸収抑制剤として利用することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、トクロームP-450及び/又はトランスフェリンを有効成分とする骨形成促進及び骨吸収抑制剤に関する。
また、本発明は、チトクロームP-450及び/又はトランスフェリンを配合した骨形成促進及び骨吸収抑制用飲食品、医薬又は飼料に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のチトクロームP-450及び/又はトランスフェリンを有効成分とする骨形成促進及び骨吸収抑制剤は、これを経口投与することにより、骨粗鬆症等の各種骨疾患の予防や改善に有用である。また、この有効成分を飲食品、医薬、飼料等に配合すると骨形成を促進し、骨吸収を抑制して、骨粗鬆症等の各種骨疾患を予防し、改善する効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
破骨細胞は造血幹細胞から発生して海綿骨表面に存在し、骨を溶解する細胞である。破骨細胞が骨基質を溶解し(骨吸収)、その後、骨芽細胞が骨基質を合成することによって、骨の形成や成長(モデリング)、代謝(リモデリング)が起こると考えられている。本発明は、プロトロンビン、チトクロームP-450及び/又は、プラスミノーゲン、トランスフェリン、トロンビン及びプラスミンのいずれか1種以上を経口投与することによって、骨芽細胞による骨形成を促進し、破骨細胞による骨吸収が顕著に抑制されることを見出したものである。
【0015】
チトクロームP-450及び/又はトランスフェリンに見出された骨形成促進作用と骨吸収抑制作用を用いることによって、骨のモデリング及びリモデリングの両方がバランスよく働くことが期待できる。よって本発明は、骨形成促進作用及び骨吸収抑制作用のいずれをも有する骨形成促進及び骨吸収抑制剤、飲食品、医薬又は飼料を提供するものである。
【0016】
本発明で有効成分として使用する、チトクロームP-450、及びトランスフェリンはいずれも、ウシ、水牛、ヒト、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ等の乳中に微量に存在しており、乳から分離抽出が可能である。乳成分としては、生乳、脱脂乳、又はホエーから分離したタンパク質画分、あるいは生乳から分離した乳中細胞画分が利用できる。チトクロームP-450、及びトランスフェリンは、健康な家畜の血液から調製することもできる。チトクロームP-450、及びトランスフェリンはいずれも市販されており、この市販品を用いることも可能である。また、遺伝子工学的に作製したリコンビナント品を用いてもよい。
【0017】
さらに、チトクロームP-450、及びトランスフェリンをトリプシン、パンクレアチン、キモトリプシン、ペプシン、パパイン、カリクレイン、カテプシン、サーモライシン、V8プロテアーゼ等のタンパク質分解酵素により分解したものを用いても良い。
【0018】
乳からの調製については、例えば、新鮮な牛乳を陰イオン交換樹脂に接触させてチトクロームP-450、及びトランスフェリンを含む画分を吸着させ、塩化ナトリウムの濃度を徐々に高めて溶出した後、ゲル濾過クロマトグラフィーによりチトクロームP-450、 血液からの調製については、クエン酸血漿をクエン酸バリウムと反応させ、不溶性バリウムに吸着したチトクロームP-450、及びトランスフェリンの沈殿をそれぞれ回収する。さらにイオン交換クロマトグラフィーにより純度を高めることができる。
【0019】
本発明の骨形成促進及び骨吸収抑制剤は、チトクロームP-450及び/又はトランスフェリンを有効成分とする。また、このチトクロームP-450及び/又はトランスフェリンを、牛乳、乳飲料、コーヒー飲料、ジュース、ゼリー、ビスケット、パン、麺、ソーセージ等の飲食品に配合しても良いし、錠剤や粉末等の医薬としても良い。さらに、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、卵殻、牛乳由来のカルシウム等の吸収性が良好なカルシウム剤を併用することにより、骨強化作用を一層高めることもできる。
【0020】
本発明の骨形成促進及び骨吸収抑制剤の投与量は、有効成分、年齢、治療効果及び病態等により異なるが、成人の場合、1日当たり 1ng〜100mgを数回に分けて経口的に摂取すれば良い。このように、本発明の骨形成促進及び骨吸収抑制剤を摂取することにより、骨粗鬆症等の各種骨疾患を予防又は改善することができる。なお、チトクロームP-450、トランスフェリンは、元来、血漿や乳由来の成分であり、ラットにおける急性毒性は認められなかった。また、これらの有効成分を飼料に含有させて、家畜や家禽等の骨形成を促進したり、骨吸収を抑制したりすることもできる。
【0021】
以下に実施例及び試験例を示し、本発明についてより詳細に説明するが、これらは単に例示するのみであり、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0022】
既知の方法(Hashimoto, N., T. Morita, and S. Iwanaga, J. Biochem. (Tokyo), vol.97, p.1347-1355, 1985)に準じ、ウシ血漿プロトロンビンを調製した。すなわち、0.01 Mになるようにクエン酸ナトリウムを加え、遠心分離によりウシ血漿を得た。10lのウシ血漿に0.1 Mになるようにクエン酸バリウムをゆっくりと加え、緩やかに1時間撹拌した後、4,000rpmで10分間遠心分離した。得られた沈殿を0.01 M塩化バリウム、1mMベンザミジン塩酸、0.02%アジ化ナトリウムを含む、0.1 M塩化ナトリウム溶液で洗浄し、遠心分離した。この洗浄操作を2回繰り返した。バリウム沈殿を40%飽和硫安1lで懸濁し、1 mMになるようにジイソプロリルフォスフォロフルオリデート(DFP)を加えて、1晩撹拌した。5,000rpmで30分間、遠心分離を行ない、上清を得た。この上清に67%飽和度になるように飽和硫安を加え、5,000rpm、30分間の遠心分離により、沈殿を回収した。この沈殿を0.2 M塩化ナトリウム、1 mM DFP、1 mMベンザミジン塩酸を含む0.05 Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH 6.0)100〜150mlで溶解し、同じ緩衝液20lに対して1晩透析を行なった。不溶成分を遠心分離で除いた後、DEAE-セファデックスA50クロマトグラフィーに供した。0.2 Mの塩化ナトリウム、1 mMベンザミジン塩酸を含む0.05 Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH 6.0)で平衡化したDEAE−セファデックスA-50カラム(200×100 mm)に供し、塩化ナトリウム濃度を 600 mMまで次第に高め、吸着したタンパク質を溶出した。プロトロンビンは塩化ナトリウム濃度が約 300 mMとなったところで溶出した。これを透析により脱塩し、次いで、0.1 Mの塩化ナトリウム、1 mMベンザミジン塩酸を含む50mMトリス−塩酸緩衝液(pH 6.3)で平衡化したブルーセファロースCL-6Bカラム (80×200mm)に供し、平衡化緩衝液で洗浄した後、塩化ナトリウム濃度を4 Mとした緩衝液で吸着したタンパク質を溶出した。これを透析により脱塩し、凍結乾燥して本発明の有効成分であるプロトロンビン1.0 gを得た。このプロトロンビン1.0gを乳糖9.0 gと混合し、顆粒状に成型して骨形成促進及び骨吸収抑制剤を得た。
なお、チトクロームP-450、及びトランスフェリンについても上記プロトロンビンと同様の方法によりウシ血漿より調製することが可能である。
【実施例2】
【0023】
牛乳からプロトロンビンを含む画分を調製した。陽イオン交換樹脂のSP セファロース HP(アマシャムバイオサイエンス社製)400 gを充填したカラム(直径5 cm×高さ30 cm)を脱イオン水で十分洗浄した後、このカラムに未殺菌脱脂乳40l(pH 6.7)を流速25 ml/minで通液した。通液後、このカラムを脱イオン水で十分洗浄し、1.5M塩化ナトリウムを含む 0.02M炭酸緩衝液(pH 7.0)で樹脂に吸着したタンパク質画分を溶出した。そして、この溶出液を逆浸透(RO)膜により脱塩して、濃縮した後、凍結乾燥してタンパク質画分粉末 21 gを得、本発明の骨形成促進及び骨吸収抑制剤とした。なお、このタンパク質画分粉末には、プロトロンビンが0.01重量%含まれていた。
【0024】
[試験例1]
プロトロンビン、チトクロームP-450、プラスミノーゲン、トランスフェリン、トロンビン及びプラスミンについて骨芽細胞増殖作用を調べた。試験に供した各有効成分はいずれも市販のものを用いた。試験に供した各有効成分の由来及び各有効成分の最終濃度は表1記載の通りである。
マウス骨芽細胞MC3T3-E1細胞を10%牛胎児血清を含むα−MEM培地(Flow Laboratories社製) で、2×104/mlの細胞数で96穴プレートに播種し、5% CO2存在下、37℃で24時間培養し、試験用培養細胞とした。そして、培地を牛胎児血清を含まないα−MEM培地に交換し、プロトロンビン、チトクロームP-450、プラスミノーゲン、トランスフェリン、プラスミン及びトロンビンを表1記載のそれぞれの最終濃度となるよう培地に添加して、37℃で18時間培養した。これにブロモデオキシウリジン(BrdU)を用いたセルプロロフィレーションアッセイキット(アマシャムバイオサイエンス社製)で細胞増殖活性を調べた。対照として、有効成分無添加のものを用い、有効成分無添加のものの細胞増殖活性を 100%としたときのそれぞれの細胞増殖活性 (%) で表した。その結果を表1に示す。
【0025】

【表1】

【0026】
プロトロンビン、チトクロームP-450、プラスミノーゲン、トランスフェリン、プラスミン及びトロンビンを添加したものはいずれも有効成分無添加のものに比べ細胞増殖活性が増加しており、骨芽細胞増殖作用を有することが判った。
【0027】
[試験例2]
プロトロンビン、チトクロームP-450、プラスミノーゲン、トランスフェリン、プラスミン及びトロンビンについて骨吸収抑制作用を調べた。試験に供した各有効成分はいずれも市販のものを用いた。試験に供した各有効成分の由来及び各有効成分の最終濃度は表2記載の通りである。
生後10〜20日齢のICR系マウスの長管骨を摘出し、軟組織を除去した後、5%牛胎児血清を含むα−MEM(Flow Laboratories社製)溶液中で骨を機械的に細切し、破骨細胞を含む全骨髄細胞を得た。この破骨細胞を含む全骨髄細胞を約2×106 細胞になるように象牙片の上に撒き込み、5%牛胎児血清を含むα−MEM溶液でスポットした。2時間後、プロトロンビン、チトクロームP-450、プラスミノーゲン、トランスフェリン、プラスミン及びトロンビンを、表2記載のそれぞれの最終濃度となるように、5%牛胎児血清を含むα−MEM溶液を加え、5日間培養し、既存の破骨細胞の骨吸収抑制活性を調べた。
骨吸収抑制作用の評価は、培養後、象牙片上の細胞を剥がしてヘマトキシリン染色し、PIASLA-555により画像解析して骨吸収窩(ピット) の数を測定した。(瀬野悍二ら,研究テーマ別動物培養細胞マニュアル,pp.199-200, 1993)。すなわち、ピット数が少ないということは、破骨細胞の活性が低下して骨吸収活性が抑制されたことを意味している。また、ピットアッセイで骨吸収抑制効果が示された物質は、動物実験でも骨吸収の抑制効果が示されており(Tobaら、Bone, vol.27, p.403-408, 2000)、一般的にピットアッセイは骨吸収抑制効果を調べる上で適した実験系である。対照として、有効成分無添加のものを用い、有効成分無添加のものの骨吸収活性を100%としたときのそれぞれの骨吸収活性 (%) で表した。その結果を表2に示す。
【0028】

【表2】

【0029】
本発明の有効成分であるチトクロームP-450トランスフェリンを添加したものはいずれも、有効成分無添加のものに比べ骨吸収活性が抑制されており、顕著な骨吸収抑制作用を有することが判った。
【実施例3】
【0030】
表3に示した配合で原料を混合した後、容器に充填し、加熱殺菌して、骨形成促進及び骨吸収抑制用果汁飲料を製造した。
【0031】

【表3】

【実施例4】
【0032】
表4に示した配合で原料を混合した後、打錠機により加圧成型して、錠剤型の骨形成促進及び骨吸収抑制剤を製造した。
【0033】

【表4】

【0034】
[参考例1]
表5に示した配合で市販のプラスミノーゲンを用いて原料を混合し、ドウを作成して成型した後、焙焼して、骨形成促進及び骨吸収抑制用ビスケットを製造した。
【0035】

【表5】

【0036】
[参考例2]
表6に示した配合で市販のプラスミンを用いて原料を混合し、骨形成促進及び骨吸収抑制用ビスケットを製造した。
【0037】

【表6】

【0038】
[参考例3]
表7に示した配合で原料を混合した後、容器に充填し、加熱殺菌して、骨形成促進及び骨吸収抑制用ゼリーを製造した。
【0039】

【表7】

【0040】
[参考例4]
表8に示した配合で市販のプロトロンビンを用いて原料を混合した後、85℃で乳化して、骨形成促進及び骨吸収抑制用プロセスチーズを製造した。
【0041】
【表8】

【0042】
[参考例5]
表9に示した配合で市販のトロンビンを用いて原料を混合し、骨形成促進及び骨吸収抑制用プロセスチーズを製造した。
【0043】
【表9】

【実施例5】
【0044】
12重量%還元脱脂乳を90℃で20分間加熱殺菌した後、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)及びストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus) をそれぞれ接種し、2種類のスターターカルチャーを得て両者を等量混合した。そして、表10に示した配合で原料を混合した後、発酵させて、骨形成促進及び骨吸収抑制用ヨーグルトを製造した。
【0045】
【表10】

【0046】
[参考例6]
表11に示した配合で実施例1で得られたプロトロンビンを用いて原料を混合し、骨形成促進及び骨吸収抑制用乳児用調製粉乳を製造した。
【0047】
【表11】

【0048】
[参考例7]
表12に示した配合で市販のトロンビンを用いて原料を混合し、骨形成促進及び骨吸収抑制用乳児用調製粉乳を製造した。
【0049】
【表12】

【0050】
[参考例8]
表13に示した配合で市販のプラスミノーゲンを用いて原料を混合して、骨形成促進及び骨吸収抑制用イヌ飼育用飼料(ドッグフード)を製造した。
【0051】
【表13】

【0052】
[参考例9]
表14に示した配合で市販のプラスミンを用いて原料を混合して、骨形成促進及び骨吸収抑制用イヌ飼育用飼料(ドッグフード)を製造した。
【0053】
【表14】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
チトクロームP-450、及び/又はトランスフェリンを有効成分とする骨形成促進及び骨吸収抑制剤。
【請求項2】
1日当たり1ng〜100mg投与することを特徴とする請求項1に記載の骨形成促進及び骨吸収抑制剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の骨形成促進及び骨吸収抑制剤を配合した骨形成促進及び骨吸収抑制用飲食品、医薬又は飼料。

【公開番号】特開2012−197313(P2012−197313A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−141624(P2012−141624)
【出願日】平成24年6月25日(2012.6.25)
【分割の表示】特願2010−46910(P2010−46910)の分割
【原出願日】平成15年9月30日(2003.9.30)
【出願人】(711002926)雪印メグミルク株式会社 (65)
【Fターム(参考)】