骨接合プレート保持具
【課題】骨折部位の骨面に対する骨接合プレートのプレート取付作業を容易にできるようにアシストする骨接合プレート保持具を提供する。
【解決手段】骨接合プレート保持具14のブロック本体16は、切開した肉組織15の厚さよりも大きな高さを有する。ブロック本体16の下面にプレート位置決め用の複数の凸部27,28を設け、これらの凸部27,28により骨接合プレート13を位置決めする。ブロック本体16の上面から下面にわたってプレート結合手段33を設け、このプレート結合手段33により、ブロック本体16の下面に位置決めされた骨接合プレート13をブロック本体16の上面側で結合操作および結合解除操作する。ブロック本体16の上面から下面にわたって複数の作業孔41を貫通し、これらの作業孔41の下端は骨接合プレート13の各固定孔51に対応して開口する。
【解決手段】骨接合プレート保持具14のブロック本体16は、切開した肉組織15の厚さよりも大きな高さを有する。ブロック本体16の下面にプレート位置決め用の複数の凸部27,28を設け、これらの凸部27,28により骨接合プレート13を位置決めする。ブロック本体16の上面から下面にわたってプレート結合手段33を設け、このプレート結合手段33により、ブロック本体16の下面に位置決めされた骨接合プレート13をブロック本体16の上面側で結合操作および結合解除操作する。ブロック本体16の上面から下面にわたって複数の作業孔41を貫通し、これらの作業孔41の下端は骨接合プレート13の各固定孔51に対応して開口する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨折部位の骨面に固定される骨接合プレートを保持するための骨接合プレート保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
図10に示されるように、例えば腕の橈骨などの骨遠位端1で骨折2が生じた場合、骨折部位に骨接合プレート3を固定ネジ4により直接固定することで骨折部位を補強し修復する技術がある。
【0003】
このような骨接合プレート3を骨折部位の骨面に固定する際は、神経や血管を傷付けないように注意しながら骨折部位を覆う筋肉や腱などの肉組織を切開したり骨から剥離し、適切な骨面位置に骨接合プレート3を位置決めし、この骨接合プレート3の小さな固定孔5に挿入したワイヤまたはピンにより骨接合プレート3を仮止めし、骨接合プレート3に穿設されている大きな固定孔6を通したドリルにより骨に下穴を開け、この下穴に螺入された固定ネジ4により、骨面に骨接合プレート3を固定している。
【0004】
上記ドリルは、骨接合プレート3の一部に取り付けられた照準ガイド(図示せず)の貫通孔に嵌合されたゲージおよびドリルガイドによって、所定の深さまで所定の角度で案内される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2011−514196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の照準ガイドは、骨接合プレート3の一部に取り付けられた小型プレート部品であるため、切開した肉組織や神経などが、骨接合プレート3および照準ガイドの上に覆い被さり、骨折部位の骨面に骨接合プレート3を位置決めし、仮止めし、固定ネジ4により固定するプレート取付作業を妨げるおそれがある。
【0007】
このため、骨接合プレート3をプレート取付作業する外科医とは別に、プレート取付作業の間、切開した肉組織や神経などを開創器、筋鈎またはカンシにより閉塞しないように開いておく助手が必要であり、そのようにしても、プレート取付作業は容易にならない。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、骨折部位の骨面に対する骨接合プレートのプレート取付作業を容易にできるようにアシストする骨接合プレート保持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載された発明は、肉組織を切開して露出した骨の骨面に骨接合プレートを位置決めし骨接合プレートの固定孔に挿入された止め具により骨接合プレートを骨面に取り付けるプレート取付作業をアシストする骨接合プレート保持具であって、切開した肉組織内に挿入される切開した肉組織の厚さよりも大きな高さを有するブロック本体と、ブロック本体の下面に設けられ、この下面に骨接合プレートを位置決めするプレート位置決め手段と、ブロック本体の上面から下面にわたって設けられ、この下面に位置決めされた骨接合プレートをブロック本体の上面側で結合操作可能および結合解除操作可能なプレート結合手段と、ブロック本体の上面から下面にわたって貫通され、下端が骨接合プレートの固定孔に対応して開口された作業孔とを具備した骨接合プレート保持具である。
【0010】
請求項2に記載された発明は、肉組織を切開して露出した骨の骨面に骨接合プレートを位置決めし骨接合プレートの固定孔に挿入された止め具により骨接合プレートを骨面に取り付けるプレート取付作業をアシストする骨接合プレート保持具であって、切開した肉組織内に挿入されるブロック本体と、切開した肉組織の閉塞方向と対向するブロック本体の側面に設けられ、切開した肉組織の閉塞動作を係止する係止部と、ブロック本体の下面に設けられ、この下面に骨接合プレートを位置決めするプレート位置決め手段と、ブロック本体の上面から下面にわたって設けられ、この下面に位置決めされた骨接合プレートをブロック本体の上面側で結合操作可能および結合解除操作可能なプレート結合手段と、ブロック本体の上面から下面にわたって貫通され、下端が骨接合プレートの固定孔に対応して開口された作業孔とを具備した骨接合プレート保持具である。
【0011】
請求項3に記載された発明は、請求項1または2記載の骨接合プレート保持具におけるブロック本体の、骨面上に位置する神経と隣接する予定の箇所を、骨接合プレートよりも小さく形成したものである。
【0012】
請求項4に記載された発明は、請求項1または3記載の骨接合プレート保持具におけるブロック本体の高さを、10mm以上100mm以下としたものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、切開した肉組織の厚さよりも大きな高さを有するブロック本体の下面に設けられたプレート位置決め手段により骨接合プレートをブロック本体に位置決めし、ブロック本体の上面から下面にわたって設けられたプレート結合手段によりブロック本体の下面に骨接合プレートを結合するので、ブロック本体を把持して、このブロック本体と一体化された骨接合プレートを骨折部位の骨面の適切な場所に容易に位置決め操作でき、かつ、切開した肉組織の厚さよりも大きな高さを有するブロック本体により、切開した肉組織などが閉塞することを防止できるので、これを防止するための助手が必要ではなくなり、さらに、ブロック本体の上面から下面にわたって貫通された作業孔を通して、骨接合プレートの固定孔に挿入された止め具により、骨面に対する骨接合プレートのプレート取付作業を容易にできるようにアシストできる。さらに、ブロック本体の上面から下面にわたって設けられたプレート結合手段により、ブロック本体の下面に結合された骨接合プレートを上面側で結合解除操作でき、骨面に固定された骨接合プレートからブロック本体を容易に取り外すことができる。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、切開した肉組織の閉塞方向と対向するブロック本体の側面に設けられた係止部により、切開した肉組織の閉塞動作を係止するので、その閉塞動作を防止するための助手を不要にでき、また、請求項1記載の発明と同様に、ブロック本体により、骨接合プレートを骨面に容易に位置決め操作でき取付作業できるようにアシストでき、さらに、ブロック本体を容易に取り外すことができる。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、骨面上に位置する神経と隣接する予定のブロック本体箇所を、骨接合プレートよりも小さく形成したので、神経に対するブロック本体の干渉を緩和できる。
【0016】
請求項4記載の発明によれば、10mm以上のブロック本体により、切開した肉組織などが閉塞することを確実に防止できるとともに、100mm以下のブロック本体により、このブロック本体と一体化された骨接合プレートを自在に動かして骨接合プレートの位置決め操作などを円滑に行なえる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る骨接合プレート保持具の一実施の形態を示す一部切欠の正面図である。
【図2】同上保持具の下穴穿設作業アシスト状態を示す一部切欠の正面図である。
【図3】同上保持具のネジ螺入作業アシスト状態を示す一部切欠の正面図である。
【図4】同上保持具の平面図である。
【図5】同上保持具の一部切欠の正面図である。
【図6】同上保持具の底面図である。
【図7】同上保持具の側面図である。
【図8】同上保持具に骨接合プレートを取り付けた状態を示す底面図である。
【図9】同上保持具を橈骨上に載せた状態を示す説明図である。
【図10】従来の骨接合プレートの設置状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を、図1乃至図9に示された一実施の形態に基いて詳細に説明する。
【0019】
図9は、例えば手のひら側から見た腕の骨としての橈骨11および神経としての正中神経12などの位置関係を示し、橈骨11の骨遠位端11aで骨折11bが生じた場合は、その骨折部位の骨面の肉組織を切開したり腱を剥がしたりして、露出した橈骨11の骨遠位端11aの骨面に骨接合プレート13を取り付けるが、この骨接合プレート13を骨面に取り付けるプレート取付作業を骨接合プレート保持具14によってアシストする。
【0020】
すなわち、この骨接合プレート保持具14の下面には、図1乃至図3に示されるような骨接合プレート13が位置決めされ、さらに後述するように、この骨接合プレート13に穿設された複数の固定孔に挿入された止め具により骨接合プレート13が取り付けられている。
【0021】
骨接合プレート保持具14は、図1および図7に示されるように、切開した肉組織15の厚さよりも大きな高さを有するブロック本体16を備えている。このブロック本体16の高さは、橈骨の骨折部位の場合は10mm以上40mm以下が望ましいが、他の骨の骨折部位または人体の肉付き状態によっては、10mm以上100mm以下が必要な場合もある。
【0022】
骨接合プレート13は、チタン合金などで成形されている。一方、ブロック本体16は、例えばポリエーテルエーテルケトン(いわゆるPEEK)樹脂などで成形されている。
【0023】
骨接合プレート保持具14のブロック本体16は、図1乃至図5に示されるように骨遠位端11a上に位置する前面に前方へ向かって下降傾斜状の斜面部17が設けられ、図4乃至図7に示されるように長手方向中心線18に対して片側面19と反対側面20とに、円弧状の凹部21がそれぞれ設けられ、これらの凹部21の上部に、切開した肉組織15が閉塞することを係止する係止部21aがそれぞれ設けられている。
【0024】
図5および図6に示されるようにブロック本体16の下面には段差部22が設けられ、この段差部22を介し後方の面23に対して前方の面24が取付相手の骨面に対応する角度に形成されている。
【0025】
すなわち、ブロック本体16は、骨面の形状に応じて形成された骨接合プレート13の一部と対応する下面一部領域に、骨接合プレート13の一部との間に間隙25を形成する段差部22を備え、この段差部22により、図1乃至図3に示されるように骨接合プレート13の骨遠位端側とブロック本体16の下面一部領域との間に間隙25を形成して、この間隙25により、骨接合プレート13の形状のばらつきを吸収し、ばらつきに対応可能となっている。
【0026】
図5乃至図8に示されるように、ブロック本体16の下面には、この下面に骨接合プレート13を位置決めするプレート位置決め手段としての複数の凸部26,27,28が設けられている。
【0027】
すなわち、図8に示されるように、段差部22より後方の面23には、骨接合プレート13の後部を外側から保持する1対の凸部26が一体に成形され、段差部22より前方の面24には、骨接合プレート13の大きな孔31に嵌入される大きな凸部27と、骨接合プレート13の小さな1対の孔32に嵌入される1対の小さな凸部28とが一体に成形されている。
【0028】
図1乃至図3に示されるように、ブロック本体16の上面から下面にわたってプレート結合手段33が設けられ、このプレート結合手段33により、ブロック本体16の下面に位置決めされた骨接合プレート13をブロック本体16の上面側で結合操作可能および結合解除操作可能となっている。
【0029】
すなわち、ブロック本体16の後部においてブロック本体16の上面から下面にわたって貫通された軸孔34に、結合操作軸35が挿入され、この結合操作軸35の上端には操作つまみ36が、下端には、骨接合プレート13の結合孔37に結合される結合子38が取り付けられている。この結合子38は、図1乃至図3に示されるように骨接合プレート13の結合孔37に圧入または螺入することで、骨接合プレート13をブロック本体16の下面に結合できるカムまたはネジである。
【0030】
図1、図4および図6に示されるように、ブロック本体16の上面から下面にわたって複数の大きな作業孔41,42と複数の小さな作業孔43が貫通されている。作業孔41は円形断面の孔であり、作業孔42はプレート位置を調整可能な長溝状の孔である。
【0031】
これらの複数の大きな作業孔41,42の下端は、図8に示されるように、骨接合プレート13に穿設された複数の大きな固定孔51,52にそれぞれ対応して開口され、また、複数の小さな作業孔43の下端は、図8に示されるように、骨接合プレート13に穿設された複数の小さな固定孔53にそれぞれ対応して開口されている。
【0032】
ブロック本体16の大きな作業孔41,42および骨接合プレート13の大きな固定孔51,52は、図2に示されるように橈骨11に下穴54を穿設したり、図3に示されるようにその下穴54に止め具としての固定ネジ55を螺入する際に用いる孔であり、また、ブロック本体16の小さな作業孔43および骨接合プレート13の小さな固定孔53は、骨面に骨接合プレート13を仮止めする止め具としてのワイヤまたはピン(図示せず)を挿通するための小孔である。
【0033】
図9に示されるように、ブロック本体16は、橈骨11の手のひら側に位置する正中神経12に対するブロック本体16の干渉を緩和するために、図4、図6乃至図9に実線で示されるように左右対称形ではなく、ブロック本体16において骨面上に位置する正中神経12と隣接する予定の箇所が、骨接合プレート13よりも小さく形成されている。具体的には、ブロック本体16の長手方向中心線18に対して橈骨11の骨面上の正中神経12に隣接する予定の片側面19をほぼ平行に、かつ長手方向中心線18とこの片側面19との間の最大距離を、長手方向中心線18と反対側面20との間の最大距離より短く形成されている。
【0034】
なお、神経や主要な血管と接触するおそれのない骨折箇所においては、図8に2点鎖線で示されるように、ブロック本体16の外形を骨接合プレート13よりもやや大きく形成しても良い。具体的には、図4および図6に2点鎖線で示されるように、ブロック本体16の長手方向中心線18と片側面19との間の最大距離と、長手方向中心線18と反対側面20との間の最大距離とを、ほぼ等しく形成するようにしても良い。
【0035】
次に、図示された実施の形態の作用効果を説明する。
【0036】
図9は、橈骨11の骨遠位端11aで骨折が生じた場合の、手のひら側の肉組織を切開して露出した橈骨11の骨面に骨接合プレート保持具14を設置した例を示し、そのブロック本体16の下面には上記のように骨接合プレート13が取り付けられている。
【0037】
このとき、図1に示されるように、切開した肉組織15の厚さよりも大きな高さを有するブロック本体16の下面に、プレート位置決め手段の複数の凸部26,27,28により骨接合プレート13が位置決めされ、プレート結合手段33により骨接合プレート13が結合されているので、そのブロック本体16を把持して動かしながら、橈骨11の骨遠位端11aの最適な骨面位置に骨接合プレート13を当接して位置決めした上で、図6に示されるブロック本体16の小さな作業孔43および図8に示される骨接合プレート13の小さな固定孔53に挿入されたワイヤまたはピン(図示せず)により骨接合プレート13を骨面に仮止めする。
【0038】
それから、図2に示されるように、ブロック本体16の大きな作業孔41に挿入されたドリルガイド筒61およびこのドリルガイド筒61の上端に一体化されたゲージ62により、骨接合プレート13の大きな固定孔51より、ドリル63を所定方向に所定深度だけ挿入して、このドリル63により橈骨11に固定ネジ螺入用の下穴54を所定方向に所定深度穿設する。
【0039】
上記ゲージ62には、平板状のゲージ本体部62aに取手62bが設けられているため、この取手62bを把持してドリルガイド筒61を保持し、ゲージ本体部62aに設けられた目盛62cにより、ドリル63の軸部に設けられた骨内削孔深度と連動する目印線63aを読み取る。
【0040】
それから、図3に示されるように、ブロック本体16の大きな作業孔41を通して固定ネジ55およびこの固定ネジ55の頭部のドライバ嵌合穴に嵌着されたドライバ64を挿入し、このドライバ64により骨接合プレート13の大きな固定孔51から橈骨11の下穴54に固定ネジ55を螺入する。
【0041】
このようにして、ブロック本体16の複数の大きな作業孔41,42を利用して挿入した複数の固定ネジ55により、骨接合プレート13の複数の大きな固定孔51,52を骨面に固定する。
【0042】
これらのプレート取付作業中は、図7に示されるようにブロック本体16の片側面19と反対側面20とにそれぞれ設けられた係止部21aにより、切開した肉組織15を係止して、これらの肉組織15が閉塞することを防止できるので、開創器、筋鈎またはカンシなどを用いて切開した状態を保持する必要がない。
【0043】
さらに、ブロック本体16の上面にあるプレート結合手段33の操作つまみ36を結合解除操作して、ブロック本体16の下面に結合された骨接合プレート13の結合孔37から結合子38を摩擦力に抗して引き抜くことで、ブロック本体16と骨接合プレート13との結合を解除し、固定ネジ55で骨面に固定された骨接合プレート13からブロック本体16を取り外す。
【0044】
このように、切開した肉組織15の厚さよりも大きな高さを有するブロック本体16の下面に設けられた凸部26,27,28により骨接合プレート13をブロック本体16に位置決めし、ブロック本体16の上面から下面にわたって設けられたプレート結合手段33によりブロック本体16の下面に骨接合プレート13を結合するので、ブロック本体16を把持して、このブロック本体16と一体化された骨接合プレート13を骨折部位の骨面の適切な場所に容易に位置決め操作でき、かつ、切開した肉組織15の厚さよりも大きな高さを有するブロック本体16により、切開した肉組織15などが骨接合プレート13の上に覆い被さることを防止できるので、これを防止するための助手が必要ではなくなり、人手不足解消に繋がる。
【0045】
特に、10mm以上のブロック本体16の長手方向の片側面19と反対側面20とにより、切開した肉組織15などが手術中に閉塞することを確実に防止できるとともに、100mm以下のブロック本体16により、このブロック本体16と一体化された骨接合プレート13を自在に動かして、この骨接合プレート13の位置決め操作などを円滑に行なえる。
【0046】
同様に、切開した肉組織15の閉塞方向と対向するブロック本体16の片側面19と反対側面20とに設けられた係止部21aにより、閉塞方向に復元しようとする肉組織15を係止するので、切開した肉組織15などが手術中に閉塞動作することを確実に防止できる。この係止部21aによる肉組織閉塞防止効果は、ブロック本体16の高さが切開した肉組織15の厚さとほぼ等しいか、より小さい場合でも得られるため、ブロック本体16の小型化も図れる。
【0047】
また、段差部22により骨接合プレート13の一部とブロック本体16の下面一部領域との間に間隙25を形成するので、この間隙25の範囲内で骨接合プレート13の形状のばらつきに対応できる。
【0048】
そして、ブロック本体16の上面から下面にわたって貫通された作業孔43を通して、骨接合プレート13の固定孔53に挿入されたワイヤまたはピンにより、骨面に骨接合プレート13を仮止めしたり、ブロック本体16の上面から下面にわたって貫通された作業孔41,42を通して、骨接合プレート13の固定孔51,52に挿入された固定ネジ55により、骨面に骨接合プレート13を固定したりするプレート取付作業を容易にできるようにアシストできる。
【0049】
さらに、ブロック本体16の上面から下面にわたって設けられたプレート結合手段33により、ブロック本体16の下面に結合された骨接合プレート13を上面側で結合解除操作でき、骨面に固定された骨接合プレート13からブロック本体16を容易に取り外すことができる。
【0050】
また、ブロック本体16において骨面上に位置する正中神経12と隣接する予定の箇所を、骨接合プレート13よりも小さく形成したので、具体的には、ブロック本体16の長手方向中心線18と橈骨11の骨面上の正中神経12に隣接する予定の片側面19との間の最大距離を、長手方向中心線18と反対側面20との間の最大距離より短くなるように形成したので、橈骨11の骨遠位端11aで生じた骨折11bを接合する場合の、正中神経12に対するブロック本体16の片側面19の干渉を緩和できる。
【0051】
なお、本発明の骨接合プレート保持具14は、腕の橈骨11に用いられる骨接合プレート13に用途が限定されるものではなく、他の骨に用いられる骨接合プレートにも適用できる。橈骨以外の骨に適用する場合は、図4、図6乃至図8に2点鎖線で示されるような外形のブロック本体16を用いても良い。
【0052】
また、前記係止部21aの変形例として、ブロック本体16の横断面をT形に形成することで、その片側面19と反対側面20の各上部に、切開した肉組織15が閉塞することを係止する係止部(図示せず)をそれぞれ設けるようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、骨接合プレート保持具14の製造業、販売業などの産業上において利用する可能性がある。
【符号の説明】
【0054】
11 骨としての橈骨
12 神経としての正中神経
13 骨接合プレート
14 骨接合プレート保持具
15 肉組織
16 ブロック本体
21a 係止部
26,27,28 プレート位置決め手段としての凸部
33 プレート結合手段
41,42,43 作業孔
51,52,53 固定孔
55 止め具としての固定ネジ
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨折部位の骨面に固定される骨接合プレートを保持するための骨接合プレート保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
図10に示されるように、例えば腕の橈骨などの骨遠位端1で骨折2が生じた場合、骨折部位に骨接合プレート3を固定ネジ4により直接固定することで骨折部位を補強し修復する技術がある。
【0003】
このような骨接合プレート3を骨折部位の骨面に固定する際は、神経や血管を傷付けないように注意しながら骨折部位を覆う筋肉や腱などの肉組織を切開したり骨から剥離し、適切な骨面位置に骨接合プレート3を位置決めし、この骨接合プレート3の小さな固定孔5に挿入したワイヤまたはピンにより骨接合プレート3を仮止めし、骨接合プレート3に穿設されている大きな固定孔6を通したドリルにより骨に下穴を開け、この下穴に螺入された固定ネジ4により、骨面に骨接合プレート3を固定している。
【0004】
上記ドリルは、骨接合プレート3の一部に取り付けられた照準ガイド(図示せず)の貫通孔に嵌合されたゲージおよびドリルガイドによって、所定の深さまで所定の角度で案内される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2011−514196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の照準ガイドは、骨接合プレート3の一部に取り付けられた小型プレート部品であるため、切開した肉組織や神経などが、骨接合プレート3および照準ガイドの上に覆い被さり、骨折部位の骨面に骨接合プレート3を位置決めし、仮止めし、固定ネジ4により固定するプレート取付作業を妨げるおそれがある。
【0007】
このため、骨接合プレート3をプレート取付作業する外科医とは別に、プレート取付作業の間、切開した肉組織や神経などを開創器、筋鈎またはカンシにより閉塞しないように開いておく助手が必要であり、そのようにしても、プレート取付作業は容易にならない。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、骨折部位の骨面に対する骨接合プレートのプレート取付作業を容易にできるようにアシストする骨接合プレート保持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載された発明は、肉組織を切開して露出した骨の骨面に骨接合プレートを位置決めし骨接合プレートの固定孔に挿入された止め具により骨接合プレートを骨面に取り付けるプレート取付作業をアシストする骨接合プレート保持具であって、切開した肉組織内に挿入される切開した肉組織の厚さよりも大きな高さを有するブロック本体と、ブロック本体の下面に設けられ、この下面に骨接合プレートを位置決めするプレート位置決め手段と、ブロック本体の上面から下面にわたって設けられ、この下面に位置決めされた骨接合プレートをブロック本体の上面側で結合操作可能および結合解除操作可能なプレート結合手段と、ブロック本体の上面から下面にわたって貫通され、下端が骨接合プレートの固定孔に対応して開口された作業孔とを具備した骨接合プレート保持具である。
【0010】
請求項2に記載された発明は、肉組織を切開して露出した骨の骨面に骨接合プレートを位置決めし骨接合プレートの固定孔に挿入された止め具により骨接合プレートを骨面に取り付けるプレート取付作業をアシストする骨接合プレート保持具であって、切開した肉組織内に挿入されるブロック本体と、切開した肉組織の閉塞方向と対向するブロック本体の側面に設けられ、切開した肉組織の閉塞動作を係止する係止部と、ブロック本体の下面に設けられ、この下面に骨接合プレートを位置決めするプレート位置決め手段と、ブロック本体の上面から下面にわたって設けられ、この下面に位置決めされた骨接合プレートをブロック本体の上面側で結合操作可能および結合解除操作可能なプレート結合手段と、ブロック本体の上面から下面にわたって貫通され、下端が骨接合プレートの固定孔に対応して開口された作業孔とを具備した骨接合プレート保持具である。
【0011】
請求項3に記載された発明は、請求項1または2記載の骨接合プレート保持具におけるブロック本体の、骨面上に位置する神経と隣接する予定の箇所を、骨接合プレートよりも小さく形成したものである。
【0012】
請求項4に記載された発明は、請求項1または3記載の骨接合プレート保持具におけるブロック本体の高さを、10mm以上100mm以下としたものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、切開した肉組織の厚さよりも大きな高さを有するブロック本体の下面に設けられたプレート位置決め手段により骨接合プレートをブロック本体に位置決めし、ブロック本体の上面から下面にわたって設けられたプレート結合手段によりブロック本体の下面に骨接合プレートを結合するので、ブロック本体を把持して、このブロック本体と一体化された骨接合プレートを骨折部位の骨面の適切な場所に容易に位置決め操作でき、かつ、切開した肉組織の厚さよりも大きな高さを有するブロック本体により、切開した肉組織などが閉塞することを防止できるので、これを防止するための助手が必要ではなくなり、さらに、ブロック本体の上面から下面にわたって貫通された作業孔を通して、骨接合プレートの固定孔に挿入された止め具により、骨面に対する骨接合プレートのプレート取付作業を容易にできるようにアシストできる。さらに、ブロック本体の上面から下面にわたって設けられたプレート結合手段により、ブロック本体の下面に結合された骨接合プレートを上面側で結合解除操作でき、骨面に固定された骨接合プレートからブロック本体を容易に取り外すことができる。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、切開した肉組織の閉塞方向と対向するブロック本体の側面に設けられた係止部により、切開した肉組織の閉塞動作を係止するので、その閉塞動作を防止するための助手を不要にでき、また、請求項1記載の発明と同様に、ブロック本体により、骨接合プレートを骨面に容易に位置決め操作でき取付作業できるようにアシストでき、さらに、ブロック本体を容易に取り外すことができる。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、骨面上に位置する神経と隣接する予定のブロック本体箇所を、骨接合プレートよりも小さく形成したので、神経に対するブロック本体の干渉を緩和できる。
【0016】
請求項4記載の発明によれば、10mm以上のブロック本体により、切開した肉組織などが閉塞することを確実に防止できるとともに、100mm以下のブロック本体により、このブロック本体と一体化された骨接合プレートを自在に動かして骨接合プレートの位置決め操作などを円滑に行なえる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る骨接合プレート保持具の一実施の形態を示す一部切欠の正面図である。
【図2】同上保持具の下穴穿設作業アシスト状態を示す一部切欠の正面図である。
【図3】同上保持具のネジ螺入作業アシスト状態を示す一部切欠の正面図である。
【図4】同上保持具の平面図である。
【図5】同上保持具の一部切欠の正面図である。
【図6】同上保持具の底面図である。
【図7】同上保持具の側面図である。
【図8】同上保持具に骨接合プレートを取り付けた状態を示す底面図である。
【図9】同上保持具を橈骨上に載せた状態を示す説明図である。
【図10】従来の骨接合プレートの設置状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を、図1乃至図9に示された一実施の形態に基いて詳細に説明する。
【0019】
図9は、例えば手のひら側から見た腕の骨としての橈骨11および神経としての正中神経12などの位置関係を示し、橈骨11の骨遠位端11aで骨折11bが生じた場合は、その骨折部位の骨面の肉組織を切開したり腱を剥がしたりして、露出した橈骨11の骨遠位端11aの骨面に骨接合プレート13を取り付けるが、この骨接合プレート13を骨面に取り付けるプレート取付作業を骨接合プレート保持具14によってアシストする。
【0020】
すなわち、この骨接合プレート保持具14の下面には、図1乃至図3に示されるような骨接合プレート13が位置決めされ、さらに後述するように、この骨接合プレート13に穿設された複数の固定孔に挿入された止め具により骨接合プレート13が取り付けられている。
【0021】
骨接合プレート保持具14は、図1および図7に示されるように、切開した肉組織15の厚さよりも大きな高さを有するブロック本体16を備えている。このブロック本体16の高さは、橈骨の骨折部位の場合は10mm以上40mm以下が望ましいが、他の骨の骨折部位または人体の肉付き状態によっては、10mm以上100mm以下が必要な場合もある。
【0022】
骨接合プレート13は、チタン合金などで成形されている。一方、ブロック本体16は、例えばポリエーテルエーテルケトン(いわゆるPEEK)樹脂などで成形されている。
【0023】
骨接合プレート保持具14のブロック本体16は、図1乃至図5に示されるように骨遠位端11a上に位置する前面に前方へ向かって下降傾斜状の斜面部17が設けられ、図4乃至図7に示されるように長手方向中心線18に対して片側面19と反対側面20とに、円弧状の凹部21がそれぞれ設けられ、これらの凹部21の上部に、切開した肉組織15が閉塞することを係止する係止部21aがそれぞれ設けられている。
【0024】
図5および図6に示されるようにブロック本体16の下面には段差部22が設けられ、この段差部22を介し後方の面23に対して前方の面24が取付相手の骨面に対応する角度に形成されている。
【0025】
すなわち、ブロック本体16は、骨面の形状に応じて形成された骨接合プレート13の一部と対応する下面一部領域に、骨接合プレート13の一部との間に間隙25を形成する段差部22を備え、この段差部22により、図1乃至図3に示されるように骨接合プレート13の骨遠位端側とブロック本体16の下面一部領域との間に間隙25を形成して、この間隙25により、骨接合プレート13の形状のばらつきを吸収し、ばらつきに対応可能となっている。
【0026】
図5乃至図8に示されるように、ブロック本体16の下面には、この下面に骨接合プレート13を位置決めするプレート位置決め手段としての複数の凸部26,27,28が設けられている。
【0027】
すなわち、図8に示されるように、段差部22より後方の面23には、骨接合プレート13の後部を外側から保持する1対の凸部26が一体に成形され、段差部22より前方の面24には、骨接合プレート13の大きな孔31に嵌入される大きな凸部27と、骨接合プレート13の小さな1対の孔32に嵌入される1対の小さな凸部28とが一体に成形されている。
【0028】
図1乃至図3に示されるように、ブロック本体16の上面から下面にわたってプレート結合手段33が設けられ、このプレート結合手段33により、ブロック本体16の下面に位置決めされた骨接合プレート13をブロック本体16の上面側で結合操作可能および結合解除操作可能となっている。
【0029】
すなわち、ブロック本体16の後部においてブロック本体16の上面から下面にわたって貫通された軸孔34に、結合操作軸35が挿入され、この結合操作軸35の上端には操作つまみ36が、下端には、骨接合プレート13の結合孔37に結合される結合子38が取り付けられている。この結合子38は、図1乃至図3に示されるように骨接合プレート13の結合孔37に圧入または螺入することで、骨接合プレート13をブロック本体16の下面に結合できるカムまたはネジである。
【0030】
図1、図4および図6に示されるように、ブロック本体16の上面から下面にわたって複数の大きな作業孔41,42と複数の小さな作業孔43が貫通されている。作業孔41は円形断面の孔であり、作業孔42はプレート位置を調整可能な長溝状の孔である。
【0031】
これらの複数の大きな作業孔41,42の下端は、図8に示されるように、骨接合プレート13に穿設された複数の大きな固定孔51,52にそれぞれ対応して開口され、また、複数の小さな作業孔43の下端は、図8に示されるように、骨接合プレート13に穿設された複数の小さな固定孔53にそれぞれ対応して開口されている。
【0032】
ブロック本体16の大きな作業孔41,42および骨接合プレート13の大きな固定孔51,52は、図2に示されるように橈骨11に下穴54を穿設したり、図3に示されるようにその下穴54に止め具としての固定ネジ55を螺入する際に用いる孔であり、また、ブロック本体16の小さな作業孔43および骨接合プレート13の小さな固定孔53は、骨面に骨接合プレート13を仮止めする止め具としてのワイヤまたはピン(図示せず)を挿通するための小孔である。
【0033】
図9に示されるように、ブロック本体16は、橈骨11の手のひら側に位置する正中神経12に対するブロック本体16の干渉を緩和するために、図4、図6乃至図9に実線で示されるように左右対称形ではなく、ブロック本体16において骨面上に位置する正中神経12と隣接する予定の箇所が、骨接合プレート13よりも小さく形成されている。具体的には、ブロック本体16の長手方向中心線18に対して橈骨11の骨面上の正中神経12に隣接する予定の片側面19をほぼ平行に、かつ長手方向中心線18とこの片側面19との間の最大距離を、長手方向中心線18と反対側面20との間の最大距離より短く形成されている。
【0034】
なお、神経や主要な血管と接触するおそれのない骨折箇所においては、図8に2点鎖線で示されるように、ブロック本体16の外形を骨接合プレート13よりもやや大きく形成しても良い。具体的には、図4および図6に2点鎖線で示されるように、ブロック本体16の長手方向中心線18と片側面19との間の最大距離と、長手方向中心線18と反対側面20との間の最大距離とを、ほぼ等しく形成するようにしても良い。
【0035】
次に、図示された実施の形態の作用効果を説明する。
【0036】
図9は、橈骨11の骨遠位端11aで骨折が生じた場合の、手のひら側の肉組織を切開して露出した橈骨11の骨面に骨接合プレート保持具14を設置した例を示し、そのブロック本体16の下面には上記のように骨接合プレート13が取り付けられている。
【0037】
このとき、図1に示されるように、切開した肉組織15の厚さよりも大きな高さを有するブロック本体16の下面に、プレート位置決め手段の複数の凸部26,27,28により骨接合プレート13が位置決めされ、プレート結合手段33により骨接合プレート13が結合されているので、そのブロック本体16を把持して動かしながら、橈骨11の骨遠位端11aの最適な骨面位置に骨接合プレート13を当接して位置決めした上で、図6に示されるブロック本体16の小さな作業孔43および図8に示される骨接合プレート13の小さな固定孔53に挿入されたワイヤまたはピン(図示せず)により骨接合プレート13を骨面に仮止めする。
【0038】
それから、図2に示されるように、ブロック本体16の大きな作業孔41に挿入されたドリルガイド筒61およびこのドリルガイド筒61の上端に一体化されたゲージ62により、骨接合プレート13の大きな固定孔51より、ドリル63を所定方向に所定深度だけ挿入して、このドリル63により橈骨11に固定ネジ螺入用の下穴54を所定方向に所定深度穿設する。
【0039】
上記ゲージ62には、平板状のゲージ本体部62aに取手62bが設けられているため、この取手62bを把持してドリルガイド筒61を保持し、ゲージ本体部62aに設けられた目盛62cにより、ドリル63の軸部に設けられた骨内削孔深度と連動する目印線63aを読み取る。
【0040】
それから、図3に示されるように、ブロック本体16の大きな作業孔41を通して固定ネジ55およびこの固定ネジ55の頭部のドライバ嵌合穴に嵌着されたドライバ64を挿入し、このドライバ64により骨接合プレート13の大きな固定孔51から橈骨11の下穴54に固定ネジ55を螺入する。
【0041】
このようにして、ブロック本体16の複数の大きな作業孔41,42を利用して挿入した複数の固定ネジ55により、骨接合プレート13の複数の大きな固定孔51,52を骨面に固定する。
【0042】
これらのプレート取付作業中は、図7に示されるようにブロック本体16の片側面19と反対側面20とにそれぞれ設けられた係止部21aにより、切開した肉組織15を係止して、これらの肉組織15が閉塞することを防止できるので、開創器、筋鈎またはカンシなどを用いて切開した状態を保持する必要がない。
【0043】
さらに、ブロック本体16の上面にあるプレート結合手段33の操作つまみ36を結合解除操作して、ブロック本体16の下面に結合された骨接合プレート13の結合孔37から結合子38を摩擦力に抗して引き抜くことで、ブロック本体16と骨接合プレート13との結合を解除し、固定ネジ55で骨面に固定された骨接合プレート13からブロック本体16を取り外す。
【0044】
このように、切開した肉組織15の厚さよりも大きな高さを有するブロック本体16の下面に設けられた凸部26,27,28により骨接合プレート13をブロック本体16に位置決めし、ブロック本体16の上面から下面にわたって設けられたプレート結合手段33によりブロック本体16の下面に骨接合プレート13を結合するので、ブロック本体16を把持して、このブロック本体16と一体化された骨接合プレート13を骨折部位の骨面の適切な場所に容易に位置決め操作でき、かつ、切開した肉組織15の厚さよりも大きな高さを有するブロック本体16により、切開した肉組織15などが骨接合プレート13の上に覆い被さることを防止できるので、これを防止するための助手が必要ではなくなり、人手不足解消に繋がる。
【0045】
特に、10mm以上のブロック本体16の長手方向の片側面19と反対側面20とにより、切開した肉組織15などが手術中に閉塞することを確実に防止できるとともに、100mm以下のブロック本体16により、このブロック本体16と一体化された骨接合プレート13を自在に動かして、この骨接合プレート13の位置決め操作などを円滑に行なえる。
【0046】
同様に、切開した肉組織15の閉塞方向と対向するブロック本体16の片側面19と反対側面20とに設けられた係止部21aにより、閉塞方向に復元しようとする肉組織15を係止するので、切開した肉組織15などが手術中に閉塞動作することを確実に防止できる。この係止部21aによる肉組織閉塞防止効果は、ブロック本体16の高さが切開した肉組織15の厚さとほぼ等しいか、より小さい場合でも得られるため、ブロック本体16の小型化も図れる。
【0047】
また、段差部22により骨接合プレート13の一部とブロック本体16の下面一部領域との間に間隙25を形成するので、この間隙25の範囲内で骨接合プレート13の形状のばらつきに対応できる。
【0048】
そして、ブロック本体16の上面から下面にわたって貫通された作業孔43を通して、骨接合プレート13の固定孔53に挿入されたワイヤまたはピンにより、骨面に骨接合プレート13を仮止めしたり、ブロック本体16の上面から下面にわたって貫通された作業孔41,42を通して、骨接合プレート13の固定孔51,52に挿入された固定ネジ55により、骨面に骨接合プレート13を固定したりするプレート取付作業を容易にできるようにアシストできる。
【0049】
さらに、ブロック本体16の上面から下面にわたって設けられたプレート結合手段33により、ブロック本体16の下面に結合された骨接合プレート13を上面側で結合解除操作でき、骨面に固定された骨接合プレート13からブロック本体16を容易に取り外すことができる。
【0050】
また、ブロック本体16において骨面上に位置する正中神経12と隣接する予定の箇所を、骨接合プレート13よりも小さく形成したので、具体的には、ブロック本体16の長手方向中心線18と橈骨11の骨面上の正中神経12に隣接する予定の片側面19との間の最大距離を、長手方向中心線18と反対側面20との間の最大距離より短くなるように形成したので、橈骨11の骨遠位端11aで生じた骨折11bを接合する場合の、正中神経12に対するブロック本体16の片側面19の干渉を緩和できる。
【0051】
なお、本発明の骨接合プレート保持具14は、腕の橈骨11に用いられる骨接合プレート13に用途が限定されるものではなく、他の骨に用いられる骨接合プレートにも適用できる。橈骨以外の骨に適用する場合は、図4、図6乃至図8に2点鎖線で示されるような外形のブロック本体16を用いても良い。
【0052】
また、前記係止部21aの変形例として、ブロック本体16の横断面をT形に形成することで、その片側面19と反対側面20の各上部に、切開した肉組織15が閉塞することを係止する係止部(図示せず)をそれぞれ設けるようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、骨接合プレート保持具14の製造業、販売業などの産業上において利用する可能性がある。
【符号の説明】
【0054】
11 骨としての橈骨
12 神経としての正中神経
13 骨接合プレート
14 骨接合プレート保持具
15 肉組織
16 ブロック本体
21a 係止部
26,27,28 プレート位置決め手段としての凸部
33 プレート結合手段
41,42,43 作業孔
51,52,53 固定孔
55 止め具としての固定ネジ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肉組織を切開して露出した骨の骨面に骨接合プレートを位置決めし骨接合プレートの固定孔に挿入された止め具により骨接合プレートを骨面に取り付けるプレート取付作業をアシストする骨接合プレート保持具であって、
切開した肉組織内に挿入される切開した肉組織の厚さよりも大きな高さを有するブロック本体と、
ブロック本体の下面に設けられ、この下面に骨接合プレートを位置決めするプレート位置決め手段と、
ブロック本体の上面から下面にわたって設けられ、この下面に位置決めされた骨接合プレートをブロック本体の上面側で結合操作可能および結合解除操作可能なプレート結合手段と、
ブロック本体の上面から下面にわたって貫通され、下端が骨接合プレートの固定孔に対応して開口された作業孔と
を具備したことを特徴とする骨接合プレート保持具。
【請求項2】
肉組織を切開して露出した骨の骨面に骨接合プレートを位置決めし骨接合プレートの固定孔に挿入された止め具により骨接合プレートを骨面に取り付けるプレート取付作業をアシストする骨接合プレート保持具であって、
切開した肉組織内に挿入されるブロック本体と、
切開した肉組織の閉塞方向と対向するブロック本体の側面に設けられ、切開した肉組織の閉塞動作を係止する係止部と、
ブロック本体の下面に設けられ、この下面に骨接合プレートを位置決めするプレート位置決め手段と、
ブロック本体の上面から下面にわたって設けられ、この下面に位置決めされた骨接合プレートをブロック本体の上面側で結合操作可能および結合解除操作可能なプレート結合手段と、
ブロック本体の上面から下面にわたって貫通され、下端が骨接合プレートの固定孔に対応して開口された作業孔と
を具備したことを特徴とする骨接合プレート保持具。
【請求項3】
ブロック本体は、
骨面上に位置する神経と隣接する予定の箇所を、骨接合プレートよりも小さく形成した
ことを特徴とする請求項1または2記載の骨接合プレート保持具。
【請求項4】
ブロック本体の高さは、10mm以上100mm以下である
ことを特徴とする請求項1または3記載の骨接合プレート保持具。
【請求項1】
肉組織を切開して露出した骨の骨面に骨接合プレートを位置決めし骨接合プレートの固定孔に挿入された止め具により骨接合プレートを骨面に取り付けるプレート取付作業をアシストする骨接合プレート保持具であって、
切開した肉組織内に挿入される切開した肉組織の厚さよりも大きな高さを有するブロック本体と、
ブロック本体の下面に設けられ、この下面に骨接合プレートを位置決めするプレート位置決め手段と、
ブロック本体の上面から下面にわたって設けられ、この下面に位置決めされた骨接合プレートをブロック本体の上面側で結合操作可能および結合解除操作可能なプレート結合手段と、
ブロック本体の上面から下面にわたって貫通され、下端が骨接合プレートの固定孔に対応して開口された作業孔と
を具備したことを特徴とする骨接合プレート保持具。
【請求項2】
肉組織を切開して露出した骨の骨面に骨接合プレートを位置決めし骨接合プレートの固定孔に挿入された止め具により骨接合プレートを骨面に取り付けるプレート取付作業をアシストする骨接合プレート保持具であって、
切開した肉組織内に挿入されるブロック本体と、
切開した肉組織の閉塞方向と対向するブロック本体の側面に設けられ、切開した肉組織の閉塞動作を係止する係止部と、
ブロック本体の下面に設けられ、この下面に骨接合プレートを位置決めするプレート位置決め手段と、
ブロック本体の上面から下面にわたって設けられ、この下面に位置決めされた骨接合プレートをブロック本体の上面側で結合操作可能および結合解除操作可能なプレート結合手段と、
ブロック本体の上面から下面にわたって貫通され、下端が骨接合プレートの固定孔に対応して開口された作業孔と
を具備したことを特徴とする骨接合プレート保持具。
【請求項3】
ブロック本体は、
骨面上に位置する神経と隣接する予定の箇所を、骨接合プレートよりも小さく形成した
ことを特徴とする請求項1または2記載の骨接合プレート保持具。
【請求項4】
ブロック本体の高さは、10mm以上100mm以下である
ことを特徴とする請求項1または3記載の骨接合プレート保持具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2013−66649(P2013−66649A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208807(P2011−208807)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(595120806)株式会社エム・イー・システム (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(595120806)株式会社エム・イー・システム (6)
【Fターム(参考)】
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