骨接合材料の切断具
【課題】骨接合材料の切断部に亀裂が生じないように且つ切断面が稜線部分を有する山形の凸面とならないように骨接合材料を切断できる切断具を提供する。
【解決手段】細長い骨接合材料をその長さ方向と交差する方向に切断するための切断具であって、互いに重なって相対的に逆方向に移動し得る二つの部材1,2を備え、一方の部材1には骨接合材料を保持する材料保持部3Aが少なくとも設けられ、他方の部材2には骨接合材料を切断する材料切断部、あるいは材料保持部を兼ねた材料切断部4Bが設けられている切断具とする。骨接合材料を一方の部材の材料保持部に保持させて他方の部材の材料切断具で切断すると、骨接合材料が切断時に殆ど変形しないため切断部に亀裂が発生しなくなり、しかも骨接合材料の切断は、材料切断部が材料保持部の一端から他端まで相対的に移動し終えたときに完了するので、切断面は平坦面となって稜線部分は形成されない。
【解決手段】細長い骨接合材料をその長さ方向と交差する方向に切断するための切断具であって、互いに重なって相対的に逆方向に移動し得る二つの部材1,2を備え、一方の部材1には骨接合材料を保持する材料保持部3Aが少なくとも設けられ、他方の部材2には骨接合材料を切断する材料切断部、あるいは材料保持部を兼ねた材料切断部4Bが設けられている切断具とする。骨接合材料を一方の部材の材料保持部に保持させて他方の部材の材料切断具で切断すると、骨接合材料が切断時に殆ど変形しないため切断部に亀裂が発生しなくなり、しかも骨接合材料の切断は、材料切断部が材料保持部の一端から他端まで相対的に移動し終えたときに完了するので、切断面は平坦面となって稜線部分は形成されない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は骨接合材料の切断具に関し、更に詳しくは、骨接合材料の切断部に亀裂が生じないように且つ切断面が山形の凸面にならないように骨接合材料を切断できる切断具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、生体内分解吸収性ポリマー又はバイオセラミックス粉体を分散させた生体内分解吸収性ポリマーからなる複合材料であって、該ポリマーの分子鎖もしくは結晶を圧縮配向させて強度を高め、ピンやスクリューに加工して骨接合材料として使用するものが知られている(特許文献1)。
【0003】
このようなピンやスクリューなどの細長い骨接合材料は、使用時に骨接合部位に適した長さに切断しなければならない場合があるが、そのような場合には、ニッパー形状のピンカッター(以下、従来のピンカッターと記す)などの従来から汎用されている切断具を用いて骨接合材料を切断するのが一般的であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−234243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、分子鎖等が配向した例えばピン形状の骨接合材料Pを図13(a)に示すように従来のピンカッターCで切断しようとすると、骨接合材料Pが従来のピンカッターCの双方の刃c,cで挟圧されて、骨接合材料Pの断面形状が図13(b)に示すように略楕円形に変形し、分子鎖等の配向方向に延びる亀裂101が切断部に発生する恐れがあった。また、骨接合材料Pがバイオセラミックス粉体を分散させた生体内分解吸収性ポリマーからなる分子鎖の配向した骨接合材料である場合には、含有されたバイオセラミックス紛体によって骨接合材料Pの柔軟性が劣るため、バイオセラミックス粉体を含有しない骨接合材料よりも亀裂101が発生しやすくなるという不都合があった。
【0006】
しかも、従来のピンカッターCの双方の刃c,cが骨接合材料Pの切断部の中間部で閉じて切断が完了するため、骨接合材料Pの切断面は平坦面にならず、図14(a)に示すような山形の凸面102になり、図14(b)に示すように凸面102(切断面)の中間部に稜線部分103が形成されることになるので、このように切断された骨接合材料Pを生体内に埋入して骨折部位や骨切り部位を接合すると、尖った稜線部分103で生体組織が物理的に刺激されて炎症を起こす恐れもあった。
【0007】
本発明は上記事情の下になされたもので、その解決しようとする課題は、骨接合材料の切断部に亀裂が生じないように、且つ、切断面が稜線部分を有する山形の凸面とならないように骨接合材料を切断できる切断具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る骨接合材料の切断具は、細長い骨接合材料をその長さ方向と交差する方向に切断するための切断具であって、互いに重なって相対的に逆方向に移動し得る二つの部材を備え、一方の部材には骨接合材料を保持する材料保持部が少なくとも設けられ、他方の部材には骨接合材料を切断する材料切断部が設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の切断具においては、二つの部材が相対的に逆方向に回動し得るように一点で枢着されていることが望ましい。そして、材料保持部が、挿入された骨接合材料を保持する孔状の材料保持部であることが望ましく、直径が異なる複数の孔状の材料保持部が一方の部材に設けられることも望ましい。また、孔状の材料保持部の内面には、挿入される骨接合材料の外面の雄ネジに対応した雌ネジが形成されていてもよい。
【0010】
更に、本発明の切断具においては、材料切断部が、材料保持部を兼ねた孔状の材料切断部であることが望ましく、また、切断する骨接合材料の長さを確認するための長さ計測部が二つの部材のいずれかに設けられていることも望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の切断具は、骨接合材料を一方の部材に設けられた材料保持部に保持させ、双方の部材を相対的に逆方向に移動させて、他方の部材に設けられた材料切断部で骨接合材料を切断するものであり、このように骨接合材料を一方の部材の材料保持部に保持させたまま切断すると、骨接合材料が切断時に殆ど変形しないため、たとえ骨接合材料が分子鎖等が配向しているものであっても、切断部に亀裂が発生しなくなる。しかも、骨接合材料の切断は、他方の部材の材料切断部が一方の部材の材料保持部の一端から他端まで相対的に移動し終えたときに完了するので、切断面は平坦面となり、尖った稜線部分は形成されない。従って、本発明の切断具で切断した骨接合材料を生体内に埋入して骨折部位や骨切り部位を接合すれば、生体組織が物理的に刺激されて炎症を起こす恐れも解消される。
【0012】
本発明の切断具において、二つの部材が相対的に逆方向に回動し得るように一点で枢着されているものは、従来のピンカッターと同様に手で握って双方の部材を回動操作できるので、操作性が良好である。
【0013】
そして、材料保持部が、挿入された骨接合材料を保持する孔状の材料保持部である切断具は、挿入された骨接合材料を周囲から均等に保持できるため、切断時の骨接合材料の変形を充分抑えて亀裂の発生をなくすことができる。
【0014】
また、直径が異なる複数の孔状の材料保持部が一方の部材に設けられている切断具は、外径が異なる骨接合材料であっても、その外径に対応した直径を有する孔状の材料保持部を選択し、その材料保持部に骨接合材料を挿入、保持させて切断できるため、汎用性が高くなる。
【0015】
また、孔状の材料保持部の内面に、挿入される骨接合材料の外面の雄ネジに対応した雌ネジを形成した切断具は、スクリュー形状の骨接合材料(骨接合スクリュー)を材料保持部にねじ込んで確実に保持固定できるため、骨接合スクリューの切断に極めて有効である。
【0016】
更に、材料切断部が材料保持部を兼ねた孔状の材料切断部とされた切断具は、骨接合材料の切断すべき箇所の両側を、材料保持部と、材料保持部を兼ねた孔状の材料切断部により保持して、該材料切断部で切断できるため、亀裂の発生や稜線部分の形成をより確実になくすことができる。
【0017】
また、切断する骨接合材料の長さを確認するための長さ計測部が二つの部材のいずれかに設けられている切断具は、この長さ計測部で骨接合材料の切断すべき長さを確認しながら切断できるため、切断寸法を間違う心配が解消される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る切断具の説明図であって、(a)は切断前の状態を、(b)は切断後の状態を示すものである。
【図2】本発明の他の実施形態に係る切断具の説明図であって、(a)は切断前の状態を、(b)は切断後の状態を示すものである。
【図3】本発明の更に他の実施形態に係る切断具の説明図であって、(a)は切断前の状態を、(b)は切断後の状態を示すものである。
【図4】本発明の更に他の実施形態に係る切断具の説明図であって、(a)は切断前の状態を、(b)は切断後の状態を示すものである。
【図5】本発明の更に他の実施形態に係る切断具の説明図であって、(a)は切断前の状態を、(b)は切断後の状態を示すものである。
【図6】本発明の更に他の実施形態に係る切断具の説明図であって、(a)は切断前の状態を、(b)は切断後の状態を示すものである。
【図7】本発明の更に他の一層具体的な実施形態に係る切断具の平面図であって、切断前の状態を示すものである。
【図8】同実施形態に係る切断具の平面図であって、切断後の状態を示すものである。
【図9】図7のA−A線に沿った拡大部分断面図である。
【図10】本発明の更に他の一層具体的な実施形態に係る切断具の平面図であって、切断前の状態を示すものである。
【図11】同実施形態に係る切断具の平面図であって、切断後の状態を示すものである。
【図12】図10のB−B線に沿った拡大部分断面図である。
【図13】従来のピンカッターで骨接合材料を切断する場合の説明図であって、(a)は切断前の状態を、(b)は切断中の状態を示すものである。
【図14】(a)は従来のピンカッターで切断された骨接合材料の切断部の側面図、(b)は同切断部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づいて、本発明に係る骨接合材料の切断具を説明する。
【0020】
図1は本発明の一実施形態に係る切断具の説明図であって、(a)は切断前の状態を、(b)は切断後の状態を示している。この切断具は、金属製の方形板状の二つの部材1,2を具備したもので、一方の部材1の両側にはガイド溝が1a,1aが設けられている。そして、これらのガイド溝1a,1aには、他方の部材2の両側縁が摺動自在に嵌挿され、双方の部材1,2が互いに重なって相対的に逆方向(図1では上下逆方向)に直線的に移動できるようになっている。
【0021】
一方の部材1には、切断すべき円形断面を有するピン形状の骨接合材料(骨接合ピン)の外径と実質的に同一の直径を有する円形孔状の材料保持部3Aが設けられ、この材料保持部3Aに挿入されるピン形状の骨接合材料を周囲から均等に保持できるようになっている。そして、他方の部材2の移動方向の一端(図1では下端)には、刃状の材料切断部4Aが設けられている。
【0022】
上記構成の切断具は、ピン形状の骨接合材料(不図示)を、一方の部材1に設けられた円形孔状の材料保持部3Aに保持させ、双方の部材1,2を相対的に上下逆方向に直線的に移動させて、他方の部材2に設けられた刃状の材料切断部4Aで骨接合材料を切断するものである。このように骨接合材料を一方の部材1の円形孔状の材料保持部3Aに保持させたまま切断すると、骨接合材料が切断時に殆ど変形しないため、分子鎖等が配向している骨接合材料であっても、切断部に亀裂が発生しなくなる。しかも、骨接合材料の切断は、他方の部材2の刃状の材料切断部4Aが一方の部材1の円形孔状の材料保持部3Aの一端(上端)から他端(下端)まで相対的に移動し終えたときに完了するので、切断面は平坦面となり、尖った稜線部分が形成されることはない。従って、この切断具で切断した骨接合材料を生体内に埋入して骨折部位や骨切り部位を接合すれば、従来のように切断部の尖った稜線部分で生体組織が物理的に刺激されて炎症を起こす恐れを解消することもできる。
【0023】
一方の部材1に設けられる材料保持部は、図1に示すような円形孔状の材料保持部3Aに限定されるものではなく、例えばピン形状の骨接合材料を周囲から均等に保持できる正多角形の孔状の材料保持部であってもよい。また、ピン形状の骨接合材料が円形以外の断面形状を有する場合は、その断面形状に合致した孔形状の材料保持部とすれば良い。
また、材料保持部は、骨接合材料を安定良く保持して切断時に変形を生じさせにくいものであれば、孔状の材料保持部でなくてもよい。図2〜図4に示す実施形態の切断具は、そのような孔状以外の形状の材料保持部を一方の部材1に設けたものである。
【0024】
即ち、図2に示す実施形態の切断具は、ピン形状の骨接合材料Pを左右両端と下端の3箇所で線接触又は点接触して変形しにくいように安定良く保持できる方形凹状の材料保持部3Bを一方の部材1に設けたものであり、図3に示す実施形態の切断具は、ピン形状の骨接合材料Pを左右斜め下側の2箇所で線接触又は点接触して変形しにくいように安定良く保持できるV形凹状の材料保持部3Cを一方の部材1に設けたものであり、図4に示す実施形態の切断具は、ピン形状の骨接合材料Pの下側半周に面接触して変形しにくいように安定良く保持できる略U形凹状の材料保持部3Dを一方の部材1に設けたものである。なお、これらの切断具の他の構成は、前記図1に示す実施形態の切断具と同様であるので、図2〜図4において同一部材に同一符号を付して重複説明を省略する。
【0025】
上記のような材料保持部3B,3C,3Dを一方の部材1に設けた図2〜図4の切断具も、円形孔状の材料保持部3Aを一方の部材1に設けた図1の切断具と同様に、双方の部材1,2を相対的に上下逆方向に移動させて切断するときにピン形状の骨接合材料Pが殆ど変形しないため、切断部の亀裂や尖った稜線部分が生じないように切断することができる。
【0026】
図1〜図4に示す切断具はいずれも、切断専用の刃状の材料切断部4Aを他方の部材2の移動方向の一端(図1〜図4では下端)に設けたものであるが、材料切断部は材料保持部を兼ねたものでもよい。
図5はそのような実施形態の切断具を示したもので、他方の部材2には、一方の部材1の円形孔状の材料保持部3Aと同一の直径を有する、材料保持部を兼ねた円形孔状の材料切断部4Bが設けられている。この切断具の他の構成は、図1〜図4に示す切断具と同様であるので、図5において同一部材に同一符号を付して重複説明を省略する。
【0027】
斯かる切断具は、図5(a)に示すように、一方の部材1の円形孔状の材料保持部3Aと、他方の部材2の材料保持部を兼ねた円形孔状の材料切断部4Bを重ねた状態で、これらの材料保持部3Aと材料切断部4Bにピン形状の骨接合材料(不図示)を挿入して保持させ、図5(b)に示すように、双方の部材1,2を相対的に上下逆方向に直線的に移動させて骨接合材料を切断するものである。このように双方の部材1,2を上下逆方向に移動させると、材料保持部を兼ねた円形孔状の材料切断部4Bの移動方向と反対側の半周部分が剪断刃の働きをして骨接合材料を切断することができ、その際、一方の部材1に設けられた円形孔状の材料保持部3Aの移動方向と反対側の半周部分も剪断刃として働くことになる。この切断具は、骨接合材料の切断すべき箇所の両側を、円形孔状の材料保持部3Aと、材料保持部を兼ねた円形孔状の材料切断部4Bで保持して、骨接合材料を殆ど変形させることなく切断できるため、亀裂の発生や稜線部分の形成をより確実になくすことができる。
【0028】
図1〜図5に示す切断具では、二つの部材1,2が相対的に逆方向に直線的に移動するように構成しているが、二つの部材1,2が相対的に逆方向に回動するように一点で枢着してもよい。図6はそのような実施形態の切断具の概略的な説明図であって、(a)は切断前の状態を、(b)切断後の状態を示している。
【0029】
即ち、図6に示す切断具は、二つの部材1,2を重ねて一点Oで枢着することにより、二つの部材1,2が一点Oを中心として相対的に逆方向に回動し得るように構成したものであって、一方の部材1には、挿入されるピン形状の骨接合材料(不図示)を保持する円形孔状の材料保持部3Aが設けられており、他方の部材2には、上記材料保持部3Aの直径と同一の直径を有する、材料保持部を兼ねた円形孔状の材料切断部4Bが、上記材料保持部3Aと重なる位置に設けられている。そして、双方の部材1,2には、回動操作を行うためのアーム1b,2bがそれぞれ突設されている。
【0030】
このような切断具は、図6(a)に示すように、一方の部材1の円形孔状の材料保持部3Aと、他方の部材2の材料保持部を兼ねた円形孔状の材料切断部4Bを重ねた状態で、これらの材料保持部3Aと材料切断部4Bにピン形状の骨接合材料(不図示)を挿入して保持させ、双方のアーム1b,2bを手で握って、図6(b)に示すように双方の部材1,2を相対的に逆方向に回動させることにより、円形孔状の材料切断部4Bの回動方向と反対側の半周部分を剪断刃として骨接合材料を切断するものである。このとき、円形孔状の材料保持部3Aの回動方向と反対側の半周部分も剪断刃として機能することは、前述した通りである。
【0031】
この切断具は、双方のアーム1b,2bを従来のピンカッターと同様に手で握って双方の部材1,2を回動操作できるので、操作性が良好であり、図5に示す切断具と同様に、骨接合材料の切断すべき箇所の両側を、円形孔状の材料保持部3Aと、材料保持部を兼ねた円形孔状の材料切断部4Bで保持して、骨接合材料を殆ど変形させることなく切断できるので、切断部分の亀裂の発生や稜線部分の形成をより確実になくすことができるものである。
【0032】
図7,図8は本発明の更に他の実施形態に係る一層具体的な切断具の平面図であって、図7は切断前の状態を、図8は切断後の状態をそれぞれ示しており、また、図9は図7のA−A線に沿った拡大部分断面図である。
【0033】
この切断具は、手で握る一対のアーム部5,5を備えたニッパー型のものであって、一方のアーム部5の先端には、前記一方の部材1に相当するヘッド部11が一体に形成されており、他方のアーム部5の先端には、前記他方の部材2に相当するヘッド部12が形成されている。これらのヘッド部11,12は上下に重ねられて、枢支ピン6で相対的に逆方向に回動できるように枢着されており、双方のアーム部5,5間に張設された圧縮コイルバネ7によって、常時はアーム部5,5が離間した状態に維持されている。
【0034】
上側のヘッド部11には、直径が異なる複数(本実施形態では3つ)の大、中、小の円形孔状の材料保持部3A1,3A2,3A3が相互間隔をあけて、枢支ピン6を中心とする円弧上に位置して設けられており、これに対応して、下側のヘッド部12にも、上記材料保持部3A1,3A2,3A3と同一の直径を有する大、中、小の円形孔状の材料切断部4B1,4B2,4B3(材料保持部を兼ねた材料切断部)が設けられている。そして、上側のヘッド部11の材料保持部3A1,3A2,3A3と下側のヘッド部12の材料切断部4B1,4B2,4B3は、図7に示すようにアーム部5,5が離間した状態で、上下に重なり合うようになっている。
【0035】
下側のヘッド部12は、その先端部12aが略二等辺三角形状に突き出して厚肉化されており、この先端部12aの上面と上側のヘッド部11の上面が面一になっている。そして、この先端部12aには、切断する骨接合材料の長さを確認するための長さ計測部として、目盛の付いた細長い起倒自在な計測板8が取付けられている。即ち、この計測板8の脚ピン8aが先端部12aの孔に嵌着固定され、この脚ピン8aの小さな有底穴に内装された小さな圧縮スプリング8bとボール8cによって、計測板8の下端が下方から押圧された状態で、計測板8が取付けられている。従って、計測板8は、後向きに力を加えて倒さない限り起立した状態を維持し、後向きに力を加えて倒すと、計測板8の下端側部が圧縮スプリング8bとボール8cで下方から押圧されて、計測盤8を引き上げない限り倒れた状態を維持するようになっている。
【0036】
このような切断具は、外径が大、中、小と異なる3種類のピン形状の骨接合材料でも、その外径に対応した直径を有する大、中、小いずれかの円形孔状の材料保持部3A1,3A2又は3A3を選択し、その選択した材料保持部とその真下の円形孔状の材料切断部4B1,4B2又は4B3(材料保持部を兼ねた材料切断部)に骨接合材料を挿入、保持させ、双方のアーム部5,5を手で握って、図8に示すように、上側のヘッド部11と下側のヘッド部12を枢支ピン6を中心に相対的に逆方向に回動させることにより、骨接合材料を亀裂や稜線部分が生じないように確実に切断することができる。このとき、計測板8の目盛を見て骨接合材料の切断すべき長さを確認しながら切断できるため、切断寸法を間違う心配はない。そして、使用後、計測板8を倒せば嵩が低くなるので、邪魔になることもない。なお、上側のヘッド部11の材料保持部3A1,3A2,3A3の近傍にそれぞれの孔径を表示しておくと、それぞれの孔径よりも外径が小さいピン形状の骨接合材料を間違って挿入する心配がなくなるので好ましい。
【0037】
上側のヘッド部11に設ける円形孔状の材料保持部の個数、及び、これに対応して下側のヘッド部12に設ける円形孔状の材料切断部の個数は、1つでも、2つでも、4つ以上でもよいが、これらの材料保持部及び材料切断部の個数を多く設ければ、外径が異なる多種類の骨接合材料を切断できるので、汎用性が高くなる利点がある。
【0038】
図10,図11は本発明の更に他の実施形態に係る具体的な切断具の平面図であって、図10は切断前の状態を、図11は切断後の状態をそれぞれ示しており、また、図12は図10のB−B線に沿った拡大部分断面図である。
【0039】
この切断具は、外面に雄ネジを形成したスクリュー形状の骨接合材料(骨接合スクリュー)を切断する切断具であって、手で握る一対のアーム部5,5を備えたニッパー型のものである。この切断具も、一方のアーム部5の先端に、前記一方の部材1に相当するヘッド部11が一体に形成されており、他方のアーム部5の先端に、前記他方の部材2に相当するヘッド部12が形成されている。これらのヘッド部11,12は、ヘッド部11を下側に、ヘッド部12を上側にして重ねられ、枢支ピン6で相対的に逆方向に回動できるように枢着されている。そして、双方のアーム部5,5間に張設された圧縮コイルバネ7によって、常時はアーム部5,5が離間した状態に維持されている。
【0040】
この切断具の上側のヘッド部12の先端部には、切断すべきスクリュー形状の骨接合材料の雄ネジの外径と実質的に同一の直径を有する円形孔状の材料切断部4Bが設けられており、下側のヘッド部11には、骨接合材料外面の雄ネジに対応する雌ネジを内面に形成したネジ孔状の材料保持部3Eが形成されている。そして、上側のヘッド部11の材料切断部4Bと下側のヘッド部12の材料保持部3Eは、図10に示すようにアーム部5,5が離間した状態で、上下に重なり合うようになっている。従って、図12に仮想線で示すように、スクリュー形状の骨接合材料Sを材料保持部3Eに下方からねじ込んで先端部分を材料切断部4bに挿入すると、骨接合材料Sをガタツキなく確実に保持固定できるようになっている。
【0041】
この切断具の上側のヘッド部12には、スクリュー形状の骨接合材料の切断すべき長さ(切除すべき長さ)を確認するための長さ計測部として、低段部80aと中段部80bと上段部80cとからなる段差面が形成されており、この実施形態では、低段部80aの上面がヘッド部12の下面から2mmの高さとされ、中段部80bの上面がヘッド部12の下面から3mmの高さとされ、上段部80cの上面がヘッド部12の下面から5mmの高さとされている。
【0042】
このような切断具は、スクリュー形状の骨接合材料Sを、その先端が上側のヘッド部12の円形孔状の材料切断部4Bに突入するように、下方からヘッド部11のネジ孔状の材料保持部3Eにねじ込んでガタツキなく確実に保持固定し、双方のアーム部5,5を手で握って、図11に示すように、上側のヘッド部12と下側のヘッド部11を枢支ピン6を中心に相対的に逆方向に回動させることにより、スクリュー形状の骨接合材料Sの先端部を上側のヘッド部12の材料切断部4Bで亀裂や稜線部分が生じないように確実に切断できるものであるが、そのとき、骨接合材料Sの先端をヘッド部12の段差面の低段部80aの上面に合わせると、骨接合材料Sの先端部を2mm切除でき、中段部80bの上面に合わせると、骨接合材料Sの先端部を3mm切除でき、上段部80cの上面に合わせると、骨接合材料Sの先端部を5mm切除できるようになっている。このように、ヘッド部12の段差面で骨接合材料Sの切断すべき長さを確認しながら切断できるので、切断寸法を間違う心配はない。
【0043】
ヘッド部12の段差面は上記のような3段階のものに限定されることなく、2段階でも、4段階以上の多段階でもよいことは言うまでもない。多段階になるほど、切断すべき寸法を細かく確認できる利点がある。なお、スクリュー形状の骨接合材料Sは、通常、2〜5mmごとに長さの異なるものが揃えられているので、それほど多段階に段差面を形成する必要性は少ない。図12の切断具は、5mmごとに長さの異なるものが揃えられているスクリュー形状の骨接合材料Sに対応した、切断すべき長さ(切除すべき長さ)を確認するための長さ計測部が設けられている切断具である。
【0044】
尚、必要に応じて、雄ネジの外径が異なる複数のスクリュー形状の骨接合材料Sを切断できるように、それぞれの雄ネジに対応する雌ネジを内面に形成した複数のネジ孔状の材料保持部3Eと、雄ネジの外径にそれぞれ対応した直径を有する複数の円形孔状の材料切断部4Bを双方のヘッド部11,12に設けてもよい。その場合には、上側のヘッド部11のそれぞれの材料切断部の近傍に、それぞれの材料切断部の孔径を表示しておくことが好ましい。
【符号の説明】
【0045】
1 一方の部材
2 他方の部材
3A,3B,3C,3D 材料保持部
3E 内面に雌ネジを形成したネジ孔状の材料保持部
4A 材料切断部
4B 材料保持部を兼ねた円形孔状の材料切断部
5 アーム部
6 枢支ピン
7 圧縮スプリング
8 計測板
8a 段差面の低段部
8b 段差面の中段部
8c 段差面の上段部
11 一方の部材に相当するヘッド部
12 他方の部材に相当するヘッド部
P ピン形状の骨接合材料
S スクリュー形状の骨接合材料
【技術分野】
【0001】
本発明は骨接合材料の切断具に関し、更に詳しくは、骨接合材料の切断部に亀裂が生じないように且つ切断面が山形の凸面にならないように骨接合材料を切断できる切断具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、生体内分解吸収性ポリマー又はバイオセラミックス粉体を分散させた生体内分解吸収性ポリマーからなる複合材料であって、該ポリマーの分子鎖もしくは結晶を圧縮配向させて強度を高め、ピンやスクリューに加工して骨接合材料として使用するものが知られている(特許文献1)。
【0003】
このようなピンやスクリューなどの細長い骨接合材料は、使用時に骨接合部位に適した長さに切断しなければならない場合があるが、そのような場合には、ニッパー形状のピンカッター(以下、従来のピンカッターと記す)などの従来から汎用されている切断具を用いて骨接合材料を切断するのが一般的であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−234243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、分子鎖等が配向した例えばピン形状の骨接合材料Pを図13(a)に示すように従来のピンカッターCで切断しようとすると、骨接合材料Pが従来のピンカッターCの双方の刃c,cで挟圧されて、骨接合材料Pの断面形状が図13(b)に示すように略楕円形に変形し、分子鎖等の配向方向に延びる亀裂101が切断部に発生する恐れがあった。また、骨接合材料Pがバイオセラミックス粉体を分散させた生体内分解吸収性ポリマーからなる分子鎖の配向した骨接合材料である場合には、含有されたバイオセラミックス紛体によって骨接合材料Pの柔軟性が劣るため、バイオセラミックス粉体を含有しない骨接合材料よりも亀裂101が発生しやすくなるという不都合があった。
【0006】
しかも、従来のピンカッターCの双方の刃c,cが骨接合材料Pの切断部の中間部で閉じて切断が完了するため、骨接合材料Pの切断面は平坦面にならず、図14(a)に示すような山形の凸面102になり、図14(b)に示すように凸面102(切断面)の中間部に稜線部分103が形成されることになるので、このように切断された骨接合材料Pを生体内に埋入して骨折部位や骨切り部位を接合すると、尖った稜線部分103で生体組織が物理的に刺激されて炎症を起こす恐れもあった。
【0007】
本発明は上記事情の下になされたもので、その解決しようとする課題は、骨接合材料の切断部に亀裂が生じないように、且つ、切断面が稜線部分を有する山形の凸面とならないように骨接合材料を切断できる切断具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る骨接合材料の切断具は、細長い骨接合材料をその長さ方向と交差する方向に切断するための切断具であって、互いに重なって相対的に逆方向に移動し得る二つの部材を備え、一方の部材には骨接合材料を保持する材料保持部が少なくとも設けられ、他方の部材には骨接合材料を切断する材料切断部が設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の切断具においては、二つの部材が相対的に逆方向に回動し得るように一点で枢着されていることが望ましい。そして、材料保持部が、挿入された骨接合材料を保持する孔状の材料保持部であることが望ましく、直径が異なる複数の孔状の材料保持部が一方の部材に設けられることも望ましい。また、孔状の材料保持部の内面には、挿入される骨接合材料の外面の雄ネジに対応した雌ネジが形成されていてもよい。
【0010】
更に、本発明の切断具においては、材料切断部が、材料保持部を兼ねた孔状の材料切断部であることが望ましく、また、切断する骨接合材料の長さを確認するための長さ計測部が二つの部材のいずれかに設けられていることも望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の切断具は、骨接合材料を一方の部材に設けられた材料保持部に保持させ、双方の部材を相対的に逆方向に移動させて、他方の部材に設けられた材料切断部で骨接合材料を切断するものであり、このように骨接合材料を一方の部材の材料保持部に保持させたまま切断すると、骨接合材料が切断時に殆ど変形しないため、たとえ骨接合材料が分子鎖等が配向しているものであっても、切断部に亀裂が発生しなくなる。しかも、骨接合材料の切断は、他方の部材の材料切断部が一方の部材の材料保持部の一端から他端まで相対的に移動し終えたときに完了するので、切断面は平坦面となり、尖った稜線部分は形成されない。従って、本発明の切断具で切断した骨接合材料を生体内に埋入して骨折部位や骨切り部位を接合すれば、生体組織が物理的に刺激されて炎症を起こす恐れも解消される。
【0012】
本発明の切断具において、二つの部材が相対的に逆方向に回動し得るように一点で枢着されているものは、従来のピンカッターと同様に手で握って双方の部材を回動操作できるので、操作性が良好である。
【0013】
そして、材料保持部が、挿入された骨接合材料を保持する孔状の材料保持部である切断具は、挿入された骨接合材料を周囲から均等に保持できるため、切断時の骨接合材料の変形を充分抑えて亀裂の発生をなくすことができる。
【0014】
また、直径が異なる複数の孔状の材料保持部が一方の部材に設けられている切断具は、外径が異なる骨接合材料であっても、その外径に対応した直径を有する孔状の材料保持部を選択し、その材料保持部に骨接合材料を挿入、保持させて切断できるため、汎用性が高くなる。
【0015】
また、孔状の材料保持部の内面に、挿入される骨接合材料の外面の雄ネジに対応した雌ネジを形成した切断具は、スクリュー形状の骨接合材料(骨接合スクリュー)を材料保持部にねじ込んで確実に保持固定できるため、骨接合スクリューの切断に極めて有効である。
【0016】
更に、材料切断部が材料保持部を兼ねた孔状の材料切断部とされた切断具は、骨接合材料の切断すべき箇所の両側を、材料保持部と、材料保持部を兼ねた孔状の材料切断部により保持して、該材料切断部で切断できるため、亀裂の発生や稜線部分の形成をより確実になくすことができる。
【0017】
また、切断する骨接合材料の長さを確認するための長さ計測部が二つの部材のいずれかに設けられている切断具は、この長さ計測部で骨接合材料の切断すべき長さを確認しながら切断できるため、切断寸法を間違う心配が解消される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る切断具の説明図であって、(a)は切断前の状態を、(b)は切断後の状態を示すものである。
【図2】本発明の他の実施形態に係る切断具の説明図であって、(a)は切断前の状態を、(b)は切断後の状態を示すものである。
【図3】本発明の更に他の実施形態に係る切断具の説明図であって、(a)は切断前の状態を、(b)は切断後の状態を示すものである。
【図4】本発明の更に他の実施形態に係る切断具の説明図であって、(a)は切断前の状態を、(b)は切断後の状態を示すものである。
【図5】本発明の更に他の実施形態に係る切断具の説明図であって、(a)は切断前の状態を、(b)は切断後の状態を示すものである。
【図6】本発明の更に他の実施形態に係る切断具の説明図であって、(a)は切断前の状態を、(b)は切断後の状態を示すものである。
【図7】本発明の更に他の一層具体的な実施形態に係る切断具の平面図であって、切断前の状態を示すものである。
【図8】同実施形態に係る切断具の平面図であって、切断後の状態を示すものである。
【図9】図7のA−A線に沿った拡大部分断面図である。
【図10】本発明の更に他の一層具体的な実施形態に係る切断具の平面図であって、切断前の状態を示すものである。
【図11】同実施形態に係る切断具の平面図であって、切断後の状態を示すものである。
【図12】図10のB−B線に沿った拡大部分断面図である。
【図13】従来のピンカッターで骨接合材料を切断する場合の説明図であって、(a)は切断前の状態を、(b)は切断中の状態を示すものである。
【図14】(a)は従来のピンカッターで切断された骨接合材料の切断部の側面図、(b)は同切断部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づいて、本発明に係る骨接合材料の切断具を説明する。
【0020】
図1は本発明の一実施形態に係る切断具の説明図であって、(a)は切断前の状態を、(b)は切断後の状態を示している。この切断具は、金属製の方形板状の二つの部材1,2を具備したもので、一方の部材1の両側にはガイド溝が1a,1aが設けられている。そして、これらのガイド溝1a,1aには、他方の部材2の両側縁が摺動自在に嵌挿され、双方の部材1,2が互いに重なって相対的に逆方向(図1では上下逆方向)に直線的に移動できるようになっている。
【0021】
一方の部材1には、切断すべき円形断面を有するピン形状の骨接合材料(骨接合ピン)の外径と実質的に同一の直径を有する円形孔状の材料保持部3Aが設けられ、この材料保持部3Aに挿入されるピン形状の骨接合材料を周囲から均等に保持できるようになっている。そして、他方の部材2の移動方向の一端(図1では下端)には、刃状の材料切断部4Aが設けられている。
【0022】
上記構成の切断具は、ピン形状の骨接合材料(不図示)を、一方の部材1に設けられた円形孔状の材料保持部3Aに保持させ、双方の部材1,2を相対的に上下逆方向に直線的に移動させて、他方の部材2に設けられた刃状の材料切断部4Aで骨接合材料を切断するものである。このように骨接合材料を一方の部材1の円形孔状の材料保持部3Aに保持させたまま切断すると、骨接合材料が切断時に殆ど変形しないため、分子鎖等が配向している骨接合材料であっても、切断部に亀裂が発生しなくなる。しかも、骨接合材料の切断は、他方の部材2の刃状の材料切断部4Aが一方の部材1の円形孔状の材料保持部3Aの一端(上端)から他端(下端)まで相対的に移動し終えたときに完了するので、切断面は平坦面となり、尖った稜線部分が形成されることはない。従って、この切断具で切断した骨接合材料を生体内に埋入して骨折部位や骨切り部位を接合すれば、従来のように切断部の尖った稜線部分で生体組織が物理的に刺激されて炎症を起こす恐れを解消することもできる。
【0023】
一方の部材1に設けられる材料保持部は、図1に示すような円形孔状の材料保持部3Aに限定されるものではなく、例えばピン形状の骨接合材料を周囲から均等に保持できる正多角形の孔状の材料保持部であってもよい。また、ピン形状の骨接合材料が円形以外の断面形状を有する場合は、その断面形状に合致した孔形状の材料保持部とすれば良い。
また、材料保持部は、骨接合材料を安定良く保持して切断時に変形を生じさせにくいものであれば、孔状の材料保持部でなくてもよい。図2〜図4に示す実施形態の切断具は、そのような孔状以外の形状の材料保持部を一方の部材1に設けたものである。
【0024】
即ち、図2に示す実施形態の切断具は、ピン形状の骨接合材料Pを左右両端と下端の3箇所で線接触又は点接触して変形しにくいように安定良く保持できる方形凹状の材料保持部3Bを一方の部材1に設けたものであり、図3に示す実施形態の切断具は、ピン形状の骨接合材料Pを左右斜め下側の2箇所で線接触又は点接触して変形しにくいように安定良く保持できるV形凹状の材料保持部3Cを一方の部材1に設けたものであり、図4に示す実施形態の切断具は、ピン形状の骨接合材料Pの下側半周に面接触して変形しにくいように安定良く保持できる略U形凹状の材料保持部3Dを一方の部材1に設けたものである。なお、これらの切断具の他の構成は、前記図1に示す実施形態の切断具と同様であるので、図2〜図4において同一部材に同一符号を付して重複説明を省略する。
【0025】
上記のような材料保持部3B,3C,3Dを一方の部材1に設けた図2〜図4の切断具も、円形孔状の材料保持部3Aを一方の部材1に設けた図1の切断具と同様に、双方の部材1,2を相対的に上下逆方向に移動させて切断するときにピン形状の骨接合材料Pが殆ど変形しないため、切断部の亀裂や尖った稜線部分が生じないように切断することができる。
【0026】
図1〜図4に示す切断具はいずれも、切断専用の刃状の材料切断部4Aを他方の部材2の移動方向の一端(図1〜図4では下端)に設けたものであるが、材料切断部は材料保持部を兼ねたものでもよい。
図5はそのような実施形態の切断具を示したもので、他方の部材2には、一方の部材1の円形孔状の材料保持部3Aと同一の直径を有する、材料保持部を兼ねた円形孔状の材料切断部4Bが設けられている。この切断具の他の構成は、図1〜図4に示す切断具と同様であるので、図5において同一部材に同一符号を付して重複説明を省略する。
【0027】
斯かる切断具は、図5(a)に示すように、一方の部材1の円形孔状の材料保持部3Aと、他方の部材2の材料保持部を兼ねた円形孔状の材料切断部4Bを重ねた状態で、これらの材料保持部3Aと材料切断部4Bにピン形状の骨接合材料(不図示)を挿入して保持させ、図5(b)に示すように、双方の部材1,2を相対的に上下逆方向に直線的に移動させて骨接合材料を切断するものである。このように双方の部材1,2を上下逆方向に移動させると、材料保持部を兼ねた円形孔状の材料切断部4Bの移動方向と反対側の半周部分が剪断刃の働きをして骨接合材料を切断することができ、その際、一方の部材1に設けられた円形孔状の材料保持部3Aの移動方向と反対側の半周部分も剪断刃として働くことになる。この切断具は、骨接合材料の切断すべき箇所の両側を、円形孔状の材料保持部3Aと、材料保持部を兼ねた円形孔状の材料切断部4Bで保持して、骨接合材料を殆ど変形させることなく切断できるため、亀裂の発生や稜線部分の形成をより確実になくすことができる。
【0028】
図1〜図5に示す切断具では、二つの部材1,2が相対的に逆方向に直線的に移動するように構成しているが、二つの部材1,2が相対的に逆方向に回動するように一点で枢着してもよい。図6はそのような実施形態の切断具の概略的な説明図であって、(a)は切断前の状態を、(b)切断後の状態を示している。
【0029】
即ち、図6に示す切断具は、二つの部材1,2を重ねて一点Oで枢着することにより、二つの部材1,2が一点Oを中心として相対的に逆方向に回動し得るように構成したものであって、一方の部材1には、挿入されるピン形状の骨接合材料(不図示)を保持する円形孔状の材料保持部3Aが設けられており、他方の部材2には、上記材料保持部3Aの直径と同一の直径を有する、材料保持部を兼ねた円形孔状の材料切断部4Bが、上記材料保持部3Aと重なる位置に設けられている。そして、双方の部材1,2には、回動操作を行うためのアーム1b,2bがそれぞれ突設されている。
【0030】
このような切断具は、図6(a)に示すように、一方の部材1の円形孔状の材料保持部3Aと、他方の部材2の材料保持部を兼ねた円形孔状の材料切断部4Bを重ねた状態で、これらの材料保持部3Aと材料切断部4Bにピン形状の骨接合材料(不図示)を挿入して保持させ、双方のアーム1b,2bを手で握って、図6(b)に示すように双方の部材1,2を相対的に逆方向に回動させることにより、円形孔状の材料切断部4Bの回動方向と反対側の半周部分を剪断刃として骨接合材料を切断するものである。このとき、円形孔状の材料保持部3Aの回動方向と反対側の半周部分も剪断刃として機能することは、前述した通りである。
【0031】
この切断具は、双方のアーム1b,2bを従来のピンカッターと同様に手で握って双方の部材1,2を回動操作できるので、操作性が良好であり、図5に示す切断具と同様に、骨接合材料の切断すべき箇所の両側を、円形孔状の材料保持部3Aと、材料保持部を兼ねた円形孔状の材料切断部4Bで保持して、骨接合材料を殆ど変形させることなく切断できるので、切断部分の亀裂の発生や稜線部分の形成をより確実になくすことができるものである。
【0032】
図7,図8は本発明の更に他の実施形態に係る一層具体的な切断具の平面図であって、図7は切断前の状態を、図8は切断後の状態をそれぞれ示しており、また、図9は図7のA−A線に沿った拡大部分断面図である。
【0033】
この切断具は、手で握る一対のアーム部5,5を備えたニッパー型のものであって、一方のアーム部5の先端には、前記一方の部材1に相当するヘッド部11が一体に形成されており、他方のアーム部5の先端には、前記他方の部材2に相当するヘッド部12が形成されている。これらのヘッド部11,12は上下に重ねられて、枢支ピン6で相対的に逆方向に回動できるように枢着されており、双方のアーム部5,5間に張設された圧縮コイルバネ7によって、常時はアーム部5,5が離間した状態に維持されている。
【0034】
上側のヘッド部11には、直径が異なる複数(本実施形態では3つ)の大、中、小の円形孔状の材料保持部3A1,3A2,3A3が相互間隔をあけて、枢支ピン6を中心とする円弧上に位置して設けられており、これに対応して、下側のヘッド部12にも、上記材料保持部3A1,3A2,3A3と同一の直径を有する大、中、小の円形孔状の材料切断部4B1,4B2,4B3(材料保持部を兼ねた材料切断部)が設けられている。そして、上側のヘッド部11の材料保持部3A1,3A2,3A3と下側のヘッド部12の材料切断部4B1,4B2,4B3は、図7に示すようにアーム部5,5が離間した状態で、上下に重なり合うようになっている。
【0035】
下側のヘッド部12は、その先端部12aが略二等辺三角形状に突き出して厚肉化されており、この先端部12aの上面と上側のヘッド部11の上面が面一になっている。そして、この先端部12aには、切断する骨接合材料の長さを確認するための長さ計測部として、目盛の付いた細長い起倒自在な計測板8が取付けられている。即ち、この計測板8の脚ピン8aが先端部12aの孔に嵌着固定され、この脚ピン8aの小さな有底穴に内装された小さな圧縮スプリング8bとボール8cによって、計測板8の下端が下方から押圧された状態で、計測板8が取付けられている。従って、計測板8は、後向きに力を加えて倒さない限り起立した状態を維持し、後向きに力を加えて倒すと、計測板8の下端側部が圧縮スプリング8bとボール8cで下方から押圧されて、計測盤8を引き上げない限り倒れた状態を維持するようになっている。
【0036】
このような切断具は、外径が大、中、小と異なる3種類のピン形状の骨接合材料でも、その外径に対応した直径を有する大、中、小いずれかの円形孔状の材料保持部3A1,3A2又は3A3を選択し、その選択した材料保持部とその真下の円形孔状の材料切断部4B1,4B2又は4B3(材料保持部を兼ねた材料切断部)に骨接合材料を挿入、保持させ、双方のアーム部5,5を手で握って、図8に示すように、上側のヘッド部11と下側のヘッド部12を枢支ピン6を中心に相対的に逆方向に回動させることにより、骨接合材料を亀裂や稜線部分が生じないように確実に切断することができる。このとき、計測板8の目盛を見て骨接合材料の切断すべき長さを確認しながら切断できるため、切断寸法を間違う心配はない。そして、使用後、計測板8を倒せば嵩が低くなるので、邪魔になることもない。なお、上側のヘッド部11の材料保持部3A1,3A2,3A3の近傍にそれぞれの孔径を表示しておくと、それぞれの孔径よりも外径が小さいピン形状の骨接合材料を間違って挿入する心配がなくなるので好ましい。
【0037】
上側のヘッド部11に設ける円形孔状の材料保持部の個数、及び、これに対応して下側のヘッド部12に設ける円形孔状の材料切断部の個数は、1つでも、2つでも、4つ以上でもよいが、これらの材料保持部及び材料切断部の個数を多く設ければ、外径が異なる多種類の骨接合材料を切断できるので、汎用性が高くなる利点がある。
【0038】
図10,図11は本発明の更に他の実施形態に係る具体的な切断具の平面図であって、図10は切断前の状態を、図11は切断後の状態をそれぞれ示しており、また、図12は図10のB−B線に沿った拡大部分断面図である。
【0039】
この切断具は、外面に雄ネジを形成したスクリュー形状の骨接合材料(骨接合スクリュー)を切断する切断具であって、手で握る一対のアーム部5,5を備えたニッパー型のものである。この切断具も、一方のアーム部5の先端に、前記一方の部材1に相当するヘッド部11が一体に形成されており、他方のアーム部5の先端に、前記他方の部材2に相当するヘッド部12が形成されている。これらのヘッド部11,12は、ヘッド部11を下側に、ヘッド部12を上側にして重ねられ、枢支ピン6で相対的に逆方向に回動できるように枢着されている。そして、双方のアーム部5,5間に張設された圧縮コイルバネ7によって、常時はアーム部5,5が離間した状態に維持されている。
【0040】
この切断具の上側のヘッド部12の先端部には、切断すべきスクリュー形状の骨接合材料の雄ネジの外径と実質的に同一の直径を有する円形孔状の材料切断部4Bが設けられており、下側のヘッド部11には、骨接合材料外面の雄ネジに対応する雌ネジを内面に形成したネジ孔状の材料保持部3Eが形成されている。そして、上側のヘッド部11の材料切断部4Bと下側のヘッド部12の材料保持部3Eは、図10に示すようにアーム部5,5が離間した状態で、上下に重なり合うようになっている。従って、図12に仮想線で示すように、スクリュー形状の骨接合材料Sを材料保持部3Eに下方からねじ込んで先端部分を材料切断部4bに挿入すると、骨接合材料Sをガタツキなく確実に保持固定できるようになっている。
【0041】
この切断具の上側のヘッド部12には、スクリュー形状の骨接合材料の切断すべき長さ(切除すべき長さ)を確認するための長さ計測部として、低段部80aと中段部80bと上段部80cとからなる段差面が形成されており、この実施形態では、低段部80aの上面がヘッド部12の下面から2mmの高さとされ、中段部80bの上面がヘッド部12の下面から3mmの高さとされ、上段部80cの上面がヘッド部12の下面から5mmの高さとされている。
【0042】
このような切断具は、スクリュー形状の骨接合材料Sを、その先端が上側のヘッド部12の円形孔状の材料切断部4Bに突入するように、下方からヘッド部11のネジ孔状の材料保持部3Eにねじ込んでガタツキなく確実に保持固定し、双方のアーム部5,5を手で握って、図11に示すように、上側のヘッド部12と下側のヘッド部11を枢支ピン6を中心に相対的に逆方向に回動させることにより、スクリュー形状の骨接合材料Sの先端部を上側のヘッド部12の材料切断部4Bで亀裂や稜線部分が生じないように確実に切断できるものであるが、そのとき、骨接合材料Sの先端をヘッド部12の段差面の低段部80aの上面に合わせると、骨接合材料Sの先端部を2mm切除でき、中段部80bの上面に合わせると、骨接合材料Sの先端部を3mm切除でき、上段部80cの上面に合わせると、骨接合材料Sの先端部を5mm切除できるようになっている。このように、ヘッド部12の段差面で骨接合材料Sの切断すべき長さを確認しながら切断できるので、切断寸法を間違う心配はない。
【0043】
ヘッド部12の段差面は上記のような3段階のものに限定されることなく、2段階でも、4段階以上の多段階でもよいことは言うまでもない。多段階になるほど、切断すべき寸法を細かく確認できる利点がある。なお、スクリュー形状の骨接合材料Sは、通常、2〜5mmごとに長さの異なるものが揃えられているので、それほど多段階に段差面を形成する必要性は少ない。図12の切断具は、5mmごとに長さの異なるものが揃えられているスクリュー形状の骨接合材料Sに対応した、切断すべき長さ(切除すべき長さ)を確認するための長さ計測部が設けられている切断具である。
【0044】
尚、必要に応じて、雄ネジの外径が異なる複数のスクリュー形状の骨接合材料Sを切断できるように、それぞれの雄ネジに対応する雌ネジを内面に形成した複数のネジ孔状の材料保持部3Eと、雄ネジの外径にそれぞれ対応した直径を有する複数の円形孔状の材料切断部4Bを双方のヘッド部11,12に設けてもよい。その場合には、上側のヘッド部11のそれぞれの材料切断部の近傍に、それぞれの材料切断部の孔径を表示しておくことが好ましい。
【符号の説明】
【0045】
1 一方の部材
2 他方の部材
3A,3B,3C,3D 材料保持部
3E 内面に雌ネジを形成したネジ孔状の材料保持部
4A 材料切断部
4B 材料保持部を兼ねた円形孔状の材料切断部
5 アーム部
6 枢支ピン
7 圧縮スプリング
8 計測板
8a 段差面の低段部
8b 段差面の中段部
8c 段差面の上段部
11 一方の部材に相当するヘッド部
12 他方の部材に相当するヘッド部
P ピン形状の骨接合材料
S スクリュー形状の骨接合材料
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長い骨接合材料をその長さ方向と交差する方向に切断するための切断具であって、
互いに重なって相対的に逆方向に移動し得る二つの部材を備え、一方の部材には骨接合材料を保持する材料保持部が少なくとも設けられ、他方の部材には骨接合材料を切断する材料切断部が設けられていることを特徴とする、骨接合材料の切断具。
【請求項2】
二つの部材が相対的に逆方向に回動し得るように一点で枢着されていることを特徴とする請求項1に記載の切断具。
【請求項3】
材料保持部が、挿入された骨接合材料を保持する孔状の材料保持部であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の切断具。
【請求項4】
材料切断部が、材料保持部を兼ねた孔状の材料切断部であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の切断具。
【請求項5】
直径が異なる複数の孔状の材料保持部が一方の部材に設けられていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の切断具。
【請求項6】
孔状の材料保持部の内面に、挿入される骨接合材料の外面の雄ネジに対応した雌ネジが形成されていることを特徴とする請求項3ないし請求項5のいずれかに記載の切断具。
【請求項7】
切断する骨接合材料の長さを確認するための長さ計測部が二つの部材のいずれかに設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の切断具。
【請求項1】
細長い骨接合材料をその長さ方向と交差する方向に切断するための切断具であって、
互いに重なって相対的に逆方向に移動し得る二つの部材を備え、一方の部材には骨接合材料を保持する材料保持部が少なくとも設けられ、他方の部材には骨接合材料を切断する材料切断部が設けられていることを特徴とする、骨接合材料の切断具。
【請求項2】
二つの部材が相対的に逆方向に回動し得るように一点で枢着されていることを特徴とする請求項1に記載の切断具。
【請求項3】
材料保持部が、挿入された骨接合材料を保持する孔状の材料保持部であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の切断具。
【請求項4】
材料切断部が、材料保持部を兼ねた孔状の材料切断部であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の切断具。
【請求項5】
直径が異なる複数の孔状の材料保持部が一方の部材に設けられていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の切断具。
【請求項6】
孔状の材料保持部の内面に、挿入される骨接合材料の外面の雄ネジに対応した雌ネジが形成されていることを特徴とする請求項3ないし請求項5のいずれかに記載の切断具。
【請求項7】
切断する骨接合材料の長さを確認するための長さ計測部が二つの部材のいずれかに設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の切断具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
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【図4】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−231839(P2012−231839A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100925(P2011−100925)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000108719)タキロン株式会社 (421)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000108719)タキロン株式会社 (421)
【Fターム(参考)】
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