説明

骨材の微量分量試験方法

【課題】正確かつ簡便に、骨材の微粒分量を測定することが可能な試験方法を提供する。
【解決手段】骨材試料が載置されたふるい分け装置の内部に水を注いで貯水させ、骨材試料を水中でかき混ぜ、その後排水する初期ふるい分け工程S20と、排水されたふるい分け装置の上側に、他方のふるい分け装置を上下反転させて、水を注いで骨材試料を洗浄し、ふるい分け装置群の上側のふるい分け装置を取り外し、下側のふるい分け装置に底盤を設置し、ふるい分け装置内に水を注いで貯水させ、骨材試料を水中でかき混ぜ、その後排水する。かき混ぜた水中の骨材試料が目視で確認できるまで繰り返し行う反復ふるい分け工程S30と、ふるい分け装置群内に残存した骨材試料をふるい分け装置群とともに乾燥させ、乾燥させた骨材試料及びふるい分け装置群の合計質量を量り、前工程S10で量った合計質量からの質量変化率をもとめる後工程S40とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート材料として用いられる骨材中の微粒分量を測定する試験方法に係り、特に、簡便かつ正確に測定できる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート材料として用いられる骨材には、一般に砂や砂利あるいは砕石が利用されており、その表面には粘土、シルトあるいは石粉等の微粉が付着している。しかしながら、これらの微粉が表面に付着したままの骨材を使用すると、コンクリートを製造する際の単位水量を増加させるだけでなく、モルタルとの付着が不十分となるおそれがある。
そこで、骨材をコンクリート材料として使用するにあたり、その骨材中の微粉分量を測定する必要がある。
【0003】
骨材の微粉分量を測定する試験方法は、JIS A 1103に規定されているが、具体的に次のようにして行う。
(a)試料の質量m1を0.1%まで正確にはかる。
(b)(a)の試料を容器に入れ、試料を覆うまで水を加える。水中で試料を手で30秒間激しくかき回し、細かい粒子を粗い粒子から分離させ、洗い水の中に懸濁させる。
(c)粗い粒子をできるだけ流さないように注意しながら、洗い水を0.075mmふるいの上に1.2mmふるいを重ねた2個のふるいの上にあける。
(d)再び容器の中の試料に水を加えて30秒間激しくかき回し、重ねた2個のふるいの上に洗い水をあける。洗い水が澄むまで、この操作を水中の骨材が目視できるまで繰り返す。
(e)重ねた2個のふるいにとどまった粒子を洗い流して試料中に戻す。このようにした試料を105±5℃で一定質量となるまで乾燥し、この質量mを0.1%まで正確にはかる。
(f)計算は次式による。
A=(m−m)/m×100 ・・・ (1)
ここにA:骨材の微粒分量(%)、m:洗う前の試料の乾燥質量(kg)、m:洗った後の試料の乾燥質量(kg)
(g)試験の結果は、同時に採取した試料について2回行い、その平均値をとる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、JIS A 1103の骨材の微粉分量試験では、上記工程(c)において洗い水を2個のふるいの上にあける際に、洗い水がふるい以外の場所にこぼれて落ちることがあることから、試験の正確性を確保できないおそれがある。
【0005】
また、上記工程(e)において、重ねた2個のふるいにとどまった粒子を洗い流して試料中に戻す際に、粒子をふるいから取り出すことができなかったり、粒子が骨材試料以外の場所へこぼれ落ちたりすることがあることから、試験の正確性を確保できないおそれがある。さらに、水に濡れた粒子はふるいに付着して取れにくいことから、試料中に戻す作業に多大な労力を費やしてしまう。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、正確かつ簡便に、骨材の微粒分量を測定することが可能な試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、コンクリート材料として用いられる骨材中の微粒分量を測定する試験方法であって、
網ふるいを内周に固定する筒枠と、当該筒枠内に固定された第1の網ふるいと、当該第1の網ふるいより目開きが大きく、前記筒枠内で前記第1の網ふるいの上段に固定された第2の網ふるいとを備えるふるい分け装置を2つと、前記筒枠と水密に脱着可能な底盤とを用い、
前記2つのふるい分け装置と、微粒分量を測定する骨材試料との合計質量を量る作業と、一方の前記ふるい分け装置の第2の網ふるいの上に前記骨材試料を載置する作業とを含む前工程と、
前記一方のふるい分け装置の底部に前記底盤を設置し、前記底盤が設置されたふるい分け装置の筒枠内に水を注いで、前記第2の網ふるいの位置よりも上方まで貯水する作業と、前記ふるい分け装置内の前記骨材試料を水中でかき混ぜる作業と、前記ふるい分け装置から前記底盤を取り外して前記ふるい分け装置内の水を排水する作業とを含む初期ふるい分け工程と、
排水がなされた前記ふるい分け装置の上側に、他方の前記ふるい分け装置を上下反転させて連結する作業と、連結されたふるい分け装置群を上下反転させる作業と、前記上下反転されたふるい分け装置群の筒枠内に水を上方から注いで、前記ふるい分け装置群内の骨材試料を洗浄しつつ、上側のふるい分け装置から下側のふるい分け装置に移動させる作業と、前記ふるい分け装置群の上側のふるい分け装置を取り外し、下側のふるい分け装置の底部に前記底盤を設置し、前記底盤が設置されたふるい分け装置の筒枠内に水を注いで、前記第2の網ふるいの位置よりも上方まで貯水する作業と、前記ふるい分け装置内の骨材試料を水中でかき混ぜる作業と、前記ふるい分け装置から前記底盤を取り外して前記ふるい分け装置内の水を排水する作業とを、前記かき混ぜた水中の骨材試料が目視で確認できるまで繰り返し行う反復ふるい分け工程と、
前記ふるい分け装置群内に残存した骨材試料をふるい分け装置群とともに乾燥させる作業と、当該乾燥させた骨材試料及び前記のふるい分け装置群の合計質量を量り、当該合計質量の前記前工程で量った合計質量からの質量変化率をもとめる作業とを含む後工程と、
を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明の骨材の微粒分量試験方法は、初期ふるい分け工程及び反復ふるい分け工程において、ふるい分け装置と底盤とを用いて、ふるい分け装置の底部に底盤を設置し、底盤が設置されたふるい分け装置の筒枠内に水を注いで、第2の網ふるいの位置よりも上方まで貯水させ、ふるい分け装置内の骨材試料を水中でかき混ぜる。
これにより、骨材試料に付着する微粉をふるい分け装置内で水に洗い落している。また、ふるい分け装置から底盤を取り外してふるい分け装置内の水を排水することにより、骨材試料中の粗い粒子をふるい分け装置内に留めている。これらの処理は、JIS A 1103の骨材の微粉分量試験の工程(b)及び(c)と同等である。
ここで、本発明の骨材の微粒分量試験方法では、上述したJIS A 1103の骨材の微粉分量試験のように、骨材試料を洗った洗い水を、重ねた2個のふるいの上にあける際に、洗い水がふるい以外の場所にこぼれ落ちることはない。すなわち、試験の正確性を確保することができる。
【0009】
また、本発明の骨材の微粒分量試験方法は、反復ふるい分け工程において、排水がなされたふるい分け装置の上側に、他方のふるい分け装置を上下反転させて連結し、連結されたふるい分け装置群を上下反転させ、上下反転されたふるい分け装置群の筒枠内に水を上方から注いで、ふるい分け装置群内の骨材試料を洗浄しつつ、上側のふるい分け装置から下側のふるい分け装置に移動させる。
これらの処理は、JIS A 1103の骨材の微粉分量試験の工程(e)に示す、重ねた2個のふるいにとどまった粒子を洗い流して試料中に戻すことと同等である。
ここで、本発明の骨材の微粒分量試験方法では、重ねた2個のふるいにとどまった粒子を洗い流して骨材試料に戻す際に、粒子がふるい分け装置群内の網ふるい間に残存する骨材試料以外の場所へこぼれ落ちることはない。すなわち、試験の正確性を確保することができる。
【0010】
また、本発明の骨材の微粒分量試験方法では、後工程にて、ふるい分け装置群内に残存した骨材試料をふるい分け装置群とともに乾燥させ、当該乾燥させた骨材試料及びのふるい分け装置群の合計質量を量り、当該合計質量の前工程で量った合計質量からの質量変化率をもとめている。
すなわち、本発明の骨材の微粒分量試験方法では、JIS A 1103の骨材の微粉分量試験の工程(e)に示すような、重ねた2個のふるいにとどまった粒子を洗い流して試料中に戻す作業は行わない。これにより、作業の効率化を図ることができる。
また、試験後に、ふるい分け装置群に残存した骨材試料を除去する作業も、骨材試料が乾燥しているので容易である。
【0011】
本発明において、前記第1の網ふるいとして、公称目開き0.075mmの金属製のふるいを用いるとともに、前記第2の網ふるいとして、公称目開き1.18mmの金属製のふるいを用いることとしてもよい。この構成によれば、JIS A 1103に規定される骨材の微粉分量試験が実施できる。
【0012】
本発明において、前記ふるい分け装置として、前記第1の網ふるい又は前記第2の網ふるいと前記筒枠との境界部分に、目張りがなされたものを用いることとしてもよい。この構成によれば、骨材試料が詰まりやすい筒枠との境界部分に、骨材試料を詰まらせることを抑制することができるので、試験の正確性の向上を図るとともに、試験後のふるい分け装置に残存した骨材試料の除去作業を簡単に行うことができる。
【0013】
本発明において、前記ふるい分け装置として、前記第1の網ふるいと前記第2の網ふるいとの離間幅よりも、前記第2の網ふるいと前記筒枠の上端との離間幅の方が長いものを用い、前記ふるい分け装置の底部に前記底盤を設置し、前記底盤が設置されたふるい分け装置の筒枠内に水を注ぐ際に、前記ふるい分け装置の筒枠の上縁部まで貯水することとしてもよい。この構成によれば、骨材試料を水中に十分に浸漬させた状態でかき混ぜることができるので、骨材試料を良好に洗浄することができる。
【0014】
本発明において、前記ふるい分け装置として、前記筒枠の外周両端に夫々取手が設けられ、前記一方のふるい分け装置の上側に、前記他方のふるい分け装置を上下反転させて連結するときに、各ふるい分け装置に設けられた取手が上下重なる位置に配置され、前記上下重なる位置に配置された両方の取手を片手で把持可能なものを用いることとしてもよい。この構成によれば、連結されたふるい分け装置群を上下反転させる作業を、取手を両手で把持して実施することにより容易に行える。
【0015】
本発明において、前記ふるい分け装置として、前記第1の網ふるいが設けられる部分と、前記第2の網ふるいが設けられる部分とが分離可能なものを用いることとしてもよい。この構成によれば、後工程において、ふるい分け装置内に残存した骨材試料をふるい分け装置とともに乾燥させる際に、例えば、乾燥機の収納スペースが限定される場合でも、ふるい分け装置を分離することにより効率良く収納スペース内に配置できる。
また、試験後にふるいから骨材試料を除去する作業もふるい分け装置を分離して行う方が容易である。
【0016】
本発明において、前記ふるい分け装置の前記筒枠として、透明な材料からなるものを用いることとしてもよい。この構成によれば、反復ふるい分け工程おいて、かき混ぜた水中の骨材試料を目視する際に、ふるい分け装置をどの方向から見ても内部の様子を観察することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、正確かつ簡便に、骨材の微粒分量を測定することが可能な試験方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態に係る骨材の微粒分量測定試験方法に用いる器具を示す図である。
【図2】本実施形態に係る骨材の微粒分量測定試験方法の手順を示すフロー図である。
【図3】前工程S10の手順を示すフロー図である。
【図4】初期ふるい分け工程S20の手順を示すフロー図である。
【図5】反復ふるい分け工程S30の手順を示すフロー図である。
【図6】後工程S40の手順を示すフロー図である。
【図7】取手付きのふるい分け装置の側面図である。
【図8】第1の網ふるいが設けられる部分と、第2の網ふるいが設けられる部分とが分離可能なふるい分け装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明における好ましい一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る骨材の微粒分量測定試験方法に用いる器具を示す図である。
図1示すように、本実施形態に係る骨材の微粒分量測定試験方法には、ふるい分け装置10と底盤20とを用いる。
【0020】
ふるい分け装置10は、網ふるいを内周に固定する筒枠12と、筒枠12内に固定された第1の網ふるい14と、第1の網ふるい14より目開きが大きく、筒枠12内で第1の網ふるい14の上段に固定された第2の網ふるい16とを備える。
【0021】
筒枠12としては、水を通過させない材料(例えば金属、木材、合成樹脂等)からなるものを用いる。
また、筒枠12の形状としては、図1に示すような円筒形状のものを用いることができるが、特にこの形状に限定されるものではなく、角筒形状のものを用いてもよい。
【0022】
第1の網ふるい14と第2の網ふるい16は、筒枠12の形状と略同形を有する板状の網材であり、例えば、JIS A 1103に規定される骨材の微粒分量試験を行うには、JIS Z 8801−1に規定される公称目開き0.075mmと1.18mmの金属製ふるいとを用いる。
第1の網ふるい14は、筒枠12の下端又は筒枠12内の底部のどちらに設けられていてもよい。
【0023】
第2の網ふるい16は、筒枠12内の第1の網ふるい14の上側に設けられるが、その際に第2の網ふるい16が設けられる位置と筒枠12の上端との長さが十分に確保されていることを確認する。例えば、第2の網ふるい16は、第1の網ふるい14と第2の網ふるい16と離間幅よりも、第2の網ふるい16と筒枠12の上端との離間幅の方が長くなるように筒枠12に設けられていることが好ましい。
【0024】
また、第1の網ふるい14及び第2の網ふるい16と、筒枠12との境界部分には、シリコン樹脂やはんだ等で目張り18がなされていることが好ましい。
【0025】
底盤20は、筒枠12と水密に脱着可能なものである。すなわち、底盤20をふるい分け装置10に設置し、ふるい分け装置10の上方から水をふるい分け装置10内に注ぐと、ふるい分け装置10内に水が貯まるようになっている。
底盤20としては、例えば、ふるい分け装置10の筒枠12の外周と嵌合する略円筒形の容器であって、当該嵌合部にシリコンやゴム等を設けたものを用いることで、筒枠12と水密に設置し、また取り外すことができる。
【0026】
本実施形態に係る骨材の微粒分量測定試験方法では、上述したふるい分け装置10を2つと、底盤20とを使用する。
【0027】
図2は、本実施形態に係る骨材の微粒分量測定試験方法の手順を示すフロー図である。
図2に示すように、骨材の微粒分量測定試験方法は、前工程S10と、初期ふるい分け工程S20と、反復ふるい分け工程S30と、後工程S40とを行う。
【0028】
図3は、前工程S10の手順を示すフロー図である。
前工程S10では、先ず、2つのふるい分け装置10と、微粒分量を測定する骨材試料との合計質量mを量る(作業S11)。ここで、質量を量るはかりとしては、ひょう量が測定対象物の質量以上でかつ目量が0.1%以下の質量を備えるものを用いることが好ましい。
微粒分量を測定する骨材試料については、細骨材であれば、例えば、概ね1kgを採取し、これを2分して500gとし、これを1回の試験の骨材試料とする。
合計質量mを量り終えたら、2つのふるい分け装置10の一方を用いて、その第2の網ふるい16の上に1回分の量の骨材試料を載置する(作業S12)。
【0029】
図4は、初期ふるい分け工程S20の手順を示すフロー図である。
【0030】
図4に示すように、初期ふるい分け工程では、先ず、骨材試料を載置されたふるい分け装置10の底部に底盤20を設置し、底盤20が設置されたふるい分け装置10の筒枠12内に水を注いで、第2の網ふるい16の位置よりも上方まで貯水する(作業S21)。このとき、ふるい分け装置10の筒枠12の上縁付近まで貯水する。
そして、ふるい分け装置10内の骨材試料を水中でかき混ぜる(作業S22)。このとき、JIS A 1103の試験の規定に準拠するには、水中で骨材試料を30秒間激しくかき混ぜる。その後、ふるい分け装置10から底盤20を取り外してふるい分け装置10内の水を排水する(作業S23)。
【0031】
図5は、反復ふるい分け工程S30の手順を示すフロー図である。
図5に示すように、反復ふるい分け工程では、先ず、初期ふるい分け工程で排水がなされたふるい分け装置10の上側に、他方のふるい分け装置10を上下反転させて連結する(作業S31)。
【0032】
次に、連結されたふるい分け装置群10を上下反転させる(作業S32)。
上下反転されたふるい分け装置群10の筒枠12内に水を上方から注ぎ、ふるい分け装置群10内の骨材試料を洗浄しつつ、骨材試料を上側のふるい分け装置10から下側のふるい分け装置10に移動させる(作業S33)。
【0033】
それから、ふるい分け装置群10の上側のふるい分け装置10を取り外し、下側のふるい分け装置10の底部に底盤20を設置し、底盤20が設置されたふるい分け装置10の筒枠12内に水を注いで、第2の網ふるい16の位置よりも上方まで貯水する(作業S34)。
そして、ふるい分け装置10内の骨材試料を水中でかき混ぜる(作業S35)。
その後、ふるい分け装置10から底盤20を取り外して前記ふるい分け装置10内の水を排水する(作業S36)。
【0034】
反復ふるい分け工程S30では、かかる作業S31〜S36を、作業S35においてかき混ぜた水中の骨材試料が目視で確認できるまで繰り返す。このようにすることにより、骨材試料に付着する微粒分が、ふるい分け装置10の外部に洗い流されていく。
【0035】
図6は、後工程S40の手順を示すフロー図である。
図6に示すように、後工程S40では、先ず、反復ふるい分け工程S30で用いたふるい分け装置群10内に残存した骨材試料をふるい分け装置群10とともに乾燥させる(作業S41)。ここで、JIS A 1103の試験の規定に準拠するには、骨材試料が残存したふるい分け装置10が105±5℃で一定質量になるまで乾燥させる。乾燥には、例えば、ふるい分け装置10が十分に収納可能な乾燥機を用いる。
【0036】
そして、作業S41で乾燥させた骨材試料及びふるい分け装置群10の合計質量mを量り、当該合計質量mの前工程S10で量った合計質量mからの質量変化率である骨材の微粒分量Aをもとめる(作業S42)。具体的な計算式は上記式(1)を用いる。
【0037】
JIS A 1103の試験の規定に準拠するには、上述した工程S10〜S40を、同時に採取した試料について2回行い、その平均値をとる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態の骨材の微粒分量試験方法は、初期ふるい分け工程S20及び反復ふるい分け工程S30において、ふるい分け装置10と底盤20とを用いて、ふるい分け装置10の底部に底盤20を設置し、底盤20が設置されたふるい分け装置10の筒枠12内に水を注いで、第2の網ふるい16の位置よりも上方まで貯水させ(作業S21及び作業S34)、ふるい分け装置10内の骨材試料を水中でかき混ぜる(作業S22及び作業S35)。
これにより、骨材試料に付着する微粉をふるい分け装置10内で水に洗い落している。また、ふるい分け装置10から底盤20を取り外してふるい分け装置10内の水を排水することにより、骨材試料中の粗い粒子をふるい分け装置10内に留めている。これらの処理は、上述したJIS A 1103の骨材の微粉分量試験の工程(b)及び(c)と同等である。
ここで、本実施形態の骨材の微粒分量試験方法では、上述したJIS A 1103の骨材の微粉分量試験のように、骨材試料を洗った洗い水を、重ねた2個のふるいの上にあける際に、洗い水がふるい以外の場所にこぼれ落ちることはない。すなわち、試験の正確性を確保することができる。
【0039】
また、本実施形態の骨材の微粒分量試験方法では、反復ふるい分け工程S30にて、排水がなされたふるい分け装置10の上側に、他方のふるい分け装置10を上下反転させて連結し(作業S31)、連結されたふるい分け装置群10を上下反転させ(作業S32)、上下反転されたふるい分け装置10群の筒枠内に水を上方から注いで、ふるい分け装置群10内の骨材試料を洗浄しつつ、骨材試料を上側のふるい分け装置10から下側のふるい分け装置10に移動させる(作業S33)。
これらの処理は、上述したJIS A 1103の骨材の微粉分量試験の工程(e)に示す、重ねた2個のふるいにとどまった粒子を洗い流して試料中に戻すことと同等である。
ここで、本実施形態の骨材の微粒分量試験方法では、重ねた2個のふるいにとどまった粒子を洗い流して骨材試料に戻す際に、粒子がふるい分け装置群10内の第1又は第2の網ふるい間に残存する骨材試料以外の場所へこぼれ落ちることはない。すなわち、試験の正確性を確保することができる。
【0040】
また、本実施形態の骨材の微粒分量試験方法では、後工程S40にて、ふるい分け装置群10内に残存した骨材試料をふるい分け装置群10とともに乾燥させ(作業S41)、当該乾燥させた骨材試料及びふるい分け装置群10の合計質量mを量り、当該合計質量の前工程S10で量った合計質量mからの質量変化率である骨材の微粒分量Aをもとめている(作業S42)。
すなわち、本実施形態の骨材の微粒分量試験方法では、JIS A 1103の骨材の微粉分量試験の工程(e)に示すような、重ねた2個のふるいにとどまった粒子を洗い流して試料中に戻す作業は行わない。これにより、作業の効率化を図ることができる。
また、試験後に、ふるい分け装置群10に残存した骨材試料を除去する作業も、骨材試料が乾燥しているので容易である。
【0041】
また、本実施形態の骨材の微粒分量試験方法では、ふるい分け装置10として、第1の網ふるい14又は第2の網ふるい16と筒枠12との境界部分に、目張り18がなされたものを用いているので、試験中に骨材試料が詰まりやすい筒枠12との境界部分に、骨材試料を詰まらせることを抑制することができるので、試験の正確性の向上を図ることができる。また、試験後のふるい分け装置10に残存した骨材試料の除去作業も簡単である。
【0042】
また、本実施形態の骨材の微粒分量試験方法では、ふるい分け装置10として、第1の網ふるい14と第2の網ふるい16との離間幅よりも、第2の網ふるい16と筒枠12の上端との離間幅の方が長いものを用い、ふるい分け装置10の底部に底盤20を設置し、底盤20が設置されたふるい分け装置10の筒枠内に水を注ぐ際に、ふるい分け装置10の筒枠12の上縁部まで貯水することとしている。これにより、骨材試料を水中に十分に浸漬させた状態でかき混ぜることができるので、骨材試料を良好に洗浄することができる。
【0043】
このように、本実施形態の骨材の微粒分量試験方法によれば、JIS A 1103の規定に準拠しながら、骨材の微粉分量試験を正確かつ簡便に実施することができる。
【0044】
なお、本実施形態の骨材の微粒分量試験に用いるふるい分け装置10に取手19を設けてもよい。
図7は、取手付きのふるい分け装置10の側面図である。
【0045】
図7に示すように、取手19は、例えば、略コの字型の管材であって、その両端がふるい分け装置10の筒枠12の上部の両端に接続されており、取手19と筒枠12との囲まれた部分が少なくとも片手の指が挿入できる程度の大きさとなっている。
そして、一方のふるい分け装置10の上側に、他方のふるい分け装置10を上下反転させて連結するときに、上側のふるい分け装置10の取手19と下側のふるい分け装置10の取手19とが上下重なる位置に配置することで、これら上下に重なる両方の取手19を片手で把持できるようになっている。
これにより、連結されたふるい分け装置群10を上下反転させる作業を、かかる取手19を両手で把持して実施することにより容易に行える。
【0046】
また、本実施形態の骨材の微粒分量試験に用いたふるい分け装置10の第1の網ふるい14が設けられる部分と、第2の網ふるい16が設けられる部分とが分離可能な構成にしてもよい。
図8は、第1の網ふるい14が設けられる部分と、第2の網ふるい16が設けられる部分とが分離可能なふるい分け装置10を示す。
図8に示すように、第1の網ふるい14と第2の網ふるい16の間の筒枠12部分が切断されており、分離と連結ができるようになっている。
この構成は、市販の金属製の網ふるいで所定の目開きのものを用い、これらを二重に積み重ねることで簡単に作製できる。
この構成によれば、ふるい分け装置10内に残存した骨材試料をふるい分け装置10とともに乾燥させる際に、例えば、乾燥機の収納スペースが限定される場合でも、ふるい分け装置10を分離することにより効率良く収納スペース内に配置できる。
また、試験後にふるいから骨材試料を除去する作業もふるい分け装置10を分離して行う方が容易である。
【0047】
また、本実施形態の骨材の微粒分量試験に用いるふるい分け装置10の筒枠12として、アクリル製樹脂やガラスなどの透明な材料からなるものを用いてよい。これにより、反復ふるい分け工程S30の作業S35においてかき混ぜた水中の骨材試料を目視する際に、ふるい分け装置10をどの方向から見ても内部の様子を観察することができる。
【0048】
また、本実施形態の骨材の微粒分量試験に用いるふるい分け装置10として、筒枠12の外周に、一方のふるい分け装置10と、その上側に上下反転された他方のふるい分け装置と10との間を取り外し可能に連結するロック金具を設けてもよい。
このロック金具としては、例えば、クーラーボックスや道具箱等の蓋部を容器部に閉鎖した状態で固定したり、当該固定を解除したりするのに用いられるレバーファスナーやキャッチクリップ等を用いることができる。
かかるロック金具を用いてふるい分け装置10間を連結することにより、ふるい分け装置10群を上下反転させる作業を容易に行えるとともに、ふるい分け装置10間の連結を解除することにより、作業S34における、ふるい分け装置群10の上側のふるい分け装置10を取り外す作業にも支障をきたさない。
【符号の説明】
【0049】
10 ふるい分け装置
12 筒枠
14 第1の網ふるい
16 第2の網ふるい
18 目張り
19 取手
20 底盤
S10 前工程
S20 初期ふるい分け工程
S30 反復ふるい分け工程
S40 後工程
S11,S12,S21,S22,S23,S31,S32,S33,S34,S35,S36,S41,S42 作業

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート材料として用いられる骨材中の微粒分量を測定する試験方法であって、
網ふるいを内周に固定する筒枠と、当該筒枠内に固定された第1の網ふるいと、当該第1の網ふるいより目開きが大きく、前記筒枠内で前記第1の網ふるいの上段に固定された第2の網ふるいとを備えるふるい分け装置を2つと、前記筒枠と水密に脱着可能な底盤とを用い、
前記2つのふるい分け装置と、微粒分量を測定する骨材試料との合計質量を量る作業と、一方の前記ふるい分け装置の第2の網ふるいの上に前記骨材試料を載置する作業とを含む前工程と、
前記一方のふるい分け装置の底部に前記底盤を設置し、前記底盤が設置されたふるい分け装置の筒枠内に水を注いで、前記第2の網ふるいの位置よりも上方まで貯水する作業と、前記ふるい分け装置内の前記骨材試料を水中でかき混ぜる作業と、前記ふるい分け装置から前記底盤を取り外して前記ふるい分け装置内の水を排水する作業とを含む初期ふるい分け工程と、
排水がなされた前記ふるい分け装置の上側に、他方の前記ふるい分け装置を上下反転させて連結する作業と、連結されたふるい分け装置群を上下反転させる作業と、前記上下反転されたふるい分け装置群の筒枠内に水を上方から注いで、前記ふるい分け装置群内の骨材試料を、洗浄しつつ、上側のふるい分け装置から下側のふるい分け装置に移動させる作業と、前記ふるい分け装置群の上側のふるい分け装置を取り外し、下側のふるい分け装置の底部に前記底盤を設置し、前記底盤が設置されたふるい分け装置の筒枠内に水を注いで、前記第2の網ふるいの位置よりも上方まで貯水する作業と、前記ふるい分け装置内の骨材試料を水中でかき混ぜる作業と、前記ふるい分け装置から前記底盤を取り外して前記ふるい分け装置内の水を排水する作業とを、前記かき混ぜた水中の骨材試料が目視で確認できるまで繰り返し行う反復ふるい分け工程と、
前記ふるい分け装置群内に残存した骨材試料をふるい分け装置群とともに乾燥させる作業と、当該乾燥させた骨材試料及び前記のふるい分け装置群の合計質量を量り、当該合計質量の前記前工程で量った合計質量からの質量変化率をもとめる作業とを含む後工程と、
を含むことを特徴とする骨材微粒分量試験方法。
【請求項2】
前記第1の網ふるいとして、公称目開き0.075mmの金属製のふるいを用いるとともに、前記第2の網ふるいとして、公称目開き1.18mmの金属製のふるいを用いることを特徴とする請求項1に記載の骨材微粒分量試験方法。
【請求項3】
前記ふるい分け装置として、前記第1の網ふるい又は前記第2の網ふるいと前記筒枠との境界部分に、目張りがなされたものを用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の骨材微粒分量試験方法。
【請求項4】
前記ふるい分け装置として、前記第1の網ふるいと前記第2の網ふるいとの離間幅よりも、前記第2の網ふるいと前記筒枠の上端との離間幅の方が長いものを用い、
前記ふるい分け装置の底部に前記底盤を設置し、前記底盤が設置されたふるい分け装置の筒枠内に水を注ぐ際に、前記ふるい分け装置の筒枠の上縁部まで貯水することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の骨材微粒分量試験方法。
【請求項5】
前記ふるい分け装置として、前記筒枠の外周両端に夫々取手が設けられ、前記一方のふるい分け装置の上側に、前記他方のふるい分け装置を上下反転させて連結するときに、各ふるい分け装置に設けられた取手が上下重なる位置に配置され、前記上下重なる位置に配置された両方の取手を片手で把持可能なものを用いることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の骨材微粒分量試験方法。
【請求項6】
前記ふるい分け装置として、前記第1の網ふるいが設けられる部分と、前記第2の網ふるいが設けられる部分とが分離可能なものを用いることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の骨材微粒分量試験方法。
【請求項7】
前記ふるい分け装置の前記筒枠として、透明な材料からなるものを用いることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の骨材微粒分量試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−175345(P2010−175345A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−17221(P2009−17221)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】