説明

骨材保管搬送方法および骨材ストックヤード

【課題】 海外から輸入した海砂等の骨材を海底に適切に保管することができる、骨材ストックヤードを提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明にかかる骨材ストックヤード1は、骨材を保管すべく海底に設けられた保管領域12と、前記保管領域12の周囲に設けられた囲繞部と、前記囲繞部の一部に開閉可能に設けられた船舶出入口部16とを備えたことを特徴としている。また、本発明においては、前記保管領域12が沿岸部11近傍の海底に設けられ、前記囲繞部が、沿岸部11と、前記保管領域の周囲に設けられた防波堤13,14,15とを用いて構成されていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砂、海砂、砂利、小石等の骨材を適切に保管して搬送することが可能な骨材保管搬送方法に関するものである。また、本発明は、砂、海砂、砂利、小石等の骨材を海底に適切に保管することができる骨材ストックヤードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
国内の建設工事および道路舗装工事等において、砂、海砂、砂利、小石等の骨材は、必要不可欠な材料である。したがって、一定量の骨材の供給は常時必要であって、この骨材は、国内で採取するか、あるいは海外から輸入して確保しなければならない。
【0003】
上記の通り、骨材確保のためには、国内で採取するか、海外から輸入するかのどちらかを行う必要があるが、これらの行為には、それぞれ以下のような問題がある。
【0004】
例えば、国内にて海砂の採取を行う場合には、常に環境破壊のイメージが付きまとう。つまり、海砂を採取することが、海底、海中、およびその沿岸の生態系に悪影響を及ぼすおそれがあるため、日本国内においては、海砂の採取が禁止されている県もある。また、禁止に至らずとも、漁業関係者の採取同意書等の添付を義務付けている県もあり、国内における海砂の確保は困難を極めている。さらに、その県で採取された海砂を県外に移出することを禁じている県もある。このように、我が国においては、国内における海砂の採取が今後ますます閉ざされていく傾向にあるため、今後も潜在的な海砂等の骨材の不足が懸念される。
【0005】
一方で、海砂等の骨材への依存度を低減すべく、「代替骨材」の開発も行われている。代替骨材としては、例えば、コンクリート廃材や鉄鋼スラグ等があげられる。しかし、コンクリートをリサイクルするためには、高い処理コストがかかるという問題がある。また、鉄鋼スラグについては、鉄鋼業界ではスラグ削減を目指す方向にあり、充分な量が確保できないという問題がある。つまり、いずれの「代替骨材」にも、海砂等の骨材から直ちに代替可能となるものはない。
【0006】
以上のように、国内の採取および代替骨材には種々の問題があるため、海砂等の骨材の確保を行うためには、現在の状況においては、海外からの輸入に依存せざるを得ない部分も出てくる。
【0007】
海外から骨材を輸入する場合には、当然のことながら、その骨材を保管する場所が必要となる。陸上にて骨材を保管する際の技術としては、例えば、特許文献1に記載の技術が開示されている。
【0008】
しかし、現在の我が国においては、海外から海砂・砂利等の骨材を輸入した場合であっても、その骨材を保管するための場所を確保することが非常に困難である。また、仮に骨材の保管場所を確保したとしても、海砂等の骨材を陸揚げする際における輸送コスト(岸壁の使用料等)が高いという問題がある。さらに、陸上の保管場所を確保した場合であっても、その保管場所の周辺住民に砂塵による被害を与えるおそれがある。
【0009】
【特許文献1】特開平5−321492号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は上記従来技術の問題点を解決するためになされたものであって、海外から輸入した海砂等の骨材を適切に保管して搬送することが可能な、骨材保管搬送方法を提供することを課題とする。また、本発明は、海外から輸入した海砂等の骨材を海底に適切に保管することができる、骨材ストックヤードを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかる骨材保管搬送方法は、上記課題を解決するためになされたものであって、輸送船を用いて骨材を輸送する輸送工程と、前記輸送船から海底の保管領域に対して前記骨材を移送して保管する保管工程と、必要に応じて前記保管領域から前記骨材を搬送する搬送工程とを備えたことを特徴としている。
【0012】
また、本発明にかかる骨材保管搬送方法は、輸送船を用いて骨材を輸送する輸送工程と、前記輸送船から海底の保管領域に対して前記骨材を移送して保管する保管工程と、前記保管領域上方の海上に位置する海上貯留部にて所定量の前記骨材を貯留する貯留工程と、必要に応じて前記海上貯留部から前記骨材を搬送する搬送工程とを備えたことを特徴としている。
【0013】
さらに、上述した本発明にかかる骨材保管搬送方法においては、前記保管領域から前記海上貯留部に対して前記骨材を補給する補給工程を備えた構成が好ましい。
【0014】
また、上述した本発明にかかる骨材保管搬送方法にて取り扱う骨材としては、海砂(有塩)が好ましい。海砂であれば河砂等と異なり、海底での保管に適するからである。
【0015】
本発明にかかる骨材ストックヤードは、上記課題を解決するためになされたものであって、骨材を保管すべく海底に設けられた保管領域と、前記保管領域の周囲に設けられた囲繞部と、前記囲繞部の一部に開閉可能に設けられた船舶出入口部とを備えたことを特徴としている。
【0016】
また、本発明にかかる骨材ストックヤードにおいては、前記保管領域が沿岸部近傍の海底に設けられ、前記囲繞部が、沿岸部と、前記保管領域の周囲に設けられた防波堤とを用いて構成されていることが好ましい。
【0017】
また、本発明にかかる骨材ストックヤードにおいては、前記保管領域と前記囲繞部との間に骨材流出防止部が設けられている構成が好ましい。
【0018】
また、本発明にかかる骨材ストックヤードにおいては、前記保管領域上方の海上に、所定量の前記骨材を貯留可能な海上貯留部が設けられている構成が好ましい。
【0019】
また、本発明にかかる骨材ストックヤードにおいては、前記保管領域から前記海上貯留部に対して前記骨材を補給可能な補給手段が設けられている構成が好ましい。
【0020】
また、本発明にかかる骨材ストックヤードにおいては、前記海上貯留部が船であることが好ましい。
【0021】
また、上述した本発明にかかる骨材ストックヤードにて保管する骨材としては、海砂(有塩)が好ましい。海砂であれば河砂等と異なり、海底での保管に適するからである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、海外から輸入した海砂等の骨材を適切に保管して搬送することが可能な、骨材保管搬送方法を得ることができる。また、本発明によれば、海外から輸入した海砂等の骨材を海底に適切に保管することが可能な、骨材ストックヤードを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施形態にかかる骨材ストックヤードの概略図を示したものである。ここで、図1(a)は骨材ストックヤードの上面図を示し、図1(b)は図1(a)のI−I概略断面図を示している。
【0025】
図1に示す通り、本実施形態にかかる骨材ストックヤード1は、沿岸部11近傍に設けられており、具体的には、骨材を保管すべく沿岸部11近傍の海底に設けられた保管領域12、保管領域12の外海G側に設けられた第一防波堤13、沿岸部11と略平行な位置であって第一防波堤13と連接すべく設けられた第二防波堤14、保管領域12の内海N側に設けられた第三防波堤15、保管領域12の内海N側であって第二防波堤14と第三防波堤15との間に設けられた船舶出入口部16、保管領域12と船舶出入口部16との間に設けられた汚濁水防止部17、および船舶出入口部16と汚濁水防止部17との間に設けられた骨材流出防止部(第一骨材流出防止部18,第二骨材流出防止部19)等を用いて構成されている。
【0026】
なお、本実施形態においては、保管領域12から外海(陸地から遠く離れた海)側を「外海G」と定義し、その反対方向(陸地側)を「内海N」と定義する。
【0027】
保管領域12は、沿岸部11近傍の海底に設けられており、この保管領域12の深さHは、海面Fから20m以上であることが好ましい。このように20m以上であることが好ましいのは、保管領域12に骨材を輸送してくる輸送船としては、その喫水が12m前後のものが想定されるからである。勿論、輸送船の喫水があらかじめ明確な場合には、その喫水に応じて、保管領域12の深さHを定めればよい。また、この保管領域12の面積は、必要に応じて変更可能であって、具体的には、その地形や骨材を輸送する輸送船の大きさ等によって定められる。
【0028】
第一防波堤13(本発明の「囲繞部」の構成要素に相当)は、保管領域12から外海G側に設けられている。この第一防波堤13は、外海Gと保管領域12とを明確に区分して、外海Gから保管領域12に海水が流入しないように、また、保管領域12から外海Gに海水が流出しないように、コンクリート等を用いて構成されている。
【0029】
第二防波堤14(本発明の「囲繞部」の構成要素に相当)は、沿岸部11と略平行な位置であって第一防波堤13と連接すべく設けられている。この第二防波堤14も、外海Gと保管領域12とを明確に区分して、外海G(および内海N)から保管領域12に海水が流入しないように、また、保管領域12から外海G(および内海N)に海水が流出しないように、コンクリート等を用いて構成されている。なお、この第二防波堤14は、テトラポット等を用いて構成してもよい。テトラポットを用いれば、魚礁としての利用価値も生じ、自然環境との調和のとれた海域開発を行うことができる。
【0030】
第三防波堤15(本発明の「囲繞部」の構成要素に相当)は、保管領域12から内海N側に設けられている。また、この第三防波堤15と第二防波堤14との間には、本発明の囲繞部の一部を構成する船舶出入口部16が設けられている。本実施形態は、この第三防波堤15と船舶出入口部16とを用いて、内海Nと保管領域12とを明確に区分して、内海Nから保管領域12に海水が容易に流入しないように、また、保管領域12から内海Nに海水が容易に流出しないように構成されている。第三防波堤15は、コンクリート等を用いて構成されており、船舶出入口部16は、開閉可能なドアーカーテン等を用いて構成されている。ドアーカーテンにて構成された船舶出入口部16は、第三防波堤15側および第二防波堤14側の少なくとも一方に伸縮することによって開閉移動可能に構成されている。この船舶出入口部16は、強風波浪等天候不順の場合であっても、充分耐え得る構成(材料、材質、構造等)を有することが好ましい。また、この船舶出入口部16は、干満差を充分に考慮して、その長さ(海底との間隔、ドアーカーテン等自身の上下間長さ等)を調整可能な構成であることが好ましい。さらに、この船舶出入口部16は、例えば、上部(海面あるいは海面近傍に位置する船舶出入口部16の上部)に設けられた開閉のための自動ワイヤ装置等によって、開閉作動可能に構成されていることが好ましい。
【0031】
上述したように、本実施形態においては、保管領域12が、第一防波堤13、第二防波堤14、第三防波堤15、および船舶出入口部16を用いて取り囲まれているため、これらが、本発明の「囲繞部」に相当する。すなわち、第一防波堤13、第二防波堤14、第三防波堤15、および船舶出入口部16を用いて構成された囲繞部によって、保管領域12が内海Nおよび外海Gから隔離されている。
【0032】
汚濁水防止部17は、保管領域12と船舶出入口部16との間に設けられている。この汚濁水防止部17は、輸送船(後述する)から保管領域12に対して骨材を移送する際に発生する汚濁水の流出(内海N側への流出)を防止するために設けられている。この汚濁水防止部17は、輸送船が出入りするために開閉可能なドアーカーテン等を用いて構成されており、沿岸部11側および第二防波堤14側の少なくとも一方に伸縮することによって開閉移動可能に構成されている。この汚濁水防止部17も、船舶出入口部16と同様に、強風波浪等天候不順の場合であっても、充分耐え得る構成(材料、材質、構造等)を有することが好ましい。また、この汚濁水防止部17は、干満差を充分に考慮して、その長さ(海底との間隔、ドアーカーテン等自身の上下間長さ等)を調整可能な構成であることが好ましい。さらに、この汚濁水防止部17は、例えば、上部(海面あるいは海面近傍に位置する汚濁水防止部17の上部)に設けられた開閉のための自動ワイヤ装置等によって、開閉作動可能に構成されていることが好ましい。
【0033】
骨材流出防止部は、船舶出入口部16と汚濁水防止部17との間に設けられている。本実施形態においては、図1に示す通り、骨材流出防止部として、第一骨材流出防止部18と第二骨材流出防止部19との二つの骨材流出防止部が設けられており、骨材流出防止部の上部と海面との差Lは15m以上あることが好ましい。このように15m以上であることが好ましいのは、保管領域12に骨材を輸送してくる輸送船としては、その喫水が12m前後のものが想定されるからである。勿論、輸送船の喫水があらかじめ明確な場合には、その喫水に応じて、骨材流出防止部の上部と海面との差Lを定めればよい。また、これらの骨材流出防止部18,19は、保管領域12から内海N側へ骨材が流出するのを防止すべく、保管領域12と船舶出入口部16との間の海底に設けられており、具体的には図5に示すように構成されている。
【0034】
図5は、図1に示した骨材流出防止部18,19の概略斜視図を示したものである。この図5に示すように、本実施形態にかかる骨材流出防止部18,19は、古タイヤ51をピラミッド状に積層して構成されている。このような構成によれば、古タイヤ51を用いることによって、環境にやさしい(リサイクル可能な)骨材流出防止部18,19を得ることができる。また、古タイヤ51(すなわちゴム製品)を用いているため、船舶が出入りする際において、万が一船舶の船底が骨材流出防止部18,19に接触することがあったとしても、船底の損傷を最小限に抑えることができる。さらに、古タイヤ51を用いるため、設置作業を簡単に行うことができ、同様に、撤去作業も簡単に行うことができる。また、古タイヤ51の使用によって、その内部に凹凸を複数有する骨材流出防止部となるため、魚礁としての利用価値も得ることができる。
【0035】
本実施形態にかかる骨材ストックヤード1は、以上のように構成されており、本実施形態によれば、この骨材ストックヤード1を用いることによって、海外から輸入した海砂等の骨材を適切に保管して搬送することが可能な、骨材保管搬送方法を得ることができる。以下、上述した図1および図5に加え、図2〜図4を用いて、本実施形態にかかる骨材保管搬送方法を具体的に説明する。
【0036】
図2は、本実施形態にかかる骨材ストックヤードの保管領域に輸送船から骨材を移送する際の概略図を示したものであって、図2(a)は上面図を示し、図2(b)は図2(a)のII−II概略断面図を示している。また、図3は、本実施形態にかかる骨材ストックヤードの保管領域上方の海上に海上貯留部たる船が位置する際の概略図を示したものであって、図3(a)は上面図を示し、図3(b)は図3(a)のIII−III概略断面図を示している。さらに、図4は、本実施形態にかかる骨材ストックヤードの保管領域上方の海上にて海上貯留部から骨材を搬送する際の概略図を示したものであって、図4(a)は上面図を示し、図4(b)は図4(a)のIV−IV概略断面図を示している。
【0037】
まず、本実施形態においては、中国等の海外から骨材を輸送船20によって輸送してきて(本発明にかかる「輸送工程」に相当)、この輸送船20から海底の保管領域12に対して骨材K0を移送して保管する(本発明の「保管工程」に相当)(図2参照)。このように、輸送船20から保管領域12上に移送された骨材Kは、必要に応じて保管領域12から搬送されることとなる(本発明の「搬送工程」に相当)。
【0038】
この輸送船20が保管領域12上方の海上に出入りする際には、当然のことながら、船舶出入口部16と汚濁水防止部17との開閉作業が行われる。そして、輸送船20が保管領域12上方の海上に位置した後、輸送船20からの骨材K0の移送作業等が終了して所定時間が経過するまでは(骨材の沈降状態が落ち着くまでは、換言すれば海面および海中の汚濁状態がある程度回復されるまでは)、船舶出入口部16と汚濁水防止部17とは閉止状態が維持される。
【0039】
本実施形態によれば、以上のような輸送工程後の保管工程あるいは搬送工程を行う場合であっても(骨材K0あるいは骨材Kが海中を移動中であっても)、保管領域12の外海G側には第一防波堤13および第二防波堤14が設けられているため、骨材K,K0が外海Gに流出することはない。また、保管領域12の内海N側には、汚濁水防止部17および二つの骨材流出部18,19が設けられているため、内海N側にも骨材K,K0が流出することはない。
【0040】
また、本実施形態においては、図1に示すように、底開き式の船底21を有する輸送船20が用いられるため、輸送船20から保管領域12へ骨材K0を移送(落下)させる際の骨材の流動を防ぎ、汚濁水の発生を最小限に抑えることができる。なお、輸送船から保管領域12への骨材移送方法は、この底開き式の輸送船20を用いた方法に限定されるものではなく、必要に応じて種々の方法が適用可能である。例えば、輸送船の船底近傍からベルトコンベア等を用いて骨材を保管領域12に移送するような方法でもよい。
【0041】
本実施形態は、上述の通り骨材の流出防止に万全を期しているが、必要に応じて、輸送船20から海底の保管領域12に対して骨材K0を移送(荷降ろし)する際(あるいは後述する荷積みを行う際)に、輸送船20の周りにオイルフェンス等を張り巡らしてもよい。このような構成であれば、より確実に、汚濁水防止部17の手前で骨材の流出を防止することができる。
【0042】
次いで、本実施形態においては、保管領域12上方の海上に、所定量の骨材K1を貯留可能な海上貯留船30(本発明の「海上貯留部」に相当)が配置されている。そして、必要に応じて、この海上貯留船30中に、保管領域12の骨材Kが所定量(骨材K1)貯留される(本発明の「貯留工程」に相当)(図3参照)。
【0043】
海上貯留船30は、通常の航行が可能な船舶であって、船中に所定量の骨材K1を貯留可能な構成を有する。加えて、保管領域12上方の海上に位置した状態で、保管領域12に保管されている骨材Kから必要な量の骨材を海上貯留船30内に補給可能な補給手段を有している。この補給手段は、保管領域12に保管されている骨材Kから必要な量の骨材を海上貯留船30内に補給可能であれば如何なる構成であってもよい。本実施形態においては、その一例として、海上貯留船30と保管領域12とを結んだ補給パイプ31と、この補給パイプ31の海底側先端部に設けられた吸引部32とを用いて構成された補給手段が示されている。吸引部32は、例えば水中ポンプ等を用いて構成されている。
【0044】
この海上貯留船30のみが保管領域12上方の海上に位置しているときは、基本的に、船舶出入口部16と汚濁水防止部17とについては閉止状態が維持される。そして、輸送船20あるいは後述する骨材搬送船が保管領域12上方の海上に出入りする際には、船舶出入口部16と汚濁水防止部17との開閉作業が行われる。また、海上貯留船30に対する骨材の補給工程(後述する)が行われる場合には、基本的に、船舶出入口部16と汚濁水防止部17とについては閉止状態が維持される。
【0045】
上述したように、本実施形態においては、この海上貯留船30は、骨材ストックヤード1中に常時待機すべく構成されている。すなわち、本実施形態によれば、骨材ストックヤード1中の骨材の一部は、常に海上貯留船30に貯留された状態となっている。このような構成によれば、骨材の一部を海中から取り出して乾燥した状態で保持することが可能となる。
【0046】
次いで、本実施形態においては、海上貯留船30から骨材を移送して搬送することが可能な骨材搬送船40を用いて、骨材の搬送が行われる(本発明の「搬送工程」に相当)(図4参照)。
【0047】
骨材搬送船40は、通常の航行が可能な船舶であって、船中に所定量の骨材K2を貯留して、その骨材K2を必要とする場所まで搬送可能な構成を有する。また、この骨材搬送船40は、海上貯留船30内の骨材K1から必要な量の骨材を骨材搬送船40内に移送可能な移送手段を有している。この移送手段は、海上貯留船30内から必要な量の骨材を骨材搬送船40内に移送可能であれば如何なる構成であってもよい。本実施形態においては、その一例として、海上貯留船30と骨材搬送船40とを結んだ移送パイプ41と、この移送パイプ41の海上貯留船30側先端部に設けられた吸引部42とを用いて構成された移送手段が示されている。吸引部42は、例えば、水中ポンプあるいはバケット等を用いて構成されている。
【0048】
本実施形態においては、骨材搬送船40が保管領域12上方の海上に出入りする際には、船舶出入口部16と汚濁水防止部17との開閉作業が行われる。また、骨材搬送船40が保管領域12上方の海上に位置しているときは、基本的に、船舶出入口部16と汚濁水防止部17とについては閉止状態が維持される。そして、骨材搬送船40が保管領域12上方の海上に位置した後、海上貯留船30からの骨材K1の移送作業を行う場合であって、あわせて保管領域12から海上貯留船30への補給工程も行われた場合には、その補給工程が終了して所定時間が経過するまでは(骨材の沈降状態が落ち着くまでは、換言すれば海面および海中の汚濁状態がある程度回復されるまでは)、船舶出入口部16と汚濁水防止部17とは閉止状態が維持される。一方、単に海上貯留船30から骨材搬送船40への骨材の移送のみが行われた場合には、移送工程終了後、直ちに船舶出入口部16と汚濁水防止部17との開閉作業を行って、骨材搬送船40を骨材ストックヤード1の外部に移動させてもよい。これは、海中の骨材Kの移動がないからである。
【0049】
なお、本実施形態においては、骨材搬送船40が、海上貯留船30から骨材を移送するための移送手段(移送パイプ41および吸引部42)を有する場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されず、必要に応じて、このような移送手段を海上貯留船30が有していてもよい。
【0050】
本実施形態においては、図1等に示すように、沿岸部の入江等に防波堤やテトラポット等を敷設し、外海からの波を最小限に食い止め、入江等の内部においては、骨材投下時および骨材採取時における汚濁水の流出を最小限に留めるべく、種々の工夫をこらした骨材ストックヤード1が提案されている。したがって、本実施形態によれば、上記骨材ストックヤード1を用いて上述した骨材保管搬送方法が実施されることによって、次のような効果を得ることができる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態は、海底に骨材ストックヤード1を設ける構成であるため、陸上に骨材の保管場所等を確保する必要がない。つまり、本実施形態によれば、陸上にて、大型バースや大型ストックヤードを探す必要がなく、荷揚地ヤードの環境管理等を行う必要もない。また、輸送船が入港した後には、輸送船中の骨材を海底(の骨材ストックヤード1)に投下すればよいため、予定入出港変更に伴う待機船の手配や港湾エージェントへの手配調整等も行う必要がない。
【0052】
また、本実施形態は、輸送船中の骨材を海底に投下する構成であって、底開き式の輸送船が用いられているため、従来の陸上に骨材を荷揚げする場合と比較して、骨材の移送保管作業を効率よく短時間で行うことができる。例えば、本実施形態によれば、輸送船が入港してから再度出港するまでの時間を半日程度に短縮することができる(従来は、2日〜4日程度を要していた)。
【0053】
また、大型船を用いて骨材輸入を行うことはコスト低減に大きく寄与することではあるが、国内には大型船が停泊可能なバースが数える程しかないため、大型船を用いた輸入を行うことが困難であった。しかしながら、上記の通り、本実施形態においては海底に骨材ストックヤード1を設けるため、保管場所の確保が容易となって、大型船を用いた骨材輸入を比較的容易に行うことができる。つまり、比較的低コストにて骨材輸入を行うことができる。
【0054】
また、本実施形態によれば、海底に骨材ストックヤード1を設けたため、砂塵による被害をその地域周辺住民に与えることがなくなる。
【0055】
また、本実施形態によれば、日本近海の海砂採取の頻度を低減させることが可能となるため、環境破壊を抑えることができる。
【0056】
また、本実施形態においては、骨材ストックヤード1中の骨材の一部は、常に海上貯留船30に貯留された状態となっている。つまり、このような構成によれば、骨材の一部を海中から取り出して乾燥した状態で保持することが可能となる。したがって、本実施形態によれば、この海上貯留船30を介して骨材の搬送を行うことによって、骨材の搬送作業、搬送時の計量作業等を容易に行い、効率的な骨材搬送作業を実現することができる。
【0057】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で必要に応じて種々の変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0058】
上記実施形態においては、図1にて骨材ストックヤード1を説明したが、本発明は、この図1の状態のみが骨材ストックヤードなのではなく、例えば、図3に示したように、海上貯留部として機能する海上貯留船30を含めた状態を「骨材ストックヤード」としてもよい。つまり、保管領域12上方の海上に、常に海上貯留部を有した状態を「骨材ストックヤード」としてもよい。
【0059】
また、上記実施形態においては、海上貯留部が「船」を用いた場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されず、保管領域12上方の海上に常に位置し、所定量の骨材を貯留可能な構成であれば、如何なるものであってもよい。例えば、作業台船(バージ類)等があげられる。
【0060】
また、上記実施形態においては、第一防波堤13、第二防波堤14、第三防波堤15、および船舶出入口部16を用いて保管領域12の周囲に設けられた「囲繞部」を構成する場合について説明したが本発明はこの構成に限定されず、保管領域12にて骨材が適切に保管可能であれば、如何なる構成を有してもよい。したがって、例えば、上記のように複数の防波堤にて構成されている必要はなく、例えば、その一部に船舶出入口部を有する円形の囲繞部としてもよい。
【0061】
また、上記実施形態においては、二つの(二列に構成された)骨材流出防止部18,19を有する構成について説明したが、本発明はこの構成に限定されず、一列あるいは三列以上の構成としてもよい。さらに、これらの骨材流出防止部の高さは同一である必要はない。また、上記実施形態においては、骨材流出防止部18,19が古タイヤ51を用いて構成される場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されず、骨材の流出を適切に防止し、仮に輸送船等の船底に接触したとしても船底の損傷を最小限に抑えることができるものであれば、如何なるものを用いて構成してもよい。例えば、他のゴム部材、衝撃吸収材等があげられる。
【0062】
また、上記実施形態においては、海上貯留船を介し骨材搬送船を用いて骨材を搬送する場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されない。したがって、例えば、骨材ストックヤード1の保管領域12から直接的に骨材を採取して、そのまま骨材の搬送を行ってもよい。具体的には、これまで海底の海砂採取のために使用されていた海砂採取船を用いて、保管領域12から海砂を採取して、その海砂採取船を用いて骨材(海砂)の搬送を行ってもよい。このような構成によれば、これまで使用してきた海砂採取船を用いて従来通りの作業工程にて、容易に骨材の搬送処理等を行うことができる。また、海砂採取船を有効活用することができる。
【0063】
また、上記実施形態においては、海上貯留船を介し骨材搬送船を用いて骨材を搬送する場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されない。したがって、例えば、骨材ストックヤード1の保管領域12と沿岸部11との間に骨材移送用の移送パイプ等を設け、沿岸部11に設けられたトラック等に移送パイプ等を介し骨材を移送して搬送処理を行ってもよい。つまり、まずは海底に骨材をストックした後に、陸上輸送手段等を用いて、骨材の搬送を行ってもよい。
【0064】
また、上記実施形態においては、船舶(輸送船20,海上貯留船30,骨材搬送船40)を係留するための手段については特に説明しなかったが、船舶の安全性、作業時の安定性等を確保するために、本発明にかかる骨材ストックヤードにおいては、当然のことながら、何等かの係留手段が設けられている。具体的には、例えば、沿岸部11、第一防波堤、および第二防波堤14の少なくともいずれかの箇所に、ピット等の係留手段が設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施形態にかかる骨材ストックヤードの概略図を示したものであって、図1(a)は骨材ストックヤードの上面図を示し、図1(b)は図1(a)のI−I概略断面図を示している。
【図2】本実施形態にかかる骨材ストックヤードの保管領域に輸送船から骨材を移送する際の概略図を示したものであって、図2(a)は上面図を示し、図2(b)は図2(a)のII−II概略断面図を示している。
【図3】本実施形態にかかる骨材ストックヤードの保管領域上方の海上に海上貯留部たる船が位置する際の概略図を示したものであって、図3(a)は上面図を示し、図3(b)は図3(a)のIII−III概略断面図を示している。
【図4】本実施形態にかかる骨材ストックヤードの保管領域上方の海上にて海上貯留部から骨材を搬送する際の概略図を示したものであって、図4(a)は上面図を示し、図4(b)は図4(a)のIV−IV概略断面図を示している。
【図5】本発明の実施形態にかかる骨材流出防止部の概略斜視図を示したものである。
【符号の説明】
【0066】
1 骨材ストックヤード
11 沿岸部
12 保管領域
13 第一防波堤
14 第二防波堤
15 第三防波堤
16 船舶出入口部
17 汚濁水防止部
18 第一骨材流出防止部
19 第二骨材流出防止部
20 輸送船
21 船底(底開き式の船底)
30 海上貯留船
31 補給パイプ
32 吸引部
40 骨材搬送船40
41 移送パイプ
42 吸引部
51 古タイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸送船を用いて骨材を輸送する輸送工程と、前記輸送船から海底の保管領域に対して前記骨材を移送して保管する保管工程と、必要に応じて前記保管領域から前記骨材を搬送する搬送工程とを備えた
ことを特徴とする骨材保管搬送方法。
【請求項2】
輸送船を用いて骨材を輸送する輸送工程と、前記輸送船から海底の保管領域に対して前記骨材を移送して保管する保管工程と、前記保管領域上方の海上に位置する海上貯留部にて所定量の前記骨材を貯留する貯留工程と、必要に応じて前記海上貯留部から前記骨材を搬送する搬送工程とを備えた
ことを特徴とする骨材保管搬送方法。
【請求項3】
前記保管領域から前記海上貯留部に対して前記骨材を補給する補給工程を備えた
請求項2に記載の骨材保管搬送方法。
【請求項4】
骨材を保管すべく海底に設けられた保管領域と、前記保管領域の周囲に設けられた囲繞部と、前記囲繞部の一部に開閉可能に設けられた船舶出入口部とを備えた
ことを特徴とする骨材ストックヤード。
【請求項5】
前記保管領域が沿岸部近傍の海底に設けられ、
前記囲繞部が、沿岸部と、前記保管領域の周囲に設けられた防波堤とを用いて構成されている
請求項4に記載の骨材ストックヤード。
【請求項6】
前記保管領域と前記囲繞部との間に骨材流出防止部が設けられている
請求項4または5に記載の骨材ストックヤード。
【請求項7】
前記保管領域上方の海上に、所定量の前記骨材を貯留可能な海上貯留部が設けられている
請求項4から6のいずれか1項に記載の骨材ストックヤード。
【請求項8】
前記保管領域から前記海上貯留部に対して前記骨材を補給可能な補給手段が設けられている
請求項7に記載の骨材ストックヤード。
【請求項9】
前記海上貯留部が船である
請求項7または8に記載の骨材ストックヤード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−151520(P2006−151520A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−340030(P2004−340030)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(504435737)九州宇鴻有限会社 (1)
【Fターム(参考)】