説明

骨材含有仕上げ層の改修方法

【課題】
本発明は、既存の骨材含有仕上げ層の劣化した表層を除去したものを新たな仕上げ層とする改修方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明は、合成樹脂中に有色の骨材が分散されてなり、膜厚2mm以上の骨材含有仕上げ層の改修方法であって、劣化した骨材含有仕上げ層の表面に塗膜剥離剤を塗布する第1工程と、水圧3〜10MPaの高水圧で骨材含有仕上げ層の表面を洗浄する第2工程とを順次行うことを特徴とする骨材含有仕上げ層の改修方法である。更に、第2工程の後に、クリヤー塗料を塗装してクリヤー塗膜層を形成する第3工程を行なってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物等の壁面を保護するために設けられ、透明な合成樹脂中に有色の骨材が分散されてなる骨材含有仕上げ層の改修方法に関する。特に、表面が劣化した骨材含有仕上げ層の改修を対象としたものである。
【0002】
前記の透明な合成樹脂とは、合成樹脂中に分散された骨材の色調や形状が確認できる程度の透明性をもつ合成樹脂である。また、本明細書では、骨材含有仕上げ層における骨材と充填材以外の成分、例えば、合成樹脂が含有する添加剤成分なども合成樹脂の成分の一部として扱っている。
【0003】
なお、劣化した骨材含有仕上げ層においては、合成樹脂が劣化して、主に骨材含有仕上げ層の表層にクラックが発生したり、チョーキングしたり、合成樹脂が変色したりすることによって、合成樹脂の透明性が損なわれている場合もある。
【0004】
また、本明細書に記載の骨材含有仕上げ層は、合成樹脂の種類や骨材の色調が異なる2種類以上の層を積層して形成されたものや、透明な合成樹脂中に有色の骨材が分散されてなる層の表面に透明な合成樹脂による層(クリヤー塗料層など)が形成されているものも含む。
【背景技術】
【0005】
従来、建築物に代表される構造物の外壁、内壁等の壁面を保護し、壁面に美観を付与することを目的として、壁面の表層には仕上げ層が形成されている。仕上げ層を形成する方法としては、壁面に塗料(塗材、仕上げ材なども含む。)を塗装する方法や、壁面にシート状や板状の建材を貼り付けたり、取り付けたりする方法などが一般的である。
【0006】
本発明は、このような仕上げ層の中でも、合成樹脂中に有色の骨材が分散されてなる骨材含有仕上げ層の改修に関する。
前記合成樹脂は、その中に分散された骨材の色が視認できる程度の透明度を有しており、骨材含有仕上げ層は、その骨材の色調や形状・質感などによって石材のような仕上がりとなる。
【0007】
壁面に骨材含有仕上げ層を形成する方法の例として、特許文献1,2などが挙げられる。
【0008】
特許文献1には、建築物に代表される構造物の外壁、内壁及び天井等の仕上げを行うために塗装する塗材として、有色骨材と合成樹脂とを主成分とする塗材において、ヒンダードアミンライトスタビライザー(HALS)を添加したことを特徴とする有色骨材含有塗材が記載されている。そして、有色骨材含有塗材を壁面等に塗布して塗膜を形成することが記載されている。また、有色骨材含有塗材を可撓性のある基材に塗装したシート状表装材を接着材も用いて壁面等に貼り付けることができることも記載されている。
【0009】
特許文献2には、壁面等に用いられる建材であって、無機質窯業系建材,金属サイディング,合成樹脂板,石膏ボード,繊維板等の板状壁面構成要素からなる基材とベース層上に粒径0.03〜4.0mmにある陶磁器砕粒,予め着色された細骨材もしくは天然石よりなる細骨材を単色あるいは複色,合成樹脂中に均一ないし斑点模様,縞模様,流れ模様に展開した化粧材層とを接着剤層によって積層してなることを特徴とする表面化粧建材が記載されている。
【0010】
なお、特許文献1の有色骨材含有塗材を塗装して形成された塗膜、特許文献2の化粧材層が、本明細書における骨材含有仕上げ層にあたる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−371239号公報
【特許文献2】特開号平7−292926公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このように壁面に形成された骨材含有仕上げ層は、建築物等に施工された後には、太陽光の紫外線、雨水や結露等の水、熱等の劣化要因によって徐々に劣化する。この劣化は、劣化要因の影響を受けやすい骨材含有仕上げ層の表面から進行する。そのため、劣化した骨材含有仕上げ層では、表面は劣化しているが深部には劣化が進行していない層が残っている場合が多い。特に骨材含有仕上げ層の厚みが厚い場合にこの傾向が顕著であった。
【0013】
表面が劣化した骨材含有仕上げ層は、劣化によって表層の強度が低下しており、そのまま再塗装を行なうと、再塗装後の塗膜が容易に剥離してしまうという問題点があった。そのため、ブラスト、サンダー、グラインダー等の工具や塗膜剥離剤を用いるなどして骨材含有仕上げ層を除去した後に、新たな塗料を再塗装する改修方法が採用されている。この方法では、再塗装後の仕上がりは再塗装に用いた塗料によって付与された意匠となる。
【0014】
塗膜を除去する際には、骨材含有仕上げ層の劣化した表層を除去して、劣化が進行していない深部を残すことも行なわれるが、上記したような方法では、劣化した部分だけを除去することが難しい。また、工具による削り跡などの既存骨材含有仕上げ層にはないような不陸ができるため、表層を除去した骨材含有仕上げ層をそのまま仕上げとすることは難しく、再塗装をする必要があった。また、再塗装する塗材は不陸を隠すことができる厚塗りの塗料を用いるか、下地調整材などで不陸のない下地を作った後に適宜選択した塗料で再塗装する必要があった。
【0015】
表層を除去した既存の骨材含有仕上げ層をそのまま新たな模様層(新たな仕上げ層)とできれば、再塗装の必要もなく、少ない工程で改修が可能であるため、劣化した骨材含有仕上げ層の表層のみを除去する方法が求められていた。
【0016】
本発明は、上記課題を解決するものであって、既存の骨材含有仕上げ層の劣化した表層を除去したものを新たな仕上げ層とする改修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1に記載の発明は、合成樹脂中に有色の骨材が分散されてなり、膜厚2mm以上の骨材含有仕上げ層の改修方法であって、劣化した骨材含有仕上げ層の表面に塗膜剥離剤を塗布する第1工程と、水圧3〜10MPaの高水圧で骨材含有仕上げ層の表面を洗浄する第2工程とを順次行うことを特徴とする骨材含有仕上げ層の改修方法である。
【0018】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記塗膜剥離剤が、アルコール類、エステル類、及び窒素化合物よりなる群から選ばれる1種以上の有機溶剤を合計で80質量%以上含有し、塗膜剥離剤の第1工程における塗布量が0.1〜1.5kg/m2 であることを特徴とする。
【0019】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記第2工程の後に、クリヤー塗料を塗装してクリヤー塗膜層を形成する第3工程を行なうことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の発明によると、既存の骨材含有仕上げ層の劣化した表層のみを除去することができる。骨材含有仕上げ層は層全体に均一に骨材が分散されているので、表層を除去した部分ももともとの骨材含有仕上げ層と同様に骨材による意匠を備えており、そのまま新たな仕上げ層とすることができる。
【0021】
請求項2に記載の発明によると、請求項1に記載の発明の効果に加え、容易に骨材含有仕上げ層の表層のみを適度に軟化・膨潤させることができる。
【0022】
請求項3に記載の発明によると、請求項1又は2に記載の発明の効果に加え、新たな仕上げ層の耐候性等を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、建物等の壁面に施工された骨材含有仕上げ層の改修方法である。壁面に施工された骨材含有仕上げ層は、太陽光の紫外線、雨水や結露等の水、熱等の劣化要因によって徐々に劣化する。この劣化は、劣化要因の影響を受けやすい骨材含有仕上げ層の表面から進行する。そのため、骨材含有仕上げ層の表面は劣化しているが、深部は表面ほど劣化していない。
以下の説明においては、骨材含有仕上げ層の表面の劣化が進行している部分を「表層」、表層を除いた部分(深部)を「深層」という。
【0024】
本発明の改修方法は、骨材含有仕上げ層の劣化した表層を除去して深層を露出させて新たな仕上げ層とする方法である。
【0025】
改修の対象となる骨材含有仕上げ層は、透明な合成樹脂中に有色の骨材が分散されてなる仕上げ層である。
骨材含有仕上げ層は塗装などによって壁面に直接施工されたものであっても、シート状や板状の建材として壁面に貼り付けられたり、取り付けられたりしたものであっても、壁面に設置された建材の表面に設けられたものであってもよい。
【0026】
また、前記骨材含有仕上げ層中の合成樹脂及び骨材の含有率は、好ましくは、骨材含有仕上げ層の全質量に対して合成樹脂が10〜80質量%、骨材が20〜90質量%であり、より好ましくは合成樹脂が10〜50質量%、骨材が50〜90質量%である。合成樹脂が多すぎるものは、本改修方法を用いても、劣化している部分のみを上手く除去することが難しい。逆に、合成樹脂が少なすぎるものは、本改修方法を用いると劣化が進行していない深層まで除去されてしまい新たな仕上げ層を形成できない場合がある。
【0027】
透明な合成樹脂は、建築外装用に使用されるものなら特に限定されない。具体的には、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ビニル樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ポリブタジエン樹脂、フッ素樹脂等を挙げることができる。また、これらの合成樹脂に、添加剤や、合成樹脂中に分散された骨材の色調や形状が確認できる程度の透明性を損なわない程度の少量の着色顔料等を含んだものであってもよい。
【0028】
また、有色の骨材は、例えば、珪砂、寒水砂、陶磁器粉砕物、ガラス又はプラスチックからなるビーズや粉砕物、黒曜石、真珠岩、ガラス発泡体などの軽量骨材、並びに、寒水石、珪石、大理石、御影石を含む天然石を粉砕したものなどである。また、これらの骨材の表面に塗料などで着色した着色骨材であってもよい。これらの骨材の粒径は、篩分級した場合において粒径35〜2500μmである。
【0029】
本発明の改修方法では、骨材含有仕上げ層の劣化した表層を除去して深層を露出させて新たな仕上げ層とするため、深層は仕上げ層となり得る十分な厚みがあることが好ましい。また、膜厚が薄いと後述する工程によって表層を除去することによって基材が露出してしまう場合があるため、改修前の骨材含有仕上げ層は十分な厚みがあることが好ましい。具体的には、本発明の改修方法を適用する骨材含有仕上げ層の膜厚は2mm以上が好ましく、3mm以上がより好ましい。
【0030】
このような骨材含有仕上げ層の改修を以下の工程で行なう。
まず、第1工程として、劣化した骨材含有仕上げ層の表面に塗膜剥離剤を塗布する。その際の塗布量は、好ましくは0.1〜1.5kg/m2、より好ましくは0.5〜1.0kg/m2 である。
塗膜剥離剤を塗布することによって、骨材含有仕上げ層の表層を軟化・膨潤させて第2工程の洗浄によって表層が除去できるようになる。ここで塗布量が少なすぎると表層を適度に軟化・膨潤させることができず、第2工程の洗浄によって表層を完全に除去できない。逆に、塗布量が多すぎると深層まで軟化・膨潤してしまい、第2工程の洗浄によって深層まで除去されてしまう。
【0031】
前記塗膜剥離剤は、アルコール類、エステル類、及び窒素化合物よりなる群から選ばれる1種以上の有機溶剤を主成分として含有するものが好ましい。なお、アルコール類、エステル類、及び窒素化合物よりなる群から選ばれる1種以上の有機溶剤の含有率の合計は、塗膜剥離剤の全量に対して好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上である。
このような組成の塗膜剥離剤を用いることによって、骨材含有仕上げ層の表層を適度に軟化・膨潤させることができる。
【0032】
より容易に骨材含有仕上げ層の表層のみを適度に軟化・膨潤させるためには、有機溶剤としてアルコール類、エステル類、及び窒素化合物をすべて含有し、それらの含有率が、塗膜剥離剤に対してアルコール類1〜5質量%、エステル類60〜70質量%、窒素化合物20〜30質量%であるものを用いることが好ましい。
【0033】
前記有機溶剤としては、例えば、「溶剤ポケットブック(オーム社、1994年6月1日発行)」等に記載されているものを用いればよい。アルコール類としてメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、n-ブタノール、n-ヘキサノール、n-オクタノール、ベンジンアルコール等;エステル類としてギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸−n−ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸−n−ブチル等;窒素化合物としてニトロベンゼン、n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、アセトニトリル、トリエチルアミン、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルホルムアミド等を挙げることができる。
【0034】
本発明に用いる塗膜剥離剤は、ハロゲン化炭化水素(ハロゲン系溶剤)を実質的に含有しないことが望ましい。ここでいう「実質的に含有しない」とは、塗膜剥離剤に対してハロゲン化炭化水素の含有量が0.5質量%以下、好ましくは一切含有しない(即ち、含有量0質量%)ことを意味する。
塗膜剥離剤として一般によく用いられているジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素を含有する塗膜剥離剤は、骨材含有仕上げ層に対する溶解力が強く、骨材含有仕上げ層の深層まで軟化・膨潤してしまい、表層だけを適度に軟化させることが難しいため、後述する第2工程での洗浄によって骨材含有仕上げ層の深層まで剥離されてしまう。また、ハロゲン系溶剤は流出すると周辺環境を汚染するため、好ましくない。
【0035】
なお、ハロゲン化炭化水素を含有せず、アルコール類、エステル類、及び窒素化合物よりなる群から選ばれる1種以上の有機溶剤を合計で80質量%以上含有する組成の塗膜剥離剤を用いる場合には、塗膜剥離剤を塗装した後に、塗装した部分をポリエチレンフィルム等の樹脂製フィルムで覆うことによって、表層をより軟化・膨潤させることができる。また、表層が軟化・膨潤するまでの時間を短縮できる。
【0036】
次に、第2工程として、第1工程で塗布した塗膜剥離剤が乾燥する前、即ち、塗膜剥離剤によって表層が軟化・膨潤している間に水圧3〜10MPa、より好ましくは5〜8MPaの高水圧で骨材含有仕上げ層の表面を洗浄する。この水圧で表面を洗浄することによって、骨材含有仕上げ層の表層が除去され、深層が露出する。ここで水圧が小さすぎると表層を十分に除去できない場合があり、逆に、水圧が大きすぎると深層まで除去されてしまう場合がある。深層が除去されてしまうと、新たな仕上げ層となる塗膜が残らなかったり、高圧水洗後の骨材含有仕上げ層に不陸が残ったり、一部で基材が露出したりしてしまう。
【0037】
また、高水圧の水量が15〜50L(リットル)/分であれば、骨材含有仕上げ層の表層を除去して深層を露出させやすい。
【0038】
第1工程と第2工程を順次行うことで骨材含有仕上げ層の表層が除去される。このようして、表層が除去されて深層だけが残った骨材含有仕上げ層は、大きな不陸や傷もなく、また劣化も進行していないので、そのままでも新たな仕上げ層として機能する。
【0039】
更に、第3工程として、深層だけが残った骨材含有仕上げ層の表面に、クリヤー塗料を塗装してクリヤー塗膜層を形成してもよい。表面にクリヤー塗膜層を設けることで、新たな仕上げ層の耐久性や耐候性等の性能を向上させることができる。
【0040】
クリヤー塗料は、透明性を有する塗料であって、建築物の壁面等の仕上げに使用されるものなら特に限定されない。具体的には、塗膜形成性樹脂を溶媒中に分散または溶解させた塗料などを挙げることができる。塗膜形成性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ビニル樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ポリブタジエン樹脂、フッ素樹脂等を挙げられる。また、溶媒としては、水、有機溶剤等を挙げることができる。ただし、骨材含有仕上げ層に用いられている樹脂等の組成によっては、有機溶剤が骨材含有仕上げ層を溶解したり軟化させたりする恐れがあるため、水を溶媒とする水性塗料を用いることが好ましい。
また、クリヤー塗料は塗膜形成性樹脂と媒体以外にも通常の塗料に使用される添加剤、少量の顔料、充填材等を含んでいてもよい。なお、添加剤として紫外線吸収剤を含有するものを用いれば、新たな仕上げ層の耐候性をより向上させることができる。
【実施例】
【0041】
建物のコンクリート壁面に施工した後に10年が経過した骨材含有仕上げ層の改修を以下の手順で行なった。
この骨材含有仕上げ層は劣化が進行しており、劣化の程度をチェックするために樹脂製ブラシで表面を擦ったところ、表層の骨材が塗膜から脱落した。
【0042】
なお、この骨材含有仕上げ層の合成樹脂及び骨材の含有率は、合成樹脂が28質量%、骨材が72質量%であった。また、骨材含有仕上げ層は、表面に凹凸があり、厚みは最も薄い部分が4mm、最も厚い部分が6mmであった。
【0043】
(第1工程)
アルコール類1〜5質量%、エステル類60〜70質量%、窒素化合物20〜30質量%を含有する塗膜剥離剤として、菊水化学工業株式会社製「キクスイ エコリムーバー」(商品名)を用いた。
ウールローラーを用いて、この塗膜剥離剤を骨材含有仕上げ層の表面に塗布量0.6kg/m2で塗装した。
【0044】
第1工程が完了してから40分放置した後、第2工程を実施した。
なお、第2工程を実施する直前に、骨材含有仕上げ層の表面状態を指触で確認したところ、骨材含有仕上げ層の表面は塗膜剥離剤によって軟化・膨潤していた。
【0045】
(第2工程)
骨材含有仕上げ層の表面に水圧6MPaの高水圧を噴射して、骨材含有仕上げ層の表層を除去した。なお、高圧水は、水量を25L/分とし、吹き付けノズルの先端が骨材含有仕上げ層から約30cmとなる位置から、骨材含有仕上げ層に吹き付けた。
【0046】
その後、24時間放置して、骨材含有仕上げ層を乾燥させた。
骨材含有仕上げ層は劣化した表層が除去されており、厚みが約1mm薄くなっていた。
骨材含有仕上げ層の表面を樹脂製ブラシ(劣化の程度をチェックに用いたもの)で表面を擦っても、表層の骨材は塗膜から脱落しなかった。
【0047】
(第3工程)
第2工程で表層を除去した骨材含有仕上げ層の耐久性および耐候性の向上を目的として、アクリルシリコーン樹脂製のクリヤー塗料を塗装した。
【0048】
(まとめ)
改修前の骨材含有仕上げ層は、表層の骨材が脱落する程に劣化していたが、改修後の骨材含有仕上げ層では、樹脂製ブラシで擦っても骨材の脱落は見られなかった。
また、改修後の骨材含有仕上げ層は、改修前の骨材含有仕上げ層と同様に、骨材の色調や形状・質感などによる意匠性を備えていた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂中に有色の骨材が分散されてなり、膜厚2mm以上の骨材含有仕上げ層の改修方法であって、劣化した骨材含有仕上げ層の表面に塗膜剥離剤を塗布する第1工程と、水圧3〜10MPaの高水圧で骨材含有仕上げ層の表面を洗浄する第2工程とを順次行うことを特徴とする骨材含有仕上げ層の改修方法。
【請求項2】
前記塗膜剥離剤が、アルコール類、エステル類、及び窒素化合物よりなる群から選ばれる1種以上の有機溶剤を合計で80質量%以上含有し、塗膜剥離剤の第1工程における塗布量が0.1〜1.5kg/m2 であることを特徴とする請求項1に記載の骨材含有仕上げ層の改修方法。
【請求項3】
前記第2工程の後に、クリヤー塗料を塗装してクリヤー塗膜層を形成する第3工程を行なうことを特徴とする請求項1又は2に記載の骨材含有仕上げ層の改修方法。

【公開番号】特開2012−144896(P2012−144896A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3735(P2011−3735)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000159032)菊水化学工業株式会社 (121)
【Fターム(参考)】