説明

骨粗鬆症予防、改善用組成物

【課題】優れた骨粗鬆予防効果を得ることができ、しかも、天然の食用植物に由来する組成物であって、副作用がなく長期にわたって摂取できる安全な食品組成物又は医薬組成物を提供する。
【解決手段】前記課題を解決するための本発明の骨粗鬆症予防、改善用組成物は、温州ミカン果実、果皮及びじょうのう膜の溶媒抽出物を含有することを特徴とする。前記温州ミカン果実、果皮及びじょうのう膜をエタノール溶液に10〜90%(wt/wt)のn−ヘキサンを含有する混合溶媒により抽出分離したものであり、例えばカルシウム、マグネシウム、コンドロイチン、グルコサミン、キトサン、ビタミンKのうちいずれか一種以上と組み合わせて用いるとよい。温州ミカン果実、果皮及びじょうのう膜の溶媒抽出物を飲食品、食品添加物、薬品として用いるとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温州ミカンの果実、果皮及び,じょうのう膜由来の骨粗鬆症予防、改善用組成物に関するもので、飲食品、食品添加物、薬品等の素材として適用されるものである。
【発明の背景】
【0002】
近年、科学の進歩と生活水準のアップに伴い、人類の寿命が伸びている。高齢者人口の増加に伴って、骨粗鬆症は年々増加の一途をたどっており、現在、骨粗鬆症患者の数は400〜500万人といわれ、中でも、原発性骨粗鬆症に分類される閉経後骨粗鬆症は、50歳以上の更年期を過ぎた女性に高頻度に発症し、骨粗鬆症患者数の90%以上を占めることから、糖尿病に代表される生活習慣病と同様、現代社会において重要視されている疾患となっている。また、骨粗鬆症が原因で腰椎や大腿骨を骨折し、寝たきりの状態が長期化すると、痴呆を引き起こす危険性も有していることからQOL(Quality of
life)の総合的改善を目標として、骨粗鬆症の予防や治療薬或は食品の早期開発が望まれている。
【0003】
骨粗鬆症は、骨(主として海綿骨)を形成するカルシウムやコラーゲンの減少による骨量の低下と、骨組織の微細構造の退行を引き起こす全身性の骨疾患であり、骨の疼痛が発生し、骨の脆弱性、骨折のリスクを伴うことを特徴とする。骨粗鬆症は、多くの因子が直接あるいは間接的に、また多元的に関与することによって発症すると考えられている。すなわち、閉経によるエストロゲンの分泌低下、カルシウム代謝調節ホルモン、カルシウム摂取量などの栄養的因子、適度な運動および重力などの機械的ストレスなどが複雑に関与しながら骨代謝に影響を及ぼしていると考えられている。また、人の骨は絶えず吸収と再形成を繰り返しており、この骨代謝過程で中心的な働きをしている細胞が骨形成を担当する骨芽細胞と骨吸収を担当する破骨細胞である。この骨芽細胞は老化と共に、細胞数の減少が確認されている。また、骨組織の成長、維持及び修復は、骨形成速度と骨吸収速度との間のバランスに依存しており(非特許文献1)、このバランスが崩れ、石灰化能が低下すると、骨吸収が骨形成を上回り骨量が減少し、骨粗鬆症(非特許文献2、非特許文献3)やその他の疾患がもたらされる。
【非特許文献1】Chambers,T.J.,et al(1991)Vitamins Hormones 46,41−86
【非特許文献2】Suda,T.,et al(1992)Endocr.Rev.,13,66−80
【非特許文献3】Suda,T.,et al(1996)In”Principles of Bone Biology(Bilezilian,J.P.,et al.eds)”pp.87−102
【背景技術】
【0004】
骨粗鬆症の治療薬としては、カルシウム、活性型ビタミンD、エストロゲン、カルシトニン、イプリフラボン、ビタミンK及びビスホスホネート関連化合物が用いられている。しかし、これら薬物の使用は患者に高額の医療費を負担させることになり、又骨粗鬆症と診断されて初めて投与されることから骨粗鬆症を予防することができない。さらに、いずれの治療薬も治療効果が満足できるものではなく、カルシトニンについては薬剤の耐性が出現しやすいことや経口投与が不可能なこと、活性型ビタミンD3については十分な効果が得られないことや高カルシウム血症を生じやすいこと、ビスホスホネートについては骨形成を阻害してしまうこと、カルシウム剤については非常に大量の摂取を必要とすることなどの欠点をそれぞれ有している。エストロゲン製剤も、副作用の発生という点では例外でなく、6ヶ月以上にわたる長期投与の間に、顔面紅潮、乳房痛、子宮や膣からの不正性器出血などの副作用が高頻度で発生する。また、骨を強化する食品としては、現在、主にカルシウムやビタミンDが利用されている。最近では、ゲニスチンなどのイソフラボノイドが利用されようとしている。しかしながら、これらの物質を骨粗鬆症の予防のために利用するには、多量を食品中に単独添加し強化することが必要となり、食品の素材となり得ないため、食品の機能性を高めても、そのし好性を低下させるなどの問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、飲食品として食べることができ、副作用がなくかつ骨粗鬆症の予防・治療に役立つ飲食物を、自然界に産する温州ミカンの果実、果皮或いは果汁加工中に生じたじょうのう膜から骨代謝改善機能を有するものを選択、利用することを目的としている。なお、本発明において、飲食物とは、経口的に摂取される一般食品、健康食品、保健機能食品、医薬部外品及び医薬品を広く含むものをいう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明の骨粗鬆症予防、改善用組成物は、温州ミカンの果実、果皮、じょうのう膜の溶媒抽出物を含有することを特徴とする。
また、本発明の骨粗鬆症予防、改善用組成物はn−ヘキサン、エーテル、アセトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、1、3−ブチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、水の1種又は2種以上の溶媒を用いて抽出した抽出物であることを特徴とする。
また、本発明の骨粗鬆症予防、改善用組成物は、前記溶媒抽出物がエタノール溶液に10〜90%(wt/wt)のn−ヘキサンを含有する混合溶媒抽出物であることを特徴とする。
【0007】
本発明の骨粗鬆症予防、改善用組成物は破骨細胞分化抑制活性を有する溶媒抽出物であることを特徴とする
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
温州ミカンはミカン科(Rutaceae)、カンキツ属(Citrus)の植物で、日本、東南アジア、中国などで栽培され、食されている。本発明においては産地等には限定されない。
【0009】
本発明の骨粗鬆症予防、改善用組成物の抽出原料には、温州ミカン果実またはその一部など部位に制限はないが、廃棄物再利用の観点から、果皮や果汁絞り粕が好ましい。
【0010】
温州ミカンの果実、果皮、じょうのう膜から骨粗鬆症予防、改善用組成物を抽出するための溶媒としてはn−ヘキサン、エーテル、アセトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、1、3−ブチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、水等を使用することができる。これらの溶媒を2種以上混合してもよい。また、COガスによる超臨界抽出法でもよい。望ましくは、エタノール溶液に10〜90%(wt/wt)のn−ヘキサンを含有する混合溶媒として用いると、有効成分が効率よく抽出され、食品使用における安全面の上でも好ましい抽出溶媒である。抽出用の水の種類は、特に限定されず、水道水、蒸留水、ミネラル水、アルカリイオン水、深層水等を使用することができる。
【0011】
温州ミカンの果実、果皮、じょうのう膜から骨粗鬆症予防、改善用組成物を出する温度としては、例えばエタノール溶液に10〜90%(wt/wt)のn−ヘキサンを含有する混合溶媒を使用する場合、抽出温度20〜68℃、望ましくは20〜50℃程度で行うとよい。抽出温度が低すぎると、有効成分が抽出されにくくなり、また、抽出温度が高すぎると、n−ヘキサンが蒸発してしまうためである。
【0012】
温州ミカンの果実、果皮及び、じょうのう膜から骨粗鬆症予防、改善用組成物の抽出方法としては、連続抽出、浸漬抽出、向流抽出、超臨界抽出など任意の方法を採用することができ、室温ないし還流加熱下において任意の装置を使用することができる。
【0013】
温州ミカンの果実、果皮及び、じょうのう膜から骨粗鬆症予防、改善用組成物の具体的な抽出方法を示すと、抽出溶媒を満たした処理槽に抽出原料(温州ミカン果実、果皮、じょうのう膜)を投入し、攪拌しながら有効成分を溶出させる。抽出原料はそのままでもよいが、あらかじめ粉砕しておくと抽出効率がよい。例えば、抽出溶媒としてエタノール溶液に10〜90%(wt/wt)のn−ヘキサンを含有する混合溶媒を用いる場合には、抽出原料の3〜100倍量程度(重量比)の抽出溶媒を使用し、30分〜2時間程度抽出を行う。溶媒中に有効成分を溶出させた後、ろ過して抽出残渣を除くことによって抽出液を得る。その後、常法に従って抽出液に希釈、濃縮、乾燥、精製等の処理を施し、本発明による破骨細胞関連骨疾患予防、改善用組成物を得る。
【0014】
温州ミカンの果実、果皮及び、じょうのう膜の溶媒抽出物からn−ヘキサン、エーテル、アセトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、1、3−ブチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、水を用いて、再抽出方法、液液分配法、カラム分離法によりβ−クリプトキサンチンを0.001〜15%、ヘスペリジンを0.001〜15%含有する骨粗鬆症予防、改善用組成物を得る。
【0015】
【0010】

【0013】
に記載する抽出物に対して、上記の方法でβ−クリプトキサンチンを0.001〜15%、ヘスペリジンを0.001〜15%含有する骨粗鬆症予防、改善用組成物を得る。
【0016】
本発明の骨粗鬆症予防、改善用組成物は、各種飲食品の素材として使用することができる。飲食品としては、例えば、食用油(サラダ油)、菓子類(ガム、キャンディー、キャラメル、チョコレート、クッキー、スナック、ゼリー、グミ、錠菓等)、麺類(そば、うどん、ラーメン等)、乳製品(ミルク、アイスクリーム、ヨーグルト等)、調味料(味噌、醤油等)、スープ類、飲料(ジュース、コーヒー、紅茶、茶、炭酸飲料、スポーツ飲料等)をはじめとする一般食品や、健康食品(錠剤、カプセル等)、栄養補助食品(栄養ドリンク等)が挙げられる。これらの飲食品に本発明の骨粗鬆症予防、改善用組成物を適宜配合するとよい。
【0017】
これら飲食品には、その種類に応じて種々の成分を配合することができ、例えば、ブドウ糖、果糖、ショ糖、マルトース、ソルビトール、ステビオサイド、コーンシロップ、乳糖、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、L−アスコルビン酸、dl−α−トコフェロール、エリソルビン酸ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、アラビアガム、カラギーナン、カゼイン、ゼラチン、ペクチン、寒天、ビタミンB類、ビタミンK類、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、アミノ酸類、カルシウム塩類、色素、香料、保存剤等の食品素材を使用することができる。さらに、健康維持機能をもった本脂質代謝改善用組成物には、他の抗酸化物質や健康食品素材などの配剤、例えば、抗酸化物質:還元型アスコルビン酸(ビタミンC)、ビタミンE、還元型グルタチン、トコトリエノール、ビタミンA誘導体、リコピン、β−クリプトキサンチン、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、フコキサンチン、尿酸、ユビキノン、コエンザイムQ10、葉酸、ニンニクエキス、アリシン、セザミン、リグナン類、カテキン、イソフラボン、カルコン、タンニン類、フラボノイド類、クマリン、イソクマリン類、ブルーベリーエキス。健康食品素材:V.(ビタミン)A、V.B1、V.B2、V.B6、V.B12、V.C、V.D、V.E、VK、V.P、コリン、ナイアシン、パントテン酸、葉酸カルシウム、オリゴ糖、食物繊維、スクアレン、大豆レシチン、タウリン、ドナリエラ、プロテイン、オクタコサノール、卵黄レシチン、リノール酸、ラクトフェリン、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、クロム、セレン、カリウム、ヘム鉄,カキ肉エキス、キトサン、キチンオリゴ糖、シジミエキス、カンゾウ、クコシ、ケイヒ、サンザシ、生姜、霊芝、オオバコ、カミツレ、カモミール、セイヨウタンポポ、ハイビスカス、ハチミツ、ボーレン、ローヤルゼリー,ライム、ラベンダー、ローズヒップ、ローズマリー、セージ、ビフィズス菌、フェーカリス菌、ラクリス、小麦胚芽油、ゴマ油、シソ油、大豆油、中鎖脂肪酸、アガリクス、イチョウ葉エキス、ウコン、玄米胚芽エキス、レイシ、タマネギ、DHA、EPA、DPA、甜茶、冬虫夏草、ニンニク、蜂の子、パパイヤ、プーアル、プロポリス、メグスリの木、ヤブシタケ、ノコギリヤシ、ヒアルロン酸、コラーゲン、ギャバ、ハープシールオイル、サメ軟骨、コンドロイチン、ホスファチジルセリン、田七ニンジン、桑葉、大豆抽出物、エキナセア、エゾウコギ、大麦抽出物、オリーブ葉、オリーブ実、ギムネマ、バナバ、サラシア、ガルシニア、セントジョーンズワート、ナツメ、ニンジン、パッションフラワー、ブロッコリー、プラセンタ、ハトムギ、ブドウ種子、ピーナッツ種皮、ビルベリー、ブラックコホシュ、マリアアザミ、月桂樹、ラフマ、黒酢、ゴーヤー、マカ、紅花、亜麻、ウーロン茶、花棘、カフェイン、カプサイシン、キシロオリゴ糖、グルコサミン、ソバ、シトラス、プロテイン、プルーン、スピルリナ、大麦若葉、核酸、酵母、椎茸、梅肉、アミノ酸、深海鮫抽出物、ノニ、カキ肉、スッポン、シャンピニオン、アセロラ、パイナップル、バナナ、モモ、アンズ、メロン、イチゴ、ラズベリー、オレンジ、フコイダン、メシマコブ、クランベリー、コンドロイチン硫酸、シルクペプチド、グリシン、チェストツリー、セラミド、L−システイン、赤ワイン葉、ミレット、ホーステール、ビオチン、センテラアジアティカ、ハスカップ、ピクノジェノール、フキ、ルバーブ、クローブ、カテキン、クエン酸、ビール酵母、メリロート、ブランクジンガー、ショウガ、ガジュツ、ナットウキナーゼ、ベニコウジ、ラクトフェリン、シナモン、ココアも配合することができる。
【0018】
具体的な製法としては、骨粗鬆症予防、改善用組成物を粉末セルロースとともにスプレードライまたは凍結乾燥し、これを粉末、顆粒、打錠または溶液にすることで容易に飲食品(インスタント食品等)に含有させることができる。また、骨粗鬆症予防、改善用組成物を、例えば、油脂、エタノール、グリセリンあるいはこれらの混合物に溶解して液状にし、飲料に添加するか、固形食品に添加することが可能である。必要に応じてアラビアガム、デキストリン等のバインダーと混合して粉末状あるいは顆粒状にし、飲料に添加するか固形食品に添加することも可能である。
【0019】
本発明の骨粗鬆症予防、改善用組成物を飲食品に適用する場合の添加量としては、病気予防や健康維持が主な目的であるので、飲食品に対して有効成分の含量が合計1〜20wt%以下であるのが好ましい。
【0020】
本発明の骨粗鬆症予防、改善用組成物は、薬品(医薬品および医薬部外品を含む。)の素材として用いてもよい。薬品製剤用の原料に、本発明の骨粗鬆症予防、改善用組成物を適宜配合して製造することができる。本発明の骨粗鬆症予防、改善用組成物に配合しうる製剤原料としては、例えば、賦形剤(ブドウ糖、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、カカオ脂、硬化植物油、タルク等)、結合剤(蒸留水、生理食塩水、エタノール水、シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドン等)、崩壊剤(アルギン酸ナトリウム、カンテン、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、乳糖、アラビアゴム末、ゼラチン、エタノール等)、崩壊抑制剤(白糖、ステアリン、カカオ脂、水素添加油等)、吸収促進剤(第四級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸ナトリウム等)、吸着剤(グリセリン、デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、硅酸等)、滑沢剤(精製タルク、ステアリン酸塩、ポリエチレングリコール等)などが挙げられる。
【0021】
投与量は、投与方法、病状、患者の年齢等によって変化し得るが、大人では、通常、1日当たり有効成分として0.5〜5000mg、子供では通常0.5〜3000mg程度投与することができる。
骨粗鬆症予防、改善用組成物の配合比は、剤型によって適宜変更することが可能であるが、通常、経口により投与される場合は約0.3〜15.0wt%、程度にするとよい。なお、投与量は種々の条件で異なるので、前記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、また、範囲を超えて投与する必要のある場合もある。
【0022】
また、本発明の骨粗鬆症予防、改善用組成物を配合しうる医薬品の形態としては、錠剤、丸剤、軟・硬カプセル剤、細粒剤、散剤、顆粒剤、液剤等が挙げられる。
【実施例】
【0023】
以下、本発明の実施例を説明する。なお、以下に示す実施例は、本発明によって得られた組成物の骨粗鬆症予防活性を確認するために説明するもので、本発明の範囲は、これらの製品および製法に限定されるものではない。
【0024】
[骨粗鬆症予防、改善用組成物]
原料としての温州ミカン果実、果皮、じょうのう膜は、日本産,或いは中国産を用いた。まず、原料を粉砕し、エタノール溶液に50%(wt/wt)のn−ヘキサンを含有する混合溶媒で50℃において2時間抽出した。これをろ過し、そのろ液を減圧蒸留したものを溶媒抽出物とした。
【0025】
[破骨細胞抑制活性評価試験]
本発明の骨粗鬆症発症原因の一つである破骨細胞に対する分化抑制活性を調べるために、上記の温州ミカン果皮の溶媒抽出物を用いて、試験を行った。
【0026】
試験方法は、破骨細胞培養キット(ホクドー株式会社製)を用いて行った。すなわち、ラット由来の破骨細胞(バイアル2本)4×10を10mlのM−CSF 10ng/ml、RANKL10ng/mlを含有した専用培養メディウムに移して浮遊液を調製した後、96穴のplate(48穴×2枚)へ100μlづつ分注して、37℃、5%CO下で培養した。24時間後、β−クリプトキサンチン(0.05μg/ml,0.5μg/ml)、温州ミカン果皮溶媒抽出物(0μg/ml、5μg/ml、10μg/ml、50μg/ml、100μg/ml、200μg/ml、400μg/ml、600μg/ml、800μg/ml、1000μg/ml)を添加した。4日間継続培養した後、キットに添付のTRAP染色試薬を用いて破骨細胞を染色し、細胞数を計測した。
【0027】
図1と写真に示すように、温州ミカン果皮溶媒抽出物(実施例)は濃度依存的に破骨細胞の分化を抑制することがわかった。50〜400μg/mlの濃度下で細胞分化抑制率は約50%であり、1000μg/ml、800μg/ml、600μg/mlの濃度において約60%以上で、有意差が認められた。また、β−クリプトキサンチンについては、0.05μg/ml、0.5μg/mlの濃度下で、破骨細胞分化抑制活性を示した。この結果から、温州ミカン溶媒抽出物(実施例)は破骨細胞分化抑制活性があり、その作用にはβ−クリプトキサンチンの関与が示唆される。
【0028】
[温州ミカンエキスのマウス卵巣摘出骨粗鬆症モデルにおよぼす作用]
本発明のマウス卵巣摘出骨粗鬆症モデルにおよぼす作用を調べるために、温州ミカン果皮の溶媒抽出物を用いて、試験を行った。
【0029】
マウス(ICR、雌、5週齡)をエーテル麻酔下で、両卵巣を摘出してOVXマウスを作製した。同時に、卵巣を摘出せずオペのみを施した偽オペマウス(Sham)も用意した。オペ当日から7日間、粉末飼料(AIN−93G)を自由摂取させ、この間の飼料の摂取量記録し、1匹あたりの摂餌量が、OVXマウス、Shamマウスともに約10g/日であることを確認した。
次にOVXマウスを3群に分け、第1群をControl群とし、下記組成の飼料を文献(非特許文献4、5)にもとづき50%制限摂取させた(5g/日/匹)。第2群には温州ミカンエキスを1%配合した飼料を、第3群には2%配合した飼料をそれぞれ50%制限摂取させた(第2群:MX−1群、第3群:MX−2群)。またShamマウスは第4群(Sham群)とし、AIN−96を自由摂取させた。
2週間経過後、各群から4例を無作為に選択し、非絶食・非絶水下で24時間蓄尿を行った後、得られた尿中のデオキシピリジノリン含量をELISA法で測定した。さらに、4週間経過後、同様の方法で尿中デオキシピリジノリン量を測定した。
続いてマウスをエーテル麻酔下で、腹部大動脈から採血を行って血清を分離し、血中酒石酸耐性酸フォスファターゼをELISA法(Mouse TRAP Assay、Suomen BioanalytikkaOy SBA Sciences、フィンランド)で測定した。また、大腿骨を摘出し、−80℃で保存後、骨幹端部(海綿骨)および骨幹部(皮質骨)の密度を、pQCT法を用いて測定した。骨強度は、3点曲げ試験により測定した。
【非特許文献4】Man S.L.,Tamaki H.,Ohta Y.,Katsuyama N.,Chinen I.Effect of exercise onosteopenia caused by restricted food intake in rats.J.Jpn.Soc.Nutr.Food Sci.,56,237−242(2003).
【非特許文献5】Man S.L.,Ohta Y.,Katsuyama N.,Tamaki H., Oku H.,Chinen I.Effect of estrogenon osteoporosis caused by restricted food intake in rats.J.Jpn.Soc.Nutr.Food Sci.,55,149−155(2002).
【0030】
Table1〜Table3に示すように、温州ミカン果皮溶媒抽出物(実施例)はin vivo試験で骨粗鬆症を抑制することがわかった。デオキシピリジノリンは骨吸収指標の一つであり、骨粗鬆症をはじめとする骨疾患や閉経後のエストロゲン欠乏状態において骨吸収が著明となり、デオキシピリジノリンが有意に高値を示すことが報告されている。今回、温州ミカン果皮溶媒抽出物を1%配合群(MX−1群)においてデオキシピリジノリンの上昇を抑えることから、骨量減少の抑制に有用と考えられる。また、骨密度や骨強度については、Table2、3に示すように、温州ミカン果皮溶媒抽出物の2%配合飼料(MX−2群)を摂取した群の骨密度と骨強度はコントロール群より明らかに高いことから、温州ミカン果皮溶媒抽出物は骨粗鬆症をはじめとする骨疾患の予防と改善に非常に効果的であると考えられる。
【0031】
[配合例]
本発明による骨粗鬆症予防、改善用組成物の配合例を示す。
配合例1:チューインガム
砂糖 53.0wt%
ガムベース 20.0
グルコース 10.0
水飴 16.0
香料 0.5
骨粗鬆症予防、改善用組成物 0.5
100.0wt%
【0032】
配合例2:グミ
還元水飴 40.0wt%
グラニュー糖 20.0
ブドウ糖 20.0
ゼラチン 4.7
水 9.68
ウメ果汁 4.0
ウメフレーバー 0.6
色素 0.02
骨粗鬆症予防、改善用組成物 1.0
100.0wt%
【0033】
配合例3:キャンディー
砂糖 50.0wt%
水飴 33.0
水 14.4
有機酸 2.0
香料 0.2
骨粗鬆症予防、改善用組成物 0.4
100.0wt%
【0034】
配合例4:ヨーグルト(ハード・ソフト)
牛乳 41.5wt%
脱脂粉乳 5.8
砂糖 8.0
寒天 0.15
ゼラチン 0.1
乳酸菌 0.005
骨粗鬆症予防、改善用組成物 0.4
香料 微量
水 残余
100.0wt%
【0035】
配合例8:果汁飲料
オレンジ果汁 30.0Wt%
乳化剤 0.5
骨粗鬆症予防、改善用組成物 1.0
香料 適量
精製水 残余
100.0wt%
【0036】
配合例8:清涼飲料
果糖ブドウ糖液糖 30.0wt%
乳化剤 0.5
骨粗鬆症予防、改善用組成物 0.3
香料 適量
精製水 残余
100.0wt%
【0037】
配合例10:錠菓
砂糖 76.4wt%
グルコース 19.0
ショ糖脂肪酸エステル 0.2
骨粗鬆症予防、改善用組成物 0.5
精製水 3.9
100.0wt%
【0038】
配合例5:ソフトカプセル
玄米胚芽油 87.0wt%
乳化剤 12.0
骨粗鬆症予防、改善用組成物 1.0
100.0wt%
【0039】
配合例9:錠剤
乳糖 54.0wt%
結晶セルロース 30.0
澱粉分解物 10.0
グリセリン脂肪酸エステル 5.0
骨粗鬆症予防、改善用組成物 1.0
100.0wt%
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上説明したように、本発明によれば、次のような優れた効果を奏する。
(a)温州ミカン由来の安全な抽出物を摂取することにより、優れた破骨細胞分化抑制効果を得ることができ、骨粗鬆症予防又は治療することができる。
(b)温州ミカン由来の安全な抽出物であるから、飲食品や薬品の素材として安心して使用することができる。

【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】温州ミカン果皮溶媒抽出物及びβ−クリプトキサンチンの破骨細胞分化抑制活性を示すグラフ
【図2】温州ミカン果皮溶媒抽出物及びβ−クリプトキサンチンの破骨細胞分化抑制試験の写真
【0042】

【0043】
【Table1】
卵巣摘出マウスの尿中デオキシピリジノリンに対する温州ミカン果皮溶媒抽出物の効果を示す表

【0044】
【Table2】
卵巣摘出マウスの骨密度に対する温州ミカン果皮溶媒抽出物の効果を示す表


【0045】
【Table3】
卵巣摘出マウスの骨強度に対する温州ミカン果皮溶媒抽出物の効果を示す表


【特許請求の範囲】
【請求項1】
温州ミカンの果実、果皮及び,じょうのう膜の溶媒抽出物を含有することを特徴とする骨粗鬆症予防、改善用組成物。
【請求項2】
前記溶媒抽出物がn−ヘキサン、エーテル、アセトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、1、3−ブチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、及び水の1種又は2種以上の溶媒を用いて抽出した抽出物である、請求項1記載の骨粗鬆症予防、改善用組成物。
【請求項3】
β−クリプトキサンチン、ヘスペリジンを含有することを特徴とする請求項1の組成物。
【請求項4】
β−クリプトキサンチンを0.001〜15%、ヘスペリジンを0.001〜15%含有する請求項1、2記載の骨粗鬆症予防、改善用組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項記載の骨粗鬆症予防、改善用組成物に、カルシウム、マグネシウム、コンドロイチン、グルコサミン、キトサン、ビタミンKのうちいずれか一種以上を添加してなる、骨粗鬆症予防、改善用組成物。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項記載の骨粗鬆症予防、改善用組成物を含有した飲食品、食品添加物。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか一項記載の骨粗鬆症予防、改善用組成物を含有した薬品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−83151(P2006−83151A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−303553(P2004−303553)
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(594045089)オリザ油化株式会社 (96)
【Fターム(参考)】