骨粗鬆症診断支援装置及び骨粗鬆症診断支援プログラム
【課題】高精度に皮質骨等の骨の厚みを測定できる骨粗鬆症診断支援装置及び骨粗鬆症診断支援プログラムを提供する。
【解決手段】骨粗鬆症診断支援装置1は、X線画像に帯状に写った皮質骨と他の部分との2本の境界線を特定する処理と、境界線上に設けた複数の点に基づいて、境界線に近似する直線または曲線である近似線を求める処理と、近似線上に複数の測定点を設定し、設定した測定点からそれぞれ近似線の法線方向に伸ばした測定補助線上において前記2本の境界線間の距離を測定し、複数の測定値を取得する処理と、測定値に基づいて皮質骨の厚みを算出する処理と、算出した皮質骨の厚みに基づいて骨粗鬆症を判別する処理と、を実行する制御部12を備える。
【解決手段】骨粗鬆症診断支援装置1は、X線画像に帯状に写った皮質骨と他の部分との2本の境界線を特定する処理と、境界線上に設けた複数の点に基づいて、境界線に近似する直線または曲線である近似線を求める処理と、近似線上に複数の測定点を設定し、設定した測定点からそれぞれ近似線の法線方向に伸ばした測定補助線上において前記2本の境界線間の距離を測定し、複数の測定値を取得する処理と、測定値に基づいて皮質骨の厚みを算出する処理と、算出した皮質骨の厚みに基づいて骨粗鬆症を判別する処理と、を実行する制御部12を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨粗鬆症診断支援装置及び骨粗鬆症診断支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者人口の増加に伴い、骨粗鬆症を判別する装置が求められている。特許文献1には、X線画像に写った下顎の皮質骨の厚みから骨粗鬆症を判別する骨粗鬆症診断支援装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2006/043523号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の骨粗鬆症診断支援装置は、下顎の一箇所のみで皮質骨の厚みを測定しているため、皮質骨厚の測定精度があまり高くない。そのため、場合によっては、誤差の大きい測定結果を基に骨粗鬆症と誤って判別してしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、上記事項に鑑みてなされたものであり、高精度に皮質骨等の骨の厚みを測定できる骨粗鬆症診断支援装置及び骨粗鬆症診断支援プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る骨粗鬆症診断支援装置は、
X線画像に帯状に写った皮質骨と他の部分との2本の境界線を特定する境界線特定手段と、
前記境界線上に設けた複数の点に基づいて、前記境界線に近似する直線または曲線である近似線を求める近似線算出手段と、
前記近似線上に複数の測定点を設定し、設定した前記測定点からそれぞれ前記近似線の法線方向に伸ばした測定補助線上において前記2本の境界線間の距離を測定し、複数の測定値を取得する測定値群取得手段と、
前記測定値に基づいて皮質骨の厚みを算出する皮質骨厚算出手段と、
前記皮質骨厚算出手段で算出した皮質骨の厚みに基づいて骨粗鬆症を判別する骨粗鬆症判別手段と、を備える、
ことを特徴とする。
【0007】
前記境界線特定手段は、
前記X線画像の濃淡を基に皮質骨部分とその他の背景部分とを特定する皮質骨部分特定手段と、
前記皮質骨部分に属する画素それぞれについて前記背景部分までの最短距離を算出し、算出した前記最短距離と該当画素とを関連づける最短距離取得手段と、
前記最短距離の極大値を追跡することによって、皮質骨の中心線を求める中心線取得手段と、
前記中心線上に設けた複数の点を中心点とした複数の円の包絡線を前記境界線として取得する境界線取得手段と、を備え、
前記境界線取得手段は、
前記中心点に位置する画素に関連付けられた前記最短距離をそれぞれの円の半径とすることが望ましい。
【0008】
前記皮質骨厚算出手段は、
前記複数の測定値から、測定値域とその出現回数とのヒストグラムを取得する手段と、
前記ヒストグラムの前記値域に複数の区分を設け、前記区分に基づいて前記ヒストグラムを分割するヒストグラム分割手段と、
分割された複数のヒストグラムのうち、出現回数の合計が最大となるヒストグラムを選択する手段と、
選択された前記出現回数の合計が最大となるヒストグラムにおいて測定値の期待値を算出し、算出した期待値を皮質骨の厚みとして取得する手段と、を備え、
前記ヒストグラム分割手段は、
ヒストグラム分割後に、出現回数の合計が最大となるヒストグラムと、出現回数の合計が2番目に大きいヒストグラムとの、出現回数の合計の差が最大となるように、区分の数を設定することが望ましい。
【0009】
前記皮質骨厚算出手段は、
前記複数の測定値の平均値を皮質骨の厚みとして取得する手段、を備え、
前記骨粗鬆症判別手段は、
前記皮質骨厚算出手段で取得した皮質骨の厚みと、前記測定値の分散値とに基づいて骨粗鬆症を判別することが望ましい。
【0010】
前記ヒストグラム分割手段は、
前記複数の測定値の取りうる数値を、所定の数の集合にそれぞれランダムに関連づけ、複数の集合を取得する集合取得手段と、
前記複数の集合のそれぞれについて、測定値と測定値出現回数とを乗じた値の集合内合計を求め、期待値とする期待値取得手段と、
前記測定値の取りうる数値から1つを選んで、前記期待値と比較し、最も近い期待値を有する集合に選択した数値を再配分する操作を、全ての前記測定値の取りうる数値について行う再配分手段と、
前記期待値取得手段と前記再配分手段とを交互に繰り返して、前記再配分が起こらなくなるまで続ける繰り返し手段と、を備えることが望ましい。
【0011】
前記近似線は、多項式で表現される直線または曲線であることが望ましい。
【0012】
前記近似線は、2次関数で表現される曲線であってよい。
【0013】
前記X線画像は、人の下顎部分が含まれる歯科パノラマX線画像であることが望ましい。
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点にかかる骨粗鬆症診断支援プログラムは、
X線画像に帯状に写った皮質骨と他の部分との2本の境界線を特定する境界線特定ステップと、
前記境界線上に設けた複数の点に基づいて、前記境界線に近似する直線または曲線である近似線を求める近似線算出ステップと、
前記近似線上に複数の測定点を設定し、設定した前記測定点からそれぞれ前記近似線の法線方向に伸ばした測定補助線上において前記2本の境界線間の距離を測定し、複数の測定値を取得する測定値群取得ステップと、
前記測定値に基づいて皮質骨の厚みを算出する皮質骨厚算出ステップと、
前記皮質骨厚算出ステップで算出した皮質骨の厚みに基づいて骨粗鬆症を判別する骨粗鬆症判別ステップと、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の骨粗鬆症診断支援装置及び骨粗鬆症診断支援プログラムによれば、高精度に皮質骨等の骨の厚みを測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施の形態に係る骨粗鬆症診断支援装置の構成を示すブロック図である。
【図2】歯科パノラマX線画像の図である。
【図3】本実施の形態に係る骨粗鬆症診断支援装置が行う診断支援処理の手順の概要を示すフローチャートである。
【図4】下顎骨領域抽出処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】下顎骨領域が選別され、2値化された画像を示す図である。
【図6】皮質骨輪郭明確化処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】原画像を図5の2値化画像をマスクとして切り出し、ハイパスフィルタリングを適用してエッジ強調を行った画像を示す図である。
【図8】8近傍の距離に基づいて、起点となる画素(黒)からの距離を表示した図である。
【図9】図7の画像に距離変換、ノイズ除去、2値化、モルフォロジカル・クロージングとオープニングを施した画像を示す図である。
【図10】皮質骨境界線特定処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】図9の画像に距離変換を施した画像を示す図である。
【図12】皮質骨中心線を表示した画像を示す図である。
【図13】皮質骨中心線上の画素を中心として配置した円のうちのいくつかを表示した図である。より多くの円を配置した場合の、円とその内部が占める領域は、灰色で示されている。
【図14】皮質骨厚測定処理の手順を示すフローチャートである。
【図15】皮質骨境界線及びこれにあてはめを行った二次関数を表示した画像を示す図である。
【図16】近似線の法線を示した画像を示す図である。
【図17】厚み測定値群のヒストグラムを表す図である。
【図18】骨粗鬆症判別処理の手順を示すフローチャートである。
【図19】ステップS505において選択された最大クラスタを表示した図である。
【図20】図17のヒストグラムから最大及び最小10%のデータを除去した図である。
【図21】下顎骨右側についてのROC曲線を示す図である。
【図22】厚み測定値群の平均値及び分散値のプロットと、サポートベクタマシンを用いて決定した境界線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本実施の形態に係る骨粗鬆症診断支援装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の骨粗鬆症診断支援装置1は、X線画像に写った下顎骨の皮質骨の厚みから、骨粗鬆症であるか否かの診断を支援する情報を生成する診断支援装置である。骨粗鬆症診断支援装置1は、図1に示すように、X線画像取得部11と、制御部12と、記憶部13と、出力部14と、操作部15とから構成される。
【0018】
X線画像取得部11は、レントゲン装置(不図示)で撮影したX線画像を取得するための入力装置であり、例えば、X線画像が格納された半導体メモリ等から情報を読み取るためのUSB(Universal Serial Bus)コネクタである。X線画像取得部11が制御部12に接続されると、制御部12は半導体メモリからX線画像を読み取り、記憶部13に格納する。
【0019】
なお、以下の説明では、記憶部13に格納されるX線画像は、歯科パノラマX線画像であるものとする。歯科パノラマX線画像とは、レントゲン装置を顔の周りに回転させ、顎と歯全体を撮影したX線画像である。なお、本実施の形態では、歯科パノラマX線画像は、図2に示すような、グレースケール画像であるものとする。
【0020】
また、本実施形態は、顎の骨の皮質骨部分の厚みから診断支援情報を生成するものであるので、歯科パノラマX線画像には、図2の白枠で囲った部分のように、顎の骨の皮質骨(帯状部分)が写っているものとする。
【0021】
さらに、後述の画像処理における皮質骨の誤認識を避けるために、歯科パノラマX線画像には、図2の白枠で囲った部分のように、原則として皮質骨以外の構造物が写っていないものとする。ただし、皮質骨の幅よりも明らかに小さい幅の構造物であれば画像内に写っていてもよい。例えば、海綿骨の骨梁は、その幅が皮質骨の幅に比べて実質的に小さいので、画像内に写っていてもよい。なお「皮質骨」とは骨密度の高い骨の外側周縁部分のことであり、「海綿骨」とは骨内部にあって皮質骨に囲まれた骨密度の低いスポンジ状の部分のことである。
【0022】
制御部12は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ等から構成され、骨粗鬆症診断支援装置1の各部を制御する。また、制御部12は、ワークメモリ(不図示)に格納されたプログラムに従って、診断支援情報を生成するための診断支援処理を開始する。また、制御部12は、後述の記憶部13に格納している照合データと診断支援情報とを照合することによって、検査対象の患者が骨粗鬆症であるか否かの判別を行う。
【0023】
記憶部13は、ハードディスク等の記憶装置から構成され、歯科パノラマX線画像や、骨粗鬆症を判別するための基となる照合データ(例えば、複数人の皮質骨の厚みを測定したデータであって、骨粗鬆症患者とそうでない人とで関連付けて分類したデータ)等の各種データを記憶する。
【0024】
出力部14は、ディスプレイ等の表示装置から構成され、骨粗鬆症の診断支援情報や骨粗鬆症の判別結果等を表示する。
【0025】
操作部15は、キーボードやマウス等の入力装置等から構成され、ユーザーがマウス等を使って出力部14に表示された操作ウィンドウを操作することによって、制御部12に対して診断支援処理等の実行を命令する。
【0026】
以上、骨粗鬆症診断支援装置1の構成について説明したが、次に、骨粗鬆症診断支援装置1の動作について説明する。制御部12は、操作部15から処理の実行が命令されると、骨粗鬆症の診断支援情報を表示するための診断支援処理を開始する。以下、図3のフローチャートを参照して診断支援処理について説明する。
【0027】
最初に、制御部12は、記憶部13からX線画像を取得する(ステップS100)。ここで取得するX線画像は、図2の白枠で囲った部分のような、顎の一部分の画像である。なお、歯科パノラマX線画像にはコントラストの低いものが多いので、取得したX線画像に、適宜、コントラスト強調処理を実行する。
【0028】
X線画像の取得が完了すると、次に、制御部12は、下顎骨領域を抽出するための下顎骨領域抽出処理を開始する(ステップS200)。ここで、「下顎骨」とは、皮質骨と海綿骨から構成される下顎の骨のことである。この処理は、画像処理対象とならない背景部分をX線画像から除去することを目的としたものである。なお、ここで「背景部分」とは、X線画像中の下顎骨以外の部分のことである。この処理によって、X線画像から下顎骨部分のみが切り出される。以下、図4のフローチャートを参照して下顎骨領域抽出処理について説明する。
【0029】
制御部12は、下顎骨部分の画素を1(白)、背景部分の画素を0(黒)として2値化した、図5に示すような「マスク画像」を生成する(ステップS201)。マスク画像は、後述の処理(ステップS202)において、下顎骨部分をX線画像から切り出すために使用する。2値化の手法は様々あり、1つの手法に限定されるものではないが、本実施形態では画素のクラスタ化に基づく手法を用いる。以下、クラスタ化を用いた2値化手法について詳述する。
【0030】
クラスタとは、所定の定義によって分類された画素の集合のことをいう。本手法においては、まず、測定領域内の全ての画素を画素値に基づいて分類し、画素値ごとのクラスタを作る。すなわち、画素値がzである画像内のすべての画素は、クラスタCzに所属する。この分類によるクラスタ数は、画像内における画素値の数に等しいため、クラスタ数の上限は256となる。得られた全クラスタは、各クラスタを特徴づける画素値に基づいて並べる。以後、次に説明する手法でクラスタの統合を繰り返し行い、最終的に全画素を2つのクラスタに統合する。
【0031】
まず、2つのクラスタにおいて、クラスタ内分散とクラスタ間分散という概念を導入する。クラスタ間分散とは、クラスタA、クラスタBが存在するとき、それらの和集合において計算した画素値の分散である。クラスタ内分散は、クラスタAに所属する画素値の平均値をmA、クラスタBに属する画素値の平均値をmBとするとき、クラスタAの画素値が全てmA、クラスタBの画素値が全てmBであるとして求めた、クラスタAとクラスタBとの和集合における画素値の分散である。また、クラスタ内分散とクラスタ間分散との積を、「クラスタ間距離」と定義する。
【0032】
次に、上記で定義した画素値に基づくクラスタの並びにおいて、隣接する2つのクラスタの組み合わせ全てにおいて、クラスタ間距離を計算する。得られたクラスタ間距離が最小値となるような2つのクラスタの組み合わせを探し、この2つのクラスタを統合する。以降、クラスタ間距離計算及び統合の操作を、クラスタ数が2になるまで繰り返す。得られた2つのクラスタのうち、画素値の大きいクラスタに属する画素に、画素値1を与え、もう一方のクラスタに属する画素に、画素値0を与える。この処理によって、画像を2値化することができる。この結果生成されるデータが、下顎骨部分の画素値が1、背景部分の画素値が0として表現されたマスク画像である。
【0033】
マスク画像の生成が完了すると、次に、制御部12は、元のX線画像(以下、「原画像」という)にマスク画像を適用して、背景部分を取り除く(ステップS202)。具体的には、原画像の各画素において、その画素値とマスク画像の画素値との積をとり、新たな画素値とする。この処理によって、背景部分が完全に黒色となったグレースケール画像が生成される。背景部分が黒となったグレースケール画像を取得したら、制御部12は下顎骨領域抽出処理を終了する。
【0034】
下顎骨領域抽出処理を終了したら、制御部12は、図3のフローに戻り、皮質骨輪郭明瞭化処理を開始する(ステップS300)。この処理は、皮質骨の輪郭を明瞭化し、また輪郭を平滑にすることを目的としている。以下、図6のフローチャートを参照して皮質骨明瞭化処理について説明する。
【0035】
制御部12は、ステップS202で生成したグレースケール画像に、ハイパスフィルタリングを施してエッジ強調を行う(ステップS301)。この処理によって、図7に示すような画像が得られる。
【0036】
次に、制御部12は、ステップS301で処理を施した画像に、さらに、ステップS201と同様のクラスタ化の手法を適用して、帯状の皮質骨部分を中心とする構造体の画素値を1(白)、その他の背景部分の画素値を0(黒)とした、2値化画像を生成する(ステップS302)。なお、2値化の手法はステップS201で説明した手法とは別の手法であってもよい。
【0037】
次に、制御部12は、2値化画像の白で表示された領域の全ての画素について、後述する方法で距離変換の処理を行う(ステップS303)。距離変換処理の結果、処理前には白であった画像領域については画素値が距離値に等しく、処理前には黒であった画像領域は画素値は0(黒)のままであるグレースケール画像が生成される。
【0038】
距離変換は、次のように行われる。帯状の皮質骨部分を中心とする構造体部分(白部分)の全画素において、もっとも近い背景部分(黒部分)の画素までの距離を算出する。このとき、制御部12は、8近傍の距離変換に基づいて距離を算出する。ここで、8近傍の距離変換とは、図8に示すように、起点となる画素(中央の黒い画素)に隣接する8つの画素までの距離を1として、終点となる画素までの画素数を2つの画素間の距離とする手法のことである。制御部12は、得られた距離値を下顎骨部分の各画素値と置き換え、新たなグレースケール画像を生成する(ステップS303)。
【0039】
次に、制御部12は、皮質骨周辺の骨梁像(海綿骨を形成する細かな骨組織)、及び小さな島状の構造物を取り除くため、グレースケール画像から、所定の閾値より小さな画素値の画素を、黒色(画素値0)に置き換えていく(ステップS304)。なお、閾値は、画像中の最大画素値の10%程度の値とするのが望ましい。値の小さな画素は、背景部分と距離の近い画素を意味するから、この処理によって、グレースケール画像内の小さな島状の構造物や、皮質骨周縁の骨梁像などが取り除かれる。
【0040】
次に、制御部12は、ステップS304で生成した画像に、ステップS201と同様の手法を適用するなどして、再び、2値化画像を生成する(ステップS305)。
【0041】
さらに、制御部12は、ステップS305で生成した2値化画像に、モルフォロジカル・オープニングやモルフォロジカル・クロージングを適用することによって、皮質骨内の空洞や欠けを取り除き、図9に示すような、新たな2値化画像を生成する(ステップS306)。ここで、モルフォロジカル・オープニングとは、適切に選択した小さな構成要素(図形)を画素値1(白)の部分の内部におさまるように隈無く配置し、この構成要素が配置されなかった部分を取り除くことによって、境界線を平滑にする方法のことである。小さな構成要素として用いる図形の例は円である。また、モルフォロジカル・クロージングとは、モルフォロジカル・オープニングと同じ操作を画素値0(黒)の部分に対して行う方法のことである。この処理によって、皮質骨内の空洞や欠けが取り除かれ、輪郭が平滑となる。ステップS306の処理が終了したら、制御部12は皮質骨輪郭明確化処理を終了する。
【0042】
皮質骨輪郭明確化処理を終了したら、制御部12は、図3のフローに戻り、皮質骨境界線特定処理を開始する(ステップS400)。この処理は、皮質骨とそれ以外の部分との境界であって略平行にはしる2本の境界線を特定することを目的としている。以下、図10のフローチャートを参照して皮質骨境界線特定処理について説明する。
【0043】
制御部12は、ステップS306で生成した画像に、再び、ステップS303で説明した8近傍の距離変換を適用し、図11に示すようなグレースケール画像を生成する(ステップS401)。
【0044】
制御部12は、ステップS401で得られたグレースケール画像を基に、帯状の皮質骨の中心を長手方向に貫く中心線を特定する(ステップS402)。この処理によって、図12に示すように、皮質骨の中心を貫く中心線が特定される。なお、中心線は、距離値(グレースケール画像の画素値)の極大値を追跡することによって特定される。以下、中心線を特定する方法について詳述する。
【0045】
中心線は、皮質骨部分を左右に横切る多数の経路を所定の方法で生成し、その中から最適な経路を選択することによって特定される。経路の生成は、起点の選択と起点の移動とによってなされる。ここでは、起点を画面の右端にとって移動を右端から左端に行う場合について説明するが、左右を反転させてもよい。起点としては、皮質骨部分を構成する画素のうち右端にある画素全てが選択される。また、一つの起点に着目した場合の起点の移動は次のように行う。
(1)起点となる画素の左隣、左上、左下の3画素の画素値を比較する。
(2)3画素のうち最も画素値の大きい画素を選択し、新たな起点画素とする。
(3)起点画素が画面の左端に到達するまで(1)及び(2)を繰り返す。
この移動を選択された起点全てに適用することによって、多数の経路が得られる。次に、全ての経路について、経路上での画素値の合計をとる。画素値の合計が最大となる経路を、中心線として特定する。
【0046】
中心線の特定が完了したら、制御部12は、中心線上に複数の点を配置し、その点を中心点として、図13に示すように、複数の円を描く。なお、描く円の半径は、それぞれ、中心点の画素値、すなわち、中心点となる画素から背景部分(黒色部分)までの最短距離とする。制御部12は、複数の円によって形成される上下2本のエンベロープ(Envelope:包絡線)を、皮質骨の境界線として特定する(ステップS403)。これにより、制御部12は、より平滑な線を皮質骨の境界線として特定することができる。皮質骨の境界線を特定したら、制御部12は、皮質骨境界線特定処理を終了する。
【0047】
皮質骨境界線特定処理を終了したら、制御部12は、図3のフローに戻り、皮質骨厚測定処理を開始する(ステップS500)。以下、図14のフローチャートを参照して皮質骨厚計測処理について説明する。
【0048】
2本の境界線は、いずれも凹凸を有しているため、このままでは皮質骨と直交する方向を適切に決定できない。そこで制御部12は、2本の境界線のうちいずれか1本について、境界線上に設けた複数の点に対して最小二乗法を適用し、図15のaに示すような境界線の近似線を求める(ステップS501)。近似線は解析的な関数であり、多項式等、どのような関数であってもよいが、皮質骨の形状、特に曲率を良く再現する関数であることが望ましい。関数の好適な例の一つは、二次関数である。なお、近似線は、後述の処理(ステップS502)において、皮質骨の長手方向と直交する方向に伸びる直線(以下、「測定補助線」という)を特定するために使用される。
【0049】
制御部12は、近似線上に複数の測定点を設定し、図15に示すように、設定した測定点からそれぞれ近似線(図16、a)の法線方向に伸ばした直線を測定補助線(図16、c)として決定する(ステップS502)。なお、測定精度を高めるため、近似線上に設定する測定点の数は、できる限り多くとることが望ましい。
【0050】
制御部12は、決定した複数の測定補助線上において、2本の境界線間の距離を測定したデータを、皮質骨厚の測定データ(測定値群)として取得する(ステップS503)。
【0051】
この測定データにはノイズが含まれている可能性が高い。なぜなら、皮質骨部分を2値化によって分離する際に、皮質骨内に画素値の低い領域があった場合には、2値化によって空洞が発生し、その後の処理によっても取り除くことができない場合があるからである。ノイズが含まれた測定データを基に皮質骨厚を算出すると、誤った値を皮質骨厚として算出することになる。そこで、制御部12は、以下の処理(ステップS504〜S505)を実行して、測定データからノイズを除去する。
【0052】
制御部12は、ピクセル単位で表された皮質骨の厚みの値と、その値が測定された回数とから、図17に示すようなヒストグラムを作成する(ステップS504)。
【0053】
ここで、ヒストグラム内において、厚みの値に基づく分類を定義する。分類によって生じた集合の一つ一つをクラスタと呼ぶ。あるクラスタは、そのクラスタを定義する値域に属する測定値の集合で、クラスタのサイズとは、クラスタの構成要素数で定義される。最もサイズの大きいクラスタ(以下、「最大クラスタ」という)、すなわち、測定回数の最も多いクラスタが、皮質骨の厚みを最も正確に反映する測定値群である。
【0054】
そこで、制御部12は、クラスタの数を2〜10に変化させながら、ヒストグラムをクラスタリングすることによって、最大クラスタを選択する(ステップS505)。
【0055】
なお、クラスタリングの手法としては、k−means法が好適である。具体的には、下記(1)〜(5)の処理を上述のヒストグラムに対し順次実行する。クラスタリングが適切に実行されれば、最大クラスタと2番目に大きいクラスタとの構成要素数の差が最大となる。
(1)分類するクラスタの数を設定する。設定したクラスタ数をNとする。
(2)ピクセル単位で表された、測定値の取りうる数値すべてにおいて、測定値1つに対してクラスタのうち1つをランダムに関連づける。
(3)N個のクラスタそれぞれについて、そのクラスタに所属する測定値と、ヒストグラム内における該当測定値の出現回数とを乗じて、そのクラスタにおける期待値とする。
(4)測定値から1つを選び、N個のクラスタの期待値と比較し、最も近い期待値を持つクラスタに、その測定値を再配分(関連づけの修正)する。この操作を、全ての測定値について行う。
(5)(3)と(4)の処理を繰り返し行い、再配分が起こらなくなるまで続ける。
【0056】
制御部12は、選択された最大クラスタ内において、測定値の平均値を求め、皮質骨厚の推定値とする。また、制御部12は、医師等に判断材料を提供するため、ステップS503で取得した測定値の平均値と分散値を算出する。制御部12は、算出した3つの値(推定値、平均値、分散値)を診断支援情報として記憶部13に格納する(ステップS506)。診断支援情報の格納が完了したら、制御部12は、皮質骨厚測定処理を終了する。
【0057】
皮質骨厚測定処理を終了したら、制御部12は、図3のフローに戻り、骨粗鬆症判別処理を開始する(ステップS600)。皮質骨の厚みは、骨粗鬆症の進行と強い関連を持っており、制御部12は、診断支援情報から対象患者が骨粗鬆症であるか否かを判別できる。以下、図18のフローチャートを参照して骨粗鬆症判別処理について説明する。
【0058】
制御部12は、記憶部13から、記憶部13に予め格納してある照合データを取得する(ステップS601)。照合データは、基準手法(例えばDXA、二重エネルギーX線吸収測定法)による骨粗鬆症の診断結果と診断支援情報(皮質骨厚の推定値、厚み値の平均値、分散値)とを、多数の被験者から取得し、これらを関連付けてデータベース化したものである。
【0059】
制御部12は、この照合データに基づき、後述の処理において骨粗鬆症の判別に用いるための閾値を決定する(ステップS602)。具体的には、次のように閾値を決定する。まず、任意の閾値を仮決定する。そして、皮質骨の厚み推定値がこの仮決定した閾値よりも小さい被験者を「骨粗鬆症陽性」、そうでない被験者を「陰性」として仮判別を下す。この仮判別を全ての被験者に対して行う。次に、基準手法による骨粗鬆症の診断結果と照合し、感度と特異度を算出する。ここで、感度とは、基準手法によって骨粗鬆症陽性と診断された人のうち、皮質骨の厚み推定値に基づいて陽性と判別された人の割合であり、特異度とは、基準手法によって陰性と診断された人のうち、皮質骨の厚み推定値に基づいて陰性と判別された人の割合である。最後に、閾値を上下させ、感度と特異度の双方を考慮に入れながら、基準手法による診断結果とできる限り一致するように閾値を決定する。
【0060】
制御部12は、記憶部13から、ステップS500で生成した診断支援情報を取得する(ステップS603)。
【0061】
制御部12は、診断支援情報から皮質骨厚の推定値を抽出し、ステップS602で生成した閾値と照合する。そして、制御部12は、皮質骨厚の推定値が閾値よりも小さいときには「骨粗鬆症陽性」、そうでないときには「陰性」と判別し、ワークメモリ(不図示)等にその判別結果を格納する(ステップS604)。判別結果の格納が完了したら、制御部12は、骨粗鬆症判別処理を終了する。
【0062】
骨粗鬆症判別処理を終了したら、制御部12は、図3のフローに戻り、皮質骨厚の推定値、及び、判別結果を、ワークメモリ等から取得して、出力部14に出力する(ステップS700)。医師等は、出力部14に表示された判別結果等を基に、患者が骨粗鬆症であるか否かを診断する。出力部14に皮質骨厚の推定値、及び判別結果の出力が完了したら、制御部12は、診断支援処理を終了する。
【0063】
本実施の形態によれば、皮質骨の厚みを正確に予測することが可能である。皮質骨の厚み測定を複数の測定点において行っており、複数の測定値から統計処理によって厚み推定値を算出しているためである。
【0064】
また、本実施の形態によれば、皮質骨中心線を取得し、中心線上に設けた複数の点を中心とする複数の円の包絡線を皮質骨の境界線として取得するため、皮質骨の境界線は滑らかである。このため、皮質骨の厚み測定の際にノイズによる影響を受けにくい。
【0065】
また、本実施の形態において、皮質骨の厚み測定の際に測定補助線を使用している。測定補助線として用いるのは、皮質骨の境界線を好適に再現する近似曲線の法線であって、皮質骨の長手方向に直行する方向を好適に反映するものである。このような方法をとることは、皮質骨のような湾曲した帯状構造物の厚みを測定する方法として好適である。
【0066】
本実施の形態に係る骨粗鬆症診断支援装置は、プログラムによって全て自動化されており、診断支援処理を行う人が誰であっても同一の結果を与える。
【0067】
なお、骨粗鬆症の判別は、次のように行ってもよい。ここでは、診断支援情報のうち、皮質骨厚みの平均値及び分散値の2つの値を用いた骨粗鬆症の判別を行う。まず、照合データから、骨粗鬆症の有無に関連づけられた多数の被験者の皮質骨厚みの平均値と分散値を取得する。次に、分散値と平均値をそれぞれ縦軸と横軸にとって、被験者のデータをプロットする。この平面において、骨粗鬆症患者とそうでない人を分離するための境界線を、次に述べる方法を用いて定める。
【0068】
骨粗鬆症患者とそうでない人を分離するための境界線は、サポートベクタマシンを用いて決定する。以下、サポートベクタマシンを2次元平面に適用する場合について説明する。サポートベクタマシンは、平面上で2値に分類された多数のベクトル(サンプルベクトル)に基づいて、この平面を2つに分離する境界線を求める手法である。境界線は重みベクトルと閾値とを設定することによって定義され、重みベクトルとの内積が所定の閾値と等しくなるベクトルの集合として定義される。ただし、サポートベクタマシンにおいては、距離の計算の際に、ユークリッド距離ではなく、カーネル関数によって定義される距離を用いてもよい。カーネル関数によって定義される距離を用いることによって、非線形の境界線を求めることができる。重みベクトル及び閾値は、以下の条件を満たすように決定される。
(1)重みベクトルとの内積が所定の閾値を超えるか否か、によるサンプルベクトルの分類と、上記の2値分類との一致の度合いが最大となること。
(2)生成した境界線と、境界線に最も近いサンプルベクトル(サポートベクトル)との距離が最も大きくなること。
この方法を診断支援情報に適用する場合には、個々のサンプルベクトルとは皮質骨厚みの平均値及び分散値を要素に持つベクトルであり、2値分類とは骨粗鬆症の有無による分類である。このようにして、骨粗鬆症患者とそうでない人を分離するための境界線が求められる。
【0069】
このような領域の区分を決定し、新たな患者について判別を行う時は、その患者の測定値の平均値と分散値をこの図にあてはめ、骨粗鬆症の領域に入っていれば骨粗鬆症陽性、入っていなければ陰性であると判別する。
【0070】
この判別方法においては、皮質骨厚みの平均値のみでなく、分散値も考慮に入れた判別を行っている。皮質骨の分散値も、骨粗鬆症と相関する情報を与える可能性が高く、この方法によって、骨粗鬆症の判別の精度がさらに高くなる。
【0071】
ステップS402の中心線の特定において、距離値の極大値の追跡には動的計画法を用いたアルゴリズムを用いてもよい。
【0072】
ステップS402において中心線上に複数の円を生成する際、円の円周は画素の集合として構成されてもよい。円周を画素の集合として得る際には、例えば、円周上に角度0.001ラジアン毎に点を生成し、これらの点のX、Y座標を四捨五入、切り上げ、切り捨て等により整数化する。これによって位置が特定される画素の集合を円周としてもよい。
【0073】
ステップS403において複数の円によって形成される上下2本のエンベロープもまた、画素列として構成されてよい。たとえば画素集合として構成される複数の円の円周のうち、他の円の内部と重ならない画素から構成される画素列を、エンベロープとしてもよい。
【0074】
ステップS501において近似線を決定する際に境界線上に設ける複数の点は、できるだけ多いことが望ましい。境界線が画素列で構成される場合には、例えば境界線を構成する全ての画素を用いることが望ましい。
【0075】
ステップS502において、近似線上に設ける測定補助線はなるべく多いことが望ましい。例えば、近似線のX座標が2画素間の距離の整数倍となる点を全て測定点として選択し、測定補助線を決定することが望ましい。
【0076】
ステップS503において、測定補助線上における2本の境界線間の距離の算出は次のように行ってもよい。境界線が画素列である場合、上側境界線の中で測定補助線に最も近い画素と、下側境界線の中で測定補助線に最も近い画素とが、測定補助線と境界線との2つの交点を代表すると見なしてもよい。そこでこれら2画素間のユークリッド距離を、この測定補助線上の皮質骨厚としてもよい。皮質骨厚の測定データは、後の処理のために整数化してピクセル単位としてもよい。
【0077】
ステップS602において、骨粗鬆症の診断結果として照合に用いる基準手法は、DXA(二重エネルギーX線吸収測定法)による腰椎や大腿骨頸部の骨密度測定であってもよい。
【0078】
上記で説明した骨粗鬆症診断支援装置1は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いても実現可能である。例えば、上述の動作を実行するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布し、該プログラムをコンピュータにインストールして、上述の処理を実行することによって装置を構成してもよい。また、インターネット等のネットワーク上のサーバ装置が備えるディスク装置に格納しておき、例えばコンピュータにダウンロード等できるようにしてもよい。また、上述の機能を、OSとアプリケーションソフトの共同より実現してもよい。この場合には、OS以外の部分のみを媒体に格納して配布してもよく、また、コンピュータにダウンロード等してもよい。
【0079】
上記のプログラムを記録する記録媒体としては、USBメモリ、フレキシブルディスク、CD、DVD、Blu−ray Disc(登録商標)、MO、SDカード、MS(メモリースティック)(登録商標)、その他、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ、磁気テープ等のコンピュータ読取可能な記録媒体を使用することができる。また、HDD(ハードディスク)やSSD(ソリッドステートドライブ)等、通常、システム又は装置に固定して使用する記録媒体を使用することもできる。
【実施例】
【0080】
以下に示すように、図2に示す歯科パノラマX線画像を用いて、皮質骨の厚み測定を行った。図2のパノラマX線画像は、フィルム式装置(朝日レントゲン AZ−3000)で撮影されたものを、300dpiの解像度でスキャンし、デジタル画像に変換したものである。この画像から、長方形で囲まれたオトガイ孔周辺の幅300ピクセルの領域を左右の二箇所抽出し、それぞれ診断支援処理を施した。
【0081】
図17に、左側についての皮質骨厚み測定値群のヒストグラムを示す。図17のヒストグラムには、41ピクセル付近に主要なピークが見られ、また20ピクセル付近にノイズと見られる値の集合がある。
【0082】
図17のヒストグラムにクラスタリングを施し、主要クラスタを抽出した。図19に、抽出した主要クラスタのヒストグラムを示す。ここにおいて、ノイズが除去され、主要なクラスタが好適に選択されていることが分かる。
【0083】
上記のノイズ除去方法の有効性を検証するために、他の方法によってもノイズ除去を行い、比較した。ここでは、最大10%及び最小10%の測定値を除去する方法を用いた。このノイズ除去によって得られたヒストグラムを図20に示す。厚み測定値20ピクセル付近に小さなクラスタが残っており、ノイズが完全には除去できていないことが分かる。このように、本実施例のクラスタリングに基づく方法を用いれば、ノイズの除去が有効に行えることが分かる。
【0084】
上記のクラスタリングの方法で得られた皮質骨の厚み推定値を用いて、骨粗鬆症の判別を行った。
【0085】
まず、照合データ作成のための被験者の選択を次のように行った。1996年から2001年の間に歯科パノラマX線画像とDXAによる腰椎・大腿骨頸部での骨密度測定を行った531人の女性から、骨粗鬆症の診断歴のない50歳以上の閉経後女性に限定して100人を抽出し、被験者とした。この抽出に際しては、条件を均一にするため、過去1年以内の月経・代謝性骨疾患やがんの骨転移の診断、女性ホルモンなど骨代謝に影響する可能性のある投薬、子宮や卵巣の摘出がいずれも無く、喫煙歴がなく、顎骨に骨破壊病変のない被験者に限定した。
【0086】
次に、骨粗鬆症の判断の閾値の設定を次のように行った。上記の照合データに対して、感度が92.0%となるように閾値を設定すると、下顎骨右側については、腰椎骨密度を基準とするとき閾値は34.3ピクセル、大腿骨頸部骨密度を基準とするとき36.6ピクセルとなった。下顎骨左側については、腰椎骨密度を基準とするとき37.4ピクセル、大腿骨頸部骨密度を基準とするとき33.6ピクセルとなった。
【0087】
表1に、上記の100人の被験者の診断結果の特異度、感度、陽性適中率、陰性適中率、正確度を示す。ここで陽性的中率とは、歯科パノラマX線画像によって骨粗鬆症陽性と判別された人のうち、DXAによって陽性と診断された人の割合であって、陰性的中率とは、歯科パノラマX線画像によって陰性と判別された人のうち、DXAによって陰性と診断された人の割合である。正確度とは、全診断数に対する、DXAによる診断結果と歯科パノラマX線画像による診断結果が一致した人の割合である。
【0088】
【表1】
【0089】
表1に示す通り、いずれも感度が92.0%のとき、特異度(骨粗鬆症患者でない者のうち、誤検出されなかった者の割合)は、下顎骨右側については腰椎骨密度を基準とするとき67.0%、大腿骨頸部骨密度を基準とするとき55.0%となり、左側についてはそれぞれ64.0%、75.0%となった。
【0090】
上記の結果を、特許文献1に記載の1点測定による診断方法と比較した(Agus Zainal Arifin, A. Asano, A. Taguchi, T. Nakamoto, M. Ohtsuka, M. Tsuda, Y. Kudo, and K. Tanimoto, ”Computer−aided system for measuring the mandibular cortical width on dental panoramic radiographs in idenifying postmenopausal women with low bone mineral density,” Osteoporosis International, Vol. 17, No. 5, pp. 753−759, 2006)。1点測定による診断では、感度と特異度は、腰椎骨密度を基準とするときそれぞれ88.0%と58.7%、大腿骨頸部骨密度を基準とするときそれぞれ87.5%と56.3%であった。また、上記の文献に記載されている、熟練歯科放射線科医の手動測定による診断結果では、感度と特異度が腰椎骨密度を基準とするときそれぞれ92.0%と60.0%、大腿骨頸部骨密度を基準とするときそれぞれ87.5%と64.8%であった。以上のことから、本発明の骨粗鬆症診断支援装置は、1点測定による特許文献1に記載の方法をほとんどの場合上回り、熟練者の手動測定と比べても同等以上の診断能力を持つことが分かった。
【0091】
本実施例における骨粗鬆症の判別の精度を検証するため、受診者動作特性解析を行った。受信者動作特性(Reveiver Operating Characteristic,ROC)解析は、さまざまな閾値に対する感度と特異度を総合的に取り扱い、診断方法の能力を評価する方法である。ROC解析では、(1−特異度)を横軸、感度を縦軸として、閾値を変化させたときの両者の関係をプロット(ROC曲線)に表す。理想的には、感度が高く、(1−特異度)が低いほうが望ましい。したがって、ROC曲線の下側部分の面積が大きい方が、感度がより高く、(1−特異度)が低いところをROC曲線が通ることになり、閾値を適切に定めればより高い診断能力を得ることができる。
【0092】
図21に、本実施例により得られたROC曲線(下顎骨右側の例)を示す。図21(a)は腰椎骨密度を基準とした場合、(b)は大腿骨頸部骨密度を基準した場合に相当する。ROC曲線の下側の面積は、下顎骨右側については腰椎骨密度を基準とするとき0.851、大腿骨頸部骨密度を基準とするとき0.830となり、左側についてはそれぞれ0.841、0.863となった。一点測定による方法では、腰椎骨密度を基準とするとき0.777、大腿骨頸部骨密度を基準とするとき0.803であったので、この点からも本発明による方法がより優れた診断能力を持つことが分かる。
【0093】
また、厚み測定値群の平均値及び分散値の双方を用いた方法によっても、骨粗鬆症の判別を行った。図22に、厚み測定値群の平均値及び分散値のプロットを示す。
【0094】
図22において0はDXAによって診断された骨粗鬆症患者、1はそうでない人、であり、図22(a)は腰椎骨密度を基準とした場合、(b)は大腿骨頸部骨密度を基準とした場合に相当する。プロットにおいては、基本的には骨粗鬆症患者とそうでない人の領域がおおまかに存在し、両者が入り交じっている領域も見られる。サポートベクタマシンを用いて求めた、二つの領域の最適な境界線もまた図22に示されている。trainingはすでに診断された学習データ、classifiedは得られた境界線に基づいて診断を行ったデータである。このように、あらかじめ多数の学習データによって境界線を定めておけば、骨粗鬆症の判別を行うことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の骨粗鬆症診断支援装置は、歯科検診において撮影されるパノラマX線画像を用いることを前提としており、新たに画像の撮影を行う必要がない。このため、骨粗鬆症診断に必要なコストが大幅に削減できる。
【符号の説明】
【0096】
1 骨粗鬆症診断支援装置
11 X線画像取得部
12 制御部
13 記憶部
14 出力部
15 操作部
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨粗鬆症診断支援装置及び骨粗鬆症診断支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者人口の増加に伴い、骨粗鬆症を判別する装置が求められている。特許文献1には、X線画像に写った下顎の皮質骨の厚みから骨粗鬆症を判別する骨粗鬆症診断支援装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2006/043523号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の骨粗鬆症診断支援装置は、下顎の一箇所のみで皮質骨の厚みを測定しているため、皮質骨厚の測定精度があまり高くない。そのため、場合によっては、誤差の大きい測定結果を基に骨粗鬆症と誤って判別してしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、上記事項に鑑みてなされたものであり、高精度に皮質骨等の骨の厚みを測定できる骨粗鬆症診断支援装置及び骨粗鬆症診断支援プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る骨粗鬆症診断支援装置は、
X線画像に帯状に写った皮質骨と他の部分との2本の境界線を特定する境界線特定手段と、
前記境界線上に設けた複数の点に基づいて、前記境界線に近似する直線または曲線である近似線を求める近似線算出手段と、
前記近似線上に複数の測定点を設定し、設定した前記測定点からそれぞれ前記近似線の法線方向に伸ばした測定補助線上において前記2本の境界線間の距離を測定し、複数の測定値を取得する測定値群取得手段と、
前記測定値に基づいて皮質骨の厚みを算出する皮質骨厚算出手段と、
前記皮質骨厚算出手段で算出した皮質骨の厚みに基づいて骨粗鬆症を判別する骨粗鬆症判別手段と、を備える、
ことを特徴とする。
【0007】
前記境界線特定手段は、
前記X線画像の濃淡を基に皮質骨部分とその他の背景部分とを特定する皮質骨部分特定手段と、
前記皮質骨部分に属する画素それぞれについて前記背景部分までの最短距離を算出し、算出した前記最短距離と該当画素とを関連づける最短距離取得手段と、
前記最短距離の極大値を追跡することによって、皮質骨の中心線を求める中心線取得手段と、
前記中心線上に設けた複数の点を中心点とした複数の円の包絡線を前記境界線として取得する境界線取得手段と、を備え、
前記境界線取得手段は、
前記中心点に位置する画素に関連付けられた前記最短距離をそれぞれの円の半径とすることが望ましい。
【0008】
前記皮質骨厚算出手段は、
前記複数の測定値から、測定値域とその出現回数とのヒストグラムを取得する手段と、
前記ヒストグラムの前記値域に複数の区分を設け、前記区分に基づいて前記ヒストグラムを分割するヒストグラム分割手段と、
分割された複数のヒストグラムのうち、出現回数の合計が最大となるヒストグラムを選択する手段と、
選択された前記出現回数の合計が最大となるヒストグラムにおいて測定値の期待値を算出し、算出した期待値を皮質骨の厚みとして取得する手段と、を備え、
前記ヒストグラム分割手段は、
ヒストグラム分割後に、出現回数の合計が最大となるヒストグラムと、出現回数の合計が2番目に大きいヒストグラムとの、出現回数の合計の差が最大となるように、区分の数を設定することが望ましい。
【0009】
前記皮質骨厚算出手段は、
前記複数の測定値の平均値を皮質骨の厚みとして取得する手段、を備え、
前記骨粗鬆症判別手段は、
前記皮質骨厚算出手段で取得した皮質骨の厚みと、前記測定値の分散値とに基づいて骨粗鬆症を判別することが望ましい。
【0010】
前記ヒストグラム分割手段は、
前記複数の測定値の取りうる数値を、所定の数の集合にそれぞれランダムに関連づけ、複数の集合を取得する集合取得手段と、
前記複数の集合のそれぞれについて、測定値と測定値出現回数とを乗じた値の集合内合計を求め、期待値とする期待値取得手段と、
前記測定値の取りうる数値から1つを選んで、前記期待値と比較し、最も近い期待値を有する集合に選択した数値を再配分する操作を、全ての前記測定値の取りうる数値について行う再配分手段と、
前記期待値取得手段と前記再配分手段とを交互に繰り返して、前記再配分が起こらなくなるまで続ける繰り返し手段と、を備えることが望ましい。
【0011】
前記近似線は、多項式で表現される直線または曲線であることが望ましい。
【0012】
前記近似線は、2次関数で表現される曲線であってよい。
【0013】
前記X線画像は、人の下顎部分が含まれる歯科パノラマX線画像であることが望ましい。
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点にかかる骨粗鬆症診断支援プログラムは、
X線画像に帯状に写った皮質骨と他の部分との2本の境界線を特定する境界線特定ステップと、
前記境界線上に設けた複数の点に基づいて、前記境界線に近似する直線または曲線である近似線を求める近似線算出ステップと、
前記近似線上に複数の測定点を設定し、設定した前記測定点からそれぞれ前記近似線の法線方向に伸ばした測定補助線上において前記2本の境界線間の距離を測定し、複数の測定値を取得する測定値群取得ステップと、
前記測定値に基づいて皮質骨の厚みを算出する皮質骨厚算出ステップと、
前記皮質骨厚算出ステップで算出した皮質骨の厚みに基づいて骨粗鬆症を判別する骨粗鬆症判別ステップと、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の骨粗鬆症診断支援装置及び骨粗鬆症診断支援プログラムによれば、高精度に皮質骨等の骨の厚みを測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施の形態に係る骨粗鬆症診断支援装置の構成を示すブロック図である。
【図2】歯科パノラマX線画像の図である。
【図3】本実施の形態に係る骨粗鬆症診断支援装置が行う診断支援処理の手順の概要を示すフローチャートである。
【図4】下顎骨領域抽出処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】下顎骨領域が選別され、2値化された画像を示す図である。
【図6】皮質骨輪郭明確化処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】原画像を図5の2値化画像をマスクとして切り出し、ハイパスフィルタリングを適用してエッジ強調を行った画像を示す図である。
【図8】8近傍の距離に基づいて、起点となる画素(黒)からの距離を表示した図である。
【図9】図7の画像に距離変換、ノイズ除去、2値化、モルフォロジカル・クロージングとオープニングを施した画像を示す図である。
【図10】皮質骨境界線特定処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】図9の画像に距離変換を施した画像を示す図である。
【図12】皮質骨中心線を表示した画像を示す図である。
【図13】皮質骨中心線上の画素を中心として配置した円のうちのいくつかを表示した図である。より多くの円を配置した場合の、円とその内部が占める領域は、灰色で示されている。
【図14】皮質骨厚測定処理の手順を示すフローチャートである。
【図15】皮質骨境界線及びこれにあてはめを行った二次関数を表示した画像を示す図である。
【図16】近似線の法線を示した画像を示す図である。
【図17】厚み測定値群のヒストグラムを表す図である。
【図18】骨粗鬆症判別処理の手順を示すフローチャートである。
【図19】ステップS505において選択された最大クラスタを表示した図である。
【図20】図17のヒストグラムから最大及び最小10%のデータを除去した図である。
【図21】下顎骨右側についてのROC曲線を示す図である。
【図22】厚み測定値群の平均値及び分散値のプロットと、サポートベクタマシンを用いて決定した境界線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本実施の形態に係る骨粗鬆症診断支援装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の骨粗鬆症診断支援装置1は、X線画像に写った下顎骨の皮質骨の厚みから、骨粗鬆症であるか否かの診断を支援する情報を生成する診断支援装置である。骨粗鬆症診断支援装置1は、図1に示すように、X線画像取得部11と、制御部12と、記憶部13と、出力部14と、操作部15とから構成される。
【0018】
X線画像取得部11は、レントゲン装置(不図示)で撮影したX線画像を取得するための入力装置であり、例えば、X線画像が格納された半導体メモリ等から情報を読み取るためのUSB(Universal Serial Bus)コネクタである。X線画像取得部11が制御部12に接続されると、制御部12は半導体メモリからX線画像を読み取り、記憶部13に格納する。
【0019】
なお、以下の説明では、記憶部13に格納されるX線画像は、歯科パノラマX線画像であるものとする。歯科パノラマX線画像とは、レントゲン装置を顔の周りに回転させ、顎と歯全体を撮影したX線画像である。なお、本実施の形態では、歯科パノラマX線画像は、図2に示すような、グレースケール画像であるものとする。
【0020】
また、本実施形態は、顎の骨の皮質骨部分の厚みから診断支援情報を生成するものであるので、歯科パノラマX線画像には、図2の白枠で囲った部分のように、顎の骨の皮質骨(帯状部分)が写っているものとする。
【0021】
さらに、後述の画像処理における皮質骨の誤認識を避けるために、歯科パノラマX線画像には、図2の白枠で囲った部分のように、原則として皮質骨以外の構造物が写っていないものとする。ただし、皮質骨の幅よりも明らかに小さい幅の構造物であれば画像内に写っていてもよい。例えば、海綿骨の骨梁は、その幅が皮質骨の幅に比べて実質的に小さいので、画像内に写っていてもよい。なお「皮質骨」とは骨密度の高い骨の外側周縁部分のことであり、「海綿骨」とは骨内部にあって皮質骨に囲まれた骨密度の低いスポンジ状の部分のことである。
【0022】
制御部12は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ等から構成され、骨粗鬆症診断支援装置1の各部を制御する。また、制御部12は、ワークメモリ(不図示)に格納されたプログラムに従って、診断支援情報を生成するための診断支援処理を開始する。また、制御部12は、後述の記憶部13に格納している照合データと診断支援情報とを照合することによって、検査対象の患者が骨粗鬆症であるか否かの判別を行う。
【0023】
記憶部13は、ハードディスク等の記憶装置から構成され、歯科パノラマX線画像や、骨粗鬆症を判別するための基となる照合データ(例えば、複数人の皮質骨の厚みを測定したデータであって、骨粗鬆症患者とそうでない人とで関連付けて分類したデータ)等の各種データを記憶する。
【0024】
出力部14は、ディスプレイ等の表示装置から構成され、骨粗鬆症の診断支援情報や骨粗鬆症の判別結果等を表示する。
【0025】
操作部15は、キーボードやマウス等の入力装置等から構成され、ユーザーがマウス等を使って出力部14に表示された操作ウィンドウを操作することによって、制御部12に対して診断支援処理等の実行を命令する。
【0026】
以上、骨粗鬆症診断支援装置1の構成について説明したが、次に、骨粗鬆症診断支援装置1の動作について説明する。制御部12は、操作部15から処理の実行が命令されると、骨粗鬆症の診断支援情報を表示するための診断支援処理を開始する。以下、図3のフローチャートを参照して診断支援処理について説明する。
【0027】
最初に、制御部12は、記憶部13からX線画像を取得する(ステップS100)。ここで取得するX線画像は、図2の白枠で囲った部分のような、顎の一部分の画像である。なお、歯科パノラマX線画像にはコントラストの低いものが多いので、取得したX線画像に、適宜、コントラスト強調処理を実行する。
【0028】
X線画像の取得が完了すると、次に、制御部12は、下顎骨領域を抽出するための下顎骨領域抽出処理を開始する(ステップS200)。ここで、「下顎骨」とは、皮質骨と海綿骨から構成される下顎の骨のことである。この処理は、画像処理対象とならない背景部分をX線画像から除去することを目的としたものである。なお、ここで「背景部分」とは、X線画像中の下顎骨以外の部分のことである。この処理によって、X線画像から下顎骨部分のみが切り出される。以下、図4のフローチャートを参照して下顎骨領域抽出処理について説明する。
【0029】
制御部12は、下顎骨部分の画素を1(白)、背景部分の画素を0(黒)として2値化した、図5に示すような「マスク画像」を生成する(ステップS201)。マスク画像は、後述の処理(ステップS202)において、下顎骨部分をX線画像から切り出すために使用する。2値化の手法は様々あり、1つの手法に限定されるものではないが、本実施形態では画素のクラスタ化に基づく手法を用いる。以下、クラスタ化を用いた2値化手法について詳述する。
【0030】
クラスタとは、所定の定義によって分類された画素の集合のことをいう。本手法においては、まず、測定領域内の全ての画素を画素値に基づいて分類し、画素値ごとのクラスタを作る。すなわち、画素値がzである画像内のすべての画素は、クラスタCzに所属する。この分類によるクラスタ数は、画像内における画素値の数に等しいため、クラスタ数の上限は256となる。得られた全クラスタは、各クラスタを特徴づける画素値に基づいて並べる。以後、次に説明する手法でクラスタの統合を繰り返し行い、最終的に全画素を2つのクラスタに統合する。
【0031】
まず、2つのクラスタにおいて、クラスタ内分散とクラスタ間分散という概念を導入する。クラスタ間分散とは、クラスタA、クラスタBが存在するとき、それらの和集合において計算した画素値の分散である。クラスタ内分散は、クラスタAに所属する画素値の平均値をmA、クラスタBに属する画素値の平均値をmBとするとき、クラスタAの画素値が全てmA、クラスタBの画素値が全てmBであるとして求めた、クラスタAとクラスタBとの和集合における画素値の分散である。また、クラスタ内分散とクラスタ間分散との積を、「クラスタ間距離」と定義する。
【0032】
次に、上記で定義した画素値に基づくクラスタの並びにおいて、隣接する2つのクラスタの組み合わせ全てにおいて、クラスタ間距離を計算する。得られたクラスタ間距離が最小値となるような2つのクラスタの組み合わせを探し、この2つのクラスタを統合する。以降、クラスタ間距離計算及び統合の操作を、クラスタ数が2になるまで繰り返す。得られた2つのクラスタのうち、画素値の大きいクラスタに属する画素に、画素値1を与え、もう一方のクラスタに属する画素に、画素値0を与える。この処理によって、画像を2値化することができる。この結果生成されるデータが、下顎骨部分の画素値が1、背景部分の画素値が0として表現されたマスク画像である。
【0033】
マスク画像の生成が完了すると、次に、制御部12は、元のX線画像(以下、「原画像」という)にマスク画像を適用して、背景部分を取り除く(ステップS202)。具体的には、原画像の各画素において、その画素値とマスク画像の画素値との積をとり、新たな画素値とする。この処理によって、背景部分が完全に黒色となったグレースケール画像が生成される。背景部分が黒となったグレースケール画像を取得したら、制御部12は下顎骨領域抽出処理を終了する。
【0034】
下顎骨領域抽出処理を終了したら、制御部12は、図3のフローに戻り、皮質骨輪郭明瞭化処理を開始する(ステップS300)。この処理は、皮質骨の輪郭を明瞭化し、また輪郭を平滑にすることを目的としている。以下、図6のフローチャートを参照して皮質骨明瞭化処理について説明する。
【0035】
制御部12は、ステップS202で生成したグレースケール画像に、ハイパスフィルタリングを施してエッジ強調を行う(ステップS301)。この処理によって、図7に示すような画像が得られる。
【0036】
次に、制御部12は、ステップS301で処理を施した画像に、さらに、ステップS201と同様のクラスタ化の手法を適用して、帯状の皮質骨部分を中心とする構造体の画素値を1(白)、その他の背景部分の画素値を0(黒)とした、2値化画像を生成する(ステップS302)。なお、2値化の手法はステップS201で説明した手法とは別の手法であってもよい。
【0037】
次に、制御部12は、2値化画像の白で表示された領域の全ての画素について、後述する方法で距離変換の処理を行う(ステップS303)。距離変換処理の結果、処理前には白であった画像領域については画素値が距離値に等しく、処理前には黒であった画像領域は画素値は0(黒)のままであるグレースケール画像が生成される。
【0038】
距離変換は、次のように行われる。帯状の皮質骨部分を中心とする構造体部分(白部分)の全画素において、もっとも近い背景部分(黒部分)の画素までの距離を算出する。このとき、制御部12は、8近傍の距離変換に基づいて距離を算出する。ここで、8近傍の距離変換とは、図8に示すように、起点となる画素(中央の黒い画素)に隣接する8つの画素までの距離を1として、終点となる画素までの画素数を2つの画素間の距離とする手法のことである。制御部12は、得られた距離値を下顎骨部分の各画素値と置き換え、新たなグレースケール画像を生成する(ステップS303)。
【0039】
次に、制御部12は、皮質骨周辺の骨梁像(海綿骨を形成する細かな骨組織)、及び小さな島状の構造物を取り除くため、グレースケール画像から、所定の閾値より小さな画素値の画素を、黒色(画素値0)に置き換えていく(ステップS304)。なお、閾値は、画像中の最大画素値の10%程度の値とするのが望ましい。値の小さな画素は、背景部分と距離の近い画素を意味するから、この処理によって、グレースケール画像内の小さな島状の構造物や、皮質骨周縁の骨梁像などが取り除かれる。
【0040】
次に、制御部12は、ステップS304で生成した画像に、ステップS201と同様の手法を適用するなどして、再び、2値化画像を生成する(ステップS305)。
【0041】
さらに、制御部12は、ステップS305で生成した2値化画像に、モルフォロジカル・オープニングやモルフォロジカル・クロージングを適用することによって、皮質骨内の空洞や欠けを取り除き、図9に示すような、新たな2値化画像を生成する(ステップS306)。ここで、モルフォロジカル・オープニングとは、適切に選択した小さな構成要素(図形)を画素値1(白)の部分の内部におさまるように隈無く配置し、この構成要素が配置されなかった部分を取り除くことによって、境界線を平滑にする方法のことである。小さな構成要素として用いる図形の例は円である。また、モルフォロジカル・クロージングとは、モルフォロジカル・オープニングと同じ操作を画素値0(黒)の部分に対して行う方法のことである。この処理によって、皮質骨内の空洞や欠けが取り除かれ、輪郭が平滑となる。ステップS306の処理が終了したら、制御部12は皮質骨輪郭明確化処理を終了する。
【0042】
皮質骨輪郭明確化処理を終了したら、制御部12は、図3のフローに戻り、皮質骨境界線特定処理を開始する(ステップS400)。この処理は、皮質骨とそれ以外の部分との境界であって略平行にはしる2本の境界線を特定することを目的としている。以下、図10のフローチャートを参照して皮質骨境界線特定処理について説明する。
【0043】
制御部12は、ステップS306で生成した画像に、再び、ステップS303で説明した8近傍の距離変換を適用し、図11に示すようなグレースケール画像を生成する(ステップS401)。
【0044】
制御部12は、ステップS401で得られたグレースケール画像を基に、帯状の皮質骨の中心を長手方向に貫く中心線を特定する(ステップS402)。この処理によって、図12に示すように、皮質骨の中心を貫く中心線が特定される。なお、中心線は、距離値(グレースケール画像の画素値)の極大値を追跡することによって特定される。以下、中心線を特定する方法について詳述する。
【0045】
中心線は、皮質骨部分を左右に横切る多数の経路を所定の方法で生成し、その中から最適な経路を選択することによって特定される。経路の生成は、起点の選択と起点の移動とによってなされる。ここでは、起点を画面の右端にとって移動を右端から左端に行う場合について説明するが、左右を反転させてもよい。起点としては、皮質骨部分を構成する画素のうち右端にある画素全てが選択される。また、一つの起点に着目した場合の起点の移動は次のように行う。
(1)起点となる画素の左隣、左上、左下の3画素の画素値を比較する。
(2)3画素のうち最も画素値の大きい画素を選択し、新たな起点画素とする。
(3)起点画素が画面の左端に到達するまで(1)及び(2)を繰り返す。
この移動を選択された起点全てに適用することによって、多数の経路が得られる。次に、全ての経路について、経路上での画素値の合計をとる。画素値の合計が最大となる経路を、中心線として特定する。
【0046】
中心線の特定が完了したら、制御部12は、中心線上に複数の点を配置し、その点を中心点として、図13に示すように、複数の円を描く。なお、描く円の半径は、それぞれ、中心点の画素値、すなわち、中心点となる画素から背景部分(黒色部分)までの最短距離とする。制御部12は、複数の円によって形成される上下2本のエンベロープ(Envelope:包絡線)を、皮質骨の境界線として特定する(ステップS403)。これにより、制御部12は、より平滑な線を皮質骨の境界線として特定することができる。皮質骨の境界線を特定したら、制御部12は、皮質骨境界線特定処理を終了する。
【0047】
皮質骨境界線特定処理を終了したら、制御部12は、図3のフローに戻り、皮質骨厚測定処理を開始する(ステップS500)。以下、図14のフローチャートを参照して皮質骨厚計測処理について説明する。
【0048】
2本の境界線は、いずれも凹凸を有しているため、このままでは皮質骨と直交する方向を適切に決定できない。そこで制御部12は、2本の境界線のうちいずれか1本について、境界線上に設けた複数の点に対して最小二乗法を適用し、図15のaに示すような境界線の近似線を求める(ステップS501)。近似線は解析的な関数であり、多項式等、どのような関数であってもよいが、皮質骨の形状、特に曲率を良く再現する関数であることが望ましい。関数の好適な例の一つは、二次関数である。なお、近似線は、後述の処理(ステップS502)において、皮質骨の長手方向と直交する方向に伸びる直線(以下、「測定補助線」という)を特定するために使用される。
【0049】
制御部12は、近似線上に複数の測定点を設定し、図15に示すように、設定した測定点からそれぞれ近似線(図16、a)の法線方向に伸ばした直線を測定補助線(図16、c)として決定する(ステップS502)。なお、測定精度を高めるため、近似線上に設定する測定点の数は、できる限り多くとることが望ましい。
【0050】
制御部12は、決定した複数の測定補助線上において、2本の境界線間の距離を測定したデータを、皮質骨厚の測定データ(測定値群)として取得する(ステップS503)。
【0051】
この測定データにはノイズが含まれている可能性が高い。なぜなら、皮質骨部分を2値化によって分離する際に、皮質骨内に画素値の低い領域があった場合には、2値化によって空洞が発生し、その後の処理によっても取り除くことができない場合があるからである。ノイズが含まれた測定データを基に皮質骨厚を算出すると、誤った値を皮質骨厚として算出することになる。そこで、制御部12は、以下の処理(ステップS504〜S505)を実行して、測定データからノイズを除去する。
【0052】
制御部12は、ピクセル単位で表された皮質骨の厚みの値と、その値が測定された回数とから、図17に示すようなヒストグラムを作成する(ステップS504)。
【0053】
ここで、ヒストグラム内において、厚みの値に基づく分類を定義する。分類によって生じた集合の一つ一つをクラスタと呼ぶ。あるクラスタは、そのクラスタを定義する値域に属する測定値の集合で、クラスタのサイズとは、クラスタの構成要素数で定義される。最もサイズの大きいクラスタ(以下、「最大クラスタ」という)、すなわち、測定回数の最も多いクラスタが、皮質骨の厚みを最も正確に反映する測定値群である。
【0054】
そこで、制御部12は、クラスタの数を2〜10に変化させながら、ヒストグラムをクラスタリングすることによって、最大クラスタを選択する(ステップS505)。
【0055】
なお、クラスタリングの手法としては、k−means法が好適である。具体的には、下記(1)〜(5)の処理を上述のヒストグラムに対し順次実行する。クラスタリングが適切に実行されれば、最大クラスタと2番目に大きいクラスタとの構成要素数の差が最大となる。
(1)分類するクラスタの数を設定する。設定したクラスタ数をNとする。
(2)ピクセル単位で表された、測定値の取りうる数値すべてにおいて、測定値1つに対してクラスタのうち1つをランダムに関連づける。
(3)N個のクラスタそれぞれについて、そのクラスタに所属する測定値と、ヒストグラム内における該当測定値の出現回数とを乗じて、そのクラスタにおける期待値とする。
(4)測定値から1つを選び、N個のクラスタの期待値と比較し、最も近い期待値を持つクラスタに、その測定値を再配分(関連づけの修正)する。この操作を、全ての測定値について行う。
(5)(3)と(4)の処理を繰り返し行い、再配分が起こらなくなるまで続ける。
【0056】
制御部12は、選択された最大クラスタ内において、測定値の平均値を求め、皮質骨厚の推定値とする。また、制御部12は、医師等に判断材料を提供するため、ステップS503で取得した測定値の平均値と分散値を算出する。制御部12は、算出した3つの値(推定値、平均値、分散値)を診断支援情報として記憶部13に格納する(ステップS506)。診断支援情報の格納が完了したら、制御部12は、皮質骨厚測定処理を終了する。
【0057】
皮質骨厚測定処理を終了したら、制御部12は、図3のフローに戻り、骨粗鬆症判別処理を開始する(ステップS600)。皮質骨の厚みは、骨粗鬆症の進行と強い関連を持っており、制御部12は、診断支援情報から対象患者が骨粗鬆症であるか否かを判別できる。以下、図18のフローチャートを参照して骨粗鬆症判別処理について説明する。
【0058】
制御部12は、記憶部13から、記憶部13に予め格納してある照合データを取得する(ステップS601)。照合データは、基準手法(例えばDXA、二重エネルギーX線吸収測定法)による骨粗鬆症の診断結果と診断支援情報(皮質骨厚の推定値、厚み値の平均値、分散値)とを、多数の被験者から取得し、これらを関連付けてデータベース化したものである。
【0059】
制御部12は、この照合データに基づき、後述の処理において骨粗鬆症の判別に用いるための閾値を決定する(ステップS602)。具体的には、次のように閾値を決定する。まず、任意の閾値を仮決定する。そして、皮質骨の厚み推定値がこの仮決定した閾値よりも小さい被験者を「骨粗鬆症陽性」、そうでない被験者を「陰性」として仮判別を下す。この仮判別を全ての被験者に対して行う。次に、基準手法による骨粗鬆症の診断結果と照合し、感度と特異度を算出する。ここで、感度とは、基準手法によって骨粗鬆症陽性と診断された人のうち、皮質骨の厚み推定値に基づいて陽性と判別された人の割合であり、特異度とは、基準手法によって陰性と診断された人のうち、皮質骨の厚み推定値に基づいて陰性と判別された人の割合である。最後に、閾値を上下させ、感度と特異度の双方を考慮に入れながら、基準手法による診断結果とできる限り一致するように閾値を決定する。
【0060】
制御部12は、記憶部13から、ステップS500で生成した診断支援情報を取得する(ステップS603)。
【0061】
制御部12は、診断支援情報から皮質骨厚の推定値を抽出し、ステップS602で生成した閾値と照合する。そして、制御部12は、皮質骨厚の推定値が閾値よりも小さいときには「骨粗鬆症陽性」、そうでないときには「陰性」と判別し、ワークメモリ(不図示)等にその判別結果を格納する(ステップS604)。判別結果の格納が完了したら、制御部12は、骨粗鬆症判別処理を終了する。
【0062】
骨粗鬆症判別処理を終了したら、制御部12は、図3のフローに戻り、皮質骨厚の推定値、及び、判別結果を、ワークメモリ等から取得して、出力部14に出力する(ステップS700)。医師等は、出力部14に表示された判別結果等を基に、患者が骨粗鬆症であるか否かを診断する。出力部14に皮質骨厚の推定値、及び判別結果の出力が完了したら、制御部12は、診断支援処理を終了する。
【0063】
本実施の形態によれば、皮質骨の厚みを正確に予測することが可能である。皮質骨の厚み測定を複数の測定点において行っており、複数の測定値から統計処理によって厚み推定値を算出しているためである。
【0064】
また、本実施の形態によれば、皮質骨中心線を取得し、中心線上に設けた複数の点を中心とする複数の円の包絡線を皮質骨の境界線として取得するため、皮質骨の境界線は滑らかである。このため、皮質骨の厚み測定の際にノイズによる影響を受けにくい。
【0065】
また、本実施の形態において、皮質骨の厚み測定の際に測定補助線を使用している。測定補助線として用いるのは、皮質骨の境界線を好適に再現する近似曲線の法線であって、皮質骨の長手方向に直行する方向を好適に反映するものである。このような方法をとることは、皮質骨のような湾曲した帯状構造物の厚みを測定する方法として好適である。
【0066】
本実施の形態に係る骨粗鬆症診断支援装置は、プログラムによって全て自動化されており、診断支援処理を行う人が誰であっても同一の結果を与える。
【0067】
なお、骨粗鬆症の判別は、次のように行ってもよい。ここでは、診断支援情報のうち、皮質骨厚みの平均値及び分散値の2つの値を用いた骨粗鬆症の判別を行う。まず、照合データから、骨粗鬆症の有無に関連づけられた多数の被験者の皮質骨厚みの平均値と分散値を取得する。次に、分散値と平均値をそれぞれ縦軸と横軸にとって、被験者のデータをプロットする。この平面において、骨粗鬆症患者とそうでない人を分離するための境界線を、次に述べる方法を用いて定める。
【0068】
骨粗鬆症患者とそうでない人を分離するための境界線は、サポートベクタマシンを用いて決定する。以下、サポートベクタマシンを2次元平面に適用する場合について説明する。サポートベクタマシンは、平面上で2値に分類された多数のベクトル(サンプルベクトル)に基づいて、この平面を2つに分離する境界線を求める手法である。境界線は重みベクトルと閾値とを設定することによって定義され、重みベクトルとの内積が所定の閾値と等しくなるベクトルの集合として定義される。ただし、サポートベクタマシンにおいては、距離の計算の際に、ユークリッド距離ではなく、カーネル関数によって定義される距離を用いてもよい。カーネル関数によって定義される距離を用いることによって、非線形の境界線を求めることができる。重みベクトル及び閾値は、以下の条件を満たすように決定される。
(1)重みベクトルとの内積が所定の閾値を超えるか否か、によるサンプルベクトルの分類と、上記の2値分類との一致の度合いが最大となること。
(2)生成した境界線と、境界線に最も近いサンプルベクトル(サポートベクトル)との距離が最も大きくなること。
この方法を診断支援情報に適用する場合には、個々のサンプルベクトルとは皮質骨厚みの平均値及び分散値を要素に持つベクトルであり、2値分類とは骨粗鬆症の有無による分類である。このようにして、骨粗鬆症患者とそうでない人を分離するための境界線が求められる。
【0069】
このような領域の区分を決定し、新たな患者について判別を行う時は、その患者の測定値の平均値と分散値をこの図にあてはめ、骨粗鬆症の領域に入っていれば骨粗鬆症陽性、入っていなければ陰性であると判別する。
【0070】
この判別方法においては、皮質骨厚みの平均値のみでなく、分散値も考慮に入れた判別を行っている。皮質骨の分散値も、骨粗鬆症と相関する情報を与える可能性が高く、この方法によって、骨粗鬆症の判別の精度がさらに高くなる。
【0071】
ステップS402の中心線の特定において、距離値の極大値の追跡には動的計画法を用いたアルゴリズムを用いてもよい。
【0072】
ステップS402において中心線上に複数の円を生成する際、円の円周は画素の集合として構成されてもよい。円周を画素の集合として得る際には、例えば、円周上に角度0.001ラジアン毎に点を生成し、これらの点のX、Y座標を四捨五入、切り上げ、切り捨て等により整数化する。これによって位置が特定される画素の集合を円周としてもよい。
【0073】
ステップS403において複数の円によって形成される上下2本のエンベロープもまた、画素列として構成されてよい。たとえば画素集合として構成される複数の円の円周のうち、他の円の内部と重ならない画素から構成される画素列を、エンベロープとしてもよい。
【0074】
ステップS501において近似線を決定する際に境界線上に設ける複数の点は、できるだけ多いことが望ましい。境界線が画素列で構成される場合には、例えば境界線を構成する全ての画素を用いることが望ましい。
【0075】
ステップS502において、近似線上に設ける測定補助線はなるべく多いことが望ましい。例えば、近似線のX座標が2画素間の距離の整数倍となる点を全て測定点として選択し、測定補助線を決定することが望ましい。
【0076】
ステップS503において、測定補助線上における2本の境界線間の距離の算出は次のように行ってもよい。境界線が画素列である場合、上側境界線の中で測定補助線に最も近い画素と、下側境界線の中で測定補助線に最も近い画素とが、測定補助線と境界線との2つの交点を代表すると見なしてもよい。そこでこれら2画素間のユークリッド距離を、この測定補助線上の皮質骨厚としてもよい。皮質骨厚の測定データは、後の処理のために整数化してピクセル単位としてもよい。
【0077】
ステップS602において、骨粗鬆症の診断結果として照合に用いる基準手法は、DXA(二重エネルギーX線吸収測定法)による腰椎や大腿骨頸部の骨密度測定であってもよい。
【0078】
上記で説明した骨粗鬆症診断支援装置1は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いても実現可能である。例えば、上述の動作を実行するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布し、該プログラムをコンピュータにインストールして、上述の処理を実行することによって装置を構成してもよい。また、インターネット等のネットワーク上のサーバ装置が備えるディスク装置に格納しておき、例えばコンピュータにダウンロード等できるようにしてもよい。また、上述の機能を、OSとアプリケーションソフトの共同より実現してもよい。この場合には、OS以外の部分のみを媒体に格納して配布してもよく、また、コンピュータにダウンロード等してもよい。
【0079】
上記のプログラムを記録する記録媒体としては、USBメモリ、フレキシブルディスク、CD、DVD、Blu−ray Disc(登録商標)、MO、SDカード、MS(メモリースティック)(登録商標)、その他、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ、磁気テープ等のコンピュータ読取可能な記録媒体を使用することができる。また、HDD(ハードディスク)やSSD(ソリッドステートドライブ)等、通常、システム又は装置に固定して使用する記録媒体を使用することもできる。
【実施例】
【0080】
以下に示すように、図2に示す歯科パノラマX線画像を用いて、皮質骨の厚み測定を行った。図2のパノラマX線画像は、フィルム式装置(朝日レントゲン AZ−3000)で撮影されたものを、300dpiの解像度でスキャンし、デジタル画像に変換したものである。この画像から、長方形で囲まれたオトガイ孔周辺の幅300ピクセルの領域を左右の二箇所抽出し、それぞれ診断支援処理を施した。
【0081】
図17に、左側についての皮質骨厚み測定値群のヒストグラムを示す。図17のヒストグラムには、41ピクセル付近に主要なピークが見られ、また20ピクセル付近にノイズと見られる値の集合がある。
【0082】
図17のヒストグラムにクラスタリングを施し、主要クラスタを抽出した。図19に、抽出した主要クラスタのヒストグラムを示す。ここにおいて、ノイズが除去され、主要なクラスタが好適に選択されていることが分かる。
【0083】
上記のノイズ除去方法の有効性を検証するために、他の方法によってもノイズ除去を行い、比較した。ここでは、最大10%及び最小10%の測定値を除去する方法を用いた。このノイズ除去によって得られたヒストグラムを図20に示す。厚み測定値20ピクセル付近に小さなクラスタが残っており、ノイズが完全には除去できていないことが分かる。このように、本実施例のクラスタリングに基づく方法を用いれば、ノイズの除去が有効に行えることが分かる。
【0084】
上記のクラスタリングの方法で得られた皮質骨の厚み推定値を用いて、骨粗鬆症の判別を行った。
【0085】
まず、照合データ作成のための被験者の選択を次のように行った。1996年から2001年の間に歯科パノラマX線画像とDXAによる腰椎・大腿骨頸部での骨密度測定を行った531人の女性から、骨粗鬆症の診断歴のない50歳以上の閉経後女性に限定して100人を抽出し、被験者とした。この抽出に際しては、条件を均一にするため、過去1年以内の月経・代謝性骨疾患やがんの骨転移の診断、女性ホルモンなど骨代謝に影響する可能性のある投薬、子宮や卵巣の摘出がいずれも無く、喫煙歴がなく、顎骨に骨破壊病変のない被験者に限定した。
【0086】
次に、骨粗鬆症の判断の閾値の設定を次のように行った。上記の照合データに対して、感度が92.0%となるように閾値を設定すると、下顎骨右側については、腰椎骨密度を基準とするとき閾値は34.3ピクセル、大腿骨頸部骨密度を基準とするとき36.6ピクセルとなった。下顎骨左側については、腰椎骨密度を基準とするとき37.4ピクセル、大腿骨頸部骨密度を基準とするとき33.6ピクセルとなった。
【0087】
表1に、上記の100人の被験者の診断結果の特異度、感度、陽性適中率、陰性適中率、正確度を示す。ここで陽性的中率とは、歯科パノラマX線画像によって骨粗鬆症陽性と判別された人のうち、DXAによって陽性と診断された人の割合であって、陰性的中率とは、歯科パノラマX線画像によって陰性と判別された人のうち、DXAによって陰性と診断された人の割合である。正確度とは、全診断数に対する、DXAによる診断結果と歯科パノラマX線画像による診断結果が一致した人の割合である。
【0088】
【表1】
【0089】
表1に示す通り、いずれも感度が92.0%のとき、特異度(骨粗鬆症患者でない者のうち、誤検出されなかった者の割合)は、下顎骨右側については腰椎骨密度を基準とするとき67.0%、大腿骨頸部骨密度を基準とするとき55.0%となり、左側についてはそれぞれ64.0%、75.0%となった。
【0090】
上記の結果を、特許文献1に記載の1点測定による診断方法と比較した(Agus Zainal Arifin, A. Asano, A. Taguchi, T. Nakamoto, M. Ohtsuka, M. Tsuda, Y. Kudo, and K. Tanimoto, ”Computer−aided system for measuring the mandibular cortical width on dental panoramic radiographs in idenifying postmenopausal women with low bone mineral density,” Osteoporosis International, Vol. 17, No. 5, pp. 753−759, 2006)。1点測定による診断では、感度と特異度は、腰椎骨密度を基準とするときそれぞれ88.0%と58.7%、大腿骨頸部骨密度を基準とするときそれぞれ87.5%と56.3%であった。また、上記の文献に記載されている、熟練歯科放射線科医の手動測定による診断結果では、感度と特異度が腰椎骨密度を基準とするときそれぞれ92.0%と60.0%、大腿骨頸部骨密度を基準とするときそれぞれ87.5%と64.8%であった。以上のことから、本発明の骨粗鬆症診断支援装置は、1点測定による特許文献1に記載の方法をほとんどの場合上回り、熟練者の手動測定と比べても同等以上の診断能力を持つことが分かった。
【0091】
本実施例における骨粗鬆症の判別の精度を検証するため、受診者動作特性解析を行った。受信者動作特性(Reveiver Operating Characteristic,ROC)解析は、さまざまな閾値に対する感度と特異度を総合的に取り扱い、診断方法の能力を評価する方法である。ROC解析では、(1−特異度)を横軸、感度を縦軸として、閾値を変化させたときの両者の関係をプロット(ROC曲線)に表す。理想的には、感度が高く、(1−特異度)が低いほうが望ましい。したがって、ROC曲線の下側部分の面積が大きい方が、感度がより高く、(1−特異度)が低いところをROC曲線が通ることになり、閾値を適切に定めればより高い診断能力を得ることができる。
【0092】
図21に、本実施例により得られたROC曲線(下顎骨右側の例)を示す。図21(a)は腰椎骨密度を基準とした場合、(b)は大腿骨頸部骨密度を基準した場合に相当する。ROC曲線の下側の面積は、下顎骨右側については腰椎骨密度を基準とするとき0.851、大腿骨頸部骨密度を基準とするとき0.830となり、左側についてはそれぞれ0.841、0.863となった。一点測定による方法では、腰椎骨密度を基準とするとき0.777、大腿骨頸部骨密度を基準とするとき0.803であったので、この点からも本発明による方法がより優れた診断能力を持つことが分かる。
【0093】
また、厚み測定値群の平均値及び分散値の双方を用いた方法によっても、骨粗鬆症の判別を行った。図22に、厚み測定値群の平均値及び分散値のプロットを示す。
【0094】
図22において0はDXAによって診断された骨粗鬆症患者、1はそうでない人、であり、図22(a)は腰椎骨密度を基準とした場合、(b)は大腿骨頸部骨密度を基準とした場合に相当する。プロットにおいては、基本的には骨粗鬆症患者とそうでない人の領域がおおまかに存在し、両者が入り交じっている領域も見られる。サポートベクタマシンを用いて求めた、二つの領域の最適な境界線もまた図22に示されている。trainingはすでに診断された学習データ、classifiedは得られた境界線に基づいて診断を行ったデータである。このように、あらかじめ多数の学習データによって境界線を定めておけば、骨粗鬆症の判別を行うことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の骨粗鬆症診断支援装置は、歯科検診において撮影されるパノラマX線画像を用いることを前提としており、新たに画像の撮影を行う必要がない。このため、骨粗鬆症診断に必要なコストが大幅に削減できる。
【符号の説明】
【0096】
1 骨粗鬆症診断支援装置
11 X線画像取得部
12 制御部
13 記憶部
14 出力部
15 操作部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線画像に帯状に写った皮質骨と他の部分との2本の境界線を特定する境界線特定手段と、
前記境界線上に設けた複数の点に基づいて、前記境界線に近似する直線または曲線である近似線を求める近似線算出手段と、
前記近似線上に複数の測定点を設定し、設定した前記測定点からそれぞれ前記近似線の法線方向に伸ばした測定補助線上において前記2本の境界線間の距離を測定し、複数の測定値を取得する測定値群取得手段と、
前記測定値に基づいて皮質骨の厚みを算出する皮質骨厚算出手段と、
前記皮質骨厚算出手段で算出した皮質骨の厚みに基づいて骨粗鬆症を判別する骨粗鬆症判別手段と、を備える、
ことを特徴とする骨粗鬆症診断支援装置。
【請求項2】
前記境界線特定手段は、
前記X線画像の濃淡を基に皮質骨部分とその他の背景部分とを特定する皮質骨部分特定手段と、
前記皮質骨部分に属する画素それぞれについて前記背景部分までの最短距離を算出し、算出した前記最短距離と該当画素とを関連づける最短距離取得手段と、
前記最短距離の極大値を追跡することによって、皮質骨の中心線を求める中心線取得手段と、
前記中心線上に設けた複数の点を中心点とした複数の円の包絡線を前記境界線として取得する境界線取得手段と、を備え、
前記境界線取得手段は、
前記中心点に位置する画素に関連付けられた前記最短距離をそれぞれの円の半径とする、
ことを特徴とする請求項1に記載の骨粗鬆症診断支援装置。
【請求項3】
前記皮質骨厚算出手段は、
前記複数の測定値から、測定値域とその出現回数とのヒストグラムを取得する手段と、
前記ヒストグラムの前記値域に複数の区分を設け、前記区分に基づいて前記ヒストグラムを分割するヒストグラム分割手段と、
分割された複数のヒストグラムのうち、出現回数の合計が最大となるヒストグラムを選択する手段と、
選択された前記出現回数の合計が最大となるヒストグラムにおいて測定値の期待値を算出し、算出した期待値を皮質骨の厚みとして取得する手段と、を備え、
前記ヒストグラム分割手段は、
ヒストグラム分割後に、出現回数の合計が最大となるヒストグラムと、出現回数の合計が2番目に大きいヒストグラムとの、出現回数の合計の差が最大となるように、区分の数を設定する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の骨粗鬆症診断支援装置。
【請求項4】
前記皮質骨厚算出手段は、
前記複数の測定値の平均値を皮質骨の厚みとして取得する手段、を備え、
前記骨粗鬆症判別手段は、
前記皮質骨厚算出手段で取得した皮質骨の厚みと、前記測定値の分散値とに基づいて骨粗鬆症を判別する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の骨粗鬆症診断支援装置。
【請求項5】
前記ヒストグラム分割手段は、
前記複数の測定値の取りうる数値を、所定の数の集合にそれぞれランダムに関連づけ、複数の集合を取得する集合取得手段と、
前記複数の集合のそれぞれについて、測定値と測定値出現回数とを乗じた値の集合内合計を求め、期待値とする期待値取得手段と、
前記測定値の取りうる数値から1つを選んで、前記期待値と比較し、最も近い期待値を有する集合に選択した数値を再配分する操作を、全ての前記測定値の取りうる数値について行う再配分手段と、
前記期待値取得手段と前記再配分手段とを交互に繰り返して、前記再配分が起こらなくなるまで続ける繰り返し手段と、
を備えることを特徴とする請求項3に記載の骨粗鬆症診断支援装置。
【請求項6】
前記近似線は、多項式で表現される直線または曲線である、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の骨粗鬆症診断支援装置。
【請求項7】
前記近似線は、2次関数で表現される曲線である、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の骨粗鬆症診断支援装置。
【請求項8】
前記X線画像は、人の下顎部分が含まれる歯科パノラマX線画像である、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の骨粗鬆症診断支援装置。
【請求項9】
X線画像に帯状に写った皮質骨と他の部分との2本の境界線を特定する境界線特定ステップと、
前記境界線上に設けた複数の点に基づいて、前記境界線に近似する直線または曲線である近似線を求める近似線算出ステップと、
前記近似線上に複数の測定点を設定し、設定した前記測定点からそれぞれ前記近似線の法線方向に伸ばした測定補助線上において前記2本の境界線間の距離を測定し、複数の測定値を取得する測定値群取得ステップと、
前記測定値に基づいて皮質骨の厚みを算出する皮質骨厚算出ステップと、
前記皮質骨厚算出ステップで算出した皮質骨の厚みに基づいて骨粗鬆症を判別する骨粗鬆症判別ステップと、をコンピュータに実行させる、
ことを特徴とする骨粗鬆症診断支援プログラム。
【請求項1】
X線画像に帯状に写った皮質骨と他の部分との2本の境界線を特定する境界線特定手段と、
前記境界線上に設けた複数の点に基づいて、前記境界線に近似する直線または曲線である近似線を求める近似線算出手段と、
前記近似線上に複数の測定点を設定し、設定した前記測定点からそれぞれ前記近似線の法線方向に伸ばした測定補助線上において前記2本の境界線間の距離を測定し、複数の測定値を取得する測定値群取得手段と、
前記測定値に基づいて皮質骨の厚みを算出する皮質骨厚算出手段と、
前記皮質骨厚算出手段で算出した皮質骨の厚みに基づいて骨粗鬆症を判別する骨粗鬆症判別手段と、を備える、
ことを特徴とする骨粗鬆症診断支援装置。
【請求項2】
前記境界線特定手段は、
前記X線画像の濃淡を基に皮質骨部分とその他の背景部分とを特定する皮質骨部分特定手段と、
前記皮質骨部分に属する画素それぞれについて前記背景部分までの最短距離を算出し、算出した前記最短距離と該当画素とを関連づける最短距離取得手段と、
前記最短距離の極大値を追跡することによって、皮質骨の中心線を求める中心線取得手段と、
前記中心線上に設けた複数の点を中心点とした複数の円の包絡線を前記境界線として取得する境界線取得手段と、を備え、
前記境界線取得手段は、
前記中心点に位置する画素に関連付けられた前記最短距離をそれぞれの円の半径とする、
ことを特徴とする請求項1に記載の骨粗鬆症診断支援装置。
【請求項3】
前記皮質骨厚算出手段は、
前記複数の測定値から、測定値域とその出現回数とのヒストグラムを取得する手段と、
前記ヒストグラムの前記値域に複数の区分を設け、前記区分に基づいて前記ヒストグラムを分割するヒストグラム分割手段と、
分割された複数のヒストグラムのうち、出現回数の合計が最大となるヒストグラムを選択する手段と、
選択された前記出現回数の合計が最大となるヒストグラムにおいて測定値の期待値を算出し、算出した期待値を皮質骨の厚みとして取得する手段と、を備え、
前記ヒストグラム分割手段は、
ヒストグラム分割後に、出現回数の合計が最大となるヒストグラムと、出現回数の合計が2番目に大きいヒストグラムとの、出現回数の合計の差が最大となるように、区分の数を設定する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の骨粗鬆症診断支援装置。
【請求項4】
前記皮質骨厚算出手段は、
前記複数の測定値の平均値を皮質骨の厚みとして取得する手段、を備え、
前記骨粗鬆症判別手段は、
前記皮質骨厚算出手段で取得した皮質骨の厚みと、前記測定値の分散値とに基づいて骨粗鬆症を判別する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の骨粗鬆症診断支援装置。
【請求項5】
前記ヒストグラム分割手段は、
前記複数の測定値の取りうる数値を、所定の数の集合にそれぞれランダムに関連づけ、複数の集合を取得する集合取得手段と、
前記複数の集合のそれぞれについて、測定値と測定値出現回数とを乗じた値の集合内合計を求め、期待値とする期待値取得手段と、
前記測定値の取りうる数値から1つを選んで、前記期待値と比較し、最も近い期待値を有する集合に選択した数値を再配分する操作を、全ての前記測定値の取りうる数値について行う再配分手段と、
前記期待値取得手段と前記再配分手段とを交互に繰り返して、前記再配分が起こらなくなるまで続ける繰り返し手段と、
を備えることを特徴とする請求項3に記載の骨粗鬆症診断支援装置。
【請求項6】
前記近似線は、多項式で表現される直線または曲線である、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の骨粗鬆症診断支援装置。
【請求項7】
前記近似線は、2次関数で表現される曲線である、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の骨粗鬆症診断支援装置。
【請求項8】
前記X線画像は、人の下顎部分が含まれる歯科パノラマX線画像である、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の骨粗鬆症診断支援装置。
【請求項9】
X線画像に帯状に写った皮質骨と他の部分との2本の境界線を特定する境界線特定ステップと、
前記境界線上に設けた複数の点に基づいて、前記境界線に近似する直線または曲線である近似線を求める近似線算出ステップと、
前記近似線上に複数の測定点を設定し、設定した前記測定点からそれぞれ前記近似線の法線方向に伸ばした測定補助線上において前記2本の境界線間の距離を測定し、複数の測定値を取得する測定値群取得ステップと、
前記測定値に基づいて皮質骨の厚みを算出する皮質骨厚算出ステップと、
前記皮質骨厚算出ステップで算出した皮質骨の厚みに基づいて骨粗鬆症を判別する骨粗鬆症判別ステップと、をコンピュータに実行させる、
ことを特徴とする骨粗鬆症診断支援プログラム。
【図1】
【図3】
【図4】
【図6】
【図8】
【図10】
【図14】
【図18】
【図2】
【図5】
【図7】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図3】
【図4】
【図6】
【図8】
【図10】
【図14】
【図18】
【図2】
【図5】
【図7】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2012−143387(P2012−143387A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3987(P2011−3987)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 社団法人 電子情報通信学会、 電子情報通信学会技術研究報告 信学技報Vol.110 No.195、 平成22年8月27日
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【出願人】(591248348)学校法人松本歯科大学 (22)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 社団法人 電子情報通信学会、 電子情報通信学会技術研究報告 信学技報Vol.110 No.195、 平成22年8月27日
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【出願人】(591248348)学校法人松本歯科大学 (22)
【Fターム(参考)】
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