説明

骨組材、骨組構造体及びビニールハウス

【課題】 ビニールハウス等に用いられ、ビニールハウス等の外面を構成するビニールシート等の薄膜の耐用年数や、骨組材及び接続金物の摩擦による摩耗、金属疲労、腐食による骨組構造体の耐用年数を大幅に向上させることができる骨組材を提供する。
【解決手段】骨組材3を、柔軟性を有する合成樹脂製のパイプ31と、このパイプ31内に遊嵌された異形鉄筋32とで構成する。パイプ31としては、市販の給水用ポリエチレンパイプを用いる。異形鉄筋32も市販のものであり、外周面に形成された突条32b及び突出部32c、32dを有している。したがって、異形鉄筋32は、パイプ31の内周面に対し突条32b及び突出部32c、32dの各外周面においてのみ接触する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、各種の簡易建築物に用いられる骨組材、並びにその骨組材が用いられた骨組構造体及びビニールハウスに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ビニールハウスは、骨組材を組み立てて骨組構造体を構成した後、その骨組構造体の外側をビニールシートや布製のシートで覆うことによって構成されている。
【0003】
従来のビニールハウスにおいては、骨組材として鉄骨やスチールパイプが用いられていた。すなわち、ハウス形状に合わせて、予め、所定形状の骨組材を用意し、それらを所定個所に配置するとともに、それら骨組材を多種多様の専用金物で接続していた。鉄骨やスチールパイプは、熱の伝導率が高い。このため、鉄骨等に接するシートが高温に加熱される。この結果、シートの耐用年数が著しく低下するという問題があった。
そこで、下記特許文献1に記載のものにおいては、骨組材としてスチールパイプの外側を薄い樹脂層で被覆してなる骨組材が用いられている。このような骨組材では、シートがスチールパイプによって高温に加熱されるのを樹脂層が阻止する。これによって、シートの耐用年数を向上させようとするものである。
【特許文献1】特開2000−116247号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の骨組材では、スチールパイプの外周面が滑らかな円筒面になっており、樹脂層がスチールパイプの外周面全体に密着している。加えて、樹脂層が断熱効果を得るほど厚く形成されていない。このため、直射日光の熱伝導率により樹脂層がスチールパイプによって高温に加熱され、さらに樹脂層によってシートが高温に加熱される。このため、鉄骨等を単独で用いた骨組材に比べればシートの耐用年数を向上させることができるものの、さらに長期の向上を図ることはできなかった。
また、スチールパイプは、曲げにくく、過度に曲げるとスチールパイプの一部が潰れてそこから折れるおそれがあった。このため、骨組構造体を現場作業で組み立てることが困難であるという問題があった。
さらに、従来の骨組材では、風力によるきしみが生じると、連結部の接続金具により摩擦で摩耗・疲労したり、腐食により骨組自体の耐用年数も低下するという問題も有している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の問題を解決するために、この発明に係る骨組材は、柔軟性を有する合成樹脂製のパイプと、外周面に突出部を有し、上記パイプに挿入された異形鉄筋とを備えたことを特徴としている。
この発明に係る骨組構造体は、骨組材として、柔軟性を有する合成樹脂製のパイプと、外周面に突出部を有し、上記パイプに挿入された異形鉄筋とを備えた骨組材が用いられていることを特徴としている。
この発明に係るビニールハウスは、骨組材として、柔軟性を有する合成樹脂製のパイプと、外周面に突出部を有し、上記パイプに挿入された異形鉄筋とを備えた骨組材が用いられていることを特徴としている。
【0006】
上記骨組材、骨組構造体及びビニールハウスにおいては、上記パイプとして給水用ポリエチレンパイプを用いることが望ましい。
給水用ポリエチレンパイプは、異形鉄筋と同様に市販されており、容易に入手することができるからである。
【発明の効果】
【0007】
上記特徴構成を有するこの発明によれば、異形鉄筋の外周面に突出部が形成されているので、パイプは異形鉄筋と突出部において接触するだけであり、パイプが鋼管の外周面全体に接触する場合に比して、パイプの異形鉄筋に対する接触面積が少なくなる。したがって、パイプが異形鉄筋によって高温に加熱されることがなく、パイプに接触するビニールシートや布製のシート等の薄膜が高温に加熱されることがない。よって、薄膜の耐用年数を大幅に向上させることができる。また、異形鉄筋は、スチールパイプに比べて曲げ加工し易いので、容易に現場で加工・組み立てることができる。
さらに、地形の凹凸に合わせて現地で手軽に本骨組材を加工できるので、地面を平坦にする必要がなく、現況地形(左右前後のアップダウンやカーブ)に合わせて施工できる。また、設置後、解体して取り外すことも容易で、従来に比較して安価となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、この発明に係る骨組構造体1を示す。この骨組構造体1は、第1、第2筒状杭2A,2Bを複数対有している。第1、第2筒状杭2A、2Bは、図3に示すように、上端部を地面Gから突出させた状態で地中に立設されている。第1筒状杭2Aは、互いに離間した状態で一直線上に配置されている。第2筒状杭2Bは、第1筒状杭2Aの配列方向と平行な直線上に第1筒状杭2Aと同一ピッチで配置されている。対をなす第1、第2筒状杭2A,2Bは、構築しようとする構造物のスパン方向に平行な直線の長手方向において同一位置に配置されている。
【0009】
対をなす第1、第2筒状杭2A,2Bによって骨組材3の両下端部が支持されている。すなわち、骨組材3は、上下に延びる支柱部3a,3bと、この支柱部3a,3bの上端部間に一体に設けられた略円弧状をなす屋根構成部3cとを有しており、全体としてアーチ門形に形成されている。支柱部3a,3bの各下端部は、図3に示すように、対をなす第1、第2筒状杭2A,2Bに挿入されている。これによって、骨組材3が地面Gに立設されている。
【0010】
各骨組材3の支柱部3a,3bの上端部及び屋根構成部3cの中央には、水平に延びる骨組材4によって互いに連結されている。支柱部3aと骨組材4とは、市販の継手(図示せず)によって連結されている。各骨組材3の支柱部3bの上端部も、支柱部3aと同様に骨組材4を介して互いに連結されている。
【0011】
骨組材3の屋根構成部3cの中間部間には、水平な骨組材5が掛け渡されている。屋根構成3cと骨組材5とは、図4に示すように、市販のユニバーサル継手6によって連結固定されている。骨組材5の中央部には、骨組材5から左斜め上方、真上、右斜め上方に延びる骨組材7,8,9の各下端部が継手(図示せず)を介して連結固定されている。各骨組材7,9の上端部は、ユニバーサル継手6あるいは図5に示すようなI形継手10を介して、屋根構成部3cに連結固定されている。骨組材8の上端部は、I形継手10を介して屋根構成部3cに連結固定されている。
なお、骨組材3,4,5は、継手によって連結することなく、連結部のパイプを欠き取り異形鉄筋同士を溶接によって連結し、半切りパイプを被せて防水テープで固定してもよい。
【0012】
図2は、上記のように構成された骨組構造体1が用いられたビニールハウス20を示す。このビニールハウス20は、その前端部に両開き戸21A,21B及び換気用のガラリ22を有している。両開き戸21A,21B及びガラリ22は、骨組構造体1に設けられている。両開き戸21A,21B及びガラリ22が設けられた部位を除く骨組構造体1の外部は、ビニールシート、布製シート、合成樹脂製のフィルム等の柔軟性を有する薄膜23によって覆われている。ビニールハウス20は、その他にも薄膜23用の巻き上げ機24等の構成有しているが、骨組材3,4,5,7,8,9の構造を除いて公知のビニールハウスと同様に構成されているので、それらの説明は省略する。
【0013】
骨組材3,4,5,7,8,9は、長さ及び太さの違いを除けば、同一構造を有している。そこで、骨組材3の構造について説明し、他の骨組材4,5,7,8,9の構造については説明を省略する。なお、骨組材4,5,7,8,9を骨組材3と同一構成にしてもよい。
【0014】
図6に示すように、骨組材3は、パイプ31と異形鉄筋32とによって構成されている。パイプ31は、合成樹脂からなるものであり、所定の柔軟性を有している。そのようなパイプ31としては、給水用ポリエチレンパイプがある。異形鉄筋32は、断面円形状をなす軸部32aを有している。この軸部32aの外周面と一側部とそこから周方向に180°離れた他側部とには、軸部32aの一端から他端まで延びる突条(突出部)32bが形成されている。軸部32aの外周面の突条32b,32bによって区分される二つの部分には、周方向に延びる多数の突出部32c,32dがそれぞれ形成されている。各突出部32cは、軸部32aの長手方向へ所定のピッチで配置されている。各突出部32dも、突出部32cと同一のピッチで配置されている。突出部32cと突出部32dとは軸部32aの長手方向へ若干ずれた状態で配置されている。突条32b及び突出部32c,32dの各外周面は、一つの円筒面を形成しており、その円筒面の外径は、パイプ31の内径より僅かに小径である。したがって、異形鉄筋32は、パイプ31に僅かの隙間をもって嵌合されている。異形鉄筋32は、パイプ31にほとんど隙間なく嵌合させてもよい。
【0015】
上記構成の骨組材3(4,5,7,8,9)が用いられたビニールハウス20において、直射日光の熱伝導率による骨組材の温度上昇は、パイプ31が異形鉄筋32に対し突条32b及び突出部32c,32dと接触するだけであるから、パイプ31が異形鉄筋32によって高温に加熱されることがないし、パイプによる断熱性により異形鉄筋も高温に加熱されることがない。したがって、パイプ31に接する薄膜23も高温に加熱されることがない。よって、薄膜23の耐用年数を大幅に向上させることができる。しかも、パイプ31が柔軟性を有しているから、薄膜23がパイプ31に擦られても傷がつきにくく、摩擦による摩耗を少なくすることができる。また、異形鉄筋32は、同一の太さのスチールパイプに比して曲げやすい。したがって、骨組構造体1及びビニールハウス20を現場作業で容易に加工して組み立てることができる。しかも、整地されていない地面Gにも、骨組構造体1及びビニールハウスを容易に組み立てることができる。さらに、パイプ31として給水用ポリエチレンパイプを用いた場合には、パイプ31及び異形鉄筋32として市販されているものを用いることができるので、容易に入手することができ、安価で早期に行うことができる。
【0016】
図7は、上記骨組構造体1やビニールハウス20において用いられる骨組材の他の例を示す。この骨組材3′においては、異形鉄筋32に代えて異形鉄筋32′が用いられている。異形鉄筋32′は、突出部32c,32dに代えて、螺旋状に延びる突出部32e,32fを有している。突出部32e,32fは、軸部32aの長手方向における位相が若干ずれている。その他の構成は、上記骨組材3と同様である。
【0017】
図8〜図10は、この発明に係る骨組構造体の他の実施の形態を示す。この実施の形態の骨組構造体100においては、6本の筒状杭2Cが用いられている。6本の筒状杭2Cは、正六角形の頂点に配置されている。各筒状杭2Cには、支柱(骨組材)101の下端部が挿入されている。隣接する二つの支柱101,101間には、連結材(骨組材)102が掛け渡されている。これによって、各支柱101が補強されている。
【0018】
6本の支柱101によって屋根構成体120が支持されている。屋根構成体120は、上下に配置された二つのリング材(骨組材)121,122を有している。リング材121,122は、例えば上記骨組材3からなるものであり、異形鉄筋32の両端部を溶接等によって互いに固着することによって構成されている。リング材121,122は、それらの間に配置された6本の連結材(骨組材)123によって連結されている。6本の連結材123は、支柱101と周方向において同一位置に配置されている。
【0019】
上側のリング材121には、リング材121から斜め下方に向かって放射状に延びる6本の屋根材(骨組材)124の一端部が連結されている。屋根材124は、支柱101と周方向において同一位置に配置されている。屋根材124の他端部は、支柱101の上端部に連結されている。周方向に隣接する屋根材124の間には、連結材(骨組材)125が設けられている。下側のリング材122には、リング材122から水平方向に向かって放射状に延びる天井材126の一端部が連結されている。天井材126は、屋根材124と周方向において同一位置に配置されている。天井材126の他端部は、支柱101の上端部に連結されている。上下に隣接する屋根材124と天井材126の間には、トラス材(骨組材)127が設けられている。
【0020】
なお、支柱101、連結材102、リング材121,122、連結材123,125、屋根材124、天井材126及びトラス材127は、この発明に係る骨組材、例えば骨組材3によって構成されている。また、骨組構造体100を構成する支柱101等の各部材の連結は、溶接又は継手によって行われている。
【0021】
図11は、上記構成の骨組構造体100が用いられたビニールハウス200を示す。ビニールハウス200は、骨組構造体100によって支持された両開き戸201,202を有しており、両開き戸201,202以外の骨組構造体100の外側は、ビニールシート等の柔軟な薄膜(図示せず)によって覆われている。このビニールハウス200は、子供の遊び場や、ペットルーム等として使用することができる。
さらに図示していないが、上記のような大型となる骨組構造物には上記骨組材を用いて、大型建築手法であるトラス状梁や筋交い、火打、水平トラス、方杖などを現場で構成して、構造耐力を向上させることが自由にでき、利用用途として、円形ドームやパークゴルフのコース場、家庭菜園所、花、盆栽、苺などの栽培所、養鶏場等のハウスや簡易物置、倉庫などの幅広い用途に用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、この発明に係る骨組構造体の一実施の形態の一部を省略して示す斜視図である。
【図2】図2は、発明に係るビニールハウスの一実施の形態を示す正面図である。
【図3】図3は、図1のX円部の拡大図である。
【図4】図4は、図1のY円部の拡大図である。
【図5】図5は、図1のZ円部の拡大図である。
【図6】図6は、この発明に係る骨組材の一実施の形態を示す一部省略断面図である。
【図7】図7は、この発明に係る骨組材の他の実施の形態を示す一部省略断面図である。
【図8】図8は、この発明に係る骨組構造体の他の実施の形態を示す平面図である。
【図9】図9は、図8のX−X線に沿う断面図である。
【図10】図10は、図9のX円部の拡大斜視図である。
【図11】図11は、この発明に係るビニールハウスの他の実施の形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0023】
1 骨組構造体
3 骨組材
3′ 骨組材
4 骨組材
5 骨組材
7 骨組材
8 骨組材
9 骨組材
20 ビニールハウス
23 薄膜
31 パイプ
32 異形鉄筋
32′ 異形鉄筋
32b 突条(突出部)
32c 突出部
32d 突出部
32e 突出部
32f 突出部
100 骨組構造体
101 支柱(骨組材)
102 連結材(骨組材)
121 リング材(骨組材)
122 リング材(骨組材)
123 連結材(骨組材)
124 屋根材(骨組材)
123 連結材(骨組材)
126 天井材(骨組材)
127 トラス材(骨組材)
200 ビニールハウス



【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟性を有する合成樹脂製のパイプと、外周面に突出部を有し、上記パイプに挿入された異形鉄筋とを備えたことを特徴とする骨組材。
【請求項2】
上記パイプが給水用ポリエチレンパイプであることを特徴とする請求項1に記載の骨組材。
【請求項3】
骨組材を組み立ててなる骨組構造体において、
上記骨組材として、柔軟性を有する合成樹脂製のパイプと、外周面に突出部を有し、上記パイプに挿入された異形鉄筋とを備えた骨組材が用いられていることを特徴とする骨組構造体。
【請求項4】
上記パイプが給水用ポリエチレンパイプであることを特徴とする請求項3に記載の骨組構造体。
【請求項5】
骨組材を組み立ててなる骨組構造体の外側を柔軟な薄膜で覆ったビニールハウスにおいて、
上記骨組材として、柔軟性を有する合成樹脂製のパイプと、外周面に突出部を有し、上記パイプに挿入された異形鉄筋とを備えた骨組材が用いられていることを特徴とするビニールハウス。
【請求項6】
上記パイプが給水用ポリエチレンパイプであることを特徴とする請求項5に記載のビニールハウス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−238834(P2006−238834A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−61357(P2005−61357)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【特許番号】特許第3694314号(P3694314)
【特許公報発行日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【出願人】(505081685)常盤建設株式会社 (1)
【Fターム(参考)】