説明

骨組構築方法及びそれに使用する建築用構造部材

【課題】部材端部に接合用の加工を施すことなく単一の部材を組み合わせることによって端部に接合継手を形成し、3次元の骨組を構築する。
【解決手段】断面正方形の棒状の芯材1の上下に、芯材1と同一断面で長さが長い上下部材20、21が、芯材1の一端部11に端部を揃えて固定してあり、芯材1の他端12より外側に延びる延長部40となり、空間30が形成される。芯材1の左右に上下部材20、21と同一断面、同一長さの左右部材22、23を、上下部材20、21が合わせた端部とは反対側の端部12に端を合わせて固定し、空間30とは反対側の端部に延長部41を有するので延長部41、41の間に空間31を形成する。空間30と空間31の開放されている方向は90度ずれており、組み合わせた部材の断面は十字型となる。このように芯材1の周囲に棒状部材を4本組み合わせたものを基本部材10として骨組を構築する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組み立てが容易であり、3次元の骨組を簡単に構築できる骨組構築方法及びそれに使用する建築用構造部材に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の構造を構成する構造材は、その節点において適宜の手段で接合されて骨組構造が構成される。木材であれば、種々の組構造が古くから提案されている。最近では、木造構造物に要求される耐震強度が高くなっており、接合金物が多用されている。また、鋼構造における鋼材は、節点に接合用の部材があらかじめ設けてあり、部材をボルトで接合する手法が採用されている。
【0003】
従来、木組構造の骨組を構成する手段として部材端部を加工して溝と凸部を組み合わせて接合する手法が取られている。例えば、アリ溝による部材の連結は、結合作業が容易であり、連結部自体に高い剛性や強度があり、押し引き双方の力に耐える利点を有する。
特許文献1には、図14に示すような、鋼管製の芯材と木材を組み合わせることも提案されている。鋼管の上部に、梁または桁を接合するための連結片が突出して設けてあり、下端部には台座が設けてある。
【特許文献1】特開2002−242304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
木組構造の場合、木材を精度よく加工しなければならず、熟練を要するものであり簡単に技術を修得できるものではない。
本発明は、部材端部に接合用の加工を施すことなく単一の部材を組み合わせることによって端部に接合継手を形成し、3次元の骨組を構築できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
棒状の芯材に対向して芯材より長さが長い上下部材を芯材の一端部に端部を揃えて固定して逆の端に空間を有する延長部が形成してあり、芯材より長さの長い左右部材を芯材の他端に端部を合わせて対向して固定して上下部材の延長部とは逆の端に空間を有する延長部が形成してあり、両端部の空間の開放されている方向が90度ずれている建築用構造部材である。
【発明の効果】
【0006】
部材の穴あけや切削をすることなく端部に継手となる延長部を形成することができ、また、組み立てが容易であるので低コストで建築構造を構築することができる。
また、基本部材を構成する部材の材質は木材、合成樹脂、鋼材などが使用でき、特に限定されないので選択の幅が広いものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
実施例1
図1(1)に基本部材10を示す。断面正方形(辺長a)の棒状部材1を、1つの棒状部材1が挿入できる空間30(距離a)をあけて平行に保持する。図1(1)に示す基本部材10は、概念的に示したものであり、単独でこの状態で存在するものではなく、他の基本部材10と組み立てられ更に交点において固定されてこの状態となる。
【0008】
基本部材10の強度を上げる必要がある場合は、図1(2)に示すように、端部の長さ3aの区間を除いた中間部分に補強部材15を連続、または、不連続に設けて補強して必要強度を得る。棒状部材1の間には別途芯材(図示しない)を挿入して棒状部材1及び補強部材15を固定する。距離3aは、基本部材10を組み立てる際に相互に噛みあわせるのに必要な最低の長さである。
図1(3)に示すように、棒状部材1及び補強部材15は不連続なものであってもかまわない。
また、図1(4)に示すように、補強部材15、または、棒状部材1に適宜の間隔で貫通孔16を設けることによって、配管や配線にこの貫通孔16を利用することができる。
【0009】
図2に基本部材10を使用して骨組を構成する場合の基本部材10の交点の組み付け状態を示す。
2本の棒状部材1を空間30をあけてZ方向に設置する。この基本部材10の端部において、XとY方向から基本部材10を構成する棒状部材1を挿入して互いに噛みあうように組み付け、ボルト等の固定手段で固定する。等しい長さの基本部材10を使用して箱型の骨組を組み立てた基本ユニットを図3に示す。また、図4に示すように、X方向の基本部材101の長さを倍の長さ、または適宜の長さとすることによって、図3に示す基本ユニットを連続した骨組を構成することができる。
【0010】
図5〜図8は長い基本部材101を使用して骨組を構成した例であり、隅部の組み付け状態は、図2の実施例と同じであるが、中間部に柱としての基本部材102、梁としての基本部材103を設けたものであり、X方向の梁103は棒状部材が上下に平行に配置されており、Y方向の梁103は横方向に平行に棒状部材が配置されているので、両者の交差部で干渉することがない。更に、壁の周囲には、基本部材104が適宜の段数配設されている。
基本部材101、102、103、104によって骨組が完成したら、順次、図6〜図8に示すように板材等を壁、及び屋根部分に設けて構造物とする。
【0011】
実施例2
図9に示すように、断面正方形(辺長a)の芯材となる棒状部材1の上下に、芯材1と同一断面で長さが少なくとも3aだけ長い上下部材20、21が、芯材1の一端部11に端部を揃えて固定してある。固定手段は、ボルトによる固定、接着剤による固定、または、鋼材の場合は溶接など部材の材質に応じて適宜の固定手段から選択する。上下部材20、21は、芯材1より3aだけ長いので芯材1の他端12より外側に延びる延長部40となり、上下部材の間に空間30が形成される。延長部の長さが3aであるので、空間30には、芯材1、上下部材20、21の3部材分が納まり得るものとなり、部材端部において突出する部分がない。
【0012】
更に、芯材1の左右に上下部材20、21と同一断面、同一長さの左右部材22、23を、上下部材20、21が合わせた端部とは反対側の端部12に端を合わせて固定し、空間30とは反対側の端部に延長部41を有するので延長部41、41の間に空間31を形成する。空間30と空間31の開放されている方向は90度ずれており、組み合わせた部材の断面は十字型となる(図11(1)参照)。このように、実施例2においては、芯材1の周囲に棒状部材を4本組み合わせたものを基本部材10とする。
【0013】
実施例2の基本部材10において、荷重を負担するのは上下、左右部材であり、芯材1は、構造的には荷重を負担するものでなく、上下及び左右部材を所定の位置に保持するためのものであるので大きな強度を必要としない。
基本部材10を構成する芯材1等は、基本的な考えを示すために正方形断面として説明したが、図10に示すように芯材1は円形断面や長方形断面であってもかまわない。
また、芯材1を正方形、上下、左右部材を長方形または円形とするなど、種々の変形が考えられる。
【0014】
更に、上下部材と左右部材との間に各種断面の補助部材2を固定または充填して、基本部材10の外観を四角形や円形、八角形などにすることもできる。
実施例1の場合と同様に、上下部材及び左右部材は不連続に設けることができる。更に、補強部材15、または、棒状部材1に適宜の間隔で貫通孔16を設けることによって、配管や配線にこの貫通孔16を利用することができる。これらの斜視図を図11に示す。
【0015】
芯材1と上下部材20、21と左右部材22、23の間に弾性部材3を介在させることによって基本部材10に大きな靭性を与え、地震時の変形量を大きく取れるようにして、耐震力を高めることも可能である。また、基本部材10のめり込みを緩和することができる。
【0016】
実施例2の基本部材10を使用して骨組を構成する場合の組み立て手順は、以下のようにおこなう。以下の説明では、基本的考えを示すため、同一断面、同一長さの基本部材10を使用して立方体の骨組を作る場合で説明する。
まず、図12(1)に示すように、基本部材10aの端部の一端部の空間30に直角に他の基本部材10bの2本の延長部41を差し込み、差し込んだ側の空間31の中央部に基本部材10aの上下部材が位置するように組み付ける。このとき、両者が移動しないように適宜の手段で仮止めをおこなう。基本部材10bの空間31は、相手の基本部材10aの上下部材によって2つに分けられた状態となり、2本の延長部を差し込むことができる空間が形成される。4本の基本部材10a、10b、10c、10dの端部を互いに差し込んで図12(2)に示すように四角形の枠を形成する。枠の4隅には上向きに開放された空間が形成されている。
【0017】
次に、図12(3)に示すように、隅部に形成された2つの空間に基本部材10e〜10hの延長部40、41のいずれかを差し込み、4隅に柱11を直立させる。
図12(4)に示すように、芯材1に左右部材22、23を固定したものを柱11の上端部に組み付けて骨組を構成し、図12(5)に示すように、上下部材20、21を固定して立方体の3次元の骨組が完成される。または、最初の枠を組み立てと同様にして四角形の枠を組み上げて柱11の上部に設置するようにしてもよい。基本部材10同士の接合部は、ボルトを貫通させる穴を設けておき、ボルトとナットで固定して基本部材10の節点を剛結する。
この骨組に床、壁、天井材を取り付けることによって、構造物として完成する。
バリエーションとして図12(6)に示すように、あらかじめ屋根部材と一体化した部材5を使用することもできる。
【0018】
図13示す例は、部材の交差部に、連結部材105を使用して基本部材10を組み立てる例である。連結部材105は、短い棒状部材を互いに噛みあわせて、上下方向、前後方向、及び左右方向に基本部材10を連結することができる空間が形成されているものである。この例における基本部材10は、棒状部材を9本、もしくは芯材を用いない場合は8本を組み合わせて断面正方形としたものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の基本部材の斜視図。
【図2】基本部材の組み付け詳細斜視図。
【図3】基本部材を使用した骨組構造の斜視図。
【図4】骨組構造の変形例の斜視図。
【図5】骨組構造の変形例の組立手順の斜視図。
【図6】骨組構造の変形例の組立手順の斜視図。
【図7】骨組構造の変形例の組立手順の斜視図。
【図8】骨組構造の変形例の組立手順の斜視図。
【図9】本発明の実施例2の基本部材の正面図及び断面図。
【図10】基本部材を構成する部材の変形例の断面図。
【図11】実施例2の基本部材の変形例の斜視図。
【図12】実施例2の組み立て手順の説明図。
【図13】他の組立方法の斜視図。
【図14】鋼管と木材を合成した従来の骨組構造の斜視図(従来例)。
【符号の説明】
【0020】
1 棒状部材(芯材)
10 基本部材
15 補強部材
2 補助部材
3 弾性部材
20、21 上下部材
22、23 左右部材
30、31 空間
40、41 延長部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本の同一断面の棒状部材を、棒状部材が挿入できる空間をあけて平行に配列して基本部材とし、基本部材3本が交わる部位において、基本部材の棒状部材を他方の基本部材の空間に挿入して互い違いに噛みあわて固定する骨組構築方法。
【請求項2】
請求項1において、基本部材の端部を除いた部分に補強部材を設けた骨組構築方法。
【請求項3】
請求項2において、棒状部材または補強部材が中間部において不連続としてある骨組構築方法。
【請求項4】
請求項2〜3のいずれかにおいて、棒状部材または補強部材には配管、配線のための貫通孔が設けてある骨組構築方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、棒状部材の間に緩衝材が介在させてある骨組構築方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかにおいて、棒状部材の断面が正方形、長方形、円形のいずれかである骨組構築方法。
【請求項7】
棒状部材を芯材とし、この芯材に対向して芯材より長さが長い上下部材を芯材の一端部に端部を揃えて固定し、他端に空間を有する延長部が形成してあり、芯材より長さの長い左右部材を芯材の他端に端部を合わせて対向して固定して上下部材の延長部とは逆の端に空間を有する延長部が形成してあり、両端部の空間の開放されている方向が90度ずれている建築用構造部材。
【請求項8】
請求項7において、芯材と左右、上下部材の間に緩衝材が介在させてある建築用構造部材。
【請求項9】
請求項7〜8のいずれかにおいて、芯材の断面が正方形、長方形、円形のいずれかである建築用構造部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−190229(P2008−190229A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−26264(P2007−26264)
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【出願人】(507040921)
【Fターム(参考)】