説明

骨質量疾患の診断、予防、及び治療方法

本発明は、骨質量をそれぞれ増大するかまたは低減するために、患者の血清セロトニンレベルを下げるかまたは増大するための方法及び治療薬を提供する。好ましい実施形態では、該患者は、低骨質量疾患、例えば骨粗鬆症を有するかまたはその危険があることが知られており、該薬剤は、TPH1阻害薬またはセロトニン受容体アンタゴニストである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(政府の利益についての陳述)
本発明は、NIH−5R01 DK 067936下での政府の支援及びマーチ・オブ・ダイムズ基金6FY05−1260の下で成された。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0002】
本発明は、正常骨質量より高いかまたはそれより低い骨質量に関連した骨疾患の診断及び治療の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
脊椎動物が成体期を通して骨組織を更新する機序である骨リモデリング(bone remodeling)は、以下の2つの段階を含む:特殊化された細胞型、すなわち破骨細胞による既存の鉱質化骨基質の吸収と、その後の、別の特殊化細胞型、すなわち骨芽細胞によるde novo骨形成である。局所性エフェクター(サイトカイン及び成長因子)及び全身性エフェクター(ホルモン及び神経媒介物質)が骨リモデリングの両段階を調整することを、遺伝的及び分子的研究は示している。
【0004】
最も集中的に研究された遺伝子調節性骨リモデリングのうちの1つが、LDL−受容体関連プロテイン5(LRP5)である。LRP5における機能喪失型突然変異は、骨粗鬆症・偽牲神経膠腫(OPPG)を引き起こすが、これは、骨形成の低減による重度の骨損失を、ならびに眼の胚性血管形成の存続(失明を引き起こす)を特徴とする疾患である。それに反して、LRP5における機能獲得型突然変異は、別の骨疾患である高骨質量症候群を引き起こす。逆の性質を有する2つのヒト疾患におけるLrp5の関与は、骨形成の調節においてこの遺伝子により制御される経路の重要性を強調する。しかしながら、LRP5が骨発達に影響を及ぼす機序は不明である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
十二指腸の腸クロム親和性細胞における、そしておそらくは骨芽細胞におけるセロトニン合成の第一ステップに関与する酵素であるトリプトファンヒドロキシラーゼ1の過剰発現による血清セロトニンのレベル上昇は、LRP5の機能喪失型突然変異体における骨質量低減を引き起こす。したがって、本発明のある実施形態は、十二指腸におけるセロトニン合成を抑制するかまたはセロトニン合成に必要な酵素であるTPH1を抑制する治療薬を投与することにより、あるいは骨芽細胞に及ぼすセロトニンの作用を媒介する受容体であるセロトニン受容体HT1Bのアンタゴニストを投与することにより、骨粗鬆症及びOPPGのような低骨質量疾患を治療するかまたは予防するための方法に関する。
【0006】
本発明のその他のある実施形態は、低骨質量疾患を治療するかまたは予防するのに用いるための、1つまたは複数のTPH1阻害薬、あるいは1つまたは複数のセロトニン受容体アンタゴニスト、あるいはその両方を含む、血清セロトニンレベルを減少させる治療薬を含む、骨質量を増加させるための製剤組成物に関する。いくつかの実施形態では、本発明は、不安またはうつ病を治療または予防するための製剤組成物であって、セロトニン再取込み阻害薬で治療される患者が骨粗鬆症を発症しないようにするために、あるいはSSRIを摂取している患者の骨粗鬆症を治療するために、SSRI及び血清セロトニンレベルを低減する薬剤の両方を含む製剤組成物を包含する。
【0007】
他の実施形態では、本発明は、不安またはうつ病のための患者の治療方法であって、SSRI及び血清セロトニンレベルを低減する薬剤を別個の製剤組成物により患者に投与する方法を提供する。
【0008】
異常に高い骨質量に関連した疾患は、セロトニンそれ自体を投与することにより、あるいは末梢で作用するセロトニン再取込み阻害薬、HT1Bアゴニスト、TPH1の活性剤またはそれらの組合せを投与することにより、末梢セロトニンレベルを増大することで治療され得る。
【0009】
米国特許仮出願第60/976,403号(2007年9月28日出願)(この記載内容は参照により本明細書中で援用される)は、脳由来セロトニン(以後、BDSと略記される)が末梢セロトニンの逆作用を有する、ということを開示する。BDS上昇は、HT2Cを介して視床下部中の標的ニューロンに作用することにより、骨質量を増大する。したがって、本発明のいくつかの実施形態は、末梢セロトニンを低減する薬剤及びBDSを増大する薬剤を含む治療薬の組合せを投与することを包含する。BDSは、脳幹のニューロンにおけるセロトニン合成の第一ステップに関与する酵素であるTPH2の活性を増大することにより、ならびに脳中のHT2Cセロトニン受容体のアゴニストを投与することにより、増大され得る。
【0010】
本明細書中に開示される他の方法は、年齢、性別、あるいは血清セロトニンレベルに影響を及ぼすその他の因子を考慮しながら、末梢におけるセロトニンの血清レベルが正常個体と比較して異常に高い(約25%以上)か否かを確定することにより、骨粗鬆症のような低骨質量疾患を発症する危険のある個人を診断することに関する。危険に曝されているこのような個人は、血清セロトニンを減少させる治療薬で処置して、低骨質量疾患が発症しないようにし得る。血清セロトニンレベルはある種の因子によって個体間で変化し得るし、それらの因子を考慮して、個人が異常に高い血清セロトニンレベルを有するか否かを確定し得る、と当業者は理解する。当業者が正常血清セロトニンレベルであるとみなし得る一可能の範囲は、101〜283ng/ml(ミリリットル当たりのナノグラム)である。
【0011】
血清セロトニン上昇は低骨質量に関連した疾患の唯一の原因であるというわけではないため、血清セロトニンレベルを測定する方法以外の方法も、骨粗鬆症のような低骨質量疾患を有する個人が血清セロトニンを減少させる薬剤で治療されるべきであるか否かを確定するために用いられ得る。
【0012】
本発明は、血清セロトニンレベルを下げる必要があることが知られているかまたは推測される患者における血清セロトニンレベルの低下方法であって、TPH1阻害薬またはセロトニン受容体アンタゴニストを、血清セロトニンのレベルを下げる必要があることが知られているかまたは推測される患者に投与することを包含する方法を提供する。
【0013】
本発明は、このような治療または予防を必要とすることが知られているかまたは推測される患者における低骨質量疾患の治療または予防方法であって、血清セロトニンのレベルを下げる薬剤の治療的有効量をこのような治療または予防を必要とすることが知られているかまたは推測される患者に投与することを包含する方法も提供する。
【0014】
ある実施形態では、当該薬剤は、TPH1阻害薬またはセロトニン受容体アンタゴニストである。好ましい実施形態では、当該薬剤は、血液脳関門を通過しないTPH1阻害薬である。他の実施形態では、当該薬剤は、TPH2を有意に抑制しないTPH1阻害薬である。
【0015】
ある実施形態では、当該薬剤は、当該薬剤の任意のラセミ混合物及び個々のエナンチオマー、ならびに生理学的に許容可能な酸との当該薬剤のエステル及び塩を含めて、以下のものからなる群から選択されるTPH1阻害薬である:
(a)
【化1】

(b)
【化2】

(c)
【化3】

ならびにそれらの製薬上許容可能な塩及び溶媒和物
[式中、
Aは、任意に置換されたシクロアルキル、アリール、または複素環であり;
Xは、単結合(すなわちAはDに直接結合される)、−O−、−S−、−C(O)−、−C(R)=、=C(R)−、−C(R)−、−C(R)=C(R)−、−C≡C−、−N(R)−、−N(R)C(O)N(R)−、−C(R)N(R)−、−N(R)C(R)−、−ONC(R)−、−C(R)NO−、−C(R)O−、−OC(R)−、−S(O)−、−S(O)N(R)−、−N(R)S(O)−、−C(R)S(O)−、または−S(O)C(R)−であり;
Dは、任意に置換されたアリールまたは複素環であり;
は、水素、あるいは任意に置換されたアルキル、アルキル−アリール、アルキル−複素環、アリール、または複素環であり;
は、水素あるいは任意に置換されたアルキル、アルキル−アリール、アルキル−複素環、アリール、または複素環であり;
は、水素、アルコキシ、アミノ、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、または任意に置換されたアルキルであり;
は、水素、アルコキシ、アミノ、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、あるいは任意に置換されたアルキルまたはアリールであり;
は、各々独立して、水素、あるいは任意に置換されたアルキルまたはアリールであり;
nは0〜3である];
(d)
【化4】

ならびにその製薬上許容可能な塩及び溶媒和物
[式中、
Aは、任意に置換されたシクロアルキル、アリール、または複素環であり;
Xは、単結合(すなわちAはDに直接結合される)、−O−、−S−、−C(O)−、−C(R)=、=C(R)−、−C(R)−、−C(R)=C(R)−、−C≡C−、−N(R)−、−N(R)C(O)N(R)−、−C(R)N(R)−、−N(R)C(R)−、−ONC(R)−、−C(R)NO−、−C(R)O−、−OC(R)−、−S(O)−、−S(O)N(R)−、−N(R)S(O)−、−C(R)S(O)−、または−S(O)C(R)−であり;
Dは、任意に置換されたアリールまたは複素環であり;
Eは、任意に置換されたアリールまたは複素環であり;
は、水素、あるいは任意に置換されたアルキル、アルキル−アリール、アルキル−複素環、アリール、または複素環であり;
は、水素、あるいは任意に置換されたアルキル、アルキル−アリール、アルキル−複素環、アリールまたは複素環であり;
は、水素、アルコキシ、アミノ、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、または任意に置換されたアルキルであり;
は、水素、アルコキシ、アミノ、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、あるいは任意に置換されたアルキルまたはアリールであり;
は、各々独立して、水素、あるいは任意置換アルキルまたはアリールであり;
nは0〜3である];
(e)
【化5】

(f)
【化6】

(g)
【化7】

[式中、
Rは、水素または低級アルキルであり;そして
nは、1、2または3である];
(h)
【化8】

[式中、
Rは、水素または低級アルキルであり;そして
nは、1、2または3である];
(i)
【化9】

[式中、
Rは、水素または低級アルキルであり;
、R、及びRは、独立して、水素、ハロゲン、低級アルキル、アルコキシ、またはアミノであり;
nは、1、2または3である];
(j)
【化10】

[式中、
Rは、水素または低級アルキルであり;
、R、及びRは、独立して、水素、ハロゲン、低級アルキル、アルコキシ、またはアミノであり;
nは、1、2または3である];
(k)
【化11】

[式中、Rは、水素、低級アルキル、またはシクロアルキルである];
(l)
【化12】

[式中、Rは、水素、低級アルキル、またはシクロアルキルである];
(m)
【化13】

[式中、R及びRは、独立して、水素、低級アルキル、またはシクロアルキルである];
(n)
【化14】

[式中、Rは、水素、低級アルキル、またはシクロアルキルである];
(o)
【化15】

[式中、R及びRは、独立して、水素、低級アルキル、シクロアルキル、F、Cl、またはOHである];
(p)
【化16】

[式中、R及びRは、独立して、水素、低級アルキル、またはシクロアルキルである]。
【0016】
本発明は、治療的有効量の上記のTPH1阻害薬及び少なくとも1つの製薬上許容可能な賦形剤を含む製剤組成物を提供する。
【0017】
ある実施形態では、当該薬剤は、セロトニン受容体アンタゴニスト、好ましくはHT1B、HT2AまたはHT2Bセロトニン受容体アンタゴニスト、最も好ましくはHT1Bセロトニン受容体アンタゴニストである。ある実施形態では、該セロトニン受容体アンタゴニストは、表3に列挙したHT1Bセロトニン受容体アンタゴニストである。
【0018】
本発明は、該患者がTPH1阻害薬及びセロトニン受容体アンタゴニストの両方を投与される方法も提供する。TPH1阻害薬及びセロトニン受容体アンタゴニストは、単一製剤組成物中で一緒に投与され得る。
【0019】
本発明のある実施形態では、低骨質量疾患は、骨粗鬆症、骨粗鬆症偽性神経膠腫症候群(OPPG)、骨減少症、骨軟化症、腎性骨異栄養症、骨形成または骨吸収の不良、パジェット病、骨折及び骨破損、あるいは骨転移である。好ましくは、低骨質量疾患は骨粗鬆症である。
【0020】
本発明の他の実施形態では、該患者は、血清セロトニンのレベルを下げる薬剤のほかに、SSRI、ビスホスホネートまたはβ遮断薬で治療されている。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、血清セロトニンのレベルを下げる薬剤のほかに、SSRI、ビスホスホネートまたはβ遮断薬を投与することも包含する。
【0021】
ある実施形態では、該患者は、血清セロトニンのレベルを増大する薬剤(例えばSSRI)で治療されているか、あるいは該患者は、血清セロトニンのレベル増大に関連した症状を有する。ある実施形態では、当該方法は、血清セロトニンのレベルを増大する薬剤(例えばSSRI)で該患者を治療することも包含する。
【0022】
ある実施形態では、該患者の血清セロトニンレベルは、血清セロトニンレベルを下げる該薬剤の投与前に測定される。他の実施形態では、該患者の血清セロトニンレベルは、血清セロトニンレベルを下げる該薬剤の投与後に測定される。いくつかの実施形態では、該患者の血清セロトニンレベルは、血清セロトニンレベルを下げる該薬剤の投与の前及び後に測定される。
【0023】
ある実施形態では、血清セロトニンレベルを下げる該薬剤は該患者に繰り返し投与され、該患者の血清セロトニンレベルは、血清セロトニンレベルを下げる該薬剤の初回投与前に測定されたレベルと比較して、該患者の血清セロトニンレベルが少なくとも約10%低減されるまで測定される。
【0024】
ある実施形態では、該患者は、血清セロトニンの正常レベルより25%より高い血清セロトニンレベルを有すると同定されている。
【0025】
ある実施形態では、該患者は、血清セロトニンレベルを下げる該薬剤のほかに、脳由来セロトニンを増大する薬剤を投与される。好ましい実施形態では、脳由来セロトニンを増大する該薬剤は、TPH2活性を増大する薬剤である。
【0026】
ある実施形態では、該患者の血清セロトニンレベルは、血清セロトニンレベルを下げる該薬剤の投与前のレベルと比較して少なくとも約10%下げられる。
【0027】
ある実施形態では、血清セロトニンのレベルを下げる該薬剤は、約1mg/日〜約2g/日の量で投与される。
【0028】
本発明は、製剤組成物が投与される患者における血清セロトニンのレベルを少なくとも約10%下げる量の薬剤を含む製剤組成物を提供する。好ましい実施形態では、該薬剤はTPH1阻害薬またはセロトニン受容体アンタゴニストである。
【0029】
本発明は、製剤組成物が投与される患者の血清セロトニンレベルを下げる治療的有効量の薬剤を含む製剤組成物を提供する。好ましい実施形態では、該薬剤はTPH1阻害薬またはセロトニン受容体アンタゴニストである。
【0030】
いくつかの実施形態では、該製剤組成物は、血清セロトニンレベルを下げる薬剤及び脳由来セロトニンのレベルを上げる薬剤を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、該製剤組成物は、血清セロトニンレベルを下げる薬剤、ならびにSSRI、ビスホスホネートまたはβ遮断薬を含む。好ましい実施形態では、該薬剤は、TPH1阻害薬またはセロトニン受容体アンタゴニストである。ある実施形態では、該セロトニン受容体アンタゴニストは、HT1B、HT2A、またはHT2Bセロトニン受容体アンタゴニストであり、好ましくは、HT1Bセロトニン受容体アンタゴニストである。
【0032】
ある実施形態では、該製剤組成物は、TPH1阻害薬及びセロトニン受容体アンタゴニストの両方を含む。
【0033】
本発明は、低骨質量に関連した疾患を発症する危険のある被験者の同定方法であって、以下の:
a)前記患者から、及び正常被験者から採取された生物学的試料中の血清セロトニンのレベルを測定するステップ;
b)前記患者からの該試料中の血清セロトニンのレベルが正常被験者からの該試料中の血清セロトニンレベルより少なくとも約25%増大される場合、前記患者は前記疾患を発症する危険があると結論づけるステップ
を包含する方法も提供する。
【0034】
ある実施形態では、当該方法は、ステップ(b)後に、当該疾患を発症する危険がある患者に、血清セロトニンレベルを下げる薬剤を投与することを包含する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】Lrp5−/−マウスは、低骨質量を有する(A)が、破骨細胞表面の変化は認めらないが(B)、骨芽細胞数は低減した(C)。Lrp5−/−分子署名の実時間PCR分析。Lrp5−/−骨芽細胞は、骨芽細胞特異的遺伝子発現の変化を示さない(D)が、サイクリン遺伝子発現低減を示す(E)。
【図2】β−catob−/−骨(ob−/−)における細胞周期マーカーの実時間PCR分析。
【図3】Lrp5−/−骨のマイクロアレイ分析は、wt骨と比較した場合のトリプトファンヒドロキシラーゼ1(Tph1)遺伝子発現の発現増大を明示する。緑色及び赤色のバーは、それぞれ、遺伝子発現の低減及び増大を示す。Hk2を含めてそれより左側の遺伝子は発現低減を示し、一方、SpnaIを含めてそれより右側の遺伝子は発現増大を示した。
【図4】Tph1発現は、Lrp5−/−マウスの十二指腸において増大される(A)。Tph1発現は、Lrp5−/−マウスにおいては骨よりも十二指腸で1000倍高い(B)。十二指腸でのTph1発現(C)及び血清セロトニンレベル(D)は、Lrp5−/−マウスでは年齢に伴って漸増的に増大する。Tph2発現もセロトニンレベルも、Lrp5−/−マウスの脳において変更されない(E及びF)。
【図5】5Htt−/−マウスは低骨質量を有し、骨芽細胞数低減を示す(A)。骨における遺伝子発現の実時間PCR分析は、5Htt−/−マウスにおけるサイクリンの発現低減を明示したが、一方、骨芽細胞分化マーカーまたはI型コラーゲン遺伝子の発現の変化は検出され得ない(B)。
【図6】Lrp5/5Htt(Htt)化合物マウスの組織学的及び組織形態計測的比較。Lrp5+/−;Htt+/−二重異型接合型マウスは、Lrp5+/−または5Htt+/−単一異型接合型マウスより重度の骨質量低減を有する。これは、骨芽細胞数の減少に関しても言える。
【図7】トリプトファンヒドロキシラーゼ阻害薬(pCPA)処置は、血清セロトニンレベルを正常化し、Lrp5−/−マウスで観察される骨異常を矯正する。pCPA処置に関する治療レジメン(A)、骨表現型の組織形態計測的分析(B)、血清セロトニンレベル(C)、腸Tph1発現レベル(D)、ビヒクル及びpCPA処置時の脳Tph2発現。
【図8】WT骨芽細胞における既知のセロトニン受容体の発現(A)、ならびにセロトニンまたはビヒクルで処置した初代骨芽細胞におけるサイクリン及び骨芽細胞特異的遺伝子の発現(B)。
【図9】指示時間の間、セロトニンで処置した初代骨芽細胞におけるCREBリン酸化のウエスタンブロット分析(A)ならびにサイクリンD1プロモーターと結合しているCREBのChIP分析(B)。
【図10】指示齢でのWTマウスの十二指腸におけるTph1(A)及びLrp5(B)の発現の実時間PCR分析。
【図11】CBMIDAの経口摂取は、末梢セロトニンを低減する。
【図12】マウスの十二指腸細胞のマウスのLrp5遺伝子の両対立遺伝子で、ヒトにおいて、高骨質量をもたらす突然変異を発現するよう改変されたマウスは、野生型(WT)マウスより高い骨質量を示す。椎骨をプラスチック媒質中に包埋し、5μmの切片にして、フォン・コッサ/ヴァン・ギーソン試薬で染色した。骨基質は黒色に染まった。
【図13】実施例11におけるCBMIDA及びその他の化合物の経口摂取のためのレジメン。
【図14】実施例11におけるCBMIDA及びその他の化合物の経口摂取時のセロトニンレベルの変化。
【図15】卵巣切除マウスの末梢セロトニン産生に及ぼすCBMIDA及びpCPAの効果。
【発明を実施するための形態】
【0036】
低骨密度に関連した疾患(「低骨質量疾患」)は、本明細書中で用いる場合、異常低骨質量のための骨の健康または完全性の損失を生じるかまたはそれらを特徴とする任意の骨の疾患または状態を指し、例としては骨粗鬆症、骨粗鬆症偽性神経膠腫症候群(OPPG)、骨減少症、骨軟化症、腎性骨異栄養症、骨形成または吸収不良、パジェット病、骨折及び骨破損ならびに骨転移が挙げられるが、これらに限定されない。さらに特定的には、本発明に従って治療されるか及び/または予防され得る疾患としては、対応する非罹患骨に比して罹患骨質量により特性化される骨疾患が挙げられる。
【0037】
高骨密度に関連した疾患は、本明細書中で用いる場合、異常に高い骨密度を生じるかまたはそれを特徴とする任意の骨の疾患または状態、例えば高骨質量症候群を指す。
【0038】
骨疾患の予防は、明白な疾患開始前に本明細書中に記載されるように活発に介入して、疾患を防止するかまたは疾患の程度を最小限にするかまたはその発症経過を遅らせることを意味する。
【0039】
骨疾患の治療は、骨疾患、特に低骨質量疾患を有することが知られているかまたは推測される患者において、発症後に活発に介入して、疾患または状態の症候を遅らせ、改善し、あるいは疾患または状態を逆転することを意味する。さらに具体的には、治療することとは、骨密度を、非罹患状態における対応する非罹患骨(すなわち、同一型の対応する骨、例えば長骨、椎骨等)とより密接に類似するよう調整する方法を指す。
【0040】
別記しない限り、化合物の「治療的有効量」は、疾患または症状の治療または管理において療法的利益を提供し、疾患または症状に関連した1つもしくは複数の症候を遅らせるかまたは最小限にし、あるいは別の治療薬の治療的効力を増強する量である。投与される量が、処置前レベルと比較して、レシピエント哺乳類の生理学における所望の変化を生じる(例えば、低骨質量疾患を有するかまたは発症する危険がある哺乳動物において骨質量を増大させる)か、あるいは高骨質量疾患を有するかまたは発症する危険がある動物において骨質量を(処置前レベルと比較して)低減する場合、薬剤は「治療的有効量」で投与される、といわれる。すなわち、薬剤療法は治療をもたらす、すなわち、骨質量を、非罹患状態における対応する非罹患骨(例えば、同一型の対応する骨、例えば長骨、椎骨等)とより密接に類似するよう調整する。例えば、セロトニン合成を低減するTPH1阻害薬または薬剤の治療的有効量は、薬剤治療前のレベルの少なくとも約10%未満であるレベルに血清セロトニンレベルを低減する量を含む。
【0041】
セロトニンの処置後レベルが処置前レベルと比較して少なくとも約10%以上低減される場合、治療薬、例えばTPH1阻害薬は血清セロトニンを有意に低減する。患者の血清セロトニンレベルが、正常被験者における血清セロトニンレベルと比較して約25%以上増大する場合、該患者は低骨質量疾患を発症する危険がある。あるいは、患者の血清セロトニンレベルが、正常被験者における血清セロトニンレベルと比較して約25%異常低減する場合、該患者は高骨質量疾患を発症する危険がある。
【0042】
「患者」は、哺乳類、好ましくはヒトであるが、しかし伴侶動物、例えばイヌまたはネコ、あるいは農場動物、例えばウマ、ウシ、ブタまたはヒツジでもあり得る。
【0043】
骨疾患のための治療または予防を必要とする患者としては、骨疾患を有することまたは発症する危険があることが知られているかまたは推測される患者が挙げられる。このような治療を必要とする患者は、例えば、骨粗鬆症を有することが既知である個人であり得る。骨疾患を発症する危険がある患者としては、高齢者、閉経後女性、糖質コルチコイドで治療されている患者、SSRIで治療されている患者、ならびに正常範囲外の骨密度を有する患者が挙げられ得る。本発明の方法による治療または予防を必要とする他の個人としては、骨疾患、例えば骨粗鬆症を治療するかまたは予防するために、血清セロトニンレベルを低減するための療法を必要とすることが既知である個人が挙げられる。このような個人は、正常被験者における血清セロトニンレベルを約25%以上上回る血清セロトニンレベルを有すると同定された個人を含み得る。
【0044】
本発明の方法による骨疾患のための治療または予防を必要とする患者は、TPH1阻害薬、セロトニンHT1Bアンタゴニストまたは血清セロトニンレベルを減少させる他の薬剤で治療されている患者を含まず、この場合、当該患者は、骨疾患を治療する以外の目的のためにTPH1阻害剤、セロトニンHT1Bアンタゴニストまたは血清セロトニンレベルを減少させる他の薬剤で治療されている。したがって、本発明の方法による骨疾患のための治療または予防を必要とする患者は、化学療法誘導性嘔吐または胃腸障害、例えば過敏性腸症候群を治療する目的のためにTPH1阻害薬で治療されている患者を含まない。
【0045】
「小有機分子」は、100ダルトンより大きく、且つ約2,500ダルトン未満の分子量、好ましくは500ダルトン未満の分子量の有機化合物を意味する。
【0046】
「TPH1阻害薬」は、TPH1によりトリプトファンから産生される5−ヒドロキシトリプトファンの量を、当該物質の非存在下での検定においてTPH1によりトリプトファンから産生される5−ヒドロキシトリプトファンの量と比較して、適切な検定において少なくとも約10%低減する物質である。薬剤のTPH1抑制のレベルを確定するための検定は、国際公開第2007/089335号に記載されている。
【0047】
「TPH2阻害薬」は、TPH2によりトリプトファンから産生される5−ヒドロキシトリプトファンの量を、当該物質の非存在下での検定においてTPH2によりトリプトファンから産生される5−ヒドロキシトリプトファンの量と比較して、適切な検定において少なくとも約10%低減する物質である。
【0048】
骨質量を測定するための技法は当業者によく知られており、例としては、骨格X線撮影(骨の透明レベルを示す)(透明レベルが低いほど、骨質量は高い);古典的骨組織学(例えば、骨体積、骨梁/骨梁形成の数及び外観、対照と比較した及び/または破骨細胞と比較した骨芽細胞数);ならびに二重エネルギーX線吸収測定(DEXA)(Levis & Altman, 1998, Arthritis and Reumatism, 41: 577-587)(骨質量を測定し、一般に骨粗鬆症に用いられる)が挙げられるが、これらに限定されない。BFRは、骨形成速度を意味する。当該技術分野で既知の任意の方法を用いて、高または低骨質量疾患を発症する危険がある個人を診断し得るし、あるいは薬剤療法の効力を確定し得る。
【0049】
選択的セロトニン再取込み阻害薬(SSRI)は、うつ病、不安障害及びいくつかの人格障害の治療に用いられる抗うつ薬の一種を意味する。それらは、早漏問題を治療するのにも有効であり、使用される。SSRIは、シナプス前細胞中へのその再取込みを抑制し、シナプス後受容体と結合するのに利用可能なセロトニンのレベルを増大することにより、神経伝達物質セロトニンの細胞外レベルを増大する。それらは、他のモノアミン輸送体に対する種々の程度の選択性を有し、ノルアドレナリン及びドーパミンに対する結合親和性をほとんど有さない。合理的に意図されるべき第一のクラスの向精神薬であるSSRIは、多くの国々で最も広範に処方される抗うつ薬である。SSRIとしては、シタロプラム(セレキサ(登録商標)、シプラミル(登録商標)、エモカル(登録商標)、セプラム(登録商標)、セロプラム(登録商標));シュウ酸エシタロプラム(レキサプロ(登録商標)、シプラレクス(登録商標)、エセルチア(登録商標));フルオキセチン(プロザック(登録商標)、フォンテクス(登録商標)、セロメクス(登録商標)、セロニル(登録商標)、サラフェム(登録商標)、フルクチン(登録商標)(EUR)、フルオクス(登録商標)(NZ));マレイン酸フルボキサミン(ルボックス(登録商標)、ファベリン(登録商標));パロキセチン(パキシル(登録商標)、セロキサット(登録商標)、アロパックス(登録商標)、デロキサット(登録商標)、レキセチン(登録商標)、キセタノル(登録商標)、パロキサット(登録商標));セルトラリン(ゾロフト(登録商標)、ルストラル(登録商標)、セルライン(登録商標))及びダポキセチン(既知の商標なし)が挙げられる。
【0050】
[Lrp5は2つ以上の機序により骨発達を調節する]
マウスとヒトとの間の遺伝子機能の極度の保存は、骨格生物学について言えば、骨格生物学、特に骨の再構築及び恒常性の研究に、マウス及びヒト遺伝子研究が非常に影響を及ぼしてきた理由を説明する。マウスにおける遺伝子不活性化実験あるいはヒトにおける疾患遺伝子の分子クローニングは、最初は、胚発生中に重要な遺伝子を同定するために設計され、これらの研究の結果は、出生後の骨格生物学の分子的基礎を新規に解明することによっても、この初期の目的よりさらに進展した。遺伝子欠損実験により、またはヒト遺伝子研究により同定された遺伝子(成体における骨質量の維持のために重要であることが判明した)の中で、例としては、ビタミンD受容体、インターロイキン6、エストロゲン受容体α及びLDL受容体関連タンパク質5(Lrp5)が挙げられる(Gong et al., 2001, Cell 107: 513-523;Boyden et al., 2002, N. Engl. J. Med. 346: 1513-1521;Yoshizawa et al., 1997, Nat. Genet. 16: 391-396;Ohshima et al., 1998, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95: 82228222-6;Windahl et al., 2002, Trends Endocrinol. Metab. 13: 195-200)。
【0051】
出生後骨形成の調節因子としてのLrp5の同定は、この受容体は発生中に発現されるが、しかしその機能は出生後にのみ明らかになるため、発生研究が生理学の理解に大いに影響を及ぼし得る理由についての最も鮮明な例の1つである。実際、Lrp5の機能損失型突然変異は、小児疾患であるヒトにおける骨粗鬆症偽性神経膠腫症候群(OPPG)を引き起こし、Lrp5の機能獲得型突然変異は、青年期にのみ最も頻繁に出現し、成人期にまで存続する表現型である高骨質量を引き起こす(Gong et al., 2001, Cell 107: 513-523;Boyden et al., 2002, N. Engl. J. Med. 346: 1513-1521;Johnson et al., 1997, Am. J. Hum. Genet. 60: 1326-1332)。同様に、骨生成はLrp5−/−マウスにおいては正常であり、それらの低骨質量表現型は出生後に発現するだけである(Kato et al., 2002, J. Cell. Biol. 157: 303-314)。
【0052】
LDL受容体関連タンパク質5(LRP5)は正常骨質量のために必要とされ、低骨質量表現型は、ヒト及びマウスにおけるLrp5不活性化により引き起こされる(Gong et al., 2001, Cell 107: 513-523;Kato et al., 2002, J. Cell. Biol. 157: 303-314)。Lrp5−/−マウスは、低骨質量を有し、破骨細胞表面の変化を伴わないが、しかし骨芽細胞数の低減を示す。Lrp5−/−分子署名の実時間PCR分析は、Lrp5−/−骨芽細胞が骨芽細胞特異的遺伝子発現の変化を示さないが、しかしサイクリン遺伝子の発現が低減した、ということを示す(図1)。Lrp5及びその最も密接に関連するLrp6は、Wntタンパク質のショウジョウバエ相同体であるウィングレスに関する補助受容体として機能する表面受容体をコードするショウジョウバエ遺伝子arrowの脊椎動物相同体である(Wehrli et al., 2000, Nature 407: 527-530;Tamai et al., 2000, Nature 407: 530-535)。脊椎動物細胞では、Wntシグナル伝達は、主にβ−カテニンにより媒介される。Wntの受容体とのWntリガンドの結合時に、β−カテニンは核に転位置され、そこでLef/Tcf転写因子と協力して、遺伝子発現を活性化する(Logan et al., 2004, Annu. Rev. Cell Dev. Biol. 20: 781-810;Mao et al., 2001, Mol. Cell, 7: 801-809)。この正準モデルによれば、Lrp5の同時トランスフェクションは、TopFlashプロモーターのようなTcf依存性プロモーターの活性を増強するWntタンパク質の能力を増大する(Gong et al., 2001, Cell 107: 513-523;Boyden et al., 2002, N. Engl. J. Med. 346: 1513-1521;Mao et al., 2001, Mol. Cell, 7: 801-809)。総合して、arrow及びLrp5間の配列の相同体、ならびにその正準経路によりWntシグナル伝達を容易にするLrp5の能力は、骨芽細胞増殖及び機能を調節することにより、出生後及び成体期中にWntシグナル伝達が骨質量を調節するモデルをもたらした。Lrp5がWntに関する補助受容体であり得るという、そしてWntシグナル伝達が骨形成の調節に関与するという考えを疑う理由はない(Glass et al., 2005, Dev. Cell 8: 751-764;Holmen et al., 2005, J. Biol. Chem. 280: 21162-21168;Day et al., 2005, Dev. Cell, 8: 739-750;Hu et al., 2005, Development 132: 49-60)。それにもかかわらず、Lrp5機能損失型または機能獲得型モデルにおいて観察される骨異常を説明する付加的機序が存在し得る。
【0053】
[Lrp5はセロトニンにより末梢における骨質量を調節する]
TPH1は、生化学経路における最初の酵素をコードして、中枢神経系の外側でセロトニン合成を生じる。それは、十二指腸の腸クロム親和性細胞中で主に発現される細胞特異的遺伝子と考えられる(Gershon and Tack, Gastroenterology, 2007, 132: 397-414)。これに対して、脳におけるセロトニン合成はTPH2に頼り、これは中枢神経系(CNS)中で発現される異なる遺伝子によりコードされる。
【0054】
Lrp5不活性化が骨形成に影響を及ぼす分子機序を解明しようと努力して、WT及びLrp5−/−骨におけるマイクロアレイ分析を実施した。トリプトファンヒドロキシラーゼ1(TPH1)は、低骨質量疾患を有するLrp5−/−骨において最も高度に過剰発現される遺伝子として同定された。この結果は、それが、脳におけるセロトニンの役割(骨質量を増大する)を仮定した場合に予測されるものと逆であるため、意外であった。珍しいことに、TPH1発現は、β−カテニンを欠くマウスの骨芽細胞のみにおいて正常であった(Glass et al., 2005, Dev. Cell 8: 751-764)。
【0055】
TPH1は、Lrp5−/−マウスの骨においてだけでなく、十二指腸においても過剰発現され、そこでは、TPH1発現が骨芽細胞の1300倍以上である、ということが示された。さらに、血清セロトニンレベルはLrp5−/−マウス新生仔においては正常であるが、しかしそれらの骨表現型が発現するとともに齢に伴って着実に増大する、ということも発見された。これは、Lrp5−/−マウスにおける低骨質量表現型が出生時には存在しないが、しかし後に発育中に出現する、という事実と一致する。pCPAと呼ばれるセロトニン合成の阻害薬によるLrp5−/−マウスの治療は、それらの低骨表現型を矯正するということが、さらなる発見により示された(図7)。最後に、加齢動物において、すなわち骨質量が低減することが周知である場合、TPH1発現は増大される、ということが発見された。これらならびに下記付加的データに基づいて、LRP5は、依然として未知の機序により、十二指腸におけるセロトニン合成の陰性調節因子であり、漸増する血清セロトニンシグナル伝達が骨芽細胞の増殖及び機能に負の影響を及ぼす、と結論づけることができる。
【0056】
[多面的分子であるセロトニン]
セロトニン(5−ヒドロキシトリプタミン、5−HT)は、哺乳類中枢神経系における神経伝達物質として、ならびにそのほとんどが産生される末梢におけるホルモンとして、機能する生体アミンである(Gershon et al., 1990, Neuropsychopharmacology, 3: 385-395)。セロトニンは、トリプトファンヒドロキシラーゼ(TPH)と呼ばれる酵素によりL−トリプトファンがL−5−ヒドロキシトリプトファンに転化される酵素カスケードを介して生成される。次いで、この中間生成物は、芳香族L−アミノ酸デカルボキシラーゼによりセロトニンに転化される。アミノ酸配列の71%が同一で、触媒ドメイン中では約90%が類似する2つのTPHコード遺伝子、TPH1及びTPH2が存在する。TPH1は末梢におけるセロトニン合成を制御するが、一方、TPH2は脳におけるセロトニン合成に関与する(Walther et al., 2003, Science 299: 76)。セロトニンは血液脳関門を通過することが出来ないと考えると、これら2つの遺伝子は、したがって、それぞれ末梢及び脳におけるこの分子のレベルを調節するのに専ら関与する。その結果として、血液脳関門を通過することが出来ない化合物を抑制するTPH1を設計することは、末梢におけるTPH1の選択的抑制を達成し、この生理学的区画におけるセロトニンレベルを減少させるための方法の1つである。
【0057】
TPH1は十二指腸の細胞中でほぼ専ら発現され、それは末梢セロトニン(総セロトニンの95%に相当する)の合成に関与する(Gershon & Tack, 2007, 132: 397-414)。十二指腸以外の任意の組織中でのTPH1発現は、少なくとも100〜1000倍低い。したがって、TPH1は十二指腸特異的遺伝子として考え得るし、末梢セロトニン産生は十二指腸特異的プロセスと考えることができる。
【0058】
神経媒介物質としてのその役割のほかに、そして全身循環中に多量に存在するために、セロトニンは、末梢組織における種々の発達及び生理学的プロセス、例えば心臓発達、胃腸運動、肝臓再生及び乳腺発達に関連づけられてきた(Lesurtel et al., 2006, Science, 312: 104-107;Matsuda et al., 2004, Dev. Cell, 6: 193-203;Nebigil et al., 2000, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97: 9508-9513)。その機能を実行するために、セロトニンは、少なくとも14の受容体(そのほとんどはGプロテイン結合受容体(GPCR)である)と結合し得る。1つまたは数個のセロトニン受容体は、骨芽細胞を含めたほとんどの細胞型中に存在する(Westbroek et al., 2001, J. Biol. Chem. 276: 28961-28968)。
【0059】
[骨芽細胞分化及び/または細胞外基質タンパク質合成(Runx2及びOsterix及びAtf4)及び破骨細胞分化(RankL及びオステオプロテグリン)に影響を及ぼす1型コラーゲン、オステオカルシン、調節遺伝子はLrp5欠損マウスにおいて正常である]
Lrp5−/−マウスは、出生時のWTマウスから全観察によって区別不可能であるが、しかしその後、有意に低い骨質量表現型を漸進的に発現する(Kato et al., 2002, J. Cell. Biol. 157: 303-314)。組織学的及び組織形態測定的分析は、この低骨質量表現型が骨形成の減少によるものであるが、一方、骨吸収は影響を及ぼされない、ということを確証した。骨芽細胞の分化は、突然変異体マウスにおいては影響を受けないが、一方、骨芽細胞の増殖はLrp5の非存在下では2倍低減される、ということは重要である。Lrp5−/−マウスは低骨質量を有する(A)が、破骨細胞表面に変化はなく(B)、しかし骨芽細胞数を低減させた(C)、ということを示す図1を参照されたい。
【0060】
[Lrp5−/−分子署名の実時間PCR分析]
Lrp5シグナル伝達の崩壊の分子署名を正確に叙述するために、骨芽細胞系統を特徴づけるかまたは細胞増殖を確定する多重遺伝子の発現は、Lrp5−/−マウスを用いて試験した(Kato et al., 2002, J. Cell. Biol. 157: 303-314)。骨形成に特に関連する遺伝子の発現を先ず分析した。I型コラーゲン及びオステオカルシン(骨芽細胞中で高度に発現される2つの遺伝子)の発現は、Lrp5−/−骨においては正常である(データは示されていない)。この知見は、それが、Lrp5−/−マウスの骨表現型が骨細胞外基質(ECM)の主要構成成分であるI型コラーゲン合成における欠陥により引き起こされないということを確証するので、重要である。骨芽細胞分化及び/または細胞外基質タンパク質合成に影響を及ぼす調節遺伝子の発現も、研究した。3つの既知の骨芽細胞特異的転写因子であるRunx2及びOsterix及びAtf4の発現は、Lrp5−/−骨においては変更されなかった(図1D)。同様に、骨芽細胞により発現される破骨細胞分化の2つの調節因子であるRankL及びオステオプロテゲリン(OPG)の発現は、Lrp5欠失による影響を受けない(図1D)。この後者の特徴は、β−カテニン骨芽細胞特異的欠損(βcatob−/−)骨からLrp5−/−を区別する(Glass et al., 2005, Dev. Cell 8: 751-764;Holmen et al., 2005, J. Biol. Chem. 280: 21162-21168)。
【0061】
Lrp5−/−骨を特徴づける骨芽細胞増殖の減少を考えると、細胞周期進行のマーカー遺伝子の発現も研究した。細胞周期のG1からS期への移行に必要な3つの遺伝子であるサイクリンD1、D2及びE1の発現は、Lrp5−/−骨では低減された(図1E)。これらの結果に基づいて、分子レベルでは、Lrp5の非存在により引き起こされる低骨質量表現型は純粋に細胞増殖欠陥であるが、一方、骨細胞外基質(ECM)の主要タンパク質構成成分であるI型コラーゲンの発現、及び3つの既知の造血細胞特異的転写因子の発現は正常である、ということが分かる。
【0062】
[Lrp5−/−マウスにおける低骨表現型は異常Wntシグナル伝達によるものではない]
配列の相同性及びLrp5がWntのための補助受容体であり、Wnt正準シグナル伝達経路の一部であり得る、ということを示唆する説得力のある実験議論を考慮し、Lrp5−/−マウスの骨表現型が異常Wntシグナル伝達によるものであるか否かを研究した。その質問に答えるために、骨芽細胞のみでβ-カテニンが欠損しているマウスを、分析した(Glass et al., 2005, Dev. Cell 8: 751-764)。骨芽細胞のみにおいてβ−カテニンを欠くマウスは低骨質量表現型を発現し、この表現型はLrp5−/−マウスにおいて働いている機序とは全く異なる機序により引き起こされる、ということが早期に見出されていた。実際、β−catob−/−マウスは、正常数の骨芽細胞を有し、破骨細胞数増大及びでオキシピリジノリンの排除増大(OPG発現の低減に派生する異常である)を示す(Glass et al., 2005, Dev. Cell 8: 751-764)。さらに、Lrp5−/−骨と異なり、細胞周期マーカーのサイクリンD1、D2及びE1の発現はB−catob−/−骨においては正常であった(図2)。したがって、B−catob−/−及びLrp5−/−マウス骨表現型の細胞的及び分子的基礎は、全く異なると思われる。これらの予期せぬ結果はLrp5がWnt補助受容体として作用し得ることを除外しないが、しかし、Lrp5の損失がどのようにそのように特異的に骨形成に影響を及ぼし得るかを他の機序が説明し得る、という可能性が依然として存在した。そのために、WT骨と比較した場合のLrp5−/−における遺伝子異常を調べるマイクロアレイ分析が実施された。
【0063】
[TPH1はLrp5−/−マウスの骨及び十二指腸で過剰発現する]
Lrp5−/−骨のマイクロアレイ分析は、意外にも、最も高度に過剰発現される遺伝子のうちの1つがTPH1である、ということを示した(図3)。TPH1発現がB−catob−/−骨及び骨芽細胞においては正常であることを強調し、これら2つの突然変異体マウス系統間に存在する分子差をさらに強調することは重要である。WTマウスにおけるTPH1の発現のかなり限定されたパターン(十二指腸に制限される)を考えると、Lrp5−/−骨中でのその過剰発現は意外であり、それが骨芽細胞特異的特徴であるか否かという疑問が生じた。
【0064】
この疑問に答えるために、WT及びLrp5−/−マウスの全組織におけるTPH1発現を、qPCRにより分析した。TPH1発現は、WTマウスと比較して、Lrp5−/−の十二指腸において3倍増大する、ということも判明した(図4A)。しかしながら、TPH1発現は、Lrp5−/−マウスにおいては骨芽細胞より十二指腸の方が依然として1300倍以上高かった(図4B)。これら後者のデータは、Lrp5−/−マウスで観察される骨表現型が主として腸起源を有し得る、ということを初めて示唆した。TPH1の発現増大は、より低レベルに予測されるとはいえ、Lrp5+/−マウスにおいても観察された(図4C)。ヘテロ接合型Lrp5+/−マウスも低骨質量表現型を有するため、これは重要な観察である。Lrp5−/−マウス新生仔における骨表現型の非存在と一致して、TPH1発現は新生仔マウスにおいては増大されなかった(図4C)、ということは重要である。TPH1発現の変化は、Lrp5+/−及びLrp5−/−マウスの両方における血清セロトニンレベル増大に反映された(図4D);これは出生時には存在しないが、2、4及び8週齢で存在する。さらにこれらの変化は、Lrp5−/−マウスにおける骨表現型の出現に先行した。
【0065】
対照的に、脳におけるTPH2の発現はLrp5−/−マウスでは影響を及ぼされず、脳中のセロトニン含量はWT及びLrp5−/−マウスで同様であった(図4E及び4F)。この観察は、セロトニンが血液脳関門を通過しないという事実と一致し(Mann et al., 1992, Arch. Gen. Psychiatry, 49: 442-446)、Lrp5機能及びセロトニン生物学間のつながりが末梢セロトニンに関してでなければならない、ということを示す。
【0066】
特に十二指腸の細胞中のマウスLrp5遺伝子の一方の対立遺伝子(Lrp5+/act duo)または両方の対立遺伝子(Lrp5 act duo)においてヒトでの高骨質量を引き起こす突然変異で改変されたマウスでは、野生型(WT)と比較して、TPH1遺伝子の発現は低減された。RNAを1月齢マウスの十二指腸から抽出し、TPH1遺伝子の発現を実時間PCRにより定量した(図12)。
【0067】
【表1】

【0068】
特に十二指腸の細胞中のLrp5遺伝子(Lrp5 act duo)においてヒトでの高骨質量を引き起こす突然変異で改変されたマウスは、野生型マウスより高い骨質量を示す(図12)。
【0069】
総合すれば、これらの分析結果は、Lrp5欠損により引き起こされるTPH発現の増大がTPH1に(したがって末梢セロトニンに)制限され、そしてそれが骨芽細胞及び十二指腸細胞の両方で起きるがしかしその発現は十二指腸では少なくとも1300倍高い、ということを示した。この結果は、2つの疑問を提起する:すなわち、血清セロトニン増大はLrp5−/−マウス骨表現型が原因であるか? ならびに、これは十二指腸細胞によるセロトニンの産生により媒介される内分泌作用及び/または骨芽細胞によるセロトニンの局所的産生に関連した自己分泌作用であるか?
【0070】
[Lrp5−/−及び5Htt−/−マウスは同一骨表現型を有する]
Lrp5−/−マウスの骨表現型が血清セロトニンレベルの増大に続発する場合には、血清セロトニンの増大を特徴とするマウスモデルは、Lrp5−/−マウスと同一組織学的骨表現型を有するだけでなく、予め限定された同一分子署名、すなわち、低減されたサイクリン遺伝子発現及び正常I型コラーゲン発現も有するべきである(図1)。これが観察されたことである。
【0071】
[セロトニン合成阻害薬(pCPA)はLrp5−/−マウスの骨表現型を救済する]
セロトニン合成阻害薬pCA(Eldridge et al., 1981, Ann. Rev. Physiol. 43: 121-135)がセロトニン産生を低減することによりLrp5−/−骨表現型の出現を防止した、という発見は、血清セロトニンレベルの増大がLrp5−/−マウスの骨表現型に全部または一部は関与するという結論と一致する。WT及びLrp5−/−マウスを、3週齢から12週齢まで、週3回、300mg/kgのpCPAで腹腔内処置し(図7A)、血清セロトニンレベルの変化、腸におけるTPH1発現、ならびに脳幹におけるTPH2発現を分析した。骨組織形態測定も実施した。図7Bに示したように、pCPA処置は、WTマウスにおける骨質量に明白に影響を及ぼすことなく、Lrp5−/−マウスで観察された骨異常を矯正した。Lrp5−/−表現型のこの救助を、腸TPH1 mRNAの、及び血清セロトニンレベルの正常化により達成した(図7C及び7D)。脳TPH2 mRNAレベルは処置マウスにおいては影響を及ぼされず、Lrp5−/−骨で観察される表現型は血清セロトニンレベルの変化によって直接引き起こされるが、脳セロトニンレベルの変化によっては引き起こされない、ということをさらに実証した。
【0072】
[セロトニンは骨芽細胞において特異的セロトニン受容体と結合する]
Lrp5は血清セロトニンを介して骨形成に作用する、という作業仮説から、第三の推論を試験した:その推論とは、骨芽細胞はいくつかのセロトニン受容体を発現するはずであり、骨芽細胞のセロトニン処置は、α(I)コラーゲン、Runx2またはオステオカルシンの発現に影響を及ぼすことなく、サイクリンD1、D2及びE1の発現を鈍らせるはずである。この点の第一の部分を検討するために、WT骨芽細胞においてqPCRにより既知のセロトニン受容体の各々の発現を分析した。骨芽細胞中の3つの異なるセロトニン受容体(全て、Gプロテイン結合受容体スーパーファミリーに属している)の発現を検出した(Noda et al., 2004, Mol. Neurobiol. 29: 31-39)。HT1Bは、最も高度に発現される受容体である。それはGi型Gプロテインと結合し、アデニリルシクラーゼ活性を抑制する。HT2Bは、第二の最も豊富な受容体であり、ホスファチジル−イノシトール−カルシウム第二メッセンジャー系を活性化するGプロテインと結合する。最後に、HT2Aは、骨芽細胞中で有意に発現される第三の受容体である。HT2Bと同様に、それは、ホスファチジルイノシトール−カルシウム第二メッセンジャー系を活性化するGプロテインと結合する。顕著であるのは、骨芽細胞中で最も高度に発現されるセロトニン受容体であるHT1Bが、任意の他の細胞中よりもこれらの細胞中でより高度に発現されるということである。したがって、これらの細胞中でのセロトニンシグナル伝達を特異的に伝達することが出来る骨芽細胞中に生じる少なくとも部分的に細胞特異的なシグナル伝達経路が存在する。WT骨芽細胞における既知のセロトニン受容体の発現(A)の、ならびにセロトニンまたはビヒクルで処置された一次骨芽細胞におけるサイクリン及び骨芽細胞特異的遺伝子の発現(B)の実時間PCR分析を示す図8を参照されたい。
【0073】
セロトニンが骨芽細胞におけるサイクリンの発現を調節するか否かを試験するために、セロトニンまたはビヒクルで処置された一次骨芽細胞中でのサイクリン発現の実時間PCR分析を実施した。図8Bに示すように、サイクリンD1及びD2の発現は、セロトニンの存在下で低減された。これとは対照的に、Runx2、オステオカルシン及びI型コラーゲンの発現は、改変されなかった(図8B)。骨芽細胞のセロトニン処置の分子署名がLrp5の非存在下で表示されるものと類似することは、骨芽細胞におけるLrp5及びセロトニンシグナル伝達間の機能的つながりについての仮説をさらに強める。
【0074】
サイクリンD1の発現の低減は、骨芽細胞のLrp5欠損及びセロトニン処置の両方の主な特徴である(図1及び8)。サイクリン遺伝子の発現を調整し、骨芽細胞中で発現されることが知られている一転写因子は、CREBである(Eu et al., 2005, Cell 122: 803-815)。したがって、セロトニンがこれらの細胞においてCREBを減少させ得るか否かを試験した。図9Aに示すように、セロトニン処置は、一次骨芽細胞におけるCREBリン酸化を有意に減少させた。さらに、サイクリンD1マウスプロモーター中のCREB結合部位を同定し、ChIP検定を用いて、セロトニンがこのプロモーターとのCREBの結合を減少させる、ということを示した(図9B)。これら2つの観察は、CREBが骨芽細胞に及ぼすセロトニン作用を媒介しているという仮説を提起する。
【0075】
[TPH1発現は高齢動物において増大する]
TPH1発現は年齢に伴って増大する、ということが、線虫C. elegansにおいて示されている(Murakami et al., 2007 Feb 28 [Epub ahead of print], Neurobiol Aging)。これが哺乳類においてもいえるか否かを試験するために、高齢マウスにおけるTPH1発現を分析した。実時間PCRを用いて、Lrp5の発現は齢に伴って安定したままであるが、一方、TPH1の発現は2月齢マウスと比較して1年齢マウスでは倍加する、ということが示された(図10)。血清セロトニンは骨形成の負の調節因子として作用するため、年齢に伴うTPH1発現のこのような増大は加齢に関連した骨損失を悪化させ、したがって、年齢関連骨損失に対する治療的介入のための標的である。
【0076】
[診断方法]
本明細書中に開示される結果は、血清セロトニン上昇が骨質量を減少させ、低血清セロトニンはそれを増大する、ということを示す。したがって、本発明のある実施形態では、高または低骨質量疾患を発症する危険がある個人の診断方法、ならびに末梢血清セロトニンのレベルをそれぞれ低減するかまたは増大する薬剤を投与することにより、異常に低い骨質量(例えば、骨粗鬆症及びOPPG)及び異常に高い骨質量(例えば、高骨質量症候群)に関連した疾患の治療または予防方法に関する。他の実施形態は、高または低骨質量の骨疾患を治療するかまたは予防するための新規の製剤組成物に関する。
【0077】
本発明の一実施形態は、患者の血清セロトニンレベルを確定することにより、患者が骨疾患を発症する危険があるか否かを確定するための方法に関する。該患者のレベルが、正常被験者のレベルより有意に低い(少なくとも約25%低い)場合には、該患者は異常に高い骨質量を発現する危険があり、セロトニンが投与(好ましくは静脈内に)されて、血清セロトニンを正常化し、それにより高骨質量を発現しないようにし得る。代替的には、該患者の血清セロトニンレベルが正常被験者におけるレベルより有意に高い(約25%より高い)場合には、該患者は異常に低い骨質量を発現する危険があり、TPH1阻害薬またはセロトニン合成を低減する他の治療薬またはセロトニン受容体アンタゴニスト(HT1B、HT2A及び/またはHT2Bを標的にする)が投与されて、血清セロトニンレベルを低減し(好ましくは正常化し)、それにより低骨質量が発現しないようにし得る。患者のモニタリングは、異常血清セロトニンプロフィールが慢性的であるか否かを確定する。それが慢性である場合には、該患者は治療を継続して、血清セロトニンを正常にする必要がある。
【0078】
この状況において、患者の血清セロトニンレベルが正常被験者における血清セロトニンレベルと比較される場合、「正常被験者」は、血清セロトニンレベルに影響を及ぼすことが予測されるその特質、例えば性別、年齢、全身の健康状態、摂取中の薬剤等の点で当該患者と照合される個人を指す、と理解されるべきである。
【0079】
[低骨質量疾患及び高骨質量疾患の治療及び予防方法]
本発明は、このような予防または治療を必要とすることが既知であるかまたは推測される患者における低骨質量疾患の予防または治療方法であって、血清セロトニンレベルを減少させる薬剤の治療的有効量を当該患者に投与することを包含する方法を提供する。
【0080】
ある実施形態では、血清セロトニンレベルを減少させる薬剤は、TPH1阻害薬またはセロトニン受容体アンタゴニストである。
【0081】
ある実施形態では、血清セロトニンレベルを減少させる薬剤は、TPH1阻害薬による処置の前のレベルより少なくとも約10%低いレベルに血清セロトニンを低減するTPH1阻害薬である。ある実施形態では、TPH1阻害薬は、TPH1阻害薬による処置の前のレベルよりも約10%低い、約20%低い、約30%低い、約40%低い、約50%低い、約60%低い、約70%低い、約80%低いまたは約90%低いレベルに、血清セロトニンを低減する。
【0082】
ある実施形態では、該薬剤は、以下のものからなる群から選択されるTPH1阻害薬である:
pCPA;
CBMIDA;
LP−533401;
LP−615819;
(S)−2−アミノ−3−(4−(4−アミノ−6−((R)−1−(ナフタレン−2−イル)エチルアミノ)−1,3,5−トリアジン−2−イル)フェニル)プロパン酸;
(S)−2−アミノ−3−(4−(4−アミノ−6−((4‘−メチルビフェニル−4−イル)メチルアミノ−1,3,5−トリアジン−2−イル)フェニル)プロパン酸;
(S)−2−アミノ−3−(4−(4−モルホリノ−6−(ナフタレン−2−イルメチルアミノ)−1,3,5−トリアジン−2−イル)フェニル)プロパン酸;
(2S)−2−アミノ−3−(4−(2−アミノ−6−(2,2,2−トリフルオロ−1−(2−(トリフルオロメチル)フェニル)エトキシ)ピリミジン−4−イル)フェニル)プロパン酸;
(2S)−2−アミノ−3−(4−(2−アミノ−6−(2,2,2−トリフルオロ−1−p−トリルエトキシ)ピリミジン−4−イル)フェニル)プロパン酸;
(2S)−2−アミノ−3−(4−(2−アミノ−6−(1−シクロヘキシル−2,2,2−トリフルオロエトキシ)ピリミジン−4−イル)フェニル)プロパン酸;
(S)−2−アミノ−3−(4−(6−(2−フルオロフェノキシ)ピリミジン−4−イル)フェニル)プロパン酸;
(2S)−2−アミノ−3−(4−(4−(3−(4−クロロフェニル)ピペリジン−1−イル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)フェニル)プロパン酸;
(2S)−2−アミノ−3−(4−(4−アミノ−6−(2,2,2−トリフルオロ−1−フェニルエトキシ)−1,3,5−トリアジン−2−イル)フェニル)プロパン酸;
(S)−2−アミノ−3−(5−(4−アミノ−6−((R)−(ナフタレン−2−イル)エチルアミノ)−1,3,5−トリアジン−2−イル)ピリジン−2−イル)プロパン酸;
(S)−2−アミノ−3−(3−(4−アミノ−6−(R)−1−(ナフタレン−2−イル)エチルアミノ)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−1H−ピラゾール−1−イル)プロパン酸;
(S)−2−アミノ−3−(4‘−(3−(シクロペンチルオキシ)−4−メトキシベンジルアミノ)ビフェニル−4−イル)プロパン酸;
(S)−2−アミノ−3−(4−(6−(3−(シクロペンチルオキシ)−4−メトキシベンジルアミノ)ピリミジン−4−イル)フェニル)プロパン酸;
(S)−2−アミノ−3−(4−(6−(3−(シクロペンチルオキシ)−4−メトキシベンジルアミノ)ピラジン−2−イル)フェニル)プロパン酸;
(S)−2−アミノ−3−(4−(5−((4‘−メチルビフェニル−2−イル)メチルアミノ)ピラジン−2−イル)フェニル)プロパン酸;
(2S)−2−アミノ−3−(4−(6−(2,2,2−トリフルオロ−1−フェニルエトキシ)ピリミジン−4−イル)フェニル)プロパン酸;
(2S)−2−アミノ−3−(4−(6−(1−(3,4−ジフルオロフェニル)−2,2,2−トリフルオロエトキシ)ピリミジン−4−イル)フェニル)プロパン酸;
(S)−2−アミノ−3−(4−(5−(3−(シクロペンチルオキシ)−4−メトキシベンジルアミノ)ピラジン−2−イル)フェニル)プロパン酸;
(S)−2−アミノ−3−(4−(5−((3−(シクロペンチルオキシ)−4−メトキシベンジル)−(メチル)アミノ)ピラジン−2−イル)フェニル)プロパン酸;
(S)−2−アミノ−3−(4−(5−((1,3−ジメチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチルアミノ)ピラジン−2−イル)フェニル)プロパン酸;
(S)−2−アミノ−3−(4−(4−アミノ−6−((S)−1−(ナフタレン−2−イル)エチルアミノ)−1,3,5−トリアジン−2−イルオキシ)フェニル)プロパン酸;
(S)−2−アミノ−3−(4−(4−アミノ−6−((R)−1−(ビフェニル−2−イル)−2,2,2−トリフルオロエトキシ)−1,3,5−トリアジン−2−イルオキシ)フェニル)プロパン酸;
(S)−2−アミノ−3−(4−(4−アミノ−6−(1−(6,8−ジフルオロナフタレン−2−イル)エチルアミノ)−1,3,5−トリアジン−2−イル)フェニル)プロパン酸;
(2S)−2−アミノ−3−(4−(4−アミノ−6−(2,2,2−トリフルオロ−1−(3‘−メチルビフェニル−2−イル)エトキシ)−1,3,5−トリアジン−2−イル)フェニル)プロパン酸;
(S)−2−アミノ−3−(4−(5−(3,4−ジメトキシフェニルカルバモイル)−ピラジン−2−イル)フェニル)プロパン酸;
(S)−2−アミノ−3−(4−(2−アミノ−6−(4−(2−(トリフルオロメチル)フェニル)−ピペリジン−1−イル)ピリミジン−4−イル)フェニル)プロパン酸;
(S)−2−アミノ−3−(4−(2−アミノ−6−((R)−1−(ナフタレン−2−イル)エチルアミノ)ピリミジン−4−イル)フェニル)プロパン酸;
(S)−2−アミノ−3−(4−(2−アミノ−6−(メチル(R)−1−(ナフタレン−2−イル)エチル)アミノ)ピリミジン−4−イル)フェニル)プロパン酸;
(S)−2−アミノ−3−(4−(2−アミノ−6−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−(6−メトキシナフタレン−2−イル)エトキシ)ピリミジン−4−イル)フェニル)プロパン酸;
(S)−2−アミノ−3−(4−(5−(ビフェニル−4−イルメチルアミノ)ピラジン−2−イル)フェニル)プロパン酸;
(S)−2−アミノ−3−(4−(5−(ナフタレン−2−イルメチルアミノ)ピラジン−2−イル)フェニル)プロパン酸;
(S)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3−(4−(5−(ナフタレン−2−イルメチルアミノ)ピラジン−2−イル)フェニル)プロパン酸;
(S)−2−モルホリノエチル−2−アミノ−3−(4−(5−(ナフタレン−2−イルメチルアミノ)ピラジン−2−イル)フェニル)プロパノエート;
(S)−2−アミノ−3−(4−(2−アミノ−6−(2,2,2−トリフルオロ−1−(3‘−フルオロビフェニル−4−イル)エトキシ)ピリミジン−4−イル)フェニル)プロパン酸;
(S)−2−アミノ−3−(4−(2−アミノ−6−(ベンジルチオ)ピリミジン−4−イル)フェニル)プロパン酸;
(S)−2−アミノ−3−(4−(2−アミノ−6−(ナフタレン−2−イルメチルチオ)ピリミジン−4−イル)フェニル)プロパン酸;
(2S)−2−アミノ−3−(4−(2−アミノ−6−(1−(3,4−ジフルオロフェニル)−2,2,2−トリフルオロエトキシ)ピリミジン−4−イル)フェニル)プロパン酸;
(2S)−2−アミノ−3−(4−(2−アミノ−6−(2,2,2−トリフルオロ−1−(3‘−メチルビフェニル−2−イル)エトキシ)ピリミジン−4−イル)フェニル)プロパン酸;
(S)−2−アミノ−3−(4−(5−(3−(シクロペンチルオキシ)−4−メトキシベンジルアミノ)ピリジン−3−イル)フェニル)プロパン酸;
2−アミノ−3−(3−(4−アミノ−6−((R)−1−(ナフタレン−2−イル)エチルアミノ)−1,3,5−トリアジン−2−イル)フェニル)プロパン酸;
2−アミノ−3−(4−(4−アミノ−6−((R)−1−(ナフタレン−2−イル)エチルアミノ)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−2−フルオロフェニル)プロパン酸;
(2S)−2−アミノ−3−(4−(4−アミノ−6−(1−(アダマンチル)エチルアミノ)−1,3,5−トリアジン−2−イル)フェニル)プロパン酸;
(S)−2−アミノ−3−(4−(5−フルオロ−4−((R)−1−(ナフタレン−2−イル)エチルアミノ)ピリミジン−2−イル)フェニル)プロパン酸;
(S)−2−アミノ−3−(4−(2−アミノ−6−(4−(トリフルオロメチル)−ベンジルアミノ)ピリミジン−4−イル)フェニル)プロパン酸;
2−アミノ−3−(5−(5−フェニルチオフェン−2−イル)−1H−インドール−3−イル)プロパン酸;
(S)−2−アミノ−3−(4−(4−(4−フェノキシフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)フェニル)プロパン酸;
(S)−2−アミノ−3−(4−(4−(4−(チオフェン−2−カルボキサミド)フェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)フェニル)プロパン酸;及び
(S)−2−アミノ−3−(4−(2−アミノ−6−(フェニルエチニル)ピリミジン−4−イル)フェニル)プロパン酸;
ならびに上記化合物のラセミ混合物及び個々のエナンチオマー、及び上記化合物と生理学的に許容可能な酸との塩。
【0083】
本発明に用いられ得る付加的TPH1阻害薬を、以下の表に列挙する。
【0084】
【表2】










【0085】
本発明に用いられ得る付加的TPH1阻害薬としては、以下のものが挙げられる:
N−[(1R,4R,9aS)−4−フェニルオクタヒドロピリド[2,1−c][1,4]オキサジン−1−イル]3,4,5−トリメトキシベンズアミド;
2,6−ピペリジンジオン3−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−(3−メトキシフェニル)−4,4−ジメチル一塩酸塩;及び
トリプトシン(CAS登録番号86248−47−7;米国特許第4,472,387号)。
【0086】
前節に開示された多くの治療薬の製造方法は、国際特許公開番号WO2007/089335に開示されている。このような開示は、参照により本明細書中に組み込まれる。
【0087】
ある実施形態では、該治療薬は、以下の構造を有するTPH1阻害薬である。
【化17】

【0088】
ある実施形態では、該治療薬は、以下の構造を有するTPH1阻害薬である。
【化18】

【0089】
ある実施形態では、該治療薬は、以下の構造を有するTPH1阻害薬である。
【化19】

[式中、
Rは、水素または低級アルキルであり、ここで、低級アルキルは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖炭化水素基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、及びヘキシル)を指し;
nは、1、2、または3である。]
【0090】
ある実施形態では、該治療薬は、以下の構造を有するTPH1阻害薬である。
【化20】

[式中、
Rは、水素または低級アルキルであり、ここで、低級アルキルは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖炭化水素基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、及びヘキシル)を指し;
nは、1、2または3である。]
【0091】
ある実施形態では、該治療薬は、以下の構造を有するTPH1阻害薬である。
【化21】

[式中、
Rは、水素または低級アルキルであり、ここで、低級アルキルは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖炭化水素基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、及びヘキシル)を指し;
、R及びRは、独立して、
水素;
ハロゲン(好ましくはFまたはCl);
低級アルキル(ここで、低級アルキルは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖炭化水素基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、及びヘキシル)を指す);
アルコキシ(ここで、アルコキシは、基R’−O−(式中、R’は上記のような低級アルキルである)を指す);
アミノ;または
ニトロ
であり;
nは、1、2、または3である。]
【0092】
ある実施形態では、該治療薬は、以下の構造を有するTPH1阻害薬である。
【化22】

[式中、
Rは、水素または低級アルキルであり、ここで、低級アルキルは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖炭化水素基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル及びヘキシル)を指し;
、R及びRは、独立して、
水素;
ハロゲン(好ましくはFまたはCl);
低級アルキル(ここで、低級アルキルは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖炭化水素基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、及びヘキシル)を指す);
アルコキシ(ここで、アルコキシは、基R’−O−(式中、R’は上記のような低級アルキルである)を指す);
アミノ;または
ニトロ
であり;
nは、1、2または3である。]
【0093】
ある実施形態では、該治療薬は、以下の構造を有するTPH1阻害薬である。
【化23】

[式中、Rは、水素;低級アルキル(ここで、低級アルキルは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖炭化水素基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、及びヘキシル)を指す);またはシクロアルキル(ここで、シクロアルキルは、3〜8個の炭素原子を有する環状炭化水素基を指す)である。]
【0094】
ある実施形態では、該治療薬は、以下の構造を有するTPH1阻害薬である。
【化24】

[式中、Rは、水素;低級アルキル(ここで、低級アルキルは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖炭化水素基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、及びヘキシル)を指す);またはシクロアルキル(ここで、シクロアルキルは、3〜8個の炭素原子を有する環状飽和炭化水素基を指す)である。]
【0095】
ある実施形態では、該治療薬は、以下の構造を有するTPH1阻害薬である。
【化25】

[式中、R及びRは、独立して、水素;低級アルキル(ここで、低級アルキルは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖炭化水素基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、及びヘキシル)を指す);またはシクロアルキル(ここで、シクロアルキルは、3〜8個の炭素原子を有する環状飽和炭化水素基を指す)である。]
【0096】
ある実施形態では、該治療薬は、以下の構造を有するTPH1阻害薬である。
【化26】

[式中、Rは、水素;低級アルキル(ここで、低級アルキルは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖炭化水素基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、及びヘキシル)を指す);またはシクロアルキル(ここで、シクロアルキルは、3〜8個の炭素原子を有する環状飽和炭化水素基を指す)である。]
【0097】
ある実施形態では、該治療薬は、以下の構造を有するTPH1阻害薬である。
【化27】

[式中、R及びRは、独立して、水素;低級アルキル(ここで、低級アルキルは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖炭化水素基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、及びヘキシル)を指す);またはシクロアルキル(ここで、シクロアルキルは、3〜8個の炭素原子を有する環状飽和炭化水素基を指す);F、ClまたはOHである。]
【0098】
ある実施形態では、該治療薬は、以下の構造を有するTPH1阻害薬である。
【化28】

[式中、R及びRは、独立して、水素;低級アルキル(ここで、低級アルキルは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖炭化水素基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、及びヘキシル)を指す);またはシクロアルキル(ここで、シクロアルキルは、3〜8個の炭素原子を有する環状飽和炭化水素基を指す)である。]
【0099】
該薬剤が別の薬学的活性物質(例えば、SSRI、β遮断薬またはセロトニン受容体アンタゴニスト)の投与を伴わずに投与されるTPH1阻害薬である一実施形態では、該TPH1阻害薬は、pCPA、CBMIDA、または以下のような化合物でない。
【化29】

[式中、
nは2、3または5であり;
Rは、独立して、OCH、CH、CH、NO、またはClである。]
【0100】
pCPAの構造を以下に示す。
【化30】

【0101】
CBMIDAの構造を以下に示す:
【化31】

【0102】
血清中で測定される末梢セロトニンを低減する選択的TPH1阻害薬CBMIDAの能力を試験した。250または500mg/kg用量のCBMIDAを、4〜5匹/群の4週齢マウスに、20時間に2回、経口投与した。対照として、数匹は未処置で、数匹には250mg/kgのpCPAを経口摂取させた。これらの結果は、250mg/kgが末梢セロトニンの約45%低減を引き起こし、500mg/kgが末梢セロトニンを約80%低減するよう、CBMIDA投与に対する用量応答が存在する、ということを示した。pCPA(250mg/kg)は、血清セロトニンの約50%低減を引き起こした。これらの結果は、pCPAがCBMIDAより効果的であり、使用量(250mg/kg)では、pCPAは血液脳関門を通過しない、ということを示した。したがって、pCPAは脳中のセロトニンを減少させなかったが、この場合、セロトニンは末梢セロトニンとは逆の作用を有する。CBMIDAは、ビーグル犬において骨様体積を増大し、in vitroでラット頭頂骨由来骨芽細胞の増殖を誘導するEDTA類似体であると報告されている(Xie, et al., Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 15 (2005) 3267-3270)(この記載内容は参照により本明細書中で援用される)。
【0103】
本発明は、別の薬学的活性物質と一緒に血清セロトニンレベルを低減するために用いられる場合、pCPA及びCBMIDAの使用を包含し、この場合、他の薬学的活性物質は別の目的のために用いられ得る(例えばうつ病を治療するために用いられるSSRI)、あるいは他の薬学的活性物質は、TPH1の抑制を包含しない方法により血清セロトニンを低減するために用いられる、と理解されるべきである。
【0104】
本発明は、下記化合物:
【化32】

[式中、
nは、2、3、または5であり;
Rは、独立して、OCH、CH、CH、NO、またはClである]
の使用もさらに包含し、この場合、当該化合物は、血清セロトニンレベルを減少させる別の薬学的活性物質とともに用いられる。
【0105】
前節に記載された化合物の製造方法は、Xie, et al., Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 15 (2005) 3267-3270(この記載内容は参照により本明細書中で援用される)中に見出され得る。
【0106】
本発明は、本明細書中に開示されるTPH1阻害薬のある誘導体の使用も包含する。例えば、該TPH1阻害薬のプロドラッグは、該TPH1阻害薬のカルボン酸官能基を低級アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等でエステル化することにより製造され得る。エステルでない該TPH1阻害薬のプロドラッグの使用も意図される。例えば、TPH1阻害薬の製薬上許容可能な炭酸塩、チオ炭酸塩、N−アシル誘導体、N−アシルオキシアルキル誘導体、第三級アミンの第四級誘導体、N−マニッヒ塩基、シッフ塩基、アミノ酸共役体、リン酸エステル、金属塩及びスルホン酸エステルも意図される。いくつかの実施形態では、該プロドラッグは、生体加水分解性部分(例えば、生体加水分解性アミド、生体加水分解性カルバメート、生体加水分解性カルボネート、生体加水分解性エステル、生体加水分解性ホスフェートまたは生体加水分解性ウレイド類似体)を含有する。本明細書中に開示されるTPH1阻害薬のプロドラッグの調製のためのガイドラインは、Design of Prodrugs, Bundgaard, A. Ed., Elsevier, 1985;Design and Application of Prodrugs, A Textbook of Drug Design and Development, Krosgaad-Larsen and H. Bundgaad, Ed., 1991, Chapter 5, pages 113-191;及びBundgaad, H., Advanced Drug Delivery Review, 1992, 8, pages 1-38のような出版物中に見出され得る。
【0107】
ある実施形態では、該TPH1阻害薬は、脳由来のセロトニンのレベルに有意に影響を及ぼすことなく、TPH1を抑制する。このような阻害薬を獲得する方法としては、以下のことが挙げられる:(1)TPH2より大きい程度にTPH1を抑制する化合物に関してスクリーニングすること;ならびに(2)TPH1及びTPH2の両方を抑制する一方、血液脳関門を通過することが出来ず、したがって、中枢神経性外で患者に投与される場合、TPH1に有効に特異的である化合物に関してスクリーニングすること。もちろん、TPHより大きい程度にTPH1を抑制し、且つ血液脳関門を通過ることが出来ない化合物も適している。好ましくは、TPH2より大きい程度にTPH1を抑制する化合物は、TPH1に関するそれらのIC50の少なくとも約10倍であるTPH2に関するIC50を有する。
【0108】
CBMIDAは血液脳関門を通過せず、したがって、TPH2選択性である、ということを、いくつかの事実は示唆する。第一に、CBMIDAの構造はEDTAベースであり、経口投与される場合、それは循環中に十分には運搬されない(3〜5%のみ)。第二に、EDTAベースの化合物は、概して、血液脳関門を横断する十分な運搬を示さない。
【0109】
ある実施形態では、該薬剤は、造血細胞中でのI型コラーゲン、オステオカルシン、Runx2、オステリックスまたはAtf4の発現のレベルに有意に影響を及ぼさないTPH1阻害薬である。ある実施形態では、薬剤は、骨芽細胞中でのサイクリンD1、D2及びE1の発現を減少させるTPH1阻害薬である。
【0110】
ある実施形態では、該薬剤は、以下の構造:
【化33】

ならびにその製薬上許容可能な塩及び溶媒和物を有するTPH1阻害薬であって、式中、Aは、任意に置換されたシクロアルキル、アリール、または複素環であり;Xは、単結合(すなわちAはDに直接結合される)、−O−、−S−、−C(O)−、−C(R)=、=C(R)−、−C(R)−、−C(R)=C(R)−、−C≡C−、−N(R)−、−N(R)C(O)N(R)−、−C(R)N(R)−、−N(R)C(R)−、−ONC(R)−、−C(R)NO−、−C(R)O−、−OC(R)−、−S(O)−、−S(O)N(R)−、−N(R)S(O)−、−C(R)S(O)−、または−S(O)C(R)−であり;Dは、任意に置換されたアリールまたは複素環であり;Rは、水素、あるいは任意に置換されたアルキル、アルキル−アリール、アルキル−複素環、アリール、または複素環であり;Rは、水素、あるいは任意に置換されたアルキル、アルキル−アリール、アルキル−複素環、アリール、または複素環であり;Rは、水素、アルコキシ、アミノ、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、または任意に置換されたアルキルであり;Rは、水素、アルコキシ、アミノ、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、あるいは任意に置換されたアルキルまたはアリールであり;Rは、各々独立して、水素、あるいは任意に置換されたアルキルまたはアリールであり;そしてnは0〜3である。このようなTPH1阻害薬は、国際公開第2007/089335号(カルチノイド症候群ならびに胃腸疾患及び障害の治療に有用であると開示)に記載されている。
【0111】
ある実施形態では、該薬剤は、以下の構造:
【化34】

ならびにその製薬上許容可能な塩及び溶媒和物を有するTPH1阻害薬であって、式中、Aは、任意に置換されたシクロアルキル、アリール、または複素環であり;Xは、単結合(すなわちAはDに直接結合される)、−O−、−S−、−C(O)−、−C(R)=、=C(R)−、−C(R)−、−C(R)=C(R)−、−C≡C−、−N(R)−、−N(R)C(O)N(R)−、−C(R)N(R)−、−N(R)C(R)−、−ONC(R)−、−C(R)NO−、−C(R)O−、−OC(R)−、−S(O)−、−S(O)N(R)−、−N(R)S(O)−、−C(R)S(O)、−または−S(O)C(R)−であり;Dは、任意に置換されたアリールまたは複素環であり;Eは、任意に置換されたアリールまたは複素環であり;Rは、水素、あるいは任意に置換されたアルキル、アルキル−アリール、アルキル−複素環、アリール、または複素環であり;Rは、水素、あるいは任意に置換されたアルキル、アルキル−アリール、アルキル−複素環、アリール、または複素環であり;Rは、水素、アルコキシ、アミノ、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、または任意に置換されたアルキルであり;Rは、水素、アルコキシ、アミノ、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、あるいは任意に置換されたアルキルまたはアリールであり;Rは、各々独立して、水素、あるいは任意に置換されたアルキルまたはアリールであり;そしてnは0〜3である。このようなTPH1阻害薬は、国際公開第2007/089335号(カルチノイド症候群ならびに胃腸疾患及び障害の治療に有用であると開示)に記載されている。
【0112】
直ぐ上の2つの段落に開示された化合物において:
「シクロアルキル」は、1〜20個(例えば、1〜10または1〜4個)の炭素原子を有する環状炭化水素を意味する。シクロアルキル部分は単環式または多環式であり、例としてはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、及びアダマンチルが挙げられ得る;
「アリール」は、炭素及び水素原子からなる芳香族環あるいは芳香族または部分的芳香族環系を意味する。アリール部分は、一緒に結合されるかまたは融合される多重環を含み得る。アリール部分の例としては、アントラセニル、アズレニル、ビフェニル、フルオレニル、インダン、インデニル、ナフチル、フェナントレニル、フェニル、1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン、及びトリルが挙げられる;
「複素環」は、炭素、水素ならびに少なくとも1つの異種原子(例えば、N、O、またはS)からなる芳香族、部分的芳香族または非芳香族単環式または多環式環または環系を指す。複素環は、一緒に融合されるかまたは結合される多重(すなわち2つ以上の)環を含み得る。複素環は、ヘテロアリールを包含する。例としては、ベンゾ[1,3]ジオキソリル、2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]ジオキシニル、シンノリニル、フラニル、ヒダントイニル、モルホリニル、オキセタニル、オキシラニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピロリジノニル、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロピリジニル、テトラヒドロピリミジニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニル、及びバレロラクタミルが挙げられる;
「アルキル」は、1〜20個(例えば、1〜10または1〜4個)の炭素原子を有する直鎖、分枝鎖及び/または環状(「シクロアルキル」)炭化水素を意味する。アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、4,4−ジメチルペンチル、オクチル、2,2,4−トリメチルペンチル、ノニル、デシル、ウンデシル、及びドデシルが挙げられる。シクロアルキル部分は、単環式または多環式であり得るし、例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、及びアダマンチルが挙げられる。アルキル部分の付加的例は、線状、分枝鎖及び/または環状部分を有する(例えば、1−エチル−4−メチル−シクロヘキシル)。「アルキル」という用語は、飽和炭化水素、ならびにアルケニル及びアルキニル部分を含む;
「アルキル−アリール」は、アリール部分と結合されたアルキル部分を意味する;
「アルキル-ヘテロアリール」は、ヘテロアリール部分と結合されたアルキル部分を意味する;
「アルコキシ」は、−O−アルキル基を意味する。アルコキシ基の例としては、−OCH、−OCHCH、−O(CHCH、−O(CHCH、−O(CHCH、及び−O(CHCHが挙げられる。
【0113】
ある実施形態では、該薬剤は、以下の構造:
【化35】

または
【化36】

を有するTPH1である。
【0114】
LP−533401及びLP−615819は、Liu et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 2008, Jan 11 [Epub ahead of print]#132670(この記載内容は参照により本明細書中で援用される)に記載されている。LP−615819は、LP−533401のプロドラッグ(すなわち、エチルエステル)である。Liu等が記載したように、LP−533401及びLP−615819はともに、約30〜90mg/kgの量で、3〜4日間に亘って1日2回、マウスに投与された。小腸中のセロトニンレベルは、6連続用量投与直後に有意に低下したが、一方、脳由来セロトニンは変化しなかった。LP−533401がTPH1と同様に有効にTPH2を抑制する場合でも、それはin vivoで血液−脳関門を通過せず、したがって、脳由来のセロトニンの減少を引き起こさなかった。LP−533401及びLP−615819は、化学療法誘導性嘔吐及び過敏性腸症候群の治療に有用であり得る、とLi等は開示した。
【0115】
LP−533401及びLP−615819は、脳由来セロトニンとは対照的に、末梢セロトニンを選択的に低減する。動物試験では、LP−533401は、1日1回経口投与の135mg/kgを用いて、約2/3正常レベル未満に消化管中のセロトニンを低減した。該作用は、用量反応曲線に従った。マウスに投与された量では、脳セロトニンレベルは影響を及ぼされなかった。レキシコン社(Lexicon Pharmaceuticals Incorporated)は、下痢または過敏性腸症候群を特に治療するために、これらのTPH1阻害薬を開発した。LP−533401は、Lexicon Pharmaceuticalsによる第I相臨床試験で目下評価されている。単一用量投与レジメンでは、250mg〜2,000mg/日が経口投与された。LP−533401は、250〜1,000mg/日の量で経口的に多数回用量投与でも投与された。一フォーマットでは、薬剤は、1日2回500mg用量投与として、または1日4回500mg用量投与として、14日間に亘って投与された。高頻度の有害事象が、全ての用量レベルで報告された。これらのTPH1阻害薬は、低骨質量疾患、例えば骨粗鬆症及び骨粗鬆症偽性神経膠腫を治療するかまたは予防するために本発明で用いられ得る。
【0116】
多環式アミノ酸誘導体を含む、LP−533401及びLP−615819に関連した種々の他のTPH1阻害薬は、米国特許出願公開番号2007/191370号に、ならびに関連出願、例えば国際公開第2007/089335号(この記載内容は参照により本明細書中で援用される)に記載されている。これらの阻害薬も、低骨質量疾患を治療するかまたは予防するために本発明の方法で用いられ得る。
【0117】
本発明のある実施形態では、前節で記載された治療的有効量の1つもしくは複数の化合物は、単独で、あるいは骨質量を増大することが既知である他の化合物と併用して、低骨質量疾患を有するかまたは発祥する危険がある被験者に、このような疾患を治療するかまたは予防するために投与される。
【0118】
TPH1阻害薬を投与することによる低骨密度療法の効能は、処置前に、及び処置後長期間に亘って、骨密度変化を測定することにより監視して、薬剤効能を確定し得る。
【0119】
本発明は、このような予防または治療を必要とすることが既知であるかまたは推測される患者における低骨質量疾患の予防または治療方法であって、治療的有効量のセロトニン受容体アンタゴニストを該患者に投与することを包含する方法を提供する。
【0120】
ある実施形態では、該セロトニン受容体アンタゴニストは、HT1B、HT2A、またはHT2B受容体アンタゴニストである。好ましい実施形態では、該セロトニン受容体アンタゴニストは、HT1Bアンタゴニストである。
【0121】
該セロトニン受容体アンタゴニストは、骨芽細胞上に存在する末梢セロトニン受容体HT1B、HT2A、またはHT2Bの多数の既知のアンタゴニストのうちの1つであり得る。HT1B、HT2A、またはHT2B受容体に対して選択的であるアンタゴニストが好ましい。HT1B、HT2A、またはHT2Bアンタゴニストを投与することによる低骨密度療法の効能は、処置前に、及び処置後長期間に亘って、骨密度変化を測定することにより監視して、薬剤効能を確定し得る。低骨質量に関連した疾患は、以下の表3に列挙するようなHT1Bアンタゴニストで治療され得る。
【0122】
【表3】


【0123】
ある実施形態では、末梢血清セロトニンを増大する薬剤は、小有機分子、抗体、抗体断片、タンパク質、またはポリペプチドである。
【0124】
本発明は、このような予防または治療を必要とすることが既知であるかまたは推測される患者における低骨質量疾患の予防または治療方法であって、TPH1阻害薬及びセロトニン受容体アンタゴニストの両方を該患者に投与することを包含する方法も提供する。
【0125】
ある実施形態では、該TPH1阻害薬及びセロトニン受容体アンタゴニストは、単一製剤組成物中で一緒に投与される。他の実施形態では、該TPH1阻害薬及びセロトニン受容体アンタゴニストは、別個の製剤組成物中で投与される。
【0126】
本明細書中に記載される方法のある実施形態では、該低骨質量疾患は、骨粗鬆症、骨粗鬆症偽性神経膠腫症候群(OPPG)、骨減少症、骨軟化症、腎性骨異栄養症、骨形成不良、骨吸収不良、パジェット病、骨折、骨破損、または骨転移である。好ましい実施形態では、該低骨質量疾患は骨粗鬆症である。
【0127】
用いられるべき治療薬の量は、本明細書中で考察されるような多数の因子に左右される。しかしながら、例えばヒトでは、その量は、約1mg/日〜約2g/日;好ましくは約15mg/日〜約500mg/日;または約20mg/日〜約250mg/日;または約40mg/日〜約100mg/日の範囲である。他の好ましい投与量としては、約2mg/日、約mg/日、約mg/日、約mg/日、約mg/日、約mg/日、約mg/日、約mg/日、約5mg/日、約10mg/日、約15mg/日、約20mg/日、約25mg/日、約30mg/日、約40mg/日、約50mg/日、約60mg/日、約70mg/日、約80mg/日、約90mg/日、約100mg/日、約125mg/日、約150mg/日、約175mg/日、約200mg/日、約250mg/日、約300mg/日、約350mg/日、約400mg/日、約500mg/日、約600mg/日、約700mg/日、約800mg/日及び約900mg/日が挙げられる。慣例の実験は、高頻度で且つ容易に監視され得る血清セロトニンレベルに及ぼす化合物の作用を監視することにより各患者に関する適切な値を確定する。該薬剤は、1日に1回または多数回投与され得る。血清セロトニンレベルは、治療の前及び最中に監視して、血清セロトニンレベルを下げるかまたは血清セロトニンレベルを正常にさせるかまたは長期間に亘って正常レベルを維持するために投与されるTPH1阻害薬の適切な量を確定し得る。好ましい一実施形態では、患者は、患者の血清セロトニンレベルが、TPH1阻害薬及び/あるいはHT1B、HT2AまたはHT2B受容体アンタゴニストによる処置を施す前の上記正常レベルを有意に上回る(約25%上回る)か否かを確定するために試験される。投与頻度は、1回用量投与/日から多数回用量投与/日まで変わり得る。好ましい投与経路としては、経口、静脈内及び腹腔内投与経路が挙げられるが、他の投与形態も同様に選択され得る。
【0128】
本発明の別の実施形態は、骨損失を予防するために、または正常骨質量を維持するかまたは増大するために、長期SSRI投与で治療されている患者への投与のためのSSRIと併用されるTPH1阻害薬またはセロトニン合成阻害薬の製剤処方物に関する。
【0129】
ある実施形態では、本発明の治療薬は、末梢セロトニンに選択的に作用するか、あるいは脳由来セロトニンを増大することなく、血清セロトニンを減少させる量で投与される。
【0130】
他の実施形態では、該TPH1阻害薬及びセロトニン受容体アンタゴニストは、ビスホスホネート、例えばFOSAMAX(登録商標)(アレンドロン酸ナトリウム)、FOSAMAX PLUS D(アレンドロン酸ナトリウム/コレカルシフェロール)または他の骨形成薬、ビタミンまたはミネラルと一緒に処方され、投与されて、骨質量増大に及ぼすそれらの作用を強化する。
【0131】
末梢血清セロトニンレベルを低減し、長期間、骨質量を増大する量及び持続期間でTPH1阻害薬及びセロトニン合成阻害薬を投与し得るので、該TPH1阻害薬及びセロトニン合成阻害薬の治療効能を監視することは簡単である。血清セロトニン及び骨質量はともに、容易に測定され得る。実施例1は、血清セロトニンのレベルを監視するための一イムノアッセイの詳細を提供する。実施例3は、用いられ得る血清セロトニンに関するさらなる検定を提供する。血清セロトニンの監視は簡単であり、治療経過中に高頻度で実行して、各患者のための適切な用量投与を確立し得る。血清セロトニンを検定するための当該技術分野で既知の任意の方法が用いられ得る。骨質量増大は、骨密度及び骨成長マーカーを測定する種々の手段を用いて、本明細書中に記載されるように測定され得るし、あるいは当該技術分野で既知の他の方法により測定され得る。
【0132】
別の実施形態では、低骨質量疾患は、抗セロトニン抗体または抗体断片を投与することにより、好ましくは静脈内または腹腔内注射により、治療され得る。このような抗体は血液脳関門を通過せず、セロトニンを中和し、それによりそれが骨質量を低減しないようにする。TPH1またはセロトニン受容体(例えばHT1B)を認識し、不活性化し、したがって血清セロトニンレベルを下げる抗体または抗体断片も、本発明に用いられ得る。
【0133】
「抗体(単数)」及び「抗体(複数)」という用語は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化またはキメラ抗体、一本鎖Fv抗体断片、Fab断片及びF(ab’)断片を包含する。ポリクローナル抗体は、特定抗原に特異的である抗体分子の不均一集団であり、一方、モノクローナル抗体は、抗原内に含有される特定のエピトープに対する抗体の均一集団である。モノクローナル抗体は、本発明において特に有用である。
【0134】
当該標的(例えば、TPH1またはHT1B)に対する特異的結合親和性を有する抗体断片は、既知の技法により生成され得る。このような抗体断片としては、抗体分子のペプシン消化により産生され得るF(ab’)断片、ならびにF(ab’)断片のジスルフィド架橋を還元することにより生成され得るFab断片が挙げられるが、これらに限定されない。代替的には、Fab発現ライブラリーが構築され得る。例えば、Huse et al., 1989, Science 246: 1275-1281を参照されたい。一本鎖Fv抗体断片は、アミノ酸架橋(例えば、15〜18アミノ酸)を介してFv領域の重鎖及び軽鎖断片を連結して、一本鎖ポリペプチドを生じることにより形成される。目的とする標的を認識する一本鎖Fv断片は、米国特許第4,946,778号に開示されるような標準技法により産生され得る。
【0135】
一旦産生されると、抗体またはそれらの断片は、標準イムノアッセイ法、例えば酵素結合免疫吸着検定(ELISA)またはラジオイムノアッセイ(RIA)により、該目的とする標的の認識に関して試験され得る。Short Protocols in Molecular Biology, eds. Ausubel et al., Green Publishing Associates and John Wiley & Sons (1992)を参照されたい。
【0136】
投与するための抗体または抗体断片の量は、とりわけ、末梢セロトニンのレベルが正常レベルと比較して如何に高いかに依っている。当該技術分野で既知の、または新規に設計されたモノクローナル及びポリクローナル抗セロトニン抗体が、単一療法として、あるいはTPH1阻害薬及び/またはHT1Bアンタゴニストとの併用療法として、用いられ得るし、投与され得る。
【0137】
米国特許仮出願第60/976,403号(2007年9月28日出願)(この記載内容は参照により本明細書中で援用される)は、脳由来セロトニンが骨質量を増大し、交感神経緊張を減少させる、ということを開示する。低骨質量疾患を治療するかまたは予防するための本発明の別の実施形態は、β遮断薬のような交感神経緊張を減少させる薬剤を、TPH1阻害薬、セロトニン合成阻害薬、HT1B、HT2AまたはHT2Bアンタゴニスト及び/または抗セロトニン抗体と一緒に、単一処方物中で、または別々に、投与することにより、低骨質量を治療するかまたは予防するための方法に関する。交感神経緊張を減少させる任意の化合物の使用は、本発明の範囲内である。好ましくは該化合物は、β−2受容体アンタゴニストにあり、その多くは、当該技術分野で記載されている。用いられ得るβ遮断薬の中には、交感神経緊張を低減し、骨質量を増大するために、単独で、または本明細書中に記載される他の治療薬と組合せて用いられ得る3つのβ−2特異的遮断薬がある:IPS339、ICI18及びサンドスL1 32−468(Br. J. Ophthalmol. 1984 April; 68(4): 245-247)。ブタキサミンも、本発明に用いられ得るβ−2遮断薬である。非選択的β遮断薬としては、以下のものが挙げられる:メチプラノロール、ナドール(β−2アドレナリン作動性受容体を非選択的に遮断するβ特異的交感神経遮断薬);オキシプレノロール(水溶性β遮断薬より容易に血液−のう関門を通過する親油性β遮断薬)、ペンブトロール、ピンドロール(脳中のセロトニン5−HT1A受容体に作用して、シナプス後セロトニン濃度増大を生じるβ遮断薬)及びプロプラノロール(血液−のう関門を容易に通過することが知られている)、チモロール及びソタロール。該β遮断薬は、脳由来セロトニンを直接または間接的に増大する薬剤、例えばHT2C受容体アゴニスト、TPH2活性または発現を増大する薬剤、ならびにBDSの再取込みを特異的に低減する薬剤と一緒に投与され得る。
【0138】
本発明のある他の実施形態は、TPH1阻害薬;HT1B、HT2AまたはHT2Bアンタゴニスト;及び/または抗セロトニン抗体を、個別に、または組合せて含む製剤組成物に関する。TPH1阻害薬、HT1B、HT2AまたはHT2Bアンタゴニスト、あるいは抗セロトニン抗体のうちの1つより多くの種類が、低骨質量と関連した疾患を治療するために一緒に投与され得るし、ある実施形態は、これらの化合物を含む対応する製剤組成物を包含する。他の実施形態では、異なる種類の薬剤が、同一日にまたは長期間に亘って、1回以上、別々に投与され、時々、種々のそれぞれの薬剤の投与を変更する。
【0139】
いくつかの実施形態は、セロトニン再取込み阻害薬を摂取している患者が骨粗鬆症を発症しないようにするために、SSRIと、血清セロトニンのレベルを低減する薬剤(例えば、TPH1阻害薬またはHT1Bアンタゴニスト)の両方を含む、不安またはうつ病を治療するかまたは予防するための製剤組成物に関する。これらの調製物は、該SSRIに脳由来セロトニンを上昇させて、末梢セロトニン(骨粗鬆症のような低骨質量疾患を引き起こし得る)を増大することなく不安を治療する。
【0140】
脳由来セロトニン上昇は、視床下部中の標的ニューロンにHT2C受容体を介して作用することにより、骨質量を増大する。したがって、本発明のいくつかの実施形態は、末梢セロトニンを減少させ、脳由来セロトニンを増大する製剤を用いて併用薬剤療法を施すことを包含する。例えば、HT2Cアゴニストは、TPH1阻害薬またはHT1Bアンタゴニストと併用され得る。
【0141】
異常に高い骨質量に関連した疾患、例えば高骨質量症候群は、セロトニン、セロトニン再取り込み阻害薬、TPH1活性薬、TPH2阻害薬、セロトニン受容体アゴニストまたはそれらの組合せを投与して、血清セロトニンを増大し、これが次に骨質量を減少させることにより治療され得る。HT1Bアゴニストまたは他のセロトニン受容体アゴニストは、骨芽細胞上の受容体を活性化して、骨質量を減少させるために用いられ得る。TPH1阻害薬、HT1Bアゴニスト、HT2AアゴニストまたはHT2Bアゴニストは、セロトニンと一緒に投与され得る。したがって、本発明のある実施形態は、好ましくは経口的に、腹腔内にまたは静脈内に、単独で、あるいはTPH1阻害薬、HT1Bアゴニスト、HT2AアゴニストまたはHT2Bアゴニストと一緒に、セロトニンを投与して、骨質量を、好ましくは正常レベルに低減することにより、高骨質量疾患を治療するための方法に関する。
【0142】
ある実施形態では、本発明の方法は、骨疾患のための治療を必要とする患者を同定するステップを包含する。したがって、本発明は、
(a)骨疾患のための治療を必要とする患者を同定するステップ;及び
(b)血清セロトニンレベルを増大するかまたは減少させる薬剤の治療的有効量を該患者に投与するステップ
を包含する方法を提供する。
【0143】
ある実施形態では、本発明は、
(a)低骨質量疾患のための治療を必要とする患者を同定するステップ;及び
(b)血清セロトニンレベルを減少させる薬剤の治療的有効量を該患者に投与するステップ
を包含する方法を提供する。
【0144】
ある実施形態では、本発明は、
(a)高骨質量疾患のための治療を必要とする患者を同定するステップ;
(b)血清セロトニンレベルを増大する薬剤の治療的有効量を該患者に投与するステップ
を包含する方法を提供する。
【0145】
本発明は、骨疾患(例えば骨粗鬆症のような低骨質量疾患)を予防するかまたは治療するための薬剤の製造のためのTPH1阻害薬またはセロトニン受容体アンタゴニスト(例えば、HT1Bアンタゴニスト)の使用を包含する。本発明は、骨疾患(例えば骨粗鬆症のような低骨質量疾患)を予防するか、あるいは治療するためのTPH1阻害薬またはセロトニン受容体アンタゴニスト(例えばHT1Bアンタゴニスト)の使用を包含する。
【0146】
[製剤組成物]
本明細書中に記載されるTPH1阻害薬、セロトニン受容体アンタゴニスト、セロトニン受容体アゴニスト、SSRI及びβ遮断薬のような治療薬は、製剤組成物中に処方される。これらの治療薬は、製薬上許容可能な酸の塩の形態で、または塩基の形態で、該製剤組成物中に存在し得る。これらの治療薬は、非晶質形態で、または結晶形態で、例えば水和物及び溶媒和物で存在し得る。好ましくは、該製剤組成物は、治療的有効量のTPH1阻害薬またはセロトニン受容体アンタゴニストを含む。
【0147】
本明細書中に記載されるTPH1阻害薬、セロトニン受容体アンタゴニストまたはセロトニン受容体アゴニストのいずれかの製薬上許容可能な誘導体は、本発明の範囲内である。TPH1阻害薬、セロトニン受容体アンタゴニストまたはセロトニン受容体アゴニストの「製薬上許容可能な誘導体」は、レシピエントへの投与時に、血清セロトニン発現の低減または増大に関して、本明細書中に記載されるTPH1阻害薬、セロトニン受容体アンタゴニストまたはセロトニン受容体アゴニストと同一のまたは類似の生物学的活性を示す本明細書中に記載されるTPH1阻害薬、セロトニン受容体アンタゴニストまたはセロトニン受容体アゴニストの任意の非毒性誘導体を意味する。
【0148】
異常に高いかまたは異常に低い骨質量に関連した骨疾患の治療または予防に用いるための本明細書中に記載される治療薬の製薬上許容可能な塩としては、製薬上許容可能な無機及び有機の酸及び塩基由来の塩が挙げられる。適切な酸塩の例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、蟻酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、パルモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩及びウンデカン酸塩が挙げられる。他の酸、例えばシュウ酸は、それ自体は製薬上許容可能ではないが、本発明の化合物ならびにそれらの製薬上許容可能な酸付加塩を生成するに際しての中間体として有用な塩の調製に用いられ得る。
【0149】
適切な塩基由来の塩としては、アルカリ金属(例えば、ナトリウム及びカリウム)、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)、アンモニウム及びN(C1−4アルキル)塩が挙げられる。本発明は、本明細書中に開示される治療薬の任意の塩基性窒素含有基の第四級化も想定する。このような第四級化により、水溶性または油溶性あるいは分散性生成物が得られ得る。
【0150】
本発明の治療薬は、全ての立体化学形態の治療薬(すなわち、各不斉中心に関するR及びS立体配置)を含むことも意図する。したがって、該治療薬の単一エナンチオマー、ラセミ混合物及びジアステレオマーは、本発明の範囲内である。該治療薬の立体異性体及び位置異性体も、本発明の範囲内である。本発明の治療薬は、1つもしくは複数の同位体濃縮原子の存在下でのみ異なる化合物を含むことも意図する。例えば、水素の分子が重水素または三重水素に置き換えられる治療薬、あるいは13C−または14C−濃縮炭素による炭素分子の置換は、本発明の範囲内である。
【0151】
好ましい一実施形態では、本発明の治療薬は、製薬上許容可能な担体、アジュバントまたはビヒクルを含む製剤組成物中で投与される。「製薬上許容可能な担体、アジュバントまたはビヒクル」という用語は、それが処方される化合物の薬理学的活性を破壊しないかまたは有意に縮小しない非毒性の担体、アジュバントまたはビヒクルを指す。本発明の組成物中に用いられ得る製薬上許容可能な担体、アジュバントまたはビヒクルは、標準的な製薬上許容される液体担体、例えばリン酸塩緩衝生理食塩水、水、ならびに乳濁液、例えば油/水型乳濁液またはトリグリセリド乳濁液のいずれかを包含する。該化合物の静脈内及び腹腔内投与に有用な許容可能なトリグリセリド乳濁液の一例は、イントラリピッドRTM(登録商標)として商業的に知られているトリグリセリド乳濁液である。固体担体は、賦形剤、例えばデンプン、ミルク、糖、ある種の粘土、ステアリン酸、タルク、ゴム、グリコールまたはその他の既知の賦形剤を包含し得る。担体は、風味及び着色添加物またはその他の成分も包含し得る。
【0152】
本発明の実施に際して、本発明の製剤組成物は、好ましくは経口投与される。しかしながら、製剤組成物は、非経口的に、吸入スプレーにより、局所的に、直腸に、鼻に、頬に、膣にまたは埋め込みレザバーを介して、投与され得る。好ましくは、該製剤組成物は、経口的に、腹腔内に、または静脈内に投与される。該製剤組成物の滅菌注射用形態は、水性または油性懸濁液であり得る。これらの懸濁液は、適切な分散または湿潤剤及び懸濁剤を用いて、当該技術分野で既知の技法に従って処方され得る。該滅菌注射用調製物は、非毒性の非経口的に許容可能な希釈剤または溶媒中の滅菌注射用溶液または懸濁液、例えば1,3−ブタンジオール中の溶液でもあり得る。用いられ得る許容可能なビヒクル及び溶媒は、水、リンガー溶液及び等張塩化ナトリウム溶液である。さらに、滅菌不揮発性油は、溶媒または懸濁媒質として慣用的に用いられる。
【0153】
この目的のために、任意の無刺激性不揮発性油、例えば合成モノ−またはジ−グリセリドが用いられ得る。脂肪酸、例えばオレイン酸及びそのグリセリド誘導体は、特にそれらのポリオキシエチル化バージョンで、天然の製薬上許容可能な油、例えばオリーブ油またはヒマシ油であるので、注射用のものの調製に有用である。これらの油溶液または懸濁液は、長鎖アルコール希釈剤または分散剤、例えばカルボキシメチルセルロース、あるいは乳濁液及び懸濁液を含めた製薬上許容可能な剤形の処方に一般に用いられる類似の分散剤も含有し得る。その他の一般に用いられる界面活性剤、例えばTweens、Spanならびに、製薬上許容可能な固体、液体または他の剤形の製造に一般に用いられるその他の乳化剤または生物学的利用能強化剤も、処方の目的のために用いられ得る。
【0154】
本発明の製剤組成物は、任意の経口的に許容可能な剤形で、例えば固体形態、例えばカプセル及び錠剤(これらに限定されない)で、経口投与され得る。経口使用のための錠剤の場合、一般に用いられる担体としては、微晶質セルロース、ラクトース及びコーンスターチが挙げられる。滑剤、例えばステアリン酸マグネシウムも、典型的には付加される。水性懸濁液が経口使用のために必要とされる場合、該活性成分は、乳化剤及び懸濁剤と組合され得る。所望により、ある種の甘味剤、風味剤または着色剤も付加され得る。
【0155】
本発明の製剤組成物は、鼻エアロゾルまたは吸入によっても投与され得る。このような製剤組成物は、製剤処方物の技術分野で周知の技法に従って調製され得るし、ベンジルアルコールまたは他の適切な防腐剤、生物学的利用能を強化するための吸収促進剤、フルオロカーボン、及び/またはその他の慣用的な可溶化剤または分散剤を用いて、生理食塩水中の溶液として調製され得る。
【0156】
局所投与が所望される場合、それは、当業者に一般に既知である任意の方法を用いて成し遂げられ得て、クリーム、軟膏または経皮パッチ中への該製剤組成物の組み入れに限定されない。
【0157】
該製剤組成物が、HT1BアンタゴニストまたはTPH1阻害薬のような末梢的に作用する薬剤と、HT2Cアゴニストのような中枢的に作用する薬剤の両方を含有する場合、該組成物は、中枢神経系への中枢的作用性治療薬の送達を増大するよう処方され得る。治療的有用性を有する化合物が血液脳関門を用意に通過しない場合、それは、血液脳関門を通過する透過性を改善するために種々の側基を取り付ける当該技術分野で既知の医療化学における種々の方法を用いて改変され得る。
【0158】
セロトニン受容体アンタゴニスト(例えば、HT1B受容体アンタゴニスト)は、当該技術分野で既知の医療化学的方法を用いて、誘導体化されるか、そうでなければ、骨による取込みを増強するよう設計され得る。
【0159】
本発明のTPH1阻害薬及びHT1Bアンタゴニストは、1つもしくは複数の適切な基と可逆的連結を形成することにより誘導体化されて、「プロドラッグ」、すなわち、宿主による吸収後に、親化合物に転化される化学的誘導体を生じ得る。該親化合物の遊離は、化学的加水分解または酵素攻撃によるものであり得る。誘導体またはプロドラッグは、標的器官に対する透過性増強を有し得た。TPH1阻害薬の場合、該標的器官は十二指腸であり、ここで末梢セロトニンの95%が作られる。HT1Bアンタゴニストは、骨芽細胞標的に到達するよう骨の浸透増強を有するよう処方され得る。生きている器官への該プロドラッグまたはその誘導体の投与後、誘導体化を伴わない基礎化合物の投与と比較して、より多量の化合物が該標的器官に到達して、より高いレベルの有効な薬剤を生じる場合、該プロドラッグは、本発明による透過性増強を有する。
【0160】
単一剤形で製剤組成物を製造するために担体物質と組合され得る本発明の治療薬の量は、治療される宿主ならびに特定投与方式によって変わる。任意の特定患者のための特別の投与量及び治療レジメンは、種々の因子、例えば用いられる特定化合物の活性、年齢、体重、全身健康状態、性別、食餌、投与回数、排泄速度、薬剤組合せ及び治療医の判断、ならびに治療されている特定疾患の重症度に左右される、と理解されるべきである。それらの多様性にもかかわらず、適切な投与量または治療レジメンを選択するためにこれらの因子を明らかにすることは、ただの慣例的に過ぎない実験を要する。
【0161】
異常に高いかまたは異常に低い骨質量に関連した骨疾患を治療するために通常投与される付加的治療薬も、本発明の製剤組成物中に存在し得る。本明細書中で用いる場合、特定の疾患または症状を治療するために通常投与される付加的治療薬は、「治療されている疾患または症状に適している」として知られている。骨粗鬆症に適している薬剤の例としては、FOSAMAX(登録商標)、他のビスホスホネート、FORTEO(登録商標)(上皮小体ホルモン)及びβ遮断薬が挙げられる。それらの付加的薬剤は、多重投与レジメンの一部として、本発明の治療薬とは別個に投与され得る。代替的には、それらの薬剤は、単一製剤組成物中で本発明の治療薬と一緒に混合される単一剤形の一部であり得る。多重投与レジメンの一部として投与される場合、該2つの活性薬剤は、同時に、逐次的に、または互いに一定間隔を置いて、投与され得る。単一剤形を製造するために担体物質と併用され得る本発明の治療薬及び付加的治療薬両方の量(上記のような付加的治療薬を含む組成物中)は、治療される宿主及び特定投与方式、ならびに本発明の治療薬及び付加的治療薬の性質によって変わる。
【0162】
TPH1阻害薬及び本明細書中に記載される他の治療薬(例えば、HT1Bアンタゴニスト、HT2Cアゴニスト)は、タンパク質またはポリペプチド、ならびにその任意の生物学的に活性な断片、エピトープ、修飾、誘導体または変異体であり得る。タンパク質またはポリペプチドの生物学的に活性な断片は、完全なタンパク質またはポリペプチドの活性と類似の、しかし必ずしも同一ではない活性を示すタンパク質またはポリペプチドの断片である。該断片の生物学的活性は、改善された所望の活性、または低減された望ましくない活性を含み得る。変異体としては、(i)置換アミノ酸残基が遺伝暗号によりコードされるものであり得るし、そうでない場合もある1つもしくは複数のアミノ酸残基の置換、あるいは(ii)置換基を有する1つもしくは複数のアミノ酸残基による置換、あるいは(iii)ポリペプチドの安定性及び/または溶解性を増大するための化合物のような別の化合物(例えば、ポリエチレングリコール)との、あるいは胃を介して(経口投与される場合)または内皮細胞を介して(静脈内投与される場合)の運搬を促す他の分子との成熟ポリペプチドの融合、ならびに(iv)付加的アミノ酸、例えばIgG Fcペプチド、あるいはリーダーまたは分泌配列、または精製を促す配列とのポリペプチドの融合が挙げられる。このような変異体ポリペプチドは、それらが治療効能を保持する場合、本発明の範囲内であると思われる。
【0163】
「アミノ酸残基」は、ポリペプチドの一部であるアミノ酸を指す。本明細書中に記載されるアミノ酸残基は、好ましくは、L異性体形態である。しかしながら、D異性体形態中の残基は、所望の機能的特性がポリペプチドに保持される限り、任意のL−アミノ酸残基に置換され得る。NHは、ポリペプチドのアミノ末端に存在する。COOHは、ポリペプチドのカルボキシル末端に存在するカルボキシル基を指す。「アミノ酸残基」は、天然タンパク質中に一般に見出される20のアミノ酸、ならびに37C.F.R.セクション1.821〜1.822(この全記載内容は参照により本明細書中で援用される)で言及されているような修飾された且つ異常なアミノ酸を含むよう広範に定義される。ポリペプチドまたはタンパク質において、アミノ酸の適切な保存的置換は当業者に既知であり、一般的に、結果的に生じる分子の生物学的活性を変えることなく成され得る。概して、ポリペプチドの非必須領域中の単一アミノ酸置換は、生物学的活性を実質的に変えない、ということを当業者は認識する(例えば、Watson et al., Molecular Biology of the Gene, 4th Edition, 1987, The Benjamin/Cummings Pub. Co., p.224参照)。
【0164】
保存的置換の例は、疎水性アミノ酸Ala、Val、Leu及びIleの間での、あるアミノ酸の別のアミノ酸への取替え;ヒドロキシル残基Ser及びThr間の入れ替え;酸性残基Asp及びGluの交換;アミド残基Asn及びGln間の置換;塩基性残基Lys、His及びArgの交換;芳香族残基Phe、Trp及びTyr間の取替え;極性残基Gln及びAsnの交換;ならびに小残基Ala、Ser、Thr、Met及びGlyの交換である。
【0165】
N末端アミノ基のアシル化は、N末端に尿素部分を作製するために、親水性化合物、例えばヒドロオロト酸等を用いて、あるいは適切なイソシアネート、例えばメチルイソシアネートまたはイソプロピルイソシアネートとの反応により、成し遂げられ得る。本技術分野で知られているような変異体の作用の持続時間を増大する他の薬剤も、N末端連結され得る。
【0166】
還元的アミノ化は、アンモニアがアルデヒドまたはケトンと縮合されてイミンを形成し、これがその後、アミンに還元されるプロセスである。1つもしくは複数のアミノ基を保有する治療薬に関して、還元的アミノ化は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)との共役のための潜在的に有用な方法である。薬剤分子とのPEGの共有結合は、変更された生物学的利用能、薬物動態、免疫原性特性及び生物学的活性を有する水溶性共役体を生じる。1つもしくは複数のアミノ基を保有する薬剤に関して、還元的アミノ化は、PEGとの共役のための潜在的に有用な方法である(Bentley et al., J. Pharm. Sci. 1998 Nov; 87(11); 1446-1449)。
【0167】
周知のように、ポリペプチドは常に完全に線状であるわけではない。例えば、ポリペプチドはユビキチン化の結果として分枝され得るし、それらは、一般的に、天然プロセッシング事象、ならびに天然では起きないヒト操作によりもたらされる事象を含めた翻訳後事象の結果として、(分枝を伴う場合も伴わない場合もある)環状であり得る。本発明に用いるための環状、分枝、及び分枝環状ポリペプチドは、非翻訳的天然プロセスにより、及び合成方法により合成され得る。
【0168】
修飾は、ペプチド主鎖、アミノ酸側鎖及びアミノまたはカルボキシル末端を含めて、本発明に用いるためのタンパク質またはポリペプチド中のあらゆる場所で起こり得る。共有結合的修飾による、ポリペプチド中のアミノまたはカルボキシル基または両方の遮断は、天然及び合成ポリペプチドで共通である。例えば、ほとんど常に、タンパク質分解的プロセシング前に大腸菌で作られるポリペプチドのアミノ末端残基は、N−ホルミルメチオニンである。
【0169】
これらの修飾は、タンパク質が作られる方法の一機能である。例えば本発明で用いられる組換えポリペプチドに関して、これらの修飾は、宿主細胞翻訳後修飾能力ならびにポリペプチドアミノ酸配列中の修飾シグナルにより確定される。したがって、グリコシル化が所望される場合、ポリペプチドは、一般的に真核生物細胞であるグリコシル化宿主中で発現されるべきである。昆虫細胞は、しばしば、哺乳類細胞と同じに翻訳後グリコシル化を実行し、この理由のために、昆虫細胞発現系は、グリコシル化のネイティブパターンを有する哺乳類タンパク質を効率的に発現するよう開発されてきた。したがって、本発明における昆虫系の使用が意図される。同様の考えは、グリコシル化のほかに、他の修飾に当てはまる。同一型の修飾は、所定のポリペプチド中のいくつかの部位に、同一程度または種々の程度で存在し得る。さらにまた、所定のポリペプチドは、2つ以上の型の修飾を含有する。
【0170】
以下の表は、本発明に用いられ得るタンパク質及びポリペプチドの一般的修飾のいくつかを例示する。
【0171】
【表4】




【0172】
[本発明の治療薬の同定]
TPH1の阻害薬は、当該技術分野で既知の方法により同定され得る。特に、TPH1の阻害薬は、以下のステップを包含する方法により同定され得る:
(a)TPH1の供給源を提供するステップ;
(b)候補化合物の非存在下で、該TPH1の供給源をL−トリプトファンに曝露するステップ;
(c)該候補化合物の非存在下で、該TPH1の供給源により産生される5−ヒドロキシトリプトファンの量を測定するステップ;
(d)該候補化合物の存在下で、L−トリプトファンに該TPH1の供給源を曝露するステップ;
(e)該候補化合物の存在下で、該TPH1の供給源により産生される5−ヒドロキシトリプトファンの量を測定するステップ;
(f)ここで、該候補化合物の存在下で該TPH1の供給源により産生される5−ヒドロキシトリプトファンの量が、該候補化合物の非存在下で該TPH1の供給源により産生される5−ヒドロキシトリプトファンの量より少ない場合、該候補化合物はTPH1阻害薬である。
【0173】
ある実施形態では、上記の方法は、低骨質量疾患のための治療を必要とする患者にステップ(f)で同定されるTPH1阻害薬を投与するステップをさらに包含する。
【0174】
「〜より少ない」は、候補化合物のコレクションから治療薬を同定する本明細書中に記載される方法の目的に関しては、当該方法で観察される正常変異に属すると当業者により考えられない量を指す。好ましくは、「〜より少ない」は、該候補化合物の非存在下で観察される量より少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約50%、少なくとも約75%または少なくとも約95%少ない。
【0175】
ある実施形態では、該TPH1の供給源は、単離TPH1酵素、好ましくはヒトの単離TPH1酵素である。単離TPH1は、例えば共役in vitro転写/翻訳系で、TPH1のin vitro発現により産生され得る。代替的には、TPH1の供給源は、TPH1を発現する細胞からの一部または高度精製調製物であり得る。他の実施形態では、該TPH1の供給源は、TPH1を発現する全体細胞、好ましくはヒトのTPH1を発現する全体細胞である。いくつかの実施形態では、細胞が組換え体TPH1、好ましくはヒトの組換え体TPH1を発現するよう、全体細胞がTPH1を含む発現ベクターでトランスフェクトされている。
【0176】
ヒトTPH1のmRNA及びアミノ酸配列は、寄託番号X52836でGenBankにおいて見出され得る。そのゲノム配列は、AF057280で見出され得る。これらのヌクレオチド配列は、細胞中で、またはin vitroで、組換え的にTPH1を発現するために適した発現ベクターを構築するために当該技術分野で周知の方法で用いられ得る。
【0177】
TPH2の活性剤は、以下のステップを包含する方法により同定され得る:
(a)TPH2の供給源を提供するステップ;
(b)候補化合物の非存在下で、該TPH2の供給源をL−トリプトファンに曝露するステップ;
(c)該候補化合物の非存在下で、該TPH2の供給源により産生される5−ヒドロキシトリプトファンの量を測定するステップ;
(d)該候補化合物の存在下で、L−トリプトファンに該TPH2の供給源を曝露するステップ;
(e)該候補化合物の存在下で、該TPH2の供給源により産生される5−ヒドロキシトリプトファンの量を測定するステップ;
(f)ここで、該候補化合物の存在下で該TPH2の供給源により産生される5−ヒドロキシトリプトファンの量が、該候補化合物の非存在下で該TPH2の供給源により産生される5−ヒドロキシトリプトファンの量より多い場合、該候補化合物はTPH2活性剤である。
【0178】
「〜より多い」は、候補化合物のコレクションから治療薬を同定する本明細書中に記載される方法の目的に関しては、当該方法で観察される正常変異に属すると当業者により考えられない量を指す。好ましくは、「〜より多い」は、該候補化合物の非存在下で観察される量より少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約100%、少なくとも約250%または少なくとも約500%多い。
【0179】
ある実施形態では、上記の方法は、低骨質量疾患のための治療を必要とする患者にステップ(f)で同定されるTPH2活性剤を投与するステップをさらに包含する。
【0180】
ある実施形態では、TPH2の供給源は、単離TPH2酵素、好ましくはヒトの単離TPH2酵素である。単離TPH2は、例えば共役in vitro転写/翻訳系で、TPH1のin vitro発現により産生され得る。代替的には、TPH2の供給源は、TPH2を発現する細胞からの一部または高度精製調製物であり得る。他の実施形態では、該TPH2の供給源は、TPH2を発現する全体細胞、好ましくはヒトのTPH2を発現する全体細胞である。いくつかの実施形態では、細胞が組換え体TPH2、好ましくはヒトの組換え体TPH2を発現するよう、全体細胞がTPH2を含む発現ベクターでトランスフェクトされている。
【0181】
ヒトTPH2のmRNA及びアミノ酸配列は、寄託番号AY098914でGenBankにおいて見出され得る。そのゲノム配列は、AC090109で見出され得る。これらのヌクレオチド配列は、細胞中で、またはin vitroで、組換え的にTPH2を発現するために適した発現ベクターを構築するために当該技術分野で周知の方法で用いられ得る。
【0182】
セロトニン受容体のアンタゴニストは、以下のステップを包含する方法により同定され得る:
(a)該セロトニン受容体を発現する細胞を提供するステップ;
(b)候補化合物の非存在下で、該セロトニン受容体を発現する細胞をセロトニンまたはセロトニン類似体に曝露するステップ;
(c)該候補化合物の非存在下で、該セロトニン受容体の活性化を測定するステップ;
(d)候補化合物の存在下で、セロトニンまたはセロトニン類似体にセロトニン受容体を発現する細胞を曝露するステップ;
(e)該候補化合物の存在下で、該セロトニン受容体の活性化を測定するステップ;
(f)ここで、該候補化合物の存在下でセロトニン受容体の活性化の量が、該候補化合物の非存在下でセロトニン受容体の活性化の量より少ない場合、該候補化合物はセロトニン受容体アンタゴニストである。
【0183】
セロトニン受容体のアンタゴニストは、以下のステップを包含する方法によっても同定され得る:
(a)該セロトニン受容体を発現する細胞を提供するステップ;
(b)候補化合物の非存在下で、該セロトニン受容体を発現する細胞をセロトニンまたはセロトニン類似体に曝露するステップ;
(c)該候補化合物の非存在下で、該セロトニンまたは該セロトニン類似体と該セロトニン受容体との結合を測定するステップ;
(d)候補化合物の存在下で、セロトニンまたはセロトニン類似体に該セロトニン受容体を発現する細胞を曝露するステップ;
(e)該候補化合物の存在下で、該セロトニンまたは該セロトニン類似体とセロトニン受容体との結合を測定するステップ;
(f)ここで、該候補化合物の存在下での該セロトニンまたは該セロトニン類似体と該セロトニン受容体との結合が、該候補化合物の非存在下での該セロトニンまたは該セロトニン類似体と該セロトニン受容体との結合より少ない場合、該候補化合物はセロトニン受容体アンタゴニストである。
【0184】
「セロトニン類似体」とは、セロトニンと同様の結合特性を有してセロトニン受容体と結合し、及び/またはセロトニンと同様の方法でセロトニン受容体を活性化する物質を意味する。
【0185】
ある実施形態では、本発明は、血清セロトニンレベルを下げることを必要とすることが既知であるかまたは推測される患者における血清セロトニンレベルの低下方法であって、以下のステップを包含する方法:
(a)複数の候補化合物を提供するステップ;
(b)該複数の候補化合物のうちの1つがTPH1の阻害薬であることを確定するステップ;
(c)ステップ(b)においてTPH1阻害薬であることが確定される候補化合物の治療的有効量を、血清セロトニンレベルを下げる必要があることが既知であるかまたは推測される該患者に投与するステップ。
【0186】
ある実施形態では、本発明は、血清セロトニンレベルを下げることを必要とすることが既知であるかまたは推測される患者における血清セロトニンレベルの低下方法であって、以下のステップを包含する方法:
(a)複数の候補化合物を提供するステップ;
(b)該複数の候補化合物のうちの1つがセロトニン受容体アンタゴニストであることを確定するステップ;
(c)ステップ(b)においてセロトニン受容体アンタゴニストであることが確定される候補化合物の治療的有効量を、血清セロトニンレベルを下げる必要があることが既知であるかまたは推測される該患者に投与するステップ。
【0187】
本発明の明細書において、その特定の実施形態に関して本発明を記載してきた。しかしながら、本発明の広範な精神及び範囲を逸脱しない限り、種々の修正及び変更が成され得るということは明らかである。したがって、明細書及び図面は、本発明を限定するというよりむしろ例証するものであるとみなされるべきである。
【実施例1】
【0188】
[マウスにおける末梢セロトニン産生に及ぼすカテコール−3,6−ビスメチレンイミノ二酢酸(CBMIDA)の作用の査定]
[動物]
体重15〜16gの1月齢C57Bl/6近交系雄マウスを実験に用いた。温度(22℃)及び湿度(60%)を制御した室内に、12時間明/12時間暗条件下で動物を収容した。マウスは、餌と水を自由に摂らせて、最低4日間、収容条件に馴化させた後、使用した。実験はすべて、実験室マウスについての動物使用及び管理のためのコロンビア大学ガイドライン(Columbia University Guidelines for the Animal Use and Care of laboratory mice)に従って実行した。
【0189】
[実験プロトコール]
実験に先立って、実験の1日前に動物を個別のケージに分離した。17時及び11時の1日2回、マウスの体重によって算定された化合物をマウスに経口摂取(胃管栄養)させた。セロトニンを合成し、脳中に存在するTPH2に対して、腸中に存在するトリプトファンヒドロキシラーゼ−1(TPH1)の方をより良好に抑制する化合物の静脈内または腹腔内注入に優先して、経口摂食を選択した。この経路は、化合物が脳に到達するのに2つの潜在的関門を作製した。第一に、(CBMIDAがそうであるように)EDTAベースの化合物に対する不十分な透過性を有し、それゆえ、経口投与された量の全てが循環中で吸収されるわけではない(5〜10%のみが血液に運搬される)腸血液関門。第二の関門は、EDTA化合物を含めた多数の化合物に対する不十分な透過性を示す血液脳関門である。対照動物は、同一体積のビヒクルを摂取した。血液をイソフルオラン麻酔動物で心臓穿刺により採取して、氷上で5分間凝固させた。血清を分離し、液体窒素中で急冷して、分析するまで−80℃で凍結した。全動物からの脳幹を採取し、HPLCによる脳セロトニン測定のために加工処理した。検査経過中の身体的または行動的異常に関して、マウスを観察した。
【0190】
[血清中のセロトニン測定]
フィッツジェラルド社から入手したセロトニンELISAキットを用いて、血清からの誘導体化セロトニンを測定した。誘導体化は、試料調製の一部である。該血清中に存在するセロトニンを、先ず、アシル化試薬を用いて、N−アシルセロトニンに定量的にアシル化した。該検定の原理は、プレートの固相と結合されるセロトニン及びN−アシルセロトニンが固定数の抗血清結合部位に関して競合する競合的ELISAを基礎にしている。該反応が平衡している場合、遊離抗原及び遊離抗原−抗血清複合体が洗浄により除去される。
【0191】
該固相セロトニンと結合された抗体は、次いで、抗ウサギ/ペルオキシダーゼを用いて検出する。基質TMB/ペルオキシダーゼ反応を、450nmで読み取る。該固相セロトニンと結合された抗体の量は、該試料中のセロトニン濃度と反比例する。
【0192】
[試験に用いられる薬剤]
コロンビア大学化学部門で合成されたカテコール−3,6−ビスメチレンイミノ二酢酸(CBMIDA)(基本構造はEDTA様化合物であり、カテコール環が中心に存在する)、ならびにSigma Aldrich Corp.から入手したパラ−クロロフェニルアラニン(pCPA)を用いた。各化合物を水中のNaHCOの2倍モル溶液で溶解し、250及び500mg/kg/用量でマウスに経口投与した。
【0193】
[結果]
図11で分かるように、CBMIDAの経口投与は、1日2回、500mg/kgの用量で、セロトニン血清レベルを正常より80%低いレベルに減少させた。250mg/kgにこの用量を下げると、効果を生じたが、しかしその程度は低かった。実際、2つの用量を対照動物と比較すると、用量反応曲線を生じる。一方、対照として用いられるトリプトファンヒドロキシラーゼのよく知られた阻害薬であるpCPAは、血清セロトニンレベルを、予測どおり、正常範囲の60%超低いレベルに減少させた。
【実施例2】
【0194】
[カテコールTPH1阻害薬の合成]
2,2’,2’’,2’’’、−(2,3−ジヒドロキシ−1,4-フェニレン)ビス(メチレン)ビス(アザントリイル)四酢酸の合成
【化37】

カテコール(5.5g、0.05mol)及びイミノ二酢酸(11.3g、0.1mol)を、酢酸(20ml)及び水(40ml)の混合物中に懸濁した。ホルムアルデヒド(37%、10ml)を徐々に付加した。該反応物を、60℃で1時間撹拌した。該溶液を冷却し、白色沈殿物を濾過し、水及びエタノールで洗浄して、乾燥した。15.0gの生成物を得た(収率75%)。
【0195】
2,2’−(2,3−ジヒドロキシ−1,4-フェニレン)ビス(メチレン)ビス(2−アミノ−2−オキソエチル)アザンジイル)二酢酸の合成
【化38】

2,2’,2’’,2’’’、−(2,3−ジヒドロキシ−1,4-フェニレン)ビス(メチレン)ビス(アザントリイル)四酢酸(5g、12.5mmol)を、無水アセチル(10ml)に付加し、その後、ピリジン(3ml)を付加した。該反応物を70℃で5時間加熱した。過剰量の無水物及びピリジンを減圧下で除去し、残渣を無水アセチル中で再結晶化した。2.8gの3,6−ビス((2,6−ジオキソモルホリノ)メチル)−1,2−フェニレンジアセテートを、白色固体として得た(収率:51%)。
【0196】
3,6−ビス((2,6−ジオキソモルホリノ)メチル)−1,2−フェニレンジアセテート(2.24g、10mmol)を、メタノール中のアンモニアの溶液(7N、20ml)に付加した。該反応物を室温で1時間撹拌した。メタノールを除去後、残渣をメタノール及びアセトン中で再結晶化した。3.5gの生成物を、白色固体として得た(収率:88%)。
【0197】
2,2’−((11,12−ジヒドロキシ−6−メチル−4,5,6,8−テトラヒドロピリド[3,2,1−de]フェナントリジン−10−イル)メチルアザンジイル)二酢酸の合成
【化39】

カテコール(5.5g、0.05mol)及びイミノ二酢酸(11.3g、0.1mol)を、酢酸(20ml)及び水(40ml)の混合物中に懸濁した。ホルムアルデヒド(37%、10ml)を徐々に付加した。該反応物を、60℃で1時間撹拌した。該溶液を冷却し、白色沈殿物を濾過し、水及びエタノールで洗浄して、乾燥した。15.0gの生成物を得た(収率75%)。
【0198】
6−メチル−4,5,6,8−テトラヒドロピリド[3,2,1−de]フェナントリジン−11,12−ジオール(1.33g、5mmol)及びイミノ二酢酸(1.13g、10mmol)を、酢酸(2ml)及び水(4ml)の混合物中に懸濁した。ホルムアルデヒド(37%、1ml)を徐々に付加した。該反応物を、60℃で3時間撹拌した。該溶媒を減圧下で除去し、残渣をメタノール及び水中で再結晶化した。1.8gの生成物を白色固体として得た(収率87%)。
【実施例3】
【0199】
[血清セロトニンの測定]
血清セロトニンレベルを測定するための2つの可能な方法を、以下に示す:
(1)第一段階は、ポリプロピレン試験管及びピペットを用いて室温で実施する。静脈穿刺により自由流を確立しながら、19ゲージ薄壁バタフライ針で肘窩静脈から血液を採取して、EDTA含有真空試験管中に入れた。これらの試験管を、800rpm(100×g)で室温で15分間、遠心分離(Sorvall GLC−2B)した。界面層から約0.3cmの富血小板血漿(PRP)の上部層(バフィーコート)をプラスチックピペットで取り出し、新しいポリプロピレン試験管に移した。該貧血小板血漿(PPP)を含有する試験管を10分間氷冷した後、Sorvall SS−34ローター中で、4℃で6分間、11,000rpm(14,500×g)で遠心分離して、血小板ペレット及び貧血小板血漿(PPP)を得た。PPPを含有する上清を取り出し、エッペンドルフ管中に500μlの体積で新しいポリプロピレン試験管中に入れた。該富血小板ペレットを、1ml生理食塩水中に再懸濁した。塊のない均質な懸濁液を維持するために、エッペンドルフ管に移す前に、時として、混合するかまたは渦巻き撹拌することを要した。該アリコート化血漿上清(PPP)及び該再懸濁ペレット(PRP)を、−20℃に保持した。セロトニン検定のために、該試料を生理食塩水中に再懸濁した。最も興味深いセロトニンの「体液性」素子は、PPP中で循環レベルであるが、しかしPRP分画も測定され得る。その方法は、Fitzgerald Industries International (Concord, MA)から入手したELISAである。それは、血清または血漿試料あるいは尿試料からの誘導体化セロトニンを測定する。誘導体化は、該試料調製の一部である。該生物学的流体(例えば、血清)中に存在するセロトニンを、先ず、アシル化試薬を用いて、N−アシルセロトニンに定量的にアシル化した。当該検定は、プレートの固相と結合されるセロトニン及びN−アシルセロトニンが固定数の抗血清結合部位に関して競合する競合的ELISA原理を基礎にしている。該反応が平衡している場合、遊離抗原及び遊離抗原−抗血清複合体を洗浄により除去する。該固相セロトニンと結合された抗体は、次いで、抗ウサギ/ペルオキシダーゼにより検出する。基質TMB/ペルオキシダーゼ反応を、450nmで読み取る。該固相セロトニンと結合された抗体の量は、該試料中のセロトニン濃度と反比例する。当該ELISA検定は有用であるが、しかしより精確な検定、すなわち、電気化学的検出と連結されたHPLCを適用する機会を有する。
(2)別の方法は、電気化学的検出と連結されたHPLCに頼る。上記の方法により得られた試料を、1N HClO(1:1)で沈殿させて、希釈し、32.5μlの0.02M酢酸を含有するHPLCバイアル中に分注する。カラムにGilson223XL自動注入器により、該分画を注入する。20μlの微量透析試料を100×2mm C18Hypersil 3μmカラムに注入し、4.1g/lの酢酸ナトリウム、500mg/lのNa2−EDTA、50mg/lのヘプタンスルホン酸、4.5%メタノールv/v、及び30μl/lのトリエチルアミン、pH4.75からなる移動相で、0.4ml/分の流量で、島津LC‐10ADポンプを用いて分離する。500mV対Ag/AgClで、ガラス状炭素電極で、電流滴定的にセロトニンを検出する。検出限界(0.5fmolセロトニン/20μl試料または10pM)は、十分に、セロトニンの循環濃度内である。PPP中で測定されるセロトニンは血漿タンパク質により任意の容易に感知可能な程度に結合されるわけではないため、これらの測定値は、遊離セロトニンレベルと等価であるとみなされ得る。
【実施例4】
【0200】
[付加的TPH1阻害薬に関する合成スキーム]
以下の構造を有するTPH1阻害薬:
【化40】

を、以下の方法により合成し得る。
n=1に関しては
【化41】

n=2に関しては
【化42】

n=3に関しては
【化43】

【0201】
以下の構造を有するTPH1阻害薬:
【化44】

を、以下の方法により合成し得る。
n=1に関しては
【化45】

n=2に関しては
【化46】

n=3に関しては
【化47】

【実施例5】
【0202】
[突然変異体動物の生成及び動物処置]
Lrp5−/−(Kato et al., 2002, J. Cell Biol. 157: 303-314)、β−カテニンフロックス化/フロックス化(Glass et al., 2005, Dev. Cell 8: 751-764)、α1(I)コラーゲン−creトランスジェニック(Dacquin et al., 2002, Dev. Dyn. 224: 245-251)及びHtt−/−(Ansorge et al., 2008, J. Neurosci. 28: 199-207)マウスの生成は、以前に記載されたとおりであった。Lrp5−/−;Htt+/−二重ヘテロ接合型マウスは、Lrp5−/−及びHtt+/−マウスを交配することにより生成した。3週齢WtまたはLrp5−/−マウスに、9週間、1日置きにpCPAを腹腔内投与した。動物プロトコールはすべて、コロンビア大学の動物管理委員会(Animal Care Committees of Columbia University)により承認された。
【実施例6】
【0203】
[形態計測学的測定]
骨形態計測分析系(Osteometrics, Inc)を用いて、標準命名法に従って以前に記載されたように、静的組織形態計測学的測定を実施した(Ducy et al., 2000, Cell 100: 197-207)。群当たり4〜9匹の動物を割り当てた。
【実施例7】
【0204】
[細胞培養]
以前に記載されたように、頭蓋冠骨芽細胞を、4日齢CD1仔からの三重コラゲナーゼ/トリプシン消化により抽出し、アスコルビン酸で分化させた(Ducy et al., 2000, Cell 100: 197-207)。
【実施例8】
【0205】
[遺伝子発現試験]
骨芽細胞を、ビヒクルまたはセロトニン(50〜100μM、Sigma)を有する無血清培地中で24時間処置した。総RNAをトリゾール(Invitrogen)で抽出した。ABI逆転写酵素系及び無作為ヘキサヌクレオチドプライマーを用いて、cDNAを生成した。実時間PCRを、Stratagene実時間PCRサイクラーで、スーパーアレイ・プライマーを用いて実施し、アクチン発現を内因性対照として用いた。一次骨芽細胞を用いて、標準的方法により、クロマチン免疫沈降検定(ChIP)を実施した。以前に記載されたように、マイクロアレイ分析を実施した(Glass et al., 2005, Dev. Cell 8: 751-764)。
【実施例9】
【0206】
[生化学的試験]
ビヒクルまたはセロトニン(50〜100μM、Sigma)を有する無血清培地中で、24時間、骨芽細胞を処置した。一次骨芽細胞または粉砕凍結骨からの溶解物を、プロテアーゼ及びホスファターゼ阻害薬の存在下で、RIPA緩衝液中で調製した。20〜60μgのタンパク質を、還元条件下でSDS−PAGEにより分離し、標準プロトコールを用いてニトロセルロース膜上に移した。膜を、総または抗ホスホCREB(Cell Signaling Technology)を含めた一次抗体とともにインキュベートした。
【実施例10】
【0207】
[ホルモン測定]
フィッツジェラルド社からの免疫検定キット(Serotonin)を用いてセロトニン血清レベルを定量し、脳の異なる領域におけるセロトニンレベルを、以前に記載されたHPLC方法により定量した(Mann et al., 1992, Arch. Gen. Psychiatry 49: 442-446)。
【実施例11】
【0208】
[CBMIDA及びその他の化合物の経口投与時のセロトニンレベルの変化]
ビヒクルと比較した場合のセロトニン血清レベルを、以下の化合物の4週齢マウスへの経口投与後に測定した:
【化48】

給餌プロトコールを、図13に示す。結果を、図14に示す。実験の詳細は、下記の実施例12と同様であった。
【実施例12】
【0209】
[卵巣切除誘導性骨損失からの防護におけるトリプトファンヒドロキシラーゼの新規の阻害薬の作用の査定]
[動物]
体重12〜14gの6週齢C57Bl/6近交系雌マウスを実験に用いた。温度(22℃)及び湿度(60%)を制御した室内に、12時間明/12時間暗条件下で動物を収容した。マウスは、餌と水を自由に摂らせて、最低4日間、収容条件に馴化させた後、使用した。実験はすべて、実験室マウスについての動物使用及び管理のためのコロンビア大学ガイドライン(Columbia University Guidelines for the Animal Use and Care of laboratory mice)に従って実行した。
【0210】
[実験プロトコール]
実験に先立って、実験の1日前に動物を異なる群に分離した。マウスを、麻酔(アベルチン)下で卵巣切除した。パイロット試験のために、17時及び11時の1日2回、化合物をマウスに経口摂取(胃管栄養)させ、一方、長期試験のためには、1日1回、17時に化合物を投与した。腸中に存在するトリプトファンヒドロキシラーゼ−1(TPH1)のより良好な抑制のため、ならびに脳中のTPH2機能に影響を及ぼすのを回避するために、化合物の静脈内または腹腔内注入に優先して、経口摂食を選択した。この経路は、化合物が脳に到達するのに2つの潜在的関門を作製した。第一に、(化合物1がそうであるように)EDTAベースの化合物に対する不十分な透過性を有し、それゆえ、経口投与された量の全てが全身循環中で吸収されるわけではない(5〜10%のみが血液に運搬される)腸血液関門;第二に、血液脳関門それ自体は、EDTA化合物を含めた多数の化合物に対する不十分な透過性を示す。対照動物は、同一体積のビヒクルを摂取した。血液をイソフルオラン麻酔動物で心臓穿刺により採取して、氷上で5分間凝固させ、次いで、血清を分離し、液体窒素中で急冷して、分析するまで−80℃で凍結した。検査経過中の任意の身体的または行動的異常に関して、マウスを毎日観察した。
【0211】
実験I:試験されるべき化合物の効能を確定するためのパイロット試験
群1:ビヒクル
群2:化合物1
群3:化合物2
群4:化合物3
群5:化合物4(LP−533401)
【0212】
実験II:OVX誘導性骨損失からの予防に及ぼす化合物1及び4の作用
プロトコール1:OVX後1日目に6週間の化合物の胃管栄養を開始する
群1:擬似処置
群2:OVX
群3:OVX+化合物1(250mg/kg)
群4:OVX+化合物1(500mg/kg)
群5:OVX+化合物4(250mg/kg)
プロトコール2:OVX後2週目に6週間の化合物の胃管栄養を開始する
群1:擬似処置
群2:OVX
群3:OVX+化合物1(250mg/kg)
群4:OVX+化合物1(500mg/kg)
群5:OVX+化合物4(250mg/kg)
プロトコール3:OVX後4週目に6週間の化合物の胃管栄養を開始する
群1:擬似処置
群2:OVX
群3:OVX+化合物1(250mg/kg)
群4:OVX+化合物1(500mg/kg)
群5:OVX+化合物4(250mg/kg)
【0213】
[血清中のセロトニン測定]
フィッツジェラルド社から入手したセロトニンELISAキットを用いて、血清からの誘導体化セロトニンを測定した。誘導体化は、試料調製の一部である。血清中に存在するセロトニンを、先ず、アシル化試薬を用いて、N−アシルセロトニンに定量的にアシル化した。該検定の原理は、プレートの固相と結合されるセロトニン及びN−アシルセロトニンが固定数の抗血清結合部位に関して競合する競合的ELISAを基礎にしている。該反応が平衡している場合、遊離抗原及び遊離抗原−抗血清複合体を洗浄により除去する。該固相セロトニンと結合された抗体は、次いで、抗ウサギ/ペルオキシダーゼにより検出する。基質TMB/ペルオキシダーゼ反応を、450nmで読み取る。該固相セロトニンと結合された抗体の量は、試料中のセロトニン濃度と反比例する。
【0214】
[試験に用いられる薬剤]
コロンビア大学化学部門で合成されたカテコール−3,6−ビスメチレンイミノ二酢酸(CBMIDA)化合物1:(基本構造はEDTA様化合物であり、カテコール環が中心に存在する)、ならびにSigma Aldrich Corp.から入手したパラ−クロロフェニルアラニン(pCPA)を実験に用いた。化合物を水中のNaHCOの2倍モル溶液で溶解し、250及び500mg/kg/用量でマウスに経口投与した。化合物2及び3を水中に溶解した。
【0215】
[結果]
マウスにおける末梢セロトニン産生に及ぼす化合物の作用に関して、上記の4つの化合物の作用を試験した。図15で分かるように、化合物1(CBMIDA)の経口投与は、1日2回、500mg/kgの用量で、セロトニン血清レベルを正常より80%低いレベルに減少させた。250mg/kgにこの用量を下げると、効果を生じたが、しかしその程度は低かったが、一方、化合物2は最小効果を有した。化合物3はセロトニンレベルを劇的に減少させたが、しかし動物は極度の嗜眠状態で病気のように見えたので、それは動物に有毒であった。
【0216】
セロトニンレベルに及ぼす異なる用量の化合物1の作用も、試験した。図15で分かるように、化合物1は、対照動物と比較した場合、用量反応曲線を生じた。一方、対照として用いられるトリプトファンヒドロキシラーゼのよく知られた阻害薬であるpCPAは、セロトニンレベルを、予測どおり、正常範囲の60%低いレベルに減少させた。
【0217】
(参考文献)








【特許請求の範囲】
【請求項1】
血清セロトニンレベルを下げる必要があることが知られているかまたは推測される患者における血清セロトニンレベルの低下方法であって、血清セロトニンのレベルを下げる薬剤の治療的有効量を、血清セロトニンレベルを下げる必要があることが知られているかまたは推測される前記患者に投与することを包含する方法。
【請求項2】
このような治療または予防を必要とすることが知られているかまたは推測される患者における低骨質量疾患の治療または予防方法であって、血清セロトニンのレベルを下げる薬剤の治療的有効量をこのような治療または予防を必要とすることが知られているかまたは推測される前記患者に投与することを包含する方法。
【請求項3】
前記薬剤がTPH1阻害薬である請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記患者がTPH1阻害薬及びセロトニン受容体アンタゴニストを投与される請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
前記TPH1阻害薬及びセロトニン受容体アンタゴニストが単一製剤組成物で投与される請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記薬剤が、血液脳関門を通過しないTPH1阻害薬である請求項3記載の方法。
【請求項7】
前記薬剤が、TPH2を有意に抑制しないTPH1阻害薬である請求項3記載の方法。
【請求項8】
血清セロトニンのレベルを下げる薬剤のほかに、SSRI、ビスホスホネートまたはβ遮断薬を投与することを包含する請求項1または2記載の方法。
【請求項9】
前記患者の血清セロトニンレベルが、前記血清セロトニンレベルを下げる前記薬剤の投与前に測定される請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記患者の血清セロトニンレベルが、前記血清セロトニンレベルを下げる前記薬剤の投与の前及び後に測定される請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記患者が、血清セロトニンの正常レベルより25%以上高い血清セロトニンレベルを有すると確認されている請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記患者が、前記血清セロトニンレベルを下げる前記薬剤のほかに、脳由来セロトニンを増大する薬剤を投与される請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
脳由来セロトニンを増大する前記薬剤がTPH2活性を増大する薬剤である請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記血清セロトニンレベルを下げる前記薬剤が約1mg/日〜約2g/日の量で投与される請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記低骨質量疾患が、骨粗鬆症、骨粗鬆症偽性神経膠腫症候群(OPPG)、骨減少症、骨軟化症、腎性骨異栄養症、骨形成不良、骨吸収不良、パジェット病、骨折、骨破損、または骨転移である請求項2〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記低骨質量疾患が骨粗鬆症である請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記薬剤が、以下の:
【化1】

及びその製薬上許容可能な塩であって、式中、Aは任意置換シクロアルキル、アリールまたは複素環であり;Xは単結合(すなわちAはDに直接結合される)、−O−、−S−、−C(O)−、−C(R)=、=C(R)−、−C(R)−、−C(R)=C(R)−、−C≡C−、−N(R)−、−N(R)C(O)N(R)−、−C(R)N(R)−、−N(R)C(R)−、−ONC(R)−、−C(R)NO−、−C(R)O−、−OC(R)−、−S(O)−、−S(O)N(R)−、−N(R)S(O)−、−C(R)S(O)−または−S(O)C(R)−であり;Dは任意置換アリールまたは複素環であり;Rは水素あるいは任意置換アルキル、アルキル−アリール、アルキル−複素環、アリールまたは複素環であり;Rは水素あるいは任意置換アルキル、アルキル−アリール、アルキル−複素環、アリールまたは複素環であり;Rは水素、アルコキシ、アミノ、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシルまたは任意置換アルキルであり;Rは水素、アルコキシ、アミノ、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシルあるいは任意置換アルキルまたはアリールであり;Rは、各々独立して、水素あるいは任意置換アルキルまたはアリールであり;そしてnは0〜3であるか;もしくは
【化2】

及びその製薬上許容可能な塩であって、式中、Aは任意置換シクロアルキル、アリールまたは複素環であり;Xは単結合(すなわちAはDに直接結合される)、−O−、−S−、−C(O)−、−C(R)=、=C(R)−、−C(R)−、−C(R)=C(R)−、−C≡C−、−N(R)−、−N(R)C(O)N(R)−、−C(R)N(R)−、−N(R)C(R)−、−ONC(R)−、−C(R)NO−、−C(R)O−、−OC(R)−、−S(O)−、−S(O)N(R)−、−N(R)S(O)−、−C(R)S(O)−または−S(O)C(R)−であり;Dは任意置換アリールまたは複素環であり;Eは任意置換アリールまたは複素環であり;Rは水素あるいは任意置換アルキル、アルキル−アリール、アルキル−複素環、アリールまたは複素環であり;Rは水素あるいは任意置換アルキル、アルキル−アリール、アルキル−複素環、アリールまたは複素環であり;Rは水素、アルコキシ、アミノ、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシルまたは任意置換アルキルであり;Rは水素、アルコキシ、アミノ、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシルあるいは任意置換アルキルまたはアリールであり;Rは、各々独立して、水素あるいは任意置換アルキルまたはアリールであり;そしてnは0〜3である請求項1または2記載の方法。
【請求項18】
前記薬剤が、以下の:
【化3】

及びその製薬上許容可能な塩、あるいは
【化4】

及びその製薬上許容可能な塩である請求項1または2記載の方法。
【請求項19】
前記薬剤が、以下の:
(a)
【化5】

[式中、
Rは、水素または低級アルキルであり;
nは、1、2、または3である]
または製薬上許容可能な酸とのその塩;
(b)
【化6】

[式中、
Rは、水素または低級アルキルであり;
nは、1、2、または3である]
または製薬上許容可能な酸とのその塩;
(c)
【化7】

[式中、
Rは、水素または低級アルキルであり;
、R、及びRは、独立して、
水素;
ハロゲン;
低級アルキル;
アルコキシ;または
アミノであり;
nは、1、2または3である]
または製薬上許容可能な酸とのその塩;
(d)
【化8】

[式中、
Rは、水素または低級アルキルであり;
、R、及びRは、独立して、
水素;
ハロゲン;
低級アルキル;
アルコキシ;または
アミノであり;
nは、1、2または3である]
または製薬上許容可能な酸とのその塩;
(e)
【化9】

[式中、Rは、水素、低級アルキル、またはシクロアルキルである]
または製薬上許容可能な酸とのその塩;
(f)
【化10】

[式中、Rは、水素、低級アルキル、またはシクロアルキルである]
または製薬上許容可能な酸とのその塩;
(g)
【化11】

[式中、R及びRは、独立して、水素、低級アルキル、またはシクロアルキルである]
または製薬上許容可能な酸とのその塩;
(h)
【化12】

[式中、Rは、水素、低級アルキル、またはシクロアルキルである]
または製薬上許容可能な酸とのその塩;
(i)
【化13】

[式中、R及びRは、独立して、水素、低級アルキル、シクロアルキル、F、Cl、またはOHである]
または製薬上許容可能な酸とのその塩;
(j)
【化14】

[式中、R及びRは、独立して、水素、低級アルキル、またはシクロアルキルである]
または製薬上許容可能な酸とのその塩;
(k)
【化15】

または製薬上許容可能な酸とのその塩;ならびに
(l)
【化16】

または製薬上許容可能な酸とのその塩
からなる群から選択される、請求項1または2記載の方法。
【請求項20】
このような治療または予防を必要とすることが知られているかまたは推測される患者における低骨質量疾患の治療または予防方法であって、治療的有効量のセロトニン受容体アンタゴニストをこのような治療または予防を必要とすることが知られているかまたは推測される患者に投与することを包含する方法。
【請求項21】
前記セロトニン受容体アンタゴニストが、HT1B、HT2A、またはHT2Bセロトニン受容体アンタゴニストである、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記セロトニン受容体アンタゴニストが、HT1Bセロトニン受容体アンタゴニストである、請求項21記載の方法。
【請求項23】
以下の構造:
【化17】

[式中、
Rは、水素または低級アルキルであり;
nは、1、2、または3である]
を有する化合物、または製薬上許容可能な酸とのその塩。
【請求項24】
以下の構造:
【化18】

[式中、
Rは、水素または低級アルキルであり;
nは、1、2、または3である]
を有する化合物、または製薬上許容可能な酸とのその塩。
【請求項25】
以下の構造:
【化19】

[式中、
Rは、水素または低級アルキルであり;
、R、及びRは、独立して、
水素;
ハロゲン;
低級アルキル;
アルコキシ;または
アミノであり;
nは、1、2または3である]
を有する化合物、または製薬上許容可能な酸とのその塩。
【請求項26】
以下の構造:
【化20】

[式中、
Rは、水素または低級アルキルであり;
、R、及びRは、独立して、
水素;
ハロゲン;
低級アルキル;
アルコキシ;または
アミノであり;そして
nは、1、2、または3である]
を有する化合物、または製薬上許容可能な酸とのその塩。
【請求項27】
以下の構造:
【化21】

[式中、Rは、水素、低級アルキル、またはシクロアルキルである]
を有する化合物、または製薬上許容可能な酸とのその塩。
【請求項28】
以下の構造:
【化22】

[式中、Rは、水素、低級アルキル、またはシクロアルキルである]
を有する化合物、または製薬上許容可能な酸とのその塩。
【請求項29】
以下の構造:
【化23】

[式中、R及びRは、独立して、水素、低級アルキル、またはシクロアルキルである]
を有する化合物、または製薬上許容可能な酸とのその塩。
【請求項30】
以下の構造:
【化24】

[式中、Rは、水素、低級アルキル、またはシクロアルキルである]
を有する化合物、または製薬上許容可能な酸とのその塩。
【請求項31】
以下の構造:
【化25】

[式中、R及びRは、独立して、水素、低級アルキル、シクロアルキル、F、Cl、またはOHである]
を有する化合物、または製薬上許容可能な酸とのその塩。
【請求項32】
以下の構造:
【化26】

[式中、R及びRは、独立して、水素、低級アルキル、またはシクロアルキルである]
を有する化合物、または製薬上許容可能な酸とのその塩。
【請求項33】
以下の構造:
【化27】

を有する化合物、または製薬上許容可能な酸とのその塩。
【請求項34】
以下の構造:
【化28】

を有する化合物、または製薬上許容可能な酸とのその塩。
【請求項35】
請求項23〜34のいずれか一項に記載の治療的有効量の化合物と、製薬上許容可能な賦形剤とを含む製剤組成物。
【請求項36】
血清セロトニンレベルを下げる薬剤、ならびにSSRI、ビスホスホネートまたはβ遮断薬を含む製剤組成物。
【請求項37】
血清セロトニンレベルを下げる薬剤及びSSRIを含む、請求項36記載の製剤組成物。
【請求項38】
血清セロトニンレベルを下げる薬剤ならびに脳由来セロトニンレベルを上げる薬剤を含む製剤組成物。
【請求項39】
低骨質量疾患の治療方法であって、
(a)低骨質量疾患のための療法を必要とする患者を同定するステップ;及び
(b)血清セロトニンレベルを低減する治療的有効量の薬剤を前記患者に投与するステップ
を包含する方法。
【請求項40】
不安及びうつ病の治療方法であって、SSRI、ならびに血清セロトニンレベルを低減する治療薬を不安またはうつ病に罹患している患者に投与することを包含する方法。
【請求項41】
SSRI、ならびに血清セロトニンレベルを低減する治療薬の両方を含む製剤組成物を前記患者に投与することを包含する、請求項40記載の方法。
【請求項42】
SSRIを含む製剤組成物、ならびに血清セロトニンレベルを低減する治療薬を含む製剤組成物を前記患者に投与することを包含する、請求項40記載の方法。
【請求項43】
低骨質量疾患の治療方法であって、
(a)低骨質量疾患を有する患者を同定するステップ;
(b)前記患者における血清セロトニンレベルが正常個体と比較して高いか否かを測定するステップ;及び
(c)前記患者における血清セロトニンレベルが正常個体と比較して高い場合、血清セロトニンレベルを低減する治療薬を前記患者に投与するステップ
を包含する方法。
【請求項44】
低骨質量に関連した疾患を発症する危険のある被験者の同定方法であって、
(a)前記患者から、及び正常被験者から採取された生物学的試料中の血清セロトニンのレベルを測定するステップ;及び
(b)前記患者からの試料中の血清セロトニンのレベルが正常被験者からの試料中の血清セロトニンレベルより少なくとも約25%増大される場合、前記患者は前記疾患を発症する危険があると結論づけるステップ
を包含する方法。
【請求項45】
ステップ(b)後、血清セロトニンレベルを下げる薬剤を、前記疾患を発症する危険がある前記患者に投与することをさらに包含する、請求項44記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2011−516486(P2011−516486A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503078(P2011−503078)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/038817
【国際公開番号】WO2009/123978
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(306018457)ザ・トラスティーズ・オブ・コロンビア・ユニバーシティ・イン・ザ・シティ・オブ・ニューヨーク (25)
【Fターム(参考)】