説明

骨送達複合体ならびにタンパク質に骨を標的化させるためのその使用方法

以下の:A)X‐Dn‐Y‐タンパク質‐Z;およびB)Z‐タンパク質‐Y‐Dn‐X(式中、Xは、存在しないか、あるいは少なくとも1個のアミノ酸を有するアミノ酸配列であり;Yは、存在しないか、あるいは少なくとも1個のアミノ酸を有するアミノ酸配列であり;Zは、存在しないか、あるいは少なくとも1個のアミノ酸を有するアミノ酸配列であり;そしてDnは、n=10〜16であるポリアスパラギン酸塩である)からなる群から選択される構造を有する骨送達複合体。それを含む組成物、ならびにその使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、骨送達複合体に、ならびにタンパク質に骨を標的化させるためのその使用方法に関する。さらに特定的には本発明は、骨基質への結合を促すために組換えDNA技術によりタンパク質の構造内で工学処理されるペプチドモチーフを含む骨送達組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
分子生物学、組換えタンパク質生成および大規模タンパク質精製における技術的進歩は、生物薬剤として今日用いられている大量のタンパク質の生産を可能にした。例えばモノクローナル抗体および可溶性形態のTNF−α受容体は、自己免疫疾患、例えばクローン病または重症型の乾癬の治療に用いられてきた(1)。組換えタンパク質の使用の別の例は、酵素置換療法(ERT)である。ERTは、リソソーム貯蔵病を治療するために用いられてきた。この群の遺伝子障害は、重症の体細胞性の、ならびに時としてはニューロン性の病変を引き起こすリソソーム酵素の機能の損失により特性化される。これらの疾患のためのERTにおいて、患者は大用量の正常酵素を注入される。次にこれらの注入酵素は、細胞表面受容体(マンノース‐6ホスフェート受容体)により環境からインターナライズされて、それらの作用部位、即ちリソソームへの途中でエンドサイトーシス経路に入る。ERTにより遺伝子障害を治療する試みすべてが成功しているというわけではない。
【0003】
低ホスファターゼ症は、より重症型の疾患に関して出生児に1/100,000の発生率で起こる稀な遺伝型のくる病または骨軟化症である。軽症型ほど優勢である。この先天性代謝欠陥において、突然変異は、アルカリ性ホスファターゼの組織非特異的イソ酵素をコードする遺伝子を不活性化する。それは、血清中の亜正常アルカリ性ホスファターゼ活性により生化学的に特性化される。骨芽細胞および軟骨細胞中のアルカリ性ホスファターゼ欠乏は、骨格石灰化を減損して、くる病または骨軟化症をもたらす。
【0004】
非石灰化骨格から死産をしばしば引き起こす周産期型から、歯の早期喪失のみを特徴とする軽症型までに亘る非常に広範囲の低ホスファターゼ症発現度が認められる。重度罹患幼児および小児は、常染色体劣性形質として低ホスファターゼ症を受け継ぐ。この疾患には4つの主な形態:即ち周産期、乳児期、小児期および成人型が存在する。周産期低ホスファターゼ症は妊娠中に症状発現し、最も影響を受ける新生児は短時間生存するだけである。幼児期低ホスファターゼ症は、生後6ヶ月前に臨床的に明らかになる。患者の約50%が1年以内に死亡する。小児期低ホスファターゼ症は、重症度が大きく変化するが、しかしこれらの患者のほとんどが、彼等の人生を通して骨格性症候を蒙る。成人性低ホスファターゼ症は、中年期に現れて、不十分な治癒を示す疼痛性再発性疲労骨折のような症候を伴う。
【0005】
骨芽細胞および軟骨細胞は正常では組織非特異的アルカリ性ホスファターゼに富んでおり、この場合、それは細胞表面に付着される。低ホスファターゼ症では、アルカリ性ホスファターゼ活性の欠乏は、酵素の基質であると考えられる3つのリン化合物:ホスホエタノールアミン(PEA)、無機ピロリン酸塩(PPi)およびピリドキサール5’‐ホスフェート(PLP)の細胞外蓄積を生じる。PPiは、ヒドロキシアパタイト結晶成長の阻害剤であり、そして疾患におけるPPi蓄積は骨格石灰化減損を説明する。その結果として、低ホスファターゼ症に罹患している患者への活性酵素提供は、細胞外PPiレベルを低減し、骨格石灰化を改善する。
【0006】
一般に、低ホスファターゼ症のための確立された医学療法は存在しない。アルカリ性ホスファターゼの静脈内注入を用いた酵素置換の試験は、不首尾に終わっている。アルカリ性ホスファターゼ活性は、環境中ではなく、骨格それ自体において増大されなければならない、と思われる。この仮説は、骨髄移植により近年確証された。残念ながら、不十分な移植のため、移植手術の利益は短期間継続しただけである。
【0007】
したがって低ホスファターゼ症に罹患している患者の骨格に活性酵素を提供するための酵素置換療法アプローチを提供する必要性が存在する。
【0008】
骨標的化タンパク質は、低ホスファターゼ症(アルカリ性ホスファターゼの機能の損失)の治療または予防のためにだけでなく、骨代謝に関与した欠陥酵素活性により特性化されるその他の遺伝子疾患、例えばX連鎖性低リン血症性くる病(XLH)(X染色体上のエンドペプチダーゼと相同性を有するリン酸塩調節遺伝子(sPHEX)の機能の損失)の治療または予防のためにも有用であり得る。
【0009】
XLHは、最も一般的な家族性低リン血症である(OMIM 307800, 307810)。それは、腎臓におけるリン酸塩再取込み低減、低ホスファターゼ症、正常カルシウム血症、正常〜低血漿1,25‐ジヒドロキシビタミンD3(1,25(OH)2D、カルシトリオール)レベル、正常上皮小体機能、ならびに血漿アルカリ性ホスファターゼ活性上昇により特性化される。これらの変化は、成長遅滞、下肢変形、くる病および骨軟化症の放射線学的および組織形態計測的証拠と関連する。この疾患は、尿細管リン酸塩再吸収およびビタミンD代謝における複合腎欠陥、ならびに骨および歯における機能障害に起因すると思われる。XLHは、II型内在性糖タンパク質の亜鉛メタロペプチダーゼ・ファミリーの一成員であるPHEX遺伝子における突然変異の不活性化に起因する。これらの突然変異は、骨芽細胞の細胞表面での機能性PHEX酵素の発現を妨げる。今のところ、XLH患者の治療は4〜5回分割用量/日での経口無機リン酸塩(Pi)サプリメントによる補充、ならびに1,25(OH)2Dの不適切合成を補償するための1,25(OH)2Dの同時投与に限定されている。このような高用量のリン酸塩はしばしば、消化管不耐性、特に下痢を引き起こし、患者非遵守をもたらす。一方で、リン酸塩負荷は二次性上皮小体機能亢進(上皮小体切除を必要とするに十分に重症であり得る)を惹起する危険を有するが、他方で、過剰量の1,25(OH)2Dの投与は高カルシウム尿症、高カルシウム血症および腎石灰化症をもたらし得る。
【0010】
したがってXLHのための有用なERTは、XLH患者における欠陥PHEX酵素を組換えDNA技術により得られる機能性酵素に置き換えようとするものである。正常PHEX酵素は疎水性ペプチドにより骨芽細胞形質膜中に固着されるので、天然形態のPHEXは製剤調製に用いられるのに十分な量で生成、精製され得ない。問題を回避するために、可溶性形態の組換えPHEX(またはsPHEX)は、細胞培養中で工学処理され、産生されて、静脈内(IV)投与のために精製され、処方された(WO 00/50580)。次にsPHEXは、同時係属中米国特許出願第10/362,259号に記載されたようなXLHに関するマウスモデルであるHypマウス中に注射された。いくつかの骨関連血清パラメーターの改善、例えば異常高レベルの血清アルカリ性ホスファターゼの低減が観察された。これらの実験は首尾よくいったが、しかし、骨無機質とのその結合を促すよう組換えタンパク質が修飾される場合、治療的sPHEXの効力は増強され得る、と考えられた。
【0011】
したがってタンパク質に骨基質を首尾よく標的化させるための手段が必要とされる。
【0012】
二リン酸塩はヒドロキシアパタイト(HA)との高親和性結合を示すことが既知であり、小分子(4)およびタンパク質(5)に骨を標的化させるために用いられてきた。しかしながらこの戦略は精製タンパク質の化学的修飾を要し、そしてタンパク質活性を妨害する可能性ならびに付加的精製ステップを含めたいくつかの欠点を示す。
【0013】
小分子に骨を標的化させるための別の戦略は、これらの存在物を産生ペプチド、例えばポリ‐Aspと接合することであった(6)。この戦略は、骨形成細胞である骨芽細胞により合成されるいくつかのタンパク質が酸性アミノ酸残基(AspおよびGlu)が特に豊富な配列により骨基質と結合する、という観察後に開発された。これは、2つの非コラーゲン性タンパク質であるオステオポンチン(7)および骨シアロタンパク質の場合である。それゆえ酸性ペプチド(E2-10およびD2-10)を用いて、小分子(即ちメトトレキセート、FITC、Fmoc、ビオチン、エストラジオール)にin vitroでヒドロキシアパタイトを標的化させた。酸性ペプチド(E6およびD6-10)を用いて、小分子(即ちFITC、Fmoc、エストラジオール)にin vivoでヒドロキシアパタイトを標的化させた。最後にE6は、in vitroでヒドロキシアパタイトを結合する能力をBSA、ヘモグロビンおよびIgGに付与することが示された。上記の場合のすべてにおいて、酸性配列の連結は化学的に実施された。
【0014】
本発明は、これらの必要およびその他の必要を満たそうとしている。
【0015】
本発明の説明は多数の文書に言及しており、これらの記載内容は、参照により本明細書中で援用される。
【発明の開示】
【0016】
発明の要約
本発明は、in vivoで骨を首尾よく標的化するために、大きく且つ複雑な分子、例えばタンパク質が酸性ペプチドと融合され得る、ということを示す。
【0017】
本発明の特定の実施形態によれば、以下の:A)X‐Dn‐Y‐タンパク質‐Z;およびB)Z‐タンパク質‐Y‐Dn‐X(式中、Xは、存在しないか、あるいは少なくとも1個のアミノ酸を有するアミノ酸配列であり;Yは、存在しないか、あるいは少なくとも1個のアミノ酸を有するアミノ酸配列であり;Zは、存在しないか、あるいは少なくとも1個のアミノ酸を有するアミノ酸配列であり;そしてDnは、n=10〜16であるポリアスパラギン酸塩である)からなる群から選択される構造を有する骨送達複合体が提供される。本発明のその他の特定の実施形態では、骨送達複合体中のタンパク質は、X染色体上のエンドペプチダーゼと相同性を有する可溶性リン酸塩調節遺伝子(sPHEX)である。本発明のその他の特定の実施形態では、複合体の構造は、X‐Dn‐Y‐sPHEX‐Zである。本発明のその他の特定の実施形態では、sPHEXは、図10のアミノ酸46〜749;図10の47〜749;図10の48〜749;図10の49〜749;図10の50〜749;図10の51〜749;図10の52〜749;図10の53〜749;および図10の54〜749からなる群から選択される配列を有する。これらの骨送達複合体の特定の実施形態では、nは10である。この骨送達複合体のその他の特定の実施形態では、nは11である。この骨送達複合体のその他の特定の実施形態では、nは12である。この骨送達複合体のその他の特定の実施形態では、nは13である。この骨送達複合体のその他の特定の実施形態では、nは14である。この骨送達複合体のその他の特定の実施形態では、nは15である。この骨送達複合体のその他の特定の実施形態では、nは16である。本発明のさらに特定の実施形態では、sPHEXは、図10のアミノ酸46〜749の配列からなり、そしてn=10である。
【0018】
本発明の別の特定の実施形態では、複合体中のタンパク質は、可溶性アルカリ性ホスファターゼ(sALP)である。他の特定の実施形態では、複合体の構造は、Z‐sALP‐X‐Dn‐Yである。他の特定の実施形態では、sALPは、図16Aに記述されたような配列によりコードされる。他の特定の実施形態では、sALPは図16Bに記述されたような配列を有する。これらの骨送達複合体の特定の実施形態では、nは10である。この骨送達複合体のその他の特定の実施形態では、nは11である。この骨送達複合体のその他の特定の実施形態では、nは12である。この骨送達複合体のその他の特定の実施形態では、nは13である。この骨送達複合体のその他の特定の実施形態では、nは14である。この骨送達複合体のその他の特定の実施形態では、nは15である。この骨送達複合体のその他の特定の実施形態では、nは16である。さらに特定の実施形態では、n=10である。
【0019】
以下の:図8に記述されるようなアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;図11に記述されるようなアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;図7に記述されるようなヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;(a)、(b)または(c)におけるヌクレオチド配列のいずれかと完全に相補的なヌクレオチド配列;および高緊縮条件下で(a)、(b)、(c)または(d)におけるヌクレオチド配列のいずれかとハイブリダイズ可能であるヌクレオチド配列(この場合、高緊縮条件は以下の:前ハイブリダイゼーション、ならびに6×SSC、5×デンハート試薬、0.5%SDSおよび100 mg/mlの変性断片化サケ精子DNA中で68℃でのハイブリダイゼーション;そして2×SSCおよび0.5%SDS中で室温で10分間の;2×SSCおよび0.1%SDS中で室温で10分間の;ならびに0.1×SSCおよび0.5%SDS中で65℃で3回5分間の洗浄:を包含する)からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列を含む単離核酸分子も提供される。
【0020】
上記配列を含む組換えベクターも提供される。上記のベクターを含む組換え宿主細胞も提供される。
【0021】
以下の:図17Aに記述されるようなヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;図17Bに記述されるようなアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;(a)または(b)におけるヌクレオチド配列のいずれかと完全に相補的なヌクレオチド配列;および高緊縮条件下で(a)、(b)または(c)におけるヌクレオチド配列のいずれかとハイブリダイズ可能であるヌクレオチド配列(この場合、高緊縮条件は以下の:前ハイブリダイゼーション、ならびに6×SSC、5×デンハート試薬、0.5%SDSおよび100 mg/mlの変性断片化サケ精子DNA中で68℃でのハイブリダイゼーション;そして2×SSCおよび0.5%SDS中で室温で10分間の;2×SSCおよび0.1%SDS中で室温で10分間の;ならびに0.1×SSCおよび0.5%SDS中で65℃で3回5分間の洗浄:を包含する)からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列を含む単離核酸分子も提供される。
【0022】
以下の:図10に記述されるようなアミノ酸54〜749を含むsPHEXをコードするポリヌクレオチド;図10に記述されるようなアミノ酸53〜749を含むsPHEXをコードするポリヌクレオチド;図10に記述されるようなアミノ酸52〜749を含むsPHEXをコードするポリヌクレオチド;図10に記述されるようなアミノ酸51〜749を含むsPHEXをコードするポリヌクレオチド;図10に記述されるようなアミノ酸50〜749を含むsPHEXをコードするポリヌクレオチド;図10に記述されるようなアミノ酸49〜749を含むsPHEXをコードするポリヌクレオチド;図10に記述されるようなアミノ酸48〜749を含むsPHEXをコードするポリヌクレオチド;図10に記述されるようなアミノ酸47〜749を含むsPHEXをコードするポリヌクレオチド;図10に記述されるようなアミノ酸46〜749を含むsPHEXをコードするポリヌクレオチド;(a)〜(i)におけるヌクレオチド配列のいずれかと完全に相補的なヌクレオチド配列;および高緊縮条件下で(a)〜(j)におけるヌクレオチド配列のいずれかとハイブリダイズ可能であるヌクレオチド配列(この場合、高緊縮条件は以下の:前ハイブリダイゼーション、ならびに6×SSC、5×デンハート試薬、0.5%SDSおよび100 mg/mlの変性断片化サケ精子DNA中で68℃でのハイブリダイゼーション;そして2×SSCおよび0.5%SDS中で室温で10分間の;2×SSCおよび0.1%SDS中で室温で10分間の;ならびに0.1×SSCおよび0.5%SDS中で65℃で3回5分間の洗浄:を包含する)からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列を含む機能性可溶性PHEXをコードする単離核酸分子も提供される。他の実施形態では、単離核酸分子は、その5’末端にD10〜D16からなる群から選択されるポリ‐アスパラギン酸塩をコードするポリヌクレオチドをさらに含む。
【0023】
以下の:図10に記述されるようなアミノ酸54〜749;図10に記述されるようなアミノ酸53〜749;図10に記述されるようなアミノ酸52〜749;図10に記述されるようなアミノ酸51〜749;図10に記述されるようなアミノ酸50〜749;図10に記述されるようなアミノ酸49〜749;図10に記述されるようなアミノ酸48〜749;図10に記述されるようなアミノ酸47〜749;図10に記述されるようなアミノ酸46〜749からなる群から選択される配列を含む単離sPHEXポリペプチドも提供される。
【0024】
本発明の骨送達複合体ならびに製薬上許容可能な担体を含む骨送達組成物も提供される。
【0025】
哺乳類の骨組織へのタンパク質の送達方法であって、有効量の本発明に記載されたような骨送達複合体を上記哺乳類に投与することを包含する方法も提供される。
【0026】
哺乳類の骨組織へのsPHEXの送達方法であって、有効量の本発明の骨送達複合体を上記哺乳類に投与することを包含する方法も提供される。
【0027】
それを必要とする哺乳類の骨組織へのALPの送達方法であって、有効量の本発明の骨送達複合体を上記哺乳類に投与することを包含する方法も提供される。
【0028】
X染色体上のエンドペプチダーゼと相同性を有する機能性リン酸塩調節遺伝子(PHEX)の欠乏または不十分量により特性化される骨欠損に関連した症状または疾患の治療方法であって、それを必要とする哺乳類に本発明の複合体を投与することを包含する方法であり、上記複合体は製薬上許容可能な担体中に存在する方法も提供される。特定の実施形態では、症状または疾患は、X連鎖性低リン血症性くる病(XLH)である。
【0029】
機能性アルカリ性ホスファターゼの欠乏または不十分量により特性化される骨欠損に関連した症状または疾患の治療方法であって、それを必要とする哺乳類に本発明の複合体を投与することを包含する方法であり、上記複合体は製薬上許容可能な担体中に存在する方法も提供される。特定の実施形態では、症状または疾患は、低ホスファターゼ症である。
【0030】
哺乳類の骨組織にタンパク質を送達するための本発明の骨送達複合体の使用も提供される。
【0031】
X染色体上のエンドペプチダーゼと相同性を有する機能性リン酸塩調節遺伝子(PHEX)の欠乏または不十分量により特性化される骨欠損に関連した症状または疾患を治療するための本発明の骨送達複合体の使用であって、上記複合体が製薬上許容可能な担体中に存在する使用も提供される。
【0032】
X染色体上のエンドペプチダーゼと相同性を有する機能性リン酸塩調節遺伝子(PHEX)の欠乏または不十分量により特性化される骨欠損に関連した症状または疾患を治療するための薬剤の製造における本発明の骨送達複合体の使用も提供される。特定の実施形態では、症状または疾患はX連鎖性低リン血症性くる病(XLH)である。
【0033】
機能性アルカリ性ホスファターゼの欠乏または不十分量により特性化される骨欠損に関連した症状または疾患を治療するための本発明の骨送達複合体の使用であって、上記複合体が製薬上許容可能な担体中に存在する使用も提供される。
【0034】
機能性アルカリ性ホスファターゼの欠乏または不十分量により特性化される骨欠損に関連した症状または疾患を治療するための薬剤の製造における本発明の骨送達複合体の使用であって、上記複合体が製薬上許容可能な担体中に存在する使用も提供される。特定の実施形態では、症状または疾患は低ホスファターゼ症である。
【0035】
骨送達タンパク質‐ペプチド複合体中に用いるためのペプチドのスクリーニング方法であって、以下の:候補ペプチドをレポータータンパク質と融合してタンパク質‐ペプチド複合体を生成し;複合体を骨組織または骨の無機相と接触させるが;この場合、候補ペプチドは、骨組織または骨の無機相上のレポータータンパク質の存在が、それが存在しない場合よりそれが候補ペプチドと複合される場合のほうがより高いときに選択される:過程を包含する方法も提供される。
【0036】
本発明の他の特定の実施形態によれば、デカ‐アスパラギン酸塩(D10)〜ヘキサデカ‐アスパラギン酸塩(D16)から成る群から選択されるペプチドと融合されるタンパク質の骨送達複合体が提供される。
【0037】
本発明の複合体の特定の実施形態では、sPHEXは、そのN末端でD10と融合される。他の特定の実施形態では、sPHEXは、そのN末端でD11と融合される。他の特定の実施形態では、sPHEXは、そのN末端でD12と融合される。他の特定の実施形態では、sPHEXは、そのN末端でD13と融合される。他の特定の実施形態では、sPHEXは、そのN末端でD14と融合される。他の特定の実施形態では、sPHEXは、そのN末端でD15と融合される。他の特定の実施形態では、sPHEXは、そのN末端でD16と融合される。
【0038】
本発明の複合体の特定の実施形態によれば、sALPは、そのC末端でD10と融合される。他の特定の実施形態では、sALPは、そのC末端でD11と融合される。他の特定の実施形態では、sALPは、そのC末端でD12と融合される。他の特定の実施形態では、sALPは、そのC末端でD13と融合される。他の特定の実施形態では、sALPは、そのC末端でD14と融合される。他の特定の実施形態では、sALPは、そのC末端でD15と融合される。他の特定の実施形態では、sALPは、そのC末端でD16と融合される。
【0039】
任意の機能性可溶性タンパク質は本発明の複合体中に用いられ得る、と理解される。本発明の特定の一sPHEXまたはsALPを含む複合体に関する結果が本明細書中に示されるが、しかし任意のその他の機能性sPHEXまたはsALPはそのように用いられ得る、と理解される。
【0040】
sPHEX
本明細書中で用いる場合、sPHEXは、PHEXの任意の可溶性生物学的活性断片またはその突然変異タンパク質を意味する。それを用いてトランスフェクトされる適切な細胞株中でのsPHEXの最適産生に関して本明細書中に明白に記載されたもの以外の発現構築物を、当業者は調製し得る。さらに天然全長酵素と同一または類似の生物学的活性を保有する天然PHEXの可溶性生物学的活性断片および突然変異タンパク質をコードするcDNAの断片を当業者は意図し得る。
【0041】
sPHEXに関する組換え体源を作製するために、大型の一連の発現ベクターが構築され、PHEX cDNAの発現に関して試験され得る。一過性トランスフェクション実験ならびに安定トランスフェクションに基づいて、特に高レベルの発現を提供する発現構築物が同定され得る。
【0042】
そのように限定されることなく、図10に示された配列の位置54のシステインで開始する少なくともネイティブのPHEX外部ドメイン部分を含む任意のsPHEXが、本発明に包含される。
【0043】
したがって本発明の特定の実施形態による複合体は、ネイティブPHEXのこの54〜749断片、好ましくは53〜749ネイティブ断片、さらに好ましくはネイティブ52〜749断片、さらに好ましくはネイティブ51〜749断片、さらに好ましくは50〜749ネイティブ断片、さらに好ましくは49〜749ネイティブ断片、さらに好ましくは48〜749ネイティブ断片、さらに好ましくは47〜749ネイティブ断片、さらに好ましくは46〜749ネイティブ断片を、この断片の直ぐ上流で融合されるD10〜D16から成る群から選択されるポリ‐アスパラギン酸塩とともに含む任意のsPHEXである。
【0044】
複合体は、さらに任意に、1)ポリ‐アスパラギン酸塩から上流の;および/または2)ポリ‐アスパラギン酸塩とネイティブ断片または機能性等価物との間の1つまたは複数の付加的アミノ酸を含み得る。これらのアミノ酸は、任意のアミノ酸であり得る。特定の実施形態によれば、それらは、システイン、プロリンおよびトリプトファン以外の任意のアミノ酸、即ちジスルフィド結合形成または立体配座の変更を誘導することが既知のアミノ酸からなる群から独立して選択され得る。
【0045】
これらのアミノ酸は、例えばそれを産生するために用いられるクローニング戦略がこれらの位置にそれらを導入する場合、複合体中に存在し得る。
【0046】
特定のクローニング戦略によれば、組換え切断PHEX中のポリ‐アスパラギン酸塩の上流に置かれるアミノ酸は、産生組換え切断PHEXを分泌骨ターゲッティングsPHEXに切断するために用いられる宿主細胞の分泌経路の特定の酵素(例えばフリンまたはシグナルペプチダーゼ)のための適切な基質を提供するために既知のパラメーターに従って選択され得る。意図された配列が宿主細胞のシグナルペプチダーゼにより切断される見込みは、Bendtsen等(J Mol Biol. 2004 Jul 16; 340(4): 783-95)に記載され、そしてWebでhttp://www.cbs.dtu.dk/services/SignalPで利用可能なもののような適切なコンピューターアルゴリズムにより予測され得るが、これは、例えば以下の:望ましくは小さな且つ非電荷側鎖を有するシグナルペプチダーゼによる開裂部位から位置−3および−1のアミノ酸のようなパラメーターを考慮する。好ましくは位置−1では:Ala、Ser、Gly、Cys、Thrおよび時としてはGln、ProおよびLeu。同様に位置−3のものは、好ましくは:Ala、Ser、Gly、Cys、Thr、Ile、Leu、Valであるべきである。さらに開裂部位から位置−6および−4におけるアミノ酸は、望ましくはβターン(例えばPro)残基の形成を誘導し得るものである。
【0047】
それゆえ本発明は、切断組換えPHEXを産生するために用いられるクローニング戦略に基づいて選択され得る付加的アミノ酸を含む複合体を包含する。それゆえ下記の実施例3および4に開示される切断組換えPHEXは、ポリ‐アスパラギン酸塩の上流に、ならびにポリ‐アスパラギン酸塩とネイティブ外部ドメイン配列との間にこのような付加的アミノ酸を含有する。さらにまた本発明は、フリン部位を含むNL‐1 N末端断片をPHEXネイティブ外部ドメインと融合することにより調製される同時係属中出願WO 02/15918号に開示されたsecPHEXをベクターpCDNA3/RSV/NL‐1‐PHEXとともに含む複合体、ならびにそのN末端に免疫グロブリン断片を含むsecPHEXを包含する。さらに特定的に、図12は、ネイティブ46〜749PHEX外部ドメイン断片の上流に付加的アミノ酸を含むsecPHEXの構造を模式的に示す。構築物no.1〜3および5は、ポリ‐アスパラギン酸塩と融合され、本発明の複合体として用いられ得る。構築物no.4は、本発明の複合体を構成する:それはD10ポリ‐アスパラギン酸塩およびネイティブ外部ドメイン断片を含む。
【0048】
本発明の複合体はさらに、それらの酵素活性に対して非有害性であるそれらのC末端の欠失を含むsPHEXも包含する。
【0049】
さらに本発明は、ポリ‐アスパラギン酸塩がネイティブPHEX外部ドメイン断片のC末端に結合される複合体を含む。
【0050】
sALP
ALPは、糖脂質を介してそのC末端に固定される膜結合タンパク質である。この糖脂質アンカー(GPI)は、移行性膜アンカーとして、ならびにGPIの付加のためのシグナルとしても役立つ疎水性C末端の除去後で翻訳後に付加される。それゆえ本明細書中の実施例6に用いられるsALPは、疎水性C末端配列の最初のアミノ酸、即ちアラニンが終止コドンにより置き換えられるALPで構成される。そのようにして形成される可溶性ALPは、ネイティブの、したがって活性な固定形態のALPの全アミノ酸を含有する。
【0051】
本発明の特定の実施形態によるsALP複合体は、したがって、この断片の直ぐ下流で融合されるD10〜D16から成る群から選択されるポリ‐アスパラギン酸塩を伴う任意のsALPである。
【0052】
複合体は、さらに任意に、1)ポリ‐アスパラギン酸塩から上流の;および/または2)ポリ‐アスパラギン酸塩とネイティブ断片または機能性等価物との間の1つまたは複数の付加的アミノ酸を含み得る。これは、例えば骨標的化複合体を産生するために用いられるクローニング戦略がこれらの位置に外因性アミノ酸を導入する場合である。しかしながら外因性アミノ酸は、付加的アミノ基転移部位を提供しないよう選択されるべきである。意図された配列が宿主細胞のトランスアミナーゼにより切断される見込みは、Ikezawa(Biol Pharm. Bull. 2002, 25(4) 409-417)に記載されたように予測され得る。
【0053】
本発明の複合体はさらに、それらの酵素活性に対して非有害性であるそれらのN末端での欠失を含むsALPも包含する。
【0054】
さらに本発明は、ポリアスパラギン酸塩がネイティブALP固定断片またはその生物学的活性断片のN末端に固定される複合体を含む。
【0055】
「組換えタンパク質」という用語は、原核生物または真核生物宿主細胞中に挿入される遺伝子操作核酸によりコードされるタンパク質を指すために本明細書中で用いられる。核酸は一般的に、宿主細胞に適している場合、ベクター内に、例えばプラスミドまたはウイルス内に入れられる。大腸菌が、本明細書中に提示された実施例において、本発明の複合体を発現するための宿主として用いられているが、しかし当該技術分野で慣例である方法に従って組換えタンパク質を産生するために多数のその他の宿主が用いられ得る、と当業者は理解する。代表的方法は、Maniatis, et al. Cold Springs Harbor Laboratory (1989)に開示されている。「組換え切断タンパク質」とは、本明細書中で用いる場合、分泌/可溶性タンパク質を産生するために宿主の酵素により切断され得る組換えタンパク質を指すよう意図される。
【0056】
「外部ドメイン断片」という用語は、本明細書中では、PHEXに関連して用いられる場合、そのネイティブ形態で見出される場合に細胞膜の外側に位置するPHEXの断片を指すよう意図される。
【0057】
「骨組織」という用語は、主としてコラーゲンを含有する有機基質からなる骨芽細胞により合成され、そしてヒドロキシアパタイト結晶の沈着により石灰化される組織を指すために本明細書中で用いられる。
【0058】
本発明の骨送達複合体中に含まれる融合タンパク質は、骨に有効量の融合タンパク質を提供することによる骨欠陥症状の治療的処置のために有用である。融合タンパク質は、任意の標準製薬上許容可能担体中の製剤組成物の形態で提供され、そして任意の標準手法により、例えば静脈内注射により投与される。
【0059】
「製薬上許容可能な担体」という用語は、非経口投与が投与経路として選ばれる場合、製薬上許容可能な滅菌水性または非水性溶媒、懸濁液または乳濁液を指すために本明細書中で用いられる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、魚油および注射用有機エステルである。水性溶媒としては、水;水‐アルコール溶液;生理食塩水;緩衝化医療用非経口ビヒクル、例えば塩化ナトリウム溶液、リンガーのデキストロース溶液、デキストロース+塩化ナトリウム溶液、流体および栄養補液;電解質補液;ラクトースまたは不揮発性油を含有するリンガー溶液が挙げられる。
【0060】
「有効量」という用語は、有意の治療効果を達成するために哺乳類に投与されるべき製剤組成物の最小量を指すために本明細書中で用いられる。投薬量は、投与方式を含めた多数の因子によっている。典型的には、単一用量内に含入されるタンパク質の量は、有意の毒性を誘導することなく、骨に関連した望ましくない症状を有効に予防し、遅延し、または治療する量である。特に本発明の複合体および組成物の有効量は、症状の臨床的症候の有意の軽減を生じる融合タンパク質の量を含む。
【0061】
有効量は、毎日、毎週、毎月、またはそれを分割して投与され得る。典型的には、本発明の製剤組成物は、約0.001 mgから約500 mg/体重1 kg/日(例えば10 mg、50 mg、100 mgまたは250 mg)の量で投与され得る。投薬量は、1回または多数回投薬レジメンで提供される。例えばいくつかの実施形態では、有効量は、1日当たり骨に対して標的化されるべき複合体約1 mg〜約25 mg、1日当たり骨に対して標的化されるべき複合体約50 mg〜約10 g、1日当たり骨に対して標的化されるべき複合体約100 mg〜約5 g、1日当たり骨に対して標的化されるべき複合体約1 g、週当たり骨に対して標的化されるべき複合体約1 mg〜約25 mg、週当たり骨に対して標的化されるべき複合体約50 mg〜約10 g、1日おきに骨に対して標的化されるべき複合体約100 mg〜約5 g、そして週1回当たり骨に対して標的化されるべき複合体約1 gの範囲の用量である。
【0062】
実用量は各患者に独特の臨床因子に基づいて担当医により注意深く選択され、滴定されなければならないため、これらは単に指針に過ぎない。最適1日用量は、当該技術分野で既知の方法により確定され、そして患者の年齢といったような因子およびその他の臨床的関連因子により影響を及ぼされる。さらに患者は、他の疾患または症状のための投薬を受けている可能性がある。他の投薬は、骨への送達のためのタンパク質が患者に投与されている間、継続され得るが、しかしこのような場合、副作用が生じているか否かを確定するために低用量で開始することが特に得策である。
【0063】
「高緊縮条件」という用語は、高相同性を有する配列を結合させる条件を指すよう意図される。そのように限定されることなく、このような条件の例は、ハンドブック「Molecular cloning, a laboratory manual, second edition of 1989 from Sambrook et al.に列挙されている:300〜1500ヌクレオチドの核酸に関しては、6×SSCまたは6×SSPE、デンハート試薬(含有または無含有)、0.5%SDS、そして高緊縮条件を得るために用いられる温度は約68℃が最も多い(Sambrookのページ9.47〜9.55を参照)。特定の核酸プローブのために用いられるべき最適温度は経験的に算定されるが、そしてこれらの非常に周知の条件範囲内で選択される緩衝条件における代替物のための余地は存在しないが、しかし捕捉される核酸は有意に変わらない。実際、「選択は、個人の好みに大いによっている」、ということをSambrookは明白に示している(ページ9.47参照)。核酸プローブ中のグアニンおよびシトシンの割合ならびにプローブの長さによって変わる最適温度を算定するための公式をSambrookは明記している(最適温度はTmより10〜20℃低く、この場合、Tm=81.5℃+16.6(log10[Na+])+0.41(分画G+C)−0.63(ホルムアミド%−(600/l)))(Sambrookのページ9.50〜9.51を参照)。
【0064】
本発明のその他の目的、利点および特徴は、添付の図面を参照しながら、実施例のみに示されているその好ましい実施形態についての以下の非限定的説明を読めば、さらに明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0065】
本発明の詳細な説明
本発明は、sPHEXにより、そしてsALPにより、レポータータンパク質として用いられるグルタチオン‐S‐トランスフェラーゼタンパク質(GST)により本明細書中に例示されるようなタンパク質にイン・フレームで融合される特定のポリ‐アスパラギン酸塩ペプチドは、これらのタンパク質の骨結合能力を有意に増大し得る、ということを示した。
【0066】
本発明は、以下の非限定的実施例により、さらに詳細に例証される。
【0067】
表1は、実施例1〜7に用いられるオリゴヌクレオチドの配列を示す。
【0068】
【表1】

【実施例】
【0069】
実施例1
GST‐D6、GST‐D10およびGST‐D16の骨結合
組換えDNA技術を用いて、GSTをコードする核酸と、その後にイン・フレームでD6、D10またはD16酸性ペプチドを含有するプラスミドを生成した。GST‐D6、GST‐D10およびGST‐D16複合体を得るために、配列番号9のオリゴヌクレオチド(表1参照)を先ず配列番号10のオリゴヌクレオチドと混合し、配列番号11のオリゴヌクレオチドを配列番号12のオリゴヌクレオチドと混合し、そして配列番号13のオリゴヌクレオチドを配列番号14のオリゴヌクレオチドと混合した。この手法は、それぞれD6、D10およびD16をコードし、制限エンドヌクレアーゼBamHIおよびNotIで前消化されたpGEX3T‐4プラスミド(Pharmacia biotechnology)中でのクローニングに適合性である末端を有する二重鎖オリゴヌクレオチドを生成する。pGEX3T‐4ベクターを、AP401プロテアーゼ・マイナス大腸菌細菌株(Ion::ミニtetR ara‐Δlac‐pro nalA argEam rifR thiI[F’ pro AB laclq Z M15])中で形質転換させた。
【0070】
陽性細菌コロニーを用いて、二重YT培地および100 mg/lアンピシリンの予備培養10 mlに植え付けた。250 rpmに設定したオービタル・シェーカー中で37℃で一晩、細菌を増殖させた。予備培養を、2リットル・エーレンマイヤー・フラスコ中の新鮮な弐銃YTアンピシリン培地500 mlに付加した。595 nm光学濃度が0.7に達するまで、オービタル・振盪下で37℃で、細菌を増殖させた。次に0.1 MのIPTG溶液500 μlを付加することによりタンパク質発現を誘導し、細菌を2時間のインキュベーションに戻した。最近を4℃で10分間、8000×gで回転沈降させた。ペレットを、完全EDTAカプレットプロテアーゼ阻害剤(Boehringer Mannheim)を含有する氷冷PBS25 ml中に懸濁し、−20℃で凍結した。
【0071】
細菌細胞を解凍し、50秒毎に6パルスの音波処理を用いて氷上でばらばらにした後、4℃で10分間、12000×gで遠心分離した。上清を、PBSで平衡させたGS‐4B湿潤樹脂(Amersham Pharmacia Biotech)500 μlと混合した。4℃で一晩のインキュベーション中、懸濁液として樹脂を保持した。280 nm光学濃度が0.01より低くなるまで、PBSで樹脂をすすいだ。次に樹脂を空のカラム上に置いて、PBS中に溶解した10 mMグルタチオンでタンパク質を溶離した。1 mMリン酸ナトリウム、pH7.4および150 mMNaClに対してプール化溶離分画を透析した。透析タンパク質を0.22 μmのPES膜上の滅菌環境中で濾過し、4℃で保持した。典型的には、40〜60 mgの純粋タンパク質を、それぞれ培養1リットル当たりで回収した。図1は、精製GSTおよびGST‐D10のSDS‐PAGE分析の一例を示す。ヨード・ビーズヨウ素化試薬(Pierce)を用いて、精製タンパク質をヨウ素化した。
【0072】
GSTおよびペプチド融合GSTをPBSに対して透析し、濃度を2 mg/mlに設定した。PBS500 μl中に溶解した2 mCiのNa125 l(100 μCi/μl)に2PBSですすいだヨード・ビーズを付加することにより、ヨウ素化反応を開始した。ビーズを室温で5分間インキュベートした後、透析タンパク質1 mgを付加した。ヨウ素化反応を15分間進行させた後、ビーズを取り出し、PBS500 ml中ですすいだ。最終量1.5 mlのヨウ素化タンパク質溶液に、15 μlの6 mMNaIを付加して非特異的放射能を希釈した。次に混合物を、PBSで平衡させたPD‐10ゲル濾過カラム(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて脱塩した。タンパク質をボイド容量中で溶離した。それらを濃縮し、Centriprep‐YM10TMカートリッジ(Amicon)を用いてin vivo緩衝液(1 mMリン酸ナトリウム、pH7.4および150 mMNaCl)に対して透析した。ガンマ線計数器を用いて放射能を測定し、ブラッドフォード検定によりタンパク質濃度を査定して、乾燥SDS‐PAGEのオートラジオグラフィーによりタンパク質との125I化学結合を明示した。ヨウ素化試料を4℃に保持した。
【0073】
GST単独の場合と比較したGST‐ポリ‐アスパラギン酸塩ペプチド融合タンパク質の骨結合能力
鎖骨下静脈を介した静脈内ボーラスとしてのイソフルラン麻酔下で、ヨウ素化GST‐融合タンパク質をマウスに注射した。ヨウ素化タンパク質1 mg/体重1 kgの用量を注射した。最大用量容積を10 ml/kgに設定した。治療持続時間は60分であった。注射後10および60分に、麻酔下で鎖骨下静脈を介して、血清/ゲル凝固活性剤MicrovettTM管(Sarstedt, #20.1291)中に血液試料(0.1〜0.2 ml)を収集した。剖検時に、血液試料を収集し、イソフルラン麻酔下での心臓からの放血により動物を殺した。器官(腎臓、肝臓、大腿骨、脛骨および甲状腺)を収集し、生理食塩水0.9%USP中ですすぎ、ガーゼ上で水気を取り、ガンマ計数器管中に移した。血清試料および器官を計量し、放射能を測定した。結果を注射用量のパーセンテージとして表わした。D10‐GSTもD16‐GSTも、骨以外の他の器官との結合を促さなかった。これは、骨に対するこれらの複合体の特異性を示した(データは示されていない)。
【0074】
GST‐D6融合タンパク質は、GST単独より多く脛骨または大腿骨と結合するというわけではなかった、ということを図2は示す。それに反して、D10およびD16ペプチドモチーフは、骨とのGST結合を促した。
【0075】
骨に小分子を首尾よく送達することが示されたペプチドであるD6は骨にタンパク質、即ちGSTを首尾よく送達し得なかったという事実は、骨に小分子を効果的に送達することが既知である特定の酸性ペプチドも骨にタンパク質を送達するのに有効であるか否かを予測可能でない、ということを示した。
【0076】
実施例2
種々のペプチドと融合されるGSTの結合能力
ヒト基質細胞外ホスホ糖タンパク質(hMEPE)は、骨基質と天然で結合することが既知のタンパク質である骨および歯無機基質リン‐糖タンパク質の一群との大きな類似性を示す骨芽細胞により合成されるタンパク質である(8)。特に重要なもののうち、hMEPEは、ともに骨基質と結合することが既知である象牙質ホスホリンおよび象牙質シアロリンタンパク質中に見出される酸性ペプチドと類似の18個のアミノ酸(DDSSESSDSGSSSESDGD)の配列(配列番号31)を、そのカルボキシ末端に示す(8)。
【0077】
ヒトスタテリン(hスタテリン)は、唾液腺により合成されるタンパク質であり、これは、ヒスタチンと同様に、ヒドロキシアパタイト核形成および/または成長を直接的に調整する。特に重要なもののうち、hスタテリンは、ヒドロキシアパタイトとしっかり結合することが示された位置20〜34の15個のアミノ酸残基(DSSEEKFLRRIGRFG)の配列を示す(9)。
【0078】
ヒト基質Glaタンパク質(hMGP)は、血管平滑筋細胞および軟骨細胞により合成されるタンパク質であり、結晶核との結合によりヒドロキシアパタイト重合の阻害剤として機能する。特に重要なもののうち、hMGPは、骨基質と結合することが既知であるオステオカルシン中に見出され、そして骨基質との結合を促すと考えられるリン酸化ガンマカルボキシグルタミン酸ペプチドと類似のオープン・リーディング・フレームの位置19〜35の17個のアミノ酸残基(CYESHESMESYELNPFI)の配列(配列番号33)を、そのアミノ末端に示す(10)。
【0079】
ヒトオステオポンチン(hOPN)は、ヒドロキシアパタイト結晶成長を調節する骨芽細胞により合成されるタンパク質である。このタンパク質は、骨シアロリンタンパク質ファミリーに属する。特に重要なもののうち、hOPNは、オープン・リーディング・フレームの位置58〜70の13個のアミノ酸残基(QNAVSSEETNDFK)の配列(配列番号34)を示す。この配列は、哺乳類種の間で高レベルの相同性を示す。二次構造予測は、この配列を溶媒曝露に対して適切にし、そしてこの配列はそのセリン残基でリン酸化されることが示された。この後者の特質は、骨基質との結合に影響を及ぼすと考えられる(11)。
【0080】
ヒト骨シアロタンパク質II(hBSP2)は、骨芽細胞により合成されるタンパク質であって、骨基質と天然に結合することが既知のタンパク質である骨および歯の無機基質リン‐糖タンパク質の一群との大きな類似性を示す。特に重要なもののうち、hBSPIIは、象牙質ホスホリンおよびMEPE中に見出され、そして骨基質との結合を促すと考えられる酸性ペプチドと類似のオープン・リーディング・フレームの位置62〜79の18個のアミノ酸残基(GSSDSSEENGDDSSEEEE)の配列(配列番号35)を、そのアミノ末端に示す(8)。
【0081】
ヒトインスリン様成長因子結合タンパク質‐5(hIGFBP5)は、骨芽細胞により合成される。このタンパク質は、IGFBPファミリーのタンパク質と同様に、骨リモデリング過程における骨芽細胞機能を調節すると考えられる。特に重要なもののうち、hIGFBP5は、ヒドロキシアパタイトとしっかり結合することが示されたオープン・リーディング・フレームの位置221〜238の18個のアミノ酸残基(RKGFYKRKQCKPSRGRKR)の配列(配列番号36)を示す(12)。
【0082】
黄色ブドウ球菌Staphylococcus aureusコラーゲンアドヘシン(M81736)は、黄色ブドウ球菌の表面で発現されるタンパク質であって、哺乳類骨および軟骨性組織のコラーゲン基質との細菌結合を促す。このような結合は、骨髄炎および感染性関節炎のような病因学の発達に役立つと報告された。特に重要なもののうち、このアドヘシンのコラーゲン結合ドメイン(CBS)は、タンパク質のオープン・リーディング・フレームの151個のアミノ酸残基(G168〜N318)を包含すると報告された(13、14)。アミノ酸一次配列は、以下の通りである:
【0083】
【化1】

【0084】
イン・フレームでGSTの後にhMEPE、hスタテリン、hMGP、hOPN、hBSP2、hIGFBP5およびCBS由来の酸性ペプチド配列を含有するプラスミドを構築して、それらが組換えタンパク質の骨ターゲッティングを促し得るか否かを確定した。実施例1に記載したような組換えDNA技術を用いて、hMEPE、hスタテリン、hMGP、hOPN、hBSP2およびhIGFBP5由来ペプチドに関するプラスミドを生成した。これらのペプチドの各々に関して表1で同定されるオリゴヌクレオチド対を混合して、対応するGST‐酸性ペプチド融合タンパク質を得た。この手法は、これらの酸性ペプチドをコードし、そして制限エンドヌクレアーゼBamHIおよびNotIで予備消化されたpGEX3T‐4(Pharmacia biotechnology)プラスミド中でのクローニングに適合性の末端を有する二重鎖オリゴヌクレオチドを生じた。
【0085】
CBS含有プラスミドを、以下のように構築した。CBS配列に対応する合成遺伝子をBio S&T(Montreal)から入手し、プラスミドpLIV Select中に挿入した。CBS特異的配列を増幅するためにCBS遺伝子を含有するプラスミドpLIV Selectを用いたPCR反応において、配列番号27および28のオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いた。pGEX‐4T‐3ベクターをAP401プロテアーゼ・マイナス大腸菌株中で形質転換させた(Ion::ミニtetR ara‐Δlac‐pro nalA argEam rifR thiI[F’ pro AB laclq Z M15])。
【0086】
実施例1に記載したように、タンパク質産生および精製、ならびにヨウ素化融合タンパク質の薬配分を実施した。
【0087】
これらのGST‐酸性ペプチドはどれも、骨と結合することが示されなかった(結果は示されていない)。
【0088】
骨に小部分のオステオポンチンを首尾よく送達することが示されたペプチドであるスタテリン由来のペプチドは、骨へのGSTタンパク質を首尾よく送達し得なかったという事実は、骨に小ペプチドを効果的に送達することが既知の特定の酸性ペプチドが骨にタンパク質を送達するのにも有効であるか否かは予測可能でない、ということを示す。
【0089】
実施例3
10はマウスにおいてアルカリ性ホスファターゼレベルを矯正するsPHEXの能力を増大する
PHEXは、石灰化および腎臓リン酸塩恒常性の調節に関与する骨ペプチド因子のレベルを制御すると広範に考えられるメタロペプチダーゼである。PHEXは、骨基質と接触するかまたはその中に埋め込まれる骨芽細胞および骨細胞の表面で発現される。本実施例は、骨基質にそれ自体を固定するよう意図された10個のアスパラギン酸残基の配列をそのN末端に含有する伸長形態のsPHEXの設計、産生および精製に関するデータを提供する。
【0090】
10sPHEX発現ベクター
以下のオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、pCDNA3‐RSV‐sPHEX‐NEOベクター(Boileau G. et al., Biochem. J. (2001)355, 707-13)中に、部位特異的突然変異誘発(QuickChange, Stratagene)によりBspEIエンドヌクレアーゼ制限部位を挿入した:
【0091】
【化2】

【0092】
【化3】

【0093】
六量体BspEI配列(下線を付した)を、イン・フレームで、sPHEX DNA配列の上流に挿入した。この構築物は、図8においてそれぞれ位置41および42のロイシンおよびセリン間で切断可能である組換えタンパク質をコードする。したがってそれは、2つの外因性アミノ酸、その後の下流のデカ‐アスパラギン酸塩、次にこの後の2つの付加的外因性アミノ酸からなる。これら4つの外因性アミノ酸は、複合体を産生するために用いられるクローニング戦略から得る。これらの外因性アミノ酸は、複合体の酵素活性を無効にしないことが示された(この構築物の特定の活性を示す図12参照)が、しかしなしでも済ませ得る。これらの外因性アミノ酸の下流は、したがって、図10に示された配列の位置46のセリンで出発するネイティブPHEXの外部ドメイン断片である。修飾pCDNA3‐RSV‐NEOベクターをBspEIで切断し、次にアルカリ性ホスファターゼで消化して、5’リン酸塩部分を除去した。デカ‐アスパラギン酸塩をコードするオリゴヌクレオチド二重鎖:[5’-CCGGAGATGACGATGACGATGACGATGACGATGACT-3’(配列番号29)および3’-TCTACTGCTACTGCTACTGCTACTGCTACTGAGGCC-5’(配列番号30)]を、先ずT4ポリヌクレオチドキナーゼでその5’末端でリン酸化し、そしてBspEI消化ベクターに結紮した。これは、pCDNA3‐RSV‐D10sPHEX‐NEOベクターを生じた(図3)。このベクターは図7に示した配列を含んだが、これは、図8に示したアミノ酸配列を有する組換え切断可能PHEXをコードする。
【0094】
組換えD10sPHEXの発現
10sPHEXタンパク質の安定発現を誘導するために、リポフェクタミン‐PlusTMリポソームトランスフェクションキット(Invitrogen)を用いて、pCDNA3‐RSV‐D10sPHEX‐NEOベクターをLLC‐PK1細胞(ブタ腎臓細胞;ATCC番号CRL‐1392)中でトランスフェクトした。400 μg/mlのG‐418(Life Technologies)を培地に付加することにより、トランスフェクト化細胞を選択した。PHEX蛍光酵素検定[Campos M. et al. Biochem. J. (2003) 373, 271-9]を用いて、DsPHEX発現に関してG‐418耐性細胞のクローンをスクリーニングした。消費培地中の回収されたタンパク質の見かけの分子量を、前に記載されたように(Ruchon AF et al. J. Bone Miner. Res. (2000) 15, 1440-1450)組換えヒトPHEX断片(K121〜E294)に対して生じたモノクローナル抗体を用いて、イムノブロッティングにより概算した。1〜2 mgのD10sPHEX/リットルを発現するG‐418耐性クローンを、タンパク質産生のために用いた。細胞を、培地(199培地、6%FBS、1 mMピルビン酸ナトリウム、ペニシリン1×105U/リットル、ストレプトマイシン100 mg/リットルおよび1%G‐418)1.75リットル中に7×107の密度でCellstack‐10TM(Corning)中に植え付けた。37℃で5%CO2で4日間、1.75リットルのDMEM+10 mM酪酸ナトリウム中で細胞をインキュベートすることにより、D10sPHEX発現を増大させた後、消費培地を収穫した。
【0095】
精製および特性化
細胞上清を4℃で5分間、500×gで遠心分離し、そしてUltrasetteTM30クロスフロー濾過装置(Pall Canada)を用いてガラス繊維(Fisher, APFC09050)上で濾過し、10〜40倍に濃縮した。1 M酢酸を用いて溶液のpHを5.6にした後、50 mM酢酸ナトリウム、100 mMNaCl、pH5.6(SP緩衝液)に対して4℃で一晩透析した。透析上清を、4 ml/分の流量で、SP緩衝液で予め平衡させておいた20 mlスルホプロピル‐セファロース陽イオン交換カラム(Amersham Pharmacia Biotech)上に投入した。280 nm吸光度ベースラインに達するまで、カラムを同一流量で同一緩衝液で洗浄した。次に夾雑タンパク質のほとんどを、SP緩衝液中での226 mMNaCl過程で溶離した。次に280 mMNaCl過程で、D10sPHEXを溶離した(図4A)。SDS‐PAGEにより、そしてPHEX酵素活性検定を用いて、分画を分析した。sPHEXを含有する分画をプールし、20 mMMOPS、pH7、250 mMNaClに対して広範に透析した後、5 ml/分で5 mlのブルー・セファロースTMHP(Amersham Pharmacia)カラム上に投入した。カラムを同一緩衝液を同一流量で用いてすすぎ、NaCl濃度を段階的に350 mMに増大することにより、D10sPHEXタンパク質のほとんどを回収した(図4B)。最終分画の純度は、95%より高かった。あるいはブルー・セファロースTMをヘパリン‐セファロース(Amersham Pharmacia)に取替え得たが、この上でDsPHEXは一連のpH(5〜8)に亘ってしっかり結合する。NaCl勾配を用いて、D10sPHEXを溶離した。純度は90%を上回ると確定された。D10sPHEXを濃縮し、Centriprep-50TMカートリッジを用いて1 mMリン酸ナトリウム、pH7.4、150 mMNaClに対して透析した。透析試料を、0.22 μm膜上の滅菌環境で濾過した。精製D10sPHEXは、4℃で数ヶ月に亘って安定したままであることが示された。標準としてウシ血清アルブミン(BSA)を用いたブラッドフォード法(DCタンパク質検定キット;Biorad)を用いて、タンパク質濃度を確定した。SDS‐PAGE4〜12%上に分解されるタンパク質のSypro-RubyTM(Molecular Probes)染色により、タンパク質純度を査定した(図3)。蛍光発生基質を用いて、D10sPHEX酵素活性を確定した。
【0096】
Hypマウスにおけるアルカリ性ホスファターゼの循環レベルに及ぼすsPHEXおよびD10sPHEX注射の影響
X連鎖性Hypマウスは、PHEX遺伝子の3’領域における大欠失を保有し、ヒトX連鎖性低リン血症性くる病(XLH)のネズミ相同物である。したがってこれらのマウスは、XLHの病理生理学を研究するための、ならびに前臨床試験における治療薬の効力を試験するための有用なモデルを代表する。
【0097】
したがって2週間の期間に亘って、Hyp/Yマウスにボーラス静脈内注射により、D10sPHEXおよびsPHEXの潜在的治療効果を調べた。
【0098】
10sPHEXおよびsPHEXをビヒクルに対して透析し、溶液を0.22 μm低結合タンパク質フィルターを通して濾過した。溶液を分取して、そしてそれぞれ蛍光発生酵素検定およびブラッドフォード法により酵素活性および濃度に関して再検定した。
【0099】
各マウスを気化イソフルラン(2%)で麻酔し、D10sPHEXまたはsPHEXを鎖骨下静脈を介した静脈内ボーラスとして注射した。用量は、各群に関して5 mg/体重1 kgであった。動物を、14連続日の間、1日1回処置した。血液試料(0.1〜0.2 ml)を、試験日−3〜+15(剖検前、最終注射後24時間)に麻酔下で鎖骨下静脈を介して収集した。総アルカリ性ホスファターゼ(ALP)レベルを、希釈血清(0.9%生理食塩水USP90 μlを伴う血清試料30 μl)中で検定した。ヒト患者のための適切な投与量はマウスに用いられるものに比例しないが、しかしこれらの投与量は、公表済み錠剤を用いてヒトに適し得る投与量範囲の予測に役立つ。
【0100】
図6に示したように、D10‐伸長形態のsPHEXは、正常sPHEX形態より大きいアルカリ性ホスファターゼレベル低減を誘導した。
【0101】
実施例4
組換えGSTとのD10融合は、in vitroでの骨の無機相とのその結合を増大する
精製タンパク質のフルオレセイン標識化
組換え精製タンパク質を、フルオレセイン‐イソチオシアネート(FITC、Molecular Probes F143)で標識した。10 mMリン酸ナトリウム、50 mMNaCl緩衝液、pH7に、最終タンパク質濃度1 mg/mlでタンパク質を付加することにより、反応を実行した。20 mg/mlの濃度でDMSO中に溶解したFITCを付加することにより標識化反応を開始して、タンパク質野独活に関して20:1モル比とした。混合物を、室温で1時間反応させた。標識化タンパク質をPD‐10TMカラム(Pharmacia)上で遊離フルオレセインから分離した後、結合緩衝液(1 mMリン酸ナトリウム、150 mMNaCl、pH7.4)中で透析した。
【0102】
骨の無機相の調製
長骨をラットから切り出して、液体窒素冷却乳鉢中で粉末に粉砕した。粉末をマイナス80℃に保持するか、あるいは直接用いた。粉末(300 mg)のアリコートを8 mlのPBSで3回洗浄し、8 mlの1 MHClを付加した。混合物を、室温で1時間、回転ミキサー上の懸濁液中に保持した。不溶性分画を回転沈降させて、透明酸性上清を収集した。この酸性溶液は、室温で少なくとも2週間安定していた。
【0103】
20 μlの酸性骨抽出物のアリコートを2 μlの10 MNaOHと混合し、沈殿物を、室温で3分間、10,000×gでペレット化した。ペレットを、結合緩衝液100 μl中に再懸濁することにより、2回すすいだ。次に骨抽出物を、結合緩衝液中の5〜45 μgのフルオレセイン標識化タンパク質を含有する溶液100 μlと混合し、これにリン酸塩を付加して、採集野独活を80 mMとした。試料を、回転ホイール上で室温で30分間インキュベートして、懸濁液中の無機相を保持した。次に試料を、室温で3分間、遠心分離した。結合タンパク質を含有するペレットを、200 μlの0.5 MEDTA、pH8中に溶解した。存在する遊離タンパク質の量を概算するために、100 μlの0.5 MEDTA、pH8を上清に付加した。励起に関して494 nmに、発光に関して516 nmに設定した96ウエルプレート読取器で、異なる試料の蛍光を測定した。
【0104】
結果
50 μgのフルオレセイン標識化GSTおよびGST‐D10を含有する試料を、上記の結合検定に用いた。図9Aは、D10配列とGSTの融合が骨の無機相との結合の6倍増加を生じたことを示す。
【0105】
実施例5
sPHEXとのD10融合は骨とのその結合を増大する
上記の実施例4に記載したものと類似の手法を用いて、50 μgのフルオレセイン標識化sPHEXおよびD10sPHEXを含有する資料を結合検定に用いた。図9Bは、sPHEXとのD10配列の融合が骨の無機相との結合において4.3倍増を生じた、ということを示す。
【0106】
それに対比して、D6‐sPHEXを構築し、動物におけるin vivo注射後に試験した(上記実施例1に記載)が、骨との組換えタンパク質の結合を促進しなかった(データは示していない)。
【0107】
実施例6
可溶性形態のアルカリ性ホスファターゼとのD10融合は骨の無機相へのそのターゲッティングを増大する
ヒト組換え可溶性アルカリホスファターゼ、sALPおよびsALP‐D10をコードする発現ベクターの構築
RT‐PCRにより骨髄ポリA RNA(Clonetech)から、組織非特異性アルカリホスファターゼ(ALP)をコードするヒト全長cDNAを得た。要するに、一次鎖合成系(Invitrogen)を用いて、SuperscriptIITMおよびオリゴdT12-18で20 ngのポリAを逆転写した。RT過程の1/20thを表わすアリコートを、ALP特異的オリゴ(正方向5’-gataaagcaggtcttggggtgcacc-3’(配列番号*);逆方向5’-gttggcatctgtcacgggcttgtgg-3’ (配列番号*))および拡大高忠実度酵素キットTM(Roche)とのPCR反応に直接用いた。その結果生じたALP特異的生成物(1644 bp)を、Qiaquickゲル抽出キットTM(Qiagen)を用いてアガロースゲル(1%)上で分離し、それから精製した。次にALP cDNAをpCR4‐ブラント‐TOPOTMベクター(Invitrogen)に結紮し、Top10TM細菌(Invitrogen)中で形質転換して、コロニーPCRにより陽性クローンを同定した。自動DNAシーケンシングにより、cDNAの同一性を立証した。
【0108】
取り出されたGPIアンカー・シグナルを有する分泌形態のALP(sALP)を、拡大高忠実度酵素キットTMを用いてPCRにより構築した。それらは、残基1〜502、その後の終止コドン(sALP)またはデカ・アスパラギン酸塩ターゲッティングモチーフおよび停止コドン(sALP‐D10)を含んだ。どちらの場合も、正方向プライマー(5’-tggatccaccatgatttcaccattcttagtac-3’(配列番号40))は開始体メチオニン(下線)に及び、そしてBamHI部位(イタリック体)を包含した。逆方向プライマー(sALP:5’-ttctagactacgagctggcaggagcacagtggccg-3’(配列番号41);sALP‐D105’-ttctagactagtcgtcatcatcgtcatcatcgtcgtcatccgagctggcaggagcacagtggccg-3’(配列番号42))は、終止コドン(下線)およびXbaI部位(イタリック体)を含有した。PCR産物をBamHIおよびXbaIで消化し、そして同一酵素で予備消化されていたpCDNA3.1‐RSV中でクローン化した。プラスミドDNAをシーケンシングした。
【0109】
ALP蛍光酵素検定
Gee KR等(Anal. Biochem. 273, 41-48 (1999))に従って蛍光発生性基質としてリン酸4‐メチルウンベリフェリル(MUP、Molecular Probes, M8425)を用いて、sALPおよびsALP‐D10の酵素活性を検定した。典型的には、最終容積200 μlで10 μMのMUPを用いて、96ウエルプレート中で37℃で検定を実行した。360 nmでの励起時に450 nmで30分間毎分、Spectramax GeminiTM(Molecular Devices)を用いて、読取りを記録した。発光波長カットオフを435 nmに設定した。線形回帰フィット(r2は0.98またはそれ以上)により、ALP開始速度率を概算した。
【0110】
組換えsALPおよびsALP‐D10タンパク質の発現
組換えsALPおよびsALP‐D10タンパク質が分泌されたか否かを確定するために、リポフェクタミン‐プラスリポソームトランスフェクションキットTM(Invitrogen)を用いて、各構築物(pCDNA3‐RSV‐sALP‐NEOおよびpCDNA3‐RSV‐sALP‐D10‐NEO)をHEK‐293S細胞(ヒト胚腎細胞;ATCC番号CRL‐1392)中で一過性にトランスフェクトした。HEK‐293S細胞を、陰性対照としても偽トランスフェクトした。トランスフェクション翌日に、細胞を無血清DMEM中で24時間インキュベートした。状態調節培地を収集し、4℃で5分間、14000 rpmで遠心分離して、死細胞および壊死組織片を除去した。上清を、それぞれALP蛍光酵素検定およびウエスタンブロッティングを用いて、sALPまたはsALP‐D10酵素活性および発現に関して検定した。ウエスタンブロッティングのために、消費培地を、トリクロロ酢酸(最終濃度10%(v/v))を用いて氷上で1時間沈殿させた。沈殿タンパク質を4℃で20分間、14000 rpmで回転沈降させて、冷アセトンで1回洗浄し、乾燥して、DTTを含有する1×Laemmli試料緩衝液60 μl中に再懸濁し、5分間煮沸した。
【0111】
sALPおよびsALP‐D10の細胞内含量を評価するために、細胞をPBSで3回洗浄し、そして氷上で20分間、150 mMNaClおよび1%NP‐40を含有するトリス‐HCl50 mM(pH8)200 μlで溶解した。溶解物を回転沈降させて、上清を、それぞれALP蛍光酵素検定およびウエスタンブロッティングを用いて、sALPまたはsALP‐D10酵素活性および発現に関して検定した。ウエスタンブロッティングのために、50 μlのアリコートをDTTを含有する6×Laemmli試料緩衝液10 μlと混合し、5分間煮沸した。
【0112】
試料をNovex precastTM4〜12%トリス‐グリシンポリアクリルアミドゲル(Invitrogen)上に載せて、10%メタノールを含有するトリス‐グリシンとともに0.45 μmニトロセルロース(プロトラン、Schleicher & Schuell, Keene, NH)上に移した。膜をポンソー・レッドで染色し、0.05%トゥイーン20TMを含有するPBS(PBST)および5%ドライミルクを用いて、室温で1時間遮断した。次に膜を、抗hBAP抗体(mAb 4B‐78、Developmental Studies Hybridoma Bank)(10ドライミルクを含有するPBST中1:1000)およびホースラディッシュペルオキシダーゼと結合されたウサギ抗マウスIgG(Sigma)(5%ドライミルクを含有するPBST中1:12000)とともに室温で順次インキュベートした。Western Lightning化学発光試薬プラスTM(PerkinElmer)を用いて、シグナルを発生させた。
【0113】
一過性トランスフェクション後にHEK293の状態調節培地中で測定されたALP酵素活性は非常に高く、pCDNA3‐RSV‐sALP‐NEO(sALP)およびpCDNA3‐RSV‐sALP‐D10‐NEO(sALP‐D10)に関して類似の大きさを有する(図13)。この活性は、それが偽トランスフェクト化細胞(mock)中で検出可能でなかったので、トランスフェクト化されたプラスミドDNAに特異的であった。培地中で測定された相対的活性は、細胞抽出物中で測定されたものより35倍大きく、したがってsALPおよびsALP‐D10の分泌性を証明した。したがってsALPおよびsALP‐D10の両方に関して、組換え組織非特異的ヒトアルカリホスファターゼに対して産生されたモノクローナル抗体(mAb 4B‐78、Developmental Studies Hybridoma Bank)を用いたイムノブロッティングは、細胞抽出物中よりも非常に強力な状態調節培地中のシグナルを明示した(図14B、レーン2、3対5、6を比較)。偽トランスフェクト化試料に置いては、シグナルは視覚化されなかった(図14B、レーン4および7)。偽トランスフェクト化細胞中に出現するシグナルは、BSA痕跡からなる。検出されたタンパク質の見かけの分子量は、細胞抽出物(矢印)中では70 kDaであり、そして状態調節培地(矢頭)中ではわずかに高いと概算された。膜のポンソー・レッド染色を実施して、試料の均一負荷を監視した(図14A)。
【0114】
sALPおよびsALP‐D10を構成的に分泌するHEK293細胞の生成
sALPおよびsALP‐D10タンパク質の安定発現を誘導するために、リポフェクタミン‐プラスリポソームトランスフェクションキットTM(Invitrogen)を用いて、pCDNA3‐RSV‐sALP‐NEOおよびpCDNA3‐RSV‐sALP‐D10‐NEOベクターをHEK‐293S細胞中で別々にトランスフェクトした。培地に800 μg/mlのG418(Life Technologies)を付加することにより、トランスフェクト化細胞を選択した。各トランスフェクションのために、ALP蛍光酵素検定を用いて消費培地中のsALPおよびsALP‐D10発現に関して、G‐418耐性細胞のプールを分析した。安定細胞株から収集した状態調節培地を、骨無機質に関する結合検定試験のために用いた。
【0115】
骨の再構成無機相との結合
20 μl酸性骨抽出物のアリコートを2 μlの10 MNaOHと混合し、沈殿物を、室温で3分間、10,000×gでペレット化した。ペレットを100 μlの緩衝液(1 mMリン酸ナトリウム、pH7.4+150 mMNaCl)中で2回すすいだ。次にその結果生じた骨の無機相(0.37 mgの乾燥粉末と等価)を、結合緩衝液(80 mMリン酸ナトリウム、pH7.4+150 mMNaCl)中のsALPまたはsALP‐D10タンパク質を含有する溶液100 μlと混合した。試料を回転ホイール上で室温で30分間インキュベートして、懸濁液中に無機相を保持した。次に試料を室温で3分間遠心分離した。結合タンパク質を含有するペレットを、0.1%BSAを含有するALP酵素検定緩衝液180 μlと混合し、20 μlの100 μMMUPを付加することにより反応を開始した。より均質な検定状態を可能にするために、検定の継続時間の間1分毎に10秒間、96ウエルプレートを振盪した。
【0116】
再構成無機骨相上に保有される酵素活性を、結合検定に付加された等価の酵素活性と比較した。骨無機相に結合される総タンパク質活性の0.98%および13.3%の値を、それぞれsALPおよびsALP‐D10に関して算定した。sALP‐D10に有利になる13倍より大きい結合差は、C末端融合デカ・アスパラギン酸塩配列が骨の無機相に対してsALPを直接標的化する、ということを示唆する。さらに、骨の無機相に結合されるALP活性を直接的に測定することが可能であるという事実は、酵素が、触媒的適格形態でヒドロキシアパタイト結晶に結合される、ということを示す。
【0117】
このような融合タンパク質は骨に対して直接的に標的化され、この場合、PPiの蓄積が骨格石灰化を抑制する。
【0118】
実施例7
D‐ALPは骨石灰化に及ぼすピロリン酸塩の抑制作用を低減する
UMR106細胞を、集密まで増殖させた。次にそれらを、10 mMβ‐グリセロホスフェートを含有する培地中でさらに7日間培養して、石灰化を誘導した。この7日の培養期間の間中、75 μMピロリン酸塩(PPi)、石灰化阻害剤およびアルカリ性ホスファターゼ基質を用いて、または用いずに、細胞を処理する。PPi誘導性石灰化抑制を救助するアルカリ性ホスファターゼの能力を査定するために、PPiを用いてまたは用いずに処理した細胞を、ヒト胚腎細胞であるHEK293から産生される種々の濃度の半精製D10‐sALPを用いて培養した。45Ca取込みにより、石灰化を査定した。この実験に用いられるパラメーターを、以下の表2に示す。
【0119】
【表2】

【0120】
PPiによる7日間の処理は、石灰化の43%低減を生じた。D10sALPを用いた培養の同時処理は、この石灰化抑制の用量応答性救助を生じた。1.5単位のD10‐sALPによる処理は、30%低減を生じ、3および4.5単位は24%低減を、そして6単位は石灰化の15%低減を生じ、PPi誘導性石灰化抑制の65%救助に対応する。
【0121】
これらの結果は、D‐sALPによる石灰化する骨芽細胞の処理がPPiにより誘導される石灰化抑制を用量応答的に救助する、ということを示す。
【0122】
上記の実施例は、組換えタンパク質とのポリアスパラギン酸塩融合が、それが単独で投与される場合と比較して、骨の無機相とのまたは骨組織とのそれらの結合を増大し、そしてその生物学的活性を実施するタンパク質の能力を増大する、ということを示す。
【0123】
その好ましい実施形態により本発明を本明細書中に上記してきたが、添付の特許請求の範囲に定義されるような本発明の本質および性質を逸脱しない限り、本発明は修正され得る。
【0124】
【化4】

【化5】

【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】図1は、CL‐4Bクロマトグラフィー後のSDSポリアクリルアミドゲル上の純粋状態のGSTおよびGST‐D10タンパク質を示す。
【図2】図2は、特定組織と関連して見出される組換えGSTの注射用量のパーセンテージにより、D6、D10およびD16ペプチドモチーフによる骨とのGST結合の促進を示す。
【図3】図3は、プラスミドpCDNA3‐RSV‐D10sPHEX‐NEOベクターの模式図を提示する。
【図4】図4は、SP‐セファロースTMHP(A)およびブルー・セファロースHP(B)に関するPHEXの280 nm検出のクロマトグラフィープロフィルを示す。直線は緩衝液比率を表わす。
【図5】図5は、D10sPHEX精製手法を通して収集された異なる分画のSypro-rubyTM染色SDS‐PAGE分析を示す。
【図6】図6は、14日間、sPHEXおよびD10sPHEXのi.v.投与により毎日注射されたHypマウスで観察された血清アルカリ性ホスファターゼレベル(ALP)における変動を示す。U/l値は、注射レジメンの3日目(グラフ中の0 U/lに対応する)および15日目の間に観察された低減を表わし、6匹の動物でなされた測定の平均値である。
【図7】図7は、D10sPHEXを産生するよう切断可能なタンパク質をコードする組換えDNA配列のヌクレオチド配列を示す(配列番号1)。
【図8】図8は、図7のD10sPHEXによりコードされるアミノ酸配列を示す(配列番号2)。
【図9】図9は、骨の無機相とのタンパク質(A. GST、B. sPHEX)の結合を、それらのデカ‐アスパラギン酸塩融合相手のものと比較する。
【図10】図10は、ネイティブ(または膜結合)PHEXのヌクレオチド配列を示す(配列番号3)。
【図11】図11は、図8の組換え切断可能タンパク質の切断により産生されるD10‐sPHEX複合体のアミノ酸配列(配列番号4)を示す。
【図12】図12は、種々のsecPHEX構築物の構造および活性を模式的に示す。
【図13】図13は、sALP‐D10およびsALPをコードする発現ベクターで一過性トランスフェクトされたHEK293の可溶性細胞抽出物および消費培地中のアルカリホスファターゼ活性を蛍光定量的測定によりグラフで示す。
【図14】図14は、一過性トランスフェクション後のHEK‐293の消費培地および細胞抽出物中の特異的B4‐78抗体を用いたウエスタンブロッティングによるsALPおよびsALP‐D10の検出をグラフで示す(パネルA:ポンソー・レッド染色;パネルB:ブロットα‐B4‐78)。左側に示されているのは、分子量マーカーのサイズである。
【図15】図15は、分泌アルカリ性ホスファターゼと融合されたデカ‐アスパラギン酸塩の骨無機相との結合をグラフで示す。
【図16】図16は、A. 可溶性アルカリ性ホスファターゼのヌクレオチド配列(配列番号5);ならびにB. その可溶性アルカリ性ホスファターゼのアミノ酸配列(配列番号6)を示す。
【図17】図17は、A. 本発明の複合体、即ちsALP‐D10をコードするヌクレオチド配列(配列番号7);ならびにB. その複合体のアミノ酸配列(配列番号8)を示す。
【図18】図18は、PPi媒介性石灰化抑制に及ぼすD10‐sALPの作用をグラフで示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の:
A)X‐Dn‐Y‐タンパク質‐Z;および
B)Z‐タンパク質‐Y‐Dn‐X
(式中、Xは、存在しないか、あるいは少なくとも1個のアミノ酸を有するアミノ酸配列であり;
Yは、存在しないか、あるいは少なくとも1個のアミノ酸を有するアミノ酸配列であり;
Zは、存在しないか、あるいは少なくとも1個のアミノ酸を有するアミノ酸配列であり;そして
nは、n=10〜16であるポリアスパラギン酸塩である)
からなる群から選択される構造を有する骨送達複合体。
【請求項2】
タンパク質がX染色体上のエンドペプチダーゼと相同性を有する可溶性リン酸塩調節遺伝子(sPHEX)である、請求項1記載の骨送達複合体。
【請求項3】
前記構造がX‐Dn‐Y‐sPHEX‐Zである、請求項2記載の骨送達複合体。
【請求項4】
sPHEXが図10のアミノ酸46〜749;図10の47〜749;図10の48〜749;図10の49〜749;図10の50〜749;図10の51〜749;図10の52〜749;図10の53〜749;および図10の54〜749からなる群から選択される配列を有する、請求項3記載の骨送達複合体。
【請求項5】
sPHEXが図10のアミノ酸46〜749の配列からなり、n=10である、請求項3記載の骨送達複合体。
【請求項6】
タンパク質が可溶性アルカリ性ホスファターゼ(sALP)である、請求項1記載の骨送達複合体。
【請求項7】
前記構造がZ‐sALP‐X‐Dn‐Yである、請求項6記載の骨送達複合体。
【請求項8】
sALPが図16Aに記述されたような配列によりコードされる、請求項7記載の骨送達複合体。
【請求項9】
sALPが図16Bに記述されたような配列を有する、請求項7記載の骨送達複合体。
【請求項10】
n=10である、請求項7記載の骨送達複合体。
【請求項11】
以下の:
a)図8に記述されるようなアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
b)図11に記述されるようなアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
c)図7に記述されるようなヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;
d)(a)、(b)または(c)におけるヌクレオチド配列のいずれかと完全に相補的なヌクレオチド配列;および
e)高緊縮条件下で(a)、(b)、(c)または(d)におけるヌクレオチド配列のいずれかとハイブリダイズ可能であるヌクレオチド配列(この場合、高緊縮条件は以下の:前ハイブリダイゼーション、ならびに6×SSC、5×デンハート試薬、0.5%SDSおよび100 mg/mlの変性断片化サケ精子DNA中で68℃でのハイブリダイゼーション;そして2×SSCおよび0.5%SDS中で室温で10分間の;2×SSCおよび0.1%SDS中で室温で10分間の;ならびに0.1×SSCおよび0.5%SDS中で65℃で3回5分間の洗浄:を包含する)
からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列を含む単離核酸分子。
【請求項12】
請求項11記載の単離ヌクレオチド配列を含む組換えベクター。
【請求項13】
請求項12記載のベクターを含む組換え宿主細胞。
【請求項14】
以下の:
a)図17Aに記述されるようなヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;
b)図17Bに記述されるようなアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
c)(a)または(b)におけるヌクレオチド配列のいずれかと完全に相補的なヌクレオチド配列;および
d)高緊縮条件下で(a)、(b)または(c)におけるヌクレオチド配列のいずれかとハイブリダイズ可能であるヌクレオチド配列(この場合、高緊縮条件は以下の:前ハイブリダイゼーション、ならびに6×SSC、5×デンハート試薬、0.5%SDSおよび100 mg/mlの変性断片化サケ精子DNA中で68℃でのハイブリダイゼーション;そして2×SSCおよび0.5%SDS中で室温で10分間の;2×SSCおよび0.1%SDS中で室温で10分間の;ならびに0.1×SSCおよび0.5%SDS中で65℃で3回5分間の洗浄:を包含する)
からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列を含む単離核酸分子。
【請求項15】
以下の:
a)図10に記述されるようなアミノ酸54〜749を含むsPHEXをコードするポリヌクレオチド;
b)図10に記述されるようなアミノ酸53〜749を含むsPHEXをコードするポリヌクレオチド;
c)図10に記述されるようなアミノ酸52〜749を含むsPHEXをコードするポリヌクレオチド;
d)図10に記述されるようなアミノ酸51〜749を含むsPHEXをコードするポリヌクレオチド;
e)図10に記述されるようなアミノ酸50〜749を含むsPHEXをコードするポリヌクレオチド;
f)図10に記述されるようなアミノ酸49〜749を含むsPHEXをコードするポリヌクレオチド;
g)図10に記述されるようなアミノ酸48〜749を含むsPHEXをコードするポリヌクレオチド;
h)図10に記述されるようなアミノ酸47〜749を含むsPHEXをコードするポリヌクレオチド;
i)図10に記述されるようなアミノ酸46〜749を含むsPHEXをコードするポリヌクレオチド;
j)(a)〜(i)におけるヌクレオチド配列のいずれかと完全に相補的なヌクレオチド配列;および
k)高緊縮条件下で(a)〜(j)におけるヌクレオチド配列のいずれかとハイブリダイズ可能であるヌクレオチド配列(この場合、高緊縮条件は以下の:前ハイブリダイゼーション、ならびに6×SSC、5×デンハート試薬、0.5%SDSおよび100 mg/mlの変性断片化サケ精子DNA中で68℃でのハイブリダイゼーション;そして2×SSCおよび0.5%SDS中で室温で10分間の;2×SSCおよび0.1%SDS中で室温で10分間の;ならびに0.1×SSCおよび0.5%SDS中で65℃で3回5分間の洗浄:を包含する)
からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列を含む機能性可溶性PHEXをコードする単離核酸分子。
【請求項16】
その5’末端にD10〜D16からなる群から選択されるポリ‐アスパラギン酸塩をコードするポリヌクレオチドをさらに含む請求項15記載の単離核酸分子。
【請求項17】
以下の:
a)図10に記述されるようなアミノ酸54〜749;
b)図10に記述されるようなアミノ酸53〜749;
c)図10に記述されるようなアミノ酸52〜749;
d)図10に記述されるようなアミノ酸51〜749;
e)図10に記述されるようなアミノ酸50〜749;
f)図10に記述されるようなアミノ酸49〜749;
g)図10に記述されるようなアミノ酸48〜749;
h)図10に記述されるようなアミノ酸47〜749;
i)図10に記述されるようなアミノ酸46〜749;
からなる群から選択される配列を含む単離sPHEXポリペプチド。
【請求項18】
請求項1記載の骨送達複合体ならびに製薬上許容可能な担体を含む骨送達組成物。
【請求項19】
哺乳類の骨組織にタンパク質を送達するための、請求項1〜10のいずれか一項に記載の骨送達複合体の使用。
【請求項20】
X染色体上のエンドペプチダーゼと相同性を有する機能性リン酸塩調節遺伝子(PHEX)の欠乏または不十分量により特性化される骨欠損に関連した症状または疾患を治療するための請求項2〜5のいずれか一項に記載の骨送達複合体の使用であって、前記複合体が製薬上許容可能な担体中に存在する使用。
【請求項21】
X染色体上のエンドペプチダーゼと相同性を有する機能性リン酸塩調節遺伝子(PHEX)の欠乏または不十分量により特性化される骨欠損に関連した症状または疾患を治療するための薬剤の製造における、請求項2〜5のいずれか一項に記載の骨送達複合体の使用。
【請求項22】
症状または疾患がX連鎖性低リン血症性くる病(XLH)である請求項20または21記載の使用。
【請求項23】
機能性アルカリ性ホスファターゼの欠乏または不十分量により特性化される骨欠損に関連した症状または疾患を治療するための請求項6〜10のいずれか一項に記載の骨送達複合体の使用であって、前記複合体が製薬上許容可能な担体中に存在する使用。
【請求項24】
機能性アルカリ性ホスファターゼの欠乏または不十分量により特性化される骨欠損に関連した症状または疾患を治療するための薬剤の製造における請求項6〜10のいずれか一項に記載の骨送達複合体の使用であって、前記複合体が製薬上許容可能な担体中に存在する使用。
【請求項25】
症状または疾患が低ホスファターゼ症である、請求項23または24記載の使用。
【請求項26】
骨送達タンパク質‐ペプチド複合体中に用いるためのペプチドのスクリーニング方法であって、以下の:
候補ペプチドをレポータータンパク質と融合してタンパク質‐ペプチド複合体を生成し;
前記複合体を骨組織または骨の無機相と接触させる;
ステップを含み、ここで、前記候補ペプチドは、骨組織または骨の無機相上のレポータータンパク質の存在が、それが存在しない場合よりそれが候補ペプチドと複合される場合により高い場合に選択される
前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2007−533669(P2007−533669A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−508698(P2007−508698)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【国際出願番号】PCT/CA2005/000615
【国際公開番号】WO2005/103263
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(503073293)エノビア ファーマ インコーポレイティド (1)
【Fターム(参考)】