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骨造成のための骨セメント系
説明

骨造成のための骨セメント系

固体成分及び液体成分を有する骨セメントが提供される。骨セメントの形成のために、前記固体成分と前記液体成分とを一緒に混合する。前記固体成分と前記液体成分との混合の完了後に、前記骨セメントは、目標とされる解剖学的部位に又は解剖学的部位内に、例えば骨に又は骨内に、手動での適用又は手動での注入のために有効な初期粘度を有し、前記セメントは、時間又は温度の両方に関して、目標とされる解剖学的部位からのセメントの最少の漏洩で又は漏洩なしで、目標とされる解剖学的部位、例えば骨粗鬆症の骨又は骨折した椎体の均質な充填のために適した安定な粘度範囲を有する。更に、上記骨セメントの初期粘度及び安定な粘度の双方は、上記骨セメントを、手動式シリンジ又はマルチプルシリンジを用いた注入のために有効にする範囲内にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願の参照
本出願は、2010年3月5日付けで提出された米国仮出願番号61/310,759に基づき優先権を主張し、この仮出願の開示は、そのまま全てが明らかにされているのと同様に、参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本願発明は、一般に、骨造成に使用するための改良された骨セメント組成物及び骨セメント系に関する。特に、本願発明は、即座に手動で注入するために適した粘度範囲を有する骨セメントの組成物に関する。本発明のこの改良された骨セメントは、充填の均一性も高めかつ漏洩流の低減をもたらす。
【0003】
背景技術
骨セメントは、通常では、注入の直前に、骨セメント粉末、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)、液体モノマー、例えばメチルメタクリレートモノマー(MMA)、X線造影剤、例えば硫酸バリウム及び重合反応の活性剤、例えばN,N−ジメチル−p−トルイジンを混合して液体混合物を形成させることにより調製される。安定剤、薬剤、充填剤、着色剤及び繊維を含むがそれに限定されない他の添加物も、同様にこの骨セメント中に含有させることができる。これらの成分は混合するやいなや反応して、即座に重合が行われるため、骨セメントの成分は、一般に、使用者が所望な骨セメントを形成する準備ができるまで、それぞれ別個に保管される。
【0004】
セメントの漏洩は椎体形成術及び他の同様の方法の間では望ましくない、それというのもこのセメントの漏洩は患者を重大な危険にさらしかねないためである。従って、このセメントの粘度は、望ましくない漏洩の低減の点で重大なファクターである。しかしながら、粘度が上昇するセメント使用に伴って、高い力の注入システムが使用される。このような高い力の注入システムは、ヒトの物理的な限界を超え、外科医のために重要な触覚力のフィードバックを妨げかねない。高い粘度の骨セメントは、この組成物が十分な粘度に達するまでに必要な長い待機時間を必要としかねず、それにより全体の作業時間は減少する。高い粘度の骨セメントの他のあり得る欠点は、セメントと骨との間の僅かな入り込みであり、それによる補強された骨の機械強度を損なうことにある。
【0005】
骨セメント組成物及び/又はその使用の他の例は、米国特許第7,138,442号、米国特許第7,160,932号、米国特許第7,014,633号、米国特許第6,752,863号、米国特許第6,020,396号、米国特許第5,902,839号、米国特許第4,910,259号5,276,070号、米国特許第5,795,922号、米国特許第5,650,108号、米国特許第6,984,063号、米国特許第4,588,583号、米国特許第4,902,728号、米国特許第5,797,873号、米国特許第6,160,033号、US20070027230、EP1850797及びEP0701824及び米国特許出願第2007/0032567号に開示されている。
【0006】
経皮的椎体形成術は、脆弱化したか又はつぶれた椎体の治療のために骨セメントを使用し、かつ骨粗鬆症のような疾患により引き起こされた疼痛の低減を支援する一つの技術である。この椎体形成術において、骨折した椎体は骨セメントで造成される。この骨セメントは、椎体へ注入するやいなや重合及び硬化し、骨折を安定化する。患者の除痛は通常では即時であり、かつ椎体形成術は高い成功率を特徴とする。
【0007】
発明の概要
本願発明は、固体成分と液体成分とを合せることにより形成された骨セメントを記載する。上記固体成分は、造影剤、重合開始剤、リン酸カルシウムを基礎とする骨代替材料、及び固体ポリマーを有し、上記液体成分は、液体モノマー、重合促進剤及び場合による重合禁止剤を有する。本発明の実施態様によると、この骨セメントは、目標とされる解剖学的部位に又は解剖学的部位内に手動による注入のために適した注入可能な初期粘度を有し、この注入可能な初期粘度は、上記固体成分と液体成分とを合わせた後にほとんど即座に形成される。
【0008】
上記骨セメントの一実施態様によると、上記固体成分は、上記造影剤を、上記固体成分の約38〜約42質量%の範囲内で、上記重合開始剤を、上記固体成分の約0.3〜約0.5質量%の範囲内で、ヒドロキシアパタイトのような骨代替材料を、上記固体成分の約14〜約16質量%の範囲内で、及びポリ(メチルアクリレート−コ−メチルメタクリレート)、ポリ(メタ)アクリレート、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリ(メチルメタクリレート)、及び/又はポリ(メチルメタアクリレート−コ−スチレン)の1種以上のポリマー、ブレンド、混合物又はコポリマーを有することができる上記固体ポリマーを、上記固体成分の約43〜約46質量%の範囲内で含有する。
【0009】
他の実施態様によると、上記骨セメントは、上記造影剤の二酸化ジルコニウムを、上記固体成分の約40質量%で、上記骨代替材料のヒドロキシアパタイトを、上記固体成分の約15質量%で、及び上記固体ポリマーのポリ(メチルアクリレート−コ−メチルメタクリレート)とポリ(メチルメタクリレート)との混合物を、上記固体成分の約45質量%で含有する。他の実施態様によると、上記ポリ(メチルメタクリレート)は、上記固体ポリマーの約3質量%〜約15質量%の範囲内である。
【0010】
一実施態様によると、上記骨セメントは2分以下の待機期間を有する。他の実施態様によると、上記骨セメントは1分以下の待機期間を有する。更に他の実施態様によると、上記骨セメントは実質的に0分の待機期間を有する。
【0011】
本発明の一実施態様によると、上記骨セメントは、固化(又は硬化)の後に、上記骨代替材料を、上記固化した骨セメントの約11質量%で、上記造影剤を、上記固化した骨セメントの約29質量%で、上記固体ポリマーを、上記固化した骨セメントの約60質量%で含有する。
【0012】
他の実施態様によると、上記固体ポリマーは、約200kDa〜約1000kDaの平均分子量範囲を有する。更に他の実施態様によると、上記固体ポリマーは、約600kDa〜約700kDaの平均分子量範囲を有する。更に他の実施態様によると、上記固体ポリマーは、実質的に600kDaの平均分子量を有する。他の実施態様によると、上記固体ポリマーは、少なくとも一部が実質的に球状の重合したビーズを有する。
【0013】
一実施態様によると、上記骨代替材料は、約5μm〜約50μmの平均粒径範囲を有する焼結したヒドロキシアパタイト粒子を有する。他の実施態様によると、上記骨代替材料は、約10μm〜約30μmの平均粒径範囲を有する焼結したヒドロキシアパタイト粒子を有する。
【0014】
一実施態様によると、上記骨セメントは、上記造影剤の二酸化ジルコニウムを、上記固体成分の約40質量%で、上記重合開始剤を、上記固体成分の約0.4質量%で、上記骨代替材料のヒドロキシアパタイトを、上記固体成分の約15質量%で、ポリ(メチルアクリレート−コ−メチルメタクリレート)とポリ(メチルメタクリレート)との混合物を有することができる固体ポリマーを、上記固体成分の約45質量%で含有することができる。上記骨セメントは、さらに、上記液体モノマーの、メチルメタクリレートを、上記液体成分の約99.3質量%で、重合促進剤のN−N−ジメチル−パラ−トルイジンを、上記液体成分の約0.7質量%で、及び場合により、上記重合禁止剤のヒドロキノンを、上記液体成分の約60ppmで含有することができる。
【0015】
本発明のいくつかの実施態様によると、上記骨セメントは、50Pa・sより高い注入可能な初期粘度を有する。他の実施態様によると、上記骨セメントは約2分未満の待機時間を有する。他の実施態様によると、上記骨セメントは実質的に約0分の待機時間を有する。更に他の実施態様によると、目標とされる解剖学的部位は、1つ以上の椎体である。更に他の実施態様によると、上記骨セメントは、適用後に、目標とされる部位から最少の漏洩を示す。
【0016】
本発明によると、目標とされる解剖学的部位を治療するための骨セメントキットは、造影剤、重合開始剤、リン酸カルシウムを基礎とする骨代替材料及び固体ポリマーを有する固体成分を収容する第1の容器と、液体モノマー、重合促進剤、及び場合により重合禁止剤を有する液体成分を有する第2の容器とを有することが開示されている。上記固体成分と上記液体成分とは、目標とされる解剖学的部位に又は解剖学的部位内に最少の漏洩で、手動での注入のために適した初期粘度を有する骨セメントの形成のために合わせることができる。上記キットは、更に、場合により、上記骨セメントを注入するために適した1つ以上のシリンジを有することができる。
【0017】
本発明の更なる実施態様によると、本発明の上記全ての実施態様による骨セメントの製造方法が開示されている。この工程は次のことを含む:
第1の容器に、造影剤、重合開始剤、リン酸カルシウムを基礎とする骨代替材料、及び固体ポリマーを有する固体成分を充填する工程;
第2の容器に、液体モノマー、重合促進剤及び場合による重合禁止剤を有する液体成分を充填する工程;及び
上記液体成分と上記固体成分とをミキサーを用いて合わせる工程。
【0018】
本発明の他の実施態様によると、目標とされる解剖学的部位に又は解剖学部位内に、本発明の全ての実施態様による骨セメントを手動で注入するか又は適用する工程を有する、目標とされる解剖学的部位を骨セメントで治療するための方法が開示されている。他の実施態様によると、上記手動での注入の工程は、第1のシリンジを手動で動作させて、第2のシリンジ中に収容されたセメントの注入又は適用を行うための液圧を作り出すこと含む。
【0019】
本発明の更に他の実施態様によると、脆弱化したか又はつぶれた椎体を骨セメントを用いて造成、置換又は治療するための方法が開示されている。この方法は、本発明の全ての実施態様による骨セメントを、1つ以上の椎体に又は椎体内に手動で注入する工程を含むことができる。他の実施態様によると、上記手動での注入の工程は、第1のシリンジを手動で動作させ、前記動作が液圧を作り出し、第2のシリンジ中に収容された上記セメントの注入又は適用を行うことを含む。
【0020】
更に、この骨セメントは、手動での注入を着手することができる期間を延長する、時間及び温度の範囲に関する粘度プロフィールを有する。注入可能な比較的高い初期粘度のための待機時間の短縮及び/又は実質的な除外は、時間及び温度の範囲に関する上記セメントの粘度プロファイルと組み合わせて、上記骨セメントの使用者が適用時間を延長でき、かつ上記骨セメントの注入のための漏洩プロファイルを低減できる。更に、上記骨セメントの初期粘度及び粘度プロファイルは、上記骨セメントを、高圧注入システムよりもむしろ手動式シリンジ又はマルチプルシリンジを用いた注入のために有効にする範囲内にある。この特徴は有利である、それというのも高圧注入システムは触覚力のフィードバックに欠けているためである。
【0021】
更に、本発明の骨セメントは、待機時間を低減しかつ適用時間を増加させるという利点を提供する。所定の実施態様によると、上記骨セメントは、合一又は混合の直後に適用又は注入の準備ができている。従って、いくつかの実施態様の場合に、上記の骨セメントのための待機時間は、この手順の安全性を損なうことなしに、2分以下に短縮することができる。他の実施態様の場合に、この待機時間は、先行技術の椎体形成セメントの待機時間が一般に2〜7分(約22℃で)の範囲内であるのに対し、ゼロ分であることができる。いくつかの実施態様によると、本発明の骨セメントは、19〜27℃の温度範囲で少なくとも15分以上の適用時間を有することができるのに対し、先行技術の椎体形成セメントは一般に5〜12分(約22℃で)の範囲内の適用時間を有する。
【0022】
図面の簡単な説明
これらの図面は、一般に、限定のためではなく、例示のために示されていて、多様な実施態様が本明細書中に述べられている。上記の概要、並びに本発明の好ましい実施態様の次の詳細な説明は、添付図面との関連で見る場合に、により良好に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明による粉末成分の実施態様及び骨セメント実施態様についての分子量分布をグラフで示す。
【図2】いくつかの実施態様による骨セメントの異なる周囲温度での時間に関する粘度測定をグラフで示す。
【図3】いくつかの実施態様による骨セメントの異なる周囲温度での初期粘度測定をグラフで示す。
【図4】いくつかの実施態様による骨セメントの異なる周囲温度での適用時間、硬化時間及び初期粘度測定をグラフで示す。
【図5】いくつかの実施態様による異なる周囲温度での骨セメントを注入するための注入力曲線をグラフで示す。
【図6】いくつかの実施態様による多様なゲージのニードルを用いて骨セメントを注入するための注入力曲線をグラフで示す。
【図7】いくつかの実施態様による多様なゲージのニードルを用いて骨セメントを適用するための適用時間をグラフで示す。
【図8】Aは、混合後の時間の関数としての2つの骨セメントの粘度測定をグラフで示し(セメントI:先行技術による骨セメント調製物;セメントII:本発明の実施態様による骨セメント調製物)、Bは、骨セメントの図9AのセメントI及びセメントIIの初期粘度測定をグラフで示す。
【図9】Aは、骨粗鬆症海綿骨のマイクロコンピュータ処理したトモグラフィー画像を示す透視図であり;Bは、海綿骨代替物のマイクロコンピュータ処理したトモグラフィー画像を示す透視図である。
【図10】ここで開示されたBaroud Modelにより調製された多孔性骨代替サンプルを示す。
【図11】ここで議論されたBaroud ModelによるセメントIとセメントIIとの漏洩質量及び漏洩時間をグラフで示す。
【図12】ここで議論されたBaroud ModelによるセメントIとセメントIIとの平均充填パターンをグラフで示す。
【図13】A〜Eは、初期注入粘度の範囲に関する、セメントIについてBaroud Modelで試験した多孔性代替サンプルの断面図であり;Fは、初期注入粘度でのセメントIIについてBaroud Modelで試験した多孔性代替サンプルの断面図である。
【図14】A、B、C、D、Eは、初期注入粘度の範囲に関する、シリンジからセメントIの骨セメント押出の程度を示し;Fは、初期注入粘度でのシリンジからセメントIIの骨セメント押出を示す。
【0024】
詳細な説明
本発明をより完全に理解するために、次の定義を明らかにする:
ここで使用される「待機期間」又は「待機時間」の用語は、上記固体成分と液体成分とを混合し終えて骨セメントを形成させた後から、上記骨セメントが注入可能な粘度レベルに達するまでの期間に関する。
【0025】
ここで使用される「注入可能な粘度」の用語は、本発明による骨セメントを手動で適用するため及び/又は手動で注入するために適した最小粘度レベルに関する。
【0026】
ここで使用される「初期粘度」の用語は、粘度測定試験として公知の試験において流動学的データ取得の間に測定された粘度に関する。流動学的データ取得は次のように行われた:初期粘度は、上記骨セメント調製の開始後の時間の関数としてのセメント粘度の流動学的調査から導き出された。この粘度測定のために、調製された骨セメント3mLを、PMMA抵抗性ポリプロピレン製の注文設計されたダブルギャップ測定システムを備えた回転型レオメーター(RheolabQC, Anton-Paar, Graz, Austria)中に入れた。実際の粘度(η′)及び周囲温度(T)を、パーソナルコンピュータに直接記録した。このレオメーターは、1Hzの振動周波数及び3mN・mの最大トルクで作動するように設定された。データは、0.2Hzの周波数で記録した。粘度測定は、固体成分と液体成分との混合の開始の2分後に開始した。レオメーター測定は、3000Pa・sの粘度で停止した。セメント粘度を測定するために6つのトライアルを、それぞれの周囲温度(それぞれ19、21、23、25及び27℃)で行った。温度は、空調設備を備えた実験室を用いて制御した。この実験室の湿度を制御し、40%より高くした。周囲温度の精度は±0.5Kであった。混合開始後の時間の関数としてのセメント粘度を、セメント粘度レベルを示す標準偏差バーを含むそれぞれの周囲温度についての1つの典型的な測定で表した(50、200、500、1000及び1500Pa・s)。多様な周囲温度についての初期粘度は、平均及び標準偏差(平均±SD)として表した。
【0027】
ここで使用される「適用時間」の用語は、上記骨セメントの固体成分と液体成分との混合開始後から上記骨セメントが90Nの注入力に達するまでの時間に関する。
【0028】
ここで使用される「セメントの漏洩質量」の用語は、2006年に、「High- Viscosity Cement Significantly Enhances Uniformity of Cement Filling in Vertebroplasty: An Experimental Model and Study on Cement Leakage」, SPINE, vol. 31, No. 22, pp. 2562-2568 (2006)にBaroud et al.により記載された漏洩モデル、以後「Baroud Model」により漏洩したセメントの量に関する。Baroud Modelの特徴は、次の刊行物:Baroud et al.、「Experimental and theoretical investigation of directional permeability of human vertebral cancellous bone for cement infiltration」, J. Biomechanics, 37 (2004), pp. 189-196にも記載されていて、ここで更に説明されている。
【0029】
ここで使用される「漏洩時間」の用語は、骨セメントの固体成分と液体成分との混合の開始後から、更に実施例1に説明されたようなBaroud Modelにより行った試験の下で漏れ出たセメントの漏洩が観察されるまでに経過した時間の量に関する。
【0030】
ここで使用される「注入力」の用語は、注入力測定試験(Injection Force Measuring Test)として公知の試験(「注入試験」)の下でセメントを骨内に注入するために必要な力のニュートンに関する。注入試験工程で使用されたシリンジ及び注入針は、椎体形成術で使用されるものと同じであった。1mlシリンジ(Synthes GmbH)を、8Ga、10Ga及び12Gaのサイドオープニング針(Synthes GmbH)に取り付けた。これらの針は、それぞれ8Ga針、10Ga針及び12Ga針の名称で、3.2、2.6及び1.9mmの内径、及び176.1、155.7及び155.35mmの長さを表す。これらの針は、注入力の測定のために、1.0kNロードセルを備えたInstron 5866ユニバーサル試験機(Instron, Canton, USA)に取り付けた。注入は、0.75mL/分の体積流量を用いて行った。データは、0.2Hzの周波数で記録した。
【0031】
ここで使用される「硬化時間」の用語は、固体成分と液体成分との混合と、上記骨セメントの固化又は硬化との間に経過した時間に関する。
【0032】
本発明による骨セメントは、合わせる際に(例えば混合することにより)、手動で操作されるシリンジ注入系中で使用するために有効である、比較的高い初期粘度と十分に長い適用時間との両方を有する骨セメントを形成する、固体成分と液体成分とを合わせることから形成される。上記骨セメントは注入可能な初期粘度を有し、混合の完了直後に十分に手動で注入することができ、上記骨セメントはいくつかの実施態様によると待機時間を実質的に2分未満に制限することができ、かつ他の実施態様によると待機時間を実質的にほぼゼロ分に短縮することができる。更に、上記骨セメントは、手動での注入を着手することができる時間を延長する、時間及び温度の範囲に関する粘度プロフィールを有する。注入可能な比較的高い初期粘度のための待機時間の短縮及び/又は実質的な除外は、時間及び温度の範囲に関する上記セメントの粘度プロファイルと組み合わせて、上記骨セメントの使用者が適用時間を延長でき、かつ所望な手法について上記骨セメントの注入のための漏洩プロファイルを低減できる。このような手法は、例えば椎体形成術、後弯矯正術及びセメント造成適用を含むことができる。
【0033】
上記骨セメントの固体成分は、造影剤、骨代替材料及び固体ポリマーを含む。適切な造影剤は、上記骨セメントの注入の間及び上記骨セメントの骨部位での注入の後の両方で上記骨セメントを観察するために、上記骨セメントにX線不透過性効果を付与することができる。上記骨セメントのX線不透過性特性は、上記骨セメント混合物が骨中に注入された場合、X線透過検査機を用いて、この骨セメント混合物の全ての最少の漏洩の観察を可能にする。適切な造影剤は、例えば二酸化ジルコニウム、硫酸バリウム及び/又は二酸化チタン及びこれらの混合物及びブレンドを含むことができる。この造影剤は、一実施態様によると上記固体成分の約30質量%〜約60質量%の範囲内で、他の実施態様によると上記固体成分の約35質量%〜約45質量%の範囲内で、更に他の実施態様によると上記固体成分の約38質量%〜約42質量%の範囲内で存在することができる。
【0034】
適切な骨代替材料は、骨の生理学的特性及び形態学的特徴を模倣することができる全てのセラミック複合材料を含むことができ、かつリン酸カルシウムを基礎とする化合物、例えばヒドロキシアパタイトCa10(PO46(OH)2であることができる。一実施態様によると、上記骨代替材料は焼結した粒子の形態であり、例えば焼結したヒドロキシアパタイト粒であり、約5μm〜約50μm、好ましくは約10μm〜約30μmの平均粒径範囲を有することができる。この骨代替材料は、一実施態様によると上記固体成分の約0質量%〜約20質量%の範囲内で、他の実施態様によると上記固体成分の約12質量%〜約18質量%の範囲内で、更に他の実施態様によると上記固体成分の約14質量%〜約16質量%の範囲内で存在することができる。
【0035】
適切な固体ポリマーは、(メタ)アクリルポリマー、例えばポリメチル(メタ)アクリレート、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート−コ−メチルメタクリレート)及び/又はポリ(メチルメタクリレート−コ−スチレン)を含むことができる。上記固体ポリマーは、(メタ)アクリルポリマーのホモポリマー及びコポリマー並びにこれらの混合物及びブレンドを含むことができる。上記固体ポリマーは、一実施態様によると、上記固体成分の約35質量%〜約55質量%の範囲内で、他の実施態様の場合には上記固体成分の約43質量%〜約46質量%の範囲内で存在することができる。好ましい実施態様の場合に、上記固体ポリマーは、コポリマーのポリ(メチルアクリレート−コ−メチルメタクリレート)とホモポリマーのポリ(メチルメタクリレート)との混合物を含む。特に好ましい実施態様の場合に、上記ホモポリマーのポリ(メチルメタクリレート)は、上記固体ポリマーの約3質量%〜約15質量%の範囲内である。
【0036】
上記固体成分の固体ポリマー分の物理的及び化学的特性は、本発明による骨セメントの注入可能な比較的高い初期粘度に貢献することができる。これらの特性は、上記固体成分を上記液体成分と合わせて骨セメントを形成させる場合に、上記骨セメントの濡れ挙動及び膨潤挙動に影響を及ぼす。このような特性は、上記固体ポリマーの形状又はモルホロジー、上記固体ポリマーの表面積、並びに含まれる1種以上のポリマーの平均分子量範囲を含むことができる。一実施態様によると、上記固体ポリマーは、比較的高い表面対体積比率を有する重合した粒子、好ましくは実質的に球状のビーズを有することができる。図1を参照すると、上記骨セメントの固体成分について(曲線1)及び硬化した又は固化した状態の骨セメントについて(曲線2)の分子量分布グラフが示されている。一実施態様によると、上記固体ポリマーは、約200kDa〜約1000kDaの平均分子量範囲を有することができる。好ましい実施態様の場合に、上記固体ポリマーの平均分子量範囲は、約600kDa〜約700kDaであり、更に好ましい実施態様の場合に、この平均分子量は実質的に約600kDaである。
【0037】
この固体成分は、更に、重合開始剤、例えば過酸化ジベンゾイルを有する。この開始剤は、一実施態様によると上記固体成分の約0.2質量%〜約0.6質量%の範囲内で、他の実施態様によると上記固体成分の約0.3質量%〜約0.5質量%の範囲内で、更に他の実施態様によると上記固体成分の約0.35質量%〜約0.45質量%の範囲内で存在することができる。
【0038】
一実施態様によると、上記骨セメント組成物は、硬化又は固化した骨セメントの質量%に対して、骨代替材料約11±0.1質量%、造影剤約29.3±0.1質量%及び固体ポリマー約59.7±0.1質量%を含む。他の実施態様によると、上記骨セメントの固体成分は、ヒドロキシアパタイト、二酸化ジルコニウム及び固体ポリマーを有する。
【0039】
一実施態様によると、上記骨セメントの液体成分は、重合促進剤及び重合可能なモノマーを有することができる。上記液体成分は、更に、他の実施態様によると、上記モノマーの自家重合(autopolymerization)を低減又は妨害する重合禁止剤を有することができる。一実施態様によると、適切な重合促進剤は、N−N−ジメチル−p−トルイジン(DMPT)を有する。このDMPTは、一実施態様によると上記液体成分の約0.4質量%〜約1.0質量%の範囲内で、他の実施態様によると上記液体成分の約0.5質量%〜約0.9質量%の範囲内で、更に他の実施態様によると上記液体成分の約0.6質量%〜約0.8質量%の範囲内で存在することができる。一実施態様によると、適切なモノマーはメチルメタクリレート(MMA)を有する。このMMAは、一実施態様によると上記液体成分の約99.0質量%〜約99.8質量%の範囲内で、他の実施態様によると上記液体成分の約99.1質量%〜約99.7質量%の範囲内で、更に他の実施態様によると上記液体成分の約99.3質量%で存在することができる。適切な重合禁止剤は、一実施態様によると、ヒドロキノンを含み、かつ上記液体成分の約60ppmの範囲内で存在することができる。
【0040】
一実施態様によると、上記骨セメントは、固体ポリマーを、固体成分の44.6±0.1%の質量%で、造影剤を、固体成分の40.0±0.1質量%で、骨代替材料を、固体成分の15.0±0.1質量%で、及び重合開始剤を、固体成分の0.4質量%で有する固体成分を有する。他の実施態様によると、上記骨セメントは、固体ポリマーとしてコポリマーのポリ(メチルメタクリレート−コ−メチルメタクリレート)及びホモポリマーのポリ(メチルメタクリレート)ブレンド、造影剤として二酸化ジルコニウム、骨代替材料としてヒドロキシアパタイト及び重合開始剤として過酸化ジベンゾイル(100%)を有する固体成分を有する。
【0041】
一実施態様によると、上記骨セメントは、モノマーを、液体成分の99.35±0.1質量%で、重合促進剤を、液体成分の0.65±0.1質量%で有する液体成分を有する。他の実施態様によると、上記液体成分は重合禁止剤約60ppmで安定化される。他の実施態様の場合には、上記骨セメントは、モノマーとしてMMAを、重合促進剤としてDMPTを、及び重合禁止剤としてヒドロキノンを有する液体成分を有する。
【0042】
一実施態様によると、上記骨セメントは、粉末及び液体を混合するためのミキサーを有する骨セメント適用系の一部である。上記骨セメントの液体成分と固体成分とは、一般に、技術者、医師又は他の適切な使用者により混合が行われるまで、一般に分離されている。一実施態様の場合に、上記骨セメント適用系は、予め充填された固体成分を有する容器(上記容器は殺菌キャップでシールされている)と、液体成分が充填されたガラスアンプル(上記アンプルは破壊リングを有する)を有する。この系は、更に、固体成分と液体成分との混合の後に、上記骨セメントを適用系へ移すための移送キャップを有することができる。
【0043】
ここに記載された骨セメント実施態様は、固体成分及び液体成分により形成される。上記固体成分及び液体成分は、いくつかの実施態様の場合には別々に包装されていてもよく、又は他の実施態様の場合には、手動式シリンジ注入のための系を形成することができる。一実施態様によると、手動式シリンジ注入は、一つのシリンジの手動での動作が、他のシリンジ中に収容されたセメントの注入を行うための液圧を作り出す1つ以上のシリンジの系により達成することができる。他の実施態様によると、この手動式注入は、セメントを収容する単一のシリンジの手動による動作により直接達成することができる。上記粉末成分と液体成分とが混合されるとすぐに、骨セメントを形成する。この最終的に硬化又は固化した骨セメント組成物は、いくつかの実施態様の場合に、骨代替材料約11質量%、造影剤約29.3質量%及び上記ポリマー約59.7質量%を有する。硬化した骨セメントのポリマーの質量パーセントは、上記固体成分の固体ポリマーのポリマーの質量%並びに上記液体成分の重合した液体モノマーの質量%の両方を含むことがわかる。
【0044】
骨セメント中で粘度又は粘度範囲、例えば初期粘度の発生は、上記骨セメントの作業時間、上記骨セメントを目標とされる解剖学的部位に運ぶために必要な注入力、上記骨セメントが硬化又は固化するために必要な時間、及び上記目標とされる部位からの上記骨セメントの漏洩量及び漏洩速度についての重大なファクターである。固体成分と液体成分との混合開始後にそれぞれ19℃、21℃、23℃、25℃及び27℃の温度で記録された一実施態様による骨セメントの粘度曲線が図2及び3に示されている。これらのグラフは、低い温度よりも高い温度で、粘度(Pa・sで測定して)の上昇率がより大きくなることを示す。混合開始の800秒後に、上記骨セメントの粘度は19℃で約380Pa・sであった。これは、27℃の温度で混合開始の800秒後の1600Pa・sの粘度に比較される。
【0045】
図3は図2の拡大図であり、それぞれ19℃、21℃、23℃、25℃及び27℃の温度で、固体成分と液体成分との混合開始後の100〜300秒の期間に関する上記骨セメントの初期粘度をフォーカスしている。初期粘度のこの上昇率は、図2で示した全ての粘度変化よりも、全ての温度での時間にわたり平坦にされている。混合開始から200秒で、上記骨セメントの初期粘度は19℃で約70Pa・sであるが、27℃ではこの初期粘度は約170Pa・sである。
【0046】
図2及び3は、上記骨セメントの初期粘度が、温度範囲にわたって安定を維持することを示す。図3中に示した全ての初期粘度は注入のために適している、つまり全ての粘度は、注入可能な初期粘度である。上記骨セメントは、混合開始後の2分間で測定した全ての温度で、70〜140Pa・sの初期粘度範囲を有する。
【0047】
ここに記載された骨セメント系は、一実施態様によると、例えば椎体形成術を行うための手順の安全性を損なわずに、待機期間を実質的にゼロ分に短縮する。更に、上記骨セメントは、in situでの骨セメントの硬化挙動に基づき組織に適用された骨セメントの最少の漏洩を有するか又は漏洩がなく、適切な時間及び温度の範囲にわたり、目標とされる解剖学的部位の均一な充填が可能なる第2の安定した粘度に移行することができる。
【0048】
上記骨セメントの硬化挙動は、流動学的測定、重合温度の調査、注入力の測定、及び実地のノッキング試験(この場合、上記骨セメントを、クルミ大の球状に成形した骨セメントについて手動で机に打ち付けることにより試験する)を用いて特徴付けることができる。温度は硬化挙動に著しく影響を及ぼすため(温度の上昇と共に硬化速度が増大する)、硬化挙動を異なる周囲温度で、並びに37℃の体温で調査した。一実施態様によると、固化した又は硬化した骨セメントは、約100℃〜約125℃のガラス転移温度範囲を有することができる。
【0049】
この注入試験を次のように行った:セメント調製の後に、このセメントを10個の1mlシリンジ内に充填した。第1のシリンジを注入針に取り付けた。注入を、試験のために混合開始から5分及び10分遅れて、それぞれ23℃、25℃、27℃及び19℃、21℃の周囲温度で開始した。注入は、0.75mL/minの体積流量(段階的注入)を用いて行い、引き続き、他のシリンジの注入を、セメントサンプルの重合及び硬化により150Nの注入力が記録されるまで行った。この流量は平均臨床測定の下限値に選択し、この硬化時間を、混合の開始後からセメントが硬化状態に達するまでに経過した時間として測定した。
【0050】
図4は、硬化時間が温度の上昇と共に、19℃で混合開始から約33分から27℃で混合開始から約19分にまで短縮されることを示す。適用時間は、温度と共に、19℃で混合開始から約31分から27℃で混合開始から約17分にまで短縮されることを示す。この時間及び温度は、椎体形成術を実施するための許容範囲内にある。
【0051】
骨セメントを骨内に移すために必要な注入力は、図5に示すように、温度の上昇と共に増大する。例えば、混合開始の15分後に、この注入力は19℃で約21Nであるが、27℃での注入力は約60Nである。注入力の増加率は、27℃でセメント混合については、19℃の場合よりも増大する。これらの注入力は、手動で操作するシリンジを使用できる範囲内である。
【0052】
温度に対して更に、骨内に骨セメントを注入するために使用するニードルケージのサイズの調整は、図6に示すように、時間に関する衝撃注入力を有する。図6中に示されたこのデータは、室温で観察した。これらのデータは、シリンジゲージが8から10から12ゲージに増加すると同様に(例えばシリンジ直径の減少と同様に)、注入力が時間に関して増大することを示す。特に、図6は、この注入力が、固体成分と液体成分の混合開始後の800秒で、8ゲージについて約30Nで、12ゲージで約80Nであることを示す。時間に関する注入力の増加率は、低いゲージの針の場合よりも、高いゲージの針がより早い。この注入力範囲について得られた試験結果は、全てが、骨セメントを目標とされる解剖学的部位、例えば椎体に注入するために手動で操作されるシリンジの使用を許容できる範囲内にある。
【0053】
図7は、ゲージナンバーの増加と共に適用時間は低下することを示す。特に、8ゲージのニードルについての適用時間は約1200秒であり、12ゲージのニードルについての適用時間は約820秒である。
【0054】
ここに記載された骨セメントは、注入のための待機期間又は待機時間を低減し、つまり、ここに記載されたような骨セメントは、上記固体成分と上記液体成分との混合の完了時又は完了付近で注入可能な初期粘度に達する。更に、この骨セメントは、所望の手順、例えば椎体形成術を完了するために十分な適用時間を提供する。更に、上記骨セメントは、シリンジ系中で使用可能となる、時間、温度、シリンジゲージサイズに関する注入力の範囲を有する。これらの特徴は、外科医がセメントの調製直後に注入を開始し、セメントが最少の初期粘度レベルに達するために待機することがないか、又は短い適用時間のために骨セメントが作業可能なままであるには高すぎる粘度レベルに達することを心配するために手順を速めることなく、この手順を続けることを許容する。
【0055】
ここに記載されたような骨セメント(セメントIIで表す)の実施態様の粘度測定を、先行技術の骨セメント調製物(セメントIで表す)と比較して、表8A及び8Bに示す。図8Bで見ることができるように、セメントIIは、注入可能な初期粘度を有するが、セメントIはそうではない。セメントIは、また、このセメントを、セメントIの成分を混合し終えた直後のセメントIの初期粘度である10Pa・sの初期粘度で注入した場合にBaroud Model(更に次に記載する)において漏洩を示す。セメントIの漏洩の度合いの低減は、注入の遅延によって、つまり先行技術の骨セメントの混合の完了後の待機期間によってのみ達成できる。この待機期間は、セメントIが、注入のために適したより高いレベルに粘度を増大させることを可能にする。セメントIIは、固体成分と液体成分との混合直後に注入した場合に最少の漏洩を示し、つまりセメントIIは、固体成分と液体成分との混合が完了した後の待機時間により制限されなかったことを示す。
【0056】
次の実施例1で詳細に説明するように、セメントIの試験粘度の範囲と比べて、セメントIIについて、セメント充填の高い均一性及び低減されたセメント漏洩が観察される。セメントIIは、注入可能な初期粘度に達する待機時間又は待機期間を、本発明のいくつかの実施態様によると、少なくとも1分未満に短縮し、他の実施態様の場合に、セメントIIは、実質的に混合が完了した直後に注入可能な初期粘度を有することができる。更に、セメントIIの粘度範囲は、最少の漏洩プロフィールで所望な手順を完了するまでに十分な適用時間を可能にする第2の安定粘度を有する。
【0057】
実施例
実施例は、次に本発明の実施態様を表すために提供される。これらの実施例は、本発明を、如何なる特定の適用又は操作の理論に限定することを意図していない。
【0058】
実施例1
セメント漏洩及びセメント充填性能の調査を、ここに記載された本発明の一実施態様のセメントII、及び先行技術のセメントのセメントIを用いて実施した。セメントIは、調製後に低い初期粘度を有する先行技術の椎体形成セメントである。特に、セメントIは、Vertecem Mixing Kit, Ref. 07.702.010, LOT 043R/0834(Synthes GmbH社, Oberdorf, スイス国)として表される先行技術の椎体セメントである。セメントIIは、固体成分及び液体成分を有する。上記固体成分は、上記固体成分の44.6質量%の濃度で固体ポリマー(これは少なくともコポリマーのポリ(メチルアクリレート−コ−メチルメタクリレート)を有する)を含有し、上記固体成分の40.0質量%の濃度で造影剤の二酸化ジルコニウムを含有し、上記固体成分の15.0質量%の濃度で骨代替材料のヒドロキシアパタイトを含有し、かつ上記固体成分の0.4質量%の濃度で重合開始剤の過酸化ジベンゾイル(100%)を含有する。この固体成分の全質量は26.0グラムであった。上記液体成分は、モノマーのメチルメタクリレート(これは重合禁止剤のヒドロキノン60ppmで安定化されている)を99.35質量%で含有する上記液体成分は、重合促進剤のジメチル−パラ−トルイジンを、10.00mlの全体積に対して0.65質量%含有する。上記液体成分及び固体成分は、別個にされていて、オンサイトで混合される。
【0059】
この調査は、2006年のBaroud et al.著、「High- Viscosity Cement Significantly Enhances Uniformity of Cement Filling in Vertebroplasty: An Experimental Model and Study on Cement Leakage」, SPINE, vol. 31, No. 22, pp. 2562-2568 (2006)及びBaroud et al.著、「Experimental and theoretical investigation of directional permeability of human vertebral cancellous bone for cement infiltration」, J. Biomechanics, 37 (2004), pp. 189-196に記載されたBaroud Modelを用いて実施した。このBaroud Modelは、力がかけられた椎体形成セメント流を促進又は助成しかつセメント漏洩を誘発する脊椎血管を模倣した人工的に製造された経路による椎体造成術における漏洩現象を測定する。このBaroud Modelを、2種の椎体形成セメントのセメントI及びセメントIIの漏洩挙動及び充填挙動の両方を評価し、かつ均一なセメント充填のための条件の確認による漏洩のリスクを低減するために用いた。
【0060】
このBaroud Model試験を実施するために、円柱状の多孔性アルミニウムフォーム(ERC Aluminum and Aerospace, CA)を、椎骨の場合と同じように寸法、形状及び流動特性を表すようにカスタムメイドした。このアルミニウムフォームは、良好につながった制御された多孔性のために選択された。
【0061】
このアルミニウムフォームサンプル(以後「多孔性代替サンプル」とする)が、死体の海綿骨組織と同じようなモルホロジー及び流動特使を有することを保証するために、次の工程を行った。3つの多孔性代替サンプルの多孔率を、非侵襲性マイクロコンピュータトモグラフィー(MicroCT)及びアルキメデスの浸漬試験を用いて測定した。この多孔率は、91.1%±0.6%であることが判明した。多孔率は、サンプルのボイド体積の測定であり、従って、サンプルの約9%は、アルミニウムから構成され、他の91%はボイドであった。この値は、上記調査において椎体から切除された骨粗鬆症の海綿骨の多孔率の値と比較的一致している。健康な骨ではこの多孔率は75%と同じ程度高いが、骨粗鬆症の骨の場合には95%と同じ程度高い。この骨の残りは、一般に骨髄、脂肪及び血液が充填されている。図9A及び9Bは、多孔率及び十分につながったキャビティが強調された骨サンプルと骨代替サンプルとのそれぞれ2つの形態学的特徴のMicro CT画像を表す。
【0062】
多孔率測定に加えて更に、多孔性代替サンプルの透過率を、ダルシーのフロープロトコル(Darcy's flow protocol)を用いて測定し、かつ海綿骨の透過率と比較した。このフロープロトコルの場合に、一定の流れが、この多孔性代替サンプルを通して確立され、かつ通過する流れにおける圧力低下が測定された。
【0063】
多孔性代替サンプルの直径及び高さは、それぞれ38.1及び25.4mmであった。これらの寸法は、椎骨骨折が最も生じる胸腰の椎骨を表すように選択した。従って、このBaroud Modelは、形状に関しても、多孔率及び透過率に関しても表現されている。
【0064】
漏洩路を形成するために、3mmの円筒状通路(脊椎内血管を模倣した)をこの多孔性代替サンプルの主平面に穿孔した。骨セメント注入カニューレの挿入を許容するために、4.1mmの直径の円筒状の通路を、図10に示されているように、上記漏洩路に対して垂直方向に穿孔した。この注入路の直径には、椎体形成術を行うために使用されるゲージを表す8ゲージのカニューレの外径が適合する。
【0065】
漏洩路及び注入路を作成した後に、それぞれの多孔性代替サンプルを、室温で、製造元の指示(ゼラチン5質量%)に従い水/ゼラチン溶液(Kraft Canada, Inc., Don Mills, Ontario)を満たした浴中においた。この浴を、次いで一晩中4℃の冷蔵庫中に置いてこの溶液をゲルにし、その後、多孔性代替サンプル中に残ったゼラチンは骨髄の存在を模倣した。
【0066】
漏洩路から骨セメント漏洩が観察された時点を、固体成分と液体成分との混合の開始時で始動させたストップウォッチを用いて記録した。この注入圧を材料試験システムのロードセルで測定した。
【0067】
漏洩路の両方の開口部を通して漏洩したセメント、つまり漏洩質量を、アルミニウム秤量カップ(Fisher Scientific International, Inc. Hampton, NH)中に集めた。沸騰水にゼラチン材料を溶かし、その後で、2.5ミクロンのフィルター(Whatman, Middlesex, UK)を使用して、この溶液からセメントを除去した。換気フード中で濾紙を乾燥した後に、漏洩したセメントの平均質量を、漏洩路の両方の開口部から集めたセメントの平均値を取ることにより測定した。
【0068】
Baroud Modelの試験プロトコルに加えて重要なのは、多孔性代替サンプルを、ヒトの体温を模倣して37±1℃での水浴中に置くことであった。骨セメントを形成する重合反応の性質がラジカル反応であるため、この反応は高めた温度で促進される。37℃の温度の人体中では、上記骨セメントは周囲温度よりも早くに硬化する。
【0069】
Baroud Modelで使用した材料は、椎体形成術中で使用されるものと同じであり、骨セメント、シリンジ、針及び粘度調節のための粘度計を有する。
【0070】
6つの実験グループを評価する。5つのグループは、注入時に初期粘度の範囲を有するセメントIを使用する。6番目のグループはセメントIIを有し、セメント調製の直後に注入を開始する。
【0071】
37℃の水浴を用いて試験を行うために、37℃で形状安定性の骨髄模倣物を調製した。次の工程を、骨髄代替物として37℃で安定であるデンプン混合物の調製に引き続き行う:コーンスターチ粉(MAIZENA(登録商標), Knorr AG, Thayngen, スイス国)及び冷水を1:3の比率で、室温で撹拌しながら、均一でかつ均一なミルク状の状態に達するまで完全に混合する。
【0072】
次に、上記多孔性代替サンプルを上記デンプン混合物中に浸漬し、この混合物を同一の方向に連続して撹拌しながら中火で加熱する。この混合物を撹拌し、これが増粘しかつ沸騰するまで加熱した。次いで撹拌を停止し、加熱を停止する前にこの混合物を1〜2分間加熱したままにし、かつこの多孔性代替サンプルを取り出す。この混合物を冷却した後、この多孔性代替サンプルを1時間冷蔵庫中に置く。それぞれのサンプルをデンプン混合物で充填する前後で計量し、上記多孔性代替サンプルの少なくとも95%のボイドが充填されたことが確認される。Baroud modelの最終的な調製工程は、このモデルに硬質シェルを付与するためにアクリルセメント(DP-Pour, DenPlus Inc., Montreal, QC)の約3mmの厚さの薄層を取り付けることを含む。この薄層は、椎体の皮質性シェルの模倣としての役割を果たすように意図された。
【0073】
セメントI及びセメントIIについての漏洩挙動を調査するために、150mmの長さを有する8ゲージのシリンジを、Baroud Modelによる多孔性代替サンプルの注入路内へ挿入した。デンプン溶液で満たされた上記多孔性代替サンプルを37℃の水浴(ヒトの体温を模倣)に置き、骨セメント注入の前の約30分間熱平衡に到達させた。
【0074】
セメントI及びセメントIIは、閉鎖型混合装置を用いて、製造元の指示に従ってそれぞれ製造される。混合開始後の時間は、固体成分への液体成分の添加と同時に始動させたストップウォッチを用いて記録した。調製されたセメントの9mlの全てを、注入及び粘度測定のために、ルアールアーカップリングアダプター(luer-luer coupling adapter)を用いて3本の3mlシリンジ(Viscosafe Injection Kit, Ref. 07.702.210, Synthes GmbH, Oberdorf, スイス国)内へ移した。それぞれの骨セメントサンプル用の最初の2つのシリンジは、多孔性代替サンプル中への注入のために利用され、第3のシリンジは、22±1℃に保持された粘度計(Viscosafe Viscometer, Anton Paar, Graz, Austria, SN 80215110 REF 03.702.010)を用いた粘度測定のために提供される。この粘度計は、対応するソフトフェア(RHEOPLUS/32 Multi 128 V2.66, Anton Paar, Graz, Austria)を用いて5秒ごとに実際の粘度をPCに直接記録する。
【0075】
注入試験を実施するために、セメントが充填された3mlシリンジを、8ゲージの針に装着し、汎用試験機(MTS Mini Bionics 858, MTS, 14000 Technology Drive Eden Prairie, MN, USA 55344)に取り付けた。上記多孔性代替サンプル中へのセメント注入の出発点は、粘度計によりリアルタイムで測定されるように、予め定義された粘度閾値に達することにより決定した。セメントIについての注入開始についての予め定義された粘度は、それぞれ10、50、100、200及び400Pa・sであった。セメントIのそれぞれのサンプルの6mlの全ては、2本の3mlシリンジの2段階注入を用いて注入した。この注入速度は3.5ml/minであった。
【0076】
セメントIIは、このセメントをシリンジに移しかつ試験機に取り付けた直後に注入した。注入は、混合開始の3分後に、3.5ml/mmのクロスヘッド速度を用いて開始した。全てのセメントグループについて、第1のシリンジから第2のシリンジに交換するために経過する時間は90秒であった。
【0077】
多孔性代替サンプルのそれぞれにセメントを注入する間に、漏洩路の両側からのセメント漏洩について観察し、この漏洩時間を記録した。全体のセメント注入手順が完了した後に、それぞれのサンプルから漏洩したセメントを集め、秤量し、漏洩質量を規定した。その後で、それぞれの多孔性代替サンプル(いまや骨セメントが充填された)を水浴から取り出し、上記セメントの完全な硬化を保証するために室温で2日間放置した。セメントIを用いた5つのグループについて、5回の繰り返しを行った。7回の繰り返しを、セメントIIを用いて行った。
【0078】
上記多孔性代替サンプルのそれぞれにおける上記骨セメントの充填パターンを評価するために、それぞれのサンプルを、水冷式ダイヤモンドソーを用いて注入路に沿って上記軸に対して垂直に2つの半分に切断した。次いで半分をそれぞれ熱水で洗浄し、デンプン溶液を溶解させた。同じサンプルの両方の半分について、画像を撮影し、デジタル化し、偏心率について分析しかつBaroud Modelにおいて記載されたように同じサンプルについて平均化した。手短には、偏心率(eccentricity)は、充填された形状と同じの断面二次モーメントを有する楕円の偏心率として定義される。充填されたパターンがより同型でかつ円形であれば、偏心率の値も低くなる。例えば、直線の場合にこの偏心率は1であり、円形の場合にはこの偏心率はゼロである。
【0079】
この測定された終点は上記偏心率であり、かつそれぞれの試験の完了時に水浴から集められた漏洩セメントの質量である。セメントIIの材料成分及びセメントIの初期粘度値(固定された独立したファクター)の漏洩質量及び偏心率(パラメータに依存)に対する影響を、統計的に分析した。生じた6つの材料グループに関する全体の統計的分析は、一変量分散分析(univariate ANOVA)を用いて行った。ANOVAから得られた有意差(p<0.006)のため、多重事後比較(multiple post hoc comparisons)を、Tukey HSD検定を実施することにより行った。全ての場合で、≦0.05のp値を、有意限界として用いた。統計的分析は、SPSSソフトウェア、バージョン15.0を用いて行った。試験した多孔性代替サンプルの観察された漏洩プロフィールを、図13A〜Fに示した。図13A〜Eは、それぞれ10Pa・s、50Pa・s及び100Pa・s、200Pa・s及び400Pa・sの開始注入粘度でのセメントIの断面図を表す。図13Fは、実質的に混合直後に注入したセメントIIの断面図を表す。
【0080】
図11は、開始粘度の関数としての漏洩質量をグラフで表す。定性的に、セメントIについては、低粘度レベル(例えば10Pa・s)で注入した場合に高い漏洩質量が観察された。図10に示した値は、図13A〜Eの対応するセメントIサンプルについて観察された充填パターンに対応する。セメントIについて、より均一な充填が、400Pa・sまでの高い注入粘度を用いた際に観察することができる。
【0081】
ANOVA試験から明らかなように、上記漏洩質量はセメントIグループにおいて、開始粘度が10から400Pa・sに増大すると共に低下する。セメントIを10Pa・sの初期粘度で注入した場合に、このセメントの2.56±0.98gが漏洩する。セメントIの注入の遅延は、つまり混合後の待機期間の増大は、開始粘度を増大させかつ漏洩したセメント量を相応して減少させる。400Pa・sの初期粘度で注入した場合には、セメントIの1.07±0.82gが漏洩するだけである。
【0082】
セメントIIについて、待機期間を必要とせず、最少の漏洩が観察された。更に特に、この平均漏洩質量は0.36±0.54gであり、この絶対漏洩質量は、行った全ての試験について1g未満であった。更に、セメントIIを用いて注入した7つの漏洩モデルのうちの3つについて漏洩が観察されなかった。
【0083】
このデータ、特にセメントIのグループから得られたデータのばらつきが高いため、統計的な差は、一般に低かった。漏洩質量における有意差は、図10に示されているように、10Pa・sで注入されたセメントIのグループと、混合直後に注入されたセメントIIのグループとの間で観察することができた(p=0.003)。0.084(0.173)のp値で、10Pa・sから400Pa・sのセメントIのグループの間の差は、漏洩質量が、高い注入粘度について漏洩が減少する傾向を明らかに示す。50Pa・sで注入されたセメントIのグループとセメントIIとの比較は、0.061のp値で、セメントIIを用いる際に漏洩速度が低下する傾向を明らかに示す。他の全てのペアは、0.275よりも高いp値を表し、有意な結果が得られない。
【0084】
充填パターンの均一性は、セメントIのグループについて偏心率により定量化され、図12のグラフから測定して及び図13A〜Eから見て、注入粘度の増大による均一性について統計的有意差を示さなかった。セメントIIは、図12で測定されたように及び図13Fに示されたように、相対的に低い偏心率を有していた。それぞれ0.005、0.006及び0.03のp値を表す10、50及び100Pa・sで注入したセメントIのグループと比較して、セメントII試験サンプルから得られた偏心率値の統計的な評価は、有意な低い偏心率を示す。セメントIIと、200Pa・sで注入されたセメントIのグループとの比較は、図12のグラフで示されているように、セメントII(p=0.079)について偏心率が低減する傾向を示す。
【0085】
このBaroud Modelは、漏洩が助長され、最悪の場合のセメント注入を表すように設計された。特に、作成された3mmの漏洩路は、0.5〜2mmの脊椎静脈から表された直径と比較した場合に比較的大きい。更に、デンプン(骨髄模倣)の比較的濃厚な性質は、このデンプンを置き換えることを困難にし、それにより充填の均一性を低下させかつセメント漏洩のリスクを増大させる。
【0086】
臨床的観察及び調査は、多様な市販の椎体形成セメント、例えばセメントI:Vertecem, Synthes GmbH;及びVertebroplastic, J&J DePuy Inc.を用いた場合に、50Pa・sの初期注入粘度で、僅かな漏洩か又は漏洩がないことを示す。この粘度レベルで注入されたセメントIは、Baroud Modelのもとでは高い漏洩質量を表し、従って、この使用されたBaroud Modelは漏洩を助長させる。400Pa・s未満の初期注入粘度を用いたセメントIについて観察された漏洩質量は、セメントIIよりも高く、かつ約400Pa・sの粘度レベルの場合にだけセメントIIに匹敵する。セメントIについて調査された漏洩質量におけるこの最大の差異は、100Pa・sと200Pa・sとの間で観察することができた。このパラメータの高いばらつきは、37℃の水浴を用いるモデル設計のためである。
【0087】
ここで観察された試験結果からは、セメントIの試験について開始粘度が増加するにつれて、漏洩速度及び漏洩質量が低減する傾向が見られる。これらの結果は、上記Baroud Modelからの理論的所見と密接に関連する。セメントIIから観察された試験結果は、漏洩を助長するBaroud Modelにおいて低い漏洩速度を示す。この試験結果は、セメントIIが骨セメントとして利用することができ、実質的に混合直後にかつ僅かな待機期間〜待機期間なしで注入のための準備ができることを示す。セメントIIは、19〜27℃の全ての周囲温度範囲について少なくとも15分の作業時間を表し、かつ触覚フィードバックが可能な単純なシリンジにより適用可能である。このように、セメントIIは注入可能な初期粘度を有し、例えば椎体形成術において、上記骨セメントの注入を開始するための待機時間を短縮する。この初期注入可能特性は、今度は、混合後に適切な注入時間を決定するリスク、例えば速すぎる注入又は遅すぎる注入のリスクを低減し、従って、この介入の安全性を増大させる。
【0088】
Baroud ModelのもとでセメントIIについて得られたと同様の漏洩質量を表す、セメントIについて必要な初期粘度を確立するために外挿を行った。約600Pa・sのセメントIの初期注入粘度が、セメントIIの漏洩質量と同じ量を達成する。漏洩に関するこの現象学的所見を確認するために、視覚的検査を行って、異なる粘度レベルでの上記セメントのコンシステンシーを分析した。このセメントコンシステンシーの検査は、1mlのシリンジからセメントを押し出すことにより行った。0.3mlの注入工程は、図14A〜Fに示されているように、スパゲッティ状の外観を有するセメントを生じさせた。これらのセメントサンプルを、水平に配置した1mlシリンジから押し出した。0.3mlのそれぞれの注入工程は約2秒であった。セメントコンシステンシーは、重力による個々のセメントストランドの伸びを観察することにより測定した。
【0089】
図14A〜Fは、調査された6つのグループについてシリンジから押し出された0.3mlセメントの比較の代表的試験を表す。600Pa・sの粘度でのセメントIのコンシステンシーの視覚的検査は、図14Eに示されていて、図14Fに示された調製直後に押し出しかつ約80Pa・sの測定された粘度を有するセメントIIと比較される。図14E及び14Fは、視覚的検査において密接な関連性を示す。
【0090】
約10Pa・sの粘度で押し出したセメントIは、くびれが生じ、押し出し開始後にまっすぐに伸び、引き続き、押し出し工程を完了する前に、ストランドは崩壊する(つまり破断する)。約50Pa・sの開始粘度でセメントIは、図14Aに示すように、挙動の差異は視覚的に明確であり、上記ストランドが安定により長く伸び、かつ注入期間の完了時に崩壊する。図14Bに示すように、約100Pa・sの粘度を有するセメントIの注入の間の観察は、崩壊が認められる前に約2秒間安定なストランドを示した。図14Cに示すように200Pa・sでは、セメントIの押し出しは、数秒後の崩壊なしに伸長を示す。伸長速度は、400Pa・sの粘度でセメントIを用いた場合に著しく低減され、かつ図14Dに示されるように崩壊は数秒後に観察できなかった。図14Eに示されるように、600Pa・sの粘度を有するセメントIと、調製後に観察された、図14Fに示されているようなセメントIIとは、極めて同じ挙動を示す。約20秒後に両方のサンプルについて、如何なる著しい伸長なしの安定なセメントのスパゲッティ状のストランドが示された。
【0091】
ここに示した調査は、注入セメントI(Vertecem Synthes GmbH)について待機時間の延長及び開始粘度の増大により、漏洩質量は減少することを示す。しかしながら、セメントIIは、実質的に混合直後に適用した場合に、漏洩を助長するBaroud Modelにおいて、極めて低い漏洩質量を示す。セメントIIは、固体成分と液体成分とを混合するやいなや使用する準備ができていた。このように、セメントIIは、使用者、例えば医師にとっての待機期間を、この手順の安全性を損なわずに実質的にゼロ分まで短縮する。
【0092】
本発明をいくつかの実施態様に従って記載したが、この際に、例えば添付の特許請求の範囲により示されているように、本発明の精神及び範囲から逸脱せずに、多様な変更、置き換え及び交換が可能であることが理解される。従って、本発明の範囲が、本明細書に記載されたプロセス、製造、及び材料の組成、方式及び工程の特別な実施態様に限定することを意図していないことを認識すべきである。例えば、一実施態様に従った上記されたような多様な特徴は、他に記載がない限り、他の実施態様に取り入れることができる。更に、当業者が本発明から容易に認識されるように、ここに記載された対応する実地態様と実質的に同じ機能を担うか又は実質的に同じ結果に達する現在存在するか又は後に開発されるプロセス、製造、材料の組成、方法又は工程は、本発明によって利用できる。
【0093】
添付の特許請求の範囲から逸脱することなしに本発明の多様な変更及び交換を行えることは、当業者により認識される。これらのいくつかは上記されていて、他は当業者には明確である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
造影剤、重合開始剤、リン酸カルシウムを基礎とする骨代替材料、及び固体ポリマーを有する固体成分と、
液体モノマー、重合促進剤、及び場合により重合禁止剤を有する液体成分と
を有する固体成分と液体成分とを合せることにより形成される骨セメントにおいて、
前記骨セメントは目標とされる解剖学的部位に又は前記解剖学的部位内に手動で注入するために適した注入可能な初期粘度を有し、かつ前記注入可能な初期粘度は前記固体成分と前記液体成分とを合せたほぼ直後に形成される、骨セメント。
【請求項2】
前記固体成分は、前記造影剤を、前記固体成分の約38〜約42質量%の範囲内で含有し、
前記重合開始剤を、前記固体成分の約0.3〜約0.5質量%の範囲内で含有し、
ヒドロキシアパタイトを有する前記骨代替材料を、前記固体成分の約14〜16質量%の範囲内で含有し、かつ
ポリ(メチルアクリレート−コ−メチルメタクリレート)、ポリ(メタ)アクリレート、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリ(メチルメタクリレート)、及び/又はポリ(メチルメタクリレート−コ−スチレン)の1種以上のポリマー、ブレンド、混合物、又はコポリマーを有する前記固体ポリマーを、前記固体成分の約43〜約46質量%の範囲内で含有する、請求項1記載の骨セメント。
【請求項3】
前記造影剤は、二酸化ジルコニウムを、前記固体成分の約40質量%で含有し、
前記骨代替材料は、ヒドロキシアパタイトを、前記固体成分の約15質量%で含有し、及び
前記固体ポリマーは、ポリ(メチルアクリレート−コ−メチルメタクリレート)とポリ(メチルメタクリレート)との混合物を、前記固体成分の約45質量%で含有する、請求項2記載の骨セメント。
【請求項4】
前記ポリ(メチルメタクリレート)は、前記固体ポリマーの約3質量%〜約15質量%の範囲内である、請求項3記載の骨セメント。
【請求項5】
前記造影剤は、二酸化ジルコニウムを、前記固体成分の約40質量%で含有し、
前記重合開始剤は、前記固体成分の約0.4質量%であり、
前記骨代替材料は、ヒドロキシアパタイトを、前記固体成分の約15質量%で含有し、
前記固体ポリマーは、ポリ(メチルアクリレート−コ−メチルメタクリレート)とポリ(メチルメタクリレート)との混合物を、前記固体成分の約45質量%で含有し、かつ
前記液体モノマーは、メチルメタクリレートを、前記液体成分の約99.3質量%で含有し、
前記重合促進剤は、N−N−ジメチル−パラ−トルイジンを、前記液体成分の約0.7質量%で含有し、かつ
場合により、前記重合禁止剤は、ヒドロキノンを、前記液体成分の約60ppmで含有する、請求項1から4までのいずれか1項記載の骨セメント。
【請求項6】
前記骨セメントの硬化後に、前記骨代替材料を、前記硬化した前記骨セメントの約11質量%含有し、前記造影剤を、前記硬化した前記骨セメントの約29質量%含有し、かつ前記固体ポリマーを、前記硬化した前記骨セメントの約60質量%含有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の骨セメント。
【請求項7】
前記固体ポリマーは、約200kDa〜約1000kDaの平均分子量範囲を有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の骨セメント。
【請求項8】
前記固体ポリマーは、約600kDa〜約700kDaの平均分子量範囲を有する、請求項1から7までのいずれか1項記載の骨セメント。
【請求項9】
前記固体ポリマーは、実質的に600kDaの平均分子量を有する、請求項1から8までのいずれか1項記載の骨セメント。
【請求項10】
前記骨代替材料は、約5μm〜約50μmの平均粒径範囲を有する焼結されたヒドロキシアパタイト粒子を有する、請求項1から9までのいずれか1項記載の骨セメント。
【請求項11】
前記骨代替材料は、約10μm〜約30μmの平均粒径範囲を有する焼結されたヒドロキシアパタイト粒子を有する、請求項1から10までのいずれか1項記載の骨セメント。
【請求項12】
前記固体ポリマーは、少なくとも一部が実質的に球状の重合したビーズを有する、請求項1から11までのいずれか1項記載の骨セメント。
【請求項13】
前記注入可能な初期粘度は、50Pa・sより大きい、請求項1から12までのいずれか1項記載の骨セメント。
【請求項14】
前記骨セメントは、約2分以下の待機時間を有する、請求項1から13までのいずれか1項記載の骨セメント。
【請求項15】
前記骨セメントは、約1分以下の待機期間を有する、請求項1から14までのいずれか1項記載の骨セメント。
【請求項16】
前記骨セメントは、約ゼロ分の待機時間を有する、請求項1から15までのいずれか1項記載の骨セメント。
【請求項17】
前記目標とされる解剖学的部位は、1つ以上の椎体である、請求項1から16までのいずれか1項記載の骨セメント。
【請求項18】
適用後に、前記骨セメントは最少の漏洩を示す、請求項1から17までのいずれか1項記載の骨セメント。
【請求項19】
目標とされる解剖学的部位の治療のための骨セメントキットにおいて、固体成分を収容する第1の容器と、液体成分を有する第2の容器と、場合により前記骨セメントを注入するために適した1つ以上のシリンジを有し、前記固体成分は、造影剤、重合開始剤、リン酸カルシウムを基礎とする骨代替材料、及び固体ポリマーを有し、前記液体成分は、液体モノマー、重合促進剤、及び場合により重合禁止剤を有し、前記固体成分と前記液体成分とは合わされて、最少の漏洩で目標とされる解剖学的部位に又は前記解剖学的部位内に手動で注入するために適した初期粘度を有する骨セメントを形成する、骨セメントキット。
【請求項20】
前記造影剤は、二酸化ジルコニウムを、前記固体成分の約40質量%で含有し、
前記重合開始剤は、過酸化ジベンゾイルを、前記固体成分の約0.4質量%で含有し、
前記骨代替材料は、ヒドロキシアパタイトを、前記固体成分の約15質量%で含有し、
前記固体ポリマーは、ブレンドされたポリ(メタクリレート−コ−メチルメタクリレート)及びポリメチルメタクリレート)を、前記固体成分の約45質量%で含有し、かつ
前記液体成分は、メチルメタクリレート約99.4質量%、N−N−ジメチル−パラトルイジン約0.7質量%及びヒドロキノン約60ppmを有する、請求項19記載の骨セメントキット。
【請求項21】
前記目標とされる解剖学的部位は、1つ以上の椎体である、請求項19又は20のいずれか1項記載の骨セメントキット。
【請求項22】
請求項1から18までのいずれか1項記載の骨セメント組成物を製造する方法において、前記方法は
第1の容器に、造影剤、重合開始剤、リン酸カルシウムを基礎とする骨代替材料、及び固体ポリマーを有する固体成分を充填する工程、
第2の容器に、液体モノマー、重合促進剤、及び場合により重合禁止剤を有する液体成分を充填する工程、及び
前記液体成分と前記固体成分を、ミキサーを用いて合わせる工程
を有する、骨セメント組成物を製造する方法。
【請求項23】
請求項1から18までのいずれか1項記載の骨セメントを、目標とされる解剖学的部位に又は前記解剖学的部位内に手動で注入又は適用する工程を有する、目標とされる解剖学的部位を骨セメントで治療する方法。
【請求項24】
前記手動で注入する工程は、第1のシリンジを手動で動作させ、前記動作が液圧を作り出し、第2のシリンジ中に収容された前記セメントの注入又は適用を行う、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記目標とされる解剖学的部位は、1つ以上の椎体である、請求項23又は24のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
骨セメントを用いて、脆弱化した又はつぶれた椎体を造成、置換又は治療する方法において、前記方法が、請求項1から18までのいずれか1項記載の骨セメントを、1つ以上の椎体に又は1つ以上の椎体内に手動で注入する工程を有する、脆弱化した又はつぶれた椎体を造成、置換又は治療する方法。
【請求項27】
前記手動で注入する工程は、第1のシリンジを手動で動作させ、前記動作が液圧を作り出し、第2のシリンジ中に収容された前記セメントの注入又は適用を行うことを含む、請求項26記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2013−521065(P2013−521065A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−556256(P2012−556256)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【国際出願番号】PCT/US2011/027142
【国際公開番号】WO2011/109684
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(505377463)ジンテス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (186)
【Fターム(参考)】