説明

骨障害の処置における使用のためのAXLのモジュレーター

本発明は、哺乳動物に、Axl遺伝子発現のインヒビターまたはAxlタンパク質活性のインヒビターを投与することを含む、骨障害および軟骨障害の処置または予防するための方法を提供する。本発明は、骨粗鬆症、骨減少症、骨軟化症、骨形成異常症、変形性関節症、オステオミエローマ(osteomyeloma)、骨折、パジェット病、骨形成不全症、骨硬化症、形成不全性(aplastic)骨障害、体液性高カルシウム血症性骨髄腫、多発性骨髄腫、転移後の骨菲薄化(thinning)、高カルシウム血症、慢性腎疾患、腎臓透析、原発性副甲状腺機能亢進症、続発性副甲状腺機能亢進症、炎症性腸疾患、クローン病、コルチコステロイドの長期使用、または性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)アゴニストもしくはアンタゴニストの長期使用などの骨障害の処置におけるAxlモジュレーターの治療的使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2007年7月2日に出願された米国仮特許出願第60/958,270号および2007年7月3日に出願された米国仮特許出願第60/958,316号の利益を主張する。これらの出願の全ての内容は、その全体が参考により本明細書に援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、骨粗鬆症、骨減少症、骨軟化症、骨形成異常症、変形性関節症、オステオミエローマ(osteomyeloma)、骨折、パジェット病、骨形成不全症、骨硬化症、形成不全性(aplastic)骨障害、体液性高カルシウム血症性骨髄腫、多発性骨髄腫、転移後の骨菲薄化(thinning)、高カルシウム血症、慢性腎疾患、腎臓透析、原発性副甲状腺機能亢進症、続発性副甲状腺機能亢進症、炎症性腸疾患、クローン病、コルチコステロイドの長期使用、または性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)アゴニストもしくはアンタゴニストの長期使用などの骨障害の処置におけるAxlモジュレーターの治療的使用に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
受容体型チロシンキナーゼ(「RTK」)は、細胞外環境からのシグナルの伝達に関与している。かかるシグナルによって、多種多様な細胞応答、例えば、増殖、分化、遊走、および代謝が誘導される。配列の類似性に基づき、既知のRTKは、10種類を超える異なるサブファミリーに分類されている。Mer受容体サブファミリーには、Axl、Tyro3、およびMerが含まれる。Axlはまた、数ある中でUfo、Tyro7およびArkとしても知られているが、本明細書では「Axl」と称する。新規なAxl相同RTKとしてクローニングされたTyro3は、数ある中でRse、BrtおよびSkyとしても知られているが、本明細書では「Tyro3」と称する。ヒト(単球ならびに上皮組織および生殖系組織)で最初に報告された発現パターンにちなんで命名されたMerは、ニワトリc−eykの哺乳動物の推定ホモログである。この受容体は、2つの免疫グロブリン様ドメイン、2つのフィブロネクチンIII型反復配列、膜貫通ドメイン、および保存された触媒性キナーゼ領域を含む細胞質ドメインを含む細胞外ドメインを特徴とする個々に異なる構造を共有している(非特許文献1;非特許文献2)。
【0004】
単一分子のリガンドである増殖停止特異的遺伝子6(Gas6)は、Mer受容体サブファミリーのチロシンキナーゼ活性を活性化する(非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5)。Gas6は、Axl、Tyro3およびMerにナノモルの親和性で結合するビタミンK依存性タンパク質をコードしている(非特許文献6)。Axl、MerおよびTyro3三重ノックアウトマウスは、リンパ球増殖および自己免疫表現型を示すが、Axlのみが欠損したマウスは免疫表現型を示さず、これは、これらの3つの関連するキナーゼが協調して機能していることを示す(非特許文献7)。Axlに対するGas6の結合により細胞接着、増殖および凝集が調節され、この結合は、一部の癌、例えば、慢性骨髄性白血病、大腸癌、および黒色腫に関与している。Axlの役割は、多種多様な生理学的プロセス、例えば、精子形成、血管の細胞機能、2型糖尿病の進行、および神経の発生において示唆されている。また、Axlは、例えば、アテローム性動脈硬化性病変と関連する異所性石灰化時、周皮細胞において発現されるため、心血管の障害にも関与している(非特許文献8)。
【0005】
Axlは、骨芽前駆細胞を含む集団である骨髄間質細胞で発現される(非特許文献9)。また、Axlの発現は骨芽前駆細胞株でも見られるが、骨形成タンパク質2(BMP2)を添加するとAxl mRNAの発現が阻害された(特許文献1;特許文献2)。しかしながら、この観察結果にもかかわらず、骨の発生中にAxlが何らかの直接的な役割を果たしているのか、またはAxlの阻害は単にBMP2の活性の結果であるのかは、依然として不明なままである。
【0006】
骨粗鬆症は、米国で最も多く見られる骨障害であり、現在、推定2000万人が罹患しており、さらに3400万人の米国人が、将来的に骨粗鬆症になる高リスクにさらされるのに充分に低い骨量を有する。毎年150万例の骨折の原因は骨粗鬆症であり、その骨折のうちほぼ85%は、患者の股関節部、脊柱または手首で起こっている。男女両方とも骨粗鬆症になるが、閉経後の女性に最も高頻度に観察されている。また、骨量および/または骨塩量(BMD)の減少は、慢性グルココルチコイド療法、早期性腺機能不全、アンドロゲン抑制、ビタミンD不足、不充分なカルシウム摂取、続発性副甲状腺機能亢進症、または神経性食欲不振に起因することがあり得る。
【0007】
したがって、特にヒト用の、骨粗鬆症および変形性関節症などの骨障害の新規な治療剤を開発する必要性が継続して存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第02/081745号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第20060030541号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Heiringら、J.Biol.Chem.279:6052−6058(2004)
【非特許文献2】Nagataら、J.Biol.Chem.271:30022−30027(1996)
【非特許文献3】Varnumら、Nature 373:623−626(1995)
【非特許文献4】Markら、J.Biol.Chem.271:9785−9789(1996)
【非特許文献5】Chenら、Oncogene 14:2033−2039(1997)
【非特許文献6】Nagataら、J.Biol.Chem.271:9785−9789(1996)
【非特許文献7】Luら、Science 293:306−311(2001)
【非特許文献8】Collettら、Circ.Res.92:1123−1129(2003)
【非特許文献9】Satomuraら、J.Cell.Physiol.177:426−438(1998)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
一実施形態において、本発明は、哺乳動物に、Axl遺伝子発現のインヒビターまたはAxlタンパク質活性のインヒビターを投与することを含む、哺乳動物の骨障害を処置または予防する方法を提供する。一実施形態において、本発明は、該インヒビターが骨形成タンパク質2(BMP2)ではない方法を提供する。一実施形態において、該インヒビターは、Axlタンパク質のチロシンキナーゼ活性を低下させるものである。一実施形態において、本発明は、Axlタンパク質活性のインヒビターが構造式(I):
【0011】
【化1】

を有するもの、またはその塩、水和物、溶媒和物もしくはN−オキシドである方法であって、式中、
Bは、
【0012】
【化2】

であり、
式中、RおよびRは一緒になって、1つ以上のRおよび/またはRで任意選択的に置換された、3〜4個の原子の飽和もしくは不飽和アルキレンまたは飽和もしくは不飽和ヘテロアルキレン鎖を形成しており;Rは、1つ以上のRで任意選択的に置換された(C〜C20)アリール、1つ以上のRで任意選択的に置換された5〜20員のヘテロアリール、1つ以上のRで任意選択的に置換された(C〜C28)アリールアルキル、および1つ以上のRで任意選択的に置換された6〜28員のヘテロアリールアルキルからなる群より選択され;Rは、合計3〜16個の環内炭素原子を含み、R基で置換されている飽和もしくは不飽和の架橋されたもしくは非架橋シクロアルキルである、ただし、Rが不飽和の非架橋シクロアルキル、または飽和の架橋シクロアルキルである場合、このR置換基は任意選択的であるものとし、式中、Rは、さらに、1つ以上のRで任意選択的に置換され;Rは、−C(O)OR、−C(O)NR、−C(O)NROR、または−C(O)NRNRからなる群より選択され;各R基は、他のものと独立して、水溶性化基、R、R、1つ以上のRおよび/またはRで任意選択的に置換されたC〜Cアルキル、1つ以上のRおよび/またはRで任意選択的に置換されたC〜Cシクロアルキル、1つ以上のRおよび/またはRで任意選択的に置換された3〜12個の環内原子を含むヘテロシクロアルキル、1つ以上のRおよび/またはRで任意選択的に置換されたC〜Cアルコキシ、ならびに−O−(CH−R(式中、xは1〜6である)からなる群より選択され;各Rは、他のものと独立して、水素、C〜Cアルキル、架橋もしくは非架橋C〜C10シクロアルキル、3〜12個の環内原子を含む架橋もしくは非架橋ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、(C〜C14)アリール、および(C〜C20)アリールアルキルからなる群より選択され、ここで、Rは、1つ以上のRで任意選択的に置換されており;各Rは、他のものと独立して、=O、−OR、(C〜C)ハロアルキルオキシ、=S、−SR、=NR、=NOR、−NR、ハロゲン、−C〜Cハロアルキル、−CN、−NC、−OCN、−SCN、−NO、−NO、=N、−N、−S(O)R、−S(O)、−S(O)OR、−S(O)NR、−S(O)NR、−OS(O)R、−OS(O)、−OS(O)OR、−OS(O)NR、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NR、−C(O)NROR、−C(NH)NR、−C(NR)NR、−C(NOH)R、−C(NOH)NR、−OC(O)R、−OC(O)OR、−OC(O)NR、−OC(NH)NRおよび−OC(NR)N−Rからなる群より選択される適当な基であり;各Rは、他のものと独立してRであるか、または同じ窒素原子に結合している2つのRが、これら両方が結合している該窒素原子と一緒になって、5〜8個の環内原子を含むヘテロシクロアルキル基を形成しており、該ヘテロシクロアルキル基は、任意選択で、−O−、−S−、−N(−(CH−R)−、−N(−(CH−C(O)R)−、−N(−(CH−C(O)OR)−、−N(−(CH−S(O))−、−N(v(CH−S(O)OR)-および−N(−(CH−C(O)NR)−(式中、yは0〜6である)からなる群より選択される1〜3個のさらなるヘテロ原子基を含み、該ヘテロシクロアルキルは、1つ以上のRで任意選択的に置換されており;各Rは、他のものと独立して、R、Rおよびキラル補助基からなる群より選択され;ならびに各Rは、独立して、−C〜Cアルコキシ、−C〜Cアルキル、−C〜Cハロアルキル、シアノ、ニトロ、アミノ、(C〜Cアルキル)アミノ、ジ(C〜Cアルキル)アミノ、フェニル、ベンジル、オキソ、もしくはハロゲンであるか、または隣接する原子に結合している任意の2つのRが、これらが各々結合している該原子と一緒になって、5〜8個の環内原子を含む飽和もしくは不飽和の縮合シクロアルキルまたは飽和もしくは不飽和ヘテロシクロ縮合アルキル基を形成しており、ここで、形成されたシクロアルキル基およびヘテロシクロアルキル基は、各々独立してハロゲン、C〜Cアルキルおよびフェニルから選択される1つ以上の基で任意選択的に置換されている方法を提供する。式Iの化合物は、PCT特許公開公報WO2007070872A1および米国特許公開公報第20070142402号に記載および規定されている。
【0013】
一実施形態において、骨障害は、骨減少症(steopenia)、骨軟化症、骨粗鬆症、変形性関節症、オステオミエローマ、骨形成異常症、パジェット病、骨形成不全症、骨硬化症、形成不全性骨障害、体液性高カルシウム血症性骨髄腫、多発性骨髄腫、または転移後の骨菲薄化の1つ以上を含む。一実施形態において、本発明は、骨粗鬆症が、閉経後、ステロイド誘導性、老人性、またはサイロキシン使用誘導性である方法を提供する。
【0014】
一実施形態において、骨障害は、高カルシウム血症、慢性腎疾患、腎臓透析、原発性副甲状腺機能亢進症、続発性副甲状腺機能亢進症、炎症性腸疾患、クローン病、コルチコステロイドの長期使用、または性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)アゴニストもしくはアンタゴニストの長期使用の少なくとも1つによって引き起こされたものである。
【0015】
一実施形態において、本発明は、哺乳動物にAxl遺伝子発現のインヒビターを、哺乳動物において骨芽細胞の数または骨芽細胞の活性を増大させるのに充分な量および期間で投与することを含む、哺乳動物において骨芽細胞の数または骨芽細胞の活性を増大させる方法を提供する。一実施形態において、本発明は、骨芽細胞の数または骨芽細胞の活性の増大により、骨老化のレベル、骨量の減少、骨塩量の減少、骨質の変質、および骨微細構造の完全性の変質の少なくとも1つが低下する方法を提供する。一実施形態において、本発明は、該インヒビターがBMP2タンパク質ではない方法を提供する。一実施形態において、本発明は、骨芽細胞の数または活性の増大により、骨芽細胞マーカーの発現の増大がもたらされる方法を提供する。一実施形態において、骨芽細胞マーカーは、オステオカルシン、アルカリホスファターゼ、またはI型コラーゲンである。
【0016】
一実施形態において、Axl遺伝子発現のインヒビターは、化合物、タンパク質、ペプチド、抗体、アプタマー、またはポリヌクレオチドである。一実施形態において、Axl遺伝子発現のインヒビターは、Axl遺伝子の転写を抑制または低減させるものである。一実施形態において、Axl遺伝子発現のインヒビターは、Axlメッセンジャーリボ核酸(mRNA)の翻訳を抑制または低減させるものである。
【0017】
一実施形態において、Axl遺伝子発現のインヒビターはポリヌクレオチドである。一実施形態において、ポリヌクレオチドはリボ核酸(RNA)である。一実施形態において、ポリヌクレオチドはデオキシリボ核酸(DNA)である。一実施形態において、RNAまたはDNAはアンチセンスである。一実施形態において、RNAは二本鎖RNAである。一実施形態において、二本鎖RNAは低分子干渉RNA(siRNA)である。一実施形態において、siRNAは約15〜約40ヌクレオチド長である。一実施形態において、siRNAは、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、および配列番号:6から選択されるヌクレオチド配列を有する。一実施形態において、siRNAはマイクロRNA(miRNA)配列を含む。
【0018】
一実施形態において、本発明は、哺乳動物にAxlタンパク質活性のインヒビターを、哺乳動物において骨芽細胞の数または骨芽細胞の活性を増大させるのに充分な量および期間で投与することを含む、哺乳動物において骨芽細胞の数または骨芽細胞の活性を増大させる方法を提供する。一実施形態において、骨芽細胞の数または骨芽細胞の活性の増大により、骨老化のレベル、骨量の減少、骨塩量の減少、骨質の変質、および骨微細構造の完全性の変質の少なくとも1つが低下する。
【0019】
一部のある実施形態において、Axlタンパク質活性のインヒビターは、化合物、タンパク質、ペプチド、抗体、アプタマー、スモール・モジュラー(molecule)・イムノファーマシューティカル(SMIP(商標))、またはポリヌクレオチドである。一実施形態において、該インヒビターは、Axlタンパク質のチロシンキナーゼ活性を低下させるものである。一実施形態において、該インヒビターは、Axlタンパク質と少なくとも1つのAxlタンパク質リガンドとの相互作用を阻害するものである。一実施形態において、Axlタンパク質リガンドは、増殖停止特異的6(Gas6)タンパク質;プロテインS;ホスファチジルイノシトール(phophatidylinosisol)3−キナーゼ(PI3K)タンパク質のp855αもしくはp85βサブユニット;ホスホリパーゼC−γ(PLC−γ)タンパク質、増殖因子受容体結合タンパク質2(Grb2);c−Srcタンパク質;Rasタンパク質;Aktタンパク質;ERK/MAPKタンパク質;NF−κBタンパク質;GSK3タンパク質;IL−15受容体αサブユニットタンパク質;またはmTORタンパク質である。一実施形態において、該インヒビターは、Gas6タンパク質によるAxlタンパク質の活性化を抑制するものである。一実施形態において、該インヒビターは、Axlタンパク質のGas6主結合部位に結合するものである。
【0020】
一部のある実施形態において、Axlタンパク質活性のインヒビターは、可溶性Axlタンパク質もしくはその断片、変異型Axlタンパク質もしくはその断片、またはAxlタンパク質リガンドもしくはその断片である。一実施形態において、該変異型タンパク質は変異型Axlタンパク質である。一実施形態において、変異型Axlタンパク質は、配列番号:2のアミノ酸567位のリシンに対してアルギニン置換を有するものである。
【0021】
一部のある実施形態において、Axlタンパク質活性のインヒビターは抗体である。該抗体は、ヒト抗体またはヒト化抗体であり得る。一部のある実施形態において、該抗体は、Axlタンパク質、Gas6以外のAxlタンパク質リガンド、Axlタンパク質のGas6主結合部位、またはAxl上へのGas6の結合を妨げる任意の他の部位に特異的に結合するものであり得る。
【0022】
一部のある実施形態において、本発明は、哺乳動物がヒトである本明細書において上記の方法のいずれか1つ以上を提供する。一実施形態において、本発明は、Axl遺伝子発現のインヒビターまたはAxlタンパク質活性のインヒビターが全身投与されるものであり得る本明細書に記載の方法を提供する。Axl遺伝子発現またはAxlタンパク質活性のインヒビターは、少なくとも2週間の期間にわたって繰り返し投与されるものであり得る。他の実施形態において、Axl遺伝子発現またはAxlタンパク質活性のインヒビターは、局所投与されるものであり得る。該インヒビターは、マトリックスとともにインサイチュで適用されるものであり得る。
【0023】
一部のある実施形態において、本発明は、さらに、哺乳動物に、ビスホスホネート、骨形成タンパク質(BMP)、カルシトニン、エストロゲン、選択的エストロゲン受容体インヒビター、副甲状腺ホルモン、ビタミン、RANKLインヒビター、カテプシンKインヒビター、スクレロスチンインヒビター、ラネリック酸ストロンチウムからなる群より選択される少なくとも1種類の薬剤を投与することを含む、本明細書において上記の方法のいずれか1つ以上を提供する。BMPは、例えば、BMP2、BMP4、BMP6、またはそのヘテロ二量体であり得る。
【0024】
一部のある実施形態において、本発明は、哺乳動物にAxlタンパク質活性のアゴニストまたはAxl遺伝子発現のアゴニストを投与することを含む、哺乳動物において骨芽細胞の数の増加または骨芽細胞の活性の増大と関連している骨障害を処置または予防する方法を提供する。一実施形態において、該障害は、例えば、硬化性骨異形成症、骨格系骨異形成症、骨内性骨増殖症、カムラチ・エンゲルマン病、ファン・ブッヘム病、硬結性骨化症、常染色体優性骨硬化症、常染色体優性大理石骨病I型、ワース(Worth)病、または進行性骨化性線維形成異常症であり得る。
【0025】
一部のある実施形態において、本発明は、細胞を試験化合物と接触させること、および該細胞のAxl遺伝子発現またはAxlタンパク質活性が該化合物によって変化させられているかどうかを調べることを含み、ここで、Axl遺伝子発現またはAxlタンパク質活性の変化は、試験化合物が骨成長をモジュレートするものであることを示す、骨成長をモジュレートする化合物の同定方法を提供する。一実施形態において、該細胞は、例えば、骨芽細胞または骨芽細胞前駆細胞であり得る。一実施形態において、試験化合物はAxl遺伝子発現を阻害するものである。一実施形態において、試験化合物はAxl遺伝子発現を増大させるものである。一実施形態において、試験化合物はAxlタンパク質活性を阻害するものである。一実施形態において、試験化合物はAxlタンパク質活性を増大させるものである。
【0026】
一部のある実施形態において、本発明は、キナーゼ活性を有するAxlポリペプチドを準備すること;Axlポリペプチドの存在下でリン酸化される基質を準備すること;該ポリペプチドと該基質を化合物と接触させること、および該ポリペプチドによってAxlキナーゼ活性がモジュレートされているか否かを調べることを含む、Axlタンパク質キナーゼ活性をモジュレートする化合物の同定方法を提供する。一部のある実施形態において、Axlキナーゼ活性のモジュレーターの同定方法は、キナーゼ活性を有するAxlポリペプチドを準備すること;Axlポリペプチドの存在下でリン酸化される基質を準備すること;Axlポリペプチドを該基質と、該基質のリン酸化が可能な条件下で混合すること;該混合物を化合物と接触させること;および該化合物によってAxlキナーゼ活性がモジュレートされているか否かを判定することを含む。一部のある実施形態において、Axlポリペプチドは、配列番号:13、配列番号:37、配列番号:38、配列番号:39、配列番号:40、配列番号:41、または配列番号:42に示すアミノ酸配列を有する。一部のある実施形態において、Axlポリペプチドは、配列番号:13、配列番号:37、配列番号:38、配列番号:39、配列番号:40、配列番号:41、配列番号:42、または配列番号:43に示すアミノ酸配列を有する。一部のある実施形態において、該基質は、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:35、または配列番号:36に示すアミノ酸配列を有する。
【0027】
一部のある実施形態において、本発明は、被検体から試験試料を採取すること;試験試料中のAxl遺伝子の発現レベルまたはAxlタンパク質の活性レベルを測定すること;および試験試料中のAxl遺伝子の発現レベルまたはAxlタンパク質の活性レベルをAxl遺伝子の発現レベルまたは対照試料中のAxlタンパク質の活性レベルと比較することを含み、ここで、対照試料中のAxl遺伝子の発現またはタンパク質活性のレベルと比べてAxl遺伝子発現またはAxlタンパク質活性のレベルが変化させられていることは骨密度の変化を示す、被検体における骨密度の変化のスクリーニングまたは検出方法を提供する。一部のある実施形態において、試験試料中のAxl遺伝子の発現またはAxlタンパク質活性のレベルは、対照試料と比べて増大している。一部のある実施形態において、試験試料中のAxl遺伝子の発現またはAxlタンパク質活性のレベルは、対照試料と比べて減少している。
【0028】
一実施形態において、本発明は、Axlタンパク質の活性レベルが、Axlタンパク質に特異的に結合する捕捉試薬を用いて測定される、被検体における骨密度の変化のスクリーニングまたは検出方法を提供する。一実施形態において、Axl捕捉試薬は抗体である。一実施形態において、該抗体は、検出可能な標識を用いて検出される。一実施形態において、該検出可能な標識は、放射性同位体、蛍光化合物、生物発光化合物および化学発光化合物からなる群より選択される。
【0029】
一実施形態において、本発明は、少なくとも1種類のAxlポリペプチドに特異的に結合する捕捉試薬、バッファー、および少なくとも1種類のAxlポリペプチドに対する該捕捉試薬の結合を検出するための試薬を備えるキットを提供する。一実施形態において、キットの捕捉試薬は、検出可能な標識を含む。一実施形態において、キットの捕捉試薬は抗体である。本発明のキットは、択一的または追加的に、Axl遺伝子に特異的な核酸プローブまたはプライマーを含むものであってもよい。
【0030】
一実施形態において、本発明は、被検体由来の試験試料において、Axlタンパク質をコードするポリヌクレオチド内の少なくとも1つの変異の存在を調べることを含み、ここで、Axlタンパク質をコードするポリヌクレオチド内の前記少なくとも1つの変異の存在は、該被検体における骨密度の変化、骨量の変化、骨質の変化、または骨形成の変化を示す、被検体の骨塩量レベルの変化、骨量の変化、骨質の変化、骨形成の変化、または骨微細構造の完全性の変化のスクリーニング方法を提供する。
【0031】
一実施形態において、Axlタンパク質をコードするポリヌクレオチド内の少なくとも1つの変異の存在または非存在は、該試料を、Axlをコードするポリヌクレオチドと特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブと接触させることにより検出される。一実施形態において、該オリゴヌクレオチドプローブは、Axlポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの少なくとも約15ヌクレオチドを含む。一実施形態において、該ポリヌクレオチドは、DNA、ゲノムDNA、相補DNA(cDNA)、RNA、およびmRNAからなる群より選択される。一実施形態において、該ポリヌクレオチドは変異型Axlタンパク質をコードするものである。一実施形態において、変異型Axlタンパク質は、配列番号:2のアミノ酸567位のリシンに対してアルギニン置換を有する。
【0032】
配列の簡単な説明
以下の配列の説明および添付の配列表は、37 C.F.R..§.1.821 1.825に示された特許出願におけるヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列の開示の規約に従うものである。ヌクレオチドおよびアミノ酸の配列データに使用した記号および形式は、37 C.F.R.§ 1.822に示された規則に従うものである。
【0033】
配列番号:1は、GenBank受託番号NM_021913で入手されるヒトAxl遺伝子のヌクレオチド配列である。ヌクレオチド残基459〜3143は、配列番号:2をコードしている。
【0034】
配列番号:2は、GenBank受託番号NP_068713で入手される完全長ヒトAxlのアミノ酸配列である。
【0035】
配列番号:3は、siRNA Axl 1のヌクレオチド配列である。
【0036】
配列番号:4は、siRNA Axl 2のヌクレオチド配列である。
【0037】
配列番号:5は、siRNA Axl 3のヌクレオチド配列である。
【0038】
配列番号:6は、siRNA Axl4のヌクレオチド配列である。
配列番号:7は、非特異的スクランブルsiRNA対照であるNSPのヌクレオチド配列である。
【0039】
配列番号:8は、siRNA Runx2/Cbfa1のヌクレオチド配列である。
【0040】
配列番号:9〜11は、オステオカルシンの検出に使用したプライマーのヌクレオチド配列である。
【0041】
配列番号:12は、プロテアーゼ切断部位を含むAxl由来のペプチドのアミノ酸配列である。
【0042】
配列番号:13は、Axlキナーゼ活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列である。
【0043】
配列番号:14〜15は、自己リン酸化部位を含むAxlペプチドのアミノ酸配列である。
【0044】
配列番号:16〜17は、スクリーニング方法に使用され得るAxlペプチドのアミノ酸配列である。
【0045】
配列番号:18は、ヒトAxl shRNA構築物hAxl 363のヌクレオチド配列である。
【0046】
配列番号:19は、ヒトAxl shRNA構築物hAxl 1107のヌクレオチド配列である。
【0047】
配列番号:20は、ヒトAxl shRNA構築物hAxl 1748のヌクレオチド配列である。
【0048】
配列番号:21は、ヒトAxl shRNA構築物hAxl 1988のヌクレオチド配列である。
【0049】
配列番号:22は、ヒトAxl shRNA構築物hAxl 2448のヌクレオチド配列である。
【0050】
配列番号:22は、ヒトAxl shRNA構築物hAxl 2448のヌクレオチド配列である。
【0051】
配列番号:23は、マウスAxl shRNA構築物mAxl 187のヌクレオチド配列である。
【0052】
配列番号:24は、マウスAxl shRNA構築物mAxl 1079のヌクレオチド配列である。
【0053】
配列番号:25は、マウスAxl shRNA構築物mAxl 1477のヌクレオチド配列である。
【0054】
配列番号:26は、マウスAxl shRNA構築物mAxl 1850のヌクレオチド配列である。
【0055】
配列番号:27は、マウスAxl shRNA構築物mAxl 2269のヌクレオチド配列である。
【0056】
配列番号:28〜30は、L929亜株においてAxl発現をノックダウンし、TNFαに対する感受性を回復させるために使用したsiRNAのヌクレオチド配列である。
【0057】
配列番号31および32は、Axlをノックダウンするため、およびAxlがエキソビボ血管新生に必要であることをマウスモデルにおいて示すために使用したshRNAのヌクレオチド配列である。
【0058】
配列番号:33は、Axl上へのGas6の主結合部位であるIG1のアミノ酸配列である。
【0059】
配列番号:34は、Axl上へのGas6の副結合部位であるIG2のアミノ酸配列である。
【0060】
配列番号:35および配列番号:36は、スクリーニング方法に使用され得るペプチドのアミノ酸配列である。
【0061】
配列番号:37〜配列番号:42は、スクリーニング方法に使用したキナーゼ活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列である。
【0062】
配列番号:43は、キナーゼ活性を有し、スクリーニング方法に使用したポリペプチドのアミノ酸配列である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は、BMP2タンパク質がAxl遺伝子発現を24時間以内に下方調節することを示すグラフである。
【図2】図2は、Axlノックダウンにより、クローン14細胞内のAxl mRNAのレベルが低下することを示すグラフである。
【図3】図3は、Axlノックダウンにより、クローン14細胞内のオステオカルシンの発現が、外因性BMP2タンパク質の存在下および非存在下の両方で促進されることを示すグラフである。
【図4】図4は、Axlノックダウンにより、BMP2タンパク質を添加するとクローン14細胞においてアルカリホスファターゼ活性が誘導されることを示すグラフである。
【図5】図5は、Axl過剰発現によりオステオカルシンmRNAのレベルが抑制され、この効果がBMP2タンパク質の添加によって増強されることを示すグラフである。
【図6】図6は、Axl/Fcキメラを用いたAxl/Gas6結合の一過性阻害により、エキソビボマウス頭蓋冠器官培養モデルにおいて、総骨領域および骨芽細胞の数の増大がもたらされることを示すグラフである。
【図7A】図7は、Axlの「キナーゼ死(dead)」変異型は、クローン14細胞においてオステオカルシンの発現を抑制しないことを示す。
【図7B】図7は、Axlの「キナーゼ死(dead)」変異型は、クローン14細胞においてオステオカルシンの発現を抑制しないことを示す。
【図8A】図8は、26週齢のAxl雄および雌ノックアウトマウスが、総海綿骨量および総皮質骨量の増大を有することを示す。
【図8B】図8は、26週齢のAxl雄および雌ノックアウトマウスが、総海綿骨量および総皮質骨量の増大を有することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0064】
詳細説明
本発明の方法は、骨または軟骨の障害を、その処置を必要とする任意の哺乳動物(例えば、ヒト、霊長類、サル、齧歯類、ヒツジ、ウサギ、イヌ、モルモット、ウマ、ウシ、およびネコなど)において処置または予防するために使用され得る。
【0065】
本発明は、骨または軟骨の変性障害を処置または予防するために投与されるAxlインヒビターを提供する。Axlインヒビターの投与によって処置または予防される障害としては、例えば、骨減少症、骨軟化症、変形性関節症、骨粗鬆症(例えば、閉経後、ステロイド誘導性、老人性、またはサイロキシン使用誘導性)、オステオミエローマ、骨形成異常症、パジェット病、骨形成不全症、体液性高カルシウム血症性骨髄腫、多発性骨髄腫、および転移後の骨菲薄化が挙げられる。さらに、処置または予防される障害としては、高カルシウム血症、慢性腎疾患、原発性または続発性副甲状腺機能亢進症、炎症性腸疾患、クローン(Krohn’s)病、コルチコステロイドまたは性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)アゴニストもしくはアンタゴニストの長期使用、および栄養不足と関連している骨変性障害が挙げられる。
【0066】
本発明は、哺乳動物にAxlのインヒビターを、骨変性障害を処置または予防;骨老化を遅延;失われた骨を回復;新たな骨形成を刺激;および/または骨(骨量および/または骨質)を維持するに有効な量で投与する方法を提供する。
【0067】
本発明は、海綿骨および皮質骨の微小欠損部を処置するための方法を提供する。骨質は、例えば、骨の微細構造の完全性を評価することにより測定され得る。
【0068】
本発明は、閉経後女性の骨変性障害を処置または予防するための方法を提供する。本発明は、男性の骨変性障害を処置または予防するための方法を提供する。本発明は、ステロイド誘導性骨粗鬆症の個体の骨変性障害を処置または予防するための方法を提供する。本発明は、個体の老人性骨粗鬆症を処置または予防するための方法を提供する。本発明は、個体のサイロキシン使用誘導性またはグルココルチコイド使用誘導性の骨粗鬆症を処置または予防するための方法を提供する。
本発明は、過剰な骨成長または骨格の過成長を特徴とする骨障害を処置または予防するために投与されるAxlアゴニストを提供する。例えば、過剰な骨成長または骨格の過成長を特徴とする骨障害としては、限定されないが、例えば、硬化性骨異形成症(「硬結性骨化症」とも称される);骨格系骨異形成症(骨硬化症、大理石骨病、および骨内性骨増殖症など);カムラチ・エンゲルマン病;ファン・ブッヘム病および硬結性骨化症;常染色体優性骨硬化症;常染色体優性大理石骨病I型;ワース病;ならびに進行性骨化性線維形成異常症(FOP)が挙げられる。例えば、Wesenbeckら、Am.J.Human Genet.72:763−771(2003)およびそこに挙げられた参考文献を参照のこと。過剰な骨成長の他の形態としては、人工股関節置換術、外傷、火傷、または脊髄損傷後の骨の病的増殖、ならびに転移性の前立腺癌または骨肉腫と関連している過剰な骨成長が挙げられる。
【0069】
本発明は、BMP2とAxlのインヒビターを哺乳動物に共投与することにより、哺乳動物においてBMP2媒介性応答を増強するための方法を提供する。BMP2は、骨欠損および軟骨欠損を示す患者の処置に有用である強力な骨形成性因子である(例えば、米国特許第5,166,058号および同第6,150,328号を参照のこと)。したがって、本発明は、上記の骨変性障害のいずれか、例えば、骨減少症、骨軟化症、変形性関節症、骨粗鬆症、オステオミエローマ、骨形成異常症、パジェット病、骨形成不全症、体液性高カルシウム血症性骨髄腫、多発性骨髄腫、および転移後の骨菲薄化、ならびに高カルシウム血症、慢性腎疾患、原発性または続発性副甲状腺機能亢進症、炎症性腸疾患、クローン病およびコルチコステロイドの長期使用と関連している骨変性障害などを処置または予防するためにBMP2とAxlインヒビターを共投与する方法を提供する。また、本発明は、BMP2によって処置または予防される任意のさらなる病状を処置または予防するためにBMP2とAxlインヒビターを共投与する方法を提供する。該方法は、骨折のBMP2処置および脊椎固定の増強を含む。
【0070】
骨老化に関連する転帰(1つまたは複数)は、海綿骨の減損(骨小柱板の穿孔);(骨幹端)皮質骨の減損;海綿骨の減損;骨塩量の減少;骨無機質の低下;骨リモデリングの低減;血清アルカリホスファターゼおよび酸ホスファターゼのレベルの増加;オステオカルシンの発現;骨脆弱性(骨折率の増大);ならびに骨折治癒の減退に関するAxlモジュレーターの特異的効果によって評価され得る。このような転帰の評価方法を以下に詳細に示す。骨老化および/または骨量増大は、密度測定画像化、例えば、X線撮影、二重エネルギーX線吸光光度分析法(DXA)または定量的コンピュータ連動断層撮影(QCT)を用いてインビボで評価され得る。骨質は、骨微細構造に関する詳細な情報をもたらす高解像度密度測定画像化法、例えば、マイクロコンピュータ連動断層撮影(マイクロCT)、または骨折抵抗性を調べるための骨のバイオメカニカル試験などを用いてエキソビボで測定され得る。
【0071】
本発明のさらなる適用としては、骨結合性を促進させるために、骨埋入物、マトリックスおよびデポー系をコーティングするため、またはこれらに組み込むためのAxlモジュレーターの使用が挙げられる。かかる埋入物の例としては、歯科用インプラント、関節置換用埋入物および骨移植片置換体が挙げられる。
【0072】
また、製剤には、例えば、該組成物の送達および/または支持のため、および/または骨および/または軟骨の形成用の表面を提供するための適切なマトリックスが含まれ得る。マトリックスは、Axl遺伝子発現のインヒビターもしくはAxlタンパク質活性のインヒビターまたは製剤の他の軟骨/骨タンパク質もしくは他の要素の低速放出をもたらすもの、および/または本発明の製剤の提示に適切な環境をもたらすものであってもよい。骨および/または軟骨の形成のため、組成物に、該組成物を使用が意図される部位に送達することができるマトリックスが含まれることがあり得る。かかるマトリックスは、現在、他の医療用埋入適用に使用されている材料で形成されたものであり得る。
【0073】
マトリックス材料の選択は、生体適合性、生分解性、機械的特性、美容上の外観および界面特性の1つ以上に基づく。該組成物用に可能なマトリックスは、生分解性で化学的に規定される硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、ポリ乳酸およびポリ無水物ならびにサンゴであり得る。さらなるマトリックスは、純粋なタンパク質または細胞外マトリックス成分で構成されたものである。他の可能なマトリックスは、非生分解性で化学的に規定される、例えば、焼結ヒドロキシアパタイト、生体ガラス、アルミン酸塩、または他のセラミックなどである。マトリックスは、上記の型の材料の任意のものの組合せ(ポリ乳酸とヒドロキシアパタイト、またはコラーゲンとリン酸三カルシウムなど)で構成されたものであってもよい。生体セラミックは、組成(カルシウム−アルミン酸−リン酸)が改変され得、細孔径、粒径、粒子形状および生分解性が改変されるように処理され得る。
【0074】
本発明は、骨変性障害の処置に対するAxlモジュレーターの有効性を評価するためのアッセイを含む。かかるアッセイは、該モジュレーターを繰り返し哺乳動物(例えば、OVXラット)に、少なくとも2、4、6または8週間の期間投与すること;および骨に対する該モジュレーターの効果を調べることを含み、ここで、該モジュレーターによる骨老化(例えば、骨量および/または骨質)の低速化あるいは骨形成の増大は、該モジュレーターが骨変性障害の処置または予防に有効であることを示し、該モジュレーターによる骨密度の減少は、該モジュレーターが、硬化性骨異形成症または骨量が不適切に増加する障害の処置に有効であることを示す。
【0075】
骨に対するAxlモジュレーターの効果を測定するためのアッセイ
骨構造および骨形成の種々の側面に対するAxlモジュレーターの効果は、限定されないが、骨格表現型決定アッセイ(これは、骨量、骨質、骨密度、骨形成、および骨老化を評価する);骨障害の動物モデル;ならびにインビトロ試験、例えば、新たに形成された骨(例えば、カルセイン標識)、オステオカルシン遺伝子の発現、ならびにアルカリホスファターゼ活性のアッセイなどの方法によって測定され得る。
【0076】
本明細書で用いる場合、「骨格表現型決定」は、骨量(例えば、骨塩量および/または骨質)を評価する1つ以上のアッセイを使用することによる骨(1つまたは複数)の特性評価をいう。かかるアッセイにより、海綿骨(骨小柱板の穿孔);(骨幹端)皮質骨の減損;海綿骨の減損;骨塩量の減少;骨無機質の低下;骨リモデリングの低減;血清アルカリホスファターゼおよび酸ホスファターゼのレベルの増加;骨脆弱性(骨折率の増大);ならびに骨折治癒の減退が測定され得る。また、このようなアッセイにより、同化作用による骨形成による骨量の増加、例えば、海綿骨の数または海綿骨の厚みの増大、皮質骨の増加、骨塩量の増加、血清オステオカルシンおよびアルカリホスファターゼレベルの増加、機械的完全性の改善、ならびに骨折治癒の増大または加速が測定され得る。
【0077】
本発明は、骨量および骨質、例えば、骨塩量(BMD)に対するAxlモジュレーターの効果を測定するための方法を提供する。骨量および骨質を評価するための方法は、当該技術分野で知られており、例えば、X線回折、DXA、pDXA、DEQCT、μCT、pQCT、化学分析、密度分画、組織測光法(histophotometry)、組織形態測定法、および組織化学分析(例えば、Laneら,J.Bone Min.Res.18:2105−2115(2003)に記載されている)が挙げられる。
【0078】
骨塩量に対するAxlモジュレーターの効果を測定するための方法の一例は、二重エネルギーx線吸光光度分析法(DXA)および/または末梢骨(peripheral)DXA(pDXA)である。これは、任意の骨格部位の測定に使用され得るが、臨床的判定は、通常、腰椎棘および寛骨(hip)で行なわれる。かかと(踵骨)、前腕(橈骨および尺骨)、または指(指趾節骨)を測定するポータブルDXA機が開発されている。また、DXAは、身体組成を測定するためにも使用され得る。DXA手法では、2つのx線エネルギーを用いて石灰化組織の面積を推定し、塩類含量をこの面積で除算し、これにより体格を一部補正する。しかしながら、この補正は、DXAが2次元スキャニング手法であり、骨の深さ、すなわち背腹長さを推定することができないため、部分的にすぎない。したがって、小柄な人は、平均より低い骨塩量(BMD)を有する傾向にある。より厳密にBMDが測定されるさらに新しいDXA手法が、現在、開発中である。変形性関節症に高頻度に見られる骨棘は、脊柱の骨密度を誤って増加させる傾向にある。DXA計測器は、いくつかの異なる製造業者から供給されているため、絶対項の出力値が異なる。その結果、個々の結果を、人種と性別は適合しているが年齢は適合していない若年集団のものとを比較するT−スコアを用いて結果を「正常」値と関連づけることが標準実務となっている。あるいはまた、Z−スコアにより、個々の結果を、人種も性別も適合した年齢が適合した集団のものと比較する。したがって、−1(年齢の平均より1標準偏差(SD)小さい)のZ−スコアを有する60歳の女性は、−2.5(若年対照群の平均より2.5SD小さい)T−スコアを有する可能性がある。pDXAはまた、実験用動物(ラットおよびマウスなど)におけるBMDの測定にも有用である。
【0079】
マイクロコンピュータ連動断層撮影(μCTまたはマイクロCT)を用いて骨微細構造に対するAxlモジュレーターの効果を測定するための方法は、当該技術分野で知られている。マイクロCTは、対象物にX線を照射しながら装置を回転させることにより、対象物に関する360°のX線透視画像データを得る方法である。次いで、このデータを用いて完全に3次元の画像データセットを作成し、これにより、海綿骨および皮質骨容積が測定され得る。空間的解像度が卓越しているため、μCTでは、DXAまたはpDXAでは観測され得ない骨の海綿骨構造の変化が検出される。このアッセイは、DXAおよびpDXAによって定量されるBMDに依存するだけでなく、μCTによって測定され得る海綿骨内の小柱の空間的配置にも依存するものであるため、骨の機械的特性におけるさらなる病識が得られ得る。
【0080】
末梢骨定量的コンピュータ連動断層撮影(pQCT)を用いてBMDに対するAxlモジュレーターの効果を測定するための方法が利用可能である。pQCT法では、例えば、近位脛骨(これに限定されない)の体積測定BMD(vBMD、mg/cm)が、麻酔したラットにおいて、XCT−960M装置(XCT Research,Stratec Medizintechnik,Pforzheim,Germany)を用いて評価され得る。脛骨の近位端の3.4mm遠位から採取した1mm厚のpQCT切片を使用し、近位脛骨の骨幹端の全海綿骨密度をコンピュータ計算する。断層撮影切片は、0.140mmの面内(in−plane)ボクセル(3次元ピクセル)サイズを有する。画像は取得後にディスプレイ表示し、脛骨を含み腓骨を除いた対象の領域の輪郭を描く。反復アルゴリズムを用いて軟組織を自動的に削除し、切片内の骨全体の密度(総密度、mg/cm)を調べる。海綿骨密度の測定では、次いで、骨切片の外側55%を同心らせん状に除き、海綿骨密度の値を単位:mg/cmで報告する。
【0081】
骨形成に対するAxlモジュレーターの効果は、例えば、カルセイン標識を用いて測定され得る。例えば、マウスにカルセイン(例えば、15mg/kg、0.1ml/マウス、s.c.)を注射した後、2日後および9日後に組織が採取され得る。骨組織は、大腿骨、脛骨ならびに脊柱のいずれかから採取され得る。骨試料の組織学的統制評価では、カルセイン標識された石灰化骨層間の間隔を測定し、骨形成の評価に使用する。
【0082】
本発明は、骨障害(例えば、骨変性障害)の1種類以上の動物モデルおよび/またはヒトにおいてAxlモジュレーターの効果を評価するための方法を提供する。骨減少症は、例えば、固定化、低カルシウムの食事、高リン性の食事、コルチコステロイドの長期使用、または性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)のアゴニストもしくはアンタゴニスト、卵巣機能の停止、または加齢によって誘導され得る。例えば、卵巣摘出(OVX)誘導性骨減少症は、ヒトの閉経後骨粗鬆症の充分に確立された動物モデルである。別の充分に実証されたモデルは、コルチコステロイドの投与が関与するものである。かかる動物モデルとしては、カニクイザル、イヌ、ラット、マウス、ウサギ、フェレット、モルモット、ミニブタ、およびヒツジが挙げられる。骨粗鬆症の種々の動物モデルの概説については、例えば、Turner、Eur.Cell.Mater.1:66−81(2001)を参照のこと。
【0083】
培養状態の骨芽細胞に対する効果(コラーゲン合成およびオステオカルシンの発現に対する効果、またはアルカリホスファターゼおよびcAMP誘導のレベルに対する効果など)の評価のための適切なインビボおよびインビトロ試験は、例えば、米国特許第6,333,312号に記載されている。
【0084】
本発明の開発に有用な細胞としては、骨芽細胞および骨芽細胞前駆細胞が挙げられる。具体的には、このような細胞として、間葉幹細胞、骨髄由来の骨芽前駆細胞、および血中に循環している骨芽前駆細胞が挙げられ得る。本発明の方法の実施には、骨格の骨細胞、例えば、骨芽前駆細胞、骨内層細胞、骨芽細胞、骨細胞が有用である。同様に使用され得る細胞型としては、胚性線維芽細胞、筋芽細胞前駆細胞または脂肪細胞系統(これには、前駆脂肪細胞が含まれる場合があり得る)が挙げられる。不死化細胞または形質転換細胞は、Axlの遺伝子発現またはタンパク質活性のモジュレーターとしての化合物または治療用薬剤の活性を評価するために、該化合物または治療用薬剤をインビボ(vivo)動物モデルで試験する前にインビトロで使用され得る。
【0085】
骨特異的アルカリホスファターゼは、細胞表面の外側に存在する膜結合型酵素である。これは、骨形成初期と関連している骨芽細胞の活性の骨芽細胞系統特異的マーカーである。アルカリホスファターゼ活性は、ナフトールAS−MXリン酸とファストブルーBB塩の混合物での組織化学的染色によって定量的に検査され得る。染色の結果は、明視野顕微鏡検査、青色染色細胞の観察または骨芽細胞系統細胞を示すコロニーを用いて記録され得る。アルカリホスファターゼ活性は、比色酵素的アッセイによって定量的に測定され得る。該活性は、細胞溶解物において基質としてp−ニトロフェニルホスフェートを用いてアッセイされ、405nmにおける吸光度の読み値を得ることにより測定される。吸光度のデータを適切な対照と比較し、標準化し、試料単離物間のタンパク質収率の差を明らかにする。アルカリホスファターゼのレベルは、既知量のアルカリホスファターゼ酵素を用いて作成された標準曲線をもとに測定される。次いで、値を全細胞タンパク質に対して標準化し、試料間で比較する。これらのアッセイの変形型、ならびにさらなるアルカリホスファターゼ活性の測定方法は、充分当業者の知識の範囲内である(例えば、Chengら、J.Bone Joint Surg.85:1544−1552(2003)を参照のこと)。
【0086】
オステオカルシンは、骨内に最も豊富に存在している非コラーゲン質タンパク質であり、成熟骨芽細胞によって特異的に産生される。オステオカルシンは、分化後期における骨芽細胞特異的活性のマーカーとして使用される。したがって、Axl遺伝子発現モジュレーターまたはAxlタンパク質活性モジュレーターにより、オステオカルシンのレベルがモジュレートされ得る。オステオカルシン遺伝子の発現は、ノザンブロッティング(以下に詳細に記載)によって測定され得る。オステオカルシン遺伝子の発現は、リアルタイムRT−PCRによって測定され得るか、または広く入手可能なラジオイムノアッセイキット(Biomedical Technologies,Inc,Stoughton、MA)を用いてアッセイされ得る。オステオカルシン遺伝子の発現の他の検出方法および定量方法は、当業者には公知である(例えば、Thiesら、Endocrinol.130:1318−1324(1992)を参照のこと)。
【0087】
マトリックスの石灰化は、最終的な分化骨芽細胞と関連している。石灰化のアッセイの前に、間葉幹細胞およびまたは骨芽前駆細胞を、まず培地中で培養し、任意選択で、骨形成性因子(例えば、BMP)で処理する。細胞の石灰化は、カルシウム同位体の蓄積、組織化学的染色、または当業者には公知である他の方法によって評価され得る。細胞は、0.5μCi/mlの45CaCl(播種後、種々の時点で添加)を含有する培地中で、48時間インキュベートされ得る。次いで、PBS(洗浄1回あたり1ml使用)で細胞単層を2回洗浄する。次に、細胞を回収し、0.1N NaOH中で消化させ、Beckman 5500シンチレーションカウンターを用いた液体シンチレーション計数によって、アリコートを計数する。活発に石灰化している培養物中の石灰化結節を、アリザリン−レッド−Sでの細胞単層の染色によって可視化する。細胞培養物をPBSで2回洗浄し、50%エタノール中で10分間固定し、1mlの蒸留水で5分間再水和させ、次いで、アリザリンレッドSの1%(w/v)水溶液200μLで1〜3分間染色する。次いで、この単層を蒸留水で洗浄し、石灰化結節の存在を光学顕微鏡検査によって調べる。光学顕微鏡検査で赤色に染色された細胞コロニーの存在は、石灰化を示す。
【0088】
Axlモジュレーター
本発明の方法は、軟骨障害および骨障害を処置または予防するための、Axlの遺伝子発現またはAxlタンパク質活性のモジュレーターの投与を含む。このようなモジュレーターは、Axl遺伝子発現またはAxlタンパク質活性を増大させるもの、または減少させるものであり得る。
【0089】
Axl
Axl受容体型チロシンキナーゼは、原発性ヒト白血病細胞由来のトランスホーミング遺伝子にコードされたタンパク質として同定された(O’Bryanら、Mol.Cell.Biol.11:5016−5031(1991);Janssenら,Oncogene 6:2113−2120(1991);Genbank受託番号M76125)。Axl受容体型チロシンキナーゼは、18アミノ酸のシグナルペプチドを含む887アミノ酸ポリペプチドとして合成される(Genbank受託番号P30530)。完全長の膜貫通結合型ヒトAxl受容体タンパク質は140kDaである。また、Axlタンパク質は、膜貫通ドメインに隣接したN末端側の14アミノ酸領域内での切断による翻訳後プロセッシングを受け、80kDaの可溶性細胞外ドメイン(ECD)(可溶性Axl(sAxl)とも称される)と、55kDaの膜結合型キナーゼドメインが生成され得る(O’Bryanら、J.Biol.Chem.270:551−557(1995))。Axlならびにそのリガンドの構造的および機能的側面は、当該技術分野でよく知られている(例えば、Heiringら、J.Biol.Chem.279:6952−6958(2004);Budagianら、Mol.Cell.Biol.25:9324−9339(2005)を参照のこと)。
【0090】
用語「Axl遺伝子」は、本明細書で用いる場合、Axlタンパク質の1種類以上のアイソフォーム(Axlタンパク質活性を有する断片を含む)をコードする任意の遺伝子をいう。Genbank受託番号NM_021913のヌクレオチド配列は、完全長ヒトAxlタンパク質アイソフォーム1をコードする5014bpのmRNAである。Axlタンパク質アイソフォーム2をコードする4987bpのmRNAであるポリヌクレオチド配列は、Genbank受託番号NM_001699からわかる。
【0091】
用語「Axlタンパク質」または「Axlポリペプチド」は、本明細書で用いる場合、任意の1種類以上のアイソフォーム(Axlタンパク質の機能活性を有するタンパク質分解切断生成物および断片を含む)をいう。完全長Axlタンパク質(アイソフォーム1とも称される)の894アミノ酸配列は、Genbank受託番号NP_068713からわかる。Axlアイソフォーム2は、885アミノ酸のタンパク質であり(Genbank受託番号NP_001690)、エキソン10にコードされた9個の内部アミノ酸(プロテアーゼ切断部位に隣接したN末端側に存在)が欠損している(O’Bryanら、J.Biol.Chem.270:551−557(1995)を参照のこと)。この2種類のAxlタンパク質アイソフォームの他、ヒトAxlタンパク質およびマウスAxlタンパク質は、ともに膜貫通ドメイン付近でタンパク質分解性プロセッシングを受け、該タンパク質の可溶性形態が生じる(上記)(O’Bryanら、J.Biol.Chem.270:551−557(1995);Costaら、J.Cell.Physiol.168:737−744(1996);Budagianら、Mol.Cell.Biol.25:9324−9339(2005))。したがって、本明細書で用いる場合、用語「Axlタンパク質」は、完全長膜貫通結合型Axl受容体、ならびに翻訳後切断によって生じる形態をいう。本明細書で用いる場合、用語「sAxlタンパク質」は、可溶性Axlとしても知られており、細胞外ドメインの切断生成物をいう。用語「膜結合型キナーゼドメイン」は、膜結合型の切断生成物をいう。用語「Axl−ECD」は、本明細書で用いる場合、Axl細胞外ドメインをいう。
【0092】
Axlタンパク質(そのアイソフォームを含む)は、単量体、ホモ二量体、または例えばAxlリガンド(Gas6など)とのヘテロ二量体として存在しているものであり得る。二量体としては、完全長膜結合型タンパク質のホモ二量体ならびにsAxl−sAxlホモ二量体、Axl−sAxlヘテロ二量体、Axl−Gas6ヘテロ二量体、およびsAxl−Gas6ヘテロ二量体が挙げられる。条件によっては、成熟Axlタンパク質において、これらの異なる形態のいずれかまたは全部の間に平衡が成立していることがあり得る。また、「Axlタンパク質」または「Axlポリペプチド」は、Axlタンパク質の生物学的に活性な形態、例えば、Axlタンパク質に関する少なくとも一部の生物学的活性を維持している任意の断片およびバリアントをいう。例えば、Axlタンパク質としては、キナーゼ活性をもたらすのに必要とされる最小限のアミノ酸配列を有するペプチド断片が挙げられ得る。本発明は、あらゆる脊椎動物種(例えば、ヒト、ウシ、ニワトリ、マウス、ラット、ブタ、ヒツジ、シチメンチョウ、ヒヒ、および魚類など)に由来するAxlタンパク質に関する。
【0093】
用語「Axlリガンド」は、特に記載のない限り、少なくとも1種類のAxlタンパク質アイソフォームに結合する任意のリガンドをいう。Axlリガンドの一例は、増殖停止特異的遺伝子6(Gas6)タンパク質である(Stittら、Cell 80:661−670(1995);Varnumら、Nature 373:623−626(1995);米国特許第5,538,861号)。Gas6は、ヒトプロテインSと44%配列同一性を有するビタミンK依存性タンパク質である。Gas6は、γ−カルボキシグルタミン酸高含有領域、4上皮増殖因子様反復配列、およびカルボキシ末端推定ステロイド結合ドメインを有する(Manfiolettiら、Mol.and Cell.Biol.13:4976−4985(1993))。Axlタンパク質に加え、Gas6は、Mer受容体ファミリーのその他の構成員であるであるTyro3およびMerに結合する(Nagataら、J.Biol.Chem.271:30022−30027(1996);Crossierら、Pathology 29:131−135(1997))。ファミリー構成員Tyro3の結晶構造、配列相同性、および保存された残基のマッピングに基づくと、Gas6は、おそらくAxlの最初の2つの免疫グロブリンドメイン、特に、ドメイン間境界面に近接したドメイン2上の保存された表面の一部に結合する(Heiringら、J.Biol.Chem.279:6952−6958(2004))。
【0094】
Axl活性のアッセイ
用語「Axlタンパク質活性」または「活性Axlタンパク質」は、活性Axlタンパク質に関連する1つ以上の生物学的活性をいう。Axlタンパク質活性としては、例えば、チロシンキナーゼ活性、GAS6に対する結合、他のAxl分子自体の活性化または該分子に対する結合、他の下流の標的への結合が挙げられる。本明細書で用いる場合、用語「チロシンキナーゼ活性」(Axlのチロシンキナーゼ活性などの場合)は、ATPからタンパク質基質内のチロシン残基へのリン酸基の転移をいう。本明細書において上記のように、また、Axlは、骨成長に対するその効果に関連する筋骨格活性を有する。
【0095】
Axlタンパク質活性(例えば、チロシンキナーゼ活性)をインビボおよびインビトロで測定するためのアッセイは、当該技術分野で知られている。非常に高頻度に使用されているバイオアッセイの一部の例としては、限定されないが、以下のものが挙げられる。
【0096】
Axl受容体型チロシンキナーゼ活性のスクリーニング
キナーゼアクチベータまたはインヒビターを同定するために使用され得る、当該技術分野で知られたキナーゼ酵素アッセイ基本型は数多く存在する。Axlキナーゼ活性に関するキナーゼ酵素アッセイの例としては、時間分解蛍光エネルギー転移(TR−FRET)方法論、例えば、Lanthascreen(商標)(Invitrogen,Carlsbad,CA)、Lance、およびAlphaScreen(登録商標)(PerkinElmer,Inc.,Wellesley MA)アッセイの利用が挙げられ得る。一例において、96ウェルまたは384ウェルプレートを使用し、Axl自己リン酸化ペプチド(5−FAM−DCLDGLYALMSRC(配列番号:16)または5−FAM−KKIYNGDYYRQG(配列番号:17))または非特異的ペプチド(ポリGlu:Tyr(4:1)Invitrogen カタログ番号PV3610)のいずれか1つを含むものであり得る基質ペプチドを、40mMのMOPS(pH7.0)および7.2mMのMgClを含有するアッセイバッファーに添加する。次いで、ATPおよびAxl(キナーゼドメインを含む断片、20mM MOPS(pH7.0)、0.01%Brij−35、5%グリセロール、0.1%β−メルカプトエタノール中)を、ペプチド50nM、ATP 50μMおよびAxl 5nMの終濃度まで添加する。室温で1時間インキュベーション後、60mMのEDTAの添加により反応を停止させる。抗ホスホチロシン抗体(Invitrogen,カタログ番号PV3552)を、反応混合物に2.5nMの終濃度で添加する。さらに30分間、室温でインキュベーション後、340nMで励起後(テルビウムドナーの励起波長)、プレートの読み取りを行なう。テルビウムから干渉なしでのフルオレセインへのエネルギー転移は、520nmフィルターを用いた2つのテルビウムピーク間のサイレント領域における放射を測定することにより達成される。次いで、この放射を、典型的には、495nmフィルターを用いた第1テルビウムピークの放射と照らし合わせる。このアッセイでは、FRET値の減少(アンタゴニスト)によって示されるリン酸化生成物の形成を依存的に低減させるか、またはFRET値を増大させるか(アゴニスト)のいずれかである化合物が同定される。別の例では、96または384ウェルプレートを使用し、LANCE TR−FRETアッセイが、以下のようにして行なわれる。ビオチンに結合させた基質ペプチドAGAGGPQDIYDVPPVR(配列番号:36に示す)を、50mMのHEPES(pH7.1)、10mMのMgCl、1μMのBSA、0.023mMのBrij35および11%のグリセロールを含有するアッセイバッファーに添加する。次いで、ATPおよびAxl酵素(キナーゼドメイン)を、ATP 500μM、Axl 10nMおよび基質ペプチド250nMの終濃度まで添加する。次いで、反応液を23℃で45分間インキュベートした後、EDTA含有アッセイバッファーを12mMの終濃度まで添加することにより、反応を停止させる。次いで、2nMのユーロピウム標識PT66抗ホスホチロシン抗体(Invitrogen)および50nMのストレプトアビジン−アロフィコシアニン(APC)を添加し、混合物を室温で90〜100分間インキュベートした後、リン酸化された基質の量を、適当なプレートリーダー(例えば、Envision,View Lux,Victor)を用いて測定する。ストレプトアビジン−APCは、該基質のビオチン部分に結合する。ユーロピウム標識抗体が基質のリン酸化されたチロシンに結合した場合、ユーロピウムは、APCに近接していることになる。このような状況下では、340nmでの該複合体の励起によりユーロピウムが励起され、次いで、ピーク波長615nmの光が放射される。このことにより、充分に近接しているAPC(すなわち、同じ基質分子に結合しているため)が励起され、波長665nmの光が放射される。したがって、665nmの光の放射により、リン酸化された基質の測定値が得られる。この値を、非結合抗体の615nmシグナルに対して標準化する(単純な比で)。阻害性(アンタゴニスト)化合物は、該化合物の非存在で生じたものと比べて665/615nmシグナルの量の減少をもたらし、これは、阻害パーセントまたはIC50として用量応答形式のいずれかで表示され得る。一方、刺激性化合物(アゴニスト)は、665/615nmシグナルの増大をもたらし、これは、刺激パーセントまたはEC50で表示され得る。
【0097】
間接的TR−FRETに基づくアプローチは、BellBrook研究所によって開発されたTranscreener Kinaseアッセイを使用するものであり得、該アッセイは、キナーゼ反応において生成したADPのレベルを測定するものである。このアッセイでは、ADPを検出するように開発された抗体をテルビウムで標識する。フルオレセイン標識ADPトレーサー(ADP抗体−テルビウムに結合すると、高いFRETシグナルがもたらされる)を使用し、基質がリン酸化されているため、非標識ADPのレベルが増加して抗体からADP−トレーサーが外れ、FRETシグナルの減少がもたらされる。したがって、このアッセイでは、キナーゼインヒビターはFRETシグナルを用量依存的に増大させるが、アゴニストは、FRETシグナルの減少をもたらすであろうと予測される。あるいはまた、キナーゼ活性は、P33標識ATPの消費によって測定され得る。この方法では、AxlまたはAxlキナーゼドメインを含む断片を、MgCl、P33標識ATP、および0.2μmフィルターに結合させた基質と合わせる。放射性標識されたリン酸基のAxlによるフィルター結合基質への転移により、検出可能なフィルターに結合している放射能が生じ、これは基質のリン酸化レベルを反映する。
【0098】
また、Axl活性のモジュレーションは、細胞内でもアッセイすることができる。かかるアッセイとしては、中でも特に、ホスホ−ブロットにおけるAxl自己リン酸化の測定;Axlの下流標的のリン酸化の測定;およびAxlキナーゼ活性に依存性となるように操作された細胞における細胞増殖の測定が挙げられる。例えば、Axl自己リン酸化は、Axl含有細胞(ヒト膠芽細胞腫細胞株 A172など)のGAS6刺激後に、ELISA(キットDYC2228,R & D Systems,Minneapolis,MN)またはホスホ−ブロット(これは、抗Axl抗体での免疫沈降後に、リン酸化されたAxlを、抗ホスホチロシン抗体を用いたウエスタンブロットによって検出するもの)などの手法を用いて検出され得る。Axl阻害性化合物(アンタゴニスト)はリン酸化Axlのレベルの減少をもたらし、一方、Axl刺激因子(アゴニスト)はレベルの上昇をもたらす。また、Axlキナーゼ活性は、Axl活性に影響されるタンパク質標的に対する効果を直接または間接的に測定することによりアッセイされ得る。かかるものの一例はAktであり、これは、Axl/Gas6/PI3Kinase/Akt surivival経路においてAxlの下流である(Weingerら,J.Neurochem.April 14電子公開(2008))。Aktは、AxlのGAS6刺激後にリン酸化される(Shankarら J.Neurosci.26:5638−5648(2006))。細胞内でのAktリン酸化は、ホスホ−ブロットまたはアルファスクリーニング(SureFire(商標)アッセイ,Perkin Elmer,Waltham、MA)のいずれかによって、ホスホ−Thr308 Aktまたはホスホ−Ser473 Aktに対する抗体を用いて検出され得る。Axl阻害性化合物(アンタゴニスト)はリン酸化Aktのレベルの減少をもたらし、一方、Axl刺激因子(アゴニスト)はリン酸化Aktのレベルの上昇をもたらす。また、細胞は、その増殖に関してAxlキナーゼ活性(eactivity)に依存性となるように操作され得る。例えば、増殖に関して通常IL−3に依存性である32D細胞は、IL−3ではなくAxlキナーゼ活性に依存性となるように操作され得る。これは、32D細胞を、AxlのキナーゼドメインおよびGFPマーカータンパク質に対してスプライシングされたトランスホーミングv−Src N末端配列(v−srcのユニークSH2およびSH3ドメインを含む)を含むベクターでトランスフェクトすることによりなされる。次いで、この細胞をIL−3の非存在下で培養する。IL−3の非存在下で増殖し続けるGFP陽性細胞は、その増殖に関してAxlキナーゼ活性に依存性である。培養は、標準的な方法(例えば、細胞内ATPを測定するCell−Titer Glo(Promega,Madison,WI)を用いて容易にアッセイされ得る。Axl阻害性化合物(アンタゴニスト)は32D細胞の増殖のレベルの減少、したがってATPのレベルの減少をもたらし、一方、Axl刺激因子(アゴニスト)は、増殖のレベルの増加、したがってATPのレベルの増加をもたらす。また、細胞系アッセイを使用し、Axlの分子作用によって誘発される細胞内変化を利用することによってAxl活性が測定され得る。例えば、Budagianら(EMBO J.24:4260−4270(2005))により、Axlタンパク質が、マウスL292細胞を腫瘍壊死因子α(インターロイキン−15受容体αサブユニット(IL−15Rα)との相互作用によるTNFα誘導性細胞死)から保護することが実証された。したがって、細胞系アッセイは、L292細胞死を測定することにより、Axlキナーゼ活性をモジュレートする化合物が同定されるように開発され得る。具体的には、Axlを安定に過剰発現するL292細胞が、例えばAxlキナーゼの小分子アンタゴニストの存在下、TNFαで処理され得る。これにより、細胞数の用量依存的減少(細胞死の増大)がもたらされ得る。細胞数および/または細胞死は、細胞内ATPを測定する市販のアッセイ(Promegaから入手可能なものなど)(細胞数の間接的測定−CellTiter Glo(登録商標)アッセイ)を用いて、または細胞死を示す細胞内LDHの放出(CytoTox−One(商標)アッセイ)によって測定され得る。血管平滑筋細胞のGas6誘導性Axl媒介性化学走性(Fridellら、J.Biol.Chem.273:7123−7126(1998))または32D骨髄性細胞のGas6誘導性Axl媒介性凝集(McCloskeyら、J.Cell.Biol.272:23285−23291(1997))を利用し、同様の細胞機能アッセイを開発することができる。
【0099】
Axl:Gas6相互作用をモジュレートする分子を同定するためのアッセイ
Axlと相互作用する分子またはAxlに対するGas6の結合をモジュレートし得る分子を同定するために使用され得るアッセイとしては、限定されないが、酵素免疫測定法(ELISA)アッセイ、共免疫沈降(Co−IP)アッセイおよびBiacore(登録商標)アッセイが挙げられる。当業者は、これらのアッセイについて熟知している。具体的には、ELISA系の方法は、Axlタンパク質(もしくはその断片)またはGas6タンパク質のいずれかを、固相支持体、例えば、ナイロン、ニトロセルロース膜、シリコンチップ、ガラススライド、ビーズまたは特別に設計されたアッセイプレートに固定化することを伴う。1つのタンパク質(例えば、Axl)が結合された状態で、リガンド(例えば、Gas6)を、医薬用分子(小分子、抗体、ペプチドなど)の存在下または非存在下で添加し、相互作用が可能となる時間インキュベートする。次いで、プレートを洗浄して非結合Gas6タンパク質を除去し、残留しているタンパク質を、Gas6が標識されている場合(例えば、蛍光、放射能、もしくはアルカリホスファターゼあるいはビオチンなどの酵素とのコンジュゲーションにより)は直接、またはGas6特異的抗体を用いて間接的に、のいずれかで検出する。医薬用分子によって増強されるか、または阻害されるかのいずれかである相互作用は、典型的には、比色による読み出し情報または蛍光定量的エンドポイントによって定量される。IL−15RαとのAxlの相互作用を示すため、Budagianら(EMBO J.24:4260−4270(2005))により報告された同様のアッセイが使用された。また、液相アッセイ(共免疫沈降)も、ビオチン化タンパク質、エピトープタグ化タンパク質(V5、flag、GST、Fcなど)に対する抗体、またはタンパク質特異的抗体のいずれかを用いて行なうことができ、その場合、タンパク質/抗体複合体は、例えば、プロテインAもしくはプロテインG(これは抗体に結合する)を用いて捕捉されるか、または、ビオチン化タンパク質の場合は、アビジンコンジュゲートセファロースビーズが使用され得る。相互作用性タンパク質があれば、これは、続いて該複合体内に引き込まれ、相互作用性タンパク質が、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、続いてウエスタンブロッティングによって同定される。Axlに関する同様のプロトコルが、Nagataら J.Biol.Chem.271:30022−30027,1996およびGoruppiら,Mol.Cell.Biol.17:4442−4453,1997によって報告されている。
【0100】
Axlタンパク質(またはその断片)とGas6との相互作用をモジュレートし得る治療用化合物の同定は、例えば、Biacore(登録商標)(Uppsala,Sweden)製のものなどの装置を用いたプラズモン共鳴分光法の観察結果によって行なわれ得る。この方法では、タンパク質(例えば、Axl)をセンサーチップに結合させ、試験化合物を添加する。第2のタンパク質(例えば、Gas6)を、この2つのタンパク質の相互作用を可能にする条件下で添加する。装置の出力シグナルにより、試験化合物が2つのタンパク質(例えば、AxlとGas6)の相互作用に対して及ぼした影響(あれば)の表示が提供される。Axlに関する同様のプロトコルが、Nagataら J.Biol.Chem.271:30022−30027,1996によって報告されている。
【0101】
また、細胞系結合アッセイも一般的に使用されており、当該技術分野で知られている。具体的には、Axl結合アッセイは、Axlタンパク質を一過的に過剰発現させること、または例えば、内在性Axlを発現するがTyro3およびMer受容体型チロシンキナーゼの発現は最小限であるマウスL929細胞を用いて、安定な細胞株を開発することにより開発され得る。ほぼ40,000細胞/反応をアッセイバッファー(DMEM高グルコース、25mMのHEPES、1μg/mlのヘパリン、1%ウシ血清アルブミン(BSA))で2回洗浄する。適切な容量の非標識Gas6タンパク質を、[125I]Gas6の100倍過剰でアッセイバッファー(NSB)に添加し、次いで、医薬用分子(例えば、小分子、ペプチドまたは抗体)を、適切なウェル内の処理バッファーまたはビヒクルバッファーに添加する。次いで、適切な容量の[125I]Gas6をすべてのウェルに添加し、細胞を室温(22℃)で3時間インキュベートする。細胞をアッセイバッファーで、反転させることによって2回洗浄し、100μlの0.5%SDS含有PBSを添加して細胞を溶解させる。次いで、細胞溶解物を回収し、放射線をγ線計数装置にて測定する。総結合値から非標識Gas6の存在下で得られた結合を差し引くことにより、特異的結合を計算する。
【0102】
Axlタンパク質モジュレーター
本発明の方法における使用のためのAxlタンパク質モジュレーターは、Axlの生物学的活性をモジュレートし、骨に対して所望の効果を有するものである。該モジュレーターは、Axlのインヒビタータンパク質であり得、骨密度、骨量、骨質、および/または骨形成を増大させる。モジュレーターは、Axlタンパク質のアゴニストであってもよく、骨密度、骨量、骨質、および/または骨形成を低減させる。Axlタンパク質の発現に対するモジュレーターの効果は、遺伝子発現を測定するための当該技術分野で知られた方法(その一部は後述している)のいずれかによって測定され得る。Axlのチロシンキナーゼ活性に対するモジュレーターの効果は、上記のアッセイのいずれかを用いて測定され得る。Axlの筋骨格活性に対するモジュレーターの効果(骨密度、骨量、骨質、および/または骨形成に対する効果など)は、上記のアッセイのいずれかを用いて測定され得る。
【0103】
用語「Axlインヒビター」、「アンタゴニスト」、「中和」および「下方調節」は、同じインヒビターのその非存在下での活性と比較すると、Axlのインヒビターとして作用する化合物(または、適宜その性質)をいう。用語「直接Axlインヒビター」は、一般的に、Axl遺伝子、Axl転写物、Axlタンパク質、またはAxlリガンドと相互作用することにより、Axlの生物学的活性を直接下方調節する任意の化合物をいう。本明細書で用いる場合、用語「Axlの生物学的活性の阻害」は、Axlの生物学的活性が少なくとも約15パーセント、好ましくは少なくとも50パーセント、より好ましくは少なくとも90パーセント、最も好ましくは少なくとも99パーセント低減される条件(例えば、本発明のインヒビターの添加)をいう。生物学的活性は、任意の適当な方法、例えば限定されないが、上記の方法を用いて測定され得る。
【0104】
用語「Axlアゴニスト」、「増加(増大)」および「上方調節」は、Axlタンパク質の生物学的活性のアゴニストとして作用する化合物(または、適宜その性質)をいう。本明細書で用いる場合、用語「Axlのチロシンキナーゼ活性の増大」は、Axlタンパク質のチロシンキナーゼ活性が少なくとも約15パーセント、好ましくは少なくとも50パーセント、より好ましくは少なくとも90パーセント、最も好ましくは少なくとも99パーセント増大される条件(例えば、本発明のアゴニストの添加)をいう。
【0105】
用語「キナーゼ死」Axlは、ATP結合部位内の保存されているリシンが、アミノ酸567位のリシンに対するアルギニン置換によって変異されており、キナーゼの酵素的活性が不活化されているAxlタンパク質をいう。
【0106】
Axlタンパク質(ptrotein)インヒビターは、例えば、少なくとも以下:(1)Axlのキナーゼ活性の阻害;(2)Axl発現レベルの低減;(3)膜貫通Axl受容体もしくは可溶性Axlの安定性に対する影響;(4)完全長膜貫通結合型Axlから可溶性Axlへの切断に対する影響;(5)Axlに対するAxlタンパク質リガンド(Gas6など)の結合の妨害;(6)Axlの二量体化の妨害;または(7)Axl受容体の細胞内シグナル伝達の妨害のいずれかによってAxlを阻害するものであり得る。
【0107】
Axlタンパク質インヒビターはAxlチロシンキナーゼインヒビターであってもよく、これは、初期の自己リン酸化事象を阻害すること、および/またはタンパク質基質のリン酸化を阻害すること(例えば、タンパク質基質もしくはATPと、Axlとの立体的結合に関して競合することにより)作用するものであり得る。また、Axlタンパク質インヒビターは、これらの機構の1つより多くによって作用するものであってもよい。
【0108】
Axlモジュレーターとしては、非タンパク質性モジュレーター、例えば、小分子および核酸(干渉RNAなど)、ならびにペプチド、抗体、および他のタンパク質(Axlに結合するものなど)、ならびに修飾された形態またはその断片、プロペプチド、ペプチド、ならびにこのようなあらゆるモジュレーターの模倣物が挙げられる。
【0109】
小分子
軟骨障害および骨障害を処置または予防するための本発明の方法に有用なAxlタンパク質活性のモジュレーターとしては、小分子および化合物が挙げられる。Axlタンパク質活性の小分子インヒビターは、基質結合部位および/またはATP結合部位と結合することにより、高度に保存されたキナーゼドメインとの物理的相互作用によってチロシンリン酸化を直接阻害するものであり得る。ATP結合部位とタンパク質基質結合部位の両方に結合する化合物は、競合的二基質インヒビターと称されることもある。該小分子としては、合成のAxlタンパク質活性モジュレーター、および精製された天然のAxlタンパク質活性モジュレーターが挙げられる。該小分子は、模倣物または分泌促進物質であってもよい。Axlタンパク質キナーゼ活性を阻害する小分子は、例えば、米国特許出願公開公報第2007/0142402号に記載されている。
【0110】
核酸
骨障害を処置または予防するための本発明の方法に有用なAxlモジュレーターとしては、核酸が挙げられる。用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」は、デオキシリボ核酸(DNA)、および適宜リボ核酸(RNA)またはペプチド核酸(PNA)をいう。また、該用語は、ヌクレオチド類縁体、および単鎖または二本鎖ポリヌクレオチド(例えば、siRNA)も包含すると理解されたい。ポリヌクレオチドの例としては、限定されないが、プラスミドDNAまたはその断片、ウイルスのDNAまたはRNA、RNAiなどが挙げられる。
【0111】
Axlタンパク質活性をブロックし得る核酸は、本発明において有用である。かかるインヒビターは、Axlタンパク質自体と相互作用するタンパク質をコードするものであり得る。あるいはまた、かかるインヒビターは、Axlタンパク質と相互作用するタンパク質(Gas6など)と相互作用し得るタンパク質をコードするものであり得る。また、インヒビターは、Axlと相互作用性タンパク質の両方と相互作用するタンパク質をコードするものであり得る。
【0112】
本発明の方法には、Axlの発現を低減させるためのRNA干渉(「RNAi」)の使用が含まれ得る。RNAiは、核酸分子、例えば、合成の低分子干渉RNA(「siRNA」)またはRNA干渉剤を導入し、標的遺伝子の発現を阻害またはサイレンス化することにより起こすことができる。例えば、米国特許公開公報第20030153519号、ならびに米国特許第6,506,559号、同第6,573,099号および同第7,144,706号を参照のこと。
【0113】
「RNA干渉剤」または「RNAi」は、本明細書で用いる場合、RNA干渉によって標的遺伝子またはゲノム配列の発現を妨害ならびに阻害する任意の薬剤である。かかるRNA干渉剤としては、限定されないが、標的遺伝子もしくはゲノム配列に相同なRNA分子またはその断片、低分子干渉RNA(siRNA)、短鎖ヘアピン型または低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、およびRNA干渉によって標的遺伝子の発現を妨害または阻害する小分子が挙げられる。
【0114】
本明細書で用いる場合、「標的遺伝子の発現の阻害」は、標的遺伝子の発現レベルまたは標的遺伝子にコードされたタンパク質のレベルの任意の減少を包含する。この減少は、RNA干渉剤で標的化しなかった標的遺伝子の発現または標的遺伝子にコードされたタンパク質の活性もしくはレベルと比較して、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%またはそれ以上であり得る。
【0115】
siRNAは、充分に規定された構造を有する。これは、通常、いずれか一方の末端に2−ntの3’突出端を有する短鎖RNA二本鎖(dsRNA)である。siRNAは、化学合成されたもの、インビトロ転写によって生成されたもの、または宿主細胞内で産生させたものであり得る。典型的には、siRNAは、少なくとも15〜50ヌクレオチド長(例えば、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29もしくは30ヌクレオチド長)、または該範囲の任意の整数値である。siRNAは、約15〜約40ヌクレオチド長、例えば、約15〜約28ヌクレオチド長(約19、20、21、または22ヌクレオチド長など)の二本鎖RNA(dsRNA)であり、各鎖に約0、1、2、3、4、5または6ヌクレオチド長の3’および/または5’突出端を含むものであり得る。siRNAは、転写のサイレンス化によって標的遺伝子を阻害するものであり得る。siRNAは、標的メッセンジャーRNAの分解または特異的転写後遺伝子サイレンス化(PTGS)によってRNA干渉を促進し得るものであり得る。
【0116】
また、本発明の方法に有用なRNAとして、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)が挙げられる。shRNAは、短鎖(例えば、約19〜約25ヌクレオチド)のアンチセンス鎖、続いて約5〜約9ヌクレオチドのヌクレオチドループ、および相似センス鎖で構成されている。あるいはまた、センス鎖がヌクレオチドループ構造の前に存在していることもあり、センス鎖の後にアンチセンス鎖が存在している場合もあり得る。このようなshRNAは、プラスミドまたはウイルスベクター内に含有され得る。
【0117】
本発明のsiRNA分子の標的化対象領域は、所与の標的配列から選択され得る。例えば、ヌクレオチド配列は、開始コドンの約25〜100ヌクレオチド下流から始まるものであり得る。ヌクレオチド配列は、5’または3’非翻訳領域、ならびに開始コドン近傍の領域を含むものであり得る。siRNA分子の設計および調製のための方法は、当該技術分野でよく知られており、RNAi試薬としての配列を選択するためのさまざまな規則が挙げられる(例えば、Boeseら,Methods Enzymol.392:73−96(2005)を参照のこと)。
【0118】
siRNAは、Hannon,Nature,418:244−251(2002);McManusら、Nat.Reviews,3:737−747(2002);Heasman,Dev.Biol.,243:209−214(2002);Stein,J.Clin.Invest.,108:641−644(2001);およびZamore,Nat.Struct.Biol.,8:746−750(2001)に記載されているような標準的な手法を用いて作製され得る。好ましいsiRNAは、5−プライムリン酸化型である。かかるsiRNAは、多くのウェブサイトからカスタム開発されるもの、例えば限定されないが、Dharmacon(Lafayette,CO)、Invitrogen(Carlsbad,CA)、Qiagen(Valencia,CA)、およびAmbion(Austin、TX)などの企業から供給されるものであり得る。本明細書に示したsiRNA配列(配列番号:3、4、5、および6)は、Dharmaconから購入したものである。
【0119】
さらなるRNAi構築物を、標準的な手法を用いて内部開発した。開発した構築物としては、ヒト特異的shRNAであるhAxl 363、hAxl 1107、hAxl 1748、hAxl 1988、およびhAxl 2448、ならびにマウス特異的shRNAであるmAxl 187、mAxl 1079、mAxl 1477、mAxl 1850、およびmAxl 2269が挙げられる。これらのshRNAは、配列番号:18、19、20、21、22、23、24、25、26および27に示すDNA配列を含み、U6プロモーターによって駆動されるプラスミドを用いて作製した。
【0120】
配列番号:18に示すヌクレオチド配列は、hAxl 363を含み、以下に示すものである。
【0121】
5’−CGGACATCAGACCTTCGTGTCTTCCTGTCAACACGAAGGTCTGATGTCC−3’
配列番号:19に示すヌクレオチド配列は、hAxl 1107を含み、以下に示すものである。
【0122】
5’−CGCGTATCAAGGCCAGGACACTTCCTGTCATGTCCTGGCCTTGATACGC−3’
配列番号:20に示すヌクレオチド配列は、hAxl 1748を含み、以下に示すものである。
【0123】
5’−CGAGTGAAGCGGTCTGCATGCTTCCTGTCACATGCAGACCGCTTCACTC−3’
配列番号:21に示すヌクレオチド配列は、hAxl 1988を含み、以下に示すものである。
【0124】
5’−CGAGTACCAAGAGATTCATACTTCCTGTCATATGAATCTCTTGGTACTC−3’
配列番号:22に示すヌクレオチド配列は、hAxl 2448を含み、以下に示すものである。
【0125】
5’−CGACGAAATCCTCTATGTCACTTCCTGTCATGACATAGAGGATTTCGTC−3’
配列番号:23に示すヌクレオチド配列は、mAxl 187を含み、以下に示すものである。
【0126】
5’−CGGCTTCGAGATGGACAGATCTTCCTGTCAATCTGTCCATCTCGAAGCC−3’
配列番号:24に示すヌクレオチド配列は、mAxl 1079を含み、以下に示すものである。
【0127】
5’−CGTACCGGCTGGCATATCGACTTCCTGTCATCGATATGCCAGCCGGTAC−3’、
配列番号:25に示すヌクレオチド配列は、mAxl 1477を含み、以下に示すものである。
【0128】
5’−CGTGTCCGAAAGTCCTACAGCTTCCTGTCACTGTAGGACTTTCGGACAC−3’
配列番号:26に示すヌクレオチド配列は、mAxl 1850を含み、以下に示すものである。
5’−CGAAACACGGAGACCTACACCTTCCTGTCAGTGTAGGTCTCCGTGTTTC−3’
配列番号:27に示すヌクレオチド配列は、mAxl 2269を含み、以下に示すものである。
【0129】
5’−CGTCAAGGAAATCGGCTGAACTTCCTGTCATTCAGCCGATTTCCTTGAC−3’
Axl遺伝子の発現は、siRNAインヒビターを用いて標的化した。4つのAxl特異的siRNAの配列を配列番号:3〜6に示す。他のAxl siRNAおよびshRNAは、文献に報告されている。TNFα誘導性細胞死に対して抵抗性であるL929亜株におけるAxl発現のノックダウンによってTNFαに対する感受性が回復され得るかどうかを試験するため、Budagianらは、siRNAを用いてAxl mRNAおよびAxlタンパク質のレベルを低下させた(EMBO J.,24:4260−4270(2005))。Budagianらが使用したsiRNAは、本明細書に配列番号:28、配列番号:29、および配列番号:30で示す配列を有し、これを以下に示す。
【0130】
配列番号:28 5’−UAUCACAGGUGCCAGAGGA−3’
配列番号:29 5’−AAGACAUCCUCUUUCUCCUGC−3’
配列番号:30 5’−AAGAUUUGGAGAACACACUGA−3’
AxlのノックダウンのためにshRNAを使用し、Hollandら(Cancer Res.65:9294−9303(2005))は、マウスモデルにおいて、Axlがエキソビボ血管新生に必要であることを示した。Hollandらによって報告されたshRNAは、配列番号:31および配列番号:32に示す配列を有し、これを以下に示す。
【0131】
配列番号:31:
5’−GACATCCTCTTTCTCCTGCGAAGCCCATGAAGCTTGATGGGCTTCGCAGGAGAAAGAGGATGTC−3’
配列番号:32:
5’−GATTTGGAGAACACACTGAAGGCCTTGCGAAGCTTGGCAAGGCCTTCAGTGTGTTCTCCAAATC−3’
Shiehら,Neoplasia 7:1058−1064(2005)には、Axl siRNAを用いた試験が記載されているが、使用されたsiRNAの配列は示されていない。この刊行物では、プールされた4種類のsiRNA二本鎖を用いたCl1−5細胞株のトランスフェクションにより、Axl RNAおよびAxlタンパク質のノックダウンがもたらされた(PCRおよびウエスタンブロット解析によって示された)。
【0132】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、Axlの発現を低減させるために使用され得る。「アンチセンス」は、本明細書で用いる場合、配列相補性のため、mRNAのコードおよび/または非コード領域の一部分にハイブリダイズし、それによりmRNAからの翻訳を妨げることができる核酸をいう。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、DNA断片またはRNA断片のいずれかであり得る。アンチセンスポリヌクレオチドは、Antisense Drug Technology:Principles,Strategies,and Applications,第1版,Crooke編,Marcel Dekker(2001)に記載のような標準的な手法を用いて作製され得る。
【0133】
核酸は、症状の重症度および障害の進行に応じて約1μg/kg〜約20mg/kgの投薬量で投与され得る。適切な有効用量は、処置医によって以下の範囲:約1μg/kg〜約20mg/kg、約1μg/kg〜約10mg/kg、約1μg/kg〜約1mg/kg、約10μg/kg〜約1mg/kg、約10μg/kg〜約100μg/kg、約100μg〜約1mg/kg、および約500μg/kg〜約1mg/kgから選択される。核酸インヒビターは、経局所、経口、静脈内、腹腔内、筋肉内、腔内、皮下または経皮手段によって投与され得る。
【0134】
核酸は、その天然環境から、実質的に純粋または均一な形態で採取、単離および/または精製され得る。核酸操作(例えば、さまざまな異なる宿主細胞および系でのクローニングおよび遺伝子発現)のための系は、よく知られており、Short Protocols in Molecular Biology,Ausubelら編,第5版,John Wiley & Sons(2002)に詳細に記載されている。適切な調節配列を含む好適なベクターは、当該技術分野でよく知られた方法を用いて選択または構築され得る。例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Sambrookら、第3版,Cold Spring Harbor Laboratory Press(2001)を参照のこと。
【0135】
核酸は、さらなるポリペプチド配列、例えば、マーカーまたはレポーターとしての機能を果たす配列をコードする他の配列に融合させてもよい。マーカーまたはレポーター遺伝子の例としては、ラクタマーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(ネオマイシン(G418)耐性を担う)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、ハイグロマイシン−B−ホスホトランスフェラーゼ(HPH)、チミジンキナーゼ(TK)、lacZ(ガラクトシダーゼをコード)、キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(XGPRT)、ルシフェラーゼ、および当該技術分野で知られた他の多くのものが挙げられる。
【0136】
タンパク質モジュレーター
Axlに結合してその活性を変化させるタンパク質は、本発明の方法における使用のための許容され得るモジュレーターである。
【0137】
ペプチド
Axlの細胞内基質結合領域と相互作用し、そのチロシンキナーゼ活性を阻害する非リン酸化型ペプチドは、本発明の方法においてインヒビターとして使用され得る。かかるペプチドは、は基質インヒビターまたは偽基質と称されることもあり、基質のチロシン部分の一次配列を模倣するように設計され、および典型的には、チロシン部分が非リン酸化型チロシン類縁体(フェニルアラニン、チラミン、またはヨードチロシン)で置き換えて設計された短鎖のペプチドである。例えば、配列番号:14および配列番号:15に示すアミノ酸配列を有するペプチドは、Axl自己リン酸化部位として同定されており(すなわち、これらはAxl基質)、基質インヒビターまたは偽基質を作製するための基本部分を提供し得るものである。これらのAxl特異的基質は、密接に関連しているAxlファミリー構成員Mer内の推定自己リン酸化部位との相同性に基づいて同定された(Lingら,J.Biol.Chem.271:18355−62(1996))。配列番号:14および配列番号:15で示すアミノ酸配列を以下に示す。
【0138】
配列番号:14: KQPADCLDGLYALMSRCWELN
配列番号:15 FGLSKKIYNGDYYRQGRIAK
抗体
Axlタンパク質の活性を調節する抗体は、本発明の方法において使用され得る。
【0139】
用語「抗体」は、本明細書で用いる場合、免疫グロブリンまたはその一部分をいい、供給源、起源の種、作製方法、および特性に関係なく、抗原結合部位を含む任意のポリペプチドを包含する。非限定的な例として、用語「抗体」には、ヒト、オランウータン、マウス、ラット、ヤギ、ヒツジ、およびニワトリ抗体が含まれる。該用語には、限定されないが、ポリクローナル、モノクローナル、単一特異的、多重特異的、非特異的、ヒト化、単鎖、キメラ、合成、組換え、ハイブリッド、変異型、およびCDRグラフト抗体、ならびに細胞内抗体が含まれる。本発明の解釈上、特に記載のない限り、抗体断片(Fab、F(ab’)、Fv、scFv、Fd、dAbなど)、および抗原結合機能を保持している他の抗体断片も含まれる。
【0140】
上記の方法によれば、Axlタンパク質自体に特異的に結合する抗体が生成され得る。上記のように、Axlのアミノ酸配列は、配列番号:2ならびにGenbank受託番号NP_068713で示されるものである。Axlアイソフォーム2のアミノ酸配列は、Genbank受託番号NP_001690からわかる。本発明において最も有効な抗体は、Axlタンパク質に対して特異的に結合する性質を有するものである。具体的には、GAS6:Axlのその相互作用に関する結晶構造情報(Sasakiら EMBO J.25:80−87(2006))により、Axl分子の細胞外領域のIG1およびIG2と表示される2つのIGドメインは、ともにGas6相互作用に関与していることが示された。しかしながら、GAS6とAxlとの接触は主にIG1領域(配列番号:33に示すアミノ酸配列を有する)で見られ、これを、本明細書では「主結合部位」と称する。IG2領域には非主要接触部位(配列番号:34に示すアミノ酸配列を有する)が存在し、本明細書では「副結合部位」と称する。AxlのIG1領域およびIG2領域の配列を示す。Gas6接触部位を太字および下線で示す。
【0141】
配列番号:33:
TLCQLQVQGEPPEVHWLRDGQILELADSTQTQVPLGEDEQDDWIITSLQLSDTGQYQCLVFLGHQTFVSQPGYVGLE
配列番号:34
PYFLEEPEDRTVAANTPFNLSCQAQGPPEPVDLLWLQDAVPLATAPGHGPQRSLHVPGLNKTSSFSCAHNAKGVTTRTATIT
重要なことに、Gas6によるAxlタンパク質活性化には、主結合部位と副結合部位の両方における相互作用が必要とされるため、AxlとGas6の相互作用のブロックには、一方の部位に対する抗体で充分であり得る。RTK上におけるGas6の副結合部位であるIG2のアミノ酸配列は、Axl、Tyro3およびMer間で高度に保存されているが、RTKにおけるGas6の主結合部位であるIG1のアミノ酸配列の保存の程度は低い。したがって、標的化するAxlヌクレオチド配列は、Axlタンパク質のIG1ドメイン内のGas6の接触点(および/または隣接配列)であり得る。
【0142】
抗体は、該受容体タンパク質全体に対して、または細胞外ドメインのみに対して生成させたものであり得る。また、抗体は、Axlの細胞内エピトープ(例えば、キナーゼドメイン)に対して生成させたものであり得る。抗体は、Axlのバリアントおよび断片に対して生成させたものであってもよい。抗体は、Axlの細胞外ドメインの可溶性二量体形態に対して生成させたものであり得る(米国特許公開公報第20050147612号)。
【0143】
かかる抗体は、Axlに高親和性で結合し得るものであり得、単量体形態、ホモ二量体形態および/またはヘテロ二量体形態の成熟タンパク質に結合するものであり得る。このような抗体は、Axlの活性を阻害するものであれば、本発明において有効である。Axlへの抗体の結合により、Axl受容体のキナーゼ活性がブロックされ得る。また、Axlへの抗体の結合により、Axlのそのリガンド(Gas6など)への結合がブロックされ得、また、かかる抗体によりAxlキナーゼ活性もまたブロックされ得る。Axlへの抗体の結合により、その二量体化がブロックされ得る。上記のように、Axl二量体としては、完全長膜結合型タンパク質のホモ二量体ならびにsAxl−sAxlホモ二量体、Axl−sAxlヘテロ二量体、Axl−Gas6ヘテロ二量体、およびsAxl−Gas6ヘテロ二量体が挙げられる。
【0144】
Axlに対する抗体は当該技術分野で報告されており、本発明における使用が想定される。かかる抗体の例としては、限定されないが、例えば、米国特許第6,191,261号;およびO’Bryanら、J.Biol.Chem.270:551−557(1995))に示された抗体が挙げられる。また、市販の抗体、例えば、ヒトポリクローナル抗体およびいくつかのマウスモノクローナル抗体(R+D Systems,Minneapolis,MN)も利用可能である。
【0145】
本発明は、Axlに対する中和抗体を提供する。用語「中和抗体」は、本明細書で用いる場合、特定の受容体に対する抗原結合部位を有し、Axl受容体を介する活性またはシグナル伝達を低減または阻害(すなわち、ブロック)し得る抗体をいう。かかる抗体は、典型的には、Axlのリガンド依存性活性化および/または構成的リガンド非依存的活性化をブロックするものである。Axlに対する中和抗体は当該技術分野で報告されており、本発明における使用が想定され、市販のヤギ抗ヒトAxlポリクローナル抗体(R&D Systems製(カタログ番号AF154))が挙げられる。
【0146】
スモール・モジュラー・イムノファーマシューティカル(small modular immunopharmaceutical)製剤(SMIP(商標)製剤)は、モノクローナルや組換え抗体よりも増強された薬物特性を有する高度にモジュール的な化合物の一類型である。SMIP(商標)製剤は、例えば、抗体可変ドメインを基本とする標的特異的結合ドメインを、所望の種類のエフェクター細胞(例えば、マクロファージやナチュラルキラー(NK)細胞など)の特異的漸増および/または補体媒介性殺作用の漸増を可能にする可変FC領域と合わせて含む単一のポリペプチド鎖で構成されたものである。標的およびヒンジ領域の選択に応じて、SMIP(商標)製剤は、細胞表面受容体を経由するシグナル伝達を実施またはブロックするものであり得る。
【0147】
修飾型Axl受容体
非修飾型Axl受容体の活性を阻害する修飾型Axlタンパク質は、本発明の方法に使用され得る。かかる修飾型受容体は、このバリアントが同じ細胞内の通常の野生型遺伝子産物に有害な影響を及ぼすため、ドミナントネガティブ受容体と称されることもある。修飾型Axl受容体は、Axlリガンドと相互作用して該リガンドの活性またはその受容体(すなわち、非修飾型Axl受容体)への結合を阻害するものであり得る。あるいはまた、修飾型Axl受容体は、Axl受容体(すなわち、非修飾型Axl受容体)と直接相互作用するものであり得る。かかる修飾型Axl受容体は、単量体形態、ホモ二量体形態および/またはヘテロ二量体形態のAxlと結合し得る。修飾型Axl受容体は、もちろん、Axlリガンドおよびその受容体の両方と相互作用するものであってもよい。修飾型Axl受容体としては、可溶性Axl受容体、ドミナントネガティブAxl受容体、およびキナーゼ死Axl受容体が挙げられる。
【0148】
修飾型可溶性Axl受容体は、本発明の方法に使用され得る。可溶性受容体は、Axlの細胞外ドメイン(エクトドメインとも称される)の全部または一部を含むものであり得る。修飾型可溶性受容体は、Axlリガンド(例えば、Gas6)に結合してAxlリガンドが体内のその天然の受容体(1種類または複数種)に結合する能力を低下させる。修飾型可溶性受容体は、非修飾型Axlの二量体化をブロックするものであり得る。可溶性受容体は、組換えにより、またはインタクトな受容体の化学的もしくは酵素的切断によって作製され得る。
【0149】
いくつかの修飾型可溶性Axl受容体が報告されている。例えば、Nagataらには、5アミノ酸リンカーによってヒトIgG1のアミノ酸216〜443に融合されたAxlの最初の438個のアミノ酸を含む切断型Axl受容体が記載されている(J.Biol.Chem.271(47):30022−30027(1996))。Axlを阻害し、配列Gly−Pro−Glyを有するスペーサーに融合されたAxlエクトドメイン、それに続くヒトIgG1のヒンジCH2およびCH3領域からなるAxl細胞外ドメイン−Fc融合タンパク質が、Shankarら,J.Neurosci.23:4208−4218(2003)に示されている。米国特許公開公報第20050186571号には、Axl細胞外ドメインを含む切断型Axlタンパク質(ドミナントネガティブバリアントと称されている)が記載されており、これは、そのcDNA配列の1.5kb EcoRI/FspI断片のサブクローニングによって作製されたものである。
【0150】
ヒトAxl/Fc融合タンパク質は、R+D Systems(Minneapolis,MN)から市販されている。このAxl/Fcキメラは、7アミノ酸リンカーによってヒトIgG1のカルボキシ末端6×ヒスチジンタグ化Fc領域に融合されたヒトAxlの細胞外ドメイン(アミノ酸1〜442)を含むものである。組換え成熟ヒトAxl/Fcは、ジスルフィド結合によるホモ二量体タンパク質である。N末端配列決定法に基づくと、該タンパク質はGlu26で始まる。縮小型ヒトAxl/Fc単量体は、72.3kDaの計算値分子量を有する。グリコシル化の結果、組換えAxl単量体は、還元条件下のSDS−PAGEにおいてほぼ100〜110kDaのタンパク質として移動する。
【0151】
マウスAxl/Fc融合タンパク質もまた、R+D Systems(Minneapolis,MN)から市販されている。このAxl/Fcキメラは、6アミノ酸リンカーによってヒトIgG1のカルボキシ末端6×ヒスチジンタグ化Fc領域に融合されたマウスAxlの細胞外ドメイン(アミノ酸1〜443)を含む(has contains)ものである。組換え成熟ヒトAxl/Fcはジスルフィド結合によるホモ二量体タンパク質である。N末端配列決定法に基づくと、該タンパク質はHis20で始まる。縮小型ヒトAxl/Fc単量体は、73.8kDaの計算値分子量を有する。グリコシル化の結果、組換えAxl単量体は、還元条件下のSDS−PAGEにおいてほぼ100〜110kDaのタンパク質として移動する。
【0152】
不活性なキナーゼドメインを有する修飾型Axlタンパク質は、本発明の方法に使用され得る;このようなバリアントは、「キナーゼ死」Axl受容体とも称される。キナーゼ死Axl受容体を作製するためには、キナーゼ活性に必須の残基に影響を及ぼす(例えば、チロシンキナーゼドメイン内の保存されたATP結合リシン残基を除去する)ための点変異が導入され得、基質のリン酸化能力の喪失がもたらされる。例えば、アミノ酸567位のLysに対してArg置換を有するキナーゼ死Axl受容体が報告されている(McCloskeyら、J.Biol.Chem.272:23285−23291(1997);Fridellら、J.Biol.Chem.273:7123−7126(1998))。
【0153】
Axlプロテアーゼは、本発明の方法に使用され得る。Axl活性は、Axl受容体の細胞外ドメイン(ECD)を切断するプロテアーゼの投与によって下方調節され得る。この切断は、2つのレベルでGas6機能がモジュレートされるインビボ現象である(O’Bryanら、J.Biol.Chem.270:551−557(1995))。放出されたAxl−ECDは、Gas6に結合してGas6のシグナル伝達を妨げる。Axlの膜結合型細胞内ドメインは、キナーゼ活性を保持しているが、急速に分解される。Axl配列内のこの切断部位は、膜貫通領域に対してアミノ末端側である14アミノ酸(VKEPSTPAFSWPWW(配列番号:12)のペプチドにマッピングされている。高用量では、細胞からそのAxl−ECDが除去され、したがってGas6タンパク質の一部が除かれ、Axl受容体が分解される。
【0154】
Axlタンパク質性インヒビターは、任意選択で、グリコシル化、ペグ化、または別の非タンパク質性ポリマーに連結される。Axlのインヒビターは、グリコシル化パターンの改変(すなわち、元の、または天然のグリコシル化パターンからの改変)を有するように修飾され得る。本明細書で用いる場合、「グリコシル化パターンの改変」は、元のインヒビターと比較したとき、1つ以上の糖質部分の付加もしくは欠失を有すること、および/または1つ以上のグリコシル化部位の付加もしくは欠失を有することを意味する。該インヒビターに対するグリコシル化部位の付加は、当該技術分野でよく知られたグリコシル化部位のコンセンサス配列を含むようにアミノ酸配列を改変することによって行なわれ得る。糖質部分の数を増やす別の手段は、該インヒビターのアミノ酸残基にグリコシドの化学的または酵素的カップリングによるものである。このような方法は、WO87/05330、およびAplinら、Crit.Rev.Biochem.22:259−306(1981)に記載されている。受容体上に存在している任意の糖質部分の除去は、Hakimuddin Sojarら、Arch.Biochem.Biophys.259:52−57(1987);Edgeら、Anal.Biochem.118:131−137(1981);およびThotakuraら、Meth.Enzymol.138:350−359(1987)に記載のようにして化学的または酵素的に行なわれ得る。
【0155】
また、本発明の方法に有用なAxlインヒビターは、検出可能な標識または機能性標識でタグ化されたものであり得る。検出可能な標識としては、125I、131Iまたは99Tcなどの放射性標識が挙げられ、これらは、当該技術分野で知られた慣用的な化学反応を用いて該インヒビターに結合され得る。また、標識としては、ホースラディッシュペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼなどの酵素標識も挙げられる。さらに、標識として、対応する特異的な検出可能な部分(例えば、標識されたアビジン)への結合によって検出され得る化学的部分(ビオチンなど)が挙げられる。
【0156】
Axlに結合する任意のタンパク質が、別のタンパク質または別のタンパク質の一部分との融合によってより安定に作製され得る。安定性の増大は、治療剤の場合、低用量または低頻度頻度間隔での投与が可能なため好都合である。免疫グロブリンの少なくとも一部分、例えば、抗体の定常領域、任意選択で免疫グロブリンのFc断片との融合により、該タンパク質安定性の増大がもたらされ得る。かかる融合タンパク質の作製は、当該技術分野でよく知られており、容易に行なうことができる。例えば、Spiekermannら J.Exp.Med.,196:303−310(2002)。
【0157】
Axlインヒビター、例えば、ペプチドインヒビター、抗体および他のタンパク質インヒビターの模倣物が、本発明の方法に使用され得る。このようなAxlインヒビターの任意の合成類縁体、特に、改善されたインビトロ特性を有するもの(長い半減期を有するもの、消化器系によって容易に分解されにくいもの)が有用である。模倣物は、Axlの活性をブロックするものである場合、本発明の方法に有効である。本発明において最も有効な模倣物は、Axlに特異的に結合する性質を有するものであり、Axl活性をインビトロおよびインビボで阻害するものであり得る。
【0158】
Axlモジュレーターの同定方法
本発明は、細胞を試験化合物と接触させること、および試験化合物の存在の結果、該細胞によるAxlの筋骨格活性または発現が変化しているかどうかを調べることにより、骨成長をモジュレートする化合物を同定するための任意の1つ以上の方法を提供する。Axlの筋骨格活性または発現の増大は、該化合物が骨成長に負の影響を及ぼすこと;かかる化合物が過剰な骨を特徴とする障害の予防または処置に有用であることを示す。Axlの筋骨格活性または発現の低減は、該化合物が骨成長に正の影響を及ぼすこと;かかる化合物が骨変性障害の予防または処置に有用であることを示す。試験化合物は、Axlのチロシンキナーゼ活性を変化させるかどうかを調べるために予備スクリーニングされる。
【0159】
小分子またはペプチドとAxlとの相互作用は、Biacore系の手法(Biacore International AB,Uppsala,Sweden)を用いてリアルタイムで解析され得る。また、本発明では、例えば上記において詳述したアッセイを使用し、骨細胞の分化と機能および骨密度に対するかかる分子の効果をさらに特定するため、さらなるスクリーニングアッセイ(例えば、二次および三次アッセイ)の使用が想定される。
【0160】
細胞
Axlを発現する任意の細胞が、骨成長をモジュレートする試験化合物を同定するためのアッセイにおいて使用され得る。例えば、有用な細胞としては、限定されないが、骨芽細胞、骨芽細胞前駆細胞、間葉幹細胞、骨髄由来の骨芽前駆細胞、および血中に循環している骨芽前駆細胞が挙げられる。本発明の方法の実施には、骨格の骨細胞、例えば、骨芽前駆細胞、骨内層細胞、骨芽細胞、骨細胞が有用である。同様に使用され得る細胞型としては、胚性線維芽細胞、筋芽細胞前駆細胞または脂肪細胞系統(これには、前駆脂肪細胞が含まれる場合があり得る)が挙げられる。不死化細胞または形質転換細胞は、Axlの遺伝子発現またはタンパク質活性のモジュレーターとしての化合物または治療用薬剤の活性を評価するために、該化合物または治療用薬剤をインビボ動物モデルで試験する前にインビトロで使用され得る。また、有用な細胞として、マウス肢芽由来の軟骨内骨格の前駆細胞であって「クローン14」と称される細胞株が挙げられる。Rosenら、J.Bone Miner.Res.9:1759−1768(1994)を参照のこと。また、有用な細胞は、American Tissue Culture Collection(ATCC)から入手され得、中でも特に、MC3T3−E1細胞、胚性線維芽細胞(C3H10T1/2細胞など)筋芽細胞前駆細胞(C2C12細胞など)、および前駆脂肪細胞(3T3−LIなど)が挙げられる。他の適当な細胞株は、当業者には公知である。別の例において、該方法では、哺乳動物、例えば限定されないが、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ、サル、チンパンジーおよびモルモットなどの適当な動物が使用される。特定の例において、動物は、齧歯類、例えばマウスである。
【0161】
試験化合物
本発明の方法およびアッセイは、一群の試験化合物をスクリーニングするため、または既知の骨成長モジュレーターの阻害活性もしくは刺激活性を確認するために使用され得る。試験化合物は、対象化合物のライブラリーの一部であってもよく、構造的に関連している化合物のライブラリーの一部であってもよい。該化合物の構造は既知であったも未知であってもよい。試験化合物は、既知の機能または構造によって予備決定されたものであってもよい。例えば、試験化合物は、Axlまたは別の受容体型チロシンキナーゼのチロシンキナーゼ活性を発揮するという理由で選択され得る。同様に、試験化合物は、既知のAxlモジュレーターと相同性であるという理由で選択され得る。あるいはまた、試験化合物の選択は自由裁量によるものであり得る。非限定的な例において、試験化合物は、ペプチド、タンパク質またはタンパク質断片、有機小分子、化学物質の組成物、核酸、アプタマー、または抗体であり得る。試験化合物の適切性を評価するためのよく知られた方法が、いくつか存在する。
【0162】
試験化合物は、化合物の大規模スクリーニングの一部であってもよい。試験化合物は、Axlのチロシンキナーゼ活性を変化させる試験化合物を同定するために、予備選択または予備スクリーニングされ得る。上記のように、Axlの小分子インヒビターは、細胞内キナーゼドメイン内の基質結合部位および/またはATP結合部位に結合することにより、チロシンリン酸化を直接阻害するものであり得る。受容体型チロシンキナーゼの小分子チロシンキナーゼインヒビター(TKI)の同定方法は、よく知られており、一般的に、以下のストラテジー:既知の天然キナーゼインヒビターの構造の模倣、該キナーゼドメインの分子モデル設計、および大規模スクリーニング方法のうちの1つを用いて同定されている。米国特許出願公開公報第20070142402号(引用によりその全体が本明細書に組み込まれる)には、Axlキナーゼ活性を阻害する小分子化合物の同定および使用が記載されている。かかる化合物は、本明細書に記載の本発明の方法に使用され得る。
【0163】
キナーゼ
Axlキナーゼ活性を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチド断片は、本発明の方法に有用である。かかるポリペプチドとしては、配列番号:13(以下に示す)に示すアミノ酸配列を有するものが挙げられる。
【0164】
【数1】

Axlキナーゼ活性を示す他のポリペプチドとしては、アミノ酸配列が配列番号:37、配列番号:38、配列番号:39、配列番号:40、配列番号:41、および配列番号:42(以下に示す)に示されたものが挙げられる。
【0165】
【数2】

【0166】
【数3】

Axlキナーゼ活性を示す別のポリペプチドは、配列番号:43(以下に示す)に示すアミノ酸配列を有するものである。
【0167】
【数4】

Axlのチロシンキナーゼ活性を変化させる試験化合物を同定するための予備スクリーニングに特に適したキナーゼ活性アッセイとしては、時間分解蛍光共鳴エネルギー転移(TR−FRET)アッセイ、例えば、Lanthascreen(商標)、AlphaScreen(登録商標)、またはLance(商標)型アッセイが挙げられる。Lanthascreen(商標)(Invitrogen,Carlsbad,CA)は、Axlキナーゼドメインが基質をリン酸化する能力を直接測定するために使用され得る。このアッセイでは、テルビウムで標識された抗ホスホチロシン抗体(ドナー)を用いて、フルオレセイン標識基質(アクセプター)のリン酸化が検出される。これらの2つの標識が近接すると(すなわち、抗体がリン酸化された基質を認識した場合)、蛍光エネルギー転移が起こり、アクセプター蛍光の増大およびドナー蛍光の減少がもたらされる。Lanthascreen(商標)アッセイに使用され得るペプチドの例としては、5−FAM−DCLDGLYALMSRC(配列番号:16に示されたアミノ酸配列)および5−FAM−KKIYNGDYYRQG(配列番号:17に示されたアミノ酸配列)が挙げられる。「5−FAM」は、ペプチドのアミノ末端への5−カルボキシフルオレセインのコンジュゲーションをいう。かかるコンジュゲーションを行なうための方法および試薬は市販されている(例えば、AnaTag(商標)5−FAMタンパク質標識キット、AnaSpec,San Jose,CA)。使用され得る他のペプチドとしては、AGAGGGTDEGIYDVPLL(配列番号:35に示されたアミノ酸配列)およびAGAGGPQDIYDVPPVR(配列番号:36に示されたアミノ酸配列)が挙げられる。
【0168】
Axlのチロシンキナーゼ活性を変化させる試験化合物を同定するための予備スクリーニングに使用され得る別のFRET系アッセイは、増幅発光近接ホモジニアスアッセイ(「AlphaScreen(登録商標)」(PerkinElmer,Boston,MA)としても知られている)。このアッセイでは、Axlペプチドを第1のドナービーズ集団にカップリングさせ、第2のアクセプタービーズ集団にカップリングさせた集団内の相互作用性分子を同定するために使用する。かかるアッセイにおける使用のためのAxlペプチドとしては、細胞内キナーゼドメイン内のATPおよび/または基質結合部位に相当するペプチドが挙げられる。より具体的には、Axlペプチドとしては、DCLDGLYALMSRC(配列番号:16)およびKKIYNGDYYRQG(配列番号:17)が挙げられる。Axlと相互作用する他のペプチドもまた、スクリーニングアッセイに使用され得る。
【0169】
Axlの筋骨格活性および発現のアッセイ
本発明の方法は、Axlの筋骨格活性または発現をモジュレートする化合物の同定をもたらす。Axlの筋骨格活性のアッセイは、上記において説明しており、限定されないが、アルカリホスファターゼ活性を測定するアッセイ、オステオカルシン遺伝子の発現を測定するアッセイ、骨石灰化を測定するアッセイ、および骨格表現型決定アッセイが挙げられ、これらにより、骨量(例えば、骨塩量)ならびに骨の微細構造および生体力学的特性がキャラクタライズされる。
【0170】
Axl発現のアッセイは、当該技術分野でよく知られており、Axl mRNAおよび/またはタンパク質の発現の検出が挙げられる。Axl mRNAの発現は、DNAマイクロアレイを用いた転写プロファイリングによって細胞内の全mRNAの発現を調べることにより測定され得る。DNAマイクロアレイは、発現された配列タグ、デオキシオリゴヌクレオチド、または既知遺伝子または推定遺伝子に由来するPCR産物を内包する。(例えば、Bowtell、Nature Genet.Supp.21:25−32(1999)を参照のこと)。また、Axl mRNAの発現は、ノザンブロッティングによって測定され得る。Axl mRNAの発現はまた、蛍光系リアルタイム逆転写PCR(RT−PCR)によっても測定され得る。RT−PCR産物は、SYBR(登録商標)Green、TaqMan(登録商標)、または分子ビーコンによって検出され得る。リアルタイムRT−PCRによってmRNAの転写物レベルを検出および定量するためのさらなるストラテジーは、当業者には公知である(例えば、Bustin,J.Mol.Endocrinol.29:23−39(2002)を参照のこと)。
【0171】
Axlタンパク質レベルは、いくつかの様式で測定され得る。細胞または組織を培養液または生きた生物体から、試験化合物で処理した後のさまざまな時点で回収し、細胞溶解物を調製する。次いで、Axlタンパク質のレベルが、SDS−PAGE、続いてクマシーブルーまたは硝酸銀での染色によって評価され得る。また、Axlタンパク質のレベルは、Axlに特異的な抗体を用いたウエスタンブロット解析によっても評価され得る。タンパク質レベルは、いくつかの機能アッセイの任意の1つ、例えば、サンドイッチもしくは競合的ELISA、または当業者には公知の他の細胞系アッセイを使用することによって測定され得る。
【0172】
医薬組成物および投与方法
医薬組成物の投与方法は当該技術分野で知られている。「投与」は、任意の特定の送達系に限定されず、限定されないが、非経口(皮下、静脈内、髄内、関節内、筋肉内、腔内、もしくは腹腔内注射など)、経直腸、局所、経皮、または経口(例えば、カプセル剤、懸濁剤、または錠剤にて)が挙げられ得る。個体への投与は、単回用量または連続的もしくは断続的な反復用量で、および任意のさまざまな生理学的に許容され得る塩の形態で、および/または医薬組成物の一部としての許容され得る医薬用担体および/または添加剤(前述)とともに行なわれ得る。
【0173】
Axlのモジュレーターは、医薬組成物として製剤化され得る。生理学的に許容され得る塩の形態および標準的な医薬製剤化手法および賦形剤は、当業者によく知られている(例えば、Physicians’Desk Reference(PDR)2003,第57版,Medical Economics Company,(2002);およびRemington:The Science and Practice of Pharmacy,Gennadoら編、第20版、Lippincott,Williams & Wilkins,(2000)を参照のこと)。
【0174】
本発明の方法に有用なモジュレーターは、症状の重症度および疾患の進行に応じて約1μg/kg〜約20mg/kgの投薬量で投与され得る。適切な有効用量は、処置医によって以下の範囲:例えば、約1μg/kg〜約20mg/kg、約1μg/kg〜約10mg/kg、約1μg/kg〜約1mg/kg、約10μg/kg〜約1mg/kg、約10μg/kg〜約100μg/kg、約100μg〜約1mg/kg、および約500μg/kg〜約1mg/kgから選択される。
【0175】
本発明の方法に使用される組成物には、さらに、薬学的に許容され得る賦形剤が含まれる。本明細書で用いる場合、語句「薬学的に許容され得る賦形剤」は、医薬の投与に適合性である任意のあらゆる溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などをいう。医薬活性物質用のかかる媒体および薬剤の使用は、当該技術分野でよく知られている。また、該組成物には、補足的機能、付加的機能、または治療増強機能をもたらす他の活性化合物も含まれることがあり得る。また、医薬組成物は、投与に関する使用説明書とともに容器、パックまたはディスペンサーに内包され得る。
【0176】
医薬組成物は、意図される投与経路に適合性であるように製剤化される。かかる組成物の例としては、そのままで、または生分解性ポリマー(例えば、PEG、PLGA)と組み合せて提供される結晶性タンパク質製剤が挙げられる。
【0177】
本明細書で用いる場合、「モジュレーター」は、インヒビターとアクチベータを包含する。本発明の方法では、Axl遺伝子発現のモジュレーターおよびAxlタンパク質活性のモジュレーターが包含される。Axl遺伝子発現のインヒビターは、Axl遺伝子の転写および/または翻訳を阻害するものである。Axlタンパク質活性のインヒビターは、例えば、Axlの膜結合、Axlのキナーゼ活性、および/またはリガンドに対するAxlタンパク質の結合を阻害するものである。
【0178】
本発明のモジュレーターは、担体ゲル、マトリックス、賦形剤、または骨再生および/または骨置換を誘導するために使用される他の組成物と併せて医薬組成物として投与され得る。かかるマトリックスの例としては、合成のポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシアパタイト、コラーゲンおよびフィブリン系マトリックス、ティシール(tisseel)フィブリン接着剤などが挙げられる。賦形剤としては、薬学的に許容され得る塩、多糖類、ペプチド、タンパク質、アミノ酸、合成ポリマー、天然ポリマー、および界面活性剤が挙げられ得る。
【0179】
Axlモジュレーターは、注射用または埋入用組成物としての送達のために製剤化される。該組成物は、注射または固形状態で体内に埋入するのに適した円柱形ロッドの形態であり得る。注射用製剤は、インヒビターと、ヒアルロン酸エステル(これは、米国特許公開公報第20050287135号(引用により本明細書に組み込まれる)に詳細に記載されている)を含むものである。例えば、Hyaff11p65がヒアルロン酸として使用され得る。注射用製剤は、モジュレーターと、リン酸カルシウム物質(非晶質アパタイト系リン酸カルシウム、結晶性が不充分なアパタイト系リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム、フルオロアパタイトなど、およびその組合せ)(これらは、米国特許公開公報第20050089579号(引用により本明細書に組み込まれる)に詳細に記載されている)を含むものである。
【0180】
Axlのインヒビターは、1種類以上の骨形成性タンパク質、例えば限定されないが、BMP2、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−9、BMP−10、BMP−12、BMP−13、MP52、またはそのヘテロ二量体とともに共投与され得る。
【0181】
Axlインヒビターは、他の治療用化合物、例えば、ビスホスホネート(窒素含有および非窒素含有)、アポミン(apomine)、テストステロン、エストロゲン、フッ化ナトリウム、ラネリック酸ストロンチウム、ビタミンDおよびその類縁化合物、カルシトニン、カルシウム補給物、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM、例えば、ラロキシフェン)、骨形成性タンパク質(例えば、BMP2)、スタチン、RANKLインヒビター、カテプシン(cathespin)Kインヒビター、Wnt経路モジュレーター、例えば、スクレロスチン抗体、核内転写制御を介さない(non−genotropic)エストロゲン様シグナル伝達アクチベータ(ANGELS)、および副甲状腺ホルモン(PTH)(アポミンは、新規な1,1ビスホスホネートエステルであり、farneion X活性化型受容体を活性化し、HMG CoAレダクターゼ(3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル補酵素Aレダクターゼの分解を加速させる(例えば、米国特許公開公報第20030036537号およびそこに挙げられた参考文献を参照のこと)などと組み合わせて、または同時に投与され得る。Axlのインヒビターは、ビスホスホネート、例えば限定されないが、アレンドロネート、シマドロネート(cimadronate)、クロドロネート、EB−1053、エチドロネート、イバンドロネート、ネリドロネート、オルパドロネート、パミドロネート、リセドロネート、チルドロネート、YH 529、ゾレドロネート(zolendronate)、ならびにその薬学的に許容され得る塩、エステル、酸および混合物とともに共投与される。
【0182】
本発明の方法による個体への治療剤の投与はまた、遺伝子療法によるものであり得、この場合、該モジュレーターをコードする核酸配列は、インビボで患者に投与されるか、またはインビトロで細胞に投与され、次いで該細胞が患者に導入される。具体的な遺伝子療法プロトコルについては、Morgan,Gene Therapy Protocols,第2版,Humana Press(2000)を参照のこと。
【0183】
スクリーニング方法および診断方法
本発明は、遺伝的に骨密度の変化を有する素因があるか、または現在骨密度の変化を有する被検体を特定するために使用され得る。骨密度の変化についてスクリーニングおよび/または該変化を診断するため、被検体由来の試験試料中および対照試料中のAxlのレベルを比較する。試験試料中のAxlのレベルの変化の存在は、被検体における骨密度の変化および/または骨密度の変化が発生する素因を示す。本発明は、野生型核酸配列を有する被検体と比較して、核酸含有試料におけるAxlバリアント核酸配列の存在の検出方法を提供する。
【0184】
対照試料と比べて被検体のAxlのレベルが上昇していると、被検体は、骨密度の減少を有するか、または骨密度の減少が発生するリスクが高い。対照試料と比べて被検体のAxlのレベルが減少していると、被検体は、骨密度の増大を有するか、または骨密度の増大が発生する尤度が高い。
【0185】
抗Axl特異的抗体または抗Axlバリアント特異的抗体は、試料中のそれぞれのタンパク質のレベルを測定するために使用され得る。本発明は、抗Axl抗体を細胞またはタンパク質と接触させること、および該抗体への結合を検出することを含む、スクリーニングまたは診断対象の被検体においてAxlまたはそのバリアントを検出するための方法を提供する。該抗体は、その抗原への結合の検出を可能にする化合物または検出可能な標識で直接標識されたものであってもよい。種々の標識および標識方法は、当業者にわかるであろう。本発明において使用され得る標識の型の例としては、酵素、放射性同位体、蛍光化合物、コロイド状金属、化学発光化合物、リン光性化合物、および生物発光化合物が挙げられる。Axlのレベルは、体液および組織から単離された試料において検出され得る。検出可能な量の抗原を含有する任意の被検物質が使用され得る。本発明の方法における試料は骨組織である。被検体由来の試験試料中のAxlの遺伝子発現またはタンパク質活性のレベルは、正常細胞のAxlの遺伝子発現またはタンパク質活性のレベルと比較され、被検体に骨密度の変化の素因があるかどうかが判定され得る。
【0186】
本発明の抗体は、例えば、イムノアッセイ(液相または固相担体への結合を含む)における使用に適したものである。抗体が使用されるイムノアッセイとしては、直接的または間接的いずれかの形式での形態の競合的および非競合的イムノアッセイ、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)およびサンドイッチ(免疫測定的)アッセイなどが挙げられる。また、抗体は、生理学的試料に対して免疫組織化学的アッセイを用いてAxlを検出するためにも使用され得る。
【0187】
本発明は、野生型核酸配列を有する対照試料と比較したとき、被検体から単離された核酸含有試験試料においてAxlバリアント核酸配列の存在を検出するための方法を提供する。Axl「バリアント」は、本明細書で用いる場合、Axlバリアント核酸およびAxlバリアントタンパク質を包含する。Axlバリアント核酸は、野生型Axl核酸配列に対応しない任意のAxl核酸配列をいう。Axlバリアントタンパク質は、野生型Axlアミノ酸配列に対応しない任意のAxlアミノ酸配列をいう。本発明の方法は、野生型Axl配列の対応するセグメントと配列同一性を共有しないAxlのセグメントバリアントを包含する。本発明の方法およびアッセイに有用なバリアントは、変異、制限断片長多型、単一ヌクレオチド多型(SNP)、核酸欠失、または天然に存在する核酸置換もしくは意図的に操作された核酸置換によって生じた変化を含むものである。また、バリアントとしては、タンパク質主鎖内への置換、欠失または挿入を含み、元のタンパク質の対応する部分において70%相同性がなお残っているペプチドまたは完全長タンパク質が挙げられる。
【0188】
用語「単離ポリヌクレオチド」は、本明細書で用いる場合、他の核酸、タンパク質、脂質、糖質または天然状態では会合している他の物質を実質的に含まないポリヌクレオチドを包含する。本発明のポリヌクレオチド配列は、AxlバリアントをコードするDNA配列およびRNA配列を包含する。Axlバリアント全部または一部をコードするあらゆるポリヌクレオチド、例えば、天然、合成および意図的に操作されたポリヌクレオチドなどもまた本明細書において包含されることは理解されよう。本発明の方法およびアッセイに有用なポリヌクレオチドは、遺伝コードの結果として縮重した配列を含むものである。相補配列は、アンチセンスヌクレオチドを含むものであり得る。また、バリアント核酸のDNAに特異的にハイブリダイズすることを可能にするのに充分な少なくとも10〜15塩基長である上記の核酸配列の断片(一部分)も包含される。
【0189】
本発明の方法およびアッセイに有用な核酸配列は、当該技術分野で知られた任意の方法によって得られ得る。例えば、DNAは、ゲノムもしくはcDNAライブラリーと、相同なヌクレオチド配列を検出するプローブとのハイブリダイゼーション、目的のDNA配列にアニーリングすることができるプライマーを用いたゲノムDNAもしくはcDNAに対するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、または構造的特徴を共有するクローニングされたDNA断片を検出するための発現ライブラリーの抗体スクリーニングによって単離され得る。
【0190】
Axlまたはそのバリアントをコードする特異的DNA配列の開発はまた、ゲノムDNAからの二本鎖DNA配列の単離;目的のポリペプチドの必要なコドンを得るためのDNA配列の化学的製造;または真核生物ドナー細胞から単離されたmRNAの逆転写による二本鎖DNA配列のインビトロ合成によって得られ得る。後者の場合、cDNAと称されるmRNAの二本鎖DNA相補鎖を形成する。
【0191】
本発明は、正常な骨密度を有する被検体および野生型Axl核酸配列と比較して、骨密度の変化を有する被検体から単離された試料中において標的Axlバリアント核酸配列の存在を検出することによる、骨密度の変化と関連している核酸バリアントの任意の1つ以上の同定方法を提供する。
【0192】
本発明は、被検体において対立遺伝子バリアントを同定するための方法を含む。被検体は、Axlバリアントに関してホモ接合性であってもヘテロ接合性であってもよい。本明細書で用いる場合、「対立遺伝子」は、ゲノム内に1つより多くの形態(異なる配列)で存在する遺伝子またはヌクレオチド配列(単一ヌクレオチド多型(SNP)など)である。本発明による「ホモ接合性」は、遺伝子またはSNPの2つのコピーが他方の対立遺伝子と配列が同一であることを示す。例えば、野生型Axl遺伝子に関してホモ接合性の被検体は、少なくとも2コピーのAxl野生型配列を含む。かかる被検体は、おそらく骨密度の変化の素因がない。
【0193】
「ヘテロ接合性」は、本明細書で用いる場合、ゲノム内に2つの異なるコピーの対立遺伝子が存在すること、例えば、1コピーの野生型対立遺伝子と1コピーのバリアント対立遺伝子が存在することを示す。また、「ヘテロ接合性」は、Axl対立遺伝子内に2つの異なる変異を有する被検体を包含する。
【0194】
本発明は、Axl遺伝子に関する被検体の対立遺伝子プロフィールを作成するための方法を提供する。「対立遺伝子プロフィール」は、本明細書で用いる場合、Axl対立遺伝子またはそのバリアントの存在または非存在およびコピー数に関する被検体のゲノムの組成物の測定である。
【0195】
本発明は、骨密度の変化に対する被検体の素因の判定方法を提供する。該方法は、Axl配列を含む被検体由来核酸被検物質を単離することにより被検体のAxl対立遺伝子プロフィールを調べること、およびAxl核酸配列内の変異の存在または非存在を調べることを含む。また、本発明は、被検体から核酸試料を単離すること、および該核酸を、標的配列にハイブリダイズするプライマーを用いて増幅させることを含む、被検体のAxl対立遺伝子プロフィールを調べるための診断方法または予後方法を提供する。
【0196】
対立遺伝子バリアントが検出される任意の方法が使用され得る。例えば、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)は、かかるバリアントを同定するためのプローブとして使用され得る。ASOプローブは、目的の配列の検出に適した任意の長さであり得る。好ましくは、かかるプローブは10〜50ヌクレオチド長であり、同位体による方法または同位体によらない方法によって検出可能に標識されている。標的配列は、サザンブロッティングによる固定化の前に、任意選択で増幅され、ゲル電気泳動によって分離され得る。あるいはまた、非増幅核酸を含有する抽出物をニトロセルロースに移し、ドットブロットとして直接プローブ結合させてもよい。
【0197】
また、対立遺伝子特異的変化は、同時制限(coincidental)部位変化によって同定され得る。変異により、場合によっては制限酵素切断部位が変化させされ、あるいはまた、これまで存在していなかった制限部位が導入される。制限酵素認識部位の変化または付加を用いて、特定のバリアントが同定され得る。
【0198】
本発明の方法に使用されるプライマーとしては、該プライマーが使用される反応に対してストリンジェンシーな条件下で、標的核酸を含む有意な数の核酸分子の重合が特異的に開始されるのに充分な長さおよび適切な配列のオリゴヌクレオチドが挙げられる。このようにして、目的の核酸を含む特定の標的核酸配列を選択的に増幅させることが可能である。具体的には、用語「プライマー」は、本明細書で用いる場合、2つ以上のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドを含む配列をいう。プライマーは約少なくとも8ヌクレオチドであり得、その配列は、標的核酸鎖に実質的に相補的なプライマー伸長生成物の合成を開始できるものである。オリゴヌクレオチドプライマーは、典型的には、15〜22またはそれ以上のヌクレオチドを含むものであるが、プライマーが本質的に、具体的な所望の標的ヌクレオチド配列の増幅のみを可能にするのに充分な特異性のものである(すなわち、プライマーが実質的に相補的である)限り、これより少ないヌクレオチドを含むものであってもよい。
【0199】
本発明の方法に従って使用されるプライマーは、増幅対象の各変異型ヌクレオチド配列鎖に「実質的に」相補的となるように設計される。実質的に相補的とは、プライマーがそのそれぞれの鎖と、重合用の薬剤が機能を果たすのを可能にする条件下でハイブリダイズするのに充分に相補的であるはずであることを意味する。換言すると、プライマーは、ハイブリダイズするフランキング配列と充分に相補的であり、変異型ヌクレオチド配列の増幅を可能にするものであるのがよい。好ましくは、伸長されるプライマーの3’末端は、相補フランキング鎖と完璧な塩基対合を有する。
【0200】
オリゴヌクレオチドプライマーは、標的核酸の量の増大をもたらす任意の増幅プロセス(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応)において使用され得る。典型的には、一方のプライマーは、変異型ヌクレオチド配列のマイナス(−)鎖に相補的であり、他方はプラス(+)鎖に相補的である。変性核酸へのプライマーのアニーリング、続いて、酵素(DNAポリメラーゼI(クレノウ)またはTaq DNAポリメラーゼの大きな断片およびヌクレオチドまたはリガーゼなど)を用いた伸長により、標的核酸を含む新たに合成された+鎖および−鎖がもたらされる。このような新たに合成された核酸もまた鋳型となるため、変性、プライマーアニーリングおよび伸長の反復サイクルにより、プライマーによって規定される領域(すなわち、標的変異型ヌクレオチド配列)の指数関数的生成がもたらされる。増幅反応生成物は、使用した特異的プライマーの両端に対応する両端を有する個々の核酸二本鎖である。当業者なら、標的核酸のコピー数を増加させるために同様に使用され得る他の増幅方法論がわかるであろう。
【0201】
任意の組織被検物質に由来する核酸が、精製形態または非精製形態で出発核酸(1つまたは複数)として使用され得るが、核酸は、標的核酸を含む特定の核酸配列を含むもの、または含むことが予測されるものであるものとする。したがって、該プロセスでは、例えば、DNAまたはRNA(例えば、メッセンジャーRNA(mRNA))が使用され得、この場合、DNAまたはRNAは単鎖であっても二本鎖であってもよい。RNAが鋳型として使用される場合、鋳型のDNAへの逆転写に最適な酵素および/または条件が使用され得る。また、各々の一方の鎖を含むDNA−RNAハイブリッドが使用されることがあり得る。また、核酸混合物が使用されることもあり得、あるいは、同じまたは異なるプライマーを用いて本明細書における先の増幅反応で生成された核酸がそのように使用されることもあり得る。増幅対象の変異型ヌクレオチド配列は、大きな分子の一画分であってもよく、該特定の配列が核酸全体を構成するように最初から独立した分子として存在しているものであってもよい。増幅対象の配列が最初から純粋な形態で存在している必要はなく、複雑な混合物の微量画分(ヒトまたは動物の全DNA内に含有されているものなど)であってもよい。
【0202】
増幅産物は、放射性プローブを使用せずに、サザンブロット解析によって検出され得る。かかるプロセスでは、例えば、非常に低レベルの変異型ヌクレオチド配列を含有する少量のDNA試料が増幅され、サザンブロッティング手法によって解析される。高レベル増幅シグナルにより、非放射性のプローブまたは標識の使用が助長される。
【0203】
標的核酸が増幅されない場合、適切なハイブリダイゼーションプローブを用いた検出が、分離させた核酸上で直接行なわれ得る。標的核酸が増幅される場合は、適切なハイブリダイゼーションプローブを用いた検出が、増幅後に行われ得る。
【0204】
本発明のプローブは、検出された特異的断片の分布、ならびに強い特異的結合(ハイブリダイズ)配列の存在を調べるためのプローブ結合の定量的(相対的)程度を調べるために使用され得る。
【0205】
本発明のプローブは、原子または無機ラジカル(最も一般的には放射性核種が使用されるが、重金属も使用され得る)で検出可能に標識され得る。充分なシグナルをもたらし、充分な半減期を有する任意の放射性標識が使用され得る。他の標識としては、標識リガンドに対して特異的結合対構成員としての機能を果たし得るリガンドなどが挙げられる。イムノアッセイに常套的に使用されている多種多様な標識が使用され得る。蛍光化合物としては、フルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロンなどが挙げられる。化学発光物質としては、ルシフェリン、および2,3−ジヒドロフタラジンジオン(例えば、ルミノール)が挙げられる。
【0206】
本発明の方法によって検出されるAxlバリアントを有する核酸は、溶液中または固相支持体への結合後のいずれかで、特異的DNA配列の検出に通常適用される任意の方法によって、例えば、PCR、オリゴマー制限(Saikiら、Bio/Technology,3:1008−1012,1985)、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)プローブ解析(Connerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,80:278,1983)、オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(OLA)(Landegrenら、Science,241:1077,1988)などによって、さらに評価、検出、クローニング、配列決定などがなされ得る。
【0207】
本発明は、Axlのレベルの変化または差異を検出するためのキットを提供する。かかるキットは、検出可能に標識された、または検出可能に標識され得るプローブを備えたものであり得る。かかるプローブは、それぞれ、標的タンパク質もしくはその断片、または標的核酸もしくはその断片に特異的な抗体またはヌクレオチドであり得、このとき、標的は、Axlまたはそのバリアントの存在を示すか、または該存在と相関しているものである。例えば、本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、キット内に含められ、Axlバリアントの存在、ならびに強い特異的結合(ハイブリダイズ)配列の存在を調べるためのプローブ結合の定量的(相対的)程度を調べ、したがって、被検体が骨密度の変化を有する尤度または有する素因がある尤度を示すために使用され得る。
【0208】
本発明は、核酸ハイブリダイゼーションを用いて標的核酸を検出するためのキットを提供する。キットはまた、標的核酸配列の増幅のためのヌクレオチド(1つまたは複数)が内包された容器を有するものであり得る。標的核酸配列(バリアント核酸配列など)を増幅することが望ましい場合、これは、増幅用プライマーであるオリゴヌクレオチド(1つまたは複数)を用いて行なわれ得る。
【0209】
キットは、標的タンパク質もしくはその断片、またはかかるタンパク質もしくはその断片のバリアントに結合する抗体が内包された容器を提供する。したがって、キットは、野生型Axlまたはそのバリアントに結合する抗体を含むものであり得る。かかる抗体は、被検物質において特定のAxlバリアントの存在またはかかるバリアントの発現レベルを識別するために使用され得る。
【0210】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いる場合、単数形「a」、「an」および「the」は、本文中でそうでないと明白に記載していない限り、複数形に対する言及も包含する。したがって、例えば、「抗体(an antibody)」に対する言及は、複数のかかる組成物、すなわち「抗体(antibodies)」を包含する。
【0211】
以下の実施例は、本発明の例示的な実施形態を示すものである。当業者には、本発明の精神および範囲を変更することなく行なわれ得る数多くの修正例および変形例が認識されよう。修正例および変形例は、本発明の範囲に包含される。本実施例は、なんら本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0212】
実施例
実施例1:BMP2はAxlを下方調節する
Axl遺伝子発現に対する骨誘導因子BMP2の効果を、2種類のマウス間葉細胞株、C3H10T1/2多能性間葉細胞およびクローン14マウス肢芽前駆細胞においてアッセイした。簡単には、C3H10T1/2またはクローン14細胞を、100ng/mlまたは320ng/mlいずれかのrhBMP2の存在下でインキュベートした。試料を、rhBMP2の添加の2、6、および24時間後に採取し、Axlの量を定量的RT−PCRを用いて測定した。図1に示されるように、Axl発現は、C3H10T1/2およびクローン14マウス間葉細胞株の両方で、処理の24時間以内にほぼ2倍有意に下方調節された。C14:クローン14細胞;10T1/2:C3H10T1/2細胞。この結果は、AxlがBMP2によって調節されることを示す。
【0213】
実施例2:Axl siRNAはAxl mRNAのレベルを低下させる
骨芽細胞の分化と活性におけるAxlの役割を、クローン14とMC3T3−E1マウス細胞株において、RNA遺伝子発現ノックダウン手法を用いて調べた。次に詳細に記載するように、この実験の結果は、Axlノックダウンが、骨芽前駆細胞からの骨芽細胞分化を促進させるとともに、骨芽細胞機能を増強することを示す。
【0214】
骨芽前駆細胞からの骨芽細胞分化におけるAxlの役割は、マウスクローン14細胞株においてRNA干渉を用いて調べた。この実験では、マウスAxlに対するsiRNA試薬で、0ng/mlまたは100ng/mlいずれかのBMP2で処理した細胞をトランスフェクトした。確立された骨芽細胞マーカーであるオステオカルシン遺伝子の発現の誘導を測定し、処理およびトランスフェクションの開始の4日後に骨芽細胞分化を評価した。
【0215】
siRNAの配列
siRNAは、Dharmacon(LaFayette,Co)から購入したものであり、以下の配列を有する。
【0216】
【表1】

Axl mRNAのレベルの検出
クローン14細胞を、20,000細胞/ウェルで96ウェルプレート内に播種し、10%ウシ胎仔血清(FBS)および1%L−グルタミンを補給したDMEM培地中で培養した。翌日、細胞を終濃度20nMのsiRNAで、0.5%(最終)Lipofectamine2000(Invitrogen,Carlsbad,CA)を用いて4時間トランスフェクトした。次いで、細胞を、1%FBSおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補給したDMEM中で培養した。一部の試料には、100ng/mlのrhBMP2を補給した培地を与えた。陰性対照として、細胞に対し、モックトランスフェクション(siRNAなし)または非特異的スクランブルsiRNA配列(NSP)を用いたトランスフェクションのいずれかを行なった。
【0217】
Axl mRNAのノックダウンを、siRNAトランスフェクションの24時間後、リアルタイムRT−PCRによってモニタリングした。Axl RNAi試薬の特異性は、最も密接に関連している2つのAxlファミリー構成員:MerとTyro3の転写物も同時にモニタリングすることによって確認した。培地を除去し、細胞をPBS中で洗浄した。全RNAを、Promega(Madison,WI)SV96 Total RNAキット(カタログ番号Z3505)を用いて精製した。RNAを最終容量100μlで溶出した。リアルタイムRT−PCRは、1×QRT−PCRマスターミックス(Eurogenetec,Philadelphia,PA;カタログ番号VWR81002−530)中の反応液25μlあたり5μlのRNAを用いて行なった。プライマーおよびプローブは、Applied Biosystems(ABI,Foster City,CA)から購入し、終濃度1×Axl(Assay−on−Demand Mm00437221_m1)、1×Mer(Assay−on−Demand Mm0043492_m1)、および1×Tyro3(Assay−on−Demand Mm0044547_m1)で使用した。ハウスキーピング遺伝子GAPDH(ABIカタログ番号4308310;終濃度200nMのプローブ;終濃度100nMのプライマー)と比較して遺伝子発現をモニタリングした。
【0218】
Axl siRNAのノックダウン後のAxl、MerおよびTyro3の相対遺伝子発現レベルを図2に示す。グラフは、Axl特異的siRNAでトランスフェクトしたクローン14細胞において検出されたAxl、Tyro3、およびMerのmRNAの相対レベルを示す。データは、非特異的スクランブルsiRNA(NSP)でトランスフェクトした細胞において検出された発現レベルに対して標準化している。グラフは、mRNAトランスフェクションなし(Mock)、個々のAxl特異的siRNA(Axl−1、Axl−2、Axl−3、もしくはAxl−4)、または4種類のAxl特異的siRNAの混合物(Axl−プール)でトランスフェクトした(were transfected)細胞におけるmRNAの相対レベルを示す。柱状部分は平均値であり、バーは±標準偏差を示す。アスタリスク(*)は、対照との差が観察される可能性が0.05未満、すなわち20回に1回未満の可能性単独によるものであることを示す。データはすべて、非特異的スクランブルsiRNAでトランスフェクトした細胞において検出された発現レベル(この場合のレベルを1に設定した)に対する変化倍数として示す(点線、図2)。陰性対照であるモックトランスフェクト細胞では、モニタリングした3つの遺伝子のいずれにおいても遺伝子発現に変化はなかった。4種類のAxl siRNA試薬ならびに該プールすべてで、Axl mRNAのレベルの有意な低下が示され、siRNAの有効性が確認された(t−検定でp<0.05;図2A)。さらに、4種類のAxl siRNA試薬ならびに該プールすべてで、Axl転写物の標的化に対して特異性が示されたが、密接に関連している遺伝子Tyro3とMerの遺伝子発現レベルは、Axl siRNAトランスフェクション後、影響がなかった。このデータは、siRNA試薬が、クローン14細胞においてAxl mRNAのレベルを特異的にノックダウンできる能力を有することを示す。
【0219】
実施例3:Axl siRNAはオステオカルシンの発現を増大させる
骨芽細胞分化に対するAxlノックダウンの影響を評価するため、オステオカルシンmRNAのレベルをモニタリングした。オステオカルシンは、骨芽細胞の分化後期の確立されたマーカーである。この試験では、まったく上記のとおりに、上記のAxl siRNAのプールでクローン14細胞をトランスフェクトし、外因性rhBMP2の存在下(100ng/ml)または非存在下で4日間培養した。アッセイの陽性対照として、BMP2シグナル伝達の既知の負の調節因子であるSmad6に対するsiRNAのプールを使用した(図3のSmad6)。陰性対照としては、骨芽細胞分化の既知の正の調節因子であるRunx2/Cbfa1に対するsiRNAを使用した。このsiRNAの配列は、配列番号:8に示したものであり、以下に示す。
5’− CGUGAAUGGUCAUAAUAACU−3’
さらなる陰性対照は、上記のものと同じ非特異的スクランブルsiRNAとした(NSP)。オステオカルシンmRNAのレベルを、配列番号:9、配列番号:10、および配列番号:11に示したものであり、以下に示すプライマー:
5’−CGGCCCTGAGTCTGACAAA−3’(配列番号:9);
5’−GCCGGAGTCTGTTCACTACCTT−3’(配列番号:10);
5’−CCTTCATGTCCAAGCAGGAGGGCA−3’(配列番号:11)
を使用し、上記のようにしてリアルタイムRT−PCRによってモニタリングした。
【0220】
図3は、クローン14細胞における外因性BMP2の存在下および非存在下での、オステオカルシンmRNAの変化倍数を示す。オステオカルシンmRNAのレベルは、非特異的スクランブルsiRNA(NSP)でトランスフェクトした細胞においてモニタリングされたものと比較して示す。細胞は、100ng/mlのBMP2の非存在下(左、薄い色のバー)または存在下(右、濃い色のバー)のいずれかでインキュベートした。非特異的スクランブルsiRNA(NSP)、Smad6特異的siRNA(Smad6)のプール、Runx2/Cbfa1特異的siRNA(Cbfa1)、またはAxl特異的siRNA(Axl)のプールでトランスフェクトした細胞におけるオステオカルシンの相対mRNAのレベルを示している。柱状部分は平均値であり、バーは±標準偏差を示す。アスタリスク(*)は、0.05未満である確率を示す。値は平均+/−SDである;p<0.05。
【0221】
予測どおり、Smad6のノックダウンにより、オステオカルシンの発現が、外因性BMP2の非存在で2倍より大きく、BMP2の存在下で3倍より大きく刺激された(p<0.05;図3)。逆に、Runx2/Cbfa1のノックダウンにより、すべての試験条件でオステオカルシンmRNAの発現によってモニタリングしたとき、骨芽細胞分化が劇的に抑制された(p<0.05;図3)。Axl発現のノックダウンにより、BMP2刺激後、オステオカルシンのレベルが、対照として使用した非特異的スクランブルsiRNAと比べて2倍より大きく増大している(p<0.05;図3)。さらに、外因性BMP2刺激の非存在では、Axlのノックダウンにより、オステオカルシンmRNAの2倍の誘導がもたらされている(p<0.05;図3)。このデータは、Axlの阻害により骨形成性分化が促進されること、また、かかる阻害によってBMP2の既知の骨形成性効果も増強され得ることを示す。
【0222】
実施例4:Axl siRNAは、アルカリホスファターゼ活性を増大させる
クローン14細胞を、20,000細胞/ウェルで96ウェルプレート内に播種し、10%FBSおよび1%L−グルタミンを補給したDMEM培地中で培養した。翌日、細胞を終濃度20nMのsiRNA(配列番号3、4、5または6)(Dharmacon,Lafayette,CO)で、0.5%(最終)Lipofectamine2000(Invitrogen,Carlsbad,CA)を用いて4時間トランスフェクトした。次いで、細胞を、1%FBSおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補給したDMEM中で培養した。一部の試料には、100ng/mlのrhBMP2を補給した培地を与えた。陰性対照として、細胞に対し、モックトランスフェクション(siRNAなし)または配列番号:7に示すヌクレオチド配列:GGUAGCUAUUCAGUUACUG(配列番号7)を有する非特異的スクランブルsiRNAでのトランスフェクションのいずれかを行なった。骨芽細胞分化に対するAxlノックダウンの機能上の影響を、アルカリホスファターゼ活性によって評価した。細胞処理の4日後、培地をウェルから吸引し、PBS(200μll/ウェル)で2回洗浄した。ウェル1つあたり100μlの蒸留水を添加した。プレートを2回凍結/解凍して細胞を破壊および溶解させた。
50μlの溶解細胞を50μlのALPバッファーミックスに添加した。10mlのALPバッファーに対して:0.1Mのグリシン、pH10.3、16mgのMg Cl、80μlの12.5%Triton X−100、42mgのp−ニトロフェニルホスフェート)。反応液を37℃で30分間インキュベートし、各ウェルに100μlの0.2MのNaOHを添加することにより停止させた。マイクロプレートリーダーにおいて、405nmで比色反応液の読み取りを行なった。
【0223】
図4は、Axlノックダウンによりアルカリホスファターゼ活性が誘導されること、およびこの効果が、BMP2タンパク質の存在下でのインキュベーションによって増強されることを示すグラフである。グラフは、100ng/mlのBMP2タンパク質の非存在下(薄い色のバー)または存在下(濃い色のバー)のいずれかでインキュベートした細胞におけるアルカリホスファターゼの相対活性を示す。結果を、非特異的スクランブルsiRNA(NSP)でトランスフェクトした細胞における活性と比較して示す。Smad6特異的siRNA(Smad6)のプール、Runx2/Cbfa1特異的siRNA(Cbfa1)、またはAxl特異的siRNA(Axl)のプールでトランスフェクトした細胞におけるアルカリホスファターゼの相対レベルを示している。柱状部分は平均値であり、バーは±標準偏差を示す。アスタリスク(*)は、0.05未満である確率を示す。値は平均+/−SDである;p<0.05。
【0224】
実施例5:Axlの過剰発現によりオステオカルシンの発現が抑制される
クローン14細胞を、20,000細胞/ウェルで96ウェルプレート内に播種し、10%FBSおよび1%L−グルタミンを補給したDMEM培地中で培養した。翌日、細胞を100ng/ウェルの各プラスミドで、0.5%(最終)Lipofectamine2000(Invitrogen,Carlsbad,CA)を用いて4時間トランスフェクトした。次いで、細胞を、1%FBSおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補給したDMEM中で培養した。一部の試料には、100ng/mlのrhBMP2を補給した培地を与えた。トランスフェクションの4日後にRNAを単離した。オステオカルシンmRNAを、リアルタイムRT−PCRならびに配列番号:9、配列番号:10、および配列番号:11に示したものであり、上記に示すプライマーによって測定した。Axlタンパク質の過剰発現は、ウエスタンブロット解析によって示された。
【0225】
図5は、Axl過剰発現により、オステオカルシンmRNAのレベルが抑制されることを示す。図5は、100ng/mlのBMP2タンパク質の非存在下(薄い色のバー)または存在下(濃い色のバー)のいずれかでインキュベートした細胞におけるオステオカルシンmRNAのレベルを示すグラフである。結果を、非特異的ベクターでトランスフェクトした細胞においてモニタリングされたものと比較して示す。ベクター単独:非特異的ベクターでトランスフェクトした細胞;FL−Axl:完全長Axlを発現するベクターでトランスフェクトした細胞。柱状部分は平均値であり、バーは±標準偏差を示す。アスタリスク(*)は、0.05未満である確率を示す。値は平均+/−SDである;p<0.05。
【0226】
実施例6:Axl siRNAにより石灰化結節の形成が促進される
さらなる実験により、RNAi手法を用いたAxl発現の一過性ノックダウン後のインビトロでの石灰化結節の形成で示される骨芽細胞の活性を評価した。
【0227】
MC3T3−E1細胞を50,000細胞/ウェルの密度で6ウェルプレートに播種し、1%グルタミンおよび10%FBSを補給したアルファー培地中で培養した。翌日、細胞を20nM(終濃度)のsiRNAで、0.4%(最終)のOligofectamine(Invitrogen)を用いて4時間トランスフェクトした。この試験に用いたsiRNAは、Axl siRNAと上記のCbfa1/Runx2 siRNAのプールを含む。また、2つの対照処理:siRNAを導入しないモックトランスフェクション、および非特異的スクランブルsiRNA(上記)を含めた。
【0228】
トランスフェクション後、細胞を、1%グルタミン、10%FBSおよび10mMのβ−グリセロールリン酸(石灰化に必要な補因子)を補給し、他の骨形成性因子は含まないアルファー培地中に維持した。培地を3日毎に交換し、トランスフェクション後、第17日目にアッセイを停止した。
【0229】
石灰化を調べるため、標準的なプロトコルを用いて、細胞をPBS中で洗浄し、冷エタノール中で固定し、アリザリンレッドで染色した。石灰化の程度の半定量を、10%塩化セチルピリジニウムを含有する10mMリン酸ナトリウム中、室温で15分間、細胞を脱色することにより行なった。上清みを除去し、吸光度を570nmで測定した。アリザリンレッドの既知希釈液の吸光度測定値の標準曲線(50〜400uMの範囲)を得ることにより、濃度を測定した。赤く染色された結節の存在により石灰化を目視評価した。
【0230】
Axlノックダウンにより、非特異的スクランブルsiRNAまたはモックトランスフェクト細胞のいずれかと比べて、石灰化の程度の定量的増大がもたらされた。アリザリンレッド染色の半定量により、Axlノックダウンによって石灰化結節の形成が対照と比べてほぼ20%増大することが示された。対照的に、陰性対照Runx2/Cbfa1のノックダウンでは、石灰化の劇的な低減が示された。このデータは、Axl阻害によってBMP2様骨形成性分化が増強され得、場合によっては該分化が生じる得ることを示唆する。
【0231】
実施例7:頭蓋冠器官培養アッセイ
エキソビボ頭蓋冠器官培養モデルを使用し、生理学的骨微小環境における骨芽細胞のAxl阻害に対する応答を評価した。可溶性mAxl細胞外ドメイン/Fcキメラ(Axl/FC、R&D Systems,Minneapolis,MN)は、リガンド結合を破壊し得るため、これをインヒビターとして使用した。4日齢の新生児ICRマウスの頭蓋冠を切開し、矢状縫合に沿って2つに切り分けた。無血清BGJ培地+0.1%BSA中で一晩インキュベーションした後、頭蓋冠を0.1μg/mlのAxl/Fcとともに1、2、4もしくは7日間インキュベートするか、またはBGJ培地+1%FCS中で未処理のままにした(対照)。所定の時間後、Axl/Fcを培養培地から除去し、残りの7日間の培養期間、頭蓋冠をBGJ培地+1%FCSとともにインキュベートした。
【0232】
4匹の個々のマウスの頭蓋冠の片側を各実験条件に使用した。次いで、頭蓋冠を10%中性リン酸緩衝ホルムアルデヒド中に固定し、パラフィン中に包埋し、4μm切片を作製し、ヘマトキシリンとエオシンで染色した。総骨領域および骨芽細胞の数を、組織形態計測による手法を用いて定量した。
【0233】
図6に示されるように、2日間のAxl/Fcへの短時間曝露によって、骨芽細胞の数および総骨領域の有意な増加がもたらされた。同様に、4日間のAxl/Fc処理では、総骨領域は増大したが、骨芽細胞の数は対照培養物と同等であった。両時間点において、骨芽細胞は活性化されるようであった(これは、該細胞の膨らんだ立方体様の形態によって示された)。要するに、Axlの阻害により、このエキソビボ頭蓋冠モデルにおいて、BMP2での処理と同様に骨芽細胞の活性および新たな骨の形成が促進された。グラフは、相対総骨領域(左バー)、および骨芽細胞の数(右バー)を示す。値は平均+/−SEであり、**p<0.01、バー上部のアスタリスク(**)は、骨芽細胞が活性化されたことを示す。
【0234】
予測どおり、Smad6のノックダウンにより、オステオカルシンの発現が、外因性BMP2の非存在で2倍より大きく、BMP2の存在下で3倍より大きく刺激された(p<0.05;図3)。逆に、Runx2/Cbfa1のノックダウンにより、すべての試験条件でオステオカルシンmRNAの発現によってモニタリングしたとき、骨芽細胞分化が劇的に抑制された(p<0.05;図3)。Axl発現のノックダウンにより、BMP2刺激後、オステオカルシンのレベルが、対照として使用した非特異的スクランブルsiRNAと比べて2倍より大きく増大している(p<0.05;図3)。さらに、外因性BMP2刺激の非存在では、Axlのノックダウンにより、オステオカルシンmRNAの2倍の誘導がもたらされている(p<0.05;図3)。このデータは、Axlの阻害により骨形成性分化が促進されること、また、かかる阻害によってBMP2の既知の骨形成性効果も増強され得ることを示す。
【0235】
実施例8:Axl「キナーゼ死」によってオステオカルシンの発現は抑制されない
ATP結合ポケット内の保存されたリシンを置き換えてキナーゼ活性の不活化をもたらした「キナーゼ死」Axl変異型(K576R)を開発した。これにより、骨芽細胞生物学におけるAxlのキナーゼ活性の役割の評価が可能になる。
【0236】
「キナーゼ死」変異型の発現を確認し、そのキナーゼ活性を調べるため、293A細胞を、5×10細胞の密度で10cm皿に平板培養した。細胞を一晩インキュベートし、12μgの対象のプラスミドで、Lipofectamine(商標)2000(Invitrogen,Carlsbad,CA)を用いて20分間トランスフェクトした。培地交換を行ない、タンパク質発現を可能にするため、細胞をさらに48時間インキュベートした。細胞を溶解させ、タンパク質をビシンコニン酸(BCA)アッセイ(Pierce Protein Research Products,Rockford,IL)によって測定した。Western Breeze Chemiluminescent Immunodetection(Invitrogen)を用いて「キナーゼ死」Axlにキナーゼ活性があるか否かを調べた。細胞溶解物を、Cell Signaling(Danvers,MA、カタログ番号4977)から入手したAxl抗体(1:50希釈)とともにインキュベートし、5%BSAを有する1×TBS、0.1%Tween(登録商標)−20中で、抗V5および抗V5−HRP抗体(Invitrogen)ならびにホスホチロシンマウスモノクローナル抗体(Cell Signalingカタログ番号9411)とともに4℃で一晩インキュベートした。
【0237】
Axl「キナーゼ死」によってオステオカルシンの発現が抑制されるか否かを調べるために、クローン14細胞(マウス骨芽細胞)を使用した。クローン14細胞を、10%COを含む加湿大気中37℃で、10%FBS(Atlanta Biologicals、Lawrenceville、GA)を含有するダルベッコ改変イーグル培地中に維持した。すべての処置に対し、細胞を、6ウェル培養プレート内に3×10細胞/ウェルの密度で平板培養し、一晩インキュベートした。次いで、細胞をPBSで洗浄し、4μgのAxl DNA、Axl「キナーゼ死」DNAまたは対照DNAのいずれかでトランスフェクト(Lipofectamine(商標)2000)した。3時間後、培地を交換し、100ng/mlのBMP2を添加した。1日後、全RNAを、RNeasyキット(Qiagen,Valencia,CA)を用いて単離し、DNアーゼI(1単位/5μg RNA)で室温にて30分間処理した。骨芽細胞マーカー遺伝子のmRNAは、ABI Prism 7000配列検出システム(Applied Biosystems)を用いてリアルタイムPCRによって検出し、GAPDHレベルに対して標準化した。
【0238】
図7(A)に示されるように、野生型(WT)AxlまたはAxl「キナーゼ死」(KD)のいずれかでトランスフェクトし、次いで溶解させ、抗Axl抗体により免疫沈降させた後、ウエスタンブロットにおいて抗P−Tyr抗体とプローブ結合させた293A細胞では、WT Axlとは対照的に、Axl KDが自身をリン酸化する能力をもたないことが示された。また、図7(B)に示されるように、WT Axlでのクローン14骨芽細胞のトランスフェクションでは、オステオカルシンの発現の低減がもたらされるが、Axl KDのトランスフェクションではかかる効果はなく、これは、骨芽細胞分化に対するAxlの効果にはAxlのキナーゼ活性が必要とされることを示す。
【0239】
実施例9:Axlノックアウトマウスは骨量の増加を有する
Axlノックアウトマウス(「t1453 Axl」、本明細書ではKOと称する)を、Deltagen(San Mateo,CA)から入手した。Axl KOおよび年齢適合野生型(WT)マウスを、第26週間の時点で骨格表現型について評価した。
【0240】
摘出した大腿骨を、末梢骨定量的コンピュータ連動断層撮影(pQCT)を用いて解析した。遠位端の2.5mm近位から採取した0.5mmのpQCT切片の1つを、全海綿骨密度のコンピュータ計算に使用し、遠位端の9mm近位(幹部領域内)から採取した別の0.5mm切片を、大腿骨の骨幹端の皮質骨密度の解析に使用した。Axl−KOおよび年齢適合WTマウス群(n=8〜10/群)の遠位大腿骨の全海綿骨と皮質骨の体積測定骨密度を、スチューデントのt−検定を用いて比較した。
【0241】
図8は、遠位大腿骨の体積測定密度(vBMD)のpQCTの測定値によって示されるように、26週齢のAxl KO雄および雌マウスが高骨量表現型を有することを示す。図8Aは、野生型と比べて、雄マウスは、総vBMDの13%増加および海綿骨vBMDの23%増加を有し、一方、雌マウスは、総vBMDの11%増加および海綿骨vBMDの34%増加を有したことを示す。図8Bは、野生型と比べて、雄マウスは皮質骨vBMDの1.55%増加を有し、一方、雌マウスはvBMDの2.40%増加を有したことを示す。
【0242】
本明細書中に引用した参考文献の教示に鑑みると、本明細書は非常によく理解されよう。本明細書中の実施形態は、本発明の実施形態の例示を示すものであり、本発明の範囲を制限するものであると解釈されるべきでない。当業者には、多くの他の実施形態が本発明に包含されることが容易に認識されよう。本開示において引用した刊行物、特許、および生物学的配列はすべて、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる。引用により組み込まれる資料が本発明の明細書と矛盾するか、または整合しない場合、任意のかかる資料よりも本発明の明細書が優先される。本明細書における参考文献の引用はいずれも、かかる参考文献が本発明に対する先行技術であるという是認ではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物にAxl遺伝子発現のインヒビターを投与することを含む、哺乳動物の骨障害を処置または予防する方法。
【請求項2】
哺乳動物にAxlタンパク質活性のインヒビターを投与することを含む、哺乳動物の骨障害を処置または予防する方法。
【請求項3】
Axlタンパク質活性がAxlキナーゼ活性である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
該インヒビターが骨形成タンパク質2(BMP2)タンパク質ではない、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
該インヒビターが、構造式(I):
【化3】

を有するもの、またはその塩、水和物、溶媒和物もしくはN−オキシドであり、式中、
Bは、
【化4】

であり、
式中、RおよびRは一緒になって、1つ以上のRおよび/またはRで任意選択的に置換された、3〜4個の原子の飽和もしくは不飽和アルキレンまたは飽和もしくは不飽和ヘテロアルキレン鎖を形成しており;
は、1つ以上のRで任意選択的に置換された(C〜C20)アリール、1つ以上のRで任意選択的に置換された5〜20員のヘテロアリール、1つ以上のRで任意選択的に置換された(C〜C28)アリールアルキル、および1つ以上のRで任意選択的に置換された6〜28員のヘテロアリールアルキルからなる群より選択され;
は、合計3〜16個の環内炭素原子を含み、R基で置換されている飽和もしくは不飽和の架橋もしくは非架橋シクロアルキルであり、ただし、Rが不飽和の非架橋シクロアルキル、または飽和の架橋シクロアルキルである場合、このR置換基は任意選択的であるものとし、式中、Rは、さらに、1つ以上のRで任意選択的に置換され;
は、−C(O)OR、−C(O)NR、−C(O)NROR、または−C(O)NRNRからなる群より選択され;
各R基は、他のものと独立して、水溶性化基、R、R、1つ以上のRおよび/またはRで任意選択的に置換されたC〜Cアルキル、1つ以上のRおよび/またはRで任意選択的に置換されたC〜Cシクロアルキル、1つ以上のRおよび/またはRで任意選択的に置換された3〜12個の環内原子を含むヘテロシクロアルキル、1つ以上のRおよび/またはRで任意選択的に置換されたC〜Cアルコキシ、ならびに−O−(CH−R(式中、xは1〜6である)からなる群より選択され;
各Rは、他のものと独立して、水素、C〜Cアルキル、架橋もしくは非架橋C〜C10シクロアルキル、3〜12個の環内原子を含む架橋もしくは非架橋ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、(C〜C14)アリール、および(C〜C20)アリールアルキルからなる群より選択され、ここで、Rは、1つ以上のRで任意選択的に置換されており;
各Rは、他のものと独立して、=O、−OR、(C〜C)ハロアルキルオキシ、=S、−SR、=NR、=NOR、−NR、ハロゲン、−C〜Cハロアルキル、−CN、−NC、−OCN、−SCN、−NO、−NO、=N、−N、−S(O)R、−S(O)、−S(O)OR、−S(O)NR、−S(O)NR、−OS(O)R、−OS(O)、−OS(O)OR、−OS(O)NR、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NR、−C(O)NROR、−C(NH)NR、−C(NR)NR、−C(NOH)R、−C(NOH)NR、−OC(O)R、−OC(O)OR、−OC(O)NR、−OC(NH)NRおよび−OC(NR)NRからなる群より選択される適当な基であり;各Rは、他のものと独立してRであるか、または同じ窒素原子に結合している2つのRが、これら両方が結合している該窒素原子と一緒になって、5〜8個の環内原子を含むヘテロシクロアルキル基を形成しており、該ヘテロシクロアルキル基は、任意選択で、−O−、−S−、−N(−(CH−R)−、−N(−(CH−C(O)R)−、−N(−(CH−C(O)OR)−、−N(−(CH−S(O))−、−N(−(CH−S(O)OR)−および−N(−(CH−C(O)NR)−(式中、yは0〜6である)からなる群より選択される1〜3個のさらなるヘテロ原子基を含み、該ヘテロシクロアルキルは、1つ以上のRで任意選択的に置換されており;
各Rは、他のものと独立して、R、Rおよびキラル補助基からなる群より選択され;ならびに
各Rは、独立して、−C〜Cアルコキシ、−C〜Cアルキル、−C〜Cハロアルキル、シアノ、ニトロ、アミノ、(C〜Cアルキル)アミノ、ジ(C〜Cアルキル)アミノ、フェニル、ベンジル、オキソ、もしくはハロゲンであるか、
または隣接する原子に結合している任意の2つのRが、これらが各々結合している該原子と一緒になって、5〜8個の環内原子を含む飽和もしくは不飽和の縮合シクロアルキルまたは飽和もしくは不飽和ヘテロシクロ縮合アルキル基を形成しており、ここで、形成されたシクロアルキル基およびヘテロシクロアルキル基は、各々独立してハロゲン、C〜Cアルキルおよびフェニルから選択される1つ以上の基で任意選択的に置換されている、
請求項2〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
骨障害が、骨減少症、骨軟化症、骨粗鬆症、変形性関節症、オステオミエローマ、骨形成異常症、パジェット病、骨形成不全症、骨硬化症、形成不全性骨障害、体液性高カルシウム血症性骨髄腫、多発性骨髄腫、または転移後の骨菲薄化である、請求項1〜5のいずれか1項以上に記載の方法。
【請求項7】
該障害が骨粗鬆症である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
骨粗鬆症が、閉経後、ステロイド誘導性、老人性、またはサイロキシン使用誘導性である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
骨障害が、高カルシウム血症、慢性腎疾患、腎臓透析、原発性副甲状腺機能亢進症、続発性副甲状腺機能亢進症、炎症性腸疾患、クローン病、コルチコステロイドの長期使用、または性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)アゴニストもしくはアンタゴニストの長期使用の少なくとも1つによって引き起こされたものである、請求項1〜8のいずれか1項以上に記載の方法。
【請求項10】
哺乳動物にAxl遺伝子発現のインヒビターを、哺乳動物において骨芽細胞の数または骨芽細胞の活性を増大させるのに充分な量および期間で投与することを含む、哺乳動物において骨芽細胞の数または骨芽細胞の活性を増大させる方法。
【請求項11】
該インヒビターがBMP2ではない、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
該インヒビターが、構造式(I):
【化5】

を有するもの、またはその塩、水和物、溶媒和物もしくはN−オキシドであり、式中、
Bは、
【化6】

であり、
式中、RおよびRは一緒になって、1つ以上のRおよび/またはRで任意選択的に置換された、3〜4個の原子の飽和もしくは不飽和アルキレンまたは飽和もしくは不飽和ヘテロアルキレン鎖を形成しており;
は、1つ以上のRで任意選択的に置換された(C〜C20)アリール、1つ以上のRで任意選択的に置換された5〜20員のヘテロアリール、1つ以上のRで任意選択的に置換された(C〜C28)アリールアルキル、および1つ以上のRで任意選択的に置換された6〜28員のヘテロアリールアルキルからなる群より選択され;
は、合計3〜16個の環内炭素原子を含み、R基で置換されている飽和もしくは不飽和の架橋もしくは非架橋シクロアルキルであり、ただし、Rが不飽和の非架橋シクロアルキル、または飽和の架橋シクロアルキルである場合、このR置換基は任意選択的であるものとし、式中、Rは、さらに、1つ以上のRで任意選択的に置換され;
は、−C(O)OR、−C(O)NR、−C(O)NROR、または−C(O)NRNRからなる群より選択され;
各R基は、他のものと独立して、水溶性化基、R、R、1つ以上のRおよび/またはRで任意選択的に置換されたC〜Cアルキル、1つ以上のRおよび/またはRで任意選択的に置換されたC〜Cシクロアルキル、1つ以上のRおよび/またはRで任意選択的に置換された3〜12個の環内原子を含むヘテロシクロアルキル、1つ以上のRおよび/またはRで任意選択的に置換されたC〜Cアルコキシ、ならびに−O−(CH−R(式中、xは1〜6である)からなる群より選択され;
各Rは、他のものと独立して、水素、C〜Cアルキル、架橋もしくは非架橋C〜C10シクロアルキル、3〜12個の環内原子を含む架橋もしくは非架橋ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、(C〜C14)アリール、および(C〜C20)アリールアルキルからなる群より選択され、ここで、Rは、1つ以上のRで任意選択的に置換されており;
各Rは、他のものと独立して、=O、−OR、(C〜C)ハロアルキルオキシ、=S、−SR、=NR、=NOR、−NR、ハロゲン、−C〜Cハロアルキル、−CN、−NC、−OCN、−SCN、−NO、−NO、=N、−N、−S(O)R、−S(O)、−S(O)OR、−S(O)NR、−S(O)NR、−OS(O)R、−OS(O)、−OS(O)OR、−OS(O)NR、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NR、−C(O)NROR、−C(NH)NR、−C(NR)NR、−C(NOH)R、−C(NOH)NR、−OC(O)R、−OC(O)OR、−OC(O)NR、−OC(NH)NRおよび−OC(NR)N−Rからなる群より選択される適当な基であり;各Rは、他のものと独立してRであるか、または同じ窒素原子に結合している2つのRが、これら両方が結合している該窒素原子と一緒になって、5〜8個の環内原子を含むヘテロシクロアルキル基を形成しており、該ヘテロシクロアルキル基は、任意選択で、−O−、−S−、−N(−(CH−R)−、−N(−(CH−C(O)R)−、−N(−(CH−C(O)OR)−、−N(−(CH−S(O))−、−N(−(CH−S(O)OR)-および−N(−(CH−C(O)NR)−(式中、yは0〜6である)からなる群より選択される1〜3個のさらなるヘテロ原子基を含み、該ヘテロシクロアルキルは、1つ以上のRで任意選択的に置換されており;
各Rは、他のものと独立して、R、Rおよびキラル補助基からなる群より選択され;ならびに
各Rは、独立して、−C〜Cアルコキシ、−C〜Cアルキル、−C〜Cハロアルキル、シアノ、ニトロ、アミノ、(C〜Cアルキル)アミノ、ジ(C〜Cアルキル)アミノ、フェニル、ベンジル、オキソ、もしくはハロゲンであるか、
または隣接する原子に結合している任意の2つのRが、これらが各々結合している該原子と一緒になって、5〜8個の環内原子を含む飽和もしくは不飽和縮合シクロアルキルまたは飽和もしくは不飽和のヘテロシクロ縮合アルキル基を形成しており、ここで、形成されたシクロアルキル基およびヘテロシクロアルキル基は、各々独立してハロゲン、C〜Cアルキルおよびフェニルから選択される1つ以上の基で任意選択的に置換されている、
請求項10または請求項11に記載の方法。
【請求項13】
骨芽細胞の数または活性の増大により、骨芽細胞マーカーの発現の増大がもたらされる、請求項10〜12のいずれか1項以上に記載の方法。
【請求項14】
骨芽細胞マーカーが、オステオカルシン、アルカリホスファターゼ、またはI型コラーゲンである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
骨芽細胞の数または骨芽細胞の活性の増大により、骨老化のレベル、骨量の減少、骨塩量の減少、骨質の変質、または骨微細構造の完全性の変質の少なくとも1つが低下する、請求項10〜14のいずれか1項以上に記載の方法。
【請求項16】
該インヒビターが、化合物、タンパク質、ペプチド、抗体、アプタマー、またはポリヌクレオチドである、請求項1〜15のいずれか1項以上に記載の方法。
【請求項17】
該インヒビターが、Axl遺伝子の転写を抑制または低減させるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
該インヒビターが、Axlメッセンジャーリボ核酸(mRNA)の翻訳を抑制または低減させるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
該インヒビターがポリヌクレオチドである、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
該ポリヌクレオチドがリボ核酸(RNA)である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
該RNAがアンチセンスである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
該RNAが二本鎖RNAである、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
該RNAが低分子干渉RNA(siRNA)である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
該siRNAが約15〜約40ヌクレオチド長である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
該siRNAのヌクレオチド配列が、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、または配列番号:6である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
該siRNAがマイクロRNA(miRNA)の配列を含む、請求項23〜25のいずれか1項以上に記載の方法。
【請求項27】
該ポリヌクレオチドがデオキシリボ核酸(DNA)である、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
該DNAがアンチセンスDNAである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
哺乳動物にAxlタンパク質活性のインヒビターを、哺乳動物において骨芽細胞の数または骨芽細胞の活性を増大させるのに充分な量および期間で投与することを含む、哺乳動物において骨芽細胞の数または骨芽細胞の活性を増大させる方法。
【請求項30】
骨芽細胞の数または活性の増大により、骨芽細胞マーカーの発現の増大がもたらされる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
骨芽細胞マーカーが、オステオカルシン、アルカリホスファターゼ、またはI型コラーゲンである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
骨芽細胞の数または骨芽細胞の活性の増大により、骨老化のレベル、骨量の減少、骨塩量の減少、骨質の変質、または骨微細構造の完全性の変質の少なくとも1つが低下する、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
該インヒビターが、化合物、タンパク質、ペプチド、抗体、アプタマー、またはポリヌクレオチドである、請求項29〜32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
該インヒビターが、Axlタンパク質のチロシンキナーゼ活性を低下させるものである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
該インヒビターが、構造式(I):
【化7】

を有するもの、またはその塩、水和物、溶媒和物もしくはN−オキシドであり、式中、
Bは、
【化8】

であり、
式中、RおよびRは一緒になって、1つ以上のRおよび/またはRで任意選択的に置換された、3〜4個の原子の飽和もしくは不飽和アルキレンまたは飽和もしくは不飽和ヘテロアルキレン鎖を形成しており;
は、1つ以上のRで任意選択的に置換された(C〜C20)アリール、1つ以上のRで任意選択的に置換された5〜20員のヘテロアリール、1つ以上のRで任意選択的に置換された(C〜C28)アリールアルキル、および1つ以上のRで任意選択的に置換された6〜28員のヘテロアリールアルキルからなる群より選択され;
は、合計3〜16個の環内炭素原子を含み、R基で置換されている飽和もしくは不飽和の架橋もしくは非架橋シクロアルキルであり、ただし、Rが不飽和の非架橋シクロアルキル、または飽和の架橋シクロアルキルである場合、このR置換基は任意選択的であるものとし、式中、Rは、さらに、1つ以上のRで任意選択的に置換され;
は、−C(O)OR、−C(O)NR、−C(O)NROR、または−C(O)NRNRからなる群より選択され;
各R基は、他のものと独立して、水溶性化基、R、R、1つ以上のRおよび/またはRで任意選択的に置換されたC〜Cアルキル、1つ以上のRおよび/またはRで任意選択的に置換されたC〜Cシクロアルキル、1つ以上のRおよび/またはRで任意選択的に置換された3〜12個の環内原子を含むヘテロシクロアルキル、1つ以上のRおよび/またはRで任意選択的に置換されたC〜Cアルコキシ、ならびに−O−(CH−R(式中、xは1〜6である)からなる群より選択され;
各Rは、他のものと独立して、水素、C〜Cアルキル、架橋もしくは非架橋C〜C10シクロアルキル、3〜12個の環内原子を含む架橋もしくは非架橋ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、(C〜C14)アリール、および(C〜C20)アリールアルキルからなる群より選択され、ここで、Rは、1つ以上のRで任意選択的に置換されており;
各Rは、他のものと独立して、=O、−OR、(C〜C)ハロアルキルオキシ、=S、−SR、=NR、=NOR、−NR、ハロゲン、−C〜Cハロアルキル、−CN、−NC、−OCN、−SCN、−NO、−NO、=N、−N、−S(O)R、−S(O)、−S(O)OR、−S(O)NR、−S(O)NR、−OS(O)R、−OS(O)、−OS(O)OR、−OS(O)NR、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NR、−C(O)NROR、−C(NH)NR、−C(NR)NR、−C(NOH)R、−C(NOH)NR、−OC(O)R、−OC(O)OR、−OC(O)NR、−OC(NH)NRおよび−OC(NR)NRからなる群より選択される適当な基であり;各Rは、他のものと独立してRであるか、または同じ窒素原子に結合している2つのRが、これら両方が結合している該窒素原子と一緒になって、5〜8個の環内原子を含むヘテロシクロアルキル基を形成しており、該ヘテロシクロアルキル基は、任意選択で、−O−、−S−、−N(−(CH−R)−、−N(−(CH−C(O)R)−、−N(−(CH−C(O)OR)−、−N(−(CH−S(O))−、−N(−(CH−S(O)OR)-および−N(−(CH−C(O)NR)−(式中、yは0〜6である)からなる群より選択される1〜3個のさらなるヘテロ原子基を含み、該ヘテロシクロアルキルは、1つ以上のRで任意選択的に置換されており;
各Rは、他のものと独立して、R、Rおよびキラル補助基からなる群より選択され;ならびに
各Rは、独立して、−C〜Cアルコキシ、−C〜Cアルキル、−C〜Cハロアルキル、シアノ、ニトロ、アミノ、(C〜Cアルキル)アミノ、ジ(C〜Cアルキル)アミノ、フェニル、ベンジル、オキソ、もしくはハロゲンであるか、
または隣接する原子に結合している任意の2つのRが、これらが各々結合している該原子と一緒になって、5〜8個の環内原子を含む飽和もしくは不飽和の縮合シクロアルキルまたは飽和もしくは不飽和ヘテロシクロ縮合アルキル基を形成しており、ここで、形成されたシクロアルキル基およびヘテロシクロアルキル基は、各々独立してハロゲン、C〜Cアルキルおよびフェニルから選択される1つ以上の基で任意選択的に置換されている、
請求項34に記載の方法。
【請求項36】
該インヒビターが、Axlタンパク質と少なくとも1つのAxlタンパク質リガンドとの相互作用を阻害するものである、請求項29〜35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
該インヒビターが、Axlタンパク質と、増殖停止特異的6(Gas6)タンパク質;プロテインS;ホスファチジルイノシトール(phophatidylinosisol)3−キナーゼ(PI3K)タンパク質のp85αサブユニット、PI3Kタンパク質のp85βサブユニット;ホスホリパーゼC−γ(PLC−γ)タンパク質、増殖因子受容体結合タンパク質2(Grb2);c−Srcタンパク質;Rasタンパク質;Aktタンパク質;ERK/MAPKタンパク質;NF−κBタンパク質;GSK3タンパク質;IL−15受容体αサブユニットタンパク質;またはmTORタンパク質の少なくとも1つとの相互作用を阻害するものである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
該インヒビターが、Gas6タンパク質によるAxlタンパク質の活性化を抑制するものである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
該インヒビターが、Axlタンパク質のGas6主結合部位に結合するものである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
該インヒビターがAxlに対するGas6の結合を抑制するものである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
該インヒビターがタンパク質である、請求項29〜40いずれかに記載の方法。
【請求項42】
該タンパク質がプロテアーゼである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
該タンパク質が、可溶性Axlタンパク質またはその断片、変異型Axlタンパク質またはその断片、Axlタンパク質リガンドまたはその断片である、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
該タンパク質が変異型Axlタンパク質である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
変異型Axlタンパク質が、配列番号:2のアミノ酸567位のリシンに対してアルギニン置換を有する、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
該インヒビターが抗体である、請求項41に記載の方法。
【請求項47】
該インヒビターが、スモール・モジュラー・イムノファーマシューティカル(SMIP)である、請求項41に記載の方法。
【請求項48】
該抗体がヒト抗体またはヒト化抗体である、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
該抗体がAxlタンパク質に特異的に結合するものである、請求項46または請求項48に記載の方法。
【請求項50】
該抗体がAxlタンパク質のGas6主結合部位に結合するものである、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
該抗体がGas6以外のAxlタンパク質リガンドに特異的に結合するものである、請求項46または請求項48に記載の方法。
【請求項52】
哺乳動物がヒトである、請求項1〜51いずれかに記載の方法。
【請求項53】
該インヒビターが全身投与される、請求項1〜52いずれかに記載の方法。
【請求項54】
該インヒビターが、少なくとも2週間の期間にわたって繰り返し投与される、請求項1〜53いずれかに記載の方法。
【請求項55】
該インヒビターが損傷部位に投与される、請求項1〜54いずれかに記載の方法。
【請求項56】
さらに、哺乳動物に、ビスホスホネート、骨形成タンパク質(BMP)、カルシトニン、エストロゲン、選択的エストロゲン受容体インヒビター、副甲状腺ホルモン、ビタミン、RANKLインヒビター、カテプシンKインヒビター、スクレロスチンインヒビター、ラネリック酸ストロンチウムからなる群より選択される少なくとも1種類の薬剤を投与することを含む、請求項1〜55いずれかに記載の方法。
【請求項57】
該薬剤がビスホスホネートである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
該薬剤がBMPである、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
該BMPが、BMP2、BMP4、BMP6、またはそのヘテロ二量体である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
該BMPがBMP2/BMP6ヘテロ二量体である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
哺乳動物にAxlタンパク質活性のアゴニストを投与することを含む、哺乳動物において骨芽細胞の数の増加または骨芽細胞の活性の増大と関連している骨障害を処置または予防する方法。
【請求項62】
哺乳動物にAxl遺伝子発現のアゴニストを投与することを含む、哺乳動物において骨芽細胞の数の増加または骨芽細胞の活性の増大と関連している骨障害を処置または予防する方法。
【請求項63】
該障害が、硬化性骨異形成症、骨格系骨異形成症、骨内性骨増殖症、カムラチ・エンゲルマン病、ファン・ブッヘム病、硬結性骨化症、常染色体優性骨硬化症、常染色体優性大理石骨病I型、ワース病、および進行性骨化性線維形成異常症から選択される、請求項61または請求項62に記載の方法。
【請求項64】
a.細胞を試験化合物と接触させること、および
b.該細胞内のAxl遺伝子発現が該化合物によって変化させられているかどうかを調べること
を含み、ここで、Axl遺伝子発現の変化は、試験化合物が骨成長をモジュレートするものであることを示す、
骨成長をモジュレートする化合物の同定方法。
【請求項65】
該細胞が骨芽細胞または骨芽細胞前駆細胞である、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
試験化合物がAxl遺伝子発現を阻害するものである、請求項64または請求項65に記載の方法。
【請求項67】
試験化合物がAxl遺伝子発現のアゴニストである、請求項64または請求項65に記載の方法。
【請求項68】
a)細胞を試験化合物と接触させること、および
a.該細胞のAxlタンパク質活性が該化合物によって変化させられているかどうかを調べること
を含み、ここで、Axlタンパク質活性の変化は、試験化合物が骨成長をモジュレートするものであることを示す、
骨成長をモジュレートする化合物の同定方法。
【請求項69】
該細胞が、骨芽細胞、骨芽細胞前駆細胞、間葉幹細胞、骨髄由来の骨芽前駆細胞、または血中に循環している骨芽前駆細胞である、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
試験化合物がAxlタンパク質活性を低下させるものである、請求項68または請求項69に記載の方法。
【請求項71】
試験化合物がAxlタンパク質活性を増大(increases of)させるものである、請求項68または請求項69に記載の方法。
【請求項72】
Axlタンパク質活性がAxlキナーゼ活性である、請求項68〜71のいずれかに記載の方法。
【請求項73】
a)キナーゼ活性を有するAxlポリペプチドを準備すること;
b)Axlポリペプチドの存在下でリン酸化される基質を準備すること;
c)Axlポリペプチドを該基質と、該基質のリン酸化が可能な条件下で混合すること;
d)c)の混合物を化合物と接触させること;および
e)該化合物によってAxlキナーゼ活性がモジュレートされているか否かを判定すること
を含む、Axlタンパク質キナーゼ活性をモジュレートする化合物の同定方法。
【請求項74】
Axlポリペプチドが、配列番号:13、配列番号:37、配列番号:38、配列番号:39、配列番号:40、配列番号:41、または配列番号:42のアミノ酸配列を有する、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
Axlポリペプチドが、配列番号:13、配列番号:37、配列番号:38、配列番号:39、配列番号:40、配列番号:41、または配列番号:42のアミノ酸配列を含む、請求項73に記載の方法。
【請求項76】
Axlポリペプチドが、配列番号:13、配列番号:37、配列番号:38、配列番号:39、配列番号:40、配列番号:41、配列番号:42、または配列番号:43のアミノ酸配列を有する、請求項73に記載の方法。
【請求項77】
Axlポリペプチドが、配列番号:13、配列番号:37、配列番号:38、配列番号:39、配列番号:40、配列番号:41、配列番号:42、または配列番号:43のアミノ酸配列を含む、請求項73に記載の方法。
【請求項78】
該基質が、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:35、または配列番号:36のアミノ酸配列を含む、請求項73または請求項74に記載の方法。
【請求項79】
該基質が、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:35、または配列番号:36のアミノ酸配列を有する、請求項73または請求項74に記載の方法。
【請求項80】
a.被検体から試験試料を採取すること;
b.該試験試料中のAxl遺伝子の発現レベルを測定すること;
c.該試験試料中のAxl遺伝子の発現レベルを対照試料中のAxl遺伝子の発現レベルと比較すること
を含み、ここで、対照試料中のAxl遺伝子の発現レベルと比べて試験試料中のAxl遺伝子発現レベルが変化させられていることは骨密度の変化を示す、
被検体における骨密度の変化のスクリーニング方法。
【請求項81】
試験試料中のAxl遺伝子の発現レベルが対照試料と比べて増大している、請求項78に記載の方法。
【請求項82】
試験試料中のAxl遺伝子の発現レベルが対照試料と比べて減少している、請求項78に記載の方法。
【請求項83】
a)被検体から試験試料を採取すること;
b)該試験試料中のAxlタンパク質の活性レベルを測定すること;
c)試験試料中のAxlタンパク質の活性レベルを対照試料中のAxlタンパク質の活性レベルと比較すること
を含み、ここで、対照試料中のAxlタンパク質の活性レベルと比べて試験試料中のAxlタンパク質の活性レベルが変化させられていることは骨密度の変化を示す、
被検体における骨密度の変化のスクリーニング方法。
【請求項84】
試験試料中のAxlタンパク質の活性レベルが対照試料と比べて増大している、請求項81に記載の方法。
【請求項85】
試験試料中のAxlタンパク質の活性レベルが対照試料と比べて減少している、請求項81に記載の方法。
【請求項86】
Axlタンパク質の活性レベルが、Axlタンパク質に特異的に結合する捕捉試薬を用いて測定される、請求項81〜83のいずれかに記載の方法。
【請求項87】
Axl捕捉試薬が抗体である、請求項84に記載の方法。
【請求項88】
該抗体が、検出可能な標識を用いて検出される、請求項85に記載の方法。
【請求項89】
検出可能な標識が、放射性同位体、蛍光化合物、生物発光化合物、比色化合物、または化学発光化合物である、請求項86に記載の方法。
【請求項90】
少なくとも1種類のAxlポリペプチドに特異的に結合する捕捉試薬、バッファー、および少なくとも1種類のAxlポリペプチドに対する該捕捉試薬の結合を検出するための試薬を備えるキット。
【請求項91】
該捕捉試薬が、検出可能な標識を含む、請求項88に記載のキット。
【請求項92】
該捕捉試薬が抗体である、請求項88または89に記載のキット。
【請求項93】
被検体由来の試験試料において、Axlをコードするポリヌクレオチド内の少なくとも1つの変異の存在を調べること
を含み、ここで、Axlをコードするポリヌクレオチド内の前記少なくとも1つの変異の存在は、該被検体における骨密度の変化、骨量の変化、骨質の変化、または骨形成の変化を示す、
被検体の骨塩量レベルの変化、骨量の変化、骨質の変化、骨形成の変化、または骨微細構造の完全性の変化のスクリーニング方法。
【請求項94】
Axlをコードするポリヌクレオチド内の少なくとも1つの変異の存在または非存在が、試料を、Axlをコードするポリヌクレオチドと特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブと接触させることにより検出される、請求項91に記載の方法。
【請求項95】
該オリゴヌクレオチドプローブが、Axlポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの少なくとも約15ヌクレオチドを含む、請求項92に記載の方法。
【請求項96】
該ポリヌクレオチドが、DNA、ゲノムDNA、相補DNA(cDNA)、RNA、およびmRNAからなる群より選択される、請求項91〜93のいずれかに記載の方法。
【請求項97】
該ポリヌクレオチドが変異型Axlタンパク質をコードするものである、請求項94に記載の方法。
【請求項98】
変異型Axlタンパク質が、配列番号:2のアミノ酸567位のリシンに対してアルギニン置換を有する、請求項95に記載の方法。
【請求項99】
配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、および配列番号:6から選択されるヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項100】
配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、および配列番号:6から選択されるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【公表番号】特表2010−532360(P2010−532360A)
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−514867(P2010−514867)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【国際出願番号】PCT/US2008/008220
【国際公開番号】WO2009/005813
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(309040701)ワイス・エルエルシー (181)
【Fターム(参考)】