説明

骨髄およびリンパ系細胞癌の診断および処置

骨髄増殖性の細胞障害またはリンパ球増殖性の細胞障害(例えば、癌)を、異常な骨髄細胞増殖またはリンパ系細胞増殖を阻害するのに有効な、クロロトキシンおよび/またはその誘導体、アナログ、またはフラグメントで診断および処置する方法が開示される。本発明は、(a)哺乳動物から生物学的サンプルを単離する工程、(b)クロロトキシンを含む組成物またはクロロトキシンまたはその誘導体を含むポリペプチドとサンプルを接触させる工程、および(c)組成物のサンプルへの結合の存在を検出する工程を包含し、ここでこの結合の存在が、その哺乳動物におけるリンパ球増殖性または骨髄増殖性疾患の存在を示す、哺乳動物においてリンパ球増殖性または骨髄増殖性疾患の存在を検出する方法を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明者)
Vernon AlvarezおよびMatthew Gonda
(関連する出願)
本願は、国際出願PCT/US03/17410(2003年6月2日に出願)およびPCT/US03/17411(2003年6月2日に出願)および米国仮特許出願第60/524,884号(2003年11月26日に出願)に関連し、これらはその全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、骨髄増殖性疾患およびリンパ球増殖性疾患の、クロロトキシンまたはその誘導体による処置に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
血液細胞は一般的に、リンパ系(例えばリンパ球等)または骨髄性(例えば顆粒球、単球、赤血球および血小板)のいずれかであると特定される。よって、造血系の悪性腫瘍は、リンパ球増殖性または骨髄増殖性疾患に組織化される。これらの疾患はそれぞれ、骨髄における未成熟の前駆細胞(芽細胞)の割合に依存して、急性または慢性であると運用上分類される。骨髄系統において、骨髄における30%以上の芽細胞の存在が、急性骨髄性白血病を定義する。急性骨髄性白血病でない骨髄性疾患が、主に赤血球が関与する三系統の形態学的形成異常(trilineage morphologic displasia)の存在または欠如に基づいて、それぞれ骨髄異形成症候群または慢性骨髄増殖性疾患のいずれかであると呼ばれる。慢性骨髄増殖性疾患としては、慢性骨髄性白血病(CML)、特発性血小板血症、真性赤血球増加症および原因不明骨髄様化生が挙げられる。時折、慢性骨髄疾患は、骨髄異形成症候群または慢性骨髄増殖性疾患のいずれかとして分類されない。例としては、非定型CMLおよび慢性好中球白血病が挙げられる。
【0004】
集団的に、慢性骨髄増殖性疾患は相互関係があり、ここでクローン過程が骨髄前駆細胞レベルで始まり、そして2次的に骨髄線維症を引き起こし得る、または白血病性形質転換を受け得る。慢性骨髄増殖性疾患の中で、CMLのみが、第9染色体および第22染色体間の交換的遺伝子転座の存在によって、生物学的に特徴付けられた。同様の一貫した遺伝子異常は、他の慢性骨髄増殖性疾患とは関係せず、そして臨床的診断は、ある臨床的および実験的な特徴の存在または欠如に基づく。増加した赤血球量が、真性赤血球増加症の診断のために必要とされる。同様に、CMLまたは真性赤血球増加症と関連しない実質的な骨髄の線維症の存在は、原因不明骨髄様化生の顕著な特徴である。特発性血小板血症の診断は、例外の一つであり、原因不明骨髄様化生、真性赤血球増加症、骨髄異形成症候群またはCMLとして分類されないクローン性血小板血症を示す。
【0005】
リンパ球増殖性疾患は、20以上の別個の存在を含む非ホジキンリンパ腫(表1を参照のこと)およびリンパ節に局在するホジキンリンパ腫の、2つの主なカテゴリーに分けられる。現在、ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫を区別するために、免疫組織化学が使用される。ホジキン病のほとんどの場合において、リード−スターンバーグ細胞として知られる特定の細胞が、生検において見出される。この細胞は、通常他のリンパ腫においては見出されないので、これらは非ホジキンリンパ腫と命名される。非ホジキンリンパ腫(NHL)は、多様な病因および自然の病歴を有するリンパ系悪性腫瘍の集まりである。この多様性は、異なる組織学的サブタイプおよび長年にわたって現れたNHLの分類によって説明される。リンパ腫の生物学に対する我々の理解の急速な進歩によって、新しい分類系統がこの疾患群をより良く説明する。
【0006】
(表1.非ホジキンリンパ腫の型)
(B細胞新生物)
前駆体B細胞リンパ芽球性白血病/リンパ腫
成熟B細胞新生物
B細胞慢性リンパ球性白血病/小リンパ球性リンパ腫
B細胞前リンパ球性白血病
リンパ形質細胞性リンパ腫
脾辺縁帯B細胞リンパ腫
毛様細胞性白血病
結節外辺縁帯B細胞リンパ腫
マントル細胞リンパ腫
濾胞性リンパ腫
結節性辺縁帯リンパ腫
びまん性大B細胞リンパ腫
バーキットリンパ腫
プラズマ細胞腫
プラズマ細胞骨髄腫
(T細胞新生物)
T細胞前リンパ球性白血病
T細胞大顆粒性リンパ球性白血病
NK細胞白血病
結節外NK/T細胞リンパ腫
菌状息肉腫
原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫
皮下脂肪組織炎様T細胞リンパ腫
腸症型腸T細胞リンパ腫
肝脾γ−δT細胞リンパ腫
血管免疫芽球性T細胞リンパ腫
末梢T細胞リンパ腫
未分化大細胞型リンパ腫
成人T細胞リンパ腫。
【0007】
過去20年間にわたって、非ホジキンリンパ腫の処置において有意な進歩があったが、BおよびT細胞リンパ腫を有する患者の処置レジメンは、まだ開発されていない。それに加えて、難治性の中程度または高いグレードのリンパ腫のための様々なレジメンによって処置した患者における永続性の改善は、比較的まれであった(非特許文献1)。放射線治療と組み合わせた致死前(supralethal)化学療法に続く骨髄移植を利用する最近の試みは、約20%の長期無疾患生存率をもたらした(非特許文献2)。しかし、この様式において治療された患者のほとんどは、リンパ腫または処置に関連する合併症のために死亡する。従って、非ホジキンリンパ腫の治療のために新しい戦略が必要である。これらの戦略は、その目標として、毒性の最小化と合わせた治療効果の最大化を有するべきである。
【0008】
1つのアプローチは、薬物または放射性同位元素を腫瘍細胞へ標的化するための手段として、腫瘍関連抗原を認識するモノクローナル抗体を使用することに関する。このアプローチは、非ホジキンリンパ腫の腫瘍細胞は様々な腫瘍限定抗原をその細胞表面に示し、それらは標的化のために利用可能であるので、これらのリンパ腫の場合に特に魅力的である(非特許文献3)。現在までにモノクローナル抗体によって治療された全ての悪性腫瘍のうち、リンパ腫が最も劇的な結果を生じた。しかし、腫瘍応答のほとんどは不完全であり、そして比較的短期間であった。これらの限られた結果のために、リンパ腫の検出および処置のために有用である、抗体以外の標的化薬剤の必要性が存在する。
【0009】
クロロトキシン(Chlorotoxin)は、leiurus quinquestriatusサソリ毒から天然に得られる36アミノ酸のタンパク質である(非特許文献4)。神経外胚葉性の腫瘍(例えば神経膠腫および髄膜腫)を診断および処置するための組成物(特許文献1および特許文献2を参照のこと、これらのそれぞれは、その全体が参考として本明細書中に援用される)および方法(特許文献3および特許文献4を参照のこと、これらのそれぞれは、その全体が参考として本明細書中に援用される)が、クロロトキシンの神経外胚葉性起源の腫瘍細胞に結合する能力に基づいて開発された(非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7)。神経外胚葉性腫瘍の診断は、腫瘍細胞に結合した標識クロロトキシンの同定によって達成され、一方神経外胚葉性腫瘍の処置は、クロロトキシンに結合した細胞傷害性因子で腫瘍を標的化することによって達成される。本発明は、クロロトキシンおよびその誘導体は、骨髄およびリンパ系癌細胞に結合するという知見に基づいて、骨髄増殖性およびリンパ球増殖性疾患を処置する方法を提供することによって、この治療領域を拡大する。
【特許文献1】米国特許第5,905,027号明細書
【特許文献2】米国特許第6,429,187号明細書
【特許文献3】米国特許第6,028,174号明細書
【特許文献4】米国特許第6,319,891号明細書
【非特許文献1】DeVitaら(編)、Klimo著、「Cancer: Principles and Practice of Oncology(Chemotherapy for aggressive non−Hodgkin’s lymphomas)」(1988年)Lippincott、1−12
【非特許文献2】Applebaumら、J.Clin.Oncol.(1987年)5、1340−1341
【非特許文献3】McMichael、Leukocyte Typing III、(1987年)Oxford University Press、302−363および432−469
【非特許文献4】DeBinら、Am.J.Physiol.(1993年)264:C361−369
【非特許文献5】Soroceanuら、Cancer Res.(1998年)58、4871−4879
【非特許文献6】Ullrichら、Neuroreport(1996年)7、1020−1024
【非特許文献7】Ullrichら、Am.J.Physiol.(1996年)270、C1511−1521
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
本発明は、(a)哺乳動物から生物学的サンプルを単離する工程、(b)クロロトキシンを含む組成物またはクロロトキシンまたはその誘導体を含むポリペプチドとサンプルを接触させる工程、および(c)組成物のサンプルへの結合の存在を検出する工程を包含し、ここでこの結合の存在が、その哺乳動物におけるリンパ球増殖性または骨髄増殖性疾患の存在を示す、哺乳動物においてリンパ球増殖性または骨髄増殖性疾患の存在を検出する方法を包含する。
【0011】
本発明はまた、(a)クロロトキシンまたはその誘導体を含む組成物を投与する工程、および(b)哺乳動物における組成物の結合の存在を検出する工程を包含し、ここでこの結合の存在が、その哺乳動物におけるリンパ球増殖性または骨髄増殖性疾患の存在を示す、哺乳動物においてリンパ球増殖性または骨髄増殖性疾患の存在を検出する方法を包含する。
【0012】
本発明は、クロロトキシンまたはその誘導体を含む組成物を投与する工程を包含する、哺乳動物においてリンパ球増殖性または骨髄増殖性疾患を処置する方法を包含する。いくつかの実施形態において、その哺乳動物はヒトである。
【0013】
本発明の方法は、非ホジキンリンパ腫のようなリンパ球増殖性疾患の処置を含み、そしてこの非ホジキンリンパ腫がB細胞新生物であり、そのB細胞新生物が前駆体B細胞リンパ芽球性白血病/リンパ腫または成熟B細胞新生物である場合を含む。本発明の方法において含まれる成熟B細胞新生物の例としては、B細胞慢性リンパ球性白血病/小リンパ球性リンパ腫、B細胞前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫、脾辺縁帯B細胞リンパ腫、毛様細胞性白血病、結節外辺縁帯B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、結節性辺縁帯リンパ腫、びまん性大細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、プラズマ細胞腫、およびプラズマ細胞骨髄腫が挙げられるが、これに限定されない。本発明の上記の方法において使用され得るクロロトキシンおよびその誘導体の例としては、配列番号1〜34からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドが挙げられるが、これに限定されない。
【0014】
本発明の方法はまた、非ホジキンリンパ腫がT細胞新生物である場合を含む。T細胞新生物の例としては、T細胞前リンパ球性白血病、T細胞大顆粒リンパ球性白血病、NK細胞白血病、結節外NK/T細胞リンパ腫、菌状息肉腫、原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫、皮下脂肪組織炎様T細胞リンパ腫、腸症型腸T細胞リンパ腫、肝脾γ−δT細胞リンパ腫、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、未分化大細胞型リンパ腫、および成人T細胞リンパ腫が挙げられるが、これに限定されない。
【0015】
本発明の方法はまた、真性赤血球増加症(PV)、特発性血小板血症(ET)、特発性骨髄線維症(IMF)とも呼ばれる原因不明骨髄様化生(AMM)、および慢性骨髄性白血病(CML)からなる群から選択される、あらゆる骨髄増殖性疾患の処置を含む。本発明の上記の方法において使用され得るクロロトキシンおよびその誘導体の例としては、アミノ酸配列TTXMXK(配列番号9)を含むポリペプチドが挙げられるが、これに限定されず、ここで(a)Xはアスパラギン酸およびグルタミン酸からなる群から選択される酸性アミノ酸である;(b)Xは、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、プロリン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシンおよびバリンからなる群から選択されるアミノ酸である;(c)Xは、アスパラギンおよびグルタミンからなる群から選択されるアミドアミノ酸である;(d)Xは、セリン、スレオニン、およびアラニンからなる群から選択されるアミノ酸である;ならびに(e)Xは、ヒスチジン、リシン、およびアルギニンからなる群から選択される塩基性アミノ酸である。クロロトキシン誘導体を含むアミノ酸配列の例としては、配列番号2〜34で記載されたアミノ酸配列のいずれかが挙げられるが、これに限定されない。
【0016】
本発明は、クロロトキシンまたはその誘導体が第二のポリペプチドに結合している方法を含む。第二のポリペプチドは、骨髄またはリンパ球癌細胞によってのみ発現されるエピトープに特異的に結合し、そして抗体またはそのフラグメントであり得る結合ドメイン、および/または融合タンパク質の分解を防ぐ安定化ドメインを含み得る。安定化ドメインの例としては、ポリヒスチジンおよびヒト血清アルブミンが挙げられるが、これらに限定されない。本発明は、クロロトキシンまたはその誘導体が、細胞傷害性因子に結合している方法を含む。細胞傷害性因子の例としては、ゲロニン(gelonin)、リシン、サポニン、シュードモナス体外毒素、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ジフテリア毒素、および補体タンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の方法において、クロロトキシンまたはその誘導体は標識され、そしてその標識は131Iである。本発明の方法のいずれかにおいて投与されるクロロトキシンの量は、約0.01μg/kg体重〜約2.0mg/kg体重の間を含み得る。
【0017】
本発明は、クロロトキシンまたはその誘導体を、リンパ球増殖性または骨髄増殖性疾患を治療するために、1つまたはそれ以上の化学療法剤と組み合わせる方法を含む。化学療法剤の例は、アルキル化剤、プリンアンタゴニスト、ピリミジンアンタゴニスト、植物アルカロイド、インターカレートする抗生物質、アロマターゼインヒビター、代謝拮抗物質、有糸分裂インヒビター、増殖因子インヒビター、細胞周期インヒビター、酵素、トポイソメラーゼインヒビター、生物学的反応変更因子(modifier)、抗ホルモンおよび抗アンドロゲンが挙げられるが、これらに限定されない。化学療法剤の特定の例としては、BCNU、シスプラチン、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、パクリタキセル、テモゾミド、トポテカン、フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、プロカルバジン、ダカルバジン、アルトレタミン、シスプラチン、メトトレキサート、メルカプトプリン、チオグアニン、フルダラビンホスフェート、クラドリビン、ペントスタチン、フルオロウラシル、シタラビン、アザシチジン、ビンブラスチン、ビンクリスリン、エトポシド、テニポシド、イリノテカン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、イダルビシン、プリカマイシン、ミトマイシン、ブレオマイシン、タモキシフェン、フルタミド、ロイプロリド、ゴセレリン、アミノグルテチミド、アナストロゾール、アムサクリン、アスパラギナーゼ、ミトキサントロン、ミトーテンおよびミホスチンが挙げられるが、これらに限定されない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(発明の詳細な説明)
クロロトキシンおよびクロロトキシン結合ドメインを含むポリペプチドは、骨髄およびリンパ系癌細胞に特異的および選択的に結合することが決定されてきた。従って本発明は、骨髄またはリンパ系癌細胞を、有効な量のクロロトキシンまたはクロロトキシン結合ドメインを含むポリペプチドに接触させることによる、骨髄増殖性およびリンパ球増殖性疾患の診断および処置を含む。
【0019】
骨髄増殖性またはリンパ球増殖性疾患に関連する細胞増殖の阻害または停止は、患者における天然の防御を増強するよう作用し得る。例えば、癌細胞の増殖の停止または阻害は、免疫系が癌に対してより有効な応答を開始する能力を増強する。
【0020】
(骨髄増殖性またはリンパ球増殖性疾患の処置方法)
本発明は、異常な細胞増殖を阻害するのに有効な、ある量のクロロトキシンおよび/またはその誘導体および薬学的に受容可能なキャリアを含む、実質的にそれからなる、またはそれからなる薬学的組成物を投与することを含む、骨髄増殖性またはリンパ球増殖性疾患を処置する方法を含む。本発明はまた、ヒトを含む哺乳動物において、当該哺乳動物に、癌細胞のような異常に増殖する骨髄またはリンパ系細胞に特異的および選択的に結合するのに有効な、ある量のクロロトキシンまたはその誘導体、またはある量のクロロトキシンまたはその誘導体を含む組成物を投与することを含む、骨髄増殖性またはリンパ球増殖性疾患を処置する方法も含み、ここでクロロトキシンまたはその誘導体は、第二の薬剤を骨髄またはリンパ系細胞に伝達するために使用される。この関係において、第二の薬剤は、クロロトキシン誘導体に結合、融合、または結合体化され得る。
【0021】
本明細書中で使用される場合、「骨髄増殖性疾患」という用語は、他に示されなければ、正常な調節メカニズムから独立した骨髄細胞増殖を指す。これは、新生物疾患の良性および悪性状態の両方における、骨髄細胞の異常な成長(growth)および/または増殖(proliferation)を含む。異常な細胞増殖の阻害は、細胞死、アポトーシス、有糸分裂の停止、細胞分裂、転写、翻訳、形質導入の阻害等を含む(これに限定されない)、様々なメカニズムによって起こり得る。骨髄増殖性疾患の例としては、真性赤血球増加症(PV)、特発性血小板血症(ET)、特発性骨髄線維症(IMF)とも呼ばれる原因不明骨髄様化生(AMM)、および慢性骨髄性白血病(CML)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
本明細書中で使用される場合、「リンパ球増殖性疾患」という用語は、他に示されなければ、正常な調節メカニズムから独立したリンパ系細胞の増殖を指す。これは、新生物疾患の良性および悪性状態の両方における、リンパ系細胞の成長および/または増殖を指す。異常な細胞増殖の阻害は、細胞死、アポトーシス、有糸分裂の停止、細胞分裂、転写、翻訳、形質導入の阻害等を含む(これに限定されない)、様々なメカニズムによって起こり得る。
【0023】
この処置方法の1つの実施形態において、リンパ球増殖性疾患は、非ホジキンリンパ腫である。別の実施形態において、非ホジキンリンパ腫は、前駆体B細胞リンパ芽球性白血病/リンパ腫または成熟B細胞新生物から選択されるB細胞新生物である。成熟B細胞新生物としては、B細胞慢性リンパ球性白血病/小リンパ球性リンパ腫、B細胞前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫、脾辺縁帯B細胞リンパ腫、毛様細胞性白血病、結節外辺縁帯B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、結節性辺縁帯リンパ腫、びまん性大B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、プラズマ細胞腫、およびプラズマ細胞骨髄腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
本発明の方法はまた、T細胞新生物である非ホジキンリンパ腫の処置も含む。代表的なT細胞新生物としては、T細胞前リンパ球性白血病、T細胞大顆粒リンパ球性白血病、NK細胞白血病、結節外NK/T細胞リンパ腫、菌状息肉腫、原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫、皮下脂肪組織炎様T細胞リンパ腫、腸症型腸T細胞リンパ腫、肝脾γ−δT細胞リンパ腫、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、未分化大細胞型リンパ腫、および成人T細胞リンパ腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
本明細書中で使用される場合、クロロトキシンの「有効な量」は、癌細胞のような、異常な増殖を示す骨髄またはリンパ系細胞に対して効果を発揮する量である。本明細書中で使用される場合、「クロロトキシン」を含む組成物、それによる処置、またはその投与は、本明細書中で開示されたクロロトキシンアナログ、誘導体、フラグメント、改変体、関連ペプチドおよび模倣物による処置を同じ程度まで含む。
【0026】
本発明の方法の1つの実施形態において、骨髄増殖性またはリンパ球増殖性疾患は癌である。本明細書中で使用される場合、「癌」という用語は、他に示されなければ、制御不能な、異常な細胞成長および/または増殖によって特徴付けられる疾患を指す。その組成物が有用な癌の型としては、骨髄および/またはリンパ系幹細胞の形質転換と関連する癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
本明細書中で使用される場合、「クロロトキシン」という用語は、他に記載されなければ、Leiurus quinquestriatusサソリ毒から天然に得られる全長36アミノ酸のポリペプチドを指し(DeBinら(1993)Am.J.Physiol.264、C361−369)、それは配列番号1に記載される天然クロロトキシンのアミノ酸配列を含む。「クロロトキシン」という用語は、本明細書中でその全体が参考として援用される米国特許第6,319,891号において開示されたもののような、合成的にまたは組み換え的に産生された、配列番号1を含むポリペプチドを含む。
【0028】
本明細書中で使用される場合、「クロロトキシンサブユニット」または「クロロトキシンのサブユニット」という用語は、クロロトキシンの36より少ない連続的なアミノ酸を含み、そして癌細胞に特異的に結合し得るペプチドを指す。
【0029】
本明細書中で使用される場合、「クロロトキシン誘導体」という用語は、クロロトキシンの誘導体、アナログ、改変体、ポリペプチドフラグメントおよび模倣物を指し、そして正常細胞と比較して癌細胞に特異的に結合するような、クロロトキシンと同じ活性を保持する関連ペプチドも、本発明の方法を実施するために使用され得る。誘導体の例としては、クロロトキシンのペプチド改変体、クロロトキシンのペプチドフラグメント、例えば配列番号1〜34の連続的な10マーのペプチドを含むか、またはそれからなる、あるいはコア結合配列である配列番号1の約残基10〜18または21〜30を含むフラグメント、およびペプチド模倣物が挙げられるが、これらに限定されない。クロロトキシンのサブユニットおよび誘導体が、本明細書中および本明細書中でその全体が参考として援用される、公開されたPCT国際出願WO03/101475において開示される。クロロトキシン誘導体の例としては、配列番号2〜34で述べたアミノ酸配列のいずれかを含むものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
クロロトキシンおよびそのペプチド誘導体は、当該分野で公知であるように、標準的な固相(または液相)ペプチド合成法を用いて調製され得る。それに加えて、これらのペプチドをコードする核酸は、市販で入手可能なオリゴヌクレオチド合成装置を用いて合成され得、そして標準的な組み換え産生系を用いて組み替え的に産生され得る。もし遺伝子にコードされないアミノ酸が含まれるなら、固相ペプチド合成を用いた産生が必要である。本明細書中で使用される「クロロトキシン誘導体」という用語は、「改変体」と同意語であり、10まで(例えば1〜7または1〜5)のアミノ酸の1つまたはそれ以上の欠失;クロロトキシンのアミノ酸配列内部の、全部で10まで(例えば1〜5)のアミノ酸の挿入;またはクロロトキシン配列のいずれかの末端における全部で100アミノ酸までの挿入;または全部で15まで(例えば1〜5)のアミノ酸の保存的置換による、クロロトキシン配列の改変も含む。
【0031】
クロロトキシンの誘導体は、誘導体配列およびクロロトキシン配列を最大限に整列させた場合に、少なくとも1つのアミノ酸残基の保存的または非保存的置換を含むポリペプチドを含む。その置換は、クロロトキシンの少なくとも1つの性質または機能を増強する、クロロトキシンの少なくとも1つの性質または機能を阻害する、またはクロロトキシンの少なくとも1つの性質または機能に対して中立であるものであり得る。本明細書中で使用される場合、クロロトキシンの「性質または機能」は、異常な細胞増殖を停止させる、対象の麻痺を引き起こす、非癌細胞(すなわち正常)と比較した場合に良性または悪性癌細胞に特異的に結合する、および良性または悪性癌細胞を破壊する能力からなる群から選択される少なくとも1つを含むがこれに限定されない。本開示に関して、癌細胞はインビボ、エキソビボ、インビトロ、患者由来の一次単離物、培養細胞または細胞株であり得る。
【0032】
クロロトキシンの誘導体はさらに、配列番号1のアミノ酸残基23〜29に対応する、アミノ酸配列KGRGKSY(配列番号8)を含むポリペプチドを含む。クロロトキシンの誘導体はまた、配列番号1のアミノ酸残基7〜15に対応する、アミノ酸配列TTXMXK(配列番号9)を含むポリペプチドを含み、ここでXはアスパラギン酸およびグルタミン酸からなる群から選択される酸性アミノ酸である;Xは、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、プロリン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシンおよびバリンからなる群から選択されるアミノ酸である;Xは、アスパラギンおよびグルタミンからなる群から選択されるアミドアミノ酸である;Xは任意のアミノ酸であるが、好ましい実施形態において、セリン、スレオニン、およびアラニンからなる群から選択される;およびXは、ヒスチジン、リシン、およびアルギニンからなる群から選択される塩基性アミノ酸である。1つの実施形態において、Xはアスパラギン酸、Xはヒスチジンまたはプロリン、Xはグルタミン、Xはアラニン、そしてXはアルギニンまたはリシンである。
【0033】
クロロトキシンのペプチド改変体は、配列番号1の欠失または保存的アミノ酸置換改変体を含むがこれに限定されない。本明細書中で使用される場合、保存的改変体は、ペプチドの生物学的機能に有害な実質的影響を与えないアミノ酸配列の変化を指す。変化した配列が実質的にそのペプチドに関連する生物学的機能(例えば癌細胞に対する結合)を阻害または混乱させる場合、置換、挿入または欠失は、そのペプチドに有害な影響を与えると言われる。例えば、ペプチドの全体の電荷、構造または疎水性/親水性特性を、生物学的活性に有害な影響を与えずに変化させ得る。よって、ペプチドの生物学的活性に有害な影響を与えずに、例えばペプチドをより疎水性または親水性にするために、アミノ酸配列が変化され得る。
【0034】
本発明の方法は、他のサソリ種の対応するポリペプチド毒素を含み、それも概して本明細書中でクロロトキシン誘導体と呼ばれ、癌を含む、本明細書中で記載されたような異常な細胞増殖に関連する疾患の診断および処置に関して、クロロトキシンと同様のまたは関連する活性を示す。特定する目的のために、「クロロトキシンと同様のまたは関連する活性」は、異常な増殖を示す良性細胞および悪性癌細胞を含む、異常な細胞増殖を示す細胞に対する結合と定義される。そのようなポリペプチド毒素の例としては、クロロトキシンまたはその結合ドメインのいずれか1つとの整列から産生されたコンセンサス配列である、配列番号8または配列番号10に記載の1つまたはそれ以上のクロロトキシンの結合ドメインを含む毒素が挙げられるが、これに限定されない。
【0035】
本明細書中で使用される場合、「関連するサソリ毒素」という用語は、表1において開示されるもののような、クロロトキシンとアミノ酸および/またはヌクレオチド配列同一性を示す、あらゆる毒素または関連ペプチドを指す。関連するサソリ毒素の例としては、Mesobuthus martensii由来のCT神経毒(GenBankアクセッション番号AAD47373)、Buthus martensii karsch由来の神経毒BmK41−2(GenBankアクセッション番号A59356)、Buthus martensii由来の神経毒Bm12−b(GenBankアクセッション番号AAK16444)、Leiurus quinquestriatus hebraeu由来のProbable Toxin LQH8/6(GenBankアクセッション番号P55966)、Mesobuthus tamulus sindicus由来のSmall toxin(GenBankアクセッション番号P15229)が挙げられるが、これに限定されず、これらの配列は全て本明細書中でその全体が参考として援用される。
【0036】
ヌクレオチドまたはアミノ酸配列レベルにおける相同性または配列同一性は、配列類似性検索のために作られた、プログラムblastp、blastn、blastx、tblastnおよびtblastx(Altschulら(1997)Nucleic Acids Res.25、3389−3402およびKarlinら(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87、2264−2268、両方が、完全に参考として援用される)によって利用されるアルゴリズムを用いて、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool)分析によって決定される。BLASTプログラムによって使用されるアプローチは、最初に問い合わせ配列およびデータベース配列の間で、ギャップあり(非連続的)およびギャップなし(連続的)で、類似の部分を考えること、次いで同定された全てのマッチの統計学的有意性を評価すること、そして最終的に前もって選択した有意性の閾値を満たすマッチのみをまとめることである。配列データベースの類似性検索における基本的な問題の議論に関して、Altschulら(1994)Nature Genetics 6、119−129を参照のこと(これは、完全に参考として援用される)。ヒストグラム、記述(description)、アラインメント、期待値(すなわち、データベース配列に対するマッチを報告する統計学的有意性の閾値)、カットオフ、マトリックスおよびフィルター(低複雑配列)に関する検索パラメーターは、デフォルト設定である。blastp、blastx、tblastn、およびtblastxによって使用されるデフォルトスコアマトリックスは、BLOSUM62マトリックスであり(Henikoffら(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89、10915−10919、完全に参考として援用される)、長さが85を超えるヌクレオチドまたはアミノ酸の問い合わせ配列に推奨される。
【0037】
blastnに関して、スコアマトリックスはN(すなわち、ミスマッチ残基のペナルティースコア)に対するM(すなわち、マッチする残基の対の報酬スコア)の比によって設定され、ここでMおよびNのデフォルト値は、それぞれ+5および−4である。4つのblastnパラメーターを以下のように調整した:Q=10(ギャップ作成ペナルティー);R=10(ギャップ延長ペナルティー);wink=1(問い合わせ配列にそってwink番目ごとにワードヒット(word hit)を産生する);およびgapw=16(ギャップありのアラインメントが産生されるウィンドウの幅を設定する)。同等のBlastpパラメーターの設定は、Q=9;R=2;wink=1;およびgapw=32であった。GCGパッケージバージョン10.0において入手可能な、配列間のBestfit比較は、DNAパラメーターGAP=50(ギャップ作成ペナルティー)およびLEN=3(ギャップ延長ペナルティー)を使用し、そしてタンパク質比較における同等の設定は、GAP=8およびLEN=2である。
【0038】
本発明の本方法は、配列番号1に記載されるクロロトキシン配列全体と、少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%の配列同一性のアミノ酸配列を有する、対立遺伝子改変体、保存的置換改変体、およびサソリ毒素ペプチドファミリーのメンバーによる処置を含む。そのような配列に関する同一性または相同性は、本明細書中において、配列を整列させた後、公知のペプチドと同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして規定される。
【0039】
融合タンパク質、またはペプチド配列に対するN末端、C末端、または内部の延長、欠失、または挿入は、相同性に影響を与えると解釈されない。そのような延長の例は、以下の配列を含むがこれに限定されない:
【0040】
【数1】

クロロトキシンペプチド改変体は、少なくとも約7、8、9、10、15、20、25、30または35の連続的なアミノ酸残基を有する、配列番号1に記載のアミノ酸配列のフラグメントを有するペプチドを含む。ペプチド改変体はさらに、クロロトキシンの活性に関連するフラグメントを含む。そのようなフラグメントもポリペプチドと呼ばれ、公知のペプチドドメインに対応するアミノ酸配列の領域、および明らかな親水性の領域として同定された、クロロトキシンペプチドの機能的領域を含み得る。改変体はまた、あらゆる順序で、介在するアミノ酸が除去されるか、またはリンカー配列で置換された、お互いに連結した少なくとも2つのコア配列を有するペプチドも含み得る。その領域は、MacVector(Oxford Molecular)のような、通常入手可能なタンパク質配列分析ソフトウェアを用いることによって、すべて容易に同定可能である。
【0041】
企図されるペプチド改変体はさらに、例えば相同的組み換え、部位特異的またはPCR突然変異誘発による、前もって決定された変異を含むもの、およびペプチドファミリーの対立遺伝子または他の天然に存在する改変体;およびペプチドが置換、化学的、酵素的または他の適切な手段によって、天然に存在するアミノ酸以外の部分(例えば酵素または放射性同位元素のような検出可能な部分)によって共有結合的に改変された誘導体を含む。クロロトキシン改変体ペプチドの例は、以下の配列を含むがこれに限定されない:
【0042】
【数2】

本発明の方法の実施において、クロロトキシンおよび/またはその誘導体を、単独でまたは他の不活性な成分と組み合わせて使用し得る。上記で議論したように、本発明は、薬物または細胞傷害性因子がクロロトキシン誘導体に連結した組成物および方法を含む。従って本発明の方法は、癌を含む、異常な細胞増殖に関連する疾患の処置のために、細胞傷害性因子と連結したクロロトキシン誘導体を投与することを含む。細胞傷害性因子の例としては、ゲロニン、リシン、サポニン、シュードモナス体外毒素、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ジフテリア毒素、補体タンパク質、または細胞との接触時にその細胞を破壊し得る、当該分野で公知のあらゆる他の薬剤を含むがこれに限定されない。
【0043】
本発明の組成物および方法は、インビボで、通常ヒト、ヒツジ、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、ラットおよびマウスのような哺乳動物において、またはインビトロで利用され得る。本発明は、ヒト患者の治療において特に有用である。
【0044】
(組み換えタンパク質およびポリペプチド)
本発明の方法はさらに、骨髄増殖性またはリンパ球増殖性疾患の処置のために、組み換えクロロトキシンタンパク質、クロロトキシンまたはその結合ドメインを含む融合タンパク質を使用することを提供する。クロロトキシンおよびクロロトキシン誘導体ポリペプチドをコードする核酸分子を、これらのポリペプチドを組み換え的に産生するために使用し得る。そのような核酸分子は、単離された形態であり得るか、または発現調節エレメントまたはベクター配列作動可能に連結され得る。本発明はさらに、形質転換、トランスフェクション、エレクトロポレーション、または核酸を細胞内に導入する、当該分野で認識されたあらゆる他の手段によって、ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0045】
本明細書中で使用される場合、「レプリコン」は、インビボでDNA複製の自律性ユニットとして機能する(すなわち、それ自身のコントロール下で複製可能)、あらゆる遺伝的エレメント(例えばプラスミド、染色体、ウイルス)である。
【0046】
本明細書中で使用される場合、「ベクター」は、結合した部分の複製を引き起こすために、別の核酸(例えばDNA)部分を結合し得る、プラスミド、ファージ、またはコスミドのようなレプリコンである。本発明のベクターは、ウイルスベクターを含む。
【0047】
本明細書中で使用される場合、「核酸」は、その1本鎖形態、または2本鎖らせんのいずれかにおける、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチド(アデニン、グアニン、チミン、および/またはシトシン)のポリマー形態を指す。この用語は、分子の一次および二次構造のみを指し、そして任意の特定の三次形態に制限されない。従って、この用語は、1本鎖RNAまたはDNA、直線状DNA分子において見出される2本鎖DNA(例えば制限フラグメント)、ウイルス、プラスミド、および染色体を含む。特定の2本鎖DNA分子の構造を議論することにおいて、本明細書中で配列は通常の慣例に従って、DNAの非転写鎖(例えばmRNAと相同性の配列を有する鎖)にそった5’から3’の方向の配列のみを与えて記載され得る。
【0048】
核酸「コード配列」は、適切な調節配列のコントロール下に置いた場合に、インビボで転写およびポリペプチドに翻訳される2本鎖DNA配列である。コード配列の境界は、5’(アミノ)末端の開始コドンおよび3’(カルボキシル)末端の翻訳停止コドンによって決定される。ポリアデニル化シグナルおよび転写終了配列は、通常コード配列の3’に位置する。
【0049】
転写および翻訳調節配列は、宿主細胞においてコード配列の発現を提供する、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、ターミネーター等のような、DNA調節配列である。
【0050】
本明細書中で使用される場合、「プロモーター配列」は、細胞においてRNAポリメラーゼに結合し、そして下流の(3’方向)コード配列の転写を開始し得るDNA調節領域である。本発明を規定する目的のために、プロモーター配列はその3’末端において転写開始部位によって区切られ(端を含めて)、そして上流(5’方向)に延長して、バックグラウンドより上の検出可能なレベルで転写開始するために必要な最低限の数の塩基またはエレメントを含む。プロモーター配列の中に、転写開始部位、およびRNAポリメラーゼの結合の原因であるタンパク質結合ドメインが見出される。真核生物プロモーターは、いつもではないが多くの場合「TATA」ボックスおよび「CAT」ボックスを含む。
【0051】
コード配列は、細胞において、RNAポリメラーゼがコード配列をmRNAに転写し、それが次いでコード配列によってコードされるタンパク質に翻訳される場合、転写および翻訳調節配列の「コントロール下」にある。
【0052】
「シグナル配列」は、コード配列の前に含まれ得る、またはサソリ毒素由来のシグナルペプチド配列が使用され得る。この配列は、ポリペプチドのN末端にシグナルペプチドをコードし、それは宿主細胞とコミュニケートしてポリペプチドを細胞表面へ向かわせ、またはポリペプチドを培地中へ分泌させる。このシグナルペプチドは、タンパク質が細胞を離れる前に宿主細胞によって切断される。シグナル配列は、原核生物または真核生物に天然の様々なタンパク質と関連して見出され得る。例えば、α因子、天然酵母タンパク質は、酵母から分泌され、そしてそのシグナル配列を、培地中に分泌されるために異種由来のタンパク質に結合し得る(米国特許第4,546,082号を参照のこと)。さらに、α因子およびそのアナログは、SaccharomycesおよびKluyveromycesのような、様々な酵母から異種由来タンパク質を分泌することが見出された(EP88312306.9;EP0324274公報、およびEP0301669)。哺乳動物細胞における使用の例は、第VIIIc因子軽鎖を発現するために使用されるtPAシグナルである。
【0053】
外来性または異種由来の核酸が細胞内に導入された場合、細胞はそのような核酸によって「形質転換」される。形質転換核酸は、細胞のゲノムを作る染色体DNAに組み込まれ得る(共有結合する)か、または組み込まれないかもしれない。例えば、原核生物において、形質転換核酸は、プラスミドまたはウイルスベクターのようなエピソームエレメントに維持され得る。真核細胞に関して、安定に形質転換された細胞は、形質転換DNAが染色体に組み込まれ、染色体の複製によって娘細胞に受け継がれるものである。この安定性は、形質転換核酸を含む娘細胞の集団からなる細胞株またはクローンを確立する、真核細胞の能力によって示される。
【0054】
本明細書中で使用される場合、「細胞株」は、インビトロにおいて多くの世代の間安定に増殖し得る、一次細胞のクローンである。本明細書中で使用される場合、核酸配列は、少なくとも約85%(好ましくは少なくとも約90%および最も好ましくは少なくとも約95%)のヌクレオチドが、規定された長さのヌクレオチド配列で一致する場合、「実質的な同一性」を示す。実質的に同一である配列を、例えば特定の系のために規定されたようなストリンジェントな条件下で、サザンハイブリダイゼーション実験において同定し得る。適切なハイブリダイゼーション条件を規定することは、当該分野の技術の範囲内である。
【0055】
核酸構築物の「異種由来」領域は、より大きな核酸分子中の同定可能な核酸の部分であり、それは天然では、そのより大きな分子と関連して見出されない部分である。従って、異種由来領域が哺乳動物遺伝子をコードする場合、その遺伝子は通常、供給源の生物のゲノムにおいて哺乳動物ゲノムDNAに隣接しないDNAに隣接する。異種由来コード配列の別の例は、コード配列自身が天然に見出されない構築物である(例えばゲノムコード配列がイントロンを含むcDNA、または天然遺伝子とは異なるコドンを有する合成配列)。
【0056】
さらに処理するために大量の核酸を調製するため(クローニングベクター)、またはポリペプチドの発現のため(発現ベクター)のいずれかのために、ベクターを使用してクロロトキシンおよびクロロトキシン誘導体ポリペプチドをコードする核酸の操作を簡単にする。ベクターはプラスミド、ウイルス(ファージを含む)、および組み込まれたDNAフラグメント(すなわち組み換えによって宿主ゲノムに組み込まれたフラグメント)を含む。クローニングベクターは、発現調節配列を含む必要はない。しかし、発現ベクターの調節配列は、転写プロモーター、適切なリボゾーム結合部位をコードする配列、および転写および翻訳の終了を調節する配列のような、転写および翻訳調節配列を含む。発現ベクターは、好ましくは、クロロトキシン遺伝子の安定な発現を促進するために、および/または形質転換細胞を同定するために、選択遺伝子を含むべきである。しかし、発現を維持するための選択遺伝子は、真核生物宿主細胞を用いた同時形質転換系において、別のベクターによって供給され得る。
【0057】
適切なベクターは、一般的にレプリコン(組み込まれないベクターで使用するための、複製の起点)および意図される発現宿主と適合性の種由来の調節配列を含む。本明細書中で使用される「複製可能な」ベクターという用語によって、そのようなレプリコンを含むベクターおよび宿主ゲノムへの組み込みによって複製されるベクターを含むよう意図される。形質転換した宿主細胞は、クロロトキシンまたはクロロトキシン誘導体ポリペプチドをコードする核酸を含むベクターで形質転換またはトランスフェクトされた細胞である。発現したポリペプチドは、発現したペプチドの適切な処理シグナル(例えば同一源のまたは異種由来のシグナル配列)のコントロール下で、培養上清へ分泌され得る。
【0058】
宿主細胞のための発現ベクターは通常、リボゾーム結合部位、ポリアデニル化部位、および転写終了配列と共に、複製起点、クロロトキシンまたはクロロトキシン誘導体ポリペプチドをコードする配列から上流に位置するプロモーターを含む。当業者は、これらの配列のあるものは、ある宿主においては発現に必要でないことを認識する。微生物で使用するための発現ベクターは、宿主によって認識される複製起点、宿主において機能するプロモーター、および選択遺伝子しか含む必要がない。
【0059】
よく使用されるプロモーターは、ポリオーマ、ウシパピローマウイルス、CMV(サイトメガロウイルス、マウスまたはヒトのいずれか)、ラウス肉腫ウイルス、アデノウイルス、サルウイルス40(SV40)由来である。他の調節配列(例えば、ターミネーター、ポリA、エンハンサー、または増幅配列)も使用され得る。
【0060】
発現ベクターは、クロロトキシンまたはクロロトキシン誘導体ポリペプチドコード配列が、適切な調節配列と共にベクター内に位置するように構築され、調節配列に関するコード配列の位置および方向は、コード配列がその調節配列の「コントロール」下で転写および翻訳されるようになっている(すなわち、DNA分子に調節配列において結合するRNAポリメラーゼがコード配列を転写する)。調節配列は、上記で記載されたクローニングベクターのようなベクターへの挿入前に、コード配列にライゲーションされ得る。あるいは、コード配列は、既に調節配列および適切な制限部位を含む発現ベクターに直接クローニングされ得る。もし選択された宿主細胞が哺乳動物細胞であるなら、調節配列はクロロトキシンまたはクロロトキシン誘導体ポリペプチドコード配列に対して異種由来または同種由来であり得、そしてコード配列はイントロンを含むゲノムDNAまたはcDNAのいずれかであり得る。
【0061】
昆虫を含む、脊椎動物または無脊椎動物細胞由来の、より高等な真核細胞培養物が、本発明のタンパク質を発現するために使用され得、そしてその増殖の手順は公知である。
【0062】
他の発現ベクターは、真核生物系において使用するためのものである。代表的な真核生物発現系は、ワクシニアウイルスを採用するものであり、それは当該分野で周知である(例えばWO86/07593を参照のこと)。酵母発現ベクターが当該分野で公知である(例えば米国特許第4,446,235号および同第4,430,428号を参照のこと)。別の発現系は、ベクターpHSIであり、それはチャイニーズハムスター卵巣細胞を形質転換する(WO87/02062を参照のこと)。哺乳動物の組織を、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)またはチミジンキナーゼのような選択可能マーカーをコードするDNA、およびクロロトキシンまたはクロロトキシン誘導体ポリペプチドをコードするDNAで同時形質転換し得る。もし野生型DHFR遺伝子が採用されるなら、DHFRが欠損している宿主細胞を選択し、DHFRコード配列を、ヒポキサンチン、グリシン、およびチミジンを欠くhgt培地における成功したトランスフェクションのマーカーとして使用することを可能にすることが好ましい。
【0063】
選択された発現系および宿主に依存して、クロロトキシンまたはクロロトキシン誘導体ポリペプチドは、ポリペプチドが発現される条件下で、上記で記載された発現ベクターのような、外来性または異種由来DNA構築物によって形質転換された、増殖する宿主細胞によって産生される。クロロトキシンまたはクロロトキシン誘導体ポリペプチドを、次いで宿主細胞から単離し、そして精製する。もし発現系がタンパク質またはペプチドを増殖培地中に分泌するなら、タンパク質を、細胞を含まない培地から直接精製し得る。適切な増殖条件および最初の粗製の回収方法の選択は、当該分野の技術の範囲内である。
【0064】
本発明のクロロトキシンまたはクロロトキシン誘導体ポリペプチドのコード配列が調製または単離されたら、それをあらゆる適切なベクターにクローニングし、そしてそれによって実質的にあらゆるクロロトキシンコード配列を含まない細胞を含まない細胞の組成物中で維持し得る。上記で記載されたように、多くのクローニングベクターが当業者に公知である。
【0065】
(クロロトキシンペプチド模倣物)
クロロトキシン誘導体の別のクラスにおいて、本発明は、骨髄増殖性またはリンパ球増殖性疾患を処置するために、クロロトキシンの3次元構造を模倣するペプチド模倣物を投与する方法を含む。そのようなペプチド模倣物は、天然に存在するペプチドに対して、例えばより経済的な産生、より高い化学的安定性、増強された薬理学的性質(半減期、吸収、力価、効果等)、変化した特異性(例えば生物学的活性の広いスペクトル)、減少した抗原性および他を含む、有意な利点を有し得る。
【0066】
1つの形態において、模倣物は、クロロトキシンペプチド2次構造のエレメントを模倣する、ペプチド含有分子である。ペプチド模倣物の使用の基礎にある理論的根拠は、タンパク質のペプチドバックボーンは、主に抗体および抗原のもののような分子相互作用を促進するような方法で、アミノ酸側鎖を向けるために存在するということである。ペプチド模倣物は、天然分子と同様の分子相互作用を許容するよう期待される。別の形態において、ペプチドアナログは、通常医薬品業界において、鋳型ペプチドのものと類似の性質を有する非ペプチド薬物として生成される。これらの型の非ペプチド化合物はまた、ペプチド模倣物(peptide mimeticsまたはpeptidomimetics)とも呼ばれ(Fauchere(1986)Adv.Drug Res.15、29−69;VeberおよびFreidinger(1985)Trends Neurosci.8、392−396;Evansら(1987)J.Med.Chem.30、1229−1239、これらは本明細書中で参考として援用される)、そして通常コンピューター化分子モデリングの助けを借りて開発される。
【0067】
治療的に有用なペプチドと構造的に同様のペプチド模倣物を、同等の治療的または予防的効果を生じるために使用し得る。一般的に、ペプチド模倣物は範例ポリペプチド(すなわち、生化学的性質または薬理学的活性を有するポリペプチド)と構造的に類似であるが、当該分野で公知の方法による結合によって任意に置換された1つまたはそれ以上のペプチド結合を有する。ペプチド模倣物の標識化は、直接またはスペーサー(例えばアミド基)を介して、定量的構造−活性データおよび分子モデリングによって予測されるペプチド模倣物における非干渉位置に対する、通常1つまたはそれ以上の標識の共有結合を含む。そのような非干渉位置は、一般的にそのペプチド模倣物が結合して治療的効果を産生する高分子と直接的な接触を形成しない位置である。ペプチド模倣物の誘導体化(例えば標識化)は、ペプチド模倣物の望ましい生物学的または薬理学的活性に実質的に干渉するべきでない。
【0068】
ペプチド模倣物の使用は、薬物ライブラリーを作成するためのコンビナトリアルケミストリーの使用によって増強され得る。ペプチド模倣物の設計を、例えば腫瘍細胞に対するペプチドの結合を増加または減少させるアミノ酸変異を同定することによって助け得る。使用し得るアプローチは、酵母二重ハイブリッド法(Chienら(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88、9578−9582を参照のこと)、およびファージディスプレイ法の使用を含む。二重ハイブリッド法は、酵母においてタンパク質−タンパク質相互作用を検出する(Fieldsら(1989)Nature 340、245−246)。ファージディスプレイ法は、固定化タンパク質およびλおよびM13のようなファージの表面に発現したタンパク質間の相互作用を検出する(Ambergら(1993)Strategies 6、2−4;Hogrefeら(1993)Gene 128、119−126)。これらの方法は、ペプチド−タンパク質相互作用のポジティブおよびネガティブセレクションおよびこれらの相互作用を決定する配列の同定を可能にする。
【0069】
(クロロトキシンと化学療法の組み合わせを用いた処置方法)
本発明はまた、化学療法剤の前に、またはそれに続いて投与された場合に、化学療法剤の効果を増強する(すなわち、化学療法剤のアジュバントとして作用する)のに有効な、ある量のクロロトキシンまたはその誘導体、またはある量のクロロトキシンまたはその誘導体を含む薬学的組成物を、当該哺乳動物に投与することを含む、ヒトを含む哺乳動物において骨髄増殖性またはリンパ球増殖性疾患を処置するための方法を含む。
【0070】
本発明はまた、異常な細胞増殖を阻害することにおいて化学療法剤の効果を増強するのに有効な量のクロロトキシンまたはクロロトキシン誘導体および1つまたはそれ以上の化学療法剤を含む薬学的組成物を、ヒトを含む当該哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物において骨髄増殖性またはリンパ球増殖性疾患を処置する方法も含む。これは、骨髄増殖性またはリンパ球増殖性疾患の良性および悪性細胞を含む、癌細胞の異常な成長および/または増殖を含む。異常な細胞増殖の阻害は、細胞死、アポトーシス、細胞分裂、転写、翻訳、形質導入等の阻害を含むがこれに限定されない、様々なメカニズムによって起こり得る。
【0071】
上記で議論したように、クロロトキシンおよびその誘導体を、骨髄増殖性またはリンパ球増殖性疾患の処置において有用な、他の化学療法剤と組み合わせて、または連続的に組み合わせて提供し得る。本明細書中で使用される場合、2つの薬剤が同時に投与される、またはその薬剤が同じ時に作用するような様式で独立に投与される場合、その2つの薬剤は組み合わせて投与されるといわれる。例えば、クロロトキシンまたはクロロトキシン誘導体を、以下の型の化学療法剤から選択される1つまたはそれ以上の化学療法剤と組み合わせて使用し得、それは有糸分裂インヒビター、アルキル化剤、代謝拮抗物質、インターカレートする抗生物質、増殖因子インヒビター、細胞周期インヒビター、酵素、トポイソメラーゼインヒビター、生物学的反応変更因子、抗ホルモンおよび抗アンドロゲンを含むがこれらに限定されない。
【0072】
アルキル化剤の例は、カルムスチン、ロムスチン、シクロホスファミド、イホスファミド、メクロレタミン、およびストレプトゾシンを含むがこれに限定されない。抗生物質の例は、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、およびプリカマイシンを含むがこれらに限定されない。代謝拮抗剤の例は、シタラビン、フルダラビン、5−フルオロウラシル、6−メルカプトプリン、メトトレキサート、および6−チオグアニンを含むがこれに限定されない。有糸分裂インヒビターの例は、ナベルビン、パクリタキセル、ビンブラスチンおよびビンクリスチンを含むがこれらに限定されない。ステロイドホルモンおよび抗アンドロゲンの例は、アミノグルテチミド、エストロゲン、フルタミド、ゴセレリン、ロイプロリド、プレドニゾンおよびタモキシフェンを含むがこれに限定されない。
【0073】
上記の化学療法剤の薬学的処方物の例は、BCNU(すなわち、カルムスチン、1,3−ビス(2−クロロエチル)−1−ニトロソ尿素、BiCNU(登録商標))、シスプラチン(シス−白金、シス−ジアミンジクロロ白金、Platinol(登録商標))、ドキソルビシン(ヒドロキシルダウノルビシン、Adriamycin(登録商標))、ゲムシタビン(ジフルオロデオキシシチジン、Gemzar(登録商標))、ヒドロキシ尿素(ヒドロキシカルバミド、Hydrea(登録商標))、パクリタキセル(Taxol(登録商標))、テモゾロミド(TMZ、Temodar(登録商標))、トポテカン(Hycamtin(登録商標))、フルオロウラシル(5−フルオロウラシル、5−FU、Adrucil(登録商標))、ビンクリスチン(VCR、Oncovin(登録商標))およびビンブラスチン(Velbe(登録商標)またはVelban(登録商標))を含むがこれに限定されない。
【0074】
本発明の方法の実施において、クロロトキシンまたはその誘導体を、単独でまたは他の治療または診断薬と組み合わせて使用し得る。ある好ましい実施形態において、クロロトキシンまたはその誘導体を、一般的に受け入れられた腫瘍学の医療行為に従って、代表的に様々な型の癌に処方された、他の化学療法剤と共に同時投与し得る。本発明の組成物を、インビボで、通常ヒト、ヒツジ、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、ラットおよびマウスのような哺乳動物において、またはインビトロで利用し得る。本発明は、ヒト被験体の処置において特に有用である。
【0075】
(放射線照射と組み合わせたクロロトキシンを使用する処置方法)
本発明は、骨髄増殖性またはリンパ球増殖性疾患の処置のために、クロロトキシンまたはその誘導体を放射線治療と組み合わせて投与することを含む処置方法を含む。特に、その治療は癌細胞においてアポトーシス(細胞死)を誘発するためにデザインされるが、転移の発生または数を抑制すること、および腫瘍サイズを抑制することも企図される。放射線治療薬剤に対する腫瘍細胞の抵抗性は、臨床腫瘍学における主な問題を示す。従って、本発明の関係において、クロロトキシンとの組み合わせ治療を放射線照射抵抗性腫瘍に対して使用して、放射線治療の有効性を改善し得ることも企図される。
【0076】
上記で議論されたように、本発明は、癌を有する哺乳動物に、どちらも組み合わせた場合に癌細胞死が誘発されるのに十分な量で、ある量のクロロトキシンまたはその誘導体を、電離放射線照射と組み合わせて投与することを含む、癌を治療する方法を含む。1つの実施形態において、クロロトキシンの存在は、放射線治療単独と比較した場合に、癌を治療するために必要な放射線照射の量を低減する。クロロトキシンまたはその誘導体は、当該照射の前に、当該照射の後に、または当該照射と同時に提供され得る。
【0077】
DNAの損傷を引き起こす照射が広く使用され、そしてガンマ線、X線(例えば、直線加速器によって産生された外部照射)として通常知られるもの、および放射性同位元素の腫瘍細胞に対する指向性送達を含む。これらの因子の全てがDNA、DNAの前駆体、DNAの複製および修復、および染色体の組み立ておよび維持に対する広範囲の損傷に影響を与えることが最もありそうである。クロロトキシンと組み合わせた外部照射処置に関して、処置は通常1日あたり1回の処置として与えられる。1日抜かした場合、またはある癌治療の適応症で、時折1日に2回の治療が与えられる。標準的な線量は、1日あたり約1.8Gyから約2.0Gyの範囲であり、1週間の線量は1週間あたり約9Gyから約10Gyの範囲である。処置は通常1週間当たり5日間与えられ、前週の処置からの回復期間のために2日休む。
【0078】
(薬学的組成物)
本発明の方法における薬学的組成物は、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、髄腔内、頭蓋内、または経皮または頬側経路によって投与され得る。例えば、薬剤は、微量注入によって腫瘍に局所的に投与され得る。あるいは、または同時に、投与は経口経路によるものであり得る。投与される投薬量は、レシピエントの年齢、健康状態、および体重、もしあるなら同時に行う処置の種類、処置の頻度、および所望の効果の性質に依存する。
【0079】
個々のニーズは異なるが、各成分の有効な量の最適範囲の決定は、当該分野の技術の範囲内である。本発明のクロロトキシンおよび/またはその誘導体の投薬量は、代表的に、約1.0ng/kg体重から約0.13mg/kg体重を含む。1つの実施形態において、クロロトキシンおよび/またはその誘導体の投薬量は、約1.0ng/kg体重から約0.1mg/kg体重を含む。好ましい実施形態において、全身性投与のための投薬量は、約0.01μg/kg体重から約0.1mg/kg体重を含む。別の実施形態において、クロロトキシンおよび/またはその誘導体の投薬量は、約0.1mg/kg体重未満を含む。全身性投与のためのより好ましい投薬量は、約0.1μg/kg体重から約0.05mg/kg体重を含む。別の好ましい実施形態において、クロロトキシンおよび/またはその誘導体の投薬量は、約0.05mg/kg体重未満を含む。全身性投与のための最も好ましい投薬量は、約1.0μg/kg体重から約0.01mg/kg体重の間を含む。他の実施形態において、投与されるクロロトキシンおよび/またはその誘導体の量は、血清中のクロロトキシンおよび/またはその誘導体の濃度を、約20.0nM、10.0nM、5.0nM、2.50nM、1.25nM、0.625nM、0.3125nM、0.156nM、0.078nM、0.039nM、0.020nM、0.010nM、0.005nM、0.003nM、0.0015nM、0.0008nM、0.0003nMまたは0.0001nMの濃度にするために有効な量である。微量注入による部位への直接投与のために好ましい投薬量は、1ng/kg体重から1mg/kg体重を含む。
【0080】
クロロトキシンおよび/またはその誘導体に加えて、本発明の方法における組成物は、活性化合物の、作用部位への送達のために薬学的に使用され得る調製物への処理を促進する、賦形剤および補助剤を含む、適切な薬学的に受容可能なキャリアを含み得る。非経口投与のために適切な処方物は、水溶性形態(例えば、水溶性塩)中の活性化合物の水性溶液を含む。それに加えて、適切な油性注射懸濁液としての活性化合物の懸濁液が、投与され得る。適切な親油性溶媒またはビヒクルとしては、脂肪油、例えばゴマ油または合成脂肪酸エステル、例えばオレイン酸エチルまたはトリグリセリドが挙げられる。水性注射懸濁液は、懸濁液の粘性を増加させる物質を含み得、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールおよびデキストランが挙げられる。必要に応じて、懸濁液は、安定化剤も含み得る。細胞へ送達するために薬剤を封入するために、リポソームも使用され得る。
【0081】
本発明の方法による全身性投与のための薬学的処方物は、腸投与、非経口投与、または局所投与のために処方され得る。実際、処方物の3つの型全てを同時に使用して、活性成分の全身性投与を達成し得る。
【0082】
本発明のいくつかの方法に関して上記で述べたように、局所投与が使用され得る。溶液、懸濁液、ゲル、軟膏(ointment)または軟膏(salve)等のような、あらゆる通常の局所的処方が使用され得る。そのような局所的処方物の調製は、例えばGennaroら(1995)Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishingによって例示されるように、薬学的処方物の分野において記載される。局所適用に関して、組成物はまた、粉末またはスプレーとして、特にエアロゾル形態で投与され得る。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、吸入によって投与され得る。吸入治療に関して、活性成分は、定量噴霧式吸入器による投与に有用な溶液、または乾燥粉末吸入器に適当な形態であり得る。別の実施形態において、組成物は、気管支洗浄による投与に適切である。
【0083】
経口投与に適当な処方物としては、硬ゼラチンカプセルまた軟ゼラチンカプセル、丸剤、コートした錠剤を含む錠剤、エリキシル、懸濁液、シロップ、または吸入およびその徐放性形態が挙げられる。
【0084】
本明細書中で使用される場合、「クロロトキシンまたはその誘導体」という用語はまた、その薬学的に受容可能な塩、溶媒和物、水和物、包接体、多形体、およびプロドラッグを含む。それに加えて、本発明のオリゴヌクレオチドは、1つまたはそれ以上のキラル中心および/または二重結合を含み得、そして従って、二重結合異性体(すなわち幾何異性体)、鏡像異性体、またはジアステレオマーのような、立体異性体として存在する。本発明によって、本明細書中で記載された化学的構造、そしてその結果、本発明のポリペプチドは、対応する鏡像異性体および立体異性体の全て、すなわち立体異性的に純粋な形態(例えば、幾何的に純粋、鏡像異性的に純粋、またはジアステレオマー的に純粋)および鏡像異性体および立体異性体の混合物の両方を含む。鏡像異性体および立体異性体の混合物は、キラル相ガスクロマトグラフィー、キラル相高速液体クロマトグラフィー、キラル塩複合体としての化合物の結晶化、またはキラル溶媒における化合物の結晶化のような、周知の方法によってその成分の鏡像異性体または立体異性体に分離され得る。
【0085】
鏡像異性体および立体異性体はまた、立体異性的に純粋な中間体または鏡像異性的に純粋な中間体、試薬、および触媒から、周知の不斉合成法によって得られ得る。
【0086】
本発明の方法は、クロロトキシン、その誘導体、またはその薬学的に受容可能な塩、溶媒和物、水和物、包接体、多形体、およびプロドラッグおよび薬学的に受容可能なビヒクルを含む。
【0087】
本明細書中で使用される場合、そして他に示されなければ、「薬学的に受容可能な」という用語は、動物、およびより具体的にはヒトにおいて使用するために、連邦政府または州政府の規制機関によって認可されたこと、または米国薬局方または他の一般的に認められた薬局方に記載されていることを意味する。「ビヒクル」という用語は、希釈剤、アジュバント、賦形剤、または本発明の化合物が投与されるキャリアを指す。そのような薬学的ビヒクルは、例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油等のような、石油、動物、植物、または合成起源のものを含む、水および油のような液体であり得る。薬学的ビヒクルは、生理食塩水、メチルセルロース、アラビアゴム、ゼラチン、デンプンペースト、タルク、ケラチン、コロイド状シリカ、尿素等であり得る。それに加えて、補助剤、安定化剤、増粘剤、潤滑剤、および着色剤が使用され得る。患者に投与された場合、本発明の組成物および薬学的に受容可能なビヒクルは、好ましくは滅菌されている。本発明の組成物が静脈内投与される場合、水が好ましいビヒクルである。生理食塩水溶液および水性デキストロースおよびグリセロール溶液も、液体ビヒクルとして、特に注射可能溶液のために使用され得る。適切な薬学的ビヒクルはまた、デンプン、グルコース、乳糖、ショ糖、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール等の賦形剤を含む。本組成物は、所望の場合、少量の湿潤剤または乳化剤、またはpH緩衝化剤も含み得る。
【0088】
本明細書中で使用される場合、そして他に示されなければ、「薬学的に受容可能な塩」という語句は、組成物中に存在し得る酸性基または塩基性基の塩を含むがこれに限らない。性質が塩基性である、本組成物中に含まれるポリペプチドは、様々な無機酸および有機酸と広くさまざまな塩を形成し得る。そのような塩基性化合物の、薬学的に受容可能な酸付加塩を調製するために使用し得る酸は、硫酸、クエン酸、マレイン酸、酢酸、シュウ酸、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、重酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカロネート(glucaronate)、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩およびパモエート(すなわち、1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエート)の塩を含むがこれに限らない、非毒性酸付加塩(すなわち、薬学的に受容可能な陰イオンを含む塩)を形成するものである。性質が酸性である、本発明の方法で使用される組成物に含まれるポリペプチドは、様々な薬理学的に受容可能な陽イオンと塩基性塩を形成し得る。そのような塩の例としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、および特にカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、リチウム、亜鉛、カリウムおよび鉄の塩が挙げられる。
【0089】
本明細書中で使用される場合、そして他に示されない限り、「薬学的に受容可能な溶媒和物」という用語は、非共有結合的な分子間力で結合した、化学量論的なまたは非化学量論的な量の溶媒をさらに含む、クロロトキシンポリペプチドまたはその誘導体を意味する。好ましい溶媒は、揮発性であり、非毒性であり、そして/またはわずかな量でヒトに投与するために受容可能である。
【0090】
本明細書中で使用される場合、そして他に示されない限り、「薬学的に受容可能な水和物」という用語は、非共有結合的な分子間力で結合した、化学量論的なまたは非化学量論的な量の水をさらに含む、クロロトキシンポリペプチドまたはその誘導体を意味する。
【0091】
本明細書中で使用される場合、そして他に示されない限り、「薬学的に受容可能な包接体」という用語は、その中に捕獲されたゲスト分子(例えば、溶媒または水)を有する空間(例えば、チャネル)を含む結晶格子の形態である、本発明のクロロトキシンポリペプチドまたはその誘導体を意味する。
【0092】
本明細書中で使用される場合、そして他に示されない限り、「薬学的に受容可能な多形体」という用語は、いくつかの区別できる形態(例えば、結晶、無定形)で存在する、クロロトキシンポリペプチドまたはその誘導体を指し、本発明はこれら全ての形態を含む。多形体は、定義によって、結晶格子中の分子の順序の結果として、異なる物理的性質を有する同じ分子の結晶である。多形体によって示される物理的性質の違いは、保存安定性、圧縮率、および密度(処方および製品の製造に重要)、および溶解速度(生物学的利用能を決定するのに重要な因子)のような、薬学的なパラメーターに影響を与える。安定性の違いは、化学反応性の変化(例えば、1つの多形体からなる投薬量形態は、別の多形体からなる場合よりも速く変色するというような、異なる酸化)、または機械的変化(例えば、動力学的に好ましい多形体が、熱力学的により安定な多形体に転換すると、保存中に錠剤がくずれる)、または両方(例えば、1つの多形体の錠剤は、高い湿度においてより崩壊しやすい)から生じ得る。溶解性/分解の違いの結果として、極端な場合には、いくつかの多形の移行は、効力の欠如を、または他の極端な場合には、毒性を引き起こし得る。それに加えて、結晶の物理的性質は、処理において重要であり得る:例えば、1つの多形体はより溶媒和物を作りやすいか、またはろ過および洗浄して不純物を除去しにくくあり得る(すなわち、粒子の形状およびサイズ分布が、他のものと比較して1つの多型体間で異なり得る)。
【0093】
本明細書中で使用される場合、そして他に示されない限り、「薬学的に受容可能なプロドラッグ」という用語は、生物学的条件下で(インビトロまたはインビボで)加水分解、酸化、または他の反応をしてその化合物を提供し得る、化合物の誘導体を意味する。プロドラッグの例としては、生物加水分解性(biohydrolyzable)のアミド、生物加水分解性のエステル、生物加水分解性のカルバメート、生物加水分解性の炭酸塩、生物加水分解性のウレイド、および生物加水分解性のリン酸塩アナログのような、生物加水分解性の部分を含む化合物が挙げられるが、これらに限定されない。プロドラッグの他の例としては、オリゴヌクレオチド、ペプチド、脂質、脂肪族および芳香族基、またはNO、ONO、NO、およびONO部分を含む化合物が挙げられる。プロドラッグは、代表的には、Bungaard(1985)Design of Prodrugs,Elselvier Pressにおいて記載されたもののような、周知の方法を用いて調製され得る。
【0094】
本明細書中で使用される場合、そして他に示されない限り、「生物加水分解性(biohydrolyzable)のアミド」、または「生物加水分解性のエステル」、または「生物加水分解性のカルバメート」、または「生物加水分解性の炭酸塩」、または「生物加水分解性のウレイド」、または「生物加水分解性のリン酸塩」という用語は、(1)化合物の生物学的活性に干渉しないが、その化合物に取り込み、作用時間、または作用の発生のような、インビボで有利な性質を与え得る;または(2)生物学的に不活性であるが、インビボで生物学的に活性な化合物に変換される、いずれかの化合物のそれぞれアミド、エステル、カルバメート、炭酸塩、ウレイド、またはリン酸塩を意味する。生物加水分解性エステルの例としては、低級アルキルエステル、低級アシルオキシアルキルエステル(アセトキシメチル(acetoxylmethyl)、アセトキシエチル、アミノカルボニルオキシ−メチル、ピバロイルオキシメチル、およびピバロイルオキシエチルエステルのような)、ラクトニル(lactonyl)エステル(フタリジルおよびチオフタリジルエステルのような)、低級アルコキシアシルオキシアルキルエステル(メトキシカルボニルオキシ−メチル、エトキシカルボニルオキシエチルおよびイソプロポキシカルボニルオキシエチルエステルのような)、アルコキシアルキルエステル、コリンエステル、およびアシルアミノアルキルエステル(アセタミドメチルエステルのような)が挙げられるが、これらに限定されない。生物加水分解性アミドの例としては、低級アルキルアミド、アミノ酸アミド、アルコキシアシルアミド、およびアルキルアミノアルキル−カルボニルアミドが挙げられるが、これらに限定されない。生物加水分解性カルバメートの例としては、低級アルキルアミン、置換エチレンジアミン、アミノ酸、ヒドロキシアルキルアミン、複素環アミンおよび芳香族複素環アミン、ならびにポリエーテルアミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0095】
本明細書中で使用される場合、そして他に示されない限り、「治療的に有効な」という用語は、疾患または障害、またはその少なくとも1つの認識できる症状の改善を引き起こし得る、ある量のクロロトキシンポリペプチドまたはその誘導体、またはその薬学的に受容可能な塩、溶媒和物、水和物、包接体、多形体、またはプロドラッグを指す。「治療的に有効な」はまた、必ずしも患者によって認識されない、少なくとも1つの測定可能な身体的パラメーターの寛解を引き起こす量を指す。さらに別の実施形態において、「治療的に有効な」という用語は、物理的に(例えば、認識可能な症状の安定化)、生理学的に(例えば、身体的パラメーターの安定化)、または両方で、疾患または障害の進行を阻害する量を指す。さらに別の実施形態において、「治療的に有効な」という用語は、疾患または障害の発生の遅延を引き起こす量を指す。
【0096】
本明細書中で使用される場合、そして他に示されない限り、「予防的に有効な」という用語は、所定の疾患または障害を獲得するリスクの減少を引き起こす、ある量のクロロトキシンポリペプチドまたはその誘導体、またはその薬学的に受容可能な塩、溶媒和物、水和物、包接体、多形体、またはプロドラッグを指す。1つの実施形態において、組成物は、本明細書中で記載された疾患に対する遺伝的素因を有する動物(好ましくは、ヒト)に予防的手段として投与される。本発明の別の実施形態において、組成物は、本明細書中で開示された疾患に対する非遺伝的素因を有する患者に予防的手段として投与される。従って、本発明の組成物は、1つの疾患または障害の予防、および同時に別の疾患または障害の治療のために使用され得る。
【0097】
本発明の方法はまた、通常天然で見出される原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する原子によって、1つまたはそれ以上の原子が置換されたか、あるいは1つまたはそれ以上のそのような原子がクロロトキシン誘導体に結合した、同位体標識クロロトキシンおよびクロロトキシン誘導体の使用を含む。本発明の化合物に組み込まれ得る同位元素の例としては、水素、炭素、リン、ヨウ素、レニウム、インジウム、イットリウム、テクネチウム、およびルテチウム(すなわち、H、14C、31P、32P、35S、131I、125I、123I、187Re、64Cu、111In、90Y、99mTc、177Luが挙げられるがこれらに限定されない)、これらの元素の他の同位体、および当該分野で公知の他の同位体が挙げられるが、これらに限定されない。前述の同位体および/または他の原子の他の同位体を含む、標識クロロトキシン、クロロトキシン誘導体、そのプロドラッグ、および薬学的に受容可能な塩は、骨髄増殖性疾患またはリンパ球増殖性疾患の診断および処置のために使用され得る。トリチウムおよび炭素−14同位体が、その調製の容易さおよび検出可能性のために特に好ましい。さらに、ジューテリウムのようなより重い同位体による置換は、より高い代謝安定性から生じる特定の治療的利点(例えば、増加したインビボ半減期または投薬必要量の減少)を与え得、そしてそれ故、いくつかの状況において好ましくあり得る。
【0098】
(融合タンパク質)
本発明の方法はまた、細胞毒性薬剤がクロロトキシン誘導体に連結される組成物を含む。細胞毒性薬剤の例としては、ゲロニン(gelonin)、リシン、サポニン、シュードモナス体外毒素、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ジフテリア毒素、補体タンパク質、または細胞との接触時にその細胞を殺傷し得る、当該分野で公知のあらゆる他の薬剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0099】
本発明は、少なくとも1つの第2のポリペプチドを含む、融合ポリペプチドおよびその塩を含む。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドは、異常な増殖を示す骨髄および/またはリンパ系細胞(すなわち、癌細胞)にのみ発現されるエピトープに特異的に結合する結合ドメインを含む。これらの結合ドメインは、異常な増殖を示す骨髄および/またはリンパ系細胞(例えば、良性細胞および悪性癌細胞)と結合し得るか、または他の方法で特異的に会合し得る、アミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、結合ドメインは抗体であり、一方他の実施形態において、それはこれらの細胞のみに発現される受容体に特異的に結合するリガンドである。抗体の例としては、B細胞またはT細胞に特異的に結合する抗体が挙げられるが、これらに限定されない。受容体リガンドの例としては、サイトカインおよび上皮成長因子を含む成長因子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0100】
第2のポリペプチドはまた、融合ポリペプチドのインビトロおよびインビボでの半減期を増加させる安定化ドメインを含み得る。本明細書中で使用される場合、「安定化ドメイン」という用語は、クロロトキシン単独と比較した場合に、クロロトキシンまたはクロロトキシン誘導体のインビトロおよびインビボでの半減期を延長し得るアミノ酸配列を指す。安定化ドメインは、ヒト血清アルブミンのようなヒトタンパク質(例えば、全長または短縮型の細胞外フラグメント由来の可溶性タンパク質等)またはクロロトキシンまたはクロロトキシン誘導体のインビボまたはインビトロでの半減期を安定化する他のタンパク質を含み得る。これらのさらなる機能的ドメインは、それ自身が、例えば癌細胞結合ドメインをクロロトキシンまたはクロロトキシン誘導体に結合させるためのリンカーペプチドとして機能し得る。あるいは、それらは、融合分子中の他の場所に位置し得る(例えば、そのアミノまたはカルボキシル末端に)。代替的な実施形態において、安定化ドメインは化学的部分である(例えば、PEG(ポリエチレングリコール)またはデキストラン)。
【0101】
本明細書中で使用される「融合した」または「融合ポリペプチド」という用語は、(i)所定の機能的ドメイン(すなわち、癌細胞結合ドメイン)が、そのカルボキシル末端で共有結合により、別の機能的ドメイン(すなわち、ヒト血清アルブミン成分)のアミノ末端、またはそれ自身が共有結合によってクロロトキシンまたはクロロトキシン誘導体のアミノ末端に結合したリンカーペプチドのいずれかに結合される;あるいは(ii)所定の機能的ドメイン(すなわち、クロロトキシン結合ドメイン)が、そのアミノ末端で共有結合により、別の機能的ドメイン(すなわち、ヒト血清アルブミン成分)のカルボキシル末端、またはそれ自身が共有結合によってクロロトキシンまたはクロロトキシン誘導体のカルボキシル末端に結合したリンカーペプチドのいずれかに結合される、ポリペプチドを指す。
【0102】
同様に、本発明の核酸中間体に関係して使用された場合、「融合した」は、第1の機能的ドメインをコードするヌクレオチド配列の3’−[または5’−]末端が、共有結合によってか、またはそれ自身が好ましくは第1の機能的ドメインをコードするポリヌクレオチド、および任意の第2の機能的ドメインをコードする核酸にその末端で共有結合しているペプチドリンカーによって間接的に、第2の機能的ドメインをコードするヌクレオチド配列のそれぞれ3’−[または5’−]末端に結合されることを意味する。
【0103】
本発明の融合ポリペプチドの例は、以下の式によって示され得るが、これらに限定されない:
R1−L−R2(i)
R2−L−R1(ii)
R1−L−R2−L−R1(iii)
R1−L−R1−L−R2(iv)
R2−L−R1−L−R1(iv)
ここでR1は、骨髄および/またはリンパ系の癌細胞に特異的に結合するドメイン、または輸送ドメイン(例えば、ポリペプチドの血液−脳関門を越えてポリペプチドの移行を可能にするドメインであるドメインのアミノ酸配列であり、R2は安定化ドメイン(例えば、ヒト血清アルブミン)のアミノ酸配列であり、各Lは、R1および/またはR2の末端に共有結合によって結合されたクロロトキシンまたはクロロトキシン誘導体であり、これによって上記の分子フラグメントは方向性を持って読まれる(すなわち、左側が分子のアミノ末端に、そして右側がカルボキシル末端に対応する)。
【0104】
(クロロトキシンおよび/またはその誘導体を用いた診断方法)
本発明は、哺乳動物(ヒトを含む)において骨髄性増殖性疾患またはリンパ性増殖性疾患を診断するための方法を包含し、この方法は、上記哺乳動物に、癌細胞のような、異常に増殖する骨髄またはリンパ系細胞に特異的および選択的に結合するのに有効な、ある量のクロロトキシンおよび/またはその誘導体、ある量のクロロトキシンおよびその誘導体を含む融合タンパク質、またはある量のクロロトキシンまたはその誘導体を含む組成物を投与する工程を包含する。本発明の診断方法は、インビトロにおける方法を含み、ここで生物学的サンプルは、最初にヒトを含む哺乳動物から単離され、そして次いで有効な量のクロロトキシンまたはその誘導体、または癌細胞のような、異常に増殖する骨髄またはリンパ系細胞に特異的および選択的に結合するのに有効な、ある量のクロロトキシンおよび/またはその誘導体を含む組成物と接触される。
【0105】
本診断方法の1つの実施形態において、リンパ球増殖性疾患は、非ホジキンリンパ腫である。別の実施形態において、非ホジキンリンパ腫は、前駆体B細胞リンパ芽球白血病/リンパ腫または成熟B細胞新生物から選択されるB細胞新生物である。成熟B細胞新生物は、B細胞慢性リンパ球性白血病/小リンパ球性リンパ腫、B細胞前リンパ球性白血病、リンパ血漿性細胞性リンパ腫、脾辺縁帯B細胞リンパ腫、毛様細胞性白血病、節外性辺縁帯B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、結節性辺縁帯リンパ腫、びまん性大B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、プラズマ細胞腫、およびプラズマ細胞骨髄腫から選択される。本発明の方法はまた、T細胞新生物である非ホジキンリンパ腫の処置も含む。例示的なT細胞新生物としては、T細胞前リンパ球性白血病、T細胞大顆粒リンパ球性白血病、NK細胞白血病、結節外NK/T細胞リンパ腫、菌状息肉腫、原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫、皮下脂肪組織炎様T細胞リンパ腫、腸症型腸T細胞リンパ腫、肝脾γ−δT細胞リンパ腫、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、未分化大細胞型リンパ腫、および成人T細胞リンパ腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0106】
本方法の1つの実施形態において、骨髄増殖性疾患は、真性赤血球増加症(PV)、特発性血小板減少症(ET)、特発性骨髄線維症(IMF)とも呼ばれる原因不明骨髄様化生(AMM)、および慢性骨髄性白血病(CML)から選択される。
【0107】
本発明の診断方法の実施において、クロロトキシンおよび/またはその誘導体は、単独で、または他の不活性な成分と組み合わせて使用され得る。上記で議論したように、本発明は、標識がクロロトキシンまたはその誘導体に連結した組成物および方法を含む。従って、本発明の方法は、癌を含む異常な骨髄またはリンパ系細胞の増殖に関連する疾患の診断のために、標識クロロトキシンまたはその標識誘導体を投与することを含む。
【0108】
本発明の組成物および方法は、通常ヒト、ヒツジ、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、ラット、およびマウスのような哺乳動物においてインビボで、またはインビトロの両方において利用され得る。本発明は、ヒト患者の診断において特に有用である。
【0109】
さらなる説明なしに、当業者は、前述の説明および以下の説明的な実施例を用いて、本発明の化合物を作成および利用し得、そして特許請求された方法を実施し得ると考えられる。以下の実用的な実施例は、本発明の実施形態を記載し、決して本開示の残りの部分を制限すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0110】
(実施例1)
Raji細胞(Epsteinら(1966)J.Natl.Cancer Inst.37、547−559)およびDaudi細胞(Kleinら(1968)Cancer Res.28、1300−1310)を、未固定か、または1パーセントのグルタルアルデヒドで固定して使用した。Raji細胞株(ATCC CCL−86)は、11歳の黒人男性のバーキットリンパ腫由来のBリンパ球細胞株である。Daudi細胞株(ATCC CCL−213)は、16歳の黒人男性由来のBリンパ芽球細胞株である。細胞をクロロトキシンまたは示された結合ドメインペプチド(配列番号8または配列番号10)とインキュベートし、洗浄して次いでストレプトアビジン−フルオレセイン(strp−FL)とインキュベートした。もう1度洗浄した後、細胞をFACS分析器を用いて分析し、そして陽性染色細胞のパーセントを決定した(図1)。コントロールは、未処理細胞、ストレプトアビジン−フルオレセイン単独とインキュベートした細胞、およびネガティブペプチドとインキュベートした細胞を含んでいた。
【0111】
(実施例2)
Molt−4細胞(Minowadaら(1972)J.Natl.Cancer Inst.49、891−895)を、未固定かまたは1パーセントのグルタルアルデヒドで固定して使用した。Molt−4細胞株は、再発した患者由来のTリンパ芽球細胞株である。細胞をクロロトキシンまたは示された結合ドメインペプチド(配列番号8または配列番号10)とインキュベートし、洗浄して次いでストレプトアビジン−フルオレセイン(strp−FL)とインキュベートした。もう1度洗浄した後、細胞をFACS分析器を用いて分析し、そして陽性染色細胞のパーセントを決定した(図2)。コントロールは、未処理細胞、ストレプトアビジン−フルオレセイン単独とインキュベートした細胞、およびネガティブペプチドとインキュベートした細胞を含んでいた。
【0112】
(実施例3)
組織培養法を、Raji細胞株(図3)およびDaudi細胞株(図4)に対して、ドキソルビシンの存在下または非存在下で、クロロトキシン(TM−601)の効果を試験するために最適化した。細胞を、特定の細胞株に依存して、96ウェルマイクロタイター組織培養プレートに1ウェルあたり約1000−2000個の細胞の密度でプレートした。5%の二酸化炭素を供給した37℃の加湿細胞培養インキュベーター中で細胞を24時間接着させた。各細胞株において各薬物に関して用量反応性曲線を達成するために、細胞を減少する濃度のドキソルビシンで2日〜5日間処理した。処理後、ドキソルビシンの細胞毒性効果を、Cell Counting Kit−8(CCK−8)(Dojindo Inc.)を用いて、製造会社の指示に従って定量した。簡単には、ドキソルビシンによる処理期間の後、細胞をCCK−8試薬とインキュベートし、そして特定の細胞型に依存して37℃で1時間〜4時間インキュベートした。インキュベーション後、マイクロプレートリーダーで490nmの波長でプレートを読み取った。
【0113】
本発明は上記の実施例への参照と共に詳細に記載されているが、本発明の精神から逸脱することなく、様々の改変がなされ得ることが理解される。従って、本発明は、以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。本出願において言及された、全ての引用された特許、特許出願および刊行物は、その全体が本明細書において参考として援用される。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】図1は、クロロトキシンまたは予め結合ドメインとして同定したクロロトキシンのペプチドフラグメント(ペプチド21(配列番号10)およびペプチド8(配列番号8))で処理した、リンパ系癌細胞(バーキットリンパ腫由来のBリンパ球(Raji)およびBリンパ芽球(Daudi))のFACS分析の結果を示す。
【図2】図2は、クロロトキシンまたは予め結合ドメインとして同定したクロロトキシンのペプチドフラグメント(ペプチド21(配列番号10)およびペプチド8(配列番号8))で処理した、リンパ系癌細胞(急性リンパ芽球性白血病由来のTリンパ芽球(Molt−4))のFACS分析の結果を示す。
【図3】図3は、Raji細胞増殖に対する、ドキソルビシンと組み合わせたクロロトキシンの用量依存性の相乗効果を示す実験の結果を示す。
【図4】図4は、Daudi細胞増殖に対する、ドキソルビシンと組み合わせたクロロトキシンの用量依存性の相乗効果を示す実験の結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物におけるリンパ球増殖性疾患または骨髄増殖性疾患の存在を検出する方法であって、該方法は、
(a)該哺乳動物から生物学的サンプルを単離する工程、
(b)該サンプルを、クロロトキシンを含む組成物またはクロロトキシンもしくはその誘導体を含むポリペプチドと接触させる工程、および
(c)該組成物の該サンプルへの結合の存在を検出する工程であって、ここで、該結合の存在は、該哺乳動物におけるリンパ球増殖性疾患または骨髄増殖性疾患の存在を示す、工程
を包含する、方法。
【請求項2】
前記生物学的サンプルが、ヒトから単離される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
哺乳動物におけるリンパ球増殖性疾患または骨髄増殖性疾患の存在を検出する方法であって、該方法は。
(a)クロロトキシンまたはその誘導体を含む組成物を投与する工程、および
(b)該哺乳動物において該組成物の結合の存在を検出する工程であって、ここで、該結合の存在は、該哺乳動物におけるリンパ球増殖性疾患または骨髄増殖性疾患の存在を示す、工程
を包含する、方法。
【請求項4】
哺乳動物におけるリンパ球増殖性疾患または骨髄増殖性疾患を処置する方法であって、該方法は、クロロトキシンまたはその誘導体を含む組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項5】
前記リンパ球増殖性疾患が、非ホジキンリンパ腫である、請求項1、2
3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記非ホジキンリンパ腫がB細胞新生物である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記B細胞新生物が、前駆体B細胞リンパ芽球性白血病/リンパ腫または成熟B細胞新生物である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記成熟B細胞新生物が、B細胞慢性リンパ球性白血病/小リンパ球性リンパ腫、B細胞前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性白血病、脾辺縁帯B細胞リンパ腫、毛様細胞性白血病、結節外辺縁帯B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、結節性辺縁帯リンパ腫、びまん性大B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、プラズマ細胞腫およびプラズマ細胞骨髄腫からなる群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記非ホジキンリンパ腫がT細胞新生物である、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記T細胞新生物が、T細胞前リンパ球性白血病、T細胞大顆粒性リンパ球性白血病、NK細胞白血病、結節外NK/T細胞リンパ腫、菌状息肉腫、原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫、皮下脂肪組織炎様T細胞リンパ腫、腸症型腸T細胞リンパ腫、肝脾γ−δT細胞リンパ腫、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫および成人T細胞リンパ腫からなる群より選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリペプチドが、配列番号1〜34からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1、2、3または4に記載の方法。
【請求項12】
前記骨髄増殖性疾患が、真性赤血球増加症(PV)、特発性血小板減少症(ET)、特発性骨髄線維症(IMF)とも呼ばれる原因不明骨髄様化生(AMM)および慢性骨髄性白血病(CML)からなる群より選択される、請求項1、2、3または4に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリペプチドが、アミノ酸配列TTXMXK(配列番号9)を含み、ここで、
(a)Xは、アスパラギン酸およびグルタミン酸からなる群より選択される酸性アミノ酸であり;
(b)Xは、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、プロリン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシンおよびバリンからなる群より選択されるアミノ酸であり;
(c)Xは、アスパラギンおよびグルタミンからなる群より選択されるアミドアミノ酸であり;
(d)Xは、セリン、スレオニンおよびアラニンからなる群より選択されるアミノ酸であり;ならびに
(e)Xは、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンからなる群より選択される塩基性アミノ酸である、
請求項1、2、3または4に記載の方法。
【請求項14】
前記アミノ酸配列が、配列番号10(TTDHQMARK)、配列番号11(TTDQQMTKK)および配列番号12(TTDPQMSKK)からなる群より選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリペプチドが、配列番号2〜8からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記クロロトキシンおよびその誘導体が、第二のポリペプチドに連結される、請求項1、2、3または4に記載の方法。
【請求項17】
前記第二のポリペプチドが、骨髄性癌細胞またはリンパ球性癌細胞によってのみ発現されるエピトープに特異的に結合する結合ドメインを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第二のポリペプチドが、抗体またはそのフラグメントである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第二のポリペプチドが、融合ポリペプチドの分解を妨げる安定化ドメインを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記第二のポリペプチドが、ポリヒスチジンおよびヒト血清アルブミンからなる群より選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記クロロトキシンおよびその誘導体が、細胞傷害性因子に連結される、請求項4に記載の方法。
【請求項22】
前記細胞傷害性因子が、ゲロニン、リシン、サポニン、シュードモナス(pseudonomas)体外毒素、アメリカヤマゴボウ抗ウイルス性タンパク質、ジフテリア毒素および補体タンパク質からなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記クロロトキシンおよびその誘導体が標識される、請求項1、2、3または4に記載の方法。
【請求項24】
前記標識が131Iである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記哺乳動物がヒトである、請求項3または4に記載の方法。
【請求項26】
前記投与されるクロロトキシンの量が、約0.01μg/kg体重〜約2.0mg/kg体重の間を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記クロロトキシンおよびその誘導体が1種以上の化学療法剤と組み合わせられる、請求項4に記載の方法。
【請求項28】
前記化学療法剤が、アルキル化剤、プリンアンタゴニスト、ピリミジンアンタゴニスト、植物アルカロイド、インターカレートする抗生物質、アロマターゼインヒビター、代謝拮抗物質、有糸分裂インヒビター、増殖因子インヒビター、細胞周期インヒビター、酵素、トポイソメラーゼインヒビター、生物学的反応変更因子、抗ホルモンおよび抗アンドロゲンからなる群より選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記化学療法剤が、BCNU、シスプラチン、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、パクリタキセル、テモゾミド、トポテカン、フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、プロカルバジン、ダカルバジン、アルトレタミン、シスプラチン、メトトレキサート、メルカプトプリン、チオグアニン、フルダラビンホスフェート、クラドリビン、ペントスタチン、フルオロウラシル、シタラビン、アザシチジン、ビンブラスチン、ビンクリスリン、エトポシド、テニポシド、イリノテカン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、イダルビシン、プリカマイシン、ミトマイシン、ブレオマイシン、タモキシフェン、フルタミド、ロイプロリド、ゴセレリン、アミノグルテチミド、アナストロゾール、アムサクリン、アスパラギナーゼ、ミトキサントロン、ミトーテンおよびミホスチンからなる群より選択される、請求項28に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−532879(P2007−532879A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−507443(P2007−507443)
【出願日】平成17年4月6日(2005.4.6)
【国際出願番号】PCT/US2005/011523
【国際公開番号】WO2005/099774
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(506336968)トランスモレキュラー, インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】