説明

髄膜炎菌と肺炎球菌との結合型ワクチン及びそれを使用する方法

本開示は、被験体において肺炎球菌及び髄膜炎菌の両方に対する抗体を誘導する免疫原性組成物を含むワクチン製剤に関する。好ましい態様では、免疫原性組成物は、共有結合した肺炎球菌に由来する組み換えPsaA(「rPsaA」)と髄膜炎菌血清群Cに由来する莢膜多糖類とを含む。本開示は、上記免疫原性組成物を作製する方法及びそれを使用する方法にさらに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、肺炎球菌(S. pneumoniae)のPsaAタンパク質及び髄膜炎菌(N. meningitidis)の莢膜多糖類に対する抗体を誘導する免疫原性組成物を含むワクチン製剤に関する。本開示はさらに、該免疫原性組成物を作製する方法及びそれを使用する方法に関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本願は2009年4月16日付けで出願された米国特許出願第12/425,232号(その内容が参照により本明細書中に完全に援用される)の継続出願であり、その利益を主張するものである。
【背景技術】
【0003】
現在の肺炎球菌ワクチンの状況
肺炎球菌は被包性のグラム陽性双球菌である。細菌細胞を取り囲む多糖類(PS)の層である莢膜は、肺炎球菌の主要な病原性因子である。肺炎球菌は、その構造及び莢膜多糖類に対する免疫応答の違いに基づき、90種を超える異なる血清型に分類することができる。莢膜多糖類は現在使用されているワクチンのベースとなっている。FDAはヒトへの使用に対して2つのタイプの肺炎球菌ワクチン(23価PSワクチン及び7価PS/タンパク質結合型ワクチン)を認可している。23価PSワクチンは、肺炎球菌の23種の異なる血清型(疾患の症例のほぼ89%を占める)から精製された莢膜多糖類からなる。PNEUMOVAX(登録商標)(Merck)は、このワクチン群の一例である。しかしながら、PSは型特異性抗体を惹起する。或る血清型に対して産生された抗体は、他の血清型の感染に対する保護をもたらさない。この23価ワクチンの効力は制限されている。さらに、PSは免疫記憶を伴わない短期免疫を誘導するため、2歳未満の小児においては有効でないT細胞非依存性抗原である(非特許文献1)。このワクチンは、高齢者及び基礎疾患を有する患者等といった高リスク群にしか推奨されていない。最近認可された肺炎球菌ワクチンは、ジフテリア毒素の非毒性かつ免疫学的に交差反応性の突然変異体であり(非特許文献2)、小児用DPT(ジフテリア・破傷風・百日咳毒素)ワクチンの成分であるキャリアタンパク質CRM197と共有結合した、個々に調製した7種の異なる莢膜多糖類の結合体の混合物である。キャリアタンパク質と結合すると、そうでなければT細胞非依存性であるPSは、このタンパク質の免疫学的特性を得ることでT細胞依存性の抗原となる(非特許文献3)。この結合体は免疫記憶を伴う長期にわたる免疫を誘導し、年少乳児において有効である。この7種の血清型は小児科疾患におけるそれらの罹患率から選択された。CRM197(Wyeth)との7種の肺炎球菌莢膜PSの結合型ワクチン(PCV7)は、唯一市販されているこの種のワクチンである。このワクチンは、その高いコスト及び限られた供給量から、小児侵襲性肺炎球菌疾患の予防に使用するためにしか処方されない。これら2種類のワクチンの欠点は、それぞれのワクチン製剤中に含まれる肺炎球菌の特異的な血清型による感染に対する保護しかもたらさないということである。
【0004】
現在の髄膜炎菌ワクチンの状況
髄膜炎菌は被包性のグラム陰性双球菌である。少なくとも13種の異なる血清群が莢膜PSの構造に基づいて同定されているが、血清群A、B、C、Y及びW−135が疾患の症例のほとんどを占める。血清群Bの細菌(organisms)が全症例の46%を、血清群Cが全症例の45%を占め、血清群W−135及びY、並びに血清群に分類されない菌株が残りの症例の大半を占める。肺炎球菌と同様、髄膜炎菌ワクチンの主成分は莢膜PSである。そのワクチンは、莢膜PSワクチン及びPS−タンパク質結合型ワクチンという2種類に分類することができる。3つのバージョンのPSワクチンが市販されている。
【0005】
4価PSワクチン(GlaxoSmithKline及びSanofi-Pasteur)は血清群A、C、Y及びW−135から精製された莢膜PSからなる。このワクチンは高価であり、開発途上国にとって手頃な価格のものではない。2価PSワクチン(GlaxoSmithKline及びSanofi-Pasteur)は血清群A及びCから精製された莢膜PSからなる。3価PSワクチン(GlaxoSmithKline)は血清群A、C及びW−135から精製された莢膜PSからなる。このワクチンはアフリカの「髄膜炎地帯」の国々における流行期に使用されている。肺炎球菌ワクチンと同様、PSワクチンは2歳未満の小児には効果的でない。かかる欠陥はPS−タンパク質結合体によって克服することができる。
【0006】
2つのタイプの髄膜炎菌ワクチン結合体が市販されているか、又は開発中である。MENACTRA(登録商標)(Sanofi-Pasteur)は最初の4価結合型髄膜炎菌ワクチンである。このワクチンは、ジフテリアトキソイドと結合した髄膜炎菌多糖類(血清群A、C、Y及びW135)の混合物である。現在開発中の1価髄膜炎菌結合型ワクチンは、血清群C多糖類−ジフテリアトキソイド(Chiron及びWyeth)、血清群C PS−破傷風トキソイド(Chiron、Baxter)及び血清群A PS−破傷風トキソイド(PATH-SII)の結合体である。臨床試験の暫定的結果は、これらのワクチンが効果的であることを示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Greenwood BM et al., Trans R Soc Trop Med Hyg, 1980, 74:756-760
【非特許文献2】Uchida et al, J. Biol. Chem. 248:3838-3844, 1973
【非特許文献3】Schneerson R et al., J Exp Med 1980, 152:361-376
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
世界規模の公衆衛生システムに対する肺炎球菌感染及び髄膜炎菌感染の負担を考えると、両病原菌の感染によって生じる疾患を予防するのに有効な単独ワクチンを得ることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、2種の異なる微生物(肺炎球菌及び髄膜炎菌)に対する免疫応答を誘導する免疫原性組成物を提供する。本開示はさらに、薬学的に許容可能な希釈剤中に分散及び/又は溶解した上記免疫原性組成物を含む接種材料及び/又はワクチンを提供する。該ワクチンは、肺炎球菌タンパク質と結合した少なくとも1つの髄膜炎菌の莢膜多糖類を含む。好ましい態様では、免疫原性組成物は、肺炎球菌に由来する組み換えPsaA(「rPsaA」)及び髄膜炎菌血清群Cに由来する莢膜多糖類を含む。肺炎球菌タンパク質は、ワクチンにおいて抗原として、また髄膜炎菌の莢膜多糖類に対するキャリアタンパク質として働く。したがって、上記ワクチンは、肺炎球菌及び髄膜炎菌の両方の感染に対する二重の保護をもたらすのに有効である。
【0010】
肺炎球菌表面抗原A(PsaA)、肺炎球菌表面タンパク質A(PspA)、肺炎球菌表面タンパク質C(PspC)、ニューモリシン及びヒスチジントライアドタンパク質等といった幾つかの肺炎球菌タンパク質が、試験された全ての肺炎球菌血清型に広く認められる。これらのタンパク質が実験動物において防御抗体を惹起可能であることが研究により示されている。特に、PsaAは免疫学的方法及びPCR法によって、23種のワクチン血清型及び様々な国々からの臨床分離株を含む、試験された全ての肺炎球菌に認められた。PsaAは309アミノ酸残基長を有する。重要な態様では、本明細書に記載の免疫原性組成物中に使用されるrPsaAは、少なくとも配列番号1の21位〜319位にアミノ酸残基を含む。
【0011】
髄膜炎菌血清群Cの莢膜多糖類(約300000Da)は、α(2→9)グリコシド結合を有し、約80%がC7又はC8でO−アセチル化した約850個のシアル酸反復単位を含む。髄膜炎菌血清群Cの莢膜多糖類及びPsaAは結合形態で提供される。好ましい態様では、莢膜多糖類及びPsaAは共有結合によって結合している。
【0012】
別の態様では、被験体において肺炎球菌表面抗原A(PsaA)及び髄膜炎菌血清群Cに由来する莢膜多糖類に対する免疫応答を生じさせる方法が提供される。該方法は、rPsaA及び髄膜炎菌血清群Cに由来する莢膜多糖類に特異的な抗体の産生を誘導するのに有効な量のrPsaAと髄膜炎菌血清群Cに由来する莢膜多糖類との組み合わせを、被験体に投与することを含む。共有結合形態でのrPsaAと髄膜炎菌血清群Cに由来する莢膜多糖類との組み合わせを被験体に投与することは、被験体において免疫応答を生じさせるのに有効である。重要な態様では、結合した肺炎球菌表面抗原A(PsaA)及び莢膜多糖類の免疫原性は、抗原を個々に投与した場合に観察される免疫応答と比較して有意に増大している。この態様では、結合したPsaAについて、結合していないPsaAと比較して40倍を超える免疫原性の増大が見られ、結合した莢膜多糖類について、結合していない莢膜多糖類と比較して170倍を超える免疫原性の増大が見られる。
【0013】
免疫原性組成物は筋肉内投与、鼻腔内投与、経口投与、皮下投与、経皮投与及び経粘膜投与を含む、多数の異なる経路によって被験体に投与することができる。
【0014】
本明細書に記載の免疫原性組成物は、組み換えPsaA(「rPsaA」)を調製すること、及びrPsaAと髄膜炎菌血清群Cに由来する莢膜多糖類とを結合することを含む方法によって調製される。rPsaAは既知の組み換え技法を用いて調製することができる。莢膜多糖類は天然源から単離しても、又は当該技術分野で既知の多数の技法を用いて合成してもよい。
【0015】
本明細書に記載の免疫原性組成物は、肺炎球菌感染及び髄膜炎菌感染に対する二重の保護を有利にもたらす。本明細書に記載の免疫原性組成物は、PsaAを多糖類に対するタンパク質キャリアとしても利用する。
【0016】
有利には、本明細書で提供される結合した免疫原性組成物は、ワクチンを調製し、投与するコストを削減することができる。このワクチンは肺炎球菌疾患及び髄膜炎菌疾患の割合の高い開発途上国及び低開発国に対する経済的負担及び医学的負担を軽減するため、このことは、それらの国々にとって特に重要な利点である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例に従って作製された、5’末端及び3’末端に制限エンドヌクレアーゼ部位を含むクローン化psaA断片のヌクレオチド配列(配列番号1)を示す図である。
【図2】実施例に従って作製された組み換えPsaAタンパク質の推定アミノ酸配列(配列番号2)を示す図である。
【図3】実施例によるrPsaAのSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動及びウエスタンブロット分析の写真を示す図である。
【図4】実施例に従って作製された結合体について、タンパク質シグナルが低分子量位置から高分子量位置へシフトしたことを実証するクロマトグラムである。
【図5A】実施例による免疫ドットブロットの写真を示す図である。
【図5B】実施例によるウエスタンブロットの写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示は、髄膜炎菌に由来する莢膜多糖類及び肺炎球菌に由来するタンパク質を含む免疫原性組成物(「Pn−Mn」ワクチンと称する)を提供する。好ましい態様では、肺炎球菌のタンパク質は組み換え肺炎球菌表面抗原A(「rPsaA」)であり、髄膜炎菌の莢膜多糖類は血清群Cの莢膜多糖類である。PsaAは、試験した全ての肺炎球菌血清型において広く認められる。上記免疫原性組成物は、診断目的及び治療目的の抗体の産生を誘導するのに有用である。本開示はさらに、薬学的に許容可能な希釈剤中に分散又は溶解した上記免疫原性組成物を含む接種材料及びワクチンを提供する。肺炎球菌に由来するrPsaAが、髄膜炎菌血清群Cに由来する莢膜多糖類と共有結合していることが特に好ましい。
【0019】
「抗体」という用語は、抗原に特異的に結合することのできる、免疫グロブリンと呼ばれるグリコシル化タンパク質ファミリーの成員である分子を指す。「抗原」という語は、抗体によって結合される実体を指す。「免疫原」又は「免疫原性組成物」は、抗体産生を誘導するか、又はその受容体に結合する実体を指す。
【0020】
「タンパク質」及び「ポリペプチド」という語は、本明細書全体を通して区別なく使用され、ペプチド結合によって結合した一連のアミノ酸残基を意味する。
【0021】
髄膜炎菌血清群Cに由来する莢膜多糖類
多糖類は、免疫記憶をほとんど伴わない短期免疫を誘導するため、2歳未満の乳児においては有効でないT細胞非依存性(TI)抗原である。キャリアタンパク質と共有結合すると、得られる結合型ワクチン中のPS成分は、乳児及び若年小児においても免疫記憶を伴う長期の免疫を誘導するT細胞依存性(TD)抗原となる。
【0022】
髄膜炎菌血清群Cの莢膜多糖類は、α(2→9)グリコシド結合を有し、約80%がC7又はC8でO−アセチル化したシアル酸反復単位を含む。髄膜炎菌血清群Cの多糖類のサイズは、シアル酸反復単位の分子量を340ダルトンと仮定すると、約590個〜約1030個のシアル酸反復単位である。本発明において特に有用な髄膜炎菌血清群Cの莢膜多糖類のサイズは、約200kDa〜約350kDa、好ましくは約250kDa〜約300kDaであるが、必要に応じて他のサイズを使用してもよい。ただし、選択される多糖類のサイズは、キャリアタンパク質との結合後も被験体における抗体の産生を誘導するのに有効であるものとする。
【0023】
莢膜多糖類は、当該技術分野で既知の多数の技法を用いて天然源から単離することができる。例えば、髄膜炎菌血清群C株を規定の培地中で18時間培養し、0.5%ホルムアルデヒドで不活性化することができる。遠心分離して細胞を沈殿させた後、取り出した上清中の多糖類を0.1%セタブロンで沈殿させることができる。次いで、不溶性のセタブロン複合体を0.9M塩化カルシウム中に溶解し、粗多糖類を5倍容量のエタノールで沈殿させる。沈殿をリン酸緩衝液中にさらに溶解する。フェノール抽出及びリボヌクレアーゼ処理の後、サンプルを水に対して透析し、濃縮する(Bundle et al, J. Biol. Chem. 249:4797-4801, 1974(参照により本明細書中に援用される))。
【0024】
別の態様では、本明細書に記載のPn−Mn結合体において、髄膜炎菌血清群Cに由来する莢膜多糖類を、髄膜炎菌血清群A、B、D、X、Y、Z、29E、W−135又はそれらの組み合わせに由来する莢膜多糖類に置き換えてもよい。髄膜炎菌血清群A、B、C、D、X、Y、Z、29E及びW−135は疾患の症例のほとんどを占める。かかる結合体は、これらの血清群の感染に対する保護をもたらすために、抗原に対する免疫応答を誘導することが可能な被験体に投与することができる。髄膜炎菌血清群Aの多糖類(約300kDa)は、α(1→リン酸)グリコシド結合を有し、約70%〜90%がC3でO−アセチル化したN−アセチルマンノサミン6−リン酸反復単位からなる。髄膜炎菌血清群W135の多糖類(約300000ダルトン)は、約70%がシアル酸残基のC7又はC9でO−アセチル化した(2→6)α−D−ガラクトース(1→4)α−D−シアル酸反復単位からなる。髄膜炎菌血清群Yの多糖類(約300kDa)は、約70%がシアル酸残基のC7又はC9でO−アセチル化した(2→6)α−D−ガラクトース(1→4)α−D−シアル酸反復単位からなる。本発明において特に有用な髄膜炎菌の莢膜多糖類のサイズは、約200kDa〜約350kDa、好ましくは約250kDa〜約300kDaであるが、必要に応じて他のサイズを使用してもよい。ただし、選択される多糖類のサイズは、キャリアタンパク質との結合後も被験体における抗体の産生を誘導するのに有効であるものとする。これらの多糖類の活性化条件は、それらの構造の違いのために血清群Cの多糖類のものとは異なる場合がある。
【0025】
肺炎球菌タンパク質
PsaAは309アミノ酸残基長を有する。免疫原性組成物中に使用されるrPsaAは、少なくとも配列番号1の21位〜319位にアミノ酸残基を含むことが好ましい。
【0026】
肺炎球菌に由来する組み換えPsaAは、従来の組み換え技法を用いて調製することができる。所望のタンパク質をコードするDNAを作製するのに必要とされる組み換え手順は既知であり、当業者にとって日常的である。本発明を実施するために使用される核酸配列は、cDNA、ゲノムDNA、ベクター等のいずれであっても、様々な供給源から単離し、遺伝子操作し、増幅し、かつ/又は組み換え発現することができる。psaAのヌクレオチド配列は、配列番号2のヌクレオチド位置6〜867で与えられる。所望のタンパク質のコード配列をベクターにクローン化することができる。
【0027】
細菌細胞、哺乳動物細胞、酵母細胞、昆虫細胞又は植物細胞の発現系を含む任意の組み換え発現系を使用することができる。代替的には、これらの核酸は既知の化学合成法によってin vitroで合成することができる。次いで、相補鎖を合成し、適切な条件下で鎖を共にアニーリングするか、又は適切なプライマー配列と共にDNAポリメラーゼを用いて相補鎖を付加することによって二本鎖DNA断片を得ることができる。
【0028】
核酸増幅方法は当該技術分野で既知である。核酸を増幅し、組み換えPsaAの調製に使用されるpsaAコード配列を生成するために、オリゴヌクレオチドプライマーを使用することができる。このコード配列はプラスミド、in vitro、ex vivo及び/又はin vivoで細胞に感染又はトランスフェクトすることのできる組み換えウイルス、並びにPsaAポリペプチドをin vitro又はin vivoで発現させるために使用することのできる他のベクター等といった発現カセット中にクローン化することができる。抗生物質耐性等の選択可能な表現型を形質転換細胞に与えるために、選択マーカーを組み込むことができる。発現させたrPsaAは従来の技法を用いて回収し、精製することができる。
【0029】
別の態様では、PsaAに加えて、本明細書で提供されるPn−Mn結合型ワクチンの成分として他の肺炎球菌タンパク質を使用することができる。使用することのできる他の肺炎球菌タンパク質としては、ニューモリシン、肺炎球菌表面タンパク質A(PspA)、肺炎球菌表面タンパク質C(PspC又はCbpA)、PhtA又はBVH11−3、PhtB又はPhpA又はBVH−11、PhtE又はBVH−3)、PhtD又はBVH−11−2等、異なる命名法による肺炎球菌ヒスチジントライアドタンパク質又は類似のタンパク質、並びに肺炎球菌コリン結合タンパク質A(PcpA)、非ヘム鉄含有フェリチン又は肺炎球菌防御タンパク質(PppA、Dpr)、ノイラミニダーゼA(NanA)、ノイラミニダーゼB(NanB)、鉄輸送タンパク質又は鉄化合物結合タンパク質PiuA及びPiaA、N−アセチルムラモイル−L−アラニンアミダーゼ又は自己溶菌酵素(LytA)、エンド−β−アセチルグルコサミニダーゼ(LytB)、1,4−β−N−アセチルムラミダーゼ(acetylmuranminidase)(LytC)、カゼイン分解プロテアーゼ又はセリンプロテアーゼ(ClpP)、並びに接着病原性タンパク質A(adherence and virulence protein A)(PavA)が挙げられる。
【0030】
結合体の調製
多糖類はヒドロキシル基、場合によってはカルボキシル基及びアミノ基を含有し、タンパク質はアミノ基及びカルボキシル基を含有する。多糖類及びタンパク質はどちらも、天然型では互いに対する化学反応に活性を有しない。多糖類−タンパク質結合体を作製するためには、多糖類及びタンパク質の一方又は両方の適当な前処理又は活性化が、そうでなければ非反応性である分子を反応型に変換するのに必要とされる。タンパク質と多糖類とを結合する多くの方法が当該技術分野で既知である。多糖類を臭化シアンによって活性化して、ヒドラジド活性化タンパク質と反応するシアネート基を与えることができる(非特許文献3)。多糖類を臭化シアンによって活性化して、シアネート基を与えることができ、さらにジヒドラジドと反応し、その後EDCの存在下でタンパク質と結合する(Chu et al., Infect. Immun 1983; 40:245-256)。多糖類を部分的に加水分解し、還元末端にアミノ基を付加してもよい。二官能性リンカーをアミノ基に付加した後、活性化した多糖類をキャリアタンパク質と結合する(Costantino et al., Vaccine 1992; 10:691-8)。多糖類を1−シアノ−4−ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロボレートで活性化して、キャリアタンパク質と反応するシアネート基を与えることができる(Lees A, Nelson BL, Mond JJ. Vaccine 1996; 14:190-198)。
【0031】
好ましい態様では、rPsaAを使用前に、例えば約4℃で約18時間〜約24時間、30mM NaClに対して透析する。次いで、透析したrPsaAを例えば生理食塩水中の0.1M MES(pH6.5)、0.5Mヒドラジン(pH7.0)及び20mM 1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド−HCl(Sigma-Aldrichの「EDC」)で処理してタンパク質を活性化し、4時間インキュベートする。次いで、処理したrPsaAを例えば1M NaOHで中和した後、例えば3mM Na2CO3及び30mM NaClを含有する緩衝液に対して4℃で透析することでタンパク質を透析する。活性化し、透析したrPsaAは即座に使用しても、又は4℃で保管してもよい。
【0032】
好ましい態様では、莢膜多糖類を6mM過ヨウ素酸ナトリウムで処理して、室温で4時間インキュベートし、莢膜多糖類を活性化する。次いで、活性化した莢膜多糖類を、例えば4℃で約18時間〜約24時間脱イオン水に対して透析する。活性化し、透析した莢膜多糖類は即座に使用しても、又は4℃で保管してもよい。
【0033】
活性化したrPsaAを凍結乾燥し、水に再溶解する。活性化し、透析した莢膜多糖類(を凍結乾燥し、0.2M HEPES(pH7.5)、30mM EDTAに再溶解する。このタンパク質溶液を多糖類溶液に添加し、一晩インキュベートする。NaBH4を50mMの最終濃度まで添加し、約4時間〜約6時間インキュベートして、多糖類−タンパク質結合体中のC=N二重結合をC−N単結合に還元し、未反応のアルデヒドをアルコールに還元する。結合体を150mM NaCl、10mM HEPES(pH7)、1mM EDTAに対して4℃で透析する。次いで、透析した結合体を例えばHPLCによって、結合時の19分の位置から18分の位置までのタンパク質シグナル(280nm)のシフトについて評価することができる。
【0034】
結合体を使用する方法
本明細書で提供されるrPsaA/莢膜多糖類結合体は、抗原に対する免疫応答を誘導することが可能な被験体に投与することができる。rPsaA/莢膜多糖類結合体は、抗体反応を誘導するのに有効な量で被験体に投与される。「有効な量」とは、被験体が抗rPsaA抗体及び抗莢膜多糖類抗体の両方を産生するのを助けるrPsaA/莢膜多糖類結合体の量である。かかる抗体は肺炎球菌及び髄膜炎菌血清型Cによる感染を予防し得る。
【0035】
当業者は当該技術分野で既知の常法を用いて、或る量のrPsaA/莢膜多糖類結合体が被験体において免疫を誘導するのに有効であるか否かを判断することができる。例えば、被験体において抗体を産生する抗原の能力は、別個の被覆抗原rPsaA及び莢膜多糖類を用いて、それぞれのELISAアッセイにおいて抗体についてスクリーニングすることによって決定することができる。
【0036】
一態様では、髄膜炎菌血清群C及び肺炎球菌に対するワクチン製剤が提供される。このワクチン製剤は、被験体において髄膜炎菌血清群C及び肺炎球菌の両方に対する免疫応答を生じさせるのに有効である。ワクチン製剤は、肺炎球菌に由来するrPsaA及び髄膜炎菌血清群Cに由来する莢膜多糖類を含む。結合型免疫原性組成物は、薬学的に許容可能な希釈剤、キャリア、アジュバント及び/又は緩衝剤等の1つ又は複数のさらなる成分と共に与えることができる。例えば、結合体は希釈剤中に分散又は溶解してもよい。
【0037】
免疫原性組成物は溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル、持続放出製剤、粉末等として調製することができる。抗原及び免疫原性組成物は、それと混合可能な生理学的に許容可能なキャリアと混合してもよい。キャリアとしては、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール、それらの組み合わせ等を挙げることができる。ワクチンは有効性をさらに高めるために、湿潤剤又は乳化剤又はpH緩衝剤等の補助物質をさらに含有してもよい。ワクチン製剤中の結合体の投与としては、例えば経口投与、静脈内投与、筋肉内投与、経鼻投与、皮下投与及び腹腔内投与等の様々な経路による送達を挙げることができる。
【0038】
免疫原性組成物は投与製剤に適合する形で、治療的に有効で、保護性かつ免疫原性となるような量で投与される。投与すべき量は、例えば抗体を合成し、必要に応じて細胞性免疫応答を生じさせる被験体の免疫系の能力等、免疫される被験体によって異なる。投与すべき抗原及び免疫原性組成物の正確な量は、実践者の判断によって決まる。しかしながら、当業者は好適な投与量範囲を容易に決定することができ、これは数マイクログラムから数ミリグラム程度であり得る。初回投与及び追加抗原投与の好適な計画は同様に変化し得るが、初回投与に続く後続投与を挙げることができる。ワクチンの投与量は同様に投与経路によって異なり、被験体の体格に応じて変化する。
【0039】
重要な態様では、本明細書で提供されるrPsaA/莢膜多糖類Pn−Mn結合体は、若年小児における中耳炎及び髄膜炎の主な原因である、肺炎球菌及び髄膜炎菌血清型Cの両方の感染を予防するために使用することができる。さらに、本明細書で提供されるrPsaA/莢膜多糖類結合体は、他の年齢層の集団における菌血症、肺炎及び髄膜炎等の他の肺炎球菌疾患及び髄膜炎菌疾患の予防にも使用することができる。
【0040】
以下の実施例は本発明を説明するが、本発明を限定しないことが意図される。本明細書中で使用される全ての百分率は、特に指定のない限り重量によるものである。本明細書に引用される全ての特許、特許出願及び参考文献は、その全体が参照により本明細書中に援用される。
【実施例】
【0041】
本明細書で提供されるワクチン及びその多くの利点のさらなる理解は、以下の実施例によって与えられる。
【0042】
A.精製rPsaAの調製
psaA遺伝子のクローン化及び発現
組み換え肺炎球菌PsaA(rPsaA)タンパク質を調製するために、大腸菌における肺炎球菌psaA遺伝子のコード配列を、発現ベクターpET22b(+)(Novagen,Madison,WI)にクローン化した。配列分析により、psaAのコード配列がBamHI制限部位及びHindIII制限部位を含まないことが明らかになった。rPsaAタンパク質のクローン化、発現及び精製を目的として、PCR増幅用のプライマー対を以下のようにして設計した:1)PCR産物が5’末端及び3’末端にそれぞれBamHI部位及びHindIII部位を有する;2)クローン化psaAのリーディングフレームがベクターのリーディングフレームとインフレームとなる;及び3)作製されたrPsaAタンパク質がそのC末端にHisタグを有する。フォワードプライマー及びリバースプライマー(5’−GGGATCCTAGCGGAAAAAAAGATACA−3’(配列番号3)、5’−GCAAGCTTTGCCAATCCTTCAGCAATC−3’(配列番号4))はそれぞれ、psaAコード配列のヌクレオチド番号42からヌクレオチド番号921までの868bpの断片を増幅することを目的としていた。下線部のヌクレオチドは、これらのプライマーにおけるBamHI部位及びHindIII部位を示している。コードされたrPsaAタンパク質のアミノ残基数は331、予測分子量は36940ダルトンである。クローン化断片のヌクレオチド配列を図1に、rPsaAの予測アミノ酸配列を図2に示す。
【0043】
典型的なPCR混合物は、5μmolのプライマー、20ngの肺炎球菌血清型4の染色体DNA及びPCR Supermix(Life Technologies,Rockville,MD)を含有するものであった。PCR条件は以下の通りである:95℃で40秒間のDNA変性、42℃で1分間のプライマーアニーリング、及び72℃で1.5分間のDNA合成。30サイクルの合成の後、72℃で5分間の伸長で反応を終結させた。PCR産物をGeneCleanキット(Qbiogen,Carlsbad,CA)を用いて精製し、pGEM−T easyベクター(Promega,Madison,WI)にクローン化し、大腸菌DH5αに形質転換した。挿入断片を制限酵素BamHI及びHindIIIでの二重消化の後、得られたプラスミドから単離し、pET22b(+)の適合部位にクローン化してプラスミドpST648を生成し、大腸菌BL21(DE3)に形質転換した。pST648上のpsaA遺伝子が計画通りにクローン化されたことを確認するために、クローン化PCR産物の制限地図を決定した。結果は公開されているpsaA遺伝子のものと一致していた。BamHI−HindIII制限断片のpET22b(+)への適当なクローン化を、組み換えタンパク質の誘導及びカルボキシル末端でのHisタグの存在によってさらに確認した。
【0044】
組み換えタンパク質の合成を誘導するために、イソプロピル−13−D−チオガラクトシド(IPTG、0.1mM)を大腸菌BL21(DE3)保有pST648の対数期培養物(A600nm=0.6)に添加し、培養をさらに2時間継続した。細胞を採取し、洗浄し、200mM NaClを含有する50mM Tris−HCl(pH7.9)(TNバッファー;1/10容量)中に4℃で懸濁し、超音波処理によって破壊した。未破壊の細胞を遠心分離によって除去した後、上清をSDS−PAGE分析に供した。組み換えタンパク質がHisタグを有することを確認するために、SDSゲル上のタンパク質をマウスモノクローナル抗ポリヒスチジン抗体(Sigma-Aldrich,St. Louis,MO)に対するウエスタンブロットによって分析した。ゲル上のタンパク質をニトロセルロース紙に転写し、紙をblotto(20mM Tris、0.2M NaCl、1.5%脱脂乳)で洗浄し、blotto中のモノクローナル抗ポリヒスチジン抗体(200倍希釈)と共に2時間インキュベートし、blottoで3回洗浄し、blotto中のアルカリホスファターゼ結合ヤギ抗マウス抗体(5000倍希釈)と共にインキュベートし、blotto及びAPバッファー(0.1M NaCl、0.1M Tris−Cl、pH9.5)で洗浄した。0.1%ナフトール及び1%ファストブルー(Sigma-Aldrich)と共にインキュベートすることによって抗体−抗原相互作用を可視化した。結果を図3に示す。この結果から、過剰産生されたタンパク質が実際にrPsaAであり、大腸菌BL2I(DE3)(pST648)の粗細胞溶解物をタンパク質精製におけるrPsaAの供給源として使用することができることが示される。
【0045】
rPsaAタンパク質の精製
rPsaAタンパク質を精製するために、粗細胞溶解物をHis−Bind Column(Novagen,Madison,WI)にロードした。樹脂を結合バッファー(50mMイミダゾールを含有するTNバッファー)及び洗浄バッファー(200mMイミダゾールを含有するTNバッファー)で洗浄して、過剰のタンパク質及び非特異的に結合したタンパク質を除去した。結合したタンパク質を溶出バッファー(1Mイミダゾールを含有するTNバッファー)で溶出し、上記に記載されるようなSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動及びモノクローナル抗ポリヒスチジン抗体に対するウエスタンブロットによって分析した。抗ポリヒスチジンモノクローナル抗体と反応するタンパク質を含有する画分を、精製rPsaAタンパク質として回収した(図3)。
【0046】
B.rPsaA−MCPS結合体の調製
rPsaAの活性化
rPsaAを使用前に30mM NaClに対して4℃で一晩透析した。透析したrPsaAを生理食塩水中の1M MES(pH6.5)、5Mヒドラジン(pH7.0)、1M EDC(Sigma-Aldrich)と、0.1M、0.5M及び20mMのそれぞれの最終濃度で混合した。室温で4時間インキュベートした後、1M NaOH(0.05mL)を添加して反応を中和し、その後3mM Na2CO3及び30mM NaClを含有する緩衝液に対して4℃で透析した。このタンパク質溶液を4℃で保管した。
【0047】
MCPSの活性化
髄膜炎菌血清型Cの莢膜PS(MCPS、10mg/ML)を、過ヨウ素酸ナトリウムと6mMの最終濃度で混合した。室温で4時間インキュベートした後、反応混合物を脱イオン水に対して一晩透析し、4℃で保管した。
【0048】
PsaA−MCPSの結合
一定分量の活性化rPsaA(0.25mg)を凍結乾燥し、25μlの水に再溶解した。一定分量の活性化MCPS(0.25mg)を凍結乾燥し、30mM EDTAを含有する25μlの0.2M HEPES(pH7.5)に再溶解した。これら2つの溶液を合わせた。室温で一晩インキュベートした後、5μlの1M NaBH4を添加し、さらに6時間継続してインキュベートした。150mM NaCl、10mM HEPES(pH7)、1mM EDTAに対して4℃で透析した後、結合体生成物を4℃で保管した。MCPSとrPsaAとの結合体を、WatersのUltrahydrogel Linearサイズ排除カラムを用いたHPLC分析によって評価し、206nm及び280nmの波長でモニタリングした。図4に示されているように、結合すると、タンパク質シグナルはクロマトグラムにおいて低分子量位置から高分子量位置までシフトした。
【0049】
C.rPsaA−MCPS結合体の特性化
免疫原性
マウス(NIH−Swiss)に、マウス1匹当たり1μgの用量のrPsaA、MCPS又はPsaA−MCPS結合体のそれぞれで2週間毎に皮下免疫した。3回目の免疫の2週間後に血液を眼の静脈から採取し、抗体の力価を酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によって求めた。簡潔に述べると、マイクロタイタープレート(Dynatec、no.1)を、PBS(pH7.5)中の抗原、0.5μg/mLのrPsaA又は5μg/mLの天然MCPS及び5mg/mlのメチル化ヒト血清アルブミンからなる溶液100μlを添加することによってMCPSで被覆し、室温で少なくとも4時間インキュベートした。ウェルを0.05%Tween 20及び0.02%NaN3を含有するPBSで3回洗浄した(150μl/ウェル)。100μLの希釈剤(PBS中の5%ウシ血清及び0.02%NaN3)を各ウェルに添加し、希釈した(100倍)抗血清の2倍段階希釈物を調製した。標準血清(MCPS又はrPsaAに対するIgG 3200単位/mLと指定した)を同じプレート内で同様に処理した。室温で一晩インキュベートし、3回洗浄した後、100μlのアルカリホスファターゼ結合ヤギ抗マウスIgG Fc(3000倍希釈)を添加し、室温で3時間インキュベートした。ウェルを3回洗浄し、100μlの基質(0.3mM MgCl2を含有するIM Tris−HCl(pH9.8)中1mg/mLのp−ニトロフェニルリン酸)を添加した。プレートを室温で20分間(サンプル及び標準血清の発色に応じて異なる場合がある)インキュベートし、吸光度を405nmで測定した。MCPS及びrPsaAに対するそれぞれの標準血清を研究室で調製し、サンプル血清の抗体レベルを求めるために標準として使用した。結果を下記表Iに示す。
【0050】
【表1】

【0051】
rPsaA及びMCPSはどちらも、マウスにおいてアジュバントの非存在下で免疫原性であった。それらの免疫原性は結合後に有意に増大した。各々の個別成分と比較したところ、免疫原性はrPsaA及びMCPSに対してそれぞれおよそ41倍及び170倍増大していた。
【0052】
抗rPsaA抗体の反応性
PsaAの能動免疫が、肺炎球菌感染から実験動物を保護するのに有効であることが実証された。保護をもたらすには、抗PsaAは全ての肺炎球菌細胞と相互作用する必要がある。生成した抗rPsaA抗体の交差反応性を、肺炎球菌の臨床分離株(血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7C、8、9A、10A、10B、11A、12A、14、15A、15C、16F、18A、18C、19A、19F、20、24、22A、23B、23F、23C及び35を含む)に対する免疫ドットブロット及びウエスタンブロットによって調べた。肺炎球菌の細胞を15mLのトッドヘヴィットブロス中、5%CO2の存在下で37℃で一晩培養し、遠心分離によって採取し、2mLのTNバッファー中に懸濁した。氷浴中でエネルギーレベル7、50%サイクル、5分間の超音波処理によって細胞を破壊した。10000×gで10分間の遠心分離の後、上清を回収し、肺炎球菌タンパク質の供給源として使用した。免疫ドットブロットについては、5μlの細胞溶解物をニトロセルロース紙にスポットした。ウエスタンブロットについては、無作為に選択した肺炎球菌細胞溶解物をSDS−PAGEによって分析し、ニトロセルロース紙に転写した。抗rPsaA抗体を使用した以外は上記に記載されるようにして紙を処理した。結果を図5A及び図5Bに示す。抗rPsaA抗体は試験した全ての血清型の細胞と交差反応し、PsaAの分子量に相当する見掛けの分子量を有する単一タンパク質と反応した。
【0053】
抗MCPS抗体の殺菌活性
誘導されたMCPS特異的抗体の生物学的機能を、髄膜炎菌血清群C(C11株)に対する殺菌アッセイによって決定した。簡潔に述べると、5%正常ウマ血清(NHS)を含有するブレインハートインフュージョン(BHI)寒天プレート上で細菌を一晩培養し、2日目に新たなプレートに移し、5時間培養した。この5時間培養物からの細菌を、530nmでの透過率が65%〜66%となるまでDPBSG(1×PBS(pH7.2)、0.5mM MgCl2、0.9mM CaCl2及び0.01%ゼラチン)中に懸濁した後、およそ4000cfu/mLの細菌を含有するように同じバッファーで10000倍に希釈した。マイクロタイタープレートのウェルに、試験血清及び対照血清の2倍希釈物をDPBSGで50μl調製し、25μlの細菌懸濁液及び25μlの幼齢ウサギ補体(Pel-Freez,Rogers,Arkansas)と混合した。37℃で60分間インキュベートした後、10μlの細菌懸濁液を各々のウェルから取り出し、BHI/NHSプレート上に塗り広げた。37℃、5%CO2で一晩インキュベートした後、コロニーを計数した。殺菌力価は、抗血清を含まず、補体を含有する対照ウェルと比較して50%のCFUの低下を生じたサンプルの最大希釈率の逆数とした。各々のマウス群の力価の幾何平均を算出した。結果は下記表IIに示す。
【0054】
【表2】

【0055】
血清はMCPS及びrPsaA−MCPS結合体の両方について殺菌活性を有していたが、結合体に対する力価の方が有意に高かった(およそ46倍)。
【0056】
本発明を特定のプロセス及び生成物の実施形態を特に参照して、詳細に説明したが、様々な変更、修正及び適合を本開示をもとに行ってもよく、それらが添付の特許請求の範囲に規定される本発明の精神及び範囲に含まれるように意図されることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肺炎球菌タンパク質と結合した髄膜炎菌に由来する莢膜多糖類を含むワクチン。
【請求項2】
前記髄膜炎菌の莢膜多糖類が、血清群A、B、C、D、X、Y、Z、29E、W−135及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、少なくとも1つの髄膜炎菌血清群に由来する、請求項1に記載のワクチン。
【請求項3】
前記髄膜炎菌の莢膜多糖類が髄膜炎菌血清群Cに由来する、請求項2に記載のワクチン。
【請求項4】
前記肺炎球菌タンパク質がPsaA、ニューモリシン、PspA、PspC、CbpA;PhtA、BVH11−3、PhtB、PhpA、BVH−11、PhtE、BVH−3、PhtD及びBVH−11−2からなる群から選択される肺炎球菌ヒスチジントライアドタンパク質、PcpA、PppA、Dpr、NanA、NanB、PiuA、PiaA、LytA、LytB、LytC、ClpP、PavA並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載のワクチン。
【請求項5】
前記肺炎球菌タンパク質がPsaAである、請求項4に記載のワクチン。
【請求項6】
個体において髄膜炎菌及び肺炎球菌に対する免疫応答を生じさせる方法であって、髄膜炎菌及び肺炎球菌の両方に対する免疫応答を生じさせるのに有効な量のワクチン組成物を前記個体に投与することを含み、該ワクチン組成物が肺炎球菌タンパク質と結合した髄膜炎菌の莢膜多糖類を含む、方法。
【請求項7】
前記ワクチンを経口経路、静脈内経路、筋肉内経路、経鼻経路、皮下経路、腹腔内経路及びそれらの組み合わせからなる群から選択される経路によって投与する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記髄膜炎菌の莢膜多糖類が、血清群A、B、C、D、X、Y、Z、29E、W−135及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの髄膜炎菌血清群に由来する、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記髄膜炎菌の多糖類が髄膜炎菌血清群Cに由来する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記肺炎球菌タンパク質がPsaA、ニューモリシン、PspA、PspC、CbpA;PhtA、BVH11−3、PhtB、PhpA、BVH−11、PhtE、BVH−3、PhtD及びBVH−11−2からなる群から選択される肺炎球菌ヒスチジントライアドタンパク質、PcpA、PppA、Dpr、NanA、NanB、PiuA、PiaA、LytA、LytB、LytC、ClpP、PavA並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記肺炎球菌タンパク質がPsaAである、請求項10に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【公表番号】特表2012−524099(P2012−524099A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506176(P2012−506176)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/031083
【国際公開番号】WO2010/120921
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(511250530)ハワード・ユニヴァーシティー (1)
【氏名又は名称原語表記】HOWARD UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】2400 Sixth Street NW, Suite 321, Washington, District of Columbia 20059, United States of America
【出願人】(511250541)
【氏名又は名称原語表記】THE UNITED STATES OF AMERICA, DEPARTMENT OF HEALTH AND HUMAN SERVICES
【住所又は居所原語表記】6011 Executive Boulevard, Suite 325, Rockville, Maryland 20852−3804, United States of America
【Fターム(参考)】