説明

髄膜炎菌由来のBASB006ポリヌクレオチドおよびポリペプチド

【課題】本発明は、髄膜炎菌感染に対するワクチン及び感染診断アッセイを提供する。
【解決手段】髄膜炎由来BASB006ポリペプチドおよびBASBポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、かかるポリペプチドを組替え法により生産する方法、ならびに診断、予防および治療における使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ポリヌクレオチド(本明細書中で「BASB006ポリヌクレオチド」と呼ぶ)、それによりコードされるポリペプチド(本明細書中で「BASB006」または「BASB006ポリペプチド」と呼ぶ)、組換え物質およびその生産方法に関する。別の態様において、本発明は、細菌感染に対するワクチンを含む、前記ポリペプチドおよびポリヌクレオチドの使用方法に関する。更なる態様では、本発明は特定の病原体の感染を検出するための診断アッセイに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)(髄膜炎菌)はヒト上気道から頻繁に単離されるグラム陰性細菌である。この細菌は、時折、菌血症や髄膜炎等の侵入性細菌性疾患を引き起こす。髄膜炎菌性疾患の発生数には、地理的、季節的および年次的な差異が見られる(Schwartz,B., Moore,P.S., Broome, C.V.;Clin.Microbiol.Rev.2(Supplement), S18-S24,1989)。温暖な国々で最も多い疾患はB血清群株によるものであって、その発生数は 1〜10/100,000/年・総人口の間で変動し、しばしばより高値に達する(Kaczmarski,E.B.(1997), Commun.Dis.Rep.Rev.7:R55-9,1995;Scholten,R.J.P.M., Bijlmer, H.A., Poolman,J.T.ら、Clin.Infect.Dis. 16:237-246, 1993;Cruz,C., Pavez,G., Aguilar,E.,ら、Epidemiol.Infect.105:119-126,1990)。
【0003】
A血清群の髄膜炎菌が優位を占める流行は、その大部分が中央アフリカで発生し、しばしば 1000/100,000/年のレベルにまで達する(Schwartz,B., Moore,P.S., Broome, C.V. Clin.Microbiol.Rev.2(Supplement), S18-S24,1989)。髄膜炎菌性疾患全体からみて殆ど全ての症例がA、B、C、W-135およびYの血清群の髄膜炎菌により引き起こされ、4価のA、C、W-135、Y 多糖ワクチンが利用可能である(Armand,J., Arminjon,F., Mynard,M.C., Lafaix,C., J.Biol.Stand. 10:335-339,1982)。
【0004】
前記多糖ワクチンは、それらをキャリアータンパク質に化学的に結合することにより現在も改良が行われている(Lieberman,J.M., Chiu,S.S., Wong,V.K.ら、JAMA 275:1499-1503, 1996)。
【0005】
B血清群のワクチンは利用できない。何故なら、おそらくはこのBの被膜多糖が宿主成分との構造類似性を有しているために、該多糖が免疫原性をもたないことが見出されたからである(Wyle,F.A., Artenstein,M.S., Brandt,M.L.ら、J.Infect.Dis. 126:514-522, 1972;Finne,J.M., Leinonen,M.,Makela,P.M.Lancet ii.:355-357,1983)。
【0006】
長年にわたり、髄膜炎菌の外膜をベースとしたワクチンを開発するための試みが開始され、行われてきた(de Moraes,J.C., Perkins,B., Camargo,M.C.ら、Lancet 340:1074-1078,1992;Bjune,G., Hoiby,E.A. Gronnesby,J.K.ら、338:1093-1096,1991)。そのようなワクチンは年長の児童(4歳より上)および青年男女で57%〜85%の効果を示す。
【0007】
多くの細菌の外膜成分(例えば、PorA、PorB、Rmp、Opc、Opa、FrpB)がこれらのワクチン中に存在しており、これらの成分の観察された防御への寄与については依然として更なる定義付けが必要である。他の細菌の外膜成分は、動物またはヒトの抗体を用いることにより防御免疫の誘導に潜在的に関連すると定義付けられており、例えばTbpBおよびNspAがある(Martin,D., Cadieux,N., Hamel,J., Brodeux,B.R., J.Exp.Med. 185:1173-1183,1997;Lissolo,L., Maitre-Wilmotte,C., Dumas,p.ら、Inf.Immun. 63:884-890,1995)。防御免疫機構は、抗体媒介性の殺菌活性およびオプソニン性食菌作用(opsonophagocytosis)と関係がある。
【0008】
菌血症動物モデルを使用することで、全ての抗体媒介性機構が結びつけられた(Saukkonen,K., Leinonen,M., Abdillahi,H.Poolman,J.T. Vaccine 7:325-328, 1989)。後期補体成分媒介性の殺菌機構が髄膜炎菌性疾患に対する免疫にとって重要であることは一般に認められている(Ross,S.C., Rosenthal P.J., Berberic,H.M., Densen,P.J.Infect.Dis. 155:1266-1275, 1987)。
【0009】
ナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)の感染頻度は過去数十年の間に劇的に上昇している。これは、複数の抗生物質に耐性な株の出現および免疫系が弱められた人口数の増大を原因とする。幾つかのまたは全ての標準的な抗生物質に耐性であるナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)株が単離されることは、もはや珍しいことではない。この現象は、新たな抗菌剤、ワクチン、薬剤のスクリーニング法、およびこれらの生物用の診断試験に対する、今までに経験したことの無い医薬の要求および需要を生み出した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Schwartz, B., Moore, P.S., Broome, C.V., Clin. Microbiol. Rev.2(Supplement), S18-S24, 1989
【非特許文献2】Kaczmarski,E.B.(1997), Commun. Dis. Rep. Rev. 7:R55-9, 1995
【非特許文献3】Scholten, R.J.P.M., Bijlmer, H.A., Poolman, J.T., Clin. Infect.Dis. 16:237-246, 1993
【非特許文献4】Cruz, C., Pavez, G., Aguilar, E., Epidemiol. Infect. 105:119-126, 1990
【非特許文献5】Armand, J., Arminjon, F., Mynard, M.C., Lafaix, C., J. Biol. Stand. 10:335-339, 1982
【非特許文献6】Lieberman, J.M., Chiu, S.S., Wong, V.K., JAMA 275:1499-1503, 1996
【非特許文献7】Wyle, F.A., Artenstein, M.S., Brandt, M.L., J. Infect. Dis. 126:514-522, 1972
【非特許文献8】Finne, J.M., Leinonen, M.,Makela, P.M., Lancet ii.:355-357, 1983
【非特許文献9】de Moraes, J.C., Perkins, B., Camargo, M.C., Lancet 340:1074-1078, 1992
【非特許文献10】Bjune, G., Hoiby, E.A. Gronnesby, J.K., 338:1093-1096, 1991
【非特許文献11】Martin,D., Cadieux,N., Hamel,J., Brodeux,B.R., J.Exp.Med. 185:1173-1183,1997
【非特許文献12】Lissolo, L., Maitre-Wilmotte, C., Dumas, P., Inf. Immun. 63:884-890, 1995
【非特許文献13】Saukkonen, K., Leinonen, M., Abdillahi, H., Poolman, J.T., Vaccine 7:325-328, 1989
【非特許文献14】Ross, S.C., Rosenthal, P.J., Berberic, H.M., Densen, P.J., Infect. Dis. 155:1266-1275, 1987
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の概要
本発明は、BASB006、特にBASB006ポリペプチドおよびBASB006ポリヌクレオチド、組換え物質およびその生産方法に関する。別の態様において、本発明は、特に微生物性疾患の予防および治療を含む、前記ポリペプチドおよびポリヌクレオチドの使用方法に関する。更なる態様では、本発明は、微生物感染に関連する疾患およびかかる感染に関連する症状を検出するための診断アッセイ、例えば、BASB006ポリヌクレオチドもしくはポリペプチドの発現または活性を検出するためのアッセイに関する。
【0012】
開示された発明の精神および範囲内での種々の変更および修飾は、後述の説明を読むことにより、また本開示内容の他の部分を読むことにより、当業者には容易に明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1−1】BASB006ポリヌクレオチド配列のアラインメント。配列番号1と同一のヌクレオチドはドットで示し、ダッシュ(-)はヌクレオチドが存在しないことを示す。
【図1−2】図1−1の配列の続き。
【図1−3】図1−2の配列の続き。
【図1−4】図1−3の配列の続き。
【図1−5】図1−4の配列の続き。
【図1−6】図1−5の配列の続き。
【図1−7】図1−6の配列の続き。
【図1−8】図1−7の配列の続き。
【図1−9】図1−8の配列の続き。
【図1−10】図1−9の配列の続き。
【図1−11】図1−10の配列の続き。
【図1−12】図1−11の配列の続き。
【図2−1】BASB006ポリペプチド配列のアラインメント。配列番号2と同一のアミノ酸はドットで示し、ダッシュ(-)はアミノ酸が存在しないことを示す。
【図2−2】図2−1の配列の続き。
【図2−3】図2−2の配列の続き。
【図2−4】図2−3の配列の続き。
【図3】組換えBASB006形態の発現および精製。実質的に精製されたタンパク質をPAGE-SDS条件下で4〜20%勾配のポリアクリルアミドゲル(NOVEX)上で分離し、クーマシーブルーR250で染色した。ゲル上にロードしたサンプルは、BASB006を濃縮した(80%以上)タンパク質画分(レーン1および2)ならびに分子量マーカー(MW)と一致した。
【図4】数種のナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)B血清群株由来の天然BASB006タンパク質の免疫感作マウス由来の血清による認識。
【図5】ヒト回復期血清(B部)と免疫感作マウス(A部)中の抗BASB006抗体。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の説明
本発明は、以下により詳細に記載するように、BASB006ポリペプチドおよびポリヌクレオオチドに関する。特に、本発明は、ナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)のBASB006ポリペプチドおよびポリヌクレオチドに関し、該ポリペプチドはインフルエンザ菌(H.influenzae)のHapポリペプチドとそのアミノ酸配列相同性により関連付けられる。本発明は特に、それぞれ配列番号1,3および配列番号2,4に示すヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を有するBASB006に関する。後述の配列表に「DNA」として列挙した配列は、当業者であればかかる配列を一般にリボポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドに有効に使用し得ることが理解されることから、本発明の1実施形態の例示にすぎないことが理解されよう。
【0015】
ポリペプチド
本発明の1態様において、本明細書中で「BASB006」および「BASB006ポリペプチド」と呼ぶナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)のポリペプチド、そして生物学上、診断上、予防上、臨床上または治療上有用なその変異体、ならびにそれらを含む組成物が提供される。
【0016】
さらに、本発明は、
(a) 配列番号2,4のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、さらにより好ましくは少なくとも95%の同一性、最も好ましくは少なくとも97〜99%の同一性を示すかまたは完全に同一であるアミノ酸配列を含んでなる単離されたポリペプチド、
(b) 配列番号1,3の全長にわたる配列番号1,3のポリヌクレオチド配列に対して、それぞれ少なくとも85%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、さらにより好ましくは少なくとも95%の同一性、より一層好ましくは少なくとも97〜99%の同一性を有するかまたは完全に同一であるポリヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド、
(c) 配列番号2,4のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、さらにより好ましくは少なくとも95%の同一性、より一層好ましくは少なくとも97〜99%の同一性を有するかまたは完全に同一であるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド、
を提供する。
【0017】
配列番号2,4に示すBASB006ポリペプチドは、ナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)のATCC13090株およびH44/76株から得たBASB006ポリペプチドである。
【0018】
また本発明は、BASB006ポリペプチドの免疫原性断片、すなわち配列番号2,4のアミノ酸配列を含むBASB006ポリペプチドと同一または実質的に同一の免疫原活性を有する該ポリペプチドの連続した部分、を提供する。すなわち、前記断片(必要であれば、担体に結合されている)は、BASB006ポリペプチドを認識する免疫応答を引き出すことができる。こうした免疫原性断片には、例えば、N末端のリーダー配列、および/または膜貫通ドメインおよび/またはC末端のアンカードメインを欠くBASB006ポリペプチドが含まれる。好ましい態様において、本発明のBASB006の免疫原性断片は、配列番号2の全長にわたる配列番号2,4のポリペプチド配列に対して少なくとも85%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、さらにより好ましくは少なくとも95%の同一性、最も好ましくは少なくとも97〜99%の同一性を有するポリペプチドの実質的に全ての細胞外ドメインを含む。
【0019】
断片は、本発明の任意のポリペプチドの任意のアミノ酸配列と部分的には完全に同一であるが全てが同一ではないアミノ酸配列を有するポリペプチドである。BASB006ポリペプチドに関して言えば、断片は「フリースタンディング」であっても、または該断片がその部分または領域を形成するより大きなポリペプチド中に、最も好ましくは単一のより大きなポリペプチド中の単一の連続した領域として含まれていてもよい。
【0020】
好ましい断片は、例えば、配列番号2,4のアミノ酸配列またはその変異体の部分(例えば、アミノ末端および/もしくはカルボキシ末端アミノ酸配列を含む連続した一連の残基)を有するトランケーションポリペプチドを含む。
【0021】
宿主細胞により、または宿主細胞内で生産される本発明のポリペプチドの分解形態も好ましい。さらに好ましいのは、αヘリックスおよびαヘリックス形成領域、βシートおよびβシート形成領域、ターンおよびターン形成領域、コイルおよびコイル形成領域、親水性領域、疎水性領域、α両親媒性領域、β両親媒性領域、フレキシブル領域、表面形成領域、基質結合領域、および高抗原性指数(high antigenic index)領域を含む断片などの、構造的および機能的特性により特徴付けられる断片である。
【0022】
さらに好ましい断片には、配列番号2,4のアミノ酸配列に由来する少なくとも15、20、30、40、50もしくは100個の連続したアミノ酸を有するアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチド、または配列番号2,4のアミノ酸配列から末端切断された(truncated)もしくは欠失した少なくとも15、20、30、40、50もしくは100個の連続したアミノ酸のアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチド、を含む。
【0023】
本発明のポリペプチドの断片を使用して、ペプチド合成により対応する全長ポリペプチドを生産することができる。従って、これらの断片を中間体として使用して、本発明の全長ポリペプチドを生産することができる。
【0024】
特に、数個、5〜10個、1〜5個、1〜3個、1〜2個または1個のアミノ酸が任意の組合せで置換、欠失または付加されている変異体が好ましい。
【0025】
本発明のポリペプチドまたは免疫原性断片は「成熟」タンパク質の形であっても、前駆体または融合タンパク質等のより大きいタンパク質の一部であってもよい。しばしば、追加のアミノ酸配列を含めることが有利であり、このようなアミノ酸配列には、分泌またはリーダー配列、プロ配列、多重ヒスチジン残基のような精製に役立つ配列、または組換え体生産の間の安定性を確保する付加的配列が含有される。さらに、外来ポリペプチドまたは脂質テイル(lipid tail)またはポリヌクレオチド配列の追加により最終的な分子の免疫原としての可能性を高めることも考慮される。
【0026】
1つの態様において、本発明は、本発明のポリペプチドまたはその断片と、各種サブクラス(IgG、IgM、IgA、IgE)の免疫グロブリンのH鎖またはL鎖の定常領域の様々な部分と、を含んでなる遺伝子工学的に作製された可溶性融合タンパク質に関する。免疫グロブリンとしてはヒトIgG、特にIgG1のH鎖の定常部が好ましく、その場合は融合がヒンジ領域で起こる。特定例では、血液凝固因子Xaで開裂され得る開裂配列を組み込むことで、Fc部分を簡単に除去できる。
【0027】
さらに、本発明は、これら融合タンパク質の遺伝子工学的作製方法、ならびに薬物スクリーニング、診断および治療におけるそれらの使用に関する。また、本発明の更なる態様はこのような融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドに関する。融合タンパク質技術の例は国際特許出願 WO94/29458 およびWO94/22914に見いだせる。
【0028】
前記タンパク質を化学的に結合するかまたは組換え融合タンパク質として発現させることにより、発現系において該タンパク質が非融合タンパク質に比べて増大されたレベルで産生される。融合パートナーはTへルパーエピトープ、好ましくはヒトにより認識されるTヘルパーエピトープの提供を助ける(免疫学的融合パートナー)か、または前記タンパク質の、元の組換えタンパク質より高い産生量での発現を助ける(発現エンハンサー)ことができる。好ましくは、前記融合パートナーは免疫学的融合パートナーおよび発現エンハンサーパートナーの両方である。
【0029】
融合パートナーには、ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)由来のプロテインDおよびインフルエンザウイルス由来の非構造タンパク質NS1(赤血球凝集素)が含まれる。別の融合パートナーはLytAとして知られるタンパク質である。好ましくは、該分子のC末端部分を使用する。LytAは、N-アセチル-L-アラニンアミダーゼであるアミダーゼLytA(lytA遺伝子によりコードされる[Gene. 43(1986) page 265-272])、すなわちペプチドグリカン骨格内の特定の結合を特異的に分解する自己分解酵素を合成するストレプトコッカス・ニューモーニア(Streptococcus pneumoniae)から得られる。前記LytAタンパク質のC末端ドメインは、コリン、またはDEAE等の数種のコリン類似体に対する親和性に関与している。この性質を融合タンパク質の発現に有用な大腸菌(E.coli)C-LytA発現プラスミドの開発に利用した。そのアミノ末端に前記C-LytA断片を含有するハイブリッドタンパク質の精製については、Biotechnology:10. (1992) page 795-798に記載されている。前記LytA分子のC末端に見出され、残基178から始まる反復部分(例えば残基188〜305)を使用することができる。
【0030】
また、前記ポリペプチドの変異体、すなわち保存的アミノ酸置換(ある残基が性質の似ている他の残基により置換される)により基準ポリペプチドと相違しているポリペプチドも本発明に含まれる。典型的なこうした置換は、Ala, Val, Leu および Ileの間;Ser とThr の間;酸性残基 AspとGlu の間;Asn とGln の間;塩基性残基 LysとArg の間;または芳香族残基 PheとTyr の間で起こる。
【0031】
本発明のポリペプチドは任意の適当な方法で生産することができる。このようなポリペプチドには、単離された天然のポリペプチド、組換え的に生産されたポリペプチド、合成的に生産されたポリペプチド、またはこれらの方法の組合せにより生産されたポリペプチドが含まれる。こうしたポリペプチドを生産するための手段は当技術分野でよく理解されている。
【0032】
本発明のポリペプチドはナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)由来であることが最も好ましいが、好ましくは同じ分類学上の属に含まれるその他の生物から得ることができる。また、本発明のポリペプチドは、例えば同じ分類学上の科または綱の生物から得ることもできる。
【0033】
ポリヌクレオチド
本発明の目的は、BASB006ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、特に本明細書中でBASB006と呼ぶポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供することにある。
【0034】
本発明の特に好ましい実施形態では、前記ポリヌクレオチドは、配列番号1,3に示した配列を含むBASB006ポリペプチドをコードする領域を含み、これには全長遺伝子またはその変異体が含まれる。
【0035】
配列番号1,3で示されるBASB006ポリヌクレオチドは、ナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)のATCC13090株およびH44/76株に由来するBASB006ポリヌクレオチドである。
【0036】
本発明の更なる態様では、BASB006ポリペプチドおよびポリヌクレオチド、特にナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)のBASB006ポリペプチドおよびポリヌクレオチドをコードする、ならびに/または発現する単離された核酸分子が提供され、これには例えば、プロセシングされていないRNA、リボザイムRNA、mRNA、cDNA、ゲノムDNA、B−およびZ−DNAが含まれる。本発明の更なる実施形態には、生物学上、診断上、予防上、臨床上または治療上有用なポリヌクレオチドおよびポリペプチド、およびその変異体、ならびにそれらを含む組成物が含まれる。
【0037】
本発明の別の態様は、配列番号2,4の推定アミノ酸配列を有するBASB006ポリペプチドをコードする、少なくとも1つの全長遺伝子を含む単離されたポリヌクレオチド、および該ポリヌクレオチドと密接に関連するポリヌクレオチドならびにその変異体に関する。
【0038】
本発明の別の特に好ましい実施形態としては、配列番号2,4のアミノ酸配列を含むかもしくは該配列からなるナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)由来のBASB006ポリペプチド、またはその変異体がある。
【0039】
本明細書中で提供される情報を用いると、配列番号1,3に示すポリヌクレオチド配列等の、BASB006ポリペプチドをコードする本発明のポリヌクレオチドは、標準的なクローニング法およびスクリーニング法、例えばナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)細胞を出発物質として用いて細菌から染色体DNA断片をクローニングおよび配列決定し、次いで全長クローンを得る方法等により得ることができる。例えば、配列番号1,3に示すポリヌクレオチド配列等の本発明のポリヌクレオチド配列を得るためには、典型的には大腸菌またはある他の適当な宿主内のナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)の染色体DNAクローンのライブラリーを、放射性標識したオリゴヌクレオチド、好ましくは部分配列由来の17マー以上の長さのものでプローブする。その後、該プローブのDNAと同一のDNAを担持するクローンを、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件を用いて識別することができる。従って、ハイブリダイゼーションにより同定された個々のクローンを、元のポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列から設計した配列決定用プライマーを用いて配列決定することにより、その後ポリヌクレオチド配列を両方向に伸長して全長遺伝子配列を決定することが可能である。そうした配列決定は、例えばプラスミドクローンから調製した変性二本鎖DNAを用いて都合よく実施する。適当な技術はManiatis,T., Fritsch,E.F.およびSambrookら、MOLECULAR CLONING, A LABORATORY MANUAL,第2版;Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York(1989)に記載されている(特にScreening By Hybridization 1.90 およびSequencing Denatured Double-Stranded DNA Templates 13.70を参照されたい)。また、直接ゲノムDNA配列決定を行って全長遺伝子配列を得ることもできる。本発明の具体例である配列番号1,3に示した各ポリヌクレオチドは、ナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)由来のDNAライブラリー中に見出された。
【0040】
さらに、配列番号1,3に示す各DNA配列は、当業者に周知のアミノ酸残基の分子量値を用いて算出しうる推定分子量を有する、配列番号2,4に示すおおよその数のアミノ酸残基を有するタンパク質をコードするオープンリーディングフレームを含有する。
【0041】
配列番号1のポリヌクレオチド(配列番号1のヌクレオチド番号1の開始コドンとヌクレオチド番号4363で始まる終結コドンとの間)は、配列番号2のポリペプチドをコードする。配列番号3のポリヌクレオチド(配列番号3のヌクレオチド番号1の開始コドンとヌクレオチド番号4372で始まる終結コドンとの間)は、配列番号4のポリペプチドをコードする。
【0042】
更なる態様において、本発明は、下記(a)または(b)のポリヌクレオチド配列を含む、または下記(a)または(b)のポリヌクレオチド配列からなる、単離されたポリヌクレオチドを提供する;
(a) 配列番号1,3のポリヌクレオチド配列に対して、それぞれその配列番号1,3の全長にわたって少なくとも85%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、さらにより好ましくは少なくとも95%の同一性、より一層好ましくは少なくとも97〜99%の同一性を有するかもしくは完全に同一であるポリヌクレオチド配列、または
(b) 配列番号2,4のアミノ酸配列に対して、それぞれその配列番号2,4の全長にわたって少なくとも85%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、さらにより好ましくは少なくとも95%の同一性、より一層好ましくは少なくとも97〜99%の同一性もしくは100%きっかりの同一性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列。
【0043】
ナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)以外の種に由来する相同体およびオーソログ体を含む本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、配列番号1,3の配列もしくはその断片からなるもしくはそれらを含む標識されたプローブまたは検出可能なプローブを用いて、ストリンジェントな条件下で(例えば、45〜65℃の範囲の温度および0.1〜1%のSDS濃度を用いて)適当なライブラリーをスクリーニングし、該ポリヌクレオチド配列を含む全長遺伝子および/またはゲノムクローンを単離する各工程を含んでなる方法により得られる。
【0044】
本発明は、配列番号1,3中のコード配列(オープンリーディングフレーム)に対して、その全長にわたり同一であるポリヌクレオチド配列を提供する。また、本発明により、成熟ポリペプチドもしくはその断片のコード配列単独、ならびに別のコード配列(例えば、リーダーまたは分泌配列、プレ−またはプロ−またはプレプロ−タンパク質配列をコードする配列)をそのリーディングフレーム内に有する成熟ポリペプチドもしくはその断片のコード配列が提供される。また、本発明のポリヌクレオチドは、例えば、限定するものではないが、少なくとも1つの5'および3'非コード配列、例えば、転写されるが翻訳されない配列、終結シグナル(例えば、rho依存性およびrho非依存性終結シグナル)、リボソーム結合部位、Kozak配列、mRNA安定化配列、イントロン、ならびにポリアデニル化シグナル、を含む少なくとも1つの非コード領域を含有していてもよい。また、このポリヌクレオチド配列は、追加のアミノ酸をコードする追加のコード配列を含んでいてもよい。例えば、融合ポリペプチドの精製を容易にするマーカー配列がコードされ得る。本発明の特定の実施形態では、マーカー配列は、pQEベクター(Qiagen, Inc.)により提供されかつ Gentzら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:821-824(1989)に記載されるような、ヘキサ−ヒスチジンペプチド、またはHAペプチドタグ(Wilsonら、Cell 37:767(1984))であり、いずれもそれらに融合させたポリペプチド配列を精製する際に有用でありうる。また、本発明のポリヌクレオチドは、限定するものではないが、構造遺伝子および該遺伝子がその自然状態において関連する遺伝子発現制御配列を含むポリヌクレオチドを含む。
【0045】
配列番号2,4のBASB006ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、それぞれ配列番号1のヌクレオチド番号1〜4362中に含まれるポリペプチドコード配列、または配列番号3のヌクレオチド番号1〜4371中に含まれるポリペプチドコード配列と同一であってもよい。あるいは、遺伝子コードの重複性(縮重)のため、やはり配列番号2,4のポリペプチドをコードする配列であってもよい。
【0046】
本明細書中で使用する用語「ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド」は、本発明のポリペプチド、特に細菌のポリペプチド、より特定的には配列番号2,4に示すアミノ酸配列を有するナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)BASB006のポリペプチド、をコードする配列を含むポリヌクレオチドを包含する。また、この用語は、前記ポリペプチドをコードする単一の連続領域または不連続領域(例えば、組み込まれたファージ、組み込まれた挿入配列、組み込まれたベクター配列、組み込まれたトランスポゾン配列により、またはRNAエディティングもしくはゲノムDNA再構成により分断されたポリヌクレオチド)を、やはりコード配列および/または非コード配列を含有しうる追加の領域と共に含むポリヌクレオチドを包含する。
【0047】
本発明はさらに、配列番号2,4の推定アミノ酸配列を有するポリペプチドの変異体をコードする、本明細書中に記載されたポリヌクレオチドの変異体に関する。本発明のポリヌクレオチドの断片を使用して、例えば、本発明の全長ポリヌクレオチドを合成することができる。
【0048】
更にとりわけ好ましい実施形態としては、配列番号2,4のBASB006ポリペプチドのアミノ酸配列を有するBASB006変異体をコードするポリヌクレオチドであって、数個、少数個、5〜10個、1〜5個、1〜3個、2個、1個、または0個のアミノ酸残基が任意の組合せで置換、修飾、欠失および/または付加されているポリヌクレオチドがある。これらのうち特に好ましいのは、BASB006ポリペプチドの特性および活性を変更しないサイレント置換、付加および欠失である。
【0049】
本発明の更に好ましい実施形態としては、配列番号2,4に示すアミノ酸配列を有するBSAB006ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに対して、その全長にわたり、少なくとも85%の同一性を有するポリヌクレオチド、ならびにかかるポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドがある。これに関して、配列番号2,4に示すアミノ酸配列を有するBSAB006ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに対して、その全長にわたり、少なくとも90%の同一性を有するポリヌクレオチドが特に好ましく、これらの特に好ましいポリヌクレオチドのうち少なくとも95%の同一性を有するものがとりわけ好ましい。更に、少なくとも95%の同一性を有するポリヌクレオチドのうち少なくとも97%の同一性を有するものが一層好ましく、これらのうち少なくとも98%および少なくとも99%の同一性を有するものが特に一層好ましく、少なくとも99%の同一性を有するものが最も好ましいものである。
【0050】
好ましい実施形態としては、配列番号1,3のDNAによりコードされる成熟ポリペプチドと実質的に同一の生物学的機能または活性を保持しているポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドがある。
【0051】
本発明の特定の好ましい実施形態に従って、特にストリンジェントな条件下で、配列番号1,3のポリヌクレオチド等のBASB006ポリヌクレオチド配列にハイブリダイズするポリヌクレオチドが提供される。
【0052】
更に、本発明は、本明細書中で提供されるポリヌクレオチド配列にハイブリダイズするポリヌクレオチドに関する。これに関して、本発明は特に、ストリンジェントな条件下で本明細書中に記載のポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドに関する。本明細書中で使用する場合、用語「ストリンジェントな条件」および「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは、配列間に少なくとも95%の同一性、および好ましくは少なくとも97%の同一性がある場合にのみハイブリダイゼーションが生じることを意味する。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の特定の具体例は、50% ホルムアミド、5×SSC (150mM NaCl, 15mM クエン酸三ナトリウム) 、50mMリン酸ナトリウム (pH7.6)、5×Denhardt溶液、10% デキストラン硫酸および20μg/mlの変性し剪断したサケ精子DNAを含有する溶液中42℃で一夜インキュベートし、次いでハイブリダイゼーション支持体を 0.1×SSC 中約65℃で洗浄することである。ハイブリダイーゼションおよび洗浄条件は周知であり、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor, N.Y.,(1989)中、特に第11章に例示されている。また、溶液ハイブリダイゼーションを、本発明により提供されるポリヌクレオチド配列と共に使用することができる。
【0053】
また、本発明は、配列番号1,3に示すポリヌクレオチド配列またはその断片の配列を有するプローブを用いて、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で完全な前記遺伝子を含有する適当なライブラリーを配列番号1,3に示すポリヌクレオチド配列についてスクリーニングし、前記ポリヌクレオチド配列を単離することにより得られるポリヌクレオチド配列からなる、または該ポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供する。かかるポリヌクレオチドを得るために有用な断片には、例えば、本明細書中の他の箇所において十分に記載したプローブおよびプライマーが含まれる。
【0054】
本発明のポリヌクレオチドアッセイに関して本明細書中の他の箇所において論じたように、例えば、本発明のポリヌクレオチドをRNA、cDNAおよびゲノムDNAに対するハイブリダイゼーションプローブとして使用して、BASB006をコードする完全長cDNAおよびゲノムクローンを単離したり、BASB006遺伝子に対して高い同一性、特に高い配列同一性を有する別の遺伝子のcDNAおよびゲノムクローンを単離することができる。このようなプローブはたいてい少なくとも15個のヌクレオチド残基または塩基対を含む。好ましくは、このようなプローブは少なくとも30個のヌクレオチド残基または塩基対を有し、少なくとも50個のヌクレオチド残基または塩基対を有していてもよい。特に好ましいプローブは少なくとも20個のヌクレオチド残基または塩基対を有し、かつ30個未満のヌクレオチド残基または塩基対を有するものである。
【0055】
BASB006遺伝子のコード領域を配列番号1,3に示すDNA配列を用いてスクリーニングすることにより単離し、オリゴヌクレオチドプローブを合成することができる。次いで、本発明の遺伝子の配列に相補的な配列を有する標識オリゴヌクレオチドを使用してcDNA、ゲノムDNAまたはmRNAのライブラリーをスクリーニングし、該ライブラリーのどのメンバーに前記プローブがハイブリダイズするかを決定することができる。
【0056】
完全長DNAを得るための、または短鎖DNAを伸長させるための、当業者に周知で利用可能な方法がいくつかあり、例えば、cDNA末端高速増幅法(RACE)に基づいた方法がある(例えば、Frohmanら, PNAS USA 85, 8998-9002, 1988を参照のこと)。例えばMarathonTM技術(Clontech Laboratories Inc.)により例示されるような、上記技法の最近の改良により、より長いcDNAの検索が大いに簡便化された。MarathonTM技術では、所定の組織より抽出されたmRNAからcDNAを作製し、各末端に「アダプター」配列を連結する。続いて、遺伝子特異的およびアダプター特異的なオリゴヌクレオチドプライマーの組合せを用いて核酸増幅(PCR)を行い、前記DNAの「欠失」5'末端を増幅する。次に、「ネステッド(nested)」プライマー、すなわち増幅産物の内部にアニールするように設計されたプライマー(典型的には、アダプター配列のさらに3'側にアニールするアダプター特異的プライマーおよび選択された遺伝子配列のさらに5'側にアニールする遺伝子特異的プライマー)を用いてPCR反応を繰り返す。その後、この反応の産物をDNA塩基配列決定により解析し、この産物を既存のDNAに直接結合して完全な配列とするか、または5'プライマー設計用の新たな配列情報を用いて別の全長PCRを行うことにより、全長DNAを構築することができる。
【0057】
本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドを、本明細書中でポリヌクレオチドアッセイについて更に論じたように、例えば、疾患(特にヒトの疾患)用の治療薬および診断薬を発見するための、研究試薬ならびに材料として使用することができる。
【0058】
配列番号1〜4の配列に由来するオリゴヌクレオチドである本発明のポリヌクレオチドを本明細書中に記載した方法、好ましくはPCRにおいて使用して、本発明で同定されたポリヌクレオチドの全体または部分が感染組織中の細菌にて転写されるか否かを確認することができる。また、病原体が到達した感染段階および感染型を診断する際にそのような配列が有用であることは理解されよう。
【0059】
また、本発明は、成熟タンパク質に追加のアミノもしくはカルボキシ末端アミノ酸を、または(例えば、成熟形態が2以上のポリペプチド鎖を有する場合は)該成熟タンパク質内部に追加のアミノ酸を付け加えたポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。そのような配列は、タンパク質を前駆体から成熟形態にプロセシングする際に何らかの役割を果たし、タンパク質の輸送を可能とし、タンパク質の半減期を延長するかまたは短縮し、あるいは特にアッセイまたは生産のためのタンパク質の操作を容易にすることができる。in vivoの場合は一般に、前記の追加のアミノ酸を細胞内酵素により前記成熟タンパク質から除去することができる。
【0060】
本発明の各々どのポリヌクレオチドについても、それに相補的なポリヌクレオチドが提供される。これらの相補的なポリヌクレオチドは、それらが相補性を示す各ポリヌクレオチドに対して十分に相補的であることが好ましい。
【0061】
前駆体タンパク質は、そのポリペプチドの成熟形態が1以上のプロ配列に融合されている場合、該ポリペプチドの不活性形態であってもよい。プロ配列が除去されると、通常そのような不活性前駆体は活性化される。前記プロ配列のいくつかまたは全ては、活性化の前に除去され得る。一般に、そのような前駆体はプロタンパク質と呼ばれる。
【0062】
ヌクレオチドを示す標準的な記号A、G、C、T/Uに加えて、用語「N」を本発明の特定のポリヌクレオチドを記載する際に使用することもできる。「N」は4種のDNAまたはRNAヌクレオチドのうちの任意のものが、DNAまたはRNA配列中のその示された位置にみられることを意味する。ただし、隣接するヌクレオチド位置と組み合わせて用いられる場合や正しいリーディングフレームで読まれる場合には、Nはそのようなリーディングフレーム内に早期終結コドンを生じる効果を有する核酸ではないことが好ましい。
【0063】
まとめると、本発明のポリヌクレオチドは成熟タンパク質、成熟タンパク質にリーダー配列を付け加えたもの(プレタンパク質とも呼ばれる)、プレタンパク質のリーダー配列ではない1以上のプロ配列を有する成熟タンパク質の前駆体、またはプレプロタンパク質(通常はポリペプチドの活性形態および成熟形態を生産するプロセシング工程の間に除去される1以上のプロ配列、およびリーダー配列を有する、プロタンパク質の前駆体)をコードするものであってよい。
【0064】
本発明の態様に従うと、本発明のポリヌクレオチドの治療または予防目的での使用、特に遺伝子的免疫感作(genetic immunization)における使用が提供される。
【0065】
遺伝子的免疫感作における本発明のポリヌクレオチドの使用では、好ましくは、プラスミドDNAの筋内への直接注射(Wolffら、Hum Mol Genet(1992)1:363, Manthorpeら、Hum. Gene Ther.(1983)4:419)、特定のタンパク質担体と複合体化させたDNAの送達(Wuら、J Biol Chem.(1989)264:16985)、DNAとリン酸カルシウムとの共沈殿(BenvenistyおよびReshef, PNAS USA, (1986)83:9551)、DNAの種々の形態のリポソームへの封入(Kanedaら、Science(1989)243:375)、粒子撃ち込み(particle bombardment)(Tangら、Nature(1992)356:152, Eisenbraunら、DNA Cell Biol(1993)12:791)ならびにクローン化レトロウイルスベクターを用いたin vivo感染(Seegerら、PNAS USA(1984)81:5849)等の適切な送達方法を使用する。
【0066】
ベクター、宿主細胞、発現系
本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含むベクター、本発明の該ベクターにより遺伝子操作された宿主細胞ならびに組換え法による本発明のポリペプチドの生産に関する。本発明のDNA構築物から誘導されたRNAを用いてこの種のタンパク質を生産するために、無細胞翻訳系を使用することもできる。
【0067】
本発明の組換えポリペプチドは、当業者に周知の手法により、発現系を含む遺伝子操作された宿主細胞から調製することができる。従って、更なる態様において、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含む発現系、かかる発現系を用いて遺伝子操作された宿主細胞、ならびに組換え法による本発明のポリペプチドの生産に関する。
【0068】
本発明のポリペプチドの組換え生産のために、宿主細胞を遺伝子操作して発現系もしくはその部分または本発明のポリヌクレオチドを組み込むことができる。ポリヌクレオチドの宿主細胞への導入は、例えば、Davisら, BASIC METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY (1986) および Sambrookら, MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989) などの多くの標準的な実験室マニュアルに記載された方法、例えば、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、トランスベクション(transvection)、マイクロインジェクション、カチオン性脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、スクレープローディング(scrape loading)、弾丸導入(ballistic introduction)および感染などによって行うことができる。
【0069】
適当な宿主の代表的な例として、細菌細胞(例:ストレプトコッカス、スタフィロコッカス、エンテロコッカス、大腸菌、ストレプトミセス、シアノバクテリア、枯草菌、モラクセラ・カタラリス(Moraxella catarrhalis)、ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)およびナイセリア・マニンギチジス(Neisseria maningitidis))、真菌細胞(例:酵母であるクルベロミセス(Kluveromyces)、サッカロミセス、また担子菌、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)およびアスペルギルス)、昆虫細胞(例:ショウジョウバエS2、スポドプテラSf9)、動物細胞(例:CHO、COS、HeLa、C127、3T3、BHK、293、CV−1およびBowes メラノーマ細胞)および植物細胞(例:裸子植物または被子植物の細胞)が挙げられる。
【0070】
多種多様な発現系を使用して、本発明のポリぺプチドを生産することができる。そのようなベクターとして、特に、染色体、エピソームおよびウイルス由来のベクター、例えば、細菌プラスミド由来、バクテリオファージ由来、トランスポゾン由来、酵母エピソーム由来、挿入因子由来、酵母染色体エレメント由来、ウイルス(例:バキュロウイルス、SV40のようなパポバウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルス、ピコルナウイルス、レトロウイルスおよびアルファウイルス)由来のベクター、ならびにこれらの組合せに由来するベクター、例えば、コスミドやファージミドのようなプラスミドとバクテリオファージの遺伝的要素に由来するものがある。発現系構築物は発現を調節するだけでなく発現を起こさせる制御領域を含んでいてもよい。一般的に、宿主内でポリヌクレオチドを維持し、増やすかもしくは発現するのに適した系もしくはベクター、および/またはポリペプチドを発現するのに適した系もしくはベクターはどれもこの点に関して発現のために使用しうる。例えば、Sambrookら, MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL (前掲) に記載されるような、周知で日常的に用いられる種々の技法のいずれかにより、適当なDNA配列を発現系に挿入することができる。
【0071】
真核細胞における組み換え発現系の場合、翻訳されたタンパク質を小胞体の内腔に、細胞周辺腔に、または細胞外の環境に分泌させるために、適当な分泌シグナルを発現されるポリペプチドに組み込むことができる。これらのシグナルは該ポリペプチドに対して内因性であっても、異種シグナルであってもよい。
【0072】
組換え細胞培養物から本発明のポリペプチドを回収し精製するには、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーを含めた周知の方法を用いることができる。最も好ましくは、イオン金属アフィニティークロマトグラフィー(ion metal affinity chromatography:IMAC)が精製に用いられる。ポリペプチドが細胞内合成、単離および/または精製中に変性されるときは、タンパク質を再生させるための周知の技法を用いて、活性のあるコンフォメーションを復元することが可能である。
【0073】
また、前記発現系はウイルスまたは細菌等の組換え生存微生物であってもよい。目的とする遺伝子を組換え生存ウイルスまたは細菌のゲノム内に挿入することができる。この生存ベクターを用いての接種またはin vivo感染により、抗原のin vivo発現および免疫応答の誘導がもたらされる。この目的のために使用するウイルスおよび細菌としては、例えば、ポックスウイルス(例えば、ワクシニアウイルス、鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルス)、アルファウイルス(シンドビスウイルス、セムリキ森林ウイルス、ヴェネズエラウマ脳炎ウイルス)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ピコルナウイルス(ポリオウイルス、ライノウイルス)、ヘルペスウイルス(水痘-帯状ヘルペスウイルス等)、リステリア、サルモネラ、シゲラ、ナイセリア、BCG、がある。これらのウイルスおよび細菌は有毒であっても、または生ワクチンを得るために種々の方法により弱毒化されていてもよい。そのような生ワクチンもまた、本発明の一部を成すものである。
【0074】
診断アッセイ、予後アッセイ、血清型判別(serotyping)アッセイおよび変異アッセイ
また、本発明は、本発明のBASB006ポリヌクレオチドおよびポリペプチドの診断用試薬としての使用に関する。真核生物(特に哺乳動物、とりわけヒト)におけるBASB006ポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドの検出により、疾患、疾患の段階または薬剤に対する感染生物の応答を診断するための診断方法が提供される。真核生物(特に哺乳動物、とりわけヒト、特にBASB006遺伝子もしくはタンパク質を含む生物に感染した、または感染した可能性のあるヒト)を、種々の周知の技法および本明細書中で示す方法により核酸レベルまたはアミノ酸レベルで検出することができる。
【0075】
予後、診断または他の分析用のポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、感染したと思われる個体および/または感染した個体の生体材料から得ることができる。これらのいずれかの供給源に由来するポリヌクレオチド、特にDNAまたはRNAを検出のために直接使用してもよいし、分析前にPCRまたは他の増幅法を使って酵素的に増幅してもよい。また、RNA(特にmRNA)、cDNAおよびゲノムDNAを同様の方法で使用することもできる。増幅を用いて、個体に存在する感染生物または常在生物の種および系統を、該生物の選択したポリヌクレオチドの遺伝子型の分析により特徴付けることができる。欠失および挿入は、近縁の生物(好ましくは同じ属で異なる種の生物または同じ種で異なる系統の生物)から選択された基準配列の遺伝子型と比較したときの増幅産物のサイズの変化により検出できる。点突然変異は増幅DNAを標識したBASB006ポリヌクレオチド配列とハイブリダイズさせることで同定できる。完全にもしくは有意にマッチした配列と、不完全にもしくはより有意にミスマッチである二重鎖とは、DNAまたはRNAそれぞれについて、DNアーゼまたはRNアーゼ消化により、または融解温度もしくは再生キネティクスの差を検出することにより区別できる。また、ポリヌクレオチド配列の差異は、基準配列と比較した場合のゲルでのポリヌクレオチド断片の電気泳動の移動度の変化により検出できる。これは変性剤を用いても用いなくても実施できる。また、ポリヌクレオチドの差異は、直接DNAまたはRNA塩基配列決定によっても検出できる(例えば、Myersら, Science 230:1242(1985) を参照のこと)。特定位置での配列変化はヌクレアーゼプロテクションアッセイ(例えば、RNアーゼ、V1およびS1プロテクションアッセイ)または化学的開裂法によっても確認できる(Cottonら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:4397-4401(1985)を参照のこと)。
【0076】
別の実施形態において、BASB006ヌクレオチド配列またはその断片を含むオリゴヌクレオチドプローブのアレイを構築して、例えば、遺伝的突然変異、血清型、分類学的な分類または同定の効率的なスクリーニングを実施することができる。アレイ技法は周知であって一般に適用可能であり、これを使用して遺伝子発現、遺伝的連鎖、および遺伝的多様性を含む分子遺伝学における疑問に取り組むことができる(例えば、Cheeら, Science, 274:610 (1996)を参照のこと)。
かくして、別の態様において、本発明は、
(a) 本発明のポリヌクレオチド(好ましくは、配列番号1、3のヌクレオチド配列)もしくはその断片、
(b) (a) のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列、
(c) 本発明のポリペプチド(好ましくは、配列番号2、4のポリペプチド)もしくはその断片、または
(d) 本発明のポリペプチド(好ましくは、配列番号2、4のポリペプチド)に対する抗体、
を含む、診断用キットに関する。
【0077】
このようなキットにおいて、(a)、(b)、(c)または(d)が実質的な構成成分であることが理解されよう。このようなキットは疾患または疾患への罹りやすさなどを診断するうえで有用である。
【0078】
本発明はまた、診断薬としての本発明のポリヌクレオチドの使用に関する。疾病または病原性と関連した、本発明のポリヌクレオチド、好ましくは配列番号1、3の変異型の検出は、該ポリヌクレオチドの過少発現、過剰発現または改変した発現により生ずる疾病、疾病の進行の予後、疾病のステージの決定、またはその疾病への罹りやすさの診断に追加しうる、またはその診断を下しうる診断用ツールを提供するだろう。該ポリヌクレオチドに突然変異がある生物、特に感染症の生物を、本明細書の他に記載されているさまざまな技法によりポリヌクレオチドレベルで検出することができる。
【0079】
また本発明のポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドにおいて突然変異または多型性(対立遺伝子変異)を有する生物由来の細胞を、種々の技法によってポリヌクレオチドレベルまたはポリペプチドレベルで検出することができ、それにより例えば血清型別にすることができる。例えば、RT−PCRを使用して、RNAにおける突然変異を検出することができる。特に好ましくは、RT−PCRを、例えばGeneScanなどの自動検出システムと組み合わせて使用する。RNA、cDNAまたはゲノムDNAもまた同じ目的でPCRに使用することができる。例えば、BASB006ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに相補的なPCRプライマーを使用して、突然変異を同定し、解析することができる。
【0080】
更に本発明は、5’末端および/または3’末端から取り出した1、2、3または4個のヌクレオチドを有するプライマーを提供する。これらのプライマーは特に、生体材料などの個体由来のサンプルから単離したBASB006 DNAおよび/またはRNAを増幅するのに使用しうる。該プライマーを使用して感染した個体から単離されたポリヌクレオチドを増幅することができ、次いでそのポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチド配列の解明のための種々の技法に付すことができる。このようにして、ポリヌクレオチド配列における突然変異を検出し、かつ使用して、感染症または該感染症のステージもしくは進行を診断および/または予後判定するか、あるいは該感染因子を血清型に分ける、および/または分類することができる。
【0081】
本発明は更に、疾患、好ましくは細菌感染症、より好ましくはNeisseria meningitidisにより引き起こされる感染症を診断する方法を提供する。該方法には、生体材料などの個体由来のサンプルから、配列番号1、3の配列を有するポリヌクレオチドの発現レベルの上昇を測定することが含まれる。BASB006ポリヌクレオチドの発現の増加または低下は、当業界で公知のポリヌクレオチドの定量法、例えば増幅、PCR、RT−PCR、RNaseプロテクション、ノーザンブロッティング、分光測定法、その他のハイブリダイゼーション法などの方法のいずれか1つにより測定することができる。
【0082】
更に、正常な対照組織サンプルと比較した場合のBASB006ポリペプチドの過剰発現を検出するための本発明の診断アッセイを使用して、例えば感染症の有無を検出しうる。宿主から得られたサンプル中(生体材料など)のBASB006ポリペプチドのレベルを測定するのに使用しうるアッセイ法は当業者によく知られている。こうしたアッセイ法として、ラジオイムノアッセイ、競合結合アッセイ、ウエスタンブロット分析、抗体サンドイッチアッセイ、抗体検出、ELISAアッセイなどがある。
【0083】
本発明のポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドアレイ、好ましくは高密度アレイまたはグリッドの構成成分として使用することができる。これらの高密度アレイは、診断用途および予後判定の用途に特に有用である。例えば、それぞれが異なる遺伝子を含み、更に本発明のポリヌクレオチドを含むスポットの1セットを、生体サンプルから得たまたは生体サンプルから誘導したプローブを利用して、ハイブリダイゼーションまたは核酸増幅などにより、プロービングすることに使用することができ、それによって個体中の特定のポリヌクレオチド配列または関連配列の存在を決定することができる。そのような配列の存在は、病原体の存在、特にNeisseria meningitidisの存在を示し得るものであり、疾患もしくは疾患の進行を診断および/または予後判定するのに有用でありうる。配列番号1、3のポリヌクレオチド配列のいくつかの変異体を含むグリッドが好ましい。また、配列番号2、4のポリペプチド配列をコードするポリヌクレオチド配列のいくつかの変異体を含むグリッドが好ましい。
【0084】
抗体
本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチド、もしくはそれらの変異体、またはそれらを発現する細胞は、該ポリペプチドまたはポリヌクレオチドにそれぞれ免疫特異的な抗体を製造するための免疫原として使用することができる。
【0085】
本発明の特定の好ましい実施形態において、BASB006ポリペプチドまたはポリヌクオチドに対する抗体が提供される。
【0086】
本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対して生成された抗体は、慣用のプロトコルを用いて、動物(好ましくはヒト以外)に本発明のポリペプチドおよび/もしくはポリヌクレオチド、またはそのどちらかもしくは両方のエピトープ含有断片、どちらかもしくは両方の類似体、あるいはどちらかもしくは両方を発現する細胞を投与することにより得ることができる。モノクローナル抗体の調製には、連続細胞系の培養物により抗体を産生させる当技術分野で公知の任意の技法を用いることができる。例を挙げると、Kohler, G.およびMilstein, C.の方法(Nature 256:495-497(1975))、Kozborらの方法(Immunology Today 4:72(1983))およびColeらの方法(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, pg77-96, Alan R. Liss, Inc.(1985))など種々の方法がある。
【0087】
本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対する一本鎖抗体を産生するために、一本鎖抗体の調製法(米国特許第4,946,778号)も適用することができる。また、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドに免疫特異的なヒト化抗体を発現させるために、トランスジェニックマウスまたは他の生物もしくは他の哺乳動物などの動物を利用することができる。
【0088】
あるいは、ファージディスプレイ法を利用して、抗BASB006の保持についてスクリーニングしたヒト由来のリンパ球のPCR増幅したv遺伝子のレパートリー、あるいは天然ライブラリー(McCaffertyら、(1990)Nature 348, 552-554;Marksら、(1992)Biotechnology 10, 779-783)のいずれかから、本発明のポリペプチドに対し結合活性を有する抗体遺伝子を選択することができる。これらの抗体の親和性を、例えば、チェーンシャフリング(chain shuffling:Clacksonら、(1991)Nature 352:628)により改良することもできる。
【0089】
前述の抗体を用いて、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドを発現するクローンを単離または同定したり、例えばアフィニティークロマトグラフィーでそのポリペプチドまたはポリヌクレオチドを精製することもできる。
【0090】
従ってその中でも、BASB006ポリペプチドまたはBASB006ポリヌクレオチドに対する抗体を使用して、感染症、特に細菌感染症を治療しうる。
【0091】
ポリペプチド変異体には、抗原的に、エピトープ的にまたは免疫学的に本発明の特定の態様を形作る等価変異体が含まれる。
【0092】
好ましくは、前記抗体またはその変異体を改変し、個体におけるその免疫原性がより低くなるようにする。例えば、該個体がヒトである場合、該抗体は「ヒト化」されているのが最も好ましく、その際、ハイブリドーマ化された抗体の相補性決定領域は、例えばJonesら(1986)Nature 321, 522-525、またはTempestら(1991)Biotechnology 9, 266-273に記載のようにヒトモノクローナル抗体中に導入される。
【0093】
アンタゴニストおよびアゴニスト−アッセイおよび分子
また本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドを用いて、例えば、細胞、無細胞調製物、化学ライブラリーおよび天然産物混合物中の、小分子基質とリガンドとの結合を評価することができる。これらの基質およびリガンドは、天然基質およびリガンドであってもよいし、または構造的もしくは機能的にミメティックであってもよい。例えば、Coliganら、Current Protocols in Immunology 1(2):5章(1991)を参照のこと。
【0094】
スクリーニング法では、本発明のポリペプチドもしくはポリヌクレオチド、または該ポリペプチドもしくはポリヌクレオチドを担持する細胞もしくは膜、または該ポリペプチドの融合タンパク質、への候補化合物の結合を、該候補化合物に直接または間接的に結合される標識を用いて簡単に測定できる。あるいは、スクリーニング法では標識した競合物質との競合を用いることもある。さらに、こうしたスクリーニング法では、該候補化合物が該ポリペプチドもしくはポリヌクレオチドの活性化または抑制により生ずるシグナルを結果的にもたらすか否かを、該ポリペプチドもしくはポリヌクレオチドを含有する細胞に適した検出系を用いて試験することができる。一般的には、既知のアゴニストの存在下で活性化のインヒビターをアッセイして、アゴニストによる活性化に該候補化合物の存在が与える影響を観察する。アゴニストまたはインヒビターの不在下で、該候補化合物が該ポリペプチドもしくはポリヌクレオチドの活性化を抑制するか否かを調べることによる反アゴニストまたはインヒビターのスクリーニング法では、場合によっては、構成的に活性のあるポリペプチドならびに/または構成的に発現されるポリペプチドおよびポリヌクレオチドが用いられる。さらに、これらのスクリーニング法は、候補化合物と本発明のポリペプチドもしくはポリヌクレオチドを含む溶液とを混ぜ合わせて混合物をつくり、この混合物中のBASB006ポリペプチドおよび/もしくはポリヌクレオチド活性を測定し、そしてこの混合物のBASB006ポリペプチドおよび/もしくはポリヌクレオチド活性をスタンダードと比較する各ステップを単に含みうる。本発明のポリペプチド、ならびに系統学的におよび/または機能的に関連するポリペプチドのアンタゴニストを同定するためのハイスループットスクリーニングアッセイでは、上記のようなFc部分とBASB006ポリペプチドから作製されるような融合タンパク質も使用することができる(D. Bennettら, J. Mol. Recognition, 852-58 (1995) およびK. Johansonら, J. Biol. Chem., 270(16):94599471 (1995)を参照のこと)。
【0095】
また、本発明のポリペプチドに結合するおよび/または該ポリペプチドと相互作用するポリヌクレオチド、ポリペプチドおよび抗体を用いて、細胞内でのmRNAおよび/またはポリペプチドの産生に及ぼす添加化合物の作用を検出するためのスクリーニング法を組み立てることができる。例えば、当業界で公知の標準方法によりモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を用いて、ポリペプチドの分泌レベルまたは細胞結合レベルを測定するためのELISAアッセイを構築することができ、これは適切に操作された細胞または組織からのポリペプチドの産生を抑制または増強する物質(それぞれアンタゴニストまたはアゴニストともいう)の探索に用いることができる。
【0096】
本発明はまた、BASB006ポリペプチドもしくはポリヌクレオチドの作用を増強する(アゴニスト)もしくはブロックする(アンタゴニスト)化合物、特に静細菌性および/もしくは殺菌性の化合物を同定するための、該化合物のスクリーニング法を提供する。該スクリーニング法は、ハイスループット技術を伴いうる。例えば、アゴニストまたはアンタゴニストについてスクリーニングするために、BASB006ポリペプチドおよび該ポリペプチドの標識基質もしくはリガンドを含有する、合成反応混合物、細胞構成成分(膜、細胞エンベロープ、もしくは細胞壁)またはそれらの任意の調製物を、BASB006のアゴニストもしくはアンタゴニストでありうる候補分子の不在下または存在下でインキュベートする。該候補分子の、BASB006ポリペプチドを作動させるまたは拮抗阻害する能力は、標識リガンドの結合が減少すること、または該基質からの産物の生成が減少することに反映される。むやみに結合する、すなわちBASB006ポリペプチドの作用を誘導することなく結合する分子は、最も有望な、有効なアンタゴニストである。十分に結合する分子、および場合により基質からの産物の生成速度を上昇させる分子、シグナル伝達を増強する分子、または化学チャネル活性を増加させる分子は、アゴニストである。場合により、基質からの産物の生成、シグナル伝達、または化学チャネル活性の速度もしくはレベルの検出を、レポーター系を用いて強化させることができる。この点において有効でありうるレポーター系には、限定するものではないが、産物に変換される比色用標識基質、BASB006ポリヌクレオチドもしくはポリペプチド活性の変化に反応するレポーター遺伝子、および当技術分野で公知の結合アッセイが含まれる。
【0097】
BASB006アゴニストについてのアッセイの他の例は、競合阻害アッセイに適切な条件下で、BASB006と、BASB006結合分子、組換えBASB006結合分子、天然基質もしくはリガンド、または基質もしくはリガンドミメティックを有する潜在的なアゴニストとを結合させる、競合アッセイである。BASB006を、放射性または比色用化合物などで標識することができ、それにより結合分子に結合したまたは生成物に変換されたBASB006分子数を正確に決定して、潜在的なアンタゴニストの有効性を評価しうる。
【0098】
潜在的なアンタゴニストには他に、本発明のポリヌクレオチドおよび/もしくはポリペプチドに結合し、それによりその活性または発現を抑制または無効にする、有機小分子、ペプチド、ポリペプチドおよび抗体が含まれる。潜在的なアンタゴニストはまた、BASB006誘導性活性を誘導することなく、結合分子などの結合分子の同じ部位に結合し、それによりBASB006ポリペプチドおよび/もしくはポリヌクレオチドが結合するのを排除してBASB006ポリペプチドおよび/もしくはポリヌクレオチドの作用または発現を妨害する、有機小分子、ペプチド、非常に近縁なタンパク質または抗体などのポリペプチドでありうる。
【0099】
潜在的なアンタゴニストには、前記ポリペプチドの結合部位に結合しかつその部位を占有して、それにより細胞性結合分子に結合するのを妨害することにより正常な生物学的活性を妨げる小分子が含まれる。小分子の例としては、限定するものではないが、有機小分子、ペプチドまたはペプチド様分子が含まれる。他の潜在的なアゴニストには、アンチセンス分子(これらの分子についての記載は、Okano, J. Neurochem. 56: 560(1991);Oligodeoxynucleotides as Antisense Inhibitors of Gene Expression, CRC Press, Boca Raton, FL(1988)を参照のこと)が含まれる。好ましい潜在的なアンタゴニストには、BASB006に関連した化合物およびBASB006の変異体が含まれる。
【0100】
更なる態様において、本発明は、本発明のポリペプチドまたはその断片と、各種サブクラス(IgG、IgM、IgA、IgE)の免疫グロブリンのH鎖またはL鎖の定常領域の様々な部分と、を含む遺伝子工学的に作製された可溶性融合タンパク質に関する。免疫グロブリンとしてはヒトIgG、特にIgG1のH鎖の定常部が好ましく、その場合は融合がヒンジ領域で起こる。特定の実施形態では、血液凝固Xa因子で切断され得る切断配列を組み込むことで、Fc部分を簡単に除去できる。さらに、本発明は、これら融合タンパク質の遺伝子工学的作製方法、ならびに薬物スクリーニング、診断および治療におけるそれらの使用に関する。また本発明の更なる態様は、このような融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドに関する。融合タンパク質技術の例は、国際特許出願 WO94/29458 およびWO94/22914に記載されている。
【0101】
本明細書に示したポリヌクレオチド配列のそれぞれは、抗菌性化合物の発見および開発に使用することができる。コード化タンパク質は発現の際に、抗菌薬のスクリーニングの標的として使用されうる。それに加えて、それぞれのmRNAのコード化タンパク質またはシャイン・ダルガルノもしくはその他の翻訳促進配列のアミノ末端領域をコードするポリヌクレオチド配列を使用して、アンチセンス配列を構築し、目的のコード化配列の発現を制御することができる。
【0102】
また本発明は、病原体(1種または複数種)と、感染の続発症の原因となる真核生物(好ましくは哺乳動物)宿主との間の最初の物理的相互作用を妨害するための、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、アゴニストまたはアンタゴニストの使用を提供する。特に、本発明の分子を使用して、細菌(特にグラム陽性菌および/またはグラム陰性菌)の、留置デバイス上の真核生物(好ましくは哺乳動物)細胞外マトリックスタンパク質または創傷内の細胞外マトリックスタンパク質への付着を妨害すること、真核生物(好ましくは哺乳動物)の細胞外マトリックスタンパク質と組織損傷を媒介する細菌性BASB006タンパク質との間の細菌性付着をブロックすること、および/または、留置デバイスの移植またはその他の外科的手法以外により開始される感染症の病理発生の正常進行をブロックすること、ができる。
【0103】
更に本発明の他の態様により、BASB006アゴニストおよびアンタゴニスト、好ましくは静菌性または殺菌性のアゴニストおよびアンタゴニストが提供される。
【0104】
本発明のアンタゴニストおよびアゴニストを使用して、例えば、疾病を防ぎ、阻害し、および/または治療しうる。
【0105】
更なる態様において本発明は、本発明のポリペプチドのミモトープ(mimotope)に関する。ミモトープは、天然ペプチドと(配列的または構造的に)十分に類似しているペプチド配列であり、該天然ペプチドを認識する抗体により認識され得るか、あるいは適切な担体に結合した場合に該天然ペプチドを認識する抗体を生じさせることができる。
【0106】
ペプチドミモトープは、特定の目的のために、選択されたアミノ酸の付加、欠失または置換によって設計することができる。従って、該ペプチドは、タンパク質担体への結合を容易にするために改変しても良い。例えば、いくつかの化学結合法については、末端システインを含有させることが好ましい。更に、タンパク質担体に結合させたペプチドについては、該ペプチドの結合末端から遠い位置に疎水性末端を含有させて、該ペプチドの非結合末端が担体タンパク質の表面に結合したままにすることが好ましい。それにより、無傷の天然分子の場合にみられるようなペプチドのコンホメーションと最も近似しているコンホメーションで該ペプチドを提示する。例えば、該ペプチドは、N末端システインおよびC末端疎水性アミド化テールを含有するように改変しうる。あるいは、1以上のアミノ酸のD立体異性体の付加または置換を行うことにより、例えば該ペプチドの安定性を向上させる、有益な誘導体を作製しうる。
【0107】
あるいは、ファージディスプレイ法(EP 0 552 267 B1)などの技法を利用して、それ自体が本発明のポリペプチドに結合する能力のある抗体を用いてペプチドミモトープを同定することができる。この方法により、天然ペプチドの構造を模擬した多数のペプチド配列が生成され、またそれゆえ該配列は、抗天然ペプチド抗体に結合する能力を有するが、該配列自体が該天然ポリペプチドと有意な配列相同性を共有する必要はない。
【0108】
ワクチン
本発明の別の態様は、個体、特に哺乳動物、好ましくはヒトにおいて免疫学的応答を誘導する方法に関するものであり、この方法は、抗体および/またはT細胞免疫応答を生じさせて該個体を感染、具体的には細菌感染、最も具体的にはナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)感染から防御するのに十分なBASB006ポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドまたはその断片もしくは変異体を該個体に接種することを含んでなる。また、そのような免疫学的応答によって細菌複製を遅延させる方法も提供する。本発明のさらに別の態様は、個体において免疫学的応答を誘導する方法であって、BASB006ポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチド、またはその断片もしくは変異体をin vivo発現させるためにBASBポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドまたはその断片もしくは変異体の発現を指令する核酸ベクター、配列またはリボザイムを該個体に送達することにより、免疫学的応答を誘導して(例えば、抗体および/またはT細胞免疫応答(例えばサイトカイン産生T細胞または細胞傷害性T細胞を含む)を生じさせて)該個体、好ましくはヒトを疾病から防御する(この疾病がすでに該個体において確立されていようがいまいが防御する)ことを含んでなる方法に関する。遺伝子投与は、例えば、遺伝子を粒子またはその他のものにコーティングしてそれを所望の細胞に高速で射入することにより行われる。そのような核酸ベクターは、DNA、RNA、リボザイム、改変型核酸、DNA/RNAハイブリッド、DNA-タンパク質複合体またはRNA-タンパク質複合体を含み得る。
【0109】
本発明のさらなる態様は、免疫学的応答を誘導する能力を有している個体、好ましくはヒトに導入した場合に、そのような個体においてBASB006ポリヌクレオチドおよび/または該ポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドに対して免疫学的応答を誘導する免疫学的組成物に関するものであり、該組成物は、組換えBASB006ポリヌクレオチドおよび/または該ポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドを含むか、および/または本発明の該BASB006ポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド、またはその他のポリペプチドの抗原をコードし、発現するDNAおよび/またはRNAを含む。この免疫学的応答は、治療または予防に使用し得るものであり、抗体免疫および/または細胞性免疫、例えばCTLもしくはCD4+T細胞から生ずる細胞性免疫のような形態をとり得る。
【0110】
BASB006ポリペプチドまたはその断片は、協同タンパク質(co-protein)または化学成分(それ自体抗体を産生してもしなくてもよいが、第1のタンパク質を安定化させ、抗原性および/または免疫原性、好ましくは防御特性を有する融合タンパク質または改変タンパク質を産生させ得る)と融合してもよい。したがって、融合組換えタンパク質は、好ましくは、抗原性協同タンパク質(例えば、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)由来のリポタンパク質D、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)もしくはβ-ガラクトシダーゼ)、またはタンパク質を可溶化して、その産生および精製を容易にする任意のその他の比較的大きい協同タンパク質をさらに含む。さらに、協同タンパク質は、該タンパク質を投与される生物の免疫系に全身性刺激(generalized stimulation)をもたらすという意味でアジュバントとして作用し得る。協同タンパク質は、第1のタンパク質のアミノ末端またはカルボキシ末端に結合され得る。
【0111】
本発明は、本発明のポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチドならびに免疫刺激性DNA配列(例えば、Sato, Yら, Science 273:352(1996)に記載されているものなど)を含む組成物、特にワクチン組成物、ならびに方法を提供する。
【0112】
また、本発明は、細菌細胞表面タンパク質の非可変領域をコードすることが分かっている既知のポリヌクレオチドまたはその特定の断片を、ナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)に感染した動物モデルでのそのような遺伝子による免疫感作実験に用いられるポリヌクレオチド構築物において使用する方法も提供する。そのような実験は、予防または治療的免疫応答を生起させ得るタンパク質エピトープを同定するのに特に有用である。この手法により、その後、哺乳動物、特にヒトにおける細菌感染、特にナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)感染の予防剤または治療的処置の開発のために、感染しないことまたは感染を除去することに成功している動物の必須の器官に由来する特定価のモノクローナル抗体の調製が可能になると考えられる。
【0113】
また本発明は、本発明の免疫原性組換えポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチドならびに製薬上許容される担体などの適当な担体を含むワクチン製剤も提供する。このポリペプチドおよびポリヌクレオチドは胃の中で分解される可能性があるので、どちらも非経口的に(例えば、皮下、筋肉内、静脈内または皮内注射により)投与することが好ましい。非経口投与に適した製剤としては、酸化防止剤、緩衝剤、静菌性化合物およびこの製剤を受容者の体液、好ましくは血液と等張にする溶質を含みうる水性および非水性の無菌注射液、並びに懸濁化剤または増粘剤を含みうる水性および非水性の無菌懸濁液がある。こうした製剤は1回量容器または数回量容器(例えば、密閉アンプルおよびバイアル)で提供することができ、また、使用直前に無菌の液状担体を添加するだけでよい凍結乾燥状態で保管することもできる。
【0114】
また、本発明のワクチン製剤は該製剤の免疫原性を増強するためのアジュバント系を含んでいてもよい。好ましくは、前記アジュバント系は優先的にTH1型の応答を生じさせる。
【0115】
免疫応答は極端な2つのカテゴリー(体液性または細胞媒介性免疫応答[慣例では、それぞれ抗体による、および細胞エフェクターによる防御機構によって特徴付けられている])に大まかに区別することができる。これらの応答カテゴリーは、TH1型応答(細胞媒介性応答)およびTH2型免疫応答(体液性応答)と呼ばれている。
【0116】
極端なTH1型免疫応答は、抗原特異的でハプロタイプ拘束性細胞傷害性Tリンパ球の生成およびナチュラルキラー細胞の応答により特徴付けられる。マウスではTH1型応答はIgG2aサブタイプの抗体の生成により特徴付けられることが多いが、ヒトではこれらはIgG1型抗体に相当する。TH2型免疫応答はマウスIgG1、IgAおよびIgMを含む広範囲の免疫グロブリンアイソタイプの生成により特徴付けられる。
【0117】
これらの2タイプの免疫応答の発生を陰で駆動している力はサイトカインであると考えられる。高濃度のTH1型サイトカインは所与の抗原に対して細胞媒介性免疫応答を好んで誘導する傾向があるが、高濃度のTH2型サイトカインは前記抗原に対して体液性免疫応答を好んで誘導する傾向がある。
【0118】
TH1およびTH2型免疫応答の区別は絶対的なものではない。実際、ある人は、主にTH1であるとか、主にTH2であると記載されるような免疫応答を支持している。しかしながら、多くの場合、MosmannおよびCoffmanによりマウスCD4+veT細胞クローンについて記載された内容(Mosmann,T.R.およびCoffmann,R.L. (1989) TH1 and TH2 cells:differnt patterns of lymphokine secretion lead to different functional properties. Annual Review of Immnology, 7, p145-173)から、サイトカインのファミリーを考慮するのが都合がよい。慣例上、TH1型応答はTリンパ球によるINF-γおよびIL-2サイトカイン産生と関連している。TH1型免疫応答の誘導に直接関わることの多い他のサイトカインは、IL-12等のT細胞によっては産生されない。対照的に、TH2型応答はIL-4、IL-5、IL-6およびIL13の分泌に関連している。
【0119】
特定のワクチンアジュバントがTH1またはTH2型のいずれかのサイトカイン応答の刺激にとりわけ適していることが知られている。慣例上、ワクチン接種または感染後の免疫応答におけるTH1:TH2平衡の最良の指標としては、抗原再刺激後のin vitroでのTリンパ球によるTH1もしくはTH2サイトカイン産生の直接測定、および/または抗原特異的抗体応答のIgG1:IgG2a比の測定が挙げられる。
【0120】
従って、TH1型アジュバントは、抗原によりin vitroで再刺激された際に優先的に単離されたT細胞集団を刺激して高濃度のTH1型サイトカインを産生し、CD8+細胞傷害性Tリンパ球の発生およびTH1型アイソタイプに関連した抗原特異的免疫グロブリン応答を促進するものである。
【0121】
TH1細胞応答を優先的に刺激し得るアジュバントは、国際特許出願番号WO94/00153およびWO95/17209に記載されている。
【0122】
3De-O-アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL)はそうしたアジュバントの1つである。これはGB2220211(Ribi)により知られている。化学的には、該アジュバントは3De-O-アシル化モノホスホリルリピドAと4、5、6本のアシル化された鎖との混合物であり、Ribi Immunochem. Montanaにより製造される。3De-O-アシル化モノホスホリルリピドAの好ましい形態は、欧州特許第0 689 454 B1号(SmithKline Beecham Biologicals SA)に開示されている。
【0123】
好ましくは、3D-MPLの粒子は、0.22ミクロンの膜を通り抜けて滅菌ろ過されるのに十分な程度小さい(欧州特許第0 689 454 号)。3D-MPLは投与量あたり10μg〜100μg、好ましくは25〜50μgの範囲で存在する。この場合、抗原は通常投与量あたり2〜50μgの範囲で存在する。
【0124】
別の好ましいアジュバントは、QS21(Quillaja Saponaria Molinaの樹皮から得た、Hplc精製した毒性の無い画分)を含む。任意でこれを3De-O-アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL)と、場合により担体と共に混合することもできる。
【0125】
QS21の製造方法は米国特許第5,057,540号に開示されている。
【0126】
QS21を含有する反応性の無いアジュバント製剤は以前に記載されている(WO96/33739)。QS21およびコレステロールを含むそうした製剤は、抗原と共に製剤する場合には良好なTH1刺激性アジュバントであることが示されている。
【0127】
TH1細胞応答の優先的刺激物質である別のアジュバントとしては、免疫調節性の(immunomodulatory)オリゴヌクレオチド、例えばWO96/02555に開示されている非メチル化CpG配列が挙げられる。
【0128】
また、前述したもののような異なるTH1刺激アジュバントの組み合わせも、TH1細胞応答の優先的な刺激物質であるアジュバントを提供する際に考慮される。例えば、QS21を3D-MPLと共に製剤化することができる。通常、QS21:3D-MPL比は1:10〜10:1であり、好ましくは1:5〜5:1であり、多くの場合は実質的に1:1である。最適な共働作用のために好ましい範囲は、2.5:1〜1:1の3D-MPL:QS21である。
【0129】
好ましくは、本発明のワクチン組成物中に担体も存在する。前記担体は水中油型エマルジョンであっても、リン酸アルミニウムまたは水酸化アルミニウム等のアルミニウム塩であってもよい。
【0130】
好ましい水中油型エマルジョンは代謝可能な油、例えばスクアレン、α-トコフェロールおよびTween80を含む。特に好ましい態様では本発明のワクチン組成物中の抗原をそのようなエマルジョン中でQS21および3D-MPLと組み合わせる。更に、前記水中油型エマルジョンはスパン85および/またはレシチンおよび/またはトリカプリリン(tricaprylin)を含んでいてもよい。
【0131】
通常、ヒトへの投与の場合は、QS21および3D-MPLは投与量あたり1〜200μgの範囲内、例えば10〜100μg、好ましくは10〜50μgの範囲内でワクチン中に存在する。通常、水中油型エマルジョンは、2〜10%のスクアレン、2〜10%のα-トコフェロールおよび0.3〜3%のTween80を含む。好ましくは、スクアレン:α-トコフェロール比は1以下であり、これによってより安定なエマルジョンが提供される。また、スパン85は1%という濃度で存在しうる。幾つかの場合、本発明のワクチンが更に安定化剤を含むことが有益であろう。
【0132】
毒性の無い水中油型エマルジョンは、好ましくは、毒性の無い油(例えばスクアランもしくはスクアレン)、乳化剤(例えばTween80)を水性担体中に含む。前記水性担体は、例えば、リン酸緩衝化生理食塩水でありうる。
【0133】
水中油型エマルジョン中にQS21、3D-MPLおよびトコフェロールを含む特に有効なアジュバント製剤はWO95/17210に記載されている。
【0134】
また本発明は、本発明のワクチン製剤を他の抗原、特に癌、自己免疫疾患および関連病態の治療に有用な抗原と組み合わせて含む多価ワクチン組成物を提供する。そのような多価ワクチン組成物は前記のTH1誘導性アジュバントを含みうる。
【0135】
本発明は、特定のBASB006ポリペプチドおよびポリヌクレオチドに関して記載されているが、本発明はその天然のポリペプチドおよびポリヌクレオチドの断片、ならびに組換えポリペプチドまたはポリヌクレオチドの免疫原性に実質的に影響を及ぼさない付加、欠失または置換をもつ類似のポリペプチドおよびポリヌクレオチドを含むものと理解されるべきである。
【0136】
抗原は、全細菌(死んでいても生存していてもよい)の形態でも、細胞下画分としても送達可能であり、このような可能性にはN.メニンギチジス(N.meningitides自体が含まれる。
【0137】
組成物、キットおよび投与
本発明のさらなる態様では、細胞または多細胞生物に投与するためのBASB006ポリヌクレオチドおよび/またはBASB006ポリペプチドを含む組成物が提供される。
【0138】
また本発明は、本明細書で検討したポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドまたはそのアゴニストまたはアンタゴニストを含む組成物にも関する。本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、細胞、組織または生物に使用するために、非滅菌担体または滅菌担体(例えば個体への投与に適した製薬用担体など)とともに用いてもよい。そのような組成物は、例えば、培地添加剤または治療有効量の本発明のポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチドならびに製薬上許容される担体または賦形剤を含む。かかる担体としては、限定するものではないが、生理食塩水、緩衝化生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノールおよびそれらの組み合わせが挙げられ得る。製剤は投与の様式に適合させるべきである。本発明はさらに、本発明の上記組成物の1種以上の成分を充填した容器を1以上含んでなる診断用および製剤用のパックおよびキットに関する。
【0139】
本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチドおよびその他の化合物は、単独で用いてもよく、治療用化合物などのその他の化合物とともに用いてもよい。
【0140】
医薬組成物は、任意の有効で都合のよい様式、例えば、特に局所投与、経口投与、肛門投与、膣内投与、静脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、皮下投与、鼻腔内投与、または経皮経路での投与によって投与し得る。
【0141】
治療または予防において、活性剤は注射可能な組成物として、例えば無菌水性分散液、好ましくは等張液として、個体に投与し得る。
【0142】
更なる態様においては、本発明は、治療に有効な量のポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチド(例えば可溶性形態の本発明のポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチド)、アゴニストペプチド/アンタゴニストペプチド、または低分子化合物を、製薬上許容し得る担体または賦形剤と組み合わせて含む医薬組成物を提供する。そのような担体には、生理食塩水、緩衝化生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノールおよびそれらの組合せが含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明はさらに、前述の本発明の組成物の1種以上の成分を充填した容器を1以上含んでなる医薬用パックおよびキットに関するものである。本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチドおよび他の化合物は、単独で用いてもよく、または治療用化合物等の他の化合物と組み合わせて用いてもよい。
【0143】
医薬組成物は投与経路、例えば全身または経口による投与経路に適合させることができる。全身投与に適した形態は、注入(注射)、典型的には静注である。皮下、筋肉内または腹腔内のような他の注入経路も使用できる。全身投与の別の手段には、胆汁酸塩、フシジン酸、その他の界面活性剤などの浸透剤を用いた経粘膜および経皮投与がある。さらに、本発明のポリペプチドまたは他の化合物を腸溶剤またはカプセル剤として製剤化し得るのであれば、経口投与も可能である。これらの化合物を軟膏、ペースト、ゲル、溶液、粉末などの剤形で局所に投与しても、かつ/または局在化させてもよい。
【0144】
哺乳動物、特にヒトへの投与の場合、活性剤の日用量は0.01mg/kg〜10mg/kg、典型的には約1mg/kgであると予想される。医師は、任意の状況において、個体に最も適した実際の投与量(これは特定の個体の年齢、体重および応答により様々である)を決定するであろう。上記の投与量は、平均的な場合の代表例である。もちろん、より高いか低い投与量範囲にメリットがあるような場合もあり得る。そのような場合も本発明の範囲に含まれる。
【0145】
必要な投与量範囲は、ペプチドの選択、投与経路、製剤の性質、患者の状態の性質、そして治療する医師の判断に左右される。しかし、適当な投与量は患者の体重1kgあたり0.1〜100μgの範囲である。
【0146】
ワクチン組成物は、注射可能な形態であるのが都合がよい。通常のアジュバントを用いることにより免疫応答を高めることができる。ワクチン接種に適した単位投与量は、0.5〜5マイクログラム/kgの抗原であり、そのような投与量を1〜3週間間隔で1〜3回投与するのが好ましい。前記の投与量範囲で本発明の化合物を用いた場合、適当な個体への投与を不可能とするような有害な中毒作用は観察されない。
【0147】
しかしながら、入手可能な化合物が多様であること、投与経路の効率が異なることを考慮すれば、必要とされる投与量は広範に変動することが予測される。例えば、経口投与は静注による投与よりも高い投与量を必要とすると予想されよう。こうした投与量レベルの変動は、当業界でよく理解されているような、標準的経験的な最適化手順を用いて調整することができる。
【0148】
配列データベース、有形媒体(tangible medium)における配列、およびアルゴリズム
ポリヌクレオチドおよびポリペプチドの配列は、その2次元構造および3次元構造を決定し、類似の相同性をもつ別の配列を同定する際の価値ある情報源を提供する。これらの手法は、コンピュータ読み取り可能媒体中に配列を保存し、次いで既知の巨大分子構造プログラムにおいて、またはGCGプログラムパッケージなどの公知の検索ツールにより配列データベースを検索するためにその保存データを用いることで、最大限促進される。
【0149】
また、本発明は、文字配列または列、特に遺伝子配列またはコード化タンパク質配列の解析方法も提供する。好ましい配列解析方法としては、例えば、同一性および類似性解析などの配列相同性解析法、DNA、RNAおよびタンパク質構造解析法、配列のアセンブリ方法、分岐解析法、配列モチーフ解析法、オープンリーディングフレーム決定法、核酸塩基呼出し(calling)法、コドン使用頻度解析法、核酸塩基トリミング(trimming)法、および配列決定クロマトグラムピーク解析法が挙げられる。
【0150】
相同性確認を行うためのコンピュータに基づく方法であって、コンピュータ読み取り可能媒体中に本発明のポリヌクレオチドの配列を含む第1ポリヌクレオチド配列を提供する工程、および該第1ポリヌクレオチド配列を少なくとも1つの第2のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列と比較して相同性を確認する工程を含む上記方法を提供する。
【0151】
相同性確認を行うためのコンピュータに基づく方法であって、コンピュータ読み取り可能媒体中に本発明のポリペプチドの配列を含む第1ポリペプチド配列を提供する工程および該第1ポリペプチド配列を少なくとも1つの第2のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列と比較して相同性を確認する工程を含む上記方法も提供される。
【0152】
限定するものではないが、特許および特許出願のような本明細書で引用した刊行物および参考文献は、あたかも各刊行物または参考文献がそれぞれ本明細書に参照により組み込まれることが具体的にかつ個別に指摘されているように、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる。本出願が優先権を主張している任意の特許出願も、刊行物および参考文献について上記したように、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0153】
定義
当技術分野で知られた「同一性」とは、場合によっては、ポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列の比較により決定された、2以上のかかる配列間の類縁性のことである。当技術分野ではまた、「同一性」は、場合によっては、ポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列の鎖間の一致度(match)により決定された、このような配列間の配列類縁性の程度を意味する。「同一性」は公知の方法により難なく算出することができ、こうした方法として、例えば Computational Molecular Biology, Lesk, A.M.編, Oxford University Press, New York, 1988; Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D.W. 編, Academic Press, New York, 1993; Computer Analysis of Sequence Data, Part I, Griffin, A.M. and Griffin, H.G. 編, Humana Press, New Jersey, 1994; Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987; Sequence Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux, J. 編, M Stockton Press, New York, 1991; および Carillo, H. and Lipman, D., SIAM J. Applied Math., 48: 1073 (1988) に記載された方法があるが、これらに限らない。同一性を決定するための方法は、検討する配列間で最大級のマッチングが得られるように設計される。同一性を決定する方法は一般に入手可能なコンピュータプログラムに編集されている。2配列間の同一性を決定するためのコンピュータプログラム法としては、GCGプログラムパッケージにおけるGAPプログラム(Devereux, J.ら, Nucleic Acids Research 12(1):387 (1984))、BLASTP、BLASTN(Altschul, S.F.ら, J. Molec. Biol. 215:403-410 (1990)) ならびにFASTA(PearsonおよびLipman Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85; 2444-2448(1988)があるが、これらに限らない。BLASTプログラムファミリーはNCBIおよび他のソースから一般に入手可能である (BLAST Manual, Altschul, S.ら, NCBI NLM NIH Bethesda, MD 20894; Altschul, S.ら, J. Mol. Biol. 215: 403-410 (1990))。公知のSmith Watermanアルゴリズムも同一性の決定に使用することができる。
【0154】
ポリペプチド配列を比較するためのパラメーターは次のものを含む:
アルゴリズム:Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol. 48: 443-453 (1970)
比較マトリックス:BLOSSUM62 、Hentikoff and Hentikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 10915-10919 (1992)
ギャップペナルティー:8
ギャップ長ペナルティー:2
これらのパラメーターを用いて有効なプログラムは Genetics Computer Group(Madison WI)から「gap」プログラムとして一般に入手可能である。前記のパラメーターはペプチド比較のためのデフォルトパラメーター(default parameter) である(末端ギャップのペナルティーは無し)。
【0155】
ポリヌクレオチド配列を比較するためのパラメーターは次のものを含む:
アルゴリズム:Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol. 48: 443-453 (1970)
比較マトリックス:マッチ=+10、ミスマッチ=0
ギャップペナルティー:50
ギャップ長ペナルティー:3
これらのパラメーターを用いて有用であるプログラムは Genetics Computer Group(Madison WI)から「gap」プログラムとして公に入手可能である。これらは核酸比較のためのデフォルトパラメーターである。
【0156】
ポリヌクレオチドとポリペプチドについての「同一性」の好ましい意味は、場合によっては、下記の(1)および(2)に示される。
(1) ポリヌクレオチドの実施形態は、配列番号1の基準配列に対して少なくとも50、60、70、80、85、90、95、97または100%の同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチドをさらに含む。ここで、該ポリヌクレオチド配列は、配列番号1の基準配列と同一であるか、または該基準配列に対して、一定の整数個までのヌクレオチド変異を含んでいてもよい。そのような変異は少なくとも1個のヌクレオチドの欠失、置換(トランジションおよびトランスバージョンを含む)または挿入よりなる群から選択され、こうした変異は基準ヌクレオチド配列の 5'もしくは 3'末端位置、またはこれらの末端位置の間のどこに存在してもよく、基準配列中のヌクレオチドの間に個々に、または基準配列内に1以上の連続するグループとして散在する。そのようなヌクレオチド変異の数は、配列番号1のヌクレオチドの総数に、同一性%を示す整数を100で割った値を掛け、次いでその積を配列番号1のヌクレオチドの総数から差し引くことにより、すなわち、次式:
≦x −(x・y)
により求めることができる。式中、nはヌクレオチド変異の数であり、xは配列番号1のヌクレオチドの総数であり、yは50%については0.50、60%については0.60、70%については0.70、80%については0.80、85%については0.85、90%については0.90、95%については0.95、97%については0.97または100%については1.00であり、・は掛算演算子の記号であり、さらにxとyの非整数の積は、その積をxから引く前に、最も近似する整数に切り下げる。配列番号2のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の改変は、そのコード配列にナンセンス、ミスセンスまたはフレームシフト突然変異を生じさせ、それにより、こうした変異後に該ポリヌクレオチドによりコードされたポリペプチドを改変させることができる。
【0157】
例として、本発明のポリヌクレオチド配列は、配列番号1の基準配列と同一である、すなわち基準配列に対して100%の同一性を有し得るか、または同一性%が100%未満となるように該基準配列に対して一定の整数個までの核酸変異を含んでいてもよい。そのような変異は少なくとも1個の核酸の欠失、置換(トランジションおよびトランスバージョンを含む)または挿入よりなる群から選択され、こうした変異は基準ポリヌクレオチド配列の 5'もしくは 3'末端位置、またはこれらの末端位置の間のどこに存在してもよく、基準配列中の核酸の間に個々に、または基準配列内に1以上の連続するグループとして散在する。所定の同一性%についての核酸変異の数は、配列番号1の核酸の総数に、同一性%値を示す整数を100で割った値を掛け、次いでその積を配列番号1の核酸の総数から差し引くことにより、すなわち、次式:
≦x −(x・y)
により求めることができる。式中、nは核酸変異の数であり、xは配列番号1の核酸の総数であり、yは例えば70%については0.70、80%については0.80、85%については0.85などであり、・は掛算演算子の記号であり、さらにxとyの非整数の積は、その積をxから引く前に、最も近似する整数に切り下げる。
(2) ポリペプチドの実施形態は、配列番号2のポリペプチド基準配列に対して少なくとも50、60、70、80、85、90、95、97または100%の同一性を有するポリペプチドを含む単離されたポリペプチドをさらに含む。ここで、該ポリペプチド配列は、配列番号2の基準配列と同一であるか、または該基準配列に対して、一定の整数個までのアミノ酸変異を含んでいてもよい。そのような変異は少なくとも1個のアミノ酸の欠失、置換(保存的および非保存的置換を含む)または挿入よりなる群から選択され、こうした変異は基準ポリペプチド配列のアミノまたはカルボキシ末端位置、またはこれらの末端位置の間のどこに存在してもよく、基準配列中のアミノ酸の間に個々に、または基準配列内に1以上の連続するグループとして散在する。そのようなアミノ酸変異の数は、配列番号2のアミノ酸の総数に、同一性%を示す整数を100で割った値を掛け、次いでその積を配列番号2のアミノ酸の総数から差し引くことにより、すなわち、次式:
a ≦xa −(xa・y)
により求めることができる。式中、naはアミノ酸変異の数であり、xaは配列番号2のアミノ酸の総数であり、yは50%については0.50、60%については0.60、70%については0.70、80%については0.80、85%については0.85、90%については0.90、95%については0.95、97%については0.97または100%については1.00であり、・は掛算演算子の記号であり、さらにxaとyの非整数の積は、その積をxaから引く前に、最も近似する整数に切り下げる。
【0158】
例として、本発明のポリヌクレオチド配列は、配列番号2の基準配列と同一である、すなわち基準配列に対して100%の同一性を有し得るか、または同一性%が100%未満となるように該基準配列に対して一定の整数個までのアミノ酸変異を含んでいてもよい。そのような変異は少なくとも1個のアミノ酸の欠失、置換(保存的および非保存的置換を含む)または挿入よりなる群から選択され、こうした変異は基準ポリペプチド配列のアミノもしくはカルボキシ末端位置、またはこれらの末端位置の間のどこに存在してもよく、基準配列中のアミノ酸の間に個々に、または基準配列内に1以上の連続するグループとして散在する。所定の同一性%についてのアミノ酸変異の数は、配列番号2のアミノ酸の総数に、同一性%値を示す整数を100で割った値を掛け、次いでその積を配列番号2のアミノ酸の総数から差し引くことにより、すなわち、次式:
a ≦xa −(xa・y)
により求めることができる。式中、naはアミノ酸変異の数であり、xaは配列番号2のアミノ酸の総数であり、yは例えば70%については0.70、80%については0.80、85%については0.85などであり、・は掛算演算子の記号であり、さらにxaとyの非整数の積は、その積をxaから引く前に、最も近似する整数に切り下げる。
【0159】
「個体」は、本明細書で生物に関して用いられる場合、多細胞真核生物、例えば限定するものではないが、後生動物、哺乳動物、ヒツジ(ovid)、ウシ(bovid)、サル(simian)、霊長類、ヒトなどを意味する。
【0160】
「単離された」とは、天然の状態から「人間の手によって」改変されたことを意味し、すなわち「単離された」組成物または物質が天然に存在するのであれば、それはそのもとの環境から変化しているか分離されており、またはその両方である。例えば、生存している生物の体内に自然界で存在するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは「単離された」ものではないが、その天然状態の共存物質から分離されたポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、本明細書中で用いられるように、「単離された」ものである。さらに、形質転換、遺伝子操作または任意のその他の組換え法により生物に導入されるポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、該生物(生物は生きていても生きていなくてもよい)中に存在しているとしても「単離された」ものである。
【0161】
「ポリヌクレオチド」とは、一般に任意のポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドを指し、これは一本鎖および二本鎖の領域を含む、修飾されていないRNAもしくはDNA、または修飾されたRNAもしくはDNAであり得る。
【0162】
「変異体」とは、基準のポリヌクレオチドまたはポリペプチドと異なるが、不可欠な性質を保持しているポリヌクレオチドまたはポリペプチドのことである。典型的なポリヌクレオチドの変異体は基準ポリヌクレオチドとヌクレオチド配列の点で相違する。この変異体のヌクレオチド配列の変化は、基準ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドのアミノ酸配列を変更しても、しなくてもよい。ヌクレオチドの変化は、以下で述べるように、基準配列によりコードされるポリペプチドのアミノ酸の置換、欠失、付加、融合および末端切断(トランケーション)をもたらしうる。典型的なポリペプチドの変異体は基準ポリペプチドとアミノ酸配列の点で相違する。一般的には、基準ポリペプチドの配列と変異体の配列が全般的によく類似しており、多くの領域で同一となるような相違に限られる。変異体と基準ポリペプチドは任意に組み合わせた1以上の置換、欠失、付加によりアミノ酸配列が相違していてよい。置換または挿入されるアミノ酸残基は遺伝子コードによりコードされるものであっても、なくてもよい。ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの変異体は対立遺伝子変異体のように天然に存在するものでも、天然に存在することが知られていない変異体であってもよい。ポリヌクレオチドおよびポリペプチドの天然に存在しない変異体は、突然変異誘発法または直接合成により作製することができる。
【0163】
「疾患」は、細菌による感染によって引き起こされるか、該感染に関連した任意の疾病を意味する。例えば、上気道感染、菌血症および髄膜炎のような侵入性細菌性疾患が挙げられる。
【0164】
(実施例)
下記の実施例は、特に詳細に記載した場合を除き、当業者によく知られた常用の標準的方法により行った。これらの実施例は説明のためのものであり、本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0165】
2種のナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)株由来のBASB006遺伝子の発見およびDNA配列決定による確認
A:ナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)B血清群のATCC13090株のBASB006
配列番号1に開示したBASB006遺伝子は、ナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)株(ATCC13090)の配列決定未終了のゲノムDNA配列を含むIncyte PathoSeqデータベースで最初に発見した。配列番号2に示した、BASB006ポリヌクレオチド配列の翻訳は、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)のHapタンパク質(このタンパク質は以前にアドヘシン(adhesin)として機能することが報告されたポリペプチドである)と有意な類似性(1455アミノ酸オーバーラップにおいて56%の同一性)を示した。BASB006遺伝子の配列を実験で確認した。この目的のために、QIAGENゲノムDNA抽出キット(Qiagen Gmbh)を用いてゲノムDNAをナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)細胞(ATCC13090株)1010細胞から抽出し、その1μgをプライマーHap01(5'-GGG GGC TAG CAA AAC AAC CGA CAA ACG GAC AAC C-3')(配列番号5)およびHap02(5'-GGG GAA GCT TCC AGC GGT AGC GGT AGC CTA ATT TGA TGC C-3')(配列番号6)を用いるポリメラーゼ連鎖反応DNA増幅に供した。このPCR産物をゲル精製し、Big Dye Cycle配列決定キット(Perkin-Elmer)およびABI 373A/PRISM DNAシーケンサーを用いてDNA配列決定した。DNA配列決定は両方の鎖に関して2回重複して行い、完全長配列をDNASTAR LasergeneソフトウェアパッケージのSeqManプログラムを用いて構築した。得られたDNA配列は配列番号1に対して100%の同一性を有していることが分かった。
【0166】
B:ナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)B血清群のH44/76株のBASB006
BASB006遺伝子の配列を別のナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)B血清群株であるH44/76株でも決定した。この目的のために、実施例1に記載した実験条件を用いてナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)H44/76株からゲノムDNAを抽出した。次いで、その抽出物(1μg)をBASB006遺伝子に特異的なプライマーHap01およびHap02を用いるポリメラーゼ連鎖反応DNA増幅に供した。4389bpのDNA断片を得て、NheI/HindIII制限エンドヌクレアーゼで消化し、標準的な分子生物学的方法(Molecular Cloning, a Laboratory Manual, 第2版, Sambrook, FritschおよびManiatis編, Cold Spring Harbor press 1989)を用いてpET-24bクローニング/発現ベクター(Novagen)の対応部位に挿入した。次いで、組換えpET-24b/BASB006をBig Dyesキット(Applied biosystems)を用いるDNA配列決定に供し、製造業者が記載した条件でABI 373/A DNAシーケンサーにて解析した。その結果、ポリヌクレオチド配列とその推定ポリペプチド配列(それぞれ配列番号3、配列番号4)が得られた。GCGパッケージのPILEUPプログラムを用いて、配列番号1と3のポリヌクレオチド配列のアラインメントを行った。それを図1に示す。それらの同一性のレベルは、GAPプログラムで測定したところ、97.8%に達した。同PILEUPプログラムを用いて、配列番号2と4のポリペプチド配列のアラインメントを行った。それを図2に示す。それらの同一性のレベルは、GAPプログラムで測定したところ、97.0%に達した。
【0167】
以上の結果をまとめて考えると、これらのデータは、2種のナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)B血清群株間にBASB006遺伝子の強力な配列保存性があることを示すものである。
【実施例2】
【0168】
大腸菌(Escherichia coli)における組換えBASB006タンパク質の発現および精製
pET-24b/BASB006クローニング/発現ベクターの構築を実施例1Bに記載した。このベクターは、H44/76株から単離されたBASB006遺伝子を、強力なバクテリオファージT7遺伝子10プロモーターの制御下に配置された、6個のヒスチジン残基からなるストレッチと融合した状態で保有している。発現の研究のために、このベクターを大腸菌BL21 DE3株(Novagen) に導入したが、ここでT7ポリメラーゼの遺伝子はイソプロピル-β-Dチオガラクトシド(IPTG)-調節性lacプロモーターの制御下に配置されている。BL21 DE-3[pET-24b/BASB006]大腸菌組換え株の液体培養物(100ml)を、600nmにおける光学密度(OD600)が0.6になるまで、攪拌しながら37℃で増殖させた。OD600が0.6になった時点でIPTGを最終濃度1mMで添加し、この培養物をさらに4時間増殖させた。次いで、培養物を10,000rpmで遠心分離し、ペレットを-20℃で少なくとも10時間凍結させた。解凍後、ペレットをバッファーA(6M塩酸グアニジン、0.1M NaH2PO4、0.01M Tris、pH8.0)に25℃にて30分間再懸濁し、針を3回通過させ、遠心分離(20000rpm、15分間)で清澄にした。次いで、サンプルをNi2+をロードしたHitrapカラム(Pharmacia Biotech)上に1ml/分の流量でロードした。サンプル通過後、カラムをバッファーB(8M 尿素、0.1M NaH2PO4、0.01M Tris、pH8.0)40mlおよびバッファーC(8M 尿素、0.1M NaH2PO4、0.01M Tris、pH6.3)40mlで連続的に洗浄した。次に、組換えタンパク質BASB006/His6を500mMのイミダゾールを含むバッファーC(8M尿素、0.1M NaH2PO4、0.01M Tris、pH6.3)30mlを用いてカラムから溶出し、3mlのサイズ画分を回収した。図3に示したように、かなり濃縮された(純度はクーマシー染色において90%以上であると推定された)、BASB006/His6タンパク質(170kDa(概算相対分子量)に移動)がカラムから溶離された。このポリペプチドは、5-ヒスチジンモチーフに対して生じさせたマウスモノクローナル抗体との反応性を有していた。以上の結果をまとめて考えると、これらのデータは、BASB006遺伝子が大腸菌において組換え形態(BASB006/His6)下で発現し、精製され得るということを示すものである。
【実施例3】
【0169】
組換えBASB006によるマウスの免疫感作および異なるナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)B血清群株におけるBASB006ポリペプチドのウェスタンブロッティングによる認識
大腸菌で発現した部分精製組換えBASB006をBALB/Cマウスに0日目、14日目および28日目に3回注射した(10匹/群)。1回用量当たり、5μgのMPLおよび1μgのQS21を含むSB62エマルジョン中に5μgの抗原を配合したものをマウスに皮下注射した。特異的抗BASB006抗体を検出するために、29日目(2回目の15日後)および35日目(3回目の6日後)にマウスから採血した。6種の異なるナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)B血清群株に対するウェスタンブロッティングにより、プールした血清(1群当たり10匹のマウスから得たもの)について特異的抗BASB006抗体を測定した(図4)。
【0170】
6種の異なるナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)B株は、H44/76(B:15:P1.7, 16,ET-5系列)、M97 250987(B:4:P1.15)、BZ10(B:2b:P1.2,A4系列)、BZ198(B:NT*:-,3系列)およびEG328(B:NT*,ST-18系列)であり、部分精製された組換えBASB006タンパク質(2つの他の候補抗原と混合したもの)について行った(*:NT:類別されていないもの)。
【0171】
簡単に述べると、サンプルバッファーで処理した(95℃で10分間)各サンプル15μl(>108細胞/レーン)を、SDS-PAGE勾配ゲル(Tris-グリシン4〜20%、Novex、コード番号EC60252)に加える。電気泳動による移動は、125ボルトにて90分間行う。その後、タンパク質を、Bio-rad トランスブロットシステム(コード番号170-3930)を用いて100ボルトで1時間かけてニトロセルロースシート(0.45μm、Bio-radコード番号162-0114)に移す。フィルターを室温にて一晩かけてPBS-0.05%Tween20でブロックした後、抗BASB006抗体を含むマウス血清とともにインキュベートした。これらの血清をPBS-0.05%Tween20で100倍に希釈し、ニトロセルロースシート上でミニブロッターシステム(Miniprotean, Bio-radコード番号170-4017)を用いて室温で穏やかに振盪しながら2時間インキュベートする。PBS-0.05%Tween20中での5分間の洗浄ステップを3回繰り返した後、ニトロセルロースシートを、同洗浄バッファーで1/500に希釈した適当なコンジュゲート(ヒツジ由来のビオチニル化抗マウスIg抗体、Amershamコード番号RPN1001)とともに穏やかに振盪しながら室温で1時間インキュベートする。膜を上記と同様に3回洗浄し、前記洗浄バッファーで1/1000に希釈したストレプトアビジン-ペルオキシダーゼ複合体(Amershamコード番号1051)を用いて攪拌しながら30分間インキュベートする。最後の洗浄ステップを3回繰り返した後、30mgの4-クロロ-1-ナフトール(Sigma)、10mlのメタノール、40mlのPBS、および30μlのH2O2を含む溶液50ml中で20分間インキュベートしている間に予想外のことが発生する。蒸留水で数回膜を洗浄している間に染色が停止する。
【0172】
図4に示した結果から、試験した全ての株が95〜100kDあたりにバンドを示すことが分かる(矢印参照)。これは、BASB006タンパク質の細胞外部分(完全な分子を2つの断片に切断した後。インフルエンザ菌(H.influenzae)Hapタンパク質に存在することが知られている)であると思われる。これは、BASB006タンパク質がおそらく大部分のナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)B血清群株で発現されているということを意味する。その他のバンドは全て分解産物に対して、または大腸菌とナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)B株との間で交差反応性を示す抗原(免疫感作に用いた調製物は依然として大腸菌混入物を含んでいたためである)に対して誘導された抗体であり得る。
【実施例4】
【0173】
ヒト回復期患者由来の血清における抗BASB006抗体の存在
この試験では、ヒト回復期血清を精製組換えBASB006タンパク質の認識についてウェスタンブロッティングで試験した。
【0174】
2種のその他のナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)B血清群タンパク質と混合した部分精製BASB006タンパク質5μgを電気泳動のためにSDS-PAGEグラジエントゲル(4〜20%、Novex、コード番号EC60252)に加える。タンパク質を、Bio-rad トランスブロットシステム(コード番号170-3930)を用いて100ボルトで1時間かけてニトロセルロースシート(0.45μm、Bio-radコード番号162-0114)に移す。その後、フィルターを室温にて一晩かけてPBS-0.05%Tween20でブロックした後、ヒト血清とともにインキュベートする。これらの血清をPBS-0.05%Tween20で100倍に希釈し、ニトロセルロースシート上でミニブロッターシステム(Miniprotean, Bio-radコード番号170-4017)を用いて室温で穏やかに振盪しながら2時間インキュベートする。PBS-0.05%Tween20中での5分間の洗浄ステップを3回繰り返した後、ニトロセルロースシートを、同洗浄バッファーで1/500に希釈した適当なコンジュゲート(ヒツジ由来のビオチニル化抗ヒトIg抗体、Amershamコード番号RPN1003)とともに穏やかに振盪しながら室温で1時間インキュベートする。膜は上記と同様に3回洗浄し、前記洗浄バッファーで1/1000に希釈したストレプトアビジン-ペルオキシダーゼ複合体(Amershamコード番号1051)を用いて攪拌しながら30分間インキュベートする。最後の洗浄ステップを3回繰り返した後、30mgの4-クロロ-1-ナフトール(Sigma)、10mlのメタノール、40mlの超純水、および30μlのH2O2を含む溶液50ml中で20分間インキュベートしている間に予想外のことが発生する。蒸留水で数回膜を洗浄している間に染色が停止する。
【0175】
図5(B部)に示した結果から、全ての回復期血清が160kD付近の完全なBASB006タンパク質と反応し、7個の回復期血清のうち3個がプロセシングされた可能性のあるBASB006タンパク質(+/-95〜100kD)と反応することがわかる。BASB006バンドはこの2つの分子量(95〜100kDおよび160kD)にはっきりと現れる。ウェスタンブロットのA部では、マウス血清(3つの異なるAg候補物質に対する特異的抗体の混合物)が同分子量の完全な組換えBASB006タンパク質を認識するということは分かるが、より低分子量では、95kD付近の2つのバンドのうちのどちらがプロセシングされたBASB006タンパク質に関連しているかを見分けるのはより困難である。
【0176】
寄託物
ナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)B血清群株を含む寄託物(deposit)をAmerican Type Culture Collection(「ATCC」)に1997年6月22日に寄託し、寄託番号13090を得た。この寄託物は、ナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)(AlbrechtおよびGhon)と記載されており、ナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)分離株から構築した、凍結乾燥した1.5〜2.9kbのインサートライブラリーである。この寄託物は、Int. Bull. Bacteriol. Nomencl. Taxon. 8:1-15(1958)に記載されている。
【0177】
ナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)株の寄託物は、本明細書では「寄託株」または「寄託株のDNA」と称する。
【0178】
寄託株は、完全長BASB006遺伝子を含む。万一本明細書の配列の記述と矛盾する場合、寄託株に含まれるポリヌクレオチドの配列、ならびにそれによってコードされる任意のポリペプチドのアミノ酸配列が優先される。
【0179】
寄託株の寄託は、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約の条項に基いてなされたものである。この株は、変更できず、特許発行の際には無制限または無条件に一般に公開される。寄託株は、単に当業者の便宜のために提供されるものであり、寄託が米国特許法第112条で要求されるような実施可能要件を満たす上で必要であるということを容認するものではない。
【0180】

【0181】
BASB006ポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列
配列番号1
ナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)BASB006ポリヌクレオチド配列


【0182】
配列番号2
配列番号1のポリヌクレオチド配列から推定されたナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)BASB006ポリペプチド配列


【0183】
配列番号3
H44/76株由来のナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)BASB006ポリヌクレオチド配列


【0184】
配列番号4
配列番号3のポリヌクレオチド配列から推定されたナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)BASB006ポリペプチド配列


【0185】
配列番号5

【0186】
配列番号6

【受託番号】
【0187】
ATCC 13090

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2および配列番号4からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる、単離されたポリペプチド。
【請求項2】
アミノ酸配列が配列番号2および配列番号4からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有する、請求項1に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項3】
配列番号2および配列番号4からなる群より選択されるアミノ酸配列を含んでなる、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項4】
配列番号2または配列番号4の単離されたポリペプチド。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリペプチドの免疫原性断片であって、該免疫原性断片の免疫原性活性が配列番号2または配列番号4のポリペプチドのものと実質的に同一である、上記断片。
【請求項6】
配列番号2または4のアミノ酸配列に対して、それぞれその配列番号2または4の全長にわたって少なくとも85%の同一性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んでなる単離されたポリヌクレオチド、またはその単離されたポリヌクレオチドに相補的なヌクレオチド配列。
【請求項7】
配列番号2または4のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に対して、そのコード領域全体にわたって少なくとも85%の同一性を有するヌクレオチド配列を含んでなる単離されたポリヌクレオチド、またはその単離されたポリヌクレオチドに相補的なヌクレオチド配列。
【請求項8】
配列番号1または3のヌクレオチド配列に対して、それぞれその配列番号1または3の全長にわたって少なくとも85%の同一性を有するヌクレオチド配列を含んでなる単離されたポリヌクレオチド、またはその単離されたポリヌクレオチドに相補的なヌクレオチド配列。
【請求項9】
同一性が配列番号1または3に対して少なくとも95%である、請求項6〜8のいずれか1項に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項10】
配列番号2または配列番号4のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んでなる単離されたポリヌクレオチド。
【請求項11】
配列番号1または配列番号3のポリヌクレオチドを含んでなる単離されたポリヌクレオチド。
【請求項12】
ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号1もしくは配列番号3の配列またはその断片を有する標識プローブを用いて適当なライブラリーをスクリーニングすることによって得られる配列番号2または配列番号4のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んでなる、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項13】
請求項6〜12のいずれか1項に記載の単離されたポリヌクレオチドを含む、発現ベクターまたは組換え生存微生物。
【請求項14】
請求項13に記載の発現ベクターを含む宿主細胞、または配列番号2および配列番号4からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる単離されたポリペプチドを発現している該宿主細胞の細胞下画分もしくは膜。
【請求項15】
配列番号2および配列番号4からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドの生産方法であって、請求項14に記載の宿主細胞を該ポリペプチドを産生させるのに十分な条件下で培養し、その培養培地から該ポリペプチドを回収することを含んでなる、上記方法。
【請求項16】
請求項6〜12のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドの発現方法であって、宿主細胞を該ポリヌクレオチドの少なくとも1つを含む発現ベクターで形質転換し、該宿主細胞を該ポリヌクレオチドのいずれか1つを発現させるのに十分な条件下で培養することを含む、上記発現方法。
【請求項17】
有効量の請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリペプチドおよび製薬上許容される担体を含むワクチン組成物。
【請求項18】
有効量の請求項6〜12のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドおよび製薬上有効な担体を含むワクチン組成物。
【請求項19】
少なくとも1種の他のナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)抗原を含む、請求項17または18に記載のワクチン組成物。
【請求項20】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリペプチドまたは免疫学的断片に対して免疫特異的な抗体。
【請求項21】
ナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)に感染した疑いのある動物由来の生物学的サンプル中に存在する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリペプチドまたは該ポリペプチドに対して免疫特異的な抗体を同定することを含む、ナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)感染の診断方法。
【請求項22】
動物において免疫応答を生起させるのに使用する薬剤の調製における、免疫学的に有効な量の請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリペプチドを含む組成物の使用。
【請求項23】
動物において免疫応答を生起させるのに使用する薬剤の調製における、免疫学的に有効な量の請求項6〜12のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含む組成物の使用。
【請求項24】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリペプチドに対抗して誘導された少なくとも1種の抗体および適当な製薬学的担体を含む、ナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)感染症に罹患したヒトの治療に有用な治療用組成物。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図1−4】
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【図1−5】
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【図1−6】
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【図1−7】
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【図1−8】
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【図1−9】
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【図1−10】
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【図1−11】
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【図1−12】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図2−4】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−166920(P2010−166920A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44312(P2010−44312)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【分割の表示】特願2000−546017(P2000−546017)の分割
【原出願日】平成11年4月20日(1999.4.20)
【出願人】(305060279)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (169)
【Fターム(参考)】