説明

髄膜炎菌結合体ワクチン接種

【課題】髄膜炎菌結合体ワクチン接種の提供。
【解決手段】結合体化髄膜炎菌莢膜糖が、近い将来において免疫スケジュールに導入されるが、「キャリア抑制」という現象に、取り組まなければならない。これは、複数の結合体が使用される場合には、特にそうである。本発明において、破傷風トキソイドは、複数の髄膜炎菌結合体が同時に投与される場合でさえ、そして以前の免疫原の形態(例えば、DTPワクチン)あるいは以前のキャリアタンパク質(例えば、Hibまたは肺炎球菌結合体化ワクチン)の形態で患者がキャリアタンパク質に対して以前に曝露されている場合でさえ、キャリアタンパク質として使用される。本発明は、患者を免疫するための方法を提供する。この方法は、髄膜炎莢膜糖の複数の結合体を投与する工程を包含し、各結合体は、破傷風トキソイドキャリアタンパク質および莢膜糖を含み、その患者は、破傷風トキソイドで予備免疫されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に引用される全ての文書は、その全体が参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、髄膜炎菌に対するワクチンに関する。具体的には、本発明は、複数の髄膜炎菌血清群に由来する結合体化莢膜糖に基づくワクチンに関する。
【背景技術】
【0003】
生物の莢膜多糖に基づいて、12種の血清群の髄膜炎菌(N. meningitidis)(A、B、C、H、I、K、L、29E、W135、X、Y、およびZ)が、同定されている。A群は、サハラ以南のアフリカにおける疫病に最も頻繁に関与する病原体である。血清群BおよびCは、米国およびほとんどの先進国における大多数の症例の原因である。血清群W135およびYは、米国および先進国における残りの症例の原因である。
【0004】
血清群A、C、YおよびW135に由来する莢膜多糖の四価ワクチンが、多年にわたって公知である(非特許文献1および2(参考文献1および2))。青年および成人において有効であるが、そのワクチンは、弱い免疫応答および短い防御期間しか誘導せず、乳児において使用し得ない(例えば、非特許文献3(参考文献3))。なぜなら、多糖は、ブーストされ得ない弱い免疫応答を誘導するT細胞非依存性抗原であるからである。このワクチン中の多糖は、結合体化されていない(非特許文献4(参考文献4))。
【0005】
血清群Cに対する結合体ワクチンが、ヒト使用に関して認可されており、それには、MenjugateTM(非特許文献5(参考文献5))、MeningitecTMおよびNeisVac−CTMが挙げられる。血清群A+Cに由来する結合体の混合物が、公知であり(非特許文献6〜7および特許文献1(参考文献6〜8))、血清群A+C+W135+Yに由来する結合体の混合物が、報告されている(特許文献2〜3、非特許文献8、特許文献4、非特許文献9(参考文献9〜13))。
【0006】
髄膜炎菌結合体が周知であるが、これらは、既存の小児科免疫スケジュールには未だ適合されていない。小児科免疫スケジュールは、先進国に関しては、代表的には、出生時にB型肝炎ワクチン、2ヶ月目から初めて、ジフテリア/破傷風/百日咳(D−T−P)、b型インフルエンザ(H.influenzae type b)(Hib)結合体、不活化ポリオウイルス結合体および不活化肺炎球菌結合体のすべてを含む。
【0007】
しかし、既存の免疫スケジュールに結合体化ワクチンを加える場合、キャリア誘導性エピトープ抑制(すなわち、一般的に公知であるような「キャリア抑制」)(特にキャリアプライミングから生じる抑制)の問題に、取り組まなければならない。「キャリア抑制」は、キャリアタンパク質による動物の予備免疫が、そのキャリア上に提示される新規抗原性エピトープに対する免疫応答を後に惹起することを妨げる現象である(非特許文献10(参考文献14))。
【0008】
参考文献15(非特許文献11)において報告されるように、いくつかのワクチン抗原が、同じタンパク質成分(結合体中で免疫原として、および/またはキャリアタンパク質として、使用される)を含む場合、それらの抗原の間で干渉の可能性が存在する。参考文献15(非特許文献11)において、破傷風トキソイド(Tt)キャリアに結合体化された抗原に対する免疫応答が、Ttに対する既存の免疫によって抑制された。
【0009】
参考文献16(非特許文献12)は、D−T−PワクチンとHib結合体ワクチンとの組み合わせが、そのHib結合体のキャリアがD−T−Pワクチン由来の破傷風抗原と同じである場合に、どのように有害な影響を受けるかを報告している。著者らは、共通するタンパク質キャリアによる干渉から生じるこの「キャリア抑制」現象が、複数の結合体を含むワクチンを導入する場合には考慮されるべきであると結論付けている。
【0010】
参考文献15および16とは対照的に、参考文献17(非特許文献13)は、破傷風トキソイドによるプライミングは、後に投与されたHib−Tt結合体に対する免疫応答に対して何の負の影響も有さなかったが、母系獲得した抗Tt抗体を有する患者において、抑制が観察されたと報告した。しかし、参考文献18(非特許文献14)において、「エピトープ抑制」効果が、破傷風ワクチン接種から生じる既存の抗Tt抗体を有する患者において、Ttベースのペプチド結合体について報告された。
【0011】
参考文献19(非特許文献15)において、CRM197(ジフテリア毒素の無毒化変異体)をキャリアとして有する結合体は、ワクチンの一部として(例えば、D−T−PワクチンもしくはD−Tワクチンの一部として)以前にジフテリア毒素を受けてはいない小児においては効果がないものであり得ることが、示唆された。この研究は、参考文献20(非特許文献16)においてさらに発展された。参考文献20において、D−T免疫によるキャリアプライミング効果は、その後のHib結合体による免疫の間持続することが観察された。
【0012】
参考文献21(非特許文献17)において、著者らは、ジフテリアトキソイドキャリアタンパク質もしくは破傷風トキソイドキャリアタンパク質による予備免疫は、それらのキャリアに結合体化したHib莢膜糖によるその後の免疫の後に、抗HIb抗体レベルの増加を減少させ、IgG1およびIgG2が等しく影響を受けたことを見出した。上記結合体のキャリア部分に対する応答もまた、抑制された。さらに、より一般的な非エピトープ特異的抑制が観察され、同様に、1つの結合体による予備免疫は、4週間後に投与されたキャリアおよび第二の結合体の糖部分の両方に対する免疫応答に影響を与えることが観察された。
【0013】
1つの多価肺炎球菌結合体ワクチンにおける種々のキャリアタンパク質の使用は、参考文献22(特許文献5)において報告されており、複数のキャリアが、キャリア抑制を回避するために使用される。その著者らは、負の干渉を生じることなく多価結合体ワクチンにおいて許容され得るキャリアタンパク質の最大充填量が存在すると予測している。参考文献23(非特許文献18)において、混合キャリアタンパク質を含む肺炎球菌結合体ワクチンが、抗肺炎球菌応答と並行して、そのキャリアに対する意図されないブースター応答を惹起したことが、報告された。
【0014】
参考文献24(非特許文献19)において、ジフテリアブースターおよび破傷風ブースターが多価髄膜炎菌血清群C結合体とともに投与されたか否かに関する調査において、髄膜炎菌結合体に対する力価は、そのキャリアが破傷風トキソイドキャリアでありかつ患者が破傷風含有ワクチンによる予備免疫を受けている場合に低減されたことが、見出された。
【0015】
最後に、参考文献25(非特許文献20)は、キャリアタンパク質に対する事前曝露は、糖−タンパク質結合体の状態で投与された多糖に対する抗体応答を増強または抑制のいずれかをし得る」と報告している。参考文献25において使用された結合体は、破傷風トキソイドまたはCRM197変異体をキャリアタンパク質として使用した。
【0016】
従って、キャリアプライミングおよび/またはキャリア抑制に関する状況は、混乱しており、特定の何らかの結合体がキャリア抑制に悩まされるかまたはキャリアプライミング増強から恩恵を受けるかは、不明のままである。髄膜炎結合体ワクチンは、この問題に取り組まれるまで、既存の小児科免疫スケジュールに組み込まれる位置にも加えられる位置にも存在しない。さらに、髄膜炎菌結合体が四価混合物(すなわち、4種の異なる結合体)として投与される場合、キャリア抑制の可能性は、さらによりリスクが高くなる。
【0017】
糖結合体に対する免疫応答に対して負の影響を有するキャリアを用いるプライミングの問題に加えて、逆もまた、生じ得る。すなわち、結合体による免疫は、そのキャリアに対する免疫応答に対して負の影響を有し得る(参考文献26(非特許文献21))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】国際公開第2005/000345号パンフレット
【特許文献2】国際公開第02/058737号パンフレット
【特許文献3】国際公開第03/007985号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2004/013400号パンフレット
【特許文献5】オーストラリア国特許第74816号明細書
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Armandら,J.Biol.Stand.(1982)10:335〜339
【非特許文献2】Cadozら,Vaccine(1985)3:340〜342
【非特許文献3】MMWR(1997)46(RR−5)1〜10
【非特許文献4】Baklaicら、Infect.Immun.(1983)42:599〜604
【非特許文献5】Jones,Curr Opin Investig Drugs(2001)2:47〜49
【非特許文献6】Costantinoら、Vaccine(1992)10:691〜8
【非特許文献7】Liebermanら、JAMA(1996)275:1499〜503
【非特許文献8】Rennelsら、Pediatr Infect Dis J(2002)21:978〜979
【非特許文献9】Campbellら、J Infect Dis(2992)186:1848〜1851
【非特許文献10】Herzenbergら、Nature(1980)285:664〜667
【非特許文献11】Schutzeら、J Immunol(1985)135:2319〜2322
【非特許文献12】Daganら、Infect Immun(1998)66:2093〜2098
【非特許文献13】Baringtonら、Infect Immun(1994)62:9〜14
【非特許文献14】Di Jonら、Lancet(1989)2(8677):1415〜8
【非特許文献15】Granoffら、Vaccine(1993)Suppl 1,S46〜51
【非特許文献16】Granoffら、JAMM(1994)272:1116〜1121
【非特許文献17】Baringtonら、Infect Immun(1993)61:432〜438
【非特許文献18】Olanderら、Vaccine(2001)20:336〜341
【非特許文献19】Burrageら、Infect Immun(2002)70:4946〜4954
【非特許文献20】Peetersら、Infect Immun(1999)59:3504〜3510
【非特許文献21】Hoppenbrouwersら、Vaccine(1999)17:2588〜98
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
(発明の開示)
参考文献27は、髄膜炎結合体ワクチンにおけるキャリア抑制は、1種よりも多い型のキャリアタンパク質を使用することによって処理されるべきであると示唆する。具体的には、参考文献27は、インフルエンザ菌タンパク質Dが、髄膜炎菌結合体のキャリアタンパク質として使用され、破傷風トキソイド(Tt)もまた可能であると示唆する。参考文献28において、エピトープ抑制を回避するために、タンパク質Dもまた、選り抜きのキャリアである。同様に、参考文献29は、Bordetella pertussis線毛が、多価結合体ワクチンにおけるキャリア抑制を回避するためにキャリアとして使用されるべきであると示唆する。対照的に、本発明は、混合した髄膜炎菌糖結合体のキャリアとして破傷風トキソイド(Tt)を使用する。
【0021】
さらに、参考文献27はまた、髄膜炎菌結合体ワクチンが、D−T−P−Hibワクチンと同時に投与されて(例えば、実施例3を参照のこと)、その結果、その髄膜炎菌結合体に由来するキャリアタンパク質に対する事前曝露が存在しないようにすべきであることを示唆する。対照的に、髄膜炎菌結合体は、それらがキャリアタンパク質として、例えば、前回の免疫原(例えば、D−T−P免疫もしくはD−T免疫における)の形態または前回のキャリアタンパク質(例えば、Hib結合体ワクチンもしくは肺炎球菌結合体ワクチンにおける)としてのいずれかで既に受容されている場合でさえ、患者に対して投与され得ることが、現在見出された。一価血清群C結合体枠知音におけるキャリア誘導体エピトープ抑制についての以前の研究(参考文献24)は、いかなる結合体予備免疫の効果も、検討しなかった。
【0022】
参考文献27と対比的であることに加えて、髄膜炎結合体に対する免疫応答を患者が惹起する能力は、患者が別の結合体を既に受容している場合でさえ、参考文献21と対比的である。
【0023】
従って、本発明は、髄膜炎菌により引き起こされる疾患に対してヒト患者を免疫するための方法を提供し、その方法は、
(a)(i)血清群A 髄膜炎菌の莢膜糖と(ii)破傷風トキソイドとの結合体;(b)(i)血清群C 髄膜炎菌の莢膜糖と(ii)破傷風トキソイドとの結合体;(c)(i)血清群W135 髄膜炎菌の莢膜糖と(ii)破傷風トキソイドとの結合体;および(d)(i)血清群Y 髄膜炎菌の莢膜糖と(ii)破傷風トキソイドとの結合体;のうちの少なくとも2つを含む組成物を、そのヒト患者に対して投与する工程;
を包含し、
その患者は、(a)破傷風トキソイド;および/または(b)(i)髄膜炎菌以外の生物の莢膜糖と(ii)破傷風トキソイドとの結合体で予備免疫されている。
【0024】
本発明はまた、髄膜炎菌により引き起こされる疾患に対してヒト患者を免疫するための医薬の製造における、
(a)(i)血清群A 髄膜炎菌の莢膜糖と(ii)破傷風トキソイドとの結合体;(b)(i)血清群C 髄膜炎菌の莢膜糖と(ii)破傷風トキソイドとの結合体;(c)(i)血清群W135 髄膜炎菌の莢膜糖と(ii)破傷風トキソイドとの結合体;および(d)(i)血清群Y 髄膜炎菌の莢膜糖と(ii)破傷風トキソイドとの結合体;のうちの少なくとも2つの使用を提供し、
その患者は、(a)破傷風トキソイド;および/または(b)(i)髄膜炎菌以外の生物の莢膜糖と(ii)破傷風トキソイドとの結合体で予備免疫されている。
【0025】
上記髄膜炎菌性疾患は、好ましくは、髄膜炎であり、より好ましくは、細菌性髄膜炎であり、最も好ましくは、髄膜炎菌性髄膜炎である。従って、本発明は、髄膜炎を引き起こす髄膜炎菌感染に対して防御するために使用され得る。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
髄膜炎菌により引き起こされる疾患に対してヒト患者を免疫するための方法であって、該方法は、
(a)(i)血清群A 髄膜炎菌の莢膜糖と(ii)破傷風トキソイドとの結合体;(b)(i)血清群C 髄膜炎菌の莢膜糖と(ii)破傷風トキソイドとの結合体;(c)(i)血清群W135 髄膜炎菌の莢膜糖と(ii)破傷風トキソイドとの結合体;および(d)(i)血清群Y 髄膜炎菌の莢膜糖と(ii)破傷風トキソイドとの結合体;のうちの少なくとも2つを含む組成物を、該ヒト患者に対して投与する工程;
を包含し、
該患者は、(a)破傷風トキソイド;および/または(b)(i)髄膜炎菌以外の生物の莢膜糖と(ii)破傷風トキソイドとの結合体で予備免疫されている、方法。
(項目2)
髄膜炎菌により引き起こされる疾患に対してヒト患者を免疫するための医薬の製造における、
(a)(i)血清群A 髄膜炎菌の莢膜糖と(ii)破傷風トキソイドとの結合体;(b)(i)血清群C 髄膜炎菌の莢膜糖と(ii)破傷風トキソイドとの結合体;(c)(i)血清群W135 髄膜炎菌の莢膜糖と(ii)破傷風トキソイドとの結合体;および(d)(i)血清群Y 髄膜炎菌の莢膜糖と(ii)破傷風トキソイドとの結合体;のうちの少なくとも2つの使用であって、
該患者は、(a)破傷風トキソイド;および/または(b)(i)髄膜炎菌以外の生物の莢膜糖と(ii)破傷風トキソイドとの結合体で予備免疫されている、使用。
(項目3)
項目1に記載の方法であって、前記組成物は、(a)、(b)、(c)および(d)の4つすべてを含む、方法。
(項目4)
項目2に記載の使用であって、前記使用が(a)、(b)、(c)および(d)の4つすべての使用である、使用。
(項目5)
項目1〜4のうちのいずれか1項に記載の方法または使用であって、前記患者は、破傷風トキソイドを含むワクチンで予備免疫されている、方法または使用。
(項目6)
項目1〜5のうちのいずれか1項に記載の方法または使用であって、前記患者は、Hib結合体を含むワクチンで予備免疫されている、方法または使用。
(項目7)
項目1〜6のうちのいずれか1項に記載の方法または使用であって、前記患者は、少なくとも1つの肺炎球菌結合体を含むワクチンで予備免疫されている、方法または使用。
(項目8)
項目1〜7のうちのいずれか1項に記載の方法または使用であって、前記患者は、該方法または使用の少なくとも6ヶ月前に予備免疫されている、方法または使用。
(項目9)
項目8に記載の方法または使用であって、前記患者は、該方法または使用の少なくとも8年間前に予備免疫されている、方法または使用。
(項目10)
項目1〜9のうちのいずれか1項に記載の方法または使用であって、前記予備免疫は、前記患者の出生から1年間以内に行われている、方法または使用。
(項目11)
項目1〜10のうちのいずれか1項に記載の方法または使用であって、前記髄膜炎菌結合体(a)〜(d)中の糖は、髄膜炎菌において見出されるネイティブ莢膜糖よりも短い、方法または使用。
(項目12)
項目1〜11のうちのいずれか1項に記載の方法または使用であって、前記髄膜炎菌結合体は、破傷風トキソイドキャリアおよびアジピン酸リンカーを含む、方法または使用。
(項目13)
項目12に記載の方法または使用であって、60μg以下の破傷風トキソイドキャリアを含む、方法または使用。
(項目14)
項目1〜13のうちのいずれか1項に記載の方法または使用であって、前記組成物または医薬は、肺炎連鎖球菌由来の結合体化莢膜糖をさらに含む、方法または使用。
(項目15)
項目1〜14のうちのいずれか1項に記載の方法または使用であって、前記組成物または医薬は、B型インフルエンザ菌由来の結合体化莢膜糖をさらに含む、方法または使用。
(項目16)
項目1〜15のうちのいずれか1項に記載の方法または使用であって、前記組成物または医薬は、血清群Bの髄膜炎菌由来のタンパク質抗原をさらに含む、方法または使用。
(項目17)
項目1〜16のうちのいずれか1項に記載の方法または使用であって、前記組成物または医薬は、水酸化アルミニウムアジュバントおよび/またはリン酸アルミニウムアジュバントを含む、方法または使用。
(項目18)
項目1〜17のうちのいずれか1項に記載の方法または使用であって、前記髄膜炎菌により引き起こされる疾患は、髄膜炎菌性髄膜炎である、方法または使用。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(予備免疫された患者)
免疫されるべき患者は、(a)破傷風トキソイド;および/または(b)(i)髄膜炎菌以外の生物の莢膜糖と(ii)破傷風トキソイドとの結合体で予備免疫されている。代表的な予備免疫は、破傷風トキソイド抗原;破傷風トキソイドキャリアを使用するHib莢膜糖結合体;および/または破傷風トキソイドキャリアを使用する肺炎球菌莢膜糖結合体を含んでいる。
【0027】
上記患者は、少なくとも1回(例えば、1回、2回、3回、もしくはそれ以上の回数)の上記予備免疫抗原投与を受け、その投与(もしくは複数回投与のうちのもっとも早い投与)は、本発明に従う髄膜炎菌結合体による免疫の少なくとも6ヶ月間(例えば、6ヶ月間、9ヶ月間、12ヶ月間、15ヶ月間、18ヶ月間、21ヶ月間、24ヶ月間、36ヶ月間、48ヶ月間、60ヶ月間、120ヶ月間、180ヶ月間、240ヶ月間、300ヶ月間、もしくはそれ以上)前に、上記患者に投与される。好ましい患者群において、上記予備免疫は、出生から3年間以内(例えば、出生から2年間以内、出生から1年間以内、出生から6ヶ月間以内、または出生から3ヶ月、2ヶ月、もしくは1ヶ月以内)に行われた。
【0028】
本発明に従って免疫されるべき患者は、代表的には、ヒトである。そのヒトは、少なくとも1ヶ月齢であり、例えば、少なくとも2ヶ月齢、少なくとも3ヶ月齢、少なくとも4ヶ月齢、少なくとも6ヶ月齢、少なくとも2歳、少なくとも5歳、少なくとも11歳、少なくとも17歳、少なくとも40歳、少なくとも55歳などである。患者の好ましい組は、少なくとも6ヶ月齢である。患者の別の好ましい組は、2歳〜55歳の年齢群にあり、患者の別の好ましい組は、11歳〜55歳の年齢群にある。患者のさらに好ましい組は、11歳未満(例えば、2歳〜11歳)である。しかし、すべての場合において、年齢に関係なく、上記患者は、本明細書において規定されるように予備免疫される。
【0029】
上記患者は、D−T−P予備免疫またはD−T予備免疫においてその破傷風トキソイドを「T」抗原として受容する。そのような免疫は、代表的には、2ヶ月齢、3ヶ月齢、および4ヶ月齢の新生児に与えられる。上記免疫が破傷風ワクチンを含む場合、そのワクチンは、全細胞ワクチンまたは細胞性破傷風ワクチン(「Pw」)であり得るが、好ましくは、無細胞性破傷風ワクチン(「Pa」)である。予備免疫Paワクチンは、一般的には、以下の周知かつ十分に特徴付けられたB.pertussis抗原:(1)破傷風トキソイド(「PT」)(化学的手段もしくは部位特異的変異誘発のいずれかによって無毒化されている)(例えば、「9K/129G」変異体(参考文献30));(2)線維性赤血球凝集素(「FHA」);(3)ペルタクチン(「69kDa外膜タンパク質としても公知である);のうちの1つ、2つ、または3つを含む。無細胞性破傷風ワクチンはまた、凝集原2および/または凝集原3を含み得る。D−T−P予備免疫における「D」抗原は、代表的には、ジフテリアトキソイドである。
【0030】
上記患者はまた、あるいは代替的に、タンパク質−糖結合体のキャリアタンパク質として破傷風トキソイドを与えられる。そのような結合体としては、「PRP−T」Hib結合体[参考文献31の表14〜7を参照のこと](例えば、ActHIBTM、OmniHIBTMおよびHIBERIXTM製品)が挙げられる。上記患者はまた、血清群C髄膜炎菌(「MenC」)結合体で予備免疫され得る。破傷風トキソイドキャリアを使用するMenC結合体としては、NeisVac−CTM製品が挙げられる。しかし、好ましくは、上記患者は、Hib結合体および/または肺炎球菌結合体で予備免疫されているが、MenC結合体では予備免疫されていない。上記キャリアがMenC結合体で予備免疫されている場合、本発明に従って投与されるワクチンは、血清群C結合体を含んでいても含まなくてもよい。
【0031】
上記予備免疫が結合体化抗原である場合、上記患者はまた、ほぼ必ず、少量の遊離破傷風トキソイドを、(例えば、貯蔵の間の上記結合体の加水分解により引き起こされる)上記結合体の低レベル混入の結果として受容するが、この少量は、代表的には、有意な免疫応答を提供するために十分ではない。
【0032】
破傷風トキソイドは、周知かつ十分に特徴付けられたタンパク質(例えば、参考文献31の第13章を参照のこと)であり、破傷風菌により生成されるエンドペプチダーゼ(「破傷風トキシン」)の不活性化により得られ得る。上記トキシンは、毒性はないが抗原性が残っているトキソイドを得るために処理され得、注射後、特異的な抗トキシン抗体の産生を刺激することができる。好ましい破傷風トキソイドは、ホルムアルデヒド処理により処理されたものである。上記破傷風トキソイドは、増殖培地(例えば、ウシカゼイン由来のLatham培地)中で破傷風菌を成長させ、続いてホルムアルデヒド処理、限外濾過および沈降させることにより得られ得る。次いでこの原料は、滅菌濾過および/または透析を包含するプロセスにより処理され得る。本明細書で使用される場合、用語「破傷風トキソイド」は、免疫学的に破傷風トキシンとの交差反応を残した破傷風トキソイドの誘導体を含む。
【0033】
上記予備免疫の結果は、その患者の免疫系が上記予備免疫抗原に曝露されていることである。これは、一般的には、上記患者が抗Tt抗体応答を惹起しており(代表的には、抗Tt力価>0.01IU/ml)を与える)、Ttに対して特異的な記憶Bリンパ球および記憶Tリンパ球を保有すること、すなわち、予備免疫が、代表的には、上記患者における既往性(anamnestic)抗Tt免疫応答を惹起するために十分であることを、意味する。Ttが結合体中の糖についてのキャリアである予備免疫について、上記予備免疫は、抗糖応答を惹起し、上記患者は、上記糖に対して特異的な記憶Bリンパ球および/または記憶Tリンパ球を保有する。すなわち、上記予備免疫は、代表的には、上記患者における既往性(anamnestic)抗糖免疫応答を惹起するために十分である。上記予備免疫は、好ましくは、上記患者において、例えば、破傷風疾患または糖含有生物体のそれぞれに対する防御免疫を惹起するために十分である。
【0034】
従って、本発明に従って免疫されるべき患者は、一般的な患者とは区別される。なぜなら、それらの患者は、免疫系が上記予備免疫抗原に対する免疫応答を既に惹起している一般集団の部分集団のメンバーであり、その結果、破傷風トキソイドキャリアを含む髄膜炎菌結合体による本発明に従う免疫は、上記予備免疫抗原に対する免疫応答を以前には惹起していない患者においてとは異なる免疫応答を、上記部分集団において惹起する。結合体(特に、Hib結合体)のキャリアとしてのTtで予備免疫されている患者が、好ましい。特に好ましい患者は、結合対のキャリアとしてのTtで予備免疫されており、かつまた、非結合体化免疫原としてのTtで予備免疫されている。
【0035】
破傷風トキソイド(結合体形態もしくは非結合体形態)で予備免疫されていることに加え、上記患者は、他の抗原で予備免疫されていてもよい。そのような抗原としては、百日咳抗原(上記参照);ジフテリアトキソイド(上記参照);B型インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae type B)(上記参照);B型肝炎表面抗原(HBsAg);ポリオウイルス(例えば、不活化ポリオウイルスワクチン(IPV));肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae(上記参照));インフルエンザウイルス;BCG;A型肝炎ウイルス抗原;麻疹ウイルス;流行性耳下腺炎ウイルス;風疹ウイルス;水痘ウイルスなどが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0036】
上記患者は、1つ以上の髄膜炎菌結合体で予備免疫されていても、されていなくてもよい。いくつかの好ましい実施形態においては、患者が初めて髄膜炎菌結合体を受容したときに、その患者は、Ttで既に予備免疫されている。他の実施形態において、髄膜炎菌結合体は、(i)Ttもしくは誘導体、および(ii)髄膜炎菌結合体の両方で既に予備免疫されている。
【0037】
(結合体)
本発明は、結合体化糖で患者を免疫する。結合体化は、糖の免疫原性を増強するために使用される。なぜなら、この結合体化によって、糖が、T非依存性抗原からT依存性抗原へと変換され、これによって、免疫学的記憶のためのプライミングが可能になるからである。結合体化は、小児科ワクチンのために特に有用であり(例えば、参考文献32)、周知技術である(例えば、参考文献33〜41において概説される)。
【0038】
本発明に従って使用される組成物は、少なくとも2つの髄膜炎菌結合体を含み、各結合体は、破傷風トキソイド(もしくはその誘導体)キャリアタンパク質および莢膜糖を含む。上記莢膜糖は、髄膜炎菌血清群A、C、W135、およびYから選択され、その組成物が、これら4つの血清群のうちの2つ、3つ、または4つすべてに由来する糖を含むようにされる。具体的組成物は、血清群AおよびCに由来する糖;血清群AおよびW135に由来する糖;血清群AおよびYに由来する糖;血清群CおよびW135に由来する糖;血清群CおよびYに由来する糖;血清群W135およびYに由来する糖;血清群AおよびCおよびW135に由来する糖;血清群AおよびCおよびYに由来する糖;血清群AおよびW135およびYに由来する糖;血清群CおよびW135およびYに由来する糖;血清群AおよびCおよびW135およびYに由来する糖を含む。4つすべての血清群に由来する糖を含む組成物が、最も好ましい。
【0039】
これらの4つの血清群のうちの各々の莢膜糖は、十分に特徴付けられている。血清群A髄膜炎菌の莢膜糖は、(α1→6)結合型N−アセチル−D−マンノサミン−1−リン酸のホモポリマーであり、C3位およびC4位において部分的O−アセチル化を含む。そのアセチル基は、加水分解を防止するためにブロッキング基で置換され得(参考文献42)、そのように改変された糖は、本発明の意味においては依然として血清群A糖である。血清群C莢膜糖は、(α2→9)結合型シアリン酸(N−アセチルノイラミン酸もしくは「NeuNAc」)のホモポリマーである。ほとんどの血清群C株は、そのシアリン酸残基のC7位および/またはC8位にO−アセチル基を有するが、臨床単離株のうちの約15%は、これらのO−アセチル基を欠く(参考文献43および44)。その糖構造は、→9)−Neu p NAc 7/8 OAc−(α2→として記載される。血清群W135糖は、シアリン酸−ガラクトース二糖単位のポリマーである。血清群C糖とは異なり、この血清群W135糖は、可変であるがシアリン酸の7位および9位にO−アセチル化を有する(参考文献45)。この構造は、→4)−D−Neup5Ac(7/9OAc)−α−(2→6)−D−Gal−α−(1→として記載される。血清群Y糖は、血清群W135糖と類似しているが、但し、その二糖反復単位は、ガラクトースの代わりにグルコースを含む。血清群W135と同様に、この血清群Y糖は、シアリン酸の7位および9位に可変のO−アセチル化を有する(参考文献45)。血清群Yの構造は、→4)−D−Neup5Ac(7/9OAc)−α−(2→6)−D−Glc−α−(1→として記載される。
【0040】
本発明に従って使用される糖は、(例えば、ネイティブ莢膜糖において観察されるのと同じO−アセチル化パターンで)上記のようにO−アセチル化され得るか、またはその糖は、その糖環のうちの1つ以上の位置において部分的にかもしくは全体的に脱O−アセチル化され得るか、またはその糖は、そのネイティブ莢膜糖と比較して過剰にO−アセチル化され得る。
【0041】
本発明に従って使用される糖は、細菌において観察されるネイティブ莢膜糖よりも好ましくは短い。従って、上記糖は、好ましくは、脱重合され、脱重合は、精製後であるが結合体化の前に生じる。脱重合は、その糖の鎖長を低減させる。好ましい脱重合方法は、過酸化水素の使用を含む(参考文献9)。過酸化水素は、(例えば、最終H濃度1%を生じるように)糖に添加され、その後、その混合物は、望ましい鎖長低減が達成されるまで(例えば、約55℃にて)インキュベートされる。別の脱重合方法は、酸加水分解を含む(参考文献10)。他の脱重合方法は、当業者にとって公知である。本発明に従う使用のために結合体を調製するために使用される糖は、これらの脱重合方法のうちのいずれかによって取得され得る。脱重合は、免疫原性のために最適な鎖長を提供するため、および/またはその糖の物理的管理能のために鎖長を低減するために、使用され得る。
【0042】
結合体において使用するために代表的なキャリアタンパク質は、細菌毒素または細菌トキソイド(例えば、ジフテリア毒素(もしくはそのCRM197変異体)および破傷風毒素)である。他の公知のキャリアタンパク質としては、髄膜炎菌外膜タンパク質、合成ペプチド、熱ショックタンパク質、百日咳タンパク質、サイトカイン、リンホカイン、ホルモン、増殖因子、種々の病原体由来抗原に由来する複数のヒトCD4T細胞エピトープを含む人工タンパク質、H.influenzae由来のタンパク質D、肺炎球菌表面タンパク質PspA、鉄取込みタンパク質、C.difficile由来の毒素Aまたは毒素Bなどが挙げられる。しかし、本発明に従って、上記髄膜炎菌結合体は、破傷風トキソイドキャリアタンパク質を含む。共有結合体化が、好ましい。
【0043】
上記組成物において1つよりも多くのキャリアタンパク質を使用することが、好ましい。従って、種々のキャリアタンパク質が、種々の血清群のために使用され得る。例えば、血清群A糖が、Ttに結合体化され得、一方、血清群C糖が、Dtに結合体化され得る。特定の糖抗原のために1つよりも多くのキャリアタンパク質を使用することもまた、可能である。例えば、血清群A糖が、2つのグループにあり得、いくつかはTtに結合体化され、他はDtに結合体化される。しかし、一般的には、その組成物中の髄膜炎菌糖すべてについて(より好ましくは、すべての糖(すなわち、存在し得るあらゆる非髄膜炎菌結合体を含む)について)同じキャリアタンパク質を使用することが、好ましい。
【0044】
単一のキャリアタンパク質は、1つよりも多くの糖抗原(参考文献46)を含み得る。例えば、単一のキャリアタンパク質は、そのタンパク質に、血清群A由来の糖および血清群C由来の糖を結合体化し得る。この目的を達成するために、糖は、上記結合体化反応の前に混合され得る。しかし、一般的には、各血清群について別個の結合体を有することが、好ましい。結合体は、好ましくは、(糖の質量として測定して)実質的には1:1:1:1の比を生じるように混合される。例えば、各血清群の糖の質量は、互いの±10%以内にある。組成物中の血清群1つ当たりの髄膜炎菌抗原の代表的な量は、1μg〜20μgであり、例えば、血清群1つ当たり2μg〜10μg、または約4μgである。1:1:1:1の比の代替法として、二重血清群A用量(2:1:1:1)が、使用され得る。
【0045】
糖:タンパク質比(w/w)が1:15(すなわち、過剰なタンパク質)〜15:1(すなわち、過剰な糖)、好ましくは1:10〜10:1、より好ましくは1:5〜5:1にある結合体が、好ましい。過剰なキャリアタンパク質が、好ましい。糖:タンパク質比が約1:12または約1:6または約1:3である結合体が、好ましい。
【0046】
結合体は、遊離キャリアタンパク質(参考文献47)と組み合わせて使用され得る。しかし、所定のキャリアタンパク質が、本発明の組成物中で遊離形態および結合体化形態の両方で存在する場合、その非結合体化形態は、全体として、その組成物中のキャリアタンパク質の総量のうちの好ましくは5%以下であり、より好ましくは2重量%未満で存在する。同様に、非結合体化糖は、好ましくは、糖の総量のうちの15重量%以下である。
【0047】
適切な任意の結合体化反応が、使用され得、任意の適切なリンカーが、必要な場合に使用され得る。
【0048】
上記糖は、代表的には、結合体化の前に活性化または官能化される。活性化は、例えば、シアニル化試薬(例えば、CDAP(例えば、1−シアノ−4−ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロボレート(参考文献48、49など)))を含み得る。他の適切な技術は、カルボジイミド、ヒドラジド、活性エステル、ノルボラン、p−ニトロ安息香酸、N−ヒドロキシスクシンイミド、S−NHS、EDC、TSTUを使用する(参考文献39に対する序文もまた参照のこと)。
【0049】
リンカー基を介する結合が、任意の公知手順(例えば、参考文献50および51において記載される手順)を使用して作製され得る。ある型の結合は、多糖の還元的アミド化、生じるアミノ基をアジピン酸リンカー基の一端とカップリングすること、その後、タンパク質をそのアジピン酸リンカー基のもう一端にカップリングすること(参考文献37、52、53)を含む。他のリンカーとしては、B−プロピオンアミド(参考文献54)、ニトロフェニル−エチルアミン(参考文献55)、ハロアシルハライド(参考文献56)、グリコシド結合(参考文献57)、6−アミノカプロン酸(参考文献58)、ADH(参考文献59)、C〜C12部分(参考文献60)などが挙げられる。リンカーを使用することの代替法として、直接的結合が、使用され得る。上記タンパク質に対する直接的結合は、例えば、参考文献61および62において記載されるような、上記多糖の酸化、その後の上記蛋白質による還元的アミノ化を含み得る。
【0050】
(例えば、末端=O基を−NHで置換することによる)上記糖中へのアミノ基の導入、その後のアジピン酸ジエステル(例えば、アジピン酸N−ヒドロキシスクシンイミドジエステル)による誘導体化、およびキャリアタンパク質との反応を含むプロセスが、好ましい。
【0051】
ある好ましい結合体化方法において、糖は、アジピン酸二水和物と反応させられる。血清群Aについて、カルボジイミドもまた、この段階で添加され得る。反応期間の後、ナトリウムシアノボロヒドリドが、添加される。その後、誘導体化糖が、例えば、限外ろ過によって調製され得る。その後、その誘導体化糖は、キャリアタンパク質と(例えば、破傷風トキソイドと)混合され、カルボジイミドが、添加される。反応期間の後、その結合体が、回収され得る。この結合体化方法のさらなる詳細は、参考文献10において見出され得る。この方法によって取得可能な結合体(例えば、破傷風トキソイドキャリアとアジピン酸リンカーとを含む結合体)が、本発明に従う使用のために好ましい結合体である。
【0052】
結合体は、好ましくは別個に調製され、その後に混合される。混合の後、混合された結合体の濃度は、例えば、発熱物質を含まない滅菌リン酸緩衝化生理食塩水で調節され得る。各結合体は、混合する前には、好ましくは、15μg以下のキャリアを含む。
【0053】
本発明に従う髄膜炎菌結合体を投与する結果は、好ましくは、投与される各血清群について、上記患者が血清殺菌抗体(SBA)応答を惹起し、(その混合髄膜炎菌結合体を受ける前の予備免疫された患者と比較した)SBA力価の増加が、少なくとも4倍であり、好ましくは少なくとも8倍であることである。そのSBA試験は、髄膜炎菌防御について標準的な相互関連因子である。髄膜炎菌ワクチンについての血清学的相互関連因子のさらなる詳細が、参考文献63において与えられる。
【0054】
(本発明に従って使用される組成物のさらなる抗原性成分)
髄膜炎菌結合体に加えて、本発明に従って使用される組成物は、必要に応じて、以下のさらなる抗原のうちの1つ、2つ、または3つを含み得る:
1.肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)由来の結合体化莢膜糖(例えば、参考文献31の第23章;参考文献64〜66):
1つよりも多くの血清型の肺炎連鎖球菌に由来する糖を含むことが、好ましい。例えば、23種の異なる血清型に由来する多糖の混合物が、広範に使用され、同様に、5種〜11種の異なる血清型に由来する多糖を含む結合体ワクチンも、広範に使用される(参考文献67)。例えば、PrevNarTM(参考文献68)は、7種の血清型(4、6B、9V、14、18C、19F、および23F)に由来する抗原を含み、各糖は、還元的アミン化によってCRM197に個別に結合体化されており、0.5ml用量について各糖2μg(4μgの血清型6B)であり、結合体は、リン酸アルミニウムアジュバントに吸着されている。肺炎球菌が本発明に関して使用するための組成物中に含まれる場合、その組成物は、好ましくは、少なくとも血清型6B、14、19Fおよび23Fを含む。
【0055】
2.インフルエンザ菌B型(H.influenzae B)に由来する結合体化莢膜糖(例えば、参考文献31の第14章):
上記結合体のキャリアタンパク質は、破傷風トキソイド、CRM917、Dt、または髄膜炎菌の外膜複合体であり得る。その結合体の糖部分は、多糖(例えば、全長ポリリボシルリビトールホスフェート(PRP))であり得るが、その莢膜多糖をオリゴ糖(例えば、分子量約1kDa〜約5kDa)へと脱重合することが、好ましい。好ましいHib結合体は、アジピン酸リンカーを介してCRM197またはTtに共有結合したオリゴ糖を含む(参考文献69、70)。上記Hib抗原の投与は、好ましくは>0.15μg/ml、より好ましくは>1μg/mlの抗PRP抗体濃度を生じる。組成物がHib糖抗原を含む場合、その組成物はまた、好ましくは、水酸化アルミニウムアジュバントを含まない。上記組成物がリン酸アルミニウムアジュバントを含む場合、そのHib抗原は、そのアジュバントに吸着されていても(参考文献71)、吸着されていなくてもよい(参考文献27)。吸着の防止は、抗原/アジュバント混合の間における正しいpH、適切な0荷電点を有するアジュバント、および組成物中における種々の別個の抗原を混合する適切な順序を選択することによって、達成され得る(参考文献72)。
【0056】
3.髄膜炎菌血清群Bに由来するタンパク質抗原(例えば、参考文献73):
上記組成物は、これらのさらなる抗原のうちの1つ以上を含み得る。
そのような抗原は、アルミニウム塩に吸着されていても、吸着されていなくてもよい。髄膜炎菌結合体が一連の投与において投与される場合、その投与のうちのいくつかまたはすべては、これらの余分な抗原を含み得る。
【0057】
上記髄膜炎菌結合体を含む組成物は、好ましくは、破傷風トキソイドを含まない。これらの組成物は、好ましくは、百日咳抗原を含まない。これらの組成物は、B型肝炎ウイルス表面抗原を含まない。これらの組成物は、ポリオウイルスを含まない。組成物は、好ましくは、髄膜炎菌結合体1つにつき50μg以下のジフテリア毒素を含み、より好ましくは、合わされたすべての髄膜炎菌結合体について50μg以下のジフテリア毒素を含む。
【0058】
(ワクチン組成物)
本発明に従って使用される組成物は、代表的には、薬学的に受容可能なキャリアを含む。そのようなキャリアは、上記組成物を受容する個体に対して有害な抗体の生成をそれ自体は誘導しない任意のキャリアを含む。適切なキャリアは、代表的には、大きくゆっくり代謝される高分子(例えば、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー、スクロース、トレハロース、ラクトース、および脂質凝集物(例えば、油滴またはリポソーム))である。そのようなキャリアは、当業者にとって周知である。上記ワクチンはまた、希釈剤(例えば、水、生理食塩水、グリセロールなど)を含み得る。さらに、補助物質(例えば、湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝物質など)が、存在し得る。発熱物質を含まない滅菌リン酸緩衝化生理食塩水が、代表的なキャリアである。薬学的に受容可能なキャリアおよび賦形剤の詳細な考察が、参考文献74において入手可能である。
【0059】
本発明に従って使用される組成物は、特に多用量形式でパッケージされた場合に、抗菌剤を含み得る。
【0060】
本発明に従って使用される組成物は、界面活性剤(例えば、Tween(ポリソルベート)(例えば、Tween80)を含み得る。界面活性剤は、一般的には、低レベル(例えば、<0.01%)で存在する。
【0061】
本発明に従って使用される組成物は、ナトリウム塩(例えば、塩化ナトリウムおよび/またはリン酸ナトリウム)を含み得る。これらは、張度調整のために使用され得る。10±2mg/mlの濃度のNaCl(例えば、約8.8mg/ml)が、代表的である。1.2mg/ml濃度のリン酸ナトリウムが、代表的である。
【0062】
本発明に従って使用される組成物は、一般的には、緩衝液(例えば、リン酸緩衝液)を含む。
【0063】
本発明に従って使用される組成物は、糖アルコール(例えば、マンニトール)または二糖(例えば、スクロースもしくはトレハロース)を、例えば、約15mg/ml〜約30mg/ml(例えば、25mg/ml)にて、特にその組成物が凍結乾燥される場合、または凍結乾燥物質から再構成された物質を含む場合に、含み得る。しかし、好ましい組成物は、凍結乾燥されない。すなわち、すべての髄膜炎菌結合体は、水性形態で、パッケージング段階から投与段階まで存在する。
【0064】
組成物は、一般的には、患者に対して直接投与される。直接送達は、非経口注射(例えば、皮下注射、腹腔内注射、静脈注射、筋肉内注射、もしくは組織間隙空間への注射)によって、または直腸投与、経口投与、膣投与、局所投与、経皮投与、鼻内投与、眼内投与、耳投与、肺投与、もしくは他の粘膜投与によって、達成され得る。(例えば、大腿または上腕への)筋肉内投与が、好ましい。注射は、針(例えば、皮下針)を介してであり得るが、針なし注射が、代替的に使用され得る。代表的な筋肉内用量は、0.5mlである。
【0065】
複数の血清群に由来する髄膜炎菌結合体が、単一組成物中で混合した状態で投与される。その組成物は、単回投与として投与されてもよいし、複数回投与スケジュールにおいて1回よりも多く投与されてもよい。複数回投与が、初回免疫スケジュールおよび/またはブースター免疫スケジュールにおいて使用され得る。初回投与スケジュールの後には、髄膜炎菌結合体のブースター投与スケジュールが続き得る。プライミング投与の間の適切な間隔(例えば、4週間〜16週間)、およびプライミングとブースターとの間の適切な間隔は、慣用的に決定され得る。上記結合体は、他のワクチンと同時に(例えば、D−T−Pワクチンと同時に、または肺炎球菌結合体ワクチンと同時に、またはインフルエンザワクチンと同時に、またはMMRワクチンもしくはMMRVワクチンと同時に)簡便に投与され得る。これらのワクチンは、一般的には、別個に、しかし同じ医師訪問時に投与される。
【0066】
細菌の感染は、身体の種々の領域に影響を与え得る。従って、組成物は、種々の形態で調製され得る。例えば、上記組成物は、注射可能物質として、液体溶液または液体懸濁物のいずれかとして、調製され得る。注射前に液体ビヒクル中の溶液もしくは懸濁物として適切な固体形態もまた、調製され得る(例えば、凍結乾燥した組成物)。その組成物は、局所投与用に(例えば、錠剤もしくはカプセルとして、またはシロップとして(必要に応じて矯味矯臭済み))調製され得る。その組成物は、肺投与用に(例えば、微細粉末もしくはスプレーを使用する、吸入器として)調製され得る。その組成物は、坐剤もしくはペッサリーとして調製され得る。上記組成物は、鼻投与用、耳投与用、または眼投与用に(例えば、スプレー、ドロップ、ゲル、または粉末として(例えば、参考文献75および76))調製され得る。しかし、一般的には、上記髄膜炎菌結合体は、筋肉内注射用に処方される。
【0067】
本発明に従って使用される組成物は、ワクチンアジュバントを含んでも含まなくてもよい。本発明の組成物において使用され得るアジュバントとしては、以下が挙げられるが、これらに限定はされない:
(A.無機質含有組成物)
本発明中でアジュバントとして使用するために適切な無機質含有組成物は、無機塩(例えば、アルミニウム塩およびカルシウム塩)を含む。本発明は、無機塩(例えば、水酸化物(例えば、オキシヒドロキシド)、リン酸塩(例えば、ヒドロキシホスフェート、オルトホスフェート)、硫酸塩など(例えば、参考文献77の第8章および9章を参照のこと)、または種々の無機化合物の混合物を含み、その化合物は、任意の適切な形態(例えば、ゲル、結晶、非晶質など)を採り、吸着が好ましい。上記無機質含有組成物はまた、無機塩の粒子(参考文献78)として処方され得る。
【0068】
リン酸アルミニウムが、特に好ましい。代表的なアジュバントは、非晶質ヒドロキシリン酸アルミニウムであり、PO/Alモル比は、0.84〜0.92であり、約0.6mgのAl3+/mlで含まれる。低用量のリン酸アルミニウムとの吸着が使用され得、例えば、1用量当たり1つの結合体について50μg〜100μgのAl3+である。組成物が複数の細菌種に由来する結合体を含む場合、すべての結合体が吸着される必要はない。
【0069】
(B.油性エマルジョン)
本発明におけるアジュバントとして使用するために適切な油性エマルジョンとしては、スクアレン−水エマルジョン(例えば、MF59(参考文献77の第10章;参考文献79もまた参照のこと)(5%スクアレン、0.5% Tween80、および0.5% Span 85が、マイクロフルイダイザーを使用して1ミクロン未満の粒子に処方されている)が挙げられる。完全フロインドアジュバント(CFA)および不完全フロイントアジュバント(IFA)もまた、使用され得る。
【0070】
(C.サポニン処方物(参考文献77の第22章))
サポニン処方物もまた、本発明におけるアジュバントとして使用され得る。サポニンは、ステロールグリコシドとトリテルペノイドグリコシドとの不均質グループであり、広範な植物種の樹皮、葉、幹、根、および花においてまでも見出される。Quillaia saponaria Molinaの樹皮に由来するサポニンは、アジュバントとして広範に研究されている。サポニンはまた、Smilax ornata(サルサパリラ)、Gypsophilla paniculata(シュッコンカスミソウ)、およびSaponaria officianalis(サボンソウ)からも商業的に取得され得る。サポニンアジュバント処方物としては、精製処方物(例えば、QS21)および液体処方物(例えば、ISCOM)が挙げられる。QS21は、StimulonTMとして販売されている。
【0071】
サポニン処方物は、HPLCおよびRP−HPLCを使用して精製されている。これらの技術を使用する具体的な精製画分が同定されており、それには、QS7、QS17、SQ18、QS21、QH−A、QH−B、およびQH−Cが挙げられる。好ましくは、上記サポニンは、QS21である。QS21の生成方法は、参考文献80において開示される。サポニン処方物はまた、ステロール(例えば、コレステロール)(参考文献81)を含み得る。
【0072】
サポニンとコレステロールとの組み合わせは、免疫刺激複合体(ISCOM)(参考文献77の第23章)と呼ばれる独特な粒子を形成するために使用され得る。ISCOMは、代表的にはまた、リン脂質(例えば、ホスファチジルエタノールアミンまたはホスファチジルコリン)を含む。任意の公知サポニンが、ISCOMにおいて使用され得る。好ましくは、そのISCOMは、QuilA、QHA、およびQHCのうちの1つ以上を含む。ISCOMは、参考文献81〜83においてさらに記載される。必要に応じて、ISCOMは、さらなる界面活性剤を含まないものであり得る(参考文献84)。
【0073】
サポニンベースのアジュバントの開発についての概説は、参考文献85および86において見出され得る。
【0074】
(D.ビロソームおよびウイルス様粒子)
ビロソームおよびウイルス様粒子(VLP)もまた、本発明においてアジュバントとして使用され得る。これらの構造は、一般的には、必要に応じてリン脂質と合わされたかまたはリン脂質を用いて処方された、ウイルスに由来する1つ以上のタンパク質を含む。これらは、一般的には、非病原性であり、複製せず、一般的には、ネイティブウイルスゲノムを全く含まない。そのウイルスタンパク質は、組換え生成されても、ウイルス全体から単離されてもよい。ビロソームまたはVLPにおける使用のために適切なこれらのウイルスタンパク質としては、インフルエンザウイルス由来タンパク質(例えば、HAもしくはNA)、B型肝炎ウイルス由来タンパク質(例えば、コアタンパク質もしくはキャプシドタンパク質)、E型肝炎ウイルス由来タンパク質、麻疹ウイルス由来タンパク質、シンドビスウイルス由来タンパク質、ロタウイルス由来タンパク質、口蹄疫ウイルス由来タンパク質、レトロウイルス由来タンパク質、ノーウォークウイルス由来タンパク質、ヒトパピローマウイルス由来タンパク質、HIV由来タンパク質、RNAファージ由来タンパク質、Qβファージ由来タンパク質(例えば、コートタンパク質)、GAファージ由来タンパク質、frファージ由来タンパク質、AP205ファージ由来タンパク質、およびTy由来タンパク質(例えば、レトロトランスポゾンTyタンパク質p1)が挙げられる。VLPは、参考文献87〜92においてさらに考察される。ビロソームは、例えば、参考文献93においてさらに考察される。
【0075】
(E.細菌誘導体または微生物誘導体)
本発明における使用のために適切なアジュバントとしては、細菌誘導体または微生物誘導体(例えば、腸内細菌リポ多糖(LPS)の非毒性誘導体、脂質A誘導体、免疫刺激オリゴヌクレオチド、およびADP−リボシル化毒素およびその無毒化誘導体)が挙げられる。
【0076】
LPSの非毒性誘導体としては、モノホスホリル脂質A(MPL)および3−O−デアシル化MPL(3dMPL)が挙げられる。3dMPLは、3デ−O−アシル化モノホスホリル脂質Aと、4アシル化鎖または5アシル化鎖または6アシル化鎖との混合物である。好ましい「小さい粒子」形態の3デ−O−アシル化モノホスホリル脂質Aは、参考文献94に開示される。そのような「小さい粒子」の3dMPLは、0.22μm膜を通して滅菌濾過されるために十分に小さい(参考文献94)。他の非毒性LPS誘導体としては、モノホスホリル脂質A模倣物(例えば、アミノアルキルグルコサミニドホスフェート誘導体(例えば、RC−529))が挙げられる(参考文献95、96)。
【0077】
脂質A誘導体としては、Escherichia coli由来の脂質A(例えば、OM−174)が挙げられる。OM−174は、例えば、参考文献97および98において記載されている。
【0078】
本発明におけるアジュバントとして使用するために適切な免疫刺激オリゴヌクレオチドとしては、CpGモチーフ(グアノシンにリン酸結合により連結された非メチル化シトシンを含むジヌクレオチド配列)を含むヌクレオチド配列を含む。パリンドローム配列またはポリ(dG)配列を含む、二本鎖RNAおよびオリゴヌクレオチドもまた、免疫刺激性であることが示されている。
【0079】
上記CpGは、ヌクレオチド改変/ヌクレオチドアナログ(例えば、ホスホロチオエート改変)を含み得、そして二本鎖であっても一本鎖であってもよい。参考文献99、100および101は、あり得るアナログ置換(例えば、2’−デオキシ−7−デアザグアノシンによるグアノシンの置換)を開示する。CpGオリゴヌクレオチドのアジュバント効果は、参考文献102〜107においてさらに考察される。
【0080】
上記CpG配列は、TLP9に対し得る(例えば、モチーフGTCGTTまたはTTCGTT(参考文献108))。上記CpG配列は、Th1免疫応答を誘導するために特異的であっても(例えば、CpG−A ODN)、またはB細胞応答を誘導するためにより特異的であってもよい(例えば、CpG−B ODN)。CpG−A ODNおよびCpG−B ODNは、参考文献109〜111において考察される。好ましくは、上記CpGは、CpG−A ODNである。
【0081】
好ましくは、上記CpGオリゴヌクレオチドは、その5’末端がレセプター認識のために接近可能であるように構築される。必要に応じて、2つのCpGオリゴヌクレオチド配列が、「イムノマー」を形成するためにその3’末端に付着され得る。例えば、参考文献108および112〜114を参照のこと。
【0082】
細菌性ADP−リボシル化毒素およびその無毒化誘導体が、本発明においてアジュバントとして使用され得る。好ましくは、上記タンパク質は、E.coli由来(E.coli易熱性エンテロトキシン「LT」)、コレラ由来(「CT」)、または百日咳由来(「PT」)である。無毒化ADP−リボシル化毒素を粘膜アジュバントとして使用することが、参考文献115において記載されており、非経口アジュバントとして使用することが、参考文献116において記載されている。上記毒素またはトキソイドは、好ましくは、ホロ毒素(AサブユニットおよびBサブユニットの両方を含む)の形態である。好ましくは、そのAサブユニットは、無毒化変異を含む。好ましくは、そのBサブユニットは、変異されていない。好ましくは、そのアジュバントは、無毒化LT変異体(例えば、LT−K63、LT−R72、およびLT−G192)である。ADP−リボシル化毒素およびその無毒化誘導体(特に、LT−K63およびLT−R72)をアジュバントとして使用することは、参考文献117〜124において見出され得る。アミノ酸置換に関する多数の言及は、好ましくは、参考文献125(本明細書中にその全体が参考として具体的に援用される)に示されるADP−リボシル化毒素のAサブユニットおよびBサブユニットのアライメントに基づく。
【0083】
(F.ヒト免疫調節因子)
本発明においてアジュバントとして使用するために適切なヒト免疫調節因子としては、サイトカイン(例えば、インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−12(参考文献126)など)(参考文献127)、インターフェロン(例えば、インターフェロンγ)、マクロファージコロニー刺激因子、および腫瘍壊死因子)が挙げられる。
【0084】
(G.生物接着因子および粘膜接着因子)
生物接着因子(bioadhasive)および粘膜接着因子(mucoadhesive)もまた、本発明においてアジュバントとして使用され得る。適切な生物接着因子としては、エステル化ヒアルロン酸ミクロスフェア(参考文献128)、または粘膜接着因子(例えば、ポリ(アクリル酸)の架橋誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、多糖、およびカルボキシメチルセルロース)が挙げられる。キトサンおよびその誘導体もまた、本発明におけるアジュバントとして使用され得る(参考文献129)。
【0085】
(H.微粒子)
微粒子もまた、本発明においてアジュバントとして使用され得る。微粒子(すなわち、直径約100nm〜約150μm、より好ましくは直径約200nm〜約30μm、最も好ましくは直径約500nm〜約10μmの粒子)は、生分解性かつ非毒性である物質(例えば、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリカプロラクトンなど;ポリ(ラクチド−co−グリコリド)が好ましく、必要に応じて、負荷電表面を有するように(例えば、SDSで)処理されるかまたは正荷電表面を有するように(例えば、カチオン性界面活性剤(例えば、CTAB)で)処理される)から形成される。
【0086】
(I.リポソーム(参考文献77の第13章および第14章))
アジュバントとして使用するために適切なリポソーム処方物の例は、参考文献130〜132に記載されている。
【0087】
(J.ポリオキシエチレンエーテル処方物およびポリオキシエチレンエステル処方物)
本発明における使用のために適切なアジュバントとしては、ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシエチレンエステル(参考文献133)が挙げられる。そのような処方物としては、ポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤とオクトキシノールとの組み合わせ(参考文献134)、ならびにポリオキシエチレンアルキルエーテル界面活性剤もしくはポリオキシエチレンアルキルエステル界面活性剤と少なくとも1種のさらなる非イオン性界面活性剤(例えば、オクトキシノール)との組み合わせ(参考文献135)がさらに挙げられる。好ましいポリオキシエチレンエーテルは、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル(ラウレス(laureth)9)、ポリオキシエチレン−9−ステオリルエーテル、ポリオキシエチレン−8−ステオリルエーテル、ポリオキシエチレン−4−ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン−35−ラウリルエーテル、およびポリオキシエチレン−23−ラウリルエーテルから選択される。
【0088】
(L.ムラミルペプチド)
本発明におけるアジュバントとして使用するために適切なムラミルペプチドの例としては、N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(nor−MDP)、およびN−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミル−L−アラニン−2−(1’,2’−ジパルミトイルーsn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(MTP−PE)が挙げられる。
【0089】
(K.ポリホスファゼン(PCPP))
PCPP処方物は、例えば参考文献136および137に記載される。
【0090】
(M.イミダゾキノロン化合物)
本発明におけるアジュバントとして使用するために適切なイミダゾキノロン化合物の例としては、Imiquamodおよびそのホモログ(例えば、「Resiquimod 3M」)(参考文献138および139においてさらに記載される)が挙げられる。
【0091】
(N.チオセミカルバゾン化合物)
チオセミカルバゾン化合物、ならびに本発明においてアジュバントとして使用するために適切な化合物の処方方法、製造方法、およびスクリーニング方法の例としては、参考文献140において記載されるものが挙げられる。そのチオセミカルバゾンは、サイトカイン(例えば、TNF−α)の生成のためにヒト末梢血単核球の刺激において特に有効である。
【0092】
(O.トリプタントリン(tryptanthrin)化合物
トリプタントリン化合物ならびに本発明においてアジュバントとして使用するために適切な化合物の処方方法、製造方法、およびスクリーニング方法の例としては、参考文献141に記載されるものが挙げられる。そのトリプタントリン化合物は、サイトカイン(例えば、TNF−α)の生成のためにヒト末梢血単核球の刺激において特に有効である。
【0093】
本発明はまた、上記に同定されたアジュバントのうちの1つ以上の局面の組み合わせを含み得る。例えば、以下の組合せが、本発明においてアジュバント組成物として使用され得る:(1)サポニンよび水中油性エマルジョン(参考文献142);(2)サポニン(QS21)+非毒性LPS誘導体(例えば、3dMPL)(参考文献143);(3)サポニン(QS21)+非毒性LPS誘導体(例えば、3dMPL)+コレステロール;(4)サポニン(QS21)+3dMPL+IL−12(必要に応じて、+ステロール)(参考文献144);(5)3dMPLと、例えば、QS21および/もしくは水中油性エマルジョンとの組み合わせ(参考文献145);(6)SAF(10%スクアレン、0.4% Tween 80TM、5%プルロニックブロックポリマーL121、およびthr−MDPを含み、1ミクロン未満のエマルジョンへとマイクロフルイダイズされているかまたはより大きな粒径のエマルジョンを生じるようにボルテックスされている);(7)RibiTMアジュバントシステム(RAS)(Ribi Immunochem)(2%スクアレン;0.2% Tween 80;モノホスホリル脂質A(MPL)、トレハロースジミコレート(TDM)、および細胞壁骨格(CWS)からなる群からの1つ以上の細胞壁成分(好ましくは、MPL+CWS)を含む(DetoxTM));(8)1種以上の無機塩(例えば、アルミニウム塩)+非毒性LPS誘導体(例えば、3dMPL);ならびに(9)1種以上の無機塩(例えば、アルミニウム塩)+免疫刺激オリゴヌクレオチド(例えば、CpGモチーフを含むヌクレオチド配列)。
【0094】
免疫刺激因子として作用する他の物質が、参考文献77の第7章に開示される。
【0095】
水酸化アルミニウムアジュバントまたはリン酸アルミニウムアジュバントの使用が、特に好ましく、結合体は、これらの塩に一般的には吸着される(例えば、参考文献9の実施例7および8;参考文献10の実施例J)。吸着せずにアルミニウム塩と混合することもまた、可能である(参考文献27、72)。リン酸カルシウムが、別の好ましいアジュバントである。結合体は、これらのアジュバントに別個に混合(そして必要に応じて吸着)され得、その後、その結合体は、一緒に混合され得る。または、上記結合体は、一緒に混合され得、その後アジュバントと混合され得る。
【0096】
本発明に従って使用される組成物のpHは、好ましくは6〜8であり、好ましくは約7である。安定なpHが、緩衝液の使用によって維持され得る。組成物が水酸化アルミニウム塩を含む場合、ヒスチジン緩衝液(参考文献146)を使用することが好ましい。その組成物は、滅菌され、かつ/または発熱物質を含まない。組成物は、ヒトに対して等張性であり得る。
【0097】
組成物は、保存剤(例えば、チオメルサール、2−フェノキシエタノール)を含んでもよいし、保存剤を含まなくてもよい。本発明の好ましい組成物は、いかなる水銀物質も含まない。例えば、その組成物は、チオメルサールを含まない。
【0098】
抗原(特に結合体抗原)の間での干渉を防止するために、ポリアニオン性ポリマー(例えば、ポリ−L−グルタミン酸)(参考文献147)を含むことが、可能である。
【0099】
組成物は、バイアル中にて与えられてもよいし、充填済みシリンジ中で与えられてもよい。そのシリンジは、針を備えていても、備えていなくてもよい。シリンジは、単一用量の上記組成物を含み、一方、バイアルは、単一用量または複数用量を含み得る。注射可能組成物は、通常は、液体溶液または液体懸濁物である。あるいは、その組成物は、注射前に液体ビヒクル中の溶液または懸濁物にするための固体形態(例えば、凍結乾燥形態)で与えられ得る。
【0100】
組成物は、単位投与形態または複数回投与形態でパッケージングされ得る。複数回投与形態のために、バイアルが、予め充填されたシリンジよりも好ましい。有効な投与体積は、慣用的に確立され得るが、注射のための本組成物の代表的なヒト用量は、体積0.5mlを有する。
【0101】
組成物が使用前に即時調製され(例えば、成分が凍結乾燥形態で与えられる場合)、キットとして提示される場合、そのキットは、2つのバイアルを含み得るか、または1つの充填済みシリンジと、1つのバイアルを含み得、そのシリンジの内容物は、注射前にそのバイアルの内容物を再活性化するために使用される。血清群A莢膜糖を含む組成物の場合、血清群A糖が、凍結乾燥され得、一方、他の血清群由来の糖が、液体形態で提示され得る。
【0102】
組成物は、免疫学的に有効な量の髄膜炎菌結合体、ならびに必要な場合には他の成分を含む。「免疫学的に有効な量」によって、単回投与または一連の投与の一部としてその量を個体に投与すると、患者において抗髄膜炎菌防御免疫応答が惹起されることを意味する。この量は、処置される個体の健康および全身状態、処置される個体の分類学的グループ(例えば、非ヒト霊長類、霊長類など)、その個体の免疫系が抗体を合成する能力、望まれる防御の程度、そのワクチンの処方、医学的状態についての主治医の判断、および他の関連要因に依存して変動する。その量は、慣用的試験を介して決定され得る比較的広い範囲内にあり、1用量当たりの各髄膜炎菌抗原の代表的量は、血清群1つ当たり(糖に関して測定すると)1μg〜20μg(例えば、血清群1つについて2μg〜10μg)であることが、予期される。1血清群について約4μgという用量が好ましい(すなわち、四価混合物において合計16μg)。
【0103】
組成物中のキャリアタンパク質の総量は、好ましくは、100μg/用量を超えない。例えば、その量は、≦90μg/用量、≦80μg/用量、≦70μg/用量、≦60μg/用量、≦50μg/用量などである。組成物中のキャリアタンパク質の総量は、一般的には、少なくとも10μg/用量である。
【0104】
(概要)
用語「含む、包含する(comprising)」とは、「含む、有する(including)」および「からなる(consisting)」を包含する。例えば、Xを「含む」組成物は、Xのみからなってもよいし、またはさらなる何かを含んでもよい(例えば、X+Y)。
【0105】
数値xに関連する用語「約」とは、例えば、x±10%を意味する。
【0106】
用語「実質的に」とは、「完全に」を排除しない。例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まないものであり得る。必要な場合には、用語「実質的に」は、本発明の定義から省略され得る。
【0107】
(発明を実施するための様式)
(四価A/C/W135/Y結合体混合物を使用するキャリア抑制の欠如)
血清群A+C、C+W+Y、またはA+C+W+Yについての髄膜炎菌結合体の混合物が、参考文献9および10において記載されるように調製され得る。望ましい場合には、これらは、水酸化アルミニウムアジュバントまたはリン酸アルミニウムアジュバントと混合され得る(これもまた、参考文献9および10において記載される)。これらのワクチンは、上記糖に共有結合した、破傷風トキソイド(Tt)を使用して調製される。
【0108】
小児科D−T−Pワクチン接種(D−T−PaまたはD−T−Pwのうちのいずれか)を受けた患者(D−T−Pおよび他の抗原を含むワクチン(例えば、D−T−P−Hib四価、D−T−P−HBsAg四価、D−T−P−Hib−HBsAg五価、D−T−P−Hib−HBsAg−IPV六価など)を受けた患者を含む)が、Ttキャリアを有する結合体の混合物を受けるために選択される。
【0109】
コントロール患者群が、上記の2つの結合体混合物のうちの1つを受けるために選択される。そのコントロール患者は、破傷風トキソイドを、別個の抗原としてかまたは結合体中のキャリアタンパク質としてのいずれかで以前に受けたことはない。
【0110】
その四価結合体がその患者において免疫応答を惹起する能力が、評価される。キャリア抑制は、試験群がコントロール患者よりも有意に低い抗髄膜炎菌免疫応答を示す場合に、特に、上記結合体がその患者において有用なSBA応答を惹起でない場合に、示される。
【0111】
臨床試験V59P2(12ヶ月齢〜16ヶ月齢の620人の被験体を用いてフィンランドおよびドイツにおいて行われた)において、5つの処方物を、試験した。そのワクチンは、CRM197キャリアおよびリン酸アルミニウムアジュバント(参考文献10)を使用した。各血清群糖の用量(0.5ml用量当たりの糖質量μgとして表わす)は、以下の通りであった:
【0112】
【表1】

被験体に、0時点で注射を与え、その4週間後に、その被験体のうちの25%に、そのワクチンの2回の投与を与えた。
【0113】
患者の血清を、ワクチン投与の1ヵ月後に収集し、各血清群からの髄膜炎菌に対するSBAアッセイにおいて、ヒト補体を使用して試験した。SBA力価は、0時点の血清に対して増加する。基準は、≧1:4および≧1:8である。抗莢膜力価(GMT)もまた、各血清群について測定した。結果は、下記表1において示される。
【0114】
従って、上記三価ワクチンおよび四価ワクチンは、両方とも、幼児において免疫原性であった。上記結合体は、結合体1つ当たり2.5μg程度の低い糖用量で免疫原性である。その免疫応答は、ブースト可能であり、大きなSBA力価が、2回目の投与の後に増加する。キャリア抑制の証拠は、この試験後において観察されなかった。
【0115】
本発明は、例示としてのみ上記に記載されているが、本発明の範囲および精神の範囲内に残りながら改変がなされ得ることが、理解される。
【0116】
【表2】

【0117】
【表3】

【0118】
【表4】

【0119】
【表5】

【0120】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【公開番号】特開2012−162580(P2012−162580A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−128887(P2012−128887)
【出願日】平成24年6月6日(2012.6.6)
【分割の表示】特願2007−550844(P2007−550844)の分割
【原出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【出願人】(507238285)ノバルティス ヴァクシンズ アンド ダイアグノスティクス エスアールエル (35)
【Fターム(参考)】