説明

高−密度レリーフ構造を製造するための光学的主基材及び方法

【解決手段】本発明は、高-密度レリーフ構造を作製するための主基材、方法、及び高-密度レリーフ構造を有する複製された光学ディスクに関し、主基材は、基材層(10)及び基材層上に堆積される記録の積み重ね(レコーディング・スタック)を備え、記録の積み重ねが;-情報層(12)、-前記情報層と基材との間に挟まれる界面層(11)を備え、前記情報層(12)が、暗号化データの型(パターン)を表す印(マーク)及び余地(スペース)を形成するための成長-支配の相-変化物質を含み、そこでは、前記記録物質が、Ge、Sb、Te、In、Se、Bi、Ag、Ga、Sn、Pb、Asを包含する物質の群の少なくとも2種の物質を含む合金である。極めて高-密度のレリーフ構造が達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高-密度レリーフ構造を製造するための光学的な主基材に関する。かかるレリーフ構造は、例えば、読み専用記憶(ROM)及び予備-溝付きの追記型(R)及び書換可能型(RE)ディスクの大量複製のためのスタンパとして用いられる。本発明は更にかかる高-密度レリーフ構造の作製方法に関する。さらに、本発明は、処理した光学的主基材を用いて作製する光学ディスクに関する。
【背景技術】
【0002】
光学記録担体は、対物レンズの開口数の増加及びレーザ波長の減少により、データ容量における進化的な増加が見られた。合計データ容量は、650M(メガ)バイト(CD、NA=0.45、λ=780nm)から4.7G(ギガ)バイト(DVD、NA=0.65、λ=670nm)乃至ブル-レイディスクについての25Gバイト(BD、NA=0.85、λ=405nm)までに増加した。光学記録担体は、種類として、追記型(write-once)(R)、書換可能型(rewritable)(RE)及び読み専用記憶(ROM)であり得る。ROMディスクの大きな利点は、安価な大量複製、及び従ってオーディオ、ビデオ及び他のデータのような内容(コンテンツ)の安価な配布である。かかるROMディスクは、例えば、極小の複製されたピット(孔)を有するポリカーボネート基材である。複製されたディスクでのピットは、典型的には、射出成形又は同様な種類の複製処理を用いて作製することができる。スタンパの製造は、かかる複製処理において用いられるように、マスタ(原盤)作製(mastering)として既知である。
【0003】
慣習的なマスタ作製では、薄い感光性層は、ガラス基材上で回転塗布され、変調される集束レーザビーム(光線)によって照射される。レーザビームの変調によって、ディスクの若干の部分がUV光(紫外線)に暴露される一方、ピットの間における中間区域(エリア)は暴露されないままにされる。ディスクを回転させながら、及び集束レーザビームをディスクの外側に徐々に寄せると、交互照射区域のらせんが残る。第2工程では、暴露区域がいわゆる現像処理において溶解し、フォト-レジスト層の内部での物理的な孔で終わることになる。NaOH及びKOHのようなアルカリの液体を暴露区域の溶解に用いる。次に、構造化された表面を薄いNi層によって被覆する。ガルバニック処理では、このスパッタ-堆積したNi層を、更に逆のピット構造を有する厚い管理可能なNi基材にまで成長させる。突出するバンプを有する、このNi基材は、暴露されない区域を有する基材から分離され、及びスタンパと称される。
【0004】
ROMディスクは、暗号化(コード)したデータを表す交互のピット及びランドのらせんを含む。反射層(金属性のか、又は他の種類又は屈折係数の異なる指標を有する物質)を加え、情報の読み出しを促進する。ほとんどの光学的記録システムでは、データトラックのピッチは、光学的な読み出し/書き込みの点(スポット)の寸法(サイズ)と同じ桁程の大きさを持ち、最適データ容量を確かにする。例えば、320nm及び305nmの1/e点半径のデータトラックのピッチ(1/eは光学強度が最大強度の1/eに減少した半径である)が、ブル-レイディスクの場合に比較される。追記型及び書換可能型の光学記録担体に反し、ROMディスクでのピット幅は、典型的に隣接するデータトラック間の半分のピッチである。そのような小さなピットは最適な読み出しに必要である。ROMディスクが、相-変調、即ち、光線の構成上の及び相殺的な(destructive)干渉を介した読み出しであることはよく知られている。より一層長いピットの読み出しの間に、ピットの底部から反射する光線間の相殺的な干渉及び反射した形態が、より一層低い反射レベルを導く隣接したランドのプラトから起こる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光学的な読み出し点のほぼ半分のピットを作製するには、読み出し用に使用されるものよりも短い波長のレーザが、典型的に、ピット構造のマスタ作製用に用いられる。CD/DVDのマスタ作製用に、レーザ・ビーム・レコーダ(LBR)を、典型的には、413nmの波長及びNA=0.9の対物レンズの開口数で操作する。BDのマスタ作製用には、257nmの波長を有する遠紫外線レーザを、高NAレンズ(遠視野についての0.9及び液浸についての1.25のマスタ作製)との組み合わせで用いる。言い換えると、次世代のLBRは、現在の光学ディスク生成用のスタンパを作製するのに要求される。慣習的なフォトレジストのマスタ作製の追加の不利な点は、累積的光子効果(cumulative photon effect)である。フォトレジスト層における光-反応性化合物の劣化は照射量に比例する。また、集束した空気のような(Airy)点の側面は、中央のトラックにおけるピットの書き込みの間の隣接する痕跡を照射する。この多重暴露は、ピットの局所的な広がり、及び従って高められたピットノイズ(ジッター)を導く。また、交差-照射の減少のために、可能な限り小さな集束レーザ点が必要とされる。慣習的なマスタ作製において用いられるようなフォトレジスト物質の別の不利な点は、フォトレジストにおいて存在する重合体鎖の長さである。暴露された区域の溶解は、長い重合体鎖に起因して幾分か荒い側端部を導く。特に、ピット(ROM用)及び溝(追記型(R)及び書換可能型(RE)用途のための予備(予めの)-溝付き基材用)の場合に、この端部の荒さが予備(予めの)-記録されるROMピット及び記録されたR/REデータの読み出し信号の悪化を導くことがある。
【0006】
本発明の目的は、例えば、高-密度の読み専用記憶(ROM)及び記録可能型(R/RE)ディスクの大量複製のための、高-密度及び高精度のレリーフ構造を製造するための主(マスタ)基材を提供することである。これは、ROMディスクにおける予備-記録されたデータのより一層良好な信号品質、及び優れた(改良された)データ記録(R/RE)のための質的により一層良好な予備-溝付きの利点を持つ。本発明の更なる目的は、そのような高-密度のレリーフ構造を製造する方法を提供することである。本発明の別のそれ以上の目的は、高密度の予備-記録されるデータ構造を有する光学ディスクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1に記載するような成長-支配の(growth-dominated)相-変化物質(phase-change material)を有する主基材を提供することによって達成され、その主基材は基材層(10)及び記録の積み重ねを備え、その記録の積み重ねは:
-情報層(12)、
-前記情報層と基材との間に挟まれる界面層(11)
を備えており、
前記情報層(12)が、暗号化の型(パターン)を表す印(マーク)及び余地(スペース)を形成するための成長-支配の相-変化物質を備え、そこでは、前記記録の物質が、Ge、Sb、Te、In、Se、Bi、Ag、Ga、Sn、Pb、Asを包含する物質の群の少なくとも2種の物質を含む合金である。
【0008】
好適例の主基材を従属請求項に規定する。
好適例においては、請求項2に請求するように、主基材は、記録の物質としてGe及びInをドープされるSb-Te合金物質、特にGe及びInをドープされるSb2Teを備える。別の好適例には、請求項3に請求のように、主基材は、Sn-Ge-Sb-合金物質、特に組成Sn18.3-Ge12.6-Sb69.2を有するものを備える。請求する相-変化物質は、チャネルビット長、及び従って接線データ密度の更なる減少を可能にする、印の尾部での、いわゆる再-結晶化を導く。請求項1に請求のような情報層での厚さ範囲は、請求項4に規定し、即ち2-100nm、好ましくは10-40nm又は45-70nmである。範囲10-40nmでの厚さを有する情報層を備える主基材を用い、追記型(R)及び書換可能型(RE)ディスクの複製用に使用される予備-溝付きレリーフ構造を作製する。範囲45-70nmは、特に読み専用記憶ディスク用の高-密度レリーフ構造を作製するのに適する。
【0009】
界面層についての好ましい物質を、請求項5、6及び7に請求する。請求項5は、請求項1に請求のような主基材での界面として、ZnS-SiO2、Al2O3、SiO2、Si3N4のような、誘電体物質の使用を開示する。請求項6は、主基材での界面層として、フタロ-シアニン、シアニン及びアゾ(AZO)染料を含む群の染料物質での有機材料の使用を開示する。請求項7は、主基材での界面層として、UV-硬化性(cured)有機物質の群、好ましくはジアクリル酸ヘキサンジオール(hexan(e)dioldiacrylate、HDDA)からの有機材料の使用を開示する。好ましい厚さの界面層(11)は、5nmから100nmまで、特に20及び70nmの間の範囲に及び、それを請求項8に開示する。
【0010】
好適例では、請求項1に請求のような主基材の記録の積み重ねは更に、保護層を情報層(12)に隣接して基材から最も離れた側に備える。請求項10に開示するように、この保護層の好適な厚さは、2及び50nmの間、特に5及び30nmの間である。好適物質を請求項11及び12に開示する。請求項11は、ZnS-SiO2、Al2O3、SiO2、Si3N4、Ta2O、SiCのような誘電体物質の使用を提案する。請求項12は、有機フォトレジスト物質の群から選ばれるもの、特にジアゾナフトキノン系レジストの使用を提案する。さらに、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)のような可溶性有機物質の使用を開示する。保護層は、特に、溶融相-変化物質の大規模な移動を妨げるのに有利である。この効果は本出願において後述する。保護層は、主基材での高-密度レリーフ構造の書き込みの間に遭遇する高い記録温度に対して抵抗性である必要がある。別の重要な要件は、この層が、提案されるエッチング液体によるエッチングを介して除去される能力である。他の溶媒はまた、アセトン、イソ-プロパノールのように、被覆(カバー)層を除去することができる。保護層の機械的な剥離(pealing off、peeling off)でさえ、記録後の主基材からそれを除去する可能性がある。
【0011】
別の好適例では、請求項1に請求のような主基材は更に、第2の界面層を、基材層及び界面層の間に、即ち入射レーザ光線に面しないように備える。この界面層は、好ましくは、この第2界面が自然な障壁として作用するようにエッチング液体に対する高い抵抗性を持つ。エッチングされた溝の深さ及び他のレリーフ構造は、情報層及び第1界面層の厚さによって定められる。第2界面層の厚さを請求項14に請求する。
【0012】
別の好適例では、請求項1、9又は13に請求のような主基材は更に、記録の積み重ねが第2界面層を備え、入射レーザ光線に面しない場合、金属放熱体(ヒート・シンク)層を基材層及び界面層の間に備える。金属放熱体はデータを記録する間の迅速な熱除去のために加えられる。同時に金属放熱体層はまた、反射体として役立ち、記録層による入射レーザビームの吸収を高めることができる。金属層の好適厚さは、5nmよりも厚く、特に15nmよりも厚い。金属放熱体層は、Al、Ag、Cu、(Ag、)Ir、Mo、Rh、Pt、Ni、Os、Wを包含する物質の群の材料に基づく物質又は合金から作製される。
【0013】
本発明の目的は更に、高-密度レリーフ構造の複製のためのスタンパを製造する方法を提供することによって達成され、その方法は、少なくとも次の工程
-請求項1〜17のいずれか1項において請求するような主基材を、変調される集束放射線ビームを用いて照射する工程、
-照射された主基材層を、望ましいレリーフ構造が得られるように、現像剤(developer)を用い、それがアルカリ又は酸の液体の1種であり、好ましくはNaOH、KOH、HCl及びHNO3の水溶液の群から選ばれるものを用いて洗浄する工程、
-金属性層、特にニッケル層のスパッタ-堆積の工程(sputter-deposition)、
-スパッタ-堆積する層を望ましい厚さにまでガルバニ的に(galvanically)成長させてスタンパを形成する工程、
-主基材をスタンパから分離する工程
を含む。
【0014】
請求項18に請求のような方法は、請求項1、9、13又は15に請求するような主基材を用い、情報層が範囲5-35nmでの厚さを持ち、そこでは、予備-溝付け加工される(pre-grooved shaped)レリーフ構造が追記型(R)及び書換可能型(RE)光学ディスクの複製のために形成され、それを請求項19に開示する。
【0015】
請求項18又は19に請求のような方法は、そこで、現像剤溶液を、濃度1-30%、好ましくは2及び20%の間で用い、それを請求項20に請求する。
【0016】
請求項21は、請求項18、19又は20のいずれか1項の方法を用いて製造されるスタンパで複製する予備-記録される光学ディスクを開示し、これは、スタンパ表面上のレリーフ構造が、典型的な三日月形(crescent)を持つ最短ピット及びスワロ-加工される(swallow-shaped)立ち下がりエッジ(trailing edge)を持つより一層長いピットを備え、及びそのレリーフ構造が光学ディスクにおいて複製されることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明をより一層詳細に図面を参照して説明するが、図面では:
図1は主基材の基本的な配置を示し、
図2は2種のクラスの相-変化物質: 成長-支配及び核形成-支配の相-変化物質の核形成及び成長の確率曲線を示し、
図3は高速-成長の相-変化物質に基づく光学記録担体において書き込まれる無定形(非晶質性)の印の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を示し、
図4は無定形及び結晶性の相のエッチング速度における相違を例証するレリーフ構造の原子間力顕微鏡法(AFM)写真を示し、
図5はNaOHを現像剤として用いる場合でのInGeSbTeの相-変化組成についての合計溶解時間の関数としての測定残存層厚を示し、
図6はNaOHを現像剤として用いる場合でのSnGeSbの相-変化組成についての合計溶解時間の関数としての測定残存層厚を示し、
図7はNaOH及びHNO3を現像剤として用いる場合でのSnGeSbの相-変化組成についての合計溶解時間の関数としての測定残存層厚を示し、
図8は好適な主基材の配置を示し、
図9は提案する主基材を用い、及び提案する方法に従って作製される溝の構造を示し、
図10は1種のレーザ出力について得られる3種のレリーフ構造であるが、10%NaOH溶液中での異なる時間で浸漬されたものを示し、
図11は、3種の異なるレーザ出力について10%NaOH溶液中での10分の浸漬で得られる3種のレリーフ構造を示し、
図12は提案する主基材を用い、及び提案する方法に従って書き込まれる短いピットのAFM写真を示す。
【0018】
相-変化物質を、DVD+RW及び最近導入されたブル-レイディスク(BD-RE)のような良く知られた書換可能型(re-writable)ディスク形式において適用する。相-変化物質は、レーザ加熱を介して、堆積されるような(as-deposited、堆積されるままの)無定形状態から結晶性状態にまで変化することができる。多くの場合では、堆積されるような無定形状態は、データの記録に先立ち結晶性のものに作製される。初期の結晶性状態は、レーザを当てて誘導する(lased induced)薄い相-変化層の加熱によって、層が融解するように無定形のものに作製され得る。溶融状態が極めて急速に冷却される場合、固体無定形状態が残る。無定形の印(区域)は、無定形の印を結晶化温度よりも高く加熱することによって再度結晶性のものに作製することができる。これらの機構は書換可能な相-変化記録から知られている。本出願人等は、加熱条件に依存して、エッチングの速度における相違が結晶性及び無定形の相の間に存在することを見出した。エッチングは、アルカリの液体、酸の液体、又は他の種類のもの又は溶媒において、固体物質の溶解処理として知られている。エッチングの速度における相違は、レリーフ構造を導く。請求する物質のクラスにとって適するエッチングの液体は、NaOH、KOHのようなアルカリの液体、及びHCl及びHNO3のような酸である。レリーフ構造は、例えば、光学的な読み専用ROMディスク及び追記型及び書換可能型のディスクのための予備-溝付き基材の大量複製のためのスタンパを作製するのに用いることができる。得られるレリーフ構造はまた、表示(マイクロ-接触印刷)の高-密度印刷のために用いることができる。
【0019】
主基材の基本的な配置を図1に与える。図1では、本発明に従って提案される主基材は、本質的には、相-変化物質から作製される情報層(12)、及び前記情報層(12)及び基材(10)の間に挟まれる界面層(11)を備える。前記情報層における記録物質として用いるための相-変化物質は、その物質の光学的及び熱的特性に基づき、それが選定した波長を用いて記録するのに適するように選定される。主基材が初期に無定形状態にある場合には、結晶性の印が照射の間に記録される。記録層が初期に結晶性状態にある場合には、無定形の印が記録される。現像の間に、2種の状態の1種が、アルカリ又は酸の液体において溶解し、レリーフ構造がもたらされる。
【0020】
相-変化組成は、核形成-支配及び成長-支配の物質に分類することができる。核形成-支配の相-変化物質は、安定な結晶性の核を形成して、それから結晶性の印を形成することができる比較的高い確率を持つ。反対に、結晶化の速さは典型的に低い。核形成の支配される物質の例は、GelSb2Te4及びGe2Sb2Te5物質である。成長-支配される物質は、低い核形成の確率及び高い成長率によって特徴付けられる。成長-支配される相-変化組成の例は、開示された組成物である、In及びGeによってドープされたSb2Te及びSnGeSb合金である。これら2種のクラスの相-変化物質の核形成及び成長の確率曲線を図2において示す。左側のパネルは核形成-支配される相-変化物質の結晶化の特徴を示す。(21)は核形成の確率を指し、(22)は成長の確率を指す。その物質は、安定な核を形成して、それから無定形物質が多結晶の印に結晶化され得る比較的高い確率を所有している。この再-結晶化の処理は、図面の挿入物において例証される。結晶の背景(25)における無定形の印(24)の安定な核(23)からの結晶化の処理を図式的に示す。右側のパネルは、成長-支配される相-変化物質の結晶化の特徴を示す。(26)は核形成の確率を指し、(27)は成長の確率を指す。これらの物質は、安定な結晶性の核を形成して、それから結晶性の印が形成され得る比較的低い確率を持つ。反対に、成長の速度は、無定形-結晶の界面が存在する場合に再-結晶化が速くなり得るように大きい。処理をまた、図面の挿入物において例証する。無定形の印(24)は、成長を介して再-結晶化して、結晶性-無定形の界面を形成する。
【0021】
結晶性の印が初期の無定形の層において書き込まれる場合、典型的な印は、集束レーザ点の形状に適合することに変わりはない。結晶性の印の寸法は印加するレーザ出力の制御によって幾分調整することができるが、書き込まれる印は光学点よりも小さくすることがほとんどできない。無定形の印が結晶性の層に書き込まれる場合、相-変化物質の結晶化の特性は光学点寸法よりも小さい印を可能にする。特に、成長-支配される相-変化物質を用いる場合、無定形の印のテイル(尾部)における再-結晶化が適切なレーザのレベルでの、無定形の印が書き込まれる時間に関連して適切な時間尺度(スケール)での適用によって誘導され得る。
【0022】
この再-結晶化処理は図3において解明される。結晶の背景層(32)において書き込まれる無定形の印(31)の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を示す。用いる相-変化物質は、成長-支配される相-変化物質、とりわけ、In及びGeをドープしたSb2Teの組成物であった。最も短い印(33)は、印(34)の立ち下がりエッジにおいて誘導される再-結晶化のために、いわゆる三日月形状によって特徴付けられる。より一層長い印(35)は、類似する再-結晶化挙動を立ち下がりエッジ(36)において示し、また、印の短縮を導く。この再-結晶化は、光学的な点の寸法よりも小さい印の書き込みを可能にする。
【0023】
無定形及び結晶性の状態の溶解率における相違を図4において可視化する。図面では、相-変化薄膜(フィルム)の、部分的な結晶性状態において、及び部分的な無定形状態において、10分間のアルカリ溶液(10%NaOH)を用いて洗浄した後に得られるレリーフ構造の原子間力顕微鏡写真を示す。左側のプラト(41)は相-変化薄膜の初期の(無定形)状態を言及する。右側のプラト(42)は書き込まれた(結晶性)状態である。滑らかな段差(ステップ)が見られ、それは、用いられる相-変化物質(In及びGeをドープしたSb2Te)の無定形及び結晶性の相の間の溶解率における良好な対照を例証する。
【0024】
測定した溶解率を、In及びGeをドープしたSb2Te組成での図5に示す。図5aは、5%及び10%の濃縮したNaOH溶液についての合計溶解時間の関数として測定した残存層厚を示す。曲線の勾配は、単位時間当たりに溶解した層厚を表示し、それを溶解率として表示する。5%NaOHについて、溶解率は、この特定のInGeSbTe組成にとっては約2nm/分である。10%NaOHについて、溶解率は、この特定のInGeSbTe組成にとっては約1.5nm/分である。図5bは、10%NaOHについての合計溶解時間の関数として測定される溝深さ(開先の深さ)を描く。溝はレーザ・ビーム・レコーダ(LBR)を用いて書き込まれた。測定値を、3種の異なるレーザ出力(LONで指示す)について示す。溶解率はまた1.5nm/分である。図5cは、5、10及び20%のKOH溶液についての合計溶解時間の関数として測定される溝深さを描く。溶解率は5%KOHについて約1.3nm/分、20%KOHについて約2nm/分及び10%KOHについて約3nm/分である。
【0025】
5%、10%及び20%の濃縮したNaOH溶液についての合計溶解時間の関数として測定される残存層厚を、SnGeSb組成についての図6に与える。曲線の勾配は、単位時間当たりの溶解した層厚を表示し、これは溶解率として表示される。5%NaOHについて、溶解率は、この特定のSnGeSb組成にとって約2.3nm/分である。
【0026】
5%HNO3についての合計溶解時間の関数として測定した残存層厚を、図7において、10%NaOHに対して、SnGeSb組成にとってのものと比較する。HNO3の溶解率は、NaOHについてのものよりも著しく高く、すなわち、2.3nm/分に対する12nm/分である。
【0027】
優れた主基材の配置を図8に与える。記録の積み重ねは、高速-成長の相-変化物質に基づく情報層(12)、界面層(11)、第2界面層(82)、金属放熱体層(83)及び情報層の頂部上の保護層(81)を備える。金属放熱体層を加え、データ及び溝の書き込みの間の熱蓄積を制御する。特に、印が相-変化物質の非晶質化(amorphisation)によって書き込まれる場合、熱が記録の間に情報層から素早く除去され、相-変化物質の溶融-急冷(melt-quenching)を可能にするのが重要である。保護層を加えて、主基材の回転の間での遠心力の影響の下での溶融相-変化物質の大規模な移動を防ぐ。保護層は、無定形の書き込みの場合に、およそ600-700Cの高い記録温度に対して抵抗性があるべきである。さらに、保護層は、取り外し可能であり、情報層において及び多分界面層(11)においてもなお、レリーフ構造を形成するべきである。
【0028】
提案する主基材及び提案する方法に従って作製する溝を、図9に示す。溝は、レーザ・ビーム・レコーダを用いて740nmの溝トラックのピッチで書き込まれ、それは413nmのレーザ光線の波長で操作され、及びNA=0.9の開口数を有する対物レンズを持った。合計溶解時間は20%NaOH溶液において10分であった。得られる溝の深さは19.8nmであった。
【0029】
提案する主基材及び提案する方法で作製される溝の別の例を、図10に示す。溶解処理の3種の異なる相を示し、すなわち、それらは10%NaOHにおける、5分後(左側の画像)、10分後(中間の画像)及び15分後(右側の画像)の浸漬での結果である。溝は、413nm及びNA=0.9の対物レンズの開口数のレーザ光線の波長で操作されるレーザ・ビーム・レコーダを用い、500nmの溝トラックのピッチで書き込まれる。得られる溝の深さは15分の液浸後に20nmであった。
【0030】
LBRの異なるレーザ出力で書き込まれる溝を図11に示す。左側の画像は、低いレーザ出力で得られる結果を示し、中間の画像は、中位のレーザ出力で得られる結果を示し、及び右側の画像は、高いレーザ出力で得られる結果を示す。合計溶解時間は10%NaOH溶液で10分であった。図面では、提案する主基材及び方法が異なる溝幅を有する溝の形成を可能にすることを例証する。最も低い出力は、幅160nmの溝を、413nmのLBR及びNA=0.9で書き込むことができ、25GBのブル-レイディスクRE(書換可能型)及びR(追記型)ディスクの複製のための主基材の作製を可能にする。予備-記録される溝のトラックピッチはTP=320nmである。160nmの溝幅は50%の溝/ランド負荷サイクル(groove/land duty cycle)を与える。溝の幅は更に、257nmでのレーザ・ビーム・レコーダが用いられた場合に減らすことができる。より一層小さな光学点は、より一層小さな熱的点、及び従ってより一層狭い書き込み溝を与える。より一層小さな点はまた、より一層小さな印の書き込みを促進し、及び従ってより一層高いデータ密度を導く。
【0031】
提案する主基材及び提案する方法に従って書き込まれる短いピットのAFM写真を、図12に与える。合計溶解時間は、10%NaOH溶液において10分であった。ピットは(120)で表示される。ピットの形状は図2に示す最も短い印の典型的な三日月形の形状に似ている。ピットの幅はピットの長さの大体2倍である。ピットの長さはピットの尾部(121)における再結晶化の効果によって減少する。印の三日月形の形状はレリーフ構造に完全に移される。ピットの深さはこの場合に20nmであった。
【0032】
例は、高速-成長の相-変化物質が無定形及び結晶性の相の間の溶解率における高い対照性を所有することを例証する。溶解率でのこの対照性を利用して、情報層での高-密度レリーフ構造を作製することができる。界面層はエッチングに対する自然な障壁として作用するが、それは、アルカリ又は酸の液体のような、用いる現像剤の液体について、それが、極めて低いか、又はゼロである溶解率を持つように設計させるからである。予備-溝付きの形態での高-密度のレリーフ構造を、記録可能型(R)及び書換可能型(RE)光学ディスクの複製のためのスタンパとして用いることができる。予備-ピット(pre-pits)の形態での高-密度のレリーフ構造を、予備-記録される読み専用記憶(ROM)ディスクの複製のためのスタンパとして用いることができる。特に、後者の場合で、高速-成長の相-変化物質における書き込みから得られる典型的な三日月形の形状は、高-密度のレリーフ構造に存在し、及び複製を介して、光学ROMディスク中に最終的に移る。
【0033】
保護層を有した提案する主基材はまた、液浸を用いるマスタ作製用として完全に適する。液浸のマスタ作製は、対物レンズの開口数を1より高くにまで増加させるマスタ作製の概念である。水は空気の代りに対物レンズ及び主基材の間において中間の媒体として存在する。水は、空気よりも高い屈折率(n)を持つ。好ましいマスタ作製方法では、少なくとも500-800の温度増加が相-変化層の融解を誘導するのに求められる。特に、液体の薄膜が相-変化層の頂部上に存在する場合、著しい量の熱が液体の薄膜を介して失われる。この損失熱は次のことを導く:
1)データ記録用の著しくより一層高いレーザ出力。ほとんどのレーザ・ビーム・レコーダで、利用できるレーザ出力は限られる。したがって、大幅な損失熱は許されない。
2)熱的書き込み点の広がり。これは情報層の近辺での良好な熱導体の存在による、側面方向への熱の広がりから説明される。集束レーザ点の寸法はシステムの光学によって定まる。この集束レーザ点は、記録の積み重ねにおける光子の吸収によってレーザ-誘導加熱を引き起こす。良好な熱導体が情報層の近辺に存在する場合、側面方向への延びが温度分布の広がりを引き起こす。提案する方法が熱的に誘導される相転移に基づくので、この温度の広がりは、より一層大きな印を導き、及び減少したデータ密度をもたらす。
【0034】
提案する保護層は、良好な絶縁体として作用し、情報層からの損失熱を防ぐ。そのような保護層を適用する場合、光学点は、小さな印を書き込むことができるような熱的な点にほとんど似ている。提案する有機保護層の熱伝導性は0.2及び0.4W/mKの間である。
【0035】
付加的な利点は情報層の水に対しての保護である。保護層は、液浸でのマスタ作製の間のシールとして見ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】主基材の基本的な配置を示す図である。
【図2】核形成及び成長の確率曲線を示すグラフである。
【図3】透過型電子顕微鏡(TEM)写真を示す図面代用写真である。
【図4】原子間力顕微鏡(AFM)写真を示す図面代用写真である。
【図5a】測定残存層厚を示すグラフである。
【図5b】測定残存層厚を示すグラフである。
【図5c】測定残存層厚を示すグラフである。
【図6】測定残存層厚を示すグラフである。
【図7】測定残存層厚を示すグラフである。
【図8】好適な主基材の配置を示す図である。
【図9】提案に従って作製される溝の構造を示す図面代用写真である。
【図10】レリーフ構造の図面代用写真である。
【図11】レリーフ構造の図面代用写真である。
【図12】短いピットのAFM写真を示す図面代用写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主基材であって、基材層及び基材層上に堆積される記録の積み重ねを備え、記録の積み重ねが:
-情報層、
-前記情報層と基材との間に挟まれる界面層
を備えており、
前記情報層が、暗号化データの型を表す印及び余地を形成するための成長-支配の相-変化物質を備え、前記記録の物質が、Ge、Sb、Te、In、Se、Bi、Ag、Ga、Sn、Pb、Asを包含する物質の群の少なくとも2種の物質を含む合金である、主基材。
【請求項2】
前記記録の物質が、Sb-Te合金物質、特にGe及びInがドープされるSb2Teである、請求項1の主基材。
【請求項3】
前記記録の物質が、Sn-Ge-Sb-合金物質、特に組成Sn18.3-Ge12.6-Sb69.2を有するものである、請求項1の主基材。
【請求項4】
前記情報層が、2nmから100nmまでの範囲、好ましくは範囲1が5及び40nmの間に及び、好ましくは範囲2が45及び70nmの間に及ぶ厚さを持つ、請求項1の主基材。
【請求項5】
前記界面層が、ZnS-SiO2、Al2O3、SiO2、Si3N4を包含する誘電体物質の群の物質から作製される、請求項1の主基材。
【請求項6】
前記界面層が、フタロ-シアニン、シアニン及びアゾ染料の群から選ばれる少なくとも1種の有機染料を含む、請求項1の主基材。
【請求項7】
前記界面層が、UV-硬化性有機物質の群から選ばれ、好ましくはジアクリル酸ヘキサンジオール(HDDA)の有機層を含む、請求項1の主基材。
【請求項8】
前記界面層が、5nmから100nmまでの範囲において、特に20及び70nmの間の厚さを持つ、請求項1の主基材。
【請求項9】
記録の積み重ねが更に、保護層を情報層に隣接して基材から最も離れた側に備える、請求項1の主基材。
【請求項10】
前記保護層が、2及び50nmの間、特に5及び30nmの間の厚さを持つ、請求項9の主基材。
【請求項11】
前記保護層が、ZnS-SiO2、Al2O3、SiO2、Si3N4、Ta2O、SiCを包含する群の物質から作製される、請求項9の主基材。
【請求項12】
前記保護層が、有機物質、特にジアゾナフトキノン系フォトレジストの群からか、又は可溶性有機物質、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)のようなものの群から選ばれるものを含む、請求項9の主基材。
【請求項13】
記録の積み重ねが更に、前記基材層及び前記界面層の間の第2界面層を備える、請求項1又は9の主基材。
【請求項14】
前記第2界面層が、10及び100nmの間、好ましくは15及び50nmの間の厚さを持つ、請求項13の主基材。
【請求項15】
金属放熱体層が前記基材層及び前記界面層又は第2界面層の間に存在する、請求項1、9又は13の主基材。
【請求項16】
前記金属放熱体層が5nmよりも厚い、特に15nmよりも厚い厚さを持つ、請求項15の主基材。
【請求項17】
前記金属放熱体層が、Al、Ag、Cu、Ag、Ir、Mo、Rh、Pt、Ni、Os、W及びそれらの合金の物質の群から選ばれる物質を含む、請求項15の主基材。
【請求項18】
高-密度レリーフ構造の複製のためのスタンパを製造するにあたり、少なくとも次の工程
-請求項1〜17のいずれか1項の主基材を、変調される集束放射線ビームを用いて照射する工程、
-照射された主基材層を、望ましいレリーフ構造が得られるように、現像剤で、それがアルカリ又は酸の液体の1種であり、好ましくはNaOH、KOH、HCl及びHNO3の水溶液の群から選ばれるものを用いて洗浄する工程、
-金属性層、特にニッケル層のスパッタ-堆積の工程、
-スパッタ-堆積する層を望ましい厚さにまでガルバニ的に成長させてスタンパを形成する工程、
-主基材をスタンパから分離する工程
を含む、方法。
【請求項19】
請求項1、9、13又は15の主基材を用い、情報層が範囲5〜35nmにおける厚さを持ち、そこでは、予備-溝付け加工されるレリーフ構造が追記型及び書換可能型光学ディスクの複製のために形成される、請求項18の方法。
【請求項20】
展開剤溶液を、1〜30%、好ましくは2及び20%の間の濃度において用いる、請求項18又は19の方法。
【請求項21】
予備-記録される光学ディスクであって、請求項18、19又は20の方法を用いて製造されるスタンパによって複製されており、スタンパ表面上のレリーフ構造が典型的な三日月形を持つ最短ピット及びスワロ-加工される立ち下がりエッジを持つより一層長いピットを備え、及びレリーフ構造が光学ディスクにおいて複製されることを特徴とする、ディスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2007−532355(P2007−532355A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−507897(P2007−507897)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【国際出願番号】PCT/IB2005/051160
【国際公開番号】WO2005/101397
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】