説明

高いグルタミン酸レベルにより誘導される損傷からニューロン組織を保護するための方法および組成物

本発明は、グルタミン酸の正常でないレベルにより誘導される損傷から中枢神経系を保護するための方法および組成物に関連する。本発明により、脳の細胞外グルタミン酸レベルを低下させる方法が提供される。この方法は、ストレスホルモンの活性を調節することができ、それにより血中グルタミン酸レベルを低下させることができる薬剤をその必要性のある対象に投与し、それにより脳の細胞外グルタミン酸レベルを低下させることを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルタミン酸の正常でないレベル(例えば、脳卒中から生じ得る)により誘導される損傷から中枢神経系(CNS)を保護するための方法および組成物に関連する。
【背景技術】
【0002】
中枢神経系は、非常に複雑な機能を行うことができるネットワークを形成する数十億個の神経細胞(ニューロン)から構成される。
【0003】
アミノ酸のL−グルタミン酸(グルタメート)は中枢神経系におけるニューロン間の興奮性相互作用の多くを媒介する。正常な状態では、細胞外空間におけるグルタミン酸の蓄積が、伝達物質の放出による断続的な喪失にもかかわらず、ニューロンのグルタミン酸レベルを維持するために働く再利用機構の操作によって抑制される(Van der BergおよびGarfinkel、1971;Kennedy他、1974)。グルタミン酸は、グルタミン酸作動性ニューロンによって放出される場合、グルタミン酸が酵素のグルタミンシンセターゼによってグルタミンに変換されるグリア細胞に取り込まれる。グルタミンはニューロンに再び入り、グルタミナーゼによって加水分解されて、グルタミン酸を形成し、従って、これにより、神経伝達物質プールが再び満たされる。
【0004】
この生化学的経路はまた、シナプスから放出されたグルタミン酸を細胞外空間から除去し、そのグルタミン酸を、毒性が生じる前に非毒性アミノ酸のグルタミンに変換することによって機能する内因性の神経保護機構としても役立つ。細胞外空間から脳内へのグルタミン酸の除去は、グルタミン酸およびナトリウムイオンを共輸送する特異的なグルタミン酸輸送体を介して生じる。この共輸送のための駆動力は、ナトリウムイオンの高い細胞外濃度と低い細胞内濃度との間の濃度勾配にある。グルタミン酸の興奮毒性の潜在能力(すなわち、過度なグルタミン酸がニューロンを過度に興奮させ、その死を引き起こす能力として定義される)は、輸送プロセスが適切に機能している限りは抑えられる。しかしながら、虚血性状態下などでの輸送プロセスにおける機能不全または低下は、細胞外のシナプス液でのグルタミン酸の蓄積および興奮性受容体の過度な刺激、すなわち、ニューロンの死を引き起こす状況をもたらす。
【0005】
2つのさらなる因子が事態を複雑にし、また、より悪化させる:(i)過度に刺激されたニューロンがさらなるシナプス接合部において過剰量のグルタミン酸を放出し始める;このことは、一層より多くのニューロンが過度に刺激されることを引き起こし、これにより、一層より多くのニューロンが、虚血の最初の区域を越える神経毒性カスケードに引き込まれる;および(ii)過度に刺激されたニューロンが、グルコースまたは酸素の何らかの利用可能な供給源を正常な場合よりも一層早く利用し始め、このために、これらの限られたエネルギー資源の加速された枯渇、および、グルタミン酸輸送プロセスのさらなる障害がもたらされる。誘導および進行のこの生化学的カスケードは数時間または数日間にわたって続くことがあり、ニューロンの遅れた死を引き起こす。
【0006】
脳の間質液および脳脊髄液における異常に高いグルタミン酸(グルタメート)レベルはいくつかの神経変性状態の顕著な特徴である。これらには、急性脳酸素欠乏症/虚血、すなわち、脳卒中(Graham他、1993;Castillo他、1996)、周産期脳障害(Hagberg他、1993;Johnston、1997)、外傷性脳傷害(Baker他、1993;Zauner他、1996)、細菌性髄膜炎(Spranger他、1996)、クモ膜下出血、開心術および動脈瘤手術(Persson他、1996;Saveland他、1996)、出血性ショック(mongan他、1999、2001)、新たに診断されたてんかん(Kalviainen他、1993)、急性肝不全(Rose他、2000)、ならびに、様々な慢性神経変性疾患、例えば、緑内障(Dreyer他、1996)、筋萎縮性側索硬化症(Rothstein他、1990;Shaw他、1995)、HIV認知症(Ferrarese他、2001)およびアルツハイマー病(Pomara他、1992)などが含まれる。
【0007】
従って、医学的治療の1つの目的は、上記のカスケードプロセスを中断または排除し、従って、グルタミン酸に関連したニューロン損傷を抑制することである。
【0008】
グルタミン酸の興奮毒性はグルタミン酸受容体によって媒介されるので、可能性のある治療的取り組みが開発途中にあり、その取り組みでは、様々な選択的グルタミン酸受容体アンタゴニストが神経変性の動物モデルにおいて適用されようとしている。これらのグルタミン酸受容体アンタゴニストは、強力な神経保護効果を実験的な脳卒中および頭部外傷において示すが、主にそれらの有害な作用または致死的でさえある作用のために、臨床試験において失敗した(Birmingham、2002;LutsepおよびClark、2001;Palmer、2001)。
【0009】
様々な試みがまた、グルタミン酸をニューロン外液から取り込むグリア細胞およびニューロンに存在する様々なグルタミン酸輸送体の活性を増大させ、それにより、グルタミン酸の興奮作用および興奮毒性を制限するために行われている。しかしながら、上記の取り組みはどれも、グルタミン酸レベルを低下させるための実行可能な治療的取り組みを提供することに成功していない。
【0010】
これらの失敗、および、グルタミン酸の興奮毒性を伴う神経変性障害の処置に対する代替法の必要性に照らして、本発明者らは、脳の間質液(ISF)および脳脊髄液(CSF)における過剰なグルタミン酸が、比較的あまりよく研究されていない、脳から血液へのグルタミン流出機構を増大させることによって除去され得ることを仮定している。この流出を増大させることは、血液におけるグルタミン酸レベルを低下させ、それにより、脳のISF/CSFから血液へのグルタミン酸輸送を増大させることによって達成することができる。
【0011】
本発明者は、2つの酵素、すなわち、グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(GPT)およびグルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(GOT)を最大限に活性化することによって、血液におけるグルタミン酸分解が増大することを以前に発見している(本発明者によるPCT IL03/00634)。これら2つの酵素は、グルタミン酸を下記の一般式において基質として使用する酵素のより広いグループの2つの例である:
A+グルタミン酸←(酵素)→C+D
式中、Aは共基質を表し、←(酵素)→は可逆的酵素を表し、CおよびDは酵素の代謝産物である。例えば、
グルタミン酸+オキサロ酢酸←(GOT)→2−ケト−グルタル酸+アスパラギン酸
別の例は、
グルタミン酸+ピルビン酸←(GPT)→2−ケト−グルタル酸+アラニン
である。
第3の例は、
グルタミン酸+4−メチル−2−オキソペンタノエート←(分枝鎖アミノ酸トランスアミナーゼ)→2−ケトグルタル酸+バリン
である。
【0012】
同じ酵素に対して働く異なる基質についての例が、
グルタミン酸+2−オキソヘキサン二酸←(GOT)→2−ケト−グルタル酸+2−アミノヘキサン二酸、
グルタミン酸+2−オキソ−3−フェニルプロピオン酸←(GOT)→2−ケト−グルタル酸+フェニルアラニン、
グルタミン酸+3−ヒドロキシ−2−オキソプロピオン酸←(GOT)→2−ケト−グルタル酸+セリン、
グルタミン酸+5−オキソペンタン酸←(GPT)→2−ケト−グルタル酸+5−アミノペンタン酸、
グルタミン酸+4−オキソブタン酸←(GPT)→2−ケト−グルタル酸+4−アミノブタン酸、
グルタミン酸+グリオキサル酸←(GPT)→2−ケト−グルタル酸+グリシン
である。
【0013】
これらの酵素が共有する別の共通する特徴は、これらの酵素がピリドキサールリン酸を補因子として使用することである。
【0014】
言及したように、これらの酵素はグルタミン酸を2−ケトグルタル酸に可逆的に変換する。このことは、血中のグルタミン酸レベルを基礎レベル未満にさらに低下させる、それにより、正常な場合に存在するよりも急峻な勾配のグルタミン酸レベルを、脳のISF/CSFと血液との間にもたらす。新規な平衡に到達するために、グルタミン酸が脳から血液に輸送され、従って、脳におけるグルタミン酸の高いレベルを低下させる。グルタミン酸レベルが血液において低い限り、脳から血液へのこの流出が続く。GOTおよびGPTを2−ケトグルタル酸へのグルタミン酸の変換のためのそれらの最大レベル(Vmax)で働かせるためには、それらのそれぞれの基質、すなわち、オキサロ酢酸およびピルビン酸が与えられる必要がある。
【0015】
上記で言及したように、グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼおよびグルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼはともに、オキサロ酢酸およびピルビン酸をそれらのそれぞれの共基質として使用しながら、グルタミン酸を代謝する。しかしながら、グルタミン酸を代謝することができる多くの他のトランスアミナーゼが体内には存在する(例えば、グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ、分枝鎖アミノ酸トランスアミナーゼ、アラニントランスアミナーゼおよびGABAアミノトランスフェラーゼなど)。それぞれの酵素については、その反応に従って、特異的な基質(例えば、4−アミノ酪酸トランスアミナーゼについてはコハク酸セミアルデヒドなど)が使用される必要がある。
【0016】
逆に、ピルビン酸およびオキサロ酢酸はグルタミン酸トランスアミナーゼについてのおそらくは最も良い基質であるが、他の基質を使用することができ、例えば、2−オキソヘキサン二酸、2−オキソ−3−スルホプロピオネート(2−オキソ−3−スルホプロピオン酸)、2−オキソ−3−スルフィノプロピオン酸、2−オキソ−3−フェニルプロピオン酸または3−インドール−2−オキソプロピオン酸などをオキサロ酢酸の代わりに使用することができ、5−オキソペンタノエート(5−オキソペンタン酸)、6−オキソヘキサノエート(6−オキソヘキサン酸)またはグリオキサレート(グリオキサル酸)などをピルビン酸に代わりに使用することができる。
【0017】
グルタミン酸から2−ケトグルタル酸への変換は可逆的である。従って、2−ケトグルタル酸への酵素反応によるグルタミン酸代謝のとき、酵素を逆方向に働かせ、2−ケトグルタル酸をグルタミン酸に変換させ得る2−ケトグルタル酸の蓄積が生じる。従って、2−ケトグルタル酸をさらに分解し、このようにして、グルタミン酸の断続的な代謝を保証することが有益である。2−ケトグルタル酸を代謝する1つのそのような酵素は2−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼである。その一般的な反応は、
2−ケトグルタル酸+リポアミド←(2−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ)→S−スクシニルジヒドロリポアミド+CO
である。
【0018】
本発明を実施するとき、本発明者は、ストレス状態がまた、脳の実質組織から血液への過剰Gluの流出を増大させ得ることを発見した。これらの発見は、脳の細胞外グルタミン酸レベルを低下させるためのストレスホルモンの使用を示唆する。この流出は、以前に記載された血中グルタミン酸スカベンジャー(例えば、オキサロ酢酸など)の同時投与によって増大させることができる。
【発明の開示】
【0019】
本発明の1つの態様によれば、ストレスホルモンの活性を調節することができ、それにより血中グルタミン酸レベルを低下させることができる薬剤をその必要性のある対象に投与し、それにより脳の細胞外グルタミン酸レベルを低下させることを含む、脳の細胞外グルタミン酸レベルを低下させる方法が提供される。
【0020】
本発明の別の態様によれば、有効成分として、血中グルタミン酸レベルを低下させることができる少なくとも2つの薬剤と、医薬的に許容され得る担体とを含む医薬組成物であって、該少なくとも2つの薬剤のうちの少なくとも1つがストレスホルモンの活性を調節することができ、それにより血中グルタミン酸レベルを低下させることができる、医薬組成物が提供される。
【0021】
本発明のさらに別の態様によれば、包装材と、包装材に含有されている、脳の細胞外グルタミン酸レベルを低下させるために特定される医薬組成物とを含む製造物であって、該医薬組成物が、有効成分として、ストレスホルモンの活性を調節することができ、それにより血中グルタミン酸レベルを低下させることができる薬剤と、医薬的に許容され得る担体とを含む製造物が提供される。
【0022】
本発明のさらに別の態様によれば、脳の細胞外グルタミン酸レベルをその必要性のある対象において低下させる方法であって、(a)血液サンプルを得ること、(b)血液サンプルを、ストレスホルモンの活性を調節することができ、それにより血液サンプルに存在する細胞のグルタミン酸レベルを低下させることができる薬剤と接触させて、それによりグルタミン酸を枯渇させた血液細胞を得ること、および(c)グルタミン酸を枯渇させた血液細胞を対象に導入し、それによりその脳の細胞外グルタミン酸レベルを低下させることを含む方法が提供される。
【0023】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、ストレスホルモンの活性を調節することができ、それにより血中グルタミン酸レベルを低下させることができる薬剤は、ストレスホルモンアゴニストである。
【0024】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、ストレスホルモンの活性を調節することができ、それにより血中グルタミン酸レベルを低下させることができる薬剤は、ストレスホルモンアンタゴニストである。
【0025】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、ストレスホルモンアゴニストはアドレナリン作動性受容体アゴニストを含む。
【0026】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、アドレナリン作動性受容体アゴニストはα1アゴニストまたはα2アゴニストである。
【0027】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、アドレナリン作動性受容体アゴニストはβ2アゴニストである。
【0028】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、ストレスホルモンアンタゴニストはアドレナリン作動性受容体アンタゴニストを含む。
【0029】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、アドレナリン作動性受容体アンタゴニストはβ1アンタゴニストである。
【0030】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、該方法はさらに、血中グルタミン酸レベルを低下させることができるさらなる薬剤を、ストレスホルモンを投与する前に、または、ストレスホルモンを投与するのと同時に、または、ストレスホルモンを投与した後に投与することを含む。
【0031】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、該方法はさらに、血液サンプルを、血中グルタミン酸レベルを低下させることができるさらなる薬剤と、工程(b)の前に、または、工程(b)と同時に、または、工程(b)の後で接触させることを含む。
【0032】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、薬剤は少なくとも1つのグルタミン酸修飾酵素および/またはその改変体である。
【0033】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、少なくとも1つのグルタミン酸修飾酵素が、トランスアミナーゼ、デヒドロゲナーゼ、デカルボキシラーゼ、リガーゼ、アミノムターゼ、ラセマーゼおよびトランスフェラーゼからなる群から選択される。
【0034】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、トランスアミナーゼが、グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ、グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ、アセチルオルニチントランスアミナーゼ、オルニチンオキソ酸トランスアミナーゼ、スクシニルジアミノピメリン酸トランスアミナーゼ、4−アミノ酪酸トランスアミナーゼ、アラニントランスアミナーゼ、(s)−3−アミノ−2−メチルプロピオン酸トランスアミナーゼ、4−ヒドロキシグルタミン酸トランスアミナーゼ、ジヨードチロシントランスアミナーゼ、甲状腺ホルモントランスアミナーゼ、トリプトファントランスアミナーゼ、ジアミントランスアミナーゼ、システイントランスアミナーゼ、L−リシン6−トランスアミナーゼ、ヒスチジントランスアミナーゼ、2−アミノアジピン酸トランスアミナーゼ、グリシントランスアミナーゼ、分枝鎖アミノ酸トランスアミナーゼ、5−アミノ吉草酸トランスアミナーゼ、ジヒドロキシフェニルアラニントランスアミナーゼ、チロシントランスアミナーゼ、ホスホセリントランスアミナーゼ、タウリントランスアミナーゼ、芳香族アミノ酸トランスアミナーゼ、芳香族アミノ酸グリオキシル酸トランスアミナーゼ、ロイシントランスアミナーゼ、2−アミノヘキサン酸トランスアミナーゼ、オルニチン(リシン)トランスアミナーゼ、キヌレニンオキソグルタル酸トランスアミナーゼ、D−4−ヒドロキシフェニルグリシントランスアミナーゼ、システイン共役トランスアミナーゼ、2,5−ジアミノ吉草酸トランスアミナーゼ、ヒスチジノールリン酸トランスアミナーゼ、ジアミノ酪酸−2−オキソグルタル酸トランスアミナーゼ、udp−2−アセトアミド−4−アミノ−2,4,6−トリデオキシグルコーストランスアミナーゼおよびアスパラギン酸トランスアミナーゼからなる群から選択される。
【0035】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、デヒドロゲナーゼがグルタミン酸デヒドロゲナーゼである。
【0036】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、デカルボキシラーゼがグルタミン酸デカルボキシラーゼである。
【0037】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、リガーゼがグルタミン酸エチルアミンリガーゼである。
【0038】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、トランスフェラーゼが、グルタミン酸n−アセチルトランスフェラーゼおよびアデニリルトランスフェラーゼからなる群から選択される。
【0039】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、アミノムターゼがグルタミン酸−1−セミアルデヒド2,1−アミノムターゼである。
【0040】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、薬剤がグルタミン酸修飾酵素の少なくとも1つの補因子である。
【0041】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、補因子が、オキサロアセテート(オキサロ酢酸)、ピルベート(ピルビン酸)、NAD、NADP、2−オキソヘキサン二酸、2−オキソ−3−スルホプロピオネート(2−オキソ−3−スルホプロピオン酸)、2−オキソ−3−スルフィノプロピオン酸、2−オキソ−3−フェニルプロピオン酸、3−インドール−2−オキソプロピオン酸、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソプロピオン酸、4−メチルスルホニル−2−オキソ酪酸、3−ヒドロキシ−2−オキソプロピオン酸、5−オキソペンタノエート(5−オキソペンタン酸)、6−オキソヘキサノエート(6−オキソヘキサン酸)、グリオキサレート(グリオキサル酸)、4−オキソブタノエート(4−オキソブタン酸)、α−ケトイソカプロエート(α−ケトイソカプロン酸)、α−ケトイソバレレート(α−ケトイソ吉草酸)、α−ケト−β−メチルバレレート(α−ケト−β−メチル吉草酸)、コハク酸セミアルデヒド(4−オキソブチレート[4−オキソ酪酸])、ピリドキサールリン酸、ピリドキサールリン酸前駆体および3−オキソイソブタノエート(3−オキソイソブタン酸)からなる群から選択される。
【0042】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、薬剤が、修飾グルタミン酸をグルタミン酸および/またはその改変体に変換することができないように選択されている修飾グルタミン酸変換酵素である。
【0043】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、修飾グルタミン酸変換酵素がα−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼである。
【0044】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、薬剤が、修飾グルタミン酸をグルタミン酸に変換することができないように選択されている修飾グルタミン酸変換酵素の補因子である。
【0045】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、薬剤が、リポ酸、リポ酸前駆体、チアミンピロリン酸、チアミンピロリン酸前駆体、ピリドキサールリン酸およびピリドキサールリン酸前駆体からなる群から選択される。
【0046】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、薬剤がグルタミン酸修飾酵素およびその補因子を含む。
【0047】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、薬剤が、グルタミン酸修飾酵素と、修飾グルタミン酸をグルタミン酸に変換することができないように選択されている修飾グルタミン酸変換酵素とを含む。
【0048】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、薬剤が、グルタミン酸修飾酵素の補因子と、修飾グルタミン酸をグルタミン酸に変換することができないように選択されている修飾グルタミン酸変換酵素とを含む。
【0049】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、薬剤が、グルタミン酸修飾酵素の補因子と、修飾グルタミン酸をグルタミン酸に変換することができないように選択されている修飾グルタミン酸変換酵素と、その補因子とを含む。
【0050】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、薬剤が、グルタミン酸修飾酵素と、その補因子と、修飾グルタミン酸をグルタミン酸に変換することができないように選択されている修飾グルタミン酸変換酵素と、その補因子とを含む。
【0051】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、薬剤が、グルタミン酸修飾酵素と、その補因子と、修飾グルタミン酸をグルタミン酸に変換することができないように選択されている修飾グルタミン酸変換酵素とを含む。
【0052】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、薬剤が、グルタミン酸修飾酵素と、修飾グルタミン酸をグルタミン酸に変換することができないように選択されている修飾グルタミン酸変換酵素と、その補因子とを含む。
【0053】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、薬剤が、グルタミン酸修飾酵素と、修飾グルタミン酸をグルタミン酸に変換することができないように選択されている修飾グルタミン酸変換酵素の補因子とを含む。
【0054】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、薬剤が、修飾グルタミン酸をグルタミン酸に変換することができないように選択されている修飾グルタミン酸変換酵素と、その補因子とを含む。
【0055】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、薬剤が、グルタミン酸修飾酵素の補因子と、修飾グルタミン酸をグルタミン酸に変換することができないように選択されている修飾グルタミン酸変換酵素の補因子とを含む。
【0056】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、投与を、1g/Kg体重/時間を超えない薬剤の濃度で行う。
【0057】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、血液サンプルを得ることを、
一致している血液型ドナー、
一致していない血液型ドナー、および/または
その必要性のある対象
から行う。
【0058】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、薬剤がグルタミン酸合成酵素の少なくとも1つの阻害剤である。
【0059】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、阻害剤が、γ−アセチレンGABA、ギャバクリン、L−カナリン、2−アミノ−4−(アミノオキシ)−n−ブタン酸、3−クロロ−4−アミノブタノエート(3−クロロ−4−アミノブタン酸)、3−フェニル−4−アミノブタノエート(3−フェニル−4−アミノブタン酸)、イソニコチン酸ヒドラジド;(S)−3−アミノ−2−メチルプロパノエート((S)−3−アミノ−2−メチルプロパン酸)、フェニルヒドラジン;4−フルオロフェニルアラニン、アジペート(アジピン酸)、アザライン酸、カプロエート(カプロン酸)、3−メチルグルタレート(3−メチルグルタル酸)、ジメチルグルタレート(ジメチルグルタル酸)、ジエチルグルタレート(ジエチルグルタル酸)、ピメレート(ピメリン酸)、2−オキソグルタメート(2−オキソグルタミン酸)、3−メチル−2−ベンゾチアゾロンヒドラゾン塩酸塩、フェニルピルベート(フェニルピルビン酸)、4−ヒドロキシフェニルピルベート(4−ヒドロキシフェニルピルビン酸)、プレフェネート(プレフェン酸)およびインドールピルベート(インドールピルビン酸)からなる群から選択される。
【0060】
本発明は、高いグルタミン酸レベルにより誘導される損傷からニューロン組織を保護するための方法および組成物を提供することによって、現在知られている形態の欠点に対処することに成功している。
【0061】
別途定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載される方法および材料と類似または同等である方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、好適な方法および材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【0062】
図面の簡単な記述
本明細書では本発明を単に例示し添付図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の好ましい実施態様を例示考察することだけを目的としており、本発明の原理や概念の側面の最も有用でかつ容易に理解される説明であると考えられるものを提供するために提示していることを強調するものである。この点について、本発明を基本的に理解するのに必要である以上に詳細に本発明の構造の詳細は示さないが、図面について行う説明によって本発明のいくつもの形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【0063】
図1A〜図1Cは、ラット脳の線状体におけるGluの二重プローブ微量透析を示すグラフである。図1Aは回収プローブへのGlu拡散の経時変化を示す。Glu(1M)を送達プローブから2μl/分の速度で連続して灌流し、一方、人工CSFを、実験の全継続期間について回収プローブを経由して2μl/分の同じ速度で灌流した。4回の実験の結果が最大値に対して正規化され、平均±標準偏差として示された。破線は、予想される定常状態を示す。図1Bは、回収プローブへの脳内Gluの拡散に対する静脈内Gluの影響を示す。t=100分において30分間行われた静脈内Glu注入(30μモル/分/100g)に伴う1MのGluの微量透析。左側の座標は回収プローブにおけるGluの濃度を示し、一方、右側の座標は血中Glu濃度を示す。図1cは、脳内Gluに対するオキサロ酢酸(血中Gluスカベンジャー)の影響を示す。t=110分において30分の継続期間にわたる30μl/分/100gおよび30μモル/分/100gでの静脈内OxAc注入に伴う1Mのグルタミン酸の二重プローブ微量透析。左側の座標は回収プローブにおけるGluの濃度(菱形)を示し、一方、右側の座標は血中Glu濃度(四角)を示す。2回の実験の結果が80分での最大値に対して正規化され、平均±標準偏差として示された。
【0064】
図2A〜図2Bは、血中グルタミン酸レベルおよび血中グルコースレベルに対するストレスホルモンおよびストレスの影響を示す線グラフである。A:コルチゾール(25mg/kg)を腹腔内注射した(三角)。ノルアドレナリンを2μg/100g/分および1ml/100gで30分間にわたって静脈内注入した(四角)。アドレナリンを10μg/kg/分および1ml/100gで30分間にわたって静脈内注入した(菱形)。示されるデータはそれぞれの基礎血中値に対して正規化され、平均±標準偏差(n=3)として示される。B:血中Gluレベル(菱形)および血中グルコースレベル(四角)に対する(流体灌流を何ら伴わない)微量透析プローブの頭蓋内挿入の影響。示されるデータはそれぞれの基礎血中値に対して正規化され、平均±標準偏差(n=4)として示される。
【0065】
図3A〜図3Cは、外傷性脳傷害からの自然回復に対するストレスの影響を示すグラフである。図3Aは、TBIプロトコル、ならびに、神経学的重症度スコア(NSS)評価および血液サンプルの抜き取り(星印)の時間を例示する。図3Bは、TBIを受けたラットの自然回復に対するプロプラノロール(10mg/kg i.p.)の影響を示すヒストグラムである。プロプラノロールを、TBIを加える60分前に注射した。神経学的重症度スコアをTBI後の1時間および24時間で測定した。座標に示されるスコアはNSS平均値+/−平均の標準偏差に対応する。コントロール(n=33);プロプラノロール(n=8)。ボンフェローニ多重比較検定:生理食塩水(1時間)対生理食塩水(24時間) p<0.001;生理食塩水(1時間)対プロプラノロール前処理 p>0.05;生理食塩水(1時間)対TBI後プロプラノロール p<0.001。図3Cは、TBIを受けたラット(n=8)の血中Gluレベル(四角)および血中グルコースレベル(三角)に対するプロプラノロールの影響を示すグラフである。プロプラノロールを、TBIを与える60分前に10mg/kg(i.p.)の用量で注射した。GluレベルおよびグルコースレベルをTBI後の1分、60分、120分および150分で測定した。Glu値はt=1分での値に対して正規化された。
【0066】
図4A〜図4Cは、TBIからの回復に対する血中GluスカベンジャーおよびGluの影響を示すグラフである。ラットに、生理食塩水(30μl/分/100g)、OxAc(30μモル/分/100g)またはOxAc+Glu(それぞれ30μモル/分/100g)を(図3Aでのように)30分の全継続期間にわたって静脈内注射した。20時間後および48時間後、ラットは、NSSを明らかにするための様々な試験を受けた。それぞれの欄の上に示されるスコアはNSS平均値に対応し、棒は平均の標準誤差を示す。図4A−左から右への群は下記の通りである:1時間および24時間でのコントロールの生理食塩水(n=33);OxAc(n=32);Glu(n=32);OxAc+Glu(n=17)、24時間および48時間;一元配置ANOVAおよびボンフェローニ多重比較検定:24時間において:生理食塩水対OxAc:p<0.05;生理食塩水対Glu:p<0.01;Glu対OxAc:p<0.001;生理食塩水対OxAc+Glu:p>0.05。48時間において:生理食塩水対OxAc:p<0.001;OxAc対Glu:p<0.001;OxAc対OxAc+Glu:p<0.05。図4B−外傷性脳傷害後の血中Gluレベル。Gluレベルが、TBI前に測定された基礎Gluレベルのパーセントとして表される。血液アリコートを、TBI後60分、75分(すなわち、30μl/分/100gの生理食塩水または30μモル/分/100gのOxAcのいずれかの静脈内注射の15分)、および、90分(静脈内処置の終了時)で取り出した。結果が平均±平均の標準誤差(n=12〜13)として示される。ペアードt検定:0分対60分の生理食塩水:p=5×10−4;0分対60分のOxAc p=10−4;60分対75分の生理食塩水:p=0.59;60分対75分のOxAc:p=3×10−3;75分対90分の生理食塩水:p=0.89;75分対90分のOxAc:p=2×10−4;C:平均±標準偏差としてここでは示されるNSS値によってモニタリングされるときの生理食塩水処置ラット(n=7)およびOxAc処置ラット(n=7)におけるTBIからの回復の経時変化。25日における生理食塩水対OxAcについてのスチューデントt検定:p=0.006。
【0067】
図5は、血中Gluレベルの低下とNSSの改善との間における相関関係を示すグラフである。個々のラットのパーセント血中Glu低下およびパーセントNSS低下が下記のようにそれぞれ計算された:
(Glut=0−Glut=90分)/Glut=0、(NSSt=1h−NSSt=24h)/NSSt=1h
【0068】
図6は、TBI、および、30μl/分/100gの生理食塩水または30μモル/分/100gのOxAcのいずれかによる処置の後の120分および24時間での、水分含有量を評価することによって求められるときの脳水腫形成を示すグラフである。カラムは平均±標準偏差を表す;120分:生理食塩水(n=6);OxAc(n=6);p=0.09;24時間:生理食塩水(n=7);OxAc(n=6);p=0.008;p値はアンペアードt検定に対応する。
【0069】
図7A〜図7Bは、血中GluレベルおよびNSSに対するβ1アンタゴニストのメタプロロールの影響を示すグラフである。メタプロロール(15mg/kg)を4匹の実験未使用ラットに注射し、血中Gluのレベルを、時間=0において、また、120分までその後30分毎に測定した。ラット(n=5)に15mg/kgのメタプロロールを事前に注射し、ラットはTBIを受けた。ラットのNSSを24時間後および48時間後に測定した。結果が平均±標準偏差として示される。
【0070】
図8は、血中Gluレベルに対するα1アゴニストのフェニレフリンの影響を示すグラフである。フェニレフリンを、30分間、ラット(n=4)に0.25mg/0.5ml/100g/30分の速度で静脈内注入し、血中Gluのレベルを、時間=0において、また、120分までその後30分毎に測定した。結果が平均±標準偏差として示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0071】
本発明は、対象の脳における細胞外グルタミン酸のレベルを低下させるための組成物、および、対象の脳における細胞外グルタミン酸のレベルを低下させるためにそのような組成物を使用する方法に関する。具体的には、本発明は、高いレベルのグルタミン酸が対象にとって有害である急性脳疾患および慢性脳疾患、例えば、虚血性状態などにおける急性脳疾患および慢性脳疾患を処置するために使用することができる。
【0072】
本発明の原理および作用が、図面および付随する説明を参照してより十分に理解されることができる。
【0073】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳しく説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明において示される細部、または、実施例によって例示される細部に限定されないことを理解しなければならない。本発明は他の実施形態が可能であり、または、様々な方法で実施または実行される。また、本明細書中で用いられる表現法および用語法は記述のためであって、限定であると見なしてはならないことを理解しなければならない。
【0074】
脳の間質液および脳脊髄液における異常に高いグルタミン酸レベルはいくつかの神経変性状態の顕著な特徴である。グルタミン酸の興奮毒性を低下させるための数多くの取り組みには、グルタミン酸受容体アンタゴニストの開発、および、グルタミン酸輸送体のアップレギュレーションが含まれる。前者は、おそらくは不良な選択性のために、有害な作用および致死的でさえある作用によって制限され、一方、後者はどれも、グルタミン酸レベルを下げるための実行可能な治療的取り組みを提供することに成功していない。
【0075】
本発明者は、脳から血液へのグルタミン酸流出を増大させることによって行われる、脳の高い細胞外グルタミン酸レベルに関連する臨床的状態に対する新規な治療様式を以前に設計している(PCT IL03/00634を参照のこと)。
【0076】
本発明を実施するとき、本発明者は、ストレス状態が脳から血液のこのグルタミン酸流出を促進し得ることを発見した。このことは、脳内グルタミン酸レベルを低下させるためのストレスホルモンの使用を示唆する。
【0077】
本明細書中下記において、また、下記の実施例の節において示すように、ストレス媒介による流出により、外傷性脳傷害を受けたラットの、部分的ではあるが、自然回復が説明される。これは、外傷性脳傷害が、血中グルタミン酸を増大させることによって、または、プロプラノロールの投与(非常に強力な選択的β−アドレナリン作動性受容体アンタゴニスト)によって抑制され、しかし、オキサロ酢酸(血中グルタミン酸スカベンジャー)の静脈内投与によって改善されるからである。加えて、フェニレフリン(0.1mg/100gr(ラット体重)/30分で静脈内注射されたα−1アドレナリン作動性受容体アゴニスト、図8)は血中の基礎グルタミン酸レベルを40%低下させ、一方、アドレナリン作動性アンタゴニストのプロプラノロールは血中グルタミン酸レベルに対する影響を事実上何ら有していなかった(図3A〜図3Cおよび図4A〜図4C)。そのうえ、メタプロロール(β1アドレナリン作動性受容体アンタゴニスト)はインビトロでのラットの血中グルタミン酸を40%低下させた(図7A〜図7B)。これらの結果は、異なるストレス経路が血中グルタミン酸レベルに対する異なる作用(および対照的でさえある作用、例えば、β1およびβ2)を有しており、従って、ストレス経路の適切なアゴニストおよびアンタゴニストを、血中グルタミン酸レベルを調節するために使用することができ、また、そのようなものとして、脳の高い細胞外グルタミン酸レベルによって特徴づけられる臨床的状態の処置のために使用することができることを示している。
【0078】
従って、本発明の1つの態様によれば、脳の細胞外グルタミン酸レベルを低下させる方法が提供される。
【0079】
該方法は、ストレスホルモンの活性を調節することができ、それにより血中グルタミン酸レベルを低下させることができる薬剤をその必要性のある対象に投与し、それにより脳の細胞外グルタミン酸レベルを低下させることによって行う。
【0080】
本発明による好ましい個々の対象は哺乳動物であり、好ましくはヒト対象である。
【0081】
本明細書中で使用される表現「その必要性のある対象」は、異常に高い脳内グルタミン酸レベルにさらされる対象、または、異常に高い脳内グルタミン酸レベルにさらされ得る対象を示す。
【0082】
本明細書中で使用される「高い脳内グルタミン酸レベル」は、1μMの安静時の値を越える濃度(例えば、5μM〜100μM)を示す。
【0083】
脳内グルタミン酸レベルを測定する様々な方法がこの分野では広く知られており、本明細書中下記において、また、下記の実施例の節においてさらに記載される。
【0084】
ストレスホルモンの活性を調節することができる薬剤は、ストレスホルモンの活性をアップレギュレーションすることができ、それにより血中グルタミン酸レベルを低下させることができる薬剤(アゴニスト)であり得る。
【0085】
代替として、ストレスホルモンの活性を調節することができる薬剤は、ストレスホルモンの活性をダウンレギュレーションすることができ、それにより血中グルタミン酸レベルを低下させることができる薬剤(例えば、アンタゴニスト)であり得る。
【0086】
例えば、ストレスホルモンの活性を調節することができる薬剤はストレスホルモンアゴニスト(合成物または天然物、例えば、α1またはα2またはβ1のアドレナリン作動性受容体アゴニスト)またはその下流側エフェクターである。代替として、そのような薬剤は天然または合成のストレスホルモンアンタゴニスト(例えば、β1アドレナリン作動性受容体アンタゴニスト)であり得る。
【0087】
本明細書中で使用される表現「ストレスホルモン」は、ストレス後に分泌されるホルモンを示す。ストレスでは、エピネフリンおよびノルエピネフリンの分泌を伴う交感神経・副腎髄質系と、コルチゾールの分泌を伴う視床下部・下垂体・副腎(HPA)系との2つの系の活性化が伴う。後者の系において、ストレスホルモンおよびエフェクター系には、とりわけ、コルチコトロピン放出ホルモン(CRH)、ACTHについての一次分泌促進物質、および、ACTHの放出を調節するアルギニンバソプレッシン(AVP)が含まれる。ACTHが副腎皮質においてその受容体に結合することにより、グルココルチコイド(例えば、コルチゾールおよびコルチコステロンなど)の放出が引き起こされる。
【0088】
本発明に従って調節され得るストレスホルモンの様々な例が下記の表1に列挙される。



【0089】
血中グルタミン酸レベルを低下させることができる好ましいストレスホルモンを選択する様々な方法が、本明細書中下記において、また、下記の実施例の節においてさらに記載される。一般に、これらの方法では、この分野では広く知られ、また、下記の実施例の節(実験手順を参照のこと)において例示される生化学的アッセイ、免疫学的アッセイおよび分光化学的アッセイが伴い得る。
【0090】
図4A〜図4Cに示されるように、オキサロ酢酸(OxAc)の投与は、(外傷性脳傷害後の)ストレスによって引き起こされる血中Gluレベルの低下よりも大きい(相乗的な)血中Gluレベルの低下を引き起こした。
【0091】
従って、本発明のこの態様の好ましい実施形態によれば、この方法はさらに、血中グルタミン酸レベルを低下させることができる別の薬剤を、ストレスホルモンを投与する前に、ストレスホルモンを投与するのと同時に、またはストレスホルモンを投与した後に投与することを含む。
【0092】
好ましくは、同時投与は、血中グルタミン酸の低下に対する相乗的作用を有することが予想される。血中グルタミン酸を低下させる好ましいレベルは50%である。
【0093】
血中グルタミン酸を本発明のこの態様に従って低下させることができる薬剤には、任意のグルタミン酸修飾酵素および/またはその補因子が含まれる。
【0094】
本明細書中で使用される「グルタミン酸修飾酵素」は、グルタミン酸を基質として利用し、グルタミン酸の反応生成物を生じさせる酵素である。グルタミン酸修飾酵素は、本明細書中下記においてさらに記載されるように、天然に存在する酵素、または、改善された特徴(例えば、修飾グルタミン酸に対する親和性よりも大きいグルタミン酸に対する親和性、生理学的条件下での安定性、溶解性、高まったエナンチオ選択性、および、増大した熱安定性など)を得るために改変されている酵素であり得る。
【0095】
数多くのグルタミン酸修飾酵素がこの分野では広く知られている。例えば、トランスアミナーゼ、これはアミノ酸代謝において中心的な割を果たしており、一般には、α−アミノ基を様々なアミノ酸からα−ケトグルタル酸に移す。
【0096】
トランスアミナーゼの例には、グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ、グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ、アセチルオルニチントランスアミナーゼ、オルニチンオキソ酸トランスアミナーゼ、スクシニルジアミノピメリン酸トランスアミナーゼ、4−アミノ酪酸トランスアミナーゼ、アラニントランスアミナーゼ、(s)−3−アミノ−2−メチルプロピオン酸トランスアミナーゼ、4−ヒドロキシグルタミン酸トランスアミナーゼ、ジヨードチロシントランスアミナーゼ、甲状腺ホルモントランスアミナーゼ、トリプトファントランスアミナーゼ、ジアミントランスアミナーゼ、システイントランスアミナーゼ、L−リシン6−トランスアミナーゼ、ヒスチジントランスアミナーゼ、2−アミノアジピン酸トランスアミナーゼ、グリシントランスアミナーゼ、分枝鎖アミノ酸トランスアミナーゼ、5−アミノ吉草酸トランスアミナーゼ、ジヒドロキシフェニルアラニントランスアミナーゼ、チロシントランスアミナーゼ、ホスホセリントランスアミナーゼ、タウリントランスアミナーゼ、芳香族アミノ酸トランスアミナーゼ、芳香族アミノ酸グリオキシル酸トランスアミナーゼ、ロイシントランスアミナーゼ、2−アミノヘキサン酸トランスアミナーゼ、オルニチン(リシン)トランスアミナーゼ、キヌレニンオキソグルタル酸トランスアミナーゼ、D−4−ヒドロキシフェニルグリシントランスアミナーゼ、システイン共役トランスアミナーゼ、2,5−ジアミノ吉草酸トランスアミナーゼ、ヒスチジノールリン酸トランスアミナーゼ、ジアミノ酪酸−2−オキソグルタル酸トランスアミナーゼ、UDP−2−アセトアミド−4−アミノ−2,4,6−トリデオキシグルコーストランスアミナーゼおよびアスパラギン酸トランスアミナーゼが含まれるが、これらに限定されない。
【0097】
グルタミン酸修飾酵素の別の例には、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(アンモニウムイオンを酸化的脱アミノ化によってグルタミン酸から生じさせる)、デカルボキシラーゼ(例えば、グルタミン酸デカルボキシラーゼ)、リガーゼ(例えば、グルタミン酸エチルアミンリガーゼ、グルタミン酸システインリガーゼ)、トランスフェラーゼ(例えば、グルタミン酸N−アセチルトランスフェラーゼおよびN2−アセチル−L−オルニチン、アデニリルトランスフェラーゼ)、アミノムターゼ(例えば、グルタミン酸−1−セミアルデヒド2,1−アミノムターゼ)およびグルタミン酸ラセマーゼが含まれるが、これらに限定されない[GlavasおよびTanner(2001)、Biochemistry、40(21):6199〜204]。
【0098】
人工的に改変された酵素もまた、本発明のこの態様に従って使用され得ることが理解される。
【0099】
酵素の改変を、この分野で知られている、タンパク質の方向づけられた数多くの進化技術を使用して行うことができる[総説については、KuchnerおよびArnold(1997)、TIBTECH、15:523〜530を参照のこと]。
【0100】
典型的には、方向づけられた酵素進化は、変異遺伝子のライブラリーを作製することにより始まる。所望される特性または1組の特性に関して改善を示す遺伝子産物が選抜またはスクリーニングによって特定され、そのような酵素をコードする遺伝子が、有益な変異を蓄積するために、変異およびスクリーニングのさらなるサイクルに供される。この進化では、それぞれの世代で観測される進展に依存して、数世代または多くの世代が必要とされ得る。
【0101】
好ましくは、成功する方向づけられた進化のためには、いくつかの要件が満たされる;好適な微生物宿主における酵素の機能的発現;所望される特性に対して高感度なスクリーニング(または選抜)が利用できること;および、実行可能な進化戦略の特定。
【0102】
本発明のこの態様による方向づけられた酵素進化において使用することができる変異誘発方法の例には、UV照射、化学的変異誘発、有毒ヌクレオチド、突然変異誘発株[Liao(1986)、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.83、576〜80]、誤りを起こしやすいPCR[Chen(1993)、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:5618〜5622]、DNAシャッフリング[Stemmer(1994)、Nature、370:389〜91]、カセット[Strausberg(1995)、Biotechnology、13:669〜73]、および、これらの組合せ[Moore(1996)、Nat.Biotechnol.14:458〜467;Moore(1997)、J.Mol.Biol.272:336〜347]が含まれるが、これらに限定されない。
【0103】
スクリーニングおよび選抜の様々な方法がこの分野では広く知られている[総説については、ZhaoおよびArnold(1997)、Curr.Opin.Struct.Biol.7:480〜485;HilvertおよびKast(1997)、Curr.Opin.Struct.Biol.7:470〜479を参照のこと]。典型的には、様々な選抜が、変化体のより大きいライブラリーを調べるために注目されており、しかし、宿主生物の生存にとって重要でない酵素について考案することは困難である。なおさらに、生物は、課された選択圧を予想外の機構によって回避することがある。それほど厳しくない機能的相補性が、生物学的活性を保持する変化体を、比較的大きい変異誘発率を使用して作製されたライブラリーにおいて特定する際に有用であり得る[Suzuki(1996)、Mol.Diversity、2:111〜118;Shafikhani(1977)、Biol.Techniques、23:304〜310;ZhaoおよびArnold(1997)、Curr.Opin.Struct.7:480〜485]。
【0104】
本明細書中上記で記載されたように、本発明のこの態様による薬剤には、グルタミン酸修飾酵素の活性(Vmax)を加速することができる、グルタミン酸修飾酵素の1つまたは複数の補因子が含まれ得る。これらは、内因性のグルタミン酸修飾酵素の活性を高めるために投与することができ、または、(本明細書中上記で記載される)グルタミン酸修飾酵素と併せて投与することができる。
【0105】
グルタミン酸修飾酵素の補因子には、オキサロアセテート(オキサロ酢酸)、ピルベート(ピルビン酸)、NAD、NADP、2−オキソヘキサン二酸、2−オキソ−3−スルホプロピオネート(2−オキソ−3−スルホプロピオン酸)、2−オキソ−3−スルフィノプロピオン酸、2−オキソ−3−フェニルプロピオン酸、3−インドール−2−オキソプロピオン酸、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソプロピオン酸、4−メチルスルホニル−2−オキソ酪酸、3−ヒドロキシ−2−オキソプロピオン酸、5−オキソペンタノエート(5−オキソペンタン酸)、6−オキソヘキサノエート(6−オキソヘキサン酸)、グリオキサレート(グリオキサル酸)、4−オキソブタノエート(4−オキソブタン酸)、α−ケトイソカプロエート(α−ケトイソカプロン酸)、α−ケトイソバレレート(α−ケトイソ吉草酸)、α−ケト−β−メチルバレレート(α−ケト−β−メチル吉草酸)、コハク酸セミアルデヒド(4−オキソブチレート[4−オキソ酪酸])、3−オキソイソブタノエート(3−オキソイソブタン酸)、ピリドキサールリン酸、およびそれらの人工的に改変された誘導体(例えば、エステル)が含まれるが、これらに限定されない。
【0106】
修飾グルタミン酸(すなわち、グルタミン酸の反応生成物)はグルタミン酸に可逆的に改変され得る(すなわち、相互変換され得る)ので、本発明のこの態様によれば、薬剤には、好ましくは、修飾グルタミン酸をグルタミン酸に変換することができず、それによりグルタミン酸の断続的な代謝を保証することができる修飾グルタミン酸変換酵素が含まれる。
【0107】
修飾グルタミン酸変換酵素の例には、α−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0108】
修飾グルタミン酸変換酵素にはまた、グルタミン酸についての親和性よりも低いグルタミン酸反応生成物についての親和性を有するように人工的に改変されるグルタミン酸修飾酵素が含まれる。例えば、大腸菌GOT(GenBank受託番号D90731.1)は、約8mMのグルタミン酸についての親和性、および、0.2mMの2−ケトグルタル酸についての親和性によって特徴づけられる。そのような親和性によって特徴づけられるヒト酵素またはヒト化酵素が、好ましくは、例えば、Doyle他によってBiochem J.1990、270(3):651〜7に記載されるように本発明のこの態様に従って使用される。
【0109】
必要な場合には、修飾グルタミン酸変換酵素の補因子が本発明のこの態様による薬剤に含まれ得る。修飾グルタミン酸変換酵素の補因子の例には、リポ酸およびその前駆体、チアミンピロリン酸およびその前駆体、ピリドキサールリン酸およびその前駆体などが含まれるが、これらに限定されない。
【0110】
本発明のこの態様による薬剤にはまた、グルタミン酸合成酵素(例えば、リン酸により活性化されるグルタミナーゼ)の阻害剤が含まれ得ることが理解される。グルタミン酸生成酵素の数多くの阻害剤がこの分野では広く知られている。例には、分枝鎖アミノトランスフェラーゼの活性を調節することが示されているガバペンチン[Taylor(1997)、Rev.Neurol.153(1):S39〜45]、高用量(すなわち、4g/日〜6g/日)でのアスピリン、グルタミン酸の興奮毒性に対する神経保護薬物[Gomes(1998)、Med.J.India、11:14〜17]が含まれるが、これらに限定されない。他の阻害剤を、公的に入手可能なBRENDA(包括的酵素情報システム[www.brenda.uni−koeln.de/])において特定することができる。例には、γ−アセチレンGABA、ギャバクリン、L−カナリン、2−アミノ−4−(アミノオキシ)−n−ブタン酸、3−クロロ−4−アミノブタノエート(3−クロロ−4−アミノブタン酸)、3−フェニル−4−アミノブタノエート(3−フェニル−4−アミノブタン酸)、イソニコチン酸ヒドラジド;(S)−3−アミノ−2−メチルプロパノエート((S)−3−アミノ−2−メチルプロパン酸)、フェニルヒドラジン;4−フルオロフェニルアラニン、アジペート(アジピン酸)、アザライン酸、カプロエート(カプロン酸)、3−メチルグルタレート(3−メチルグルタル酸)、ジメチルグルタレート(ジメチルグルタル酸)、ジエチルグルタレート(ジエチルグルタル酸)、ピメレート(ピメリン酸)、2−オキソグルタメート(2−オキソグルタミン酸)、3−メチル−2−ベンゾチアゾロンヒドラゾン塩酸塩、フェニルピルベート(フェニルピルビン酸)、4−ヒドロキシフェニルピルベート(4−ヒドロキシフェニルピルビン酸)、プレフェネート(プレフェン酸)およびインドールピルベート(インドールピルビン酸)が含まれるが、これらに限定されない。
【0111】
本明細書中上記で記載される成分のそれぞれが本発明の薬剤を含み得るが、最適な血中グルタミン酸低下活性のために、薬剤は上記成分(すなわち、グルタミン酸修飾酵素、その補因子、修飾グルタミン酸変換酵素およびその補因子)の組合せを含み得ることが理解される。
【0112】
脳から血液への最適なグルタミン酸流出のために、好ましくは、血液細胞のグルタミン酸レベルではなく、むしろ、血漿のグルタミン酸レベルを低下させることができる薬剤が選択される。
【0113】
従って、本発明のこの態様の好ましい実施形態によれば、薬剤には、オキサロ酢酸およびピルビン酸が含まれる。好ましくは、薬剤は、1g/kg×時間を超えない濃度で投与される。
【0114】
本発明のこの態様の現時点で好ましい実施形態によれば、薬剤には、 が含まれる。
【0115】
場合により、投与される薬剤は、治療的効果を増大させるために、または、望ましくない副作用を軽減するために改変される。例えば、オキサロ酢酸ジエチルエステルの投与はオキサロ酢酸単独の投与よりも好都合である。これは、オキサロ酢酸はその治療的能力を比較的高い濃度で発揮し、また、安全レベルを越える許容され得ない電解質負荷をもたらす2:1の化学量論的比率での水酸化ナトリウムによるそのカルボキシル成分の完全な滴定を必要とするからである。
【0116】
本発明の薬剤(すなわち、ストレスホルモン、および、必要な場合には、本明細書中上記で記載される他の薬剤、例えば、オキサロ酢酸)は、本発明の医薬組成物に関して本明細書中下記においてさらに記載されるいくつかの好適な投与様式のいずれか1つを使用して対象に投与することができる。
【0117】
本発明の方法によって利用される薬剤は個々の対象にそれ自体で投与することができ、または、薬剤が医薬的に許容され得る担体と混合される医薬組成物の一部として個々の対象に投与することができる。
【0118】
本明細書中で使用される「医薬組成物」は、本明細書中に記載される有効成分の1つまたは複数と、他の成分(例えば、生理学的に好適な担体および賦形剤、浸透剤など)との調製物を示す。医薬組成物の目的は、生物に対する化合物の投与を容易にすることである。
【0119】
本明細書中において、用語「有効成分」は、生物学的効果(例えば、グルタミン酸修飾酵素および/またはその補因子)を担う調製物を示す。
【0120】
以降、交換可能に使用されうる表現「生理学的に許容され得る担体」および表現「医薬的に許容され得る担体」は、生物に対する著しい刺激を生じさせず、投与された化合物の生物学的な活性および性質を阻害しない担体または希釈剤を示す。アジュバントはこれらの表現に含まれる。医薬的に許容され得る担体中に含まれる成分の1つは、例えばポリエチレングリコール(PEG)、有機媒体および水性媒体の両方における広範囲の溶解度特性を有している生体適合性ポリマーであることができる(Mutter他(1979))。
【0121】
本明細書中において、用語「賦形剤」は、有効成分の投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される不活性な物質を示す。賦形剤の非限定的な例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖およびデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油およびポリエチレングリコールが含まれる。
【0122】
薬物の配合および投与のための様々な技術が「Remington’s Pharmaceutical Sciences」(Mack Publishing Co.、Easton、PA、最新版)に見出され得る(これは参考として本明細書中に組み込まれる)。
【0123】
本発明の医薬組成物の好適な投与経路には、例えば、経口送達、直腸送達、経粘膜送達、特に経鼻送達、腸管送達または非経口送達(これには、筋肉内注射、皮下注射および髄内注射、ならびに、クモ膜下注射、直接的な脳室内注射、静脈内注射、腹腔内注射、鼻内注射または眼内注射が含まれる)が含まれ得る。
【0124】
あるいは、例えば、患者の身体の特定領域に直接的に調製物の注射をすることによって、全身的な方法よりも局所的に調製物を投与しうる。
【0125】
本発明の医薬組成物は、この分野で十分に知られている様々なプロセスによって、例えば、混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、研和、乳化、カプセル化、包括化または凍結乾燥の従来のプロセスによって製造することができる。
【0126】
本発明に従って使用される医薬組成物は、医薬品として使用され得る調製物への有効成分の加工を容易にする賦形剤および補助剤を含む1つまたは複数の生理学的に許容され得る担体を使用して従来の様式で配合することできる。適正な配合は、選ばれた投与経路に依存する。
【0127】
注射の場合、本発明の有効成分は、水溶液において、好ましくは生理学的に適合し得る緩衝液(例えば、ハンクス溶液、リンゲル溶液、または生理的食塩緩衝液など)において配合することができる。経粘膜投与の場合、浸透されるバリヤーに対して適切な浸透剤が配合において使用される。そのような浸透剤はこの分野では一般に知られている。
【0128】
経口投与の場合、化合物は、活性化合物をこの分野で広く知られている医薬的に許容され得る担体と組み合わせることによって容易に配合され得る。そのような担体は、本発明の化合物が、患者によって経口摂取される錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー剤および懸濁物などとして配合されることを可能にする。経口使用される薬理学的調製物は、固体の賦形剤を使用し、得られた混合物を場合により粉砕し、錠剤または糖衣錠コアを得るために、所望する場合には好適な補助剤を添加した後、顆粒の混合物を加工して、作製することができる。好適な賦形剤には、特に、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖などの充填剤;セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボメチルセルロースなど;および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などの生理学的に許容され得るポリマーがある。所望する場合には、架橋されたポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩(例えば、アルギン酸ナトリウムなど)などの崩壊剤を加えることができる。
【0129】
糖衣錠コアには、好適なコーティングが施される。この目的のために、高濃度の糖溶液を使用することができ、この場合、糖溶液は、場合により、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液および好適な有機溶媒または溶媒混合物を含有し得る。色素または顔料を、活性化合物の量を明らかにするために、または活性化合物の量の種々の組合せを特徴づけるために、錠剤または糖衣錠コーティングに加えることができる。
【0130】
経口使用され得る医薬組成物には、ゼラチンから作製されたプッシュ・フィット型カプセル、ならびに、ゼラチンおよび可塑剤(例えば、グリセロールまたはソルビトールなど)から作製された軟いシールされたカプセルが含まれる。プッシュ・フィット型カプセルは、充填剤(例えば、ラクトースなど)、結合剤(例えば、デンプンなど)、滑剤(例えば、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなど)および場合により安定化剤との混合で有効成分を含有することができる。軟カプセルでは、有効成分を好適な液体(例えば、脂肪油、流動パラフィンまたは液状のポリエチレングリコールなど)に溶解または懸濁させることができる。また、安定化剤を加えることができる。経口投与される配合物はすべて、選ばれた投与経路について好適な投薬形態でなければならない。
【0131】
口内投与の場合、組成物は、従来の様式で配合された錠剤またはトローチの形態を取ることができる。
【0132】
鼻吸入による投与の場合、本発明による使用のための有効成分は、好適な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタンまたは二酸化炭素)の使用により加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレー提示物の形態で都合よく送達される。加圧されたエアロゾルの場合、投薬量単位が、計量された量を送達するためのバルブを備えることによって決定され得る。ディスペンサーにおいて使用される、例えば、ゼラチン製のカプセルおよびカートリッジで、化合物および好適な粉末基剤(例えば、ラクトースまたはデンプンなど)の粉末混合物を含有するカプセルおよびカートリッジを配合することができる。
【0133】
本明細書中に記載される調製物は、例えば、ボーラス注射または連続注入による非経口投与のために配合することができる。注射用配合物は、場合により保存剤が添加された、例えば、アンプルまたは多回用量容器における単位投薬形態で提供され得る。組成物は、油性ビヒクルまたは水性ビヒクルにおける懸濁物または溶液剤またはエマルションにすることができ、また、懸濁化剤、安定化剤および/または分散化剤などの配合剤を含有することができる。
【0134】
非経口投与される医薬組成物には、水溶性形態での活性調製物の水溶液が含まれる。また、有効成分の懸濁物を適切な油性または水性の注射用懸濁物として調製することができる。好適な親油性の溶媒またはビヒクルには、脂肪油(例えば、ゴマ油など)、または合成脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチルなど)、トリグリセリドまたはリポソームが含まれる。水性の注射用懸濁物は、懸濁物の粘度を増大させる物質、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールまたはデキストランなどを含有することができる。場合により、懸濁物はまた、高濃度溶液の調製を可能にするために有効成分の溶解性を増大させる好適な安定化剤または薬剤を含有することができる。
【0135】
あるいは、有効成分は、好適なビヒクル(例えば、無菌の、パイロジェン非含有水溶液)を使用前に用いて構成される粉末形態にすることができる。
【0136】
本発明の調製物はまた、例えば、カカオ脂または他のグリセリドなどの従来の座薬基剤を使用して、座薬または停留浣腸剤などの直腸用組成物に配合することができる。
【0137】
本発明に関連した使用のために好適な医薬組成物には、有効成分が、その意図された目的を達成するために効果的な量で含有される組成物が含まれる。より具体的には、治療効果的な量は、治療されている対象の病状を予防、緩和あるいは改善するために効果的であるか、または、治療されている対象の生存を延ばすために効果的である、有効成分の量を意味する。
【0138】
治療効果的な量の決定は、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0139】
本発明の治療方法によって使用される任意の医薬組成物について、治療効果的な量または用量は、最初はインビトロでアッセイから推定することができる。例えば、用量は動物モデルにおいて配合することが可能であり、そのような情報は、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するために使用することができる。
【0140】
本明細書中に記載される有効成分の毒性および治療効力は、細胞培養または実験動物における、インビトロで標準的な薬学的手法によって、明らかにすることができる。これらのインビトロでの細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトにおける使用に対する投薬量範囲を決定するために使用することができる。投薬量は、用いられる投薬形態および利用される投与経路に依存して変化し得る。正確な配合、投与経路および投薬量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選ぶことができる(Fingl他、(1975)「The Pharmacological Basis of Therapeutics」,Ch.1p.1参照)。
【0141】
下記の実施例の節は、好適な投薬に関するさらなる指標を提供する。
【0142】
処置される状態の重篤度および応答性に依存して、投薬は、単回または複数回投与で行うことができ、この場合、処置期間は、数日から数週間まで、または治療が達成されるまで、または疾患状態の軽減が達成されるまで続く。
【0143】
投与される医薬組成物の量は、当然のことではあるが、処置されている患者、苦痛の重篤度、投与様式、処方医の判断などに依存する。
【0144】
例えば、投薬量を、脳の細胞外グルタミン酸により影響されることが知られている脳圧を測定することによって決定することができ(Poon WS、Ng SC、Chan MT、Leung CH、Lam JM、脳の灌流圧処置が失敗した、人工呼吸器につながれる頭部傷害患者における神経化学的変化、Acta Neurochir Suppl.2002、81:335〜8;Chan TV、Ng SC、Lam JM、Poon WS、Gin T、重症頭部傷害の患者における脳内微量透析を使用する自己調節のモニタリング、Acta Neurochir Suppl.2005、95:113〜6)、または、微量透析によって決定することができる。代替として、グルタミン酸レベルを、浸襲的手段、ならびに、非浸襲的手段(例えば、磁気共鳴分光法)を使用してCSFにおいて求めることができる(Pan JW、Mason GF、Pohost GM、Hetherington HP、4.1Tでの水抑制J強化コヒーレンス移動によるヒト脳内グルタミン酸の分光的画像化、Magn.Reson.Med.1996、36、7〜12)。
【0145】
典型的には、本発明の薬剤の投与は、神経学的状態のタイプに依存して、実行可能である可能な限り迅速に行われ、また、脳内グルタミン酸レベルに従って必要に応じて繰り返される。例えば、外傷性脳傷害および脳卒中では、脳液における高いグルタミン酸レベルは、依然として進行しているグルタミン酸媒介による神経病理学的作用の徴候である。これは、グルタミン酸の進行しつつある二次的な上昇、または、悪性の脳卒中に対応する。密接な相関関係が、脳における長期間(数時間〜数日)にわたる高いグルタミン酸レベルと、神経学的悪化との間において存在することが示されている。従って、本発明では、神経学的状態の最初の症状が現れたときの薬剤の投与、または、繰り返す場合には、その後の段階での薬剤の投与のいずれもが想定される。
【0146】
アドレナリンの典型的な濃度は0.2mg〜0.5mgであり、イソプロテレノールは200μg/mlであり、メタプロロールは5mg/mlであり、フェニレフリンは3mg/mlである(GoodmanおよびGilman、The paharmacological basis of therapeutics)。
【0147】
適合し得る医薬用担体に配合される本発明の調製物を含む組成物もまた、適応状態を処置するために調製され、適切な容器に入れられ、標識され得る。
【0148】
例えば、ストレスホルモンを1つの容器に入れることができ、上記薬剤の少なくとも1つ(オキサロ酢酸)を別の容器に入れることができる。代替として、これら2つを1つの容器に入れることができる。
【0149】
本発明の組成物は、所望されるならば、有効成分を含有する1つまたは複数の単位投薬形態物を含有し得るパックまたはディスペンサーデバイス(例えば、FDA承認キットなど)で提供され得る。パックは、例えば、金属ホイルまたはプラスチックホイルを含むことができる(例えば、ブリスターパックなど)。パックまたはディスペンサーデバイスには、投与のための説明書が付随し得る。パックまたはディスペンサーデバイスはまた、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府当局によって定められた形式で、容器に関連した通知によって適応させることがあり、この場合、そのような通知は、組成物の形態、あるいはヒトまたは動物への投与の当局による承認を反映する。そのような通知は、例えば、処方薬物について米国食品医薬品局によって承認されたラベル書きであり得るか、または、承認された製品添付文書であり得る。
【0150】
本発明の薬剤は、脳の細胞外グルタミン酸の高いレベルに関連する様々な臨床的状態(例えば、脳低酸素症、脳卒中、周産期脳傷害、外傷性脳傷害、細菌性髄膜炎、クモ膜下出血、てんかん、急性肝不全、緑内障、筋萎縮性側索硬化症、HIV、認知症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、痙攣性状態、開心術、動脈瘤手術、冠状動脈バイパス手術およびアルツハイマー病など)を処置すること(すなわち、脳の細胞外グルタミン酸の高い濃度を低下させること、または、抑制すること、または、実質的に下げること)において利用することができる。
【0151】
本明細書中上記に記載される早く作用する医薬組成物および投与経路は、好ましくは、脳低酸素症、脳卒中、周産期脳傷害、外傷性脳傷害、細菌性髄膜炎、クモ膜下出血、てんかん、急性肝不全、開心術、動脈瘤手術、冠状動脈バイパス手術を処置する際に使用される。連続投与が必要とされるとき、枯渇器官における内因性の産生が生じないならば、連続した薬物放出が好ましい。
【0152】
身体から単離される血液細胞からグルタミン酸を除き、その血液細胞を身体に戻し、それにより、脳の細胞外グルタミン酸レベルにおける低下を誘導することができる。
【0153】
従って、本発明の別の態様によれば、脳の細胞外グルタミン酸レベルを低下させるさらなる方法が提供される。
【0154】
本発明のこの態様による方法は、グルタミン酸を枯渇させた血液細胞は、宿主対象に輸血されたとき、血漿のグルタミン酸を元の細胞/血漿のグルタミン酸濃度比(すなわち、実質的には4:1)に向かって迅速にくみ出すことができ、それにより、脳から血液へのグルタミン酸流出(すなわち、脳から血漿へのグルタミン酸流出)を促進させ、脳の細胞外グルタミン酸濃度を低下させることができるという理論的根拠に基づく。
【0155】
本発明のこの態様によるこの方法は、対象に由来する血液サンプルをグルタミン酸低下剤(例えば、本明細書中上記に記載される薬剤など)により処理し、細胞を血液サンプルから単離し、その細胞を対象に戻すことによって行われる。
【0156】
好ましくは、本発明のこの態様による血液サンプルは、さらなる自家輸血のために対象から得られる。このことは、輸血によって伝達され得る感染性疾患(例えば、肝炎など)の危険性を低下させる。
【0157】
同系ドナーから得られる一致している血液型(すなわち、一致している血液群)サンプルを同種輸血のために使用することができ、だが、異種ドナーから得られる一致していない血液型サンプルもまた、脱抗原化手法との併用で使用され得ることが理解される。赤血球表面の血液型エピトープの脱抗原化(すなわち、血清転換)のいくつかの方法がこの分野では知られており、例えば、米国特許第5731426号および同第5633130号などに開示される。
【0158】
血液サンプルは、(本明細書中上記において、また、さらには、下記の実施例の節の実施例14〜実施例15において記載されるように)グルタミン酸を枯渇させた血液細胞をそれにより得るために、本発明のストレスホルモン(および、必要な場合には、上記で記載されるような血中グルタミン酸レベルを低下させるための別の薬剤)と、血中グルタミン酸レベルを低下させるために好適な条件のもとで接触させられる。
【0159】
グルタミン酸を枯渇させた血液細胞は、その後、この分野では知られている周知の分離方法によって、例えば、遠心分離などによって血漿から分離される(実施例の節の実施例14を参照のこと)。
【0160】
グルタミン酸を枯渇させた細胞が得られると、その細胞は、好ましくは元の血液体積(すなわち、濃度)に達するために懸濁される。
【0161】
グルタミン酸を枯渇させた細胞の懸濁は、代用血液を使用して行われる。「代用血液」は、生理学的濃度での電解質、高分子膨張剤、緩衝化能を生理学的pHの範囲で有する生物学的緩衝剤、単純な栄養糖(1つまたは複数)、細胞膜を横断するカルシウムの流束の代わりをするために十分な濃度でのマグネシウムイオンの水溶液を含む血液体積増量剤を示す。代用血液にはまた、心臓麻痺剤(例えば、心細動を防止または停止させるために十分な濃度でのカリウムイオンなど)が含まれる。数多くの代用血液がこの分野では知られている。例には、Hespan(登録商標)(6%ヘタスターチ/0.9%塩化ナトリウム注射液[Dupont Pharmaceuticals、Wilmington、Del.])、Pentaspan(0.9%塩化ナトリウム注射液における10%ペンタスターチ[Dupont Pharmaceuticals、Wilmington、Del.])およびMacrodex(5%デキストロース注射液における6%デキストラン70、または、0.9%塩化ナトリウム注射液における6%デキストラン70[Pharmacia,Inc.Piscataway、N.J.])およびRheomacrodex(5%デキストロース注射液における10%デキストラン40、または、0.9%塩化ナトリウム注射液における10%デキストラン40[Pharmacia,Inc.Piscataway、N.J.])が含まれるが、これらに限定されない。これらの製造物は、特定のFDA承認された適応のために医療社会には知られており、Physician’s Desk Referenceと題される書物(これはMedical Economics Company Inc.によって毎年発行される)に広範囲に記載される。
【0162】
処置された血液サンプルは将来の使用のために貯蔵され得ることが理解される。しかしながら、この場合、無菌の保護的抗凝固剤(例えば、クエン酸・リン酸・デキストロース・アデニン(CPDA)抗凝固剤など)が好ましくは代用血液溶液に加えられる。グラム陰性抗生物質およびグラム陽性抗生物質もまた加えられる。その後、血液は無菌容器(例えば、パイロジェン非含有容器など)において4℃で貯蔵される。
【0163】
最後に、グルタミン酸を枯渇させた血液細胞の溶液が、脳の細胞外グルタミン酸レベルをそれにより低下させるために、無菌の水溶液として宿主対象に静脈内または血管内に輸血される。
【0164】
以前の研究は細胞外グルタミン酸に対する赤血球の相対的な不透過性を強調していることが理解される[Young(1980)、Proc.R.Soc.Lond.B.Biol.Sci.209:355〜75;Pico(1992)、Int.J.Biochem.Cell Biol.27(8):761〜5;およびCulliford(1995)、J.Physiol.489(Pt13):755〜65]。しかしながら、これらは不都合なグルタミン酸濃度勾配の存在下で行われた。
【0165】
従って、本発明は、グルタミン酸に対する赤血球透過性を示し、それにより、細胞内グルタミン酸の依然として不明な血液プールを説明するだけでなく、CSF/ISF中のグルタミン酸における迅速な低下が所望される緊急状態(例えば、脳卒中および頭部外傷など)において利用することができる血液交換戦略を提供する。
【0166】
上記の方法論は、現在利用可能なデバイス(例えば、インキュベーターおよび遠心分離器など)(さらなる詳細については実施例の節を参照のこと)、または、血液サンプルを対象から得ること、血液サンプルを上記で記載されるように処理すること、および、グルタミン酸を枯渇させた血液細胞を対象に戻すか、もしくは、処置を必要とする異なる個体に戻すことのために設計および構成される専用のデバイスを使用して行うことができる。
【0167】
そのようなデバイスには、好ましくは、血液入口、血液出口、および、血液を処理し、処理された血液細胞を回収するためのチャンバが含まれる。血液入口および血液出口の少なくとも一方が、対象の血管系にアクセスするためにデバイスから間隔を置いて配置されるコネクタを有する血流管に接続される。
【0168】
血液を個体対象から処理デバイスに向かわせ、その後、血液を個体対象に戻すための体外血液回路を提供する様々な血液処理デバイスがこの分野では広く知られている。そのような処理デバイスには、酵素または他の生物活性剤の固定床を有する装置の中を血流が流れることができる血液透析装置、プラスマフェレーシス装置および血液ろ過装置が含まれるが、これらに限定されない。
【0169】
本発明のさらなる目的、利点および新規な特徴が、限定であることが意図されない下記の実施例を検討したとき、当業者には明らかになる。加えて、本明細書中上記に描かれるような、また、下記の請求項の節において特許請求されるような本発明の様々な実施形態および態様のそれぞれは、実験的裏付けが下記の実施例において見出される。
【実施例】
【0170】
次に下記の実施例が参照されるが、下記の実施例は、上記の説明と一緒に、本発明を非限定様式で例示する。
【0171】
本願で使用される用語と、本発明で利用される実験方法には、分子生化学、微生物学および組み換えDNAの技法が広く含まれている。これらの技法は文献に詳細に説明されている。例えば以下の諸文献を参照されたい:「Molecular Cloning:A laboratory Manual」Sambrook他(1989);Ausubel,R.M.編「Current Protocols in Molecular Biology」I〜III巻(1994)、Ausubel他著;「Current Protocols in Molecular Biology」John Wiley and Sons,米国メリーランド州バルチモア(1989);Perbal著「A Practical Guide to Molecular Cloning」John Wiley & Sons,米国ニューヨーク(1988);Watson他、「Recombinant DNA」Scientific American Books、米国ニューヨーク;Birren他編「Genome Analysis:A Laboratory Manual Series」1〜4巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press、米国ニューヨーク(1998);米国特許の4666828号、4683202号、4801531号、5192659号および5272057号に記載される方法;Cellis,J.E.編「Cell Biology:A Laboratory Handbook」I〜III巻(1994);Coligan,J.E.編「Current Protocols in Immunology」I〜III巻(1994);Stites他編「Basic and Clinical Immunology」(第8版)、Appleton & Lange、米国コネティカット州ノーウォーク(1994);MishellとShiigi編「Selected Methods in Cellular Immunology」、W.H. Freeman and Co.、米国ニューヨーク(1980);また利用可能な免疫検定法は、例えば以下の特許と科学文献に広範囲にわたって記載されている:米国特許の3791932号、3839153号、3850752号、3850578号、3853987号、3867517号、3879262号、3901654号、3935074号、3984533号、3996345号、4034074号、4098876号、4879219号、5011771号および5281521号;Gait,M.J.編「Oligonucleotide Synthesis」(1984);Hames,B.D.およびHiggins S.J.編「Nucleic Acid Hybridization」(1985);Hames,B.D.およびHiggins S.J.編「Transcription and Translation」(1984);Freshney,R.I.編「Animal Cell Culture」(1986);「Immobilized Cells and Enzymes」IRL Press(1986);「A Practical Guide to Molecular Cloning」Perbal,B.著(1984)および「Methods in Enzymology」1〜317巻、Academic Press;「PCR Protocols:A Guide To Methods And Applications」、Academic Press、米国カリフォルニア州サンディエゴ(1990);Marshak他、「Strategies for Protein Purification and Characterization−A Laboratory Course Manual」、CSHL Press、(1996);なおこれらの文献類は、あたかも本願に完全に記載されているように援用するものである。その外の一般的な文献は、本明細書を通じて提供される。それらの文献に記載の方法は当業技術界で周知であると考えられ、読者の便宜のために提供される。
【0172】
材料および実験手順
動物の麻酔および安寧。実験をヘルシンキ宣言および東京宣言の勧告ならびに欧州共同体の実験動物使用のための指針に従って行った。実験はBen−Gurion大学(Negev)およびWeizmann Instituteの動物管理委員会によって承認された。体重が200g〜300gの自発呼吸しているオスのSprague Dawleyラットを100%酸素におけるイソフルラン(初期吸入濃度、2%)の混合物(1l/分)により麻酔した。直腸温度を、加熱パッドを使用して37℃で維持し、麻酔は、尾の反射がなくなったとき、手術のために十分であると見なした。尾静脈のカテーテル挿入を、輸液を可能にするためのBD Neoflon24gカテーテルを用いて行った。尾動脈のカテーテル挿入を、血液のサンプリングならびに血圧および心拍数の測定を可能にするために行った。血液サンプルを、pH、pO、pCO、HCOについて分析した。グルコースレベルをAccu−Chekセンサーコンフォートにより測定した。ブピバカイン(0.5%)による頭皮浸潤の後、頭皮を切開し、片側に折り返し、0.5Jの頭蓋衝撃を、以前の記載[19]のように、自由落下プレートの中心から突出するシリコーン被覆ロッドによって加えた。衝撃点は頭骨弓隆部上の中線より1mm〜2mm側方であった。外傷性脳傷害(TBI)の後、切開部を縫合した。TBI後、すべてのラットを、麻酔から回復させるために、また、TBI後1時間で評価されるNSSの評価の一部としての立ち直り反射および回復時間を調べるためにその左側で横にした。
【0173】
二重プローブ微量透析。腹腔内ウレタン(0.125g/0.2ml/100g)による麻酔の後、ラットに、線条体に挿入される2つの微量透析プローブを埋め込んだ。人工CSFを、2つのプローブを経由して60分の継続期間にわたって2μl/分の速度で灌流した。その後、グルタミン酸の1M溶液を、送達プローブを経由して実験の全継続期間にわたって2μl/分の速度で灌流し、一方、人工CSFを、送達プローブから1mmのところに位置する回収プローブを経由して2μl/分の同じ速度で灌流した。40μlのアリコートを回収プローブから20分毎に集めた。回収されたGluを、分光蛍光分析アッセイ(下記参照)を使用して測定した。
【0174】
Glu分光蛍光分析アッセイ。Glu濃度を、GrahamおよびAprisonの蛍光測定法[35]を使用して測定した。微量透析液からの20μlのアリコートを、15UのGluデヒドロゲナーゼを0.2mMのNAD、0.3Mのグリシン、0.25Mのヒドラジン水和物に含有し、1NのHSOによりpH8.6に調節された480μlのHG緩衝液に加えた。室温で30分間〜45分間インキュベーションした後、蛍光を350nmでの励起により460nmにおいて測定した。Glu標準曲線を0〜6μMの範囲の濃度により確立した。すべての測定を少なくとも二連で行った。結果が平均±SDとして表される。
【0175】
血中/血漿Gluの測定。全血(200μlのアリコート)を、等体積の氷冷した1Mの過塩素酸(PCA)を加え、その後、10000×gにおいて4℃で10分間遠心分離することによって徐タンパク処理した。ペレットを捨て、上清を集め、2MのKCOによりpH7.2に調節し、必要ならば、上記アッセイを使用するその後の分析のために−80℃で保存した。
【0176】
脳の水分含有量。脳の半球を一部の群ではTBI後120分で取り出し、一方、他の群では、およそ50mgの脳組織サンプルを、左半球における肉眼的損傷の領域に直に接する場所、および、右半球における対応する領域からTBI後24時間で切除した。これらの組織サンプルを水分含有量の測定のために使用した。水分含有量を、湿重量(WW)と、乾燥重量(DW)との差から求めた。具体的には、新鮮な脳組織サンプルのWWを得た後、サンプルを乾燥オーブンにおいて120℃で24時間乾燥し、再び重量測定して、DWを得た。組織の水分含有量(%)を(WW−DW)×100/WWとして計算した。
【0177】
神経学的重症度スコア。NSSが、何も知らされていない観測者によって決定された[19]。ポイントが運動機能および行動の変化について割り当てられ、その結果、25の最大スコアが重症の神経学的機能不全を表し、一方、0のスコアが無傷の神経学的状態を示す。具体的には、下記のことが評価された:円から出ることができるか(3ポイントの尺度)、広い表面での歩行(3ポイントの尺度)、狭い表面での歩行(4ポイントの尺度)、狭い表面で留まる努力(2ポイントの尺度)、反射(5ポイントの尺度)、探索行動(2ポイントの尺度)、梁での歩行(3ポイントの尺度)および梁でのバランス(3ポイントの尺度)。
【0178】
実験設計。NSSの1時間での評価の後、15分後に、生理食塩水、あるいは、1Mオキサロ酢酸、1Mグルタミン酸またはそれらの混合物のいずれかの溶液の30マイクロリットル/分/100gの速度での30分の長さの静脈内投与が続いた。処置後、動物をそれらのケージに戻し、動物には食料および水を自由に取らせた。24時間および48時間においてNSSの評価を繰り返した。
【0179】
統計学的分析。先験的な仮説は、血液サンプルにおけるGlu濃度がコントロールに対して処置群については異なるということであった。従って、この比較をt検定により行った(差は、p<0.05であるとき、有意であると見なされた)。
【0180】
異なる群の間におけるNSSの比較の有意性を、ボンフェローニ事後検定を伴う分散分析(ANOVA)を使用して評価した。受け入れられる有意性の最小レベルはp<0.05であった。
【0181】
データは平均±SDまたはSEM(n>8のとき)として示される。差は、p<0.05であるとき、有意であると見なされた。
【0182】
実施例1
脳の過度なGluレベルを脳から血液へのGlu流出によって調節する
脳の実質間質液(ISF)から血液へのGlu流出を最初に評価した[10]。二重プローブの脳微量透析を使用し、麻酔ラットの線条体に挿入された送達プローブを経由してGlu溶液を灌流し、一方、同時に、人工CSFを、1mmの距離に位置する回収プローブを経由して灌流した。二重プローブ微量透析の研究では、3%〜6%の送達プローブからの溶質の組織送達[12]、および、回収プローブにおける5%の溶質回収[13]が記載される。Gluが第1のプローブから流出するにつれ、Gluが脳の実質組織を通って拡散し、実質組織において、Gluが、グリア細胞、ニューロンおよび毛細血管内皮細胞に取り込まれる。しかしながら、Gluが送達プローブから漏れ続け、輸送体を飽和させるので、その開始濃度が(0.5Mを越えて)十分に高いならば、Gluが最終的には回収プローブに到達する。
【0183】
図1Aは、Gluの直線的に増大する量が時間とともに回収プローブに到達することを示す。しかしながら、約100分でのピークの後、より少ない量のGluが、定常状態が達成されるまで回収プローブに達する。興味深いことに、そのような低下が他の溶質(例えば、ドーパミンまたはマンニトールなど)に関しては観測されなかった[12]。この段階では、2つの解釈が可能であった:1)Gluにより、細胞外空間での自由拡散[14]を制限し、Gluの回収プローブへの到達を抑制する、プローブ間の実質組織の時間依存的および濃度依存的な水腫性応答が引き起こされる。2)プローブ間の実質組織の内部における高いGlu濃度により、グリア細胞の輸送体が飽和し、回収プローブに到達するGluの量を減少させる増大した脳から血液へのGlu流出が引き起こされる。ここで、グルタミン酸についてのグリア細胞のシンクは血液のシンクよりも著しく小さいという無理のない仮定がなされる。
【0184】
脳内Gluの制御に対する、脳から血液へのGlu流出の寄与を確認するために、微量透析実験を、二重プローブ微量透析の開始から100分において30分の継続期間にわたって行われるGlu溶液の静脈内注入と組み合わせた。
【0185】
図1Bは、いくつかのGlu波が回収プローブを介してモニタリングされ得る典型的な実験の結果を示す。最初の波は、100分前後で観測される一時的なGluピークに対応する。Gluを静脈内投与した後、著しくより多いGluが、準定常状態が180分〜220分の間で達成されるまで回収プローブに到達する。その後、回収プローブに到達するGluの量の急激な減少が観測される。この減少が約60分間続いた後には、回収プローブに到達するGluの量の一定した増大が続く。
【0186】
これらのデータの直感的解釈は、過剰な脳内Gluによって駆動される、自然に存在する脳から血液への流出が、高い血中Glu濃度によって妨げられることである。これは、100分〜220分の間で観測されるGluの増大を引き起こし、このことによりまた、Gluにより余儀なくされる水腫性応答の仮説が除外される。脳から血液へのGlu流出が起こり、これにより、回収プローブに到達するGluの量が低下するのは、高い血中Glu濃度が消失し、脳から血液への新しくなったGlu駆動力を(約220分で100μM前後での値において)確立するまでであるにすぎない。脳から血液へのGlu流出に関与する輸送体が飽和するにつれ、より多くのGluが回収プローブに到達することを引き起こす、ISFのGluの新しくなった蓄積が認められる。約120分で回収プローブに到達する増大したGluは、血中Gluが、微量透析プローブの挿入部位における傷つけられた血液脳関門を通過して脳に入るためであることがおそらくは主張され得る。しかしながら、そのような場合、回収プローブによってモニタリングされる脳内Gluの変化は血中Gluの変化に忠実に従うことが予想される。このことは明らかにこの場合には当てはまらない。
【0187】
次に、血中GluスカベンジャーのOxAcを、OxAcが、脳のプローブ間の実質組織からの過剰Gluの増大した排除を、既に存在する脳から血液へのGlu流出の背景のもとで引き起こすことができるかについて調べた。
【0188】
図1Cは、80分でのGluのピークおよびピークGlu値の80%での定常状態への減少の後、OxAcの投与により、回収プローブに到達するGluの量の(ピーク値の50%までの)さらなる減少が引き起こされることを示す。これらの結果は、静脈内OxAcが脳からの過剰Gluの増大した排除を引き起こすという結論[10]を強固にする。驚くべきことに、血中Gluレベルの同時分析では、OxAcの投与に先立つ血中Gluの自発的低下の存在が明らかにされる。OxAcの投与に続く血中Gluレベルの増大は、血中Gluレベルにおける低下を感知する末梢器官(例えば、肝臓、脳および筋肉)からの細胞質Gluの血液内への代償性流出であると見なされている[10]。
【0189】
実施例2
ストレスによる血中Gluレベルの調節
何が血中Gluレベルの自発的低下を引き起こすか。そのような低下は、視床下部・脳下垂体・副腎(HPA)軸および交感神経系(SNS)を活性化する一般的なストレス応答の一部であり得ることが示唆された[15]。そのようなストレス応答はストレスホルモン(例えば、コルチゾール、ノルアドレナリンおよびアドレナリン)の血液内への放出を伴うので、グルタミン酸およびグルコースの血中レベルに対するそれらのそれぞれの影響を調べた。後者はストレスマーカーとして役立つ[16、17]。
【0190】
図2Aは、コルチゾールまたはノルアドレナリンのいずれもが血中Gluレベルに影響を及ぼさなかった一方で、アドレナリンは、30分にわたって投与されたとき、その基礎レベルの約60%への持続した血中Gluの低下を引き起こしたという事実を例示する。過剰な脳内Gluはストレス応答の活性化を引き起こすことができる[15]ので、本発明者らは、微量透析プローブの脳実質組織への単なる挿入の影響を調べた。図2Bは、プローブの挿入により、血中グルコースレベルの著しい増大が血中Gluの同時低下と一緒に引き起こされたので、プローブの挿入はストレス的手法であることを示す。これらの結果は、微量透析プローブの挿入に対するストレス応答の一部として放出されるアドレナリンが、図1Cにおいて認められる血中Gluレベルの自発的低下に関わり得ることを示唆する。
【0191】
実施例3
ストレスは外傷性脳傷害からの自然回復を引き起こす
次に、ストレスによって引き起こされる血中Gluレベルの低下を、過度なGluレベルを頭部傷害の齧歯類の脳[18〜20]およびヒト被害者の脳[19、21〜23]において生じさせることが広く知られている脳傷害から神経保護するその能力について検討した。
【0192】
この目的のために、図3Aに記載されるように、ラットを外傷性脳傷害(TBI)[24]に供し、神経学的重症度スコア(NSS)を傷害後の1時間、24時間および48時間で評価し、また、血中Gluレベルを並行してモニタリングした。加えられた脳傷害は、TBI後1時間で測定された16.2+/−0.5(n=33)の大きいNSS値によって予想されるように非常に重症であった(図3C−左側の最初の欄)。それにもかかわらず、動物は迅速に回復するようである。これは、TBI後1時間で測定されたNSSとの比較で、非常に著しいNSS改善が24時間後に認められたからである(図3C−最初の2つの欄)。そのようなNSS改善として、自発的改善は、おそらくは、血中Gluレベルのストレス/アドレナリン誘導による低下に起因すると考えられ得る。従って、非選択的なアドレナリン作動性遮断剤のプロプラノロールの影響を、NSSについて、また、血中Gluレベルおよび血中グルコースレベルについて、それらの両方で調べた。図3Bは、TBIの1時間前に与えられたプロプラノロール注射が、通常の場合には24時間後に観測される自発的なNSS改善を妨げたことを示す。TBIの1時間前でのプロプラノロール注射はまた、少なくとも150分間は、血中Gluレベルおよび血中グルコースレベルのストレス誘導による変化を妨げた(図3D)。しかしながら、プロプラノロール投与を(TBIに関連づけられるストレス応答をそれにより可能にする)TBI後60分に遅らせると、生理食塩水による処置の後において見出されるNSS改善と同じNSS改善が引き起こされた(図3C)。従って、TBI後の自然回復は、血中Gluの低下を引き起こすストレス誘導による交感神経放電に起因する。偶然にも、プロプラノロールによる前処理は、図1Aに見られるGlu二重プローブ微量透析プロフィルに影響を及ぼさなかった(データは示されず)。このことは、脳における高いGlu濃度が、脳から血液へのGlu流出のために十分であることを示唆しているが、後者は血中Gluの減少によってさらに緩和される。
【0193】
実施例4
血中Gluを除くことにより、TBIからの回復を改善および加速する
次に、神経保護の強化に対する、血中Gluを除くことによりもたらされる増大した脳から血液へのGlu流出の影響を検討した。
【0194】
従って、ラットをTBIに付し、図4Aに記載されるように、OxAc、Gluまたは生理食塩水のいずれかにより処置した。Gluの存在は、血中GluレベルのOxAc媒介による低下を中和することが予想されるので、OxAc+Gluによる処置の影響もまた調べた。図4Aは、OxAcにより処置された動物がTBIから最も良く回復し、一方、Gluにより処置された動物が最も回復しなかったことを示す。OxAc+Gluにより処置された動物は、生理食塩水のみにより処置された動物と類似する回復を有していた。
【0195】
OxAcが、ストレスのみによって引き起こされる血中Gluレベルの低下よりも大きい血中Gluレベルの低下を引き起こしたことを確認するために、血中GluレベルをTBIの前後でアッセイし、同様にまた、OxAcまたは生理食塩水のいずれかによるその後の30分の長さの処置の結果をアッセイした。図4Bは、TBIにより生じたストレスが、血中Gluレベルが60分後に測定されたとき、20%低下し(スチューデントt検定、p=5×10−4)、また、血中Gluレベルが、生理食塩水による処置ではなく、静脈内OxAcによる処置によって40%にさらに低下したことを示す。ストレスおよびOxAcにより誘導されるTBI後の血中Gluの低下は少なくとも90分間持続し、その後には、血中Gluレベルにおける低下を感知する末梢器官からの血液への示唆された代償性Glu流入[10]が続く。
【0196】
生理食塩水処置ラット対OxAc処置ラットのTBIからの自然回復の経時変化を比較するために、それらのNSS値を24日間以上モニタリングした。図4Cは、TBIにより加えられた神経学的欠損からの広範囲にわたる回復がこの期間にわたって生じることを示す。しかしながら、OxAc処置ラットにおける回復速度は生理食塩水処置ラットの回復速度よりも著しく速く、後者は、25日において、著しい神経学的身体障害を伴ったままである。これらの結果は、TBIを受けたラットの自然回復では、過度な脳内Gluを排除する非常に重要な段階が含まれることを示唆する。
【0197】
実施例5
TBIからの回復は血中Gluレベルの低下と相関する
NSSの変化が血中Gluレベルの変化と相関することを明らかにするために、図5がプロットされた。図5では、TBI後90分で測定されたその血中Gluレベルの%低下に対するTBI後24時間で評価された個々のラットの%NSS改善が示される。高い統計学的有意性(p=0.001)を伴う強い相関関係(r=0.89)が観測された。このことは、血中Gluレベルの40%の低下がNSSのほぼ最適な改善をもたらすことを明らかにする。従って、増大した脳から血液へのGlu流出を容易にする低い血中Gluレベルは、脳の神経保護効果を発揮するようであり、一方、この脳自己保護プロセスを妨げる高い血中Gluレベルは有害である。この結論は、CSFと、血漿Glu濃度との間における直線的な相関関係[25]、ならびに、高い血中Gluレベルと、脳卒中後の神経学的な悪化および結果[25、26]または脳内出血後の神経学的な悪化および結果[27]との間における非常に著しい関連を明らかにする臨床的観察結果と一致している。
【0198】
OxAcによる処置が、NSSに加えて、加えられたTBIの重篤度を反映する他のパラメーターを改善するかどうかを評価するために、OxAc処置動物対生理食塩水処置動物における脳水腫の程度をTBI後の120分および24時間で調べた。脳水腫は、部分的には、過剰なGluが存在することに起因する。これは、脳水腫がグルタミン酸受容体アンタゴニストによって減少するからである[28〜31]。従って、過剰な脳内Gluの効率的な除去は、水腫を低下させることが予想される。
【0199】
図6は、OxAc処置が24時間での脳の水分含有量の著しい減少を引き起こしたことを示す。この有益な作用は、処置がGluの静脈内投与を含む他の群では認められなかった(データは示されず)。OxAcは浸透圧剤として脳水腫に対して作用し得るので、血液の重量オスモル濃度およびNa含有量の両方をOxAcまたは生理食塩水による30分の長さの処置の前後で測定した。生理食塩水群では変化が何らなく(303±3.5mOsm(処置前)対299±3mOsm(処置後);Na:140±1meq/l対141±0.8meq/l)、しかし、OxAc群では非常に著しい増大が認められた(301±5mOsm対338±8mOsm;Na:139±1meq/l対164±3.4meq/l)。OxAc処置ラットにおける高ナトリウム血症および高浸透圧は、OxAcが2Na当量と一緒に投与されるという事実によって考えることができる。OxAc処置ラットにおけるNSSの改善および水腫の軽減が浸透圧「治療」のためでなかったことを明らかにするために、ラットを、TBI後、高張性(3%NaCl)の生理食塩水による処置に付した。TBI後の60分および24時間で得られたそれぞれのNSS値が15.6±3.6および12.4±5.3(n=7;p=0.16)であったので、OxAcの有益な作用は浸透圧治療の結果でないことが結論された。
【0200】
結論
従って、上記の結果は、過剰なGluの脳から血液への流出が脳液から生じるように、過剰なGluの脳から血液への流出が実質組織から生じることを、二重プローブ微量透析を使用して明らかにする[10]。この流出は、ISF/毛細血管内皮細胞と、血漿との間におけるGlu濃度勾配によって完全に調節される:この流出は、血中Gluを増大させることによって阻止することができ、あるいは、交感神経系のストレス誘導による活性化によって、および/または、OxAc(血中Gluスカベンジャー)によって高めることができる。正常な状態のもとでは、脳は、ニューロンおよびグリアにおけるGlu輸送体を介して、局所的な過剰Gluを非常に効率的に処理するための手段を有すると推測することができ、しかし、グリアおよびニューロンの輸送体を飽和させる非常に過剰なGluの場合、または、それらの機能を損なう病理学的状態の場合には、脳は、内皮細胞上のGlu輸送体を介して、脳から血液へのGlu流出に頼る必要がある。過剰なGluの効率的な除去を確実にするために、脳は、ストレスホルモン(例えば、アドレナリン)により媒介される血中Gluの自己保護的低下を活性化させる。この現象により、約2時間(アドレナリンの効果の持続期間と十分に適合し得る期間)にわたって持続するTBI後のラット脳における過剰なGluのかなり限定された持続期間[18、20、32]がおそらくは説明されるかもしれない(図3A〜図3Cを参照のこと)。ヒトでは、脳における過剰なGluが、TBI後、数時間にわたって、また、数日間でさえ認められ得るので[19、21〜23]、脳から血液へのGlu流出が生じていないか、または、良好な効率でないことが結論されるかもしれない。従って、脳から血液へのGlu流出が、グルタミン酸受容体アンタゴニストについてはこれまでは認められていない治療的効果をこの場合には示し得る血中Gluスカベンジャーの投与によって改善されることが予想されるかもしれない。1つの可能な利益が、脳から血液へのGlu流出が脳内Gluの低下と並行して減速するので、脳から血液へのGlu流出が自己制御的であることである。従って、脳から血液へのGlu流出は、Gluが、神経修復における役割[33]、すなわち、ヒトでの臨床研究におけるグルタミン酸受容体アンタゴニストの失敗を説明するために提案されている要因[34]を発揮することを妨げ得ない。
【0201】
実施例6
血中グルタミン酸レベルに対するストレスホルモンのアゴニストおよびアンタゴニストの影響
血中グルタミン酸レベルを低下させるためにふさわしい薬剤を下記のようにアッセイした。
【0202】
メタプロロール(15mg/kg)を4匹の実験未使用ラットに注射し、血中Gluのレベルを、時間=0において、また、120分までその後30分毎に測定した。ラット(n=5)に15mg/kgのメタプロロールを事前に注射し、ラットはTBIを受けた。ラットのNSSを24時間後および48時間後に測定した。
【0203】
図7A〜図7Bは、血中GluレベルおよびNSSの低下に対するβ1アンタゴニスト(メタプロロール)の強い影響を示す。
【0204】
フェニレフリンを、30分間、ラット(n=4)に0.25mg/0.5ml/100g/30分の速度で静脈内注入し、血中Gluのレベルを、時間=0において、また、120分までその後30分毎に測定した。
【0205】
図8は、血中Gluレベルに対するα1アゴニスト(フェニレフリン)の影響を示すグラフである。
【0206】
別途定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載される方法および材料と類似または同等である方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、好適な方法および材料が下記に記載される。
【0207】
本発明はその特定の実施態様によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。本願で挙げた刊行物、特許および特許願はすべて、個々の刊行物、特許および特許願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。



【図面の簡単な説明】
【0208】
【図1】ラット脳の線状体におけるGluの二重プローブ微量透析を示すグラフである。
【図2】血中グルタミン酸レベルおよび血中グルコースレベルに対するストレスホルモンおよびストレスの影響を示す線グラフである。
【図3】外傷性脳傷害からの自然回復に対するストレスの影響を示すグラフである。
【図4】TBIからの回復に対する血中GluスカベンジャーおよびGluの影響を示すグラフである。
【図5】血中Gluレベルの低下とNSSの改善との間における相関関係を示すグラフである。
【図6】TBI、および、30μl/分/100gの生理食塩水または30μモル/分/100gのOxAcのいずれかによる処置の後の120分および24時間での、水分含有量を評価することによって求められるときの脳水腫形成を示すグラフである。
【図7】血中GluレベルおよびNSSに対するβ1アンタゴニストのメタプロロールの影響を示すグラフである。
【図8】血中Gluレベルに対するα1アゴニストのフェニレフリンの影響を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストレスホルモンの活性を調節することができ、それにより血中グルタミン酸レベルを低下させることができる薬剤をその必要性のある対象に投与し、それにより脳の細胞外グルタミン酸レベルを低下させることを含む、脳の細胞外グルタミン酸レベルを低下させる方法。
【請求項2】
有効成分として、血中グルタミン酸レベルを低下させることができる少なくとも2つの薬剤と、医薬的に許容され得る担体とを含む医薬組成物であって、前記少なくとも2つの薬剤のうちの少なくとも1つがストレスホルモンの活性を調節することができ、それにより血中グルタミン酸レベルを低下させることができる、医薬組成物。
【請求項3】
包装材と、前記包装材に含有されている、脳の細胞外グルタミン酸レベルを低下させるために特定される医薬組成物とを含む製造物であって、前記医薬組成物が、有効成分として、ストレスホルモンの活性を調節することができ、それにより血中グルタミン酸レベルを低下させることができる薬剤と、医薬的に許容され得る担体とを含む製造物。
【請求項4】
脳の細胞外グルタミン酸レベルをその必要性のある対象において低下させる方法であって、
(a)血液サンプルを得ること、
(b)前記血液サンプルを、ストレスホルモンの活性を調節することができ、それにより前記血液サンプルに存在する細胞のグルタミン酸レベルを低下させることができる薬剤と接触させて、それによりグルタミン酸を枯渇させた血液細胞を得ること、および
(c)前記グルタミン酸を枯渇させた血液細胞を対象に導入し、それによりその脳の細胞外グルタミン酸レベルを低下させること
を含む方法。
【請求項5】
ストレスホルモンの活性を調節することができ、それにより血中グルタミン酸レベルを低下させることができる前記薬剤は、ストレスホルモンアゴニストである、請求項1〜4に記載の方法、医薬組成物、または製造物。
【請求項6】
ストレスホルモンの活性を調節することができ、それにより血中グルタミン酸レベルを低下させることができる前記薬剤は、ストレスホルモンアンタゴニストである、請求項1〜4に記載の方法、医薬組成物、または製造物。
【請求項7】
前記ストレスホルモンアゴニストはアドレナリン作動性受容体アゴニストを含む、請求項5に記載の方法、医薬組成物、または製造物。
【請求項8】
前記アドレナリン作動性受容体アゴニストはα1アゴニストまたはα2アゴニストである、請求項7に記載の方法、医薬組成物、または製造物。
【請求項9】
前記アドレナリン作動性受容体アゴニストはβ2アゴニストである、請求項7に記載の方法、医薬組成物、または製造物。
【請求項10】
前記ストレスホルモンアンタゴニストはアドレナリン作動性受容体アンタゴニストを含む、請求項6に記載の方法、医薬組成物、または製造物。
【請求項11】
前記アドレナリン作動性受容体アンタゴニストはβ1アンタゴニストである、請求項6に記載の方法、医薬組成物、または製造物。
【請求項12】
血中グルタミン酸レベルを低下させることができるさらなる薬剤を、前記ストレスホルモンを投与する前に、ストレスホルモンを投与するのと同時に、または、ストレスホルモンを投与した後に投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記血液サンプルを、血中グルタミン酸レベルを低下させることができるさらなる薬剤と、工程(b)の前に、または、工程(b)と同時に、または、工程(b)の後で接触させることをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項14】
前記薬剤は少なくとも1つのグルタミン酸修飾酵素および/またはその改変体である、請求項2、12または13に記載の方法または医薬組成物。
【請求項15】
前記少なくとも1つのグルタミン酸修飾酵素が、トランスアミナーゼ、デヒドロゲナーゼ、デカルボキシラーゼ、リガーゼ、アミノムターゼ、ラセマーゼおよびトランスフェラーゼからなる群から選択される、請求項14に記載の方法または医薬組成物。
【請求項16】
前記トランスアミナーゼが、グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ、グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ、アセチルオルニチントランスアミナーゼ、オルニチンオキソ酸トランスアミナーゼ、スクシニルジアミノピメリン酸トランスアミナーゼ、4−アミノ酪酸トランスアミナーゼ、アラニントランスアミナーゼ、(s)−3−アミノ−2−メチルプロピオン酸トランスアミナーゼ、4−ヒドロキシグルタミン酸トランスアミナーゼ、ジヨードチロシントランスアミナーゼ、甲状腺ホルモントランスアミナーゼ、トリプトファントランスアミナーゼ、ジアミントランスアミナーゼ、システイントランスアミナーゼ、L−リシン6−トランスアミナーゼ、ヒスチジントランスアミナーゼ、2−アミノアジピン酸トランスアミナーゼ、グリシントランスアミナーゼ、分枝鎖アミノ酸トランスアミナーゼ、5−アミノ吉草酸トランスアミナーゼ、ジヒドロキシフェニルアラニントランスアミナーゼ、チロシントランスアミナーゼ、ホスホセリントランスアミナーゼ、タウリントランスアミナーゼ、芳香族アミノ酸トランスアミナーゼ、芳香族アミノ酸グリオキシル酸トランスアミナーゼ、ロイシントランスアミナーゼ、2−アミノヘキサン酸トランスアミナーゼ、オルニチン(リシン)トランスアミナーゼ、キヌレニンオキソグルタル酸トランスアミナーゼ、D−4−ヒドロキシフェニルグリシントランスアミナーゼ、システイン共役トランスアミナーゼ、2,5−ジアミノ吉草酸トランスアミナーゼ、ヒスチジノールリン酸トランスアミナーゼ、ジアミノ酪酸−2−オキソグルタル酸トランスアミナーゼ、udp−2−アセトアミド−4−アミノ−2,4,6−トリデオキシグルコーストランスアミナーゼおよびアスパラギン酸トランスアミナーゼからなる群から選択される、請求項15に記載の方法または医薬組成物。
【請求項17】
前記デヒドロゲナーゼがグルタミン酸デヒドロゲナーゼである、請求項15に記載の方法または医薬組成物。
【請求項18】
前記デカルボキシラーゼがグルタミン酸デカルボキシラーゼである、請求項15に記載の方法または医薬組成物。
【請求項19】
前記リガーゼがグルタミン酸エチルアミンリガーゼである、請求項15に記載の方法または医薬組成物。
【請求項20】
前記トランスフェラーゼが、グルタミン酸n−アセチルトランスフェラーゼおよびアデニリルトランスフェラーゼからなる群から選択される、請求項15に記載の方法または医薬組成物。
【請求項21】
前記アミノムターゼがグルタミン酸−1−セミアルデヒド2,1−アミノムターゼである、請求項15に記載の方法または医薬組成物。
【請求項22】
前記薬剤がグルタミン酸修飾酵素の少なくとも1つの補因子である、請求項2、12または13に記載の方法または医薬組成物。
【請求項23】
前記補因子が、オキサロアセテート、ピルベート、NAD、NADP、2−オキソヘキサン二酸、2−オキソ−3−スルホプロピオネート、2−オキソ−3−スルフィノプロピオン酸、2−オキソ−3−フェニルプロピオン酸、3−インドール−2−オキソプロピオン酸、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソプロピオン酸、4−メチルスルホニル−2−オキソ酪酸、3−ヒドロキシ−2−オキソプロピオン酸、5−オキソペンタノエート、6−オキソヘキサノエート、グリオキサレート、4−オキソブタノエート、α−ケトイソカプロエート、α−ケトイソバレレート、α−ケト−β−メチルバレレート、コハク酸セミアルデヒド(4−オキソブチレート)、ピリドキサールリン酸、ピリドキサールリン酸前駆体および3−オキソイソブタノエートからなる群から選択される、請求項22に記載の方法または医薬組成物。
【請求項24】
前記薬剤が、修飾グルタミン酸をグルタミン酸および/またはその改変体に変換することができないように選択されている修飾グルタミン酸変換酵素である、請求項2、12または13に記載の方法または医薬組成物。
【請求項25】
前記修飾グルタミン酸変換酵素がα−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼである、請求項24に記載の方法または医薬組成物。
【請求項26】
前記薬剤が、修飾グルタミン酸をグルタミン酸に変換することができないように選択されている修飾グルタミン酸変換酵素の補因子である、請求項2、12または13に記載の方法または医薬組成物。
【請求項27】
前記薬剤が、リポ酸、リポ酸前駆体、チアミンピロリン酸、チアミンピロリン酸前駆体、ピリドキサールリン酸およびピリドキサールリン酸前駆体からなる群から選択される、請求項26に記載の方法または医薬組成物。
【請求項28】
前記薬剤がグルタミン酸修飾酵素およびその補因子を含む、請求項2、12または13に記載の方法または医薬組成物。
【請求項29】
前記薬剤が、グルタミン酸修飾酵素と、修飾グルタミン酸をグルタミン酸に変換することができないように選択されている修飾グルタミン酸変換酵素とを含む、請求項2、12または13に記載の方法または医薬組成物。
【請求項30】
前記薬剤が、グルタミン酸修飾酵素の補因子と、修飾グルタミン酸をグルタミン酸に変換することができないように選択されている修飾グルタミン酸変換酵素とを含む、請求項2、12または13に記載の方法または医薬組成物。
【請求項31】
前記薬剤が、グルタミン酸修飾酵素の補因子と、修飾グルタミン酸をグルタミン酸に変換することができないように選択されている修飾グルタミン酸変換酵素と、その補因子とを含む、請求項2、12または13に記載の方法または医薬組成物。
【請求項32】
前記薬剤が、グルタミン酸修飾酵素と、その補因子と、修飾グルタミン酸をグルタミン酸に変換することができないように選択されている修飾グルタミン酸変換酵素と、その補因子とを含む、請求項2、12または13に記載の方法または医薬組成物。
【請求項33】
前記薬剤が、グルタミン酸修飾酵素と、その補因子と、修飾グルタミン酸をグルタミン酸に変換することができないように選択されている修飾グルタミン酸変換酵素とを含む、請求項2、12または13に記載の方法または医薬組成物。
【請求項34】
前記薬剤が、グルタミン酸修飾酵素と、修飾グルタミン酸をグルタミン酸に変換することができないように選択されている修飾グルタミン酸変換酵素と、その補因子とを含む、請求項2、12または13に記載の方法または医薬組成物。
【請求項35】
前記薬剤が、グルタミン酸修飾酵素と、修飾グルタミン酸をグルタミン酸に変換することができないように選択されている修飾グルタミン酸変換酵素の補因子とを含む、請求項2、12または13に記載の方法または医薬組成物。
【請求項36】
前記薬剤が、修飾グルタミン酸をグルタミン酸に変換することができないように選択されている修飾グルタミン酸変換酵素と、その補因子とを含む、請求項2、12または13に記載の方法または医薬組成物。
【請求項37】
前記薬剤が、グルタミン酸修飾酵素の補因子と、修飾グルタミン酸をグルタミン酸に変換することができないように選択されている修飾グルタミン酸変換酵素の補因子とを含む、請求項2、12または13に記載の方法または医薬組成物。
【請求項38】
前記投与を、1g/Kg体重/時間を超えない前記薬剤の濃度で行う、請求項2、12または13に記載の方法または医薬組成物。
【請求項39】
前記血液サンプルを得ることを、
一致している血液型ドナー、
一致していない血液型ドナー、および/または
その必要性のある対象
から行う、請求項2、12または13に記載の方法または医薬組成物。
【請求項40】
前記薬剤がグルタミン酸合成酵素の少なくとも1つの阻害剤である、請求項2、12または13に記載の方法または医薬組成物。
【請求項41】
前記阻害剤が、γ−アセチレンGABA、ギャバクリン、L−カナリン、2−アミノ−4−(アミノオキシ)−n−ブタン酸、3−クロロ−4−アミノブタノエート、3−フェニル−4−アミノブタノエート、イソニコチン酸ヒドラジド;(S)−3−アミノ−2−メチルプロパノエート、フェニルヒドラジン;4−フルオロフェニルアラニン、アジペート、アザライン酸、カプロエート、3−メチルグルタレート、ジメチルグルタレート、ジエチルグルタレート、ピメレート、2−オキソグルタメート、3−メチル−2−ベンゾチアゾロンヒドラゾン塩酸塩、フェニルピルベート、4−ヒドロキシフェニルピルベート、プレフェネートおよびインドールピルベートからなる群から選択される、請求項40に記載の方法または医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−530266(P2009−530266A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−558980(P2008−558980)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際出願番号】PCT/IL2007/000297
【国際公開番号】WO2007/105203
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(502379147)イェダ リサーチ アンド デベロップメント カンパニー リミテッド (14)
【出願人】(508029240)モル リサーチ アプリケーションズ リミテッド (4)
【Fターム(参考)】