説明

高い乾燥強度を有する紙、板紙及び厚紙の製造法

水溶性カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーを紙料に添加し、この紙料を脱水し、そして、この紙製品を乾燥することによって高い乾燥強度を有する紙、板紙及び厚紙を製造するにあたり、アニオン性ポリマーとして、少なくとも1のアニオン性ラテックス及び少なくとも1の分解したデンプンの水性分散液を使用することを特徴とする、高い乾燥強度を有する紙、板紙及び厚紙を製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明は、水溶性カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーを紙料に添加し、この紙料を脱水し、この紙製品を乾燥することによって高い乾燥強度を有する紙、板紙及び厚紙を製造する方法に関する。
【0002】
紙の乾燥強度を高めるためには、乾燥増強剤を既に乾燥した紙の表面に設けるか、又は葉形成前に紙料に添加することができる。乾燥増強剤は通常は、1〜10質量%の水溶液の形で適用される。乾燥増強剤のこのような溶液が紙の表面に設けられる場合には、この引き続く乾燥プロセスの際に相当量の水を蒸発させなくてはならない。この乾燥工程は極めてエネルギー消費的であり、かつ、製紙機械での通常の乾燥装置の能力は、この製紙機械の最大限可能な製造速度で運転できるほど大抵大きくないので、この製紙機械の製造速度は、乾燥強度仕上げ加工された紙が十分な規模で乾燥されるように低められなくてはならない。
【0003】
これに対して、この乾燥増強剤を葉形成前に紙料に添加すると、この仕上げ加工された紙は1回しか乾燥させてはならない。ドイツ連邦共和国特許出願公開第3506832号から、高い乾燥強度を有する紙を製造する方法は知られており、この場合には、紙料にまず水溶性カチオン性ポリマーを添加し、引続き水溶性アニオンポリマーを添加する。水溶性カチオン性ポリマーとしては、実施例において、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド及びエピクロロヒドリンで架橋された、アジピン酸とジエチレントリアミンとからの縮合生成物が記載される。水溶性アニオン性ポリマーとしては、例えばエチレン系不飽和C3〜C5−カルボン酸のホモポリマー又はコポリマーが考慮される。このコポリマーは例えば、エチレン性不飽和C3〜C5カルボン酸、例えばアクリル酸35〜99質量%を含む。
【0004】
WO04/061235A1からは、特に高い湿潤強度及び/又は乾燥強度を有する紙、特に薄葉紙の製造法が知られており、この場合、紙料にまず、ポリマー1g当たり第一級アミノ官能基少なくとも1.5ミリ当量(meq)を含有し、かつ少なくとも10000ダルトンの分子量を有する水溶性カチオン性ポリマーを添加する。この場合、N−ビニルホルムアミドの部分加水分解されたホモポリマー及び完全加水分解されたホモポリマーは、特に強調される。引き続き、アニオン基及び/又はアルデヒド基を含有する水溶性アニオン性ポリマーが添加される。前記方法の利点としては、とりわけ、種々の紙特性、特に湿潤強度及び乾燥強度に関連して記載された2成分系の可変性が強調されている。
【0005】
WO 06/056381 A1からは、ビニルアミン単位含有水溶性ポリマー及び水溶性ポリマー状アニオン性化合物を別々に紙料に添加し、この紙料を脱水し、紙製品を乾燥させることによって高い乾燥強度を有する紙、板紙及び厚紙を製造するための方法が知られており、その際、ポリマー状アニオン性化合物として、式
【化1】

[式中、R1、R2=H又はC1〜C6−アルキルを意味する]
の少なくとも1つのN−ビニルカルボン酸アミド、
少なくとも1つの酸基含有モノエチレン性不飽和モノマー及び/又はそのアルカリ金属−、アルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩、及び場合により
他のモノエチレン性不飽和モノマー、及び場合により
少なくとも2つのエチレン性不飽和二重結合を分子中に有する化合物
の共重合により得られる少なくとも1の水溶性コポリマーが使用される。
【0006】
番号EP09150237.7を有する先のヨーロッパ出願からは、高い乾燥強度を有する紙を、水溶性カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーを紙料に別々に添加することによって製造する方法が知られており、その際、アニオン性ポリマーは、高くとも10Mol%の酸基に関する含有量を有する水不溶性ポリマーの水性分散液又は非イオン性ポリマーのアニオン性に調整された水性分散液である。引き続き、この紙料の脱水及びこの紙製品の乾燥が行われる。
【0007】
本発明の基礎となる課題は、高い乾燥強度及び可能な限り低い湿潤強度を有し、紙製品の乾燥強度が、先行技術に対して可能な限り更に改善されている、紙の更なる製造方法を提供することである。
【0008】
この課題は、本発明により、水溶性カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーを紙料に添加し、この紙料を脱水し、そして、この紙製品を乾燥することによって高い乾燥強度を有する紙、板紙及び厚紙を製造するにあたり、アニオン性ポリマーとして、少なくとも1のアニオン性ラテックス及び少なくとも1の分解したデンプンの水性分散液を使用する、高い乾燥強度を有する紙、板紙及び厚紙を製造する方法により解決される。
【0009】
例えば0.1〜10質量%のポリマー含有量を有する希釈した水溶液の形で紙料にカチオン性ポリマーを添加する一方で、アニオン性ポリマーの添加は常に水性分散液として行われる。この水性分散液のポリマー濃度は、この場合に、広い範囲で変動可能である。好ましくは、このアニオン性ポリマーの水性分散液を希釈した形で計量供給し、例えばこのアニオン性分散液のポリマー濃度は0.5〜10質量%である。
【0010】
カチオン性ポリマーとして、全ての、冒頭部で引用した先行技術において挙げられた水溶性カチオン性ポリマーが考慮される。この場合に、これは例えばアミノ−又はアンモニウム基を有する化合物である。アミノ基は、第一級、第二級、第三級又は第四級基であることができる。前記ポリマーについては、実質的に重合体、重付加化合物又は重縮合物が考慮され、その際、このポリマーは鎖状又は分枝鎖状の構造から、超分枝状又は樹状の構造まで有することができる。さらに、グラフトポリマーも適用可能である。カチオン性ポリマーは本願の関連において、標準条件(20℃、1013mbar)及びpH7.0での水中でのその溶解性が例えば少なくとも10質量%である場合に、水溶性と呼ばれる。
【0011】
カチオン性ポリマーのモル質量Mwは、例えば少なくとも1000g/molである。これは例えば、大抵5000〜5百万g/molの範囲内にある。カチオン性ポリマーの電荷密度は、例えば0.5〜23meq/g ポリマー、好ましくは3〜22meq/g ポリマー、大抵6〜20meq/g ポリマーである。
【0012】
カチオン性ポリマーの製造のための適したモノマーは例えば次のものである:
α,β−エチレン性不飽和モノ−及びジカルボン酸とアミノアルコール、好ましくはC2〜C12アミノアルコールのエステル。これらはアミン窒素でC1〜C8−モノアルキル化又はC1〜C8−ジアルキル化されていてよい。このエステルの酸成分として、例えばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、モノブチルマレアート及びこれらの混合物が適している。アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの混合物を使用するのが好ましい。これには、例えばN−メチルアミノメチル(メタ)アクリラート、N−メチルアミノエチル(メタ)アクリラート、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリラート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリラート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリラート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリラート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリラート及びN,N−ジメチルアミノシクロヘキシル(メタ)アクリラートが挙げられる。
【0013】
同様に適しているのは、前述の化合物と、C1〜C8−アルキルクロリド、C1〜C8−ジアルキルスルファート、C1〜C16−エポキシド又はベンジルクロリドの第四級化生成物である。
【0014】
さらに、更なるモノマーとして、N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]アクリルアミド、N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]メタクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド、N−[4−(ジメチルアミノ)ブチル]アクリルアミド、N−[4−(ジメチルアミノ)ブチル]メタクリルアミド、N−[2−(ジエチルアミノ)エチル]アクリルアミド、N−[2−(ジエチルアミノ)エチル]メタクリルアミド及びその混合物が適している。
【0015】
同様に適しているのは、前述の化合物と、C1〜C8−アルキルクロリド、C1〜C8−ジアルキルスルファート、C1〜C16−エポキシド又はベンジルクロリドの第四級化生成物である。
【0016】
適したモノマーは、さらに、N−ビニルイミダゾール、アルキルビニルイミダゾール、特にメチルビニルイミダゾール、例えば1−ビニル−2−メチルイミダゾール、3−ビニルイミダゾール−N−オキシド、2−及び4−ビニルピリジン、2−及び4−ビニルピリジン−N−オキシド並びにこれらのモノマーのベタイン性の誘導体及び第四級化生成物である。
【0017】
更なる適したモノマーは、アリルアミン、ジアルキルジアリルアンモニウムクロリド、特にジメチルジアリルアンモニウムクロリド及びジエチルジアリルアンモニウムクロリド並びにWO01/36500 A1から知られている、式(II)
【化2】

[式中、
Rは、水素又はC1〜C4−アルキルである、
−[Al−]mは、鎖状又は分枝鎖状のオリゴアルキレンイミン鎖であって、mはアルキレンイミン単位を意味する、
mは、1〜20の範囲内の整数であり、この数平均mはこのオリゴアルキレンイミン鎖中少なくとも1.5である、
Yは、鉱酸のアニオン当量を意味する、及び
nは、数1≦n≦mである]
のアルキレンイミン単位含有モノマーである。
【0018】
前述の式(II)中でmの数平均が少なくとも2.1、大抵は2.1〜8であるモノマー又はモノマー混合物が好ましい。これは、エチレン性不飽和カルボン酸とオリゴアルキレンイミンとを、好ましくはオリゴマー混合物の形で反応させることにより得られる。この場合に生じる生成物は、場合により、鉱酸HYを用いて、酸付加塩に移行されることができる。このようなモノマーは、開始剤(ラジカル重合を開始させる)の存在下で水性媒体中で、カチオン性の、ホモ−及びコポリマーへと重合されることができる。
【0019】
更なる適したカチオン性モノマーは、先のEP出願07117909.7から知られている。この場合にこれは、式(III)
【化3】

[式中、
[Al−]nは、鎖状又は分枝鎖状のオリゴアルキレンイミン鎖であって、nはアルキレンイミン単位である、
nは、少なくとも1の数を意味する、及び
Xは、直鎖状又は分枝鎖状のC2〜C6−アルキレン基である]の
アルキレンイミン単位含有アミノアルキルビニルエーテル、並びに
モノマー(III)と鉱酸又は有機酸との塩及びモノマー(III)とアルキルハロゲン化物又はジアルキルスルファートとの第四級化生成物である。この化合物は、アルキレンアミンをアミノ−C2〜C6−アルキルビニルエーテルへ付加させることにより入手できる。
【0020】
前述のモノマーは、単独で水溶性カチオン性ホモポリマーへと、又は少なくとも1の他の中性モノマーと一緒になって水溶性カチオン性コポリマーへと、又は少なくとも1の酸基を有するモノマーを用いて両性コポリマー(これは、モル過剰量の重合導入したカチオン性モノマーでは、カチオン性の総電荷を有する)へと重合されることができる。
【0021】
前述のカチオン性モノマーを用いて、カチオン性ポリマーの製造のために共重合される中性モノマーとして、例えば、次のもののエステル:α,β−エチレン性不飽和モノ−及びジカルボン酸とC1〜C30−アルカノール、C2〜C30−アルカンジオール、アミドα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸及びそのN−アルキル−及びN,N−ジアルキル誘導体、次のもののエステル:ビニルアルコール及びアリルアルコールと飽和C1〜C30−モノカルボン酸、ビニル芳香族化合物、ビニルハロゲン化物、ビニリデンハロゲン化物、C2〜C8−モノオレフィン及びその混合物が適している。
【0022】
更なる適したコモノマーは、例えばメチル(メタ)アクリラート、メチルエタクリラート、エチル(メタ)アクリラート、エチルエタクリラート、n−ブチル(メタ)アクリラート、イソブチル(メタ)アクリラート、tert−ブチル(メタ)アクリラート、tert−ブチルエタクリラート、n−オクチル(メタ)アクリラート、1,1,3,3−テトラメチルブチル(メタ)アクリラート、エチルヘキシル(メタ)アクリラート及びこれらの混合物である。
【0023】
適しているのは、さらにアクリルアミド、置換したアクリルアミド、メタクリル酸アミド、置換したメタクリルアミド、例えば、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−(n−ブチル)(メタ)アクリルアミド、tert−ブチル(メタ)アクリルアミド、n−オクチル(メタ)アクリルアミド、1,1,3,3−テトラメチルブチル(メタ)アクリルアミド及びエチルヘキシル(メタ)アクリルアミド並びにアクリルニトリル及びメタクリルニトリル及び上述のモノマーの混合物である。
【0024】
カチオン性ポリマーの修飾のための更なるモノマーは、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリラート、2−ヒドロキシエチルエタクリラート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリラート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリラート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリラート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリラート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリラート、その他及びその混合物である。
【0025】
前述のカチオン性モノマーとの共重合のための更なる適したモノマーは、N−ビニルラクタム及びその誘導体であり、これは例えば1又は複数のC1〜C6−アルキル置換基、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチルその他を有することができる。これには、例えばN−ビニルピロリドン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニル−5−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−5−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−6−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−6−エチル−2−ピペリドン、N−ビニル−7−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−7−エチル−2−カプロラクタム等が挙げられる。
【0026】
前述のカチオン性モノマーとの共重合のために適したコモノマーは、さらにエチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、スチレン、α−メチルスチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン及びこれらの混合物である。
【0027】
コモノマーの更なる一群は、エチレン性不飽和化合物であり、これは、重合類似反応においてアミノ基を形成することができる原子団(Gruppierung)を有する。これには例えば、N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニル−N−エチルアセトアミド、N−ビニルプロピオンアミド、N−ビニル−N−メチルプロピオンアミド及びN−ビニルブチルアミド及びこの混合物が属する。ここから形成されるポリマーは、例えばEP0438744A1に記載のとおり、酸性又は塩基性加水分解により、ビニルアミン及びアミド単位(式IV〜VII)含有ポリマーに移行されることができる。
【化4】

【0028】
式IV〜VIIにおいては、置換基R1、R2はH、C1〜C6−アルキル、そしてX-は酸、好ましくは鉱酸のアニオン当量である。
【0029】
この加水分解の際に、例えばポリビニルアミン、ポリビニルメチルアミン又はポリビニルエチルアミンが発生する。この群のモノマーは、任意の方式で、カチオン性モノマー及び/又は前述のコモノマーと重合されることができる。
【0030】
カチオン性ポリマーとは、本発明の意味合いにおいて、カチオン性の総電荷を有する、両性ポリマーも理解されるものである。両性ポリマーでは、カチオン性基の含有量は例えば、ポリマー中のアニオン性基の含有量を少なくとも5Mol%だけ超える。このようなポリマーは、例えば、カチオン性モノマー、例えばN,N−ジメチル−アミノエチルアクリルアミドを遊離塩基の形で、部分的に酸で中和されたか又は第四級化した形で少なくとも1の酸基含有モノマーを用いて共重合することにより入手でき、その際、このカチオン性モノマーは、モル過剰量で使用され、これによって、この発生するポリマーはカチオン性の総電荷を有する。
【0031】
両性重合体は、
(a)式(I)
【化5】

[式中、R1、R2=H又はC1〜C6−アルキルを意味する]
のN−ビニルカルボン酸アミド少なくとも1つ
(b)分子内に3〜8個のC原子を有する少なくとも1種のモノエチレン性不飽和カルボン酸及び/又はそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩、及び場合により
(c)別のモノエチレン性不飽和モノマー、及び場合により
(d)分子内に少なくとも2個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物
を共重合し、
引き続き、アミノ基の形成下にこのコポリマー中に重合導入される式(I)のモノマーから基−CO−R1を部分的に又は完全に分離することによっても得られ、この場合、コポリマー中のカチオン性基、例えばアミノ基の含有量は、重合導入された酸基含有モノマー(b)の含有量を少なくとも5モル%超えている。N−ビニルカルボン酸アミドポリマーの加水分解では、ビニルアミン単位と隣接したビニルホルムアミド単位とが反応することにより、二次反応でアミジン単位が生じる。以下、ビニルアミン単位との記載は、両性コポリマー中で常にビニルアミン単位とアミジン単位との総和を意味する。
【0032】
このように得られた両性化合物は、例えば
(a1)場合によって加水分解されていない、式(I)の単位
(a2)ビニルアミン単位及びアミジン単位、その際、アミノ基+アミジン基の含有量はコポリマー中で少なくとも5Mol%、重合導入された酸基含有モノマーの含有量を超えている、
(b)酸基含有モノエチレン性不飽和モノマーの単位及び/又はそのアルカリ金属−、アルカリ土類金属−又はアンモニウム塩、
(c)少なくとも1の他のモノエチレン性不飽和モノマーの単位0〜30Mol%、及び
(d)少なくとも2のエチレン性不飽和二重結合を分子中に有する、少なくとも1の化合物0〜2Mol%を含有する。
【0033】
このコポリマーの加水分解は、酸又は塩基の存在下で実施されてもよいし、酵素的に実施されてもよい。酸を用いる加水分解の場合、ビニルカルボン酸アミド単位から生じるビニルアミン基は、塩の形で存在する。ビニルカルボン酸アミドコポリマーの加水分解は、欧州特許出願公開第438744号、第8頁第20行〜第10頁第3行に詳細に記載されている。該刊行物で為された説明は、本発明により使用することができる、カチオン性の総電荷を有する両性ポリマーの製造に相応して当てはまる。
【0034】
前記ポリマーは、例えば20〜250、好ましくは50〜150の範囲内のK値(pH7、0.5質量%のポリマー濃度及び25℃の温度で5%の食塩水溶液中でH. Fikentscherにより測定)を有する。
【0035】
カチオン性のホモポリマー及びコポリマーの製造は、溶液重合、沈殿重合、懸濁重合又は乳化重合によって行うことができる。好ましくは水性媒体中での溶液重合である。適当な水性媒体は水及び水と少なくとも1種の水と混合可能な溶剤、例えばアルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール等との混合物である。
【0036】
この重合温度は好ましくは約30〜200℃、特に好ましくは40〜110℃の範囲内にある。この重合は通常では大気圧下で行われるが、この重合は減圧下又は加圧下でも行うことができる。適当な圧力範囲は0.1〜5barである。
【0037】
カチオン性ポリマーの製造のために、モノマーをラジカルを生成する開始剤を用いて重合させることができる。
【0038】
ラジカル重合のための開始剤として、このために常用のペルオキソ化合物及び/又はアゾ化合物、例えばアルカリ金属ペルオキシ二硫酸塩又はペルオキシ二硫酸アンモニウム、ジアセチルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、スクシニルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、tert−ブチルペルベンゾアート、tert−ブチルペルピバラート、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート、tert−ブチルペルマレアート、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカルバマート、ビス−(o−トルオイル)−ペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、ジオクタノイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、tert−ブチルペルイソブチラート、tert−ブチルペルアセタート、ジ−tert−アミルペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、アゾ−ビス−イソブチロニトリル、アゾ−ビス−(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド又は2−2′−アゾ−ビス−(2−メチル−ブチロニトリル)を使用することができる。適しているのは、開始剤混合物又はレドックス開始剤系、例えばアスコルビン酸/硫酸鉄(II)/ペルオキシ二硫酸ナトリウム、t−ブチルヒドロペルオキシド/二亜硫酸ナトリウム、t−ブチルヒドロペルオキシド/ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム、H22/Cu−I又は鉄−II−化合物でもある。
【0039】
分子量の調節のために、重合を少なくとも1種の調節剤の存在で行うことができる。調節剤として当業者に公知の通常の化合物、例えば硫黄化合物、例えばメルカプトエタノール、2−エチルヘキシルチオグリコラート、チオグリコール酸、次亜リン酸ナトリウム、ギ酸又はドデシルメルカプタン並びにトリブロモクロロメタン又は得られる重合体の分子量を調節する作用を有する他の化合物を使用することができる。
【0040】
カチオン性ポリマー、例えばポリビニルアミン及びそのコポリマーは、ポリアクリルアミド又はポリメタクリルアミド及びそのコポリマーのホフマン分解によっても製造されることができる。参照:H. Tanaka, Journal of Polymer Science: Polymer Chemistry Edition 17,1239-1245 (1979)及びEl Achari, X. Coqueret, A. Lablache-Combier, C. Loucheux, Makromol. Chem., Vol. 194, 1879-1891 (1993)。
【0041】
前述の全てのカチオン性ポリマーは、このカチオン性モノマー及び場合によってカチオン性モノマー及び前記コモノマーからの混合物を少なくとも1の架橋剤の存在下で重合を実施することにより、修飾されることができる。架橋剤とは、少なくとも2の二重結合を分子中に含むようなモノマー、例えばメチレンビスアクリルアミド、グリコールジアクリラート、グリコールジメタクリラート、グリセリントリアクリラート、ペンタエリトリトールトリアリルエーテル、少なくとも2回アクリル酸及び/又はメタクリル酸でエステル化したポリアルキレングリコール又はポリオール、例えばペンタエリトリトール、ソルビトール又はグルコースが理解される。共重合の際に、少なくとも1つの架橋剤を使用する場合には、この使用量は例えば2Mol%まで、例えば0.001〜1Mol%である。
【0042】
さらに、このカチオン性ポリマーは、架橋剤の事後の添加によって修飾されることができ、すなわち、アミノ基に対して反応性の基少なくとも2を有する化合物の添加によって修飾されることができ、この例は次のものである:
−ジ−及びポリグリシジル化合物、
−ジ−及びポリハロゲン化合物、
−2以上のイソシアナート基を有する化合物、結果的にブロック化された炭酸誘導体、
−マイケル付加に適している2以上の二重結合を有する化合物、
−ジ−及びポリアルデヒド、
−モノエチレン性不飽和カルボン酸、そのエステル及び無水物。
【0043】
カチオン性化合物としてさらに、重付加反応により生じさせることができるポリマー、例えば特に、アジリジンを基礎とするポリマーが考慮される。この場合に、ホモポリマーもグラフトポリマーも発生し、これは、他のポリマーへのアジリジンのグラフト化により生じる。ここでも、この重付加の間又は後に、アジリジン又は形成されたアミン基と反応できる少なくとも2の基を有する架橋剤、例えばエピクロロヒドロン又はジハロゲンアルカンを添加することが好ましい(参照、Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, VCH, Weinheim, 1992, アジリジンに関する章)。
【0044】
この種の好ましいポリマーは、エチレンイミンを基礎とし、例えばエチレンイミンの重合により製造されたエチレンイミンのホモポリマー又はエチレンイミンでグラフトしたポリマー、例えばポリアミドアミンである。
【0045】
更なる適したカチオン性ポリマーは、ジアルキルアミンとエピクロロヒドリン又は二官能性又は多官能性エポキシドとの反応生成物、例えば、ジメチルアミンとエピクロロヒドリンとの反応生成物である。
【0046】
カチオン性ポリマーとして、重縮合物、例えばリシン、アルギニン及びヒスチジンのホモ−又はコポリマーも適する。これは、ホモポリマーとして又は他の天然の又は合成のアミノ酸又はラクタムと一緒のコポリマーとして使用されることができる。例えば共重合のためには、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、フェニルアラニン、トリプトファン、プロリン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン又はカプロラクタムも適する。
【0047】
カチオン性重合としてさらに、二官能性カルボン酸と多官能性アミンとの縮合物が使用されることができ、その際、この多官能性アミンは第一級アミノ基少なくとも2及び反応性の少ない、すなわち、第二級、第三級又は第四級の更なるアミノ基少なくとも1を有する。例えば、ジエチレントリアミン又はトリエチレンテトラミンとアジピン−、マロン−、グルタル−、シュウ酸−又はコハク酸との重縮合生成物である。
【0048】
アミノ基を有する多糖、例えばキトサンも、カチオン性ポリマーとして適する。
【0049】
さらに、前述の、第一級又は第二級アミノ基を有するポリマーの全ては、先のEP出願07150232.2に記載のとおり、反応性オリゴエチレンイミンを用いて修飾されることができる。この出願において、グラフト基体が、ビニルアミン単位を有するポリマー、ポリアミン、ポリアミドアミン及びエチレン性不飽和酸のポリマーの群から選択され、かつこれが側鎖としてオリゴアルキレンイミン側鎖だけ含有するグラフトポリマーが記載される。オリゴアルキレンイミン側鎖を有するグラフトポリマーの製造は、前述のグラフト基体に対して、末端のアジリジン基を含有する少なくとも1のオリゴアルキレンイミンをグラフトさせることにより行われる。
【0050】
本発明の方法の好ましい一実施態様において、水溶性カチオン性ポリマーとして、ビニルアミン単位を有するポリマーが使用される。
【0051】
本発明の方法において、前もって記載の水溶性カチオン性ポリマーの他に、アニオン性ポリマーも紙料に添加される。
【0052】
この場合に、アニオン性ポリマーは本発明により少なくとも1のアニオン性ラテックス及び少なくとも1の分解されたデンプンを含有する。
【0053】
ラテックスとの概念下には、本発明の意味合いにおいて、水不溶性ホモ−及びコポリマーが理解され、これは好ましくは分散液又はエマルションの形で使用される。
【0054】
分解されたデンプンとの概念下には、本発明の意味合いにおいて、平均分子量Mw1000〜65000を有するデンプンが理解される。
【0055】
このラテックスは、好ましくは、少なくとも40質量%、特に少なくとも60質量%、特に好ましくは少なくとも80質量%がいわゆる主モノマー(a)からなる。
【0056】
主モノマー(a)は、C1〜C20−アルキル(メタ)アクリラート、炭素原子20個までを有するカルボン酸のビニルエステル、炭素原子20個までを有するビニル芳香族化合物、エチレン系不飽和ニトリル、ビニルハロゲン化物、炭素原子1〜10個を有するアルコールのビニルエーテル、炭素原子2〜8個及び1個又は2個の二重結合を有する脂肪族炭化水素又はこれらのモノマーの混合物から選択されている。
【0057】
例えば、C1〜C10−アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、例えばメタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、n−ブチルアクリラート、イソブチルアクリラート、アクリル酸エチル及び2−エチルヘキシルアクリラートを挙げることができる。
【0058】
殊に、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの混合物も適している。
【0059】
炭素原子1〜20個を有するカルボン酸のビニルエステルは、例えばラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニルエステル(Versaticsaeurevinylester)及び酢酸ビニルである。
【0060】
20個までのC原子を有するビニル芳香族化合物として、ビニルトルエン、α−及びp−メチルスチレン、α−ブチルスチレン、4−n−ブチルスチレン、4−n−デシルスチレンが、好ましくはスチレンが考慮に入れられる。エチレン性不飽和ニトリルの例は、アクリルニトリル及びメタクリルニトリルである。
【0061】
ビニルハロゲン化物は、塩素、フッ素又は臭素で置換されたエチレン性不飽和化合物、好ましくは塩化ビニル及び塩化ビニリデンである。
【0062】
1〜10個のC原子を含有するアルコールのビニルエーテルとして、例えばビニルメチルエーテル又はビニルイソブチルエーテルを挙げることができる。好ましくは1〜4個のC原子を含有するアルコールのビニルエーテルである。
【0063】
炭素原子2〜8個及び1個又は2個のオレフィン性二重結合を有する脂肪族炭化水素として、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン及びクロロプレンを挙げることができる。
【0064】
好ましい主モノマー(a)は、C1〜C20−アルキル(メタ)アクリレート及びアルキル(メタ)アクリレートとビニル芳香族化合物、殊にスチレンとの混合物(包括的にポリアクリレート−ラテックスとも呼ばれる)又は2個の二重結合を有する炭化水素、殊にブタジエン、又はこのような炭化水素とビニル芳香族化合物、殊にスチレンとの混合物(包括的にポリブタジエン−ラテックスとも呼ばれる)である。
【0065】
主モノマー(a)の他に、このラテックスは更なるモノマー(b)を含有することができ、例えばヒドロキシ基含有モノマー、特にC1〜C10−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリラート、及びアルコキシ基を有するモノマーであり、これは例えば、ヒドロキシ基含有モノマーとアルコキシド、特にエチレンオキシド又はプロピレンオキシドとのアルコキシル化により得られる。
【0066】
更なるモノマー(b)は、少なくとも2個のラジカル重合可能な二重結合を有する化合物であり、これは好ましくは2〜6個、特に好ましくは2〜4個、特にとりわけ好ましくは2〜3個、とりわけ2個である。この種の化合物は、架橋剤とも呼ばれる。
【0067】
この架橋剤(b)の少なくとも2個のラジカル重合可能な二重結合は、この場合に、(メタ)アクリル−、ビニルエーテル−、ビニルエステル−、アリルエーテル−及びアリルエステル基からなる群から選択されることができる。架橋剤(b)のための例は、1,2−エタンジオールジ(メタ)アクリラート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリラート、1,2−プロパンジオールジ(メタ)アクリラート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリラート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリラート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリラート、トリメチロールプロパントリオールジ(メタ)アクリラート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリラート、トリメチロールプロパントリオールジ(メタ)アクリラート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリラート、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、ジビニルベンゼン、アリルアクリラート、アリルメタクリラート、メタリルアクリラート、メタリルメタクリラート、(メタ)アクリル酸ブタ−3−エン−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸ブタ−2−エン−1−イルエステル、(メタ)アクリル酸3−メチル−ブタ−2−エン−1−イルエステル、(メタ)アクリル酸と次のものとのエステル、ゲラニオール、シトロネロール、ケイ皮アルコール、グリセリンモノー又は−ジアリルエーテル、トリメチロールプロパンモノー又は−ジアリルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジプロピレングリコールモノアリルエーテル、1,3−プロパンジオールモノアリルエーテル、1,4−ブタンジオールモノアリルエーテル並びにさらにイタコン酸ジアリルエステルである。好ましくはアリルアクリラート、ジビニルベンゼン、1,4−ブタンジオールジアクリラート及び1,6−ヘキサンジオールジアクリラートである。
【0068】
さらに、アニオン性ラテックスはさらなるモノマー(c)、例えばカルボン酸基を有するモノマー、その塩又は無水物を含むことができる。例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸又はフマル酸及びアコニット酸を挙げることができる。ラテックス中のエチレン性不飽和酸の含有量は一般的に10質量%より少ない。このモノマー(c)の割合は、例えば少なくとも1質量%、好ましくは少なくとも2質量%、特に好ましくは少なくとも3質量%である。ラテックスの酸基は場合によって後の適用前に少なくとも部分的に中和されていることができる。好ましくは、この酸基の少なくとも30mol%、特に好ましくは50〜100mol%が中和される。塩基としては、揮発性塩基、例えばアンモニア又は非揮発性塩基、例えばアルカリ金属水酸化物、特に苛性ソーダが適する。
【0069】
本発明の第1の実施態様において、上で挙げたモノマーからなるアニオン性ラテックスはガラス転移温度(DSCを用いて測定して)−50〜+50℃、好ましくは−50〜+10℃、特に好ましくは−40〜+5℃、特にとりわけ好ましくは−30〜0℃を有する。
【0070】
このガラス転移温度Tgは、当業者に一般的に知られている。これによって、ガラス転移温度の限界値が意図され、G.カニッヒ(G.Kanig)(コロイドマガジン&ポリマーマガジン第190巻1頁、方程式1(Kolloid-Zeitschrift & Zeitschrift fuer Polymer, 190巻, 1頁, 式1))によると、このガラス転移温度は分子量の増大とともに限界値に向かう傾向にある。このガラス転移温度は、DSC法(示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry)、20K/分、中点値、DIN53765)により算出される。
【0071】
Fox (T.G. Fox, Bull. Am. Phys. Soc. 1956 [Ser. II]1 , 第123頁及びUIImann's Encyclopaedie der technischen Chemie, 第19巻, 第18頁, 第4版, Verlag Chemie, Weinheim, 1980)によれば、最も弱く架橋したコポリマーのガラス転移温度Tgに関して以下の良好な近似が成立する:
【数1】

上記式中、x1,x2,....xnは、モノマー1,2,,....nの質量分数を表わし、Tg1,Tg2,....Tgnは、それぞれモノマー1,2,,....nの1つから形成されたポリマーのケルビン度でのガラス転移温度を表わす。大抵のモノマーのホモポリマーのためのTg値は知られており、例えばUllmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 5巻, Vol. A21 , 169頁, VCH Weinheim, 1992に詳説されている。ホモポリマーのガラス転移温度のための更なる供給源を、例えばJ. Brandrup, E. H. Immergut, Polymer Handbook, 1 st Ed., J. Wiley, New York, 1966, 2nd Ed., J. Wiley, New York, 1975,及び3rd Ed., J. Wiley, New York, 1989が構成する。
【0072】
当業者には、前もって挙げた文献の助けによって、モノマーの選択によってこの相応するガラス転移温度を有するアニオン性ラテックスが得られることが知られている。
【0073】
この第1の実施態様の好ましく使用されるアニオン性ラテックスは、例えば、
(1)スチレン及び/又はアクリルニトリル又はメタクリルニトリル、
(2)C1〜C10−アルコールのアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステル、及び場合により
(3)アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸及び/又はイタコン酸
から構成される水性分散液である。
【0074】
特に好ましくは、アニオン性ラテックスの水性分散液は、
(1)スチレン及び/又はアクリルニトリル、
(2)C1〜C4−アルコールのアクリル酸エステル、及び場合により
(3)アクリル酸
から構成される。
【0075】
例えば、この種の特に好ましいポリアクリラート−ラテックスは、スチレン2〜20質量%、アクリルニトリル2〜20質量%、C1〜C4−アルキルアクリラート、好ましくはC4−アクリラート、例えばn−ブチルアクリラート、イソブチルアクリラート及び/又はtert−ブチルアクリラート60〜95質量%、及びアクリル酸0〜5質量%を含有する。
【0076】
本発明の第2の実施態様において、アニオン性ラテックスは上で挙げたモノマーの他に、少なくとも1のホスホン−及び/又はリン酸基含有モノマーを重合導入して含有し、その際、これは、遊離の酸基を有するモノマーも、同様に、その塩、エステル及び/又は無水物であることもできる。
【0077】
好ましくは、モノエチレン性不飽和C3〜C8−カルボン酸と、場合によってモノアルコキシル化されたホスホン−及び/又はリン酸とのエステル化によって得られるホスホン−及び/又はリン酸基含有モノマーが使用される。特に好ましくは、モノエチレン性不飽和C3〜C8−カルボン酸と、一般式(VIII)
【化6】

[式中、
Xは、直鎖状又は分枝鎖状のC2〜C6−アルキレンオキシド単位を、
nは、0〜20の整数を意味する]
の場合によってモノアルコキシル化されたリン酸とのエステル化によって得られる、場合によってモノアルコキシル化されたリン酸基含有モノマーである。
【0078】
好ましくは、Xが直鎖状又は分枝鎖状のC2〜C3−アルキレンオキシド単位であり、かつnが5〜15の整数である、式(VIII)のモノアルコキシル化されたリン酸が使用される。特に好ましくはXはエチレン−又はプロピレンオキシド単位、特に好ましくはプロピレンオキシド単位である。
【0079】
無論、様々な、場合によってモノアルコキシル化したホスホン酸及び式(VIII)の場合によってモノアルコキシル化したリン酸との任意の混合物も、モノエチレン性不飽和C3〜C8カルボン酸とのエステル化のために使用できる。好ましくは、式(VIII)のモノアルコキシル化リン酸の混合物が使用され、これは同一のアルキレンオキシド単位、好ましくはプロピレンオキシドを含有するが、しかし、異なるアルコキシル化度、好ましくはプロポキシル化度を有する。モノアルコキシ化リン酸の特に好ましい混合物は、5〜15単位のプロピレンオキシドを含み、すなわち、nは5〜15の整数である。
【0080】
ホスホン−及び/又はリン酸基含有モノマーの製造には、3〜8個のC原子を有するモノエチレン性不飽和カルボン酸が、上で挙げた場合によってモノアルコキシル化したホスホン−及び/又はリン酸と、好ましくは一般式(VIII)の場合によってモノアルコキシル化したリン酸とがエステル化される。この種のモノエチレン性不飽和C3〜C8カルボン酸は、例えばアクリル酸、メタクリル酸、ジメチルアクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、シトラコン酸、メチレンマロン酸、クロトン酸、フマル酸、メサコン酸及びイタコン酸である。好ましくはアクリル酸及びメタクリル酸が使用される。
【0081】
無論、モノエチレン性不飽和C3〜C8カルボン酸の混合物も、場合によってモノアルコキシル化したホスホン−及び/又はリン酸との、好ましくは式(VIII)の場合によってモノアルコキシル化したリン酸とのエステル化のために使用されることができる。しかし、好ましくは、モノエチレン性不飽和カルボン酸、例えばアクリル酸又はメタクリル酸のみが使用される。
【0082】
好ましく使用される、この第2の実施態様のアニオン性ラテックスは、例えば、
(1)スチレン及び/又はアクリルニトリル又はメタクリルニトリル、
(2)C1〜C10−アルコールのアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステル、及び場合により
(3)アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸及び/又はイタコン酸、及び
(4)式(VIII)の場合によってモノアルコキシル化したリン酸の(メタ)アクリル酸エステル、その際X及びnは前述の意味合いを有する、
から構成される水性分散液である。
【0083】
特に好ましくは、アニオン性ラテックスの水性分散液は、
(1)スチレン及び/又はアクリルニトリル、
(2)C1〜C4−アルコールのアクリル酸エステル、及び場合により
(3)アクリル酸、及び
(4)式(VIII)のモノアルコキシル化したリン酸の(メタ)アクリル酸エステル、その際Xはプロピレンオキシド単位であり、かつnは5〜15の整数である、
から構成される。
【0084】
例えば、この種の特に好ましいポリアクリラートラテックスは、スチレン2〜25質量%、アクリルニトリル2〜25質量%、C1〜C4−アルキルアクリラート、好ましくはC4−アクリラート、例えばn−ブチルアクリラート、イソブチルアクリラート及び/又はtert−ブチルアクリラート50〜95質量%、アクリル酸0〜5質量%及び式(VIII)のモノアルコキシル化したリン酸の(メタ)アクリル酸エステル0.1〜5質量%を含み、その際、Xはプロピレンオキシド単位であり、かつnは5〜15の整数である。
【0085】
通常は、この第2の実施態様のアニオン性ラテックスのガラス転移温度(DSCを用いて測定)は、−40〜+50℃の範囲内にある。好ましくは、ガラス転移温度−20〜+20℃、特に好ましくは−10〜+10℃を有するアニオン性ラテックスが、微細分散した充填物質の本発明による水性スラリー中で使用される。
【0086】
アニオン性ラテックスの製造は、前述の両方の実施態様とは無関係に通常はエマルション重合により行われ、したがって、これはエマルションポリマーである。ラジカルエマルション重合の方法に応じた水性ポリマー分散液の製造は自体公知である(Houben-Weyl, Methoden der organischen Chemie, XIV巻, Makromolekulare Stoffe, loc. cit, 133頁〜参照のこと)。
【0087】
ラテックスの製造のためのエマルション重合の場合、イオン性及び/又は非イオン性の乳化剤及び/又は保護コロイドもしくは安定化剤が、界面活性化合物として使用される。この界面活性物質は、通常は、この重合すべきモノマーに対して0.1〜10質量%、特に0.2〜3質量%の量で使用される。
【0088】
慣用の乳化剤は、例えば、高級脂肪アルコールスルファートのアンモニウム−又はアルカリ金属塩、例えば、Na−n−ラウリルスルファート、脂肪アルコールホスファート、エトキシル化C8〜C10−アルキルフェノールであってエトキシル化度3〜30を有するもの並びにエトキシル化C8〜C25−脂肪アルコールであってエトキシル化度5〜50を有するものである。非イオン性及びイオン性乳化剤から構成される混合物も考えられる。さらに、ホスファート又はスルファート基含有の、エトキシル化及び/又はプロポキシル化したアルキルフェノール及び/又は脂肪アルコールが適する。更なる適した乳化剤は、Houben-Weyl, Methoden der organischen Chemie、第XIV巻、Makromolekulare Stoffe, Georg Thieme Verlag, Stuttgart 1961年、第192〜209頁に詳説されている。
【0089】
ラテックスの製造のためのエマルション重合のための水溶性開始剤は、例えば、ペルオキシ二硫酸のアンモニウム−及びアルカリ金属塩、例えばナトリウムペルオキソジスルファート、過酸化水素又は有機ペルオキシド、例えばtert−ブチルヒドロペルオキシドである。適しているのは、いわゆる還元−酸化(レドックス)開始剤系でもある。
【0090】
開始剤の量は一般的に、この重合すべきモノマーに対して0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%である。乳化重合の際に、複数の異なった開始剤を使用することもできる。
【0091】
エマルション重合に際して調節剤が、重合されるべきモノマー100質量部に対して例えば0〜3質量部の量で使用されることができ、これによりモル質量が低下される。適しているのは、例えばチオール基を有する化合物、例えばt−ブチルメルカプタン、チオグリコール酸エチルアクリルエステル、メルカプトエチノール、メルカプトプロピルトリメトキシシラン又はt−ドデシルメルカプタン又はチオール基を有さない調節剤、殊に、例えばテルピノールである。
【0092】
ラテックスの製造のためのエマルション重合は、通常は30〜130℃、好ましくは50〜100℃で行われる。重合媒体は、水のみからなっていても、水及び水と混合可能な液体、例えばメタノールとからなる混合物からなってもよい。好ましくは水のみが使用される。エマルション重合は、バッチプロセスのみならず、段階方式又は勾配方式を含めた供給法の形でも実施することができる。重合バッチの一部を装入し、重合温度に加熱し、先立って重合し、引き続き該重合バッチの残部を、通常、その1つ又は複数がモノマーを純粋な形で又は乳化された形で含有する、複数の空間的に分離された供給を介して、連続的に、段階的に又は濃度勾配の重ね合わせ下で、重合の維持下で重合帯域に供給する供給法が好ましい。重合の際に、例えば粒度をより良好に調整するために、ポリマーシードを装入してもよい。
【0093】
開始剤をラジカル水性エマルション重合の過程で重合容器に添加する方法は、平均的な当業者に知られている。それは完全に重合容器中に装入してもよいし、ラジカル水性エマルション重合の過程におけるその消費に応じて連続的に又は段階的に使用してもよい。これは具体的に、開始剤系の化学的性質のみならず重合温度にも依存する。好ましくは、一部を装入し、この残りは重合帯域の消費の度合いに応じて供給する。
【0094】
残留モノマーを除去するために、通常、実際のエマルション重合の終了後にも、すなわち少なくとも95%のモノマーの変換後にも開始剤を添加してよい。
【0095】
個々の成分は、供給法の場合には、上部から、側方で、又は反応器の底部を通って下部から反応器に添加することができる。
【0096】
この共重合に引き続き、このラテックス中に含まれる酸基は更に少なくとも部分的に中和されることができる。これは例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、カーボナート又はヒドロゲンカーボナートを用いて、好ましくは水酸化物を用いて行われることができ、これには1以上の任意の対イオン、例えばLi+、Na+、K+、Cs+、Mg2+、Ca2+又はBa2+が会合していることができる。さらに中和のために適しているのは、アンモニア又はアミンである。好ましくは、水性の水酸化アンモニウム−、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの溶液である。
【0097】
エマルション重合の際に、ラテックスの水性分散液は通常、15〜75質量%、有利には40〜75質量%の固体含有率で得られる。
【0098】
このラテックスの粒径は好ましくは10〜1000nm、特に好ましくは50〜300nmの範囲内(Malvern(R) Autosizer 2 Cで測定)にある。
【0099】
本発明により使用可能なアニオン性ポリマーは、少なくとも1のアニオン性ラテックス及び少なくとも1の分解したデンプンを含有する。前述のとおり、この分解したデンプンは、1000〜65000g/molの平均分子量Mwを有する。この分解したデンプンの平均分子量Mwは、当業者に知られた方法により容易に算出されることができ、例えば多角度光散乱検出器を使用してゲル浸透クロマトグラフィを用いて算出されることができる。
【0100】
このようなデンプンを得るためには、全デンプン種から出発でき、例えば天然の、アニオン性の、カチオン性の又は両性のデンプンから出発できる。このデンプンは、例えばジャガイモ、トウモロコシ、コムギ、コメ、タピオカ、ソルガムに由来することができるか、又は、もち性デンプンであることができ、これはアミロペクチン含有量>80質量%、好ましくは95質量%を有し、例えばもち性トウモロコシデンプン又はもち性ジャガイモデンプンである。このデンプンは、アニオン性及び/又はカチオン性に修飾、エステル化、エーテル化及び/又は架橋されていることができる。好ましくはカチオン性化したデンプンである。
【0101】
このデンプンの分子量Mwが既に1000〜65000g/molの範囲にない場合には、これは分子量減成に供せられる。この分子量減成は、酸化により、熱により、アシドール化により、又は酵素により行われることができる。好ましくは、デンプンが酵素により及び/又は酸化により分解される方式である。この分解されたデンプンのモル質量Mwは好ましくは2500〜35000g/molの範囲内にある。
【0102】
特に好ましくは、アニオン性又はカチオン性のデンプンの使用である。このようなデンプンは知られている。アニオン性デンプンは例えば、天然デンプンの酸化により入手できる。カチオン性デンプンは例えば、天然デンプンと少なくとも1の第四級化剤、例えば2,3−エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドとの反応により製造される。このカチオン性デンプンは、第四級アンモニウム基を含む。
【0103】
置換されたデンプン中のカチオン性又はアニオン性基の割合は、置換度(DS)を用いて記載される。これは例えば0.005〜1.0、好ましくは0.01〜0.4である。
【0104】
唯一の分解されたデンプン又は2以上の分解されたデンプンから構成される混合物も使用できる。
【0105】
特に好ましい形態においては、分解されたデンプンとしてマルトデキストリンが使用される。本発明の意味合いにおいてマルトデキストリンは、デンプンの酵素分解により獲得された水溶性炭水化物であり、これは、グルコース単位からなり、かつ、デキストロース当量を有する。
【0106】
アニオン性ポリマーは、様々な方式で、少なくとも1のアニオン性ラテックス及び少なくとも1の分解されたデンプンから製造されることができる。例えば、まず、前述したモノマーからエマルション重合によりアニオン性ラテックスを製造する。引き続き、この分解されたデンプンを添加し、この成分を相互に混合する。この分解されたデンプンの添加は通常は室温で行われる。同様に可能であるのは、この分解されたデンプンを前述したモノマーに添加し、そしてこのエマルション重合をこれにより分解されたデンプンの存在下で行うことである。
【0107】
パルプを製造するための繊維材料として、このために一般に使用されている全ての品質、例えば木材パルプ、さらしパルプ及び未ざらしパルプ並びに全ての一年生植物からの紙料が挙げられる。木材パルプには、例えば砕木パルプ、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、加圧式砕木パルプ、セミケミカルパルプ、高収率パルプ及びリファイナーメカニカルパルプ(RMP)が属する。ケミカルパルプとして、例えば硫酸塩パルプ、亜硫酸塩パルプ及びソーダパルプが考慮に値する。好ましくは、未漂白クラフトパルプとも呼ばれる、未漂白パルプが用いられる。紙料の製造に適した一年生植物は、例えばイネ、コムギ、サトウキビ及びケナフである。パルプの製造のために大抵、単独でか又は別の繊維材料との混合物で使用されるか、或いは一次材料と返送された塗被切落紙との繊維混合物、例えば返送された塗被切落紙との混合物の漂白された松硫酸塩から出発する古紙が使用される。
【0108】
本発明による方法は、古紙からの紙及び板紙の製造のために工業的興味がもたれ、というのも、これは返送される繊維の強度特性を顕著に高めるからであり、そして、印刷紙(graphische Papier)及び包装紙の強度特性の改善にも特別な意義を有する。本発明の方法により得られる紙は意外なことに、番号09150237.7を有する先のヨーロッパ出願の方法に応じて製造可能な紙に比較してより高い乾燥強度を有する。同時に、本発明の方法により、この製造のために使用される原質からの微細物質及び充填物質(Fein- und Fuellstoffe)の保持が高められ、この場合に、この紙の強度特性が不利に作用されることはない。
【0109】
この原質懸濁液のpH値は、例えば4.5〜8、大抵6〜7.5の範囲内である。pH値を調節するために、例えば酸、例えば硫酸又は硫酸アルミニウムが使用されてよい。
【0110】
本発明による方法では好ましくはまず、カチオン性ポリマーが紙料に計量供給される。カチオン性ポリマーの添加はこの場合に、濃厚紙料(繊維濃度>15g/l、例えば25〜40g/l〜60g/lまでの範囲内)又は好ましくは希薄紙料(繊維濃度<15g/l、例えば5〜12g/lの範囲内)へと行われる。添加位置は好ましくはワイヤの前方であるが、しかし、剪断段階とスクリーンとの間又はその後であってもよい。アニオン性ポリマーは、好ましくはカチオン性ポリマーの添加後に初めて紙料に添加されるが、しかし、同時に、しかしカチオン性ポリマーとは別個に紙料に計量供給されてもよい。更に、まずアニオン性ポリマーを添加し、次にカチオン性ポリマーを添加することも可能である。
【0111】
カチオン性ポリマーは例えば、乾燥紙料に対して0.03〜2.0質量%、好ましくは0.1〜0.5質量%の量で使用される。この水不溶性アニオン性ポリマーは、例えば、乾燥紙料に対して0.5〜10質量%、好ましくは1〜6質量%、特に2.5〜5.5質量%の量で使用される。
【0112】
水溶性カチオン性ポリマーの水不溶性アニオン性ポリマーに対する質量比は、固形物含有量に対して、例えば1:5〜1:20、好ましくは1:10〜1:15の範囲内、特に好ましくは1:10〜1:12の範囲内にある。
【0113】
本発明の方法では、この紙製造の際に通常使用されるプロセス化学薬品は通常の量で使用されることができ、これは例えば歩留向上剤、脱水剤、他の乾燥増強剤、例えばデンプン、顔料、充填剤、光学的増白剤、脱泡剤、殺生剤及び紙着色剤である。
【0114】
本発明を、限定するものでない実施例に基づき詳細に説明する。
【0115】
実施例
実施例中のパーセント記載は、文脈から特に明らかでない限り質量パーセントを意味する。
【0116】
ポリマーのK値は、Fikentscher, Cellulose-Chemie, 第13巻, 58〜64及び71〜74(1932)の記載により、20℃の温度で5質量%の食塩溶液中でpH値7及び0.5%のポリマー濃度で測定された。この場合、Kは、k・1000を意味する。
【0117】
カチオン性ポリマーA
このポリマーを、ポリ−N−ビニルホルムアミドの塩酸を用いた加水分解により製造した。このポリマーの加水分解度は50Mol%であり、すなわち、このポリマーは50Mol%のN−ビニルホルムアミド単位及び50Mol%のビニルアミン単位を塩の形で含有した。この水溶性カチオン性ポリマーのK値は90であった。
【0118】
カチオン性ポリマーB
カチオン性ポリマーAで記載のとおりの製造を行ったが、しかし、このポリマーの加水分解度は30Mol%であった点で異なる。この水溶性カチオン性ポリマーBは、70Mol%のN−ビニルホルムアミド単位及び30Mol%のビニルアミン単位を塩の形で含有した。この水溶性カチオン性ポリマーのK値は90であった。
【0119】
アニオン性ポリマー1
錨型撹拌機を備えた4lのフラットフランジ容器中に脱塩水411.6g、ポリスチレンシード(固形物含有量33%、平均粒径29nm)14.6g及びドデシルフェノキシベンゼンジスルホン酸−ナトリウム塩の45質量%溶液(Dowfax(R) 2A1 , Dow Chemicals)1.4g並びに7質量%のナトリウムペルオキソジスルファート溶液15.4gを装入した。制御された、外側にある油浴を介してこの反応容器を撹拌下で93℃に加熱した。この温度に達すると、前もって製造したモノマーエマルション(脱塩水534.4g、15質量%のナトリウムラウリルスルファート溶液(Disponil(R) SDS 15, Cognis)22.4g、45質量%のドデシルフェノキシベンゼンジスルホン酸−ナトリウム塩溶液(Dowfax(R) 2A1 , Dow Chemicals)8g、10質量%の水酸化ナトリウム溶液12g、アクリル酸35g、スチレン168g、n−ブチルアクリラート829g及びアクリルニトリル168gからなる)を、一様に、2時間45分のうちに計量供給した。これと並行して、7質量%のナトリウムペルオキシジスルファート溶液49.7gを計量供給した。このバッチを、温度を一定に維持しながら更なる45分間撹拌した。引き続き、10質量%の水酸化ナトリウム溶液93.6gを添加し、この反応内容物を60℃に冷却した。引き続き、並行して2つの供給物(これは、a)10質量%のtert−ブチルヒドロペルオキシド溶液24g、及び、b)二亜硫酸ナトリウム2.67gとアセトン1.62gからの付加生成物を含有する3質量%溶液33g、からなる)を30分間のうちに計量供給した。この反応内容物を室温に冷却した。
【0120】
実質的に凝結物不含のポリマー分散液を固形物含有量51質量%で獲得した。このポリマーは、DSCにより測定したガラス転移温度+5℃を有した。
【0121】
脱塩水810gの添加によりこの固形物含有量を30質量%に低下させた。引き続き、マルトデキストリンの30質量%溶液(Cargill社, MD(R) 09015)404gを添加混合した。
【0122】
この得られた混合物は30質量%の固形物含有量及びpH値6.5を有した。
【0123】
アニオン性ポリマー2
ポリマー2をポリマー1と同様に製造したが、しかし、この混合の際に30質量%に希釈したマルトデキストリン溶液(Cerestar社、Staerke019 S1)を使用した。
【0124】
アニオン性ポリマー3
錨型撹拌機を備えた4lのフラットフランジ容器中に脱塩水411.6g、ポリスチレンシード(固形物含有量33%、平均粒径29nm)14.6g及びドデシルフェノキシベンゼンジスルホン酸−ナトリウム塩の45質量%の溶液(Dowfax(R) 2A1 , Dow Chemicals)1.4g並びに7質量%のナトリウムペルオキソジスルファート溶液15.4gを装入した。制御された、外側にある油浴を介してこの反応容器を撹拌下で93℃に加熱した。この温度に達すると、前もって製造したモノマーエマルション(脱塩水534.4g、15質量%のナトリウムラウリルスルファート溶液(Disponil(R) SDS 15, Cognis)22.4g、45質量%のドデシルフェノキシベンゼンジスルホン酸−ナトリウム塩溶液(Dowfax(R) 2A1 , Dow Chemicals)8g、10質量%の水酸化ナトリウム溶液12g、アクリル酸36g、スチレン60g、n−ブチルアクリラート1044g及びアクリルニトリル60gからなる)を、一様に、2時間のうちに計量供給した。これと並行して、2.5時間のうちに、7質量%のナトリウムペルオキシジスルファート溶液49.8gを計量供給した。このバッチを、温度を一定に維持しながら更なる45分間撹拌した。引き続き、10質量%の水酸化ナトリウム溶液93.6gを添加し、この反応内容物を60℃に冷却した。引き続き、並行して2つの供給物(これは、a)10質量%のtert−ブチルヒドロペルオキシド溶液24g、及び、b)二亜硫酸ナトリウム2.67gとアセトン1.62gからの付加生成物を含有する13質量%溶液33g、からなる)を30分間のうちに計量供給した。この反応内容物を室温に冷却した。
【0125】
実質的に凝結物不含のポリマー分散液を固形物含有量50質量%で獲得した。このポリマーは、DSCにより測定したガラス転移温度−25℃を有した。
【0126】
脱塩水810gの添加によりこの固形物含有量を30質量%に低下させた。引き続き、マルトデキストリンの30質量%溶液(Cargill社, MD(R) 09015)404gを添加混合した。
【0127】
この得られた混合物は30質量%の固形物含有量及びpH値6.4を有した。
【0128】
アニオン性ポリマー4
錨型撹拌機を備えた4lのフラットフランジ容器中に脱塩水340.8g、ポリスチレンシード(固形物含有量33%、平均粒径29nm)14.6g及びドデシルフェノキシベンゼンジスルホン酸−ナトリウム塩の45質量%の溶液(Dowfax(R) 2A1 , Dow Chemicals)1.4g並びに7質量%のナトリウムペルオキソジスルファートの溶液15.4gを装入した。制御された、外側にある油浴を介してこの反応容器を撹拌下で93℃に加熱した。この温度に達すると、前もって製造したモノマーエマルション(脱塩水483.6g、15質量%のナトリウムラウリルスルファート溶液(Disponil(R) SDS 15, Cognis)22.4g、45質量%のドデシルフェノキシベンゼンジスルホン酸−ナトリウム塩溶液(Dowfax(R) 2A1 , Dow Chemicals)8g、10質量%の水酸化ナトリウム溶液12g、末端にリン酸でエステル化したオリゴプロピレンオキシドを有するメタクリル酸エステル(Sipomer(R) PAM 200: CH2=C(CH3)-COO-(CH2CH(CH3)O)8-10-P(O)(OH)2, Rhodia)12g、アクリル酸24g、スチレン168g、n−ブチルアクリラート828g及びアクリルニトリル168gからなる)を、一様に、2時間45分のうちに計量供給した。これと並行して、4質量%のナトリウムペルオキシジスルファート溶液87gを計量供給した。このバッチを、温度を一定に維持しながら更なる45分間撹拌した。引き続き、10質量%の水酸化ナトリウム溶液62.4gを添加し、この反応内容物を60℃に冷却した。引き続き、並行して2つの供給物(これは、a)3質量%のtert−ブチルヒドロペルオキシド溶液80g、及び、b)脱塩水53.4gであって二亜硫酸ナトリウム2.67g及びアセトン1.62gからの付加生成物を含有する13質量%溶液33gを有するもの、からなる)を30分間のうちに計量供給した。この反応内容物を室温に冷却した。
【0129】
実質的に凝結物不含のポリマー分散液を固形物含有量50質量%で獲得した。このポリマーは、DSCにより測定したガラス転移温度+4℃を有した。
【0130】
脱塩水810gの添加によりこの固形物含有量を30質量%に低下させた。引き続き、マルトデキストリンの30質量%溶液(Cargill社, MD(R) 09015)404gを添加混合した。
【0131】
この得られる混合物は30質量%の固形物含有量、pH値6.5を有し、かつ、動的光散乱(Malvern HPPS)により測定された粒径137nmを有した。
【0132】
アニオン性ポリマー5
錨型撹拌機を備えた4lのフラットフランジ容器中に脱塩水1064.6g、ポリスチレンシード(固形物含有量33%、平均粒径29nm)7.2g及びドデシルフェノキシベンゼンジスルホン酸−ナトリウム塩の45質量%の溶液(Dowfax(R) 2A1 , Dow Chemicals)0.6g及びマルトデキストリン(Cargill社, MD(R) 09015)240.0g並びに7質量%のナトリウムペルオキソジスルファート溶液7.8gを装入した。制御された、外側にある油浴を介してこの反応容器を撹拌下で93℃に加熱した。この温度に達すると、前もって製造したモノマーエマルション(脱塩水267.2g、15質量%のナトリウムラウリルスルファート溶液(Disponil(R) SDS 15, Cognis)11.2g、45質量%のドデシルフェノキシベンゼンジスルホン酸−ナトリウム塩溶液(Dowfax(R) 2A1 , Dow Chemicals)4g、10質量%の水酸化ナトリウム溶液6g、アクリル酸18g、スチレン84g、n−ブチルアクリラート414g及びアクリルニトリル84gからなる)を、一様に、2時間のうちに計量供給した。これと並行して、2.5時間のうちに、2.5質量%のナトリウムペルオキシジスルファート溶液34.8gを計量供給した。このバッチを、温度を一定に維持しながら更なる45分間撹拌した。引き続き、10質量%の水酸化ナトリウム溶液46.8gを添加し、この反応内容物を60℃に冷却した。引き続き、並行して2つの供給物(これは、a)2質量%のtert−ブチルヒドロペルオキシド溶液30g、及び、b)脱塩水55.6gであって二亜硫酸ナトリウム2.67g及びアセトン1.62gからの付加生成物を含有する13質量%溶液16.4gを有するもの、からなる)を30分間のうちに計量供給した。この反応内容物を室温に冷却した。
【0133】
実質的に凝結物不含のポリマー分散液が固形物含有量29.3質量%、pH値6.1を有して獲得された。このポリマーは、DSCを介して測定されたガラス転移温度+5℃を有した。動的光散乱(Malvern HPPS)により測定された粒径は149nmであった。
【0134】
紙料懸濁液の製造
100%混合された古紙から0.5%の水性原質懸濁液を製造した。この懸濁液のpH値は、7.1であり、原質の粉砕度は、ショッパー・リグラー度50゜(゜SR)であった。この原質懸濁液を次いで、8つの同じ部分に分配し、実施例1〜6並びに比較例1及び2において実施例及び比較例においてそのつど挙げた条件でISO 5269/2に応じてRapidKoethen葉形成機で坪量120g/m2の葉へと加工した。
【0135】
実施例1
紙料懸濁液の温度は約20℃であった。この原質懸濁液に0.25%のポリマーAを添加した(ポリマー固形、乾燥繊維に対して)。5分間の作用時間の後、アニオン性ポリマー1の分散液を10倍希釈した。引き続き、この希釈した分散液をゆるやかな撹拌下で前記繊維懸濁液へと計量供給した。アニオン性ポリマー1の使用量は5%であった(ポリマー固形、乾燥繊維に対して)。1分間の作用時間の後、葉を形成し、引き続き7分間90℃で乾燥させた。
【0136】
実施例2
紙料懸濁液の温度は約20℃であった。この原質懸濁液に0.25%のポリマーBを添加した(ポリマー固形、乾燥繊維に対して)。5分間の作用時間の後、アニオン性ポリマー1の分散液を10倍希釈した。引き続き、この希釈した分散液をゆるやかな撹拌下で繊維懸濁液へと計量供給した。アニオン性ポリマー1の使用量は5%であった(ポリマー固形、乾燥繊維に対して)。1分間の作用時間の後、葉を形成し、引き続き7分間90℃で乾燥させた。
【0137】
実施例3
実施例3を実施例2と同様に実施し、しかし、アニオン性ポリマー2を使用した。
【0138】
実施例4
実施例4を実施例2と同様に実施し、しかし、アニオン性ポリマー3を使用した。
【0139】
実施例5
実施例5を実施例2と同様に実施し、しかし、アニオン性ポリマー4を使用した。
【0140】
実施例6
実施例6を実施例2と同様に実施し、しかし、アニオン性ポリマー5を使用した。
【0141】
比較例1(番号09 150 237.7を有する先のヨーロッパ出願に対する比較)
紙料を50℃の温度に加熱した。この加熱した原質懸濁液に0.25%のポリマーBを添加した(ポリマー固形、乾燥繊維に対して)。5分間の作用時間の後、アニオン性アクリラート樹脂の分散液(固形物含有量50%)を10倍希釈し、このアクリラート樹脂は、68mol%のn−ブチルアクリラート、14mol%のスチレン、14mol%のアクリルニトリル及び4mol%のアクリル酸の懸濁重合により得た。この分散されたポリマー粒子の平均粒径は192nmであった。引き続き、この希釈した分散液をゆるやかな撹拌下で50℃に加熱した繊維懸濁液へと計量供給した。この使用したアクリラート樹脂量は5%であった(ポリマー固形、乾燥繊維に対して)。1分間の作用時間の後、葉を形成し、引き続き7分間90で乾燥させた。
【0142】
比較例2
先に記載の原質懸濁液(20℃の温度を有した)から、更なる添加なしに葉を形成した。
【0143】
紙葉の試験
一定した23℃及び50%の空気湿分での気候室中での12時間にわたる、実施例1〜6及び比較例1及び2に応じて製造した葉の貯蔵時間の後に、それぞれ葉の乾燥裂け長さ(Trockenreisslaenge)をDIN 54540に応じて算出した。この気候調節した葉のCMT値の測定をDIN 53143に応じて行い、この葉の乾燥破裂圧力をDIN 53143に応じて算出した。結果は、第1表に記載されている。
【0144】
第1表
【表1】

【0145】
この実施例及び比較例は、この比較例に応じた葉は減少した充填物質含有量にもかかわらず、劣悪化した強度特性を有することを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーを紙料に添加し、この紙料を脱水し、そして、この紙製品を乾燥することによって高い乾燥強度を有する紙、板紙及び厚紙を製造するにあたり、アニオン性ポリマーとして、少なくとも1のアニオン性ラテックス及び少なくとも1の分解したデンプンの水性分散液を使用することを特徴とする、高い乾燥強度を有する紙、板紙及び厚紙を製造する方法。
【請求項2】
前記カチオン性ポリマーのモル質量Mwが、5000〜5000000g/molの範囲内にあることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記カチオン性ポリマーの電荷密度がポリマー1gあたり0.5〜23meqの範囲内にあることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
水溶性カチオン性ポリマーとして、ビニルアミン単位を有するポリマーを使用することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
アニオン性ラテックスが、
a)スチレン及び/又はアクリルニトリル又はメタクリルニトリル、
b)C1〜C10−アルコールのアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステル、及び場合により、
c)アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸及び/又はイタコン酸
からなることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
アニオン性ラテックスが、スチレン2〜20質量%、アクリルニトリル2〜20質量%、C1〜C4−アルキルアクリラート60〜95質量%及びアクリル酸0〜5質量%からなることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
アニオン性ラテックスが、少なくとも1のホスホン基−及び/又はリン酸基含有モノマーを重合導入して含有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
モノエチレン性不飽和C3〜C8−カルボン酸と、一般式(VIII)
【化1】

[式中、
Xは、直鎖状又は分枝鎖状のC2〜C6−アルキレンオキシド単位及び
nは、0〜20の整数
を意味する]
の、場合によってモノアルコキシル化されたリン酸とのエステル化によって得られた、リン酸基含有モノマーを使用することを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
Xが直鎖状又は分枝鎖状のC2〜C3−アルキレンオキシド単位であり、かつnが5〜15の整数である、式(VIII)のモノアルコキシル化されたリン酸を使用することを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
モノエチレン性不飽和C3〜C8−カルボン酸が、アクリル酸、メタクリル酸、ジメチルアクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、シトラコン酸、メチレンマロン酸、クロトン酸、フマル酸、メサコン酸及び/又はイタコン酸であることを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項11】
アニオン性ラテックスが、
(1)スチレン及び/又はアクリルニトリル又はメタクリルニトリル、
(2)C1〜C10−アルコールのアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステル、及び場合により
(3)アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸及び/又はイタコン酸、及び
(4)式(VIII)の場合によってモノアルコキシル化されたリン酸の(メタ)アクリル酸エステル、その際、X及びnは、前述の意味合いを有する、
からなることを特徴とする請求項7から10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
アニオン性ラテックスが、スチレン2〜25質量%、アクリルニトリル2〜25質量%、C1〜C4−アルキルアクリラート50〜95質量%、アクリル酸0〜5質量%及び式(VIII)のモノアルコキシル化されたリン酸の(メタ)アクリル酸エステル0.1〜5質量%からなり、その際、Xはプロピレンオキシド単位であり、かつnは5〜15の整数であることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項13】
分解されたデンプンが、1000〜65000g/molの平均分子量Mwを有することを特徴とする請求項1から12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
分解されたデンプンが、マルトデキストリンであることを特徴とする請求項13記載の方法。

【公表番号】特表2012−516950(P2012−516950A)
【公表日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548678(P2011−548678)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際出願番号】PCT/EP2010/051330
【国際公開番号】WO2010/089334
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】