説明

高い加水分解抵抗性を有する熱可塑性プラスチック成形組成物

【課題】高い加水分解抵抗性を有する熱可塑性プラスチック成形組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、以下のものを含む熱可塑性プラスチック成形組成物に関する:A)ポリアミドおよび/またはコポリアミド、B)少なくとも1種のオレフィンと少なくとも1種の脂肪族アルコールのアクリル酸エステルとの少なくとも1種のコポリマー、C)少なくとも1種の充填剤および/または補強用材料、D)少なくとも1種のオリゴマー性および/もしくはポリマー性カルボジイミド、ならびに場合によってはさらに、少なくとも1種のその他の添加剤E)および場合によっては少なくとも1種の耐衝撃性改良剤F)。本発明はさらに、好ましくは射出成形の手段によって、本発明による成形組成物から製造された成形物または半仕上げ製品に関する。しかしながら、本発明はさらに、ポリアミドベースの製品の加水分解抵抗性を改良するための、少なくとも1種の成分B)および少なくとも1種の成分D)から構成された物質の組合せの使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、以下のものを含む熱可塑性プラスチック成形組成物に関する:A)ポリアミドおよび/またはコポリアミド、B)少なくとも1種のオレフィンと少なくとも1種の脂肪族アルコールのアクリル酸エステルとの少なくとも1種のコポリマー、C)少なくとも1種の充填剤および/または補強用材料、D)少なくとも1種のオリゴマー性および/もしくはポリマー性カルボジイミド、ならびに場合によってはさらに、少なくとも1種のその他の添加剤E)および場合によっては少なくとも1種の耐衝撃性改良剤F)。本発明はさらに、好ましくは射出成形の手段によって、本発明による成形組成物から製造された成形物または半仕上げ製品に関する。しかしながら、本発明はさらに、ポリアミドベースの製品の加水分解抵抗性を改良するための、少なくとも1種の成分B)および少なくとも1種の成分D)から構成された物質の組合せの使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス繊維強化PA66(ナイロン(登録商標)−6,6)から構成されたコンパウンディング材料は、自動車製造、なかんずく、自動車の冷却循環路のための構成部品の製造における地位を確立した。本発明の目的においては、自動車の冷却循環路のための構成部品は、なかんずく、冷却水−分配系、冷却水タンク、冷却水膨張容器(expansion container)、サーモスタットハウジング、冷却水パイプ、熱交換器ハウジング、および冷却系コネクターである。
【0003】
自動車分野においては、冷却循環路において使用される冷却液には、エチレングリコールと水との、好ましくは1:1の比率の混合物が含まれる。これに加えて通常は、特に「長寿命冷却液」として知られているものの中には、少量の安定剤もまた使用されている。エチレングリコールと水との混合物は、大気圧下では、108℃で沸騰が始まり、そこでの蒸留によって最初に水が除去され、その結果として、エチレングリコールの比率が徐々に大きくなる。PA66は、160℃でエチレングリコールの中に溶解しはじめる。しかしながら、通常のエチレングリコールと水との(1:1)混合物であっても、温度が100℃を超えると直ちにガラス繊維強化ポリアミドを攻撃する。水/エチレングリコール混合物はプラスチックを軟化させ、ポリマーマトリックスを一層活発に劣化させる。これは、エチレングリコールと水とを含む化学反応の結果であって、これは、ポリアミドそのものだけではなく、ガラス繊維とポリマーマトリックスとの間のカップリングにも悪影響を与える。加水分解/グリコール分解として知られているこの過程は、低温では比較的遅いが、より高い温度では加速される。
【0004】
ポリアミド成形組成物の水とエチレングリコールとの混合物に対する抵抗性は、加水分解/グリコール分解抵抗性として知られていて、多くの場合、標準試験片を使用し、それを耐圧性の鋼鉄製容器中の水/エチレングリコール混合物の中で、120〜135℃で7日、21日、および42日間貯蔵することによって求める。貯蔵工程が終わったら、それらの標準試験片に対して機械的な試験、好ましくは引張試験、曲げ試験、または耐衝撃性測定を実施し、それにより得られた性質を、新規に射出成形し、水/エチレングリコール混合物の中に貯蔵していない標準試験片のそれと比較する。それらの試験片は、亀裂についても調べる。射出成形からのフレッシュ条件と、21日または42日間後の条件との間で問題としている性質の劣化が小さいほど、対象となっているポリアミド成形組成物の加水分解/グリコール分解抵抗性が高い。
【0005】
自動車の冷却循環路のための構成部品の加水分解/グリコール分解抵抗性は、検討対象の構成部品を、純エチレングリコール中120〜135℃、または水/エチレングリコール混合物中120〜135℃で、貯蔵するかまたはそれらの流れ中に置くことによって求める。その貯蔵工程が終了したら、それらの構成部品の破裂圧(bursting pressure)を測定し、亀裂に関しての視覚的検査を実施する。射出成形からのフレッシュ条件と貯蔵条件との間で破裂圧の劣化が小さいほど、対象となっている構成部品の加水分解/グリコール分解抵抗性が高い。
【0006】
車両の駆動系の出力定格が増すほど、その結果としてエンジンの温度が高くなり、そのために冷却系の温度もより高くなって、冷却水移送系構成部品にかかる応力が増大するので、使用されるポリアミド成形組成物の製造に関する要求が、よりシビアになってくる。これらの、顕著によりシビアな要求のいくつかは、半晶質の脂肪族ポリアミドでは満たすことが不可能である。
【0007】
この場合においては、半晶質の半芳香族ポリフタルアミドを使用することが可能であって、それは、エンジニアリングサーモプラスチックと高性能プラスチックとの間にある性能ギャップを埋める。ナイロン(登録商標)−6およびナイロン(登録商標)−6,6のような半晶質の脂肪族ポリアミドに比較して、それらは、より低くかつより遅い吸湿性、より良好な化学薬品抵抗性、およびより高い長期間使用温度を特徴としている(非特許文献1)。
【0008】
半晶質の半芳香族ポリフタルアミドを使用する際の欠点は、ナイロン(登録商標)−6およびナイロン(登録商標)−6,6に比較して、価格が高く、密度が高く、そして溶融粘度が顕著に高いことである。さらに、融点が顕著に高くなるために、射出成形による加工の経済性が劣る(非特許文献2)。
【0009】
(特許文献1)には、加水分解および/またはグリコール分解に対する抵抗性が改良された自動車の冷却循環路における射出成形もしくは押出成形構成部品の記載があるが、それは、ポリアミドおよび/またはコポリアミド、円形の断面を有しフィラメントの直径が6〜11μmのガラス繊維またはフラットな形状で非円形の断面を有しそれらの大きい方の横断軸の幅が6〜40μmの範囲でありそしてそれらの小さい方の横断軸の幅が3〜20μmの範囲であるガラス繊維、ならびにオリゴマー性もしくはポリマー性カルボジイミドを含む物質混合物をベースとしている。
【0010】
(特許文献2)には、高温、特に酸性の環境下における加水分解に対して安定化された非ガラス繊維強化ポリアミドの記載があるが、それは、ポリアミドを基準にして0.1〜5%のポリマー性芳香族カルボジイミドを含んでいる。
【0011】
オレフィンと、メタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルとのコポリマーは、射出成形プロセスにおいて、ポリアミド成形組成物中の流動性改良剤として機能することができる。(特許文献3)の記述では、射出成形プロセスにおいて、少なくとも1種の半晶質の熱可塑性ポリアミド、およびそのMFIが100g/10分以上であるオレフィンと脂肪族アルコールのメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルとのコポリマーの混合物が、該発明によって得られる成形組成物の溶融粘度を低下させる(MFI=メルトフローインデックス)。MFIは、熱可塑性プラスチックの溶融物の流動特性を表すのに役立ち、ISO 1133標準およびASTM D1238標準に規定されている。本発明の文脈においては、MFI(メルトフローインデックス)およびMFIに関連するすべてのデータは、それぞれ、ISO 1133に従って2.16kgの試験重量を用い190℃で測定または定量したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】独国実用新案第202010002421U1号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0 567 884A1号明細書
【特許文献3】国際公開第2005/121249A1号パンフレット
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Hellerich,Harsch,Haenle,「Werkstoff−Fuehrer Kunststoffe[“Guide to Plastics Materials”]」,Carl Hanser Verlag,Munich,Vienna,2004,9th edition,pp.159〜161
【非特許文献2】「Kunststoff−Handbuch 3/4、Polyamide[Plastics Handbook 3/4、Polyamides]」,Carl Hanser Verlag,Munich,1998,pp.803〜809
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、ポリアミドをベースとする、物質混合物またはそれぞれの熱可塑性プラスチック成形組成物を提供することにあるが、それらは、より低い吸湿性およびより低い流体吸収性、より低い密度、高温、特に130℃以上の温度での化学薬品、特に水とエチレングリコールとの混合物に対する高い抵抗性を示し、さらには経済性の高い加工が可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
その目的は、以下のものを含む熱可塑性プラスチック成形組成物によって達成され、従って本発明はそれを提供する:
A)25〜79.85重量部の1種または複数のポリアミドまたはコポリアミド、
B)0.05〜10重量部、好ましくは1〜6重量部、特に好ましくは1.5〜5重量部の、少なくとも1種のオレフィンと少なくとも1種の脂肪族アルコールのアクリル酸エステルとの少なくとも1種のコポリマー(そのコポリマーのMFIが、ISO 1133に従って2.16kgの試験重量を用い190℃で測定または定量して、10g/10分より大である)、
C)10〜65重量部、好ましくは15〜50重量部、特に好ましくは20〜35重量部の、少なくとも1種の充填剤および補強用材料、ならびに
D)0.05〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部、特に好ましくは1〜3重量部の少なくとも1種のオリゴマー性もしくはポリマー性カルボジイミド、
(ここで、それらの重量部を合計すると100である)。
【0016】
驚くべきことには、本発明による物質混合物から製造した構成部品を、従来技術と比較すると、好ましくはそれらが、自動車の冷却循環路における構成部品に含まれるとき、特にそれらの構成部品が120℃を超える温度で、水を含むか、および/またはグリコールを含む流体に暴露されるようなときには、それらが、顕著に改良された加水分解抵抗性およびグリコール分解抵抗性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
一つの好ましい実施態様においては、本発明による熱可塑性プラスチック成形組成物には、場合によっては、成分A)〜D)に加えてさらに、0.05〜5重量部の少なくとも1種のその他の添加剤E)をも含むことが可能であるが、この場合全部の重量部を合計したものが常に100であるので、成分A)〜D)の重量部が相応に減量される。
【0018】
一つの好ましい実施態様においては、本発明による熱可塑性プラスチック成形組成物にはさらに、構成成分A)〜E)に加えるかまたはE)に代えて、0.05〜5重量部の少なくとも1種の耐衝撃性改良剤F)を含むことも可能であるが、この場合全部の重量部を合計したものが常に100であるので、構成成分A)〜E)またはA)〜D)の重量部が相応に減量される。
【0019】
しかしながら、本発明はさらに、以下のものを含む、前記本発明による熱可塑性プラスチック成形組成物の使用も提供する:
A)25〜79.85重量部の1種または複数のポリアミドまたはコポリアミド、
B)0.05〜10重量部、好ましくは1〜6重量部、特に好ましくは1.5〜5重量部の、少なくとも1種のオレフィンと少なくとも1種の脂肪族アルコールのアクリル酸エステルとの少なくとも1種のコポリマー(そのコポリマーのMFIが、ISO 1133に従って2.16kgの試験重量を用い190℃で測定または定量して、10g/10分より大である)、
C)10〜65重量部、好ましくは15〜50重量部、特に好ましくは20〜35重量部の、少なくとも1種の充填剤および補強用材料、ならびに
D)0.05〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部、特に好ましくは1〜3重量部の少なくとも1種のオリゴマー性もしくはポリマー性カルボジイミド、
(ここで、それらの重量部を合計すると100である)
その目的は、ポリアミドベースの構成部品、好ましくは冷却循環路のためのポリアミドベースの構成部品、特に好ましくは自動車の冷却循環路におけるポリアミドベースの構成部品、特に好ましくは、冷却水−分配系、冷却水タンク、冷却液−膨張容器、サーモスタットハウジング、冷却水パイプ、熱交換器ハウジング、または冷却系コネクターを製造するためである。
【0020】
本発明はさらに、自動車の冷却液循環路の構成部品の加水分解および/またはグリコール分解を抑制するための方法も提供し、それは、前記構成部品を製造するために使用されるポリアミドが、本発明による熱可塑性プラスチック成形組成物の形態をとっていることを特徴とする。
【0021】
本発明はさらに、ポリアミドベースの熱可塑性プラスチック成形組成物中で、好ましくはポリアミドベースの製品の、特に好ましくは冷却循環路におけるポリアミドベースの構成部品の、特別に好ましくは自動車の冷却循環路におけるポリアミドベースの構成部品の加水分解抵抗性を改良するための、少なくとも1種のオレフィンと少なくとも1種の脂肪族アルコールのアクリル酸エステルとの少なくとも1種のコポリマーならびに少なくとも1種のオリゴマー性もしくはポリマー性カルボジイミドから構成された物質の組合せの使用も提供するが、ここでそのコポリマーのMFIが、10g/10分より大、好ましくは150g/10分より大、特に好ましくは300g/10分より大であるが、ここでそのMFIは、ISO 1133に従って2.16kgの試験重量を用い190℃で測定または定量したものであり、また使用したオリゴマー性もしくはポリマー性カルボジイミドには、式(II)で表される脂肪族、脂環族もしくは芳香族カルボジイミドが含まれる。
【化1】

[式中、
およびRはそれぞれ相互に独立して、官能性化学基であり、
は、脂肪族、脂環族または芳香族基を表し、そして
nは、3〜1000の整数を意味している]
【0022】
本発明による熱可塑性プラスチック成形組成物において成分A)として使用されるポリアミドを製造するには多くの公知のタイプのプロセスが存在するが、この場合所望の最終製品の関数としては、各種のモノマー単位、所望の分子量に設定するための各種の鎖調節剤、またはそうでなければ、後工程において予定している後処理のための反応性基含有モノマーなどが使用される。
【0023】
成分A)として使用されるポリアミドを製造するための工業的に適切なプロセスは、溶融状態での重縮合法により進行するのが好ましい。本発明においては、重縮合には、ラクタムの加水分解的重合も含まれる。
【0024】
本発明において好ましいポリアミドは、半晶質もしくは非晶質のポリアミドであるが、これらは、ジアミンとジカルボン酸、および/または少なくとも5個の環メンバーを有するラクタム、または相当するアミノ酸から出発して、製造することができる。使用される好ましい出発物質としては以下のものが挙げられる:脂肪族および/または芳香族ジカルボン酸、特にアジピン酸、2,2,4−トリメチルアジピン酸、2,4,4−トリメチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、脂肪族および/または芳香族ジアミン、特に好ましくはテトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,9−ノナンジアミン、2,2,4−および2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、異性体のジアミノジシクロヘキシルメタン、ジアミノジシクロヘキシルプロパン、ビスアミノメチルシクロヘキサン、フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、アミノカルボン酸、特にアミノカプロン酸、または相当するラクタム。複数の上述のモノマーからなるコポリアミドも含まれる。
【0025】
特に好ましいのは、ナイロン(登録商標)−6またはナイロン(登録商標)−6,6であるが、本発明による物質混合物における成分A)としてナイロン(登録商標)−6,6を使用するのが特に好ましい。
【0026】
さらに、ある程度の割合のリサイクルされたポリアミド成形組成物および/または繊維のリサイクル物を存在させることもまた可能である。
【0027】
成分A)として使用されるポリアミドの相対粘度は、好ましくは2.3〜4.0、特に好ましくは2.7〜3.5であるが、ここでその相対粘度は、25℃でm−クレゾール中1重量%溶液について定量または測定することができる。
【0028】
本発明による熱可塑性プラスチック成形組成物には、少なくとも1種のオレフィン、好ましくはα−オレフィンと少なくとも1種の脂肪族アルコールのアクリル酸エステルとの少なくとも1種のコポリマーB)が含まれるが、ここで、そのコポリマーB)のMFIは、10g/10分より大、好ましくは150g/10分より大、特に好ましくは300g/10分より大であり、これは、ISO 1133に従って2.16kgの試験重量を用い190℃で測定または定量したものである。一つの好ましい実施態様においては、そのコポリマーB)は、4重量部未満、特に好ましくは1.5重量部未満、極めて特に好ましくは0重量部の、エポキシド、オキセタン、無水物、イミド、アジリジン、フラン、酸、アミン、およびオキサゾリンからなる群より選択される他の反応性官能基を含むモノマー単位を含む。
【0029】
コポリマーB)の構成成分として好ましいオレフィンはα−オレフィンであり、それらは特に好ましくは2〜10個の炭素原子を有し、非置換であっても、あるいは1個または複数の脂肪族、脂環族もしくは芳香族の基によって置換されていてもよい。
【0030】
極めて特に好ましいオレフィンは、エテン、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、3−メチル−1−ペンテンからなる群より選択されるものである。特に好ましいオレフィンはエテンおよびプロペンであり、特にエテンが極めて特に好ましい。
【0031】
上述のオレフィンの混合物も同様に適している。
【0032】
さらに好ましい実施態様においては、エポキシド、オキセタン、無水物、イミド、アジリジン、フラン、酸、アミンおよびオキサゾリンからなる群より選択されるコポリマーB)の他の反応性官能基が、もっぱらオレフィンの手段によってコポリマーB)の中に導入される。
【0033】
コポリマーB)中のオレフィンの含量は、50〜90重量部、好ましくは55〜75重量部である。
【0034】
コポリマーB)は、オレフィンに加えて、第二の構成成分により、さらに定義される。アクリル酸のアルキルエステルまたはアリールアルキルエステルが、第二の構成成分として使用されるが、そのアルキルまたはアリールアルキル基は、1〜30個の炭素原子を有している。ここでのアルキルまたはアリールアルキル基は、直鎖状または分岐状の基であってもよく、また、脂環族もしくは芳香族の基を含んでいてもよく、それに加えて、1個または複数のエーテル官能基またはチオエーテル官能基による置換を有していてもよい。この文脈においてその他の好適なアクリル酸エステルは、1個だけのヒドロキシ基と多くとも30個の炭素原子を有するオリゴエチレングリコールまたはオリゴプロピレングリコールに基づくアルコール成分から合成されたものである。
【0035】
アクリル系エステルのアルキル基またはアリールアルキル基は、好ましくは、下記の群から選択される一つであってもよい;メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、1−ペンチル、1−ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、1−ヘプチル、3−ヘプチル、1−オクチル、1−(2−エチル)ヘキシル、1−ノニル、1−デシル、1−ドデシル、1−ラウリル、または1−オクタデシル。6〜20個の炭素原子を有するアルキル基またはアリールアルキル基が好ましい。分岐状のアルキル基が特に好ましいが、それらを用いることによって、同一の炭素原子数を有する直鎖状のアルキル基に比較して、ガラス転移温度Tがより低くなる。
【0036】
本発明においては、オレフィンをアクリル酸2−エチルヘキシルと共重合させたコポリマーB)が特に好ましい。上述のアクリル酸エステルの混合物も同様に適している。
【0037】
本明細書においては、コポリマーB)中のアクリル酸エステルの全量を規準にして、60重量部を超える、特には90重量部を超える、極めて特には100重量部のアクリル酸2−エチルヘキシルを使用するのが好ましい。
【0038】
さらに好ましい実施態様においては、エポキシド、オキセタン、無水物、イミド、アジリジン、フラン、酸、アミンおよびオキサゾリンからなる群より選択されるコポリマーB)の他の反応性官能基が、もっぱらアクリル酸エステルの手段によってコポリマーB)の中に導入される。
【0039】
コポリマーB)中のアクリル酸エステルの含量は、10〜50重量部、好ましくは25〜45重量部である。
【0040】
本発明において使用される物質混合物には、少なくとも1種の充填剤および補強用材料C)が含まれる。
【0041】
したがって、使用される充填剤または補強用材料には、2種以上の異なった充填剤および/または補強用材料の混合物もまた含むことができる。以下の群からの充填剤および/または補強用材料を使用するのが好ましい:タルク、マイカ、シリケート、石英、二酸化チタン、ウォラストナイト、カオリン、非晶質シリカ、炭酸マグネシウム、チョーク、長石、硫酸バリウム、ガラスビーズおよび/または、炭素繊維および/またはガラス繊維をベースとする繊維質充填剤および/または補強用材料。タルク、雲母、シリケート、石英、二酸化チタン、ウォラストナイト、カオリン、非晶質シリカ、炭酸マグネシウム、チョーク、長石、硫酸バリウムおよび/またはガラス繊維をベースとする鉱物質の粒子状充填剤を使用するのが特に好ましい。
【0042】
タルク、ウォラストナイト、カオリンおよび/またはガラス繊維をベースとする鉱物質の粒子状充填剤を使用するのが極めて特に好ましい。
【0043】
さらに、針状の鉱物質充填剤を使用するのも特に好ましい。本発明においては、「針状の鉱物質充填剤」とは、突出した針状の特性を有する鉱物質充填剤である。一例としては、針状のウォラストナイトが挙げられる。前記鉱物質の(長さ:直径)の比率は、好ましくは(2:1)〜(35:1)、特に好ましくは(3:1)〜(19:1)、特別に好ましくは(4:1)〜(12:1)である。本発明における針状鉱物質の平均粒径は、CILAS GRANULOMETERによる測定で、好ましくは20μmより小、特に好ましくは15μmより小、特別に好ましくは10μmより小である。
【0044】
先に述べたように、一つの好ましい実施態様における充填剤および/または補強用材料は、特に好ましくはカップリング剤またはカップリング剤系を使用して、極めて特に好ましくはシランをベースとするカップリング剤系を使用して、あらかじめ表面変性されている。しかしながら、そのような前処理が必須という訳ではない。ガラス繊維を使用する場合には特に、シランに加えて、ポリマー分散体、成膜剤、分岐化剤および/またはガラス繊維−加工助剤を使用することもまた可能である。
【0045】
本発明において特別に好ましく使用されるガラス繊維は、円形の断面を有しフィラメントの直径が6〜18μm、好ましくは9〜15μmであってもよいか、あるいは、フラットな形状で非円形の断面を有し、その大きい方の横断軸の幅が6〜40μmの範囲でありそしてそれらの小さい方の横断軸の幅が3〜20μmの範囲であってもよい、のいずれかである。そのガラス繊維は、Eガラス繊維、Aガラス繊維、Cガラス繊維、Dガラス繊維、Sガラス繊維、および/またはRガラス繊維の群から選択するのが好ましい。
【0046】
ガラス繊維を添加する際の形状は、連続フィラメント繊維の形状であっても、あるいは細断もしくは摩砕ガラス繊維の形状であってもよい。それらの繊維には、好ましくはなかんずく、カップリング剤、特にシランをベースとするものを含む適切なサイジング系が備わっていてもよい。
【0047】
前処理のために一般的に使用される、シランベースのカップリング剤は、たとえば一般式(I)のシラン化合物である。
(X−(CH−Si−(O−CH2r+14−k (I)
[式中、置換基の定義は以下のとおりである:
X:NH−、HO−、または
【化2】

q:2〜10、好ましくは3〜4の整数、
r:1〜5、好ましくは1〜2の整数、
k:1〜3、好ましくは1の整数]
【0048】
好適なカップリング剤は、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノブチルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノブチルトリエトキシシラン、ならびに、置換基Xとしてグリシジル基を含む式(I)に対応するシラン、の群からのシラン化合物である。
【0049】
充填剤を変性させるための表面コーティングプロセスのために使用するシラン化合物の量は、鉱物質充填剤を基準にして、一般的に好ましくは0.05〜2重量%、好ましくは0.25〜1.5重量%、特には0.5〜1重量%である。
【0050】
成形組成物およびそれぞれの成形物を得るための加工の結果として、成形組成物中および成形物中の粒子状充填剤のd97値またはd50値は、もともと使用される充填剤のそれよりも小さくてもよい。成形組成物およびそれぞれの成形物を得るための加工の結果として、成形組成物中および成形物中のガラス繊維の長さ分布は、もともと使用されるものよりも短くてもよい。
【0051】
本発明による熱可塑性プラスチック成形組成物には、少なくとも1種の脂肪族、脂環族または芳香族のカルボジイミドD)、好ましくは式(II)のカルボジイミドが含まれる。
【化3】

[式中、RおよびRはそれぞれ相互に独立して、官能性化学基、好ましくはそれぞれ相互に独立してイソシアネート残基またはキャップトイソシアネート残基であり、Rは、脂肪族、脂環族または芳香族基を表し、そしてnは、3〜5000、好ましくは4〜2000、特に好ましくは5〜1000の整数を意味している]
【0052】
好適に好ましい基Rは、以下のような二価の基である:2,6−ジイソプロピルベンゼン、ナフタレン、3,5−ジエチルトルエン、4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチレンフェニル)、4,4’−メチレンビス(2−エチル−6−メチルフェニル)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)、4,4’−メチレンビス(2−エチル−5−メチルシクロヘキシル)、2,4,6−トリイソプロピルフェニル、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン、メチルシクロヘキサンなど。
【0053】
末端基RおよびRが、遊離のNCO基、キャップトイソシアネートを特徴とするイソシアネートであるのが好ましいが、そのNCO基が、たとえば二級アミン、オキシム、ラクタム、エステル、またはH酸性化合物たとえばフェノールのような反応性分子と予め付加反応させてあり、それらのNCO基は、たとえば加熱によって再び遊離させることができる。
【0054】
本発明において使用されるオリゴマー性もしくはポリマー性カルボジイミドは、市販されており、例としては、Rhein Chemie GmbH製のStabaxol P(登録商標)製品が挙げられる。
【0055】
一つの好ましい実施態様においては、本発明による前記熱可塑性プラスチック成形組成物にはさらに、ポリアミドA)、コポリマーB)、充填剤および補強用材料C)ならびにポリカーボジイミドD)の成分に加えて、少なくとも1種のその他の慣用される添加剤E)を添加することも可能であるが、全部の重量パーセントを合計したものは常に100であるので、成分A)〜D)の重量部が相応に減量される。
【0056】
本発明の目的のために好適な添加剤E)は、安定剤、帯電防止剤、流動助剤、離型剤、難燃添加剤、乳化剤、成核剤、可塑剤、潤滑剤、染料、顔料、分岐化剤、連鎖延長剤、または導電率の値を増大させるための添加剤である。上述の添加剤およびその他の適切な添加剤は、たとえばGaechter,Mueller,「Kunststoff−Additive[Plastics Additives]」,3rd edition,Hanser−Verlag,Munich,Vienna,1989、および「Plastics Additives Handbook」,5th edition,Hanser−Verlag,Munich,2001に記載されている。それらの添加剤は単独で使用してもよいし、混合物として、またはマスターバッチの形態で使用してもよい。
【0057】
好適な安定剤は、熱安定剤およびUV安定剤である。好適に使用される安定剤は以下のものである:アルカリ金属のハロゲン化物、好ましくはハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化カリウムおよび/またはハロゲン化リチウムと組み合わせた、銅(I)ハロゲン化物、好ましくは塩化物、臭化物またはヨウ化物であり、使用される別の好適な安定剤は、立体障害フェノール、ヒドロキノン、ホスファイト、芳香族二級アミンたとえばジフェニルアミン、置換レソルシノール、サリチレート、ベンゾトリアゾールまたはベンゾフェノン、さらには前記基の各種置換された代表物、またはそれらの混合物。
【0058】
使用される好適な顔料または染料は以下のものである:二酸化チタン、ウルトラマリンブルー、酸化鉄、カーボンブラック、フタロシアニン、キナクリドン、ペリレン、ニグロシン、およびアントラキノン。
【0059】
使用される好適な成核剤は以下のものである:フェニルホスフィン酸ナトリウムまたはフェニルホスフィン酸カルシウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、およびさらに好ましくはタルク粉末。
【0060】
使用される好適な潤滑剤および離型剤は以下のものである:エステルワックス、ペンタエリスリトールテトラステアレート(PETS)、長鎖脂肪酸、特に好ましくはステアリン酸またはベヘン酸およびそれらのエステル、塩、特に好ましくはステアリン酸Caまたはステアリン酸Zn、ならびにさらに、アミド誘導体、好ましくはエチレンビスステアルアミドまたはモンタンワックス、好ましくは28〜32個の炭素原子の鎖長を有する直鎖飽和カルボン酸の混合物、ならびにさらには、低分子量ポリエチレンワックスもしくは低分子量ポリプロピレンワックス。
【0061】
使用される好適な可塑剤は以下のものである:フタル酸ジオクチル、フタル酸ジベンジル、フタル酸ブチルベンジル、炭化水素オイル、およびN−(n−ブチル)ベンゼンスルホンアミド。
【0062】
導電率を上昇させるために添加される好適な添加剤以下のものである:導電性カーボンブラックもしくはその他のカーボンブラック、カーボンフィブリル、ナノスケールグラファイト繊維およびナノスケール炭素繊維、グラファイト、導電性ポリマー、金属繊維、ならびにさらに、導電率を上昇させるために慣用されるその他の添加剤。使用される好適なナノスケール繊維は、「単層(single−wall)カーボンナノチューブ」または「多層(multiwall)カーボンナノチューブ」として知られているものである(たとえば、Hyperion Catalysis製)。
【0063】
一つの好適な実施態様においては、本発明が、熱可塑性プラスチック成形組成物、ならびにさらには、冷却循環路のため、好ましくは自動車の冷却循環路のためのそれらから製造された構成部品を提供するが、それには以下のものが含まれる:
A)20〜79.8重量部の1種または複数のポリアミドまたはコポリアミド、
B)0.05〜10重量部の、少なくとも1種のオレフィンと少なくとも1種の脂肪族アルコールのアクリル酸エステルとの少なくとも1種のコポリマー(そのコポリマーのMFIが、ISO 1133に従って2.16kgの試験重量を用い190℃で測定または定量して、10g/10分より大である)、
C)10〜65重量部の少なくとも1種の充填剤および補強用材料、
D)0.05〜10重量部の少なくとも1種のオリゴマー性もしくはポリマー性カルボジイミド、ならびに
E)0.05〜5重量部の少なくとも1種のその他の添加剤(使用される添加剤には、ナノスケール繊維、好ましくは単層カーボンナノチューブまたは多層カーボンナノチューブが含まれる)、
そして重量部を全部合計すると100である。
【0064】
また別なそれに代わる好ましい実施態様においては、本発明による熱可塑性プラスチック成形組成物にさらに、場合によっては、成分A)、B)、C)、D)およびE)に加えてか、またはE)に代えて、F)0.001〜80重量部、特に好ましくは1〜10重量部の少なくとも1種のエラストマー変性剤が含まれていてもよいが、ここで重量部を全部合計すると100であるので、成分A)〜D)またはA)〜E)の重量部が相応に減量される。成分F)として使用されるエラストマー変性剤は、多くの場合、耐衝撃性改良剤、エラストマー、変性剤、またはゴムとも呼ばれている。
【0065】
そのエラストマー変性剤がコポリマー(ただし、コポリアミドは除く)を含んでいるのが好ましく、それらが、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソブテン、イソプレン、クロロプレン、酢酸ビニル、スチレン、およびアクリロニトリルの群からの少なくとも2種のモノマーからなっているのが好ましい。
【0066】
このタイプのポリマーはたとえば以下の文献に記載がある:Houben−Weyl,「Methoden der organischen Chemie[Methods of organic chemistry]」、Volume 14/1(Georg−Thieme−Verlag,Stuttgart,1961),pp.392〜406、およびモノグラフのC.B.Bucknall,「Toughened Plastics」(Applied Science Publishers,London,1977)。
【0067】
本発明において好適に使用されるいくつかのエラストマー変性剤について、以下において説明する。
【0068】
耐衝撃性改良剤として使用されるこれらエラストマーの好適なタイプは、エチレン−プロピレンゴム(EPM)またはエチレン−プロピレン−ジエン(EPDM)ゴムとして知られているものである。
【0069】
EPMゴムでは一般的に残存二重結合はほとんど存在しないが、それに対してEPDMゴムでは、100個の炭素原子あたり1〜20個の二重結合を有していることができる。
【0070】
EPDMゴムに使用される好適なジエンモノマーを以下に挙げる:共役ジエンたとえば、イソプレンまたはブタジエン、5〜25個の炭素原子を有する非共役ジエンたとえば、ペンタ−1,4−ジエン、ヘキサ−1,4−ジエン、ヘキサ−1,5−ジエン、2,5−ジメチルヘキサ−1,5−ジエンおよびオクタ−1,4−ジエン、環状ジエンたとえば、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエンおよびジシクロペンタジエン、およびさらには、アルケニルノルボルネンたとえば、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ブチリデン−2−ノルボルネン、2−メタリル−5−ノルボルネン、2−イソプロペニル−5−ノルボルネン、ならびにトリシクロジエンたとえば、3−メチルトリシクロ[5.2.1.02,6]−3,8−デカジエン、またはそれらの混合物。ヘキサ−1,5−ジエン、5−エチリデンノルボルネンまたはジシクロペンタジエンが特に好ましい。EPDMゴム中のジエン含量は、ゴムの全重量を基準にして、好ましくは0.5〜50、特には1〜8重量%である。
【0071】
好ましいEPMゴムまたはEPDMゴムは、反応性カルボン酸を用いるかまたはそれらの誘導体を用いて予めグラフトされている。好適なものとしては、無水マレイン酸がここでは挙げられる。
【0072】
一つの好ましい実施態様においては、それらのゴムにはさらに、ジカルボン酸、好ましくはマレイン酸もしくはフマル酸または前記酸の誘導体、好ましくはエステルおよび無水物、および/またはエポキシ基を含むモノマーも含まれる。それらのジカルボン酸誘導体またはエポキシ基含有モノマーは、ゴムの中に、モノマー混合物に対して、一般式(III)または(IV)または(V)または(VI)のモノマー(それらには、ジカルボン酸基およびそれぞれエポキシ基が含まれている)の付加反応を介して組み込むのが好ましい。
【化4】

[式中、
〜R:水素、または1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、
m:0〜20の整数、および
n:0〜10の整数]
【0073】
残基R〜Rが水素であり、mが0または1であり、nが1であるのが好ましい。それに相当する化合物は、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、アリルグリシジルエーテル、およびビニルグリシジルエーテルである。
【0074】
本発明においては、式(III)、(IV)および(VI)の好適な化合物は、以下のものである:マレイン酸、無水マレイン酸、およびエポキシ基を含むメタクリル酸のエステル、好ましくはアクリル酸グリシジルもしくはメタクリル酸グリシジル、ならびに三級アルコールのメタクリル系エステル、好ましくはメタクリル酸tert−ブチル。後者は遊離のカルボキシ基は有してはいないものの、それらの挙動は、遊離の酸の挙動に極めて類似したものであり、従って本発明の目的においては、それらは、潜在的にカルボキシ基を有するモノマーとみなされる。
【0075】
成分F)のエラストマー変性剤として使用されるコポリマーは、50〜98重量部のエチレン、および0.1〜20重量部のエポキシ基を含むモノマーおよび/または無水物基を含むモノマーからなっているのが好ましい。
【0076】
コモノマーとしてビニルエステルまたはビニルエーテルを使用することもまた好ましい。
【0077】
上述のようなエチレンコポリマーは、自体公知のプロセスにより、好ましくは高圧高温下のランダム共重合を介して製造することができる。相当するプロセスは周知である。
【0078】
また別な好ましいエラストマーは、エマルションポリマーであって、その製造はたとえば次のモノグラフに記載されている:Blackley,「Emulsion Polymerisation」。使用可能な触媒および乳化剤も自体公知である。
【0079】
原理的には、均質構造のエラストマーを使用することも、またはそうでなくて、シェル構造を有しているものを使用することも可能である。シェルタイプの構造は、個別のモノマーを順に添加することによって決まってくるが、この添加順が、ポリマーのモルホロジーにも影響する。
【0080】
ここでは、ブタジエンおよびイソプレン、ならびにそれらの混合物も、エラストマーのゴム部分を構成するためのモノマーの単なる代表例として挙げたに過ぎない。前記モノマーを、他のモノマー、好ましくはスチレンおよびアクリロニトリルと共重合させることができる。
【0081】
エラストマーのソフト相またはゴム相(ガラス転移温度、0℃未満)は、コア、外側エンベロープ(outer envelope)または中間シェル(3層以上のシェルからなる構造を有するエラストマーの場合)とすることが可能であり、多層シェルエラストマーの場合においては、複数のシェルがゴム相からなっていることもまた可能である。
【0082】
エラストマーの構造に、ゴム相だけではなく、1種または複数のハード成分(ガラス転移温度、20℃より高)が含まれている場合には、それらは一般的に、メインモノマーとして、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−メチルスチレン、またはp−メチルスチレンを重合させることにより製造される。この場合、これらに加えて、比較的少量の割合の他のコモノマーを使用することも可能である。
【0083】
場合によっては、その表面に反応性の基を有するエマルションポリマーを使用するのが有利であるということも判っている。このタイプの基は、好ましくはエポキシ、カルボキシ、潜在性カルボキシ、アミノもしくはアミド基、またはそうでなければ、一般式(VII)のモノマーを随伴使用することによって導入可能な官能基である。
【化5】

[式中、置換基は以下のように定義することができる:
10:水素、またはC〜C−アルキル基、
11:水素、C〜C−アルキル基、またはアリール基、特にフェニル、
12:水素、C〜C10−アルキル基、C〜C12−アリール基、またはOR13
13:C〜C−アルキル基またはC〜C12−アリール基(場合によっては、O−もしくはN−含有基による置換を有していてもよい)、
X:化学結合、C〜C10−アルキレン基、C〜C12−アリーレン基、または
【化6】

Y:O−Z、またはNH−Z、そして
Z:C〜C10−アルキレン基、またはC〜C12−アリーレン基]
【0084】
欧州特許出願公開第0 208 187A2号明細書に記載されているグラフトモノマーもまた、表面に反応性基を導入するためには適している。
【0085】
さらに、アクリルアミドおよびメタクリルアミドも挙げることができる。
【0086】
一つの好ましい実施態様においては、そのゴム相の粒子が架橋されている。架橋剤として使用するのに好適なモノマーは、以下のものである:ブタ−1,3−ジエン、ジビニルベンゼン、フタル酸ジアリル、およびアクリル酸ジヒドロジシクロペンタジエニル、ならびに、欧州特許出願公開第0 050 265A1号明細書に記載されている化合物。
【0087】
一つの好ましい実施態様ではさらに、グラフト結合性モノマーとして知られているもの、すなわち2個以上の重合性二重結合を有するモノマーを使用するが、それらは、重合反応の際に別々の反応速度で反応する。少なくとも1種の反応性基が他のモノマーとほぼ同程度の速度で重合し、その一方で、他の反応性基(1個または複数)がたとえば顕著にゆっくりと重合するような、このタイプの化合物を使用するのが好ましい。重合速度に違いがあると、そのゴムの中において、ある程度の割合の不飽和二重結合が生じるようになる。次いで、また別な相をこのタイプのゴムの上にグラフトさせるならば、ゴム中に存在している二重結合の少なくともいくつかが、そのグラフトモノマーと反応して化学結合を形成させる、すなわち、グラフトベースに対して、グラフトされた相を結合する少なくともいくつかの化学結合が存在する。
【0088】
好適なグラフト結合性モノマーは以下のものである:アリル基を含むモノマー、特に好ましくはエチレン性不飽和カルボン酸のアリルエステル、特別に好ましくはマレイン酸ジアリル、フマル酸ジアリル、イタコン酸ジアリル、または前記ジカルボン酸の相当するモノアリル化合物。これらに加えて、広く各種のその他の好適なグラフト結合性モノマーが存在するが、さらなる詳細のための参考文献を次に挙げる:たとえば、米国特許第A4148846号明細書および米国特許第A4 327 201号明細書。
【0089】
本発明において好適ないくつかのエマルションポリマーを以下に列挙する。ここで最初に挙げるのは、コアと少なくとも1層の外側シェルとを有し、以下の構造を有するグラフトポリマーである。
【0090】
【表1】

【0091】
多層シェル構造を有するグラフトポリマーに代えて、ブタ−1,3−ジエン、またはイソプレンまたはそれらのコポリマーから作成された、均質な、すなわち単一シェルのエラストマーを使用することもまた可能である。この場合もまた、架橋モノマーまたは反応性基を有するモノマーを随伴使用することによって、それらの反応生成物を製造することができる。
【0092】
好適なエマルションポリマー例としては以下のものが挙げられる:ブタジエンを有するか、またはブタジエンベースである内側コアと、上述のコポリマーから作成した外側エンベロープとを有するグラフトポリマー。
【0093】
記載されたエラストマーはまた、他の慣用されるプロセス、好ましくは懸濁重合によって製造することもできる。同様に、シリコーンゴムが好ましいが、これについては、以下の特許に記載がある:独国特許出願公開第3 725 576A1号明細書、欧州特許出願公開第0 235 690A2号明細書、独国特許出願公開第3 800 603A1号明細書、および欧州特許出願公開第0 319 290A1号明細書。
【0094】
言うまでもないことではあるが、先に列記したタイプのゴムの混合物を使用することもまた可能である。
【0095】
本発明においては、成分F)としてEPMまたはEPDMタイプのエラストマー変性剤を使用することが特に好ましい。
【0096】
明確にするために付言すれば、列記した定義および、一般的な条件で記載されたパラメーター、または好ましい範囲が各種の所望の組合せで、本発明の範囲に含まれるということに注意されたい。
【0097】
本出願はさらに、射出成形プロセス(たとえば以下の特化されたプロセスも含まれる:GIT(ガス射出テクノロジー)、WIT(水射出テクノロジー)およびPIT(プロジェクタイル射出テクノロジー))における、異形押出しまたはその他の押出しプロセスにおける、およびブロー成形、特に好ましくは標準的な押出ブロー成形、3D押出ブロー成形プロセス、または吸引ブロー成形プロセスにおける、構成部品を製造するための本発明による熱可塑性プラスチック成形組成物の使用も提供する。
【0098】
押出成形または射出成形により構成部品を製造するための本発明によるプロセスは、230〜330℃、好ましくは250〜300℃の範囲の溶融温度と、場合によっては、高くても2500barの圧力、好ましくは高くても2000barの圧力、特に好ましくは高くても1500barの圧力、極めて特に好ましくは高くても750barの圧力とで実施される。
【0099】
射出成形プロセスの特徴は、好ましくは粒状物の形状の原料物質を、加熱した円筒状のキャビティ中で溶融(可塑化)し、加圧下に射出成形組成物の形状で、温度調節したキャビティの内部に射出することである。その射出成形物は、その溶融物を冷却(固化)させた後に脱型させる。
【0100】
複数の相が存在する:
1.可塑化/溶融
2.射出相(射出過程)
3.加圧維持相(結晶化の際の熱収縮のため)
4.脱型。
【0101】
射出成形機は、クランプユニット、射出ユニット、駆動系および制御系からなっている。クランプユニットは、金型のための固定および移動熱盤および端盤、さらにはタイバーおよび移動型熱盤のための駆動系を有している(トグルアセンブリーまたは油圧クランプユニット)。
【0102】
射出ユニットには、電気加熱可能なシリンダー、スクリュー駆動系(モーター、ギアボックス)、およびスクリューおよび射出ユニットを移動させるための油圧系が包含される。射出ユニットの機能は、溶融、粉体またはペレットの計量および射出、ならびに、それらに対して(収縮を許容するために)保持圧力をかけることである。スクリューの内部における溶融物の逆流(漏洩流)の問題は、逆止めバルブによって解決される。
【0103】
次いで射出金型の内部では、流れ込んできた溶融物を分離し、冷却し、このようにして、必要とされる構成部品が生産される。このプロセスのためには、どの場合でも、二つの半割金型(two mould halves)が必要である。射出成形プロセスにおける各種の機能的な複雑さとしては以下のものが挙げられる:
− ランナー系
− 成形インサート
− ガス抜き
− 機械を保持し、圧力に耐える系
− 脱型系および移動の伝達
− 温度制御。
【0104】
特化された射出成形プロセスの、GIT(ガス射出テクノロジー)、WIT(水射出テクノロジー)およびPIT(プロジェクタイル射出テクノロジー)は、中空の加工品を製造することを目的としている。標準的な射出成形との違いは、金型充填相の最後に向けて、または射出金型の所定の部分充填の後の特別な操作に存在している。そのプロセスに特別な操作においては、インジェクターとして知られているものを使用して、予成形物の溶融された内部の中に加工媒体を注入して、キャビティを形成させる。この際、GITの場合においては、ガス、一般的には窒素が使用され、WITの場合においては水が使用される。PITの場合においては、溶融した状態の内部にプロジェクタイルを押し込むことによって、キャビティを形成させる。
【0105】
射出成形の場合とは対照的に、押出し成形においては、成形した熱可塑性プラスチックを製造するための機械である押出機で、連続的にプラスチック(この場合においてはポリアミド)の押出し物を製造する。以下のような区別がある:
一軸スクリュー押出機および二軸スクリュー押出機、さらにそれらそれぞれの細分類として、通常の一軸スクリュー押出機、輸送一軸スクリュー押出機、逆方向回転二軸スクリュー押出機、同方向回転二軸スクリュー押出機。
【0106】
本発明の目的においては、異形材は、それらの長さ方向全体で同一の断面を有する構成部品または部品である。それらは、異形押出しプロセスによって製造することができる。異形押出しプロセスにおける、基本的な工程は以下のとおりである:
1.押出機における熱可塑性プラスチック溶融物の可塑化および準備の工程。
2.所望の異形材断面を有するキャリブレーション・エンベロープを通して、熱可塑性プラスチック溶融物の押出し物を押出し加工する工程。
3.キャリブレーティング・テーブル上で、その押出し加工された異形材を冷却する工程。
4.キャリブレーティング・テーブルの後ろの取出し具を使用して、その異形材を次へ移送する工程。
5.カッター系で、その連続異形材を所望の長さに切断する工程。
6.所望の長さに切断された異形材を、捕集テーブル上に捕集する工程。
【0107】
ナイロン(登録商標)−6およびナイロン(登録商標)−6,6の異形押出しについての記述が次の文献にある:「Kunststoff−Handbuch[Plastics handbook]3/4、Polyamide[Polyamides]」、Carl Hanser Verlag,Munich,1998,pp.374〜384。
【0108】
本発明の目的のためのブロー成形プロセスは、好ましくは、標準的な押出ブロー成形、3D押出ブロー成形、吸引ブロー成形プロセス、および順次(sequential)共押出しである。
【0109】
Thielen,Hartwig,Gust,「Blasformen von Kunststoff−hohlkoerpern[Blow moulding of plastics]」,Carl Hanser Verlag,Munich,2006,pp.15〜17によれば、標準的な押出ブロー成形プロセスにおける基本的な工程は以下のとおりである:
1.押出機における熱可塑性プラスチック溶融物の可塑化および準備の工程。
2.下方垂直に流れるように溶融物の向きを変えて、中空の溶融物である「パリソン(parison)」を形成させる工程。
3.金型、一般的には二つの半割シェルからなるブロー金型を使用して、パリソンを封じ込んで、ヘッドの下でフリーにつり下げる工程。
4.ブロー・マンドレルまたは一つ(もしくは複数の)ブロー・ピンを挿入する工程。
5.そのプラスチック・パリソンをブローして、ブロー金型の冷却した壁面に当たるようにして、そこでプラスチックを冷却、固化させ、仮の成形部品の最終的な形状とする工程。
6.金型を開けて、ブロー成形した部品を脱型させる工程。
7.ブロー成形した部品の両端にある、食いきりされた(pinched−off)「バリ(flash)」部分を除去する工程。
【0110】
この後に、他の下流操作を実施することも可能である。
【0111】
標準的な押出ブロー成形を使用して、複雑な形状や多軸曲率を有する構成部品を製造することもまた可能である。しかしながら、そうして得られた成形部品は、高い比率で過剰な、食いきりされた材料を含んでおり、食いきりウェルドを有する大きな領域を有している。
【0112】
したがって、食いきりウェルドを回避し、材料使用量を下げるために、3D押出ブロー成形(3Dブロー成形とも呼ばれる)では、特殊な用具を使用して変形させて、成形品の断面にぴったり合わせた直径にパリソンを合わせ、次いでそれを、ブロー金型のキャビティの中に直接導入する。そうすることによって、残存する食いきりエッジの大きさは、成形品の末端では最小限に抑えられる(Thielen,Hartwig,Gust,「Blasformen von Kunststoff−hohlkoerpern[Blow moulding of plastics]」,Carl Hanser Verlag,Munich,2006,pp.117〜122)。
【0113】
吸引ブロー成形プロセスにおいては、パリソンは筒状のダイヘッドから密閉されたブロー金型の中に直接送られ、空気流を利用した方法でブロー金型を通して「吸引」される。パリソンの下側端がブロー金型から出てくると、クランプ要素を使用して、パリソンの上側端と下側端を食いきり、ブローおよび冷却の過程に続く(Thielen,Hartwig,Gust,「Blasformen von Kunststoff−hohlkoerpern[Blow moulding of plastics]」,Carl Hanser Verlag,Munich,2006、p.123)。
【0114】
したがって本発明はさらに、以下のプロセスを介して得ることが可能な、本発明による熱可塑性プラスチック成形組成物の成形部品、成形物または半仕上げ製品を提供する:異形押出しプロセスまたはその他の押出しプロセス、ブロー成形、特に好ましくは標準的な押出ブロー成形、3D押出ブロー成形プロセス、および吸引ブロー成形プロセス、ならびに順次共押出成形または射出成形。
【0115】
したがって、本発明はさらに、射出成形、異形押出またはその他の押出しプロセス、またはブロー成形の手段によって、特に射出成形の手段によって得ることが可能な構成部品(成形部品、成形物または半仕上げ製品を含む)における、本発明による熱可塑性プラスチック成形組成物の使用も提供する。
【0116】
しかしながら、本発明はさらに、自動車産業、電気産業、電子産業、電気通信産業、またはコンピューター産業、スポーツ、医薬品、家庭用品、建築産業、またはエンターテイメント産業における、本発明による熱可塑性プラスチック成形組成物から得ることが可能な、成形部品、成形物または半仕上げ製品の使用も提供する。
【0117】
しかしながら、本発明はさらに、空気移送系構成部品、冷却水移送系構成部品、オイル移送系構成部品、その他の流体を移送する容器およびパイプ、燃料タンクまたはオイルタンクとしての、前記成形部品、成形物または半仕上げ製品の使用も提供する。
【0118】
しかしながら、本発明はさらに、冷却水−分配系、冷却水タンク、冷却液−膨張容器、サーモスタットハウジング、冷却水パイプ、熱交換器または冷却系コネクターとして、自動車の内部における前記冷却水移送系構成部品の使用も提供する。
【0119】
本明細書および実施例は、説明のためのものであって、本発明を限定するものではなく、そして本発明の精神および範囲の中に入るその他の実施態様もそれ自体当業者には示唆を与えるであろうということは理解されるであろう。
【実施例】
【0120】
本発明に従って記載された改良を説明する目的で、まず、適切なプラスチック成形組成物を、コンパウンディングにより調製した。個々の成分を、二軸スクリュー押出機(Coperion Werner & Pfleiderer(Stuttgart,Germany)製のZSK 26 Mega Compounder)中280〜320℃の温度で混合し、押出し物の形状で水浴の中に排出してペレット化可能になるまで冷却し、ペレット化させた。
【0121】
機械的な試験のための試験片は、射出成形機中の成形組成物から作成した。得られた試験片について、以下のようにして試験を実施した:曲げ試験;ISO 178に準拠、Izod衝撃試験;ISO 180 Uに準拠。
【0122】
加水分解抵抗性を評価する目的で、ISO 180 1Uに従ったIzod耐衝撃性、曲げ強さ、および最大応力での外側繊維の歪みにおける変化を、それぞれの場合において、室温で測定した。
【0123】
このためには、それらの試験片を、オートクレーブ中の(体積で)1:1のエチレングリコール/水混合物の中で130℃で42日間保存した。貯蔵期間が過ぎてから、脱イオン水を用いてそれらの試験片を洗浄し、乾燥させてから、それぞれ、ISO 178に従った曲げ試験およびISO 180 1Uに従ったIzod衝撃試験で試験した。初期値を求めるために、ISO 178に従った曲げ試験およびISO 180 1Uに従ったIzod衝撃試験を、射出成形プロセスからのフレッシュな、長期保存していない、試験片について実施した。
【0124】
比較例1には、コポリマーB)またはポリマー性カルボジイミドD)が含まれていない。比較例2には、国際公開第2005/121249A1号パンフレットに基づくコポリマーB)が含まれている。比較例3には、欧州特許第0 567 884号明細書および独国実用新案出願公開第202010002421U1号明細書に基づくポリマー性カルボジイミドが含まれている。
【0125】
比較例1、2および3に比較して、本発明実施例1からの試験片は、オートクレーブ中の(体積で)1:1のエチレングリコール/水混合物の中で130℃で42日間保存した後での、ISO 180 1Uに従ったIzod耐衝撃性、曲げ強さ、および外側繊維の歪みにおいて、顕著な改良を示している。
【0126】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性プラスチック成形組成物であって、
A)25〜79.85重量部の1種または複数のポリアミドまたはコポリアミド、
B)0.05〜10重量部の、少なくとも1種のオレフィンと少なくとも1種の脂肪族アルコールのアクリル酸エステルとの少なくとも1種のコポリマー(前記コポリマーのMFIが、ISO 1133に従って2.16kgの試験重量を用い190℃で測定または定量して、10g/10分より大である)、
C)10〜65重量部の少なくとも1種の充填剤および補強用材料、ならびに
D)0.05〜10重量部の少なくとも1種のオリゴマー性もしくはポリマー性カルボジイミド、
を含み、
重量部を合計したものが100である、
熱可塑性プラスチック成形組成物。
【請求項2】
成分A)〜D)に加えて、
E)0.05〜5重量部の少なくとも1種のその他の添加剤
もまた使用され、重量部を合計したものが常に100であるので、成分A)〜D)の重量部が相応に減量される、
請求項1に記載の熱可塑性プラスチック成形組成物。
【請求項3】
成分A)〜E)に加えるか、またはE)に代えて、
F)1〜10重量部の少なくとも1種のエラストマー変性剤
が使用され、重量部を合計したものが常に100であるので、成分A)〜D)、またはA)〜E)の重量部が相応に減量される、
請求項1または2に記載の熱可塑性プラスチック成形組成物。
【請求項4】
使用されるオリゴマー性もしくはポリマー性カルボジイミドが、式(II)
【化1】

[式中、
およびRはそれぞれ相互に独立して、官能性化学基であり、
は、脂肪族、脂環族または芳香族基を表し、そして
nは、3〜1000の整数を意味している]
で表される脂肪族、脂環族または芳香族のカルボジイミドを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性プラスチック成形組成物。
【請求項5】
成分E)の添加剤として、安定剤、帯電防止剤、流動助剤、離型剤、難燃添加剤、乳化剤、成核剤、可塑剤、潤滑剤、染料、顔料、分岐化剤、連鎖延長剤、または導電率を上昇させるための添加剤が使用される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性プラスチック成形組成物。
【請求項6】
ポリアミドベースの製品の加水分解抵抗性を改良するための方法であって、少なくとも1種のオレフィンと少なくとも1種の脂肪族アルコールのアクリル酸エステルとの少なくとも1種のコポリマー、および少なくとも1種のオリゴマー性もしくはポリマー性カルボジイミドから構成された物質の組合せ{ここで、前記コポリマーのMFIが10g/10分より大であり、前記MFIがISO 1133に従い、190℃、試験重量2.16kgで測定または定量され、そして式(II)で表される脂肪族、脂環族、または芳香族のカルボジイミドを含むオリゴマー性もしくはポリマー性カルボジイミドが、
【化2】

[式中、
およびRはそれぞれ相互に独立して、官能性化学基であり、
は、脂肪族、脂環族または芳香族基を表し、そして
nは、3〜1000の整数を意味している]である}
を、
A)25〜79.85重量部の1種または複数のポリアミドまたはコポリアミド、
B)0.05〜10重量部の、少なくとも1種のオレフィンと少なくとも1種の脂肪族アルコールのアクリル酸エステルとの少なくとも1種のコポリマー(前記コポリマーのMFIが、ISO 1133に従って2.16kgの試験重量を用い190℃で測定または定量して、10g/10分より大である)、
C)10〜65重量部の少なくとも1種の充填剤および補強用材料、および
D)0.05〜10重量部の少なくとも1種のオリゴマー性もしくはポリマー性カルボジイミド、
を含む熱可塑性プラスチック成形組成物の中で使用するが、
ここで、重量部を合計したものが100であり、
そして成形部品、成形物または半仕上げ製品が、射出成形、異形押出しもしくはその他の押出しプロセス、またはブロー成形の手段によって得られる、
方法。
【請求項7】
前記成形部品、成形物または半仕上げ製品が、自動車産業、電気産業、電子産業、電気通信産業、またはコンピューター産業、スポーツ、医薬品、家庭用品、建築産業、またはエンターテイメント産業において使用される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記成形部品、成形物または半仕上げ製品が、空気移送系構成部品、冷却水移送系構成部品、オイル移送系構成部品、その他の流体を移送する容器およびパイプ、燃料タンクまたはオイルタンクである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
自動車の冷却循環路における前記冷却水移送系構成部品が、冷却水−分配系、冷却水タンク、冷却液−膨張容器、サーモスタットハウジング、冷却水パイプ、熱交換器、または冷却系コネクターである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記自動車の冷却液循環路における構成部品の加水分解および/またはグリコール分解を抑制するための方法であって、前記構成部品を製造するために使用される前記ポリアミドが、
A)25〜79.85重量部の1種または複数のポリアミドまたはコポリアミド、
B)0.05〜10重量部の、少なくとも1種のオレフィンと少なくとも1種の脂肪族アルコールのアクリル酸エステルとの少なくとも1種のコポリマー(前記コポリマーのMFIが、ISO 1133に従って2.16kgの試験重量を用い190℃で測定または定量して、10g/10分より大である)、
C)10〜65重量部の少なくとも1種の充填剤および補強用材料、および
D)0.05〜10重量部の少なくとも1種のオリゴマー性もしくはポリマー性カルボジイミド、
を含む熱可塑性プラスチック成形組成物の形態をとっており
重量部を合計したものが100である、
方法。
【請求項11】
前記構成部品の製造が、射出成形、押出し成形、または吸引ブロー成形のプロセスを使用する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記射出成形または押出し成形のプロセスが、230〜330℃の範囲の溶融温度で実施される、請求項11に記載の方法。

【公開番号】特開2013−43993(P2013−43993A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−185072(P2012−185072)
【出願日】平成24年8月24日(2012.8.24)
【出願人】(505422707)ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー (220)
【Fターム(参考)】