説明

高い印刷連続運転安定性を有する平版印刷版

(a)任意選択的に前処理された基板と、(b)該基板上に被着された、(i)ラジカル重合されやすい少なくとも1つのエチレン系不飽和型基をそれぞれが含む、1つ又は2つ以上のタイプのモノマー及び/又はオリゴマー及び/又はポリマー;(ii)波長範囲300〜1,200 nmから選択された輻射線を吸収する、ラジカル重合のための少なくとも1つの輻射線感受性開始剤又は開始剤系;及び(iii)それぞれ少なくとも1つのエチレン系不飽和型基を有する少なくとも1つの置換基を含む少なくとも1つのシルセスキオキサンを含む組成物から成る輻射線感受性塗膜とを含んで成る輻射線感受性要素。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのシルセスキオキサンを含む塗膜を有する輻射線感受性要素に関する。本発明はさらに、前記要素の製造に使用される輻射線感受性組成物、このような要素の画像形成方法、及びこれから得られる画像形成された要素に関する。
【背景技術】
【0002】
平版印刷の技術分野は、油及び水の不混和性に基づく。油性材料又は印刷インクは、好ましくは画像領域によって受容され、そして水又はファウンテン溶液は、好ましくは非画像領域によって受容される。適切に製造された表面が水で湿潤され、そして印刷インクが着けられると、背景又は非画像領域が水を受容し、印刷インクを弾くのに対して、画像領域は印刷インクを受容し、水を弾く。次いで画像領域内の印刷インクは材料、例えば紙や布地などの被画像形成面に移される。しかし、一般に、印刷インクは先ず、ブランケットと呼ばれる中間材料に移され、次いで、ブランケットは、画像が形成される面上に印刷インクを移す。この技術はオフセット平版印刷と呼ばれる。
【0003】
しばしば使用される平版印刷前駆体のタイプは、アルミニウムを基材とする基板上に塗布された感光性塗膜を含む。塗膜は電磁線に対して反応することができ、これにより露光済部分が可溶性になって、この部分が現像プロセス中に除去されるようになっている。このような印刷版はポジ型と呼ばれる。他方において、塗膜の露光済部分が輻射線によって硬化される場合には、印刷版はネガ型と呼ばれる。両方の事例において、残りの画像領域は印刷インクを受容し、すなわち親油性であり、非画像領域(背景)は水を受容し、すなわち親水性である。画像領域と非画像領域との区別化は露光中に行われる。露光のために、真空下で印刷版前駆体にフィルムを取り付けることにより、良好な接触を保証する。次いで、輻射線源によって印刷版に露光を施す。或いは、印刷版はフィルムなしで、例えばUVレーザーを用いてデジタル露光を施すこともできる。ポジ型印刷版前駆体が使用される場合、印刷版上の画像に対応するフィルム上の領域は、光が印刷版に達しないように不透明であり、これに対して、非画像領域に対応するフィルム上の領域は透明であり、そして光が塗膜を透過するのを可能にし、塗膜の溶解度は増大する。ネガ型印刷版の場合、反対のことが行われる:印刷版上の画像に対応するフィルム上の領域は透明であり、これに対して、非画像領域は不透明である。透明フィルム領域の下側の塗膜は、入射光により硬化され、これに対して、光によって影響されない領域は現像中に除去される。従って、ネガ型印刷版の光硬化済表面は親油性であり、印刷インクを受容し、これに対して、現像剤によって除去される塗膜で塗布されていた非画像領域は減感され、従って親水性である。
【0004】
例えば独国特許出願公開第10 113 926号明細書、同第19 739 953号明細書、及び欧州特許第0 900 653号明細書から知られているように、無機粒子又はポリマー粒子、例えばSiO2又はポリエチレン粒子を印刷版前駆体のラジカル重合性輻射線感受性塗膜中に使用することによって、印刷版の印刷連続運転安定性を改善することができる。
【0005】
しかし、このような粒子を含む輻射線感受性組成物の処理は、あまり易しくはない。それというのも粒子は、組成物から生成された塗膜中に可能な限り一様に分布されるべきであるからである。通常、このことは、特殊な分散プロセス、並びに分散剤の使用を必要とする。さらに、塗布用溶液中の粒子の凝集が、これらの溶液の不十分な貯蔵安定性により頻繁に発生する。さらに、粒子の使用は、塗布用溶液の濾過中に問題を引き起こす。それというのもフィルターの孔サイズが、溶液中に使用される粒子のサイズよりも大きくなければならないからである。他方において、不十分に濾過された溶液は、塗膜の欠陥を招く。
【0006】
別の可能性は、いわゆるデュアル・フィード・プロセス(例えば米国特許第6,548,215号明細書参照)を用いて、無機粒子又はポリマー粒子を含有する塗膜を生成することである。しかしこのプロセスは、特殊な塗布技術を必要とし、このことは塗布プロセスのコストを高くしてしまう。
【0007】
しかしながら、全ての事例において、塗膜内に存在する粒子は、印刷中に塗膜から容易に抜け出すおそれがあり、このことは、受け入れがたい低品質の印刷画像をもたらす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って本発明の目的は、平版印刷版の製造において使用される場合に、印刷版のより高い印刷連続運転性を可能にすると同時に、高度の輻射線感受性をも可能にする輻射線感受性要素を提供することである。さらに、特殊な分散プロセスは回避されるべきであり、印刷中の画像要素における抜け出しは、大幅に排除されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、
(a)任意選択的に前処理された基板と、
(b)該基板上に被着された、
(i) ラジカル重合されやすい少なくとも1つのエチレン系不飽和型基をそれぞれが含む、1つ又は2つ以上のタイプのモノマー;
(ii) 波長範囲300〜1,200 nmから選択された輻射線を吸収する、ラジカル重合のための少なくとも1つの輻射線感受性開始剤又は開始剤系;及び
(iii) それぞれ少なくとも1つのエチレン系不飽和型基を有する少なくとも1つの置換基を含む少なくとも1つのシルセスキオキサン
を含む組成物から成る輻射線感受性塗膜と
を含んで成る輻射線感受性要素によって達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の輻射線感受性組成物の第1の主成分は、ラジカル重合されやすい少なくとも1つのエチレン系不飽和型基を含むモノマー及び/又はオリゴマー及び/又はポリマーである。
【0011】
ラジカル重合可能であり、そして少なくとも1つのC-C二重結合を含む、全てのモノマー、オリゴマー及びポリマーを、エチレン系不飽和型モノマー、オリゴマー、及びポリマーとして使用することができる。C-C三重結合を有するモノマー、オリゴマー、及びポリマーを使用することもできるが、しかしこれらは好ましくない。このような化合物は当業者によく知られており、そして特定の制限なしに本発明に使用することができる。モノマー、オリゴマー又はプレポリマーの形態の、1つ又は2つ以上の不飽和基を有するアクリル酸及びメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸及びフマル酸のエステルが好ましい。これらは固体又は液体の形態で存在してよく、固体及び高粘性形態が好ましい。モノマーとして適した化合物は、例えばトリメチロールプロパントリアクリレート及びメタクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート及びメタクリレート、ジペンタエリトリトールモノヒドロキシペンタアクリレート及びメタクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート及びメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート及びメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート及びメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート及びメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート及びメタクリレート、又はテトラエチレングリコールジアクリレート及びメタクリレートを含む。好適なオリゴマー及び/又はプレポリマーは、例えばウレタンアクリレート及びメタクリレート、エポキシドアクリレート及びメタクリレート、ポリエステルアクリレート及びメタクリレート、ポリエーテルアクリレート及びメタクリレート、又は不飽和型ポリエステル樹脂を含む。
【0012】
モノマー及び/又はオリゴマーに加えて、主鎖又は側鎖内にラジカル重合可能なC-C二重結合を含むポリマーを使用することもできる。その例は、無水マレイン酸/オレフィン・コポリマーとヒドロキシアルキル(メト)アクリレートとの反応生成物(例えば独国特許出願公開第4311738号明細書参照);アリルアルコールで部分的又は完全にエステル化された(メト)アクリル酸ポリマー(例えば独国特許出願公開第3332640号明細書参照);高分子ポリアルコールとイソシアナト(メト)アクリレートとの反応生成物;(メト)アクリレートを末端基とするポリスチレン、ポリ(メト)アクリル酸エステル、ポリ(メト)アクリル酸、ポリ(メト)アクリルアミド;ラジカル重合性基を含むエポキシドで部分的又は完全にエステル化された(メト)アクリル酸ポリマー;及びポリエーテルを含む。この関連において、接頭辞「(メト)」は、アクリル酸及びメタクリル酸双方の誘導体を使用できることを示す。
【0013】
追加の好適なC-C不飽和型ラジカル重合性化合物は、例えば欧州特許出願公開第1 176 007号明細書に記載されている。
【0014】
異なる種類のモノマー、オリゴマー、又はポリマーを混和材料として使用することももちろん可能であり、さらに、モノマー及びオリゴマー及び/又はポリマーの混合物、並びにオリゴマーとポリマーとの混合物を本発明において使用することもできる。ラジカル重合性のモノマー/オリゴマー/ポリマーは、本発明の輻射線感受性組成物から調製される輻射線感受性塗膜の乾燥層重量を基準として、好ましくは5〜95重量%、特に好ましくは20〜85重量%の量で存在する。本発明において使用される「輻射線感受性塗膜の乾燥層重量」という用語は従って、「輻射線感受性組成物の固形分」という用語と同義である。
【0015】
本発明の輻射線感受性組成物の別の主成分は、存在するモノマー、オリゴマー、又はポリマーのラジカル重合のための1種以上の輻射線感受性開始剤又は開始剤系である。本発明による輻射線感受性要素がUV線、可視線(VIS)、又はIR線のいずれによって画像形成されるかは、開始剤又は開始剤系のタイプに依存する。
【0016】
UV線の吸収時にフリーラジカルを直接的に形成する開始剤が、当業者によく知られており、これらは例えばK.K. Dietliker;「Chemistry & Technology of UV&EB formulation for coatings, inks & prints」、第3巻(SITA Technology, London (1991))に記載されている。開始剤は例えばオキシムエーテル及びオキシムエステル、ベンゾイン及びベンゾインエーテル、α-ヒドロキシ又はα-アミノアセトフェノン、アシルホスフィンオキシド及びジアシルホスフィンオキシドを含む。
【0017】
本発明の範囲内で、
(a) UV、VIS又はIR線を吸収するが、しかしそれ自体でフリーラジカルを形成することはできない増感剤、及び
(b) 像様露光にどのような電磁線が使用されるかに応じて、輻射線源から放射されたUV、VIS又はIR線をそれ自体は吸収することはできないが、しかし本発明において使用される輻射線吸収増感剤と一緒にフリーラジカルを形成する共開始剤
を含む開始剤系が特に好ましい。
【0018】
本発明の目的上、これらの開始剤系は2つの群に分けられる。すなわち、増感剤が波長750超〜1,200 nmの輻射線を吸収する開始剤系(短くIR吸収剤とも呼ぶ)、及び、開始剤が300〜750 nmの輻射線を吸収する開始剤系である。第1の群の開始剤系が使用される場合、IR感光性要素が得られるのに対して、第2の群の開始剤系を使用すると、UV感光性又はVIS感光性要素がもたらされる。
【0019】
吸収特性に基づいて、開始剤系において使用される増感剤は、輻射線感受性組成物がUV、VIS又はIRのいずれの範囲において感光するかを決定する。
【0020】
本発明において、IR吸収剤は好ましくは、トリアリールアミン色素、チアゾリウム色素、インドリウム色素、オキサゾリウム色素、シアニン色素、ポリアニリン色素、ポリピロール色素、ポリチオフェン色素及びフタロシアニン色素及び顔料のクラスから選択される。しかし、他のIR吸収剤、例えば欧州特許出願公開第1 160 095号明細書に記載された吸収剤を使用することもできる。
下記化合物は、好適なIR吸収剤の例である:
【0021】
【化1】

【0022】
【化2】

【0023】
【化3】

【0024】
【化4】

【0025】
【化5】

【0026】
【化6】

【0027】
本発明の1実施態様によれば、式(I)のIR吸収剤が使用される:
【0028】
【化7】

【0029】
(上記式中、
各Xは独立して、S、O、NR12又はC(アルキル)2を表し;
各R1は独立して、アルキル基を表し;
R2はハロゲン原子、SR、OR、又はNR2を表し;
各R3は独立して、水素原子、アルキル基、OR、SR、又はNR2又はハロゲン原子を表し;R3はベンゾ縮合されていてもよく;
A-はアニオンを表し;
---は、任意選択的に存在する炭素環式5員又は6員環を表し;
Rは、アルキル又はアリール基を表し;NR2の場合、一方のR12はHであってもよく;
各nは独立して、0、1、2又は3であることが可能である)。
【0030】
これらのIR吸収剤は、800〜1,200 nmの範囲で吸収し、810〜860 nmの範囲で吸収する式(I)の吸収剤が好ましい。
Xは好ましくは、C(アルキル)2基であり、アルキル基の炭素原子数は好ましくは1〜3である。
R1は好ましくは、炭素原子数1〜4のアルキル基である。
R2は好ましくはSRである。
R3は好ましくは水素原子である。
Rは好ましくはフェニル基である。
破線は、炭素原子数5又は6の環の残基を表すことが好ましい。
対イオンA-は好ましくは、塩化物イオン又はトシレート・アニオンである。
対称的な構造(I)を有するIR吸収剤が特に好ましい。
【0031】
特に好ましいIR吸収剤の例は、
2-[2-[2-フェニルスルホニル-3-[2-(1,3-ジヒドロ-1,3,3-トリメチル-2H-インドール-2-イリデン)-エチリデン]-1-シクロヘキセン-1-イル]-エテニル]-1,3,3-トリメチル-3H-インドリウムクロリド、
2-[2-[2-チオフェニル-3-[2-(1,3-ジヒドロ-1,3,3-トリメチル-2H-インドール-2-イリデン)-エチリデン]-1-シクロヘキセン-1-イル]-エテニル]-1,3,3-トリメチル-3H-インドリウムクロリド、
2-[2-[2-チオフェニル-3-[2-(1,3-ジヒドロ-1,3,3-トリメチル-2H-インドール-2-イリデン)-エチリデン]-1-シクロペンテン-1-イル]-エテニル]-1,3,3-トリメチル-3H-インドリウムトシレート、
2-[2-[2-クロロ-3-[2-(1,3-ジヒドロ-1,3,3-トリメチル-2H-ベンゾ[e]-インドール-2-イリデン)-エチリデン]-1-シクロヘキセン-1-イル]-エテニル]-1,3,3-トリメチル-1H-ベンゾ[e]-インドリウム-トシレート、及び、
2-[2-[2-クロロ-3-[2-エチル-3H-ベンズチアゾル-2-イリデン)-エチリデン]-1-シクロヘキセン-1-イル]-エテニル]-3-エチル-ベンズチアゾリウム-トシレート
を含む。
【0032】
1,4-ジヒドロピリジン、オキサゾール、ビスオキサゾール及び類似体、クマリン、トリアリールメタン色素、及びメタロセンを、例えばUV又はVIS吸収性増感剤として使用することができる。このような増感剤は、例えば独国特許出願公開第42 17 495号明細書、独国特許第44 18 645号明細書、独国特許第2 801 065号明細書、欧州特許出願公開第1 041 074号明細書、及びDD 287 796 Aに記載されている。
【0033】
UV又はVIS感光性組成物において、式(II)の化合物をオキサゾール・タイプの増感剤として使用することができる。
【0034】
【化8】

【0035】
上記式中、各R4、R5及びR6は独立して、ハロゲン原子、任意選択的に置換されたアルキル基、縮合されてもよい任意選択的に置換されたアリール基、任意選択的に置換されたアラルキル基、基-NR'R''及び基-OR'''から選択され、R'及びR''は独立して、水素原子、アルキル、アリール又はアラルキル基から選択され、
R'''は、任意選択的に置換されたアルキル、アリール又はアラルキル基又は水素原子であり、そしてk、m及びnは独立して、0又は整数1〜5である。
【0036】
好ましくは、R4、R5及びR6は独立して、ハロゲン原子、C1-C8アルキル基及び基-NR'R''から選択され、R'及びR''は独立して、好ましくは水素原子及びC1-C6アルキルから選択される。
k、m及びnは独立して、好ましくは0又は1である。
【0037】
基R4、R5及びR6のうちの1つ以上が基-NR'R''を表し、R'及びR''が好ましくは、独立して水素原子及びC1-C6アルキルから選択されている式(II)のオキサゾール誘導体が特に好ましく、また、R'=R''=C1-C6アルキルであることが殊に好ましい。
【0038】
上記式(II)のオキサゾール誘導体は、当業者によく知られたプロセスに従って調製することができる。これに関しては、独国特許出願公開第120 875号明細書及び欧州特許出願公開第0 129 059号明細書を参照されたい。これらの文献に記載されたプロセスを、出発化合物を適宜に変化させることにより、これらの文献に明確には記載されていないオキサゾールの合成のために用いることもできる。
【0039】
UV又はVIS感光性組成物のための増感剤として、式(III)の化合物を使用することもできる:
【0040】
【化9】

【0041】
(上記式中、X1は、複素環に複合された少なくとも1つのC-C二重結合を含むスペーサー基であり、
Y及びZは独立して、任意選択的に置換された縮合芳香族環を表し、
そしてV及びWは独立して、O、S及びNR7から選択され、R7は、任意選択的に一置換型又は多置換型であることができるアルキル、アリール及びアラルキル基である)。
【0042】
好ましくはV=Wであり、そしてこれはO又はNR7を表す。
R7は、好ましくはC1-C12アルキルである。
スペーサー基X1は鎖状又は環状ユニット又はその組み合わせであってよい。これは好ましくは:
任意選択的に1つ又は2つのベンゾ縮合芳香族環を含むフェニレン(例えばナフタレン)(2つの複素環との結合部位は、同じ環又は異なる環に配置することができる)、
【0043】
【化10】

【0044】
から選択される。
【0045】
上に示した6員環の場合、結合部位は1,4-位置にあるのが好ましく、そして5員環の場合、2,5-位置にあるのが好ましい。上に示した5員環及び6員環は、上記式に示されていなくても、任意選択的に1つ又は2つ以上の置換基、例えばC1-C10アルキル基及びハロゲン原子を含むことができる。
【0046】
好ましい増感剤は、式(IIIa)、(IIIb)及び(IIIc)によって表される:
【0047】
【化11】

【0048】
(上記式中、s及びtは独立して0又は整数1〜4(好ましくは0又は1)であり、各基R10及びR11は独立して、ハロゲン原子、アルキル、アリール、アラルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ基、飽和型又は非芳香族不飽和型炭素環、縮合アリール基、-SO3H、-NR162、-COOR17及び-COR17から選択され;
各R10基は独立して、水素原子又はアルキル基であり、そして基R11は独立して、水素原子、及びアルキル基及びアリール基から選択され、そしてX1及びR7は上に定義された通りである)。
【0049】
R8及びR9は好ましくは独立して、-NR102、アルコキシ基及びアルキル基から選択される。
R10は好ましくはC1-C10アルキル基である。
R11は好ましくはC1-C10アルキル基である。
Y及びZは、任意選択的に置換されていてもよいベンゾ縮合型芳香族環を表す。
【0050】
式(III)の増感剤は、当業者によく知られた方法に従って調製することができる。これと関しては、A. Dorlars他のAngew. Chemie.[Applied Chemistry] 第87巻(1975)、693-707を参照されたい。これらの文献に記載された方法を、出発化合物を適宜に変化させることにより、これらの文献に明確には開示されていない化合物の合成のために用いることもできる。
【0051】
UV又はVIS感光性組成物のための他の考えられ得る増感剤は、式(IV)の1,4-ジヒドロピリジン化合物を含む:
【0052】
【化12】

【0053】
上記式中、R12は、水素原子、-C(O)OR18、任意選択的に置換されたアルキル基、任意選択的に置換されたアリール基、及び任意選択的に置換されたアラルキル基から選択され、
R13及びR14は独立して、任意選択的に置換されたアルキル基、任意選択的に置換されたアリール基、CN及び水素原子から選択され、
R15及びR16は独立して、-C(O)OR18、-C(O)R18、-C(O)NR19R20、及びCNから選択され、
又は、R13とR15とが結合して、任意選択的に置換されたフェニル環又は5〜7員炭素環又は複素環を形成し、ユニット
【0054】
【化13】

【0055】
は、ジヒドロピリジン環の位置5に隣接する炭素環又は複素環内に存在し、そして、炭素環又は複素環は任意選択的に追加の置換基を含み、
又は、R13及びR15、並びにR14及びR16が、任意選択的に置換されたフェニル環又は5〜7員炭素環又は複素環を形成し、ユニット
【0056】
【化14】

【0057】
は、ジヒドロピリジン環の位置3及び5に隣接する炭素環又は複素環内に存在し、そして、炭素環又は複素環は任意選択的に追加の置換基を含み、
又は、R13/R15対、及びR14/R16対のうちの一方が、5〜7員炭素環又は複素環を形成し、ユニット
【0058】
【化15】

【0059】
は、ジヒドロピリジン環の位置5又は3に隣接する炭素環又は複素環内に存在し、そして、炭素環又は複素環は任意選択的に追加の置換基を含み、そして他方の対は、任意選択的に置換されたフェニル環を形成し、
又は、R13及びR12、又はR14及びR12が、5〜7員複素環を形成し、該複素環は任意選択的に、1つ又は2つ以上の置換基を含むことができ、そして窒素原子に加えてこれを1,4-ジヒドロピリジン環と共有し、任意選択的に、追加の窒素原子、-NR'基、-S-又は-O-を含み、
R'は、水素原子、アルキル基、アリール基及びアラルキル基から選択され、
R17は、任意選択的にハロゲン原子又は-C(O)基で置換されたアルキル基、任意選択的に置換されたアリール基、任意選択的に置換されたアラルキル基、任意選択的に置換された複素環式基、及び基
【0060】
【化16】

【0061】
(Y1はアルキレン又はアリーレン基である)から選択され、
R18は、水素原子、アリール基、アラルキル基又はアルキル基であり、アルキル基、及びアラルキル基のアルキル・ユニットは任意選択的に、1つ又は2つ以上のC-C二重結合及び/又はC-C三重結合を含み、
そして、R19及びR20は独立して、水素原子、任意選択的に置換されたアルキル基、任意選択的に置換されたアリール基、及び任意選択的に置換されたアラルキル基)
から選択される。
【0062】
好ましい実施態様によれば、R12は、水素原子である。
R13とR14とが隣接置換基と環を形成しない場合、これらは好ましくは独立して、C1-C5アルキル基又はアリール基から選択される。
R15とR16とが隣接置換基と環を形成しない場合、これらは好ましくは独立して、-C(O)OR18から選択される。
R17は好ましくは、C1-C5アルキル基又はアリール基から選択される。
R18は好ましくは、C1-C5アルキル基から選択され、そしてこれがメチル基を表すことが特に好ましい。
【0063】
1実施態様によれば、R13/R15及びR14/R16による1,4-ジヒドロピリジン環の置換は対称的であり、すなわち、R13=R14及びR15=R16である。
【0064】
好ましい実施態様によれば、R13及びR14は独立して、任意選択的に置換されたアルキル基、任意選択的に置換されたアリール基、CN及び水素原子から選択され、そしてR15及びR16は独立して、-C(O)OR18、-C(O)R18、-C(O)NR19R20、及びCNから選択される。
【0065】
更なる好適な増感剤は以下の1,4-ジヒドロピリジン誘導体である:
式(IVa):
【化17】

【0066】
(上記式中、R12及びR17は上に定義された通りであり、
基R8a〜R8d及びR9a〜R9dは独立して、水素原子、アルキル基及びアリール基から選択され、隣接環炭素原子の2つの基R9及び/又はR8は、飽和型又は不飽和型の炭素環又は複素環又は縮合芳香族環を一緒に形成することもでき、
各Z1は独立して、CR'2、O、S及びNR'から選択され、そして
各R'は独立して、水素原子、アルキル、アラルキル又はアリール基を表す)、
【0067】
式(IVb):
【化18】

【0068】
{上記式中、R12及びR17は上に定義された通りであり、
基R10a〜R10d及びR11a〜R11dは独立して、水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、CN、NR'2、-C(O)OR'、及びOR'(各R'は独立して、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す)から選択され、隣接環炭素原子の2つの基R11及び/又はR10は、不飽和型の炭素環又は複素環又は縮合芳香族環を一緒に形成することもできる}、
【0069】
式(IVc):
【化19】

【0070】
{上記式中、R12、R14、R16及びR17は上に定義された通りであり、そして、基R9a〜R9fは独立して、水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、CN、NR'2、-C(O)OR'、及びOR'(R'は独立して、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す)から選択され、隣接環炭素原子の2つの基R9は、飽和型又は不飽和型の炭素環又は複素環又は縮合芳香族環を一緒に形成することもできる}、
【0071】
式(IVd):
【化20】

【0072】
(上記式中、各R12、R13、R14、R15及びR16は独立して、上に定義された通りであり、そしてY1はアルキレン及びアリーレンから選択される)、
【0073】
式(IVe):
【化21】

【0074】
(上記式中、R13、R15、R16及びR17は上に定義された通りであり、そして基R9a〜R9fは、上記式(IVa)の基R9a〜R9dのように定義される)、
【0075】
式(IVf):
【化22】

【0076】
(上記式中、R13、R15、R16及びR17は上に定義された通りであり、そして基R9a〜R9hは、上記式(IVa)の基R9a〜R9dのように定義される)、及び
【0077】
式(IVg):
【化23】

【0078】
{上記式中、R13、R15、R16及びR17は上に定義された通りであり、そして、基R11a〜R11dは独立して、水素、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、CN、NR'2、-COOR'、及びOR'(R'は独立して、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す)から選択され、隣接環炭素原子の2つの基R11は、不飽和型の炭素環又は複素環又は縮合芳香族環を一緒に形成することもできる}。
【0079】
言うまでもなく、隣接環炭素原子の2つの基R8及び/又はR9が縮合芳香族環を一緒に形成する場合、式(IVa)、(IVc)、(IVe)及び(IVf)における基R8及び/又はR9の数は、低減する。
【0080】
式(IVa)の1,4-ジヒドロピリジン誘導体において、R12は好ましくは水素原子であり、R17はメチル基又はフェニル基であり、そしてZ1は好ましくはO又はCH2であり、置換基R8a〜R8d及びR9a〜R9dは独立して、好ましくは、水素原子及びメチル基から選択される。式(IVa)の誘導体のうち、ジヒドロピリジン環において対称的な置換を有する誘導体が、特に好ましい。
【0081】
式(IVb)の誘導体において、R12は好ましくは水素原子であり、R17は好ましくはメチル基又はフェニル基である。置換基R10a〜R10d及びR11a〜R11dは独立して、好ましくは、C1-C5アルキル基、OR'及びハロゲン原子から選択され、2つの芳香族環の対称的な置換が、特に好ましい。
【0082】
式(IVc)の1,4-ジヒドロピリジン誘導体において、R12は好ましくは水素原子であり、R17はメチル基又はフェニル基であり、R14は好ましくはメチル基であり、そしてR16は好ましくはC(O)OR7である(R18は上に定義した通りである)。置換基R9a〜R9fは独立して、好ましくはC1-C5アルキル基から選択され、メチル基が特に好ましい。
【0083】
式(IVd)の誘導体において、Y1は好ましくは1,4-フェニレン又は1,2-エチレン基である。さらに、両R12基が同じものであり、両R13基が同じものであり、両R14基が同じものであり、両R15基が同じものであり、そして両R16基が同じものであることが好ましく、式(IV)に関して与えられた好ましい定義は、全ての基R12〜R16に当てはまる。
【0084】
式(IVe)の誘導体において、R13は好ましくはC1-C5アルキルであり、R14は好ましくは-C(O)OR18であり、R16は好ましくは-C(O)OR18であり、そしてR17は好ましくはC1-C5アルキル又はフェニル基である(R18は上に定義した通りである)。置換基R9a〜R9fは好ましくは、独立してC1-C5アルキル基から選択される。
【0085】
式(IVf)の誘導体において、R13は好ましくはC1-C5アルキルであり、R15は好ましくは-C(O)OR18であり、R16は好ましくは-C(O)OR18であり、そしてR17は好ましくはC1-C5アルキル又はフェニル基である(R18は上に定義した通りである)。置換基R9a〜R9hは好ましくは、独立してC1-C5アルキル基から選択される。
【0086】
式(IVg)の誘導体において、R13は好ましくはC1-C5アルキルであり、R15は好ましくは-C(O)OR18であり、R16は好ましくは-C(O)OR18であり、そしてR17は好ましくはC1-C5アルキル又はフェニル基である。置換基R11は好ましくは、独立してC1-C5アルキル基から選択される。
【0087】
式(IVa)〜(IVg)の1,4-ジヒドロピリジン誘導体のうち、式(IVa)及び(IVd)の誘導体が特に好ましい。
【0088】
式(IV)の1,4-ジヒドロピリジン誘導体は、当業者によく知られた方法、例えばHantzsch合成に従って調製することができる。一例として、J. Org. Chem. 30(1965)、第1914頁以下、及びAngew. Chem.[Applied Chemistry](Intern.) 20(1981)、第762頁以下を参照されたい。これらの文献に記載された方法を、出発化合物を適宜に変化させることにより、これらの文献に明確には開示されていない1,4-ジヒドロピリジンの合成のために用いることができる。
【0089】
UV又はVIS感光性組成物のための増感剤として、式(V)の化合物を使用することもできる:
【0090】
【化24】

【0091】
(上記式中、
X2は、O、S及びSeから選択され;
rは0又は正の整数を表し;
o、p及びqは独立して0又は正の整数であり;
πユニット
【0092】
【化25】

【0093】
は独立して、それぞれ共役π電子系を有する不飽和型ユニットであり、これらのユニットは、複素環式ユニット
【0094】
【化26】

【0095】
に共有結合されており、そしてこのユニットと結合して再び共役π電子系を形成し、そして
各基R21、R22及びR23は独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、基-NR24R25及び基残余OR26から選択され、
R24、R25及びR26は独立して、アルキル基、アリール基、及びアラルキル基から選択される)。
【0096】
当業者にとっては言うまでもないことであるが、πユニット
【0097】
【化27】

【0098】
において利用可能な結合部位の数によって、置換基R21、R22及びR23の最大数(すなわちo、p及びq)が制限され、同じことが、
【0099】
【化28】

【0100】
に結合された複素環式ユニットの最大数(2+r)にももちろん当てはまる。
【0101】
X2=Oの場合、2,4,5-置換型オキサゾールが得られ、
従って、X2=Sの場合、2,4,5-置換型チアゾールが得られ、そして
従って、X2=Seの場合、2,4,5-置換型セレナゾールが得られ、これらの化合物のうち、オキサゾール及びチアゾールが好ましく、オキサゾールが特に好ましい。
rは好ましくは0、1又は2であり、特に好ましくは0又は1である。
【0102】
置換型複素環式ユニット
【0103】
【化29】

【0104】
は、
【0105】
【化30】

【0106】
に2回(r=0)以上結合され;
【0107】
【化31】

【0108】
のこれらの置換基が全て同じである必要はなく、すなわち、
【0109】
【化32】

【0110】
の置換基毎に、それぞれのX2
【0111】
【化33】

【0112】
、R22、R23、p及びqが独立して選択される。
【0113】
不飽和型ユニット
【0114】
【化34】

【0115】
は好ましくは、交互の二重結合を有するポリエン基SUS-1:
【化35】

【0116】
{Z1は正の整数(好ましくは1〜3、特に好ましくは1又は2)であり、そしてRa及びRbは独立して、H、アルキル、アリール、ハロゲン、-CN、-COOH、及び-COO-アルキル(好ましくはH、-CN、及びCH3)から選択される};
【0117】
交互の三重結合を有するポリイン基SUS-2:
【化36】

【0118】
{Z2は正の整数(好ましくは1又は2、特に好ましくは1)である};
(4n + 2)個のπ電子を有するπ分岐芳香族ユニットである基SUS-3、好ましくは構造SUS-3-a、SUS-3-b、及びSUS-3-c:
【0119】
【化37】

【0120】
のうちの1つ;
π分岐電子欠乏複素環式芳香族ユニットである基SUS-4、好ましくは構造SUS-4-a、SUS-4-b、及びSUS-4-c、SUS-4-d、及びSUS-4-e:
【0121】
【化38】

【0122】
π分岐電子豊富複素環式芳香族ユニットである基SUS-5、好ましくは構造SUS-5-a、SUS-5-b、又はSUS-5-c:
【0123】
【化39】

【0124】
(上記式中X2はO、S及びSeから選択される);及び
2つの縮合芳香族環を有するπ分岐電子豊富複素環式芳香族ユニットである基SUS-6:
【0125】
【化40】

【0126】
{上記式中X3は、ヘテロ原子、好ましくはO、S、Se、NH及びN-アルキル(アルキル基の炭素原子数は好ましくは1〜5)、特に好ましくはO又はSを表す}
から選択され;
ユニット
【0127】
【化41】

【0128】
及び系(I)全体内のπ共役が維持されている限り、上記基SUS-1〜SUS-6の組み合わせを
【0129】
【化42】

【0130】
として使用することもできる。
任意選択の置換基R21は基SUS-1〜SUS-6には示されていない。
【0131】
【化43】

【0132】
が:
【0133】
【化44】

【0134】
を表すことが特に好ましい。
【0135】
【化45】

【0136】
が:
【0137】
【化46】

【0138】
を表すことが特に好ましい。
【0139】
ユニット
【0140】
【化47】

【0141】
も好ましくは、構造SUS-1〜SUS-6を表し;任意選択の置換基R22及びR23は示されていない。
【0142】
【化48】

【0143】
はそれぞれ、任意選択的に置換されたアルキル基、具体的にはフェニル基を表し、フェニル基は、任意選択的にハロゲン原子又は基NR272(それぞれのR27は好ましくは、独立してアルキル及びアリールから選択される)と一置換又は多置換されている。
【0144】
下記のような
【0145】
【化49】

【0146】
との間に共有結合を有する化合物
【0147】
【化50】

【0148】
は、本発明による増感剤ではなく;
【0149】
【化51】

【0150】
との相互作用の結果として生じる発色団は、高感光性フォトシステムをもたらさない。
【0151】
任意の置換基R21、R22、及びR23は、独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基(好ましくはC1-C8)、アラルキル基、基-NR24R25{R24及びR25は独立してアルキル(好ましくはC1-C8)、アリール及びアラルキルから選択される}、及び基-OR26{R26は、アルキル(好ましくはC1-C8)、アリール及びアラルキルから選択される}から選択される。
【0152】
式(V)の下記化合物が特に好ましい:
増感剤1:
4-(5-(2-クロロフェニル)-2-(4-(5-(2-クロロフェニル)-4-(4-(ジエチルアミノ)フェニル)オキサゾール-2-イル)フェニル)オキサゾール-4-イル)-N,N-ジエチルベンゼンアミン
【0153】
【化52】

【0154】
増感剤2:
4-(2-(4-(4-(4-(ジメチルアミノ)フェニル)-5-フェニルオキサゾール-2-イル)フェニル)-5-フェニルオキサゾール-4-イル)-N,N-ジメチルベンゼンアミン
【0155】
【化53】

【0156】
増感剤3:
4-(5-(2-クロロフェニル)-2-(4-(5-(2-クロロフェニル)-4-(4-(ジエチルアミノ)フェニル)オキサゾール-2-イル)-2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)オキサゾール-4-イル)-N,N-ジエチルベンゼンアミン
【0157】
【化54】

【0158】
増感剤4:
4-(5-(2-クロロフェニル)-2-(9-(5-(2-クロロフェニル)-4-(4-(ジエチルアミノ)フェニル)オキサゾール-2-イル)アントラセン-10-イル)オキサゾール-4-イル)-N,N-ジエチルベンゼンアミン
【0159】
【化55】

【0160】
増感剤5:
4-(2-(2-((1E,13E)-4-((E)-2-(4-(4-(ジメチルアミノ)フェニル)-5-フェニルオキサゾール-2-イル)スチリル)スチリル)フェニル)-5-フェニルオキサゾール-4-イル)-N,N-ジメチルベンゼンアミン
【0161】
【化56】

【0162】
増感剤6:
4-(2-(4-((1E,13E)-4-((E)-2-(4-(4-(ジメチルアミノ)フェニル)-5-フェニルオキサゾール-2-イル)スチリル)スチリル)フェニル)-5-フェニルオキサゾール-4-イル)-N,N-ジメチルベンゼンアミン
【0163】
【化57】

【0164】
増感剤7:
4-(5-(2-クロロフェニル)-2-(2-(5-(2-クロロフェニル)-4-(4-(ジエチルアミノ)フェニル)オキサゾール-2-イル)-3,4,5,6-テトラフルオロフェニル)オキサゾール-4-イル)-N,N-ジエチルベンゼンアミン
【0165】
【化58】

【0166】
増感剤8:
4-(2-((1E,28E)-4-((E)-2-(4-(4-(ジメチルアミノ)フェニル)-5-フェニルオキサゾール-2-イル)ビニル)スチリル)-5-フェニルオキサゾール-4-イル)-N,N-ジメチルベンゼンアミン
【0167】
【化59】

【0168】
増感剤9:
(E)-4-(2-(4-(4-(4-(4-(ジメチルアミノ)フェニル)-5-フェニルオキサゾール-2-イル)スチリル)フェニル)-5-フェニルオキサゾール-4-イル)-N,N-ジメチルベンゼンアミン
【0169】
【化60】

【0170】
増感剤10:
4-(2-(4-((1E,26E)-4-((E)-4-(4-(4-(ジメチルアミノ)フェニル)-5-フェニルオキサゾール-2-イル)スチリル)スチリル)フェニル)-5-フェニルオキサゾール-4-イル)-N,N-ジメチルベンゼンアミン
【0171】
【化61】

【0172】
増感剤11:
4-(2-((E)-2-(5-((E)-2-(4-(4-(ジメチルアミノ)フェニル)-5-フェニルオキサゾール-2-イル)ビニル)チオフェン-2-イル)ビニル)-5-フェニルオキサゾール-4-イル)-N,N-ジメチルベンゼンアミン
【0173】
【化62】

【0174】
増感剤12:
N-(4-(2-(4-(4-(4-(ジフェニルアミノ)フェニル)-5-(ペルフルオロフェニル)オキサゾール-2-イル)フェニル)-5-(ペルフルオロフェニル)オキサゾール-4-イル)フェニル)-N-フェニルベンゼンアミン
【0175】
【化63】

【0176】
増感剤13:
4-(5-(2-クロロフェニル)-2-(6-(5-(2-クロロフェニル)-4-(4-(ジエチルアミノ)フェニル)オキサゾール-2-イル)ピリジン-2-イル)オキサゾール-4-イル)-N,N-ジエチルベンゼンアミン
【0177】
【化64】

【0178】
増感剤14:
4-2-(3,5-ビス(5-(2-クロロフェニル)-4-(4-(ジエチルアミノ)フェニル)オキサゾール-2-イル)フェニル)-5-(2-クロロフェニル)オキサゾール-4-イル)-N,N-ジエチルベンゼンアミン
【0179】
【化65】

【0180】
増感剤15:
4-2-((1E,9E,11E)-3,5-ビス((E)-2-(4-(4-(ジメチルアミノ)フェニル)-5-フェニルオキサゾール-2-イル)ビニル)スチリル)-5-フェニルオキサゾール-4-イル)-N,N-ジメチルベンゼンアミン
【0181】
【化66】

【0182】
増感剤16:
(E)-4-(5-(2-クロロフェニル)-2-(2-(5-(2-クロロフェニル)-4-(4-(ジエチルアミノ)フェニル)オキサゾール-2-イル)ビニル)オキサゾール-4-イル)-N,N-ジエチルベンゼンアミン
【0183】
【化67】

【0184】
増感剤17:
(4-(5-(2-クロロフェニル)-2-((1E,3E)-4-(5-(2-クロロフェニル)-4-(4-(ジエチルアミノ)フェニル)オキサゾール-2-イル)ブタ-1,3-ジエニル)オキサゾール-4-イル)-N,N-ジエチルベンゼンアミン
【0185】
【化68】

【0186】
本発明において使用される式(V)の増感剤は、強い黄色から緑がかった蛍光を示す。
【0187】
本発明において使用される式(V)の化合物は、例えば欧州特許第0 129 059号明細書及び米国特許第3,257,203号明細書に記載されたプロセスと同様に、当業者によく知られたプロセスに従って調製することができる。これらの文献に記載されたプロセスを、出発化合物を適宜に変化させることにより、これらの文献に明確には記載されていない化合物の合成のために用いることもできる。
【0188】
最適な増感剤量は、種々のファクター、例えば放射波長における減衰係数、又は使用される輻射線源の放射波長、輻射線感受性要素の輻射線感受性層の厚さ及びその分子量に依存する。典型的には、これらは、輻射線感受性塗膜の乾燥層重量を基準として、0.5〜15 wt.%の量で使用される。これらの値は両群の開始剤系に当てはまる。各開始剤系は、開始剤(Sens)と共開始剤(Coinit)とのモル比(nM=Mol Sens : Mol Coinit)の最適値を有する。この最適値は適切な試験によって決定されなければならない。モル比最適値は通常0.1〜2である。
【0189】
本発明において、UV/VIS感光性組成物のための共開始剤は、例えば、アミン、例えばアルカノールアミン;N,N-ジアルキルアミノ安息香酸エステル;N-アリールグリシン及びこれらの誘導体(例えばN-フェニルグリシン);芳香族スルホニルハロゲン化物;トリハロメチルスルホン;イミド、例えばN-ベンゾイルオキシフタリミド;ジアゾスルホネート;9,10-ジヒドロアントラセン誘導体;1つ以上がアリール・ユニットの窒素、酸素又は硫黄原子に結合された2つ以上のカルボキシル基を有するN-アリール、S-アリール又はO-アリールポリカルボン酸(例えば、アニリン二酢酸及びその誘導体、及び米国特許第5,629,354号明細書に記載されたその他の共開始剤);ヘキサアリールビイミダゾール、例えば2,2-ビス-(2-クロロフェニル)-4,5,4',5'-テトラフェニル-2'H-[1,2']ビイミダゾール及び2,2',5-トリス(2-クロロフェニル)-4-(3,4-ジメトキシフェニル)-4,5'-ジフェニルビイミダゾール;チオール化合物(例えば2-メルカプトベンズチアゾール、2-メルカプトベンズイミダゾール、及び3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール);ホスフィン;スタンナン;アルシン;シラン;1〜3つのCX3基を有する1,3,5-トリアジン誘導体(いずれのXも独立して、塩素又は臭素原子から選択され、そして好ましくは塩素原子である)、例えば、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(スチリル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシ-ナフト-1-イル)-4,6-ビス-トリクロロメチル-s-トリアジン、2-(4-エトキシ-ナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、及び2-[4-(2-エトキシエチル)-ナフト-1-イル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン;オキシムエーテル及びオキシムエステル、例えばベンゾインから誘導されたもの;α-ヒドロキシ又はα-アミノアセトフェノン;アルキルトリアリールボレート;ベンゾインエーテル及びベンゾインエステル;メタロセン(好ましくはチタノセン、及び特に好ましくは、2つの5員シクロジエニル基、例えばシクロペンタジエニル基、及び少なくとも1つのオルトフッ素原子を有する1つ又は2つの6員芳香族基、及び任意選択的にピリル基をも有するメタロセン、例えばビス(シクロペンタジエニル)-ビス-[2,6-ジフルオロ-3-(ピル-1-イル)-フェニル]チタニウム及びジシクロペンタジエン-ビス-2,4,6-トリフルオロフェニル-チタニウム又はジルコニウム);オニウム塩、例えばアンモニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、アリールジアゾニウム塩、ホスホニウム塩及びN-アルコキシピリジニウム塩;過酸化物(例えば有機過酸化物型アクチベーターとして欧州特許出願公開第1 035 435号明細書に挙げられているもの)、アシルホスフィンオキシド;アゾ化合物、ジアシルホスフィンオキシド及びトリホスフィンオキシドから選択することができる。
【0190】
本発明によるIR感光性開始剤系は、共開始剤として、米国特許第6,309,792号明細書に記載された1種又は2種以上のポリハロゲンアルキル置換型化合物、オニウム塩及びその他の化合物を含む。
【0191】
ポリハロゲンアルキル置換型化合物は、1つのホリハロゲン化アルキル置換基又はいくつかのモノハロゲン化アルキル置換基を含む化合物である。ハロゲン化アルキル基の炭素原子数は好ましくは1〜3であり;ハロゲン化メチル基が特に好ましい。フッ素、塩素及び臭素原子がハロゲン原子として好ましく使用され、塩素及び臭素原子が特に好ましい。
【0192】
特に好ましいポリハロゲンアルキル置換型化合物及びオニウム塩は、UV及びVIS感光性開始剤系のための共開始剤との関連において、既に挙げられている。
【0193】
ポリハロゲンアルキル置換型化合物の吸収特性は、IR感光性要素の日光安定性に対して決定的な影響をもたらす。約300〜750 nmの範囲内にUV/VIS吸収極大値を有する化合物がもたらす要素は、6〜8分間にわたって日光の下に貯蔵し、続いて後加熱した後、もはや現像することはできない。原理的には、このような要素は、IR線で画像形成することができないだけでなく、UV線を用いても画像形成することができない。従って要素の日光安定性が所期特徴である場合、ポリハロゲンアルキル置換型化合物は、>330 nmにおいて本質的なUV/VIS吸収を示さないことが好ましい。
【0194】
本発明の主旨は、少なくとも1つのエチレン系不飽和型基をそれぞれが含む少なくとも1つの置換基を有する少なくとも1つのシルセスキオキサンを使用することである。
【0195】
「シルセスキオキサン」(「シラセスキオキサン」とも呼ばれる)は、一般式Si2nH2nO3nのケイ素-酸素化合物である。これらの化合物は形式上、1ケイ素原子当たり1.5個の酸素原子を含む。
【0196】
本発明において使用される置換型シルセスキオキサンは、一般式(VI):
Si2uRIV2uO3u (VI)
によって記すことができ、
上記式中、それぞれのRIVは独立して、H及び有機基から選択され、ただし、少なくとも1つの基RIVが、少なくとも1つのエチレン系不飽和型基を有する有機基であり、そしてuは8〜1,000の値を表すものとする。uが8、10又は12である生成物が好ましい。
【0197】
本発明に使用することができるシルセスキオキサンは、かご(ケージ)構造、部分かご構造、はしご構造又はランダム構造を有することができる。
【0198】
エチレン系不飽和型基は、Si原子に、直接的又はスペーサーを介して結合することができる。
【0199】
好ましくは、少なくとも1つのエチレン系不飽和型基を有する少なくとも1つの有機基RIVは、好ましくは炭素原子数2〜18(炭素原子数2〜10が特に好ましく、炭素原子数2〜6が殊に好ましい)の直鎖状、分枝状又は環状アルケニル基、スチリル基、アクリル酸基、メタクリル酸基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、クロトニル基、イソクロトニル基、イタコン酸基、マレイン酸基、及びフマル酸基から選択される。上記基は、例えばハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、CN、ORV、SRV、又はCOORV(RVは独立して、水素原子又はアルキル基を表す)から選択された1つ又は2つ以上の置換基(好ましくは0又は1つの置換基)を含むことができる。
【0200】
好適なスペーサーは、好ましくは炭素原子数2〜6のアルキレン基、炭素原子数2〜6のアルキレンオキシ基、アルキル(ジアルキルシリルオキシ)基(アルキル基の炭素原子数は好ましくは1〜3である)、又は任意選択的に置換することができるフェニレン基{例えばハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、CN、ORV、SRV、又はCOORV(RVは独立して、水素原子又はアルキル基を表す)から選択された、好ましくは1つ又は2つ以上の置換基}であることが好ましい。
【0201】
好ましくは、シルセスキオキサンの分子量は、550〜2,500 g/モルである。
【0202】
本発明において使用されるシルセスキオキサンは、商業的に利用可能であり、或いは、当業者に知られた方法に従って調製することができる。このような方法は、例えばChem, Rev. 1995, 95, 1409-1430に記載されている。
【0203】
シルセスキオキサンは好ましくは、輻射線感受性層の総固形分含量を基準として、2〜30重量%の量で輻射線感受性組成物中に存在し、5〜15重量%の量が特に好ましい。
【0204】
1実施態様によれば、本発明のIR感光性組成物は、任意の追加の成分として、一般式(A)の1種以上のカルボン酸を含む:
R28-(CR29R30)a-Y2-CH2COOH (VII)
(上記式中:
Y2は、O、S又はNR31から選択され、R31は、水素原子、C1-C6アルキル基、基CH2CH2COOH、又は-COOHで置換されたC1-C5アルキル基を表し;R28、R29及びR30は独立して、水素原子、C1-C6アルキル基、置換型又は無置換型アリール基、-COOH又はNR32CH2COOHから選択され、R32は、-CH2COOH、-CH2OH及び-(CH2)N(CH2)COOHから選択され;そしてaは0、1、2又は3である)。
【0205】
N-アリール-ポリカルボン酸、具体的には下記式(VIIa):
【化69】

【0206】
(上記式中、Arは一置換型又は多置換型又は無置換型のアリール基を表し、そしてvは整数1〜5である)
及び式(VIIb):
【0207】
【化70】

【0208】
(上記式中、R33は水素原子又はC1-C6アルキル基を表し、そしてb及びcはそれぞれ整数1〜5を表す)
のN-アリール-ポリカルボン酸が特に好ましい。
【0209】
アリール基の考えられ得る置換基は、C1-C3アルキル基、C1-C3アルコキシ基、C1-C3チオアルキル基及びハロゲン原子である。アリール基は、1〜3つの同一又は異なる置換基を含むことができる。
vは好ましくは1であり、そしてArは好ましくはフェニル基を表す。
【0210】
式(VIIb)において、cは好ましくは1であり、そしてR33は好ましくは水素原子を表す。
【0211】
このようなポリカルボン酸の例は下記の通りである:
(p-アセトアミドフェニルイミノ)二酢酸
3-(ビス(カルボキシメチル)アミノ)安息香酸
4-(ビス(カルボキシメチル)アミノ)安息香酸
2-[(カルボキシメチル)フェニルアミノ]安息香酸
2-[(カルボキシメチル)フェニルアミノ]-5-メトキシ安息香酸
3-[ビス(カルボキシメチル)アミノ]-2-ナフタレンカルボン酸
N-(4-アミノフェニル)-N-(カルボキシメチル)グリシン
N,N'-1,3-フェニレン-ビスグリシン
N,N'-1,3-フェニレン-ビス[N-(カルボキシメチル)]グリシン
N,N'-1,2-フェニレン-ビス[N-(カルボキシメチル)]グリシン
【0212】
N-(カルボキシメチル)-N-(4-メトキシフェニル)グリシン
N-(カルボキシメチル)-N-(3-メトキシフェニル)グリシン
N-(カルボキシメチル)-N-(3-ヒドロキシフェニル)グリシン
N-(カルボキシメチル)-N-(3-クロロフェニル)グリシン
N-(カルボキシメチル)-N-(4-ブロモフェニル)グリシン
N-(カルボキシメチル)-N-(4-クロロフェニル)グリシン
N-(カルボキシメチル)-N-(2-クロロフェニル)グリシン
N-(カルボキシメチル)-N-(4-エチルフェニル)グリシン
N-(カルボキシメチル)-N-(2,3-ジメチルフェニル)グリシン
N-(カルボキシメチル)-N-(3,4-ジメチルフェニル)グリシン
N-(カルボキシメチル)-N-(3,5-ジメチルフェニル)グリシン
N-(カルボキシメチル)-N-(2,4-ジメチルフェニル)グリシン
N-(カルボキシメチル)-N-(2,6-ジメチルフェニル)グリシン
N-(カルボキシメチル)-N-(4-ホルミルフェニル)グリシン
N-(カルボキシメチル)-N-エチルアントラニル酸
N-(カルボキシメチル)-N-プロピルアントラニル酸
【0213】
5-ブロモ-N-(カルボキシメチル)アントラニル酸
N-(2-カルボキシフェニル)グリシン
o-ジアニシジン-N,N,N',N'-四酢酸
N,N'-[1,2-エタンジイル-ビス-(オキシ-2,1-フェニレン)]ビス[N-(カルボキシメチル)グリシン]、
4-カルボキシフェノキシ酢酸
カテコール-O,O'-二酢酸
4-メチルカテコール-O,O'-二酢酸
レゾルシノール-O,O'-二酢酸
ヒドロキノン-O,O'-二酢酸
α-カルボキシ-o-アニス酸
4,4'-イソプロピリデンジフェノキシ酢酸
2,2'-(ジベンゾフラン-2,8-ジイルジオキシ)二酢酸
2-(カルボキシメチルチオ)安息香酸
5-アミノ-2-(カルボキシメチルチオ)安息香酸
3-[(カルボキシメチル)チオ]-2-ナフタレンカルボン酸。
最も好ましいポリカルボン酸は、アニリノ二酢酸である。
【0214】
カルボン酸はIR感光性組成物中に、総固形分含量を基準として、好ましくは0〜10 wt.%、より好ましくは1〜10 wt.%、特に好ましくは1.5〜3 wt%の量で存在する。
【0215】
さらに、本発明の輻射線感受性組成物は任意選択的に、水性アルカリ現像剤中に可溶性又は膨潤性のバインダー又はバインダー混合物を含むことができる。輻射線感受性組成物の技術分野において知られた基本的には全てのポリマー又はポリマー混合物を、輻射線感受性塗膜のための高分子バインダーとして使用することができる。水中又は水性アルカリ性溶液中に可溶性又は膨潤性の線状有機ポリマーが特に好適である。好適なバインダーが例えば欧州特許出願公開第170 123号明細書に記載されている。ポリビニルアセタール、アクリル酸コポリマー、メタクリル酸コポリマー、ポリウレタン、マレイン酸の部分エステル化コポリマー、ノボラク、及び酸性セルロース誘導体が、特に好適である。バインダーが酸基、特に好ましくはカルボキシ基を含むことが好ましい。アクリル酸ポリマーが最も好ましい。酸基を有するバインダーは好ましくは、ポリマー1g当たり20〜180 mg KOHの酸価を有する。任意選択的に、バインダーは付加環化(例えば光付加環化)されることが可能な基を含むことができる。バインダーの量は特に制限されることはないが、好ましくは0〜90 wt%、特に好ましくは5〜60 wt%である。
【0216】
輻射線感受性組成物は、任意選択的に、少量の熱重合阻害剤を含むことができる。不所望の熱重合を阻害する阻害剤の好適な例は、ヒドロキノン、p-メトキシフェノール、ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ピロガロール、t-ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4'-チオ-ビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2'-メチレン-ビス-(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)及びN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン塩を含む。輻射線感受性塗膜中の非吸収性重合阻害剤の量は、乾燥層重量を基準として、好ましくは0〜5重量%、特に好ましくは0.01〜2重量%である。このような阻害剤は、商業的なモノマー又はオリゴマーを介して輻射線感受性塗膜中にしばしば導入されるので、従って特に言及しない。
【0217】
さらに、本発明の輻射線感受性塗膜は、層を着色するための色素又は顔料を含むことができる。着色剤の例は、例えばフタロシアニン顔料、アゾ顔料、カーボンブラック及び二酸化チタニウム、エチル・バイオレット、クリスタル・バイオレット、アゾ色素、アントラキノン色素及びシアニン色素を含む。着色剤の量は、乾燥層重量を基準として、好ましくは0〜10重量%、特に好ましくは0.5〜5重量%である。
【0218】
硬化された層の物理特性を改善するために、輻射線感受性塗膜は加えて、可塑剤を含むことができる。好適な可塑剤は例えばジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、トリアセチルグリセリン及びトリクレシルホスフェートを含む。可塑剤の量は特に制限されるものではないが、乾燥層重量を基準として、好ましくは0〜10重量%、特に好ましくは0.25〜5重量%である。
【0219】
輻射線感受性組成物は、周知の連鎖移動剤を含むこともできる。連鎖移動剤は乾燥層重量を基準として、好ましくは0〜15重量%、特に好ましくは0.5〜5重量%の量で使用される。
【0220】
さらに、輻射線感受性組成物は、ロイコ色素、例えばロイコ・クリスタル・バイオレット及びロイコ・マラカイトグリーンを含むことができる。これらのロイコ色素は乾燥層重量を基準として、好ましくは0〜10重量%、特に好ましくは0.5〜5重量%で存在する。
【0221】
加えて、輻射線感受性組成物は界面活性剤を含むことができる。好適な界面活性剤は、シロキサン含有ポリマー、フッ素含有ポリマー、及びエチレンオキシド基及び/又はプロピレンオキシド基を有するポリマーを含む。これらの界面活性剤は乾燥層重量を基準として、好ましくは0〜10重量%、特に好ましくは0.2〜5重量%の量で存在する。
【0222】
露光指示薬、例えば4-フェニルアゾジフェニルアミンが、輻射線感受性組成物の任意の成分として存在してもよい。これらは乾燥層重量を基準として、好ましくは0〜5重量%、特に好ましくは0〜2重量%の量で存在する。
【0223】
本発明の輻射線感受性要素は例えば、印刷版前駆体(具体的には平版印刷版の前駆体)、集積回路のためのプリント回路基板、又はフォトマスクとなることができる。印刷版前駆体を製造するために使用することが特に好ましい。
【0224】
寸法安定性を有するプレート状又はフォイル状材料が、特に印刷版前駆体を製造する際の基板として使用されることが好ましい。好ましくは、印刷物のための基板として既に使用されている材料が、寸法安定性を有するプレート状又はフォイル状材料として使用される。このような基板の例は、紙、プラスチック材料(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン)で塗被された紙、金属プレート又はフォイル、例えばアルミニウム(アルミニウム合金を含む)、亜鉛及び銅プレート、例えばセルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースニトレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート及びポリビニルアセテートから形成されたプラスチック・フィルム、及び紙又はプラスチック・フィルムと上述の金属のうちの1つとから形成された積層材料、又は蒸着により金属化された紙/プラスチック・フィルムを含む。これらの基板の中では、アルミニウム・プレート又はフォイルが特に好ましい。それというのは、アルミニウム・プレート又はフォイルは卓越した寸法安定度を示し、低廉であり、そしてさらに塗膜に対する優れた付着力を示すからである。さらに、複合フィルムを使用することもでき、この複合フィルムの場合、アルミニウム・フォイルがポリエチレンテレフタレート・フィルム上に貼り合わされている。
【0225】
金属基板、具体的にはアルミニウム基板には、研磨処理(例えば乾燥状態でのブラッシング、又は研磨懸濁液を用いたブラッシング、又は例えば塩酸電解質を用いた電気化学的な研磨による)、陽極処理(硫酸又はリン酸中)、及び親水性処理から選択された少なくとも1つの処理が施されるのが好ましい。
【0226】
研磨処理、及び任意選択的に硫酸又はリン酸中で陽極処理を施された金属基板の表面の親水性特性を改善するために、ケイ酸ナトリウム、フッ化カルシウムジルコニウム、ポリビニルホスホン酸又はリン酸の水溶液による後処理を、金属基板に施すことができる。本発明の範囲内で、「基板」という用語は、例えばその表面上に親水性化層を示す、任意選択的に前処理された基板をも包含する。
上述の基板前処理の詳細は当業者に知られている。
【0227】
輻射線感受性要素を製造するために、本発明の輻射線感受性組成物は、共通の塗布プロセス(例えばスピン塗布、浸漬塗布、ドクター・ブレードによる塗布)によって、基板の親水性表面に被着される。基板の両側に輻射線感受性組成物を被着することも可能ではあるが、本発明の要素のためには、輻射線感受性塗膜は基板の一方の側に被着されるのが好ましい。
【0228】
これを目的として、輻射線感受性組成物は1種又はいくつかの有機溶剤を含む。
好適な溶剤は、低級アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール及びブタノール)、グリコールエーテル誘導体(例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル)、ケトン(例えばジアセトンアルコール、アセチルアセトン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン)、エステル(例えばメチルラクテート、エチルラクテート、酢酸エチルアセテート、3-メトキシプロピルアセテート及びブチルアセテート)、芳香族(例えばトルエン及びキシレン)、シクロヘキサン、γ-ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド及びN-メチルプロピロリドンを含む。被着されるべき輻射線感受性混合物の固形分含有率は、用いられる塗布法に依存し、好ましくは1〜50重量%である。
【0229】
輻射線感受性層上に水溶性酸素不透過性上塗り層を付加的に被着することが有利な場合がある。このような上塗り層に適したポリマーは、とりわけ、ポリビニル、ポリビニルアルコール/ポリビニルアセテート・コポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン/ポリビニルアセテート・コポリマー、ポリビニルメチルエーテル、無水マレイン酸とコモノマー、例えばメチルビニルエーテル、ポリアクリル酸、セルロースエーテル、ゼラチンなどとの開環型コポリマーなどを含む。ポリビニルアルコールが好ましい。好ましくは酸素不透過性上塗り層のための組成物は、水溶液又は水と混和可能な溶剤中の溶液の形態で被着され、いずれの場合にも、基板上に既に存在する輻射線感受性塗膜が溶解しないように、溶剤は選択される。上塗り層の層重量は例えば0.1〜6 g/m2、好ましくは0.5〜4 g/m2であってよい。しかし、本発明による印刷版前駆体は、上塗り層なしでも優れた特性を示す。上塗り層は艶消し剤(すなわち、粒子サイズ2〜20μmの有機又は無機粒子)を含むこともできる。艶消し剤は、接触露光中のフィルムの平面位置決めを容易にする。輻射線感受性層に対する上塗り層の付着力を高めるために、上塗り層は付着促進剤、例えばポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチレンイミン)及びポリ(ビニルイミダゾール)を含むことができる。
好適な上塗り層は例えば欧州特許第1 000 387号明細書に記載されている。
【0230】
こうして製造された輻射線感受性要素は、波長>300nmのUV/VIS線で、当業者に知られた形式で像様露光される。これを目的として、一般的なランプ、例えば炭素アーク・ランプ、水銀ランプ、キセノンランプ及び金属ハロゲン化物ランプ、又はレーザー又はレーザー・ダイオードを使用することができる。約405nm(例えば405±10 nm)の範囲のUV線を放射するUVレーザー・ダイオード、及びほぼ532 nmで発光する周波数二重化NdYAGレーザーが、輻射線源として特に重要である。
【0231】
増感剤がIR線を吸収する場合、すなわち、波長750超〜1,200 nmの輻射線を区別的に吸収し、そして好ましくはその範囲内の吸収スペクトルにおいて吸収極大値を示す場合、像様露光はIR線源によって実施することができる。好適な輻射線源は、上記波長範囲において発光する半導体レーザー又はレーザー・ダイオードである。
【0232】
像様露光後、商業的に入手可能な水性アルカリ現像剤を使用して、要素を当業者に知られている形式で現像し、これにより露光済領域は基板上に残り、そして露光されていない領域は除去される。
【0233】
像様露光後、すなわち現像前に、50〜180℃、好ましくは90〜150℃で熱処理を行うことができる。現像済要素に熱処理(150〜250℃、好ましくは170〜220℃)又はUV全体露光又はその両方を施すことが有利であることがある。現像済要素は一般的な方法を用いて、保存剤で処理することができる(「ガミング処理」)。保存剤は、親水性ポリマー、湿潤剤及びその他の添加剤の水溶液である。
【0234】
本発明の輻射線感受性要素は、優れた耐摩耗性を有する印刷版をもたらし、その結果、長い印刷連続運転時間が達成される。
【実施例】
【0235】
下記例において本発明をより詳細に説明する。ただしこれらの例は本発明を限定するものでは決してない。
【0236】
例1
下記成分から塗布用溶液を調製した:
6.3 gのJONCRYL 683(商標)(米国SC Johnson社のアクリル酸コポリマー;酸価=175 mg KOH/g)
9.0 gのAC 50 (仏国PCAS社のメタクリル酸コポリマー;酸価=48 mg KOH/g;エチレングリコールモノメチルエーテル中の70 重量%溶液)
1.4 gのジペンタエリトリトールペンタアクリレート
14.5 gのウレタンアクリレート{80%メチルエチルケトン溶液; Bayer社のDesmodur (商標)N100と、ヒドロキシエチルアクリレート及びペンタエリトリトールトリアクリレートとを反応させることにより調製;全てのイソシアネート基が完全に反応させられたときの二重結合量は100 g当たり0.50 二重結合である}
1.8 gの2-チオ(4-エテニル)ベンジル-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾール
1.8 gのメタクリル-POSSケージ{オクタ、デカ及びドデカ-γ-(メタクリルオキシ)プロピル置換型シルセスキオキサンの混合物(Aldrichから入手可能)}
0.45 gの2-[2-[2-チオフェニル-3-[2-(1,3-ジヒドロ-1,3,3-トリメチル-2H-インドール-2-イリデン)-エチリデン]-1-シクロヘキセン-1-イル]-エテニル]-1,3,3-トリメチル-3H-インドリウムクロリド
2.5 gの2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス-(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、及び
0.4 gのBASONYL VIOLETT 610(Basic Violet 3, C.I. 42555、独国Bayerから入手可能)。
【0237】
これらの成分を、
90容積部の1-メトキシ-2-プロパノールと
10容積部のアセトンと
から成る混合物200 ml中に撹拌しながら溶解した。
【0238】
溶液の濾過後、ポリビニルホスホン酸の水溶液で後処理を施されている電気化学的研磨処理・陽極処理済アルミニウム・フォイルに、一般的な方法によってこれを被着し、そして層を90℃で4分間にわたって乾燥させた。結果として生じるIR感光性層の乾燥重量は約1.4 g/m2であった。
【0239】
次いで、下記組成物:
42.5 gのCelwol 203(米国Airproducts社のポリビニルアルコール;12重量%の残留アセチル基)
7.5 gのポリビニルイミダゾール(仏国panchimから入手可能)
170 gの水
の溶液を用いて塗布することにより、乾燥層重量2.0 g/m2を有する酸素不透過性層を同様に被着した。
【0240】
90℃で5分間にわたって乾燥させた。
【0241】
このように製造された印刷版前駆体を、830 nmレーザー・ダイオード(20 Wヘッド、3 W、異なるドラム速度)を有する、Creo/Scitex社のTrendsetter 3244内で露光させた。コピーの品質を評価するための種々異なる要素を含有するUGRA/FOGRA Postscript EPSを、画像形成のために使用した。
【0242】
露光済印刷版前駆体をMercury News処理装置(Kodak Polychrome Graphics LLC)内でさらに処理した。この装置は、予加熱区分、予洗区分、浸漬タイプ現像浴、水すすぎ区分、ガミング処理区分及び乾燥区分を備えた。処理装置に、Kodak Polychrome Graphics LLCの現像剤980を満たした。印刷版前駆体を処理するために、下記パラメーターを適用した:速度120 cm/分、予加熱630、予洗容積0.5 L/印刷版1m2、現像剤浴の温度23±1℃。この処理後、露光済領域は印刷版上に残され、これに対して露光されていない領域は、現像剤によって完全に除去された。
【0243】
予加熱及び現像後に得られるコピーを評価するために、下記基準を用いた:1画素要素の再現品質、画素要素の格子縞パターンの光学濃度、及びベタの光学濃度。ベタ及びドットのコントラスト及び濃度を評価するために、D19/D196濃度計(Gretag/Macbeth Colour Data Systems, 英国)を使用した。
【0244】
所要エネルギーに関する結果は、ベタの良好な再現のためには31 mJ/cm2の露光エネルギーで十分であり、これに対して1画素要素に必要なエネルギーは40 mJ/cm2であることを示した。40 mJ/cm2で露光された印刷版を、枚葉紙オフセットプレス内に載置し、研磨性印刷インク(Sun ChemicalのOffset S7184;10% CaCO3を含有)を使用した印刷のために用いた。画像領域は問題なしに印刷インクを受容し、そして紙コピーは、非画像領域にはいかなる色調も示さなかった。220,000部の高品質コピー後、印刷を中断したが、印刷版をより多数のプリントのために使用することもできた。ベタにおいて観察された抜け出しは極めて僅かにすぎず、全ての微細な画素要素が維持された。
【0245】
例2
0.45 gのアニリノ二酢酸を添加し、そして2-チオ(4-エテニル)ベンジル-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾールを省くことによって、例1の塗布用溶液を改質した。
【0246】
塗布用溶液及び上塗り溶液を、例1に記載されたように被着した。例1に記載されたように露光及び現像を行った。
【0247】
下記所要エネルギーが良好なプリントのために観察された:
ベタに対して78 mJ/cm2、及び
1画素要素に対して107 mJ/cm2
【0248】
78 mJ/cm2で露光された印刷版を、枚葉紙オフセットプレス内に載置し、研磨性印刷インクOffset S7184を使用した印刷のために用いた。
【0249】
画像領域は問題なしに印刷インクを受容し、そして紙コピーは、非画像領域にはいかなる色調も示さなかった。220,000部の高品質コピー後、印刷を中断したが、印刷版をより多数のプリントのために使用することもできた。
【0250】
ベタにおいて観察された抜け出しは極めて僅かにすぎず、全ての微細な画素要素が維持された。
【0251】
例3
電気化学的(HCl中)研磨処理・陽極処理済アルミニウム・フォイルに、ポリビニルホスホン酸(PVPA)の水溶液による処理を施し、そしてこのフォイルを、乾燥後、下記溶液で塗布した。
2.1 gの、ターポリマーの30% 1-メトキシ-2-プロパノール溶液(470重量部のスチレン、336重量部のメチルメタクリレート、及び193重量部のメタクリル酸を重合させることにより調製)
0.7 gのメタクリル-POSSケージ(Aldrichから入手可能)
6.9 gの、ウレタンアクリレートの80%メチルエチルケトン溶液{Desmodur N 100(商標)(Bayer社から入手可能)と、ヒドロキシエチルアクリレート及びペンタエリトリトールトリアクリレートとを反応させることにより調製され、全てのイソシアネート基がヒドロキシ基を含有するアクリレートと完全に反応したときの二重結合量は、100 g当たり0.5 二重結合である}
0.8 gのジトリメチロールプロパンテトラアクリレート
4.4 gの1-メトキシ-2-プロパノール中分散体 (10重量%の銅フタロシアニンと、39.9モル%のビニルアルコール基、1.2モル%のビニルアセテート基、アセトアルデヒドから誘導された15.4モル%のアセタール基、ブチルアルデヒドから誘導された36.1モル%のアセタール基、及び4-ホルミル安息香酸から誘導された7.4モル%のアセタール基を含む5重量%のポリビニルアセタール・バインダーとを含む)
1.0 gの1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチル-3,5-ジ(メトキシカルボニル)-4-フェニルピリジン
0.75 gの2,2-ビス(2-クロロフェニル)-4,5,4',5'-テトラフェニル-2'H-[1,2]-ビイミダゾール
115 mlの1-メトキシ-2-プロパノール
90 mlのメタノール
130 mlのメチルエチルケトン
【0252】
この溶液を濾過し、平版基板上に被着し、そして塗膜を90℃で4分間にわたって乾燥させた。感光性ポリマー層の乾燥層重量は約1.6 g/m2であった。
【0253】
得られた印刷版上に、例1に記載された水溶液で印刷版を塗布することにより、上塗り層を設け、4分間にわたって90℃で乾燥させた後、上塗り層の乾燥層重量は約2 g/m2であった。
【0254】
色調範囲0.15〜1.95のグレースケールを使用して、真空フレーム内でエネルギー3.4 mJ/cm2のGaドープ型MHランプによって、印刷版前駆体に露光を施した。濃度増分は0.15に達した(UGRAグレースケール)。露光直後に、印刷版を90℃で2分間にわたって炉内で加熱した。
【0255】
次いで、Kodak Polychrome Graphics LLCの現像剤952によって、露光済印刷版を30秒間にわたって処理した。
【0256】
次いで、現像剤溶液をさらに30秒間にわたって、表面上にタンポンを使用して再びすり付け、次いで印刷版全体を水ですすいだ。この処理後、露光済部分は印刷版上に残った。その感光性の評価のために、印刷版を湿潤状態において印刷インクで黒化した。
【0257】
下記結果が得られた:
グレースケールの4つのベタステップ。
ステップ7がインクを受容しない最初のステップであった。
【0258】
3.4 mJ/cm2で露光され、そして上述のように現像された1つの印刷版前駆体を、枚葉紙オフセットプレス内に載置し、これを研磨性印刷インクOffset S7184で印刷するために使用した。220,000部のコピー後に、印刷版上に磨耗は観察されなかった。
【0259】
ベタにおいて観察された抜け出しは極めて僅かにすぎず、全ての微細な画素要素が維持された。
【0260】
例4
0.9 gのPSS-オクタ(2(4-シクロヘキセニル)エチルジメチルシリルオキシ置換型(Aldrichから入手可能)を添加し、そして0.7 gのメタクリル-POSSケージを省くことによって、例3の塗布用溶液を改質した。印刷版を例3に記載されているように製造した。
【0261】
下記結果が得られた:
3〜4つのベタステップ。
ステップ8がインクを受容しない最初のステップであった。
【0262】
1つの印刷版前駆体を3.4 mJ/cm2で露光し、そして上述のように現像した。次いで結果として得られた印刷版を枚葉紙オフセットプレス内に載置し、これを研磨性印刷インクOffset S7184で印刷するために使用した。220,000部のコピー後に、磨耗は観察されなかった。
【0263】
ベタにおいて観察された抜け出しは極めて僅かにすぎず、全ての微細な画素要素が維持された。
【0264】
比較例
例1を繰り返したが、しかし塗布用溶液は、メタクリル-PCCケージを含有しなかった。ベタの良好な再現のために必要な最小エネルギーは、33 mJ/cm2であり、そして1画素要素に対しては41 mJ/cm2であった。
【0265】
41 mJ/cm2を用いた露光によって製造された印刷版を、枚葉紙オフセットプレス内に載置し、研磨性印刷インクOffset S7184を使用した印刷のために用いた。画像領域は問題なしに印刷インクを受容し、そして紙コピーは、非画像領域にはいかなる色調も示さなかった。
【0266】
たった150,000部のコピー後、印刷を中断した。なぜならば、得られたコピーの品質が悪かったからである。ベタには数多くの抜け出しが観察され、微細な要素がかなりの影響を受けた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)任意選択的に前処理された基板と、
(b)該基板上に被着された、
(i) ラジカル重合されやすい少なくとも1つのエチレン系不飽和型基をそれぞれが含む、1つ又は2つ以上のタイプのモノマー及び/又はオリゴマー及び/又はポリマー;
(ii) 波長範囲300〜1,200 nmから選択された輻射線を吸収する、ラジカル重合のための少なくとも1つの輻射線感受性開始剤又は開始剤系;及び
(iii) それぞれ少なくとも1つのエチレン系不飽和型基を有する少なくとも1つの置換基を含む少なくとも1つのシルセスキオキサン
を含む組成物から成る輻射線感受性塗膜と
を含んで成る輻射線感受性要素。
【請求項2】
該組成物が、アルカリ可溶性バインダー、色素、露光指示薬、可塑剤、連鎖移動剤、ロイコ色素、界面活性剤、及び熱重合阻害剤から選択された1種又は2種以上の成分をさらに含んで成る請求項1に記載の輻射線感受性要素。
【請求項3】
該開始剤系が、輻射線吸収増感剤及び共開始剤を含む請求項1又は2に記載の輻射線感受性要素。
【請求項4】
成分(ii)が、波長範囲300〜450 nmの輻射線を吸収する輻射線感受性開始剤である請求項1又は2に記載の輻射線感受性要素。
【請求項5】
該輻射線吸収増感剤が、波長範囲300〜750 nmの輻射線を吸収する請求項3に記載の輻射線感受性要素。
【請求項6】
該輻射線吸収増感剤が、波長範囲750超〜1,200 nmの輻射線を吸収する請求項3に記載の輻射線感受性要素。
【請求項7】
該シルセスキオキサン中の少なくとも1つのエチレン系不飽和型基を有する該少なくとも1つの置換基が、直鎖状、分枝状又は環状アルケニル基、スチリル基、アクリル酸基、メタクリル酸基、アクリル酸アミド基、メタクリル酸アミド基、クロトニル基、イソクロトニル基、イタコン酸基、マレイン酸基、及びフマル酸基から選択される請求項1から6までのいずれか一項に記載の輻射線感受性要素。
【請求項8】
該エチレン系不飽和型基が、該シルセスキオキサンのSi原子に直接的に結合されている請求項1から7までのいずれか一項に記載の輻射線感受性要素。
【請求項9】
該エチレン系不飽和型基が、該シルセスキオキサンのSi原子に、スペーサーを介して結合されている請求項1から7までのいずれか一項に記載の輻射線感受性要素。
【請求項10】
該シルセスキオキサンの分子量が、550〜2,500 g/モルである請求項1から9までのいずれか一項に記載の輻射線感受性要素。
【請求項11】
該基板が、アルミニウム・フォイル又はプレートである請求項1から10までのいずれか一項に記載の輻射線感受性要素。
【請求項12】
該要素が酸素不透過性上塗り層をさらに含む請求項1から11までのいずれか一項に記載の輻射線感受性要素。
【請求項13】
(a)請求項1から12までのいずれか一項に記載の輻射線感受性要素を像様照射し;
(b)水性アルカリ現像剤によって、該塗膜の非照射領域を除去する
ことを含んで成る輻射線感受性要素を画像形成する方法。
【請求項14】
工程(c)で得られた現像済み要素が加熱するかもしくは全体露光にかけるか、又はその両方を行う請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項13又は14の方法に従って得ることができる、画像形成された要素。
【請求項16】
該要素が、平版印刷版である請求項15に記載の画像形成された要素。
【請求項17】
(i) ラジカル重合されやすい少なくとも1つのエチレン系不飽和型基をそれぞれが含む、1つ又は2つ以上のタイプのモノマー及び/又はオリゴマー及び/又はポリマー;
(ii) 波長範囲300〜1,200 nmから選択された輻射線を吸収する、ラジカル重合のための少なくとも1つの輻射線感受性開始剤又は開始剤系;及び
(iii) それぞれ少なくとも1つのエチレン系不飽和型基を有する少なくとも1つの置換基を含む少なくとも1つのシルセスキオキサン
を含んで成る平版印刷版前駆体の製造に有用な輻射線感受性組成物。
【請求項18】
該シルセスキオキサンが該輻射線感受性組成物中に、総固形分含量を基準として2〜30重量%の量で存在する請求項17に記載の輻射線感受性組成物。
【請求項19】
ネガ型印刷版前駆体の輻射線誘起型ラジカル重合によって生成される平版印刷版の印刷連続運転安定性を改善するための、それぞれ少なくとも1つのエチレン系不飽和型基を有する少なくとも1つの置換基を含むシルセスキオキサンの使用。

【公表番号】特表2008−506978(P2008−506978A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−520766(P2007−520766)
【出願日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【国際出願番号】PCT/EP2005/007686
【国際公開番号】WO2006/008073
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(505316060)コダック グラフィック コミュニケーションズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (16)
【Fターム(参考)】