説明

高い安定性を有するポリマー分散液及び製造法

【課題】高いポリオレフィン含分で低い粘度を有し、かつ、高い安定性を有するポリマー分散液、その製造方法並びに、その使用を提供する。
【解決手段】高い安定性を有するポリマー分散液において、以下
A)少なくとも1種の分散されたポリオレフィン
B)少なくとも1種の分散成分
C)鉱油、及び
D)(オリゴ)オキシアルキル基を含む少なくとも1種の化合物
を含む、高い安定性を有するポリマー分散液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い安定性を有するポリマー分散液、前記ポリマー分散液の製造法並びに前記ポリマー分散液の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンオイルのための粘度指数改良剤は、大抵は本質的に炭化水素をベースとするポリマーである。エンジンオイル中の典型的な添加剤割合は、ポリマーの増粘作用に応じて約0.5〜6質量%である。特に廉価な粘度指数改良剤は、主にエチレンとプロピレンとから構成されているオレフィンコポリマー(OCP)又はジエンとスチレンとから成る水素化コポリマー(HSD)である。
【0003】
上記ポリマー型の卓越した増粘作用は、潤滑油配合物を製造する際に困難な加工性に直面する。殊に、配合物のベースとなる油中での劣悪な溶解性は困難を招く。固体の前溶解されていないポリマーを使用する場合には、撹拌導入期間があまりにも長くなり、その際、特別な撹拌装置及び/又は前粉砕装置の使用に頼っている。
【0004】
濃縮された、油中に既に前溶解されたポリマーを慣用の市販形として使用する場合、OCPないしHSDの10〜15%の供給形しか実現することができない。より高い濃度は、溶液の高すぎる実際の粘度(室温で>15000mm/s)を伴うため、取扱いすらほぼ不可能である。殊に前記の背景を伴って、オレフィンコポリマー及び水素化ジエン/スチレン−コポリマーの高濃縮分散液が開発された。
【0005】
上記の分散技術により、潤滑油配合物中への容易な添加を可能にする動粘度を保持しながら、20%を上回るOCP−含分ないしHSD−含分を有するポリマー溶液を製造することが可能である。原則的に、そのような系の合成には、いわゆる乳化剤ないし分散成分の使用が含まれる。慣用の分散成分は、特に、大抵アルキルメタクリレートないしアルキルメタクリレート/スチレン−混合物にグラフトされたOCP−ポリマーないしHSD−ポリマーである。更に、分散液のメタクリレート成分を比較的良好に溶解させ、OCP分ないしHSD分を比較的劣悪に溶解させる溶剤が使用されている分散液も公知である。そのような溶剤は、生成物のメタクリレート分と一緒に、分散液の連続相の主要成分を形成する。OCP分ないしHSD分は、表面的に見て、非連続相又は分散相の主要成分である。
【0006】
US4,149,984には、ポリアルキルメタクリレート(以下でPAMAと呼称する)とポリオレフィンとの間の相容性を改善することによる潤滑油添加剤の製造法が記載されている。PAMAの質量割合は50〜80質量%であり、ポリオレフィンの質量割合は20〜50質量%である。分散液の全ポリマー含分は20〜55%である。グラフトのための、分散性モノマー、例えばN−ビニルピロリドンの使用も同様に記載されている。本出願の前に、メタクリレートをグラフトによりポリオレフィン上にグラフトすることができることは公知であった(DT−AS1235491)。
【0007】
EP−A−0008327は、共役ジエンとスチレンとからの水素化ブロックコポリマーをベースとする潤滑油添加剤の製造法の特許権を保護しており、その際、第一の工程においてスチレン及びアルキルメタクリレートか又は専らアルキルメタクリレートのみを水素化ブロックコポリマー上にグラフトし、第二の工程において付加的なグラフト段階(例えばN−ビニルピロリドン)を合成する。全ポリマー含分中の水素化ブロックコポリマーの割合は5〜55質量%であり、PAMA/スチレンから成る第一のグラフト段階の割合は49.5〜85%であり、第二のグラフト段階の割合は0.5〜10%である。
【0008】
刊行物DE3207291には、高められたオレフィンコポリマー導入を可能にする方法が記載されている。オレフィンコポリマー含分は、分散液の全質量に対して20〜65%であるべきである。本発明の対象は、オレフィンコポリマーを劣悪に溶解させ、かつPAMA含有成分を良好に溶解させる適当な溶剤を使用することにより、より高度に濃縮された分散液を得ることである。DE3207291は、殊に分散液の製造法を記載した方法の特許であると解釈することができる。
【0009】
DE3207292は本質的にDE3207291に相応しているが、しかしながらむしろ所定のコポリマー組成物の保護であると解釈することができる。前記組成物はDE3207291に記載されているのと同様の方法により製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】US4,149,984
【特許文献2】EP−A−0008327
【特許文献3】DE3207291
【特許文献4】DE3207292
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
先行技術に記載されているポリマー分散液は、既に良好な特性プロフィールを示す。しかしながら殊にその安定性は改善に値する。この場合、一般に冷却装置を使用することなく長期間に亘ってポリマー分散液を貯蔵しなければならないことを考慮すべきである。貯蔵時間には殊に輸送等が含まれ、その際、40℃又はそれどころか50℃を上回る温度が生じる。
【0012】
更に、本発明の課題の1つは、高いポリオレフィン含分で低い粘度を有するポリマー分散液を提供することであった。OCP又はHSDの含分が高いほど、一般に分散液の粘度は高くなる。他方で、輸送コストを下げるためには前記ポリマーの高い含分が望ましい。この場合、より低い粘度により、基油中への粘度指数改良剤のより単純でかつより迅速な混合が可能となることを考慮すべきである。従って、殊に低い粘度を有するポリマー分散液を提供するべきであった。
【0013】
更に、前記のポリマー分散液の製造法は制御が比較的困難であるため、所定の規格は単に極めて困難に遵守され得るに過ぎない。それに応じて、粘度を容易に所定の値に調節することができるポリマー分散液を創作すべきであった。
【0014】
もう1つの課題は、ポリオレフィン、殊にオレフィンコポリマー及び/又は水素化ブロックコポリマーの高い含分を有するポリマー分散液を定めることであった。
【0015】
更に、ポリマー分散液を単純かつ廉価に製造することができるべきであり、その際、殊に市販された成分を使用すべきであった。この場合、製造を、このために新規の又は構成的に費用のかかる装置を必要とすることなく、大工業的に行うことができるべきであった。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記の課題、並びに他の明確には記載されていないがしかしながらここへと導く議論された文脈から容易に導き出すか又は推論することができる課題は、請求項1の全ての特徴を有するポリマー分散液により解決される。本発明によるポリマー分散液の合理的な変形は、請求項1に係る従属請求項において保護される。ポリマー分散液の製造法に関して、請求項17は基礎となる課題の解決をもたらし、一方で請求項18は本発明のポリマー分散液の有利な使用を保護する。
【0017】
ポリマー分散液が、以下
A)少なくとも1種の分散されたポリオレフィン
B)少なくとも1種の分散成分
C)鉱油、及び
D)(オリゴ)オキシアルキル基を含む少なくとも1種の化合物
を含むことにより、容易に予見することが不可能な方法で、殊に高い安定性を有するポリマー分散液を提供することに成功する。
【0018】
同時に、本発明によるポリマー分散液により、一連の他の利点を達成することができる。これには特に以下ものが属する:
・本発明によるポリマー分散液は、粘度指数改良剤ないし潤滑油中で増粘作用を示すポリオレフィンの特に高い割合を含むことができる。
・本発明のポリマー分散液は、所定の粘度へと特に単純な方法で調節することができる。
・本発明の対象によるポリマー分散液は低い粘度を示す。
・本発明のポリマー分散液の製造は、殊に容易かつ単純に行うことができる。この場合、慣用の大工業的な装置を使用することができる。
【0019】
成分A)
本発明において本質的な成分として、ポリマー分散液は、有利に粘度指数改良作用ないし増粘作用を示すポリオレフィンを含む。このようなポリオレフィンは久しく公知であり、先行技術において挙げられた刊行物に記載されている。
【0020】
前記ポリオレフィンには、殊にポリオレフィンコポリマー(OCP)及び水素化スチレン−ジエン−コポリマー(HSD)が属する。
【0021】
本発明により使用することのできるポリオレフィンコポリマー(OCP)は自体公知である。これはまず第一に、既にVI−改良剤として推奨されているような、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブチレン及び/又は5〜20個のC原子を有する他のオレフィンから構成されたポリマーである。同様に、少量の酸素−又は窒素含有モノマー(例えば無水マレイン酸0.05〜5質量%)でグラフトされている系も使用可能である。酸化敏感性並びに粘度指数改良剤の架橋傾向を低減するため、ジエン成分を含有するコポリマーは一般に水素化される。
【0022】
分子量Mは、一般に10000〜300000、有利に50000〜150000である。このようなオレフィンコポリマーは例えばドイツ連邦共和国特許出願公開DE−A1644941、DE−A1769834、DE−A1939037、DE−A1963039及びDE−A2059981に記載されている。
【0023】
エチレン−プロピレン−コポリマーは殊に良好に使用可能であり、同様に、公知の三元成分、例えばエチリデン−ノルボルネンを有するターポリマー(Macromolecular Reviews, 第10巻 (1975)を参照のこと)も可能であるが、しかしながらエージングプロセスにおけるその架橋傾向も考慮しなければならない。この場合、分布は広範囲に亘ってランダムであってよいが、しかしながら有利にエチレンブロックを有する配列ポリマーを使用することもできる。モノマーエチレン−プロピレンの割合は、この場合ある程の限度内で可変であり、上限としてエチレンに関しては約75%であり、プロピレンに関しては約80%を設定することができる。油中でのその低下された溶解傾向のための、既にポリプロピレンはエチレン−プロピレン−コポリマーよりも不適当である。主にアタクチックなプロピレン構造を有するポリマーの他に、特徴的なイソ−又はシンジオタクチックなプロピレン構造を有するポリマーも使用可能である。
【0024】
このような生成物は、例えばDutral(R) CO 034、Dutral(R) CO 038、Dutral(R) CO 043、Dutral(R) CO 058、Buna(R) EPG 2050又はBuna(R) EPG 5050の商品名で市販されている。
【0025】
水素化スチレン−ジエン−コポリマー(HSD)は同様に公知であり、その際、前記ポリマーは例えばDE2156122に記載されている。これは一般に水素化イソプレン−又はブタジエン−スチレン−コポリマーである。ジエン:スチレンの比は有利に2:1〜1:2の範囲内、殊に有利に約55:45である。分子量Mは、一般に10000〜300000、有利に50000〜150000である。水素化後の二重結合の割合は、本発明の特別な観点によれば、水素化前の二重結合の数に対してせいぜい15%、殊に有利にせいぜい5%である。
【0026】
水素化スチレン−ジエン−コポリマーは(R)SHELLVIS 50、150、200、250又は260の商品名で市販されている。
【0027】
一般に、成分A)の割合は少なくとも20質量%、有利に少なくとも30質量%、殊に有利に少なくとも40質量%であるが、これにより制限されるべきではない。
【0028】
成分B)
成分B)は少なくとも1種の分散成分から形成され、その際、前記成分はしばしばブロックコポリマーと見なすことができる。有利に、前記ブロックの少なくとも1つは、成分A)の前記のポリオレフィンとの高い相容性を示し、その際、分散成分中に含有される少なくとももう1つのブロックは、前記のポリオレフィンとわずかな相容性しか示さない。このような分散成分は自体公知であり、その際、有利な化合物は前記の先行技術に記載されている。
【0029】
成分A)と相容性である基は一般に非極性の特徴を示すのに対して、非相容性の基は極性の性質を有する。本発明の特別な観点によれば、有利な分散成分は、1個以上のブロックAと1個以上のブロックXとを含み、その際、ブロックAはオレフィンコポリマー−配列、水素化ポリイソプレン−配列、ブタジエン/イソプレンからの水素化コポリマー又はブタジエン/イソプレン及びスチレンからの水素化コポリマーであり、ブロックXはポリアクリレート−、ポリメタクリレート−、スチレン−、α−メチルスチレン又はN−ビニル−複素環式配列ないしポリアクリレート−、ポリメタクリレート−、スチレン−、α−メチルスチレン又はN−ビニル−複素環の混合物からの配列であるブロックコポリマーであると解釈することができる。
【0030】
有利な分散成分はグラフト重合により製造することができ、その際、前記のポリオレフィン上に、殊にOCP及びHSD上に極性モノマーがグラフトされる。このために、ポリオレフィンを機械的分解及び/又は熱分解により前処理することができる。
【0031】
極性モノマーには、殊に(メタ)アクリレート及びスチレン化合物が属する。
(メタ)アクリレートという表記には、メタクリレート及びアクリレート並びにこれら2つの混合物が含まれる。
【0032】
本発明の特別な観点によれば、グラフト反応の際に、式(I)
【化1】

[式中、
Rは水素又はメチルを表し、
は水素、1〜40個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖アルキル基を表す]
の1種以上の(メタ)アクリレートを有するモノマー組成物が使用される。
【0033】
式(I)による有利なモノマーには、特に飽和アルコールから誘導された(メタ)アクリレート、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソ−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−t−ブチルヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、3−イソ−プロピルヘプチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、5−メチルウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2−メチルドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、5−メチルトリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、2−メチルヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、5−イソ−プロピルヘプタデシル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルオクタデシル(メタ)アクリレート、5−エチルオクタデシル(メタ)アクリレート、3−イソ−プロピルオクタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、セチルエイコシル(メタ)アクリレート、ステアリルエイコシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレート及び/又はエイコシルテトラトリアコンチル(メタ)アクリレート;不飽和アルコールから誘導された(メタ)アクリレート、例えば2−プロピニル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、オレイル(メタ)アクリレート;シクロアルキル(メタ)アクリレート、例えばシクロペンチル(メタ)アクリレート、3−ビニルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレートが属する。
【0034】
更に、モノマー組成物は式(II)
【化2】

[式中、
Rは、水素又はメチルを表し、
は2〜20個の炭素原子を有するOH基で置換されたアルキル基か、又は式(III)
【化3】

(ここで、
及びRは独立して水素又はメチルを表し、
は水素又は1〜40個の炭素原子を有するアルキル基を表し、
nは1〜90の整数を表す)
のアルコキシル化基を表す]
の1種以上の(メタ)アクリレートを有してよい。
【0035】
式(III)による(メタ)アクリレートは当業者に公知である。これには、特に、ヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレート、例えば
3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、
3,4−ジヒドロキシブチルメタクリレート、
2−ヒドロキシエチルメタクリレート、
2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、
2,5−ジメチル−1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、
1,10−デカンジオール(メタ)アクリレート、
1,2−プロパンジオール(メタ)アクリレート;
(メタ)アクリル酸のプロポキシエチレン−及びプロポキシプロピレン誘導体、例えば
トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、
テトラエチレングリコール(メタ)アクリレート及び
テトラプロピレングリコール(メタ)アクリレートが属する。
【0036】
長鎖アルコール基を有する(メタ)アクリレートは、例えば、相応する酸及び/又は短鎖(メタ)アクリレート、殊にメチル(メタ)アクリレート又はエチル(メタ)アクリレートと長鎖脂肪アルコールとの反応により得ることができ、その際、一般に、エステル、例えば種々の長鎖アルコール基を有する(メタ)アクリレートの混合物が生じる。前記脂肪アルコールには、特にMonsanto社のOxo Alcohol(R) 7911及びOxo Alcohol(R) 7900、Oxo Alcohol(R) 1100;ICI社のAlphanol(R) 79;Condea社のNafol(R) 1620、Alfol(R) 610及びAlfol(R) 810;Ethyl CorporationのEpal(R) 610及びEpal(R) 810;Shell AGのLinevol(R) 79、Linevol(R) 911及びDobanol(R) 25L;Augusta, MailandのLial(R) 125;Henkel KGaAのDehydad(R)及びLorol(R)、並びにUgine KuhlmannのLinopol(R) 7-11及びAcropol(R) 91が属する。
【0037】
及び/又は式(IV)
【化4】

[式中、
Rは水素又はメチルを表し、
Xは酸素又は式−NH−又は−NR
(ここで、
は1〜40個の炭素原子を有するアルキル基を表す)
のアミノ基を表し、
は2〜20個、有利に2〜6個の炭素原子を有する、少なくとも1個の−NR−基
(ここで、
及びRは互いに独立して水素、1〜20個、有利に1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を表すか、又は
及びRは、窒素原子及び場合によりもう1個の窒素又は酸素原子の包含下に、C〜C−アルキルで置換されていてよい5員環又は6員環を形成する)
で置換された直鎖又は分枝鎖アルキル基を表す]
の1種以上の(メタ)アクリレート。
【0038】
式(IV)による(メタ)アクリレートもしくは(メタ)アクリルアミドには、特に
(メタ)アクリル酸のアミド、例えば
N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、
N−(ジエチルホスホノ)メタクリルアミド、
1−メタクリロイルアミド−2−メチル−2−プロパノール、
N−(3−ジブチルアミノプロピル)メタクリルアミド、
N−t−ブチル−N−(ジエチルホスホノ)メタクリルアミド、
N,N−ビス(2−ジエチルアミノエチル)メタクリルアミド、
4−メタクリロイルアミド−4−メチル−2−ペンタノール、
N−(メトキシメチル)メタクリルアミド、
N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、
N−アセチルメタクリルアミド、
N−(ジメチルアミノエチル)メタクリルアミド、
N−メチル−N−フェニルメタクリルアミド、
N,N−ジエチルメタクリルアミド、
N−メチルメタクリルアミド、
N,N−ジメチルメタクリルアミド、
N−イソプロピルメタクリルアミド;
アミノアルキルメタクリレート、例えば
トリス(2−メタクリルオキシエチル)アミン、
N−メチルホルムアミドエチルメタクリレート
2−ウレイドエチルメタクリレート;
複素環式(メタ)アクリレート、例えば2−(1−イミダゾリル)エチル(メタ)アクリレート、2−(4−モルホリニル)エチル(メタ)アクリレート及び1−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2−ピロリドン
が属する。
【0039】
更に、モノマー組成物はスチレン−化合物を有してよい。これには、特に、スチレン、側鎖においてアルキル置換基で置換されたスチレン、例えばα−メチルスチレン及びα−エチルスチレン、環がアルキル置換基で置換されたスチレン、例えばビニルトルエン及びp−メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、例えばモノクロロスチレン、ジクロロスチレン、トリブロモスチレン及びテトラブロモスチレンが属する。
【0040】
更に、モノマー組成物は、複素環式ビニル化合物、例えば2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、3−エチル−4−ビニルピリジン、2,3−ジメチル−5−ビニルピリジン、ビニルピリミジン、ビニルピペリジン、9−ビニルカルバゾール、3−ビニルカルバゾール、4−ビニルカルバゾール、1−ビニルイミダゾール、2−メチル−1−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリドン、2−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリジン、3−ビニルピロリジン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルブチロラクタム、ビニルオキソラン、ビニルフラン、ビニルチオフェン、ビニルチオラン、ビニルチアゾール及び水素化ビニルチアゾール、ビニルオキサゾール及び水素化ビニルオキサゾールを含んでよい。
【0041】
スチレン−化合物及び(メタ)アクリレートの他に、モノマーとして、殊に、分散作用を有するモノマー、例えば前記の複素環式ビニル化合物は有利である。前記モノマーは更に分散モノマーと呼称される。
【0042】
前記エチレン性不飽和モノマーは、単独でか又は混合物として使用することができる。更に、モノマー組成を重合の間に変化させてよい。
【0043】
分散成分のポリオレフィンと相容性である部分、殊にブロックA対分散成分のポリオレフィンと相容性である部分、殊にブロックXの質量比は広範囲であってよい。一般に、前記の比は50:1〜1:50、殊に20:1〜1:20、殊に有利に10:1〜1:10の範囲内である。
【0044】
前記の分散成分の製造は当業者に公知である。例えば、製造は溶液中での重合を介して行われてよい。このような方法は特にDE−A1235491、BE−A592880、US−A4281081、US−A4338418及びUS−A−4,290,025に記載されている。
【0045】
この場合、合理的には、撹拌機、温度計、還流冷却器及び供給管が備えられた適当な反応容器中に、OCPと1種以上の前記のモノマーとから成る混合物を装入することができる。
【0046】
不活性雰囲気、例えば窒素下で、例えば110℃に加熱しながらうまく溶解させた後、例えば過酸エステルの群からの慣用のラジカル開始剤の分を、まずモノマーに対して例えば約0.7質量%にする。
【0047】
その後、数時間、例えば3.5時間を超えて、残りのモノマーから成る混合物を、他の開始剤をモノマーに対して例えば約1.3質量%添加しながら計量供給する。合理的には、供給終了の数時間後、例えば2時間後に、開始剤をもう少し供給する。全重合時間は、基準値として例えば約8時間にすることができる。重合後、合理的には適当な溶剤、例えばフタル酸エステル、例えばジブチルフタレートで希釈する。通常、ほぼ澄明な粘性の溶液が得られる。
【0048】
更に、ポリマー分散液の製造は、混練機、押出機中で、又はスタティックミキサー中で行うことができる。装置中での処理により、剪断応力、温度及び開始剤濃度の作用下に、ポリオレフィン、殊にOCPもしくはHSDの分子量の低減を行う。
【0049】
グラフト重合において適当な開始剤の例は、クメンヒドロペルオキシド、ジウミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、アゾジイソ酪酸ジニトリル、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン、ジエチルペルオキシジカーボネート及びt−ブチルペルオキシドである。加工温度は80℃〜350℃である。混練機又は押出機中の滞留時間は1分〜10時間である。
【0050】
分散液を混練機又は押出機中で長く処理する程、分子量は小さくなる。ラジカル形成開始剤の温度及び濃度は、所望の分子量に相応して調節することができる。溶剤不含のポリマー−中−ポリマー−分散液は、適当な担持媒体中への添加により、良好に取扱い可能な液体のポリマー/ポリマーエマルションに移行され得る。
【0051】
成分B)の割合は一般に30質量%までであり、殊にこの割合は5〜15質量%の範囲内であるが、これにより制限されるべきではない。より多量の成分B)の使用はしばしば非経済的である。より少量は、むしろポリマー分散液のより低い安定性を招く。
【0052】
成分C)
成分C)は、本発明の成功のために本質的である。鉱油は自体公知であり、市販されている。鉱油は一般に石油又は原油から蒸留及び/又は精製及び場合により他の清浄化処理及び精製処理により取得され、その際、鉱油という定義には、殊に原油又は石油の高沸点分が含まれる。一般に、鉱油の沸点は5000Paで200℃を上回る、有利に300℃を上回る。同様に、シェール油の低温乾留、石炭のコークス化、空気排除下での褐炭の蒸留、並びに石炭又は褐炭の水素化による製造が可能である。少ない割合で、鉱油は(例えばホホバ、ナタネからの)植物由来又は動物(例えば牛脚油)由来の原料からも製造される。それに応じて、鉱油は由来に応じて種々の割合の、芳香族、環式、分枝鎖及び直鎖炭化水素を有する。
【0053】
一般に、原油ないしは鉱油中のパラフィンベース分、ナフテン系分及び芳香族分は区別され、その際、パラフィンベース分という定義は長鎖ないしは強度に分枝鎖のイソアルカンを表し、ナフテン系分という定義はシクロアルカンを表す。更に、鉱油は、由来及び精製に応じて、低い枝分れ度を有する種々の割合のn−アルカン、イソ−アルカン、いわゆるモノメチル分枝鎖パラフィン、及びある程度極性を有するヘテロ原子、殊にO、N及び/又はSを有する化合物を有する。しかしながら分類は困難であり、それというのも、個々のアルカン分子は長鎖の分枝鎖基のみならずシクロアルカン基及び芳香族分をも有し得るからである。本発明の目的のために、分類は例えばDIN 51378に従って行うことができる。極性分はASTM D 2007に従って決定することもできる。
【0054】
n−アルカンの割合は有利な鉱油中で3質量%未満であり、O、N及び/又はS含有化合物の割合は6質量%未満である。芳香族化合物及びモノメチル分枝鎖パラフィンの割合は、一般にその都度0〜40質量%の範囲内である。重要な観点によれば、鉱油は主にナフテン系アルカン及びパラフィン系アルカンを含み、これは一般に13個を上回る、有利に18個を上回る、極めて殊に有利に20個を上回る炭素原子を有する。前記化合物の割合は一般に≧60質量%、有利に≧80質量%であるが、これにより制限されるべきではない。有利な鉱油は、それぞれ鉱油の全質量に対して、芳香族分0.5〜30質量%、ナフテン系分15〜40質量%、パラフィンベース分35〜80質量%、n−アルカン3質量%まで、及び極性化合物0.05〜5質量%を含有する。
【0055】
慣用の方法、例えば尿素分離及びシリカゲル上での液体クロマトグラフィーを用いて行った殊に有利な鉱油の分析は、例えば以下の成分を示し、その際、パーセント数値はその都度使用された鉱油の全質量に関する:
約18〜31個のC原子を有するn−アルカン:
0.7−1.0%
約18〜31個のC原子を有するわずかに分枝したアルカン:
1.0−8.0%
14〜32個のC原子を有する芳香族化合物:
0.4−10.7%
20〜32個のC原子を有するイソアルカン及びシクロアルカン:
60.7−82.4%
極性化合物:
0.1−0.8%
損失:
6.9−19.4%
鉱油の分析に関する重要な指摘、並びに異なる組成を有する鉱油の列挙は、例えばUllmanns Encyclopedia of Industrial Chemistry, CD-ROM, 第5版, 1997, 見出し語 "lubricants and related products"に存在する。
【0056】
本発明の特別な観点によれば、ポリマー分散液は鉱油を有利に2〜40質量%、殊に5〜30質量%、殊に有利に10〜20質量%含有する。
【0057】
成分D)
成分D)は本発明のポリマー分散液にとって必須であり、その際、前記成分は、少なくとも1個の(オリゴ)オキシアルキル基を含む1種以上の化合物を含有する。一般に、成分D)による化合物はオキシアルキル基を有利に1〜40個、殊に1〜20個、殊に有利に2〜8個含む。
【0058】
オキシアルキル基は一般に式(V)
【化5】

[式中、
及びRは独立して水素又は1〜10個の炭素を有するアルキル基である]
を有する。
【0059】
オキシアルキル基には殊に、エトキシ基、プロポキシ基及びブトキシ基が含まれ、その際、エトキシ基が有利である。
【0060】
これには、殊に、上記の基を有するエステル及びエーテルが含まれる。
【0061】
エステルの群:リン酸エステル、モノカルボン酸のエステル及びジカルボン酸のエステルを強調することができる(Ullmanns Encyclopaedie der Technischen Chemie, 第3版, 第15巻, 第287-292頁, Urban & Schwarzenber (1964)を参照のこと)。
【0062】
モノカルボン酸として、プロピオン酸、(イソ)酪酸並びにペラルゴン酸が特に挙げられる。
【0063】
ジカルボン酸のエステルとしてフタル酸のエステルが該当し、更に、脂肪族ジカルボン酸のエステル、殊に直鎖ジカルボン酸のエステルが挙げられる。殊に、セバシン酸、アジピン酸及びアゼライン酸のエステルを強調することができる。
【0064】
モノカルボン酸とジオール又はポリアルキレングリコールとのエステルとして、アルコール成分としてのジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールからデカメチレングリコールとの、更にはジプロピレングリコールとのジエステルが強調される。モノカルボン酸として、プロピオン酸、(イソ)酪酸並びにペラルゴン酸が特に挙げられ、例えばジプロピレングリコールジペラルゴネート、ジエチレングリコールジプロピオネート及びジイソブチレート並びにトリエチレングリコールの相応するエステル、並びにテトラエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサン酸エステルが挙げられる。
【0065】
上記エステルを単独でか又は混合物として使用することができる。
【0066】
更に、成分D)による化合物は、(オリゴ)アルコキシ基を含むエーテル化合物を含む。これには、殊に、殊に有利に1〜20個、殊に2〜8個のエトキシ基を有するエトキシル化されたアルコールが含まれる。
【0067】
エトキシル化されたアルコールの疎水基には、有利に1〜40個、有利に4〜22個の炭素原子が含まれ、その際、直鎖アルコール基のみならず分枝鎖アルコール基を使用することもできる。同様に、オキソアルコールエトキシレートも使用可能である。
【0068】
上記エーテルの有利な疎水基には、特に、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、2−メチルブチル基、ペンテニル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、2−メチルヘプテニル基、3−メチルヘプチル基、オクチル基、ノニル基、3−エチルノニル基、デシル基、ウンデシル基、4−プロペニルウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、セチルエイコシル基、ドコシル基及び/又はエイコシルテトラトリアコンチル基が含まれる。
【0069】
本発明による濃縮物の製造のために利用することのできる市販のエトキシレートの例は、Lutensol(R) A-商標、殊にLutensol(R) A 3 N、Lutensol(R) A 4 N、Lutensol(R) A 7 N及びLutensol(R) A 8 Nのエーテル、Lutensol(R) TO-商標、殊にLutensol(R) TO 2、Lutensol(R) TO 3、Lutensol(R) TO 5、Lutensol(R) TO 6、Lutensol(R) TO 65、Lutensol(R) TO 69、Lutensol(R) TO 7、Lutensol(R) TO 79、Lutensol(R) 8及びLutensol(R) 89のエーテル、Lutensol(R) AO-商標、殊にLutensol(R) AO 3、Lutensol(R) AO 4、Lutensol(R) AO 5、Lutensol(R) AO 6、Lutensol(R) AO 7、Lutensol(R) AO 79、Lutensol(R) AO 8及びLutensol(R) AO 89のエーテル、Lutensol(R) ON-商標、殊にLutensol(R) ON 30、Lutensol(R) ON 50、Lutensol(R) ON 60、Lutensol(R) ON 65、Lutensol(R) ON 66、Lutensol(R) ON 70、Lutensol(R) ON 79及びLutensol(R) ON 80のエーテル、Lutensol(R) XL-商標、殊にLutensol(R) XL 300、Lutensol(R) XL 400、Lutensol(R) XL 500、Lutensol(R) XL 600、Lutensol(R) XL 700、Lutensol(R) XL 800、Lutensol(R) XL 900及びLutensol(R) XL 1000のエーテル、Lutensol(R) AP-商標、殊にLutensol(R) AP 6、Lutensol(R) AP 7、Lutensol(R) AP 8、Lutensol(R) AP 9、Lutensol(R) AP 10、Lutensol(R) AP 14及びLutensol(R) AP 20のエーテル、IMBENTIN(R)-商標、殊にIMBENTIN(R)-AG-商標、IMBENTIN(R)-U-商標、IMBENTIN(R)-C-商標、IMBENTIN(R)-T-商標、IMBENTlN(R)-OA-商標、IMBENTIN(R)-POA-商標、IMBENTIN(R)-N-商標、並びにIMBENTIN(R)-O-商標のエーテル、並びにMarlipal(R)-商標、殊にMarlipal(R) 1/7、Marlipal(R) 1012/6、Marlipal(R) 1618/1、Marlipal(R) 24/20、Marlipal(R) 24/30、Marlipal(R) 24/40、Marlipal(R) O13/20、Marlipal(R) O13/30、Marlipal(R) O13/40、Marlipal(R) O25/30、Marlipal(R) O25/70、Marlipal(R) O45/30、Marlipal(R) O45/40、Marlipal(R) O45/50、Marlipal(R) O45/70及びMarlipal(R) O45/80のエーテルである。
【0070】
上記エーテルを単独でか又は混合物として使用することができる。
【0071】
本発明の特別な観点によれば、ポリマー分散液は(オリゴ)オキシアルキル基を含む化合物を有利に2〜55質量%、殊に5〜45質量%、殊に有利に10〜40質量%含有する。
【0072】
鉱油と(オリゴ)オキシアルキル基を有する化合物との質量比は広範囲であってよい。殊に有利に、前記の比は2:1〜1:25、殊に1:1〜1:15の範囲内である。
【0073】
濃縮されたポリマー分散液中の成分C)及びD)の割合は広範囲であってよく、その際、前記の割合は殊に使用されるポリオレフィンと分散成分とに依存する。一般に、成分C)及びD)の割合は合わせて全ポリマー分散液に対して79〜25質量%、有利に70質量%未満、特に60〜40質量%である。
【0074】
前記の成分の他に、本発明によるポリマー分散液は他の添加剤及び混和剤を含有してよい。
【0075】
殊に、他の担持媒体をポリマー分散液中で使用することができる。液体担持媒体として使用可能な溶剤は、不活性でありかつ全般的に問題がないべきである。上記条件を満たす担持媒体は、例えばエステル、エーテルの群及び/又は高級アルコールの群に属する。通常、担持媒体として該当する化合物型の分子は、1分子当たり8個を上回る炭素原子を含有する。
【0076】
上記の溶剤から成る混合物も担持媒体に該当することに言及される。
【0077】
エステルの群:リン酸エステル、ジカルボン酸のエステル、モノカルボン酸とジオール又はポリアルキレングリコールとのエステル、ネオペンチルポリオールとモノカルボン酸とのエステルを強調することができる(Ullmanns Encyclopaedie der Technischen Chemie, 第3版, 第15巻, 第287-292頁, Urban & Schwarzenber (1964)を参照のこと)。ジカルボン酸のエステルとして、フタル酸のエステル、殊にC〜C−アルコールとのフタル酸エステルが該当し、その際、殊にジブチルフタレート及びジオクチルフタレートが挙げられ、更に、脂肪族ジカルボン酸のエステル、殊に直鎖ジカルボン酸と分枝鎖1級アルコールとのエステルが挙げられる。殊に、セバシン酸、アジピン酸及びアゼライン酸のエステルが強調され、その際殊に、2−エチルヘキシルエステル、イソオクチル−3,5,5−トリメチルエステル、並びにC−、C−ないしC10−オキソアルコールとのエステルを挙げるべきである。
【0078】
直鎖1級アルコールと分枝鎖ジカルボン酸とのエステルは殊に重要である。例として、アルキル置換アジピン酸、例えば2,2,4−トリメチルアジピン酸が挙げられる。
【0079】
有利な担持媒体は、他の非イオン性界面活性剤である。これには、特に脂肪酸ポリグリコールエステル、脂肪アミンポリグリコールエーテル、アルキルポリグリコシド、脂肪アミン−N−オキシド並びに長鎖アルキルスルホキシドが含まれる。
【0080】
更に、本発明のポリマー分散液は、9以上、殊に20以上、殊に有利に30以上の誘電率を有する化合物を含んでよい。驚異的にも、前記化合物の添加により、ポリマー分散液の粘度が低下され得ることが確認された。これにより、殊に所定の値への粘度の調節が可能である。
【0081】
誘電率はHandbook of Chemistry and Physics, David R. Lide, 第79版, CRS Pressに記載された方法により測定することができ、その際、誘電率は20℃で測定される。
【0082】
殊に適当な化合物には、特に、水、グリコール、殊にエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ポリエチレングリコール;アルコール、殊にメタノール、エタノール、ブタノール、グリセリン;エトキシル化されたアルコール、例えば2回エトキシル化されたブタノール、10回エトキシル化されたメタノール;アミン、殊にエタノールアミン、1,2−エタンジアミン及びプロパノールアミン;ハロゲン化炭化水素、殊に2−クロロエタノール、1,2−ジクロロエタン、1,1−ジクロロアセトン;ケトン、殊にアセトンが含まれる。
【0083】
ポリマー分散液中の前記化合物の割合は広範囲であってよい。一般に、ポリマー分散液は、9以上の誘電率を有する化合物を15質量%まで、殊に0.3〜5質量%含む。
【0084】
ポリマー分散液は公知の方法により製造することができ、その際、前記方法は上記の先行技術の文献に記載されている。例えば、成分B)の溶液中に、剪断応力の適用下で80〜180℃の範囲内の温度で成分A)を分散させることにより、本発明によるポリマー分散液を製造することができる。成分B)の溶液は、一般に成分C)及びD)を含む。前記成分は、成分A)の分散の前、間又は後に分散液に添加することができる。
【0085】
引き続き、本発明を実施例及び比較例により詳説するが、本発明はこれらの例に限定されるべきではない。
【0086】
用いられる方法
以下でKV100とは、100℃で150N油中で測定された液体の動粘度を指す。粘度の測定をDIN 51562(ウベローデ粘度計)により実施する。この場合、油中のOCPの濃度はその都度2.8質量%である。BV20、BV40ないしBV100という表記は、同様に20、40ないし100℃でDIN51562(ウベローデ粘度計)により測定された分散液の動粘度(BV="bulk viscosity")を表す。
【0087】
分散液を製造するための開始剤として、慣用の代表物、例えば過開始剤であるジ(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン及び/又はt−ブチルペルオクトエートを使用した。
【0088】
分散液の安定性を試験するために、生成物670gを2リットルのウィットの容器(Witt'schen Topf)中に量り入れることができる。3つのパドルを有するインターミグ撹拌機(Inter-Mig-Ruehrer)(Ika社のトルク及び速度表示MR-D1を備えた測定撹拌機)及びNiCrNi熱電対(Eurotherm社の温度制御装置810)をウィットの容器に組み込む。油浴(シリコーン油PN200)を加熱し、その際、電力供給が1.3ワットとなるように回転数を調節する。電力供給を粘度により算出することができる。
【0089】
生成物を160℃にまで加熱し、この内部温度を2時間に亘り維持する。その後、反応器中の内部温度を15分以内に10℃高め、再度2時間に亘り維持し、その際、内部温度が190℃になるまでこの工程を数回繰り返す。生成物が予め相分離している場合(これは、粘度の突然の上昇及びこれに伴うトルクの迅速な上昇から認めることができる)には、試験を終了する。この時点までの時間及び温度を検知する。
【実施例】
【0090】
実施例1
撹拌機、温度計及び還流冷却器を備えた2リットルの4つ口フラスコ内で、KV100に関して11.0mm/sの増粘作用を有するエチレン−プロピレン−コポリマー(例えば熱的又は機械的に分解されたDutral(R)CO 038)70.3gを、150N油251.8gと100N油47.9gとから成る混合物中に量り入れ、100℃で10〜12時間以内で溶解させる。溶解が進行した後、鎖長C10〜C18のアルキル置換基を有するアルキルメタクリレートから成る混合物41.1gを添加し、ドライアイスを添加することにより反応混合物を不活性化させる。重合温度が130℃に達した後、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン0.52gを添加し、同時に、上記と類似の組成物588.9gと1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン7.66gとから成るモノマー添加を開始し、3.5時間の供給時間に亘って一様に添加する。供給終了の2時間後に、エトキシル化された脂肪アルコール(例えばMarlipal(R)O13/20)472.1gをポリマー含分が47.55%となるように希釈する。同時に、温度を100℃に低下させ、t−ブチルペルオクトエート1.26gを添加し、100℃で更に2時間撹拌する。インターミグ撹拌機を備えた1リットルのウィットの容器(撹拌機/容器直径の比=0.7;調節した撹拌機回転数:150rpm)内に、製造した溶液286.2g、エチレン−プロピレン−コポリマー(例えば11.5mm/sに分解されたDutral(R)CO 038)43.2g及び他のエチレン−プロピレン−コポリマー(例えば11.5mm/sのKV100に分解されたDutral(R)CO 058)170.6gを量り入れる。8〜10時間以内に、100℃で撹拌機回転数150rpmで褐色の分散液が生じるが、これは室温で数週間以内でエチレン−プロピレン−コポリマーの分離傾向にある。従って、安定化のために、温度を100℃から140℃に高め、150rpmで6時間更に撹拌する。引き続き、エトキシル化された脂肪アルコール(例えばMarlipal(R)O13/20)136.6gで希釈することによりポリマー含分が55%となるように希釈し、混合物を100℃で30分間更に撹拌する。そのように製造した生成物のKV100は3488mm/sである。150N油中の生成物の2.8%の溶液のKV100は11.43mm/sである。
【0091】
得られた分散液に対して前記の安定性試験を行い、その際、達成された180℃の温度で約420分後に相分離が生じ、粘度が突然増加した。
【0092】
比較例1
撹拌機、温度計及び還流冷却器を備えた2リットルの4つ口フラスコ内で、そのKV100に関して11.0mm/sの増粘作用を有するエチレン−プロピレン−コポリマー(例えば相応して分解されたDutral(R)CO 043)78.0gを、ジオクチルアジペート442.1g中に、100℃で10〜12時間以内で溶解させる。その後、鎖長C10〜C18のアルキル置換基を有するアルキルメタクリレートから成る混合物57.8gを添加する。ドライアイスを添加することにより反応混合物を不活性化させる。溶液の温度を110℃に高めた後、t−ブチルペルオクトエート0.57gを添加し、同時に、上記と類似の組成のアルキルメタクリレート422.1gとt−ブチルペルオクトエート8.44gとから成る供給を開始した。全供給時間は3.5時間であり、一定の計量供給速度下で進行する。供給終了の2時間後にt−ブチルペルオクトエート0.96gを添加する。3〜4時間後に溶液が得られ、これを後で分散成分として使用する。その後、ジブチルフタレート589.9gを用いて、ポリマー含分が35.1%となるように希釈する。そのように製造した溶液306.4gを、インターミグ撹拌機を備えた1リットルのウィットの容器(撹拌機/容器直径の比=0.7;撹拌機回転数150rpm)内に、2種の異なるエチレン−プロピレン−コポリマー(例えば11.5mm/sのKV100に分解されたDutral(R)CO 038 96.8g及び11.5mm/sのKV100に分解されたDutral(R)CO 058 96.8g)と一緒に量り入れる。温度を100℃に上昇させ、回転数150rpmで撹拌した後、8〜10時間以内に褐色の分散液が生じる。これを150rpmで6時間更に撹拌し、それによってより安定な分散液が得られる(これは、純粋なエチレン−プロピレン−コポリマーの分離への低下した傾向から認めることができる)。引き続き、前記の47.55%の分散成分73.1gとジブチルフタレート20.8gとを添加することにより、前記バッチ500gを、ポリマー含分が55%となるように希釈する。引き続き、更に30分間150rpmで撹拌する。そのように製造した生成物のKV100は1524mm/sである。150N油中の生成物の2.8%の溶液のKV100は11.43mm/sである。
【0093】
得られた分散液に対して前記の安定性試験を行い、その際、達成された170℃の温度で約250分後に相分離が生じ、粘度が突然増加した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高い安定性を有するポリマー分散液において、以下
A)少なくとも1種の分散されたポリオレフィン
B)少なくとも1種の分散成分
C)鉱油、及び
D)(オリゴ)オキシアルキル基を含む少なくとも1種の化合物
を含むことを特徴とする、高い安定性を有するポリマー分散液。
【請求項2】
成分B)が、1個以上のブロックAと1個以上のブロックXとを含むコポリマーであり、その際、ブロックAはオレフィンコポリマー−配列、水素化ポリイソプレン−配列、ブタジエン/イソプレンからの水素化コポリマー又はブタジエン/イソプレン及びスチレンからの水素化コポリマーであり、ブロックXはポリアクリレート−、ポリメタクリレート−、スチレン−、α−メチルスチレン又はN−ビニル−複素環式配列及び/又はポリアクリレート−、ポリメタクリレート−、スチレン−、α−メチルスチレン又はN−ビニル−複素環の混合物からの配列である、請求項1記載のポリマー分散液。
【請求項3】
成分B)を、成分A)によるポリオレフィンへの、(メタ)アクリレート及び/又はスチレン−化合物を含むモノマー組成物のグラフト共重合により得ることができる、請求項1又は2記載のポリマー分散液。
【請求項4】
式(I)
【化1】

[式中、
Rは水素又はメチルを表し、
は水素、1〜40個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖アルキル基を表す]
の1種以上の(メタ)アクリレート
及び/又は式(II)
【化2】

[式中、
Rは、水素又はメチルを表し、
は2〜20個の炭素原子を有するOH基で置換されたアルキル基か、又は式(III)
【化3】

(ここで、
及びRは独立して水素又はメチルを表し、
は水素又は1〜40個の炭素原子を有するアルキル基を表し、
nは1〜90の整数を表す)
のアルコキシル化基を表す]
の1種以上の(メタ)アクリレート
及び/又は式(IV)
【化4】

[式中、
Rは水素又はメチルを表し、
Xは酸素又は式−NH−又は−NR
(ここで、
は1〜40個の炭素原子を有するアルキル基を表す)
のアミノ基を表し、
は2〜20個、有利に2〜6個の炭素原子を有する、少なくとも1個の−NR−基
(ここで、
及びRは互いに独立して水素、1〜20個、有利に1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を表すか、又は
及びRは、窒素原子及び場合によりもう1個の窒素又は酸素原子の包含下に、C〜C−アルキルで置換されていてよい5員環又は6員環を形成する)
で置換された直鎖又は分枝鎖アルキル基を表す]
の1種以上の(メタ)アクリレート
を有するモノマー組成物が使用されている、請求項3記載のポリマー分散液。
【請求項5】
グラフト反応の際に、分散性モノマーを含むモノマー組成物が使用されている、請求項2から4までのいずれか1項記載のポリマー分散液。
【請求項6】
ブロックA対ブロックXの質量比が20:1〜1:20の範囲内である、請求項2から5までのいずれか1項記載のポリマー分散液。
【請求項7】
成分A)が1種以上のオレフィンコポリマーを含む、請求項1から6までのいずれか1項記載のポリマー分散液。
【請求項8】
成分D)が少なくとも1種のエトキシル化されたアルコールを含む、請求項1から7までのいずれか1項記載のポリマー分散液。
【請求項9】
エトキシル化アルコールが2〜8個のエトキシ基を含み、その際、アルコールの疎水基が4〜22個の炭素原子を含む、請求項8記載のポリマー分散液。
【請求項10】
ポリマー分散液が成分C)を2〜40質量%含む、請求項1から9までのいずれか1項記載のポリマー分散液。
【請求項11】
成分C)対成分D)の質量比が2:1〜1:25の範囲内である、請求項1から10までのいずれか1項記載のポリマー分散液。
【請求項12】
ポリマー分散液が成分A)を少なくとも20質量%含む、請求項1から11までのいずれか1項記載のポリマー分散液。
【請求項13】
ポリマー分散液が成分D)を2〜40質量%含む、請求項1から12までのいずれか1項記載のポリマー分散液。
【請求項14】
ポリマー分散液が9以上の誘電率を有する化合物を含む、請求項1から13までのいずれか1項記載のポリマー分散液。
【請求項15】
9以上の誘電率を有する化合物が、水、エチレングリコール、ポリエチレングリコール及び/又はアルコールから選択されている、請求項14記載のポリマー分散液。
【請求項16】
ポリマー分散液が成分B)を30質量%まで含む、請求項1から15までのいずれか1項記載のポリマー分散液。
【請求項17】
請求項1から16までのいずれか1項記載のポリマー分散液の製造法において、成分B)の溶液中に、剪断応力の適用下で80〜180℃の範囲内の温度で成分A)を分散させることを特徴とする、ポリマー分散液の製造法。
【請求項18】
潤滑油配合物のための添加剤としての、請求項1から16までのいずれか1項記載のポリマー分散液の使用。

【公開番号】特開2010−7078(P2010−7078A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188097(P2009−188097)
【出願日】平成21年8月14日(2009.8.14)
【分割の表示】特願2004−545759(P2004−545759)の分割
【原出願日】平成15年8月27日(2003.8.27)
【出願人】(399020957)エボニック ローマックス アディティヴス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (38)
【氏名又は名称原語表記】Evonik RohMax Additives GmbH
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee, D−64293 Darmstadt, Germany
【Fターム(参考)】