説明

高い安定性を有する無定形アムロジピンカムシレート、その製造方法及びこれを含む経口投与用組成物

【課題】 溶解度及び安定性に優れた無定形アムロジピンカムシレートの提供
【解決手段】 結晶型アムロジピンカムシレートを有機溶媒に溶解させ、生成した溶液から溶媒を除去することによって無定形アムロジピンカムシレートを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶解度が高く、安定性に優れた無定形アムロジピンカムシレート、その製造方法及びこれを含む経口投与用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アムロジピンは、3−エチル−5−メチル−2−(2−アミノエトキシ−メチル)−4−(2−クロロフェニル)−6−メチル−1、4−ジヒドロ−3、5−ピリジンジカルボキシレートの一般名であって、狭心症、高血圧及びうっ血性心筋症のような心臓血管系疾患の治療に有用な、長期間作用性のカルシウムチャネル遮断剤である。
【0003】
遊離塩基形態のアムロジピンは薬剤学的な用途に有用であるが、安定性が低いため薬剤学的に許容可能な酸との塩の形態で投与されることが好ましい。
【0004】
大韓民国特許公告第1995−6710号には、薬剤学的に許容可能な塩が、優れた溶解度、優れた安定性、非吸湿性及び錠剤剤型への加工性の四つの物理化学的基準を満たさなければならないと記述されている。
【0005】
大韓民国特許公告第1995−7228号には、高い溶解度及び優れた安定性を含んで薬学剤型として適宜な性質を示すベンゼンスルホネート(以下、「アムロジピンベシレート」という)が提示されている。
【0006】
本発明者らは、さらにWO 02/079158 A1号で、結晶性アムロジピンカムシレートが薬剤学的に安定であることを提示した。
【特許文献1】大韓民国特許公告第1995−6710号
【特許文献2】大韓民国特許公告第1995−7228号
【特許文献3】WO 02/079158 A1号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、既存のアムロジピン塩より溶解度及び安定性に優れている改善された形態の無定形アムロジピンカムシレートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施様態に従って、結晶型アムロジピンカムシレートを有機溶媒に溶解させ、生成した溶液から溶媒を除去することによって無定形アムロジピンカムシレートを製造する方法を提供する。
【0009】
本発明の他の実施様態に従って、前記方法で製造された無定形アムロジピンカムシレートを提供する。
【0010】
本発明のさらに他の実施様態に従って、無定形アムロジピンカムシレートを活性成分として含む心臓血管系疾患を治療するための薬剤学的組成物を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明による無定形アムロジピンカムシレートは、溶解度及び安定性に優れているため、心血管系疾患の治療用として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の無定形アムロジピンカムシレートは、実質的に無定形で、熱力学的に安定で、高い水溶解度及び優れた貯蔵安定性を有する。
【0013】
本発明の無定形アムロジピンカムシレートは結晶型アムロジピンカムシレートを有機溶媒に溶解させ、生成した溶液から溶媒を除去して無定形形態のアムロジピンカムシレートを得ることによって製造され得る。
【0014】
本発明に用いるのに適宜な有機溶媒の例としては、アセトンのようなケトン、メタノール及びエタノールのようなアルコール、アセトニトリルのようなニトリル、テトラヒドロフラン及びジオキサンのようなエーテル、酢酸メチル又は酢酸エチルのようなエステル、メチレンクロライド、クロロホルム及びこれらの混合物のような塩素化溶媒及びこれらの混合物が含まれ、好ましくはエタノールとメチレンクロライドとの混合物が用いられる。
【0015】
本発明の方法において、用いられた溶媒は、急速溶媒除去法、噴霧乾燥法、ローラー乾燥法、溶媒沈殿法又は凍結乾燥法によって除去され得、このうち、噴霧乾燥法が熱力学的に安定な無定形アムロジピンカムシレートの生成に好ましい。さらに好ましくは、乾燥媒質を再循環させ得る閉鎖循環式噴霧乾燥系が工程の安全性及び経済的側面から用いられ得る。
【0016】
噴霧乾燥法では、窒素、アルゴン及び二酸化炭素のような不活性ガス及び空気が乾燥ガスとして用いられ得る。乾燥ガスの噴霧乾燥器への流出入温度は、用いられた溶媒の沸点によって左右される。例えば、流入温度は50〜140℃、好ましくは60〜125℃の範囲であってもよく、流出温度は45〜100℃、好ましくは50〜80℃の範囲であってもよい。適当な噴霧乾燥条件を用いることによって、均一な粒子大きさを有する生成物が形成され得る。
【0017】
噴霧及びローラー乾燥法で、溶媒は沸点が本発明生成物の凝結点より低いものを用いることが好ましい。乾燥を大気下で行う場合には、80℃以下の沸点を有する溶媒を用いることが好ましい。乾燥を減圧下で行う場合には、80℃より高い沸点を有する溶媒を用いることが好ましい。
【0018】
溶媒沈殿法では結晶型アムロジピンカムシレートを適宜な有機溶媒に溶解させた後、これに適当量の非極性溶媒を添加することによって本発明の生成物の沈殿を誘導する。溶媒沈殿法に用いるのに好ましい非極性溶媒としては、イソプロピルエーテルのようなエーテル、又はベンゼン及びトルエンのような芳香族炭化水素が含まれる。この非極性溶媒は前記の適宜な有機溶媒と少なくとも部分的に混和しなければならない。溶媒組合せの代表的な例としては、ジクロロメタン/メタノール/イソプロピルエーテルである。沈殿した固形物は、結晶体の形成を避けるために急速ろ過及び乾燥するのが好ましい。また、空気のようなキャリアガスを溶液中でバブルを発生させるのに用い得る。
【0019】
また、溶媒沈殿法は、結晶型アムロジピンカムシレートの形成後に得られる反応混合物に直接適用され得る。
【0020】
一方、凍結乾燥法は用いられる溶媒の氷点によって決定される適宜な温度、例えばジオキサンが溶媒として用いられる場合には、約12℃で行われ得る。
【0021】
本発明に用いられる結晶型アムロジピンカムシレートは、WO 02/079158 A1号に記述された方法によって製造され得る。
【0022】
本発明は、また適宜な有機溶媒に結晶型アムロジピンカムシレート、界面活性剤、水不溶性無機担体及びその他の添加剤を溶解させ、生成した溶液から溶媒を除去することによって製造される無定形アムロジピンカムシレート複合体を提供する。
【0023】
さらに、本発明は活性成分として本発明の無定形アムロジピンカムシレート及び薬剤学的に許容可能な賦形剤、担体又は希釈剤を含む、心臓血管系疾患を治療するための薬剤学的組成物を提供する。
【0024】
本発明の薬剤学的組成物は、通常の方法で剤型化され得る。前記剤型は、錠剤、丸剤、散剤、におい袋(sachet)、エリキシル剤、懸濁剤、エマルジョン、流剤(solution)、シロップ、エアゾール、軟質又は硬質ゼラチンカプセル、滅菌された注射可能な溶液又は滅菌された包装散剤の形態であってもよい。
【0025】
適宜な担体、賦形剤及び希釈液の例としては澱粉、スクロース、ラクトース、デキストロース、ゼラチン、ソルビトール、マンニトール、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレート及びミネラルオイルがある。前記剤型は、さらに充填剤、接合防止剤、崩壊剤、流動化剤、湿潤剤、甘味剤、エマルジョン化剤、保存剤をさらに含み得る。本発明の組成物は、当該分野で公知である方法を用いて哺乳類へ投与された後、活性成分が迅速、遅速又は遅延放出を提供するために剤形化することができる。
【0026】
本発明の組成物は経口、経皮、皮下、静脈内及び筋肉内投与など多様な経路を通じて投与され得る。成人の場合、本発明の無定形アムロジピンカムシレートに対する一日投与量は1.0〜10mg/kg体重であり、好ましくは5.0〜8.0mg/kg体重であり、このような投与量は一回又は数回に分けて投与され得る。
【0027】
しかし、活性成分の投与量は、治療条件、投与経路、年齢、性別及び体重、症状の深刻度などの多様な要因によって変わるので、前記投与量が本発明の範囲を制限するものではない。
【0028】
本発明は、また哺乳類に有効量の無定形アムロジピンカムシレートを投与することを含む、心臓血管系疾患の予防又は治療方法を提供する。
【0029】
以下、本発明を下記実施例によってより詳しく説明する。但し、下記実施例は本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲はこれらに限定されない。
【実施例】
【0030】
[製造例1]:結晶型アムロジピンカムシレートの製造
アムロジピン(韓美薬品)12.25g(0.03mol)をメタノール50mlに溶解させ、10℃に冷却した後、これにメタノール19.5ml中に(1S)−(+)−10−カンファースルホン酸(アルドリッチ)7.8g(0.336mol)を含む溶液を徐々に添加した。反応混合物を室温で2時間攪拌した後、生成した固形をろ過し、メタノール25mlで洗浄し乾燥して白色結晶の標題化合物16.7g(収率86.8%)を得た。
【0031】
無定形アムロジピンカムシレートの製造
[実施例1]
製造例1で得た結晶型アムロジピンカムシレート7.841mgをエタノール/メチレンクロライド(20/80(w/w))混合溶液に溶解して最大限約100mg/mLの濃度までにした。この溶液を下記の条件下で噴霧乾燥し、60℃で1時間乾燥した後、シリカゲル乾燥剤を入れた容器に保管して無定形アムロジピンカムシレートを製造した。
【0032】
〈噴霧乾燥条件〉
1)噴霧乾燥器:Buchi Mini Spray Dryer B−191
2)温度:流入口温度80℃、流出口温度52℃
3)気流(Air Flow):500NI/h
4)ポンプ(%):12%(時間当たり約120mL噴霧)
無定形アムロジピンカムシレート複合体の製造
[実施例2]
無水珪酸1.159mgを結晶型アムロジピンカムシレート7.841mgと共に用いたことを除いては、前記実施例1の方法と同様に行って無定形アムロジピンカムシレート複合体を製造した。
【0033】
[実施例3]
ツイーン80 1.159mgを結晶型アムロジピンカムシレート7.841mgと共に用いたことを除いては、前記実施例1の方法と同様に行って無定形アムロジピンカムシレート複合体を製造した。
【0034】
[実施例4]
ツイーン80 1.159mg及び無水珪酸1.000mgを結晶型アムロジピンカムシレート7.841mgと共に用いたことを除いては、前記実施例1の方法と同様に行って無定形アムロジピンカムシレート複合体を製造した。
【0035】
[実施例5]
ヒドロキシプロピルメチルセルロース2.159mgを結晶型アムロジピンカムシレート7.841mgと共に用いたことを除いては、前記実施例1の方法と同様に行って無定形アムロジピンカムシレート複合体を製造した。
【0036】
[実施例6]
ヒドロキシプロピルメチルセルロース2.159mg及び無水珪酸1.000mgを結晶型アムロジピンカムシレート7.841mgと共に用いたことを除いては、前記実施例1の方法と同様に行って無定形アムロジピンカムシレート複合体を製造した。
【0037】
[実施例7]
ツイーン80 1.159mg、ヒドロキシプロピルメチルセルロース1.000mg及び無水珪酸1.000mgを結晶型アムロジピンカムシレート7.841mgと共に用いたことを除いては、前記実施例1の方法と同様に行って無定形アムロジピンカムシレート複合体を製造した。
【0038】
[実施例8]
微結晶セルロース2.159mgを結晶型アムロジピンカムシレート7.841mgと共に用いたことを除いては、前記実施例1の方法と同様に行って無定形アムロジピンカムシレート複合体を製造した。
【0039】
[実施例9]
微結晶セルロース2.159mg、ツイーン80 1.000mg及び無水珪酸1.000mgを結晶型アムロジピンカムシレート7.841mgと共に用いたことを除いては、前記実施例1の方法と同様に行って無定形アムロジピンカムシレート複合体を製造した。
【0040】
無定形アムロジピンカムシレートを含む錠剤の製造
[実施例10]
実施例1で得た乾燥無定形アムロジピンカムシレート7.841g、微結晶セルロース119.159mg、カルシウムホスフェート63mg、ナトリウム澱粉グリコレート6mg及びマグネシウムステアレート2mgを混合した後、生成した混合物を通常の錠剤製造機を用いて打錠した。
【0041】
[実施例11]
ツイーン80 40mgをさらに用いたことを除いては、前記実施例10の方法を同様に行った。
【試験例1】
【0042】
:X線回折分析及び示差走査熱量計(DSC)分析
製造例1で得られた結晶型アムロジピンカムシレート及び実施例1で製造された本発明の無定形アムロジピンカムシレートをX線回折分析器及び示差走査熱量計(DSC)で分析した。その結果を図1〜4に示す。
【0043】
図1及び2は、各々結晶型アムロジピンカムシレート塩及び本発明の無定形アムロジピンカムシレート塩のX線回折分析結果であって、これにより、本発明のアムロジピンカムシレート塩が無定形であることが分かる。
【0044】
一般的に、無定形物質は不安定であるため低い温度で吸熱ピークを示すが、図3及び4から分かるように、本発明の無定形アムロジピンカムシレートの吸熱ピークは結晶型アムロジピンカムシレートのピークと類似している。即ち、本発明の無定形アムロジピンカムシレートは十分な熱安定性を有する。
【試験例2】
【0045】
:溶解度試験
アムロジピン塩はpH1〜7.5、特に血液のpH値である7.4で1mg/ml以上の溶解度を有するものが好ましい。従って、実施例1で製造された本発明の無定形アムロジピンカムシレートの溶解度及び飽和pHを測定して、既存の結晶型アムロジピンベシレート(大韓民国特許公告第95−7228号)及び製造例1で得られた結晶型アムロジピンカムシレート(WO 02/079158 A1)と比較した。この実験は、大韓薬典(韓国保健福祉部、通則医薬品各条第1部29項、第7改正)に記述された方法によって各々の化合物を蒸留水に飽和するまで溶解した後、飽和溶液を液体クロマトグラフィーで分析してアムロジピン量を基準に溶解量を測定することによって行い、その結果を下記表1に示す。
【表1】

【0046】
表1に示したように、本発明の無定形アムロジピンカムシレートは、結晶型アムロジピンベシレート及び結晶型アムロジピンカムシレートに比べて同一な飽和pHで3〜5倍の高い溶解度を有する。
【試験例3】
【0047】
:安定性試験
錠剤及びカプセル剤は固体状態で安定しなければならない。従って、実施例10で得られた錠剤の経時安定性を測定し、無定形アムロジピンベシレート錠剤と比較した。具体的に、各々の錠剤を加速老化条件(40±2℃、湿度75±5%)で保管しながら、2ヶ月後、及び4ヶ月後に各々の活性物質の初期値に対する残渣率を液体クロマトグラフィーで測定し、その結果を下記表2に示す。
【表2】

【0048】
表2に示したように、無定形アムロジピンベシレートは2ヶ月ぶりに約10%程度の含量が低くなっているが、本発明の無定形アムロジピンカムシレートは安定であった。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】結晶型アムロジピンカムシレート塩のX線回折分析結果を示す。
【図2】本発明の無定形アムロジピンカムシレート塩のX線回折分析結果を示す。
【図3】結晶型アムロジピンカムシレート塩の示差走査熱量計(DSC)分析結果を示す。
【図4】本発明の無定形アムロジピンカムシレート塩の示差走査熱量計(DSC)分析結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶型アムロジピンカムシレートを有機溶媒に溶解させ、生成した溶液から溶媒を除去することによって無定形アムロジピンカムシレートを製造する方法。
【請求項2】
前記有機溶媒がケトン、アルコール、ニトリル、エーテル、エステル、塩素化溶媒及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記有機溶媒がエタノールとメチレンクロライドとの混合物であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記溶媒が噴霧乾燥法、ローラー乾燥法、溶媒沈殿法、凍結乾燥法又は急速溶媒除揮発によって除去されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記溶媒がアルゴン、窒素、二酸化炭素又は空気を乾燥ガスとして用いた噴霧乾燥法によって除去されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法によって製造された無定形アムロジピンカムシレート。
【請求項7】
請求項6に記載の無定形アムロジピンカムシレートを活性成分として含む心臓血管系疾患を治療するための薬剤学的組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−528349(P2007−528349A)
【公表日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502689(P2006−502689)
【出願日】平成16年1月27日(2004.1.27)
【国際出願番号】PCT/KR2004/000136
【国際公開番号】WO2004/067512
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(599139534)ハンミ ファーム. シーオー., エルティーディー. (56)
【Fターム(参考)】