説明

高い抗ウイルス効果および抗菌効果を有している組成物

迅速な抗ウイルス効果および抗菌効果と持続的な抗ウイルス効果を有している抗菌性組成物が開示される。抗菌性組成物には、(a)消毒用アルコール、(b)有機酸、および(c)水が含まれており、この組成物は約5以下のpHを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年12月9日に提出された米国仮特許出願番号60/634,464、および2004年12月9日に提出された米国仮特許出願番号60/634,483の利点を主張する。
【0002】
本発明は、迅速な抗ウイルス効果と持続的な抗ウイルス効果、および迅速な広域抗菌効果を有している抗菌性組成物に関する。さらに具体的には、本発明は、(a)消毒用アルコールと(b)有機酸を含む抗菌性組成物に関する。(a)と(b)の組み合わせによって、グラム陰性最近とグラム陽性細菌の相乗的減少が提供され得、そして/または、有機酸のlog P(水−オクタノール分配係数)に基づいて、ウイルス(例えば、ライノウイルスおよびロタウイルス)を相乗的に不活化させるかまたは崩壊させることができる。この組成物によって、1分以内に、非エンベロープウイルスの数、ならびに、グラム陰性およびグラム陽性細菌の数の実質的な減少(例えば、99%を上回る)が提供される。
【背景技術】
【0003】
ヒトの健康は日常的に遭遇する種々の微生物により影響を受ける。具体的には、環境の中に存在している種々の微生物との接触によって、哺乳動物において、重篤となる可能性のある疾病につながり得る。例えば、微生物の混入によって種々の疾病につながり得る。これには、食中毒、連鎖球菌感染、炭疽病(皮膚)、足白癬、ヘルペス、結膜炎(「伝染性結膜炎」)、コクサッキーウイルス感染(手足口病)、クループ、ジフテリア(皮膚)、エボラ出血熱、および膿痂疹が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0004】
体の一部の洗浄(例えば、手洗い)や硬い表面(例えば、カウンタートップやシンク)の洗浄によって微生物(病原体を含む)の数を減らすることができることが知られている。したがって、微生物数を減らすために皮膚や、他の生物表面および無生物表面を洗浄することは、これらの表面からそのような病原体を除去し、それによって感染のリスクを最少にすることにおける第1の防御方法である。
【0005】
ウイルスは、最も関心が高い病原体のカテゴリーである。ウイルス感染は、ヒトの病的状態の中でも最大の原因であり、先進国においてはヒトの疾病の全ての症例のうちの60%以上がウイルス感染によって生じていると推定される。加えて、ウイルスは自然界に存在している実質的に全ての生物に感染し、全ての哺乳動物(ヒト、ペット、家畜、および動物園の動物の種を含む)の間で高いウイルス感染率が生じる。
【0006】
ウイルスは多種多様の構造および生活環を示す。ウイルスの科、それらの構造、生活環、およびウイルス感染の形式についての詳細な記述は、非特許文献1において議論されている。
【0007】
簡単に記載しておくと、ウイルス粒子は固有の偏性寄生生物であり、細胞間で遺伝物質を移動させ、それらの増殖を確実にするために十分な情報をコードするように導かされる。最も基本的な形態においては、ウイルスは、単純なタンパク質の殻に完全に包まれた小さな核酸セグメントから構成されている。ウイルスの間の最大の特徴は、エンベロープを持つウイルスであるか、非エンベロープウイルスであるかである。すなわち、それぞれ、脂質二重膜を含むもの、または含まないものである。
【0008】
ウイルスは、生存している細胞の中でのみ増殖することができる。ウイルスが遭遇する主要な障害は、細胞への侵入口の獲得である。細胞は、ウイルスの大きさと同程度の厚みの細胞膜によって保護されている。細胞に侵入するためには、ウイルスは最初に、細胞表面に付着しなければならない。特定の細胞のタイプに対するウイルスの特異性の多くは、その特定の細胞の表面に付着するその能力にかかっている。持続的な接触が、ウイルスが宿主細胞に感染するためには重要であり、ウイルスと細胞表面を相互作用させる能力は、ウイルスと宿主細胞の両方の特性である。ウイルスと宿主細胞膜の融合により、完全なウイルス粒子となることができるか、または特定の場合には、その感染性核酸だけを細胞に進入させることができようになる。したがって、ウイルス感染を制御するためには、皮膚と接触するウイルスを迅速に死滅させること、および理想的には、皮膚または硬い表面上に、ウイルス感染を制御するための持続性の抗ウイルス作用を提供することが重要である。
【0009】
例えば、ライノウイルス、インフルエンザウイルス、およびアデノウイルスは、呼吸器の感染を引き起こすことが知られている。ライノウイルスはピコルナウイルス科のメンバーであり、これは、外側のエンベロープがない「裸のウイルス」の科である。ヒトライノウイルスは、鼻咽頭領域に対するそれらの特異的な適応能力の理由からそのように呼ばれており、そして成人および小児の感冒についての最も重要な病原因子である。公式には、102種類のライノウイルス血清型が存在している。ヒトの呼吸器から単離されたピコルナウイルスのほとんどは酸に不安定であり、この不安定性はライノウイルスを定義する特徴となっている。
【0010】
ライノウイルス感染は、ウイルスに汚染されている呼吸器の分泌物との直接の接触によって、ヒトからヒトへと拡がる。通常、この接触は、空気中に浮遊しているウイルス粒子の吸入によるよりも、ウイルスに汚染されている表面との物理的な接触の形態である。
【0011】
ライノウイルスは、最初の汚染後数時間の間環境表面上で生存することができ、感染は指と指との接触によって、および、新しく汚染された指が眼をこするため、または鼻粘膜に触れるために使用された場合には、汚染された環境表面と指との接触によって、簡単に伝染する。したがって、皮膚および環境表面のウイルス汚染は、一般的な集団への感染の伝染のリスクを小さくするためには最少にされなくてはならない。
【0012】
いくつかの胃腸感染症はまた、ウイルス(特に、ロタウイルス)によっても引き起こされる。例えば、ノーウォークウイルスは、吐き気、嘔吐(しばしば下痢を伴う)、および胃痙攣を引き起こす。この感染は、通常、直接の接触によってヒトからヒトへと拡がる。急性A型肝炎ウイルス感染も同様に、手から手、手から口、またはエアロゾル液滴による移動によって感染しているヒトと免疫性のない個体との間での直接の接触によって、あるいは、感染していない個体がA型肝炎ウイルスに汚染されている固体物質と接触した場合には間接的な接触によって拡がり得る。多数の他のウイルス感染も同様に拡がる。このようなウイルス感染の伝染のリスクは、手および他の環境表面のウイルスを不活化させること、または手および他の環境表面からウイルスを除去することによって有意に下げることができる。
【0013】
一般的な家庭用フェノール/アルコール消毒が、汚染されている環境表面の消毒に有効であるが、これには持続的な殺ウイルス作用はない。手洗いは汚染されている指の消毒に非常に有効であるが、ここでも再び、持続的な作用がないことが問題である。これらの欠点は、ウイルス(例えば、ライノウイルスおよびロタウイルス)に対して持続的な作用を有している改良された殺ウイルス性組成物の必要性を示している。
【0014】
抗菌性の個人向けのケア用組成物は当該分野で公知である。具体的には、抗菌性洗浄用組成物(これは通常、皮膚を洗浄するため、および皮膚(特に、使用者の手、腕、および顔)上に存在している細菌を壊滅させるために使用される)が、良く知られている市販されている製品である。
【0015】
抗菌性組成物は、例えば、医療業界、飲食業界、食肉加工業界において、および民間セクターにおいて個人消費者による使用されている。抗菌性組成物の広範な使用は、皮膚上の細菌数を制御することに対する重要な消費者の認識を示している。抗菌性組成物の実例は、迅速であり、そして毒性および皮膚への刺激を伴う有害な副作用のない、細菌数の実質的な、広範囲の減少を提供するためのものである。このような抗菌性組成物は、特許文献1および特許文献2(それぞれが引用により本明細書中に組み入れられる)に開示されている。
【0016】
抗菌性の個人向けのケア用組成物の1つのクラスは手の除菌用ゲルである。このクラスの組成物は、手や指の消毒のために、医療関係者によって主に使用されている。手の除菌用ゲルは手や指に塗り付けられ、そして塗り込まれ、そして組成物は皮膚から蒸発させられる。
【0017】
手の除菌用ゲルには、高濃度(%)の、エタノールのようなアルコールが含まれる。ゲル中に存在するアルコールの高い濃度(%)では、アルコール自体が消毒薬として作用する。加えて、アルコールはすぐに蒸発するため、除菌用ゲルで処置した皮膚を拭き取ったり、またはリンスしたりする必要はない。高濃度(%)のアルコール(すなわち、組成物の約40重量%以上)を含む手の除菌用ゲルによっては、持続的な細菌の死滅は提供されない。
【0018】
抗菌性の洗浄用組成物には、通常、活性のある抗菌剤、界面活性剤、および種々の他の成分(例えば、色素、香料、pH調整剤、増粘剤、皮膚コンディショナーなどが、水性および/またはアルコール性の担体の中に含まれている。いくつかの異なるクラスの抗菌剤が、抗菌性の洗浄用組成物に使用されている。抗菌剤の例としては、ビスグアニジン(例えば、クロロヘキシジンジグルコネート)、ジフェニル化合物、ベンジルアルコール、トリハロカルバニリド、四級アンモニウム化合物、エトキシ化フェノール、およびフェノール性化合物(例えば、PCMX(すなわち、p−クロロ−m−キシレノール)およびトリクロサン(すなわち、2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテル)のようなハロ置換フェノール性化合物)が挙げられる。このような抗菌剤をベースとする抗菌性組成物は、制御される微生物と特定の抗菌性組成物に応じて低い抗菌作用から高い抗菌作用までの範囲の、広範な抗菌作用を示す。ほとんどの市販されている抗菌性組成物は、一般的には、低い抗菌作用から中程度の抗菌作用を提供するが、抗ウイルス作用については報告されていない。
【0019】
抗菌作用は、抗菌性組成物によってもたらされる微生物数のlog減少として、あるいは、減少率(%)として評価される。1〜3 logの減少が好ましい。3〜5のlog減少が最も好ましいが、特定の接触時間(通常は、15秒から5分間の範囲)については1未満のlog減少が少なくとも好ましい。したがって、非常に好ましい抗菌性組成物は、短時間で広範な微生物に対して3〜5 logの減少を示す。
【0020】
ウイルスの制御には、細菌の制御よりもさらに難しい問題がある。細菌数を十分に減少させることによって、細菌感染のリスクは許容されるレベルにまで下げられる。したがって、迅速な抗菌剤による死滅が所望される。しかし、ウイルスに関しては、迅速な死滅が望まれるだけではなく、持続的な抗ウイルス作用もまた必要とされる。この相違は、ウイルス数の単なる減少だけでは感染を減らすには不十分であることが理由である。理論的には1つのウイルスによって感染が引き起こされ得る。したがって、実質的に完璧な、そして持続性の抗ウイルス作用が必要とされるか、または、有効な抗ウイルス性の洗浄用組成物が少なくとも所望される。
【0021】
特許文献3には、C2−3アルコール、遊離の脂肪酸、および亜鉛ピリチオンが含まれている局所用消毒剤が開示されている。
【0022】
特許文献4には、クロロヘキシジンとアルコールが含まれている局所用抗菌性洗浄剤が開示されている。この組成物には、約50重量%から60重量%の変性アルコールと、約0.65重量%から約0.85重量%のクロロヘキシジンが含まれている。この組成物は皮膚に塗り付けられ、ゴシゴシ擦られ、そして皮膚から濯がれる。
【0023】
特許文献5には、抗菌剤、40重量%から90重量%のアルコール、およびポリマー、ならびに、3重量%を越えない合計重量の増粘剤が含まれている、手のゲルタイプの消毒剤が開示されている。このゲルは手に塗り込まれて蒸発させられ、汚染されていない手を提供する。開示されている組成物によっては、多くの場合は、当座の消毒は提供されず、そして持続的な抗菌作用は提供されない。
【0024】
一般的には、手の消毒用ゲルには、通常、以下が含まれる:(a)少なくとも60重量%のエタノールまたは低級アルコール(例えば、エタノールとイソプロパノール)の混合物、(b)水、(c)ゲル化ポリマー(例えば、架橋されたポリアクリレート物質)、および(d)他の成分(例えば、皮膚コンディショナー、香料)など。手の消毒用ゲルは、手を効率よく消毒するために、石鹸や水で洗浄することなく、または石鹸や水での洗浄の後に、手の表面に手の消毒用ゲルを塗り込むことによって、消費者に使用される。現在市販されている手の消毒用ゲルは、消毒および蒸発のための高濃度のアルコールに頼っており、したがって、欠点がある。具体的には、エタノールの揮発性が原因で、主要な抗菌剤は使用後に皮膚上に留まることはできず、したがって、持続的な抗菌作用を提供できないことである。
【0025】
60%未満のアルコール濃度では、エタノールは消毒薬とは見なされない。したがって、60%未満しかアルコールを含まない組成物においては、抗菌作用を提供するためにさらに別の抗菌性化合物が存在させられる。しかし、先の開示では、そのような抗菌性組成物中の組成物成分によって微生物の制御が提供されるという論点には触れられていない。したがって、アルコール濃度が低い処方物について、迅速な抗菌作用と持続的な抗菌作用の利点の両方を提供する抗菌剤の選択は難しい。
【0026】
特許文献1および特許文献2には、フェノール性抗菌剤が含まれている、非常に有効な抗菌性組成物が開示されている。これらの特許には、皮膚および手の表面上の細菌を制御するという課題を解決する組成物が開示されているが、ウイルスの制御に関しては何も記載されていない。
【0027】
特許文献6、特許文献7および特許文献8には、約3から約6のpHを有している抗菌性組成物が開示されている。この組成物には、抗菌剤、陰イオン性界面活性剤、およびプロトン供与体が含まれている。
【0028】
病原性ウイルス(ライノウイルス、ロタウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、およびノーウォークウイルスを含む)を不活化させるかまたは崩壊させるとして開示されている抗ウイルス性組成物もまた知られている。例えば、特許文献9には、ウイルス(ライノウイルスを含む)を不活化させるかまたは崩壊させるためにグルタル酸を使用することが開示されている。特許文献10には、ウイルスを制御するための、石鹸またはローションとしての処方のための、有機酸と陰イオン性界面活性剤を含む組成物が開示されている。特許文献11には、抗ウイルス特性と抗菌特性を得るための、プロトン供与剤と界面活性剤(抗菌性界面活性剤を含む)の使用が開示されている。
【0029】
特許文献12には、リンゴ酸、クエン酸、およびC1−6アルコールが含まれている殺ウイルス性ハンドローションが開示されている。特許文献13には、安息香酸アナログ(例えば、サリチル酸)と、ウイルス(ライノウイルスを含む)に対して有効であるとして選択された金属塩の組み合わせが開示されている。特許文献14には、抗菌特性と抗ウイルス特性を提供するための、既知の抗菌剤の2−ピロリドン−5−カルボン酸との、pH2から5.5での組み合わせが開示されている。
【0030】
個人向けの洗浄用組成物中の有機酸もまた開示されている。例えば、特許文献15および特許文献16には、抗菌性の洗浄用組成物のための界面活性剤基剤の中での、有機酸または塩、ヒドロトロープ(hydrotrope)、トリクロサン、および水素系溶媒(hydric solvent)の使用が開示されている。これらの刊行物には抗ウイルス特性に関しては何も記載されていない。
【0031】
非特許文献2には、残留殺ウイルス作用を有しているハンドローションの使用を通じた、ライノウイルス感冒の手から手への伝染の遮断が開示されている。2%のグルタル酸を含むハンドローションは、特定のタイプのライノウイルスを不活化させることにおいて、プラセボよりも有効であった。しかし、この刊行物には、グルタル酸を含むローションは広範なライノウイルスの血清型に対しては効果がなかったことが開示されている。
【0032】
感冒に感染しているヒトが使用するように設計された、クエン酸、リンゴ酸、およびラウリル硫酸ナトリウムを含む殺ウイルス性ティッシュが知られている。しかし、非特許文献3によっては、ウイルスを死滅させる物質で処理されたティッシュペーパーまたは未処理のティッシュペーパーのいずれの使用によっても、ウイルスの手から手への伝染を遮断できたことが報告された。したがって、ライノウイルス感冒の拡がりを防ぐことにおける明確な利点は、殺ウイルス性のティッシュに取り込ませた組成物に寄与しているのではない。
【0033】
細菌およびウイルスの両方に対して有効な、効果的な抗菌性組成物は、細菌とウイルスの間での根本的な差が原因で得ることが難しい。しかし、多数の抗菌性洗浄剤製品が現在存在しており、これらは様々な製品の形態(例えば、脱臭剤入り石鹸、硬い表面の洗浄剤、および外科的な消毒薬)である。例えば、抗菌性の製品には、通常、抗菌剤(例えば、フェノール性化合物)および/または強い界面活性剤(皮膚組織を乾燥させ、刺激を与える可能性がある)が配合されている。理想的には、個人向けの洗浄用製品は穏やかに皮膚を洗浄し、刺激が少ないかまたは刺激がなく、そして頻繁に使用した後も過度の乾燥を皮膚に残さない。
【特許文献1】米国特許第6,107,261号明細書
【特許文献2】米国特許第6,136,771号明細書
【特許文献3】米国特許第6,110,908号明細書
【特許文献4】米国特許第5,776,430号明細書
【特許文献5】欧州特許出願番号0 604 848明細書
【特許文献6】米国特許第5,968,539号明細書
【特許文献7】米国特許第6,106,851号明細書
【特許文献8】米国特許第6,113,933号明細書
【特許文献9】米国特許第4,767,788号明細書
【特許文献10】米国特許第4,975,217号明細書
【特許文献11】米国特許公開番号2002/0098159
【特許文献12】米国特許第6,034,133号明細書
【特許文献13】米国特許第6,294,186号明細書
【特許文献14】米国特許第6,436,885号明細書
【特許文献15】国際公開公報WO97/46218号パンフレット
【特許文献16】国際公開公報WO96/06152号パンフレット
【非特許文献1】Fundamental Virology, 第4版, Knipe & Howley編, Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, PA, 2001
【非特許文献2】Hayden et al., Antimicrobial Agents and Chemotherapy, 26:928−929(1984)
【非特許文献3】Hayden et al., Journal of Infectious Diseases, 152:493−497(1985)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
したがって、広範な微生物(ウイルス、ならびにグラム陽性細菌およびグラム陰性細菌を含む)に対して、短時間で非常に有効である抗菌性組成物が必要とされている。ここでは、この組成物によって、持続性の広範な抗ウイルス作用を提供することができ、そして、この組成物は皮膚に対して刺激が少ない。改良された低刺激性と、高レベルのウイルスおよび細菌の減少を示す個人向けのケア用製品が、本発明の抗菌性組成物によって提供される。
【課題を解決するための手段】
【0035】
本発明は、迅速な抗ウイルス効果と持続的な抗ウイルス効果、およびグラム陽性細菌とグラム陰性細菌の迅速であり実質的な減少を約1分未満に提供する抗菌性組成物に関する。さらに具体的には、本発明は、(a)消毒用アルコール、(b)有機酸、および(c)水を含む抗菌性組成物に関する。ここでは、この組成物は、約5以上のpHを有している。本発明の組成物には、意図的に添加される洗浄剤である界面活性剤(例えば、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、および両性界面活性剤)、および活性のある抗菌剤(例えば、フェノール性抗菌剤および四級アンモニウム抗菌剤)は含まれない。
【0036】
有機酸のlog Pとは無関係に、本発明の抗菌性組成物によって、非エンベロープウイルスの迅速な制御と持続的な制御、および広範な細菌の迅速な死滅が提供される。しかし、1つの実施形態においては、有機酸は1未満の、log Pとして表される水−オクタノール分配係数を有しており、この組成物は、非エンベロープウイルスに対して相乗作用を示す。別の実施形態においては、有機酸は1以上のlog Pを有しており、この組成物は、細菌に対して相乗作用を示す。なお別の実施形態においては、有機酸には、1未満のlog Pを有している第1の有機酸と、1以上のlog Pを有している有機酸が含まれており、この組成物は非エンベロープウイルスと細菌の両方に対して相乗作用を示す。
【0037】
したがって、本発明の1つの態様は、ヒトの健康に対して有害であるウイルス(特に、非エンベロープウイルス、例えば、酸に不安定なウイルス、および特に、ライノウイルス、他の酸に不安定なピコルナウイルス、およびロタウイルス)を一斉に不活化させるかまたは崩壊させながら、広範な細菌(グラム陽性細菌およびグラム陰性細菌(例えば、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、サルモネラ・コレラスイス(Salmonella choleraesuis)、大腸菌(E.coli)、および肺炎桿菌(K.pneumoniae))を含む)を死滅させることに非常に有効である抗菌性組成物を提供することである。
【0038】
本発明の別の態様は、以下を含む液体の抗菌性組成物を提供することである:
(a)約25重量%から約75重量%の消毒用アルコール(例えば、C1−6アルコール);
(b)ウイルスを死滅させるために有効な量の1種類以上の有機酸;および
(c)水。
ここでは、この組成物は約5以下のpHを有している。
【0039】
本発明のなお別の態様は、実質的であり、広範な、そして持続性のウイルスの制御と、実質的であり、そして広範な細菌の制御を示す、抗菌性組成物を提供することである。
【0040】
本発明の別の態様は、以下を含む、抗菌作用と抗ウイルス作用を有している抗菌性組成物を提供することである:(a)消毒用アルコール、および(b)皮膚に直接使用することができ、皮膚に浸透しない有機酸(例えば、疎水性モノカルボン酸、ポリカルボン酸、複数のカルボン酸、リン酸、スルホン酸、および/またはサルフェート部分を有しているポリマー酸、またはそれらの混合物)、および(c)水。ここでは、この組成物は約5以下のpHを有している。このような有機酸は通常は、1未満のlog Pを有しており、この組成物は、広範な細菌に対して有効であり、非エンベロープウイルスに対して相乗作用を示す。
【0041】
本発明のなお別の態様は、以下を含む、抗菌作用と抗ウイルス作用を有している抗菌性組成物を提供することである:(a)消毒用アルコール、および(b)モノカルボン酸、ポリカルボン酸、複数のカルボン酸、リン酸、スルホン酸、および/またはサルフェート部分を有しているポリマー酸からなる群より選択される有機酸、あるいはそれらの混合物、ならびに(c)水。ここでは、この組成物は約5以下のpHを有している。これらの組成物は、非エンベロープウイルスの効果的な持続性の制御を提供し、そして、グラム陽性細菌とグラム陰性細菌に対して相乗作用を示す。
【0042】
本発明の別の態様は、非エンベロープウイルス(例えば、酸に不安定なウイルス(ライノウイルスの複数の血清型(例えば、ライノウイルス1a、ライノウイルス2、ライノウイルス14、およびライノウイルス4)、ならびに、ロタウイルスの複数の血清型(例えば、ロタウイルスWa)を含む)に対して、30秒間の接触の後に少なくとも4のlog減少を示す抗菌性組成物を提供することである。この抗菌性組成物によってはまた、30秒間の接触時間の使用後に、少なくとも約5時間で、非エンベロープウイルスに対して約3のlog減少、および約6時間で少なくとも2のlog減少が提供される。いくつかの実施形態においては、抗菌性組成物によって、約8時間までに、非エンベロープウイルスに対して2のlog減少が提供される。
【0043】
本発明のなお別の態様は、グラム陽性細菌(すなわち、黄色ブドウ球菌(S.aureus))に対して、30秒間の接触の後に少なくとも2のlog減少を示す抗菌性組成物を提供することである。
【0044】
本発明のなお別の態様は、グラム陰性細菌(すなわち、大腸菌(E.coli))に対して、30秒間の接触の後に少なくとも2.5のlog減少を示す抗菌性組成物を提供することである。
【0045】
本発明の別の態様は、本発明の抗菌性組成物をベースとする消費者製品(例えば、皮膚洗浄剤、ボディーミスト、外科的研磨剤(surgical scrub)、創部のケア用の薬、手の消毒用ゲル、消毒剤、洗口液(mouth wash)、ペット用シャンプー、硬い表面の洗浄剤、ローション、軟膏、クリームなど)を提供することである。本発明の組成物は、水で洗い流せる製品である場合も、また、つけたままにする製品である場合もある。組成物は、皮膚の上に残して、組成物の揮発性成分が蒸発するようにできることが好ましい。この組成物は、美観上満足のいくものであり、皮膚に対して刺激性がない。
【0046】
本発明のさらなる態様は、組織(皮膚など)を本発明の組成物と、所望されるレベルにまで細菌およびウイルスの数的レベルを減少させるために十分な時間(例えば、約15秒間から5分間、またはそれ以上)の間接触させることによって、動物組織(ヒトの組織を含む)上の広範なウイルス、およびグラム陽性細菌とグラム陰性細菌の数を迅速に制御する方法を提供することである。本発明のさらなる態様は、動物組織上のウイルスの持続的な制御を提供する組成物を提供することである。
【0047】
本発明のなお別の態様は、ライノウイルス、ピコルナウイルス、アデノウイルス、ロタウイルス、ヘルペスウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、コロナウイルス、エンテロウイルス、および他の非エンベロープウイルスによって引き起こされる、ウイルスによって媒介される疾患および症状を処置または予防する方法を提供することである。
【0048】
本発明のなお別の態様は、生物表面および無生物表面から生物表面(特に、ヒトの皮膚)へのウイルスの伝染を遮断する組成物およびその方法を提供することである。具体的には、ヒトの皮膚上に存在しているウイルスを効率よく制御し、そして皮膚への組成物の使用後、約4時間またはそれ以上、および約8時間までの期間にわたって、ウイルスの制御を続けることにより、非エンベロープウイルス(特に、ライノウイルスおよびロタウイルス)の伝染を制御するための方法と組成物が提供される。
【0049】
本発明のこれらおよび他の新規の態様および利点は、好ましい実施形態についての以下の限定ではない詳細な説明に示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
活性のある抗菌剤が配合されている個人向けのケア用製品は、何年も前から知られている。抗菌性の個人向けケア用製品が導入されて以来、このような製品によって抗菌特性が提供されるという多くの特許請求が行われてきた。最も有効であるためには、抗菌性組成物によって、可能な限り短い接触時間で、広範な生物に対する高いlog減少が提供されるべきである。理想的には、組成物はまた、ウイルスをも不活化させるべきである。
【0051】
現在の処方の場合は、ほとんどの市販されている抗菌性の液体石鹸組成物によっては、低い最低限の時間殺菌(time kill)効力(すなわち、細菌の死滅速度)しか提供されない。これらの組成物は、ウイルスを効率よく制御することはできない。
【0052】
抗菌性の手の除菌用組成物には、通常、界面活性剤は含まれておらず、細菌の制御は高濃度のアルコールに頼っている。アルコールは蒸発し、したがって、持続的な細菌の制御は提供することはできない。アルコールはまた、皮膚を乾燥させたり、刺激する可能性もある。
【0053】
ほとんどの現在の製品は、ヒトの健康に対して最も懸念が抱かれているグラム陰性細菌(例えば、大腸菌(E.coli))に対する効率が特に悪い。しかし、細菌の迅速な死滅(すなわち、時間殺菌)によって測定した場合に、予想以上の非常に広範な抗菌効果を有している組成物が存在しており、これは、持続性殺菌(persistent kill)とは区別される。これらの製品にもまた、十分な抗ウイルス作用はない。
【0054】
本発明の抗菌性組成物によっては、優れた広範な抗ウイルス効果と抗菌効果が提供され、そして、高い割合のアルコール(すなわち、40%重量またはそれ以上)が配合されている以前の組成物と比較すると、抗ウイルス効果が有意に改善される。この改善された効果の根拠は、(a)消毒用アルコールと有機酸、および、特に、約1未満のlog Pを有している有機酸の組み合わせによって実質的に抗ウイルス効果が改善されることの発見、ならびに、(b)表面に対する組成物の適合後の表面のpHである。
【0055】
消毒用アルコールと、1未満のlog Pを有している有機酸は、非エンベロープウイルスを制御するように相乗作用する。消毒用アルコールおよび1以上のlog Pを有している有機酸は、抗菌効果を実質的に改善するように相乗作用する。消毒用アルコールを伴う、1未満のlog Pを有している第1の有機酸と、1以上のlog Pを有している第2の有機酸の組み合わせによって、非エンベロープウイルスと、グラム陽性細菌およびグラム陰性細菌の制御において相乗的な改善が提供される。
【0056】
抗菌剤(例えば、トリクロサン)を含む組成物は、グラム陽性細菌およびグラム陰性細菌に対して迅速であり効果的な抗菌作用を示したが、ウイルスの制御は不適切であった。皮膚および無生物表面上のウイルスの制御は、多数の疾患の伝染を制御することにおいて非常に重要である。
【0057】
例えば、ライノウイルスは「感冒」と呼ばれる急性呼吸器疾患に付随する最も有意な微生物である。他のウイルス(例えば、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、エンテロウイルス、およびコロナウイルス)もまた、「感冒」の症状を引き起こすことが知られているが、ライノウイルスは、最も多数の感冒を引き起こすと理論付けられている。ライノウイルスはまた、中でも、制御することが最も困難な感冒を引き起こすウイルスであり、4日以上にわたって乾燥した硬い表面上で生存できる能力を有している。加えて、ほとんどのウイルスは、70%エタノール溶液に対して暴露されると不活化される。しかし、ライノウイルスは、エタノールに暴露されても生存したままである。
【0058】
ライノウイルスは感冒について知られている最大原因であるため、抗ウイルス作用を有している組成物がライノウイルスに対して活性があることが重要である。ライノウイルスの分生生物学は現在理解されているが、ライノウイルスによって引き起こされる感冒を予防するため、および感染していない被験体に対するウイルスの拡散を防ぐための有効な方法を見出すことは無意味ではない。
【0059】
ヨウ素が有効な抗ウイルス剤であり、そして皮膚上で持続的な抗ライノウイルス作用を提供することは公知である。実験によって誘導された感冒および自然なままの感冒の伝染の実験においては、ヨウ素製品を使用した被験体は、プラセボを使用した者よりも有意に少ない数の感冒を有していた。これは、ヨウ素がライノウイルス感染の伝染をブロックすることについて長期間にわたって有効であることを示している。したがって、即座の抗ウイルス作用と持続的な抗ウイルス作用の両方をもたらす製品の開発が、感冒の離間率を低下させることにおいて有効である。同様に、抗ウイルス作用を示す局所に適用される組成物は、他の非エンベロープウイルス(酸に不安定なウイルスを含む)によって引き起こされる疾患を予防および/または処置することにおいて有効である。
【0060】
ロタウイルスもまた、エンベロープを持たない、二重の殻に覆われたウイルスであり、これは環境下で安定である。ロタウイルス感染は消化管の感染であり、そして小児の重症の下痢の最も一般的な原因であり、これによって、米国だけでも毎年50,000件を超える入院が生じている。ロタウイルス感染は、閉鎖された社会(例えば、保育施設、高齢者施設、自宅(family home)、および小児病院)において特に問題である。
【0061】
ロタウイルスの伝染の最も一般的な形態は、汚染された手を介したヒトからヒトへの拡がりであるが、伝染はまた、汚染された水や食物の摂取によって、または汚染された表面との接触によっても起こり得る。その後、ロタイウイルスは口との接触によって体内に侵入する。
【0062】
手と手の表面を石鹸および/または他の洗浄剤で洗浄することによってはロタウイルスは死滅しないが、その拡散を防ぐ助けとなることは知られている。経口ロタウイルスワクチンは米国では小児への使用について承認されているが、重篤な有害な副作用の理由からその使用は推奨されていない。ロタウイルスまたはその広がりを排除するための他の有効な方法がないという理由から、閉鎖された社会で働くヒト(特に、子供用の調理を行うヒト)は、ロタウイルスの拡がりを抑えることを助けるために徹底的な衛生の実践を遵守しなければならない。ロタウイルスを不活化させることにおいて高い抗ウイルス効果(持続性の抗ウイルス効果を含む)を有している改良された組成物は、ロタウイルス感染の拡がりをさらに抑えるであろう。
【0063】
殺ウイルスは、ウイルスを不活化させるかまたは崩壊させることができることを意味する。本明細書中で使用される場合は、用語「持続的な抗ウイルス効果」または「持続的な抗ウイルス作用」は、生物表面(例えば、皮膚)または無生物表面上に残留物(residue)を残すことができること、または表面上に条件を付与することができることを意味し、これによって、使用後、長時間にわたって有意な抗ウイルス作用が提供される。本発明の組成物によっては、持続的な抗ウイルス効果(すなわち、好ましくは、非エンベロープウイルス(酸に不安定なウイルス(例えば、ライノウイルスおよびロタウイルスの複数の血清型)を含む)に対して組成物との30秒間の接触の間に、少なくとも3のlog減少、より好ましくは少なくともlog 4のlog減少)が提供される。抗ウイルス作用は、組成物との接触後、少なくとも約0.5時間、好ましくは、少なくとも約1時間、そしてより好ましくは、少なくとも約2時間、少なくとも約3時間、または少なくとも約4時間維持される。いくつかの好ましい実施形態においては、抗ウイルス作用は、組成物との接触後、約6時間から約8時間維持される。持続的な抗ウイルス効果を決定するために利用される方法論は以下に議論される。
【0064】
本発明の抗菌性組成物は、迅速であり広範な細菌の制御と、迅速であり、かつ持続性の非エンベロープウイルスの制御を提供することにおいて非常に有効である。この非常に有効な組成物には、消毒用アルコールと、ウイルスを死滅させるために有効な量の有機酸が含まれる。
【0065】
消毒用アルコールと約1未満のlog Pを有している有機酸は、広範な非エンベロープウイルスを制御するように相乗作用する。消毒用アルコールと1以上のlog Pを有している有機酸は、広範な細菌を制御するように相乗作用する。1未満のlog Pを有している第1の有機酸と1以上のlog Pを有している第2の有機酸を含む組成物は、広範な非エンベロープウイルスと、広範なグラム陽性細菌およびグラム陰性細菌を制御するように相乗作用する。
【0066】
組成物は、皮膚に対して驚くほど低刺激であり、無生物表面に対しては非腐食性である。したがって、細菌とウイルスの制御の問題を解決する、低刺激性の有効な組成物が消費者に提供される。
【0067】
本発明の組成物によっては、非エンベロープウイルスの効率的であり、持続的な不活化が提供される。非エンベロープウイルスとしては、アデノウイルス、カリモウイルス、パポバウイルス、フィコドナウイルス(phycodnavirus)、サーコウイルス、パルボウイルス、ビルナウイルス、ロタウイルス(ロタウイルスによる胃腸炎を含む)、アストロウイルス、カルシウイルス(ノーウォークウイルスを含む)、ポチウイルス、およびピコルナウイルス(ライノウイルス、ポリオウイルス、およびA型肝炎ウイルスを含む)が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0068】
本発明の抗菌性組成物は、家庭での清掃の用途(例えば、床、カウンタートップ、風呂桶、皿のような硬い表面、および衣類のようなやわらかな布地)、個人向けのケアの用途(例えば、ローション、シャワー用ゲル、石鹸、シャンプー、および拭き取り用繊維)、ならびに、工業的用途および病院での用途(例えば、機器、医療用具、および手袋の滅菌)に非常に有効である。本発明の組成物は、グラム陰性細菌、グラム陽性細菌、および非エンベロープウイルス(例えば、ライノウイルスおよびロタウイルス)に感染しているか、またはそれらで汚染されている表面を、効率よく、迅速に消毒する。本発明の組成物によってはまた、持続性の抗ウイルス効果も提供される。
【0069】
本発明の組成物は、インビトロおよびインビボで使用することができる。インビトロは、生きていないものの中、または上を意味し、特に、ウイルスの伝染を予防することが所望される場所にあるかまたはそのような場所で使用される硬い表面または柔らかい表面を有している無生物である物質の上、最も具体的には、ヒトの手に触れられる物質の上を意味する。インビボは、生物である物質の中または上を意味し、具体的には、哺乳動物の皮膚の上、および特に、手の上を意味する。
【0070】
以下の限定ではない実施形態で説明されるように、本発明の抗菌性組成物には:(a)約25重量%から約75重量%の消毒用アルコール;(b)ウイルスを死滅させるために有効な量の有機酸;および(c)水。この組成物は約5未満のpHを有している。好ましい実施形態においては、この組成物には、任意のゲル化剤が含まれる。
【0071】
組成物は、30秒間の接触の後、グラム陽性細菌に対して約2のlog減少を示す。組成物はまた、30秒間の接触の後、グラム陰性細菌に対して約2.5のlog減少を示す。組成物はさらに、非エンベロープウイルス(酸に不安定なウイルス(例えば、ライノウイルスおよびロタウイルスの複数の血清型)を含む)に対しては、30秒間の接触の後、約5のlog減少を示し、そして、これらの酸に不安定なウイルスに対しては接触後約5時間で少なくとも3のlog減少を、そして接触後約6時間から約8時間までで少なくとも約2のlog減少を示す。組成物はまた低刺激性でもあり、皮膚から組成物を濯いだり、拭き取ったりする必要はない。
【0072】
本発明に従うと、本発明の抗菌性組成物にはさらに、ヒドロトロープ、多価溶媒、ゲル化剤、pH調整剤、ビタミン、色素、皮膚コンディショナー、および香料のような、本明細書中で以降に開示される別の任意の成分が含まれる場合がある。組成物には、陰イオン性界面活性剤のような意図的に添加される洗浄剤である界面活性剤、フェノール性抗菌剤および四級アンモニウム抗菌剤のような活性のある抗菌剤は含まれない。
【0073】
以下の成分が、本発明の抗菌性組成物の中に存在する。
【0074】
A. 消毒用アルコール
本発明の抗菌性組成物には、約25重量%から約75重量%の消毒用アルコールが含まれる。本発明の好ましい実施形態には、約30重量%から約75重量%の消毒用アルコールが含まれる。最も好ましい実施形態には、約30重量%から約70重量%の消毒用アルコールが含まれる。
【0075】
本明細書中で使用される場合は、用語「消毒用アルコール」は、1個から6個までの炭素原子を含む水溶性アルコールである。消毒用アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、およびイソプロパノールが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0076】
B. 有機酸
本発明の抗菌性組成物には、抗菌性組成物が接触させられる表面上のウイルスおよび細菌を制御し、そして不活化させるための十分な量の有機酸も含まれる。有機酸は、非エンベロープウイルスおよび/または細菌の迅速な制御を提供し、そして持続的なウイルスの制御を提供するように消毒用アルコールと相乗作用する。
【0077】
具体的には、有機酸は、組成物と接触させられた生物表面または無生物表面のpHを、持続的なウイルスの制御が得られる程度に下げるために十分な量で、組成物の中に存在する。この持続的なウイルスの制御は、組成物が接触させられた表面から濯がれるかまたはその上にそのまま残すことができるかどうかとは無関係に、得られる。有機酸は、組成物中では少なくとも一部は解離していないままであり、組成物が希釈される場合、または使用と濯ぎの間もそのまま残る。
【0078】
表面(例えば、ヒトの皮膚)に対して使用されると、表面のpHは、持続的なウイルスの制御が得られるように十分に低くなる。好ましい実施形態においては、持続的なウイルスの制御を付与するためには、皮膚の上に、有機酸の残留量が、濯ぎの工程の後でもなお、残る。しかし、有機酸が表面から原則として完全に濯がれる場合もなお、表面のpHは少なくとも0.5時間の間、ウイルスの制御を提供するように十分に下げられる。
【0079】
通常、有機酸は、組成物の約0.05重量%から約6重量%、そして好ましくは、約0.1重量%から約5重量%の量で本発明の組成物中に含まれる。本発明の十分な利点を得るためには、有機酸は、組成物の約0.15重量%から約4重量%の量で存在する。有機酸の量は、使用される有機酸のクラス、および使用される特定の酸(単数または複数)の性質に関係する。
【0080】
本発明の抗菌性組成物中に含まれる有機酸は、好ましくは、それが使用される表面には浸透せず、例えば、皮膚への浸透に抵抗して皮膚表面上に留まる。したがって、有機酸は、好ましくは、疎水性有機酸である。
【0081】
本発明の1つの実施形態においては、有機酸は、1未満のlog Pを有しており、好ましくは、0.75未満のlog Pを有している。本発明の十分な利点を得るためには、有機酸は0.5未満のlog Pを有している。この実施形態においては、消毒用アルコールと有機酸は、効率的な持続性のウイルスの制御を提供するように相乗作用する。
【0082】
別の実施形態においては、有機酸は、1以上、例えば、1から約100のlog Pを有している。この実施形態においては、消毒用アルコールと有機酸は、非エンベロープウイルスを効率的に制御し、そして、広範な細菌を制御するようにも相乗作用する。
【0083】
1未満のlog Pを有している第1の有機酸と、1以上のlog Pを有している第2の有機酸を本発明の組成物の中に配合することにより、第1の有機酸と第2の有機酸は、非エンベロープウイルスの持続的な制御と広範な細菌の制御を提供するように、消毒用アルコールと相乗作用すると考えられる。
【0084】
本明細書中で使用される場合は、用語、「log P」は、水−オクタノール分配係数の対数、すなわち、Pw/PO比の対数と定義される。ここでは、平衡状態で25℃での、Pwは水中の有機酸の濃度であり、POはオクタノール中の有機酸の濃度である。水−オクタノール分配係数は、U.S. Environmental Protection Agency Procedure,“OPPTS 830.7560 Partition Coefficient(n−Octanol/Water), Generator Column Method”(1996)によって決定することができる。
【0085】
1未満のlog Pを有している有機酸は、通常、水には溶けず、例えば、25℃では、約0.5重量%未満の水溶性を有する。1以上のlog Pを有している有機酸は、通常、水溶性と考えられ、例えば、25℃では、少なくとも0.5重量%の水溶性を有する。
【0086】
有機酸には、モノカルボン酸、ポリカルボン酸、複数のカルボン酸、リン酸、スルホン酸、および/またはサルフェート部分を有しているポリマー酸、あるいは、それらの混合物が含まれ得る。酸部分に加えて、有機酸にはまた、他の部分(例えば、ヒドロキシル基および/またはアミノ基)も含まれる場合がある。加えて、有機酸無水物は有機酸として本発明の組成物中で使用することができる。
【0087】
1つの実施形態においては、有機酸には、構造RCO2Hを有しているモノカルボン酸が含まれる。式中、Rは、C1−6アルキル、ヒドロキシC1−6アルキル、ハロC1−6アルキル、フェニル、または置換されたフェニルである。アルキル基は、フェニル基および/またはフェノキシ基で置換することができ、これらのフェニルおよびフェノキシ基は置換されていても、また置換されていなくてもよい。
【0088】
本発明に有用なモノカルボン酸の限定ではない例は、酢酸、プロピオン酸、ヒドロキシ酢酸、乳酸、安息香酸、フェニル酢酸、フェノキシ酢酸、ジマン酸(zimanic acid)、2−、3−、または4−ヒドロキシ安息香酸、アニリン酸(anilic acid)、o−、m−、またはp−クロロフェニル酢酸、o−、m−、またはp−クロロ−フェノキシ酢酸、ならびにそれらの混合物である。さらに別の置換された安息香酸が、引用により本明細書中に組み入れられる米国特許第6,294,186号に開示されている。置換された安息香酸の例としては、サリチル酸、2−ニトロ安息香酸、チオサリチル酸、2,6−ヒドロキシ安息香酸、5−ニトロサリチル酸、5−ブロモサリチル酸、5−ヨードサリチル酸、5−フルオロサリチル酸、3−クロロサリチル酸、4−クロロサリチル酸、および5−クロロサリチル酸が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0089】
別の実施形態においては、有機酸にはポリカルボン酸が含まれる。ポリカルボン酸には、少なくとも2つ、そして4個までのカルボン酸基が含まれる。ポリカルボン酸にはまた置換されたフェニル基および未置換のフェニル基に加えて、ヒドロキシ基またはアミノ基も含まれる場合がある。
【0090】
本発明に有用なポリカルボン酸の限定ではない例としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、テレフタル酸、フタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、マレイン酸、アコニット酸、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0091】
ポリカルボン酸およびモノカルボン酸の無水物もまた、本発明の組成物に有用な有機酸である。好ましい無水物は、ポリカルボン酸の無水物(例えば、フタル酸無水物)である。無水物の少なくとも一部は、組成物のpHが原因でカルボン酸へと加水分解される。無水物は、組成物と接触させられた表面上でゆっくりと加水分解され得、それによって、持続的な抗ウイルス作用の提供を助けると考えられている。
【0092】
第3の実施形態においては、有機酸には、ポリマーカルボン酸、ポリマースルホン酸、硫酸化ポリマー、ポリマーリン酸、またはそれらの混合物が含まれる。ポリマー酸は、約500g/molから10,000,000g/molの分子量を有しており、これには、ホモポリマー、コポリマー、およびそれらの混合物が含まれる。ポリマー酸は、好ましくは、表面上に実質的な膜を形成することができ、そして25℃未満、好ましくは、20℃未満、より好ましくは、約15℃未満のガラス転移温度Tgを有する。ガラス転移温度は、無定形の物質(例えば、ポリマー)が、壊れやすいガラス質の状態から塑性状態へと変化する温度である。ポリマーのTgは、当業者であれば標準的な技術を使用して容易に決定することができる。
【0093】
ポリマー酸は架橋されていないか、または極最小限度にだけ架橋されている。ポリマー酸は、通常、少なくとも1つの親水性部分(例えば、カルボキシル、カルボン酸無水物、スルホン酸、およびサルフェート)を有している、エチレン不飽和モノマーから調製される。ポリマー酸には、ポリマー酸の疎水性を高めるために、コモノマー(例えば、スチレンまたはアルケン)を含めることができる。
【0094】
ポリマー有機酸を調製するために使用されるモノマーの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定はされない:
(a)カルボキシル基を含むモノマー、例えば、モノエチレン不飽和モノ−またはポリ−カルボン酸、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、ソルビン酸、イタコン酸、エタクリル酸、α−クロロアクリル酸、α−シアノ−アクリル酸、β−メトラクリル酸(β−methlacrylic acid)(クロトン酸)、α−フェニルアクリル酸、β−アクリルオキシプロピオン酸、ソルビン酸、α−クロロソルビン酸、アンゲリカ酸、桂皮酸、p−クロロ桂皮酸、β−ステアリルアクリル酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アコニット酸、トリカルボキシエチレン、および桂皮酸;
(b)カルボン酸無水物基を含むモノマー、例えば、モノエチレン不飽和ポリカルボン酸無水物、例えば、マレイン酸無水物;ならびに、
(c)スルホン酸基を含むモノマー、例えば、脂肪族または芳香族ビニルスルホン酸、例えば、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルトルエンスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、および2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリルオキシプロピルスルホン酸。
【0095】
ポリマー酸には、当該分野で周知の他の共重合することができるユニット、すなわち、他のモノエチレン不飽和コモノマーも、ポリマーが実質的である、すなわち、少なくとも10%、好ましくは、少なくとも25%の酸基を含むモノマーユニットである限りにおいて、含まれ得る。本発明の十分な利点を得るためには、ポリマー酸には、少なくとも50%、より好ましくは、少なくとも75%、そして100%までの酸基を含むモノマーユニットが含まれる。他の共重合することができるユニットは、例えば、スチレン、アルケン、アルキルアクリレート、またはアルキルメタクリレートであり得る。ポリマー酸はまた、部分的に中和することができ、これによって、ポリマー酸の組成物中への分散が助けられる。しかし、皮膚のpHを下げ、そして持続的な抗ウイルス作用を付与するために十分な数の酸基は、中和されないままである。
【0096】
他の好ましいポリマー酸はポリアクリル酸(ホモポリマーまたはコポリマーのいずれか)であり、例えば、アクリル酸とアルキルアクリレートおよび/またはアルキルメタクリレートのコポリマーである。別の好ましいポリマー酸は、メタクリル酸のホモポリマーまたはコポリマーである。
【0097】
本発明に有用な例示的なポリマー酸としては、以下が挙げられるが、これらに限定はされない:
【0098】
【表1】

【0099】
本発明の好ましい実施形態においては、有機酸に1つ以上のポリカルボン酸(例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、またはこれらの酸のうちの任意の2種類または3種類全ての混合物)、および複数のカルボキシル基を含むポリマー酸(例えば、アクリル酸またはメタクリル酸のホモポリマーおよびコポリマー)が含まれる。
【0100】
C. 担体
本発明の抗菌性組成物の担体には水が含まれる。
【0101】
D. 任意の成分
本発明の抗菌性組成物にはまた、当業者に周知の任意の成分も含まれる場合がある。組成物の中に存在する可能性がある特定の任意の成分および量は本明細書中では以下で考察される。
【0102】
任意の成分は、それらの意図される機能を行い、そして組成物の抗菌効果に有害な影響を与えない、具体的には、消毒用アルコールおよび有機酸によって提供される相乗作用に有害な影響を与えないような十分な量で存在する。任意の成分は、通常、個別に、またはまとめて、組成物の約0重量%から約50重量%で存在する。
【0103】
任意の成分のクラスとしては、ヒドロトロープ、多価溶媒、ゲル化剤、色素、香料、pH調整剤、増粘剤、粘度調整剤、キレート化剤、皮膚コンディショナー、皮膚軟化剤、保存剤、緩衝化剤、抗酸化剤、キレート化剤、乳白剤、および当業者に公知の同様のクラスの任意の成分が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0104】
ヒドロトロープは、仮に存在する場合には、組成物の約0.1重量%から約30重量%、そして好ましくは、約1重量%から約20重量%の量で存在する。本発明の十分な利点を得るためには、組成物には、約2重量%から約15重量%のヒドロトロープが含まれ得る。
【0105】
ヒドロトロープは、他の化合物の水溶性を高める能力を有している化合物である。本発明で利用されるヒドロトロープには界面活性剤としての性質はなく、通常は、短鎖のアルキルアリールスルホン酸塩である。ヒドロトロープの特異的な例としては、クメンスルホン酸ナトリウム、クメンスルホン酸アンモニウム、キシレンスルホン酸アンモニウム、トルエンスルホン酸カリウム、トルエンスルホン酸ナトリウム、キシレンスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸、およびキシレンスルホン酸が挙げられるが、これらに限定はされない。他の有用なヒドロトロープとしては、ポリナフタレンスルホン酸ナトリウム、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、メチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ショウノウスルホン酸ナトリウム、およびコハク酸二ナトリウムが挙げられる。
【0106】
多価溶媒は、仮に存在する場合には、組成物の約0.1重量%から約30重量%の量で存在し、好ましくは、約5重量%から約30重量%の量で存在する。本発明の十分な利点を得るためには、多価溶媒は、組成物の約10重量%から約30重量%の量で存在する。消毒用アルコールとは対照的に、多価溶媒は、仮に存在するとしても、本発明の組成物の抗菌効果に対する寄与は小さい。
【0107】
用語「多価溶媒」は、本明細書中で使用される場合は、2個から6個、通常は、2個または3個のヒドロキシル基を含む水溶性の有機化合物である。用語「水溶性」は、多価溶媒が、25℃で100gの水あたり少なくとも0.1gの多価溶媒の水溶性を有することを意味する。多価溶媒の水溶性に上限はなく、例えば、多価溶媒および水は、平衡状態(in all proportions)で溶解することができる。
【0108】
したがって、用語「多価溶媒」には、水溶性のジオール、トリオール、およびポリオールが含まれる。多価溶媒の特異的な例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、へキシレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、ソルビトール、PEG−4、および同様のポリヒドロキシ化合物が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0109】
任意の成分の他の特異的なクラスとしては、緩衝化剤としての無機リン酸塩、硫酸塩、および炭酸塩;キレート化剤としてのEDTAおよびリン酸塩;ならびに、pH調整剤としての酸および塩基が挙げられる。
【0110】
任意の塩基性pH調整剤の好ましいクラスの例は、アンモニア;モノ−、ジ−、およびトリ−アルキルアミン;モノ−、ジ−、およびトリ−アルカノールアミン;アルカリ金属およびアルカリ土類金属水酸化物;ならびにそれらの混合物である。しかし、塩基性pH調整剤の性質は限定されず、当該分野で公知の任意の塩基性pH調整剤を使用することができる。特定の、限定ではない塩基性pH調整剤の例は、アンモニア;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化リチウム;モノエタノールアミン;トリエチルアミン;イソプロパノールアミン;ジエタノールアミン;およびトリエタノールアミンである。
【0111】
任意の酸性pH調整剤の好ましいクラスの例は鉱酸である。鉱酸の限定ではない例は、塩酸、硝酸、リン酸、および硫酸である。酸性pH調整剤の性質は限定されず、当該分野で公知の任意の酸性pH調整剤を、単独で、または組み合わせて使用することができる。
【0112】
組成物の濃化を提供する任意のアルカノールアミドは、コカミドMEA、コカミドDEA、ソヤミドDEA、ロイラミドDEA、オレアミドMIPA、ステアラミドMEA、ミリスタミドMEA、ロイラミドMEA、カプラミドDEA、リチノレアミドDEA、ミリスタミドDEA、ステアラミドDEA、オレイラミドDEA、トロワミドDEA、ロイラミドMIPA、トロワミドMEA、イソステアラミドDEA、イソステアラミドMEA、およびそれらの混合物であり得るが、これらに限定はされない。アルカノールアミドは、非洗浄用の界面活性剤であり、仮に存在するとしても、組成物を濃化させるために少量が添加される。
【0113】
本発明の抗菌性組成物にはまた、約0.01重量%から約5重量%、好ましくは、0.10重量%から約3重量%の任意のゲル化剤も含まれる場合がある。本発明の十分な利点を得るためには、抗菌性組成物には、約0.25重量%から約2.5重量%のゲル化剤が含まれる。抗菌性組成物には、通常、組成物が、皮膚または他の表面に簡単に塗ることができ、そしてすり込むことができる粘性のある液体、ゲル、または半固体であるように、十分な量のゲル化剤が含まれる。当業者は、所望される組成物の粘性または濃度を提供するために組成物の中に含められるゲル化剤のタイプおよび量を知っている。
【0114】
用語「ゲル化剤」は、本明細書中および本明細書中以後で使用される場合は、水をベースとする組成物の粘性を増大させることができるか、または水をベースとする組成物をゲルまたは半個体に変換させることができる化合物を意味する。したがって、ゲル化剤は、自然界に存在している有機物(例えば、天然ゴム)または合成ポリマーである場合も、あるいは、自然界に存在している無機物である場合もある。
【0115】
先に記載されたように、本発明の組成物には洗浄用の界面活性剤と抗菌剤は含まれない。洗浄用の界面活性剤と抗菌剤は、本発明の抗菌性組成物に対して、意図的には添加されないが、界面活性剤が水中へのゲル化剤の分散を助けるために、市販されている形態のゲル化剤の中に存在している場合があるため、0重量%から約0.5重量%の量で存在する場合がある。界面活性剤はまた、他の組成物成分中に添加剤または副生成物として存在する場合もある。抗菌剤は、保存剤として組成物成分の中に存在する場合がある。
【0116】
以下は、本発明で使用することができるゲル化剤の限定ではない例である。具体的には、以下の化合物(有機物および無機物の両方)は、組成物の水性部分を濃化またはゲル化させることによって主に作用する:
アカシア、寒天、アルギン、アルギン酸、アルギン酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、アミロペクチン、アタプルジャイト、ベントナイト、C9-15アルコール、酢酸カルシウム、アルギン酸カルシウム、カラギーナンカルシウム、塩化カルシウム、カプリルアルコール、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシプロピルグアー、カラギーナン、セルロース、セルロースゴム、セテアリルアルコール、セチルアルコール、トウモロコシデンプン、ゴム(damar)、デキストリン、ジベンジリジンソルビトール、エチレン二水素化タロワミド、エチレンジオレアミド、エチレンジステアラミド、ゼラチン、グアーガム、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロライド、ヘクトライト、ヒアルロン酸、ケイ酸、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルステアラミド−MIPA、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルグアー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、イソセチルアルコール、イソステアリルアルコール、カラヤゴム、ケルプ、ラウリルアルコール、ローカストビーンガム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸マグネシウム、トリケイ酸マグネシウム、メトキシPEG−22/ドデシルグリコールコポリマー、メチルセルロース、微結晶セルロース、モントモリロナイト、ミリスチルアルコール、エンバク粉、オレイルアルコール、パーム核アルコール、ペクチン、PEG−2M、PEG−5M、ポリビニルアルコール、アルギン酸カリウム、カラギーナンカリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、ジャガイモデンプン、アルギン酸プロピレングリコール、カルボキシメチルデキストランナトリウム、カラギーナンナトリウム、硫酸セルロースナトリウム、塩化ナトリウム、ケイ素アルミン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、ステアラルコニウムベントナイト、ステアラルコニウムヘクトライト、ステアリルアルコール、タロウアルコール(tallow alcohol)、TEA−ヒドロクロライド、トラガカントガム、トリデシルアルコール、ケイ酸トロメタミンマグネシウムアルミニウム、小麦粉、コムギデンプン、キサンタンゴム、およびそれらの混合物。
【0117】
ゲル化剤の以下のさらなる限定ではない例は、組成物の非水性部分を濃化させることによって主に作用する:
アビエチルアルコール、アクリリノール酸、ベヘン酸アルミニウム、カプリル酸アルミニウム、ジリノール酸アルミニウム、ジステアリン酸アルミニウム、アルミニウムイソステアレート/ラウレート/パルミテートまたはステアレート、アルミニウムイソステアレート/ミリステート、アルミニウムイソステアレート/パルミテート、アルミニウムイソステアレート/ステアレート、アルミニウムラノレート、アルミニウムミリステート/パルミテート、アルミニウムステアレート、アルミニウムステアレート、アルミニウムトリステアレート、ビーズワックス、ベヘナミド、ベヘニルアルコール、ブタジエン/アクリロニトリルコポリマー、C29−70酸、ベヘン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、カンデリラロウ、カルナワ、セレシン、コレステロール、コレステリルヒドロキシステアレート、ココナッツアルコール、コーパル、ジグリセリルステアレートマレート、ジヒドロアビエチルアルコール、ジメチルロイラミドオレエート、ドデカン二酸/セテアリルアルコール/グリコールコポリマー、エルカ酸アミド、エチルセルロース、グリセリルトリアセチルヒドロキシステアレート、グリセリルトリアセチルリシノレート、ニベヘン酸グリコール、ジオクタン酸グリコール、ジステアリン酸グリコール、ジステアリン酸ヘキサンジオール、水素化C6−14オレフィンポリマー、水素化ヒマシ油、水素化ココナッツ油、水素化ラード、水素化メンヘーデン油(menhaden oil)、水素化パーム核グリセリド、水素化パーム核油、水素化パーム油、水素化ポリイソブテン、水素化大豆油、水素化タロウアミド、水素化タロウグリセリド、水素化植物性グリセリド、水素化植物性グリセリド、水素化植物油、ヒドロキシプロピルセルロース、イソブチレン/イソプレンコポリマー、イソセチルステアロイルステアレート、和ろう、ホホバワックス、ラノリンアルコール、ロイラミド、メチルデヒドロアビエチン酸、メチル水素化ロジン酸、メチルロジン酸、メチルスチレン/ビニルトルエンコポリマー、微結晶性ワックス、モンタン酸ロウ、モンタンロウ、ミリスチルエイコサノール、ミリスチルオクタデカノール、オクタデセン/マレイン酸無水物コポリマー、オクチルドデシルステアロイルステアリン酸、オレアミド、オレオステアリン、オーリキュリーワックス、酸化ポリエチレン、オゾケライト、パーム核アルコール、パラフィン、ペンタエリスリチル水素化ロジン酸、ペンタエリスリチルロジン酸、ペンタエリスリチル四アビエチン酸、ペンタエリスリチル四ベヘン酸、ペンタエリスリチル四オクタン酸、ペンタエリスリチル四オレイン酸、ペンタエリスリチル四ステアリン酸、フタル酸無水物/グリセリン/グリシジルデカン酸コポリマー、フタル酸/トリメリット酸/グリコールコポリマー、ポリブテン、ポリブチレンテレフタレート、ポリジペンテン、ポリエチレン、ポリイソブテン、ポリイソプレン、ポリビニルブチラール、ポリビニルラウレート、プロピレングリコールジカプリレート、プロピレングリコールジココエート、プロピレングリコールジイソノナノエート、プロピレングリコールジラウレート、プロピレングリコールジペラルゴネート、プロピレングリコールジステアレート、プロピレングリコールジウンデカノエート、PVP/エイコセンコポリマー、PVP/ヘキサデセンコポリマー、米ぬかロウ、ステアラルコニウムベントナイト、ステアラルコニウムヘクトライト、ステアラミド、ステアラミドDEA−ジステアレート、ステアラミドDIBA−ステアレート、ステアラミドMEA−ステアレート、ステアロン、ステアリルアルコール、ステアリルエルカミド、ステアリルステアレート、ステアリルステアロイルステアレート、合成蜜ロウ、合成ワックス、トリヒドロキシステアリン、トリイソノナノイン、トリイソステアリン、トリイソステアリルトリリノレエート、トリラウリン、トリリノール酸、トリリノレイン、トリミリスチン、トリオレイン、トリパルミチン、トリステアリン、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、ネオデカン酸亜鉛、ロジンン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、およびそれらの混合物。
【0118】
本発明に有用な例示的なゲル化剤としては以下が挙げられるが、これらに限定はされない:
【0119】
【表2A】

【0120】
【表2B】

【0121】
E. pH
本発明の抗菌性組成物のpHは、25℃で約5未満であり、好ましくは、約4.5未満である。本発明の十分な利点を得るためには、pHは約4未満である。通常、本発明の組成物のpHは約2から約5未満であり、好ましくは、約2.5から約4.5である。
【0122】
組成物のpHは、有機酸の少なくとも一部がプロトン化された形態であるように、十分に低い。その結果、有機酸は、皮膚を刺激することなく有効なウイルスの制御が提供されるように表面のpH(例えば、皮膚のpH)を下げる能力を有する。有機酸はまた、皮膚上に堆積し、そして濯ぎによる除去に耐えて、持続的な抗ウイルス効果を提供する。
【0123】
本発明の抗菌性組成物によって提供される新しい、予想以上の結果を明らかにするために、以下の実施例が準備され、そしてグラム陽性細菌とグラム陰性細菌を制御する能力、およびライノウイルスを制御する組成物の能力が決定される。以下の実施例のそれぞれに列挙される重量の割合は、組成物中に存在するそれぞれの成分の実際の、または活性である重量を示す。組成物は、当業者によって理解されており、そして以下に記載されるように、複数の成分を混合することによって調製される。
【0124】
以下の方法は、複数の実施例の準備および試験に使用される:
a)抗菌性の製品の迅速な殺菌(時間殺菌)活性の決定。抗菌性組成物の活性は、時間殺菌方法によって測定される。これにより、抗菌性の試験組成物にさらされたチャレンジされた生物の生存性が時間の関数として決定される。この試験では、組成物の希釈されたアリコートが、指定された温度で指定された時間の間、わかっている数の試験用細菌と接触させられる。試験用組成物はこの時間の終わりに中和され、それによって組成物の抗菌作用が停止させられる。最初の細菌の数に対する割合、あるいは、最初の細菌の数からのlog減少が計算される。
【0125】
一般的には、時間殺菌方法は当業者に公知である。
【0126】
組成物は、100%までの任意の濃度で試験することができる。使用する濃度の選択は、研究者の判断であり、適切な濃度は当業者であれば容易に決定することができる。例えば、粘性のある試料は、通常、50%稀釈で試験されるが、非粘性の支障は稀釈されない。試験試料は、磁気攪拌棒が備えられた滅菌の250mlのビーカーの中に入れられ、必要であれば、滅菌の脱イオン水で試料の容量が100mlにされる。全ての試験は3連で行われ、結果が合計され、平均のlog減少が報告される。
【0127】
接触時間の選択もまた、研究者の判断である。任意の接触時間を選択することができる。典型的な接触時間は、15秒間から5分間の範囲であり、30秒間および1分間が典型的な接触時間である。接触温度もまた任意の温度であってよく、通常は、室温または約25℃である。
【0128】
細菌の懸濁液または試験用接種物は、任意の適切な固体培地(例えば、寒天)上で細菌培養物を増殖させることによって調製される。その後、細菌集団が滅菌の生理食塩水で寒天から洗浄され、細菌懸濁液の細菌数が、約108コロニー形成単位/ml(cfu/ml)に調整される。
【0129】
以下の表には、試験に使用される試験細菌培養物が列挙され、これには、細菌の名称、ATCC(アメリカンタイプカルチャーコレクション)、識別番号、および本明細書中以下で使用される微生物の名称についての省略形が含まれる。黄色ブドウ球菌(S.aureus)はグラム陽性細菌であり、一方、大腸菌(E.coli)、肺炎桿菌(K.pneum)、およびサルモネラ・コレラスイス(S.choler.)はグラム陰性細菌である。
【0130】
【表3】

【0131】
試験用組成物を含むビーカーは、水浴(一定温度であれば望ましい)の中に置かれるか、または磁気攪拌機(研究室の環境温度であれば望ましい)上に置かれる。その後、試料は、1.0mlの試験用細菌懸濁液で接種される。接種物は予め決定された接触時間の間、試験用組成物とともに攪拌される。接触時間が終了すると、1.0mlの試験用組成物/細菌混合物が、9.0mlの中和剤溶液に移される。その後、カウントできる範囲になるように10進(decimal)稀釈が行われる。稀釈は、種々の生物について異なり得る。選択された希釈物が、TSA+プレート(TSA+は、レシチンとポリソルベート80を含むトリプティカーゼ大豆寒天である)上に3連で置かれる。その後、プレートは24±2時間インキュベートされ、そしてコロニーが生存している数と、割合またはlog減少の計算のためにカウントされる。対照のカウント(対照数)は、脱イオン水が試験組成物の代わりに使用されることを除いて、上記の手順を行うことによって決定される。プレートのカウントは、標準的な微生物学的方法によって、それぞれ、対照の数と試料の数についてのcfu/mlに変換される。
【0132】
log減少は以下の式を使用して計算される:
Log減少=log10(対照の数)−log10(試験試料の生存数)
以下の表は、細菌集団の減少の割合を、log減少に対して関係付けている:
【0133】
【表4】

【0134】
b)抗ウイルス残留効果試験
参考文献:S.A. Sattar, Standard Test Method for Determining the Virus-Eliminating Effectiveness of Liquid Hygienic Handwash Agents Using the Fingerpads of Adult Volunteers, Annual Book of ASTM Standards. Designation E1838−96(その全体が引用により本明細書中に組み入れられており、「Sattar I」と呼ばれる)、およびS.A. Sattar et al., Chemical Disinfection to Interrupt Transfer of Rhinovirus Type 14 from Environmental Surfaces to Hands, Applied and Environmental Microbiology, 第59巻, No.5, 1993年5月, 1579-1585頁(その全体が引用により本明細書中に組み入れられ、「Sattar II」と呼ばれる)。
【0135】
本発明の抗ウイルス指数を決定するために使用される方法は、液体の手洗い用石鹸(水で洗い流せる製品)の殺ウイルス作用についての試験であるSattar Iに記載される方法の改良である。この方法は、そのまま残される(leave-on)製品についての信頼できるデータが提供できるようにこの場合において改良される。
【0136】
Sattar Iの改良には、以下に記載されるような皮膚に直接供給される製品、以下に記載されるような指腹(fingerpad)のウイルス接種、および10サイクルの洗浄を使用するウイルスの回収が含まれる。その後、接種された皮膚部位は、水中のエタノールの70%稀釈物でその領域を処置することによって完全に汚染物質が除去される。
【0137】
手順:
10分間試験:
被験体(試験製品について5名)には、最初に、薬用ではない石鹸で手を洗い、手を濯ぎ、そして手を乾燥させてもらう。
【0138】
その後、手を70%のエタノールで処置し、風乾させてもらう。
【0139】
試験製品(1.0ml)が親指を除く手に塗布され、そして乾燥させられる。
【0140】
製品の塗布の約10分(±30秒)後、10μlのライノウイルス14懸濁液(ATCC VR−284、およそ1×106 PFU(プラーク形成単位)/ml)が、指腹として知られている指定された皮膚表面の領域にある手の上の様々な部位にマイクロピペットを使用して局所的に塗布される。この時点で、ライノウイルスの溶液もまた、同様の様式で未処置の親指に塗布される。
【0141】
その後、7〜10分間の乾燥時間の後、ウイルスが1mlの溶離剤(25%のウシ胎児血清(FBS)+1%のペンストレップグルタメート(pen-strep-glutamate)を含むEarle's平衡塩溶液(EBSS))を用いて皮膚の種々の部位のそれぞれから溶出させられ、個々の部位について10回洗浄される。
【0142】
その後、接種された皮膚の部位は、70%のエタノールを用いて領域を濯ぐすることによって完全に汚染物質が除去される。ウイルス力価は、標準的な技術(すなわち、プラークアッセイまたはTCID50(ウイルス感染価(Tissue Culture Infectious Dose))を使用して決定される。
【0143】
1時間試験:
被験体には、1時間から3時間の時点の間に、通常の活動(手洗いを除く)を再開してもらう。1時間後、ライノウイルス懸濁液が、10分間試験について上記に記載されたように、正確に指腹上の指定された部位に塗布され、そこから溶出させられる。
実施例1:
以下の組成物を調製した。
【0144】
【表5】

試料を、時間殺菌懸濁試験において、ライノウイルス1AおよびロタウイルスWaに対する抗ウイルス作用について試験した。以下の表に試験の結果をまとめる。
【0145】
【表6】

【0146】
この実施例は、消毒用アルコールと1未満のlog Pを有している有機酸の組み合わせによって提供される抗ウイルス相乗効果を示す。試料AおよびBは、消毒用アルコールだけではウイルスの容認できる制御が提供されないことを示している。試料Eは、ジプロピレングリコールと水の中に溶解させたサリチル酸によっては、試験したウイルス血清型を完全に不活化させることができないことを示している。しかし、試料CおよびD(これらは、本発明の組成物である)は、試験した複数の血清型のウイルスを完全に排除した。
実施例2:
以下の抗ウイルス組成物(これは、皮膚のpHを下げることができる)を調製し、ヒトボランティアの指腹に塗布した。
【0147】
【表7】

【0148】
試料2のpHは3.1であった。
【0149】
この試験では、試料2を、8名のボランティアの親指を除く全ての指の指腹に塗布した。親指は対照部位とした。ボランティアを2名ずつの4つのグループに分けた。その後、それぞれのグループI−IVを、予め決定した時点で、試験用組成物の時間依存性の効果を決定するために、それぞれの手の指腹の全ての上にライノウイルス力価でチャレンジした。それぞれのグループについての適切な時点で、指腹の皮膚pHもまた、試験用組成物に対する反応における皮膚のpHの時間経過を決定するために、測定した。個々のグループI−IVについてのライノウイルスでのチャレンジと皮膚のpH測定についての予め決定した試験時間は、それぞれ、5分間、1時間、2時間、および4時間であった。以下の表には、グループ分けした、実験のボランティアの試験した指腹による、平均log(接種したライノウイルス力価)、皮膚のpHの平均、および平均log(回収したライノウイルス力価)をまとめる。
【0150】
【表8】

【0151】
それぞれのグループについてのデータ(すなわち、様々な時点)は、回収したライノウイルスの力価の平均が1ウイルス粒子未満、または試験の検出限界よりも下であることを示す。このデータは、4時間後の本発明の方法の効果を示しており、さらに、約4未満の皮膚のpHがウイルスによるチャレンジを完全に排除することに有効であることを示している。
実施例3:
試験被験体の清潔な指腹を、以下の組成物で処置した。ベースラインの皮膚のpHの読み取り値を、組成物での処置の前に指腹から測定した。皮膚のpHの測定もまた、指腹上の組成物を乾燥させた直後に行い、4時間後に再び行った。
【0152】
【表9】

【0153】
試料A〜Gでの指腹の処置の4時間後、ライノウイルス39を、1.3×103pfu(プラーク形成単位)の力価で指腹に塗布した。ウイルスを指腹上で10分間乾燥させ、その後、指腹を、1×の抗生物質とともに75%のEBSSおよび25%のFBSを含むウイルス回収培養液でリンスした。試料をウイルス回収培養液中で段階稀釈し、H1−HeLa細胞上にプレートした。力価を、プラークアッセイによってアッセイした。ライノウイルス39の完全な不活化、すなわち、3 logよりも大きな減少は、クエン酸、リンゴ酸、および酒石酸の2つの混合物を含む、酸を含む組成物を使用した場合に得られた。
実施例4:
抗ウイルス作用
【0154】
【表10】

【0155】
本実施例は、本発明の組成物によってはまた、迅速で広範な抗菌作用も提供されることを示している。
実施例5:
試験被験体の清潔な指腹を、以下の組成物で処置した。組成物での処置の前に、ベースラインの皮膚のpHの読み取り値を指腹から測定した。皮膚のpHの測定はまた、指腹上で組成物を乾燥させた直後にも行った。
【0156】
組成物での指腹の処置の直後に、1.4×10pfu(プラーク形成単位)の力価のライノウイルス14を指腹に塗布した。ウイルスを10分間指腹上で乾燥させ、その後、指腹を、1×の抗生物質とともに75%のEBSSおよび25%のFBSを含むウイルス回収培養液でリンスした。試料をウイルス回収培養液中で段階稀釈し、H1−HeLa細胞上にプレートした。力価を、プラークアッセイによってアッセイした。ライノウイルス14の完全な不活化は、酸を含む組成物を使用した場合に得られ、4 logの減少が生じた。
【0157】
【表11】

【0158】
実施例6:
以下の組成物を、皮膚のpHおよび抗ウイルス効果に対する有機酸および有機酸混合物の影響を試験るために調製した。
【0159】
【表12】

【0160】
試験被験体の清潔な指腹を試料A〜Dで処置した。ベースラインの皮膚のpHの読み取り値を、組成物での処置の前に指腹から測定した。皮膚のpHの測定は、組成物を指腹上で乾燥させた直後、そして再び2時間後にも行った。
【0161】
全ての試料A〜Dが、2時間の間、皮膚のpHを4未満に押さえた。クエン酸とリンゴ酸の組み合わせ(試料C)は、単独で使用した同じ酸よりも、2時間で低いpHを維持していた(試料AおよびB)。4%の酒石酸を含む組成物(試料D)は、皮膚のpHについて最も優れた抑制を示した。
【0162】
溶液での指腹の処置の2時間後、4×10pfu(プラーク形成単位)の力価のライノウイルス39を指腹に塗布した。ウイルスを10分間指腹上で乾燥させ、その後、指腹を、1×の抗生物質とともに75%のEBSSおよび25%のFBSを含むウイルス回収培養液でリンスした。試料をウイルス回収培養液中で段階稀釈し、H1−HeLa細胞上にプレートした。力価を、プラークアッセイによってアッセイした。ライノウイルス39の完全な不活化が得られ、3 logを上回る減少が生じた。
【0163】
以下の実施例は、ポリマー酸、および特に、アクリル酸ホモポリマーまたはコポリマーが、アルコールが存在しない条件では、抗ウイルス効果を与えることを示している。ポリマー酸は、低いpHを有しており、皮膚に対して実質的である。これは、長時間にわったって皮膚の低いpHを効率よく維持し、そして持続的な抗ウイルス効果の提供を助ける。
【0164】
皮膚のpHを下げることに対する相乗作用は、アルコールの存在下でアクリル酸をベースとするポリマーを使用することによって明らかにされた。しかし、アクリル酸をベースとするポリマーは、アルコールが存在しない条件では、長時間にわったって同じ程度にまで皮膚の低いpHを維持することはできなかった。重要なことは、ポリマー酸がアルコールと組み合わせて使用されている場合には、皮膚のpHの低下は組成物のpHにあまり依存していないことである。ポリマー酸とアルコールの間で示されている相乗は予想外であり、所望される抗ウイルス効果を提供する皮膚の低いpHを提供する新しい方法である。
【0165】
迅速であり、持続的な抗ウイルス作用に対する相乗作用もまた、アクリル酸をベースとするポリマーがポリカルボン酸と組み合わせて使用される場合に、明らかにされる。少量のポリマー酸(例えば、約0.1重量%から約2重量%)をポリカルボン酸(例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、およびそれらの混合物)とともに利用することによって、ポリカルボン酸の抗ウイルス作用は高まる。この相乗作用によって、抗ウイルス効果を同時に下げることなく、抗ウイルス組成物中のポリカルボン酸濃度を下げることができる。このポリカルボン酸濃度の低下によって、組成物による刺激の可能性が低くなることにより組成物の低刺激性が改善される。
実施例7:
Novean Europeから入手することができるポリアクリル酸(1重量%)(すなわち、ULTREZ 20)を含む組成物を、70%水性エタノールおよび水の中に調製した。それぞれの組成物(1.8ml)を、試験被験体の親指、人差し指、および中指に塗布した。皮膚のpHの読み取り値を、処置の前(ベースライン)、指を乾燥させた直後、および2時間後に再び測定した。皮膚のpHの読み取り値の平均を以下にまとめる。
【0166】
【表13】

【0167】
ポリアクリル酸は、最初は、皮膚のpHを約4.5に抑え、そして皮膚のpHは2時間後に5未満に留まった。エタノールを含む組成物は、皮膚のpHを、エタノールを含まない組成物(4.5)よりもわずかに低く(4.4)抑えた。この結果は、ポリアクリル酸がエタノールとともに塗布された場合の、皮膚のpHを下げることに対する相乗作用を示唆している。
【0168】
上記の組成物での指腹の処置の2時間後、ライノウイルス39を、9.8×102pfuの力価で処置された指腹に塗布した。ウイルスを指腹上で10分間乾燥させ、その後、指腹を、ウイルス回収培養液でリンスした。培養液をウイルス回収培養液中で段階稀釈し、H1−HeLa細胞上にプレートした。力価を、プラークアッセイによってアッセイした。いずれの組成物によってもウイルス力価が下がった。しかし、エタノールを含む組成物は、ライノウイルスに対してわずかに高い効力を示し、エタノールを含まない組成物についての1.5 logの減少に対して、1.8 logの力価の減少を示した。
【0169】
このデータは、ポリアクリル酸が皮膚のpHを抑え、それによって抗ウイルス効果を生じることを示している。このデータはまた、ポリアクリル酸とエタノールが、皮膚のpHを下げるように相乗作用し、したがって、ライノウイルスに対してより大きな効果を生じることも示している。
【0170】
この効果を明らかにするために、以下の8つの組成物を調製した。ここでは、ポリアクリル酸を含む溶液(エタノールを含むもの、およびエタノールを含まないもの)を、およそ4.5、5.0、5.5、または6.0のpHとなるように緩衝化した。
【0171】
【表14】

【0172】
皮膚のpHとウイルス効果の両方に対する8つの組成物の作用を試験した。個々の組成物(1.8ml)を、試験被験体の親指、人差し指、および中指に塗布した。皮膚のpHの読み取り値を、処置の前(ベースライン)、指を乾燥させた直後、および2時間後に再び測定した。
【0173】
皮膚のpHのデータは、ポリアクリル酸とエタノールが、皮膚のpHを抑えるように相乗的に機能することを示している。なぜなら、ポリアクリル酸と組み合わせてエタノールを含むそれぞれの組成物は、エタノールを含まない組成物よりも低い値に皮膚のpHを抑えたからである。エタノールとポリアクリル酸を含む組成物は、溶液のpHとは無関係に、pH4から5の間に皮膚のpHを下げた。対照的に、エタノールを含まない組成物は、pH5から6の間にしかpHを抑えることはできず、最終的な皮膚のpHは溶液のpHと同様であった。
【0174】
上記の組成物のウイルス効果を試験するために、1.7×103pfuの力価のライノウイルス39を、2時間後に指腹に塗布した。ウイルスを10分間乾燥させ、溶出させ、ウイルス回収培養液で段階稀釈した。試料をH1−HeLa細胞上にプレートし、ウイルス力価を、プラークアッセイ法によってアッセイした。ポリアクリル酸と組み合わせてエタノールを含む組成物は、ウイルス力価において2 logを上回るの減少を有していたが、エタノールを含まない組成物は、ウイルス力価において1 log未満の減少しか示さなかった。したがって、ポリアクリル酸とエタノールの間には、皮膚のpHを下げることにおいて相乗作用が存在しており、これによって、ライノウイルスに対してより大きな抗ウイルス効果が提供される。
実施例8:
以下の組成物を、ポリアクリル酸によって提供される抗ウイルス効果をさらに説明するために調製した。
【0175】
【表15】

【0176】
試料A〜C(1.8ml)を、清潔な手の親指、人差し指、および中指に塗布した。皮膚のpHの読み取りを、処置の前(ベースライン)、指を乾燥させた直後、および試料AとBについては2時間後、そして試料Cについては4時間後に行った。皮膚のpH値の平均を上記の表に提供する。
【0177】
ポリアクリル酸を含む試料Aは、最も大きな程度に皮膚のpHを下げ、2時間後の最終的な皮膚のpHはpH 4.7でった。試料Bと試料Cはいずれも、皮膚のpHをpH 5.0よりも下げることはできなかった。このデータは、ポリアクリル酸が皮膚のpHを抑え、そして少なくとも2時間の間、皮膚の低いpHを維持する能力を有していることを示している。
【0178】
ライノウイルス39に対する試料A〜Cのウイルス効果もまた試験した。約103pfu のウイルス負荷を、個々の処置した手の親指、人差し指、および中指に広げ、10分間乾燥させた。その後、指をウイルス回収培養液で濯ぎ、そして試料をウイルス回収培養液で段階希釈し、H1-HeLa細胞上にプレートした。ウイルス力価を、プラークアッセイを使用して測定した。試料BおよびCの両方については、100%の手がライノウイルスについて陽性であり、これは、ライノウイルスに対するこれらの組成物の効果がほとんどないことを示している。反対に、試料Aはウイルス効果を示した。なぜなら、63%の手しかライノウイルスについて陽性でなかったことが明らかになったからである。
実施例9:
実施例7は、ポリアクリル酸とエタノールの間に相乗作用があり、これによって、皮膚のpHの抑制と抗ウイルス効果が生じることを示している。以下の組成物をポリカルボン酸混合物の組成物と単一のポリカルボン酸の組成物(それぞれ、ポリアクリル酸とエタノールを組み合わせた)の抗ウイルス効果に対する有効性を試験するために調製した。好ましい抗ウイルス組成物には、持続的な抗ウイルス効果を明らかにするために少なくとも必要な量の有機酸を含めた。
【0179】
組成物を、清潔な手の指腹に塗布した。示した時間の後、約103から104pfuのライノウイルス39を手に塗布し、10分間乾燥させた。ウイルスを、ウイルス回収培養液で手を濯ぐことによって回収した。その後、試料を、ウイルス回収培養液中に段階稀釈し、そしてH1-HeLa細胞上にプレートした。ウイルス力価を、プラークアッセイによって決定した。ライノウイルスについて陽性であった手の割合を以下にまとめる。
【0180】
【表16】

【0181】
70%のエタノールだけを含む組成物は、抗ウイルス組成物としては有効ではなかった。クエン酸(1%)およびリンゴ酸(1%)は、1時間後にはライノウイルスに対する有効性を失った。なぜなら、100%の手がライノウイルスについて陽性であったことが明らかにかったからである。反対に、1%のクエン酸と1%のリンゴ酸を含む組成物を、ポリアクリル酸と70%のエタノールと組み合わせて手に塗布した場合には、ウイルスは4時間後でも手の上では検出されなかった。ポリアクリル酸とエタノールと組み合わせた単一の酸(4%のクエン酸)によっては、ライノウイルスに対する効果はほとんどなかった。なぜなら、91%の手が、4時間後にはライノウイルスについて陽性であったことが明らかになったからである。
【0182】
このデータは、ポリアクリル酸とエタノールを使用することにより、所望される抗ウイルス効果を得るためにより低い濃度のポリアクリル酸を使用することができることをしめしている。
実施例10:
実施例7に示したように、組成物中でのポリアクリル酸とエタノールの使用によって、溶液のpHよりも低い値に皮膚のpHが抑えられる。クエン酸、リンゴ酸、ポリアクリル酸、およびエタノールを含む抗ウイルス組成物がより高い溶液のpHに緩衝化できるかどうか、そして、持続的な抗ウイルス作用を得るためのpH4またはそれよりも低い皮膚のpHをなおも提供できるかどうかを試験するために、以下の組成物を調製した。
【0183】
【表17】

【0184】
組成物(1.8mL)を清潔な手の親指、人差し指、および中指に塗布した。皮膚のpHの読み取りを、処置の前(ベースライン)、指を乾燥させた直後、および試料4時間後に再び行った。皮膚のpH値の平均を上にプロットする。
【0185】
試料A〜Cで処置した皮膚の最初の皮膚pHは、pH2.9から3.6の間に抑えられた。この場合、溶液のpHが低ければ低いほど、最初の皮膚のpHは低くなる。しかし、4時間後には、3つの組成物の全てについて、皮膚のpHはおよそpH3.7であった。先の実施例と一致して、溶液のpHによってその後の皮膚のpHを予想することはできなかった。
【0186】
ライノウイルス39に対する試料A〜Cのウイルス効果もまた試験した。約103pfuのウイルス負荷を、個々の処置した手の親指、人差し指、および中指に広げ、10分間乾燥させた。その後、指をウイルス回収培養液で濯ぎ、そして試料を段階希釈し、H1-HeLa細胞上にプレートした。ウイルス力価を、プラークアッセイを使用して測定した。いずれの手からのウイルスが回収されず、このことは、3種類の試料A〜Cの全てが抗ウイルス効果を有していることを示している。
【0187】
このデータは、クエン酸とリンゴ酸を、ポリアクリル酸とエタノールと組み合わせて組成物の中で利用した場合には、溶液のpHは、より高く、例えば、皮膚への塗布についてより低刺激性であり安全なpHに緩衝化することができ、一方では、皮膚のpHを抑える能力をなおも維持し、そして抗ウイルス作用をなおも示すことができる。
【0188】
本発明の抗菌性組成物は、洗口液(mouth wash)、外科用スクラブ、ボディーミスト、防腐剤、消毒剤、手の消毒用ゲル、体臭防止剤、歯科治療用添加剤、および同様の個人向けのケア用製品を含む、いくつかの実用的な最終用途を有する。さらなるタイプの組成物としては、泡状組成物(例えば、クリーム、ムースなど)、ならびに、有機および無機充填添加剤を含む組成物(例えば、エマルジョン、ローション、クリーム剤、ペーストなど)が挙げられる。組成物はさらに、固い表面(例えば、病院、飲食物の提供の分野、および食肉処理施設のシンクおよびカウンタートップ)として使用することができる。本発明の抗菌性組成物は、稀釈されたすぐに使用できる組成物として、または使用前に希釈される濃縮物として製造することができる。
【0189】
したがって、本発明には、皮膚以外の表面(家庭での表面(例えば、カウンタートップ、キッチンの表面、食物を調理する表面(まな板、皿、ポット、および鍋など))、主要な家庭での用途(例えば、冷蔵庫、冷凍庫、洗濯機、自動乾燥器、オーブン、電子レンジ、および皿洗い機;キャビネット;壁;床;風呂場の表面、シャワーカーテン、台所用ゴミ入れ、および/またはリサイクルビンなど))に、有効量の本発明の抗菌性洗浄用組成物を塗布することが含まれる。
【0190】
この組成物はまた、抗菌性のふき取り用製品を提供するために、繊維材料に取り込ませることができる。ふき取り用製品は、生物表面または無生物表面を洗浄し、消毒するために使用することができる。
【0191】
本発明の1つの実施形態においては、(a)ライノウイルス感冒に罹患しているか、またはライノウイルス感冒に罹患している他の個体に接触する可能性があるヒト、あるいは、(b)ロタウイルス感染に罹患しているか、またはロタウイルス感染に罹患している他の個体に接触する可能性があるヒトのいずれかは、本発明の抗菌性組成物を彼または彼女の手に塗布することができる。この塗布によって、手の上に存在している細菌を死滅させ、そしてライノウイルス、ロタウイルス、および他の非エンベロープウイルス粒子を不活化させることができる。塗布された組成物は、濯がれるかまたは手の上にそのままにされて、持続的な抗ウイルス作用を提供する。したがって、ライノウイルスおよびロタウイルス粒子のような非エンベロープウイルスは、手から手への伝染によっては感染していない個体には伝染しない。塗布される組成物の量、塗布の頻度、および使用期間は、所望される感染除去のレベル(例えば、微生物汚染および/または皮膚の汚染の程度)に応じて様々であろう。
【0192】
本発明の抗菌性組成物によっては、短い接触時間で、広範なグラム陽性細菌とグラム陰性細菌の死滅、および広範なウイルスの制御の利点が提供される。細菌の実質的なlog減少についての短い接触時間が、皮膚および無生物表面を消毒するために使用される、典型的な15秒から60秒の時間枠を考慮すると重要である。組成物によってはまた、接触した表面に対する持続的な抗ウイルス作用も付与される。本発明の組成物は、消毒用アルコールと有機酸の組み合わせによって提供される相乗効果の理由から、短い接触時間で有効である。
【0193】
明らかに、本明細書中で先に示したような本発明の多くの改良およびバリエーションを、その精神および範囲から逸脱することなく行うことができる。したがって、そのような限定だけが、添付の特許請求の範囲によって示されるように、与えられるべきである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面上の細菌およびウイルスの数を減少させる方法であって、黄色ブドウ球菌に対しては少なくとも2のlog減少、大腸菌に対しては少なくとも2.5のlog減少、および非エンベロープウイルスに対しては少なくとも4のlog減少を達成するために、前記表面を30秒間組成物と接触させる工程を含み、前記組成物には:
(a)約25重量%から約75重量%の消毒用アルコール
(b)ウイルスを死滅させるために有効な量の有機酸;および
(c)水
が含まれており、前記組成物は25℃で約5以下のpHを有している、方法。
【請求項2】
前記ウイルスが酸に不安定なウイルスである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸に不安定なウイルスにライノウイルス血清型が含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記非エンベロープウイルスにロタウイルス血清型が含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
表面から組成物を濯ぐ工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記表面が哺乳動物の皮膚である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物によって、皮膚の乾燥後に皮膚のpHが4未満に下げられる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記表面が固い無生物表面である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記表面が持続的な抗ウイルス作用を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記消毒用アルコールが、組成物の約30重量%から約75重量%の量で組成物中に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記消毒用アルコールに1種類以上のC-1−6アルコールが含まれている、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記消毒用アルコールが、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、n−プロピルアルコール、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記組成物に、約0.05重量%から約6重量%の有機酸が含まれている、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物中の有機酸が、1未満のlog Pを有している、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物中の有機酸が、1以上のlog Pを有している、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記有機酸に、1未満のlog Pを有している第1の有機酸と、1以上のlog Pを有している第2の有機酸が含まれている、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記有機酸に、モノカルボン酸、ポリカルボン酸、複数のカルボン酸、リン酸、スルホン酸、および/またはサルフェート部分を有しているポリマー酸、それらの無水物、またはそれらの混合物の1つ以上が含まれている、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記有機酸に、構造RCO2Hを有しているモノカルボン酸が含まれ、式中、Rは、C1−6アルキル、ヒドロキシC1−6アルキル、ハロC1−6アルキル、フェニル、または置換されたフェニルである、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記モノカルボン酸が、酢酸、プロピオン酸、ヒドロキシ酢酸、乳酸、安息香酸、フェニル酢酸、フェノキシ酢酸、ジマン酸、2−、3−、または4−ヒドロキシ安息香酸、アニリン酸、o−、m−、またはp−クロロフェニル酢酸、o−、m−、またはp−クロロフェノキシ酢酸、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記有機酸に、2から4個のカルボン酸基を含むポリカルボン酸が含まれており、状況に応じて、1つ以上のヒドロキシル基、アミノ基、またはそれらの両方が含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記ポリカルボン酸が、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、リンゴ酸、マレイン酸、クエン酸、アコニット酸、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記有機酸にポリカルボン酸の無水物が含まれる、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記有機酸に、約500g/molから10,000,000g/molの分子量を有しているポリマー酸が含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記ポリマー酸が水溶性であるかまたは水に分散させることができる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ポリマー酸が、ポリマーカルボン酸、ポリマースルホン酸、硫酸化ポリマー、ポリマーリン酸、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記ポリマー酸に、アクリル酸のホモポリマーまたはコポリマーが含まれる、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記有機酸に、ポリカルボン酸およびポリマーカルボン酸が含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記ポリカルボン酸に、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、およびそれらの混合物が含まれ、そしてポリマーカルボン酸に、アクリル酸またはメタクリル酸のホモポリマーまたはコポリマーが含まれる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ポリマーカルボン酸に、アクリル酸のホモポリマーまたはコポリマーが含まれる、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記組成物にゲル化剤がさらに含まれる、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記組成物が、約2から約5未満のpHを有している、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
哺乳動物の皮膚が、接触の4時間後に、4未満の皮膚のpHを有している、請求項7に記載の方法。
【請求項33】
前記組成物に、約0.1重量%から約30重量%の、ジオール、トリオール、およびそれらの混合物からなる群より選択される多価溶媒がさらに含まれている、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記組成物に、約0.1重量%から約30重量%のヒドロトロープがさらに含まれている、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
前記組成物に、約0.1重量%から約3重量%のゲル化剤がさらに含まれている、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
前記ゲル化剤に、天然ゴム、合成ポリマー、クレイ、オイル、ワックス、またはそれらの混合物が含まれる、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記ゲル化剤が、セルロース、セルロース誘導体、グアー、グアー誘導体、アルギン、アルギン誘導体、水不溶性のC8−C20アルコール、カラギーナン、スメクタイト粘土、ポリクオタニウム化合物、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記組成物には、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、および両性界面活性剤は含まれていない、請求項1に記載の方法。
【請求項39】
前記組成物には活性のある抗菌剤は含まれていない、請求項1に記載の方法。
【請求項40】
前記組成物によって、少なくとも接触の約4時間後に、非エンベロープウイルスに対して少なくとも3のlog減少がもたらされる、請求項1に記載の方法。
【請求項41】
前記組成物によって、接触の約6時間後に、非エンベロープウイルスに対して少なくとも2のlog減少がもたらされる、請求項1に記載の方法。
【請求項42】
ウイルスを不活化させ、そして細菌を死滅させる方法であって、そのような処置が必要な表面に対して組成物を局所塗布する工程を含み、前記組成物には、
(a)約25重量%から約75重量%の消毒用アルコール
(b)ウイルスを死滅させるために有効な量の有機酸;および
(c)水
が含まれており、前記組成物は25℃で約5以下のpHを有している、方法。
【請求項43】
前記持続的な抗ウイルス作用が表面に付与される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記表面が生物表面である、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記表面が無生物表面である、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
非エンベロープウイルスが不活化させられる、請求項42に記載の方法。
【請求項47】
ライノウイルス、ピコルナウイルス、アデノウイルス、ロタウイルス、ヘルペスウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、コロナウイルス、エンテロウイルス、および同様の病原性ウイルスが不活化させられる、請求項42に記載の方法。
【請求項48】
酸に不安定なウイルスが不活化させられる、請求項42に記載の方法。
【請求項49】
ピコルナウイルスが不活化させられる、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
ライノウイルスが不活化させられる、請求項42に記載の方法。
【請求項51】
ロタウイルスが不活化させられる、請求項42に記載の方法。
【請求項52】
ウイルスおよび細菌への暴露を減少させることによって、哺乳動物の全体的な健康状態を改善する方法であって:
(a)ウイルスおよび/または細菌に汚染されやすい表面に組成物を局所塗布する工程;ならびに
(b)表面を乾燥させる工程
を含み、前記組成物には:
(i)約25重量%から約75重量%の消毒用アルコール
(ii)ウイルスを死滅させるために有効な量の有機酸;および
(iii)水
が含まれており、前記組成物は25℃で約5以下のpHを有している、方法。
【請求項53】
ライノウイルスおよびロタウイルスによる感染に対して個体を防御する方法であって、個体の手に、ライノウイルスおよびロタウイルスを全滅させるために十分な量の組成物を塗布する工程を含み、前記組成物には:
(a)約25重量%から約75重量%の消毒用アルコール
(b)ウイルスを死滅させるために有効な量の有機酸;および
(c)水
が含まれており、前記組成物は25℃で約5以下のpHを有している、方法。
【請求項54】
前記組成物が、個体がライノウイルスまたはロタウイルスに曝される前に塗布される、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記組成物が24時間のうちに複数回塗布される、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記組成物が手から濯がれる、請求項53に記載の方法。
【請求項57】
前記組成物が乾燥させられ、手の上に残される、請求項53に記載の方法。
【請求項58】
(a)約25重量%から約75重量%の消毒用アルコール
(b)モノカルボン酸、ポリカルボン酸、複数のカルボン酸、リン酸、スルホン酸、および/またはサルフェート部分を有しているポリマー酸、それらの無水物、およびそれらの混合物を含む、約0.05重量%から約6重量%の有機酸;ならびに
(c)水
を含む抗菌性組成物であって、25℃で約5以下のpHを有している、抗菌性組成物。
【請求項59】
約0.01重量%から約5重量%のゲル化剤がさらに含まれている、請求項58に記載の組成物。
【請求項60】
前記有機酸が、組成物の約0.5重量%から約5重量%の量で存在している、請求項58に記載の組成物。
【請求項61】
前記有機酸に、ポリカルボン酸および複数のカルボン酸基を有しているポリマー酸が含まれている、請求項58に記載の組成物。
【請求項62】
前記ポリカルボン酸に、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、またはそれらの混合物が含まれ、そしてポリマー酸に、アクリル酸またはメタクリル酸のホモポリマーまたはコポリマーが含まれる、請求項61に記載の組成物。


【公表番号】特表2008−523066(P2008−523066A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−545544(P2007−545544)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【国際出願番号】PCT/US2005/043910
【国際公開番号】WO2007/044032
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(506174946)ザ ダイアル コーポレイション (3)
【Fターム(参考)】