説明

高い比表面積を有する透明な硫化亜鉛

本発明の対象は、比表面積の大きい透明な硫化亜鉛、該硫化亜鉛の製造方法および該硫化亜鉛の使用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、比表面積の大きい透明な硫化亜鉛、該硫化亜鉛の製造方法および該硫化亜鉛の使用である。
【0002】
Sachtleben GmbH社(Duisburg在)の企業誌第1119596号は、硫化亜鉛顔料を開示しており、その製造のためには高純度の亜鉛塩溶液および硫化ナトリウム溶液が使用される。可視光および近紫外線領域中で300nmの大きさの粒子の高い反射率は、被覆およびプラスチック中で使用する際に、ニュートラルな白色調ならびに最適な散乱能、隠蔽力および白色力(Aufhellvermoegen)を生じる。白色顔料特性に基づいて、硫化亜鉛は、有機もしくは無機結合剤が特殊な適用のために高度に顔料着色されている必要のある場合に、たとえばプレコート、目地材およびシーラント、下塗り等中で使用される。同様に、プラスチック、たとえばメラミン成形材料、尿素成形材料およびポリエステル成形材料は硫化亜鉛によって顔料着色され、これにより該プラスチックを良好に着色することができる。さらにその他の特性、たとえば高い防火性が達成される。
【0003】
硫化亜鉛は、モース硬度が3と比較的低く、かつ球形の粒子形状を有していることに基づいて、極めて低い研磨性を有しており、ひいては加工の際に金属摩耗を生じない。硫化亜鉛は広い範囲で白色顔料として、特に繊維強化プラスチック中で使用される。というのも、代替的に白色顔料として使用される二酸化チタンは、そのモース硬度が5.5〜6.5と高いため、硫化亜鉛とは異なってガラス繊維の破壊につながる。
【0004】
EP−B−1463411は、糸、繊維、フィラメント中のダニに対する薬剤として硫化亜鉛を使用することを開示している。さらにテキスタイル表面のクリーニングおよび/または処理のための液状もしくは固体の組成物中での硫化亜鉛の使用が開示されている。
【0005】
DE−A−10051578は、明らかに改善された白色度および低減された黄変を有する糸、繊維またはフィラメントの製造方法を開示している。この方法は、硫化亜鉛とポリエステルとからなるマスターバッチを溶融液として混合し、かつ引き続き該溶融液から紡糸することを含む。その際、ポリエステル繊維製品の艶消しのために白色顔料として0.1〜3質量%の割合の硫化亜鉛が使用される。
【0006】
上記で使用される白色顔料としての硫化亜鉛の典型的な粒径は、ほぼ300nmであり、比表面積(BET)は、2〜10m2/gであり、かつ約380(DIN55982)の相対白色力を有する。
【0007】
これらの特性に条件付けられて、この硫化亜鉛は、可視光領域で透明ではない。従って該硫化亜鉛は従来、透明性または着色保持性が所望されている適用において添加剤として適切ではなく、従って従来は他の物質を用いる必要があった。しかしこれらは低いモース硬度および硫化亜鉛の、たとえばダニに対する殺生物特性を有していない。
【0008】
本発明の課題は、一方では透明である、つまり白色顔料特性が低減されているか、白色顔料特性を全く有しておらず、他方、所望の低いモース硬度および所望の殺生物特性を有する硫化亜鉛を提供することである。
【0009】
意外なことに、前記課題は本発明による硫化亜鉛によって解決される。
【0010】
特にこの課題は、超微粒子状の、つまりナノスケールの、250nm未満、好ましくは150nm未満、特に好ましくは80nm未満、とりわけ好ましくは40nm未満の平均微結晶サイズの硫化亜鉛によって解消される。
【0011】
本発明による硫化亜鉛は、300未満(DIN55982)、好ましくは100未満、特に好ましくは70未満の極めて低い散乱能および白色力を有しており、従ってたとえば成形部材および被覆に混合した場合に隠蔽力は達成されない。比表面積(BET、DIN−ISO9277により測定)は、15〜300m2/g、好ましくは30〜250m2/g、特に好ましくは50〜200m2/gである。
【0012】
本発明による硫化亜鉛は、白色顔料特性が低減されているか、または白色顔料特性を有していない。該硫化亜鉛は低いモース硬度を有しており、かつ殺生物作用を、特に藻類、真菌類および細菌に対して有している。
【0013】
本発明による硫化亜鉛は、硫化硫黄を含有している化合物を、亜鉛化合物を含有する溶液と接触させ、これにより硫化亜鉛が固体として析出することによって製造される。この固体を場合により洗浄、濾過および引き続き乾燥させて単離する。
【0014】
本発明による硫化亜鉛はたとえば硫化硫黄を含有する化合物の水溶液を、適切な濃度で、適切な温度において、亜鉛化合物を含有する水溶液と混合し、その際、特定のpH値、好ましくは5のpH値、特に好ましくは3〜4のpH値を越えないように混合を制御し、かつ硫化亜鉛の沈殿後、硫化硫黄を含有する化合物の水溶液を撹拌下にさらに添加することにより懸濁液のpH値を約7の値に調整し、得られた硫化亜鉛を濾過し、必要とされる塩不含の程度になるまで洗浄し、乾燥させ、かつ場合により粉砕することによって製造される。
【0015】
硫化硫黄を含有する化合物としてたとえば金属硫化物および/または金属多硫化物を使用し、好ましくはアルカリ金属の群のものを使用する。本発明によれば、気体状の硫化水素(H2S)を使用することもでき、その際、H2Sを、亜鉛化合物の溶液に導通させる。あるいは有機硫化硫黄含有物質、たとえばチオアセトアミドも、本発明による硫化亜鉛の製造のために使用することができる。硫化硫黄を含有する化合物の混合物も可能である。
【0016】
超微粒子状の硫化亜鉛を沈殿させるための亜鉛化合物として、好ましくは硫酸亜鉛および/または塩化亜鉛および/または有機亜鉛化合物、たとえば酢酸亜鉛を使用する。これらの亜鉛化合物の混合物も可能である。
【0017】
複数の出発溶液を本発明による硫化亜鉛の沈殿のために使用する場合、それぞれの組み合わせおよび順序でこれらの溶液を添加することができる。
【0018】
本発明によれば、微粒子状の硫化亜鉛を沈殿するために、従来技術から公知の全ての方法、たとえば沈降セル、T/Y強制ミキサー、マイクロ反応器またはマイクロジェット反応器中での沈殿を、それぞれ連続的な運転法でも不連続的な運転法でも使用することができる。
【0019】
沈殿は、一段階でも多段階でも行うことができ、好ましくは2段階で行うことができる。
【0020】
一次粒径はたとえば原料溶液もしくは原料溶液の濃度を変更することによって、温度を変更することによって、または滞留時間を変更することによって制御することができる。
【0021】
さらに、オートクレーブ中での沈殿によって多様なプロセスパラメーターの組み合わせが生じ、これにより所望の粒径を調整することができる。
【0022】
こうして得られた硫化亜鉛懸濁液を次いで従来技術からの方法で、最終的な製品へと後処理する。通常、該懸濁液を引き続き濾過し、かつ製品に対する要求に応じて、塩不含になるまで洗浄し、乾燥させ、かつ必要であれば粉砕する。
【0023】
乾燥はたとえば回転管炉、噴霧乾燥器、炉床炉中で行うこともできるが、あるいは、凍結乾燥によって行うこともできる。同様に、フラッシュ技術による水の除去も可能である。
【0024】
乾燥させた製品は、適用に応じてたとえばピンミル、コロプレックスミル(Coloplexmuehle)、ジルコプレックスミル(Zirkoplexmuehle)、蒸気ジェットミルまたは空気ジェットミル中で超微粉砕することができる。
【0025】
本発明による硫化亜鉛は、従来技術による沈殿懸濁液の後処理の後で、微粒子状の懸濁液として、スラリーとして、ペーストとして、または乾燥および場合により粉砕後に粉末として、種々の適用のために調製することができる。
【0026】
本発明による硫化亜鉛の一次微結晶サイズは、250nm未満、好ましくは150nm未満、特に好ましくは80nm未満、とりわけ好ましくは40nm未満である。
【0027】
本発明による硫化亜鉛ナノ粒子は、著しく変化した、かつ新規の製品特性を有しているので、本発明によれば、個々の粒子が凝集しないで存在しており、このことによって種々の適用のために加工する際に最適に分散することが特に有利である。従って本発明によれば、本発明による硫化亜鉛は無機的および/または有機的に、たとえば公知の二酸化チタン顔料の場合に慣用であるように後処理することができ、これはたとえば以下の文献に記載されている:EP1576061A2、US4,052,224A1、US3,941,603A1およびUS4,075,031A1。これと同様に、本発明によれば本発明による硫化亜鉛の無機後処理を行う。
【0028】
硫化亜鉛の無機後処理は、好ましくは、SiO2、Al23、ZrO2、TiO2および/または金属リン酸塩のような後処理剤によって行うことができる。
【0029】
無機的な後処理は、好ましくは本発明による硫化亜鉛の乾燥前に行う。このために硫化亜鉛のフィルターケーキを水性媒体中に再分散させ、引き続き1もしくは複数の上記の後処理剤を添加することによって後処理する。後処理は、顔料を無機的に後処理するための従来技術によって行う。その後の処理はすでに上記したとおりに行う。
【0030】
本発明による超微細硫化亜鉛の無機表面変性は、以下の元素を含有する化合物からなっていてもよい:アルミニウム化合物、アンチモン化合物、バリウム化合物、カルシウム化合物、セリウム化合物、塩素化合物、コバルト化合物、鉄化合物、リン化合物、炭素化合物、マンガン化合物、酸素化合物、硫黄化合物、ケイ素化合物、窒素化合物、ストロンチウム化合物、バナジウム化合物、スズ化合物および/またはジルコニウム化合物もしくはこれらの元素を含有する塩。たとえばケイ酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウムおよび硫酸アルミニウムが挙げられる。
【0031】
本発明による超微細硫化亜鉛の無機的な表面処理はたとえば水性スラリー中で行う。この場合、反応温度は有利には50℃を超えるべきではない。懸濁液のpH値は、たとえばNaOHを使用して9より大きい範囲のpH値に調整する。次いで強力な撹拌下で後処理用の薬剤(無機化合物)、好ましくは水溶性の無機化合物、たとえばアルミニウム化合物、アンチモン化合物、バリウム化合物、カルシウム化合物、セリウム化合物、塩素化合物、コバルト化合物、鉄化合物、リン化合物、炭素化合物、マンガン化合物、酸素化合物、硫黄化合物、ケイ素化合物、窒素化合物、ストロンチウム化合物、バナジウム化合物、スズ化合物および/またはジルコニウム化合物もしくはこれらの元素を含有する塩を添加する。後処理用の薬剤のpH値および量は本発明によれば、該薬剤が水中で完全に溶解して存在するように選択する。懸濁液を、好ましくは少なくとも5分間、強力に撹拌して、後処理用の薬剤を懸濁液中に均質に分散させる。次の工程で、懸濁液のpH値を低下させる。この場合、pH値はゆっくり、かつ強力な撹拌下に低下させることが好ましいことが判明した。特に好ましくはpH値を10〜90分以内で5〜8の値に低下させる。この後に熟成時間、好ましくは約1時間の熟成時間が引き続く。この場合、温度は好ましくは50℃を越えるべきではない。次いで水性懸濁液を洗浄し、かつ乾燥させる。本発明による超微細な、表面変性された硫化亜鉛を乾燥するために、たとえば噴霧乾燥、凍結乾燥および/または粉砕乾燥を行うことができる。乾燥法に依存して、乾燥させた粉末のその後の粉砕が必要となる場合がある。粉砕は、自体公知の方法により実施することができる。
【0032】
有機的な後処理は、乾燥、熱処理および/または粉砕の前またはこれらの処理後に行うことができる。本発明によれば本発明による硫化亜鉛がペーストとして、または懸濁液として存在している場合には有機的に後処理することも可能である。
【0033】
本発明によれば以下の化合物が有機表面変性剤として適切である:ポリエーテル、シラン、ポリシロキサン、ポリカルボン酸、脂肪酸、ポリエチレングリコール、ポリエステル、ポリアミド、ポリアルコール、有機ホスホン酸、チタン酸塩、ジルコニウム酸塩、スルホン酸アルキルおよび/またはスルホン酸アリール、硫酸アルキルおよび/または硫酸アリール、アルキルリン酸エステルおよび/またはアリールリン酸エステル。
【0034】
有機的に表面変性された本発明による硫化亜鉛の製造は、自体公知の方法により実施することができる。
【0035】
これは一方では水相もしくは溶剤含有相中での表面変性である。他方、有機成分は、粒子表面上に直接噴霧し、かつ引き続き混合/粉砕して施与することができる。
【0036】
本発明によれば適切な有機化合物を強力に撹拌しながら、かつ/または分散させている間に、硫化亜鉛懸濁液に添加する。この場合、有機変性は化学吸着/物理吸着によって粒子表面上に結合される。
【0037】
有機化合物としてたとえば、スルホン酸アルキルおよび/またはスルホン酸アリール、硫酸アルキルおよび/または硫酸アリール、アルキルリン酸エステルおよび/またはアリールリン酸エステルの群から選択される化合物またはこれらの化合物の少なくとも2つからなる混合物が適切であり、その際、アルキル基またはアリール基は、官能基により置換されていてもよい。有機化合物は、場合により官能基を有する脂肪酸であってもよい。このような化合物の少なくとも2つからなる混合物も使用することができる。
【0038】
たとえば次のものを使用することができる:アルキルスルホン酸塩、ポリビニルスルホン酸ナトリウム、N−アルキル−ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム、硫酸ヒドロキシアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアンモニウム、リン酸モノエチルモノベンジルエステル、リチウムペルフルオロオクタンスルホネート、12−ブロモ−1−ドデカンスルホン酸、ナトリウム−10−ヒドロキシ−1−デカンスルホネート、カラゲナンナトリウム、ナトリウム−10−メルカプト−1−セタンスルホネート、ナトリウム−16−セタン(1)スルフェート、オレイルセチルアルコールスルフェート、オレイン酸スルフェート、9,10−ジヒドロキシステアリン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、オレイン酸。
【0039】
好ましくは有機添加剤は次のものから選択されている:カルボン酸、セッケン、金属セッケン、アルコール(たとえば1,1,1−トリメチロールプロパン)、ペンタエリトリトール、ネオペンチルグリコール、ポリグリコール(たとえばポリエチレングリコール)、ポリエチレングリコールエーテル、有機エステル(たとえばネオペンチルグリコールジベンゾエート)、シラン、シロキサン、シリコーン油、式RSO2Rの有機スルホン、有機ケトン(R−(C=O)−R)、有機ニトリル(RCN)、有機スルホキシド(R2−SO2)、有機アミド(R−(C=O)−NR′RまたはR−(S=O)−ONR′R)、脂肪酸エステル、脂肪酸アミドまたはこれらの物質の2つ以上からなる混合物。RもしくはR′はこの場合、飽和もしくは不飽和の炭化水素、たとえばアルキル(−CH2−CH2−)n、環式化合物または有機金属化合物を表す。RもしくはR′はこの場合、同じであっても異なっていてもよい。
【0040】
本発明による硫化亜鉛はたとえばプラスチック、特にポリマーの製造(たとえば熱可塑性ポリマーまたは熱硬化性ポリマー)、ラッカー、塗料、繊維、紙(たとえば積層紙)、接着剤、セラミック(たとえばエレクトロセラミックスまたは磁気セラミックス)、エナメル、吸着剤、イオン交換体、研磨剤およびポリッシング剤、耐寒性潤滑剤および耐寒性潤滑剤コンセントレート、耐火製品、硬質コンクリート材料、医療用品および化粧品(たとえばパウダー、軟膏、歯磨き用ペースト)において使用することができる。
【0041】
本発明による硫化亜鉛は特に、白色顔料特性が望ましくないが、しかしそれにもかかわらず硫化亜鉛の特性が系に有利に影響を与える適用において使用することができる。これはたとえば良好な透明性および/または着色性を有する合成有機ポリマー、該ポリマーから製造される成形部材、被覆、たとえばラッカーおよび塗料および/または目地材およびシーラントである。
【0042】
本発明による硫化亜鉛はそのつど完成品に対して好ましくは0.01〜55体積%、特に好ましくは0.1〜45体積%使用する。
【0043】
合成有機ポリマーとは、さらに他の加工助剤、たとえば安定剤、可塑剤、有機および/または無機顔料、着色剤、ガラス繊維および/またはその他の添加剤を含有していてもよいすべての熱硬化性樹脂、エラストマーおよび熱可塑性樹脂である。
【0044】
本発明による硫化亜鉛は、硫化亜鉛の顔料特性に関わることなく特性の改善が所望される適用において使用することができる。
【0045】
エラストマー中で本発明による硫化亜鉛を0.1〜30質量%、好ましくは0.2〜15質量%、特に好ましくは0.3〜10質量%使用する場合、熱に対する安定化を、特に有機安定剤、たとえばアルキリデンビスフェノールと組み合わせて、達成することができる。
【0046】
本発明による硫化亜鉛は熱可塑性樹脂中で重金属失活剤として使用することができる。硫化亜鉛の添加量はこの場合、熱可塑性樹脂の量に対して0.1〜30質量%、好ましくは0.2〜15質量%、特に有利には0.5〜10質量%である。この場合、熱可塑性樹脂中への有機錯化剤のさらなる添加を省略することができる。
【0047】
本発明によるZnSの使用は、熱硬化性樹脂および熱可塑性プラスチックの機械的特性、たとえば硬度、曲げ強さ、耐衝撃性などの改善をもたらす。
【0048】
さらに本発明による硫化亜鉛は摩擦添加剤として、たとえば潤滑剤、ブレーキパッド、カップリング等中で使用することができる。
【0049】
本発明による硫化亜鉛のすべての上記の非顔料特性の評価は、従来技術による明らかにより粗大な硫化亜鉛の相応する特性と比較して同等ないし明らかに有利である。
【0050】
本発明による硫化亜鉛を被覆中で使用する場合には、硫化亜鉛は殺生物作用を、たとえば藻類、細菌類または真菌類に対して示す。この場合、硫化亜鉛の添加量は、被覆剤の量に対して0.1〜30質量%、好ましくは0.2〜15質量%、特に好ましくは0.5〜10質量%である。
【0051】
さらに本発明による硫化亜鉛は触媒として使用することもできる。
【0052】
本発明を以下の実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない:
例1:
貯蔵容器中に、温度65℃の蒸留水50mlおよびZnSO4水溶液(120g/l)500mlならびにNa2S水溶液(60g/l)500mlを同時に撹拌下で添加した。該溶液は同様に65℃の温度を有していた。両方の溶液の、貯蔵容器への添加は、懸濁液中で3〜4のpH値が優勢となるように制御した。
【0053】
硫化亜鉛の沈殿が生じた後、撹拌下に懸濁液のpH値を、Na2S溶液をさらに添加することによって7〜7.5に調整した。濾過し、かつ導電性が100μS未満になるまで数回洗浄した後で、硫化亜鉛を120〜150℃℃で乾燥させた。
【0054】
こうして製造された硫化亜鉛は、微結晶性であり、かつ5nmの平均粒径を有している。表面積は160m2/g(BET)であり、白色力は約30(DIN55982)であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫化亜鉛において、白色顔料特性が低減されているか、または白色顔料特性を有していないことを特徴とする、硫化亜鉛。
【請求項2】
300未満、好ましくは100未満、特に好ましくは70未満の低い散乱能および白色力(DIN55982による)を有することを特徴とする、請求項1記載の硫化亜鉛。
【請求項3】
15〜300m2/g、好ましくは30〜250m2/g、特に好ましくは50〜200m2/gの比表面積(BET、DIN−ISO9277により測定)を有することを特徴とする、請求項1または2記載の硫化亜鉛。
【請求項4】
ナノスケールであることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の硫化亜鉛。
【請求項5】
250nm未満、好ましくは150nm未満、特に好ましくは80nm未満、とりわけ好ましくは40nm未満の平均微結晶サイズを有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の硫化亜鉛。
【請求項6】
硫化亜鉛の微結晶を無機的かつ/または有機的に後処理することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の硫化亜鉛。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項記載の硫化亜鉛の製造方法において、硫化硫黄を含有する化合物の水溶液を、適切な濃度で、適切な温度において、亜鉛化合物を含有する水溶液と混合し、その際、特定のpH値を越えないようにこの混合を制御し、かつ硫化亜鉛の沈殿後に、撹拌下で硫化硫黄を含有する化合物の水溶液をさらに添加することにより懸濁液のpH値を約7の値になるまで調整し、得られた硫化亜鉛を濾過し、必要とされる塩不含の程度になるまで洗浄し、乾燥させ、場合により粉砕し、かつ/または場合により無機的かつ/または有機的に後処理することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の硫化亜鉛の製造方法。
【請求項8】
硫化亜鉛の一次粒径を、原料溶液の選択によって制御することを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
硫化硫黄を含有する化合物として、金属硫化物、金属多硫化物、好ましくはアルカリ金属の群の化合物、有機硫化硫黄含有物質、たとえばチオアセトアミドまたはこれらの化合物の混合物を使用することを特徴とする、請求項7または8記載の方法。
【請求項10】
亜鉛化合物として、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、または有機亜鉛化合物、たとえば酢酸亜鉛またはこれらの化合物の混合物を使用することを特徴とする、請求項7から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
亜鉛化合物の水溶液に、気体状の硫化水素(H2S)を導通し、その際、特定のpH値を越えないように、気体状の硫化水素(H2S)の添加を制御し、かつ硫化亜鉛の沈殿後に、気体状の硫化水素(H2S)をさらに添加することによって、懸濁液のpH値を約7の値になるまで調整し、得られた硫化亜鉛を濾過し、必要とされる塩不含の程度になるまで洗浄し、乾燥させ、かつ場合により粉砕することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の硫化亜鉛の製造方法。
【請求項12】
超微粒子状の硫化亜鉛の沈殿を、沈降セル、T/Y強制ミキサー、マイクロ反応器またはマイクロジェット反応器中で、連続的もしくは不連続的な運転法で行うことを特徴とする、請求項7から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
沈殿を、一段階で、もしくは多段階で、好ましくは二段階で行うことができることを特徴とする、請求項7から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
乾燥を、回転管炉、噴霧乾燥器、炉床炉中で、または凍結乾燥により行うことを特徴とする、請求項7から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
水の除去を、フラッシュ技術により行うことを特徴とする、請求項7から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
硫化亜鉛を、ピンミル、コロプレックスミル、ジルコプレックスミル、蒸気ジェットミルまたは空気ジェットミル中で超微粉砕することを特徴とする、請求項7から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
良好な透明性および/または着色性を有する合成有機ポリマー、該ポリマーから製造される成形部材、被覆、たとえばラッカーおよび塗料および/または目地材およびシーラント中での請求項1から6までのいずれか1項記載の硫化亜鉛の使用。
【請求項18】
プラスチック中での、特に(たとえば熱可塑性もしくは熱硬化性ポリマーからの)ポリマー製造の際の、ラッカー、塗料、繊維、紙(たとえば積層紙)、接着剤、セラミック(たとえばエレクトロセラミックスおよび磁気セラミック)、エナメル、吸着剤、イオン交換体、研磨剤およびポリッシング剤、耐寒性潤滑剤および耐寒性潤滑剤コンセントレート、耐火製品、硬質コンクリート材料、医療用品および化粧品(たとえばパウダー、軟膏、歯磨き用ペースト)における請求項1から6までのいずれか1項記載の硫化亜鉛の使用。
【請求項19】
熱硬化性樹脂および熱可塑性プラスチックの機械的特性、たとえば硬度、曲げ強さ、耐衝撃性を改善するための、請求項1から6までのいずれか1項記載の硫化亜鉛の使用。
【請求項20】
熱に対して安定化するためのエラストマー中での請求項1から6までのいずれか1項記載の硫化亜鉛の使用。
【請求項21】
重金属失活剤としての熱可塑性プラスチック中での請求項1から6までのいずれか1項記載の硫化亜鉛の使用。
【請求項22】
摩擦助剤としての、たとえば潤滑剤、ブレーキパッド、カップリングにおける、請求項1から6までのいずれか1項記載の硫化亜鉛の使用。
【請求項23】
殺生物剤、たとえば藻類、細菌類または糸状菌類に対する殺生物剤としての請求項1から6までのいずれか1項記載の硫化亜鉛の使用。
【請求項24】
触媒としての請求項1から6までのいずれか1項記載の硫化亜鉛の使用。
【請求項25】
微粒子状の懸濁液として、スラリーとして、ペーストとして、または粉末としての請求項17から24までのいずれか1項記載の硫化亜鉛の使用。

【公表番号】特表2010−510953(P2010−510953A)
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−538729(P2009−538729)
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【国際出願番号】PCT/EP2007/063199
【国際公開番号】WO2008/065208
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(501082864)ザッハトレーベン ヒェミー ゲゼルシヤフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (16)
【氏名又は名称原語表記】Sachtleben Chemie GmbH
【住所又は居所原語表記】Dr.−Rudolf−Sachtleben−Strasse 4, 47198 Duisburg, Germany
【Fターム(参考)】