説明

高い流動を有するブロック共重合体を含むエラストマー複合繊維

鞘が熱可塑性ポリマーであり、芯がエラストマー配合物である鞘−芯形態を有し、高い生産速度で融解物から連続的に押し出し成形できる複合繊維が作製される。前記エラストマー配合物は、高い流動を有するカップリングされ選択的に水素化されたブロック共重合体を含む。前記ブロック共重合体は、分子量5,000ないし7,000の少なくとも1つのポリスチレンブロックと、分子量20,000ないし70,000で60モル%以上の高いビニル含有量を有する少なくとも1つのポリジエンブロックとを有する。前記複合繊維は、織布、スパンボンド式不織布又はフィルター、短繊維及び接合され毛羽立った織布などの物品の製造に有用である。前記複合繊維は、800mpmを超え、0.1ないし50g/9000mのデニールを有する繊維を作製するために熱可塑性ポリマープロセスを使用して作製できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、高流動及び高弾性を有するブロック共重合体という表題の、2004年3月3日に出願された米国暫定特許出願シリアル番号60/549,570の利点を請求する。
【0002】
(技術分野)
本発明は、熱可塑性ポリマー鞘とエラストマー芯とを含む複合繊維に関する。特に前記エラストマー芯は、モノアルケニルアレーンと、高流動を有する共役ジエンブロックのブロック共重合体を含む。本発明は、複合繊維を作製するためのプロセスにも関する。本発明はさらに、複合繊維から製造される物品にも関する。
【背景技術】
【0003】
弾性材料から作製される繊維には、織布から、使い捨て可能な個人衛生用物品へのスパンボンド弾性マットに至る、多様な用途が見出される。このような適用のためにスチレンブロック共重合体を使用することは特に興味のあることであろう。しかしながら、ブロック共重合体融解物は、典型的には、相分離された性質を有しているので、高い融解弾性及び高い融解粘性が生じる。繊維紡糸金口などにおいて見られる小さな孔を通じてスチレンブロック共重合体を加工するために、高価で特殊化された融解ポンプ装置が必要とされるであろう。さらに、前記高融解弾性によって繊維がダイスを出るときに破壊され、連続的なエラストマー繊維の形成を妨害する。結果として、スチレンブロック共重合体は高い加工速度で連続的な弾性繊維へと加工するのが非常に困難であることがわかっている。
【0004】
スチレンブロック共重合体にともなう更なる問題点は、前記融解物におけるスチレンブロック共重合体特有の粘性である。この特徴のため、スチレンブロック共重合体の融解した紡糸したファイバーは、加工中に互いに固着するか又は自己固着する傾向にある。この効果は、望ましくなく、実際、個別の連続した繊維が目標であるとき、極めて問題でありうる。受容できない繊維製品がもたらされることに加えて、繊維の自己固着のために、装置の汚損及び費用のかかる操業停止が起こる。弾性繊維製造においてスチレンブロック共重合体を適用するための尽力は、現在に至るまで、著しい困難を伴ってきた。
【0005】
Himesは、米国特許第4,892,903号においてエラストマー繊維を作製するためのあるアプローチとしてトリブロック/ジブロック共重合体配合物の使用を教示した。組成物のこれらのタイプは、メルトブロウン(melt−blown)不織性適用において使用されるなどの不連続繊維及び連続繊維の形成に対して制限を与える高い粘性及び融解弾性を有していることがわかった。
【0006】
酸性機能化スチレンブロック共重合体を含む複合繊維は、欧州特許出願第0461726号においてGreekによって教示されている。従来の、酸性機能性である選択的に水素化されたスチレンブロック共重合体は、ポリアミドを使用する並列した複合繊維を形成するために使用された。前記酸性機能付与が前記2つの要素間の接着を亢進させる一方で、酸性機能付与が機能付与されていないブロック共重合体よりも高い融解粘性及び融解弾性にさえ至ることは本分野で公知である。さらに、Greakにより教示される並列形態は、加工中に本来粘性のある繊維が自己固着するのを防止しないであろう。
【0007】
他のポリマーのうち、従来のスチレンブロック共重合体を含み、多様な形態を有する複合繊維を使用して製造される接合された不織布が、米国特許第6,225,243号においてAustinにより教示されている。特に、芯がスチレンブロック共重合体を含む鞘−芯形態は、不織布を形成するために適切に低い粘性を有する繊維を提供した。
【0008】
しかしながら、従来のスチレンブロック共重合体の高い粘性及び融解弾性は、連続したエラストマー繊維の高速スピンを妨げている。本発明は、連続的なエラストマー複合繊維へと形成できる高いメルトフローのブロック共重合体を提供することによってこれらの長年のニーズに対処する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
ある態様において、本発明は、エラストマー配合物芯が、Sブロック及びE若しくはEブロックを有し且つ一般式
S−E−S, (S−E, (S−ES, (S−E
(ここで、
a.水素化の前に前記Sブロックがポリスチレンブロックであり、
b.水素化の前に前記Eブロックが40,000ないし70,000の分子量を有するポリブタジエン、ポリイソプレン及びその混合物からなる群から選択されるポリジエンブロックであり、
c.水素化の前に前記Eブロックが20,000ないし35,000の分子量を有するポリブタジエン、ポリイソプレン及びその混合物からなる群から選択されるポリジエンブロックであり、
d.nが2ないし6の値を有し、及びXはカップリング剤の残部であり、
e.前記ブロック共重合体のスチレン含有量が13ないし25重量%であり、
f.水素化の前の前記ポリジエンブロックのビニル含有量が75ないし85モル%であり、
g.前記ブロック共重合体は、式中S、E及びEがすでに定義されているとおりである一般式
S−E若しくはS−E
を有する単位の15重量%未満を包含し、
h.水素化の後、前記スチレン二重結合の約0ないし10%が水素化されており、及び前記抱合されたジエン二重結合の少なくとも80%が水素化されており、
i.前記Sブロックの各々の分子量が5,000ないし7,000であり、及び
j.前記ブロック共重合体のメルトインデックスが、230℃及び2.16kg重量でASTM D1238にしたがって12g/10分以上である。)
を有する選択的に水素化されたブロック共重合体又はそれらの混合物を含む、熱可塑性ポリマー鞘と前記エラストマー配合物芯とを含む複合繊維である。
【0010】
別の態様において本発明は、本明細書に記載の複合繊維を含む弾性モノフィラメント、織物、スパンボンド不織布、メルトダウン(melt blown)不織布若しくはフィルター、短繊維、糸又は接合され毛羽立てられた繊維などの物品である。
【0011】
更なる態様において本発明は、複合繊維がフィラメントあたり9000mあたり0.1ないし10gのデニールを有するように、熱可塑性ポリマーから主としてなる鞘とエラストマー配合物から主としてなる芯とを有する1本以上のフィラメントを1分間あたり少なくとも500mの速度で形成するために、ダイスを通じて個別の融解ポンプを使用して前記熱可塑性ポリマー及び前記エラストマー配合物に力が加えられる、本明細書に記載の前記熱可塑性ポリマーと選択的に水素化されたブロック共重合体を含むエラストマー配合物との共押し出しを含む、複合繊維を作製するためのプロセスである。
【0012】
重要なことに、本発明は、高速で商業型の装置上で複合繊維の加工を可能にする高いメルトフローを有する前記芯におけるエラストマー配合物を含む。前記エラストマー芯配合物の高いメルトフローは、高いビニル含有量、十分に小さな分子量を有する選択的に水素化されたブロック共重合体を使用して、又はこれらの特徴のいくつかの組み合わせによって達成できる。
【0013】
前記エラストマー芯配合物はさらに、前記鞘材料と組成的に同一又は異別の熱可塑性ポリマーを含むことができる。前記エラストマー芯における熱可塑性ポリマーの組み込みは、芯−鞘相溶性を亢進し、前記芯−鞘接着性を亢進し、前記エラストマー配合物の加工性を亢進し、及び/又は前記材料の経済性を改善することができる。
【0014】
好ましい実施態様の詳述。
【0015】
本発明の複合繊維は、熱可塑性ポリマー鞘と、選択的に水素化されたブロック共重合体を含むエラストマー配合物芯とを含む。前記複合繊維は、前記熱可塑性ポリマー及び前記エラストマー配合物芯がダイス又は紡糸金口に対して個別に計量供給される共押し出しプロセスによって作製される。このような共押し出しされた複合繊維は並列の鞘−芯、サイドバイサイド、islands−in−the−sea、二突出部(bilobal)、三突出部(trilobal)、及びパイ形を含むさまざまな形態を有することができるが、これに制限されるものではない。
【0016】
本発明において、前記鞘が前記繊維の外側表面の大部分を形成することは重要である。特に、前記鞘が前記芯の周りのカバーを形成する前記鞘−芯形態が好ましい。
【0017】
この好ましい形態において、前記芯は前記繊維の横断切片において中心に集まることができるか、又は中心を外れることができる。前記鞘は前記繊維の周囲上に完全な形式で前記芯を覆うことができるか、又は前記繊維の周囲上を部分的にのみ覆うことができる。前記カバーが前記周囲の周りで部分的である場合、前記形態は前記芯が前記繊維の容積の大部分をなす並列の形態と区別される。本発明における前記鞘と前記芯との容積比は、5/95ないし49/51である。鞘と芯の容積比の好ましい範囲は10/90ないし40/60であり、最も好ましい範囲は20/80ないし30/70である。前記鞘は主として熱可塑性ポリマーからなり、前記芯は主としてエラストマー配合物からなる。本明細書で使用されるように、「主としてなる」とは、容積基準の80%を超えることを意味する。
【0018】
前記エラストマー配合物芯は、Sブロック及びEブロック若しくはEブロックを有し、一般式
S−E−S, (S−E, (S−ES, (S−E
を有する選択的に水素化されたブロック共重合体又はその混合物を含み、その中で(a)は水素化の前に、前記Sブロックがポリスチレンブロックであり、(b)水素化の前に前記Eブロック若しくはEブロックは、ポリブタジエン、ポリイソプレン及びそれらの混合物からなる群から選択されるポリジエンブロックである。前記ブロック共重合体は、3ないし6個のアームを有する直鎖状又は放射状でありうる。前記直鎖状立体配置のための一般式には、
S−E−S及び/又は(S−E及び/又は(S−E
が含まれ、式中、前記Eブロックはポリブタジエン、ポリイソプレン及びそれらの混合物からなる群から選択され、40,000ないし70,000の分子量を有するポリジエンブロックであり、前記Eブロックはポリブタジエン、ポリイソプレン及びそれらの混合物からなる群から選択され、20,000ないし35,000の分子量を有するポリジエンブロックであり、nは2ないし6の値を有し、好ましくは2ないし4であり、より好ましくは約3の平均を有する。例によって、3個及び4個のアームを有する放射状立体配置のための一般式には、
【0019】
【化1】

及び
【0020】
【化2】

があり、式中前記Eブロックはポリブタジエン、ポリイソプレン及びそれらの混合物からなる群から選択され、20,000ないし35,000の分子量を有するポリジエンブロックであり、及びXはカップリング剤残部である。
【0021】
本明細書で使用される、「分子量」という語は、前記ポリマー又は前記共重合体のブロックのg/モルにおける真の分子量を指す。本明細書及び請求項において言及される分子量は、ASTM 3536にしたがって実施されるような、ポリスチレン較正基準を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して測定できる。GPCは、ポリマーが分子の大きさに従って分離され、最大の分子が最初に溶出する公知の方法である。前記クロマトグラフは、商業上入手可能なポリスチレン分子量標準物質を使用して較正される。そのように較正されるGPCを使用して測定されるポリマーの分子量は、スチレン当量の分子量である。前記スチレン当量の分子量は、前記ポリマーのスチレン含有量及び前記ジエンセグメントのビニル含有量が公知であるとき、真の分子量へ変換できる。使用される検出器は、好ましくは紫外線及び屈折率の組み合わせ検出器である。本明細書で表される分子量は、真の分子量へ変換された前記GPCトレースのピークで測定され、一般に「ピーク分子量」として言及される。
【0022】
本発明のブロック共重合体は、スチレン及び、ブタジエン、イソプレン及びそれらの混合物からなる群から選択されるジエンのアニオン重合により調製される。前記重合化は、約−150℃ないし約300℃の範囲内の温度で、好ましくは約0℃ないし約100℃の範囲内の温度で適切な溶媒において前記スチレン及びジエン単量体を有機アルカリ金属配合物と接触させることによって達成される。特に効果的なアニオン重合開始剤は、一般式RLiを有する有機リチウム配合物であり、式中Rは、1ないし20個の炭素原子を有する脂肪族、環状脂肪族、芳香族、又はアルキル置換された芳香族炭化水素ラジカルであり、nは1ないし4の値を有する。好ましい開始剤にはn−ブチルリチウム及びsec−ブチルリチウムがある。陰イオン重合化のための方法は公知であり、米国特許第4,039,593号及び米国再発行特許第Re27,145号などの参考文献において見出されうる。
【0023】
本発明のブロック共重合体は、2ないし6個の「アーム」の混合物を有する直鎖状、直鎖状のカップリングされた、又はラジカルブロック共重合体でありうる。直鎖状ブロック共重合体は、スチレンを重合化して第一Sブロックを形成し、ブタジエンを添加してEブロックを形成した後、更なるスチレンを添加して第二Sブロックを形成することによって生成されうる。直鎖状のカップリングされたブロック共重合体は、第一Sブロック及びEブロックを形成した後、前記ジブロックを二機能性カップリング剤と接触させることによって生成される。放射状ブロック共重合体は、少なくとも三機能性であるカップリング剤を使用することによって調製される。
【0024】
直鎖状ブロック共重合体を調製するのに有用な二機能性カップリング剤には、例えば米国特許第3,766,301号に開示される安息香酸メチルが含まれる。放射状ブロック共重合体を形成するのに有用な2、3又は4個の機能基を有する他のカップリング剤には、例えば、米国特許第3,244,664号、第3,692,874号、第4,076,915号、第5,075,377号、第5,272,214号及び第5,681,895号に開示される四塩化シリコン及びアルコキシシラン、米国特許第3,281,383号に開示されるポリエポキシド、ポリイソシアン酸塩、ポリイミン、ポリアルデヒド、ポリケトン、ポリ無水物、ポリエステル、ポリハロゲン化物、米国特許第3,594,452号に開示されるジエステル、米国特許第3,880,954号に開示されるメトキシシラン、米国特許第3,985,830号に開示されるジビニルベンゼン、米国特許第4,104,332号に開示される三塩化1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、米国特許第4,185,042号に開示されるグリシドキシトリメトキシシラン、及び米国特許第4,379,891号に開示されるオキシジプロピルビス(トリメトキシシラン)が含まれる。
【0025】
本発明のある実施態様において、使用されるカップリング剤は一般式R−Si−(OR’)のアルコキシシランであり、xは0又は1であり、x+y=3又は4であり、R及びR’は同一又は異別であり、Rはアリール、直鎖アルキル及び分岐鎖アルキル炭化水素基から選択され、R’は直鎖及び分岐鎖アルキル炭化水素基から選択される。前記アリール基は、好ましくは6ないし12個の炭素原子を有する。前記アルキル基は好ましくは1ないし12個の炭素原子を、より好ましくは1ないし4個の炭素原子を有する。融解条件下で、これらのアルコキシシランカップリング剤は4を超える機能性を生じるようさらにカップリングできる。好ましいテトラアルコキシシランは、テトラメトキシシラン(「TMSi」)、テトラエトキシシラン(「TESi」)、テトラブトキシシラン(「TBSi」)、及びテトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)シラン(「TEHSi」)である。好ましいトリアルコキシシランは、メチルトリメトキシシラン(「MTMS」)、メチルトリエトキシシラン(「MTES」)、イソブチルトリメトキシシラン(「IBTMO」)及びフェニルトリメトキシシラン(「PhTMO」)である。これらのうち、より好ましいのはテトラエトキシシラン及びメチルトリメトキシシランである。
【0026】
本発明のある重要な態様は、前記ポリマーの微小構造である。本発明に関連する前記微小構造は、前記Eブロック及び/又はEブロックにおける多量のビニルである。この立体配置は、前記ジエンの重合化の間に調節剤を使用することによって達成できる。典型的な調節剤はジエチルエーテルである。本明細書に参照によって組み込まれる開示である米国特許第Re27,145号及び米国特許第5,777,031号を参照してほしい。有用とされるブロック共重合体を調製することに関する当業者に公知のいずれかの微小構造調節剤は、本発明のブロック共重合体を調製するのに使用できる。
【0027】
本発明の実施において、前記ブロック共重合体はそれらが水素化の前に前記E及び/又はEブロックにおける約60ないし約85モル%ビニルを有するよう調製される。別の実施態様において、前記ブロック共重合体は、それらが約65ないし約85モル%ビニル含有量を有するよう調製される。さらに別の実施態様において、前記ブロック共重合体は、それらが約70ないし約85モル%ビニル含有量を有するよう調製される。本発明の別の実施態様は、ブロック共重合体が前記E及び/又はEブロックにおいて約73ないし約83モル%ビニル含有量を有するよう調製されるブロック共重合体を含む。
【0028】
ある実施態様において、本発明は、水素化されたブロック共重合体である。本発明の水素化されたブロック共重合体は、本分野で公知のいくつもの水素化プロセスのうちのいずれかを使用して選択的に水素化された。例えば、前記水素化は、米国特許第3,494,942号、第3,634,594号、第3,670,054号、第3,700,633号、及び第Re.27,145号において教示されるものなどの方法を使用して達成でき、それらの開示は本明細書に参照によって組み込まれている。共役ポリジエンブロック中の二重接合に対して選択的であり、ポリスチレンブロック中の前記芳香族不飽和を実質的にそのままの状態に保つ任意の水素化方法が、本発明の水素化されたブロック共重合体を調製するために使用できる。
【0029】
従来技術において公知であり、本発明の水素化されたブロック共重合体を調製するのに有用な方法は、適切な触媒、特に鉄グループ金属原子、特にニッケル又はコバルトを含む触媒又は触媒前駆体及びアルミニウムアルキルなどの適切な還元剤の使用を包含する。チタンベースの触媒系も、有用である。一般に、前記水素化は、約20℃ないし約100℃の範囲内の温度で、約100psig(689kPa)ないし約5,000psig(34,473kPa)の範囲内の水素分圧で適切な溶媒中で達成できる。溶液全体に基づいた鉄グループ金属の重量による約10ppmないし約500ppmの範囲内の触媒濃度が一般に使用され、水素化条件での接触は一般に約60ないし約240分の範囲の時間で持続される。前記水素化が完了した後、前記水素化触媒及び触媒残部は前記ポリマーから一般に分離されるであろう。
【0030】
本発明の実施において、前記水素化されたブロック共重合体は80%を超える水素化度を有する。このことは、前記E又はEブロックにおける抱合されたジエン二重接合の80%を超えるものがアルケンからアルカンへ水素化されたことを意味する。ある実施態様において、前記E又はEブロックは約90%を超える水素化度を有する。別の実施態様において、前記E又はEブロックは約95%を超える水素化度を有する。
【0031】
本発明の実施において、前記ブロック共重合体のスチレン含有量は約13%ないし約25重量%である。ある実施態様において、前記ブロック共重合体のスチレン含有量は約15%ないし約24%である。これらの範囲内のいずれかのスチレンが本発明と併用して使用できる。水素化後、前記Sブロックにおけるスチレン二重接合の0ないし10%は、本発明の実施において水素化されている。
【0032】
本発明のブロック共重合体における前記Sブロックの各々の分子量は、本発明のブロック共重合体において約5,000ないし約7,000である。ある実施態様において、前記Sブロックの各々の分子量は、約5,800ないし約6,600である。本発明のブロック共重合体の前記Sブロックはこれらの範囲内のいずれかの分子量を有するポリスチレンブロックでありうる。
【0033】
本発明の実施において、前記Eブロックは単一のポリジエンブロックである。これらのポリジエンブロックは、約40,000ないし約70,000の範囲の分子量を有しうる。前記Eブロックは、約20,000ないし約35,000の分子量の範囲を有するポリジエンブロックである。ある実施態様において、前記Eブロックの分子量の範囲は約45,000ないし約60,000であり、カップリングされる前のカップリングされるブロック共重合体の各Eブロックについての分子量の範囲は、約22,500ないし約30,000である。
【0034】
従来の水素化されたブロック共重合体を上回る本発明のある利点は、それらが簡単に鋳造できるか又は形状若しくはフィルムへと連続して押し出し形成できるか又は繊維へと妨糸できる高いメルトフローを有することである。この特徴によってエンドユーザーは、特性を劣化し、領域夾雑、煤煙を生じ、鋳型及びダイス上で堆積される添加物の使用を回避するか又は少なくとも制限することが可能になる。しかし、本発明の水素化されたブロック共重合体は、非効率的なカップリング由来のジブロックなどのこれらの望ましくない効果を生じうる夾雑物質において非常に低くもある。本発明のブロック共重合体及び水素化されたブロック共重合体はジブロック含有量の15重量%未満を有し、このようなジブロックは一般式
SE又はSE
を有し、式中、S、E及びEはすでに定義されるとおりである。ある実施態様において、前記ジブロックレベルは10%未満であり、別の実施態様においては8%未満である。例えば、前記水素化されたブロック共重合体の構造が(S−EXである場合、前記ブロック共重合体は、前記S−E種の10%未満を含有する。すべての百分率は重量による。
【0035】
本発明の水素化されたブロック共重合体のある特徴は、それらが低い秩序−無秩序温度を有することである。本発明の水素化されたブロック共重合体の秩序−無秩序温度(ODT)は、典型的には約250℃未満である。250℃を超えると、いくつかの適用についての特定の場合において250℃を超えるODTが利用できるものの、前記ポリマーは加工するのがより困難である。あるこのような場合は、前記ブロック共重合体が他の成分と組み合わさって加工を改善するときである。このような他の成分は、熱可塑性ポリマー、油、樹脂、ワックス又はその類似物であってもよい。ある実施態様において、前記ODTは約240℃未満である。好ましくは、本発明の水素化されたブロック共重合体は、約210℃ないし約240℃のODTを有する。この特性はいくつかの適用において重要でありえ、なぜなら、前記ODTが210℃を下回るとき、前記ブロック共重合体は望ましくない過剰の又は低い力であるクリープを呈するかもしれないからである。本発明の目的のため、前記秩序−無秩序温度は、それ以上の温度で毛細管流体力学又は動的流体力学によって0剪断粘性が測定できる温度として定義される。
【0036】
本発明の目的について、「メルトインデックス」という語は、ASTM D1238にしたがった230℃及び2.16kg重量での前記ポリマーのメルトフローの測定結果である。それは、10分間に融解レオメータのオリフィスを通過するポリマーのgの単位で表される。本発明の水素化されたブロック共重合体は、より高いメルトインデックスを有する同様の水素化されたブロック共重合体と比べより簡単に加工できる望ましい高いメルトインデックスを有する。ある実施態様において、本発明の水素化されたブロック共重合体は12以上のメルトインデックスを有する。別の実施態様において、本発明の水素化されたブロック共重合体は少なくとも15のメルトインデックスを有する。さらに別の実施態様において、本発明の水素化されたブロック共重合体は少なくとも40のメルトインデックスを有する。本発明の別の実施態様には、約20ないし約100のメルトインデックスを有する水素化されたブロック共重合体が含まれる。本発明のさらに別の実施態様は、約50ないし約85のメルトインデックスを有する水素化されたブロック共重合体を含む。
【0037】
更なる実施態様において、前記エラストマー配合物芯はさらに、熱可塑性ポリマーを含む。この実施態様において、前記エラストマー芯は、ポリプロピレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリアミド、ポリ(テレフタル酸エチレン)、ポリ(テレフタル酸ブチレン)、ポリ(テレフタル酸トリメチレン)及び前記鞘組成物に関して本明細書に記載の他の熱可塑性物質などの熱可塑性ポリマーの重量による50%までを含有する。
【0038】
更なる実施態様において、前記複合繊維のエラストマー芯は、約20ないし約60モル%の範囲のビニル含有量を有する選択的に水素化されたブロック共重合体を含む。この実施態様において、前記ブロック共重合体は、それが本明細書に表される記述にしたがって高いメルトインデックスを有するような真の総分子量を有する。
【0039】
本発明は、主として熱可塑性ポリマーからなる鞘を含む。典型的な熱可塑性ポリマーには、例えば、エチレンホモポリマー、エチレン/α−オレフィン共重合体、プロピレンホモポリマー、プロピレン/α−オレフィン共重合体、衝撃ポリプロピレン共重合体、ブチレンホモポリマー、ブチレン/αオレフィン共重合体、及び他のαオレフィン共重合体又はインターポリマー(interpolymer)が含まれる。
【0040】
代表的なポリエチレンには、例えば実質的に直鎖状のエチレンポリマー、均質に分岐される直鎖状エチレンポリマー、不均質に分岐される直鎖状エチレンポリマーがあるがそれらには制限されず、それらには直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度又は非常に低密度のポリエチレン(ULDPE又はVLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)及び高圧低密度ポリエチレン(LDPE)が含まれる。
【0041】
前記熱可塑性ポリマーがポリエチレンであるとき、メルトフロー指数とも呼ばれる前記メルトフローは、ASTM D1238にしたがって230℃及び2.16kg重量で少なくとも25g/10分でなければならない。ポリエチレンの好ましいタイプは直鎖状低密度ポリエチレンである。
【0042】
代表的なポリプロピレンには、例えば、プロピレンがモル基準に関する主要成分である実質的にアイソタクティックなプロピレンホモポリマー、ランダムαオレフィン/プロピレン共重合体、及び前記ポリマーマトリクスが主としてポリプロピレンホモポリマーであるか又はランダム共重合体であり、前記ゴム相がα−オレフィン/プロピレンランダム共重合体であるポリプロピレン衝撃共重合体が含まれるがそれらには制限されない。ポリプロピレンの適切なメルトフローは、ASTM D1238にしたがって230℃及び2.16kgで少なくとも10g/10分である。より好ましくは少なくとも20g/10分のメルトフローである。ポリプロピレンホモポリマーは、ポリプロピレンの好ましいタイプである。
【0043】
エチレン/α−オレフィン共重合体及びプロピレン/α−オレフィン共重合体の例には、Dow Chemical社製のAFFINITY、ENGAGE及びVERSIFYポリマー、及びExxon Mobil社製のEXACT及びVISTAMAXXポリマーが含まれるがそれらには制限されない。このような共重合体の適切なメルトフローは、ASTM D1238にしたがって230℃及び2.16kg重量で少なくとも10g/10分でなければならない。
【0044】
本明細書に含まれるさらに他の熱可塑性ポリマーは、塩化ポリビニル(PVC)及びPVCと他の材料との配合物、ポリアミド、及びポリ(テレフタル酸エチレン)、ポリ(テレフタル酸ブチレン)及びポリ(テレフタル酸トリメチレン)などのポリエステルである。前記特定のタイプに関係なく、前記熱可塑性ポリマーは、繊維又は繊維の構成要素への加工に適したメルトフローを有していなければならない。
【0045】
前記エラストマー芯配合物において加工補助剤及び他の添加物を使用することは時々望ましい。このような補助剤及び添加物の典型的なものは、他のブロック共重合体、オレフィンポリマー、スチレンポリマー、増粘性樹脂、ポリマー増量油(polymer extending oil)、ワックス、賦形剤、補強剤、潤滑剤、安定剤、及びそれらの混合物からなる群から選択される成分である。
【0046】
本発明の実施態様において、前記エラストマー配合物のゴムE及び/又はEブロックと相溶性のある樹脂を含むことが特に有用である。このことは前記エラストマー配合物の流れを促進するよう機能する。さまざまな樹脂が公知であり、例えば米国特許第4,789,699号、第4,294,936号、及び第3,783,072号において論議され、その内容は前記樹脂に関して参考文献によって本明細書に組み込まれる。前記エラストマー配合物及び/又はポリオレフィンのゴムE及び/又はEブロックと相溶性のあるいずれかの樹脂が使用でき、高い加工(例、押し出し成形)温度を耐容できる。一般に、水素化された炭化水素樹脂は、それらのよりよい温度安定性のため、好ましい樹脂である。有用な樹脂を説明する例は、低分子量の完全に水素化されたα−メチルスチレンREGALREZ(R)(Eastman Chemical社)、ARKON(R)P(Arakawa Chemical社)シリーズ樹脂などの水素化された炭化水素樹脂、及びZONATAC(R)501 Lite(Arizona Chemical社)などのテルペン炭化水素である。本発明は、本明細書に列挙される樹脂の使用には制限されない。一般に、前記樹脂は、C炭化水素樹脂、水素化されたC炭化水素樹脂、スチレン化されるC樹脂、C/C樹脂、スチレン化されるテルペン樹脂、完全に水素化されたか又は部分的に水素化されたC炭化水素樹脂、ロジンエステル(rosins ester)、ロジン(rosins)誘導体及びそれらの混合物からなる群から選択されてもよい。当業者は、前記組成物の構成要素と相溶性があり、高い加工温度に耐容でき、及び本発明の目的を達成できる他の樹脂も使用できることを理解するであろう。
【0047】
前記複合繊維は、流動及び/又は相溶性を促進するためのワックスも含むことができる。適切なワックスは、50ないし70℃の凝固点を有するものである。ワックスの適切な量は、前記エラストマー配合物の重量に基づいて0.1ないし75重量%、好ましくは5ないし60重量%である。動物、昆虫、植物、合成及び鉱物ワックスが使用でき、ミネラルオイル由来のものが好ましい。ミネラルオイルワックスの例には、ブライトストックの軟蝋(bright stock slack wax)、中間機械油軟蝋(medium machine oil slack wax)、高融点ワックス及び微結晶性ワックスがある。軟蝋の場合、油の25重量%までが存在してもよい。前記ワックスの凝固点を上昇させるための添加物も存在できる。
【0048】
前記複合繊維は油も含んでもよい。前記油は、前記繊維の加工可能性を改善するか又は前記繊維の軟度を高めるために組み込まれてもよい。特に好ましいのは、前記ブロック共重合体のE及び/又はEと相溶性のある油のタイプである。より高い芳香族配合物含有量の油が条件を満たしている一方で、低い揮発性及び50%未満の芳香族配合物含有量を有するそれらの石油ベースのホワイトオイルが好ましい。前記油は、低い揮発性をさらに有するべきであり、好ましくは約260℃を超える初留点を有する。採用される油の量は、ゴム又はブロック共重合体の重量による100部分あたり重量による約0ないし約300部分で変動し、好ましくは重量による約20ないし約150部分である。
【0049】
前記エラストマー配合物は、抗酸化剤の添加又は抗酸化剤の混合によって典型的に安定化される。頻繁に、立体的に込み合ったフェノール類安定剤が使用されるか又は、リンベースの安定剤が、日本国特許第94055772号において開示されるなどの立体的に込み合ったフェノール類安定剤との組み合わせで使用されるか又は、日本国特許第94078376号において開示されるなどのフェノール類安定剤の組み合わせが使用される。
【0050】
色素、染色剤、蛍光増白剤、青味剤及び難燃剤などの他の添加物が、本発明の複合繊維において使用できる。
【0051】
本発明の複合繊維は、さまざまな物品を形成するのに使用できる。これらの物品には弾性モノフィラメント、織布、スパンボンド不織布又はフィルター、メルトブロー(melt−blown)布、短繊維、糸、接合され毛羽立てられた織布、及びその類似物が含まれる。これらの物品を作製するのに典型的に使用されるプロセスのいずれかは、複合繊維へと2つの材料を押し出し成形するようそれらが装備されるときに採用できる。
【0052】
特に、不織布又は織布は、本分野で公知のプロセスのいずれかによって形成できる。スパンボンドと典型的に呼ばれるあるプロセスは本分野で十分に公知である。米国特許第4,405,297号は典型的なスパンボンドプロセスを記載する。前記スパンボンドプロセスは、紡糸金口を通じて前記融解物から繊維を押し出し成形し、気流を使用して前記繊維を急冷及び/又は引き出し、及び不織布を回収及び接合することを一般に含む。前記不織布の接合はいずれかの温熱的、化学的又は機械的方法によって典型的に達成され、それには前記織布の繊維間の複数の中間的な接合を作製する上で効果的なウォーターエンタングルメント及びニードルパンチプロセスを含む。本発明の不織布は、米国特許第5,290,626号に記載されるなどのメルトブロー(melt−blown)プロセスを使用しても形成できる。毛羽立った織布は、不織布自体で交差機械方向において折りたたみ及び接合することによって不織布から形成できる。
【0053】
本発明の不織布は、おむつ、ウェストバンド、ストレッチパネル、使い捨て外被、医用及び個人用衛生物品、フィルター、及びその類似物などの多様な弾性織物のために使用できる。
【0054】
本発明の弾性モノフィラメントとは、多様な目的に使用される連続した単一の複合繊維であり、紡糸、引き出し、急冷及び巻き取りを含む本分野で公知の方法のいずれかによって形成できる。本明細書で使用されるように、短繊維とは、連続して共押し出しされる複合繊維の切断された又は切り刻まれたセグメントを意味する。
【0055】
複合繊維の糸は公知のプロセスによって形成できる。米国特許第6,113,825号は糸の形成の一般的なプロセスを教示する。一般に、前記プロセスは紡糸金口からの複数の繊維の融解押し出し成形、複数のフィラメント糸を形成するために互いにフィラメントを引き出し巻き取ること、1つ以上の熱処理領域を通じて必要に応じて前記糸を伸長し又は引き伸ばすこと、及び前記糸を冷却及び巻き取ることを含む。
【0056】
本発明の物品は、単独で又は前記複合繊維で作製される他の物品との又は材料の他のクラスとの組み合わせで使用できる。一例として、不織布は弾性モノフィラメントと組み合わせることができ、弾性ストレッチパネルを提供する。別の例として、不織布は他の非エラストマー不織布又は多くのタイプのポリマーフィルムへ接合できる。
【0057】
本発明の複合繊維を作製するプロセスにおいて、2つの個別の単一ねじ押し出し成形機が使用され、前記鞘ポリマー及び芯ポリマーを2つの個別の融解ポンプへと押し出し成形する。前記融解ポンプの後、前記ポリマーは一連のプレート及びバッフルを介して紡糸金口における前記ポリマーの複合立体配置へと互いに至る。前記紡糸金口を出る際、前記繊維は冷気急冷キャビネットを介して冷却/急冷される。急冷の後、前記繊維を吸引装置又は一連の冷却ロールを介して引き出す。冷却ロールが使用される場合、前記繊維は巻き取り装置へと取り上げられる。吸引装置が使用される場合、前記繊維は前記吸引装置の真下のドラムに回収できる。
【0058】
前記プロセスのある重要な態様は、前記複合繊維を生成できる速度である。本発明の繊維によって表される高い流動の特徴によって高い押し出し成形速度が可能になる。このことは、商業用装置が高い押し出し成形速度で作動するため実際の観点から重要である。この方法で、経済的な処理量に達することができる。本発明において、1分間あたり少なくとも800mの押し出し成形速度(800mpm)が必要である。より好ましくは約1000mpm以上の速度であり、最も好ましくは約2000mpm以上の速度である。
【0059】
本明細書に開示される適用について、細いデニールの繊維が好ましい。これらの細いデニールの繊維は、材料の非常に少量がそのように構成される物品における弾性挙動に影響を及ぼすよう使用できる観点において特に効率のよい弾性材料である。本発明において、0.1ないし30のデニール(9000mの繊維あたりのg)を有する複合繊維を作製できる。より好ましくは、0.5ないし20g/9000mのデニールを有する繊維であり、最も好ましくは1ないし10g/9000mのデニールを有する繊維である。
【実施例】
【0060】
本明細書において、「弾性」という語は、偏向力の適用に際して、伸張可能なすなわち、少なくとも約60%(つまりその弛緩した偏向していない長さの少なくとも約160%の引き伸ばされ、偏向した長さへ)伸長可能であり、前記伸張し伸長する力の緩和に際しその伸長の少なくとも50%を回復し得るいずれかの材料を意味するために使用される。仮説的な例は、少なくとも1.60インチ(4.06cm)へ伸長可能であり、1.60インチ(4.06cm)へ伸長され緩和される際に、1.27インチ(3.23cm)以下の長さに回復し得る材料の1インチ試料である。多くの弾性材料は、60%をはるかに超える(つまり、その弛緩した長さの160%をはるかに超える)ことによって伸長でき、例えば100%以上伸長でき、及びこれらの多くは実質的にそれらの初期の弛緩した長さへ、例えば伸張力の緩和に際し、それらの初期の弛緩した長さの105%以内に回復するであろう。
【0061】
弾性を、100%伸長時の%歪み回復として前記複合繊維から形成される糸に関して測定した。前記糸は、前記紡糸金口における孔の数に依存して36ないし144の数の範囲にわたる複数の個々の連続した繊維からなった。前記糸を、100%伸長へと手動で引き伸ばし、次いで弛緩させた。次に、前記糸の弛緩した長さを測定し、%回復を算出した。この方法において、前記弾性を%回復として決定する。
【0062】
本明細書で使用されるように、「引っ張り強さ」という語は、デニールあたりのグラムにおいて測定される糸の張力の測定結果を指す。
【0063】
(実施例1ないし8)
鞘/芯の比が30/70及び20/80のポリプロピレン鞘とSEBSエラストマー芯とを有する複合繊維を後述にしたがって作製した。前記ポリプロピレン鞘は、The Dow Chemical Company製の名目38MFRホモポリマー(5D49)であった。前記エラストマー芯(ポリマー7)は名目50MFRであり、高いビニル(ビニル含有量=75モル%)であり、18%スチレン含有量とカップリングしたSEBS共重合体(カップリング効率=96%)であり、分子量6600のスチレンであり、分子量60,000の中間ブロックであった。
【0064】
複合技術及びHills社製紡糸金口を使用する従来の商業型の高速紡糸プロセスを使用して前記繊維を作製した。
【0065】
表1は前記繊維の典型的な紡糸性能及び機械的特性を供与する。表1から、高速紡糸が達成でき(実施例3,5、及び8)、同様にかなりの繊維張力及び破壊に至る伸長(実施例1,2,4,6,7)に達成できることがわかる。例外的に高速紡糸が達成できた。前記鞘−芯複合繊維(実施例3及び5)を2700mpmで紡糸した。
【0066】
(実施例9ないし13)
鞘/芯の比が30/70及び20/80のポリプロピレン鞘とSEBSエラストマー芯とを有する複合繊維を後述にしたがって作製した。前記ポリプロピレン鞘は、The Dow Chemical Company製の名目38MFRホモポリマー(5D49)であった。前記エラストマー芯(ポリマー5)は31MFRであり、高いビニル(ビニル含有量=76モル%)であり、18%スチレン含有量とカップリングしたSEBS共重合体(カップリング効率=94%)であり、分子量6200のスチレンであり、分子量56,000の中間ブロックであった。
【0067】
複合技術及びHills社製紡糸金口を使用する従来の商業型の高速紡糸プロセスを介して前記繊維を作製した。
【0068】
良好な張力特性は、前記31MFRエラストマーを使用して達成できた(実施例9、11及び12)。前記達成可能な紡糸速度は、1500ないし1800mpmの範囲であった。
【0069】
(実施例14ないし25)
鞘/芯の比が30/70及び20/80のポリプロピレン鞘とSEBSエラストマー芯とを有する複合繊維を後述にしたがって作製した。前記ポリプロピレン鞘は、The Dow Chemical Company製の名目38MFRホモポリマー(5D49)であった。前記エラストマー芯(ポリマー6)は名目20MFRであり、高ビニル(ビニル含有量=76%)であり、19%スチレン含有量とカップリングしたSEBS共重合体(カップリング効率=95%)であり、分子量6100のスチレンであり、分子量50,000の中間ブロックであった。
【0070】
複合技術及びHills社製紡糸金口を使用する従来の商業型の高速紡糸プロセスを介して前記繊維を作製した。
【0071】
表3の結果は、より低いメルトフローのエラストマーが紡糸性能(最大紡糸速度)に及ぼす有害な効果を有するが、前記張力特性は弾性繊維に対して合理的であるとなお考慮されることを示す。表3は、前記ポリプロピレンが前記繊維横断面のより大きな部分になるにつれ、紡糸性能が改善し、及び比較的低いメルトフローのエラストマーでさえ、正確な鞘/芯比で良好な紡糸性能を提供できることも示す。さらに、前記ポリプロピレンは、その濃度が増すため前記繊維の張力を改善するが、おそらく前記繊維弾性に負の効果を有する。
【0072】
(実施例26ないし36)
鞘/芯の比が30/70及び20/80のポリプロピレン鞘とSEBSエラストマー芯とを有する複合繊維を、後述にしたがって作製した。前記ポリプロピレン鞘は、The Dow Chemical Company製の名目38MFRホモポリマー(5D49)であった。前記エラストマー芯はポリプロピレン(5D49)及びエラストマー(ポリマー7)との配合物であった。配合物1は、10重量%のDow 5D49ポリプロピレンと90重量%のポリマー7との配合物であった。配合物2は、20重量%のDow 5D49ポリプロピレンと80重量%のポリマー7との配合物であった。
【0073】
複合技術及びHills社製紡糸金口を使用する従来の商業型高速紡糸プロセスを介して前記繊維を作製した。表4は、ポリプロピレンとのエラストマーの配合が複合弾性繊維のための良好なエラストマー芯をなしたことを示す。高速紡糸及び良好な張力及び弾性特性に到達した。
【0074】
比較上の単一成分繊維(実施例36)も表4に示す。前記単一成分繊維は、前記エラストマー配合物(ポリマー7)のみからなり、熱可塑性ポリマー鞘はなかった。低速紡糸を必要とし、前記繊維は前記紡糸プロセスの間受容できない粘着性を呈した。前記結果として生じる単一成分繊維は、自己接着して分離できなかった。
【0075】
(実施例37ないし39)
複合繊維は、スパンボンドプロセスを模擬するために単一の空気吸引装置を介しても紡糸した。最大紡糸速度に影響を及ぼすために前記吸引装置における気圧を使用し、つまり前記圧力が高ければ高いほど、前記紡糸速度は大きい。前記実施例のすべてについて、1つの孔あたりの前記ポリマー処理量(0.35g/孔/分)は同一である。
【0076】
実施例37は、5D49ポリプロピレン単独の比較上の単一成分繊維であった。繊維が破壊し始める前の最大の空気圧は40psiに到達した。この熱可塑性ポリマーの繊維は弾性がなかった。
【0077】
実施例38は、弾性スパンボンド繊維を作製するため、20/80の比で5D49ポリプロピレン鞘及び50MFR弾性芯(ポリマー7)を使用した。フィラメントが破壊し始める前の前記最大紡糸速度は20psiであった。実施例39は、鞘/芯の比が40/60のポリプロピレン(5D49)及び20MFRエラストマー(ポリマー6)からなる複合繊維であった。繊維が破壊し始める前の前記最大紡糸速度は25psiであった。実施例38及び39の複合繊維は弾性があった。
【0078】
(実施例40ないし45)
実施例40ないし44は、前記熱可塑性ポリマー鞘(6811A)としてDow ASPUNポリエチレンを、前記弾性芯としてポリマー7を使用する鞘/芯複合繊維を示す。これらの実施例は、ポリエチレンが複合弾性繊維のための鞘としても使用できることを示す。
【0079】
複合技術及びHills社製紡糸金口を使用する従来の商業型の高速紡糸プロセスを介して前記繊維を作製した。
【0080】
(実施例46)
複合弾性繊維を後述にしたがって、比較的低いメルトフロー、少量のビニルエラストマー(ポリマー8)を使用して作製した。ポリマー8は、名目9MFRであり、38%ビニルとカップリングしたSEBSエラストマーであった。ポリマー8は、分子量5000のスチレンブロック、分子量47000の中間ブロック、94%のカップリング効率を有する。前記名目スチレン含有量は18重量%である。この繊維のための鞘は、名目12MFRホモポリマーポリプロピレンである。この実施例は、複合繊維が少量のビニルブロック共重合体を使用して作製できることを示す一方で、より高いメルトフローのエラストマーが最適な紡糸性能のために好ましいであろう。
【0081】
【表1】

【0082】
【表2】

【0083】
【表3】

【0084】
【表4】

【0085】
【表5】

【0086】
【表6】

【0087】
【表7】

【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】図1は、本発明の複合繊維の束の横断切片を示す。熱可塑性ポリマー鞘は各エラストマー芯を取り囲む環状領域として明白である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリマー鞘とエラストマー配合物芯とを含む複合繊維であって、前記エラストマー配合物芯が、Sブロック及びE又はEブロックを有し且つ一般式
S−E−S,(S−E,(S−ES,(S−E
を有する選択的に水素化されたブロック共重合体又はその混合物を含む、複合繊維
(ここで、
a.水素化の前に前記Sブロックがポリスチレンブロックであり、
b.水素化の前に前記Eブロックが40,000ないし70,000の分子量を有する、ポリブタジエン、ポリイソプレン及び/又はその混合物のポリジエンブロックであり、
c.水素化の前に前記Eブロックが20,000ないし35,000の分子量を有する、ポリブタジエン、ポリイソプレン及び/又はそれらの混合物のポリジエンブロックであり、
d.nが2ないし6の値を有し、及びXはカップリング剤の残部であり、
e.前記ブロック共重合体のスチレン含有量が13ないし25重量%であり、
f.水素化の前の前記ポリジエンブロックのビニル含有量が75ないし85モル%であり、
g.前記ブロック共重合体が、一般式
S−E又はS−E
(式中S、E及びEがすでに定義されているとおりである。)
を有する単位の15重量%未満を包含し、
h.水素化後、スチレン二重結合の約0ないし10%が水素化されており、及び共役ジエン二重結合の少なくとも80%が水素化されており、
i.前記Sブロックの各々の分子量が5,000ないし7,000であり、及び
j.前記ブロック共重合体のメルトインデックスが、230℃及び2.16kg重量でASTM D1238にしたがって12g/10分以上である。)。
【請求項2】
ポリスチレンブロックSの分子量が5,800ないし6,600であり、及びEブロックが45,000ないし60,000の分子量を有するポリブタジエンであるか、又はEブロックが2つ以上のカップリングされたポリブタジエンブロックであり、前記ポリブタジエンブロックの各々が、カップリングされる前に22,500ないし30,000の分子量を有する、請求項1に記載の複合繊維。
【請求項3】
選択的に水素化されたブロック共重合体の構造が(S−EXであり、及び前記ブロック共重合体が、カップリングされていないS−E種の10%未満を含有する、請求項1又は2に記載の複合繊維。
【請求項4】
エラストマー配合物芯が、ポリプロピレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリアミド、ポリ(テレフタル酸エチレン)、ポリ(テレフタル酸ブチレン)、又はポリ(テレフタル酸トリメチレン)である熱可塑性ポリマーの50重量%までをさらに含む、請求項1ないし3のうちの何れか一項に記載の複合繊維。
【請求項5】
熱可塑性ポリマー鞘とエラストマー配合物芯との容積比が5/95ないし49/51である、請求項1ないし4のうちの何れか一項に記載の複合繊維。
【請求項6】
ブロック共重合体のメルトフローが、ASTM D1238にしたがって230℃及び2.16kg重量で15g/10分より大きく、好ましくは40g/10分である、請求項1ないし5のうちの何れか一項に記載の複合繊維。
【請求項7】
ポリオレフィンがポリプロピレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリアミド、ポリ(テレフタル酸エチレン)、ポリ(テレフタル酸ブチレン)、又はポリ(テレフタル酸トリメチレン)である、請求項1ないし6のうちの何れか一項に記載の複合繊維。
【請求項8】
熱可塑性ポリマーがASTM D1238にしたがって230℃及び2.16kgで、少なくとも20g/10のメルトフローを有するポリプロピレンであるか又は少なくとも25g/10分のメルトフローを有する直鎖状低密度ポリエチレンである、請求項7に記載の複合繊維。
【請求項9】
弾性モノフィラメント、織物、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布若しくはフィルター、短繊維、糸又は接合され毛羽立てられた織物である、請求項1ないし8のうちの何れか一項に記載の複合繊維を含む物品。
【請求項10】
複合繊維がフィラメントあたり9000mあたり0.1ないし30gのデニールを有するように、熱可塑性ポリマーから主としてなる鞘と、エラストマー配合物から主としてなる芯とを有する1本以上のフィラメントを1分間あたり少なくとも500mの速度で形成するために、ダイスを通じて押し出し成形するよう個別の融解ポンプを使用して前記熱可塑性ポリマー及び前記エラストマー配合物に力が加えられる、前記熱可塑性ポリマー及び前記エラストマー配合物の共押し出しを含む、請求項1ないし8のうちの何れか一項に記載の複合繊維を作製するためのプロセス。

【図1】
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【公表番号】特表2007−526410(P2007−526410A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−501884(P2007−501884)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【国際出願番号】PCT/US2005/006456
【国際公開番号】WO2005/092979
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(501140348)クレイトン・ポリマーズ・リサーチ・ベー・ベー (44)
【Fターム(参考)】