説明

高い溶解安定性および灰色化防止(vergrauungsinhibierender)効果を有するポリエステル濃厚物

本発明は、12〜60%のポリエステルの重量比を有する水性のポリエステル濃厚物であって、前記ポリエステルを以下:
a)1種またはそれ以上のスルホ基不含芳香族ジカルボン酸、および/またはそれらの塩、および/またはそれらの無水物、および/またはそれらのエステル、
b)場合により、1種またはそれ以上のスルホ基含有ジカルボン酸、それらの塩、および/またはそれらの無水物、および/またはそれらのエステル、
c)1,2−プロピレングリコール、
d)エチレングリコール、
e)式(1)
O(CHRCHRO)H (1)
[式中、
は、1〜22個のC原子を有する直鎖状または分岐状の飽和または不飽和アルキル基であり、
およびRは、互いに独立して、水素、または1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であり、そして
nは1〜50の数、好ましくは2〜10である]
で表される1種またはそれ以上の化合物、
f)場合により、式(2)
H−(OCHCH−SOX (2)
[式中、
mは1〜10の数であり、そして
Xは、水素またはアルカリ金属イオンである]
で表される1種またはそれ以上の化合物、および
g)場合により、1種またはそれ以上の架橋性多官能化合物、
から選択される成分の重合により得ることができ、ここで、成分b)またはf)の少なくとも1つが存在することを条件とし、そして、成分c)の1,2−プロピレングリコールとd)エチレングリコールとのモル比が、1.60以上であることを条件とする、ポリエステル濃厚物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な溶解安定性を特徴とし、洗浄液において繊維製品に対して強力な灰色化防止効果を示す、水性ポリエステル濃厚物(ソイルリリースポリマー、SRP)に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維製品からの汚れの乖離の改善のための、再汚染の減少のための、機械的負荷における繊維の保護のための、および織物に防しわ効果を施すための、洗剤におけるポリエステルの使用は公知である。多くのポリエステルタイプ、およびそれらの洗剤および洗浄剤における使用が特許文献に記載されている。
【0003】
特許文献1では、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、または高いエチレングリコール含量を有するそれらの混合物、少なくとも10個のグリコール単位を有し、短鎖アルキル基、特にメチル基で一方の末端がキャップされているポリエチレングリコール、ジカルボン酸または−エステル、および場合によりスルホン化芳香族ジカルボン酸のアルカリ金属塩からなるポリエステルが特許請求されている。
【0004】
特許文献2には、モノマーエチレングリコール、200〜1000g/molの分子量を有するポリエチレングリコール、芳香族ジカルボン酸およびスルホン化芳香族ジカルボン酸のアルカリ金属塩から、および場合により少量の脂肪族ジカルボン酸、例えばグルタル酸、アジピン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸から製造される、2000〜10000g/molの範囲の分子量を有するポリエステルが記載されており、ポリエステル織物またはポリエステル−綿混合織物において、その防しわ効果およびソイルリリース作用がもたらされる。
【0005】
特許文献3には、テレフタレート単位およびスルホ基含有末端基、特にスルホエトキシ化末端基MOS(CHCHO)−Hを有するポリエステルが開示されており、その洗剤および柔軟剤における使用が記載されている。
【0006】
特許文献4には、(メタ)アリルアルコール、アルキレンオキシド、アリールジカルボン酸およびC〜Cグリコールの共重合、および後続のスルホン化により得られる、スルホ基含有末端基を有するポリエステルが記載されている。
【0007】
特許文献5では、ジ−もしくはポリヒドロキシスルホネート、テレフタレート−および1,2−オキシアルキレンオキシ単位からなる分岐状の骨格を有し、非イオン性またはアニオン性の末端基を有する、SRPとしてのポリエステルが特許請求されている。
【0008】
特許文献6では、スルホン化されたポリエトキシ/プロポキシ末端基を有するソイルリリースポリマーは結晶化しやすいため、ソイルリリース効果が減少してしまうことが説明されている。
【0009】
特許文献7および特許文献8には、テレフタル酸、スルホイソフタル酸および(ポリ)アルキレングリコール(1.7より小さいプロピレングリコール/エチレングリコールモル比を有する)からなるSRPが開示されている。
【0010】
消費者挙動の変化傾向の中で、全体の洗剤市場における液体洗剤の割合が世界的に増加している。ただし、使用形態の変化には、不要な副次的効果も伴い、それは、液体洗剤の物理的構造に原因がある。粉末においてのみ使用されるゼオライトは、洗浄液の水の硬度を効率的に低下させ、従って、灰色のもやとして織物上に析出し、特に白色の織物の場合に、繊維の不要な灰色化に寄与する石灰石鹸の形成を妨げる。しかしながら、ゼオライトの物理化学的性質(固体)は、この洗剤成分の液体調合物における使用を妨げる。この欠点により、現在でも、繊維の灰色化の問題はまだ、液体洗剤において満足に解決されていない。粉末洗剤と比べたこの欠点は、ポリアクリル酸ベースのコビルダーおよびセルロースをベースとする灰色化防止剤の添加により軽減することができるが、さらなる調製技術的な欠点、例えば濁り、高い粘度、または望ましくないレオロジープロファイルが許容される場合のみである。ゼオライトの他に、これまで一室系において液体調合物中で漂白系を使用することはできず、このことによりいつも、通常認められる一連の試験において粉末が液体洗剤よりも優れていると分類されてきた。
【0011】
消費者の要望を満たすためには、一方では洗浄液剤において所望の能力をもたらし、そして他方では、それぞれの調合物のレオロジーおよび外観には負の影響を及ぼさない、液体の洗剤のための効率的な灰色化防止剤の開発が必要とされている。
【0012】
テレフタレートをベースとするソイルリリースポリエステルが、効果的に繊維製品の灰色化を防ぐことができることは、文献から公知である。荷電された構造、例えばアニオン性ソイルリリースポリエステルが、全般的に、対応量で計量された非イオン性タイプよりも非常に多くの場合に有効であること示されている。それらの優れた灰色化防止プロファイルにも拘らず、これまではアニオン性ポリエステルは粉末調合物においてのみ使用されている。その理由は、スルホ基をベースとするポリエステルを水溶液にする困難性にある。一方、ポリマーの溶解挙動は、非常に強力に温度に依存する。多くのアニオン性ポリエステルは、25℃を超える温度からようやく水に十分に溶解する。次に、結晶化現象が、より低い温度での溶解を妨げる。この結晶化挙動により、水溶液においても、溶液中にあるポリマー鎖が遅れて結晶化し、小さい−および最も小さい結晶が形成し、これは、集合してネットワークを形成し、レオロジーにとって不利な影響を及ぼす。このような溶液または分散液は、意味のある固体含有量(>10重量%)で、もはや液体の洗剤に入れることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第4,702,857号
【特許文献2】米国特許第4,427,557号
【特許文献3】米国特許第4,721,580号
【特許文献4】米国特許第4,968,451号
【特許文献5】米国特許第5,691,298号
【特許文献6】米国特許第5,415,807号
【特許文献7】欧州特許出願公開第1966273号明細書
【特許文献8】国際公開第2008/110318号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、本発明の目的は、一方では液体洗剤において使用した場合に非常に良好な灰色化防止能力を有し、他方では、水溶液において、最小限の結晶化傾向しか示さず、溶液として貯蔵安定性である、スルホ基含有モノマーをベースとするポリエステル構造を開発することであった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
驚くべきことに、所定のプロピレングリコール/エチレングリコール(PG/EG)比を有する以下のスルホ基含有ポリエステルが、本発明の課題を解決することが見出された。
【0016】
本発明は、12〜60%、好ましくは15〜60%、特に好ましくは20〜50%、特に30〜45%のポリエステルの重量比を有する水性のポリエステル濃厚物であって、前記ポリエステルを以下:
a)1種またはそれ以上のスルホ基不含芳香族ジカルボン酸、および/またはそれらの塩、および/またはそれらの無水物、および/またはそれらのエステル、
b)場合により、1種またはそれ以上のスルホ基含有ジカルボン酸、それらの塩、および/またはそれらの無水物、および/またはそれらのエステル、
c)1,2−プロピレングリコール、
d)エチレングリコール、
e)式(1)
O(CHRCHRO)H (1)
[式中、
は、1〜22個のC原子を有する直鎖状または分岐状の飽和または不飽和アルキル基、好ましくはC−C−アルキル、特にメチルであり、
およびRは、互いに独立して、水素、または1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、好ましくは水素および/またはメチルであり、そして
nは1〜50の数、好ましくは2〜10である]
で表される1種またはそれ以上の化合物、
f)場合により、式(2)
H−(OCHCH−SOX (2)
[式中、
mは1〜10の数であり、そして
Xは、水素またはアルカリ金属イオンである]
で表される1種またはそれ以上の化合物、および
g)場合により、1種またはそれ以上の架橋性多官能化合物、
から選択される成分の重合により得ることができ、ここで、成分b)またはf)の少なくとも1つが存在することを条件とし、そして、成分c)の1,2−プロピレングリコールとd)エチレングリコールとのモル比が、1.60以上であることを条件とする、ポリエステル濃厚物に関する。
【0017】
好都合には、1,2−プロピレングリコール(PG):エチレングリコール(EG)のモル比は、1.60〜20.0、好ましくは1.7〜10.0、特に2.0〜8.0、特に好ましくは2.5〜7.0、一層特に好ましくは2.7〜5.0である。
【0018】
上述の条件下で、1モルの成分a)を基準として以下のモル比にある成分a)〜g)の重合により得ることができるポリエステルが好ましい:
0〜4モル、好ましくは0.1〜2モル、特に0.2〜1.5モル、一層特に好ましくは0.3〜1.1モルの成分b)、
0.1〜4モル、好ましくは0.5〜3モル、特に0.6〜2.5モル、一層特に好ましくは0.8〜1.5モルのジオール成分c)+d)、
0.1〜4モル、好ましくは0.2〜2モル、特に0.3〜1.0モル、一層特に好ましくは0.3〜0.8モルの成分e)、
0〜4モル、好ましくは0.1〜2モル、特に0.2〜1.0モル、一層特に好ましくは0.3〜0.8モルの成分f)、
0〜0.2モル、好ましくは0〜0.1モル、特に0モルの成分g)。
【0019】
上述の条件下で、1モルの成分a)を基準として以下のモル比にある成分a)〜g)の重合により得ることができるポリエステルがさらに好ましい:
0.1〜2モル、特に0.2〜1.5モル、一層特に好ましくは0.3〜1.1モルの成分b)、
0.5〜4モル、特に0.6〜3モル、一層特に好ましくは0.8〜2.5モルのジオール成分c)+d)、
0.1〜4モル、好ましくは0.2〜2モル、特に0.3〜1.0モル、一層特に好ましくは0.3〜0.8モルの成分e)、
0モルの成分f)、
0モルの成分g)。
【0020】
成分a)の好ましい化合物は、テレフタル酸、特にテレフタル酸のC−C−アルキルエステル、例えば、テレフタル酸ジメチルエステル、ならびにイソフタル酸およびイソフタル酸のC−C−アルキルエステルである。
【0021】
成分b)の好ましい化合物は、5−スルホイソフタル酸、特に5−スルホイソフタル酸ジ(C−C)アルキルエステルおよびそのアルカリ金属塩、例えば、5−スルホイソフタル酸のアルカリ金属塩、および5−スルホ−イソフタル酸−ジメチルエステルナトリウム塩もしくは−リチウム塩である。
【0022】
成分e)の好ましい化合物は、一方の末端がキャップされたポリアルキレングリコール(Endstopfen)、好ましくは約200〜2000g/モルの平均分子量を有するポリ[エチレングリコール−コ−プロピレングリコール]−モノメチルエーテル、特に好ましくは式(1a)
CH−O−(CO)−H (1a)
[n=2〜10、好ましくはn=3〜5、特にn=4]
で表されるポリエチレングリコールモノメチルエーテルである。
【0023】
成分f)の好ましい化合物は、式(2a)
H−(OCHCH−SOX (2a)
[式中、
mは1〜4の数、特に好ましくは1および2であり、そして
Xは水素、ナトリウムまたはカリウムを表す]
で表される化合物である。
【0024】
成分g)の好ましい化合物は、エステル化反応を可能にする3〜6個の官能基、例えば酸−、アルコール−、エステル−、無水物−またはエポキシ基を有する、架橋性多官能化合物である。その際、1つの分子における異なる官能性もまた可能である。その際、好ましい例としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸および没食子酸、特に好ましくは2,2−ジヒドロキシメチルプロピオン酸を挙げることができる。
【0025】
さらに、多価アルコール、例えばペンタエリトリトール、グリセリン、ソルビトールおよびトリメチロールプロパンを使用することができる。
【0026】
多価の脂肪族および芳香族カルボン酸、例えばベンゼン−1,2,3−トリカルボン酸(ヘミメリト酸)、ベンゼン−1,2,4−トリカルボン酸(トリメリト酸)、特に好ましくはベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸(トリメシン酸)がさらに好ましい。
【0027】
成分g)の重量比は、ポリエステルの全質量を基準として、好ましくは0〜10重量%、特に好ましくは0〜5重量%、特に好ましくは0〜3重量%、極めて特に好ましくは0重量%である。
【0028】
本発明のポリエステルは、概して、700〜50000g/モル、好ましくは800〜25000g/モル、特に1000〜15000g/モル、特に好ましくは1200〜12000g/モルの範囲にある数平均分子量を有する。
【0029】
数平均分子量は、狭い分布のポリアクリル酸Na塩標準を用いる較正の使用下、水溶液におけるサイズ排除クロマトグラフィーにより決定される。本明細書における全ての分子量の記載は、数平均分子量に基づいている。
【0030】
その他に、本発明で使用されるポリエステルは、上記の成分a)〜g)に加えて、脂肪族ジカルボン酸の構造要素、好ましくは1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を含むことができる。
【0031】
使用される脂肪族ジカルボン酸の重量比は、使用されるモノマーの全量を基準として、1〜15%、好ましくは3〜10%、特に好ましくは5〜8%であることができる。
【0032】
本発明で使用されるポリエステルの合成は、それ自体は公知の方法に従って、成分a)〜g)の重縮合によって行われる。好適には、上記の成分を触媒の添加下で、最初に、好ましくはC−C−アルキルカルボン酸の塩、特に脱水化もしくは部分的に水和された酢酸ナトリウムCHCOONax(HO)(式中、は0〜2.9の範囲の数を表す)の存在下において、不活性雰囲気の使用下、常圧において160〜約220℃の温度に加熱し、その際、この塩は、使用されるモノマーおよび使用されるカルボン酸の塩の全量を基準として、0.5%〜30%、好ましくは1%〜15%、特に好ましくは3%〜8%の重量で存在する。その後、減圧下、160〜約240℃の温度で、使用されるグリコールの化学量論を超える量を留去することにより、必要な分子量を合成する。技術水準の公知のエステル交換−および縮合触媒、例えばチタンテトライソプロポキシド、ジブチルスズオキシド、アルカリ金属−もしくはアルカリ土類金属アルコキシドまたは三酸化アンチモン/酢酸カルシウムが反応に好適である。
【0033】
本発明のポリエステルの製造のための好ましい方法は、加熱前にエステル交換−および縮合触媒を添加するワンポット法(Eintopfverfahren)において前記成分の縮合を実施することを特徴とする。
【0034】
本発明のポリエステルは、非常に良好に水溶性であって、加水分解傾向を示さず、安定な溶液を形成し、これは、厳しい外部条件下(45度での保管)でも、溶液粘度の増加を示さないか、または本質的でない増加しか示さない。
【0035】
さらに、本発明のポリエステルは、優れた分散能力を示し、従って、繊維の灰色化を阻止する。一次的な洗浄能力の増加に関する能力、ソイルリリース活性および親水性化は、固体のアニオン性タイプのものに匹敵する。
【0036】
本発明のポリエステル濃厚物溶液の製造は、適切な量のポリエステルの溶解、例えば水、または水と水混和性溶媒(例えばプロピレングリコール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール、エチレングリコール、グリコールモノメチルエーテル、グリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(質量>120g/モル))の組み合わせへの溶解により実施される。その際、ポリエステルを、10〜70℃、好ましくは30〜60℃、特に好ましくは40〜50℃の温度で、直接または少量ずつ、溶液に入れる水に加え、撹拌により完全に溶解させる。
【0037】
ポリエステルの可溶性の改善のために、溶解工程の前または該工程の間に、低分子分散剤(ヒドロトロープ)を添加することもできる。ここで、アルキルベンゼンスルホネート、例えばクメンスルホン酸ナトリウム、キシレンスルホン酸ナトリウムまたはトルエンスルホン酸ナトリウムを使用するのが好ましい。このヒドロトロープを前記濃厚物の全重量を基準として0.1〜30重量%、好ましくは1〜15重量%の量で使用することが有意義であることが明らかになった。
【0038】
前記ポリエステル濃厚物は、20〜45℃での保管において、数ヶ月間にわたって安定である。本発明の濃厚物の粘度は、15〜15000mPas、好ましくは100〜8000mPasの範囲内、特に好ましくは500〜5000mPasの範囲で変動する。
【0039】
粘度の測定は、ブルックフィールド粘度計を用いて、25℃で1分あたり20回のスピンドル回転で行われる。使用されるスピンドルは、粘度範囲に応じて調節される。本発明の濃厚物は、ほぼ無色から淡黄色であり、十分に透明〜不透明であり、そして固体を含まない。
【0040】
本発明のポリエステル濃厚物は、繊維製品に非常に良好な汚れ除去特性を付与し、それらは、油状の、脂肪質のもしくは顔料の染みに対して、他の洗剤成分の汚れ除去能力を大幅に促進し、そして、洗濯液からの粒子(特に石灰石鹸および顔料汚れ)の繊維への堆積(灰色化:Vergrauung)を阻止する。
【0041】
本発明はさらに、本発明のポリエステル濃厚物の洗剤および洗浄剤における、洗濯用の後処理剤における、特に繊維柔軟剤(Weichspuelmittel)、繊維ケア剤(Textilpflegemitteln)および繊維用仕上げ剤(Mitteln zur Ausruestung von Textilien)における使用に関する。
【0042】
本発明のポリエステルを使用することができる洗剤および洗浄剤調合物は、ペースト形態、ゲル形態または液体である。液体洗剤が特に好ましい。
【0043】
その例としては、重質洗剤、軟質洗剤、カラー洗剤(Colorwaschmittel)、ウール用洗剤、カーテン用洗剤、モジュラー洗剤(Baukastenwaschmittel)が挙げられる。
【0044】
本発明のポリエステル濃厚物は驚くべきことに、特にプラスティック、セラミックおよびガラスおよび金属表面の洗浄において、優れた流出挙動が際立っている。硬質表面の洗浄において、石灰化する傾向や処理した表面の再汚染を減少させ、油および汚れの付着を防ぎ、そして表面の再洗浄を容易にする。
【0045】
本発明のポリエステル濃厚物は、家庭用洗剤、例えば、汎用洗剤、食器用洗剤、リンスエイド(Klarspuelmittel)、カーペット洗剤および含浸剤、床および他の硬質表面(例えば、プラスチック、セラミック、ガラス、石、金属からなる表面)またはナノ粒子でコーティングされた表面用の洗浄およびケア組成物に組み込むこともできる。
【0046】
工業用洗剤の例としては、プラスチック洗浄およびケア組成物(例えばハウジングおよび自動車部品用)、および塗装表面(例えば自動車車体)用の洗浄およびケア組成物が挙げられる。
【0047】
前記調合物の組成は、意図する用途に応じて、処理または洗浄される繊維の性質、または洗浄される表面の性質に適合させるべきである。
【0048】
前記の洗剤および洗浄剤調合物は、標準的な成分、例えば界面活性剤、乳化剤、ビルダー、漂白触媒および漂白活性化剤、金属イオン封鎖剤、灰色化防止剤、転染防止剤、染料色止め剤、酵素、蛍光増白剤、柔軟性付与成分を含むことができる。さらに、調合物または調合物の一部を、染料および/または香料により、選択的に染色しおよび/または芳香付けすることができる。
【実施例】
【0049】
ポリエステル1
KPG撹拌器、内部温度計、ガス注入管および蒸留橋を有する1Lの四つ口フラスコに、203.6 g(2.68モル)の1,2−プロパンジオール、66.4 g(1.07モル)のエチレングリコール、72.9 g(0.35モル)のテトラエチレングリコールメチルエーテル、291.3 g(1.50モル)のテレフタル酸ジメチルエステルおよび148.1 g(0.5モル)の5−スルホイソフタル酸ジメチルエステルNa塩を仕込み、Nの導入により反応混合物を不活化する。その後、向流において0.5 gのチタンテトライソプロポキシドおよび0.3 gの酢酸ナトリウムを反応混合物に添加する。該混合物を約160℃に約15〜20分間加熱する。この温度でエステル交換が開始し、発生したメタノールを留去する。
【0050】
蒸留の間に、3時間以内に温度を210℃に上昇させる。その後、195℃に冷却し、1時間以内に圧力を10mbarに減少させる。3時間の減圧蒸留の間に、過剰量のアルコールを留去することにより縮合を完了させる。5分間、真空を5mbarに減少させ、引き続き、Nで通気し、溶融物を金属板上に排出する。
【0051】
ポリエステル2
KPG撹拌器、内部温度計、ガス注入管および蒸留橋を有する1Lの四つ口フラスコに、210.6 g(2.77モル)の1,2−プロパンジオール、60.5 g(0.98モル)のエチレングリコール、72.9 g(0.35モル)のテトラエチレングリコールメチルエーテル、291.3 g(1.50モル)のテレフタル酸ジメチルエステルおよび148.1 g(0.5モル)の5−スルホイソフタル酸ジメチルエステルNa塩を仕込み、Nの導入により反応混合物を不活化する。その後、向流において0.5 gのチタンテトライソプロポキシドおよび0.3 gの酢酸ナトリウムを反応混合物に添加する。該混合物を約160℃に約15〜20分間加熱する。さらなる処理を、「ポリエステル1」に記載されるように行う。
【0052】
ポリエステル3
KPG撹拌器、内部温度計、ガス注入管および蒸留橋を有する1Lの四つ口フラスコに、182.6 g(2.40モル)の1,2−プロパンジオール、84.5 g(1.36モル)のエチレングリコール、72.9 g(0.35モル)のテトラエチレングリコールメチルエーテル、291.3 g(1.50モル)のテレフタル酸ジメチルエステルおよび148.1 g(0.50モル)の5−スルホイソフタル酸ジメチルエステルNa塩を仕込み、Nの導入により反応混合物を不活化する。その後、向流において0.5 gのチタンテトライソプロポキシドおよび0.3 gの酢酸ナトリウムを反応混合物に添加する。該混合物を約160℃に約15〜20分間加熱する。さらなる処理を、「ポリエステル1」に記載されるように行う。
【0053】
ポリエステル16
KPG撹拌器、内部温度計、ガス注入管および蒸留橋を有する1Lの四つ口フラスコに、136.8 g(1.8モル)の1,2−プロパンジオール、6.2 g(0.1モル)のエチレングリコール、109 g(0.56モル)のテレフタル酸ジメチルエステル、56.3 g(0.19モル)の5−スルホイソフタル酸ジメチルエステルNa塩、および487g(0.65モル)のメチルポリエチレングリコールMG750を仕込み、Nの導入により反応混合物を不活化する。その後、向流において0.26 gのチタンテトライソプロポキシドおよび0.15 gの酢酸ナトリウムを反応混合物に添加する。該混合物を約160℃に約15〜20分間加熱する。さらなる処理を、「ポリエステル1」に記載されるように行う。
【0054】
ポリエステル4V(比較例)
KPG撹拌器、内部温度計、ガス注入管および蒸留橋を有する1Lの四つ口フラスコに、233.0 g(3.75モル)のエチレングリコール、72.9 g(0.35モル)のテトラエチレングリコールメチルエーテル、291.3g(1.50モル)のテレフタル酸ジメチルエステルおよび148.1 g(0.50モル)の5−スルホイソフタル酸ジメチルエステルNa塩を仕込み、Nの導入により反応混合物を不活化する。その後、向流において0.5 gのチタンテトライソプロポキシドおよび0.3 gの酢酸ナトリウムを反応混合物に添加する。該混合物を約160℃に約15〜20分間加熱する。さらなる処理を、「ポリエステル1」に記載されるように行う。
【0055】
前記濃厚物の製造は、重合溶融物を冷却し、0.1〜3mmの粒子サイズに粉砕し、好適な量の水を加え、30〜50℃で2〜3時間、固体が完全に溶解するまで、アンカー撹拌で撹拌する方法で実施される。
【0056】
この方法により、ポリエステル1〜15からそれぞれ40重量%の濃厚物、ポリエステル16を用いて60重量%濃厚物が製造される。
【0057】
表1:溶解挙動:22℃での40%水性濃厚物;合成の直後、および28日後に測定した粘性値
【0058】
【表1】

【0059】
粘度測定、ブルックフィールドスピネル2、20回転、22℃
【0060】
例1と同様に、表2に記載のポリエステルを製造し、上記のように粘度を測定する。例5V〜8Vは比較例である。
【0061】
表2
【0062】
【表2】

【0063】
DMT = テレフタル酸ジメチルエステル
5−SIM = 5−スルホイソフタル酸−ジメチルエステル−Na−塩
TetGME = テトラエチレングリコールメチルエーテル
EG = エチレングリコール
PG = 1,2−プロピレングリコール
【0064】
ポリエステル繊維(Testex PES 730)における灰色化防止:
ポリマーを、試験用洗剤調合物(O)を基準として60ppm(活性成分)の濃度で、各洗濯液に添加する。該洗濯液は、6g/lの調合物(O)を含む。該洗濯液に100mgのオリーブ油/ガスブラック混合物を添加し、撹拌下で5分間、洗濯液剤に分散させる。引き続いて、そのようにコンディショニングした洗濯液において、白色のポリエステル布Testex PES 730(Testfabrics Inc.、米国)を20℃で20分間、15°dH−H2O/Ca:Mg=3:2の水の硬度で洗浄する。
【0065】
新たな水を用いる4回の濯ぎの後、試験布をまず乾燥し、引き続きElrepho分光光度計でその白色度を測定し、未処理の標準試験布Testex PES 730に対する反射率を測定する。反射率[%,457nm]/400nmエッジフィルター。
【0066】
未処理布(≡100%)と比較した洗浄後の使用試験布の白色度を反射率と呼ぶ。測定値(Elrepho分光光度計における測定)が100%に近いほど、測定された試験布はより白くなり、そしてポリエステルはより有用となる。
【0067】
表3
【0068】
【表3】

【0069】
調合物(O):
成分(重量パーセント)
A カリ−ココナッツセッケン(27%) 3%
B 1,2−プロパンジオール 5%
C Genapol LA−070(Clariant製) 4%
ラウリルアルコールエトキシレート, 7EO
D アルキルベンゼンスルホネート(Marlon A350/50%)17%
E クメンスルホン酸ナトリウム 0.5%
F クエン酸(30 %溶液) 0.6%
G 水 100まで
pH値: 7.5 〜7.6

【特許請求の範囲】
【請求項1】
12〜60%のポリエステルの重量比を有する水性のポリエステル濃厚物であって、前記ポリエステルが以下:
a)1種またはそれ以上のスルホ基不含芳香族ジカルボン酸、および/またはそれらの塩、および/またはそれらの無水物、および/またはそれらのエステル、
b)場合により、1種またはそれ以上のスルホ基含有ジカルボン酸、それらの塩、および/またはそれらの無水物、および/またはそれらのエステル、
c)1,2−プロピレングリコール、
d)エチレングリコール、
e)式(1)
O(CHRCHRO)H (1)
[式中、
は、1〜22個のC原子を有する直鎖状または分岐状の飽和または不飽和アルキル基であり、
およびRは、互いに独立して、水素、または1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であり、そして
nは1〜50の数である]
で表される1種またはそれ以上の化合物、
f)場合により、式(2)
H−(OCHCH−SOX (2)
[式中、
mは1〜10の数であり、そして
Xは、水素またはアルカリ金属イオンである]
で表される1種またはそれ以上の化合物、および
g)場合により、1種またはそれ以上の架橋性多官能化合物、
から選択される成分の重合により得ることができ、ここで、成分b)またはf)の少なくとも1つが存在することを条件とし、そして、成分c)の1,2−プロピレングリコールとd)エチレングリコールとのモル比が、1.60以上であることを条件とする、ポリエステル濃厚物。
【請求項2】
1,2−プロピレングリコール:エチレングリコールのモル比が、1.60〜20.0であることを特徴とする、請求項1記載のポリエステル濃厚物。
【請求項3】
ポリエステルの重量比が20〜60%であることを特徴とする、請求項1または2に記載のポリエステル濃厚物。
【請求項4】
1モルの成分a)を基準として以下のモル比にある成分a)〜g)の重合により得ることができる、請求項1〜3のいずれか1つに記載のポリエステル濃厚物:
0〜4モルの成分b)、
合計で0.1〜4モルの成分c)+d)、
0.1〜4モルの成分e)、
0〜4モルの成分f)、
0〜0.2モルの成分g)。
【請求項5】
1モルの成分a)を基準として以下のモル比にある成分a)〜g)の重合により得ることができる、請求項1〜3のいずれか1つに記載のポリエステル濃厚物:
0.1〜2モルの成分b)、
合計で0.5〜4モルの成分c)+d)、
0.1〜4モルの成分e)、
0モルの成分f)、
0モルの成分g)。
【請求項6】
成分a)が、テレフタル酸、テレフタル酸のC−C−アルキルエステル、イソフタル酸およびイソフタル酸のC−C−アルキルエステルの群からの化合物であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1つに記載のポリエステル濃厚物。
【請求項7】
成分b)が、5−スルホイソフタル酸、5−スルホイソフタル酸のアルカリ金属塩、5−スルホイソフタル酸ジ(C−C)アルキルエステルおよび5−スルホイソフタル酸ジ(C−C)アルキルエステルのアルカリ金属塩の群からの化合物であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1つに記載のポリエステル濃厚物。
【請求項8】
成分e)が、式(1a)
CH−O−(CO)−H (1a)
[式中、n=2〜10である]
で表されるポリエチレングリコールモノメチルエーテルであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1つに記載のポリエステル濃厚物。
【請求項9】
前記ポリエステルを水、または水と水混和性溶媒の組み合わせへ溶解することにより、請求項1〜8のいずれか1つに記載のポリエステル濃厚物を製造する方法。
【請求項10】
洗剤および洗浄剤における、繊維柔軟剤における、繊維ケア剤および繊維用仕上げ剤における、請求項1〜8のいずれか1つに記載のポリエステル濃厚物の使用。

【公表番号】特表2013−512288(P2013−512288A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540312(P2012−540312)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【国際出願番号】PCT/EP2010/007125
【国際公開番号】WO2011/063945
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(398056207)クラリアント・ファイナンス・(ビーブイアイ)・リミテッド (182)
【Fターム(参考)】