説明

高い耐摩耗性を有する、横方向にちぎることのできる布粘着テープ

本発明は、少なくとも片面に粘着層を備えたテープ状の織布基材(1)からなる布粘着テープとくにケーブル用被覆テープに関する。織布基材(1)は経糸(2)と緯糸(3)とから製造され、その際、緯糸(3)の番手(繊度)dtexは経糸(2)の番手(繊度)dtexよりも大きく形成されている。経糸(2)の幅を基準とした番手dtex/cmは緯糸(3)の長さを基準とした番手dtex/cmよりも小さく形成されている。経糸(2)の幅を基準とした番手は約2.000〜4.000 dtex/cmであり、緯糸(3)の長さを基準とした番手は約8.000〜20.000 dtex/cm、好ましくは8.000〜16.000 dtex/cmである。さらに本発明は、本発明による布粘着テープに使用するためのテープ状の織布基材(1)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも片面に粘着層を備えたテープ状の織布基材からなり、前記織布基材は経糸と緯糸とから製造され、その際、緯糸の番手(繊度)dtexは経糸の番手(繊度)dtexよりも大きく形成され、幅を基準とした経糸の番手dtex/cmは緯糸の長さを基準とした番手dtex/cmよりも小さく構成されている布粘着テープ、とくにケーブル用被覆テープに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の粘着テープは欧州特許公報第1074595B1から公知である。その粘着テープでは、1cmあたりの経糸の本数は30〜50本であり、幅を基準とした糸の番手dtex/cmは2500以下で、緯糸の本数は18〜27本である。この場合、経糸は粘着層によって緯糸に固定されているために、横方向の引裂強さは10N以下である。この種の粘着テープは手によって横方向に十分にひきちぎることができることは確かであるが、編織密度が低いために緯糸のずれが生じ、それゆえに、経糸と緯糸とを粘着層によって互いに固定することが不可欠であり、その結果、柔軟性が損なわれるという短所を有している。さらに、低い程度の耐摩耗性しかもLV312準拠の摩耗等級AまたはBに相当する低度の耐摩耗性しか保証されていない。LV312に準拠した摩耗等級は以下のように区分される:
【0003】
【表1】

【0004】
欧州特許公開公報第1990393A1から、経糸の本数は30〜50本で、幅を基準にした経糸の番手は2.950dtex/cmであると共に、テープ長を基準にした横糸の番手は5.200dtex/cmである織布基材からなる粘着テープが公知である。このテープの場合には、経糸と緯糸との付加的な相互固定が必要である。この種の粘着テープも手によって良好にひきちぎることができるが、低い程度の耐摩耗性しかもLV312に準拠した等級Aに相当する低度の耐摩耗性しか有していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許公報第1074595号
【特許文献2】欧州特許公開公報第1990393号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、冒頭に述べたタイプの粘着テープを出発技術とし、この粘着テープを改良して、経糸と緯糸との付加的な固定処理が行われなくとも良好な結合強度が得られ、それによって、手による良好な引裂性が達成されると同時にLV312準拠の等級CまたはDに相当する耐摩耗性が達成されるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は本発明により、経糸の幅を基準とした番手は約2.000〜4.000 dtex/cmであり、緯糸の長さを基準とした番手は約8.000〜20.000 dtex/cm、好ましくは8.000〜16.000 dtex/cmでありおよび/または緯糸の番手(繊度)は400 dtex以上、特に550 dtexであることによって達成される。(なお、本明細書において、厚さを表す数値に付記されているピリオドは小数点を表し、それ以外の数値に付記されているピリオドは、桁区切りを表している。)
本発明は、本発明による緯糸の長さを基準とした番手が本発明による経糸の幅を基準とした番手ないし本発明による緯糸の番手が本発明による経糸の番手のそれぞれ少なくとも約4倍に相当する番手を有することによって、手による良好な引裂性すなわち緯糸の方向への手による引裂性を保証すると共に十分な結合強度を有する織布基材が達成されるとの技術思想を基礎としている。同時に、本発明による緯糸の番手によってLV312に準拠した等級C以上、特に等級Dに相当する耐摩耗性が可能となる。
【0008】
好適な実施形態では、上記経糸および緯糸はポリエステル(PET)から構成されるために、これらからなる布は生分解に対する耐性を有している。別な実施形態として、ポリアミド(PA)からなる緯糸も使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明による織布基材の基本構造を示す図である。
【図2】図1に示した織布基材を備えた本発明による粘着テープの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のその他の好適な実施形態は従請求項に記載され、下記実施例と添付の図面を参照して詳細に説明される。
図面が異なっていても、同一の部材には常に同一の符号が付されているために、当該部材の説明は原則的にそれぞれ1回だけ行われる。
【0011】
図1に示したように、テープ状に形成された−つまり、長さが幅よりも大きい−本発明による織布基材1は、テープ長手方向に延びる経糸2と、経糸2に対して横方向に、特に、経糸2に対して直角をなして延びる緯糸3とからなる布で構成されている。長さを基準にした緯糸3の番手dtex/cmは経糸2の幅を基準とした番手dtex/cmの4倍から5倍であり、その際、経糸2の幅を基準にした番手は約2.000〜4.000 dtex/cm、緯糸3の長さを基準とした番手は約8.000〜20.000 dtex/cmである。緯糸3の番手は400 dtex以上であり、特に550 dtexである。これは通例の布である。本発明による織布基材1は、好ましくは、すでに洗浄され、熱固定ないし固定され、カレンダー仕上げされていてよい。本発明によって使用される経糸2と緯糸3とは、モノフィラメントとしてかまたは複数の繊維が撚り合わされて個々の経糸ないし緯糸2,3を形成するいわゆるフィラメント糸として形成されていてよい。本発明による経糸および緯糸2,3は、繊維特有の精製加工いわゆるテクスチャード加工によってそれらのテキスタイル特性を改善することも可能である。テクスチャード加工に際し、元来の平滑なフィラメントはそれらの熱可塑性特性の利用下で、機械的熱的方法、化学的熱的方法または機械的方法によって、より大きな体積、より高度な弾性および延性、空気の封じ込めによる膨張力の向上ないし熱保持能の向上、高い通気性、テクスチャード加工繊維の縮絨縮れ繊維内への水滴の分布による吸湿能の向上を得ることができる。好適には、本発明によって使用される経糸および/または緯糸2,3は、交絡結束によって高度加工されたフィラメント糸から形成されている。この場合、フィラメント糸には、個々のフィラメントが損傷しないように保護すると共にすでに折損した毛細繊維がけばを生ずるのを防止するために、さらなる絡み撚り(保護加撚とも称される)が与えられる。交絡結束法(Intermingling)とは、フィラメント糸がノズルを通過する際に圧縮空気が吹付けられてフィラメントが互いに交絡結束させられるエア吹付け交絡法のことである。本発明による経糸および緯糸2,3は好ましくはポリエステルからなるが、ただしその他の合成化学繊維も使用することが可能である。
【0012】
図2には本発明による粘着テープの断面が示されており、同図から、編み込まれた織布基材1上に粘着層4がその表面に、つまり、織布基材1にわずかな深度で侵入して被着されていることがみとめられる。このコーティングは、アクリレート粘着剤が好適である。この粘着層の粘着剤重量は、好ましくは、75〜80 g/qmである。以下の表2、表3、表4に分けられた表には、本発明による粘着テープの実施例が挙げられている。これから、一方において、本発明による粘着テープはLV 312に準拠した高い耐摩耗性つまり基本的に等級Dに相当する耐摩耗性を有するが、同時に、引張り伸び率ならびに抗張力は低いために、手による良好な引裂性が得られることが判明している。本発明による粘着テープの厚さ、しかも、被着された粘着層4を含めた厚さは0.25〜0.30 mmとくに0.25〜0.27 mmである。この場合、基本的に、緯糸3を単一ストランドとして設けるか(これについては以下の表2の実施例1、参照のこと)または複数の糸と組み合わせるかすることが可能である。特に実施例4および実施例5(表3)から判明するように、緯糸3を複数本の単一ストランドとくに番手の異なる複数本の単一ストランドから製造することも本発明の範囲に属しており、その際、たとえば実施例4の緯糸3は2本の単一ストランドしかも番手220 dtexの1本の単一ストランドと番手330 dtexの1本の単一ストランドとからなり、それゆえ糸全体の番手は550 dtexであってもよい。実施例5では、緯糸3は3本の単一ストランドから形成されており、その際、1本の単一ストランドは番手220 dtex(公称番手)を有し、他の2本の単一ストランドはそれぞれ番手167 dtex(公称番手)を有しており、それゆえ、糸全体の番手は550 dtex(公称緯糸番手)である。
【0013】
【表2】

【表3】

【表4】

【0014】
以下の表5には、流通している2種類の布粘着テープが挙げられている。この表から、欧州特許公開公報第1990393A1に記載の粘着テープは低い耐摩耗性つまり等級Bに相当する低度の耐摩耗性しか有していず、他方これに対して、Coroplast837Xの粘着テープは高い耐摩耗性つまり等級Dに相当する高度の耐摩耗性を有しているが、手で横方向にちぎることはできないことが判明している。これに対して、本発明による粘着テープとくに表1に挙げた実施例による粘着テープは、手による良好な横方向引裂性と高度な耐磨耗性とくに等級Dに相当する耐摩耗性との両方を有している。
本発明は、粘着層4の被着されていない、上述したテープ状の織布基材1にも関する。
【0015】
【表5】

【0016】
特許請求の範囲ならびに上記実施例によって説明した本発明による粘着テープは、表1に示したように、LV312準拠の等級CおよびDに相当する耐摩耗性、良好な柔軟性ないし良好なフラッギング特性を有している。織布基材1の最適なカレンダリングと圧縮固着とによって、本発明による織布基材1は1.000 Voltを超える絶縁破壊強度を有している。本発明による織布基材1の形成によって、織布基材1にはすでに十分な安定性が付与されており、さらに、本発明によれば、粘着剤層は経糸と緯糸とを固定するためにそれらの交差箇所で織布基材1内に深く侵入する必要がないために、ノズル方式またはフローコーティング方式によっても粘着層4を被着形成することが可能である。むしろ、本発明によれば、粘着層4は選んだ被着形成法により実質的には経糸2と緯糸3との表面に付与されているにすぎず、したがって、粘着剤は糸製材料ないし織布基材1内にわずかな深度で侵入しているにすぎない。さらに、本発明によれば、最後にアクリレート仕上げコートで織布基材1のシールを行うようにすることが可能である。加えてさらに、引張り伸び率が28〜30 %であることによって手による良好な引裂性が所与であり、その際、抗張力は70〜100 N/cmを超えることはない。
【0017】
本発明は上述した実施例に制限されるものではなく、本発明の趣旨と同様に機能するすべての手段を含むものである。さらに、本発明は従来のように、それぞれの独立した請求項によって定義された特徴の組み合わせに制限されるものでもなく、全体として開示されたすべての個別特徴のうちの一定の特徴のあらゆる任意の組み合わせによって定義されていてもよい。このことは、基本的にそれぞれの独立した請求項のいずれの個別特徴も実際のところ捨象可能であり、また本出願のその他の箇所に開示された少なくとも1つの個別特徴によって置き換えられてもよいことを意味している。そのことから、本出願の請求項は単に発明を画定するための最初の試みの1つとして理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも片面に粘着層(4)を備えたテープ状の織布基材(1)からなり、前記織布基材(1)は経糸(2)と緯糸(3)とから製造され、その際、前記緯糸(3)の番手(繊度)dtexは前記経糸(2)の番手(繊度)よりも大きく形成され、前記経糸(2)の幅を基準とした番手dtex/cmは前記緯糸(3)の長さを基準とした番手dtex/cmよりも小さく形成されている布粘着テープ、とくにケーブル用被覆テープであって、
前記経糸(2)の幅を基準とした番手は約2.000〜4.000 dtex/cmであり、前記緯糸(3)の長さを基準とした番手は約8.000〜20.000 dtex/cm、好ましくは8.000〜16.000 dtex/cmであることを特徴とする布粘着テープ。
【請求項2】
少なくとも片面に粘着層(4)を備えたテープ状の織布基材(1)からなり、前記織布基材(1)は経糸(2)と緯糸(3)とから製造され、その際、前記緯糸(3)の番手(繊度)dtexは前記経糸(2)の番手(繊度)よりも大きく形成され、前記経糸(2)の番手dtex/cmは前記緯糸(3)の長さを基準とした番手dtex/cmよりも小さく形成されている布粘着テープ、とくにケーブル用被覆テープであって、
前記緯糸(3)の番手(繊度)dtexは400以上、特に550であることを特徴とする布粘着テープ。
【請求項3】
前記経糸(2)の番手(繊度)dtexは50 dtexに等しいか/それ以上であり、特に55 dtexまたは84 dtexであることを特徴とする請求項1または2に記載の布粘着テープ。
【請求項4】
前記緯糸(3)は単一ストランドとして形成されていることを特徴とする請求項2に記載の布粘着テープ。
【請求項5】
前記緯糸(3)は2本の単一ストランドから形成され、その際、一方の単一ストランドの番手は220 dtexであり、他方の単一ストランドの番手は330 dtexであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の布粘着テープ。
【請求項6】
前記緯糸(3)は3〜5本の単一ストランドから形成され、その際、個々の単一ストランドの番手はそれぞれ167 dtex(公称繊度)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の布粘着テープ。
【請求項7】
テープ長1cm当たりの前記緯糸(3)の本数は16〜32本とくに20〜24本であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の布粘着テープ。
【請求項8】
テープ幅1cm当たりの前記経糸(2)の本数は27〜60本とくに35〜48本であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の布粘着テープ。
【請求項9】
前記緯糸(3)の長さを基準とした番手dtex/cmは9.000〜12.100 dtex/cmとくに11.000 dtex/cmであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の布粘着テープ。
【請求項10】
前記織布基材(1)はポリエステル・クロスからなることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の布粘着テープ。
【請求項11】
前記織布基材(1)はポリエステル経糸(2)とポリアミド緯糸(3)とを有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の布粘着テープ。
【請求項12】
前記経糸(2)および/または緯糸(3)はフィラメント糸からなり、経糸(2)および緯糸(3)は空気吹付けフィラメント交絡結束法によって製造されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の布粘着テープ。
【請求項13】
前記経糸(2)および/または緯糸(3)は平滑な糸および/またはテクスチャード加工糸からなることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の布粘着テープ。
【請求項14】
個々のフィラメントから形成された前記経糸(2)および/または緯糸(3)は異なった本数のフィラメントを有することを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の布粘着テープ。
【請求項15】
前記織布基材は1.000 Voltを超える絶縁破壊強度を有するようにカレンダリングならびに圧縮固着されていることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の布粘着テープ。
【請求項16】
前記粘着層(4)は、表面コーティングとして被着形成されているにすぎないために、前記経糸(2)および緯糸(3)はそれらの交差箇所で前記粘着層(4)によって互いに固定されていないことを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の布粘着テープ。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の布粘着テープに使用するための経糸(2)および緯糸(3)からなるテープ状の織布基材。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−510207(P2013−510207A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537378(P2012−537378)
【出願日】平成22年11月3日(2010.11.3)
【国際出願番号】PCT/EP2010/066694
【国際公開番号】WO2011/054842
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(512116354)コロプラスト・フリッツ・ミュラー・ゲー・エム・ベー・ハー・ウント・コー・カー・ゲー (1)
【Fターム(参考)】