説明

高い自己粘着性を備え残留効果をもたらす洗浄用組成物

硬質面処理用組成物。組成物は、(a)少なくとも1種類の粘着促進剤、(b)陰イオン性、非イオン性、陽イオン性、両性、双性イオンからなるグループ、これらの組み合わせから選択された少なくとも1種類の界面活性剤、(c)鉱物油、(d)混合物のアルコールそれぞれが9から17の炭素を有する炭素鎖を含む直鎖第一級アルコールの非エトキシ化混合物、または、そのエトキシ化混合物、(e)水、(f)任意で、少なくとも1種類の溶媒を含み、処理面への塗布と同時に自己粘着性を持ち、水が前記組成物および表面を通過する際、前記表面に濡れ膜を生じさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
いくつかの実施形態において、本発明は組成物の水層への露出によりもたらされる広範囲の拡散または塗装に基づいた残留効果を提供しうる自己粘着性組成物に関する。さらには、本組成物は様々に変化する温度・湿度環境下での安定性を向上させただけではなく、硬質面(例えば、便器、ガラス、窓、ドア、シャワーまたは風呂場壁面等にあるようなセラミック表面)への自己粘着性も向上させている。さらに、ある種の直鎖第一級アルコール混合物やある種のエトキシ化直鎖第一級アルコール混合物の含有により、組成物は製造過程において、および、最終製品として安定性が向上させている。
【背景技術】
【0002】
便器の水洗の度に衛生剤が放出されるように、容器に入った洗浄剤及び/又は殺菌剤及び/又は芳香剤を便器の縁下に適切な装置でつるすことが知られている。
【0003】
効果的ではあるが、使用後の装置を手で取り除かねばならないというような理由で、この装置を利用しない消費者もいる。例えば、消費者はそのような必要性を非衛生的、または一般的には魅力の無いものと捉えるかもしれない。さらには、便器では一度にひとつの装置しか使用できず、その装置は組成物を局所的にしか放出しないため、効果がその薬剤の場所と水の流れる場所に限定されるという結果になりがちである。
【0004】
また、従来の便器の縁の下に掛ける装置は消費者の定期的な清掃の際には邪魔になるため消費者はその利用を避けるかもしれない。便器清掃用ブラシを使用してのクリーニングの際には、つり下げ装置は消費者の手で容易に移動させ、その後元の位置に戻すことができるが、そのような行為が非衛生的または魅力の無いものと消費者には捉えられているかもしれない。
【0005】
代表的な便器用衛生剤は、固形ブロック、液体、ゲルの形状であるかもしれない。
【0006】
米国特許第6,667,286号は、長時間持続性の洗浄及び/又は防臭及び/又は殺菌効果を持ち、簡単で衛生的なやり方で便器表面に直接塗布可能なペーストまたはゲル状の衛生剤を公開している。米国特許出願公開番号第2008/0190457号は、便器表面に直接塗布可能な自己粘着性洗浄ブロックを公開している。本発明はそのような衛生剤に、例えば利用寿命の長期化のようなより高い安定性だけではなく、硬質面、特に便器のようなセラミック表面への自己粘着性向上を実現することによって、品質改良をもたらしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
いくつかの実施形態において、本発明は組成物または活性成分を便器や他の硬質面の比較的広範囲まで供給するという点で消費者に利益を提供している。他の非限定的な実施形態では、本発明は組成物または活性成分を便器や他の硬質面の比較的広範囲まで効率的に供給するという点で消費者に利益を提供している。いくつかの実施形態では、直鎖第一級アルコールのある種の混合物やエトキシ化直鎖第一級アルコールのある種の混合物の組成物への含有により成分安定度の改善が達成されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
非限定的な第一の実施形態では、本発明は硬質面処理用組成物に関する。組成物は(a)少なくとも1種類の粘着促進剤、(b)陰イオン性、非イオン性、陽イオン性、両性、双性イオンからなるグループ、及びこれらの組み合わせから選択された少なくとも1種類の界面活性剤、(c)鉱物油、(d)混合物のアルコールそれぞれが炭素数9から17の炭素鎖を含む直鎖第一級アルコールの混合物またはエトキシ化直鎖第一級アルコールの混合物、(e)水、(f)任意で、少なくとも1種類の溶媒を含み、前記組成物は処理面への塗布と同時に自己粘着し、水が前記組成物と表面を通過する際に表面に濡れ膜を形成する。
【0009】
非限定的な第二の実施形態では、本発明は硬質面処理用組成物に関する。組成物は(a)少なくとも1種類の粘着促進剤を約18重量%から約27重量%、(b)陰イオン性、非イオン性、陽イオン性、両性、双性イオンからなるグループ、及びこれらの組み合わせから選択された少なくとも1種類の界面活性剤を約7.5重量%から約20重量%、(c)混合物のアルコールそれぞれが炭素数9から17の炭素鎖を含む直鎖第一級アルコールの混合物またはエトキシ化直鎖第一級アルコールの混合物を0重量%から約2.0重量%、(d)0重量%から約5重量%の鉱物油、(e)差分の水、(f)任意で、0重量%から約5重量%の少なくとも1種類の溶媒を含む。前記組成物は処理面への塗布と同時に自己粘着し、水が前記組成物と表面を通過する際に表面に濡れ膜を形成する。
【0010】
非限定的な第三の実施形態では、本発明は硬質面処理用組成物に関する。組成物は(a)エトキシ化アルコール、(b)アルキルポリグリコールエーテル、(c)鉱物油、(d)混合物のアルコールそれぞれが炭素数9から17の炭素鎖を含む直鎖第一級アルコールの混合物またはエトキシ化直鎖第一級アルコールの混合物、(e)多価アルコール、(f)ポリエチレングリコール、(g)アルキルエーテル硫酸塩、(h)水を含み、前記組成物は処理面への塗布と同時に自己粘着し、水が前記組成物と表面を通過する際に表面に濡れ膜を形成する。
【0011】
非限定的な第四の実施形態では、本発明は硬質面上少なくとも1種類の所定の位置への塗布用組成物に関し、前記組成物と前記硬質面の上を水が複数回に渡り周期的に流れることにより、前記組成物は周期的な水の通過中およびその通過後に一部溶解し、それによって前記硬質面上を前記組成物からあらゆる方向に広がる濡れ膜を形成し、前記硬質面に対し自己粘着性を持つように構成され、前記組成物は、その組成物中に存在する少なくとも1種類の活性剤を、即効および残留作用のために、前記所定の位置を基点として前記硬質面上広範囲に渡って、濡れ膜中で供給する少なくとも1種類の界面活性剤を含み、且つ、混合物のアルコールそれぞれが炭素数9から17の炭素鎖を含み、前記混合物は組成物中の他成分の分解を減少させるために十分な量存在する直鎖第一級アルコールの混合物、またはエトキシ化直鎖第一級アルコールの混合物を含む。
【0012】
非限定的な第五の実施形態では、本発明は、少なくとも1種類の粘着促進剤、少なくとも1種類の陰イオン性界面活性剤、任意で一部または全体で前記の少なくとも1種類の粘着促進剤を提供する少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤、鉱物油、混合物のアルコールそれぞれが炭素数9から17の炭素鎖を含む直鎖第一級アルコールの混合物またはエトキシ化直鎖第一級アルコールの混合物、および水を含み、前記硬質面は疎水性を備えた、または疎水性を与えられたもので、硬質面に前記組成物を塗布し、組成物上水を通過させるとすぐに組成物は一部溶解しその組成物から硬質面に沿ってあらゆる方向に硬質面上広範囲に広がり、残留洗浄処理を前記硬質面に付与するために一時的に保持される濡れ膜を供給する硬質面処理用自己粘着性洗浄用組成物に関する。
【0013】
非限定的な第六の実施形態では、本発明は硬質面処理用組成物に関する。組成物は(a)組成物に硬質面への自己粘着性を与える、少なくとも1種類以上の非イオン性界面活性剤を含む1種類以上の成分、(b)陰イオン性、非イオン性、陽イオン性、両性、双性イオンからなるグループ、及びこれらの組み合わせから選択された少なくとも1種類の界面活性剤、(c)鉱物油、(d)混合物のアルコールそれぞれが炭素数9から17の炭素鎖を含む直鎖第一級アルコールの混合物またはエトキシ化直鎖第一級アルコールの混合物、(e)水、(f)任意で、少なくとも1種類の活性剤を含み、少なくとも1種類の前記陰イオン性界面活性剤と少なくとも1種類の前記非イオン性界面活性剤は組み合わせで存在し、硬質面に粘着した場合、前記組成物上を水が流れた後、硬質面上に前記組成物から広がり、硬質面上での即効および残留処理をもたらす組成物成分の供給手段提供する濡れ膜を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明の具体的で非限定的な実施形態の以下詳細説明は、以下図と共に読むことで最も理解しやすい。図では同様の構造が同様の参照番号で表示されている。
【図1】本発明による代表的なゲルディスペンサ装置の外観図を示している。
【図2A】後述する試験状況下、異なる時間での様々な鉱物油組成を有するゲル組成物を示す。
【図2B】後述する試験状況下、異なる時間での様々な鉱物油組成を有するゲル組成物を示す。
【図2C】後述する試験状況下、異なる時間での様々な鉱物油組成を有するゲル組成物を示す。
【図2D】後述する試験状況下、異なる時間での様々な鉱物油組成を有するゲル組成物を示す。
【図2E】後述する試験状況下、異なる時間での様々な鉱物油組成を有するゲル組成物を示す。
【図3】4つの例、すなわち、それぞれ炭素数11、12.6、14.5の平均炭素鎖長を有する直鎖第一級アルコール混合物の三種類とアルコールを含まない基剤処方のものについての、直鎖第一級アルコール混合物の関数としてのゲル化点の下方シフトを示すグラフである。
【図4】図3で示した結果に基づく炭素鎖長の関数としてのゲル化点の下方シフトに基づいたC13(炭素鎖長13)付近での最適ゲル化点抑制を示すグラフである。
【図5】平均炭素鎖長12.6の直鎖第一級アルコール混合物の量の関数としてのゲル化点の下方シフトを示すグラフである。
【図6】含有炭素鎖長12.6の割合の関数としてのゲル化点の下方シフトに基づいた平均炭素鎖長12.6の直鎖第一級アルコール混合物のゲル化点抑制を示すグラフである。
【図7】直鎖第一級アルコールの量の増加に伴い、液相から立方相への相転移領域が重要となってくることを示すグラフである。
【図8】エトキシ化が直鎖第一級アルコールに対して行われる場合、全体的なゲル化点抑制へ殆ど影響無く、液相と立方相間の相転移領域が除去されることを示すグラフである。1モルのエトキシ化(1EO)で相転移領域は大きく減少し、2モルのエトキシ化(2EO)で相転移領域は除去される。
【図9】エトキシ化直鎖第一級アルコール混合物の量の変化伴う相転移領域における影響を示すグラフである。2モルのエトキシ化直鎖第一級アルコールの量を0.25%または0.5%から0.75%へ増加させると、相転移領域が再び形成される。さらにエトキシ化を増加させると、この相転移領域は再び除去されることになる。
【図10】平均炭素鎖長12.6の第一級アルコール混合物のゲル化点(GP)シフトと相転移(PT)領域をまとめたグラフである。
【図11】平均炭素鎖長12.6の第一級アルコール混合物でエトキシ化をしていないもの(0EO)と2モルのエトキシ化をしたもの(2EO)との比較を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本出願は、2008年2月21日に出願された米国仮出願第61/064,182号と、本出願が一部継続出願である2009年2月19日に出願された米国特許出願第12/388,576号の利益を主張する。
【0016】
米国連邦後援研究開発に関する参照
該当なし。
【0017】
配列表
該当なし。
【0018】
定義
本文中にて使用されているように、「組成物」とは、一種類以上の成分からなる、あらゆる固体状、ゲル状及び/又はペースト状の物質を称する。
【0019】
本文中にて使用されているように、「自己粘着性」とは別の粘着剤または他の支持装置の必要無しに硬質面に粘着する組成物の能力を称する。一実施形態としては、自己粘着性組成物は、使い切った後は残留物または他物質(すなわち、追加の粘着剤)を残留させない。
【0020】
本文中にて使用されているように、「ゲル」は相互作用する粒子のネットワークを備えた液体、またはゼロでない降伏応力を有するポリマーから構成される不規則配列の固体を称する。
【0021】
本文中にて使用されているように、「芳香」は香水、消臭剤、臭気マスキング剤等と、それらの組み合わせを称する。いくつかの実施形態では、芳香は消費者または利用者の嗅覚に対して影響を有する物質であってもよい。
【0022】
本文中にて使用されているように、「wt.%」は処方全体の中の実際の有効成分の重量百分率を称する。例えば、処方Xの規格品の組成物は有効成分Xを70%しか含まないかもしれない。つまり、規格品の組成物10グラムはXを7グラムしか含まない。もし規格品の組成物の10グラムが他の成分90グラムに付加される場合、最終的な処方におけるXの重量%はしたがって7%にしか過ぎなくなる。
【0023】
本文中にて使用されているように、「硬質面」は多孔性及び/又は非多孔性の表面を称する。一実施形態では、硬質面は、セラミック、ガラス、金属、ポリマー、石と、それらの組み合わせから成るグループより選択されてもよい。別の実施形態では、硬質面はシリコンウェハー及び/又は他の半導体材料を含まない。セラミック面の非限定的な例には、便器、シンク、シャワー、タイル等と、それらの組み合わせが含まれる。ガラス面の非限定的な例には、窓等が含まれる。金属面の非限定的な例には、排水管、シンク、自動車等と、それらの組み合わせが含まれる。ポリマー面の非限定的な例には、パイプ、ガラス繊維、アクリル、コーリアン(登録商標)等と、それらの組み合わせを含む。石の硬質面の非限定的な例には、花崗岩、大理石等が含まれる。
【0024】
所望の目的に適していれば、硬質面はどのような形、サイズでも、またどのような方向に向いているものでも構わない。ひとつの非限定的な例では、硬質面は垂直方向に配置された窓でも構わない。別の非限定的な例では、硬質面はセラミック製便器のような曲面でもよい。また別の非限定的な例では、硬質面は垂直方向と水平方向の部分と曲面部分もあるパイプ内側面でもよい。硬質面の形、大きさ、及び/又は方向は、後述する条件下での組成物の非常に強い輸送特性のため本発明の組成物には影響を及ぼすことにはならないと考えられている。
【0025】
本文中にて使用されているように、「界面活性剤」は、液体(例えば水)の表面張力を低下させる薬剤を称する。本発明と共に使用する場合に適切な代表的界面活性剤は後述される。一実施形態では、界面活性剤は、陰イオン性、非イオン性、陽イオン性、両性、双性イオンからなるグループ、及びこれらの組み合わせから選択されてもよい。一実施形態では、本発明は陽イオン性界面活性剤を含まない。他の非限定的な実施形態では、界面活性剤は高性能濡れ剤(superwetter)でもよい。当業者には、いくつかの実施形態では、粘着促進剤として使用可能な物質は界面活性剤にもなりうるということは認識されるであろう。
【0026】
使用時には発明の組成物は処理対象硬質面(例えば、汚れていない便器、シャワーまたはバスルーム囲い、排水管、窓等)に直接塗布されてもよい。組成物は自己粘着組成物と表面上を水が複数回通過(例えば、水洗、シャワー、すすぎ等)することによってそれらに自己粘着する。組成物上を水が流れる度、組成物の一部が組成物上を流れる水中に放出される。表面を覆う水中に放出される組成物の一部は表面に連続的な濡れ膜を提供し、即効性があり且つ長時間有効な洗浄及び/又は殺菌及び/又は芳香処理、あるいは組成物中に存在する活性剤による他の表面処理を施す。組成物は、したがって組成物中の活性剤は、表面との直接的接触する形で置かれた当初の組成物の位置から広がり供給され、広範囲の表面を切れ目なく覆うと考えられている。濡れ膜はコーティングとして機能し、自己粘着性組成物から、すすぎ水の流れる方向とは逆向きも含むあらゆる方向、すなわち360度方向に広がる。液体表面の動きは表面下の流体の動きと結びつけられており、通常その動きが表面に応力を生じさせ、その逆もある。ゲル及び/又は活性成分の動きの機構については後に詳述する。
【0027】
驚くべきことに、本発明の非限定的な代表例はより速く広範囲な自己拡散性を実現する。理論によって限定されることを望むものではないが、自己拡散効果は組成物に特定の界面活性剤を付加することで変更可能であると考えられる。自己拡散速度と距離に影響を及ぼすと考えられる要因の非限定的な例には、含有界面活性剤量、含有界面活性剤種類、含有界面活性剤組み合わせ、流水での界面活性剤の拡散度合い、液体/気体間界面における界面活性剤の吸収能力、処理面の表面エネルギーが含まれる。組成物の界面活性剤は、これら組成物を他表面部分へ供給するため、他分子、例えば化合物を押し出す役目もあると考えられている。処理面上広範囲への供給することが望ましい化合物には、活性剤、例えば不活性または静的なものではなく、活性化する能力のある薬剤がある。利用可能な活性剤または活性成分の非限定的な例には、洗浄化合物、殺菌剤、殺微生物剤、漂白剤、芳香剤、界面改変剤、シミ防止剤(キレート剤等)等とそれらの組み合わせが含まれる。組成物は、望ましい活性剤を水面上便器表面だけではなく水面下にも届け保持させるため、特に便器表面に処理を施す場合に有用である。
【0028】
いくつかの実施形態では、組成物は、ポンプまたは注射器型装置、手動式、加圧式または機械式エアゾールまたはスプレーのような適切な塗布装置を使用することで表面に直接塗布可能である。消費者は塗布装置を有効化することで、塗布面に触れることなく直接組成物を塗布することが可能である。このことは、便器表面への塗布の場合、衛生的で利用しやすい塗布方法を可能にしている。組成物量と場所は、例えば一塊、一滴、または一筋以上の組成物というように利用者が選択可能である。組成物は塗布される便器壁面やシャワー壁面のセラミック製壁面のような硬質面へ自己粘着する。従来型装置により提供されていなかった驚くべき独自の特徴は、表面への組成物塗布箇所より上に位置する表面にも組成物を供給されるということである。
【0029】
組成物
一実施形態では、組成物はゲルまたはゲルのような硬度を持つ。したがって記載されている発明の実施形態では、組成物は硬いものにはなるが、固体のような硬直性を持つものとはならない。別の実施形態では、組成物は固体となる。さらに別の実施形態では、組成物は可鍛性のある固体となる。
【0030】
本発明の組成物により達成される改善された粘着性は、複数回のすすぎ水によっても剥離の無い垂直面への塗布と、時間経過に伴う組成物部分の段階的洗い落としを可能にしており、望ましい洗浄及び/又は殺菌及び/又は芳香処理動作をもたらす。一旦組成物が完全に洗い落とされた場合は、残留するものは無く、さらに組成物を塗布することも容易である。
【0031】
いくつかの実施形態では、組成物は、水との結合を促し、すすぎ水下でも組成物の構造的安定性に寄与する1種類の粘着促進剤、少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤(全体でまたは部分的に粘着促進剤としての役目を果たすもの)で、エトキシ化アルコールが望ましい、少なくとも1種類の陰イオン性界面活性剤で、アルカリ金属のアルキルエーテル硫酸塩またはスルホン酸塩が望ましい、鉱物油、混合物のアルコールそれぞれが炭素数9から17の炭素鎖を含む直鎖第一級アルコール混合物またはエトキシ化直鎖第一級アルコール(ここでは便宜的にそれぞれ「直鎖C−C17第一級アルコール混合物」、「エトキシ化直鎖C−C17第一級アルコール混合物」と称する)、水、任意で少なくとも1種類の溶媒を含んでもよい。特に親水性ポリマーは組成物を表面へとどめ、効果を持続強化し、それにより拡散時間を延長し、したがって表面及び/又は周囲の環境の処理のため活性剤の到達範囲を広げる。
【0032】
いくつかの実施形態では、組成物は濡れ膜拡大を強化するための高性能濡れ剤を含んでもよい。組成物は外部吊り装置や入れ物無しに長期に渡る耐久性を発揮しており、それによって長時間経過後でもただ新しく組成物を表面に塗布するだけで、いかなる装置も除去する必要もない。直鎖C−C17第一級アルコール混合物とエトキシ化直鎖C−C17第一級アルコール混合物はそれぞれ加工処理中の組成物のゲル化温度引き下げに役だっており、そのことは組成物が、組成物成分の分解または分解可能性を減らす低温で加工処理されることを可能にしている。したがって直鎖C−C17第一級アルコール混合物またはエトキシ化直鎖C−C17第一級アルコール混合物の含有は、より安定した成分、したがってより安定した製品を作ることを可能にする。発明の組成物の鍵となる処方のパラメーターは粘着力である。一般的に製品性能を改善するためには、組成物の粘着特性は増加させる。しかしながら粘着性上昇に伴い、組成物のゲル化点もまた上昇する。製品性能の最適化には、出荷、保管及び利用状況下で組成物のゲル構造を維持しながら、処理加工温度をできるだけ下げ、ゲル化点を均衡させることが望ましい。これは粘着性、作用力、最大ゲル粘度への影響を最小限にとどめゲル化点を望ましい値に下げるまたは抑制することに役立つ、直鎖C−C17第一級アルコール混合物またはエトキシ化直鎖C−C17第一級アルコール混合物を含有させることで達成可能である。
【0033】
いくつかの非限定的な例では、硬質面処理に適切な本発明の組成物の成分が多くある。一実施形態では、組成物は約20重量%から約80重量%までの量で存在する粘着促進剤を含む。別の実施形態では、組成物は約20重量%から約60重量%までの量で存在する粘着促進剤を含む。別の実施形態では、組成物は約40重量%から約60重量%までの量で存在する粘着促進剤を含む。また別の実施形態では、組成物は約20重量%から約30重量%までの量で存在する粘着促進剤を含む。
【0034】
本発明の組成物の一実施形態では、組成物は0重量%から約2.0重量%までの量で存在する直鎖C−C17第一級アルコール混合物またはエトキシ化直鎖C−C17第一級アルコール混合物を含む。別の実施形態では、組成物は約0.2重量%から約1.0重量%までの量で存在する直鎖C−C17第一級アルコール混合物またはエトキシ化直鎖C−C17第一級アルコール混合物を含む。別の実施形態では、組成物は約0.4重量%から約0.8重量%までの量で存在する直鎖C−C17第一級アルコール混合物またはエトキシ化直鎖C−C17第一級アルコール混合物を含む。また別の実施形態では、組成物は約0.6重量%までの直鎖C−C17第一級アルコール混合物またはエトキシ化直鎖C−C17第一級アルコール混合物を含む。驚くべきことに、直鎖C−C17第一級アルコール混合物またはエトキシ化直鎖C−C17第一級アルコール混合物の含有は、組成物のゲル化温度を組成物に含まれるアルコール混合物それぞれ0.1重量%ごとにおよそ2℃低下させることに役立つということが発見されている。そのことは製品をより低温で加工処理されることを可能にし、製造中およびそれに続く期間、成分したがって製品の分解を減少させることに役立つ。このことは特に加工処理中に付加される原料または成分のいくつかの処理温度が45℃を超えないようにとされているため有利である。直鎖C−C17第一級アルコール混合物またはエトキシ化直鎖C−C17第一級アルコール混合物の含有は、組成物の安定性強化を可能にする。
【0035】
別の実施形態では、組成物は7.5重量%より多い量の少なくとも1種類の界面活性剤を含む。別の実施形態では、組成物は約7.5重量%から約20重量%までの量の少なくとも1種類の界面活性剤を含む。驚くべきことに、最適量の界面活性剤、特に、陰イオン性界面活性剤を供給することは消費者を大いに喜ばせる特に強力な「発泡性」を製品に与える。
【0036】
一実施形態では、組成物は約5重量%未満の量の鉱物油のような非極性炭化水素を含む。別の実施形態では、組成物は0重量%から約5重量%までの量の鉱物油を含む。別の実施形態では、組成物は約0.5重量%から約3重量%までの量の鉱物油を含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、組成物は意図する適用に適切な材料を利用することで100重量%にしてもよい。当業者には、これには差分の水、表面改質剤、殺菌剤、漂白剤、洗浄剤、発泡剤等とこれらの組み合わせが含まれるが、一方でこれらに限定されるものではないということは認識されるであろう。
【0038】
本発明の組成物は任意でさらに0重量%から約15重量%までの量の少なくとも1種類の溶媒を含み、さらに0重量%から約15重量%までの量の少なくとも1種類の芳香剤を含んでもよい。さらに追加で、組成物の輸送効果を拡大させるために、組成物は任意で0重量%から約5重量%までの量のひとつの親水性ポリマーを含んでもよい。一実施形態では、「溶媒」は水を含まない。
【0039】
さらに任意の成分は高性能濡れ剤である。理論によって限定されることを望むものではないが、高性能濡れ剤は組成物の使用時に生成される濡れ膜を強化しうると考えられる。高性能濡れ剤は本発明の組成物中での使用は可能であり、詳細は後述される。他の非限定的な実施形態では、追加の任意成分には、有効量の防腐剤、冷却材、泡安定剤、抗菌剤、殺菌剤等のような従来型の補助剤が含まれる。
【0040】
粘着促進剤としての使用に適切な代表的成分には、少なくとも部分的には親水性を持つ、したがって水分子と相互作用可能な、少なくとも1種類の親水性残基または親水基を有し、大部分が直鎖状である、長分子あるいは長鎖状分子があってもよい。粘着促進剤は、粘着強化分子を形成するために望ましいネットワーク状の構造を形成するため、非分枝分子を有することが望ましい。粘着促進剤は全体的に親水性であるか、あるいは、部分的に親水性、部分的に疎水性でもよい。
【0041】
本発明での使用に適切な代表的純親水性粘着促進剤には、例えば、ポリエチレングリコール、セルロース、特にカルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、またはキサンタンガム、寒天、ゲランガム、アカシアガム、イナゴマメ粉、グアーゴム、澱粉のような多糖類が含まれる。多糖類は、0重量%から約10重量%まで、0重量%から約5重量%まで、約1重量%から約2重量%までのそれぞれの濃度で、必要な固体性と十分な粘性を備えたネットワークを形成しうる。
【0042】
粘着促進剤分子は、例えばポリアクリル酸塩、多糖類、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンのような合成ポリマーまたは天然ポリマーでよい。アルギン酸塩、ジウレタン、ゼラチン、ペクチン、オレイルアミン、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルエーテル硫酸塩を使用することも可能である。
【0043】
親水性および疎水性末端を備えた有機分子も粘着促進剤として利用可能である。親水性残基としては、例えば、ポリアルコキシ基、好ましくはポリエトキシ、ポリプロポキシ、ポリブトキシ、または、ポリ(エトキシプロポキシ)基のような混合ポリアルコキシ基が使用可能である。例えば、親水性末端として特に使用に好ましいものは、15から55のエトキシ基、好ましくは25から45のエトキシ基、より好ましくは30から40のエトキシ基を含むポリエトキシ残基である。
【0044】
いくつかの実施形態では、陰イオン基、例えば、スルホン酸塩、炭酸塩、硫酸塩は親水性末端として使用可能である。他の実施形態では、ステアリン酸塩、特にステアリン酸ナトリウムあるいはカリウムは粘着促進剤として好適である。
【0045】
粘着強化分子が疎水性末端も備えている実施形態では、直鎖アルキル残基が疎水性残基として好ましく、より高い生分解性のため、特に偶数個のアルキル残基が好ましい。理論によって限定されることを望むものではないが、粘着強化分子の望ましいネットワーク形成を達成するためには、分子は非分枝型であるべきであると考えられる。
【0046】
もしアルキル残基が疎水性残基として選択される場合、少なくとも炭素数12のアルキル残基が望ましい。より望ましいものは16から30の炭素原子のアルキル炭素鎖長のものであり、もっとも望ましいのは20から22の炭素原子のものである。
【0047】
代表的な粘着促進剤はポリアルコキシアルカンで、18から50のエチレンオキシド、好ましくは約25から約35のエチレンオキシドを備えたC20からC22のアルキルエトキシレートとドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの混合が望ましい。アルコキシ基の数を減らすことで粘着促進剤はより脂溶性が高くなり、例えば香水の溶解度、したがって芳香の強度を上げることが可能である。
【0048】
例えば親水性物質のように、水溶液中で一般的に増粘剤のように働く分子もまた粘着促進剤として使用可能である。
【0049】
理論によって限定されることを望むものではないが、使用される粘着促進剤濃度はその親水性とネットワーク形成力次第であると考えられる。例えば、多糖類使用時、粘着促進剤濃度は約1重量%から約2重量%で十分である。一方、ポリアルコキシアルカンを含む実施形態では、濃度は約10重量%から約40重量%であってもよく、別の実施形態では約15重量%から約35重量%、また別の実施形態では約20重量%から約30重量%であってもよい。
【0050】
これもまた理論によって限定されることを望むものではないが、水の吸収を通して粘着強化分子で望ましい数の粘着点を作り出すため、組成物は重量で少なくとも約25%濃度の水と、任意で追加の溶媒を含んでもよいと考えられる。一つの実施形態では、組成物は約40重量%から約65重量%の水を含む。当業者には、使用される水の量は、使用される粘着促進剤と処方中の補助剤の量次第であると認識されるであろう。
【0051】
使用に適切な代表的陰イオン性界面活性剤には、アルカリ金属との、例えばラウリルエーテル硫酸ナトリウムのようなC−C18のアルキルエーテル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩またはメチルタウリン酸塩を含む。他の適切な陰イオン性界面活性剤にはアルキル、アルケニル、アルキルアリールの硫酸塩とスルホン酸塩のアルカリ金属塩を含む。そのような陰イオン性界面活性剤のいくつかはRSOMまたはRSOMという一般的な化学式を持っており、Rは約8個から約20個の炭素原子のアルキル基またはアルケニル基、またはアルキル基部位が約9個から15個の炭素原子の直鎖または分枝鎖のアルキル基であり、アリール基部位がフェニル基またはその誘導体でありうるアルキルアリール基を示し、Mはアルカリ金属(例えばアンモニア、ナトリウム、カリウム、リチウム)を示す。
【0052】
使用に適切な代表的な非イオン性界面活性剤は、18個から50個のエチレンオキシド基(EO)を持つC20−C22のアルキルエトキシレートを有す。別の実施形態では、C20−C22のアルキルエトキシレートは、25から35のエチレンオキシド基を有し、粘着促進剤および非イオン性界面活性剤として望ましい。
【0053】
使用に適切な他の非イオン性界面活性剤のさらなる非限定的な例には、アメリカ合衆国オハイオ州シンシナティのヘンケル社から商品名グルコポンで市販されている商品のようなアルキルポリグリコシドを含む。アルキルポリグリコシドはRO−(R’O)−Zという化学式を持ち、Rは8から20の炭素原子を有する一価のアルキルラジカル(アルキル基は直鎖でも分枝鎖でも、飽和でも不飽和でも構わない)を、Oは酸素原子を、R’は2から4の炭素原子を有する二価のアルキルラジカル、好ましくはエチレンまたはプロピレンを、Xは0から12の平均値を有する数を、Zは5から6の炭素原子を有する還元糖類官能基、好ましくはグルコース、ガラクトース、グルコシル、ガラクトシル残基を、nは約1から10の平均値を有する数を示す。様々なアルキルグリコシドに関する詳細な論議については、米国法定発明登録第H468号と米国特許第4,565,647号を参照することとし、その内容を本出願に引用して援用する。代表的なグルコポンのいくつかを次の表Aに示す(Zはグルコース官能基で、X=0である)。
【表A】

【0054】
使用に適切な非イオン性界面活性剤の他の非限定的な例には、ドイツ、ルートヴィヒスハーフェンのBASF社より商品名ルテンソルで市販されている商品のようなアルコールエトキシレートを含む。これらの界面活性剤は一般的な化学式C1325/C1527−OC−OH(アルキル基はC13/C15の混合)を持つ。特に望ましいのはルテンソルAO3(n=3)、AO8(n=8)、AO10(n=10)である。他アルコールエトキシレートには、ダウサーファクタンツ社から市販されている、12の(OC)で濃縮されたC12−C14第二級アルカノールであるテルギトール15−S−12のような(OC)で濃縮された第二級アルカノールを含む。使用に好適な別の非イオン性界面活性剤の例にはポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテルがある。アミンオキシドもまた好適である。
【0055】
界面活性剤と他液体の混合を補助するため、組成物中に少なくとも1種類の溶媒が存在できる。溶媒は約0重量%から約15重量%、望ましくは約1重量%から約12重量%、より望ましくは約5重量%から約10重量%で含まれる。使用に適切な溶媒の例には、炭素原子8個までの脂肪族アルコール、炭素原子6個までのアルキレングリコール、アルキレン基当たり炭素原子6個までのポリアルキレングリコール、グリコール基当たり炭素原子6個までおよびアルキル基それぞれに炭素原子6個までを有すアルキレングリコールまたはポリアルキレングリコールのモノまたはジアルキルエーテル、グリコール基当たり炭素原子6個までおよびエステル基それぞれに炭素原子6個までを有すアルキレングリコールまたはポリアルキレングリコールのモノまたはジエステル、がある。溶媒の具体的例としては、t−ブタノール、t−ペンチルアルコール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、ベンジルアルコールまたは2−フェニルエタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、グリセリン、エタノール、イソプロパノール、ジプロピレングリコールモノアセテートがあげられる。望ましい溶媒はポリエチレングリコールである。
【0056】
鉱物油のような非極性炭化水素の含有は安定性と硬質面、特にセラミック面への自己粘着性の向上に役立つと考えられる。鉱物油は組成物全体重量に対して重量で0%以上約5%までの量で含まれる。一実施形態では、鉱物油は約0.5重量%から約3.5重量%までの量で含まれる。別の実施形態では、鉱物油は約0.5重量%から約2重量%までの量で含まれる。含有させる鉱物油量は処方物の残りの部分の粘着性能次第となろう。これもまた理論によって限定されることを望むものではないが、鉱物油量が増加するにしたがい、粘着性も増大すると考えられる。
【0057】
組成物中での使用時には利益をもたらすが、界面活性剤及び/又は増粘剤及び/又は粘着促進剤の量を減らすこと無しでの多量の鉱物油を含有することは、組成物硬度が加工処理を困難にするため、製品製造工程や製品使用時での加工処理を困難にする程度まで組成物粘性を増加させることになるとも考えられる。製造時に加工処理を通常よりも高温で実行することは可能だが、そのような方法は製造コストも上昇させ、高温による他の問題を引き起こす。
【0058】
混合物のアルコールそれぞれが9から17の炭素を有する炭素鎖を含む直鎖第一級アルコール混合物またはエトキシ化直鎖第一級アルコール混合物の本発明の組成物の含有には利点があり、組成物中に含まれるそれぞれの混合物0.1重量%当たり約2℃ゲル温度を低下させることがわかっている。直鎖C−C17第一級アルコール混合物またはエトキシ化直鎖C−C17第一級アルコール混合物の含有はまた、洗浄用製品の低温製造を可能にする。低温製造は、組成物成分の、したがって組成物そのものの安定性を改善する組成物の、少なくともいくつかの成分の分解または分解の可能性を減少させる。それによって製品成分の安定性強化により改善した洗浄性能を備えた製品が実現可能である。
【0059】
洗浄用組成物を構成する成分原料には45℃以上では加工処理してはいけないものがあるため、直鎖C−C17第一級アルコール混合物またはエトキシ化直鎖C−C17第一級アルコール混合物の含有によるゲル化温度低下は有益である。加工処理中にゲル化温度を低下させることは、したがって、加工処理中にその材料に生じる分解を減少させることとなり、結果的に製品組成物中にその材料が完全な成分量及び特性のまま残存することとなる。このことはまた、これが無ければ発生したであろう分解分に当てるための成分の増量分が不要となるため、必然的により費用対効果のある製品を提供することを可能にする。アルコール混合物またはエトキシ化アルコール混合物の含有は、組成物のゲル化点抑制により、製品出荷、保管及び使用状況下で望ましいゲル構造維持しながら、組成物の加工処理温度を低下させることで、粘着性向上が製品性能を改善させることを可能にしている。本文中に記載した混合物は、粘着特性、粘着力及び最大ゲル粘度への影響を最小限に抑えたままで、望ましい値へのゲル化点を低下させることに役立つ。
【0060】
本発明での使用に適切な直鎖C−C17第一級アルコールの非限定的な例には、C12とC13アルコール、CからC11アルコール、C12からC15アルコール、C14とC15アルコール、C11−C13−C15アルコール、C16とC17アルコール、C10からC12アルコールを含有する混合物と、これら混合物のエトキシレートがある。そのようなアルコールはシェルカンパニーよりネオドールの商標で市販されている。直鎖C−C17第一級アルコール混合物の例には、ネオドール23、ネオドール91、ネオドール25、ネオドール45、ネオドール135、ネオドール67及びネオドール1がある。混合物のアルコールの一般的化学式はC(2n+1)OHであり、n=9〜17である。
【0061】
使用に適切なネオドールエトキシレートは、付加されたエチレンオキシドの平均モル数を後に続く数字で示す元のアルコールと同じ記述法をそのまま使用しており、例えば、ネオドール23−1、ネオドール23−3、ネオドール23−6.5、ネオドール23−2、ネオドール91−8、ネオドール91−2.5、ネオドール91−5、ネオドール91−6、ネオドール25−2.5、ネオドール25−3、ネオドール25−7、ネオドール25−9、ネオドール25−5、ネオドール25−1.3、ネオドール45−4、ネオドール45−7、ネオドール45−6.8、ネオドール1−9が含まれる。
【0062】
直鎖C−C17第一級アルコール混合物またはそのエトキシ化混合物は、0重量%から約2重量%まで、望ましくは約0.2重量%から約1.0重量%まで、より望ましくは約0.4重量%から約0.8重量%までの量で含まれる。
【0063】
本発明での使用に適切な直鎖C−C17第一級アルコール混合物の望ましい例は、商品名ネオドール23で市販されているようなC12とC13の第一級アルコールの混合物である。ネオドール23の代表的な特性は以下のとおりである:
特性
11およびそれ以下のアルコール <1% m/m
12アルコール 41% m/m
13アルコール 58% m/m
14およびそれ以上のアルコール <1% m/m
規定度 75 min % m/m
水酸基価 285−294 mg KOH/g
分子量 191−197 g/mol
12−C13 第一級アルコール混合物は約0.2重量%から約0.8重量%までの量での使用が望ましい。
【0064】
本発明における使用に適切な他の第一級アルコール混合物の代表的な特性は以下に記載する。
(1)ネオドール25―代表的特性
特性
11およびそれ以下のアルコール <1% m/m
12アルコール 21% m/m
13アルコール 29% m/m
14アルコール 25% m/m
15アルコール 25% m/m
16およびそれ以上のアルコール <1% m/m
規定度 75 min % m/m
水酸基価 267−276 mg KOH/g
分子量 203−210 g/mol
【0065】
(2)ネオドール45―代表的特性
特性
13およびそれ以下のアルコール 1% m/m
14アルコール 49% m/m
15アルコール 50% m/m
16およびそれ以上のアルコール <1% m/m
規定度 75 min % m/m
水酸基価 250−257 mg KOH/g
分子量 218−224 g/mol
【0066】
(3)ネオドール91―代表的特性
特性
およびそれ以下のアルコール <1% m/m
アルコール 18% m/m
10アルコール 42% m/m
11アルコール 38% m/m
12およびそれ以上のアルコール 1% m/m
規定度 75 min % m/m
水酸基価 342−355 mg KOH/g
分子量 158−164 g/mol
【0067】
(4)ネオドール67―代表的特性
特性
14およびそれ以下のアルコール <0.5% m/m
15アルコール 5% m/m
16アルコール 31% m/m
17アルコール 54% m/m
18アルコール 7% m/m
19アルコール 2% m/m
20およびそれ以上のアルコール <0.2% m/m
規定度 5.0 max % m/m
水酸基価 220−230 mg KOH/g
分子量 244−255 g/mol
【0068】
(5)ネオドール135―代表的特性
特性
10およびそれ以下のアルコール <0.5% m/m
11アルコール 12% m/m
12アルコール 1.5% m/m
13アルコール 42% m/m
14アルコール 1.5% m/m
15アルコール 42% m/m
16およびそれ以上のアルコール <0.5% m/m
規定度 75 min % m/m
水酸基価 267−276 mg KOH/g
分子量 203−210 g/mol
【0069】
(6)ネオドール1―代表的特性
特性
10およびそれ以下のアルコール 0.5% m/m
11アルコール 98.5% m/m
12およびそれ以上のアルコール 1% m/m
規定度 75 min % m/m
水酸基価 323−327 mg KOH/g
分子量 172−173 g/mol
【0070】
本発明での使用に適切なあるタイプの上記直鎖C−C17第一級アルコール混合物に基づいたネオドールエトキシレートの例のある特性について以下記す。含まれるエチレンオキシド(EO)の平均モル数は、アルコール1モル当たりである。
【0071】
(1)ネオドール23−1―代表的特性(平均1モルEO)
特性
ポリエチレングリコール 1.0 max % m/m
EO/アルコール比 9−1.0 mol/mol
水酸基価 231−241 mg KOH/g
分子量 233−243 g/mol
【0072】
(2)ネオドール23−2―代表的特性(平均2モルEO)
特性
ポリエチレングリコール 1.0 max % m/m
EO/アルコール比 1.8−2.2 mol/mol
水酸基価 194−204 mg KOH/g
分子量 275−289 g/mol
【0073】
(3)ネオドール23−3―代表的特性(平均3 モルEO)
特性
ポリエチレングリコール 1.0 max % m/m
EO/アルコール比 2.8−3.2 mol/mol
水酸基価 167−177 mg KOH/g
分子量 317−336 g/mol
【0074】
(4)ネオドール23−6.5―代表的特性(平均6.5モルEO)
特性
ポリエチレングリコール 2 max % m/m
EO/アルコール比 6.0−7.0 mol/mol
水酸基価 112−122 mg KOH/g
分子量 460−501 g/mol
【0075】
(5)ネオドール91−2.5―代表的特性(平均2.5モルEO)
特性
ポリエチレングリコール 1.0 max % m/m
EO/アルコール比 2.4−2.6 mol/mol
水酸基価 203−213 mg KOH/g
分子量 263−276 g/mol
【0076】
(6)ネオドール91−5―代表的特性(平均5モルEO)
特性
ポリエチレングリコール 2 max % m/m
EO/アルコール比 4.7−5.3 mol/mol
水酸基価 143−153 mg KOH/g
分子量 367−392 g/mol
【0077】
(7)ネオドール91−6―代表的特性(平均6モルEO)
特性
ポリエチレングリコール 2 max % m/m
EO/アルコール比 5.7−6.4 mol/mol
水酸基価 127−137 mg KOH/g
分子量 410−442 g/mol
【0078】
(8)ネオドール91−8―代表的特性(平均8モルEO)
特性
ポリエチレングリコール 2.0 max % m/m
EO/アルコール比 7.4−8.3 mol/mol
水酸基価 105−115 mg KOH/g
分子量 488−534 g/mol
【0079】
(9)ネオドール25−1.3―代表的特性(平均1.3モルEO)
特性
ポリエチレングリコール 1.0 max % m/m
EO/アルコール比 1.1−1.4 mol/mol
水酸基価 209−219 mg KOH/g
分子量 256−268 g/mol
【0080】
(10)ネオドール25−2.5―代表的特性(平均2.5モルEO)
特性
ポリエチレングリコール 1 max % m/m
EO/アルコール比 2.3−2.7 mol/mol
水酸基価 172−182 mg KOH/g
分子量 308−326 g/mol
【0081】
(11)ネオドール25−3―代表的特性(平均3モルEO)
特性
ポリエチレングリコール 1.0 max % m/m
EO/アルコール比 2.7−3.0 mol/mol
水酸基価 166−172 mg KOH/g
分子量 326−338 g/mol
【0082】
(12)ネオドール25−5―代表的特性(平均5モルEO)
特性
ポリエチレングリコール 2 max % m/m
EO/アルコール比 4.6−5.4 mol/mol
水酸基価 127−137 mg KOH/g
分子量 409−442 g/mol
【0083】
(13)ネオドール25−7―代表的特性(平均7モルEO)
特性
ポリエチレングリコール 2 max % m/m
EO/アルコール比 6.5−7.6 mol/mol
水酸基価 104−114 mg KOH/g
分子量 492−540 g/mol
【0084】
(14)ネオドール25−9―代表的特性(平均9モルEO)
特性
ポリエチレングリコール 2 max % m/m
EO/アルコール比 8.3−9.8 mol/mol
水酸基価 88−98 mg KOH/g
分子量 573−638 g/mol
【0085】
(15)ネオドール45−4―代表的特性(平均4モルEO)
特性
ポリエチレングリコール 1.0 max % m/m
EO/アルコール比 3.7−4.3 mol/mol
水酸基価 136−146 mg KOH/g
分子量 384−412 g/mol
【0086】
(16)ネオドール45−6.8―代表的特性(平均6.8モルEO)
特性
ポリエチレングリコール 2 max % m/m
EO/アルコール比 6.3−7.4 mol/mol
水酸基価 103−113 mg KOH/g
分子量 498−547 g/mol
【0087】
(17)ネオドール45−7―代表的特性(平均7モルEO)
特性
ポリエチレングリコール 2 max % m/m
EO/アルコール比 6.8−8.0 mol/mol
水酸基価 98−108 mg KOH/g
分子量 519−573 g/mol
【0088】
(18)ネオドール1−9―代表的特性(平均9モルEO)
特性
ポリエチレングリコール 2 max % m/m
EO/アルコール比 8.4−9.7 mol/mol
水酸基価 94−104 mg KOH/g
分子量 539−597 g/mol
【0089】
直鎖C−C17第一級アルコール混合物およびそのエトキシ化混合物として使用に適切な混合物例から明白であるように、例えば混合物準備の結果生じる副産物のような、少量の他の直鎖第一級アルコールは含有されていてもよい。本発明の組成物中で役立つ直鎖アルコール混合物およびそのエトキシ化混合物には、含有アルコールの大部分を共に供給する混合物の主成分としてC−C17炭素鎖長のアルコールが含まれる。混合物には非直鎖アルコールは含まれない。
【0090】
ここで有用な親水性ポリマーの非限定的な例には、例えば米国特許第6,593,288号、第6,767,410号、第6,703,358号、第6,569,261号に記載されているようなアクリル酸およびアクリル酸塩が含まれる。使用に適切なポリマーは商品名ミラポールサーフSでローディア社より市販されている。望ましいポリマーはミラポールサーフS−500である。
【0091】
濡れ膜維持の強化のため、高性能濡れ剤が任意で組成物中に含まれる。高性能濡れ剤は拡散時間短縮を補助してもよい。組成物中への含有に適切な高性能濡れ剤の例には、ダウコーニングQ2−5211(ダウコーニング社、ミッドランド、ミシガン州)のような水酸化ジメチルシロキサンがある。高性能濡れ剤は(組成物中の他の界面活性剤に加え)0重量%から約5重量%まで、望ましくは約0.01重量%から約2重量%まで、最も望ましくは約0.1重量%から約1重量%までの量で含まれてもよい。
【0092】
周囲空気環境改善の為に、組成物中に芳香物質が含まれてもよい。
【0093】
一実施形態では、ゲル組成物は6重量%以下の芳香剤を含有する。別の実施形態では、ゲル組成物は、0重量%から6重量%までの芳香剤を含有する。さらに別の実施形態では、ゲル組成物は、0重量%から5重量%までの芳香剤を含有する。またさらに別の実施形態では、ゲル組成物は、2重量%から5重量%までの芳香剤を含有する。
【0094】
一実施形態では、固体組成物は10重量%以下の芳香剤を含有する。別の実施形態では、固体組成物は、0重量%から10重量%までの芳香剤を含有する。さらに別の実施形態では、固体組成物は、2重量%から8重量%までの芳香剤を含有する。またさらに別の実施形態では、固体組成物は、4重量%から7重量%までの芳香剤を含有する。
【0095】
本発明による組成物は硬質面に自己粘着性により粘着する。固体、ゲル、およびゲル状素材は、その上を水流が複数回流れても「流れ落ちたり」、「垂れ落ちたり」しないように構造的に安定である。組成物の粘着性と形状が複数回の水洗でも維持されるため、消費者はそのような組成物を好むと考えられる。鉱物油を含む代表的組成物が以下表Bに記載されている:
【表B】

【0096】
活性成分の輸送
上述のごとく、本発明の組成物は便器、シャワーまたはバス囲い、または等のような洗浄対象の衛生設備の表面に直接塗布可能であり、自己粘着性組成物上を流水、例えば、トイレの水洗、シャワーが複数回通過することによってそれらに自己粘着する。組成物上を水が通過する度に、組成物一部が、組成物が粘着している表面上および洗浄水中へ放出され、長期間に渡る洗浄、殺菌、芳香、防汚、表面改質、紫外線保護、ホワイトニング、漂白、その他同種類の効果をもたらす。元々組成物が塗布されていない箇所への硬質面上の組成物の拡散輸送を可能にする上記成分の含有により組成物から残留効果が得られると考えられている。より具体的には、組成物、したがって組成物中の活性剤は、表面の隣接範囲を広く覆うため、表面と直接接触する当初の塗布箇所から拡散または供給される。液体表面の運動は流体表面下または流体の運動と連結され、液体の移動は通常表面に応力を生じさせ、その逆もありうる。表面張力勾配によって引き起こされる表面および中に取り込まれた流体の移動はマランゴニ効果と呼ばれる(IUPAC Compendium of Chemical Terminology, 2nd Edition, 1994)。したがって本発明の組成物は、表面張力の低い場所から表面張力の高い場所へ、液体−気体界面上を液体が流れることを可能にする。マランゴニ流動は、時間経過に伴い増強される乱れ(不安定性)によって流動が引き起こされるミクロ対流とは対照的に、マクロ対流、すなわち、不均衡により系にかかる界面間張力勾配による現象である。したがって、本発明の組成物上を水流が通過する際、組成物は、組成物に覆われたまたは隣接する局部とは対照的に、隣接する広範囲の表面を覆うべく外側へ拡散する。
【0097】
より具体的には、液体層の表面張力の違いによる液体層上または内部への物質移動により、この効果が観測されると考えられる。理論によって限定されることを望むものではないが、表面張力の相対的に高い液体が、相対的に低い表面張力を持つ液体と比較して、周囲の液体を引き付けるため、表面張力勾配が液体を相対的に低い表面張力の部分から相対的に表面張力の高い部分へ流出させると考えられる。そのような特性、マランゴニ効果は、ハイテク半導体ウェハ加工処理で利用されている。非限定的な例には、米国特許第7,343,922号、第7,383,843号、第7,417,016号が含まれる。
【0098】
当分野の技術者には、しばしばマランゴニ数と呼ばれる無次元単位が、素材のマランゴニ効果および他輸送特性を推定する際に利用されうるということが認識されるであろう。素材のマランゴニ効果を推定する際に利用可能な要素のひとつである、マランゴニ数は等式1に記載されている。当分野の技術者には、マランゴニ数は粘性力に相対的な表面張力勾配による力の大きさを表す無次元パラメーターを提供することが認識されるであろう。
マランゴニ数、 M=−Γ(dσ/dc)/Dμ
ここで、 Mはマランゴニ数、
Γは界面活性剤の表面過剰濃度(mol/m
σは表面張力(N/m)
cはバルク界面活性剤濃度(mol/m
μはバルク絶対粘度(Pascal seconds)
Dはバルク界面活性剤拡散係数(m/s)を示す。
【0099】
上述のごとく、表面上で活性成分を輸送する為に使用される組成物は数多く存在する。しかしながら、前述の組成物のほとんどは、表面上で組成物を輸送するための唯一の機構として、液体の重力あるいは粘着力−凝集力に依存する。同様に、従来の浴室用液体洗浄剤または浴室洗浄技術の類似組成物は、例えば、利用者が組成物を表面上に手動で拡散させる為にブラシや他器具の使用を必要とする。
【0100】
驚くべきことに、輸送現象に伴う複雑性にも関わらず、組成物の輸送特性は特定の界面活性剤と他成分を組成物に付加することで強化可能であるということが発見された。さらにもっと驚くべきことに、液体層が存在するところに組成物がある場合、組成物は活性成分の輸送手段として利用可能である。
【0101】
便器のような硬質面については、本発明による組成物を提供することで、消費者と便器間の接触または他相互作用量を制限するというさらなる利点を消費者に対して与えることができると考えられる。そのような最小限の相互作用は、界面活性剤により引き起こされる表面張力勾配によって、便器(または他の硬質面)のある箇所から移動できるという組成物の能力を利用することで達成可能である。したがって、利用者が便器を水洗する際、(水洗水の)液体層と組成物の相互作用が、ゲル組成物を表面張力勾配に沿って移動させ、したがって組成物が便器中を移動することを可能にすると考えられる。
【0102】
当業者には、上述した輸送機構は、液体層があるどのような硬質面でも利用可能であり、便器での使用に必ずしも限らないことが認識されるであろう。例えば、利用者は組成物を、シンク、窓、排水管の表面、または、水あるいは他液体の供給される他の硬質面で使用可能と想定されている。別の代表的な表面は本文中至るところで記述されている。
【0103】
硬質面処理に関する考察
活性処理剤によるコーティング効果と残留効果を提供する組成物の自己拡散性は、組成物中に含有される界面活性剤によるものである。処理面と組成物の直接接触および組成物の上及び周囲の水流という必須要件に加えて、組成物の自己拡散速度と距離に影響を与えると考えられうる非限定的な要因は、水流中の界面活性剤の溶解量と溶解速度に加えて、含有される界面活性剤の量と種類である。
【0104】
驚くべきことに、上述のごとく界面活性剤の量と溶解度が調整される場合、製品は当初の製品塗布箇所から外向きに360°の広範囲を覆うことができるということが発見されている。さらには活性成分を含む実施形態では、これも上述のごとく組成物は表面に対し、即時及び/又は残留効果を提供しうる。連続膜を提供するために水は必須成分であるため、表面上が乾燥する前に望ましい範囲への拡散が完了しなければならない。そのため、拡散速度は相当なものとなる。
【0105】
使用方法
上述のごとく、本発明の組成物は硬質面への塗布でその表面に即時及び/又は残留効果をもたらすために利用可能であり、表面は水または他の液体にさらされ、そのことは表面エネルギー勾配を作り出す層をもたらす。
【0106】
一実施形態では、本発明の組成物は次の段階から構成される:(1)硬質面への組成物1回分以上の塗布、(2)硬質面の露出、続けて拡散放散組成物層を提供するため液体層へ組成物1回分以上の塗布。本製品の使用方法にはさらに任意の次の段階も含まれてもよい:(3)硬質面の露出、続けてさらなる拡散放散組成物層を提供するため、拡散放散組成物層の液体層への塗布。当業者には、組成物が完全になくなるまで(3)は無限に繰り返してもよいということが認識されるであろう。いくつかの実施形態では、液体層は水である。
【0107】
上述のごとく、硬質面は次からなるグループから選択されうる:セラミック、ガラス、金属、ポリマー、グラスファイバー、アクリル、石等およびこれらの組み合わせ。
【0108】
意図された機能に適切な液体層は、様々な手段で提供されうる。例えば、便器では、組成物1回分が便器内表面(セラミック製硬質面)に塗布され水洗されることによって、便器全体への組成物の輸送を容易にするため必要な液体層が提供される。別の例では、組成物1回分は窓外面に塗布されてもよい。窓外面は利用者がホースまたは動力洗浄機を使って水をスプレーしてもよいし、あるいは雨が窓の水層を作るかもしれない。さらに別の例では、組成物1回分はシンクまたは排水管内側に塗布されてもよい。利用者は水道の蛇口を開け、シンクまたは排水管に水層を供給するだけでよい。さらに別の例では、組成物1回分はシャワーの壁面に塗布されてもよい。利用者はシャワーを流し壁面表面に液体層を供給することができる。さらに別の例では、液体層は蒸気または相対的に高い湿度によって供給されてもよいと考えられる。
【0109】
当業者には、本発明の組成物の別の応用および実施形態は、望ましい用途によって変更されうる様々な活性成分または有益な薬剤によって準備可能であるということが認識されるであろう。
【0110】
使用方法:吐出に関する考察
ゲル状物質の塗布装置も存在する。例えば、PCT国際特許出願第WO03/043906号および第WO2004/043825号は、代表的なディスペンサを公開している。しかしながら、前述したディスペンサは表面へ粘着性のあるゲル状物質を塗布することには問題は無いながらも、一定量の吐出投与量を実現できないことに不満を感じる利用者もいるであろう。具体的には、製品の過少塗布は組成物効能を減じかねない一方、製品の過剰塗布は無駄であり不必要な製品補充につながると消費者は考える。
【0111】
本発明の組成物と両立可能で組成物吐出量1回分を定量測定可能な非限定的な代表的ディスペンサは、米国特許出願第2007/0007302A1号に記載されている。理論によって限定されることを望むものではないが、消費者は自らが1回分量を調節する装置に比べ使用が比較的容易であるという理由で、本発明の組成物を1回単位ごとに分かれた分量で提供されることを望むかもしれないと考えられる。
【0112】
さらには、当業者には、定量測定ディスペンサと接続して使用される場合、ディスペンサは組成物を意図された用途に適切などのような体積及び/又は大きさ及び/又は1回分分量でも提供可能であることが認識されるであろう。同様に、ディスペンサ形状は希望されるどのような形状でもよい。例えば、図1は本発明によるゲル組成物20の定量吐出に使用可能なディスペンサ10の代表的一実施形態を示している。ディスペンサ10は円筒状胴体11とそこに封入されたゲル組成物20を含む。ディスペンサ10は、さらに利用者がガイドホール14に押し込みガイド部材15をy軸の負の方向へスライドさせ、ゲル組成物20をディスペンサ口12へ押し出し可能な、抵抗のある押しボタン13を有す。ガイド部材15を予め決められた距離だけ移動させると、押しボタン13が次のガイドホール14から「飛び出し」、組成物20を正確な量だけ吐出可能にする。ディスペンサ10の断面17−17は意図した目的のために望ましい形であればどのような形でもよい。一実施形態では、断面17−17は環状でもよい。断面形状の非限定的な例は次から選択されてもよい:正方形、円、三角形、楕円、星等およびそれらの組み合わせ。
【0113】
一実施形態では、本発明による組成物は、単位化された分量を供給するディスペンサによって提供されてもよい。特定の実施形態では、単位化分量は1回分当たり約4グラムから1回分当たり約10グラムまでである。別の実施形態では、単位化分量は1回分当たり約5グラムから1回分当たり約9グラムまでである。さらに別の実施形態では、単位化分量は1回分当たり約6グラムから1回分当たり約8グラムまでである。さらに別の実施形態では、ディスペンサは1回分当たり約3グラムから1回分当たり約12グラムまでを提供する。いくつかの実施形態では、ディスペンサは追加の組成物で補充されてもよい。
【0114】
組成物が固体または可鍛性固体である実施形態では、代表的定量吐出方法と装置は米国特許出願第2008/0190457号に記載されている。
【実施例】
【0115】
実験結果とデータ
サンプル
サンプル1−13は界面活性剤に加えて基剤成分セットを含む。基剤成分中の脱イオン水の量はサンプル1−13中の追加界面活性剤を含めるために調整されているという点に留意すべきである。スクラビングバブルのサンプルは本製品の一実施形態である(スクラビングバブルトイレ用ゲル「シトラス・セント」、SCジョンソン社、ラシーン、ウィスコンシン州)を述べる。サンプル6,667,286は米国特許第6,667,286の例1から派生したものである。’286(1)はロドポール成分を含む。’286(2)は記述された範囲の中間にある成分で作られたサンプルである。様々な特性についての測定がサンプルについてなされている。驚くべきことに、本発明サンプルによる界面活性剤および他成分を含むサンプルは、以下にて詳細に述べる様々な特性の理想的な組み合わせを実現している。
基剤成分セット(「基剤」):
成分 重量%
脱イオン水 64.000000
22エトキシ化アルコール(30 EO) 13.000000
16−18エトキシ化アルコール(30 EO) 13.000000
グリセリン 米国薬局方 99.5% 5.000000
クエスト(登録商標)F560805 5.000000

サンプル
サンプル 界面活性剤 重量%
1 アルキルポリグリコシド425N 2.00
2 プルロニック(登録商標)F127 1.00
3 テルギトール(登録商標)15−S−12 1.03
4 ラウリルエーテル硫酸ナトリウム 1.43
2EO, 70%
5 Q2−5211 1.67
6 ルテンソル(登録商標)XL140 1.00
7 ルテンソル(登録商標)XP 30 1.00
8 エアロゾル(登録商標)OT−NV 1.20
9 マカット(登録商標)AO−12 3.33
10 マカット(登録商標)AO−8 3.51
11 テゴプレン(登録商標)6922 2.00
12 アルキルポリグリコシド425 N 4.00
13 ラウリルエーテル硫酸ナトリウム 8.00
2EO, 70%
’286(1) 6,667,286の一例 ― 6.00
ロドポール
’286(2) 6,667,286の一例 ― 6.00
範囲の中間点
スクラビングバブル クエスト(登録商標)F560805 12.60
【0116】
表面拡散
上述のごとく、本発明の組成物は既存組成物に対して、中でも特に高い可動性と輸送性の点で予想外の利点をもたらしている。代表的な組成物は詳細説明にしたがって生成され、以下に記載されている「表面拡散方法」によって表面拡散性が試験されている。
【0117】
驚くべきことに、界面活性剤の付加は組成物輸送の相当量の増加をもたらすことがわかっている。一実施形態では、本発明の組成物は55秒未満の輸送速度因子をもたらす。別の実施形態では、本発明の組成物は約50秒未満の輸送速度因子をもたらす。さらに別の実施形態では、本発明の組成物は約0秒から約55秒までの輸送速度因子をもたらす。別の実施形態では、本発明の組成物は約30秒から約55秒までの範囲の輸送速度因子をもたらす。さらに別の実施形態では、本発明の組成物は約30秒から約50秒までの輸送速度因子をもたらす。さらに別の実施形態では、本発明の組成物は約30秒から約40秒までの輸送速度因子をもたらす。
【0118】
製品の表面拡散(輸送速度因子)に関する結果は以下の表Cに報告されている。
【0119】
製品の表面拡散は以下に記載されている表面拡散試験によって測定されている。
【表C】

【0120】
組成物粘着性
驚くべきことに、組成物可動性に加えて、硬質面への組成物粘着性が利用時の製品長期寿命のような予期せぬ利点をもたらしていることが発見されている。以下に述べられている粘着性試験により測定されているように、製品は表面に対し少なくとも5時間の粘着性を備えていなければならない。一実施形態では、製品は約8時間を超える間、最小限の粘着性を備えている。別の実施形態では、製品は約8時間から約70時間まで、最小限の粘着性を備えている。
【0121】
製品の最小粘着性の結果は以下の表Dに報告されている。
【0122】
製品の最小粘着性は以下に述べられている粘着性試験で測定されている。
【表D】

【0123】
組成物ゲル化温度
組成物に重要な追加特性は、相対的高温環境下にあってもその形状を維持する性能であると考えられる。粘着性と同様に、形状を維持する性能と抗溶解であること。具体的には、この尺度は組成物が冷却するにしたがい粘度100 cpsより高い粘度へと変換する温度を測定するものである。さらには相対的に高い組成物ゲル化温度を有することが、製造者に処理加工、製造、輸送、梱包の面での利点をもたらしている。
【0124】
一実施形態では、組成物は50℃より高いゲル化温度を有する。別の実施形態では、組成物は約50℃から約80℃までのゲル化温度を有する。さらに別の実施形態では、組成物は約50℃から約70℃までのゲル化温度を有する。
【0125】
組成物のゲル化温度は以下に述べられているゲル化温度試験によって測定されている。
【0126】
製品の組成物ゲル化温度の結果は以下の表Eに報告されている。
【0127】
製品の最小粘着性は以下に述べられているゲル化温度試験によって測定されている。
【表E】

【0128】
組成物粘度
いくつかの非限定的な実施形態では、本発明の組成物は硬質面処理用の自己粘着性ゲルまたはゲル状組成物の形状をとる。組成物が自己粘着性ゲルとなる実施形態では、組成物粘度は約15,000 cpsから約100,000 cpsまでである。別の実施形態では、組成物粘度は約25,000 cpsから約80,000 cpsまでである。さらに別の実施形態では、組成物粘度は約30,000 cpsから約60,000 cpsまでである。
【0129】
組成物ゲル化温度は以下に述べられている粘度試験によって測定されている。粘度は温度25℃、10回の剪断、80パスカル秒に基づいて測定されている。
【表F】

【0130】
試験方法
表面拡散方法
「輸送速度因子」は以下に記載するように測定する。
【0131】
1枚の12インチ×12インチのすりガラスまたは食刻ガラスを使った板ガラスが、板ガラスを支えるに十分な大きさの平底槽に据え付けられる。実験は大気圧・室温およそ22℃で行われ、板ガラス表面に水がたまらないように槽は排水設備を備えている。板ガラスは水槽底面上で4インチ×4インチのセラミック製タイル、板ガラスの底端それぞれの側面にタイル1枚ずつを使用して支えられている。板ガラスの中程4インチは底面には接触しておらず、水が板ガラスから流れ落ちることが可能となっている。板ガラスは槽底面からおよそ39°の角度となるように並置される。
【0132】
板ガラスは一方の端から他方の端まで0.5インチの測定マーカーが施されている。
【0133】
ガラス漏斗(長さ40mm×下口内径15mm、容量100ml以上)が、板ガラスの9インチマークの上およそ3.5インチのところに備え付けられる。
【0134】
板ガラスは表面の活性剤を除去するために室温水で洗浄される。洗浄済み板ガラスは板上に波状拡散が見えなくなるまですすぎ洗いを施される。
【0135】
組成物サンプルおよそ7グラム(およそ直径1.5インチの円形のゲル)が板ガラスの印0地点に塗布される。水の入ったビーカー4つ(それぞれおよそ200mL)は9インチの高さからゆっくりと板ガラスの上部に注がれ、組成物の状態を整えるため板ガラス状をそのまま流れるに任せられる。
【0136】
約1分後、漏斗を閉栓しおよそ100mLの水が注ぎこまれる。追加100mLの水はおよそ9インチマーカー地点で板ガラス上に注がれる。およそ10秒後、栓が取り除かれ、漏斗の水が板ガラス状に排出される時点でタイマーが開始される。
【0137】
組成物上排水膜表面の波はガラスを伝い登り、組成物が5インチマーカーへ到達する時間が記録される。
【0138】
試験は複製条件で10回繰り返され、記録秒数が平均され、「輸送速度因子」(時間単位は秒)として報告される。
【0139】
粘着性試験
代表的な硬質面に対する組成物の粘着能力は後述する方法で測定される。
【0140】
作業空間は温度約86°Fから約90°Fの範囲で準備される。作業空間の相対湿度は約40%から約60%の間で調整される。
【0141】
プレキシガラスを背に3枚(y軸方向へ)×4枚(x軸方向へ)に配置した(接着されグラウトを詰められる)12枚の4.25インチ×4.25インチの標準品質で光沢のあるセラミック製タイルからなる板が準備される。
【0142】
板はセルローススポンジを使用して温かい(約75°Fから約85°F)水道水ですすぎ洗いされる。板はその後温かい水道水で再び徹底的にすすぎ洗いされる。イソプロパノールに浸した非リント布(例;キンバリークラーク・ワールドワイド社、ニーナ、ウィスコンシン州のキムワイプ(登録商標))が使用され、タイル板全体が拭かれる。
【0143】
板は水平方向に並置される(すなわち、板平面が床または実験作業台上で平らになるように)。
【0144】
サンプルの底面が板の水平方向(x軸方向)グラウト線の最も上の部分に接触するように、直径およそ1.5インチ、重さ約5.5グラムから約8.0グラムまでのサンプルが板表面に準備される。サンプルは互いにおよそ2インチ離れるように離して置かれる。最も上のグラウト線の下およそ0.75インチの所に(x軸方向に平行な)直線を引くため、耐久性のあるマーカーが使用される。
【0145】
その後、板は垂直方向(板平面が床または実験作業台に対して垂直方向になるように)並置される。板が垂直方向に動かされる時点でタイマーが開始される。サンプルがタイル上サンプル直径の約1.5倍の距離を滑り落ちる時間は測定され、「サンプル粘着時間」として記録される。
【0146】
粘度試験
製造者仕様に従い、ブルックフィールド温度調節式コーン/プレート粘度計(ブルックフィールド・エンジニアリング・ラボラトリー社、ミドルボロ、マサチューセッツ州)が使用される。この装置で使用される具体的パラメーターは、剪断速度10、C−25−1コーン、240秒間での80℃から25℃への温度冷却である。装置はパスカル秒で粘度測定を行う。
【0147】
ゲル化温度試験
製造者仕様に従い、ブルックフィールド温度調節式コーン/プレート粘度計(ブルックフィールド・エンジニアリング・ラボラトリー社、ミドルボロ、マサチューセッツ州)が使用される。この装置で使用される具体的パラメーターは、剪断速度10、C−25−1コーン、240秒間での80℃から25℃への温度冷却である。ゲル化温度は、組成物の冷却に伴い組成物が100 cpsより大きい粘度に転移する温度として報告されている。
【0148】
実施例1:水膜沿い輸送
後述する実験が、本発明の組成物によるマランゴニ効果の驚くべき範囲と速度を示すためおこなわれている。
【0149】
従来型の白い便器(コーラー社、コーラー、ウィスコンシン州)が、便器セラミック表面に何も残らないように、従来型の洗浄剤(「ザ・ワークス」トイレ・お風呂洗浄剤(20%塩酸))とブラシを使って二回洗浄される。便器表面水面上全体に青いコーティングを施すため、青い染料の5%水溶液が便器表面にスプレーされる。染料は相当程度一様に青いままであり、目視では約1分間相当程度静的であり動きがない。トイレは水洗され、染料はすすぎ落とされる。
【0150】
「サンプル2」として上述されている組成物サンプルおよそ7グラムが便器水面上上部一箇所へひとつの塊の状態で塗布される。トイレは水が組成物上および便器内表面に沿って流れ落ちるように水洗される。その後、青い染料水溶液が、青色で示されている便器水面上全体をカバーするように、便器表面に再びスプレーされる。約2分間の目視で、青い染料が当初の塗布地点から全方向に拡散していくことが、白い便器表面であるが故に目視ではっきりとわかる組成物から発散していく素材により観察される。2分後までには、表面の青い染料の消失から明白にわかるが、組成物はおよそ便器表面の半分をカバーした。理論によって限定されることを望むものではないが、組成物拡散はマランゴニ効果によって引き起こされたものであると考えられる。
【0151】
便器上での組成物拡散により、組成物中に含まれる活性剤(例;洗浄及び/又は殺菌及び/又は芳香)による望ましい動作が広範囲に渡って達成され、連続使用による蓄積やしみを防ぐ残留効果を表面にもたらす。
【0152】
実施例2:ゲル組成物粘着性への鉱物油の影響
本発明による、0、0.1、0.5、1重量%の組成物サンプル(およそ7グラム)(それぞれサンプルEからHまでとする)がここに記載されている粘着性試験方法にしたがって試験される。後述する粘着性試験方法にしたがい、タイル板に対してサンプルEからHそれぞれ2回ずつ試験塗布される。図2A−Eはそれぞれ8.5時間、9.5時間、11時間、12.5時間、15時間経過時点でのタイル板の写真である。驚くべきことに、相対的に低い鉱物油重量%の組成物が、高い鉱物油重量%の組成物より低い粘着時間を持つという傾向となっていることが発見されている。
【0153】
非エトキシ化およびエトキシ化直鎖第一級アルコール混合物に関する試験
組成物ゲル化点は、製品製造工程での加工処理温度最小化と、製品性能改善に必要な粘着性増大を確保するためのゲル構造維持との間で、うまくバランスが取れていることが望ましい。この特性は出荷、保管及び利用状況下でも維持されなければならない。直鎖C−C17第一級アルコール混合物とそのエトキシ化混合物の利用は、粘着性、作用力及び最大ゲル粘度への影響を最小限にとどめながら、ゲル化点を望ましい値に下げることに役立つ。
【0154】
図3は4つの被試験組成処方(含有アルコール混合物に関するもの以外の組成については同一である)に関するグラフであり、様々な第一級アルコール混合物、すなわち炭素数11(C11.0)、12.6(C12.6)、14.5(C14.5)の平均炭素鎖長を持つアルコールの炭素鎖長の関数として、ゲル化点の下方向への変化を示している。比較のため、アルコールを含まない基剤処方(基剤)も表示されている。
【0155】
図3のアルコールの炭素鎖長の関数としてのゲル化点における下方へのシフトから、図4に示されているようにC13付近で最適ゲル化点の抑制が達成されている。図4に示されているように、炭素鎖長C11についてはゲル化点変化6.7、炭素鎖長C12.6についてはゲル化点変化9.4、炭素鎖長C14.5についてはゲル化点変化7.6であった。
【0156】
図5にあるグラフは、含有C12.6第一級アルコール混合物量の関数としてのゲル化点の下方へのシフトを示している。図5の記号説明にて示されているように、3つのそれぞれの処方におけるC12.6アルコール混合物の量は、重量で0.25%、0.5%、0.75%濃度であり、それ以外は全く同一のものである。比較のためにアルコールを含まない基剤処方も呈示されている。
【0157】
図6では含有C12.6の%の関数としてのゲル化点の下方へのシフトは、優れたゲル化点抑制調節能力を例証している。0.25%のネオドール23(平均C12.6)を含む処方についてのゲル化点シフトは0.9、0.5%ではゲル化点シフトは9.4、0.75%ではゲル化点シフトは13.7であった。直鎖第一級アルコール混合物の含有によってゲル化点抑制が求められていない処方では、液体相からゲル立方相への鋭い転移が存在する。第一級アルコール混合物によるゲル化点抑制は、結果的にはゲル立方相形成を妨げる相転移となりうる。これは製品粘度の急上昇が達成される前に製品濃度が上昇する温度範囲を生じさせる。この相転移は望ましいものではない。図5で0.25%、0.50%、0.75%濃度と0から10パスカルの範囲での粘度データを考察すると、この相転移が観察される。
【0158】
図7にて示されているように、第一級アルコール混合物の量が増加するに従い、上述の相転移範囲はより重要な考察対象となる。図8に呈示されているように、相転移範囲の存在が関心の対象となる処方では、エトキシ化直鎖第一級アルコール混合物の利用が、全体での望ましいゲル化点抑制への影響を最小限に抑えながらこの相転移範囲の除去に役立つ。図8で示されているように、1モルのエトキシ化で相転移は大幅に減少し、2モルのエトキシ化では相転移は除去される。結果は図8にて示されているが、試験された4つの処方には、アルコール無し(基剤)、0.5重量%の平均炭素鎖長12.6(C12.6)の第一級アルコール混合物、0.5重量%の平均炭素鎖長12.6のエトキシ化第一級アルコール混合物とアルコール1モル当たり平均1モルのエチレンオキシド(EO)(C12.6 1 EO)、0.5重量%の平均炭素鎖長12.6のエトキシ化第一級アルコール混合物とアルコール1モル当たり平均2モルのエチレンオキシド(EO)(C12.6 2 EO)が含まれる。
【0159】
図9に示されているように、2モルのエトキシ化第一級アルコールを図8にあるように0.75重量%まで増加させると、相転移領域が再び形成される。ここでさらにエトキシ化を増加させると、この相転移領域は除去されるはずである。
【0160】
図10は炭素鎖長平均12.6の第一級アルコールのゲル化点変化と相転移領域をまとめている。図10のデータは以下となっている:

% アルコール ゲル化点変化 相転移
0 EO GP 2 EO GP EO 2 EO PT
0.25 0 1.9 0.5 0
0.5 9.4 6.7 5.1 0
0.75 13.7 8.9 10 6.8
【0161】
図11はエトキシ化無しの場合とアルコール1モル当たり2モルのエチレンオキシドの場合における、平均炭素鎖長12.6の第一級アルコール混合物の%に伴うゲル化点変化を表すものである。図表化されたデータは以下のようである:
% アルコール ゲル化点変化
0EO 2EO
0.25 0 1.9
0.5 9.4 6.7
0.75 13.7 8.9

【0162】
ある直鎖第一級アルコール混合物とエトキシ化直鎖第一級アルコール混合物を含有する処方に関する試験データは下表に示されている。処方は含有アルコール混合物以外同一であった。アルコール非含有の基剤処方も対照としてある。以下記載データについても比較のためそれぞれの処方について同じ試験方法で行われた。
【表1】

【0163】
本文中で開示されている代表的実施形態は、網羅的あるいは発明の範囲を不必要に制限することを意図しているものではない。代表的実施形態は、当分野の他技術者が発明を実行できるように本発明原理を説明するために選ばれ記述されたものである。当業者には明白であるように、前述の範囲内で様々な変更は可能である。当業者の能力内でのそのような変更は本発明の一部を形成する。
【0164】
「具体的に」「望ましくは」「典型的に」「一般的に」「しばしば」のような言葉は、特許請求発明の範囲を制限する、または、ある特徴が特許請求発明の構造または機能にとって決定的、必須、または重要であるということを意味するために、本文中で使用されているのではないことに留意。むしろこれらの言葉は、本発明の特定の実施形態で利用される、あるいは、されないかもしれない、代替のまたは追加の特徴を単に強調するという意図で使用されている。また、「実質上」「約」のような言葉は、あらゆる計量比較、値、測定値、または他の表現に帰するといえよう本来ある程度の不確実性を表すために、本文中では使用されていることにも留意する。
【0165】
本文中で開示されている寸法および値は挙げられている正確な数値に厳密に限定されると捉えるべきではない。代わりに、他にて特記ない限りは、寸法はそれぞれ挙げられている値およびその値周辺の機能的等価範囲の両方を意味するべく意図されている。例えば、「50mm」として開示されている寸法は、「約50mm」を意味するべく意図されている。
【0166】
発明の詳細記述内で引用されている全ての文書は、関連部分に関してその内容を本出願に引用して援用する。いかなる文書の引用も本発明についての先行技術であるということを認めるものと解釈されるべきではない。本作成文書中の用語の意味または定義が、引用し援用されている文書中の用語の意味または定義と矛盾する場合、本作成文書中の用語に当てられた意味または定義が優先する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1種類の粘着促進剤、
(b)陰イオン性、非イオン性、陽イオン性、両性、双性イオンからなるグループ、これらの組み合わせから選択された少なくとも1種類の界面活性剤、
(c)鉱物油、
(d)非エトキシ化混合物のアルコールそれぞれが9から17の炭素を有する炭素鎖を含む直鎖第一級アルコールの非エトキシ化混合物、または、エトキシ化混合物のアルコールそれぞれが9から17の炭素を有する炭素鎖を含む直鎖第一級アルコールのエトキシ化混合物、
(e)差分の水、
(f)任意で、少なくとも1種類の溶媒、
を含み、処理面への塗布と同時に自己粘着性を持ち、水が前記組成物および表面を通過する際、濡れ膜を生じさせる硬質面を処理するための組成物。
【請求項2】
直鎖第一級アルコールの非エトキシ化混合物または直鎖第一級アルコールのエトキシ化混合物が、前記組成物を生成中に、組成物のゲル化温度を前記非エトキシ化混合物またはエトキシ化混合物それぞれ0.1重量%当たり約2℃降下させるに十分な量で含まれる請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
組成物が少なくとも1種類の、任意で部分的にまたは全体的に(a)としても機能しうる非イオン性界面活性剤をさらに含む請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
(a)約18重量%から約27重量%までの、少なくとも1種類の粘着促進剤、
(b)陰イオン性、非イオン性、陽イオン性、両性、双性イオンからなるグループ、及びこれらの組み合わせから選択された少なくとも1種類の界面活性剤で、約7.5重量%から約20重量%までのもの、
(c)非エトキシ化混合物のアルコールそれぞれが9から17の炭素を有する炭素鎖を含む直鎖第一級アルコールの非エトキシ化混合物、または、エトキシ化混合物のアルコールそれぞれが9から17の炭素を有する炭素鎖を含む直鎖第一級アルコールのエトキシ化混合物で、0重量%から約2重量%までのもの、
(d)0重量%から約5重量%までの鉱物油、
(e)差分の水、
(f)任意で、0重量%から約5重量%までの、少なくとも1種類の溶媒、
を含み、処理面への塗布と同時に自己粘着性を持ち、水が前記組成物および表面を通過する際、濡れ膜を生じさせる硬質面を処理するための組成物。
【請求項5】
組成物が任意で部分的にまたは全体的に(a)としても機能しうる、少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤で、約7.5重量%から約20重量%までのものをさらに含む請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
親水性ポリマーをさらに含む請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
約1重量%から約10重量%までの親水性ポリマーをさらに含む請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
高性能濡れ剤化合物を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
0重量%から約5重量%までの高性能濡れ剤化合物をさらに含む請求項4に記載の組成物。
【請求項10】
約0.5重量%から約3.5重量%までの前記鉱物油が含まれる請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
約0.5重量%から約3.5重量%までの前記鉱物油が含まれる請求項4に記載の組成物。
【請求項12】
芳香剤、殺菌剤、抗微生物剤、漂白剤、防臭剤の1種類以上の機能を持つ、少なくとも1種類以上の活性剤を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
芳香剤、殺菌剤、抗微生物剤、漂白剤、防臭剤の1種類以上の機能を持つ、少なくとも1種類以上の活性剤を含む請求項4に記載の組成物。
【請求項14】
(a)エトキシ化アルコール、
(b)アルキルポリグリコールエーテル、
(c)鉱物油、
(d)非エトキシ化混合物のアルコールそれぞれが9から17の炭素を有する炭素鎖を含む直鎖第一級アルコールの非エトキシ化混合物、または、エトキシ化混合物のアルコールそれぞれが9から17の炭素を有する炭素鎖を含む直鎖第一級アルコールのエトキシ化混合物、
(e)多価アルコール、
(f)ポリエチレングリコール、
(g)アルキルエーテル硫酸塩、
(h)水、
を含み、処理面への塗布と同時に自己粘着性を持ち、水が前記組成物および表面を通過する際、濡れ膜を生じさせる硬質面を処理するための組成物。
【請求項15】
直鎖第一級アルコールの非エトキシ化混合物または直鎖第一級アルコールのエトキシ化混合物が、前記組成物の生成中に、組成物のゲル化温度を前記非エトキシ化混合物またはエトキシ化混合物それぞれ0.1重量%当たり約2℃降下させるに十分な量で含まれる請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
硬質面上少なくとも1種類の所定の箇所への塗布用組成物であり、前記組成物と前記硬質面の上を水が複数回に渡り周期的に流れることにより、前記組成物は周期的な水の通過中およびその通過後に一部溶解し、それによって前記硬質面上を前記組成物からあらゆる方向に広がる濡れ膜を形成し、前記硬質面に対し自己粘着性を持つように作られている組成物であり、前記組成物は、その組成物中に存在する少なくとも1種類の活性剤を即効および残留作用のために、前記した所定の位置を基点として前記硬質面上広範囲に渡って濡れ膜中で供給する少なくとも1種類の界面活性剤を含み、また、非エトキシ化混合物のアルコールそれぞれが炭素数9から17の炭素鎖を含む直鎖第一級アルコールの非エトキシ化混合物、または、エトキシ化混合物のアルコールそれぞれが炭素数9から17の炭素鎖を含む直鎖第一級アルコールのエトキシ化混合物を含む。
【請求項17】
芳香剤、殺菌剤、抗微生物剤、漂白剤、防臭剤の1種類以上の機能を持つ、少なくとも1種類以上の活性剤を含む請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
少なくとも1種類の粘着促進剤、少なくとも1種類の陰イオン性界面活性剤、任意で部分的にまたは全体で少なくとも1種類の前記粘着促進剤を提供する少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤、鉱物油、非エトキシ化混合物のアルコールそれぞれが9から17の炭素を有する炭素鎖を含む直鎖第一級アルコールの非エトキシ化混合物、または、エトキシ化混合物のアルコールそれぞれが9から17の炭素を有する炭素鎖を含む直鎖第一級アルコールのエトキシ化混合物、水を含む硬質面用自己粘着性洗浄剤であり、前記硬質面は疎水性も備え、または疎水性を与えられたものであり、前記硬質面に前記組成物を塗布し、前記組成物上に流水を施すと、前記組成物は部分的に溶解し、その前記組成物から前記硬質面上広範囲に渡って硬質面に沿って全方向に広がり、前記広範囲に一時的に滞留し、前記硬質面への残留洗浄効果を提供する濡れ膜を提供する。
【請求項19】
(a)少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤を含み、処理する硬質面への自己粘着性を組成物に与える、1種類以上の成分、
(b)陰イオン性、非イオン性、陽イオン性、両性、双性イオンからなるグループ、及びこれらの組み合わせから選択された少なくとも1種類の界面活性剤、
(c)鉱物油、
(d)非エトキシ化混合物のアルコールそれぞれが9から17の炭素を有する炭素鎖を含む直鎖第一級アルコールの非エトキシ化混合物、または、エトキシ化混合物のアルコールそれぞれが9から17の炭素を有する炭素鎖を含む直鎖第一級アルコールのエトキシ化混合物、
(e)水、
(f)任意で、少なくとも1種類の活性剤、
を含み、前記組成物の硬質面への塗布後のその組成物上に流水を施した後、前記硬質面上の前記組成物から広がる濡れ膜を生じさせる組み合わせの量で、少なくとも1種類の前記陰イオン性界面活性剤と、少なくとも1種類の前記非イオン界面活性剤が含まれる硬質面処理用組成物であり、前記濡れ膜は前記硬質面への即効および残留効果をもたらすために前記組成物の成分の輸送体の役目を果たす。
【請求項20】
直鎖第一級アルコールの非エトキシ化混合物または直鎖第一級アルコールのエトキシ化混合物が、前記組成物生成中、組成物のゲル化温度を前記非エトキシ化混合物またはエトキシ化混合物それぞれ0.1重量%当たり約2℃降下させるに十分な量で含まれる請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
さらに親水性ポリマーを含む請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
さらに高性能濡れ剤化合物を含む請求項19に記載の組成物。
【請求項23】
少なくとも1種類の前記界面活性剤が約7.5重量%から約20重量%までの量で含まれ、前記鉱物油が0重量%から約5重量%までの量で含まれる請求項19に記載の組成物。
【請求項24】
約1重量%から約10重量%までの親水性ポリマーをさらに含む請求項19に記載の組成物。
【請求項25】
0重量%から約5重量%までの量で高性能濡れ剤化合物をさらに含む請求項19に記載の組成物。
【請求項26】
直鎖第一級アルコールの非エトキシ化混合物または直鎖第一級アルコールのエトキシ化混合物が、0重量%から約2重量%までの量で含まれる請求項19に記載の組成物。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2013−501089(P2013−501089A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522805(P2012−522805)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/002097
【国際公開番号】WO2011/014241
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(500106743)エス.シー. ジョンソン アンド サン、インコーポレイテッド (168)
【Fターム(参考)】