説明

高い電荷キャリア移動度を有する黒色可溶性共役ポリマー

可溶性縮合ドナー−アクセプター共役ポリマー(fDA−CP)を製造した。該共役ポリマーは、ほとんどすべての可視波長域の光を吸収し、中性状態では肉眼では実質的に黒く見える。該共役ポリマーは複数の縮合ドナー単位により隔離されたアクセプター単位を有する。fDA−CPは、固体状態では近接する層と4.5Åより小さい距離で分離した密なπ−スタッキングを与えるとともに、高電荷キャリア移動度を促進する拡張共役を与える形態をとっている。fDA−DPは、少なくとも1個の縮合ドナー−アクセプターオリゴマー(fDA−オリゴマー)の重縮合により製造することができ、該fDA−オリゴマーは、平坦な内部アクセプター単位とオリゴマーに組み込まれた少なくとも1個の縮合ドナー単位を含み、必要に応じて、fDA−オリゴマーと共重合する別の共役芳香族モノマーまたはオリゴマーを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2008年11月26日に出願された米国仮出願第61/118,316号の利益を主張するものであり、すべての図、表および図面を含む当該出願の開示内容は、出典明示によりすべて本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
電子リッチおよび電子欠乏なπ共役置換基を含む分子システムが、エネルギーバンド混合を用いた用途のために合成されている。これらの分子システムについては以下の用途が検討されている:発光半導体;有機薄膜トランジスタ用n型チャンネル半導体および二極型半導体;化学バイオセンサ用活性有機成分;非発光型有機エレクトロクロミックス;および電磁スペクトルの可視波長域および/または近赤外(NIR)波長域を吸収する低バンドギャップの光電池。可視波長域および/または近赤外(NIR)波長域を吸収する低バンドギャップの光電池は、高いエネルギー変換効率を有するバルクヘテロ接合太陽電池の設計を目的として追求されている。構造制御により容易にバンドギャップを調整でき、機械的な変形も許容できる、ドナー−アクセプター型(DA)π共役ポリマーは、革新的な高性能可撓性光捕集技術に対する要求を満たすものとして関心をもたれている。対応する無機材料とは異なり、DAπ共役ポリマーは、低コストの大面積化可能なプロセスおよび高処理量の溶液プロセスへの可能性を有しており、特に、太陽電池の最終的な用途におけるそれらプロセスの可能性を有しており、該太陽電池の最終的な用途は、自動車や住宅の外面等の大面積、または携帯用電子装置に用いられているような微細に印刷された光活性アレイを必要とする。
【0003】
ドナー−アクセプター型の巨大分子はハビンガらの「Synthetic Metals, 1993, 55, (1), 299-306」により10年以上前に紹介されたが、ほんの最近になって、光電池に用いた場合に高性能を示す共役ポリマーが合成された(全効率が最大5%)。一般的には、DAポリマーの電力への変換効率は低い。この低い効率は2つの要因による。第1の要因は、DAポリマーの光吸収が可視波長域の一部、通常赤色域に限定されていることである。別の要因は、DAポリマーは、固体状態の装置では真性電荷キャリア移動度が低いからである。
【0004】
可視波長域の大部分の領域の光を吸収する、すなわち実質的に黒色であるシステムについてはほとんど報告がない。全波長域で可視光吸収が起きるように設計されたほとんどすべてのポリマーシステムは、広波長域の光を吸収する発色団をわずかな数だけ有するシステム、あるいは狭い吸収特性を有する複数の発色団が全可視波長域に亘り均一に分散したシステムのいずれかに基づいている。すべてが有機ポリマーの半導体であって、すべての可視波長域の光を吸収する最初の太陽電池システムがつい最近報告されたが、これらのシステムでも、全可視域に亘り強く光を吸収する(ピーク吸収率が50%を越える)ものではない(2008年7月11日に世界的にウェブで発行された、ホウらの「J. Amer. Chem. Soc.、交互共重合体、ポリ[(4,4’−ビス(2−エチルヘキシル)ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]シロール)−2,6−ジイル−アルト−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール)−4,7−ジイル](PSBTBT)」、およびワンらの、「Appl. Phys. Lett. 2008, 92, 033307」の共重合体、ポリ[(2,7−ジオクチルシラフルオレン)−2,7−ジイル−アルト−(4,7−ビス(2−チエニル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾール)−5,5’−ジイル](PSiFDTBT)。
【0005】
典型的な強吸収のDAポリマーは、その電荷キャリア移動度は限定されており、それは好ましい分子間相互作用が欠如しているためであり、特に、層間距離とも呼ばれる鎖と鎖との間の距離が大きいためπ−スタッキングが弱いことによるものであり、それはポリマー主鎖の平面性が低いためである。高い電荷キャリア移動度がバルクヘテロ接合太陽電池には必要であり、それは、光励起された励起子または双生電子−ホール対(geminate electron-hole pairs)が、装置の活性層の中で拡散および解離し、並びに解離した電荷が捕集電極へ移動するために必要だからである。高い電荷キャリア移動度がないと、捕集される前に解離した電荷は再結合し、装置の太陽エネルギー変換の効率は低くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そのため、可視波長域の光をすべて強く吸収し、高い電荷キャリア移動度のための拡張共役を備えた良好なπ−スタッキングを有する実質的に黒色のDAポリマーシステムは、太陽電池等の大面積可撓性の光捕集装置の開発の一つの目標として依然として存在している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様は、隔離されたアクセプター単位を有する、可溶性の縮合ドナー−アクセプター共役ポリマー(fDA−CPs)に関するものであり、該アクセプター単位は電子欠乏の芳香族部分であり、可溶性側鎖を含む複数の縮合ドナー単位に隣接しかつ該単位により分離されている。fDA−CPsは、可視波長域すべてを吸収するため、人間の目には黒く見える。それらの構造に起因して、隣接するポリマー鎖のπ−スタッキングが起こり、その固体状態の層間距離は4.5Åより小さく、グラファイトのグラファイト間隔の3.3Åに近くなる。本発明の多くの態様では、縮合ドナー単位は、アクセプターの繰り返し単位の間に偶数の単分散列の形で存在している。いくつかの態様では、縮合ドナーは以下の構造を有する。
【0008】
【化1】

【0009】
ここで、Eは、−CH=CH−、S、Se、NH、NR、またはSi;Xは、C、Si、またはN;mは、1から5;pは0または1;Rは直鎖状または分岐鎖状のC1−24のアルキル、直鎖状または分岐鎖状のC2−24のアルキレニル(alkylenyl)、直鎖状または分岐鎖状のSi1−10のシランまたはシロキサンで水素、メチル、C2−6のアルキルまたはアリルまたは他の可溶性基で置換されたものである。アクセプター単位は、チアジアゾロキノキサリン、キノキサリン、チエノチアヂアゾール、チエノピラジン、ピラジノキノキサリン、ベンゾチアジアゾール、ビス−ベンゾチアジアゾールまたはチアヂアゾールチエノピラジンの誘導体を用いることができる。いくつかの態様では、アクセプター単位は、2,1,3−ベンゾチアヂアゾールである。他の態様として、別の共役芳香族単位、例えば非置換チオフェン単位が縮合ドナー単位の間に存在するようにしてもよい。本発明の態様に基づくfDA−CPsの構造の例には、以下のものが含まれる。
【0010】
【化2】

【0011】
ここで、Aは、電子欠乏の芳香族部分を含むアクセプター単位;Eは、−CH=CH−、S、Se、NH、NR、またはSi;Xは、C、Si、またはN;nは5から100;mは1から5;xは1から5;pは0または1;Rは直鎖状または分岐鎖状のC1−24のアルキル、直鎖状または分岐鎖状のC2−24のアルキレニル、直鎖状または分岐鎖状のSi1−10のシランまたはシロキサンで水素、メチル、C2−6のアルキルまたはアリルまたは他の可溶性基で置換されたものである。
【0012】
本発明の別の態様は、fDA−CPsの作製方法に関するものであり、該方法においては、1個または複数個のアクセプター単位を含むfDA−オリゴマーを含む重合混合物であって、該アクセプター単位が縮合ドナー単位により隔離された電子欠乏の芳香族部分を有し、該縮合ドナー単位はfDA−オリゴマーの各末端に位置する該重合混合物を用意し、該重合混合物を化学的に重合させて上記の(1)または(2)のタイプのfDA−CPsを生成させる。上記の重合混合物は、少なくとも1つの共役芳香族単位を有する共役モノマーまたは共役オリゴマーを含んでもよく、その場合、上記のタイプ(3)のfDA−CPsが重合により生成する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の態様に基づく縮合ドナーとアクセプターの配置を示し、高い電荷キャリア移動度を有する黒色の可溶性共役ポリマーが得られる。
【図2】図2は、本発明の態様に基づくfDA−オリゴマーを示し、本発明の態様に基づいてfDA−CPの作製に用いることができる。
【図3】図3は、本発明の態様に基づくいくつかの共役単位の例を示しており、該共役単位は、fDA−CPのfD単位の間にモノマー単位または2から5のオリゴマー単位として存在する。
【図4】図4は、本発明の態様に基づくfDA−CPの置換されたアクセプター単位の2種の例を示している。
【図5】図5は、本発明の態様に基づく方法の例を示しており、fDA−CPの作製方法を示す。
【図5−1】図5−1は、本発明の態様に基づく方法の例を示しており、fDA−CPの作製方法を示す。
【図6】図6は、本発明の態様に基づく方法の例を示しており、fD単位の間に非チオフェンの共役繰り返し単位を有するfDA−CPの作製方法を示す。
【図7】図7は、本発明の態様に基づく3種のfDA−CPsの可視吸収スペクトルを合成したものを示しており、ほとんどすべての可視スペクトル領域においてピーク吸光度は50%を越えている。
【図8】図8は、押し出しフィラメントfDA−CP PMB−256の2次元広角X線散乱(WAXS)パターンと、対応するX線プロットを示し、該X線プロットは、層間距離3.6Åのπ−スタッキングを示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
最近、本発明者らはドナー−アクセプター型のエレクトロクロミックポリマー(DA−ECPs)を開発した。該ポリマーは、可視光域に吸収を有し、ポリマーの繰り返し単位の中に組み込まれた電子リッチ部分および電子欠乏部分の相対的な寄与を変化させて複数のエネルギー遷移を制御することにより、最初の黒色ポリマーエレクトローム(electrochrome)を完成させた。DA−ECPsは、短波長と長波長の吸収帯を有しており、該吸収帯は一部が重なり、かついろいろな色相と彩度を有する中性状態の着色材料を生成させるものであり、少なくとも2種のドナー単位はアクセプター単位を分離してコポリマーを生成させ、該コポリマーは、すべての可視波長域に広がって中性状態の黒色ポリマーを与える吸収スペクトルを有している。DA−ECPsは、可溶性側鎖が存在しているので、適切な堆積法を用いてエレクトロクロミック装置の中に容易に導入することができ、該堆積法には、スピン塗布法、噴霧吹き付け法、およびいろいろな印刷方法(例えばインクジェット印刷法)がある。中性ポリマーの全可視波長域に亘る吸収は、電荷移動特性と組み合わせて、黒色太陽電池に使用できる新規なドナー−アクセプター共役ポリマー(DA−CPs)を可能とする。
【0015】
黒色中性状態のDA−CPは、隔離された内部アクセプター単位または隔離されたアクセプター単位列を含む構造を有しており、それらは2以上のドナー単位の列により他のアクセプター単位から分離されている。DA−CPの吸収スペクトルは、ドナー単位とアクセプター単位の比率に依存している。一般的に、DA−CPの低エネルギー極大吸収と高エネルギー極大吸収との波長差が小さくなると、吸収ピークの幅は変化しないか増加し、極大波長の差が小さくなるにつれて重なりが大きくなる。これらのポリマーは、2008年10月29日に出願されたボージュージュ(Beaujuge)らの国際出願PCT/US2008/081606に開示されており、出典明示により本明細書に組み入れられる。ボージュージュらの「Nature Materials, 2008,7,795-9」には、黒色DA−CPsの特性が示されており、出典明示により本明細書に組み入れられる。
【0016】
本発明者らは、平面内または平面外に可溶性側鎖を有する縮合平面芳香族基である、DA−CPのドナー繰り返し単位を選択することにより、中性状態で実質的に黒色であり、固体状態でπ積層および/または配向を非常にし易いπ共役ポリマーを作製できることを見出した。これらの縮合平面型ドナー、およびそれらを電子欠乏芳香族アクセプター繰り返し単位に対してどのように配置するかについての賢明な選択により、縮合ドナー−アクセプター共役ポリマー(fDA−CPs)は、グラファイトのグラフェンで認められる3.3Åの層間距離と近い層間距離で容易に隣接ポリマー鎖間のπ−スタッキングが可能となる長い平面型共役列を持った形態を有する。本発明の態様に基づく幾つかのfDA−CPsは、図1に示されており、太陽電池の用途に有用である。
【0017】
本発明の態様によれば、ポリマーの繰り返し列は、図1の2番目の式に示すように、各側面が少なくとも1つのfD単位と接するアクセプター単位を含み、該アクセプター単位は、すべての非末端アクセプターがすべての他のアクセプターと少なくとも1つのfD単位を介して隔離されている。ボージュージュらが開示しているDAポリマーの場合のように、可視波長域の全域で強い吸収を有する中性状態のポリマーに必要な特徴は、本明細書に開示したfDA−CPsを用いて達成されるが、ボージュージュらの例示ポリマーのD単位よりもfDsを採用することにより、fDA−CPsの有利なπ−スタッキングが可能となる。また、fD単位は、fDA−CPsを溶液状態へと可溶化させる可溶性側鎖を供給し、鎖の平面化およびπ−スタッキングに寄与する。本発明の別の態様では、図1の最初の式に示すように、2つのfD単位またはfD単位の2つの列を1個または複数個の共役繰り返し単位の列により分離できる。本発明の一の態様では、共役繰り返し単位のすべての列は単分散であり、長さを1から5の繰り返し単位としてもよい。本発明の態様では、A単位の各側面の列におけるfDは、長さを1から5の繰り返し単位としてもよい。本発明の態様では、fD単位の列は単分散であってもよい。
【0018】
図2は、本発明の態様に基づいて、fDA−CPへと重合または共重合が可能なオリゴマーを示している。fD単位は、(A)または(B)のように、2つの芳香族単位を有する単一の縮合ドナー、(D)のように複数の芳香族単位を有する単一の縮合ドナー、または(C)のように複数の縮合ドナーである。fDA−オリゴマーは、図2に示す構造をとることができる:mは1〜5;pは0〜1;EはS、NH、NR、Se、O、または−CH=CH−;XはCまたはSi、NHまたはNR;ZはH、Cl、Br、またはI;およびRは可溶性基であり次のものを含む:直鎖状または分岐鎖状のアルキル、例えば、1〜24の炭素原子であり、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、第2ブチル、第3ブチル、n−ヘキシル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシル、n−オクタデシルまたはドデカニル;または2〜24炭素原子の直鎖状または分岐鎖状のアルケニル、例えば、エチニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル等である。アルキルまたはアルケニルには、1個または複数個の酸素原子、硫黄原子、−SO−、−SO−、カルボニル、−COO−、−CONH−、−NH−、−CONH(C1−8アルキル)または−N(C1−8アルキル)−等が1箇所または複数箇所介在してもよい。例えば、アルキル基には、1個または複数個の酸素原子、硫黄原子、−SO−、−SO−、カルボニル、−COO−、−NH−または−N(C1−8アルキル)−が1箇所または複数箇所介在してもよい。これら介在基を含有しないまたは含有するアルキルまたはアルケニルは、1箇所または複数箇所において、1個または複数個の以下に例示する基によって置換されてもよい:C3−6のシクロアルキル、ハロゲン、−OR’、−COOR’、−COOM、−SOM、−SOH、ホスホン酸、−CONR’R”、−NR’R”、ホスホン酸塩、アンモニウム塩または−L−Arまたは−C(O)−L−Arであらわされる基。(式中、Mは窒素カチオンまたは金属カチオンを示す;R’およびR”は、それぞれ独立して、水素原子;L−Ar、−C(O)−L−Ar、または−C(O)−O−L−Ar基;1箇所または複数箇所において、1個または複数個の酸素原子、硫黄原子、カルボニル、−COO−、−CONH−、−NH−、−CON(C1−8アルキル)またはN(C1−8アルキル)−の介在基を含有しないまたは含有するC1−24アルキル、C3−24アルケニル、C3−6シクロアルキル、またはC1−24アルキルカルボニルを示す。
なお、これらの介在基を含有しないまたは含有するアルキル、アルケニル、シクロアルキルまたはアルキルカルボニルは、1箇所または複数箇所において、1個または複数個のハロゲン、−OH、C7−12アラルキル、C2−12アルキルカルボニル、C1−24アルコキシ、C2−24アルキルカルボキシ、−COOM、−CONH、−CON(H)(C1−8アルキル)、−CO(C1−8アルキル)、−NH、−N(H)(C1−8アルキル)、N(C1−8アルキル)、−SOM、フェニル、1個または複数個のC1−8アルキル基で1箇所または複数箇所置換された置換フェニル、ナフチル、1個または複数個のC1−8アルキルアンモニウム塩で1箇所または複数箇所置換されたナフチル、ホスホン酸またはホスホン酸塩で未置換または置換されてもよい。または、窒素原子を含有する場合、R’およびR”は、窒素原子とともに、−O−、−NH−または−N(C1−12アルキル)を含有しないまたは含有する5員環、6員環または7員環を形成してもよい:Lは直接結合、または1個または複数個の酸素原子を含有しないまたは含有するC1−12アルキレンであって、および1箇所または複数箇所において、1個または複数個の−OH、ハロゲン、C1−8アルキル、C1−24アルコキシ、C2−24アルキルカルボキシ、−NH−、−N(H)(C1−8アルキル)、−N(C1−8アルキル)またはアンモニウム塩によって置換されることもある該C1−12アルキレンを示す。Rは、1から10のケイ素原子を含むシランまたはシロキサン鎖であり、ケイ素原子は以下の置換基を有していてもよい:C1−12アルキル基;アリール基;ヘテロアリール基;水素;OR’またはOC(O)R’で、R’はアルキル基、アリール基またはヘテロアリール基)。
【0019】
fD単位は、他のfD単位または他の共役単位によって分離されてもよい。例えば、fD単位は、モノ−チオフェンまたはオリゴ−チオフェンによって分離されてもよい。例えば、他の共役単位には次のものを用いてもよい:モノ−またはオリゴ−フェニレン;モノ−またはオリゴ−カルバゾール;モノ−またはオリゴ−フルオレン;モノ−またはオリゴ−ピロール;モノ−またはオリゴ−フラン;モノ−またはオリゴ−チアゾロチアゾール単位;または本発明に基づくそれらの組み合わせ。本発明の態様に基づき使用できる共役モノ単位の例を図3に示す。
【0020】
fD単位の可溶性基には、可溶性単位から不溶なものへと変換できるものを用いることができ、その方法については、2007年1月25日に出願され、国際出願番号が、PCT/US2007/061016であり、2007年8月2日に国際公開第WO2007/087587として公開されたレイノルズらの「ポリマー状アルキレンジオキシヘテロサイクリクスの化学的脱機能付与」に記載されており、出典明示により本明細書に組み入れられる。その可溶性基をfD繰り返し単位に用いることにより、可溶性fDA−CPを不溶性fDA−CPに変換することができ、fDA−CPを用いる装置の環境が、可溶性fDA−CPの使用には好ましくなくても、化学的脱機能付与の前に溶液から装置を作製することができれば、本発明の好ましい溶液プロセスの特徴を生かすことができる。
【0021】
図1および2に示すように、YfDmAfDmYのA単位には、2,1,3−ベンゾチアジゾール(BTD)(図2に明確に示す)、チアジアゾロキノキサリン誘導体、キノキサリン、チエノチアジアゾール、チエノピラジン、ピラジノキノキサリン、ベンゾビスチアジアゾール、チアジアゾロチエノピラジン、ベンゾトリアゾールおよび/または他の電子欠乏芳香族アクセプター単位を用いることができる。本発明のいくつかの態様では、アクセプター単位は、π−スタッキングを促進するために、平面性繰り返し単位である。本発明のいくつかの態様では、図4で置換ベンゾチアジアゾールアクセプターおよび置換ベンゾトリアゾールアクセプターについて示したように、アクセプターを置換してもよい。
【0022】
図5は、本発明の態様に基づいて、一つのfDA−CPを製造する方法を示している。本発明の態様に基づくfDの合成において、fDは、結合しかつ4価単位としてSiを取り込むことで縮合した2つのチオフェンを有しており、2−ブロモチオフェン1は、5つの工程を経て変換され、単一の反応性官能基を有するfD単位6を提供し、次いでそれは2官能性A単位7と結合してfDA−オリゴマー8aを生成する。図5の生成物はRがオクチルの場合である。fDA−オリゴマー8aは、図5に示すように、自己縮合してポリマーPMB−267を生成してもよく、あるいはmが1の別の共役モノマー10、またはmが2の共役オリゴマー10と交差縮合してもよい。ここで、8aは、10の官能基と相補的な官能基を有するオリゴマー9に変換され、それぞれPMB−262またはPMB−262を生成する。本発明のこれらの例示態様において、以下の表1に示すように、それら物質の数平均分子量は、15,000g/molより大きく、多分散度指数(PDI)は比較的低いことが見出された。元素分析(EA)は、推定fDA−CP構造の計算EAと非常によく一致した。
【0023】
表1.図5のfDA−CPsポリマーのゲルパーミエーションクロマトグラフィー特性および元素分析
【0024】
【表1】

【0025】
図6に示すように、本発明の態様によれば、9と交差縮合できる共役モノマーには、非チオフェンモノマー、例えば、2,7−ビス(トリメチルスタニル)−9,9’−ジメチルフルオレン11を用いてもよい。すべてのケースで示すように、複数のfD単位が共重合体のすべてのアクセプターAを分離するように、交差縮合は行われる。
【0026】
fDA−CPは、図7に示すように、すべての可視波長域において強い吸収を示す。訳450nmの光の吸収は、600〜650nmの最大吸収の50%を越えており、本発明の態様に基づくポリマーは、可視光域のすべての太陽エネルギーを捕集する能力を有している。PMB−256の2次元広角X線スペクトル(WAXS)および鎖間距離のプロットを図8に示す。このプロットは、一つのfDA−CPの面が近接するfDA−CPの面から3.6Åの間隔でπ積層されていることを示しており、この間隔は、グラファイトのグラフェンシートの3.3Åの間隔に近い値である。したがって、各アクセプターの間に少なくとも2つのドナー単位を有する、これらの対称的な新規FDA−CPは、ほぼ最適なπ−スタッキングを有し、該π−スタッキングには、延在する平面領域を与える形態の中にポリマーの長手部分が位置することも必要であり、その延在する平面領域では、所定のfDA−CPのπ軌道が広い重なりを有する。本発明の一態様では、固体状態の層間分離は4.5Åより小さい。本発明の別の態様では、固体状態の層間分離は4Åより小さい。本発明の別の態様では、固体状態の層間分離は3.8Åより小さい。本発明の別の態様では、固体状態の層間分離は約3.6Åである。
【0027】
fDA−CPsは、ポリマー太陽電池の用途、光電池装置、光検出器および光センサー、帯電防止用導電体、透明導電体、電界効果トランジスタ、スーパーキャパシタ、蓄電池および他の電子部品に使用できる。光吸収により可視波長域の大部分を吸収でき、かつ電荷キャリア移動度が他のポリマー系よりも大きいので、本発明のいろいろな態様のfDA−CPsは、優れた光捕集効率を有している。
【実施例】
【0028】
材料および方法
3,3’−ジ−(2−エチルへキシル)シリレン−2,2’−ビチオフェン 5の製造
ジエチルエーテル(300mL)と2.5M n−BuLiのヘキサン溶液(22.2mL、55.6mmol)を含み、−78℃に冷却された溶液に、100mLのTHFに溶かした3,3’−ジブロモ−2,2’−ビチオフェン 4(8.2g、25.3mmol)を添加した。その混合物を室温で3時間攪拌し、次いでTHF(100mL)に溶かしたジクロロビス(2−エチルヘキシル)シラン(9.05g、27.8mmol)を添加した。この混合物をゆっくり加温し、一晩かけて室温まで加温した。次いで反応混合物を300mLの水の中に注ぎ、ヘキサンで抽出し(3×150mL)、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィーで最初に精製し(ヘキサン)、次いでクーゲルロール蒸留でさらに精製し(沸点〜175℃、0.05torr)、わずかに黄色の液体を3.2g(30%)得た。
1HNMR(500MHz,CDCl3):δ7.19(d,J=5.5Hz,2H), 7.04(d,J=5.5Hz,2H), 1.41(m,2H), 1.20(m,16H), 0.94(t,J=6.0Hz,4H), 0.82(t,J-7.0Hz,6H), 0.76(t,J=7.0Hz,6H)
13CNMR(125MHz,CDCl3):δ149.2, 142.8, 130.1, 125.2, 36.2, 35.9, 29.2, 29.1, 23.2, 18.0, 14.5, 11.1
元素分析:C24H38S2Siの計算値:C 68.83, H 9.15, 分析値:C 68.50, H 9.40
HRMS(APCI):計算値[M-H+]419.2257、分析値419.2275
【0029】
5−トリメチルスタニル−3,3’−ジ−(2−エチルヘキシル)シリレン−2,2’−ビチオフェン 6の製造
3,3’−ジ−(2−エチルヘキシル)−2,2’−ビチオフェン 5(1.96g、4.68mmol)を乾燥THF(120mL)に溶かし、−78℃に冷却した。2.5Mのn−ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.95mL、4.91mmol)を30分かけて添加し、その混合物を−78℃で3時間攪拌した。この溶液を0℃まで加温し、次いで−78℃で冷却した。トリメチルスズクロライド(1.21g、6.08mmol)を固体状態で続いて添加し、混合物を室温まで加温し、16時間攪拌した。溶媒を留去すると黄褐色の残留物が得られ、それを〜20mLのヘキサンに溶解し、シリカゲルの短い充填物で濾過し(シリカゲルは純粋なトリエチルアミンで処理し、使用する前にヘキサンで十分に線上した)、その充填物を〜100mLのヘキサンでさらに洗浄した。次いで溶媒を留去し、わずかに黄色のオイル2.45g(90%)を得、それをさらに分析または精製することなく用いた。
【0030】
8aの製造
250mLのフラスコに、5−トリメチルスタニル−3,3’−ジ−(2−エチルヘキシル)シリレン−2,2’−ビチオフェン 6(1.70g、2.92mmol)、4,7−ジブロモベンゾ[C][1,2,5]−チアジアゾール 7(0.43g、1.46mmol)、Pddba(26mg、0.029mmol)およびP(o−tol)(35mg、0.117mmol)を投入した。これを排気し、次いでアルゴンを4回注入し、その後でトルエン(150mL)を添加した。混合物を80℃で一晩加熱した。次いで、ロータリーエバポレーターでトルエンを除去し、得られた残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製し、1.09g(78%)の紫色の粘性のあるオイルを得た。
1HNMR(500MHz):δ8.13(t,J=5.0Hz,2H)*,7.85(s,2H),7.26(d,J=5.0Hz,2H),7.09(d,J=5.0Hz,2H),1.48(m,4H),1.20(m,32H),1.05(m,8H),0.85(m,24H).
13CNMR(125MHz):δ152.7,150.5,149.1,144.2,143.5,140.3,130.5,130.2,126.1,126.0,125.1.
元素分析:C54H76N2S5Si2の計算値:C 66.89, N 2.89, H 7.90, 分析値:C 66.86, N 2.82, H 8.17
HRMS(ESI):計算値[M-H+]969.4223、分析値969.4229
本当の三重項ではないが、2−エチルヘキシル基(R,R)、(R,S)、(S,S)を有する、3種の異なるDTSのジアステレオマーが異なるピークの原因である。DTS出発物質を生成させるのに使用するラセミ体混合物により、各ジアステレオマーの占有率が1:2:1となり、それが8.13のピークに1:2:1の比率を生じさせる。
【0031】
9の製造
0℃に冷却した8a(1.63g、1.68mmol)のクロロホルム溶液(75mL)に、NBS(0.598g,3.36mmol)のアセトニトリル溶液(50mL)を40分かけて添加した。この溶液を0℃でさらに1時間攪拌した後、水(100mL)の中に注ぎ、クロロホルムで抽出し(3×150mL)、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製し、紫色の粘性を有するオイル1.68g(89%)を得た。
1HNMR(500MHz):δ8.10 (t,J=5.0Hz,2H)*,7.83(s,2H),7.04(t,J=1.5Hz,2H),1.48(m,4H),1.20(m,32H),1.05(m,8H),0.85(m,24H).
13CNMR(125MHz):δ152.5,149.6,149.3,143.0,142.9,140.5,132.6,130.2,125.7,125.0,111.9,35.9,35.7,35.7,28.9,232.2,23.0,14.1,10.8
本当の三重項ではないが、2−エチルヘキシル基(R,R)、(R,S)、(S,S)を有する、3種の異なるDTSのジアステレオマーが異なるピークの原因である。DTS出発物質を生成させるのに使用するラセミ体混合物により、各ジアステレオマーの占有率が1:2:1となり、それが8.10のピークに1:2:1の比率を生じさせる。
【0032】
PMB−267の製造および分離
化合物8a(415mg,0.429mmol)をクロロホルム(50mL)に溶解した。モノマー溶液を室温で攪拌しながら、無水塩化第二鉄(347mg,2.14mmol)のニトロメタン溶液を30分かけて滴下した(暗い紫色のモノマー溶液は、酸化剤を添加すると速やかに暗い青緑色に変化した)。その混合物を室温で一晩攪拌した。次いで、それをメタノール(200mL)に投入して沈殿させた。沈殿を濾別し、クロロホルム(200mL)に再溶解させ、ヒドラジン一水和物(6mL)とともに3時間攪拌した。溶媒を留去後、濃縮物(暗い青緑色)をメタノール(200mL)中で沈殿させ、その沈殿物をソックスレーシンブル(Soxhlet thimble)を通して濾過し、メタノールを用いてソックスレー抽出装置で24時間精製した。ポリマーをクロロホルムで抽出し、溶媒を留去して濃縮し、メタノール(200mL)中で沈殿させ、黒っぽい固体(170mg、41%)を回収した。
1HNMR(300MHz):δ8.14(bs,2H),7.87(bs,2H),7.00(br,2H),1.50-0.80(br,68H).
GPC分析:Mn=17700g/mol,Mw=59200g/mol,PDI=3.35.
元素分析:C54H74N2S5Si2の計算値:C 67.02, N 2.89, H 7.71, 分析値:C 66.61, N 2.82, H 8.17
【0033】
PMB−267の変更に係る製造および分離
化合物8a(519mg,0.535mmol)をクロロホルム40mLに溶解し、溶液の中に乾燥空気を吹き込んだ。無水塩化第二鉄(434mg,2.67mmol)をニトロメタン2mLに溶解した溶液を、空気の吹き込みを継続しながら、2時間かけてゆっくり滴下した。この混合物を攪拌し、空気を9時間吹き込んだ後、混合物をメタノール(200mL)に投入して一晩攪拌した。沈殿物を濾別し、メタノールで洗浄し、固体をクロロホルム250mL中に懸濁させ、〜5mLのヒドラジン一水和物を添加した。室温で1.5時間攪拌し、溶媒を体積が〜20mLになるまで留去した。次いでメタノール中で沈殿させ、セルロースシンブルで濾過し、ソックスレー抽出装置で、メタノール(1日)、ヘキサン(1日)、クロロホルム(1日)、およびクロロベンゼン(透明になるまで)を用いて精製した。クロロホルム留分とクロロベンゼン留分をメタノール中で沈殿させ、減圧下で乾燥して、黒っぽい固体をそれぞれ290mg(50%)と50mg(10%)得た。
クロロホルム留分のGPC(THF):Mn=29,770,Mw=75,300,PDI=2.53
【0034】
PMB−262の製造
2,5−ジブロモチオフェン(0.101g,0.421mmol)を乾燥THF(10mL)に溶解し、−78℃に冷却した。n−ブチルリチウムのヘキサン溶液(0.405mL,1.011mmol)を10分かけて添加し、その混合物を−78℃で1時間攪拌した。トリメチルスズクロライドのヘキサン溶液(1.09mL,1.09mmol)を続いて添加し、混合物を室温まで加温し、1時間攪拌した。溶媒を留去すると、mが1で明るい橙色の残留物として10が得られ、それをさらに精製することなく次の工程に用いた(〜98%)。化合物9(0.475g,0.421mmol)、Pd(dba)(2mol%)およびP(o−tol)(8mol%)をその残留物に添加し、乾燥トルエン12mLおよび脱気した無水DMF1mLに溶解した。混合物を90℃で一晩攪拌した。次いで、メタノール(200mL)中で沈殿させた。沈殿をソックスレーシンブル)を用いて濾別し、メタノールを用いてソックスレー抽出装置で24時間抽出した。ポリマーPMB−262をクロロホルムで抽出し、溶媒を留去して濃縮し、メタノール中(200mL)で沈殿させる前に残留する微量の触媒を除去するために強力な錯化配位子(ジエチルアンモニウム ジエチルジチオカルバメート)で処理し、黒っぽい固体を回収した(180mg、41%)。
1HNMR(300MHz,CDCl3):δ8.12(bs,2H),7.84(bs,2H),7.00(br,4H),1.50-0.80(m,68H).
GPC分析:Mn=15,900g/mol,Mw=60,100g/mol,PDI=3.8.
元素分析:C58H76N2S6Si2の計算値:C 66.36, H 7.30, N 2.67, 分析値:C 66.81, H 7.45,N 2.51.
【0035】
PMB−256の製造
5,5’−ジブロモ−2,2’−ビチオフェン(0.141g,0.434mmol)を乾燥THF(10mL)に溶解し、−78℃に冷却した。n−ブチルリチウムのヘキサン溶液(0.416mL,1.04mmol)を10分かけて添加し、得られた混合物を−78℃で2時間攪拌した。トリメチルスズクロライドのヘキサン溶液(1.13mL,1.13mmol)を続いて添加し、混合物を室温まで加温し、2時間攪拌した。溶媒を留去すると、mが2で黄橙色の残留物として10が得られ、それをさらに精製することなく次の工程に用いた(〜98%)。
化合物9(0.489g,0.434mmol)、Pd(dba)(2mol%)およびP(o−tol)(8mol%)をその残留物に添加し、乾燥トルエン12mLおよび脱気した無水DMF1mLに溶解した。混合物を90℃で一晩攪拌した。次いで、メタノール(200mL)中で沈殿させた。沈殿をソックスレーシンブルを用いて濾別し、メタノールを用いてソックスレー抽出装置で24時間抽出した。ポリマーをクロロホルムで抽出し、溶媒を留去して濃縮し、メタノール中(200mL)で沈殿させる前に残留する微量の触媒を除去するために強力な錯化配位子(ジエチルアンモニウム ジエチルジチオカルバメート)で処理し、黒っぽい固体を回収した(250mg、51%)。
1HNMR(300MHz,CDCl3):δ8.13(bs,2H),7.85(bs,2H),7.00(br,4H),1.50-0.80(m,68H).
GPC分析:Mn=19,800g/mol,Mw=64,100g/mol,PDI=3.2.
元素分析:C62H78N2S7Si2の計算値:C 65.79, H 6.95, N 2.44, 分析値:C 66.13, H 7.19,N 2.47.
【0036】
2,7−ビス(トリメチルスタニル)−9,9−ジメチルフルオレン 11の製造
9,9’−ジメチル−2,7−ジブロモフルオレン(0.75g,2.13mmol)のTHF溶液(50mL)に、−78℃で、2.5M n−ブチルリチウムのヘキサン溶液(3.4mL,8.5mmol)を添加し、得られた溶液を30分攪拌した。溶液を0℃まで加温し、30分攪拌した。次いで溶液を−78℃まで冷却し、トリメチルスズクロライド(1.78g,8.9mmol)を添加し、溶液を室温まで加温した。溶液を一晩攪拌した後、混合物を水(100mL)の中に投入し、ジエチルエーテルで抽出した(3×100ml)。有機抽出物を一緒にして無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾別し、溶媒を留去した。残留物をアセトニトリルから3回再結晶し、白色固体0.45g(40%)を得た。
1HNMR(500MHz):δ7.30(dd,J=7.5Hz,J=1Hz,2H),7.57(t,J=1Hz,2H),7.48(dd,J=7.5Hz,J=1Hz,2H),1.54(s.6H),0.36(s,18H).
13CNMR(125MHz):δ153.1,141.6,139.7,134.4,130.0,119.8,47.1,27.5,-9.1
【0037】
CA−172の製造
化合物9および11を、50mLのシュレンク管に投入し、次いで、Pddba(6.3mg,0.0069mmol)とP(o−tol)(10mg,0.033mmol)を含むクロロベンゼン溶液(17mL)を添加した。この混合物を5日間、130℃に加熱し、室温まで冷却し、メタノール中で沈殿させた。沈殿物をセルロースシンブルで濾別し、ソックスレー抽出装置を用い、メタノール(1日)、ヘキサン(1日)およびクロロホルムで精製した。次いでジエチルアンモニウム ジチオカルバメートをクロロホルム画分に添加し、1時間攪拌し、次いでクロロホルム画分を〜50mLまで濃縮し、沸点近くまで加熱し、0.45mmのPTFE製のシリンジフィルターで濾過して、300mLメタノールに投入した。次いで沈殿物を回収し、熱クロロホルムに再溶解し、その濾過/最沈殿プロセスを繰り返し、固体を再度回収した。固体を一晩高真空下で乾燥し、黒っぽい固体83mg(49%)を得た。
GPC(THF):Mn=21,135,Mw=31,580,PDI=1.49.
【0038】
構造分析
ピンホールコリメーションを備えた回転アノード(リガク18kW)X線ビームと2Dシーメンス検出器を用いて繊維WAXS実験を行った。CuKα線(λ=0.1541nm)用の2つのグラファイトモノクロメータを用いた。繊維は、自作のミニ押出機を用いて高温でフィラメント押し出しを行って作製した。押し出しは一定速度で行い、0.7mmの細い繊維を得た。
【0039】
グラファイト単色CuKα X線ビームを有するθ−θシーメンスD500クリスタロフレックス(Kristalloflex)を薄膜の構造の検討のために用いた。回折パターンを2θ範囲1〜34度で記録し、散乱ベクトルsの関数として示している。ここで、s=(2sinθ)/λであり、2θは散乱角である。
【0040】
本明細書において前にあるいは以下に言及するか、または引用したすべての特許、特許出願、出願および刊行物のすべての図および表を含む全記載内容は、本明細書による明確な教示内容と整合する範囲で、本明細書に組み入れられる。
【0041】
本明細書に開示される実施例および態様は本発明を例示的に説明するために記載されたものであり、これらの記載内容に基づく種々の修正または変更は当業者によって想起される事項であって、これらの事項も本発明の技術的な思想と範囲に包含されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可溶性側鎖を含む複数の縮合ドナー単位に隣接するとともに該縮合ドナー単位により分離された電子欠乏芳香族部分を含む隔離されたアクセプター単位を含んでなる可溶性縮合ドナー−アクセプター共役ポリマー(fDA−CP)であって、
該共役ポリマーは、すべての可視波長域の光を吸収するため、肉眼では黒く見え、かつ隣接するポリマー鎖がπ−スタッキングして固体状態での層間距離が4.5Åより小さい、該共役ポリマー。
【請求項2】
上記の縮合ドナー単位が以下の構造を含む請求項1記載のfDA−CP:
【化1】


ここで、Eは、−CH=CH−、S、Se、NH、NR、またはSi;Xは、C、Si、またはN;mは、1から5;pは0または1;Rは直鎖状または分岐鎖状のC1−24のアルキル、直鎖状または分岐鎖状のC2−24のアルキレニル、直鎖状または分岐鎖状のSi1−10のシランまたはシロキサンで水素、メチル、C2−6のアルキルまたはアリルまたは他の可溶性基で置換されている。
【請求項3】
上記のアクセプター単位が、チアジアゾロキノキサリン、キノキサリン、チエノチアジアゾール、チエノピラジン、ピラジノキノキサリン、ベンゾチアジアゾール、ビス−ベンゾチアジアゾール、チアジアゾロチエノピラジン、ベンゾトリアゾールまたはそれらの組み合わせの誘導体から選択される少なくとも1種の誘導体を含む請求項1記載のfDA−CP。
【請求項4】
上記のアクセプター単位が、2,1,3−ベンゾチアジアゾールを含む請求項1記載のfDA−CP。
【請求項5】
上記fDA−CPが以下の構造を含む請求項1記載のfDA−CP:
【化2】


ここで、Aは、電子欠乏の芳香族部分を含むアクセプター単位;Eは、−CH=CH−、S、Se、NH、NR、またはSi;Xは、C、Si、またはN;nは5から10,000;mは、1から5;pは0または1;Rは直鎖状または分岐鎖状のC1−24のアルキル、直鎖状または分岐鎖状のC2−24のアルキレニル、直鎖状または分岐鎖状のSi1−10のシランまたはシロキサンで水素、メチル、C2−6のアルキルまたはアリルまたは他の可溶性基で置換されている。
【請求項6】
上記のfDA−CPが以下の構造を含む請求項1記載のfDA−CP:
【化3】


ここで、Aは、電子欠乏の芳香族部分を含むアクセプター単位;Eは、−CH=CH−、S、Se、NH、NR、またはSi;Xは、C、Si、またはN;nは5から10,000;mは1から5;pは0または1;Rは直鎖状または分岐鎖状のC1−24のアルキル、直鎖状または分岐鎖状のC2−24のアルキレニル、直鎖状または分岐鎖状のSi1−10のシランまたはシロキサンで水素、メチル、C2−6のアルキルまたはアリルまたは他の可溶性基で置換されている。
【請求項7】
上記の縮合ドナー単位の間に、1個または複数個の共役芳香族単位をさらに含む請求項1記載のfDA−CP。
【請求項8】
上記の共役繰り返し単位が、置換または非置換のチオフェン単位を含む請求項7記載のfDA−CP。
【請求項9】
上記の共役繰り返し単位が、置換または非置換の、フェニレン単位、カルバゾール単位、フルオレイン単位、ピロール単位、フラン単位、チアゾロチアゾール単位、またはそれらの組み合わせを含む請求項7記載のfDA−CP。
【請求項10】
上記のfDA−CPが以下の構造を含む請求項1記載のfDA−CP:
【化4】


ここで、Aは、電子欠乏の芳香族部分を含むアクセプター単位;Eは、−CH=CH−、S、Se、NH、NR、またはSi;Xは、C、Si、またはN;nは5から10,000;mは1から5;xは1から5;pは0または1;Rは直鎖状または分岐鎖状のC1−24のアルキル、直鎖状または分岐鎖状のC2−24のアルキレニル、直鎖状または分岐鎖状のSi1−10のシランまたはシロキサンで水素、メチル、C2−6のアルキルまたはアリルまたは他の可溶性基で置換されている。
【請求項11】
上記のfDA−CPが以下の構造を含む請求項1記載のfDA−CP:
【化5】


ここで、Eは、−CH=CH−、S、Se、NH、NR、またはSi;Xは、C、Si、またはN;nは5から10,000;mは、1から5;pは0または1;Rは直鎖状または分岐鎖状のC1−24のアルキル、直鎖状または分岐鎖状のC2−24のアルキレニル、直鎖状または分岐鎖状のSi1−10のシランまたはシロキサンで水素、メチル、C2−6のアルキルまたはアリルまたは他の可溶性基で置換されている。
【請求項12】
上記のfDA−CPが以下の構造を含む請求項1記載のfDA−CP:
【化6】


ここで、Eは、−CH=CH−、S、Se、NH、NR、またはSi;Xは、C、Si、またはN;nは5から10,000;mは、1から5;pは0または1;Rは直鎖状または分岐鎖状のC1−24のアルキル、直鎖状または分岐鎖状のC2−24のアルキレニル、直鎖状または分岐鎖状のSi1−10のシランまたはシロキサンで水素、メチル、C2−6のアルキルまたはアリルまたは他の可溶性基で置換されている。
【請求項13】
上記のfDA−CPが以下の構造を有する請求項1記載のfDA−CP:
【化7】


ここで、Eは、−CH=CH−、S、Se、NH、NR、またはSi;Xは、C、Si、またはN;nは5から10,000;mは、1から5;pは0または1;Rは直鎖状または分岐鎖状のC1−24のアルキル、直鎖状または分岐鎖状のC2−24のアルキレニル、直鎖状または分岐鎖状のSi1−10のシランまたはシロキサンで水素、メチル、C2−6のアルキルまたはアリルまたは他の可溶性基で置換されている。
【請求項14】
上記の縮合ドナー単位が、アクセプター繰り返し単位の間に、偶数の単分散列として存在している請求項1記載のfDA−CP。
【請求項15】
以下の工程を含む、可溶性縮合ドナー−アクセプター共役ポリマー(fDA−CP)の製造方法であって、該共役ポリマーが、すべての可視波長域の光を吸収するため、肉眼では黒く見え、かつ隣接するポリマー鎖がπ−スタッキングして固体状態での層間距離が4.5Åより小さい、該製造方法:
少なくとも1個のfDA−オリゴマーを含む重合混合物であって、該fDA−オリゴマーは少なくとも1個の隔離されたアクセプター単位を含み、該アクセプター単位は縮合ドナー単位が側面に位置する電子欠乏芳香族部分を含み、少なくとも1個の縮合ドナー単位が上記fDA−オリゴマーの各末端に位置する該重合混合物を用意する工程、および
該重合混合物を化学的に重合させる工程。
【請求項16】
上記のアクセプター単位が、チアジアゾロキノキサリン、キノキサリン、チエノチアジアゾール、チエノピラジン、ピラジノキノキサリン、ベンゾチアジアゾール、ビス−ベンゾチアジアゾール、チアジアゾロチエノピラジン、ベンゾトリアゾールまたはそれらの組み合わせの誘導体から選択される少なくとも1種の誘導体を含む請求項15記載の製造方法。
【請求項17】
上記のアクセプター単位が、2,1,3−ベンゾチアジアゾールを含む請求項15記載の製造方法。
【請求項18】
上記のfDA−オリゴマーが以下の構造を含む請求項15記載の製造方法:
【化8】


ここで、Aは、電子欠乏の芳香族部分を含むアクセプター単位;Eは、−CH=CH−、S、Se、NH、NR、またはSi;Xは、C、Si、またはN;mは、1から5;pは0または1;Rは直鎖状または分岐鎖状のC1−24のアルキル、直鎖状または分岐鎖状のC2−24のアルキレニル、直鎖状または分岐鎖状のSi1−10のシランまたはシロキサンで水素、メチル、C2−6のアルキルまたはアリルまたは他の可溶性基で置換されている。
【請求項19】
上記のfDA−オリゴマーが以下の構造を有する請求項15記載の製造方法:
【化9】


ここで、Eは、−CH=CH−、S、Se、NH、NR、またはSi;Xは、C、Si、またはN;mは、1から5;Rは直鎖状または分岐鎖状のC1−24のアルキル、直鎖状または分岐鎖状のC2−24のアルキレニル、直鎖状または分岐鎖状のSi1−10のシランまたはシロキサンで水素、メチル、C2−6のアルキルまたはアリルまたは他の可溶性基で置換されている。
【請求項20】
上記fDA−オリゴマーが以下の構造を有する請求項15記載の製造方法:
【化10】


ここで、Aは、電子欠乏の芳香族部分を含むアクセプター単位;Eは、−CH=CH−、S、Se、NH、NR、またはSi;Xは、C、Si、またはN;mは、1から5;pは0または1;Rは直鎖状または分岐鎖状のC1−24のアルキル、直鎖状または分岐鎖状のC2−24のアルキレニル、直鎖状または分岐鎖状のSi1−10のシランまたはシロキサンで水素、メチル、C2−6のアルキルまたはアリルまたは他の可溶性基で置換されている。
【請求項21】
上記fDA−オリゴマーが以下の構造を有する請求項15記載の製造方法:
【化11】


ここで、Eは、−CH=CH−、S、Se、NH、NR、またはSi;Xは、C、Si、またはN;mは、1から5;pは0または1;Rは直鎖状または分岐鎖状のC1−24のアルキル、直鎖状または分岐鎖状のC2−24のアルキレニル、直鎖状または分岐鎖状のSi1−10のシランまたはシロキサンで水素、メチル、C2−6のアルキルまたはアリルまたは他の可溶性基で置換されている。
【請求項22】
上記の重合混合物が、少なくとも1個の共役芳香族単位を含むモノマーまたはオリゴマーをさらに含み、上記の重合混合物を重合する工程により、上記の共役芳香族単位が、上記fDA−オリゴマーの縮合ドナー繰り返し単位によって上記アクセプター単位から分離される請求項15記載の製造方法。
【請求項23】
上記fDA−オリゴマーが以下の構造を有する請求項22記載の製造方法:
【化12】


ここで、Aは、電子欠乏の芳香族部分を含むアクセプター単位;Eは、−CH=CH−、S、Se、NH、NR、またはSi;mは1から5;Xは、CまたはSi;Rは直鎖状または分岐鎖状のC1−24のアルキル、直鎖状または分岐鎖状のC2−24のアルキレニル、直鎖状または分岐鎖状のSi1−10のシランまたはシロキサンで水素、メチル、C2−6のアルキルまたはアリルまたは他の可溶性基で置換され、さらに上記のモノマーまたはオリゴマーが、以下に示す共役繰り返し単位を少なくとも1種含み、式中xは1から5である。
【化13】

【請求項24】
上記fDA−オリゴマーが以下の構造を有する請求項22記載の製造方法:
【化14】


ここで、Eは、−CH=CH−、S、Se、NH、NR、またはSi;mは1から5;Xは、CまたはSi;Rは直鎖状または分岐鎖状のC1−24のアルキル、直鎖状または分岐鎖状のC2−24のアルキレニル、直鎖状または分岐鎖状のSi1−10のシランまたはシロキサンで水素、メチル、C2−6のアルキルまたはアリルまたは他の可溶性基で置換され、さらに上記のモノマーまたはオリゴマーが、以下に示す共役繰り返し単位を少なくとも1種含み、式中xは1から5である。
【化15】

【請求項25】
上記fDA−オリゴマーが以下の構造を有する請求項22記載の製造方法:
【化16】


ここで、Aは、電子欠乏の芳香族部分を含むアクセプター単位;Eは、−CH=CH−、S、Se、NH、NR、またはSi;mは1から5;Xは、CまたはSi;Rは直鎖状または分岐鎖状のC1−24のアルキル、直鎖状または分岐鎖状のC2−24のアルキレニル、直鎖状または分岐鎖状のSi1−10のシランまたはシロキサンで水素、メチル、C2−6のアルキルまたはアリルまたは他の可溶性基で置換され、さらに上記のモノマーまたはオリゴマーが、以下に示す共役繰り返し単位を少なくとも1種含み、式中xは1から5である。
【化17】

【請求項26】
上記fDA−オリゴマーが以下の構造を有する請求項22記載の製造方法:
【化18】


ここで、Eは、−CH=CH−、S、Se、NH、NR、またはSi;mは1から5;Xは、CまたはSi;Rは直鎖状または分岐鎖状のC1−24のアルキル、直鎖状または分岐鎖状のC2−24のアルキレニル、直鎖状または分岐鎖状のSi1−10のシランまたはシロキサンで水素、メチル、C2−6のアルキルまたはアリルまたは他の可溶性基で置換され、さらに上記のモノマーまたはオリゴマーが、以下に示す共役繰り返し単位を少なくとも1種含み、式中xは1から5である。
【化19】


【図1】
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【図2(A)】
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【図2(B)】
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【図2(C)】
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【図2(D)】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図5−1】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−509984(P2012−509984A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538687(P2011−538687)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【国際出願番号】PCT/US2009/065903
【国際公開番号】WO2010/062948
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(507371168)ユニバーシティ オブ フロリダ リサーチ ファンデーション インコーポレーティッド (38)
【Fターム(参考)】