説明

高いUV安定性および高い光線透過率を有するポリエステルフィルム

(i)ポリエステル基板の総質量を基準として約0.1%〜約10%の量のUV吸収剤を含む、熱安定化配向ポリエステル基板と、(ii)約10nm〜約200nmの範囲の厚さを有し、エチレンアクリル酸(EAA)コポリマーを含む、基板の一方または両方の表面上のポリマーコーティング層と、を備える複合フィルムであって、フィルムの縦および横寸法の両方において、150℃、30分間で0.1%未満の収縮率を示す複合フィルム、ならびに光電池の製造におけるその使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高いUV安定性および高い光線透過率を示し、光(PV)電池および他の電子デバイス、特に可撓性デバイスの製造において特に役立つポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルムの機械的特性、寸法安定性、可撓性、質量、耐衝撃性および光学的特性は、電子または光電子デバイス、例えば電子発光(EL)ディスプレイデバイス(特に有機発光ディスプレイ(OLED)デバイス)、電気泳動ディスプレイ(電子ペーパー)、光(PV)電池および半導体デバイス(例えば、一般的には有機電界効果トランジスタ、薄膜トランジスタおよび集積回路)等の製造におけるその使用に利点を提供する。電子デバイスにおける層としての可撓性ポリエステルフィルムの使用により、リールツーリールプロセスでのそのようなデバイスの製造が可能となり、それによりコストが削減される。
【0003】
光電池は、一般に、前面(またはフロントシート)、前面側封入材料、電極支持基板上の光活性材料、後面側封入材、後ろの裏面(またはバックシート)、ならびに電荷を収集および管理するための様々なコンポーネントを備える。ポリエステルフィルムは、PV電池における様々な層、例えば前面、裏面、電極支持層等の製造において提案されている。多くの光電池で構成されることが多い光起電モジュールは、通常、使用される活性光起電材料に従って分類される。これらの材料は、結晶シリコン、ガリウムヒ素(GaAs)、非晶質シリコン(a−Si)、テルル化カドミウム(CdTe)、(二)セレン化銅インジウムガリウム(CIGS)、色素増感または有機セルを含む。ガリウムヒ素、非晶質シリコン、テルル化カドミウム、(二)セレン化銅インジウムガリウム(CIGS)、色素増感または導電性有機材料を含有する光電池は、薄膜光電池(TFPV電池)と呼ばれることが多く、これは可撓性であてもよく、または可撓性でなくてもよい。他の薄膜シリコンPV電池は、プロト結晶、ナノ結晶(nc−Siまたはnc−Si:H)およびブラックシリコンPV電池を含む。薄膜光電池は、様々な堆積法および様々な基板を用いて、光起電材料の1つまたは複数の薄層を基板上に堆積させることにより作製され、薄層の厚さの範囲は、1または2ナノメートルから数十マイクロメートルまで変動する。
【0004】
多くの研究および開発の的となったPV電池の1つの種類は、CIGS((二)セレン化銅インジウムガリウム)PV電池である。現在のCIGS PV電池の効率は、結晶シリコンPV電池の効率より低いが、CIGS PV電池は、より安価な材料および製造方法の結果、コスト上の利益を提供する。活性CIGS薄膜層は、多結晶形態で、基板上、典型的にはスチールまたはモリブデンコーティングガラス上に直接堆積させることができ、またこれは、典型的には真空スパッタリングにより達成される。ステンレススチール基板上にCIGS太陽電池の全ての層を堆積させるための、連続的なロールツーロールプロセスを含む製造プロセスが報告されている。代替のプロセスは、(i)前駆体材料のナノ粒子の基板上への堆積に続く、in situでの焼結、および(ii)電気メッキを含む。典型的なCIGS PV電池は、光活性CIGS材料の薄い結晶層が堆積される支持基板を備え、さらに、例えば保護層または電荷収集層として機能し得る、CIGS材料上の透明ポリマー層を備える。次いで、この複数層複合材は、複合材を1つにまとめ、構造内の空気を排出してガスおよび溶媒の浸透に対する高い耐性を提供するように機能するバリア材料で封入される。封入バリア材料は、典型的には、自立したフィルムまたはシートの形態で利用され、次いでこれが、当技術分野において知られているように、熱ラミネーション技術を用い、典型的には真空下で複数層複合材に施される。次いで、封入された複合材は、透明ポリマー層が光活性層と前面との間に配置されるように、前面と裏面との間に挟まれる。前面および/または裏面は、典型的にはガラスであるが、ポリマー材料であってもよい。
上述のような他の種類の薄膜PV電池は、PV電池の光活性層を含む様々な機能層を封入するための材料を用いて、同様に製造される。
【0005】
本発明は、具体的には、PV電池、特に薄膜PV電池における透明層として、特に上述のようなCIGS PV電池における透明ポリマー層としての使用に好適なフィルムに関する。そのようなフィルムは、以下の特性の組合せの1つまたは複数、好ましくはその全てを示すべきである。
(i)高い光線透過率。高いPV電池効率のためには、典型的には、400〜800nmにわたり85%の全光線透過率(TLT)が必要である。典型的には、層はまた、0.7%未満の低いヘーズを示すべきであるが、ある特定量のヘーズは、光活性層を通過する際の光の光路長を増加させるため、有益となり得る(米国特許第5078803号;Thin Solid Films 2007、515、8695)。
(ii)良好なUV安定性。UV安定性の欠如は、日光への暴露時のフィルムの黄変、ヘーズおよび亀裂で現れる可能性があり、それによりPV電池の有効使用期限が短縮されるため、フィルム製造のコストおよび効率に害を与えることなく、ならびにフィルムの光線透過率に害を与えることなくUV安定性を改善することが望ましい。
(iii)封入材料への良好な接着。従来技術のデバイスにおける問題は、保護層と封入材との間の接着を改善するための追加的な表面処理の必要性であり、いかなるそのようなステップも排除して、製造効率を向上させコストを削減することが望ましい。さらに、従来技術のデバイスに比べて、封入材と保護層との間の接着を改善することが望ましい。
(iv)良好な熱寸法安定性。これは、典型的に、光学品質のガラスまたは石英よりも低い寸法安定性を示す傾向を有するポリマー材料の大きな問題であった。一般に、PV電池において、ポリマー層、特にCIGS PV電池における上述の透明ポリマー層の低い寸法安定性は、特にデバイスの製造中に受ける高温(典型的には130〜160℃、典型的には最長30分間)および通常は同時に低圧において、上を覆う封入バリア材料の亀裂をもたらす可能性がある。例えば、従来技術のフィルムは、PVデバイスの製造中に皺および移動を示すことが観察されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、好ましくは改善された高い光線透過率、好ましくは改善された良好なUV安定性、好ましくは改善された良好な封入材料への接着性、および好ましくは改善された良好な寸法安定性の組合せを示すポリマーフィルムを提供することである。本発明のさらなる目的は、PV電池(特に薄膜PV電池、特にCIGS PV電池、特に可撓性であるもの)における層、特に透明層としての使用に好適なポリマーフィルムを提供することである。本発明のさらなる目的は、PV電池、特にCIGS PV電池における光活性材料と封入材層との間に配置される層としての使用、特に前記層が保護層または電荷収集層である場合の使用に好適なポリマーフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、
(i)ポリエステル基板の総質量を基準として約0.1〜約10%の量のUV吸収剤を含む、熱安定化配向ポリエステル基板と、
(ii)約10nm〜約200nmの範囲の厚さを有し、エチレンアクリル酸(EAA)コポリマーを含む、基板の一方または両方の表面上のポリマーコーティング層と、
を備える複合フィルムであって、フィルムの縦および横寸法の両方において、150℃、30分間で0.1%未満の収縮率を示す複合フィルムが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ポリエステル基板は、自立したフィルムまたはシートであり、これは、フィルムまたはシートが、支持ベースの存在なしに独立して存在し得ることを意味する。基板は、一軸または二軸配向であり、好ましくは二軸配向である。
【0009】
基板を構成するポリエステルは、典型的には、合成直鎖ポリエステルである。好適なポリエステルは、1種もしくは複数種のジカルボン酸またはそれらの1種または複数種のジオールとの低級アルキル(6個までの炭素原子)ジエステルを縮合することにより得られる。ジカルボン酸成分は、典型的には、少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸を含有し、好ましくはテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−、2,5−、2,6−または2,7−ナフタレンジカルボン酸であり、好ましくはテレフタル酸または2,6−ナフタレンジカルボン酸であり、好ましくはテレフタル酸である。ポリエステルはまた、他のジカルボン酸、例えば4,4’−ジフェニルジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、1,10−デカンジカルボン酸、および特に一般式Cn2n(COOH)2(式中、nは、2〜8である)のものを含む脂肪族ジカルボン酸、例えばコハク酸、グルタル酸、セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸またはピメリン酸、好ましくはセバシン酸、アジピン酸およびアゼライン酸、より好ましくはアゼライン酸から得られる、1種または複数種の残基を含有してもよい。ジオールは、好ましくは、脂肪族および脂環式グリコール、例えばエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールから、好ましくは脂肪族グリコールから選択される。好ましくは、ポリエステルは、1種のグリコールのみ、好ましくはエチレングリコールを含有する。好ましくは、合成直鎖ポリエステルは、1種の芳香族ジカルボン酸および1種のグリコールを含有する。ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリエチレン2,6−ナフタレート(PEN)、特にPETが、好ましいポリエステルである。フィルム形成ポリエステル樹脂は、基板の主成分であり、基板層の総質量の少なくとも50質量%、一実施形態においては少なくとも65質量%、典型的には少なくとも80質量%、より典型的には少なくとも90質量%、より典型的には少なくとも95質量%、一実施形態においては基板層の総質量の少なくとも99質量%を構成する。
【0010】
ポリエステルの形成は、一般に約295℃までの温度での縮合またはエステル交換による既知の様式で都合よく達成される。あるいは、当技術分野において周知の従来の技術を使用して、例えば、窒素流動床または回転真空乾燥機を使用した真空流動床等の流動床を使用して、固有粘度を所望の値に増加させるために、固体重合を用いることができる。
【0011】
基板内に存在するUV吸収剤は、任意の好適なUV吸収剤から、典型的には有機UV吸収剤から選択され得る。基板内のUV吸収剤は、ポリエステルの減衰係数よりはるかに高い減衰係数を有するため、入射UV光のほとんどがポリエステルよりもUV吸収剤に吸収される。UV吸収剤は、一般に、吸収したエネルギーを熱として消散させ、それによりポリマー鎖の劣化を回避し、ポリエステルのUV光に対する安定性を改善する。有機UV吸収剤の好適な例には、Encyclopaedia of Chemical Technology、Kirk−Othmer、第3版、John Wiley&Sons、第23巻、615〜627頁に開示されるものが含まれる。UV吸収剤の具体例は、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール(米国特許第4684679号、米国特許第4812498号および米国特許第4681905号)、ベンズオキサジノン(米国特許第4446262号、米国特許第5251064号および米国特許第5264539号)ならびにトリアジン(米国特許第3244708号、米国特許第3843371号、米国特許第4619956号、米国特許第5288778号および国際公開第94/05645号)を含む。本発明の一実施形態において、UV吸収剤は、ポリエステル鎖中に化学的に組み込むことができる。そのようなUV安定ポリエステルは、例えば欧州特許出願公開第0006686号、欧州特許出願公開第0031202号、欧州特許出願公開第0031203号および欧州特許出願公開第0076582号に記載のように、ベンゾフェノンをポリエステルに組み込むことにより生成され得る。UV吸収剤に関する上述の文献の具体的な教示は、参照により本明細書に組み込まれる。特に好ましい実施形態において、本発明における改善されたUV安定性は、トリアジンにより、より好ましくはヒドロキシフェニルトリアジンにより、特に式(II):
【化1】

(式中、Rは、水素、C1−C18アルキル、ハロゲンもしくはC1−C12アルコキシで置換されたC2−C6アルキル、またはベンジルであり、R1は、水素またはメチルである)のヒドロキシフェニルトリアジン化合物により提供される。Rは、好ましくは、C1−C12アルキルまたはベンジル、より好ましくはC3−C6アルキル、特にヘキシルである。R1は、好ましくは水素である。特に好ましいUV吸収剤は、Ciba−Additives社からTinuvin(商標)1577FFとして市販されている2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシル)オキシ−フェノールである。
【0012】
UV吸収剤の量は、基板層の総質量に対して、0.1質量%〜10質量%、より好ましくは0.2質量%〜5質量%、特に0.5質量%〜2質量%の範囲である。
好ましくは、ポリエステルフィルム基板の固有粘度は、少なくとも0.55、好ましくは少なくとも0.60、好ましくは少なくとも0.65、好ましくは少なくとも0.70である。
【0013】
基板は、ポリエステルフィルムの製造において従来的に使用される添加剤のいずれかをさらに含んでもよい。したがって、架橋剤、染料、顔料、空隙形成剤、潤滑剤、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、熱安定剤、エンドキャップ剤、難燃剤および阻害剤、ブロッキング防止剤、表面活性剤、スリップ助剤、光沢向上剤、分解促進剤、粘度調整剤および分散安定剤等の薬剤を、適宜組み込むことができる。
【0014】
基板は、入射線の特定波長域を吸収し、そこから吸収光より短い波長を有する光としてエネルギーを放出することができる化合物を含んでもよく、典型的には、化合物は、紫外線を吸収し、そのエネルギーを、可視領域の光として放出または「ダウンコンバート」し、次いでこの光はPV電池内で電流を生成するために使用することができる。そのような化合物は当技術分野において知られており、本明細書において以降「ダウンコンバータ」と呼ばれる。蛍光染料および蛍光増白(または漂白)剤(FBA)は、既知のクラスのダウンコンバータであり、これは典型的にはUV光(典型的には340〜370nm)を吸収し、青色領域(典型的には420〜470nm)の光を再放出して、「増白」知覚効果をもたらし、反射青色光の全体的な量を増加させることにより材料の黄色味を抑える有機染料である。知られている蛍光染料には、トリアジン−スチルベン(ジ、テトラまたはヘキサスルホン化)、クマリン、イミダゾリン、ジアゾール、トリアゾール、ベンゾオキサゾリン、およびビフェニル−スチルベンが含まれる。米国特許出願公開第2006/0169971号は、(a)元素周期表の第2、12、13または14族から選択される第1の元素および第16族から選択される第2の元素、(b)第13族から選択される第1の元素および第15族から選択される第2の元素、ならびに(c)第14族から選択される元素を含有するものから選択される、ダウンコンバート無機化合物を含む、0.1〜10nmの平均粒径を有する「量子ドット」を開示している。具体例には、MgO、MgS、MgSe、MgTe、CaO、CaS、CaSe、CaTe、SrO、SrS、SrSe、SrTe、BaO、BaS、BaSe、BaTe、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdO、CdS、CdSe、CdTe、HgO、HgS、HgSe、HgTe、Al23、Al23、Al2Se3、Al2Te3、Ga23、Ga23、Ga2Se3、Ga2Te3、In23、In23、In2Se3、In2Te3、SiO2、GeO2、SnO2、SnS、SnSe、SnTe、PbO、PbO2、PbS、PbSe、PbTe、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、BP、SiおよびGeが含まれる。基板内のダウンコンバータの量は、基板の総質量に対して、約0.1〜約10質量%、好ましくは約0.2〜約5%、より好ましくは約0.5%〜約2%の範囲であってもよい。
【0015】
基板は、光安定剤、好ましくは、典型的には分子内にヒンダードピペリジン骨格を有するヒンダードアミン光安定剤(HALS)を含んでもよい。ヒンダードアミン光安定剤の具体例には、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−トリデシル−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、およびテトラキス−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートが含まれる。これらのヒンダードアミンのうち、N−メチルヒンダードアミンが好ましい。層内のヒンダードアミン光安定剤の総量は、好ましくは、層の総質量に対して約0.1〜約10質量%、好ましくは0.2〜約5%、より好ましくは約0.5〜約2%の範囲である。
【0016】
層の組成物の成分は、従来の様式で互いに混合され得る。例えば、そのような成分は、フィルム形成ポリマーが得られる元のモノマー反応物質と混合することにより組み込むことができ、または、成分は、回転もしくは乾式混合または押出機内での配合によりポリマーと混合されてもよく、続いて冷却および通常は顆粒もしくはチップへ粉砕されてもよい。マスターバッチ技術もまた使用され得る。
ポリマーコーティング層は、エチレンアクリル酸(EAA)コポリマーを含み、これは、好適には、以下でさらに説明されるようなコーティング技術により基板に施される。
【0017】
好適なエチレンアクリル酸(EAA)コポリマーは、典型的には、約2〜約30wt%のアクリル酸コポリマーを含む。一実施形態において、EAAコポリマーは、エチレンおよびアクリル酸コモノマーのみを含む。しかしながら、コポリマーは、1種または複数種の追加的なコモノマーをさらに含んでもよい。そのような追加的なコモノマーは、例えばアルキルアクリレートを含み、好ましくは、アルキル基は、C1-10アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、ヘプチルおよびn−オクチル、特にメチルである。そのような追加的なコモノマーはまた、アルキルメタクリレート(例えばメチルメタクリレート)を含む。任意の追加的なコモノマーは、約1〜約30wt%の量で存在してもよい。追加的なコモノマーが存在する場合、アクリル酸および追加的なコモノマーの合計量は、典型的には、50%以下、典型的には30wt%以下である。他の追加的なコモノマーは、アクリロニトリル;メタクリロニトリル;ハロ置換アクリロニトリル;ハロ置換メタクリロニトリル;アクリルアミド;メタクリルアミド;N−メチロールアクリルアミド;N−エタノールアクリルアミド;N−プロパノールアクリルアミド;N−メタクリルアミド;N−エタノールメタクリルアミド;N−メチルアクリルアミド;N−tert−ブチルアクリルアミド;ヒドロキシエチルメタクリレート;グリシジルアクリレート;グリシジルメタクリレート;ジメチルアミノエチルメタクリレート;イタコン酸;無水イタコン酸;イタコン酸の半エステル;ビニルエステル、例えば酢酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、安息香酸ビニル、ビニルピリジンおよび塩化ビニル;塩化ビニリデン;マレイン酸;無水マレイン酸;ならびにスチレンおよびスチレンの誘導体、例えばクロロスチレン、ヒドロキシスチレンおよびアルキル化スチレン(アルキル基はC1-10アルキル基である)を含む。本発明における使用に好適なEAAコポリマーは、Michem(登録商標)Primeコポリマー(Michelman社、Cincinatti、USから入手可能)、例えばMichem(登録商標)Prime 4983−REグレードから選択され得る。好ましくは、EAAコポリマーの分子量は、約5,000〜約20,000、好ましくは約5,000〜約10,000である。
【0018】
ポリマーコーティング層は、好ましくは基板に関して上述した化合物から独立して選択される、UV吸収剤および/またはダウンコンバータおよび/または光安定剤をさらに含んでもよい。
ポリマーコーティング層の厚さは、重要なパラメータである。1つまたは各ポリマーコーティング層は、約10nm〜約200nmの範囲、好ましくは少なくとも25nm、典型的には少なくとも80nm、および典型的には約160nm以下の厚さを有する。ポリマー層の正確な厚さは、複合フィルムの全光線透過率を増加させるために調節され得る。
【0019】
基板の形成は、当技術分野において周知の従来の押出技術により達成され得る。一般的に、プロセスは、溶融ポリマーの層を押し出すステップと、押出物を急冷するステップと、急冷された押出物を少なくとも1方向に配向させるステップとを含む。基板は、一軸配向であってもよいが、好ましくは二軸配向である。配向は、配向フィルムを製造するための技術分野において知られた任意のプロセス、例えばチューブラーまたはフラットフィルムプロセスにより達成され得る。二軸配向は、機械的および物理的特性の満足できる組合せを達成するために、フィルム面内の互いに垂直な2方向に延伸することにより達成される。チューブラープロセスにおいては、熱可塑性ポリエステル管を押し出し、続いてこのポリエステル管を急冷し、再び加熱し、次いで内部ガス圧により膨張させて横方向の配向をもたらし、縦方向の配向をもたらす速度で引き出すことにより、同時二軸配向が達成され得る。好ましいフラットフィルムプロセスにおいては、フィルム形成ポリエステルは、スロットダイを通して押し出され、ポリエステルが確実に非晶質状態に急冷されるように冷却キャスティングドラム上で急冷される。次いで、急冷された押出物を、ポリエステルのガラス転移温度を超える温度で、少なくとも1方向に延伸することにより、配向が達成される。逐次的な配向は、平坦な急冷された押出物を、まず1方向に、通常は縦方向、すなわちフィルム延伸機を通る順方向に延伸し、次いで横方向に延伸することにより達成され得る。押出物の順方向の延伸は、1組の回転ロール上で、または2対のニップロールの間で都合よく達成され、次いで、横方向の延伸は、テンター装置において達成される。延伸は、一般に、延伸の1方向または各方向において、配向フィルムの寸法がその元の寸法の2〜5倍、より好ましくは2.5〜4.5倍となるように達成される。典型的には、延伸は、ポリエステルのTgより高い温度で、好ましくはTgよりも約15℃高い温度で達成される。1方向のみの配向が必要である場合、より大きな延伸比(例えば、最大約8倍)が使用されてもよい。機械方向および横方向に等しく延伸する必要はないが、バランスのとれた性質が所望される場合には、そのような延伸が好ましい。
【0020】
延伸フィルムは、ポリエステルの所望の結晶化を誘導するために、ポリエステルのガラス転移温度を超えるがその融点を下回る温度で、寸法支持下で熱硬化することにより寸法安定化される。熱硬化中、「トーイン」として知られる手順により、横方向(TD)において若干の寸法緩和が行われてもよい。トーインは、約2〜4%の寸法収縮を伴い得るが、プロセスまたは機械方向(MD)における類似の寸法緩和は、低い線張力が必要とされ、フィルム制御および巻取りが問題となるために困難である。実際の熱硬化温度および時間は、フィルムの組成およびその所望の最終熱収縮に依存して変動するが、引裂き抵抗等のフィルムの強靭性を実質的に劣化させるように選択されるべきではない。これらの制約内では、約180〜245℃の熱硬化温度が一般に望ましい。熱硬化後、フィルムは、典型的には、ポリエステルの所望の結晶性を誘導するために急冷される。
【0021】
フィルムは、さらに、インラインまたはオフラインで緩和段階を使用して熱硬化される。この追加的なステップにおいて、フィルムは、熱硬化段階の温度よりも低い温度で、またはるかに低いMDおよびTD張力下で加熱される。フィルムが受ける張力は、典型的には5kg/m(フィルム幅)未満、好ましくは3.5kg/m未満、より好ましくは1〜約2.5kg/m、典型的には1.5〜2kg/mの範囲である。フィルム速度を制御する緩和プロセスにおいて、フィルム速度の低下(ひいては歪み緩和)は、典型的には0〜2.5%、好ましくは0.5〜2.0%の範囲である。熱安定化ステップ中、フィルムの横寸法は増加しない。熱安定化ステップに使用される温度は、最終フィルムの所望の特性の組合せに依存して変動し得るが、温度が高い程、残留収縮特性はより良好、すなわちより低い。135〜250℃の温度が概して望ましく、150〜230℃が好ましく、170〜200℃がより好ましい。加熱期間は、使用される温度に依存するが、典型的には、10〜40秒の範囲であり、20〜30秒の期間が好ましい。この熱安定化プロセスは、平坦および垂直型の構成を含む様々な方法により、別個のプロセスステップとして「オフライン」で、またはフィルム製造プロセスと連続して「インライン」で行うことができる。このように処理されたフィルムは、そのような熱硬化後緩和なしに生成されるフィルムよりも小さい熱収縮を示す。
【0022】
複合フィルムの形成は、ポリマーコーティング層を基板の一方または両方の表面上にコーティングすることにより達成される。コーティングは、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ディップコーティング、ビードコーティング、押出コーティング、溶融コーティングまたは静電スプレーコーティングを含む、任意の好適なコーティング技術を使用して達成され得るが、好ましくは、コーティングステップは、有機溶媒の使用を回避する。基板の製造が完了した後に基板のコーティングが行われる「オフライン」コーティング法が使用されてもよい。しかしながら、好ましくは、ポリマーコーティング層のコーティングは、「インライン」で行われ、すなわち、コーティングステップは、フィルム製造中、ならびに、製造プロセスの効率および経済性を改善するために使用される任意の延伸操作前、操作中、および操作間で行われる。
【0023】
コーティング層を基板上に施す前に、基板の露出表面は、所望により、その表面と後に施される層との間の結合を改善するために、化学的または物理的表面改質処理に供されてもよい。例えば、基板の露出表面は、コロナ放電を伴う高電圧電気ストレスに供されてもよい。あるいは、基板は、当技術分野において基板に対する溶解または膨潤作用を有することが知られている薬剤、例えば一般有機溶媒に溶解したハロゲン化フェノール、例えばアセトンまたはメタノール中のp−クロロ−m−クレゾール、2,4−ジクロロフェノール、2,4,5−もしくは2,4,6−トリクロロフェノールまたは4−クロロレゾルシノールで前処理されてもよい。
【0024】
複合フィルムの全体の厚さは、典型的には5〜350μmの範囲、好ましくは約250μm以下、一実施形態においては約100μm以下、さらなる実施形態においては約50μm以下、および典型的には少なくとも12μm、より典型的には少なくとも約20μmである。基板の厚さは、好ましくは複合フィルムの約50%から99%の間である。
複合フィルムは、典型的には光学的に清澄または透明であり、これは、本明細書において、好ましくは、散乱可視光のパーセント(ヘーズ)が15%以下、好ましくは10%以下、好ましくは6%以下、より好ましくは3.5%以下、特に1.5%以下であり、および/または、可視領域(400nm〜700nm)の光の全光線透過率(TLT)が好ましくは少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも約92%、より好ましくは少なくとも約95%であることを意味するように使用される。
上述の複合フィルムは、電子または光電子デバイス、例えば電子発光(EL)ディスプレイデバイス(特に有機発光ディスプレイ(OLED)デバイス)、電気泳動ディスプレイ(電子ペーパー)、光(PV)電池および半導体デバイス(例えば、一般的には有機電界効果トランジスタ、薄膜トランジスタおよび集積回路)、特に可撓性のそのようなデバイス等の製造において有利に使用され得る。
上述の複合フィルムは、光起電活性層をさらに備えるPV電池、特に、光起電材料が非晶質シリコン(a−Si)ならびにプロト結晶、ナノ結晶(nc−Siもしくはnc−Si:H)およびブラックシリコンを含む他の薄膜シリコン(TF−Si);テルル化カドミウム(CdTe);(二)セレン化銅インジウムガリウム(CIGS);色素増感光電池;導電性有機化合物を利用した有機光電池から選択されるものを含む薄膜PV電池の製造に特に有利である。特に、上述の複合フィルムは、本明細書に記載のようなCIGS PV電池の製造に使用される。
【0025】
したがって、本発明によれば、さらに、PV電池、特にすぐ上に記載されるような薄膜PV電池、特に本発明の透明複合フィルムを備えるCIGS PV電池が提供される。PV電池は、支持基板と本発明の透明複合フィルムとの間に配置された光活性材料の層を備え、この複数層アセンブリは、本明細書に記載のようなガスおよび溶媒の浸透に対する高い耐性を提供するためのバリア特性を有する、光学的に清澄な材料で封入される。
本発明のさらなる態様によれば、支持基板(典型的にはスチールまたはモリブデンコーティングガラス、好ましくはスチール)と本発明の透明複合フィルムとの間に配置された光活性CIGS材料の薄い結晶層を備えるCIGS PV電池が提供され、この複数層アセンブリは、ガスおよび溶媒の浸透に対する耐性を提供するためのバリア特性を有する、光学的に清澄な材料で封入される。封入バリア材料は、典型的には、自立したフィルムまたはシートであり、次いでこれが、当技術分野において知られているように、熱ラミネーション技術を用い、典型的には真空下で複数層複合材に施される。封入された複数層アセンブリは、本発明の透明複合フィルムが光活性層と前面との間に配置されるように、前面と裏面との間に配置される。前面および/または裏面は、典型的にはガラスであるが、ポリマー材料であってもよい。
【0026】
封入バリア材料は、好ましくは、アイオノマーベースの材料、すなわち主に非極性反復単位で構成され、低い割合(典型的には約15wt%以下)の塩含有単位を有するポリマーである。好ましいアイオノマーは、非極性コモノマーが典型的にはエチレンおよびスチレン(好ましくはエチレン)から選択され、低い割合の塩含有単位、例えばメタクリル酸および/またはアクリル酸の金属塩(例えばアルカリ金属または亜鉛塩)等を含有する、熱可塑性カルボキシレートアイオノマーから選択される。封入剤に好適なアイオノマーは、エチレンと、アルカリ金属または亜鉛で部分的または完全に中和されたメタクリル酸および/またはアクリル酸とのコポリマー、例えばSurlyn(登録商標)(DuPont社製;例えばグレード1702)である。
他の好適な封入材料は、例えばElvax(登録商標)樹脂(DuPont社製、例えばグレードPV1410からPV1650Z)として市販されているエチレン酢酸ビニル(EVA)コポリマー樹脂を含み、典型的には、酢酸ビニル成分は、約28〜約33wt%の範囲である。
【0027】
他の好適な封入材料は、同じくDuPont社から市販されているポリビニルブチラール樹脂(例えばPV5200シリーズ)から、およびシリコーン樹脂(例えば、Dow Corning社の光学的に清澄なシリコーン封入剤であるPV−6100シリーズ)から選択される。
封入材料と本明細書に記載の複合フィルムのコーティング表面との間の接着強度は、本明細書に記載のように測定される直線平均負荷が好ましくは少なくとも3lb/in、好ましくは少なくとも7lb/in、好ましくは少なくとも10lb/in、好ましくは少なくとも15lb/in、好ましくは少なくとも20lb/inであるような接着強度である。
【0028】
本発明によれば、本明細書に記載の複合フィルムを備え、複合フィルムのコーティング表面上に直接配置された封入材層をさらに備える複数層アセンブリが提供され、好ましくは、前記封入材層は、複合フィルムの前記コーティング表面にラミネートされ、好ましくは、前記封入材層と前記複合フィルムとの間の接着強度は、本明細書に記載のように測定される直線平均負荷が好ましくは少なくとも3lb/in、好ましくは少なくとも7lb/in、好ましくは少なくとも10lb/in、好ましくは少なくとも15lb/in、好ましくは少なくとも20lb/inであるような接着強度である。
【0029】
特性測定
以下の分析を使用して、本明細書に記載のフィルムを特性決定した。
(i)標準試験法ASTM D1003に従い、M57D球形透過率計(Diffusion Systems社製)を使用して、フィルム全厚を通した全光線透過率(TLT)およびヘーズ(散乱可視光の%)を測定することにより、透明度を評価した。
(ii)Viscotek(商標)Y−501C Relative ViscometerでのASTM D5225−98(2003)に従う溶液粘度測定法により(例えば、Hitchcock、HammonsおよびYau、American Laboratory(1994年8月)「The dual−capillary method for modern−day viscometry」を参照されたい)、25℃の0.5質量%のo−クロロフェノール中ポリエステル溶液を用いて、および固有粘度の計算にBillmeyerの一点法を用いて、固有粘度(dL/gの単位)を測定した。
η=0.25ηred+0.75(lnηrel)/c
式中、
η=固有粘度(dL/g)、
ηrel=相対粘度、
c=濃度(g/dL)、および
ηred=(ηrel−1)/c(ηsp/c(式中、ηspは比粘度である)とも表現される)と等価である還元粘度(dL/g)である。
(iii)フィルムの機械寸法(MD)および横寸法(TD)に対して特定の方向に切断し、目測用にマークした200mm×10mmの寸法のフィルム試料に対し、熱収縮を評価した。試料の長い方の寸法(すなわち、200mmの寸法)は、収縮が試験されているフィルム方向に対応し、すなわち、機械方向における収縮の評価において、試験試料の200mmの寸法は、フィルムの機械方向に沿って配向している。所定温度(ここでは150℃)に検体を加熱し(その温度に加熱された炉内に設置することにより)、30分間保持した後、室温に冷却し、その寸法を手作業で再び測定した。熱収縮を計算し、元の長さのパーセンテージとして表した。
(iv)耐候性は、121℃で100%の相対湿度(RH)の雰囲気中、85℃で85%のRHの雰囲気中、およびISO−4892−2に従って動作するウェザロメータ(Atlas Ci65 Weather−o−meter)内で測定することができる。フィルムは、以下の条件下でウェザロメータ内でエージングされる:340nmで0.50Wm2の自動照射;ブラックパネル温度=63℃(理論的最高温度);湿球温度降下=10℃;調整水=30℃;風化サイクル=102分光/18分水;試験時間=最長10,000時間。フィルム特性は、試験中様々な時点で測定する。
(v)風化前後の黄色度指数を、ASTM E313に従い試験した。
(vi)複合フィルムの封入材バリア層(8ミル(約203μm)EVA層、硬化後、安定性のために三層PE/PET/PEバックシート)に対する接着強度を、ASTM D903の剥離法を用いて評価した。接着強度は、直線ピーク負荷または直線平均負荷として表現され得る。
【0030】
本発明は、以下の例によりさらに例示される。例は、上述のような本発明を制限することを意図しない。本発明の範囲から逸脱せずに、詳細の変態を行うことができる。
【実施例】
【0031】
例1
UV吸収剤(Tinuvin(商標)1577FF;組成物の1質量%)を含むポリエチレンテレフタレートを含むポリマー組成物を溶融押出し、冷却された回転ドラム上にキャストし、150℃の温度でその元の寸法の約3倍まで押出方向に延伸した。次いで、各側に90nmの乾燥コーティング厚を提供するのに十分な以下を含むEAAコーティング組成物で、フィルムの両側をコーティングした。
1.Michem(登録商標)Prime4983−RE(25%固形分)(32%)
2.Surfynol(登録商標)420(100%)(0.3%)
3.Cymel(登録商標)350(20%溶液)(7%)
4.アンモニウムパラ−トルエンスルホネート(APTSA;10%溶液)(0.4%)
5.DMAE(100%)(pHを8.5〜9.5の範囲に制御するために必要)
6.脱塩水(60.3%)
次いで、コーティングされたフィルムを、120℃の温度のテンター炉内に通過させ、そこでフィルムを乾燥させ、その元の寸法の約3倍に横方向に延伸した。二軸延伸フィルムを約200℃の温度で熱硬化した。次いで、熱硬化後の二軸延伸フィルムを巻き戻し、次いで、ロールツーロールプロセスにおいて、その最高温度が150℃を超える追加的な一連の炉に、2秒を超える期間フィルムを通過させることによりさらに熱安定化した。低い線張力下で炉を通してフィルムを移送し、さらに緩和および安定化させた。最終複合フィルム厚は50μmであり、コーティングの最終乾燥厚は各側において90nmであった。150℃、30分間での複合フィルムの収縮率は、フィルムの縦および横寸法の両方において、0.1%以下であった。複合フィルムのTLTは、92%を超えていた。フィルムの黄色度指数は、風化前は僅かに8に満たない程度であったが、本明細書に記載のような8000時間の促進エージング(風化)後では、僅かに12に満たない程度まで若干増加するのみであった。
【0032】
例2
例1の手順を繰り返したが、ただし、PETフィルムにTinuvin(商標)UV吸収剤を添加しなかった。
【0033】
例3
例1の手順を繰り返したが、ただし、(i)コーティング層をフィルムの一方側のみに施し、(ii)30nmの乾燥コーティング質量が得られるようにコーティング質量を減量した。発明者は、以下の表1内のデータから明らかなように、より低いコーティング質量が接着性(直線平均負荷により測定される)にほとんど影響しないことを観察した。
【0034】
例4
例1の手順を繰り返したが、ただし、(i)PETフィルムにTinuvin(商標)吸収剤を添加せず、(ii)オフライン熱安定化を行わず、(iii)各側で30nmの最終コーティング質量が得られるように、施すコーティング質量を減量し、(iv)コーティング組成物は、以下を含むアクリル配合物であった。
1.固形分13%の遠心分離後Rhoplex−3208ラテックス(26.4%)
2.希薄Renex690(20%溶液)(0.7%)
3.DMAE(ジメチルアミノエタノール)(0.1%)
4.APTSA溶液(アンモニウムパラトルエンスルホネートの10%溶液)(3.5%)
5.脱塩水(69.225%)
6.Syton HT−50(0.075%)
【0035】
例の性能を本明細書に記載のように試験したが、その結果を以下の表に示す。さらに、例1の複合フィルムを、本明細書に記載のような構造を有するCIGS PV電池の製造に使用したが、上述の側面において優れた性能を示し、例4(アクリルコーティング)の比較フィルムよりも優秀であった。
【0036】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)ポリエステル基板の総質量を基準として約0.1〜約10%の量のUV吸収剤を含む、熱安定化配向ポリエステル基板と、
(ii)約10nm〜約200nmの範囲の厚さを有し、エチレンアクリル酸(EAA)コポリマーを含む、基板の一方または両方の表面上のポリマーコーティング層と、
を備える複合フィルムであって、フィルムの縦および横寸法の両方において、150℃、30分間で0.1%未満の収縮率を示す複合フィルム。
【請求項2】
ポリエステル基板が、二軸配向である、請求項1に記載の複合フィルム。
【請求項3】
ポリエステルが、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリエチレン2,6−ナフタレート(PEN)から選択される、請求項1または2に記載の複合フィルム。
【請求項4】
UV吸収剤が、ヒドロキシフェニルトリアジンである、請求項1から3までのいずれか1項に記載の複合フィルム。
【請求項5】
ポリエステルフィルム基板の固有粘度が、少なくとも0.65である、請求項1から4までのいずれか1項に記載の複合フィルム。
【請求項6】
基板が、層の総質量に対して約0.1〜約10質量%の範囲のヒンダードアミン光安定剤(HALS)をさらに含む、請求項1から5までのいずれか1項に記載の複合フィルム。
【請求項7】
エチレンアクリル酸(EAA)コポリマーが、約2〜約30wt%のアクリル酸コモノマーを含む、請求項1から6までのいずれか1項に記載の複合フィルム。
【請求項8】
ポリマーコーティング層が、インラインコーティング技術を使用して基板上に配置された、請求項1から7までのいずれか1項に記載の複合フィルム。
【請求項9】
複合フィルムの全体の厚さが、約12〜約350μmの範囲である、請求項1から8までのいずれか1項に記載の複合フィルム。
【請求項10】
複合フィルムが、透明であり、一実施形態において15%以下のヘーズを示し、および/または、可視領域の光の全光線透過率が、少なくとも85%である、請求項1から9までのいずれか1項に記載の複合フィルム。
【請求項11】
電子または光電子デバイスにおける層としての、請求項1から10までのいずれか1項に記載の複合フィルムの使用。
【請求項12】
請求項1から10までのいずれか1項に記載の複合フィルムを備える、電子または光電子デバイス。
【請求項13】
前記電子または光電子デバイスが、電子発光ディスプレイデバイス、電気泳動ディスプレイ、光電池および半導体デバイスから選択される、請求項11に記載の使用あるいは請求項12に記載の電子または光電子デバイス。
【請求項14】
前記デバイスが、光起電活性層をさらに備える光電池である、請求項11に記載の使用あるいは請求項12に記載の電子または光電子デバイス。
【請求項15】
前記光電池が、支持基板と前記複合フィルムとの間に配置された光起電活性層を備え、この複数層アセンブリが、光学的に清澄な封入バリア材料内に封入されている、請求項14に記載の使用またはデバイス。
【請求項16】
デバイスが、CIGS光電池である、請求項14または15に記載の使用またはデバイス。
【請求項17】
前記CIGS光電池が、支持基板と前記複合フィルムとの間に配置された光活性CIGS材料の結晶層を備え、前記支持基板と、前記結晶層と、前記複合フィルムとを備える複数層アセンブリが、光学的に清澄な封入バリア材料で封入されている、請求項16に記載の使用またはデバイス。
【請求項18】
前記封入バリア材料が、非極性反復単位を含み、さらに約15wt%以下の塩含有単位を含むアイオノマーポリマーである、請求項15、16または17に記載の使用またはデバイス。
【請求項19】
前記封入バリア材料が、熱可塑性カルボキシレートアイオノマーであり、非極性コモノマーが、エチレンおよびスチレンから選択され、前記塩含有単位が、メタクリル酸および/またはアクリル酸の金属塩から選択される、請求項18に記載の使用またはデバイス。
【請求項20】
前記封入バリア材料が、エチレン酢酸ビニルコポリマー樹脂、ポリビニルブチラール樹脂およびシリコーン樹脂から選択される、請求項15、16または17に記載の使用またはデバイス。
【請求項21】
前記複合フィルムが光活性層と前面との間に配置されるように、前記封入された複数層アセンブリが前面と裏面との間に配置されている、請求項15から20までのいずれか1項に記載の使用またはデバイス。

【公表番号】特表2013−518965(P2013−518965A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551705(P2012−551705)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【国際出願番号】PCT/IB2011/000415
【国際公開番号】WO2011/117694
【国際公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(300038826)デュポン テイジン フィルムズ ユー.エス.リミテッド パートナーシップ (36)
【Fターム(参考)】