説明

高さ情報を表示した水平視画像の作成方法並びに高さ情報を表示した水平視画像

【課題】画像を見ただけで、この画像に写っている被写体のなかで所定の高度よりも高いところが一目で分かり、津波が発生した際に、容易に避難すべく適切な高所がどこなのかを判断することができる高さ情報を表示した水平視画像の作成方法を提供する。
【解決手段】少なくとも人の背の高さ以上の所定の高度に水平方向に向けて配置した撮像部1で被写体を撮影して被写体が表示された水平視画像を取得すると共に、被写体の中から所定の高度と同じ高度に位置する高度指標点2を設定し、被写体を撮影して得た水平視画像に高度指標点2と同じ位置を示す高度表示基準点3を設定し、この高度表示基準点3を基に所定の高度を示す標示部4を水平視画像に表示する高さ情報を表示した水平視画像の作成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高さ情報を表示した水平視画像の作成方法並びに高さ情報を表示した水平視画像に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地震によって発生する津波や、台風・低気圧の影響で発生する高潮が発生した場合、海岸に近い地域では、押し寄せる波の被害から逃れるために素早い避難が必要であり、そのために、近年、この避難の対象となる地域や避難場所などの様々な防災情報を示した津波ハザードマップを作成する自治体が増えてきている。
【0003】
この津波ハザードマップは、一般的には、対象地域の地図や航空写真など上方からその地域を示した平面図に、過去に発生した津波や高潮の情報を基にして、津波や高潮の大きさを想定し、この想定した津波や高潮に対して、被害を受ける地域(浸水する地域)を地図上に線で囲ったり色を塗るなどして示したり、どの地域がどれくらいの高さまで浸水する可能性があるかなど具体的な数値を記載したり色分けで示したり、或いは、避難するための情報として、等高線や標高を記載し、地域のどの辺りが高所なのか、また、避難場所はどこなのかといった災害時に必要な情報を地図上に示して作成している。
【0004】
この津波ハザードマップを利用することで、津波や高潮などの自然災害発生時に、住民が迅速且つ的確に避難を行うことができ、また、二次災害を避けることができるため、災害による被害の低減に当たって非常に有効なものとされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、現実的には、押し寄せてくる波から一刻も早く避難しなければならない住民の中には、津波ハザードマップに示されている遠くの避難場所を目指して避難するよりも、先ずは、近くの予想される津波の高さよりも高所な場所に避難することが最優先となる住民も多くいると思われ、このような状況において、上述した従来の津波ハザードマップは、基本的には対象地域を上方から見た平面的な地図であり、高さを示す情報も等高線程度しかないのでこの津波ハザードマップから予想される津波の高さよりも高いところがどこかを判断することは非常に難しく、従って、避難する住民にとっては、必ずしも有益なものと言えないのが現状である。
【0006】
本発明は、このような従来の津波ハザードマップの問題を解決すべく、画像を見ただけで、この画像に写っている被写体のなかで所定の高度よりも高いところが一目で分かり、津波や高潮など高所への避難が必要な状況となった場合に、容易に避難する高所を判断することができたり、住民に明確な避難場所を指示することができる画期的な高さ情報を表示した水平視画像の作成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0008】
少なくとも人の背の高さ以上の所定の高度に水平方向に向けて配置した撮像部1で被写体を撮影して前記被写体が表示された水平視画像を取得すると共に、前記被写体の中から前記所定の高度と同じ高度に位置する高度指標点2を設定し、前記被写体を撮影して得た水平視画像に前記高度指標点2と同じ位置を示す高度表示基準点3を設定し、この高度表示基準点3を基に前記所定の高度を示す標示部4を前記水平視画像に表示することを特徴とする高さ情報を表示した水平視画像の作成方法に係るものである。
【0009】
また、前記撮像部1は、ラジコンヘリコプター5に付設した構成とし、この撮像部1を付設したラジコンヘリコプター5を前記所定の高度でホバリングさせると共に前記撮像部1を水平状態に保持し、この水平状態に保持した前記撮像部1で前記被写体を撮影することを特徴とする請求項1記載の高さ情報を表示した水平視画像の作成方法に係るものである。
【0010】
また、前記高度指標点2は、地上に設置した測定機器6で前記被写体の中から前記所定の高度と同じ高度となる位置を測定して得ることを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の高さ情報を表示した水平視画像の作成方法に係るものである。
【0011】
また、前記測定機器6は、水準点や三角点などの基準点を基準として測量して得た海面からの高度が判明している作業基準点7に設置することを特徴とする請求項3記載の高さ情報を表示した水平視画像の作成方法に係るものである。
【0012】
また、前記被写体は、海岸から見た町並みであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高さ情報を表示した水平視画像の作成方法に係るものである。
【0013】
また、前記水平視画像中に表示される所定の高度を示す標示部4は、この水平視画像の水平方向に一直線状に表示することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の高さ情報を表示した水平視画像の作成方法に係るものである。
【0014】
また、前記ラジコンヘリコプター5は、測定機器6から発せられる測定用光線を反射する反射部8を設けた構成とし、この反射部8の位置を地上に設置した前記測定機器6で測定して、前記ラジコンヘリコプター5の飛行高度を測定することを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載の高さ情報を表示した水平視画像の作成方法に係るものである。
【0015】
また、少なくとも人の背の高さ以上の所定の高度に水平方向に向けて配置した撮像部1で被写体を撮影して得た水平視画像に、前記所定の高度を示す標示部4を設けたことを特徴とする高さ情報を表示した水平視画像に係るものである。
【0016】
また、前記標示部4は、前記水平視画像の水平方向に一直線状に表示する直線状の標示部4としたことを特徴とする請求項8記載の高さ情報を表示した水平視画像に係るものである。
【0017】
また、前記水平視画像の被写体は、海岸から見た町並みであることを特徴とする請求項8,9のいずれか1項に記載の高さ情報を表示した水平視画像に係るものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明は上述のようにしたから、被写体が表示された水平視画像に表示された所定の高度を示す標示部によって、この水平視画像中に写っている被写体のどこが所定の高度以上のところであるかが一目で分かるので、例えば、津波ハザードマップとして利用する場合、予想される津波の高さが5mであった場合は、高度5mを示す標示部が表示された水平視画像を見れば、確実に高度5m以上の高所がどこであるかを容易に判断でき、素早く安全な場所に非難することができる画期的なハザードマップとして利用することができる極めて実用性に優れた高さ情報を表示した水平視画像を作成することができる高さ情報を表示した水平視画像の作成方法となる。
【0019】
しかも、本発明は、被写体を所定の高度に水平方向に配置した撮像部で撮影したので、水平視画像に写っている手前側の被写体と奥側の被写体とにおいて、実際の高度が同じ位置であれば水平視画像上でも同じ高さで写ることとなるので、被写体の中に設定する高度指標点の設定数が少なくて済むので、この高度指標点を設定する作業が容易となり、作業性が向上する。
【0020】
更に、この高度指標点を基に水平視画像に設定する高度指標点は、水平視画像の同じ高さに設定されることとなるので、例えば、この高度指標点を通る線状の標示部を水平視画像に表示させた場合、表示された標示部は水平視画像に対して水平方向に一直線状に表示されることとなり、極めて容易に水平視画像に写っている被写体の所定の高度がどこなのかを示す標示部を水平視画像に表示されることができ、しかも、この所定の高度を示す標示部を一直線状で表示することができるので、非常に見易く、例えば、津波などの高所への避難が必要な緊急時に、この所定の高度が示された水平視画像を一目見るだけで、どこに避難すればよいかが容易に判断できる画期的な防災グッズとなり得る高さ情報を表示した水平視画像の作成方法となる。
【0021】
また、請求項2記載の発明においては、撮像部をラジコンヘリコプターに付設したので、極めて容易に所定の高度に撮像部を配置することができる実用性に優れた高さ情報を表示した水平視画像の作成方法となる。
【0022】
即ち、例えば、物干し竿のような長い棒に撮像部を取り付けて撮像部を所定の高度に配置しても、せいぜい2m〜3m程度が限界であり、それ以上の高度に配置するには、棒を安定的に支持する装置が必要となったり、棒そのものに剛性を持たせて撮像部の水平状態を保持させなければならず、現実的には非常に困難なものであり、また、例えば、有人実機ヘリコプターでの空撮にした場合、このヘリコプターは航空法で最低安全高度が300m(市街地)若しくは150m(市街地以外)と定められており、10mや20mといった非常に低い高度で飛行するには飛行許可を申請しなければならないため手間と時間がかかり、また、仮に許可を受けたとしても、あまりにも低空飛行であるため非常に危険な作業となってしまう。しかも、有人実機ヘリコプターによる空撮は、非常に高価であるためコストアップとなり、製品を市場へ安価に提供することができなくなってしまうが、本発明のように、ラジコンのヘリコプターであれば、極めて安全であり、また、容易にどこへでも持ち運べ、所望の地域の撮影し、この地域の水平視画像を容易に作成することができる極めて実用性に優れた高さ情報を表示した水平視画像の作成方法となる。
【0023】
また、請求項3記載の発明においては、水平視画像上に示される所定の高度を示す標示部をより正確な高度で示すことができる実用性に優れた高さ情報を表示した水平視画像の作成方法となる。
【0024】
また、請求項4記載の発明においては、水準点や三角点など国家基準点や公共基準点などの定められた特定の基準点を基準として高度を測定しているので、測定される高度は海面からの高さ、即ち、標高(海抜)を示すこととなり、よって、例えば、津波や高潮などの高さと比較する場合も同じレベルで高さを比較できるので、より正確性の増した津波ハザードマップを作成することができる実用性に優れた高さ情報を表示した水平視画像の作成方法となる。
【0025】
また、請求項5記載の発明においては、より一層現実的な津波ハザードマップを作成することができる実用性に優れた高さ情報を表示した水平視画像の作成方法となる。
【0026】
また、請求項6記載の発明においては、水平視画像に写っている被写体中で、どこが所定の高度以上となるのかが一目で分かる極めて実用性に優れた画期的な高さ情報を表示した水平視画像の作成方法となる。
【0027】
また、請求項7記載の発明においては、ラジコンヘリコプターの位置・高度を一層正確に測定でき、より精度よく撮像部を所定の高度に配置することができる画期的な高さ情報を表示した水平視画像の作成方法となる。
【0028】
また、請求項8記載の発明においては、被写体が表示された水平視画像に表示された所定の高度を示す標示部によって、この水平視画像中に写っている被写体のどこが所定の高度以上のところであるかが一目で分かるので、例えば、津波ハザードマップとして利用する場合、予想される津波の高さが5mであった場合は、高度5mを示す標示部が表示された水平視画像を見れば、確実に高度5m以上の高所がどこであるかを容易に判断でき、素早く安全な場所に非難することができる画期的な津波ハザードマップとして利用することができる極めて実用性に優れた高さ情報を表示した水平視画像となる。
【0029】
また、請求項9記載の発明においては、水平画像に写っている被写体中で、どこが所定の高度以上となるのかが一目で分かる極めて実用性に優れた画期的な高さ情報を表示した水平視画像となる。
【0030】
また、請求項10記載の発明においては、より一層現実的な津波ハザードマップを作成することができる実用性に優れた高さ情報を表示した水平視画像となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本実施例の水平視画像の撮影状況並びに高度指標点を設定する際の測定状況を示す状況説明図である。
【図2】本実施例の高度指標点を示した高度指標点表示画像を示す参考図である。
【図3】本実施例の水平視画像に標示部を表示した参考図である。
【図4】図3の一部を拡大した拡大図である。
【図5】本実施例の水平視画像に標示部を表示した参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0033】
本発明は、所定の高度、具体的には人の背丈以上の高さに水平方向に向けて配置した撮像部1で被写体を撮影してこの被写体の水平視画像を取得するので、この取得した水平視画像に写っている手前側の被写体(撮像部1からの距離が近い被写体)と奥側の被写体(撮像部1からの距離が遠い被写体)とでは、実際の被写体において高度が同じ点は、水平視画像上でも同じ高さに表示されることとなる。
【0034】
即ち、被写体の中から任意に所定の高度と同じ高度に位置する高度指標点2を設定し、被写体を撮影して得た水平視画像にこの高度指標点2と同じ位置を示す高度表示基準点3を設定することで、この高度表示基準点3を基に所定の高度を示す標示部4を水平視画像に容易に表示させることができる。
【0035】
また、この標示部4は、点でも線でも良く、例えば、標示部4を点で構成した場合は、この点を基準に水平線を想像することで被写体の所定の高度がどこかが分かり、また、点で構成した標示部4を複数プロットすることで、水平視画像に写っている被写体の所定の高度がどこなのかが、より分かり易くなり、更に、標示部4を線で構成した場合は、一層所定の高度が明確になり、一目で水平視画像に写っている被写体の所定の高度がどこなのかが分かる実用性に優れた画期的な高さ情報を表示した水平視画像を得ることができる高さ情報を表示した水平視画像の作成方法となる。
【0036】
つまり、例えば、被写体を水平視で撮影せず、下側から見上げるように撮像部1を上方に向けて被写体を撮影した場合、この被写体を撮影した画像において、画像に写っている手前側の被写体(撮像部1からの距離が近い被写体)と奥側の被写体(撮像部1からの距離が遠い被写体)とで、実際の高度が同じ点を画像上で比較すると、手前側に写っている被写体の高度を示す点よりも、奥側に写っている被写体の同じ高度を示す点が画像上で下側に位置することになり、実際の高度は同じでも画像上では異なる高さで表示されることとなるので、画像上に所定の高度を示す標示部4を表示する際には、撮像部1からの距離を考慮して多数の高度指標点2を設定し、この多数の高度指標点2を基に画像中に多数の高度表示基準点3を設定しなければならないことになり、その分、労力が費やされコストアップにもつながってしまう。
【0037】
しかし、本発明は、上述したように、高度表示基準点3を基として表示される標示部4は、高度指標点2を撮像部1からの距離に関係なく任意の被写体で設定しても水平視画像に水平線上に表示されることとなるので、前記した水平視で撮影しない場合のように、一々撮像部1からの距離を考慮しながら多数の高度指標点2を設定して多数の高度表示基準点3を画像上に設定しなくとも、例えば、最低一点設定すれば、この一点の高度表示基準点3を基準として水平線状の標示部4を引くことで、言い換えると、一点の高度表示基準点3を通る一本の水平線状の標示部4を表示することで、水平視画像全体に対して所定の高度を示す標示部4を表示することができることとなり、水平視画像に写っている被写体中の所定の高度以上のところがどこなのかが一目で分かるようになる。
【0038】
このように、本発明は、水平視画像に写っている被写体において、所定の高度がどの辺りなのかを示す標示部4を表示するために必要な高度指標点2を多く設定する必要がないので、極めて容易に作成することができ、よって、コストも掛らず、安価に作成できる実用性、生産性に優れた画期的な高さ情報を表示した水平視画像の作成方法となる。
【実施例】
【0039】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0040】
本実施例は、少なくとも人の背の高さ以上の所定の高度に水平方向に向けて配置した撮像部1で被写体を撮影して前記被写体が表示された水平視画像を取得すると共に、前記被写体の中から前記所定の高度と同じ高度に位置する高度指標点2を設定し、前記被写体を撮影して得た水平視画像に前記高度指標点2と同じ位置を示す高度表示基準点3を設定し、この高度表示基準点3を基に前記所定の高度を示す標示部4を前記水平視画像に表示する高さ情報を表示した水平視画像の作成方法である。
【0041】
また、本実施例は、本発明の水平視画像を津波ハザードマップとして作成する場合であり、本実施例の被写体は、海岸から見た町並みとし、また、所定の高度は、想定される津波の高さを想定した高度としたものであり、よって、本実施例の水平視画像は、海岸の町並みに津波の高さと比較できる高度を示した標示部4を表示した津波ハザードマップとして使用し得る、高さ情報を表示した水平視画像の作成方法である。
【0042】
以下に、本実施例の具体的な作成方法を示す。
【0043】
まず、被写体となる海岸の町並みを撮影する撮像部1の配置高度を測定するため、並びに被写体となる海岸の町並みの中から所定の高度と同じ高度を示す高度指標点2を設定するために用いる測定機器6を設置する作業基準点7を設置する。
【0044】
この作業基準点7は、作業現場付近にある基準点(水準点や三角点、電子基準点などで示される国家基準点や公共基準点など)から測量機を用いて高さ(標高)、位置(座標)を測定して設けた地点であり、本実施例においては、被写体として海岸の町並みを撮影するため、この作業基準点7を浜辺などの海岸付近に設置している。
【0045】
また、本実施例は、この作業基準点7に設置して、撮像部1の配置高度を測定したり高度指標点2を設定するために被写体の任意の点の高度を測定したりするために用いる測定機器6としてトータルステーションを採用している。
【0046】
このトータルステーションは、距離を測定する光波測距儀と角度を測定するセオドライトとを組み合わせて、測定対象物までの距離と角度とを同時に測量できる機器であり、この測定機器6としてのトータルステーションを、水準点や三角点などの基準点を基に位置(座標)と高度(標高)を測定した作業基準点7に設置し、この測定機器6から測定対象となる点(本実施例の場合、撮像部1や被写体中の高度指標点2)までの距離と角度を測定して高度を算出している。
【0047】
この作業基準点7の設置と、作業基準点7に測定機器6を設置したら、次に、被写体となる海岸の町並みを、所定の高度に水平方向に向けて配置した撮像部1で撮影する。
【0048】
具体的には、本実施例では、この被写体となる海岸の町並みを撮影する撮像部1として、2000万画素以上のデジタルカメラを採用しており、解像度の高い画像を取得して、画像を拡大表示しても被写体が鮮明に表示されるようにしている。
【0049】
より具体的には、撮像部1は、ラジコンヘリコプター5に付設した構成とし、この撮像部1を付設したラジコンヘリコプター5を飛行させて所定の位置、所定の高度でホバリングさせ、撮像部1を水平状態に保持し、この水平状態に保持された撮像部1で被写体となる海岸の町並みを撮影してこの海岸の町並みが写っている水平視画像を取得する。
【0050】
また、この撮像部1を付設したラジコンヘリコプター5について詳述すると、本実施例で採用しているラジコンヘリコプター5は、産業用無人ヘリコプターと呼ばれる高性能ラジコンヘリコプター5であり、このラジコンヘリコプター5は、航空機ではないので航空法の適用を受けない。即ち、飛行ルートや離着陸場所に関して殆ど制約がなく、更に、最低飛行高度の制約もないので、自由な飛行計画を設定することができるメリットがある。
【0051】
また、本実施例では、撮像部1を、より正確な位置(高度)に配置して水平視画像を取得するため、このラジコンヘリコプター5を地上から測定機器6で位置と高度を測定してこのラジコンヘリコプター5の位置と高度を確認しながら操縦者が地上でラジコンヘリコプター5を操縦して所定の高度にラジコンヘリコプター5(撮像部1)を配置し、撮像部1から送られる画像を見ながら撮像部1を遠隔操作して被写体となる海岸の町並みを撮影できるように、このラジコンヘリコプター5に、作業基準点7に設置した測定機器6から発せられる測定用光線を反射する反射部8を設けた構成としている。
【0052】
具体的には、水準点や三角点などの基準点を基にして設置した位置・標高を測定した作業基準点7に設置した測定機器6から発せられる測定用光線、具体的にはレーザー光線をこのラジコンヘリコプター5に設けた反射部8に向けて投射し、この投射した測定用光線が反射部8で反射して測定機器6に送り返されることで測定機器6から反射部8までの距離と角度を測定してラジコンヘリコプター5の位置・高度を得て、このラジコンヘリコプター5の位置・高度から撮像部1の位置・高度を割り出す構成としている。
【0053】
本実施例では、このように構成したラジコンヘリコプター5を地上で操縦者が操縦してこのラジコンヘリコプター5に付設した撮像部1を所定の位置・高度に配置し、この撮像部1を水平にした状態でラジコンヘリコプター5をホバリングさせて被写体となる海岸の町並みを撮影している。
【0054】
尚、撮像部1を水平状態にする手段として、ラジコンヘリコプター5の機体を水平にしてホバリングさせる手段以外に、ラジコンヘリコプター5の機体を水平にしなくても、撮像部1を付設するカメラ取付部をラジコンヘリコプター5に対して回動自在に設けて、ラジコンヘリコプター5の状態にかかわらず常に撮像部1が重力によって垂直方向に位置してこの撮像部1の水平状態が保持されるように構成しても良い。
【0055】
また、このラジコンヘリコプター5を使って被写体となる町並みを撮影する際の所定の高度は、津波の高さを想定した高度とし、本実施例では、この津波の高さを想定した所定の高度として、5m,10m,15m,20m,25m,30mの6つの高度を設定して、各高度における海岸の町並みを撮影する。
【0056】
即ち、5mの高度を示す標示部4を表示する水平視画像を作成する場合は、ラジコンヘリコプター5を5mの高度でホバリングさせて撮像部1を水平にして撮影して取得した水平視画像を用い、10mの高度を示す標示部4を表示する水平視画像を作成する場合は、ラジコンヘリコプター5を10mの高度でホバリングさせて撮像部1を水平にして撮影して取得した水平視画像を用いる。
【0057】
本実施例では、津波ハザードマップとしてできるだけ広く活用できるよう、津波予想高さを上述したように5m〜30mの間で5m間隔で設定し、夫々の高度毎の津波ハザードマップとなる水平視画像を取得する。
【0058】
尚、この被写体となる海岸の町並みを撮影する高度は、上記に限られるものではなく、適宜変更可能なものとする。
【0059】
また、本実施例では、撮像部1で被写体となる海岸の町並みを撮影する際は、地上にいる作業者(操縦者)が上空を飛行しているラジコンヘリコプター5を見ながら操縦し、ラジコンヘリコプター5に付設した撮像部1から送信される画像(映像)を見て、被写体の状態を確認しながら撮像部1を遠隔操作して撮影を行っているが、本実施例で使用するラジコンヘリコプター5は、GPSを搭載して、飛行経路や飛行高度をプログラミングして自律航行させることができ、操縦者の視界範囲外でも作業することが可能であり、また、このラジコンヘリコプター5に付設した撮像部1に関しても、予め撮影するポイント(座標や高度)をプログラミングして所定の位置に到達したら自動で撮影することもできるので、このラジコンヘリコプター5の操縦方法や撮影方法においては、上記に限定するものではない。
【0060】
次いで、撮像部1で撮影して取得した水平視画像に写っている被写体の実際の被写体の中から所定の高度と同じ高度に位置する高度指標点2を設定する。
【0061】
この高度指標点2は、水平視画像に所定の高度を示す標示部4を表示する基となるポイントであり、作業基準点7に設置した測定機器6で被写体の中から所定の高度と同じ高度となる位置を測定して得ている。
【0062】
具体的には、撮像部1で撮影して取得した水平視画像に写っている被写体(家や電柱などの人工物や樹木などの自然物など)を作業基準点7に設置した測定機器6で測定して、この被写体の中から所定の高度を同じ高度に位置するポイントを設定し(探し出し)、この設定したポイントを高度指標点2とし、この高度指標点2を示した被写体を測定機器6で撮影して高度指標点2が示されている高度指標点表示画像9を取得すると共に、この測定機器6の測定データ、即ち、高度指標点2の位置(高度及び座標)データを取得する。
【0063】
また、この高度指標点2の設定数は、最低一点設定すれば良いが、本実施例では、より精度の良い標示部4を表示するために、この高度指標点2の設定数を3〜4点設定する。
【0064】
また、この高度指標点2を設定する際は、できるだけ、特徴のある点に設定すると、後述する高度表示基準点3を設定する際、高度指標点2の位置が特定し易く、作業がし易くなり、また、精度も向上する。
【0065】
尚、本実施例では、高度指標点2に関するデータとして、高度指標点表示画像9と測定データとの二種類のデータを取得しているが、いずれか一方のみのデータだけでも高度表示基準点3を設定することは可能であり、よって、高度表示基準点3の設定方法は、高度指標点表示画像9を基に設定する方法と、測定データ、即ち、高度指標点2の座標データを入力して高度表示基準点3を設定する方法、或いは、両方を使ってより精度良く高度表示基準点3を設定する方法があり、これらは状況に応じて適宜採用するものとする。
【0066】
次いで、この高度指標点2を基に、所定の高度で撮影した水平視画像に標示部4を表示させるための高度表示基準点3を設定し、更にこの高度表示基準点3を基にして水平視画像に所定の高度を示す標示部4を表示する。
【0067】
本実施例では、この高度指標点2を基にして高度表示基準点3を設定し、この高度表示基準点3を基に所定の高度を示す標示部4を水平視画像に表示する手段として、高度表示システムを用いている。
【0068】
この標示部表示処理システムは、撮像部1で撮影して取得した水平視画像データを記録し保管する画像データ保管手段と、被写体中の所定の高度と同じ高度の位置を示す高度指標点2が示されている測定機器6で取得した高度指標点表示画像9及び測定データを記録し保管する高度指標点データ保管手段と、保管している水平視画像データをモニタに表示させる画像表示手段と、水平視画像に高度表示基準点3を設定する高度表示基準点設定手段と、水平視画像に標示部4を表示する標示部表示手段と、水平視画像上に標示部4が示す所定の高度がどのくらいの高度なのかを数値で表示した高度表示部10を表示する高度表示部表示手段とで構成している。
【0069】
尚、上記した高度表示基準点設定手段で水平視画像に高度表示基準点3を設定する場合、水平視画像上に実際に高度表示基準点3をプロットする場合と、水平視画像上には高度表示基準点3は表示しないが、座標データとして入力し水平視画像に高度表示基準点3を設定する場合との方法があり、また、前者の高度表示基準点3を水平視画像上にプロットする場合、この高度表示基準点3は標示部4を表示させた後で消去しても良いし、そのまま表示させておいても良い。
【0070】
即ち、本実施例において、高度表示基準点3を設定するという意味は、水平視画像上に高度表示基準点3を表示するという意味に限定されるものではなく、高度指標点2を基に水平視画像に標示部4を表示するための仮想の点を設定すること、また、高度指標点2を測定した際の測定データを基に座標データとして入力することまでも意味する。
【0071】
本実施例では、水平視画像に高度表示基準点3を設定する際、高度指標点2が示されている高度指標点表示画像9を高度指標点データ保管手段から読み出し、これを基にして水平視画像上に(モニタに表示された水平視画像上に)に実際に高度表示基準点3をプロットし、このプロットした高度表示基準点3を基にして標示部4を表示している。
【0072】
具体的には、水平視画像上の高度表示基準点3を通る水平線状の標示部4を水平視画像上に形成し、この水平線状に表示した標示部4と水平視画像とを合成し一つの画像として形成することで高さ情報を表示した水平視画像が完成する。
【0073】
また、本実施例では、水平視画像上に標示部4が示す所定の高度がどのくらいの高度なのかが一目で分かるように、標示部4が示す高度を数値で表示した高度表示部10を、高度表示部表示手段を用いて水平視画像中に表示している。
【0074】
この完成した高さ情報を表示した水平視画像は、データとして運用しパソコンなどを用いてモニタ上に表示させたり、プリントアウトしたりして利用することができる。
【0075】
従って、本実施例の高さ情報を表示した水平視画像の作成方法は、被写体、即ち、海岸の町並みが写っている水平視画像に高度が分かる水平線状の標示部を表示することによって、この海岸の町並みのどの位置が所定の高度以上のところであるかが一目で分かるので、津波ハザードマップとして利用する場合、予想される津波の高さが5mであった場合は、高度5mを示す標示部が表示された水平視画像を見れば、この海岸の町並みの中で高度5m以上の高所がどこであるかを容易に判断でき、素早くそこに非難することができたり、或いは、自治体がこのハザードマップを見て、的確に避難場所を指示することができるなど、極めて有益な津波ハザードマップとして利用することができる実用性に優れた高さ情報を表示した水平視画像を作成することができる高さ情報を表示した水平視画像の作成方法となる。
【0076】
また、本実施例で作成した高さ情報を表示した水平視画像をより有効的に利用するために、本実施例の高さ情報を表示した水平視画像の作成方法で作成した水平視画像の他に、この水平視画像の被写体となっている海岸の町並みを上空から撮影した航空写真と国土地理院や各市町村などで作成した地形図とを組み合わせて作成したハザードマップを用いても良い。
【0077】
この航空写真と地形図とを組み合わせたハザードマップについて、以下に具体的に説明する。
【0078】
この航空写真と地形図とを組み合わせたハザードマップの作成方法は、先ず、水平視画像の被写体とした海岸の町を、ラジコンヘリコプター5に付設した撮像部1で上空から撮影し、海岸の町の航空写真データを取得する。
【0079】
次に、この海岸の町の最新の地形図(縮尺=1/2500若しくは1/1000)を入手し、この地形図をデジタル図化機でデータ化して地形図データを取得する。
【0080】
この地形図データと航空写真データとの縮尺を合わせて合成し、航空写真データ画像上に地形図に表示されている等高線や道路などを表示し完成する。
【0081】
また、このようにして作成した航空写真と地形図とを組み合わせたハザードマップは、以下のような効果を有する。
【0082】
ハザードマップに航空写真を地図として用いることで、一般的な地図に比して、リアル感があり、所望の場所を容易に見つけることができる。
【0083】
また、このリアルな航空写真地図に地形図を組み合わせることで、航空写真地図には写っていない(見えない)道路も表示するこができ、これによって、航空写真地図のみでは分かりにくかった道路が明確に示され、よって、この航空写真地図上に避難経路を示すことも可能となる。
【0084】
更に、等高線などの高度が分かる指標を表示することで、航空写真に写っている地域のどこが高所でどこが低所かを容易に把握できる。
【0085】
従って、従来の地形図よりも、リアル感があり非常に使い勝手が良い実用性に優れた津波ハザードマップとして利用することができる。
【0086】
このようなリアル感のある航空写真と地形図とを組み合わせたハザードマップと、本実施例の高さ情報を表示した水平視画像の作成方法で作成した津波ハザードマップとを組み合わせて利用することで、従来にない画期的な津波ハザードマップを確立することができ、これによって、津波や高潮などの災害が発生しても、自治体は、素早く適切な避難指示を地域住民に出すことができ、また、地域住民は、これらを利用し、早急に適切な避難場所を判断し避難することができる極めて有効的な津波ハザードマップとなる。
【0087】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0088】
1 撮像部
2 高度指標点
3 高度表示基準点
4 標示部
5 ラジコンヘリコプター
6 測定機器
7 作業基準点
8 反射部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも人の背の高さ以上の所定の高度に水平方向に向けて配置した撮像部で被写体を撮影して前記被写体が表示された水平視画像を取得すると共に、前記被写体の中から前記所定の高度と同じ高度に位置する高度指標点を設定し、前記被写体を撮影して得た水平視画像に前記高度指標点と同じ位置を示す高度表示基準点を設定し、この高度表示基準点を基に前記所定の高度を示す標示部を前記水平視画像に表示することを特徴とする高さ情報を表示した水平視画像の作成方法。
【請求項2】
前記撮像部は、ラジコンヘリコプターに付設した構成とし、この撮像部を付設したラジコンヘリコプターを前記所定の高度でホバリングさせると共に前記撮像部を水平状態に保持し、この水平状態に保持した前記撮像部で前記被写体を撮影することを特徴とする請求項1記載の高さ情報を表示した水平視画像の作成方法。
【請求項3】
前記高度指標点は、地上に設置した測定機器で前記被写体の中から前記所定の高度と同じ高度となる位置を測定して得ることを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の高さ情報を表示した水平視画像の作成方法。
【請求項4】
前記測定機器は、水準点や三角点などの基準点を基準として測量して得た海面からの高度が判明している作業基準点に設置することを特徴とする請求項3記載の高さ情報を表示した水平視画像の作成方法。
【請求項5】
前記被写体は、海岸から見た町並みであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高さ情報を表示した水平視画像の作成方法。
【請求項6】
前記水平視画像中に表示される所定の高度を示す標示部は、この水平視画像の水平方向に一直線状に表示することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の高さ情報を表示した水平視画像の作成方法。
【請求項7】
前記ラジコンヘリコプターは、測定機器から発せられる測定用光線を反射する反射部を設けた構成とし、この反射部の位置を地上に設置した前記測定機器で測定して、前記ラジコンヘリコプターの飛行高度を測定することを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載の高さ情報を表示した水平視画像の作成方法。
【請求項8】
少なくとも人の背の高さ以上の所定の高度に水平方向に向けて配置した撮像部で被写体を撮影して得た水平視画像に、前記所定の高度を示す標示部を設けたことを特徴とする高さ情報を表示した水平視画像。
【請求項9】
前記標示部は、前記水平視画像の水平方向に一直線状に表示する直線状の標示部としたことを特徴とする請求項8記載の高さ情報を表示した水平視画像。
【請求項10】
前記水平視画像の被写体は、海岸から見た町並みであることを特徴とする請求項8,9のいずれか1項に記載の高さ情報を表示した水平視画像。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−33143(P2013−33143A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169359(P2011−169359)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(511188772)航空写真調査 株式会社 (1)
【Fターム(参考)】