説明

高エチレンエーテル含有率を有するポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールからのスパンデックス

本発明は、約37〜約70モルパーセントのエチレンエーテル含有率を有するポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールと、延長剤としてエチレンジアミンとを含むポリウレタンウレア組成物を提供する。本発明はさらに、スパンデックス組成物でのソフトセグメント・ベース材料としての高エチレンエーテル含有率ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールの使用に関する。本発明はまた、かかる高エチレンエーテル含有率を有するポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールを含む新規ポリウレタン組成物、およびスパンデックスでのそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テトラヒドロフランおよびエチレンオキシドを共重合させることによって誘導される構成単位を含むポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールであって、エチレンオキシドから誘導される単位の部分がポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコール中に約37〜約70モルパーセント存在するポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールと、延長剤としてエチレンジアミンとを含む新規ポリウレタンウレア組成物に関する。本発明はさらに、スパンデックス組成物でのソフトセグメント・ベース材料としてのかかる高エチレンエーテル含有率を有するポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールの使用に関する。本発明はまた、かかる高エチレンエーテル含有率を有するポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールを含む新規ポリウレタンウレア組成物、およびスパンデックスでのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリテトラヒドロフランまたはテトラヒドロフラン(THF、オキソラン)のホモポリマーとしても知られる、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールは、ポリウレタンウレア中のソフトセグメントでのそれらの使用について周知である。ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールは、ポリウレタンウレア・エラストマーおよび繊維に優れた動的特性を与える。それらは非常に低いガラス転移温度を有するが、室温より高い結晶溶融温度を有する。こうして、それらは周囲温度でワックス状固体であり、凝固を防ぐために高温に保たれる必要がある。
【0003】
環式エーテルとの共重合はポリテトラメチレンエーテル鎖の結晶性を下げるために用いられてきた。これは、コポリエーテルグリコールのポリマー溶融温度を下げ、同時にかかる共重合体をソフトセグメントとして含有するポリウレタンウレアのある種の動的特性を改善する。この目的のために使用されるコモノマーの中には、コモノマー含有率に依存して共重合体溶融温度を周囲より低い温度に下げることができるエチレンオキシドがある。ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールの使用もまた、幾つかの最終用途にとって望ましい、テナシティ、破断点伸び率および低温性能などの、ポリウレタンウレアのある種の動的特性を改善するかもしれない。
【0004】
ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールは当該技術で公知である。それらの製造は、米国特許公報(特許文献1)および米国特許公報(特許文献2)に記載されている。かかる共重合体は、例えば、(非特許文献1)に記載されているものなどの、環式エーテル重合の公知方法のいずれかによって製造することができる。かかる重合法は、強プロトン酸またはルイス酸、ヘテロポリ酸、およびパーフルオロスルホン酸または酸樹脂による触媒作用を含む。幾つかの場合には、米国特許公報(特許文献3)に記載されているように、カルボン酸無水物などの重合促進剤を使用することが有利であるかもしれない。これらのケースでは、最初のポリマー生成物はジエステルであり、それは次に所望の高分子グリコールを得るために後続工程で加水分解される必要がある。
【0005】
ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールは、ある種の特定の物理的特性の点でポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールより利点を提供する。20モルパーセントより高いエチレンエーテル含有率で、ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールは室温で適度に粘稠な液体であり、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールの融点より高い温度で同じ分子量のポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールより低い粘度を有する。ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールから製造されたポリウレタンまたはポリウレタンウレアのある種の物理的特性は、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールから製造されたそれらのポリウレタンまたはポリウレタンウレアの特性を超える。
【0006】
ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールをベースにするスパンデックスもまた当該技術で公知である。しかしながら、これらのほとんどは、エチレンジアミン以外の共延長剤または延長剤を含有するポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールをベースにしている。例えば、ペッチホールド(Pechhold)らに付与された米国特許公報(特許文献4)は、スパンデックスおよび他のポリウレタンウレアを製造するための低環式エーテル含有率のポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールの使用を開示している。ペッチホールドは、30パーセントより高いエチレンエーテル・レベルが好ましいことを教示している。ペッチホールドは、アミンの混合物が使用されてもよいことをそれが開示しているが、共延長剤の使用を教示していない。
【0007】
アオシマ(Aoshima)らに付与された米国特許公報(特許文献5)は、ヘテロポリ酸触媒を使用するTHFと多価アルコールとの反応による幾つかのTHFコポリエーテルの製造を開示している。アオシマはまた、エチレンオキシドなどの共重合可能な環式エーテルが重合プロセスにTHFと共に含まれてもよいことを開示している。アオシマは、コポリエーテルグリコールがスパンデックスを製造するために使用されてもよいことを開示しているが、ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールからのスパンデックスの例を全く含有しない。
【0008】
アクセルルード(Axelrood)らに付与された米国特許公報(特許文献6)は、耐油性および良好な低温性能での使用のためのポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールからのポリエーテルウレタンウレアの製造を開示している。ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールは、20〜60重量パーセント(29〜71モルパーセントと同等)の範囲のエチレンエーテル含有率を有する。アクセルルードは、スパンデックスでのこれらのウレタンウレアの使用を開示していない。アクセルルードは、「この発明で最も有用な連鎖延長剤は、第一級および第二級ジアミンならびにそれらの混合物からなる群から選択されるジアミンである」ことを開示している。アクセルルードはさらに、「好ましいジアミンは、ジクロロベンジジンおよびメチレンビス(2−クロロアニリン)などのヒンダード・ジアミンである」ことを開示している。エチレンジアミンの使用は開示されていない。
【0009】
ニシカワ(Nishikawa)らに付与された米国特許公報(特許文献7)は、THF、エチレンオキシド、および/またはプロピレンオキシドのコポリエーテルを含有するポリオールと、ジイソシアネートと、ジアミンとから製造されたポリウレタンウレアおよび有機溶媒に溶媒和されたポリマーを含有する低温で良好な弾性を有する繊維を開示している。ニシカワは、これらの組成物が標準ホモポリマースパンデックスより改善された低温性能を有することを教示している。ニシカワはまた、「コポリエーテルグリコール中の約37モル%より高いエチレンエーテル含有率で、低い伸び率での無負荷力が許容されないほどに低く、破断点伸び率が低下し、そして永久歪みが非常にわずかであるが上がる」ことを教示している。対照的に、本発明のスパンデックスは、コポリエーテル中のエチレンエーテル部分のモルパーセントが27から49モルパーセントに増加するときに破断点伸び率の増加傾向を示す。
【0010】
本出願人らは、ソフトセグメント・ベース材料としての高エチレンエーテル含有率ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコール(約37〜約70モルパーセントのエチレンエーテル)のスパンデックスが、米国特許公報(特許文献7)に教示されているような約16〜約37重量パーセントのエチレンエーテル含有ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールから製造されたスパンデックスより改善された物理的特性を提供することを観察した。本発明の高エチレンエーテル・スパンデックスは丸編で、より低い重量パーセントのエチレンエーテル・スパンデックスより低い負荷力、高い無負荷力、高い伸び率、および高い延伸可能性を実証する。それ故、幾つかの最終用途向けには高エチレンエーテル・スパンデックスがより低エチレンエーテル・スパンデックスより好ましいであろう。
【0011】
【特許文献1】米国特許第4,139,567号明細書
【特許文献2】米国特許第4,153,786号明細書
【特許文献3】米国特許第4,163,115号明細書
【特許文献4】米国特許第4,224,432号明細書
【特許文献5】米国特許第4,658,065号明細書
【特許文献6】米国特許第3,425,999号明細書
【特許文献7】米国特許第6,639,041号明細書
【非特許文献1】P.ドレイフス(P.Dreyfuss)著、「ポリテトラヒドロフラン(Polytetrahydrofuran)」、ニューヨーク(N.Y.)、ゴードン&ブリーチ(Gordon & Breach)社、1982年
【非特許文献2】S.シギア(S.Siggia)著、「官能基による定量有機分析(Quantitative Organic Analysis via Functional Group)」、第3版、ニューヨーク(New York)、ワイリー&サンズ(Wiley & Sons)社、1963年、559−561ページ
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、(a)テトラヒドロフランおよびエチレンオキシドを共重合させることによって誘導される構成単位を含むポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールであって、エチレンオキシドから誘導される単位の部分がポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコール中に約37〜約70モルパーセント存在するポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールと、(b)少なくとも1つのジイソシアネートと、(c)0〜10モルパーセントの共延長剤を有するエチレンジアミン連鎖延長剤または0〜約10モルパーセント共延長剤を有する少なくとも1つのジオール連鎖延長剤と、(d)少なくとも1つの連鎖停止剤とのポリウレタンまたはポリウレタンウレア反応生成物を含むスパンデックスに関する。
【0013】
本発明はまた、(a)テトラヒドロフランおよびエチレンオキシドを共重合させることによって誘導される構成単位を含むポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールを少なくとも1つのジイソシアネートと接触させてキャップドグリコールを形成する工程であって、エチレンオキシドから誘導される単位の部分がポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコール中に約37〜約70モルパーセント存在する工程と、(b)任意選択的に、溶媒を(a)の生成物に加える工程と、(c)(b)の生成物を少なくとも1つのジアミンまたはジオール連鎖延長剤および少なくとも1つの連鎖停止剤と接触させる工程と、(d)(c)の生成物を紡糸してスパンデックスを形成する工程とを含む、スパンデックスの製造方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、高エチレンエーテル含有率、すなわち、約37〜約70モルパーセントのポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールと、少なくとも1つのジイソシアネートと、エチレンジアミン連鎖延長剤と、ジエチルアミンなどの少なくとも1つの連鎖停止剤とから製造された新規スパンデックス組成物に関する。任意選択的に、他のジイソシアネートと、10モルパーセント以下の共延長剤を有するエチレンジアミン連鎖延長剤と、他の連鎖停止剤とが使用されてもよい。本出願の目的のためには、高エチレンエーテル含有ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)共重合体は、エチレンオキシドから誘導される約37〜約70モルパーセントの繰り返し単位を含有するものと定義される。例えば、エチレンオキシドから誘導される単位の部分はポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコール中に約48〜約58モルパーセント存在してもよい。ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)中のエチレンエーテルの量が約37モルパーセントより上に、例えば約40モルパーセントより上に維持される場合、スパンデックスの物理的特性、特に負荷力、無負荷力および伸び率は、同じまたは類似の分子量を有するより低いパーセントのエチレンエーテル・スパンデックスより改善される。それ故、幾つかの最終用途向けには高エチレンエーテル含有率スパンデックスがより低いエチレンエーテル含有率スパンデックスより好ましいであろう。
【0015】
本発明のセグメント化ポリウレタンまたはポリウレタンウレアは、ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールと、任意選択的に、高分子グリコール、少なくとも1つのジイソシアネートと、二官能性連鎖延長剤とから製造される。ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールは、スパンデックスを製造するのに使用されるポリウレタンまたはポリウレタンウレアの「ソフトセグメント」を形成する上で価値がある。ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールまたはグリコール混合物は先ず少なくとも1つのジイソシアネートと反応させられてNCO末端プレポリマー(「キャップドグリコール」)を形成し、それは次に、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、またはN−メチルピロリドンなどの好適な溶媒に溶解され、次に二官能性連鎖延長剤と反応させられる。ポリウレタンは、連鎖延長剤がジオールであるときに形成される。ポリウレタンウレア、ポリウレタンのサブクラスは、連鎖延長剤がジアミンであるときに形成される。スパンデックスへ紡糸することができるポリウレタンウレアポリマーの製造では、ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールは、ジイソシアネートおよびジアミンとのヒドロキシ末端基の順次反応によって延長される。各ケースで、ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールは、粘度をはじめとする必要な特性のポリマーを提供するために連鎖延長を受けなければならない。必要に応じて、ジブチルスズジラウレート、オクタン酸第一スズ、鉱酸、トリエチルアミン、N,N’−ジメチルピペラジンなどのような第三級アミン、および他の公知の触媒を、キャッピング工程を補助するために使用することができる。
【0016】
本発明のポリウレタンまたはポリウレタンウレアを製造するのに使用されるポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールは、固体パーフルオロスルホン酸樹脂触媒を使用するプルックマイア(Pruckmayr)に付与された米国特許公報(特許文献1)に開示されている方法によって製造することができる。あるいはまた、任意の他の酸性環式エーテル重合触媒、例えばヘテロポリ酸が、これらのポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールを製造するために使用されてもよい。本発明の実施に有用なヘテロポリ酸およびそれらの塩は、例えば、アオシマ(Aoshima)らに付与された米国特許公報(特許文献5)に記載されているような環式エーテルの重合および共重合に使用されるそれらの触媒であることができる。これらの重合法は、無水酢酸などの、追加の促進剤の使用を含んでもよく、または分子量を制御するための連鎖停止剤分子の使用を含んでもよい。
【0017】
本発明のポリウレタンまたはポリウレタンウレアを製造するのに使用されるポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールは、エチレンエーテル部分の百分率が約37〜約70モルパーセント、または約48〜約58モルパーセントである、テトラヒドロフランおよびエチレンオキシドを共重合させることによって誘導される構成単位を含むことができる。任意選択的に、本発明のポリウレタンまたはポリウレタンウレアを製造するのに使用することができるポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールは、エチレンエーテル部分の百分率が約40〜約70モルパーセントである、テトラヒドロフランおよびエチレンオキシドを共重合させることによって誘導される構成単位を含むことができる。該グリコール中に存在するエチレンオキシドから誘導される単位の百分率は該グリコール中に存在するエチレンエーテル部分のパーセントと同等である。
【0018】
本発明のポリウレタンまたはポリウレタンウレアを製造するのに使用されるポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールは、約650ダルトン(Dalton)〜約4000ダルトンの平均分子量を有することができる。より高いポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコール分子量は、伸び率などの、選択された物理的特性にとって有利であり得る。
【0019】
本発明のポリウレタンまたはポリウレタンウレアを製造するのに使用されるポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールは、連鎖停止剤ジオール分子、特に非環化ジオールから誘導される少量の単位を含むことができる。非環化ジオールは、反応条件下に容易に環化して環式エーテルを形成しないであろうジアルコールと定義される。これらの非環化ジオールには、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチンジオール、および水が含まれ得る。
【0020】
例えば3−メチルテトラヒドロフラン、1,3−プロパンジオールから誘導されるエーテル、または分子量調整剤として少量組み入れられる他のジオールなどの、少なくとも1つの追加成分を任意選択的に含むポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールもまた、本発明のポリウレタンまたはポリウレタンウレアを製造するのに使用することができ、用語「ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)またはポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコール」の意味に含められる。少なくとも1つの追加成分は高分子グリコールのコモノマーであってもよく、またはそれはポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールとブレンドされる別の物質であってもよい。少なくとも1つの追加成分は、それが本発明の有益な態様を損なわない程度まで存在してもよい。
【0021】
使用することができるジイソシアネートには、1−イソシアナト−4−[(4−イソシアナトフェニル)メチル]ベンゼン、1−イソシアナト−2−[(4−シアナトフェニル)メチル]ベンゼン、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、5−イソシアナト−1−(イソシアナトメチル)−1,3,3−トリメチルシクロヘキサン、1,3−ジイソシアナト−4−メチルベンゼン、2,2’−トルエンジイソシアネート、2,4’−トルエンジイソシアネート、およびそれらの混合物が含まれるが、それらに限定されない。好ましいジイソシアネートは、1−イソシアナト−4−[(4−イソシアナトフェニル)メチル]ベンゼン、1−イソシアナト−2−[(4−シアナトフェニル)メチル]ベンゼン、およびそれらの混合物である。特に好ましいジイソシアネートは1−イソシアナト−4−[(4−イソシアナトフェニル)メチル]ベンゼンである。
【0022】
ポリウレタンが望まれるとき、連鎖延長剤はジオールである。使用されてもよいかかるジオールの例には、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロピレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−トリメチレンジオール、2,2,4−トリメチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ブタンジオール、およびそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。ジオール連鎖延長剤は0〜約10モルパーセント共延長剤を有してもよい。
【0023】
ポリウレタンウレアが望まれるとき、連鎖延長剤はジアミンである。使用されてもよいかかるジアミンの例には、ヒドラジン、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,2−ブタンジアミン(1,2−ジアミノブタン)、1,3−ブタンジアミン(1,3−ジアミノブタン)、1,4−ブタンジアミン(1,4−ジアミノブタン)、1,3−ジアミノ−2,2−ジメチルブタン、4,4’−メチレン−ビス−シクロヘキシルアミン、1−アミノ−3,3,5−トリメチル−5−アミノメチルシクロヘキサン、1,6−ヘキサンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、2,4−ジアミノ−1−メチルシクロヘキサン、N−メチルアミノビス(3−プロピルアミン)、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1,5−ジアミノペンタン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−ジアミノ−4−メチルシクロヘキサン、1,3−シクロヘキサンジアミン、1,1−メチレン−ビス(4,4’−ジアミノヘキサン)、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,3−ペンタンジアミン(1,3−ジアミノペンタン)、m−キシリレンジアミン、およびそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。エチレンジアミンが延長剤として好ましい。エチレンジアミン連鎖延長剤は0〜10モルパーセント共延長剤を有してもよい。
【0024】
任意選択的に、連鎖停止剤、例えば、ジエチルアミン、シクロヘキシルアミン、n−ヘキシルアミン、またはブタノールなどの一官能性アルコール連鎖停止剤を、ポリマーの分子量を調整するために使用することができる。さらに、ペンタエリスリトールなどのより高官能性アルコール「連鎖分岐剤」、またはジエチレントリアミンなどの三官能性「連鎖分岐剤」が溶液粘度を調整するために使用されてもよい。
【0025】
本発明のポリウレタンおよびポリウレタンウレアは、この一般タイプのポリウレタンまたはポリウレタンウレアが用いられる任意の用途で使用されてもよいが、使用時に、高い伸び率、低い弾性率、または良好な低温特性を必要とする物品を製造するのに特に有益である。それらは、スパンデックス、エラストマー、軟質および硬質フォーム、コーティング(溶剤型および水性の両方)、分散物、フィルム、接着剤、および成形品を製造するのに特に有益である。
【0026】
本明細書で用いるところではそして特に明記しない限り、用語「スパンデックス」は、繊維形成物質が少なくとも85重量パーセントのセグメント化ポリウレタンまたはポリウレタンウレアからなる長鎖合成ポリマーである人造繊維を意味する。スパンデックスはまたエラスタンとも呼ばれる。
【0027】
本発明のスパンデックスは、ストレッチ編布および織布、ならびにかかる布を含む衣類または織物品を製造するために使用することができる。ストレッチ布例には、丸編、フラット編、および縦編、ならびに平織、綾織、および繻子織布が挙げられる。用語「衣類」は、本明細書で用いるところでは、シャツ、パンツ、スカート、ジャケット、コート、作業シャツ、作業パンツ、制服、上着、スポーツウェア、水着、ブラ、ソックス、および下着などの衣料品を意味し、そしてまた、ベルト、手袋、ミトン、帽子、靴下、または履物などの付属品を含む。用語「織物品」は、本明細書で用いるところでは、衣類などの、布を含む物品を意味し、そしてシート、枕カバー、ベッドカバー、キルト、毛布、羽布団、羽布団カバー、寝袋、シャワーカーテン、カーテン、掛布、テーブルクロス、ナプキン、雑巾、ふきん、および室内装飾品または家具用の保護カバーなどの品目をさらに含む。
【0028】
本発明のスパンデックスは、織布、横編(フラット編および丸編をはじめとする)、縦編、およびおむつなどの個人衛生衣料において単独でまたは様々な他の繊維と組み合わせて使用することができる。スパンデックスは、裸である、カバーされる、またはナイロン、ポリエステル、アセテート、綿などのような混紡相手の繊維と絡ませられることができる。
【0029】
本発明のスパンデックスを含む布はまた、タンパク質、セルロース系、および合成ポリマー繊維、またはかかるメンバーの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの繊維を含んでもよい。本明細書で用いるところでは、「タンパク質繊維」は、羊毛、絹、モヘア、カシミヤ、アルパカ、アンゴラ、ビクーナ、ラクダ、ならびに他の毛繊維および毛皮繊維のような天然起源動物繊維をはじめとする、タンパク質からなる繊維を意味する。本明細書で用いるところでは、「セルロース系繊維」は、例えば綿、レーヨン、アセテート、リオセル、リンネル、ラミー、および他の植物繊維をはじめとする、木または植物性素材から生み出される繊維を意味する。本明細書で用いるところでは、「合成ポリマー繊維」は、例えばポリエステル、ポリアミド、アクリル、スパンデックス、ポリオレフィン、およびアラミドをはじめとする、化学元素または化合物から構築されたポリマーから製造された人造繊維を意味する。
【0030】
有効量の様々な添加剤もまた、それらが本発明の有益な態様を損なわないという条件で、本発明のスパンデックスに使用することができる。例には、二酸化チタンなどの艶消剤およびハイドロタルサイトなどの安定剤、ハンタイトとハイドロマグネサイトとの混合物、硫酸バリウム、ヒンダードフェノール、ならびに酸化亜鉛、染料および染色エンハンサー、抗菌剤、粘着防止剤、シリコーン油、ヒンダードアミン光安定剤、UVスクリーナーなどが挙げられる。
【0031】
本発明のスパンデックスまたはそれを含む布は、20℃〜130℃の温度での吸尽法によって水性染液から、スパンデックスを含む素材を染液でパディングすることによって、またはスパンデックスを含む素材に染液を吹き付けることによってなど、慣例的な染色および印刷手順によって染色および印刷されてもよい。
【0032】
酸性染料を使用するときに従来の方法に従ってもよい。例えば、吸尽染色法では、布は、3〜9のpHを有する水性染浴中へ導入することができ、染浴は次に約20℃の温度から40〜130℃の範囲の温度まで約10〜80分にわたって徐々に加熱される。染浴および布は次に、冷却前に40〜130℃の範囲の温度で10〜60分間保持される。固定されていない染料は次に布からリンスされる。スパンデックスのストレッチおよび回復特性は、110℃より高い温度で最小暴露時間によって最も良く維持される。また、分散染料を使用するときに従来の方法に従ってもよい。
【0033】
本明細書で用いるところでは、用語「洗濯堅牢度」は、家庭または業務用洗濯中の退色に対する染色布の抵抗を意味する。洗濯堅牢度の欠如は、洗濯堅牢性でない物品による、時々色泣きと呼ばれる、退色をもたらし得る。これは、洗濯堅牢性でない物品と一緒に洗濯される物品の変色をもたらし得る。消費者は一般に、布および糸が洗濯堅牢度を示すことを望む。洗濯堅牢度は、繊維組成物、布染色および仕上げ法、ならびに洗濯条件に関連がある。向上した洗濯堅牢度を有するスパンデックスが最近のアパレルのために望まれる。
【0034】
スパンデックスの洗濯堅牢度特性は、慣例的な補助化学添加剤の使用によってサポートされても、さらに高められてもよい。陰イオン性シンタン(syntan)は、洗濯堅牢度特性を向上させるために使用されてもよく、そしてまた染料の最小分割がスパンデックスと相手糸との間に必要とされるときに緩染剤および遮断剤として使用することもできる。陰イオン性スルホン化オイルは、均一レベルの染色が必要とされる場合に、染料へのより強い親和性を有するスパンデックスまたは相手繊維からアニオン染料を妨害するために使用される補助添加剤である。陽イオン性定着剤は、向上した洗濯堅牢度をサポートするために単独でまたは陰イオン性定着剤と組み合わせて使用することができる。
【0035】
スパンデックス繊維は、本発明のポリウレタンまたはポリウレタンウレアポリマー溶液から、乾式紡糸または溶融紡糸などの繊維紡糸法によって形成することができる。ポリウレタンウレアは典型的には、スパンデックスが望まれるときに乾式紡糸または湿式紡糸される。乾式紡糸では、ポリマーおよび溶媒を含むポリマー溶液は、紡糸口金オリフィスを通して紡糸チャンバー中へ計量供給されてフィラメントを形成する。典型的には、ポリウレタンウレアポリマーは、重合反応のために使用されたものと同じ溶媒からフィラメントへ乾式紡糸される。ガスが溶媒を蒸発させてフィラメントを凝固させるためにチャンバーに通される。フィラメントは少なくとも550メートル毎分の巻取速度で乾式紡糸される。本発明のスパンデックスは好ましくは800メートル毎分を上回る速度で紡糸される。本明細書で用いるところでは、用語「紡糸速度」は、駆動ロール速度によって決定されそしてそれと同じである巻取速度を意味する。スパンデックスフィラメントの良好な紡糸性は、紡糸筒および巻取における低頻度のフィラメント切れによって特徴づけられる。スパンデックスはシングルフィラメントとして紡糸することができるか、または従来の技法によってマルチフィラメント糸へ合体させることができる。各フィラメントはフィラメント当たり6〜25デシテックスの範囲の織物デシテックス(dtex)のものである。
【0036】
スパンデックス組成物の紡糸速度を上げると、より低い速度で紡糸された同じスパンデックスと比較してその伸び率を減少させ、そしてその負荷力を増加させるであろうことは当業者に周知である。それ故、伸び率を増加させるために紡糸速度を遅くすること、かつ、丸編および他のスパンデックス加工操作でその延伸性を増加させるためにスパンデックスの負荷力を減少させることは一般的なやり方である。しかしながら、紡糸速度を下げると製造生産性を低下させる。
【0037】
同一の%NCO数およびほぼ同等の分子量を有するにもかかわらず、より多くのエチレンエーテル含有率を有するポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールから製造されたスパンデックスは、著しく異なる物理的特性を提供する。例えば、下の表1は、類似の%NCOおよびグリコール分子量を有するが、異なるパーセントのエチレンエーテル値を有する実施例1および比較例「a」の両方が有意に異なるパーセント伸び率値を有することを示す。該差は、(549%、比較例「b」、表1)、標準スパンデックスと比較して本発明のスパンデックス組成物(589%、実施例1、表2)の間でさらにより大きい。より高い伸び率特性は、スパンデックスの増加した延伸性のために衣類製造業者に有益であり、該延伸性はスパンデックス含有率を減少させるために利用することができる。
【0038】
より高いエチレンエーテル含有率のポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールのより低い製造コスト(より高い変換速度およびより低い副生物形成)のために、より高いエチレンエーテル含有率のポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールを使用する大きな経済的動機がある。共延長剤の使用を最小限にするかまたは回避すると、具体的にはポリマーを延長するために主としてエチレンジアミンを使用すると、先行技術よりはるかに改善された伸び率、収縮力、およびより低い負荷力を与え、そしてより低コストの出発原料の使用を可能にして改善されたスパンデックス特性を達成することが分かった。
【0039】
加えて、最小限の共延長剤を含有するかまたは共延長剤を全く含有しない高エチレンエーテル含有率スパンデックスのヒートセット性は、共延長剤を含有するポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール−ベースの(標準)スパンデックスと同等である。スパンデックス組成物に共延長剤を加えると、ヒートセット性能を改善することが知られているが、伸び率を低下させることもまた知られている。例えば、比較例「a」スパンデックス(27パーセントのエチレンエーテル含有率)のヒートセット効率は共延長剤ありの比較例「b」標準スパンデックスより低い。しかしながら、比較例「a」についてのパーセント伸び率は比較例「b」より大きい。意外なことに、実施例1のスパンデックスは、比較例「a」または「b」のどちらかより高いヒートセット効率および「a」または「b」より高いパーセント伸び率の両方を有する。それ故、本発明のスパンデックス組成物は、優れた伸び特性を維持しながら、共延長剤使用の性能およびコストの欠点を伴わずに良好なヒートセット性能を実証する。
【0040】
本発明の実施は、本発明の範囲を限定することを意図されない下記の実施例によって実証される。実施例1〜11および比較例「a」、「b」、「c」、「d」、および「e」についての物理的特性データは表1〜12に提示される。
【0041】
本明細書で用いるところではそして特に明記しない限り、用語「DMAc」はジメチルアセトアミド溶媒を意味し、用語「%NCO」はキャップドグリコール中のイソシアネート末端基の重量パーセントを意味し、用語「MPMD」は2−メチル−1,5−ペンタンジアミンを意味し、用語「EDA」は1,2−エチレンジアミンを意味し、そして用語「PTMEG」はポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールを意味する。
【0042】
本明細書で用いるところでは、用語「キャッピング比」は、基準が1.0モルのグリコールと定義されて、ジイソシアネート対グリコールのモル比と定義される。それ故、キャッピング比は典型的には一つの数字、グリコールの1モル当たりのジイソシアネートのモルとして報告される。本発明のポリウレタンウレアについては、ジイソシアネート対ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールの好ましいモル比は約1.2〜約2.3である。本発明のポリウレタンについては、ジイソシアネート対ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールの好ましいモル比は約2.3〜約17、好ましくは約2.9〜約5.6である。
【0043】
(原材料)
THFおよびPTMEG(テラサン(TERATHANE)(登録商標)1800)は本願特許出願人から入手可能である。ナフィオン(NAFION)(登録商標)パーフッ素化スルホン酸樹脂はイー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー、米国デラウェア州ウィルミントン(E.I.du Pont de Nemours and Company,Wilmington,Delaware,USA)から入手可能である。
【0044】
(分析方法)
テナシティは、第6ストレッチングサイクルにおける破断点応力、または言い換えれば、極限伸びでの破断に対する繊維の抵抗である。負荷力は、第1ストレッチングサイクルにおける指定伸び率での応力、または言い換えれば、より高い伸び率に延伸されることに対する繊維の抵抗である。無負荷力は、第5収縮サイクルにおける指定伸び率での応力、または言い換えれば、300パーセント伸び率に5回サイクルされた後の所与の伸び率での繊維の収縮力である。
【0045】
パーセント・イソシアネート−キャップドグリコールのパーセント・イソシアネート(%NCO)は、電位差滴定を用いる(非特許文献2)の方法に従って測定された。
【0046】
エチレンエーテル含有率−ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコール中のエチレンエーテル含有率のレベルは、H NMR測定から求められた。ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールのサンプルは、CDClなどの好適なNMR溶媒に溶解され、H NMRスペクトルが得られた。3.7〜3.2ppmの組み合わせ−OCHピークの積分が、1.8〜1.35ppmからの組み合わせ−C−CHCH−C−ピークの積分と比較された。−OCH−ピークは、EOベースの結合(−O−CHCH−O−)およびTHFベースの結合(−O−CHCHCHCH−O−)の両方に由来するが、−C−CHCH−C−結合はTHFだけに由来する。ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコール中のエチレンエーテル結合のモル分率を求めるために、−C−CHCH−C−ピークの積分が組み合わせ−OCH−ピークの積分から差し引かれ、次に当該結果が−OCH−ピークの積分によって割られた。
【0047】
数平均分子量−ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールの数平均分子量は、ヒドロキシル価法によって測定された。
【0048】
ヒートセット効率−ヒートセット効率を測定するために、糸サンプルが10cmフレームに取り付けられ、1.5倍にストレッチされた。フレーム(サンプル付き)は190℃に予熱したオーブン中に120秒間水平に置かれた。サンプルは弛緩させられ、フレームは室温に放冷された。サンプル(フレーム上のままの弛緩した)は次に沸騰する脱塩水中に30分間浸漬された。フレームおよびサンプルは浴から取り出され、乾燥させられた。糸サンプルの長さが測定され、ヒートセット効率(HSE、百分率として)は次式に従って計算された:
%HSE=(ヒートセット長さ−元の長さ)/(ストレッチされた長さ−元の長さ)×100
【0049】
175℃で少なくとも約85%のスパンデックス・ヒートセット効率は、スパンデックスおよび綿または羊毛を含有する布での使用のために必要とされる。類似のヒートセット効率は、ナイロンなどの硬い繊維との使用のために190℃で達成することができる。
【0050】
強度および弾性特性−スパンデックスの強度および弾性特性は、ASTM(米国材料試験協会)D2731−72の一般法に従って測定された。インストロン(Instron)引張試験機が引張特性を測定するために用いられた。3フィラメント、2インチ(5cm)ゲージ長さおよびゼロ−300%伸び率サイクルが、制御された環境中約70°Fおよび65%相対湿度(±2%)で24時間の熟成後に、巻取装置から「現状のままで」、すなわち、こすり洗いまたは他の処理なしにそれぞれの測定のために用いられた。サンプルは、50cm毎分の一定伸び速度で5回サイクルされ、次に第5伸長後に300%伸長で30秒間保持された。第5ストレッチの直後に、300%伸び率での応力が「G1」として記録された。繊維が300%伸長で30秒間保持された後、生じた応力が「G2」として記録された。応力緩和は次式を用いて求められた:
応力緩和(%)=100×(G1−G2)/G1
【0051】
応力緩和はまた、応力減衰(表5でDec%略記される)とも呼ばれる。
【0052】
負荷力、最初の伸長中のスパンデックスへの応力は、第1サイクルで100%、200%、または300%伸長で測定され、表中にデニール当たりのグラム単位で報告され、「LP」として示され、例えば、LP200は200%伸長での負荷力を示す。無負荷力、第5無負荷サイクルで100%または200%の伸長での応力もまたデニール当たりのグラム単位で報告され、それは「UP」として示される。破断点パーセント伸び率(「Elo」)およびテナシティ(「ten」)は、滑り減少のためにゴムテープが取り付けられた修正インストロン・グリップを用いて第6伸長サイクルで測定された。
【0053】
パーセント永久歪み−特に明記しない限り、パーセント永久歪みもまた、5回の0〜300%伸び/緩和サイクルにかけられたサンプルについて測定された。パーセント永久歪み(「%SET」)は次の通り計算された。
%SET=100(Lf−Lo)/Lo
式中、LoおよびLfは、それぞれ、5回の伸び/緩和サイクルの前および後の、張力なしで真っ直ぐ保持されたときの、フィラメント(糸)長さである。
【0054】
丸編(CK)延伸−ニッティングでは、スパンデックスは、編目使用速度とスパンデックス供給パッケージからのフィード速度との差のためにそれが供給パッケージからキャリアプレートにそして順繰りに編目に送られるときにストレッチする(延伸される)。硬い糸供給速度(メートル/分)対スパンデックス供給速度の比は普通2.5〜4倍(2.5×〜4×)より大きく、機械延伸、「MD」として知られる。これは、150%〜300%、またはそれ以上のスパンデックス伸び率に相当する。本明細書で用いるところでは、用語「硬い糸」は、ポリエステル、綿、ナイロン、レーヨン、アセテート、または羊毛などの、比較的弾力性のない糸を意味する。
【0055】
スパンデックス糸の総延伸は、機械延伸(MD)と、スパンデックス糸が供給パッケージ上で既にストレッチされている量であるパッケージ延伸(PD)との積である。所与のデニール(またはデシテックス)について、布中のスパンデックス含有率は総延伸に反比例し、総延伸が高ければ高いほど、スパンデックス含有率はより低くなる。PRは、「パーセントパッケージ緩和(Percent Package Relaxation)」と呼ばれる測定特性であり、100×(パッケージでの糸の長さ−緩和した糸の長さ)/(パッケージでの糸の長さ)と定義される。PRは典型的には丸編の弾性シングルジャージ布に使用されるスパンデックスについて5〜15である。測定されたPRを用いて、パッケージ延伸(PD)は1/(1−PR/100)と定義される。それ故、総延伸(TD)はまた、MD/(1−PR/100)として計算されてもよい。4倍の機械延伸および5%PRの糸は4.21倍の総延伸を有するであろうが、4倍の機械延伸および15%PRの糸は4.71倍の総延伸を有するであろう。
【0056】
経済的理由のために、丸編の際にはしばしば、十分な布特性および均一性と相反しない最小スパンデックス含有率を用いようと試みるであろう。上に説明されたように、スパンデックス延伸を上げることは含有率を下げるための一方法である。延伸を制限する主な因子は破断点パーセント伸び率であり、よって高い破断点パーセント伸び率の糸は最も重要な因子である。破断点テナシティ、摩擦、糸粘着性、デニール均一性、および糸中の欠陥などの他の因子は、実際の達成可能な延伸を減少させ得る。編機は、極限延伸(測定された破断点パーセント伸び率)から延伸を減少させることによってこれらの制限因子について安全域を提供するであろう。それらは典型的には、ニッティング破断が編機の1,000回転当たり5つの破断などの許容されないレベルに達するまで延伸を増加させ、次に許容される性能が回復されるまでバックオフすることによってこの「持続可能な延伸」を決定する。
【0057】
編針での張力もまた延伸の制限因子であり得る。スパンデックス糸でのフィード張力はスパンデックス糸の総延伸に直接関係する。それはまた、スパンデックス糸の固有弾性率(負荷力)の関数である。高延伸で編む際に許容されるほど低い張力を維持するために、スパンデックスは低い弾性率(負荷力)を有することが有利である。
【0058】
高延伸性にとって理想的な糸はそれ故、高パーセント破断点伸び率、低い弾性率(負荷力)および十分に高いテナシティ、低い摩擦および粘着性、均一なデニール、ならびに低レベルの欠陥を有するであろう。
【0059】
その応力−歪み特性のために、スパンデックス糸は、スパンデックスに加えられる張力が増加するにつれてより延伸され(引っ張られ)、逆に、スパンデックスがより多く延伸されるに従い、糸での張力はより高くなる。丸編機での典型的なスパンデックス糸通路は次の通りである。スパンデックス糸は供給パッケージから、たて糸切れ検出器を越えてまたはそれを通して、1つまたは複数の方向変換ロールを越えて、そして次にキャリアプレートへ計量供給され、該プレートはスパンデックスを編針にそして編目へ導く。それが供給パッケージから各デバイスまたはローラーを越えて通過するときに、スパンデックスに触れる各デバイスまたはローラーによって与えられる摩擦力のために、スパンデックス糸での張力の増加がある。編目でのスパンデックスの総延伸はそれ故スパンデックス通路の全体にわたる張力の合計に関係する。
【0060】
スパンデックス中の残存DMAc−スパンデックス・サンプル中に残存するパーセントDMAcは、デュラテック(Duratech)DMAc分析計を用いることによって測定された。既知量のパークレンを使用して既知量のスパンデックスからDMAcを抽出した。パークレン中のDMAcの量は次に、DMAcのUV吸収を測定し、そして当該値を標準化曲線と比較することによって定量化された。
【0061】
ホット−ウェット・クリープ−ホット−ウェット・クリープ(HWC)は、糸の元の長さLを測定し、それをその元の長さの1.5倍(1.5L)にストレッチし、それを97〜100℃の範囲の温度に維持された水浴中に30分間そのストレッチされた状態で浸漬し、それを浴から取り出し、張力を解放し、そして最終長さLを測定する前にサンプルを最低60分間室温で緩和させることによって測定される。ホット−ウェット・クリープ(パーセント)は次式から計算される。
%HWC=100×[(L−L)/L
【0062】
低い%HWCの繊維は、染色などの、ホット−ウェット仕上げ操作で優れた性能を提供する。
【0063】
固有粘度(IV)−ポリウレタンおよびポリウレタンウレアの固有粘度は、ASTM D2515に従って標準キャノン−フェンスケ(Cannon−Fenske)粘度計チューブDMAc中の該ポリマーの希薄溶液の粘度をDMAcそれ自体のそれと25℃で比較すること(「相対粘度」法)によって測定され、dl/g単位で報告される。
【0064】
洗濯堅牢度−洗濯堅牢度を測定するために、染色された100%スパンデックス布の一片が、低い−適度な温度での5つの典型的な家庭または業務用洗濯をシミュレートすることを意図される、標準洗濯汚れ試験(米国繊維化学者・色彩技術者協会(American Association of Textile Chemists and Colorists)試験方法61−1996、「家庭および業務用洗濯に対する色堅牢度:促進化(Colorfastness to Laundering,Home and Commercial:Accelerated)」、2Aバージョン)にかけられた。試験は、アセテート、綿、ナイロン6,6、ポリエステル、アクリル、および羊毛布のバンドを含有するマルチファイバー試験布の存在下に行われ、汚染の程度が目視により格付けされた。格付けで、1および2は不良であり、3は可であり、4は良好であり、そして5は優れている。この尺度で、1の値は最悪の汚染を示唆し、そして5の値は汚染なしを示唆する。色合い変化結果もまた同じ尺度を用いて測定された。5は変化なしを意味し、そして1は最大変化を意味する。
【0065】
スパンデックス布上の色保持の程度はまた、オプチビュー品質管理バージョン(Optiview Quality Control Version)4.0.3ソフトウェアを用いるカラー−アイ(Color−Eye)7000グレタッグマクベス(GretagMacbeth)TM比色計スペクトル分析計を用いることによって定量的に測定された。結果はCIELAB単位で報告される。第一発光体はD65であった。色合い変化結果は、洗濯前の布例の色を4回洗濯後の同じ布例の色と比較することによって測定された。
【実施例】
【0066】
それぞれ、27および49モルパーセントのエチレンエーテル含有率ならびに2049および2045ダルトン分子量のランダムポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコール・サンプルを、57〜72℃に保持された連続撹拌タンク反応器中でTHF、エチレンオキシド、および水の溶液をナフィオン(登録商標)樹脂触媒と接触させ、引き続き未反応THFおよびエチレンオキシドを留去し、存在するいかなる触媒微粒子も除去するために濾過し、次に環式エーテル副生物を留去することによって製造した。38モルパーセントのエチレンエーテル単位および2535数平均分子量のランダムポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールを同じ方法で製造した。37モルパーセントのエチレンエーテル単位の、1900の数平均分子量を有するランダムポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールをサンヨー・ケミカル・インダストリーズ(Sanyo Chemical Industries)から購入した。
【0067】
各実施例について、ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールを1−イソシアナト−4−[(4−イソシアナトフェニル)メチル]ベンゼンと接触させてキャップド(イソシアネート末端)グリコールを形成し、それを次にDMAcに溶解させ、エチレンジアミンで連鎖延長し、そしてジエチルアミンで連鎖停止してポリウレタンウレア紡糸液を形成した。使用したDMAcの量は、最終紡糸液が総溶液重量を基準にして34〜38重量%ポリウレタンウレアをその中に有するようなものであった。酸化防止剤、顔料、およびシリコーン紡糸助剤を組成物のすべてに添加した。紡糸液を、乾燥窒素を提供されるカラム中へ乾式紡糸し、フィラメントを合体させ、ゴデットロール周りを通過させ、そして840〜880m/分で巻き取った。フィラメントは良好な紡糸性を提供した。全実施例の糸は、特に明記しない限り光沢の点で「輝いて」いた。「輝く」光沢は、糸の重量を基準にして約4重量パーセントの耐塩素性顔料添加剤を含めることによって得られた。全実施例糸は、特に明記しない限り40デニール(44デシテックス)であり、4フィラメントを含有した。全スパンデックス繊維サンプルは、糸のすべてをほぼ同じ残存溶媒レベルに乾燥させる条件下に紡糸した。
【0068】
(実施例1(高エチレンエーテル含有スパンデックス))
49モルパーセントのエチレンエーテル単位および2045数平均分子量のランダムポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールを、触媒として100ppmの鉱酸を使用して90℃で120分間1−イソシアナト−4−[(4−イソシアナトフェニル)メチル]ベンゼンでキャップして2.2%NCOプレポリマーを与えた。ジイソシアネート対グリコールのモル比(キャッピング比)は1.64であった。このキャップドグリコールを次にDMAc溶媒で希釈し、EDAで連鎖延長し、そしてジエチルアミンで連鎖停止してスパンデックスポリマー溶液を与えた。使用したDMAcの量は、最終紡糸液が総溶液重量を基準にして38重量%ポリウレタンウレアをその中に有するようなものであった。紡糸液を、440℃乾燥窒素を提供されるカラム中へ乾式紡糸し、合体させ、ゴデットロール周りを通過させ、そして869m/分で巻き取った。フィラメントは良好な紡糸性を提供した。繊維特性を表1に提示する。
【0069】
(比較例「a」(中程度EO含有スパンデックス))
27モルパーセントのエチレンエーテル単位および2049数平均分子量のランダムポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールを、触媒として100ppmの均一鉱酸を使用して90℃で120分間1−イソシアナト−4−[(4−イソシアナトフェニル)メチル]ベンゼンでキャップして2.2%NCOプレポリマーを与えた。ジイソシアネート対グリコールのモル比は1.64であった。このキャップドグリコールを次にDMAc溶媒で希釈し、EDAで連鎖延長し、そしてジエチルアミンで連鎖停止してスパンデックスポリマー溶液を与えた。使用したDMAcの量は、最終紡糸液が総溶液重量を基準にして36重量%ポリウレタンウレアをその中に有するようなものであった。紡糸液を、440℃乾燥窒素を提供されるカラム中へ乾式紡糸し、合体させ、ゴデットロール周りを通過させ、そして869m/分で巻き取った。フィラメントは良好な紡糸性を提供した。繊維特性を表1に提示する。
【0070】
(比較例「b」(共延長剤を使った標準スパンデックス))
1800ダルトン平均分子量のポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールを、90℃で90分間1−イソシアナト−4−[(4−イソシアナトフェニル)メチル]ベンゼンでキャップして2.6%NCOプレポリマーを与えた。ジイソシアネート対グリコールのモル比は1.69であった。このキャップドグリコールを次にDMAc溶媒で希釈し、90/10比でのEDAとMPMDとの混合物で連鎖延長し、そしてジエチルアミンで連鎖停止して組成が市販スパンデックスに類似のスパンデックス生成物を与えた。使用したDMAcの量は、最終紡糸液が総溶液重量を基準にして34.8重量%ポリウレタンウレアをその中に含有するようなものであった。紡糸液を、438℃乾燥窒素を提供されるカラム中へ乾式紡糸し、合体させ、ゴデットロール周りを通過させ、そして844m/分で巻き取った。フィラメントは良好な紡糸性を提供した。繊維特性を表1に提示する。
【0071】
【表1】

【0072】
表1のデータを検討すると、パーセント・エチレンエーテル含有率が27%から49%に増加するときに、本発明のスパンデックスが望ましいより高い伸び率、より低い応力緩和、総延伸値に反映されるようにより高い丸編総延伸性およびより高いヒートセット効率を有することが明らかである。実施例1のスパンデックスのヒートセット効率は、より低いパーセントのエチレンエーテル含有率の比較例「a」スパンデックスのヒートセット効率を超え、かつ、比較例「b」、共延長剤を含有する商業的に入手可能なスパンデックスのヒートセット効率を超える。さらに、上記データは、コポリエーテル中のエチレンエーテル部分のモルパーセントが27から49モルパーセントに増加するときに破断点伸び率の増加傾向を明らかにする。
【0073】
(比較例「c」(共延長剤を使った高エチレンエーテル含有スパンデックス(低エンド)))
比較例「c」は、比較例「a」の方法に従って、しかし37モルパーセントのエチレンオキシド単位および1900数平均分子量のランダムポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールで製造した。このスパンデックスは、高エチレンエーテル含有スパンデックスのより低いエンドに近づく。ジイソシアネート対グリコールのモル比は1.62であった。グリコールを90/10比のEDAとMPMDとの混合物で連鎖延長した。ポリマー溶液は34%固形分であり、410℃乾燥窒素を提供されるカラム中へ乾式紡糸された。「輝く」顔料は紡糸液に全く加えなかった。
【0074】
(実施例2(共延長剤なし高エチレンエーテル含有スパンデックス(低エンド))
実施例2は、37モルパーセントのエチレンエーテル単位および1900数平均分子量のランダムポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールで実施例1の方法によって製造した。ジイソシアネート対グリコールのモル比は1.60であった。このスパンデックスは、高エチレンエーテル含有スパンデックスのより低いエンドに近づく。紡糸液は36%固形分であり、430℃乾燥窒素を提供されるカラム中へ乾式紡糸された。「輝く」顔料は紡糸液に全く加えなかった。
【0075】
【表2】

【0076】
表2のデータを検討すると、実施例2スパンデックスで達成できる総丸編延伸性が同じポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールをベースにする比較例「c」スパンデックスのそれを大きく超えることが明らかである。注目すべきことに、実施例2は共延長剤を全く含有しない。
【0077】
(比較例「d」(中程度エチレンエーテル含有スパンデックス))
比較例「d」は、比較例「a」の方法に従って、しかし27モルパーセントのエチレンエーテル単位および2049数平均分子量のランダムポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールで製造した。ジイソシアネート対グリコールのモル比は1.64であった。ポリマー溶液は36.5%固形分であり、440℃乾燥窒素を提供されるカラム中へ3フィラメント糸として乾式紡糸された。
【0078】
【表3】

【0079】
表3のデータを検討すると、パーセント・エチレンエーテル含有率が27%から49%に増加するときに、本発明のスパンデックスが比較例「a」または「d」のどちらよりも望ましいより高い丸編総延伸性を有することが明らかである。同一の組成を有する比較例「a」および「d」は、フィラメントの数および紡糸速度が最終糸特性に影響を及ぼし得るし、実施例1より高い伸び率または高いテナシティの糸を与えさえするが、それにもかかわらず劣った丸編総延伸性を有することを示す。さらに、上記データは、コポリエーテル中のエチレンエーテル部分のモルパーセントが27から49モルパーセントに増加するときに破断点伸び率の増加傾向を明らかにする。
【0080】
別の試験で、実施例1、比較例「a」、および比較例「b」のフィラメント・サンプルを、50cm/分の速度で200%伸び率までストレッチし、緩和させた。ストレッチおよび緩和サイクルを5回行った。無負荷力(応力)を、第5緩和サイクルで2ポイント(それぞれ、「UP30」および「UP60」と示される、30%および60%伸び率)で測定し、デニール当たりのグラム単位で報告した。パーセント破断点伸び率を、第6伸長で測定した。永久歪みもまた、5回の0〜200%伸び/緩和サイクルにかけたサンプルについて22℃で測定した。永久歪み(「%S」)は、百分率として計算した。
%S=100(L−L)/L
式中、LおよびLは、それぞれ、5回の伸び/緩和サイクルの前および後の、張力なしで真っ直ぐ保持されたときの、フィラメント(糸)長さである。3サンプルを試験し、平均値を該結果から計算した。繊維の物理的特性を表4に報告する。
【0081】
【表4】

【0082】
表4のデータの検討は、ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコール中の37モルパーセントより高いエチレンエーテル含有率で、低伸び率での無負荷力がより低いモルパーセントのエチレンエーテル含有率のそれより下に減少せず、比較例「b」の市販スパンデックスと比較して許容されないほどに低くもないことを示す。破断点伸び率は、100%EDAが延長剤システムとして使用される場合、ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコール中37モルパーセントより高いエチレンエーテル含有率でより低くはない。さらに、上記データは、コポリエーテル中のエチレンエーテル部分のモルパーセントが27から49モルパーセントに増加するときに破断点伸び率の増加傾向を明らかにする。加えて、200%伸び率での負荷力は、ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコール中のより高いモルパーセントのエチレンエーテル含有率で望ましくも減少する。
【0083】
(実施例3、4、および5、比較例「e」)
実施例3、4、および5ならびに比較例「e」は、表5に示す組成のランダムポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールで実施例1の方法によって製造した。紡糸液は約31%固形分であり、415℃乾燥窒素を提供されるカラム中へ872m/分の駆動ロール速度で乾式紡糸された。「輝く」顔料は紡糸液に全く加えなかった。
【0084】
【表5】

【0085】
表5のデータの検討は、ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコール中のエチレンエーテル含有率が27モルパーセントより大きいスパンデックスがより低い負荷力、より低い応力減衰、およびより高い伸び率を望ましくも有することを示す。より高い分子量のポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールから製造されたスパンデックスはより低い永久歪みを望ましくも有した。さらに、上記データは、コポリエーテル中のエチレンエーテル部分のモルパーセントが27から49モルパーセントに増加するときに破断点伸び率の増加傾向を明らかにする。
【0086】
(実施例6)
38モルパーセントのエチレンエーテル単位および2535の数平均分子量のランダムポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールを、触媒として100ppmの鉱酸を使用して90℃で120分間1−イソシアナト−4−[(4−イソシアナトフェニル)メチル]ベンゼンでキャップした。ジイソシアネート対グリコールのモル比は1.70であった。このキャップドグリコールを次にDMAc溶媒で希釈し、EDAで連鎖延長し、そしてジエチルアミンで連鎖停止してスパンデックスポリマー溶液を与えた。使用したDMAcの量は、最終紡糸液が総溶液重量を基準にして38重量%ポリウレタンウレアをその中に有するようなものであった。紡糸液を、440℃乾燥窒素を提供されるカラム中へ乾式紡糸し、合体させ、ゴデットロール周りを通過させ、そして869m/分で巻き取った。フィラメントは良好な紡糸性を提供した。「輝く」顔料は紡糸液に全く加えなかった。スパンデックスは0.71g/den(デニール)のテナシティおよび617%の伸び率を有した。
【0087】
(比較例「f」)
比較例「f」は、1800ダルトン平均分子量のポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールを使用して比較例「b」の方法によって製造した。最終紡糸液は35%固形分を含有した。40デニール、3フィラメント・スパンデックス糸を、844メートル毎分でポリマー溶液から紡糸した。スパンデックスは1.11g/denのテナシティおよび470%の伸び率を有した。
【0088】
洗濯堅牢度試験のために、布サンプルを、ローソン編み装置(Lawson Knitting Unit)(ローソン−ヘンフィル・カンパニー(Lawson−Hemphill Company))、モデル「ファク(FAK)」で丸編チューブの形態で製造した。40デニール・スパンデックスの1フィードを編んで100%スパンデックス布を形成した。ローソン・チューブサンプルを、通常の手順に従って1つの酸性染料(ナイランスレン・ブルー(Nylanthrene Blue)GLF)および2つの分散染料(イントラシル・レッド(Intrasil Red)FTSおよびテラシル・ブルー(Terasil Blue)GLF)で染色した。
【0089】
スパンデックス布についての洗濯堅牢度結果を表6、7、および8に与える。スパンデックス布についての色合い変化結果を表9に与える。スパンデックス布についての色読みを表10に与える。
【0090】
【表6】

【0091】
【表7】

【0092】
【表8】

【0093】
【表9】

【0094】
【表10】

【0095】
結果は、酸性染料(ナイランスレン・ブルーGLF)で染色したスパンデックス布については、1回洗濯後に実施例6のスパンデックスを含む布が、比較例「f」のポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール−ベースのスパンデックス布と比較したときにまちまちの結果を与え、幾つかの洗濯堅牢度結果が比較例「f」より悪く、幾つかがより良好であり、そして幾つかが同じものであったことを示す。しかしながら、1回洗濯後に実施例1のスパンデックス[49モルパーセントのエチレンエーテル単位を有するポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールを含むスパンデックス]は、アセテート試験ストリップのケースを除いて、比較例「f」に等しいかまたはそれより良好な洗濯堅牢度結果を示した。4回洗濯後に、実施例6のスパンデックス[38モルパーセントのエチレンエーテル単位を有するポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールを含むスパンデックス]を含む布は、アセテートおよびナイロン試験ストリップを除いて比較例「f」と同じ結果を与えた。実施例1のスパンデックスを含む布は、アセテート試験ストリップを除いて、比較例「f」布と同じ性能を与えた。
【0096】
結果は、分散染料イントラシル・レッドで染色したスパンデックス布については、1回洗濯後にポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコール−ベースの布の両方がポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール−ベースの比較例「f」と比較したときにすべてのケースでより良好な性能を示したことを示す。4回洗濯後に、実施例1の布は、比較例「f」がわずかにより少ない汚染を示した、ポリエステル試験ストリップのケースを除いて、比較例「f」と同じ結果を与えた。4回洗濯後に、スパンデックス実施例6の布は、アクリル試験ストリップのケースでは比較例「f」(および実施例1)と同じ結果を示したが、他のケースでは比較例「f」(および実施例1)より低い性能を与えた。
【0097】
結果は、分散染料テラシル・ブルーで染色されたスパンデックス布については、1回洗濯後にスパンデックス実施例1の布が比較例「f」と同じまたはそれより良好な結果を与えたことを示す。1回洗濯後に、スパンデックス実施例6の布はまた、綿試験ストリップのケースを除いて、比較例「f」と同じまたはそれより良好な結果を与えた。4回洗濯後に、アセテート試験ストリップを除いて、スパンデックス実施例1の布は、比較例「f」が与えたものと同じ結果(綿、ポリエステル、およびアクリルのケースで)またはより良好な結果(ナイロンおよび羊毛のケースで)を与えた。4回洗濯後に、実施例6の布はまた、比較例「f」が与えたものと同じ結果(アセテート、綿、ポリエステル、アクリル、および羊毛のケースで)またはより良好な結果(ナイロンのケースで)を与えた。
【0098】
4回洗濯後の色合い変化結果は、分散染料で、実施例が比較例「f」と同じまたはそれより少ない色合い変化(すなわち、より高い値)を表すことを示す。
【0099】
(実施例7〜11)
49モルパーセントのエチレンエーテル単位および2443数平均分子量のランダムポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールを、触媒として100ppmの均一鉱酸を使用して90℃で120分間1−イソシアナト−4−[(4−イソシアナトフェニル)メチル]ベンゼンでキャップして3.5%NCOプレポリマーを与えた。ジイソシアネート対グリコールのモル比は2.26であった。このキャップドグリコールを次にDMAc溶媒で希釈し、BDO(1,4−ブタンジオール)で連鎖延長してスパンデックスポリマー溶液を与えた。スパンデックス技術では分子量および他の特性を調整するために調合物に連鎖停止剤を加えることもまた可能であり、一般的である。ポリウレタンはより可溶性である傾向があり、そしてハードセグメントが会合してポリマーの見掛け分子量を上げる傾向がより少ないので、連鎖停止剤は、ポリウレタン調合物にはそれほど必要ではない。この上記の一般的な手順を修正し、実施例8、9、10および11を生み出すために用いた。使用したDMAcの量は、最終紡糸液が総溶液重量を基準にして35重量%ポリウレタンをその中に有するようなものであった。紡糸液を、乾燥窒素を提供されるカラム中へ乾式紡糸し、フィラメントを合体させ、ゴデットロール周りを通過させ、そしてリストされた速度で巻き取った。フィラメントは良好な紡糸性を提供した。紡糸速度は870メートル毎分であった。実施例7の繊維特性を表11に提示する。実施例7〜11の追加特性を表12に提示する。
【0100】
【表11】

【0101】
ポリウレタンフィルムを、次の手順に従ってキャストした:
溶液キャストフィルム−ポリマー溶液を、平面に固定されたマイラー(Mylar)(登録商標)フィルム上に置き、0.005〜0.015インチ・フィルムをフィルムナイフでキャストした。ポリウレタンフィルムでコートしたマイラー(登録商標)フィルムを次に平面から取り外し、フィルム乾燥ボックスに入れ、そこでそれを20〜25℃で窒素フロー下に最低16〜18時間乾燥させた。
【0102】
溶融圧縮フィルム−ポリウレタンポリマーを、DMAc溶媒を加熱および窒素流れ下にポリマーから蒸発させることによってポリウレタン溶液から得た。固体ポリウレタンポリマーを次に2つのマイラー(登録商標)シートの間に置いた。中間にポリウレタン入りのマイラー(登録商標)シートを、カーバー(Carver)(登録商標)液圧プレス(Hydraulic Press)における2つの加熱された圧盤の間に置いた。圧盤を一実験では350℃±25℃に、そして別の実験では250℃±25℃に加熱した。圧盤が平方インチ当たり5000ポンドの力を互いに発揮するまで、液圧プレスを用いて圧盤を接合した。力/圧力を、ポリウレタンが溶融したときに素早く平方インチ当たり2000ポンドに落とした。約30秒後に圧力を解放し、マイラー(登録商標)シートを圧盤の間から取り出し、室温に放冷した。マイラー(登録商標)シートを取り除き、厚さ0.64mmの薄い無色透明のポリウレタンフィルムを残した。
【0103】
【表12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)テトラヒドロフランおよびエチレンオキシドを共重合させることによって誘導される構成単位を含むポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールであって、エチレンオキシドから誘導される単位の部分がポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコール中に約37〜約70モルパーセント、好ましくは約48〜約58モルパーセント存在するポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールと、
(b)少なくとも1つのジイソシアネートと、
(c)0〜10モルパーセントの共延長剤を有するエチレンジアミン連鎖延長剤と
の反応生成物を含むことを特徴とするポリウレタンウレア。
【請求項2】
請求項1に記載のポリウレタンウレアを含むことを特徴とするスパンデックス。
【請求項3】
前記ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールが約650ダルトン〜約4000ダルトンの分子量を有することを特徴とする請求項2に記載のスパンデックス。
【請求項4】
前記ポリウレタンウレアが約1.2〜約2.3のジイソシアネート対ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールのモル比を有することを特徴とする請求項2に記載のスパンデックス。
【請求項5】
前記ジイソシアネートが1−イソシアナト−4−[(4−イソシアナトフェニル)メチル]ベンゼン、1−イソシアナト−2−[(4−イソシアナトフェニル)メチル]ベンゼン、およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項2に記載のスパンデックス。
【請求項6】
第1伸びサイクルでデニール当たり約0.11〜約0.24グラムの300%伸び率での負荷力を有することを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載のスパンデックス。
【請求項7】
第5伸びサイクルでデニール当たり約0.027〜約0.043グラムの200%伸び率での無負荷力を有することを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載のスパンデックス。
【請求項8】
第1伸びサイクルでデニール当たり約0.075〜約0.165グラムの200%伸び率での負荷力を有することを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載のスパンデックス。
【請求項9】
1.5倍ストレッチで190℃で120秒間保持されたときに約77パーセント〜約95パーセントのヒートセット効率を有することを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載のスパンデックス。
【請求項10】
約800メートル毎分を上回る速度で紡糸されることを特徴とする請求項6または請求項7または請求項8または請求項9に記載のスパンデックス。
【請求項11】
(a)テトラヒドロフランおよびエチレンオキシドを共重合させることによって誘導される構成単位を含むポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールであって、エチレンオキシドから誘導される単位の部分がポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコール中に約37〜約70モルパーセント存在するポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールと、
(b)少なくとも1つのジイソシアネートと、
(c)連鎖延長剤またはその混合物と、
(d)少なくとも1つの連鎖停止剤と
のポリウレタンウレア反応生成物を含むスパンデックスであって、
1.5倍ストレッチで190℃で120秒間保持されたときに少なくとも約85パーセントのヒートセット効率を有することを特徴とするスパンデックス。
【請求項12】
(a)テトラヒドロフランおよびエチレンオキシドを共重合させることによって誘導される構成単位を含むポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールであって、エチレンオキシドから誘導される単位の部分がポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコール中に約37〜約70モルパーセント存在するポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールと、
(b)少なくとも1つのジイソシアネートと、
(c)0〜約10モルパーセント共延長剤を有する少なくとも1つのジオール連鎖延長剤と
の反応生成物を含むことを特徴とするポリウレタン。
【請求項13】
請求項12に記載のポリウレタンを含むことを特徴とするスパンデックス。
【請求項14】
(a)テトラヒドロフランおよびエチレンオキシドを共重合させることによって誘導される構成単位を含むポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールを少なくとも1つのジイソシアネートと接触させてキャップドグリコールを形成する工程であって、エチレンオキシドから誘導される単位の部分がポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコール中に約37〜約70モルパーセント存在する工程と、
(b)任意選択的に、溶媒を(a)の生成物に加える工程と、
(c)(b)の生成物を少なくとも1つのジアミンまたはジオール連鎖延長剤と接触させる工程と、
(d)(c)の生成物を紡糸してスパンデックスを形成する工程と
を含むことを特徴とするスパンデックスの製造方法。
【請求項15】
前記1つまたは複数のジアミン連鎖延長剤が0〜10モルパーセントの共延長剤を有するエチレンジアミンであることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項2または請求項11または請求項13に記載のスパンデックスを含むことを特徴とする布。
【請求項17】
請求項16に記載の布を含むことを特徴とする衣類または織物品。
【請求項18】
請求項1に記載のポリウレタンウレアを含むことを特徴とする分散物、コーティング、フィルム、接着剤、エラストマー、または成形品。
【請求項19】
請求項12に記載のポリウレタンを含むことを特徴とする分散物、コーティング、フィルム、接着剤、エラストマー、または成形品。
【請求項20】
1.5倍ストレッチで190℃で120秒間保持されたときに約77パーセント〜約95パーセントのヒートセット効率を有するスパンデックスの製造方法であって、
(a)テトラヒドロフランおよびエチレンオキシドを共重合させることによって誘導される構成単位を含むポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールを、約1.2〜約2.3のジイソシアネート対ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールのモル比で少なくとも1つのジイソシアネートと接触させる工程であって、エチレンオキシドから誘導される単位の部分がポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコール中に約37〜約70モルパーセント存在する工程と、
(b)溶媒を(a)の生成物に加える工程と、
(c)(b)の生成物を、0〜約10モルパーセント共延長剤を有するエチレンジアミン連鎖延長剤および少なくとも1つの連鎖停止剤と接触させる工程と、
(d)(c)の生成物を紡糸してスパンデックスを形成する工程と
を含むことを特徴とする方法。

【公表番号】特表2008−540765(P2008−540765A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−511211(P2008−511211)
【出願日】平成18年5月8日(2006.5.8)
【国際出願番号】PCT/US2006/017559
【国際公開番号】WO2006/121942
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(505245302)インヴィスタ テクノロジー エスアエルエル (81)
【氏名又は名称原語表記】INVISTA Technologies S.a.r.l.
【住所又は居所原語表記】Talstrasse 80,8001 Zurich,Switzerland
【Fターム(参考)】