説明

高エネルギー留出燃料組成物及びそれを作製する方法

ASTM D1322で測定して約18mmの煙点及びASTM D3241で測定して25mmHg以下の熱安定性を有する高エネルギー密度燃料組成物、並びに、ジェット燃料組成物中の芳香族成分、シクロパラフィン成分、及びノルマル+又はイソパラフィン成分により正味燃焼熱が測定されるジェット燃料組成物を作製する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高エネルギー留出燃料組成物及び該燃料組成物を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
FCC軽質循環油(「LCO」)、中質循環油(「MCO」)、及び重質循環油(「HCO」)などの重質炭化水素流は、比較的価値が低い。典型的には、そのような炭化水素流は、水素化転化によってアップグレードされる。
【0003】
水素化処理触媒は、当技術分野で周知である。汎用水素化処理触媒は、耐火性酸化物担体に担持された、少なくとも1種の第VIII族金属成分及び/又は少なくとも1種の第VIB族金属成分を含む。第VIII金属成分は、ニッケル(Ni)及び/又はコバルト(Co)などの非貴金属をベースにしてもよく、又は白金(pt)及び/又はパラジウム(Pd)などの貴金属をベースにしてもよい。第VIB族金属成分は、モリブデン(Mo)及びタングステン(W)をベースにしたものを含む。最も一般的に利用される耐火性酸化物担体材料は、シリカ、アルミナ、及びシリカ−アルミナなどの無機酸化物と、変性ゼオライトYなどのアルミノシリケートである。汎用水素化処理触媒の例は、NiMo/アルミナ、CoMo/アルミナ、NiW/シリカ−アルミナ、Pt/シリカ−アルミナ、PtPd/シリカ−アルミナ、Pt/変性ゼオライトY、及びPtPd/変性ゼオライトYである。
【0004】
水素化処理触媒は、通常、芳香族化合物、硫黄化合物、及び/又は窒素化合物の含量を減少させるために炭化水素油供給を水素に接触させる方法で使用される。典型的には、芳香族含量の減少が主な目的である水素化処理方法を、水素化方法と呼ぶのに対し、硫黄及び/又は窒素含量の減少に主な焦点を当てる方法を、それぞれ水素化脱硫及び水素化脱窒素と呼ぶ。
【0005】
本発明は、水素の存在下及び単一段階反応器で、触媒でガスオイル供給原料を水素化処理する方法に由来するジェット燃料組成物を対象とする。
【0006】
(関連技術の説明)
Marmoの米国特許第4162961号は、水素化プロセスの生成物を分留することができるような条件下で水素化される循環油について開示している。
【0007】
Myersらの米国特許第4619759号は、供給原料が最初に接触する触媒床の部分がアルミナ、コバルト、及びモリブデンを含む触媒を含有しており、且つ第1部分を通過した後にこの供給原料が通過する触媒床の第2部分がモリブデン及びニッケルが添加されたアルミナを含む触媒を含有している、複数触媒床で実施される残留油及び軽質循環油を含む混合物の触媒的水素化処理について開示している。
【0008】
Kirkerらの米国特許第5219814号は、高芳香族の実質的に脱アルキル化された供給原料を、好ましくは超安定性Y及び第VIII金属及び第VI金属を含み、第VIII族金属分の含量が指定された割合で超安定性Y成分の枠組みアルミニウム含量に組み込まれている触媒上での水素化分解によって、高オクタンガソリン及び低硫黄留出物へと処理する、中圧水素化分解方法について開示している。
【0009】
Kalensの米国特許第7005057号は、炭化水素系供給原料を、高温高圧水素化分解して、ディーゼル沸点範囲の炭化水素への転化を得る超低硫黄ディーゼルを生成するための触媒的水素化分解方法について開示している。
【0010】
Barreらの米国特許第6444865号は、芳香族化合物を含む炭化水素供給原料を水素の存在下で高温で触媒に接触させる方法において使用される、白金、パラジウム、及びイリジウムの1種又は複数から選択された貴金属を0.1から15重量%、酸性担体に担持されたマンガン及び/又はレニウムを2から40重量%含む触媒について開示している。
【0011】
Barreらの米国特許第5868921号は、留出画分を二種の水素化触媒の積層床に沿って下方に通すことにより単一段階で水素化処理される、炭化水素留出画分について開示している。
【0012】
Fujukawaらの米国特許第6821412号は、微結晶直径が20から40Åの結晶質アルミナを含有する無機酸化物の担体中に定められた量の白金、パラジウムを含有する、ガスオイルの水素化処理用触媒について開示している。定められた条件で上記触媒の存在下、芳香族化合物を含有するガスオイルを水素化処理するための方法も開示される。
【0013】
Kirkerらの米国特許第4968402号は、高芳香族炭化水素供給原料から高オクタンガソリンを生成するための、1段階方法を開示している。
【0014】
Brownらの米国特許第5520799号は、留出物供給原料をアップグレードするための方法について開示している。水素化処理触媒を、通常は反応条件下にある固定床反応器であり低芳香性ディーゼル及びジェット燃料が生成される、反応ゾーンに置く。
【0015】
Connorの米国公開特許出願第2005/0027148号がある。
Barnesの米国特許第3367860号がある。
Hamnerの米国特許第4875992号がある。
Tsaoらの米国公開特許出願第2008/0249341号がある。
Carlの米国特許第3222274号がある。
McLaughlinらの米国特許第2964393号がある。
Shabtaiらの米国特許第5189232号がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
一実施形態では、本発明はジェット燃料組成物を対象とし、それは、
(a)22体積%未満の芳香族成分、
(b)少なくとも72体積%のシクロパラフィン成分、
(c)28体積%未満のノルマル+イソパラフィン成分、
(d)少なくとも128000Btu/galの正味燃焼熱、
(e)ASTM D1322で19mm超の煙点、並びに、
(f)ASTM D3241で、25mmHg以下のフィルタ圧力損失、290℃超の破壊温度及び3未満の全管堆積等級、を特徴とするJFTOT熱安定性、
を有する。
【0017】
一実施形態では、本発明はジェット燃料組成物を対象とし、それは、
(a)10〜20体積%の芳香族成分、
(b)約80〜約90体積%のシクロパラフィン成分、
(c)10体積%未満のノルマル+イソパラフィン成分、
(d)少なくとも128000Btu/galの正味燃焼熱、
(e)ASTM D1322で19mm超の煙点、並びに、
(f)ASTM D3241で、25mmHg以下のフィルタ圧力損失、290℃超の破壊温度及び3未満の全管堆積等級、を特徴とするJFTOT熱安定性、
を有する。
【0018】
一実施形態では、本発明はジェット燃料を作製する方法を対象とし、該方法は、
(a)少なくとも50体積%のFCC循環油を含有する供給原料を水素化処理して高密度ジェット燃料を生成する工程、
を含み、
該燃料は、
(i)22体積%未満の芳香族成分、
(ii)少なくとも72体積%のシクロパラフィン成分、
(iii)28体積%未満のノルマル+イソパラフィン成分、
(iv)少なくとも128000Btu/galの正味燃焼熱、
(v)ASTM D1322で19mm超の煙点、並びに、
(vi)ASTM D3241で、25mmHg以下のフィルタ圧力損失、290℃超の破壊温度及び3未満の全管堆積等級、を特徴とするJFTOT熱安定性、
を有する。
【0019】
一実施形態では、本発明はジェット燃料を作製する方法を対象とし、該方法は、
(a)少なくとも50体積%の芳香族を含有する供給原料を水素化処理して高密度ジェット燃料を生成する工程、
を含み、
該燃料は、
(i)22体積%未満の芳香族成分、
(ii)少なくとも72体積%のシクロパラフィン成分、
(iii)28体積%未満のノルマル+イソパラフィン成分、
(iv)少なくとも129000Btu/galの正味燃焼熱、
(v)ASTM D1322で19mm超の煙点、並びに、
(vi)ASTM D3241で、25mmHg以下のフィルタ圧力損失、290℃超の破壊温度及び3未満の全管堆積等級、を特徴とするJFTOT熱安定性、
を有する。
【0020】
一実施形態では、本発明はジェット燃料組成物のネネルギー密度を増加させる方法を対象とし、該方法は、
(a)127000Btu/gal以下のネネルギー密度を有するジェット燃料組成物を、
(b)下記特徴を有するジェット燃料組成物と、
混合する工程を含み、
その特徴とはすなわち、
(i)22体積%未満の芳香族成分、
(ii)少なくとも72体積%のシクロパラフィン成分、
(iii)28体積%未満のノルマル+イソパラフィン成分、
(iv)少なくとも129000Btu/galの正味燃焼熱、
(v)ASTM D1322で19mm超の煙点、並びに、
(vi)ASTM D3241で、25mmHg以下のフィルタ圧力損失、290℃超の破壊温度及び3未満の全管堆積等級、を特徴とするJFTOT熱安定性、
である。
【0021】
一実施形態では、本発明はジェット燃料ブレンドストックを対象とし、それは、
(a)127000Btu/gal以下のネネルギー密度を有するジェット燃料組成物、及び、
(b)下記特徴を有するジェット燃料組成物、
を含有し、
その特徴とはすなわち、
(i)22体積%未満の芳香族成分、
(ii)少なくとも72体積%のシクロパラフィン成分、
(iii)28体積%未満のノルマル+イソパラフィン成分、
(iv)少なくとも129000Btu/galの正味燃焼熱、
(v)ASTM D1322で19mm超の煙点、並びに、
(vi)ASTM D3241で、25mmHg以下のフィルタ圧力損失、290℃超の破壊温度及び3未満の全管堆積等級、を特徴とするJFTOT熱安定性、
である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】ジェット燃料組成物中の芳香族成分(体積%)、シクロパラフィン成分(体積%)、並びにパラフィン(ノルマル及びイソ)成分(体積%)をプロットしている三角図を開示している図である。本発明のジェット燃料組成物に対応する三角図の領域をグレイで示している。
【図2】高エネルギー密度のナフサ、ジェット、及びディーゼルを生成するための単一段階方法を開示している図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、様々な修正をし、また代替形態にすることができるが、その具体的実施形態について、本明細書に詳述する。しかし、具体的実施形態に関する本明細書の記述は、本発明を、開示される特定の形態に限定するものではなく、それとは対照的に、添付される特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨及び範囲内にある全ての修正例、均等物、及び代替例をカバーするものと理解すべきである。
【0024】
(定義)
FCC−は、流動接触分解−剤、−する、又は−したを指す。
HDT−は、「水素化処理剤」を指す。
HDC−は、「水素化分解剤」を指す。
MUH2−は、「補給水素」を指す。
水素化/水素化分解触媒は、「水素化触媒」又は「水素化分解触媒」と呼ぶこともある。
「供給原料」、「供給源」、「供給原料流」という用語は、同義に使用してもよい。
JFTOT−は、ジェット燃料熱酸化試験機を指す。
【0025】
A.概観
芳香族成分、シクロパラフィン成分、及びパラフィン成分を有し、本発明に合致するジェット燃料組成物が、図1の影化領域に示される。
【0026】
ジェット燃料組成物を処理する方法を、図2に示す。図2に示される実施形態では、炭化水素ガスオイル410を、硫黄/窒素の除去のための水素化処理器反応器510に供給し、次いで水素化/水素化分解反応器560に直接供給する。水素化/水素化分解生成物420は高圧分離器520に供給され、そこで反応器流出物が、ガス430と液体流450とに分離される。生成物ガス430を、再循環ガス圧縮器530で再度圧縮することにより、流れ440が得られ、次いでこの流れを反応器入口へと再循環させ、そこで補給水素400及び炭化水素ガスオイル供給原料410と一緒にする。液体流450を、液体レベル制御弁525で減圧し、生成物を、低圧分離器540でガス流460と液体流570とに分離する。
【0027】
生成物流470を蒸留システム550に供給し、そこで生成物470を分離することにより、ガス流410、ナフサ生成物490、及び高容量エネルギージェット燃料600、及びディーゼル610が得られる。任意選択で、ジェット/ディーゼル生成物スレートのバランスをとるために、ディーゼル流600の一部を第2段階の反応器460に再循環することができる。
【0028】
B.供給原料
炭化水素ガスオイルは、ジェット又はディーゼルへとアップグレードされ得る。炭化水素ガスオイル供給原料は、FCC軽質循環油を含めたFCC流出物、ジェット燃料の留出物、炭鉱生成物、石炭液化油、重油熱分解プロセスからの生成物油、重油水素化分解からの生成物油、原油ユニットからの直留カット、及びこれらの混合物から選択され、これら供給原料の大部分は、約250°Fから約800°F、好ましくは約350°Fから約600°Fの沸点範囲を有している。本明細書及び添付される特許請求の範囲で使用される「大部分」という用語は、少なくとも50重量%を意味するものとする。
【0029】
典型的には、供給原料は、高芳香族であり、約80重量%までの芳香族、3重量%までの硫黄、及び1重量%まで窒素を有する。好ましくは、供給原料は、少なくとも40重量%の芳香族である芳香族含量を有する。典型的には、セタン価は約25単位である。
【0030】
C.触媒
本発明で用いられる触媒システムは、水素化処理触媒及び水素化/水素化分解触媒からなる少なくとも2種の触媒層を含む。任意選択で、触媒システムは、少なくとも1層の脱金属化触媒と、少なくとも1層の第2水素化処理触媒とを含んでもよい。水素化処理触媒は、第VIB族からの金属及び第VIII族からの金属、その酸化物、その硫化物、及びこれらの混合物などの水素化成分を含有し、フッ素、少量の結晶質ゼオライト、又は非晶質シリカアルミナなどの酸性成分を含有してもよい。
【0031】
水素化分解触媒は、第VIB族からの金属及び第VIII族からの金属、その酸化物、その硫化物、及びこれらの混合物などの水素化成分を含有し、結晶質ゼオライト又は非晶質シリカアルミナなどの酸性成分を含有する。
【0032】
水素化分解触媒を製造するための良好な出発材料と見なされるゼオライトの1種は、1964年4月21日発行の米国特許第3130007号に記載されている、周知の合成ゼオライトYである。この材料に関するいくつかの変形例が報告されており、その1つは、1970年10月27日発行の米国特許第3536605号に記載されている超安定性Yゼオライトである。合成Yゼオライトの有用性をさらに高めるため、追加の成分を添加することができる。例えば、Wardらに1974年9月10日に発行された米国特許第3835027号は、少なくとも1種の非晶質耐火性酸化物、結晶質ゼオライト系アルミノシリケート、並びに第VI族及び第VIII族金属及びこれらの硫化物、及びこれらの酸化物から選択された水素化成分を含有する水素化分解触媒について記述している。
【0033】
約17重量%のアルミナ結合剤、約12重量%のモリブデン、約4重量%のニッケル、約30重量%のYゼオライト、及び約30重量%の非晶質シリカ/アルミナを含む、同時摩砕されたゼオライト触媒である水素化分解触媒。この水素化分解触媒は、一般に、その開示の全てが参照により本明細書に組み込まれた、1992年4月15日にM.M.Habibらにより出願され現在は放棄された米国特許出願第870011号に記載されている。このより一般的な水素化分解触媒は、約24.55Åよりも大きい単位格子サイズ及び約2.8ミクロン未満の結晶サイズを有するYゼオライトを、非晶質分解成分、結合剤、及び第VI族金属及び/又は第VIII族金属からなる群から選択された少なくとも1種の水素化成分、及びこれらの混合物と共に含む。
【0034】
本明細書で本発明により使用されるYゼオライトを調製する際、約2.8ミクロン未満の結晶サイズを有するYゼオライトを生成するには、米国特許第3808326号に開示されている方法に従うべきである。
【0035】
より具体的には、水素化分解触媒は、適切には、約30〜90重量%のYゼオライト及び非晶質分解成分と、約70〜10重量%の結合剤を含む。好ましくは、触媒は、かなり多量のYゼオライト及び非晶質分解成分を含み、即ち、約60〜90重量%のYゼオライト及び非晶質分解成分と、約40〜10重量%の結合剤を含み、特に好ましくは約80〜85重量%のYゼオライト及び非晶質分解成分と、約20〜15重量%の結合剤を含む。非晶質分解成分として、シリカ−アルミナを使用することが好ましい。
【0036】
触媒中のYゼオライトの量は、ゼオライトと分解成分を合わせた量の約5〜70重量%に及ぶ。好ましくは、触媒組成物中のYゼオライトの量は、ゼオライトと分解成分とを合わせた量の約10〜60重量%に及び、最も好ましくは、触媒組成物中のYゼオライトの量は、ゼオライトと分解成分とを合わせた量の約15〜40重量%に及ぶ。
【0037】
所望の単位格子サイズに応じて、YゼオライトのSiO/Alのモル比を調節しなければならない可能性がある。単位格子サイズを相応に調節するため利用することができる、多くの技法が、当技術分野で記述されている。SiO/Alのモル比が約3から約30であるYゼオライトは、本発明による触媒組成物のゼオライト成分として適切に利用できることがわかった。SiO/Alのモル比が約4から約12のYゼオライトが好ましく、最も好ましくはSiO/Alのモル比が約5から約8である。
【0038】
水素化分解触媒中のシリカ−アルミナなどの分解成分の量は、約10〜50重量%、好ましくは約25〜35重量%に及ぶ。シリカ−アルミナ中のシリカの量は、約10〜70重量%に及ぶ。好ましくは、シリカ−アルミナ中のシリカの量は、約20〜60重量%に及び、最も好ましくは、シリカ−アルミナ中のシリカの量は、約25〜50重量%に及ぶ。また、いわゆるX線非晶質ゼオライト(即ち、標準的なX線技法によって検出するには小さすぎる微結晶サイズを有するゼオライト)は、本発明の方法の実施形態による分解成分として、適切に利用することができる。触媒は、約0.0重量%から約2.0重量%のレベルでフッ素を含有していてもよい。
【0039】
水素化分解触媒中に存在する結合剤(単数又は複数)は、無機酸化物を適切に含む。非晶質及び結晶質結合剤を共に利用することができる。適切な結合剤の例には、シリカ、アルミナ、クレイ、及びジルコニアが含まれる。アルミナを結合剤として使用することが好ましい。
【0040】
触媒中の水素化成分(単数又は複数)の量は、全触媒100重量部当たりの金属(単数又は複数)として計算した場合、適切には、第VIII族金属成分(単数又は複数)が約0.5〜約30重量%に及び、第VI族金属成分(単数又は複数)が約0.5〜約30重量%に及ぶ。触媒中の水素化成分は、酸化物及び/又は硫化物の形をとってもよい。少なくとも1種の第VI族及び第VIII族金属成分の組合せが(混合)酸化物として存在する場合、この組合せは、水素化分解で適正に使用される前に、硫化処理にかけられることになる。
【0041】
適切には、触媒は、ニッケル及び/又はコバルトの1種又は複数の成分と、モリブデン及び/又はタングステンの1種又は複数の成分、又は、白金及び/又はパラジウムの1種又は複数の成分を含む。
【0042】
水素化処理触媒は、約2〜20重量%のニッケルと、約5〜約20重量%のモリブデンとを含む。好ましくは、触媒は、3〜10%のニッケルと、約5〜20%のモリブデンとを含む。より好ましくは、触媒は、全触媒100重量部当たりの金属として計算した場合、約5〜10重量%のニッケルと、約10〜15重量%のモリブデンとを含む。さらにより好ましくは、触媒は、約5〜8%のニッケルと、約8%から約15%のニッケルとを含む。水素化処理触媒に用いられる金属の全重量%は、少なくとも15重量%である。
【0043】
一実施形態では、ニッケル触媒対モリブデン触媒の比は、約1:1以下である。
【0044】
水素化/水素化分解触媒の活性金属は、ニッケルと、少なくとも1種又は複数のVIB金属を含む。好ましくは、水素化/水素化分解触媒は、ニッケル及びタングステン、又はニッケル及びモリブデンを含む。典型的には、水素化/水素化分解触媒の活性金属は、全触媒100重量部当たりの金属として計算した場合、約3〜30重量%のニッケルと約2〜30重量%のタングステンとを含む。好ましくは、水素化/水素化分解触媒の活性金属は、約5〜20重量%のニッケルと約5〜20重量%のタングステンとを含む。より好ましい水素化/水素化分解触媒の活性金属は、約7〜15重量%のニッケルと約8〜15重量%のタングステンとを含む。最も好ましい水素化/水素化分解触媒の活性金属は、約9〜15重量%のニッケルと約8〜13重量%のタングステンとを含む。金属の全重量%は、約25重量%から約40重量%である。
【0045】
任意選択で、水素化/水素化分解触媒の酸性度は、少なくとも1重量%のフッ化物、好ましくは約1〜2重量%のフッ化物を添加することによって、高めることができる。
【0046】
別の実施形態では、水素化/水素化分解触媒は、担体が非晶質アルミナ若しくはシリカ又はこれらの両方であり、約0.5重量%から約15重量%の濃度のH−Yのように酸性度がゼオライトによって高められている、同様の高活性卑金属触媒により置換されていてもよい。
【0047】
水素化処理触媒粒子の有効直径は、約0.1インチであり、水素化分解触媒粒子の有効直径も、約0.1インチであった。2種の触媒を、水素化処理触媒対水素化分解触媒の重量比約1.5:1で混合する。
【0048】
任意選択で、脱金属化触媒を触媒システムに用いてもよい。典型的には、脱金属化触媒は、第VIB族及び第VIII族金属を、大孔径アルミナ担体上に含む。金属は、ニッケル及びモリブデンなどを大孔径アルミナ担体上に含んでもよい。好ましくは、少なくとも約2重量%のニッケルが用いられ、少なくとも約6重量%のモリブデンが用いられる。脱金属化触媒は、少なくとも約1重量%のリンによって促進されてもよい。
【0049】
任意選択で、第2水素化処理触媒を触媒システムに用いてもよい。第2水素化処理触媒には、本明細書に記述されるものと同じ水素化処理触媒が含まれる。
【0050】
D.生成物
ASTM D1322で測定して約18mmの煙点及びASTM D3241で測定して25mmHg以下の熱安定性を有するジェット燃料組成物の正味燃焼熱が、芳香族成分、シクロパラフィン成分、ノルマル+イソパラフィン成分を補完して測定されてもよいことも見出された。
【0051】
上で述べたように、図1は、ジェット燃料組成物中の芳香族成分(体積%)、シクロパラフィン成分(体積%)、並びにパラフィン(ノルマル及びイソ)成分(体積%)をプロットしている三角図を開示している。全体積パーセントはASTM D2789で測定された。本発明のジェット燃料組成物に対応する三角図の領域をグレイで示している。
【0052】
一実施形態では、ジェット燃料組成物は、22体積%未満の芳香族成分;少なくとも70体積%のシクロパラフィン成分;30体積%未満のノルマル+イソパラフィン成分;少なくとも12800Btu/galの正味燃焼熱;ASTM D1322で測定して少なくとも18mmの煙点;並びに、ASTM D3241で、25mmHg以下のフィルタ圧力損失、290℃超の破壊温度及び3未満の全管堆積等級、を特徴とするJFTOT熱安定性、を有する。
【0053】
好ましくは、ジェット燃料組成物は、22体積%未満の芳香族成分;少なくとも72体積%のシクロパラフィン成分;28体積%未満のノルマル+イソパラフィン成分;少なくとも129000Btu/galの正味燃焼熱;ASTM D1322で測定して少なくとも19mmの煙点;並びに、ASTM D3241で、25mmHg以下のフィルタ圧力損失、290℃超の破壊温度及び3未満の全管堆積等級、を特徴とするJFTOT熱安定性、を有する。
【0054】
より好ましくは、ジェット燃料組成物は、22体積%未満の芳香族成分;少なくとも72体積%のシクロパラフィン成分;28体積%未満のノルマル+イソパラフィン成分;少なくとも130000Btu/galの正味燃焼熱;ASTM D1322で測定して少なくとも19mmの煙点;並びに、ASTM D3241で、25mmHg以下のフィルタ圧力損失、290℃超の破壊温度及び3未満の全管堆積等級、を特徴とするJFTOT熱安定性、を有する。
【0055】
更により好ましくは、ジェット燃料組成物は、約5〜約20体積%の芳香族成分;約80〜約95体積%のシクロパラフィン成分;約5体積%未満のノルマル+イソパラフィン成分;少なくとも128000Btu/galの正味燃焼熱;ASTM D1322で測定して少なくとも18mmの煙点;並びに、ASTM D3241で、25mmHg以下のフィルタ圧力損失、290℃超の破壊温度及び3未満の全管堆積等級、を特徴とするJFTOT熱安定性、を有する。
【0056】
最も好ましくは、ジェット燃料組成物は、約10〜約20体積%の芳香族成分;約80〜90体積%のシクロパラフィン成分;約10体積%未満のノルマル+イソパラフィン成分;少なくとも129000Btu/galの正味燃焼熱;ASTM D1322で測定して少なくとも18mmの煙点;並びに、ASTM D3241で、25mmHg以下のフィルタ圧力損失、290℃超の破壊温度及び3未満の全管堆積等級、を特徴とするJFTOT熱安定性、を有する。
【0057】
更に最も好ましくは、ジェット燃料組成物は、約10〜約20体積%の芳香族成分;約80〜90体積%のシクロパラフィン成分;約10体積%未満のノルマル+イソパラフィン成分;少なくとも130000Btu/galの正味燃焼熱;ASTM D1322で測定して少なくとも18mmの煙点;並びに、ASTM D3241で、25mmHg以下のフィルタ圧力損失、290℃超の破壊温度及び3未満の全管堆積等級、を特徴とするJFTOT熱安定性、を有する。
【0058】
一実施形態では、JFTOT熱安定性は、ASTM D3241で、25mmHg以下のフィルタ圧力損失;290℃超の、好ましくは295℃超の、さらに一層好ましくは300℃超の、及び最も好ましくは310℃超の、破壊温度;並びに3未満の全管堆積等級、を有する。
【0059】
上述のジェット燃料組成物は本発明で用いられる方法で調製されてもよく、その方法は、重質炭化水素供給原料流をジェット及び/又はディーゼル生成物にアップグレードする。本方法の生成物は高体積エネルギー密度を有するジェット若しくはディーゼル燃料又両方を含んでいてもよい。
【0060】
一実施形態では、本発明のジェット燃料組成物は、高体積エネルギー密度を有さない他のジェット燃料組成物と混合されてもよく、それによりジェット燃料ブレンドストックが生成される。好ましくは、ジェット燃料ブレンドストックは、(a)127000Btu/gal以下のネネルギー密度を有するジェット燃料組成物;及び、(b)下記特徴を有するジェット燃料組成物、を含有しており、その特徴とはすなわち、(i)22体積%未満の芳香族成分;(ii)少なくとも72体積%のシクロパラフィン成分;(iii)28体積%未満のノルマル+イソパラフィン成分;(iv)少なくとも129000Btu/galの正味燃焼熱;(v)ASTM D1322で19mm超の煙点;並びに(vi)ASTM D3241で、25mmHg以下のフィルタ圧力損失、290℃超の破壊温度及び3未満の全管堆積等級、を特徴とするJFTOT熱安定性、である。
【0061】
典型的には、本発明で用いられる方法で調製されるジェット燃料組成物は、70重量%以上の芳香族飽和度を有する(即ち、低芳香族含量)。生成物は、120000Btu/gal超、好ましくは125000Btu/gal超のエネルギー密度も有する。ジェット燃料生成物は、20mm超の煙点を有する。ジェット燃料生成物は、−40℃未満の凝固点も有する。好ましくは、凝固点は−50℃未満である。ディーゼル生成物は、少なくとも40のセタン指数を有する。
【0062】
一実施形態では、生成物のジェット燃料組成物は、少なくとも50体積%のFCC循環油を含有する供給原料流を水素化処理することで調製され、高密度ジェット燃料を生成する。該燃料は、22体積%未満の芳香族成分;少なくとも70体積%のシクロパラフィン成分;30体積%未満のノルマル+イソパラフィン成分;少なくとも12800Btu/galの正味燃焼熱;ASTM D1322で測定して少なくとも18mmの煙点;並びに、ASTM D3241で測定して25mmHg以下の熱安定性、を有する。
【0063】
好ましくは、生成物のジェット燃料組成物は、少なくとも50体積%のFCC循環油を含有する供給原料流を水素化処理することで調製され、高密度ジェット燃料を生成する。該燃料は、約5〜約20体積%の芳香族成分;約80〜約95体積%のシクロパラフィン成分;約5体積%未満のノルマル+イソパラフィン成分;少なくとも128000Btu/galの正味燃焼熱;ASTM D1322で測定して少なくとも18mmの煙点;並びに、ASTM D3241で測定して25mmHg以下の熱安定性、を有する。
【0064】
本発明の一実施形態では、航空タービン燃料組成物は、特に高い熱酸化安定性を有する。本発明の燃料の高い熱酸化安定性はジェットタービン燃料にとても望ましい特徴であり、操作条件での最小堆積形成を特徴とするさらなる安全マージンを提供する。熱酸化安定性はJFTOT手順(ASTM D3241)で測定される。
【0065】
一実施形態では、ジェット燃料組成物のネネルギー密度を増加させる方法は、(a)127000Btu/gal以下のネネルギー密度を有するジェット燃料組成物を、(b)下記特徴を有するジェット燃料組成物と、混合する工程を含み、その特徴とはすなわち、22体積%未満の芳香族成分;少なくとも72体積%のシクロパラフィン成分;28体積%未満のノルマル+イソパラフィン成分;少なくとも129000Btu/galの正味燃焼熱;ASTM D1322で19mm超の煙点;並びに、ASTM D3241で、25mmHg以下のフィルタ圧力損失、290℃超の破壊温度及び3未満の全管堆積等級、を特徴とするJFTOT熱安定性、である。
【0066】
E.プロセス条件
本発明の一実施形態は、好ましくはジェット及び/又はディーゼル沸点範囲内の沸点範囲を有する高エネルギー留出燃料を作製する方法である。この方法は、本明細書に記述される重質の高芳香族炭化水素系供給原料と、水素化処理触媒及び水素化分解触媒からなる触媒システムとを接触させるステップを含む。反応システムは、本質的に同じ圧力及び再循環ガス流量の下、単一段階反応プロセスとして動作する。反応システムは、2つのセクション、即ち直列に位置付けられた水素化処理セクションと水素化分解セクションとを有する。水素化処理セクションと水素化分解セクションとの間には、触媒を通る流動に起因した圧力降下によって引き起こされた、圧力差がある。圧力差は、約200psi以下である。より好ましくは、圧力差は100psi以下である。最も好ましくは、圧力差は50psi以下である。
【0067】
代表的な供給原料は、原油ユニットから生じた流動接触分解循環油、熱的分解留出物、及び直留留出物などの高芳香性精製流を含む。これらの供給原料は、一般に、約200°Fよりも高い沸点範囲を有し、一般に、350°Fから約750°Fの間の沸点範囲を有する。
【0068】
炭化水素系供給原料は、一般に、約550°Fから約775°F、好ましくは約650°Fから約750°F、最も好ましくは約700°Fから約725°Fの範囲の温度;約750ポンド毎平方インチ(絶対)(psia)から3500psia、好ましくは約1000psiaから約2500psia、最も好ましくは約1250psiaから約2000psiaの圧力;約0.2から約5.0、好ましくは約0.5から約2.0、最も好ましくは約0.8から約1.5の液空間速度(LHSV);並びに、約1000標準立方フィート毎バレル(scf/bbl)から約15000scf/bbl、好ましくは約4000scf/bblから約12000scf/bbl、最も好ましくは約6000scf/bblから約10000scf/bblの油対ガス比、を含む、アップグレード条件の下、触媒システムの存在下で水素に接触させる。
【0069】
F.プロセス装置
本発明の触媒システムは、様々な構成で使用することができる。しかし本発明では、触媒は、単一段階反応システムで使用される。好ましくは、反応システムは、同じ再循環ガスループ及び本質的に同じ圧力で動作する、水素化処理器及び水素化分解反応器を備える。例えば、高芳香性供給原料は、水素化処理及び水素化分解触媒が入っている高圧反応システムに導入される。供給原料は、再循環させた水素と一緒になって、水素化処理触媒が入っている第1セクションと水素化分解触媒が入っている第2セクションとを含む反応システムに導入される。第1セクションは、水素化処理触媒を含有する少なくとも1つの反応器床を含む。第2セクションは、水素化分解触媒を含有する少なくとも1つの反応器床を含む。両セクションは、同じ圧力で動作する。反応条件下、高芳香性供給原料は、極めて高いレベルにまで飽和され、高飽和生成物が生成される。反応システムからの流出物は、ジェット及びディーゼル範囲内の沸点範囲を有する高度飽和生成物である。反応が生じた後、高エネルギー密度ジェット、高エネルギー密度ディーゼル、ナフサ、及びその他の生成物を分離するために、反応生成物を分離ユニット(即ち、蒸留塔など)に供給する。未反応の生成物は、ジェット又はディーゼル生成が最大限になるようさらに処理するために、反応システムへと再循環させてもよい。
【0070】
その他の実施形態は、当業者に明らかにされよう。
【実施例】
【0071】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を例示するために提供するものであり、本発明の範囲を限定するものであるとはいかようにも解釈すべきでない。
【0072】
(例)
【表1】

【0073】
(例1)
約300°F〜約775°Fの沸点範囲を有し、nDMで測定して73%の芳香族炭素成分を有する、軽質及び中質循環油(すなわち、例Aの供給原料A)のブレンドを、液空間速度(LHSV)が1.0L/時である触媒システムを備えた単一段階反応器に供給した。触媒システムを、生成物を生成するのに用いた。この触媒システムは、脱金属化触媒、水素化処理触媒、及び水素化/水素化分解触媒の層を備えていた。脱金属化触媒は、第VI族及び第VIII族金属、特に2重量%のニッケル及び6重量%のモリブデンを大孔径担体上に含んでいた。触媒をリンによって促進させた。水素化処理触媒は、大表面積アルミナの非酸性担体上でリンによって促進される第VI族及び第VIII族金属触媒からなるものであった。全金属は20重量%であった。水素化/水素化分解触媒は、大面積非晶質シリカアルミナ上の20重量%のニッケル/20重量%のタングステンからなる高活性卑金属触媒であり、その酸性度は、フッ化水素酸として2重量%のフッ化物を添加することにより高められたものであった。反応器の温度は650°Fであった。2130psigの圧力を有する水素を8000scf/bblのレートで反応器へ供給した。圧力差は0psiであった。反応生成物の収量を表1A及び1Bに示す。
【0074】
【表2】

【0075】
【表3】

【0076】
(例2)
280°Fの初沸点及び570°Fの終沸点を有し、nDMで測定して62%の芳香族炭素成分を有する、軽質循環油供給原料を、液空間速度(LHSV)が1.0L/時である触媒システムを備えた単一段階反応器に供給した。触媒システムを、生成物を生成するのに用いた。この触媒システムは、脱金属化触媒、水素化処理触媒、及び水素化/水素化分解触媒の層を備えていた。脱金属化触媒は、第VI族及び第VIII族金属、特に2重量%のニッケル及び6重量%のモリブデンを大孔径担体上に含んでいた。触媒をリンによって促進させた。水素化処理触媒は、大表面積アルミナの非酸性担体上でリンによって促進される第VI族及び第VIII族金属触媒からなるものであった。全金属は20重量%であった。水素化/水素化分解触媒は、大面積非晶質シリカアルミナ上の20重量%のニッケル/20重量%のタングステンからなる高活性卑金属触媒であり、その酸性度は、フッ化水素酸として2重量%のフッ化物を添加することにより高められたものであった。2250psigの圧力を有する水素を8000scf/bblのレートで反応器へ供給した。反応器の温度は700°Fであった。圧力差は0psiであった。反応生成物の収量を表2Aに示す。
【0077】
【表4】

【0078】
反応生成物は蒸留され、125BTU/ガロンより高い体積エネルギーを有する、高正味体積エネルギージェット生成物のみを得た。生成物の性質を表2Bに示す。
【0079】
【表5】

【0080】
例1の場合と同様に、ジェット燃料の正味体積エネルギーは129BTU/Galであり、市販の燃料の場合に典型的な125BTU/ガロンよりも実質的に高い。
【0081】
(例3)
例3で用いる供給原料は軽質循環油であって、283°Fの初沸点及び572°Fの終沸点並びにnDMで測定したときに60%の芳香族炭素成分を有しており、それを、触媒システムを備えて液空間速度(LHSV)が1.0L/時である反応器に供給した。触媒システムを用いて生成物を生成した。この触媒システムは、脱金属化触媒、水素化処理触媒、水素化/水素化分解触媒、及び第2水素化処理触媒の層を備えていた。脱金属化触媒は、第VI族及び第VIII族金属、特に2重量%のニッケル及び6重量%のモリブデンを大孔径担体上に含んでいた。触媒をリンによって促進させた。水素化処理触媒は、大表面積アルミナの非酸性担体上でリンによって促進される第VI族及び第VIII族金属触媒からなるものであった。全金属は20重量%であった。水素化/水素化分解触媒は、シリカ/アルミナ担体に担持された、20重量%ニッケル/20重量%モリブデン触媒からなる高活性卑金属触媒であり、そこにゼオライトが20重量%まで添加された。全金属は20重量%であった。さらに、同じ水素化処理触媒(すなわち、大表面積のアルミナ上に担持されたニッケル/モリブデン/リン)のポスト層を、触媒システムに加えた。ポスト層中の全金属は約20重量%であった。圧力が2250psigの水素を反応器に、6000scf/bblのレートで供給した。反応器の温度は680°Fであった。圧力差は0psiであった。反応生成物の収量を表3Aに示す。
【0082】
【表6】

【0083】
反応器生成物を蒸留して、体積エネルギーが125BTU/ガロンよりも高い高正味体積エネルギー・ジェット生成物のみを生成した。表3Bに、生成物品質を示す。
【0084】
【表7】

【0085】
例1の場合と同様に、ジェット燃料の正味体積エネルギーは130BTU/Galであり、市販の燃料の場合に典型的な125BTU/ガロンよりも実質的に高い。
【0086】
図1は、正味燃焼熱についてのジェット燃料組成物の効果を示している。D2789で測定されるように、芳香族、ナフテン類、及びパラフィン類成分によって測定されるオレフィンフリージェット燃料の炭化水素組成物を調べるのに、三角図を利用した。この図には、炭化水素組成物の一機能として、ASTM D4529で測定した正味燃焼熱定線も含まれている。図1で示したように、三角炭化水素図に描いた実際の正味燃焼熱から、これらの線を求めた。
【0087】
図1にプロットしたデータを、表4に要約した。表4には、汎用ジェット燃料の比較データも含まれている。見て分かるように、本発明のジェット燃料組成物の高体積エネルギー密度ジェット燃料(HVEDJF)は、算出正味燃焼熱が、ASTM D4529で測定される汎用ジェット燃料よりも約4KBTU/Gal高い。この算出値は、水素成分により訂正される実験値を支持している。
【0088】
【表8】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)22体積%未満の芳香族成分、
(b)少なくとも72体積%のシクロパラフィン成分、
(c)28体積%未満のノルマル+イソパラフィン成分、
(d)少なくとも128000Btu/galの正味燃焼熱、
(e)ASTM D1322で19mm超の煙点、並びに、
(f)ASTM D3241で、25mmHg以下のフィルタ圧力損失、290℃超の破壊温度及び3未満の全管堆積等級、を特徴とするJFTOT熱安定性、
を有するジェット燃料組成物。
【請求項2】
(a)10〜20体積%の芳香族成分、
(b)約80〜約90体積%のシクロパラフィン成分、
(c)10体積%未満のノルマル+イソパラフィン成分、
(d)少なくとも128000Btu/galの正味燃焼熱、
(e)ASTM D1322で19mm超の煙点、並びに、
(f)ASTM D3241で、25mmHg以下のフィルタ圧力損失、290℃超の破壊温度及び3未満の全管堆積等級、を特徴とするJFTOT熱安定性、
を有するジェット燃料組成物。
【請求項3】
ジェット燃料を作製する方法であって、
(a)少なくとも50体積%のFCC循環油を含有する供給原料を水素化処理して高密度ジェット燃料を生成する工程、
を含む方法であり、
該燃料は、
(i)22体積%未満の芳香族成分、
(ii)少なくとも72体積%のシクロパラフィン成分、
(iii)28体積%未満のノルマル+イソパラフィン成分、
(iv)少なくとも128000Btu/galの正味燃焼熱、
(v)ASTM D1322で19mm超の煙点、並びに、
(vi)ASTM D3241で、25mmHg以下のフィルタ圧力損失、290℃超の破壊温度及び3未満の全管堆積等級、を特徴とするJFTOT熱安定性、
を有する、
方法。
【請求項4】
ジェット燃料を作製する方法を対象とし、該方法は、
(a)少なくとも50体積%の芳香族を含有する供給原料を水素化処理して高密度ジェット燃料を生成する工程、
を含み、
該燃料は、
(i)22体積%未満の芳香族成分、
(ii)少なくとも72体積%のシクロパラフィン成分、
(iii)28体積%未満のノルマル+イソパラフィン成分、
(iv)少なくとも129000Btu/galの正味燃焼熱、
(v)ASTM D1322で19mm超の煙点、並びに、
(vi)ASTM D3241で、25mmHg以下のフィルタ圧力損失、290℃超の破壊温度及び3未満の全管堆積等級、を特徴とするJFTOT熱安定性、
を有する、
方法。
【請求項5】
ジェット燃料組成物のネネルギー密度を増加させる方法であって、該方法は、
(a)127000Btu/gal以下のネネルギー密度を有するジェット燃料組成物を、
(b)下記特徴を有するジェット燃料組成物と、
混合する工程を含み、
その特徴とはすなわち、
(i)22体積%未満の芳香族成分、
(ii)少なくとも72体積%のシクロパラフィン成分、
(iii)28体積%未満のノルマル+イソパラフィン成分、
(iv)少なくとも129000Btu/galの正味燃焼熱、
(v)ASTM D1322で19mm超の煙点、並びに、
(vi)ASTM D3241で、25mmHg以下のフィルタ圧力損失、290℃超の破壊温度及び3未満の全管堆積等級、を特徴とするJFTOT熱安定性、
である、
方法。
【請求項6】
ジェット燃料ブレンドストックであって、それは、
(a)127000Btu/gal以下のネネルギー密度を有するジェット燃料組成物、及び、
(b)下記特徴を有するジェット燃料組成物、
を含有し、
その特徴とはすなわち、
(i)22体積%未満の芳香族成分、
(ii)少なくとも72体積%のシクロパラフィン成分、
(iii)28体積%未満のノルマル+イソパラフィン成分、
(iv)少なくとも129000Btu/galの正味燃焼熱、
(v)ASTM D1322で19mm超の煙点、並びに、
(vi)ASTM D3241で、25mmHg以下のフィルタ圧力損失、290℃超の破壊温度及び3未満の全管堆積等級、を特徴とするJFTOT熱安定性、
である、
ジェット燃料ブレンドストック。


【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−506481(P2012−506481A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533287(P2011−533287)
【出願日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【国際出願番号】PCT/US2009/061427
【国際公開番号】WO2010/048251
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(503148834)シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド (258)
【Fターム(参考)】