説明

高ゲル強度ジェランガムの新規用途

【課題】高ゲル強度ジェランガムを用いたゲル強度付与剤、耐熱性付与剤、または懸濁安定剤、ならびに該高ゲル強度ジェランガムを含有する食品、医薬品、化粧品およびパーソナルケア用製品を提供する。
【解決手段】高ゲル強度ジェランガムまたは該ジェランガムを含有する組成物により課題を達成する。該高ゲル強度ジェランガムは、ジェランガム0.2重量%、乳酸カルシウム0.0616重量%(Ca2+として0.008重量%)の条件下において、レオメーターで測定した破断強度が1.3N以上である。高ゲル強度ジェランガムを含有する組成物は、キサンタンガム等の他の多糖類を含有してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高ゲル強度ジェランガムを用いた新規用途に関する。具体的には、高ゲル強度ジェランガムを用いたゲル強度付与剤、耐熱性付与剤、または懸濁安定剤、ならびに該高ゲル強度ジェランガムを含有する食品、医薬品、化粧品およびパーソナルケア用製品を提供する。
【背景技術】
【0002】
ジェランガムは、ゲル化作用を有することから、食品、医薬品、化粧品、パーソナルケア製品のゲル化剤として、ゲル状態を形成した食品(例えば、ゼリー、プリン、ジャム、みつ豆、ドリンクゼリー、とろみ剤(嚥下・咀嚼補助食品)など)、ゼリー状に固めた中に医薬品を含有する医薬品組成物、ゲル状態で使用する化粧品(例えば、芳香剤など)およびパーソナルケア製品などに使用されている。
【0003】
一般に、食品、医薬品、化粧品およびパーソナルケア製品におけるゲルの形成には、寒天、ゼラチン、ジェランガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、微結晶セルロース、カードラン、澱粉などの天然高分子、あるいはCMC、またはメチルセルロースなどの合成高分子が使用されている。
【0004】
これらのゲルの形成には、例えば、ネイテイブジェランガムおよびタマリンドシードガムまたはタラガムおよびグルコマンナン等の多糖類の組み合わせや、特殊なキサンタンガムとカラギナン、グルコマンナンおよびローカストビーンガムを組み合わせたドリンクゼリー用ゲル化剤などの組み合わせが開示されている(特許文献1および特許文献2)。
【0005】
2種類以上のゲル化剤を組み合わせて、ゲル強度を増加させる試みがなされているが、相乗的にゲル強度を増加させることができる組み合わせは多くなく、またそれによって得られるゲル強度のレベルは必ずしも満足のいくものではない。
【0006】
また、食品を加工する場合には加熱することが多く、流通に供する加工食品においては、殺菌操作が通常行われている。他方、食品成分および多くの増粘剤、安定剤、またはゲル化剤として用いられる多糖類、ゼラチン、蛋白質成分は、加熱によって粘度が減少したり、形成するゲルの強度が減少する。
【0007】
そのため実用的には、加熱による品質の劣化が生じたり、劣化の程度を抑えるため、あらかじめ所定量より多い添加量を加えることにより、粘度やゲル強度の低下に対応する。同様に医薬品、化粧品、パーソナルケアケア製品などにおいてもゲルや液状の形態のものでは加熱によってその性状や物性が変化することが多く、それらの成分が熱に弱い。これらは、増粘剤などとして用いられる多糖類などが耐熱性に欠けるため、加熱によってその物性が変化または劣化してしまう。
【0008】
例えば、カラギーナンはゲル化剤としてデザートゼリーやプリンに広く使われているが、とくに果汁が入ったゼリーのような酸性下で殺菌をすると、いわゆる耐熱耐酸性が弱く、殺菌によりゲル強度が大幅に低下するという問題がある。また、中性での高熱殺菌、例えばレトルト殺菌やUHT殺菌においても熱により性能品質の低下が発生する点に問題がある。これらの問題点を解決するために、下記手段が知られている。
【0009】
具体的には、LMペクチン、アルギン酸塩類、またはジェランガムのような耐熱性の高いゲル化剤をゲル化剤として用い、耐熱性のゲル状食品を作る方法が知られている。これらのゲル化剤は2価のイオン(例えば、カルシウムイオン)と反応して不可逆性のゲルを作るが、反応の制御が必要であり、所定のカルシウムイオンの存在下、所定の時間反応させる必要がある(特許文献3)。
【0010】
前記の手段では、LMペクチン、アルギン酸塩類、またはジェランガムを用いたゼリーを飲料に入れて殺菌するような場合、レトルト殺菌では形が崩れ、また耐熱性を上げるために、これらの添加量あるいは、カルシウムイオンの添加量を多くした場合は、フレーバーリリースや食感が悪くなるという問題がある。
【0011】
また、2価のイオンを用いない手段としては、ジェランガムとゼラチンを1:20ないし1:40で混合した混合物が知られている。これはゼラチンの冷蔵後ゲル化までの時間を短縮することが目的であるが、耐熱性の向上や安定性の改善において十分ではない(特許文献4)。
【0012】
一方、食品、医薬品、化粧品、およびパーソナルケア製品において、固形物を液体中に均一に分散し、安定に懸濁させることは、製品の見栄えを良くし、製造時や使用時に均一な状態を保つ上で重要な技術である。
【0013】
例えば、ジェランガムを用いる懸濁安定剤が知られている。ジェランガム濃度として0.01%から0.15%が開示されているが,実施例としては0.03%ないし0.12%のジェランガムを含む飲料で、さらに金属イオン封鎖剤を含むこと、また急冷却とせん断が必要であることが開示されている(特許文献5)。
【0014】
しかしながら、汎用に固形物を長期間安定に保つことは容易ではなく、とくに安定性を高めるためセルロース(微結晶セルロース,微細セルロース)を高濃度に用いる場合が知られているが(特許文献6)、その場合には粘度が高くなり、ざらつきが生じたり、食感やフレーバーリリースが悪くなったりするという問題があった。またジェランガムやネイテイブジェランガムを用いた懸濁安定に関しても,安定性と粘度(食感)においてまだ満足できる技術が開発されていない。
【0015】
すなわち,ゲル状品のゲル強度を増加させ,それを安定に保ち、経時的にゲル強度が変化せず、劣化の少ないゲル化剤が求められている。またゲルに至らずとも、食品を高粘度に増粘させることが望まれている。加えて、食品や医薬用添加剤としての口溶けのよさや、医薬品の放出制御を十分に行い、または化粧品やパーソナルケアで使用感に優れたゲル強度の高いゲル化剤が待望されている。更に、ごくわずかの添加量で容易に耐熱性を付与することができ、粘度やゲル化力の低下を抑える耐熱性付与剤が求められている。
一方、従来よりもゲル強度が増加した、新規なジェランガムが開発されている。しかしながら、ゲル強度が増加したジェランガム(高ゲル強度ジェランガム)を用いた、ゲル化剤(ゲル強度付与剤)、耐熱性付与剤、または懸濁安定化剤は知られていない。加えて、これらの食品、医薬品、化粧品、またはパーソナルケア製品への応用は知られていない。
【0016】
【特許文献1】特開平10−215795号
【特許文献2】特開2005−176749号
【特許文献3】特開2003−180265号
【特許文献4】特許第2823241号
【特許文献5】特表平10−502246号
【特許文献6】特開平11−253114号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本願発明は、従来のゲル化剤よりもゲル強度が増加し、耐熱性が付与され、加えて、懸濁安定性が付与された、高ゲル強度ジェランガムを含有する組成物並びにこれを含む食品、医薬品、化粧品、またはパーソナルケア製品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者は、前記従来技術の問題点を考慮した上で、「高ゲル強度ジェランガム」の基礎物性について鋭意検討した結果、「高ゲル強度ジェランガム」が、ゲル強度付与剤、耐熱性付与剤または懸濁安定化剤として有用であることを見出した。
【0019】
すなわち、本発明は以下の通りである。
項1:高ゲル強度ジェランガムが、高ゲル強度ジェランガム0.2重量%、乳酸カルシウム0.0616重量%(Ca2+として0.008重量%)の条件下において、レオメーターで測定した破断強度が1.3N以上である高ゲル強度ジェランガム。
項2;項1に記載の高ゲル強度ジェランガムを含有する組成物。
項3:ゲル強度付与剤である項2に記載の組成物。
項4:耐熱性付与剤である項2または項3に記載の組成物。
項5:懸濁安定剤である項2〜項4のいずれか一項に記載の組成物。
項6:キサンタンガム、タマリンドシードガム、寒天、ゼラチン、ジェランガム、ネイテイブジェランガム、グァーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、ペクチン、アルギン酸、アルギン酸塩類、サイリウムシードガム、カードラン、タラガム、微結晶セルロースおよび大豆多糖類からなる群から選択される少なくとも1種類の多糖類を含有する項5に記載の組成物。
項7:前記多糖類が、タマリンドシードガム、寒天、ゼラチン、ネイテイブジェランガムまたはカラギーナンである項6に記載の組成物。
項8:項1に記載の高ゲル強度ジェランガム、または項2〜項5のいずれか一項に記載の組成物を含有する食品、医薬品、化粧品、またはパーソナルケア製品。
項9:項1に記載の高ゲル強度ジェランガムとネイテイブジェランガムを含み、該成分を同時に充填を行うことができる界面が完全に分離した多層ゼリーの製造方法。
項10:項1に記載の高ゲル強度ジェランガム、または項2に記載の組成物を含有することを特徴とするゲル強度付与方法。
項11:項1に記載の高ゲル強度ジェランガム、または項2に記載の組成物を含有することを特徴とする耐熱性付与方法。
項12:項1に記載の高ゲル強度ジェランガム、または項2に記載の組成物を含有することを特徴とする懸濁安定方法。
【発明の効果】
【0020】
本願発明に係る高ゲル強度ジェランガムまたは組成物を用いることにより、ゲル状物のゲル強度の増加、耐熱性の付与、懸濁安定化が可能になる。すなわち、食品の賞味期限を長く設定でき、チルド流通・保管(低温)が必要であった食品を常温流通・保管するような食品の設定ができる。加えて、製品の見栄えのよいパーソナル製品を提供できる。本発明における高ゲル強度ジェランガムを用いれば、ごくわずかの添加量でゲル化させることができる。また少量の本品を添加することで、現在使用しているゲル化剤の強度を上げることができるので、ゲル状物の構成に有効である。加えて、添加量が少なくてすむので、作業性が改善でき、最終的に得られるゲル状食品はフレーバーリリースが良好で、経口で用いる食品では用いる素材の風味や食感が有効に発現でき、また独特の粘さや糊感が少ない。また化粧品やパーソナルケア製品では、肌触りの良好な使用感に優れた製品が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下本発明について詳述する。
本発明における「高ゲル強度ジェランガム」は、微生物スフィンゴモナスが菌体外に産出する多糖類で,(1→3)β−D−グルコース,(1→4)β−D−グルクロン酸,(1→4)β−D−グルコース,(1→4)α−L−ラムノースからなる構成単位が直鎖状に結合した主鎖骨格を有する高分子の多糖類である。しかし、従来の「ジェランガム」とは、ゲル強度の観点において、全くその物理的性質が異なる。
【0022】
本発明における「高ゲル強度ジェランガム」とは、市場に入手可能な従来の「ジェランガム」(例えば、CPケルコ社が製造し、大日本住友製薬(株)がケルコゲルの商品名で販売するジェランガム)よりも、ゲル強度が増強したジェランガムを意味する。具体的には、「高ゲル強度ジェランガム」を最終濃度が0.2重量%になるように、脱イオン水に分散溶解し、加熱した後、乳酸カルシウムを最終濃度が0.0616重量%(Ca2+として0.008重量%)になるように添加し、冷却後一夜放置する条件下において、レオメーターで測定した該組成物の破断強度が1.3N以上のゲル強度を有することを意味する。一方、通常のジェランガム(以下、単にジェランガム、またはスタンダードジェランガムと称することもある。)では、同条件ではほぼ0.6〜1.0Nの破断強度を有する。従って、スタンダードジェランガムの物理的性質、すなわち、ゲル強度を大幅に向上させ、スタンダードジェランガムとは異なるジェランガムのことを、本明細書において、「高ゲル強度ジェランガム」という。尚、「高ゲル強度ジェランガム」には、脱アセチル化されたもので、スタンダードジェランガムのアセチル基が残存する「ネイティブジェランガム」は包含されない。
【0023】
本発明における「高ゲル強度ジェランガム」は、市販で入手できる製品であればいずれでもよい。特に、CPケルコ社が製造し、大日本住友製薬(株)がケルコゲルHP−Tの商品名で販売する「高ゲル強度ジェランガム」(以下、本品と称する場合もある。)が好ましい。
【0024】
本発明における「高ゲル強度ジェランガムを含有する組成物」(以下、本発明に係る製品と称する場合もある。)は、「高ゲル強度ジェランガム」に加えて、必要に応じて、多糖類、澱粉、加工澱粉、ゼラチン、合成高分子(CMC、メチルセルロースなど)、色素、香料、甘味料、酸味料、酸化防止剤、イオン(カルシウムやカリウムの塩)、イオン封鎖剤(クエン酸三ナトリウムやピロリン酸四ナトリウムなど)などを含んでも良い。
【0025】
「多糖類」としては、例えば、キサンタンガム、タマリンドシードガム、寒天、ジェランガム、ネイテイブジェランガム、グァーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、ペクチン、アルギン酸、アルギン酸塩類、サイリウムシードガム、カードラン、タラガム、微結晶セルロース、大豆多糖類などが挙げられる。「高ゲル強度ジェランガム含有組成物」は、前記一群から選択される異なる2種以上の多糖類またはゼラチンまたは澱粉を含有しても良い。
【0026】
「甘味料」としては、例えば、スクロース、フルクトース、デキストロース、マルトース、ラクトース、異性化液糖のような糖類及び、糖アルコール類(ソルビトールなど)などが挙げられる。該「甘味料」には、高甘味度甘味料も包含される。「高甘味度甘味料」としては、例えば、サッカリン、ステビア、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム、ネオテームなどが挙げられる。
【0027】
「高ゲル強度ジェランガムを含有する組成物」における「高ゲル強度ジェランガム」の含有量は、組成物全量に対して、少なくとも、0.1重量%以上、好ましくは1.0重量%を含有していればよく、含有量が100.0重量%未満であればよい。すなわち、組成物全量1重量部に対して、高ゲル強度ジェランガムを少なくとも、0.001重量部以上、好ましくは0.01重量部以上含有されていればよく、含有量が1.0重量部を超えることがなければよい。該組成物には、「高ゲル強度ジェランガム」を水に溶解させた場合、すなわち、水溶液の状態も包含される。また、高ゲル強度ジェランガムを含んで製造する食品、医薬品、化粧品、またはパーソナルケア製品の全量に対しては、0.001〜3.0重量%、好ましくは、0.01〜1.0重量%が好ましい。詳しくは、用いる食品等に応じて、「高ゲル強度ジェランガム」の好適な含有量は異なるが、例えば、ゼリー類(コーヒーゼリー、フルーツゼリーなど)に用いる場合には、0.05〜1.0重量%が好ましく、飲料類(オレンジジュース、ココアなど)に用いる場合には、0.01〜0.2重量%が好ましい。
【0028】
「高ゲル強度ジェランガム」に他の「多糖類」を併用する場合には、「高ゲル強度ジェランガム」の1.0重量%に対して、他の「多糖類」を0.01重量%〜10重量%、好ましくは0.5重量%〜10重量%用いることが好ましい。
【0029】
「高ゲル強度ジェランガム」を多層ゼリーに用いる場合には、他の「多糖類」としてネイティブジェランガムが好ましい。「高ゲル強度ジェランガム」と「ネイティブジェランガム」の添加割合は、「高ゲル強度ジェランガム」の1.0重量%に対して、「ネイティブジェランガム」を0.1重量%〜10重量%、好ましくは0.5重量%〜10重量%用いることが好ましい。
【0030】
本発明における「食品」としては、例えば、プリン,ゼリー等のゲル状食品、ハム,ソーセージ等の畜肉製品、アイスクリーム等の冷菓、麺類、惣菜、嚥下補助食品、果汁飲料,果肉飲料,清涼飲料,乳飲料,ココア、豆乳飲料,茶飲料,紅茶飲料,栄養飲料,野菜飲料,スープ等の飲料などが挙げられる。
【0031】
本発明における「化粧品」としては、例えば、毛髪化粧料、洗顔料、化粧水、ローション、ハンドクリーム、ファイシャルクリーム、ファンデーションなどが挙げられる。
【0032】
本発明における「パーソナルケア製品」としては、例えば、歯磨き、シャンプー、石鹸、芳香剤、消臭剤、カラーリンスなどが挙げられる。
【0033】
本発明における「ゲル強度付与」とは、既存のゲル化剤を用いるよりも、少ない添加量でゲル化することができ、従来のゲル化剤を使用した場合よりも、ゲル強度を上げることができることを意味する。また、他の多糖類(例えば、寒天、ゼラチン、カラギーナンなど)のゲル強度を、単独で用いる場合よりも、相加的効果以上のゲル強度が得られることを意味する。
【0034】
「本品」または「本発明に係る組成物」を食品等に用いることにより、ゲル化状物の構成に有効である。すなわち、添加量が少なくてすむので、作業性が改善でき、最終的に得られるゲル状食品フレーバーリリースが良好なゲル状食品を提供できる。また、経口で用いる食品に用いた場合には、用いる素材の風味や食感が有効に発現でき,また独特の粘さや糊感が少ない、食品を提供できる。また、化粧品やパーソナルケア製品に用いた場合には、肌触りの良好な使用感に優れた製品を提供できる。
【0035】
「ゲル化状物」とは、前記食品、医薬品、化粧品およびパーソナルケア製品に包含される。具体的には、ゼリー(多層ゼリーも含む),プリン,ジャム,みつ豆,心太,ヨーグルト,アスピックゼリー,ババロア,ムース,ミルクデザート,渦巻状ゼリー,ドリンクゼリー,惣菜ゼリー,羊羹,ぐみキャンデー,ゼリービーンズ,ホイップクリーム,冷菓,アイスクリーム,とろみ剤(嚥下・咀嚼補助食品)のようなゲル状態を形成した食品、ゼリー状に固めた中に医薬品を含有する医薬品組成物、ハンドクリーム,フェイシャルクリーム,シャンプー,口紅,マスカラなどのゲル状態で使用する化粧品、および芳香剤,消臭剤などのゲル状態で使用するパーソナルケア製品などをいう。
【0036】
本発明における「耐熱性付与」とは、既存の耐熱性付与剤を用いるよりも、少ない添加量で耐熱性を付与することができることを意味する。従って、「本品」または「本発明に係る組成物」を食品等に用いることにより、該食品等にごくわずかな添加量で耐熱性を付与することができ、加熱による粘度やゲル化力の低下を抑えることができる。また、耐熱性を付与することで殺菌等の加熱条件を上げることができるので、例えば、食品の賞味期限を長く設定でき、チルド流通・保管(低温)が必要であった食品を常温流通・保管するような食品を製造することができる。
【0037】
本発明における「懸濁安定」とは、固形物を液体中に均一に分散し、安定に内容物を懸濁させることにより、製造した製品の見栄えを良くし、製造時及び/又は使用時における内容物の均一状態を保つことを意味する。
【0038】
「本品」または「本発明に係る組成物」を食品等に用いることにより、該製品の内容物における固相成分の液相への分散性を向上させ、安定化機能を付与された製品を製造することができる。すなわち、不溶性の固形物を液相の中に均一に分散し、懸濁安定化することができる。
【0039】
「本品」または「本発明に係る組成物」は、懸濁状態の食品等に使用することができる。既に懸濁した食品としては、例えば、野菜・果実の繊維分,パルプ質,果肉,さのう,ココア粉末,抹茶粉末,カルシウム,ゼリー(ビーズ,破片)等を、飲料(乳酸飲料,果汁入り飲料,果汁,茶飲料,イオン飲料,スポーツ飲料,機能性飲料,ドリンクヨーグルト,ゼリー飲料)中に懸濁させた食品を意味する。また、前記には、繊維やゴマ,パルプ質などを、調味食品(ドレッシング,マヨネーズ,たれ等)に懸濁させた食品も包含される。加えて、各種固形物を含有したスープ,味噌汁,シチュー,カレー,濃厚流動食,とろみ剤(嚥下・咀嚼補助食品)なども包含される。
【0040】
「本品」または「本発明に係る組成物」を食品等に用いることで、従来の安定剤を用いる以上に、少ない添加量で懸濁安定化の効果を発揮するので、得られる製品のフレーバーリリースが良好で、食感に優れた液状食品等を製造することができる。
【0041】
「本品」または「本発明に係る組成物」を用いてゲル強度が付与された食品、医薬品、化粧品およびパーソナルケア製品は、一般に、工程1.「高ゲル強度ジェランガム」の粉末を他の粉末成分と混合した後、水に溶解する、工程2.得られる水溶液を85℃以上に加熱する、工程3.加熱後にシェアをかけながら25〜45℃まで冷却すること、あるいは水溶液を容器に充填後、冷却ゲル化後、シェアをかけることで製造することができる。また、「高ゲル強度ジェランガム」に加えて、他の多糖類等を添加する場合には、工程1.の混合時に添加すればよい。また、ゲル化速度や強度の制御の目的で、「高ゲル強度ジェランガム」の添加量、イオン(カルシウムやカリウムの塩)の添加量、イオン封鎖剤(クエン酸三ナトリウムやピロリン酸四ナトリウムなど)の添加量、または内容物の攪拌速度を適宜調整することができる。
【0042】
「本品」または「本発明に係る組成物」を用いて懸濁安定化された食品等は、
1.「高ゲル強度ジェランガム」と他の成分を「高ゲル強度ジェランガム」をゲル化する濃度以下の濃度・条件下で混合する、
2.「高ゲル強度ジェランガム」と他の成分を混合した後、一度生成したゲルをせん断する(例えば、物理的に破壊する、シェアをかける、または攪拌するなど)、または
3.「高ゲル強度ジェランガム」と他の成分を混合した後、ゲルを形成する途中で機械的攪拌を加えながら冷却することで製造することができる。前記3.の製造条件において、一般的に冷却温度は、「高ゲル強度ジェランガム」が完全にゲル化しない温度で行えばよく、通常0〜40℃、好ましくは5〜20℃まで冷却を行えばよい。なお,懸濁安定の目的で「高ゲル強度ジェランガム」を使用する際には,見かけ上,ゲルとゾル(溶液)の中間的な性質を持つ流体ゲル(あるいはフルイドゲル)と呼ばれる状態で使用するのが好ましい。「流体ゲル状態」とは、見た目は溶液状態であるが,微視的にはマイクロゲルというべき微細なゲル状態であることを意味する。
【0043】
「本品」または「本発明に係る組成物」を用いて、界面が交じり合わず明確な多層ゼリーは、
1.本品とネイテイブジェランガム(とくに透明タイプのネイテイブジェランガムが望ましい)を混合して、水溶液として調製する、
2.該水溶液を分注し、それぞれに異なる色素や果汁または香料を加える、
3.それぞれの溶液を抽入器(ノズルなど)を使用し、同時に容器に注入する(必要に応じて、横型複層、縦型複層、斜め型複層、渦巻き型などゼリーにするためのモールドをカップに取り付けてもよい。)、
4.適温に冷却することで製造することができる。「高ゲル強度ジェランガム」のゲル強度付与効果のため、同時に容器に注入しても液が混じりあわないため、界面が交じり合わない境界が明確な多層ゼリーを調製できる。
【実施例】
【0044】
以下に試験例、比較例および実施例を挙げ、本願発明をより詳細に説明する。本願発明は以下の実施例にのみ限定されるものではなく、本願発明の技術分野における通常の技術を用いる改変が可能である。
【0045】
(1)ゲル強度確認試験
本品のゲル化剤としての機能を調べるため、本品の低濃度領域および中〜高濃度領域において、カルシウムイオンを所定量添加した場合のゲル強度(破断強度)と弾力性(破断変形量)を調べた。すなわち、本品(ケルコゲルHP−T)を0.025%〜0.75%濃度で、脱イオン水に本品を分散溶解し、90℃,2分加熱後、5%乳酸カルシウム水溶液を本品0.025%〜0.1%では最終濃度0.77%、本品0.2〜0.75%濃度では最終濃度0.0616%となるように添加し、重量補正後、ゼリーカップに充填し、冷却後、10℃で一夜放置し、レオメーター(クリープメーター,(株)山電製)を用いて直径8mmのプランジャーで突き刺し試験を行い、破断強度および破断変形量を測定した。対照として、スタンダードグレードのスタンダードジェランガム(ケルコゲル,CPケルコ/大日本住友製薬)および寒天(ゲル強度600g/cm)を用いた。
【0046】
破断強度とは、ゲルに応力を加えた場合にゲルが破壊された際の応力のことを意味し、本測定値からゲル化剤のゲル強度(ゲルの固さ)の指標となる。破断変形量とは、ゲルに応力を加えた場合にゲルが破壊された際のゲルの変形量のことを意味し、本測定値からゲル化剤の弾力の指標となる。結果を第1表に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
破断強度の試験結果から、本品は、スタンダードジェランガムに比べて、1.2〜2倍のゲル強度を示すものであった。寒天に比べても実使用領域濃度でのゲル強度が高く、寒天の0.75重量%ゲル時におけると同等のゲル強度が、わずか0.2重量%で得られることがわかる。また、寒天ではゲル化しない低濃度でゲル化することがわかる。結果を第2表に示す。
【0050】
【表3】

【0051】
【表4】

【0052】
破断変形量の試験結果から、本品は、スタンダードジェランガムに比べて、弾力性に富むゲルでより寒天に近い食感を持つことがわかる。
【0053】
実施例1 寒天ゼリー
寒天(ゲル強度600g/cm)、スタンダードジェランガム(ケルコゲル,CPケルコ/大日本住友製薬)または本品(ケルコゲルHP−T)の所定量を水200gに分散後、加熱し、90℃で2分間攪拌後、5%乳酸カルシウム水溶液を最終濃度が0.0616%となるように加え、重量補正した後、ゼリーカップに充填し、冷却、10℃で一夜放置した。ゲル強度の測定はクリープメーター((株)山電製)を用いて直径8mmのプランジャーで突き刺し試験を行い、ゲル強度(破断強度)と弾力性(破断変形量)を評価した。使用濃度は寒天0.75%を基本処方とし、その一部をジェランガムまたは本品で置換した。第3表に結果を示す。
【0054】
【表5】

【0055】
【表6】

【0056】
第3表および図2より、寒天を約1/2置換した、寒天0.45%、本品0.30%の寒天ゲルでは、本品を用いることでゲル強度が2.4倍(3.36/1.40)、またスタンダードジェランガムによる置換と比べて1.6倍(3.36/2.15)と、増加した。本品により寒天ゲルのゲル強度を、大幅に増加させることがわかった。また直線で示した破断強度の理論値と比べて、本品の測定値は最大でほぼ2倍の値を示し、本品と寒天の相乗性がありゲル強度を増加させていることがわかった。本品を用いると、弾力性はスタンダードジェランガムに比べて本品が変形量が大きい、すなわち、よりゲルの弾力があり、より寒天に近いゲルの食感となり、寒天ゲルとして好ましいものであった。
【0057】
実施例2 ゼラチンゼリー
ゼラチン(ゲル強度250ブルーム)、スタンダードジェランガムまたは本品(ケルコゲルHP−T)の所定量を水200gに分散後、加熱し、90℃で2分間攪拌後、乳酸カルシウムを最終濃度0.0616%加え、重量補正した後、ゼリーカップに充填し、冷却、10℃で一夜放置した。ゲル強度の測定はクリープメーター((株)山電製)を用いて直径8mmのプランジャーで突き刺し試験を行い、ゲル強度(破断強度)と弾力性(変形量)を評価した。使用濃度はゼラチン1.0%を基本処方とし、その一部をスタンダードジェランガムまたは本品で置換した。第4表に結果を示す。
【0058】
【表7】

【0059】
【表8】

【0060】
第4表より、ゼラチンを40%置換した、ゼラチン0.60%、本品0.40%のゼラチンゲルでは、本品を用いることでゲル強度が9.4倍(1.41/0.15)、またスタンダードジェランガムによる置換と比べて1.9倍(1.41/0.73)と、増加した。また本品の使用はゼラチンのゲル強度を増加させるので、ゼラチン0.8%+本品0.2%の合計1.0%濃度であっても、ゼラチン2.0%ゲルよりも高いゲル強度を示し、より低濃度で使用が可能であることが示唆された。
【0061】
実施例3 カラギーナンゼリー
κカラギーナン(FMC社)または本品(ケルコゲルHP−T)の所定量を水200gに分散後、加熱し、90℃で2分間攪拌後、5%乳酸カルシウム水溶液を最終濃度0.0616%となるように加え、重量補正した後、ゼリーカップに充填し、冷却、10℃で一夜放置した。ゲル強度の測定はクリープメーター((株)山電製)を用いて直径8mmのプランジャーで突き刺し試験を行い、ゲル強度(破断強度)と弾力性(破断変形量)を評価した。使用濃度はカラギーナン1.0%を基本処方とし、その一部を本品で置換した。第5表に結果を示す。
【0062】
【表9】

【0063】
第5表より、カラギーナンを60%置換した、カラギーナン0.40%、本品0.60%のゲルでは、本品を用いることでゲル強度が4.8倍(4.88/1.02)と増加した。本品によりカラギーナンゲルのゲル強度を、相乗的に大幅に増加させることがわかった。
【0064】
実施例4 コーヒーゼリー入り飲料
第6表に示す処方でコーヒーゼリーを調製した。ゲル化剤を水に分散し、攪拌しながら加熱し90℃で5分間保持後コーヒーエキスを添加、冷却後、カップに充填し、冷却してゲル化させた後、3mm角のダイス状にカットした。このゼリー50gをコーヒー(コーヒー粉末2.8g,砂糖20g,水177.2g)飲料200gに添加し、121℃で20分レトルト殺菌した。このコーヒーゼリー入り飲料を官能評価に供した。
【0065】
【表10】

【0066】
【表11】

【0067】
第7表の結果に示す通り、本品を添加することにより、殺菌後もゼリーの形が完全に保たれ、かつフレーバーリリースの良い、良好な食感のゼリー入り飲料を調製することができた。一方、寒天を使用した場合はゼリーが殺菌で溶解してしまい、ゼリー入り飲料が調製できなかった。
【0068】
実施例5 寒天ゼリーの耐熱性付与
実施例1と同様に調製した寒天ゼリーを殺菌の目的で、95℃恒温槽に1時間、あるいは沸騰槽中に30分浸漬し、状態を観察した。第8表に結果を示す。
【0069】
【表12】

【0070】
【表13】

【0071】
寒天はもともと耐熱性に優れるが、本品は0.02〜0.03%の添加で、さらに寒天ゲルに耐熱性を付与することができ、95℃または沸騰時の殺菌を可能とした。
【0072】
実施例6 ゼラチンゼリーの耐熱性付与
実施例2と同様に調製したゼラチンゼリーを殺菌の目的で、40℃恒温槽に1時間浸漬し、状態を観察した。第9表に結果を示す。
【0073】
【表14】

【0074】
【表15】

【0075】
ゼラチンはもともと耐熱性が弱く、夏場のゲル強度の低下,だれ,溶解といった現象が見られるが、本品は0.02〜0.03%の添加で、ゼラチンゲルに耐熱性を付与することができ、夏場でのゼラチンゼリーの流通を可能にすることがわかった。
【0076】
実施例7 酸性カラギーナンゼリーの耐熱性付与
第10表の処方で調製した酸性カラギーナンゼリーを殺菌の目的で、85℃恒温槽に0,15,30,45分間浸漬した後冷却し、10℃で一夜保存した後、ゲル強度の測定をクリープメーター((株)山電製)を用いて直径8mmのプランジャーで突き刺し試験を行い、ゲルの硬さ(破断荷重)と弾力性(変形量)を評価した。比較例は、本品に代えてジェランガムを用いて酸性カラギーナンゼリーを調製した。第11表に結果を示す。
【0077】
【表16】

【0078】
【表17】

【0079】
カラギーナンは酸性下での耐熱性が弱く、酸性のゼリーを殺菌した場合のゲル強度の低下が問題であったが、本品はわずか0.05%の添加で、カラギーナンゲルの耐熱性を改善することができ、殺菌工程に有用であることがわかった。
【0080】
実施例9フルーツゼリー
第12表に示す処方で、フルーツゼリーを調製した。水に異性化液糖,砂糖,ゲル化剤(キサンタンガム0.05%,ローカストビーンガム0.05%,タマリンドシードガム0.1%,本品0.1%またはスタンダードジェランガム0.15%またはカラギーナン1.0%)を分散溶解後約90℃まで湯煎で加熱し、5分間保持後果汁及び香料を添加し、カップに充填後、85℃x30分殺菌後、室温で冷却しゲル化させた。比較例は、本品に代えて、ジェランガムおよびカラギーナンを用いてフルーツゼリーを調製した。
【0081】
【表18】

【0082】
【表19】

【0083】
第13表に示すとおり、本品を用いたゼリーでは、85℃x30分の加熱殺菌後もしっかりしたゲル状態を保ち、かたくてつるりとした、フレーバーリリースの良いものであった。一方、スタンダードジェランガムを使用したものでは、フレーバーリリリースに劣り離水があり、カラギーナンを使用したものでは、ゲルに十分な保型性がなく、食感、フレーバーリリースも良くないものであった。これらの差異は、本品は、本品特有の耐熱性付与効果を有するものの、スタンダードジェランガムおよびカラギーナンは、耐熱性付与効果がないことに起因する。
【0084】
実施例10 ドリンクゼリー
第14表に示す処方で、チアパックタイプのドリンクゼリーを調製した。水と液糖を混合したものに、撹拌しながら砂糖に分散したゲル化剤を添加、90℃で5分間加熱した。さらに残りの原料を添加後、重量補正して充填、85℃で20分間殺菌したあとペットボトルにホットパック充填し、シャワーにて冷却した後、25℃で3時間放置して、ペットボトル入りドリンクゼリーを得た。これを常温で1ヶ月保存後の食感およびゲルの状態を観察した。比較例は、本品の代わりにスタンダードジェランガム、寒天およびカラギーナンを用いてドリンクゼリーを調製した。
【0085】
【表20】

【0086】
【表21】

【0087】
第15表に示すとおり、本品を用いたゼリーでは、85℃x20分加熱殺菌してもしっかりしたゲル状態を保ちながら、つるりとした飲みごこちの良い、フレーバーリリースの良いものであった。一方、スタンダードジェランガムを使用したものでは、フレーバーリリリースに劣り離水があった。カラギーナンを使用したものでは、ゲルに十分な保型性がなく、食感、フレーバーリリースも良くないものであった。これらの差異は、本品は、本品特有の耐熱性付与効果を有するものの、スタンダードジェランガム、寒天およびカラギーナンは、耐熱性付与効果がないことに起因する。
【0088】
実施例10 オレンジジュース
第16表に示す処方でオレンジジュースを調製した。水に本品を添加、分散し、攪拌しながら加熱し90℃で5分間保持後残りの成分を添加、ペットボトルにホットパック充填した。これを25℃で30日保存して、パルプ質の懸濁状態を観察、,食感を官能評価で調べた。比較例は、本品の代わりにスタンダードジェランガム、ネイティブジェランガムおよびキサンタンガムを用いてオレンジジュースを調製した。
【0089】
【表22】

【0090】
【表23】

【0091】
第17表の結果に示す通り、本品を添加することにより、分散性が良く、飲みごこち、食感も良好で、分離や沈殿を生じない安定なオレンジジュースを調製できた。この結果から、「高ゲル強度ジェランガム」は、その他の多糖類(スタンダードジェランガム、ネイティブジェランガム、またはキサンタンガム)に比べて、食感を維持しつつ、分散性および懸濁安定性に優れたオレンジジュースを提供できる。
【0092】
実施例11 ココア飲料
第18表に示す処方でココア飲料を調製した。5Lのステンレスビーカーに水道水を3kg入れ、スリーワンモーター(プロペラ攪拌羽根,400rpm)を用いて10分攪拌し、安定剤(微結晶セルロース・アビセルCL611および本品またはジェランガム)を分散させた。さらに加熱しながら攪拌を続け、ココアパウダー、牛乳、砂糖、食塩、乳化剤を溶解させ(400rpm,80℃達温,10分)、TKホモミキサーで予備乳化(10000rpm,5分)後、重量補正し、UHT殺菌(1次加熱(80℃)→ 圧力ホモジナイザー(150+50kgfcm2)→ 2次加熱(140℃,ホールド時間45秒))のあと10℃まで冷却して、ペットボトルに無菌充填した。これを10℃および55℃で保存後、ココア粒子の沈殿状態と上部のクリーミングを観察した。
【0093】
【表24】

【0094】
【表25】

【0095】
【表26】

【0096】
第19表の結果に示す通り、本品を添加することにより、10℃および55℃保存において、ココア粒子が全く沈殿せずクリ―ミングも起こらない、飲みごこち、食感も良好なココア飲料が調製できた。
【0097】
実施例12 同時充填可能な多層ゼリー
第26表に示す処方で、多層ゼリーを調製した。水に異性化液糖、砂糖の一部に混合した、ゲル化剤(本品0.12%および透明タイプネイテイブジェランガム・ケルコゲルHT0.07%)を分散後約90℃まで加熱して5分間保持して溶解後、残りの成分を添加し、溶液を3等分し、それぞれに色素を添加した後60℃まで冷却し、これを3つの抽入器に分注した。カップにモールドをセットし、それぞれに抽入器からカップに同時に抽入充填後、すぐにモールドを引き抜き冷却して多層ゼリーを調製した。このゼリーは同時充填でもそれぞれの液が混じらず均一に充填でき、それぞれの界面同士が結合し界面のきれいなものであった。またこれをさらに85℃x30分殺菌しても、その耐熱性のためゲルが溶解しないので、各層が混じらず界面が完全に分離してきれいな状態を保持していた(図3)。食感的にも口どけがよく、フレーバーリリースに優れるゼリーが調製できた。
【0098】
【表27】

【産業上の利用可能性】
【0099】
「本品」または「本発明に係る組成物」を用いることにより、ゲル状物のゲル強度の増加剤、耐熱性の付与、懸濁安定化が可能になる。すなわち、本発明のおける高ゲル強度ジェランガムを用いれば、ごくわずかの添加量でゲル化させることができる。また少量の本品を添加することで、現在使用しているゲル化剤の強度を上げることができるので、ゲル状物の構成に有効である。加えて、添加量が少なくてすむので、作業性が改善でき、フレーバーリリースが良好で、経口で用いる食品では用いる素材の風味や食感が有効に発現でき、また独特の粘さや糊感が少ないゲル状食品の提供に有用である。また、肌触りの良好な使用感に優れた化粧品やパーソナルケア製品の提供に有用である。加熱殺菌時の製品の品質の劣化を抑えることができる。加熱殺菌のレベルを上げることにより食品の賞味期限を長く設定できたり、チルド流通・保管(低温)が必要であった食品を常温流通・保管するような食品の提供に有用である。加えて、さまざまな固形物や不溶性の成分を有効に浮遊させ懸濁安定させることによって、均一な製品の見栄えの良い食品や医薬品、化粧品、パーソナル製品の提供に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】1.5重量%までにおける多糖類濃度と破断強度の関係に関するグラフである。図面において、「クロひし形」は、高ゲル強度ジェランガム、「クロシカク」は、スタンダードジェランガム、「クロサンカク」は、寒天の各濃度におけるゲル強度を示す。
【0101】
【図2】高ゲル強度ジェランガム及びスタンダードジェランガムにおいて、寒天を併用した場合における各併用比率に対応する破断強度の関係に関するグラフである。特に、理論値と実測値の違いもグラフ上に示している。図面において、「クロひし形」は、高ゲル強度ジェランガムと寒天の併用におけるゲル強度(実測値)を示す。「クロシカク」は、スタンダードジェランガムと寒天の併用におけるゲル強度(実測値)を示す。尚、「−」は、高ゲル強度ジェランガムと寒天との併用におけるゲル強度の理論値を示し、「破線」は、スタンダードジェランガムと寒天との併用におけるゲル強度の理論値を示す。
【0102】
【図3】実施例12において、第26表に記載の処方で製造した多層ゼリーを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高ゲル強度ジェランガムが、高ゲル強度ジェランガム0.2重量%、乳酸カルシウム0.0616重量%(Ca2+として0.008重量%)の条件下において、レオメーターで測定した破断強度が1.3N以上である高ゲル強度ジェランガム。
【請求項2】
請求項1に記載の高ゲル強度ジェランガムを含有する組成物。
【請求項3】
ゲル強度付与剤である請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
耐熱性付与剤である請求項2または請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
懸濁安定剤である請求項2〜請求項4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
キサンタンガム、タマリンドシードガム、寒天、ゼラチン、ジェランガム、ネイテイブジェランガム、グァーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、ペクチン、アルギン酸、アルギン酸塩類、サイリウムシードガム、カードラン、タラガム、微結晶セルロースおよび大豆多糖類からなる群から選択される少なくとも1種類の多糖類を含有する項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記多糖類が、タマリンドシードガム、寒天、ゼラチン、ネイテイブジェランガムまたはカラギーナンである請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の高ゲル強度ジェランガム、または請求項2〜請求項5のいずれか一項に記載の組成物を含有する食品、医薬品、化粧品、またはパーソナルケア製品。
【請求項9】
請求項1に記載の高ゲル強度ジェランガムとネイテイブジェランガムを含み、該成分を同時に充填を行うことができる界面が完全に分離した多層ゼリーの製造方法。
【請求項10】
請求項1に記載の高ゲル強度ジェランガム、または請求項2に記載の組成物を含有することを特徴とするゲル強度付与方法。
【請求項11】
請求項1に記載の高ゲル強度ジェランガム、または請求項2に記載の組成物を含有することを特徴とする耐熱性付与方法。
【請求項12】
請求項1に記載の高ゲル強度ジェランガム、または請求項2に記載の組成物を含有することを特徴とする懸濁安定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−67886(P2009−67886A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−237564(P2007−237564)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000002912)大日本住友製薬株式会社 (332)
【Fターム(参考)】