説明

高コレステロール血症を処置するための薬剤及び機序

有効量の微生物発酵生成物を投与し、そしてリポタンパク質代謝に関わる遺伝子を制御することによる哺乳類の高コレステロール血症を処置する方法。PAZ、PAZから単離された特異的成分、及びPAZ成分の化学合成類似体からなる群から選ばれる有効量の組成物を投与し、そしてリポタンパク質代謝に関わる遺伝子の発現を制御することによる患者のコレステロールレベルを制御する方法。有効量の微生物発酵生成物を投与し、ABCA1、ApoA1及びSR−B1をエンコードする少なくとも一種の遺伝子の発現を上方制御し、そしてCETPをエンコードする遺伝子を下方制御することによる個体の高コレステロールを処置する方法。個体の高コレステロール及び/又は有害なリポタンパク質プロファイルの発症を防止する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、藻類からの抽出物に関する。本発明は、特に藻類からのコレステロール低減抽出物、及び哺乳類のHDL/LDLプロファイルを有利に変える能力を有する抽出物に関する。
【背景技術】
【0002】
コレステロールは、肝臓で作られる蝋様で脂肪様の物質であり、酪農製品、卵や肉のような動物性食品等の一定の食品中に見つかる。生体は、細胞膜を適切に機能させるためにある程度のコレステロールを必要とし、エスストロゲン等のホルモンビタミンDや、脂肪を消化して一定の老廃物を排泄するのを助ける胆汁酸を製造するために、コレステロールを必要とする。しかし、過剰な食事摂取量、過剰生産や過剰量の除去能力の減少のいずれであれ、あまりに多くのコレステロールが存在すると、心臓疾患等の健康問題が現れ得る。
【0003】
過剰量のコレステロールに存在すると、プラーク(厚く硬い沈着物)が体内動脈中に形成され、血液が心臓、脳及びその他の組織を流れるための空間を狭窄する。時間が経つと、この蓄積は、アテローム性硬化症(動脈の硬化)の原因となり、これは、心循環系疾患を引き起こす。酸素を運搬する血液が十分に心臓に達しないと、胸痛(例えば狭心症)となる。もし冠動脈の完全な閉塞により心臓部への血液供給が完全に遮断されると、これらは心臓細胞の障害と死を生じ、通常、心臓麻痺と呼ばれる事象が生じる。これは、通常、先の狭窄上に形成する血餅からくる突発的な閉塞による。
【0004】
リポタンパク質代謝は、アテローム班の蓄積であるアテローム形成の中核を演じる。リポタンパク質代謝は、脂質(特にコレステロール及びトリグリセリド類)の運搬やそれらの血液中で異なるリポタンパク質クラス間交換とともに、そのまわりに脂質が集まってリポタンパク質を形成するコアタンパク質(アポリポタンパク質と呼ばれる)のファミリーであるリポタンパク質レセプターが関与する複合的かつ互いに連動した一群のプロセスである。腸が食事脂肪を吸収し、それを乳状脂粒(大きなトリグリセリドリッチなリポタンパク質)の中に詰め、この乳状脂粒は血液を通って抹消組織へ運搬される。筋肉及び脂肪組織では、リポタンパク質リパーゼ酵素が乳状脂粒を破壊し、そして脂肪酸がこれらの組織中へ入る。乳状脂粒の残渣は、続いて肝臓により吸収される。肝臓は、脂質をApoBへ積み込み、そして極めて低密度のリポタンパク質(VLDL)を分泌する。VLDLは、リポタンパク質リパーゼによる脂肪分解を受け、低密度リポタンパク質(LDL)を形成する。次いで、LDLは、LDLレセプター(LDLR)への結合や他のパスウエイを介して肝臓へ取り込まれる。対照的に、高密度リポタンパク質(HDL)は、腸及び肝臓により脂質フリーApoA1の分泌を介して生成される。ApoA1は、その後、初期HDLを形成するトランスポーターABCA1の作用を介してこれらの器官からコレステロールを募り、そしてこれがApoA1を腎臓で迅速に分解されることから保護する。抹消組織では、初期HDLが、ABCA1の作用を介して、マクロファージを含む組織からのコレステロール流出を促進する。成熟HDLは、また、この流出を促進するが、それはABCG1の作用を介してである。(マクロファージでは、核内レセプターLXRが、ABCA1及びABCG1の両方の産生を上方制御する。)初期HDL内の遊離コレステロール(エステル化されない)は、成熟HDLを作るレシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ酵素(LCAT)によりコレステリルエステルへエステル化される。HDL中のコレステロールは、SR−BIレセプターによる取り込みを介して直接的に、そしてコレステロールエステル転移タンパク質(CETP)を介したLDL及びVLDLへの転換により非直接的に、肝臓へ戻される。HDLの脂質含量は、肝性リパーゼ及び内皮性リパーゼの酵素により、並びにCETP転移タンパク質及びHDL異化に影響するリン脂質転移タンパク質(PLTP)により、変更される。
【0005】
LDLは、動脈壁上へのプラークの蓄積を誘発し、それらの大量の存在は心臓疾患のリスクの指標となる。対照的に、HDLは、体がLDLを除去するのを助け、したがって心臓疾患を減じる。また、低レベルのHDLは、LDLを除去する本来の機序が減じるにしたがい、体を循環器系疾患のリスクにさらす。存在するLDL及びHDLの量にさまざまな因子が影響を与え、例えば食事、体重、運動、年齢、性別、糖尿病、遺伝及びその他の健康状態である。
【0006】
スタチン類は、高コレステロールの個体(individual)を処置するために最も普通に使用される。スタチン類は、ヒドロキシメチルグルタリル補酵素Aレダクターゼ(HMG−CoAレダクターゼ)酵素のインヒビターである。スタチン類は、HMGCoレダクターゼの抑制を介してコレステロール合成を減じ、そしてステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)を活性化する。SREBPは、ステロール応答因子(SRE)と結合する。これは、肝細胞性膜内のLDL−レセプターの発現増大とLDL分子の細胞内取込増大をもたらすLDL−R遺伝子の転写を上方制御する。スタチン類の使用には、ミオパシー、横紋筋融解−炎症増大、筋肉破壊及び腎負荷を含むいくつかの副作用が報告されている。いくつかのスタチン類、例えばリピトール及びクレストールは、CETPの機能を抑制するという付加的な有益な効果もまた示すようである。
【0007】
高コレステロールと戦うための他のいくつかの処置、特に栄養補助食品が開発されている。ω−3脂肪酸は効果的であるが、豊富かつ環境に優しい源を欠く。レスベラトロールは、植物により天然に生産されるきわめて一般的な処置である。アサイベリーもまた使用されるが、今、副作用が明らかになりつつある。コケモモ及び他の抽出物は、臨床研究で試験されている。クルクミン及びイソフラボノイド類もまた人気を獲得しつつある。これらのサプリメントのそれぞれの優先事項は、心血管リスク因子、コレステロール制御、精神機能及び体重減を改善することである。
【0008】
副作用を招くことなく、循環するコレステロールレベルを安全かつ効果的に減じ、そしてHDL/LDL比率を管理するための処置に対する需要が、依然として存在する。さらに、コレステロール及び/又はリポタンパク質代謝を遺伝子レベルで制御するような、有害な副作用の少ない及び/又は異なる機序による機能を有する、現在のスタチン類療法の代替需要が存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、有効量の微生物発酵生成物を投与し、そしてリポタンパク質代謝に関わる遺伝子を制御することによる患者の高コレステロール血症を処置する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、PAZ、PAZから単離された特異的成分、及びPAZ成分の化学合成類似体からなる群から選ばれる有効量の組成物を投与し、そしてリポタンパク質代謝に関わる遺伝子の発現を制御することによる患者のコレステロールレベルを制御する方法を提供する。
【0011】
本発明は、また、有効量の微生物発酵生成物を投与し、ABCA1、ApoA1及びSR−B1をエンコードする少なくとも一種の遺伝子の発現を上方制御し、そしてCETPをエンコードする遺伝子を下方制御することによる患者の高コレステロールを処置する方法を提供する。
【0012】
本発明は、さらに、PAZ、PAZから単離された特異的成分、及びPAZ成分の化学合成類似体からなる群から選ばれる有効量の組成物を投与し、リポタンパク質代謝に関わる遺伝子を制御し、そして高コレステロール発症を防止することによる高コレステロールの発症を防止する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明の他の利点は、以下の詳細な説明を参照し、添付図面を関連させて検討されるときに、より良好に理解される。
【0014】
【図1】図1は、ハムスターin vivo予防的実験モデルで行った動物試験の概要を示すフローチャートである。ここで、高脂肪食を用いて高コレステロールレベルを作り、コレステロール代謝を変更する能力について、PAZ及びPAZに由来し異なる化学特性に基づくフラクションの効果を評価した。
【0015】
【図2】図2は、水を与えたハムスター、及びPAZ、又はPAから単離したフラクションを含有する水を与えたハムスターに対する高脂肪食の平均食事摂取量(g)のグラフである(図1の凡例参照)。
【0016】
【図3】図3は、水を与えたハムスター、及びPAZ又はPAZから単離したフラクションを含有する水を与えたハムスターに対する試験中(週)の平均体重(g)のグラフである(図1の凡例参照)。
【0017】
【図4】図4は、水を与えたハムスター、及びPAZ又はPAZから単離したフラクションを含有する水を与えたハムスターに対する試験中(週)の平均水分摂取量(mL)のグラフである(図1の凡例参照)。
【0018】
【図5】図5は、高脂肪食を給餌したハムスターの総コレステロールレベル(mg/dL)について、PAZ及びPAZから単離したフラクションの効果を添加物無しの水と比較したグラフである。
【0019】
【図6】図6は、高脂肪食を給餌したハムスターのHDL−コレステロールレベル(mg/dL)について、PAZ及びPAZから単離したフラクションの効果を添加物無しの水と比較したグラフである。
【0020】
【図7】図7は、高脂肪食を給餌したハムスターの総コレステロールレベルとHDL−コレステロールレベルとの比率について、PAZ及びPAZから単離したフラクションの効果を添加物無しの水と比較したグラフである。
【0021】
【図8】図8は、高脂肪食を給餌したハムスターの非HDL(LDL)−コレステロールレベル(mg/dL)について、PAZ及びPAZから単離したフラクションの効果を添加物無しの水と比較したグラフである。
【0022】
【図9】図9は、高脂肪食を給餌したハムスターの血漿トリグリセリドレベル(mg/dL)について、PAZ及びPAZから単離したフラクションの効果を添加物無しの水と比較したグラフである。
【0023】
【図10】図10は、高脂肪食を給餌したハムスターのリポタンパク質プロファイルについて、PAZ及びPAZから単離したフラクションの効果を添加物無しの水と比較したグラフである。
【0024】
【図11】図11は、高脂肪食+PAZ及びPAZから単離したフラクションを給餌したハムスターのリポタンパク質組成のシフトを、高脂肪食+添加物無しの水を給餌したハムスターと比較した図示である。
【0025】
【図12】図12は、高脂肪食+PF3フラクションを給餌したハムスターのリポタンパク質組成のシフトを、高脂肪食+添加物無しの水を給餌したハムスターと比較した図示である。
【0026】
【図13】図13は、水又は無希釈PF4を添加した血清のCETP活性アッセイについて得られた結果の図示である。
【0027】
【図14】図14は、水又は無希釈PF4を添加した血清のPLTP活性アッセイについて得られた結果の図示である。
【0028】
【図15】図15は、水又はPF3(1:10希釈)を添加した血清のCETP活性アッセイについて得られた結果の図示である。
【0029】
【図16】図16は、水又はPF3(1:10希釈)を添加した血清のPLTP活性アッセイについて得られた結果の図示である。
【0030】
【図17】図17は、HMGCoAレダクターゼ活性について、スタチン類(プレバスタチン類)対PAZに由来するPF4フラクションの効果を比較する動力学アッセイの図示である。
【0031】
【図18】図18は、コレステロール転送におけるさまざまなタンパク質及びリポタンパク質の役割の描写である。
【0032】
【図19】図19は、定常(低脂肪)食+水(CW)の対照群と比べた、高脂肪食+完全(complete)PAZ(PP)、高脂肪食+一連のクロマトグラフィ工程でPAZから単離した一フラクション(PF4として照合)、又は高脂肪食+水(PW)を給餌したハムスター(4週予防的モデル)の肝臓中のコレステロール及びHDL代謝の制御に関わるキータンパク質をエンコードする遺伝子の発現の相対的レベルを測定するための定量的リアルタイムPCR(qPCR)実験から得られた結果の図示である。
【0033】
【図20】図20は、高脂肪食+添加物無しの水(PW)を維持した対照群と比べた、高脂肪食+完全PAZ(PP)又はPF4フラクションのいずれかを給餌したハムスター(4週予防的モデル)の肝臓中のコレステロール及びHDL代謝の制御に関わるキータンパク質をエンコードする遺伝子の発現の相対的レベルを測定するための定量的リアルタイムPCR実験から得られた結果の別の図示である。
【0034】
【図21】図21は、添加物無しで培養した対照細胞と比較した、二種類の異なるロットの完全PAZの少量を含有する培地中で培養したヒトHEPG2細胞中のCETPをエンコードする遺伝子の発現の相対レベルを測定するための定量的リアルタイムPCR実験で得られた結果の図示である。
【0035】
【図22】図22は、添加物無しで培養した対照細胞と比較した、完全PAZのさまざまな希釈物を含有する培地中で培養したヒトHEPG2細胞中のCETPをエンコードする遺伝子の発現の相対レベルを測定するための定量的リアルタイムPCR実験で得られた結果の図示である。
【0036】
【図23】図23は、ハムスターin vivo治療学的実験モデルの総コレステロールレベル(mg/dL)、HDL−コレステロールレベル(mg/dL)及びトリグリセリドレベル(TG)(mg/dL)について、PAZ及びPAZに由来するPF3フラクションの効果を、添加物無しの水と比較したグラフである。ここで、ハムスターは、最初に、高脂肪食を4週間給餌して高コレステロール血症を誘発させ、次いで、追加の21日間、高脂肪食+完全PAZ(1群1、G1)又はPAZに由来するPF3フラクション(2群、G2)で処置した。
【0037】
【図24】図24は、ハムスターin vivo治療学的実験モデルの血漿コレステロール対HDLコレステロールレベルの比率について、PAZ及びPAZに由来するPF3フラクションの効果を、添加物無しの水と比較したグラフである。ここで、ハムスターは、ハムスターは、最初に、高脂肪食を4週間給餌して高コレステロール血症を誘発させ、次いで、追加の21日間、高脂肪食+完全PAZ(1群1、G1)又はPAZに由来するPF3フラクション(2群、G2)で処置した。
【0038】
【図25】図25は、ハムスターin vivo治療学的実験モデルの肝臓中のAPOA1及びCETPタンパク質をエンコードする遺伝子の発現(qPCRを用いる)について、PAZ及びPAZに由来するPF3フラクションの効果を、添加物無しの水と比較したグラフである。ここで、ハムスターは、最初に、高脂肪食を4週間給餌して高コレステロール血症を誘発させ、次いで、追加の21日間、高脂肪食+完全PAZ(1群)、PAZに由来するPF3(2群)又は添加物無しの水(W、対照)のいずれかで処置した。
【0039】
【図26】図26は、ハムスターin vivo治療学的実験モデルの肝臓中のAPOA1及びCETPタンパク質をエンコードする遺伝子の発現(qPCRを用いる)について、PAZフラクション(PF3、PF4)、PF4とその後のさまざま処理の効果を、添加物無しの水と比較したグラフである。ここで、ハムスターは、最初に、高脂肪食を4週間給餌して高コレステロール血症を誘発させ、次いで、追加の7日間、高脂肪食+特定のPF3、PF4フラクション、PF4フラクションとそれに続く特定の処置、又は添加物無しの水のいずれかで処置した。
【0040】
【図27】図27は、in vivo治療学的実験モデルのハムスターで行った動物試験の概略を示すフローチャートであり、ここで、高コレステロールレベルを作るのに高脂肪食を使用し、そしてコレステロール代謝を変更する能力についてPAZのPF4フラクションの効果を評価した。
【0041】
【図28】図28は、高コレステロール血症を誘発するために高脂肪食を4週間給餌し、そして追加の21日間、高脂肪食+PAZのPF4フラクション又は添加物無しの水(対照)のいずれかで処置したハムスターのさまざまな時点の血漿総コレステロールレベル(mg/dL)に関するPAZのPF4フラクションの効果を添加物無しの水と比較したグラフである。
【0042】
【図29】図29は、高コレステロール血症を誘発するために高脂肪食を4週間給餌し、そして追加の21日間、高脂肪食+PAZのPF4フラクション又は添加物無しの水(対照)のいずれかで処置したハムスターのさまざまな時点の血漿HDLcレベル(mg/dL)に関するPAZのPF4フラクションの効果のグラフである。
【0043】
【図30】図30は、高コレステロール血症を誘発するために高脂肪食を4週間給餌し、そして追加の21日間、高脂肪食+PAZのPF4フラクション又は添加物無しの水(対照)のいずれかで処置したハムスターのさまざまな時点の血漿トリグリセリドレベル(mg/dL)に関するPAZのPF4フラクションの効果のグラフである。
【0044】
【図31】図31は、高コレステロール血症を誘発するために高脂肪食を4週間給餌し、そして追加の21日間、高脂肪食+PAZのPF4フラクション又は添加物無しの水(対照)のいずれかで処置したハムスターのさまざまな時点のさまざまな血漿脂質パラメータ(TC、総コレステロール;HDL;TG、トリグリセリド類;非HDL)の変化を比較するグラフである。
【0045】
【図32】図32は、ハムスターin vivo治療学的実験モデルの肝臓中のAPOA1及びCETPタンパク質をエンコードする遺伝子の発現(qPCRを用いる)について、PAZのPF4フラクションの効果を、添加物無しの水と比較したグラフである。ここで、ハムスターは、最初に、高脂肪食を4週間給餌して高コレステロール血症を誘発させ、次いで、追加の21日間、高脂肪食+PAZのPF4フラクション又は添加物無しの水(対照)のいずれかで処置した。ハムスター群を21日間の処置期間中のさまざまな時点(3日目、7日目、10日目、14日目及び21日目)に評価した。
【0046】
【図33】図33は、PAZのPF4フラクションのさまざまな血漿脂質パラメータに関する効果についてのさまざまな研究の結果を要約する表である。PF4ロット1/30及びPF4nロット3/30は、ハムスターに、高脂肪食+PAZロットの異なるPF4フラクションを給餌した(代表的な水の対照の結果は、カラムPW1に見られる)予防的実験モデルで得られた結果を表す。T21/PF4ロット3は、ハムスターに、高脂肪食を4週間給餌して高コレステロール血症を誘発させ、次いで、追加の21日間、高脂肪食+PAZのPF4フラクション又は添加物無しの水(PW2)のいずれかで処置した治療学的実験モデルから得られた結果を表す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明は、一般に、コレステロールレベルが高いかあるいは異常、すなわち高コレステロール血症を有する個体(すなわち、ヒトの患者又は動物)を、複合的微生物発酵生成物の使用を介して処置する方法を提供する。本発明は、より特定的には、複合的微生物発酵生成物の一定の成分が、コレステロール代謝パスウエイに影響を及ぼし、そしてリポタンパク質代謝に関わる遺伝子を制御することによる作用機序を提供する。
【0048】
「ProAlgaZyme(商標)」(PAZともいう)は、栄養補助食品として30年間にわたって使用された淡水性藻類生態系の新規な発酵生成物である。PAZは、最初は、1980年代の米国において伝説上の若返りの泉と関連してポンセ・デ・レオン・メディカル・ディベロップメント社(Ponce de Leon Medical Development Corp.)によりレーベンスツァイト(Lebenszeit、商標、ドイツ語で「生涯」を意味する)という名で販売された。製品は、2003年にはProAlgaZyme(登録商標、PAZ)として今日知られるものとなっている。浸出液(infusion)は、30年以上前に自然発生源の中に発見された淡水生物の独自開発ブレンドの水性発酵生成物であり、以来、管理された条件下で培養されてきた。本発明のProAlgaZyme水性抽出物又はPAZを生じる培養物の寄託物が、バージニア州、マナッサスのアメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)に寄託#PTA−5863として置かれている。ProAlgaZyme経口液体栄養補助食品(る発酵プロセス消耗型ろ液(consumable filtrate))は、典型的には、約90%の塩(検出限界<0.1ppmにて重金属フリー)及び有機成分の特異なブレンドからなる100ppm以下の全溶解固形物(total dissolved solids)を有する。PAZは、また、以前、植物浸出物(phyto−percolate)と呼ばれていた。
【0049】
PAZ成分は、以下に記載されるProAlgaZyme藻類発酵培地から単離することができ、あるいは、従来知られるすべての適当な方法によって製造することができる。PAZ及び誘導体を製造する適当な方法は、例えば微生物を用いて組換え又は天然にタンパク質を発現する、誘導体を合成的に製造する(すなわち、化学的(無細胞)合成)、あるいは、ATCC寄託#PTA−5863内に存在する培養培地又は一種以上の種の細胞内容物から誘導体又は活性化合物を抽出することが挙げられる。微生物を使用してPAZ又はその誘導体を製造する場合、すべての適当な天然に発生する又は組換えの微生物を使用可能である。PAZ又はその誘導体は、ATCC寄託#PTA−5863内に存在する天然発生種又はその組換えバリアントを用いて製造される。
【0050】
発明性を有するPAZを作る方法もまた開示する。PAZは、まず、ATCC寄託#PTA−5863内に見られる水性生物の混合物を培養することにより調製され、混合物は強化された藻類及び細菌培養液を形成する特別な栄養素ブレンドによって増大する。この強化培養物に添加されるものは、逆浸透、蒸留、脱イオン化又は他の手段で精製された精製淡水である。培養物を前記精製淡水及び栄養素ブレンドとともに、本質的に生物学的活性な抽出物を形成する所定の時間、インキュベートされる。強化された藻類及び細菌培養液から抽出物をデカンテーションし、次いで処理する。適当な抽出物処理方法には、ろ過、遠心分離、凍結乾燥、透析、精製、エバポレーション、濃縮、蒸留、処方(formulation)及び他の方法が挙げられる。デカンテーションされた抽出物の特別な一処理方法は、約0.22μmより大きい粒子を除去する精密ろ過である。
【0051】
本明細書に編入される米国特許出願第11/587,266では、PAZ源となる培養物を、ATCC寄託#PTA−5863中に見られる濃厚な藻類、苔、真菌及び細菌の細胞の約100〜200mL又は約0.1〜約500g以上(生体重)を約2.5ガロン(約10L)の脱イオン化ろ過水に入れたものでできている。この方法では、培養物は、蛍光灯又は全光束灯(full−spectrum lights)の下で12:12時間光/暗サイクル、約15〜37℃の間、特に25℃で育成される。培養物は、約2.5ガロン(約10L)の容積を有し、大気とのガス交換を可能にする半透明蓋の付いた透明ドラム形金魚鉢型容器内で育成される。培養物には活性生酵母(active live yeast)、又は37℃〜約43℃の無菌脱イオン化温水50mLに添加された1.0gの乾燥活性酵母から調製されているパン酵母(Saccharomyces cerevisiae)が与えられた。酵母混合物を攪拌し、室温で10〜30分間、あるいは若干泡立つまでインキュベートさせる。以下に定義するように、培養物が充満され、収穫される回数の間に、1回以上、約1mLの調製酵母混合物が各培養物に与えられる。他の酵母培養物及び方法を使用できることは、本発明の範囲内であると考えられる。さらに、従来技術で知られている他の培養条件、材料及び方法は、PAZ、その成分、活性化合物、及び誘導体の製造を支持するならば、使用可能と考えられ、それらは、多種培養物又は単一培養物、バッチ、半連続式、連続式又は他の培養系、バイオリアクター、光リアクター又は他の発酵技術、あるいは、他の適当なソース、支持体やキャリアーを含む。
【0052】
培養液又はPAZは、定期的に各培養物から上部を流し出すことにより回収することができる。このプロセスを「収穫」と呼び、得られる液体を「PAZ」、「ProAlgaZyme」又は「水性抽出物」と呼び、そしてそれをさらに処理にかけることができる。ここで、PAZが各培養物からデカンテーションされる間に実質的に乱されない培養容器底部に、培養物を形成する大部分の藻類細胞が残る。収穫するために、及び収穫後のデカンテーションされたPAZをろ過又はさらなる処理の前後にバッチ化するために、従来技術で知られるさまざまな材料及び方法を使用可能である。収穫後、PAZはろ過され、望むままに消費される。生理活性を有すること及び消費が安全であることがわかっている。育成容器の液容は、室温(約25℃)の逆浸透精製又は脱イオン化ろ過水を用いて元の容積へ戻すことができる。収穫、処理、精製や化合物単離の他の方法やシステムを、PAZ及びその誘導体の製造のために使用可能であると考えられ、適切なら、処理しないことを含む。さらに、PAZは、瓶詰め、濃縮、希釈、乾燥、あるいは他の材料(例えば別の方法で処理し、別の方法を採用する)とともに処方することができると考えられる。
【0053】
PAZから単離した個々の活性化合物及びそれらの合成等価物であって、本明細書に記載された他の疾患を処置する機能のほかに、患者のコレステロールレベルを下げるのに有効であるものを、単独で使用でき、あるいはそれらを組み合わせてもよい。好ましくは、PAZから単離され、及びPAZで特徴づけられる一種以上の物質であって、化学合成され及び不活性成分の不在の下で投与されるものに処置を限定することができる。
【0054】
本明細書で使用する「治療学的有効量」は、疾患状態又は健康状態(medical condition)の徴候を、好ましくは高いLDL又は総コレステロールレベル、及び低いHDLコレステロールレベルを緩和する本発明の組成物の量を意味する。さらに、投薬計画は、以下の例に見ることができる。好ましくは、PAZを、液状経口サプリメントとして投与するが、検分される活性を保証することが明らかである合成化合物の投与は、毎日、mg又はμgの範囲の濃縮物で経口的に投与されるカプセル形態と同様である。例えば、一般に、無徴候性の患者に1日当たり約1オンス以上、そして疾患患者に1日当たり3オンス以上投与することができる。さらに、投薬計画は、以下の例に見ることができる。
【0055】
本発明は、有効量の微生物発酵生成物を投与し、そしてリポタンパク質代謝に関わる遺伝子を制御することによる患者の高コレステロール血症を処置する方法を提供する。微生物発酵生成物、すなわち、PAZ、その単離成分、又はその化学合成類似体を投与することにより、リポタンパク質代謝及び/又はコレステロールに関わる一種以上の遺伝子を上方又は下方制御することができる。この方法を以下に詳細に説明する。
【0056】
本発明は、より特定的には、PAZ、PAZから単離された特異的成分、及びPAZ成分の化学合成類似体からなる群から選ばれる有効量の組成物を投与し、そしてリポタンパク質代謝に関わる遺伝子の発現を制御することによる患者のコレステロールレベルを制御する方法を提供する。前記組成物は、好ましくは、液状の経口サプリメントの形態であるが、本明細書に記載された他の形態も使用可能である。前記組成物は、また、機能性食品の形態でもあり得、又は食品添加物でもあり得る。前記組成物の投与は、好ましくは、毎日であるが、本明細書に記載された他の投与プロファイルを使用可能である。
【0057】
前記組成物を投与することによって、さまざまな遺伝子が上方制御及び下方制御される。ApoA1及びSRB1遺伝子の転写が上方制御され、一方、CETPをエンコードする遺伝子の転写が下方制御される。したがって、より一般には、ABCA1、ApoA1及びSRB1エンコードする少なくとも一種の遺伝子を上方制御する、及び/又はCETPをエンコードする遺伝子を下方制御することにより、高いLDL及び総コレステロール(TC)、並びに低いHDLコレステロールを処置することができる。より特定的には、PAZを投与することによって、TCレベルを下げることが可能であり、LDLレベルを下げることが可能であり、そしてHDLレベルを上げることが可能である。これらの遺伝子の上方制御及び下方制御は、患者から血漿又は血液サンプルを採取し、汎用の方法でTC、HDL及びLDLを分析する等のアッセイを行うことにより確認することができる。
【0058】
本発明は、また、有効量の微生物発酵生成物を投与し、ABCA1、ApoA1及びSR−B1をエンコードする少なくとも一種の遺伝子の発現を上方制御し、及び/又は、CETPをエンコードする遺伝子を下方制御することによる個体の高コレステロールを処置する方法を提供する。微生物発酵生成物は、上記したように、PAZ、PAZから単離された特異的成分、及びPAZ成分の化学合成類似体からなる群から選ばれる組成物である。微生物発酵生成物は、液状経口サプリメントの形態であるが、本明細書に記載された他の投与形態や投与プロファイルも使用可能である。上方制御及び下方制御が前に上記したように行われていることを確認するためにアッセイを行うことができる。
【0059】
本発明は、さらに、PAZ、PAZから単離された特異的成分、及びPAZ成分の化学合成類似体からなる群から選ばれる有効量の組成物を投与し、リポタンパク質代謝に関わる遺伝子を制御し、そして高コレステロールの発症を防止することによる高コレステロールの発症を防止する方法を提供する。これは、高コレステロールにかかるリスクをもつ個体がそれらを保護するための手段を講じる予防方法である。個体が、一旦、高コレステロールにかかるリスクにさらされると確認した場合、前記組成物の服用を開始することができる。前記組成物は、毎日投与され得る。前記組成物は、液状の経口サプリメント、機能性食品、又は食品添加物の形態であり得る。すべての他の投与形態や投与療法を使用可能である。
【0060】
以下の実施例で、遺伝子制御及びコレステロールレベルを測定するために、PAZ及びそのフラクションを用いたさまざまな試験を行っている。遺伝子制御の同様のパターンが、PAZそれ自体と比較して比較的少ない成分を含有する、一定のクロマトグラフィで精製されたフラクション(例えば、PF3及びPF4フラクション)で処置した動物に観測される。しかし、ApoA1をエンコードする遺伝子の発現は、PF3又はPF4単独よりもPAZでより顕著に強化され、これは、コレステロール代謝に関して有益な効果をもつ追加の成分がPAZ内に存在すること、あるいはこれらの二つのフラクション中の成分の相乗効果を示している。したがって、より一般には、高コレステロールは、ApoA1及び/又はSRB1を上方制御し及び/又はCETPを下方制御するために、PAZ又はそこに含有される化合物を用いて有利に処置することができる。
【0061】
PAZ及びPF4は、CETP及びHMGCoAレダクターゼタンパク質の機能活性についての直接の効果を試験しており、そして効果がないことがわかっている。さらに、このデータは、機序が転写レベルにあることを支持する(実施例2参照)。
【0062】
PAZ並びにPF3及びPF4成分がこれら三種類の遺伝子の一種以上のin vivoの発現を有利に変更すると証明された能力とは対照的に、培養ヒト肝臓細胞(HepG2)におけるコレステロール代謝に関わる遺伝子の発現を影響する能力を試験すると、CETPをエンコードする遺伝子の発現にのみ有意な変化が観測された。血管上皮細胞(HUVEC)でin vitro試験すると、得られた結果は一貫性がなく、そしてin vivoのコレステロール代謝で観測された有益な効果と一致しなかった。したがって、観測された活性は、それについて非自明であり、現代の製薬リサーチで採用する方法、すなわち、最初にin vitroで細胞株をスクリーニングする方法を用いてアプローチした時に、PAZは、コレステロール低減組成物としてさらに検討されることから除外されるであろう(実施例3参照)。
【0063】
PAZの全体効果を実施例1に示すが、それは、LDLだけでなく総血漿コレステロール(TC)を低減する。PAZは、また、HDLを有意に増大させ、それは、TC/HDL比率の改善を生じる。血漿コレステロールの変化は、また、リポタンパク質粒子でのシフトを伴う。これらの効果のそれぞれは、上記したように、特定の遺伝子の発現の上方制御及び/又は下方制御によって作られる。
【0064】
本発明の化合物を用いてハムスターで実験を行ったが、その結果は、ヒトで期待されるものを予測できる。ハムスターは、ヒトでのコレステロール代謝における候補薬の効能の予測に使用の好ましいモデルである。
【0065】
PAZ、若しくはPAZに由来する調製物又は化合物を、医師により適当とされる投薬計画に従って、毎日投与可能である。この処置は、病的コレステロールレベルをもつと診断された患者へ、コレステロールをより望ましいレベルへ持ってゆくための治療学的療法として提供可能である。別法として、該処置は、さまざまな因子によって、高い総及びLDLコレステロールレベル、及び低いHDLコレステロールレベルに進展する傾向の患者の予防的療法として提供可能であり、この場合、PAZを予防的処置として投与可能である。
【0066】
PAZは、また、機能性食品、又はさまざまな飲料又は他の食材中の食品添加物として投与可能である。
【0067】
本発明の主題であるPAZ、PAZに由来するフラクション、又はPAZの活性成分と等価又は類似する合成化合物は、個々の患者の臨床状態、投与部位及び方法、投与計画、患者年齢、性別、体重、及び医師が知る他の因子を考慮しながら、良質な診療行為に従って投与又は投薬される。したがって、本明細書で目的とする薬学的「有効量」は、当業分野で知られるような検討によって決定される。量は、生存率の改善やより迅速な回復、若しくは、兆候の改善又は消失、及び当業者によって適当な尺度として選択される他の指標を含む(しかし限定されない)改善を達成するのに効果的であるべきである。
【0068】
本発明の方法において、本発明の化合物は、さまざまな方法で投与可能である。それは、調剤として投与可能であり、そして単独に又は薬学的に許容可能な担体、希釈剤、アジュバント及びビークルと組み合わせる有効成分として投与可能であることが特記されるべきである。化合物は、経口的、皮下、又は静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、扁桃内及び鼻腔内投与、さらに髄腔内及び注入技術を含む非経口的に投与可能である。化合物のインプラントもまた有用である。処置される患者は、温血動物、特にヒトを含む哺乳類である。薬学的に許容可能な担体、希釈剤、アジュバント及びビークルとさらにインプラント担体は、一般に、不活性で無毒性の固体又は液体充填剤、希釈剤、又は本発明の有効成分と反応しないカプセル化材料を意味する。
【0069】
投与は、数日間にわたって単回投与又は複数回投与であり得る。処置は、一般に、疾患過程及び薬効の長さ、並びに処置される患者の種類に比例した長さを有する。
【0070】
本発明の化合物を非経口投与する場合、それは、一般に、単位投与量の注射剤型(溶液、懸濁液、乳濁液)に処方される。注射に適当な製薬処方には、無菌の水性溶液又は分散液、及び無菌の注射可能な溶液又は分散液に再構成するための無菌粉体が含まれる。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール等)、それらの適当な混合物、及び植物油を含有する溶剤又は分散媒体であり得る。
【0071】
適当な流動性は、例えばレシチンのようなコーチング(coating)の使用により、分散液の場合は要求される粒径の管理により、そして界面活性剤の使用により維持することができる。綿実油、ゴマ油、オリーブ油、大豆油、コーン油、ひまわり油、及びピーナッツ油等の非水性ビークル、ミリスチン酸イソプロピル等のエステルもまた、調剤組成物の溶剤系として使用可能である。さらに、抗菌性防腐剤、抗酸化剤、キレート化剤及び緩衝液を含む、前記組成物の安定性、無菌性及び等張性を強化するさまざまな添加物を添加可能である。微生物の作用の防止は、さまざまな抗菌性及び抗真菌薬、例えばパラベン類、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等により確保可能である。多くの場合、等張剤、例えば糖類、塩化ナトリウム等を含むことが望ましい。注射可能な薬剤形態の長びく吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの使用によりもたらされる。しかし、本発明によれば、使用されるすべてのビークル、希釈剤、又は添加剤は、化合物と親和性(compatible)である必要があろう。
【0072】
注射可能な無菌溶液は、本発明を実施する際に利用される化合物を、所望により他のさまざまな添加剤とともに必要量の適当な溶剤中に取り込むことにより調製可能である。
【0073】
本発明の薬理学処方は、さまざまなビークル、アジュバント、添加剤、及び希釈剤等のすべての親和性担体を含有する注射可能な処方で患者に投与可能であり、また、本発明で利用される化合物を、モノクローナル抗体、ベクター送達、イオン泳動、高分子マトリックス、リポソーム及びマイクロスフィア等の徐放性皮下インプラントや標的送達系の形態で非経口的に患者に投与可能である。本は発明に有用な送達系の例には、米国特許5,225,182;5,169,383;5,167,616;4,959,217;4,925,678;4,487,603;4,486,194;4,447,233;4,447,224;4,439,196;及び4,475,196が含まれる。多くの他のインプラント、送達系及びモジュールは、当業者に周知である。
【実施例】
【0074】
以下の実験的実施例を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例は、説明のためにのみ提供され、特に言及しない限り、限定的な意図ではない。したがって、本発明は、以下の実施例に限定されるよう解釈されるのではなく、むしろ、本明細書で提供される教示の結果として自明となるすべての変更を含むと解釈されるべきである。
【0075】
実施例1
【0076】
実験の特定の目的は、(a)生理活性は完全複合混合物を要求するかどうか、あるいはその成分の一又は数種によるものかを決定する、(b)このプロセスに由来するPFフラクションをin vitro(細胞培養物)及びin vivo(ハムスター)の実験モデル系で評価するために、クロマトグラフィ技術を採用して完全PAZ培養ろ過物をその化学及び物理特性に基づくフラクションに分離することであった。
【0077】
材料及び方法
【0078】
血漿コレステロール分析のために、以下のアッセイキットを使用した:
【0079】
ポインテ・サイエンティフィック社(Pointe Scientific)より:
【0080】
コレステロール液体(C7510−血漿総コレステロール用)
【0081】
トリグリセリドGPO液体試薬セット(T7531−血漿TG用)
【0082】
HDL/コレステロールMg/Dex(H7507−マグネシウム沈殿による血漿HDL用)
【0083】
和光社(Wako)より:
【0084】
遊離コレステロールE(435−35801)
【0085】
リン脂質C(433−36201)
【0086】
ProAlgaZymeTMをサブフラクションに分離した。
【0087】
F1:多くのタンパク質を捕獲するための弱陰イオン交換
【0088】
F2:カルボキシル基及び負に帯電したイオンをはじめとする負に帯電した他の官能基性を含有する分子を捕獲するための強陰イオン交換
【0089】
F3:アミノ基及び正に帯電したイオンをはじめとする正に帯電した他の官能基性を含有する分子を捕獲するための強陽イオン交換
【0090】
カラム4 非極性有機分子を結合するC18誘導(derivatized)カラム
【0091】
F4:採用した一連の樹脂(弱陰イオン交換、強陰イオン交換カラム、強陽イオン交換、及びC−18カラム)に対して通過する(結合しない)液体。この「通過」フラクションをPF4と呼び、これは、カラム4により捕獲されず、そしてまた、生体機能が評価された低極性分子とともに、極性であるが無電荷の有機分子を含む比較的少数の分子を含有する。
【0092】
研究デザインを図1に示す:
【0093】
HF:高脂肪食(30%カロリー、脂肪由来;飽和脂肪酸を含有するココナッツ油を主とし、+1%大豆油)
【0094】
PAZ:ProAlgaZymeTM(完全溶液)
【0095】
PF1、PF2、PF3及びPF4は、PAZをクロマトグラフィで分離したフラクションである。
【0096】
対照動物に、通常ハムスター飼料を給餌した。
【0097】
P:高脂肪食(30%カロリー、ココナッツ油由来)を意味する。
【0098】
PW:高脂肪食+水
【0099】
PP:高脂肪食+完全ProAlgaZymeTM(20mLを100mLに希釈)
【0100】
PF1:高脂肪食+ProAlgaZymeTMのフラクション1(5mLを100mLに希釈)
【0101】
PF2:高脂肪食+ProAlgaZymeTMのフラクション2(5mLを100mLに希釈)
【0102】
PF3:高脂肪食+ProAlgaZymeTMのフラクション3(5mLを100mLに希釈)
【0103】
PF4:高脂肪食+ProAlgaZymeTMのフラクション4(20mLを100mLに希釈)
【0104】
p値=PWに対する統計的有意差(One way ANOVA、STATPLUS);n=10/群
【0105】
p<0.05は、比較される2群間で、パラメータ(例えばTC)の平均値が統計的に相違することを暗示する。p値が低いほど、統計的有意差が高い。
【0106】
グラフ上、PWと比較して統計的に相違するカラムを、*(p<0.05)又は**(p<0.01)で表示した。
【0107】
要約:コレステロール血症予防的モデル系ハムスターの血漿脂質に関するPAZの予防効果
【0108】
PAZは、28日予防的研究にわたって、血漿総コレステロール(TC)及び非HDL(LDL)の統計的有意な減少をもたらす。PAZは、HDLの統計的に有意な増大をもたらし、これは、TC/HDL比率の顕著な改善につながる。血漿コレステロールの変化は、リポタンパク質粒子のシフトを伴う。結果を図S2−12に示す。
【0109】
図2に示すように、飼料平均摂取量は、一般に、4週間にわたって減少した。図3に示すように、平均体重は4週間にわたって増大した。図4は、平均摂水量が4週間にわたって減少したことを示す。図5は、PF3給餌動物の平均TCが水を与えた動物(PW)よりも有意に低かったことを示す。図6は、PP、PF3及びPF4の場合の平均HDLコレステロールが、水給餌群(PW)と比較して有意に高かったことを示す。図7は、PF3及びPF4の場合の平均TC/HDL比率が、PWと比較して有意に低かったことを示す。図8は、PP、PF3、及びPF4の場合の平均LDLコレステロールが、PWと比較して有意に減少したことを示す。図9は、トリグリセリドレベルの減少が統計的有意差に達しなかったことを示す。図10は、各群のリポタンパク質プロファイルを示し、そして各PAZ組成物は、プロファイルのシフトを生じた。図11は、水を給餌したハムスター(PW)と完全ProAlgaZymeTMを給餌したハムスター(PP)との間に、リポタンパク質組成物の低密度から高密度粒子へのシフトが存在したことを示す。図12は、水対PF3給餌ハムスターにおいて、リポタンパク質組成物の低密度から高密度へのシフトが存在することを示す。
【0110】
実施例2に記載された実験の目的は、(a)コレステロール代謝に関わるキータンパク質の機能を変更するPAZ及びそのフラクションの活性の能力について試験すること、及びそのような機序(例えばスタチン類についての場合である)を同定すること、(b)PAZ抽出物のさらなる分別及び活性成分の究極の特徴を促進させるようなアッセイを採用することであった。
【0111】
実施例2
【0112】
この実施例は、コレステロール代謝酵素であるコレステロールエステル転移タンパク質(CETP)、リン脂質転移タンパク質(PLTP)及びHMG−CoAレダクターゼ(HMGR)の酵素活性に関して有するPAZ、ろ過物PF4及びPF3の効果の定量分析を詳説する。
【0113】
手順
【0114】
CETP及びPLTPアッセイ:CETPインヒビター・ドラッグ・スクリーニング・キット(カタログ#K602−100)、及びPLTPインヒビター・ドラッグ・スクリーニング・キット(カタログ#K602−100)を、バイオビジョン・リサーチ・プロダクツ社(BioVision Research Products、マウンテンビュー、カリフォルニア州)から入手した。酵素アッセイを製造者の指示に従って行った。詳細には、160μLの脱イオン化(DI)水、PF4(無希釈)又はPF3(DI水で1:10希釈)を、96ウエル黒色マイクロタイタープレートのウエルに分配した。次いで、容積を変更した対照ウサギ血清(CETP及びPLTPの源)を、ウエルに添加した。いくつかのウエルは血清を受けつけなかったので、背景蛍光(ブランク)対対照として役立てた。1ウエルにつき、1部のアクセプター分子溶液、1部のドナー分子溶液、及び2部の10´アッセイバッファーからなるマスターミックスを調製し、各アッセイに使用されるウエル数までスケールアップした。40μLのマスターミックスを各ウエルに添加し、プレートをシールし、37℃の加湿器内で45分間インキュベートした。各ウエルの蛍光強度を、485nm励起及び527nm放射のフィルタペアを持つラボシステム・フルオロスキャン・アスセント・エフエル・蛍光光度計(Labsystems Fluoroskan Ascent FL fluorometer)を用いて測定した。各状態を繰り返して行い、平均を報告した(各平均に標準偏差誤差バーを付けた)。
【0115】
HMGRアッセイ:HMG−CoAレダクターゼ(HMGR)アッセイキットを、シグマ−アルドリッチ社(Sigma−Aldrich、セントルイス、ミズーリ州)から入手した。酵素アッセイを製造者の指示に従って行った。詳細には、1.5mLのマイクロチューブに以下の試薬をその順番に加えた:1´アッセイバッファー、インヒビター(インヒビター対照及び試験サンプルに対する、提供されたプラバスタチンインヒビター、PF4(15μL)又はPF3(1:10希釈の15μL)のいずれか)、NADPH、HMG−CoAサブストレート溶液、及びHMGR。1つのチューブは、HMGRを添加させず、ブランクとして使用した。陽性対照サンプルは、HMGRを含有するが、インヒビターを含有しなかった。すべての反応を1mL容積で行った。チューブは、詳細には、HMGRをミックスに添加した後、反応溶液をUV−可視セルに移す前にボルテックスした。島津UV−1601UV−可視分光光度計で340nm吸収の示数を15秒毎に5〜7分間、取得した。340nmの吸収示数は、酵素活性を持つサンプル(例えば、陽性対照サンプル)でNADPH濃縮のせいで減少した。
【0116】
結果
【0117】
CETP及びPLTPアッセイ:PF4によるCETP(図13)又はPLTP(図14)酵素活性を、使用血清の容積にてDI水中のこれらの酵素活性と比較したとき、有意な効果はなかった。
【0118】
PF3(1:10希釈)が存在すると、高血清量(図15)にてCETP活性のかすかな増大が観測される(結論参照)。PF3は、DI水と比較して、PLTP活性について負のすなわちインヒビター効果を有するようであった(図16)。
【0119】
HMGRアッセイ:インヒビターの存在無しでは、HMGR酵素活性は、明らかに下降(負)の傾きを形成する(図17、ピンク色の実線(■)の近似曲線)。予期されるように、インヒビターのプラバスタチン類が存在するときのHMGR活性は有意に減少した(図17、ピンク色の実線(■)の近似曲線(HMGR)をオレンジ色の実線(▲)の近似曲線(HMGR+プラバスタチン類)と対比)。HMGR活性の減少は、PF4がアッセイに存在したときは検出されなかった(図17、ピンク色(■)の実線の近似曲線(HMGR)を青色の実線(×)の近似曲線(HMGR+PF4)と対比)。しかし、PF3は、このアッセイで、HMGR活性についてインヒビター様の効果を有することが観察された(図17、ピンク色の実線(■)の近似曲線(HMGR)を紫色の実線(●)の近似曲線(HMGR+PF3)と対比)。
【0120】
結論
【0121】
CETP及びPLTPアッセイ:対照蛍光値の倍率の増大(対照血清を用いるか、あるいは用いないDI水で得られたアッセイ測定結果)は、製造者の指示に報告されるとおりの期待された範囲にあり、これは、アッセイを予期するとおりに行っていることを示す。
【0122】
PAZのPF4フラクションは、これらのアッセイキットを用いたCETP又はPLTPの活性のいずれにも効果を有しないようであった。PAZのPF3フラクション(1:10希釈)は、CETP及びPLTP活性の効果を有するようであった。しかし、効果は、これらの二種類の酵素の作用機序、及びin vivo高コレステロール血症モデルでのPF3のコレステロールを下げる可能性についての報告に基づいて予期されたものと反する。したがって、このデータ、特にPF3についての解釈のもつ訓戒(caution)は正当化される。これらのアッセイでは、PF3はDI水中で10倍希釈されたが、DI水単独やPF4と比較して有意量の塩が存在する。これは、アッセイで使用された蛍光標識脂質で試験した酵素活性に関して逆効果を有し得た。さらに、これらのアッセイに先立って希釈PF3のpHが試験されなかったが、これもまた、同じく逆効果に寄与し得る。本研究の他の重要な面は、PAZが直接にリポタンパク質に作用せず、したがって、現在、高コレステロールを処置するのに使用されるスタチン類と同じ作用機序を持っていないことを示している。
【0123】
HMGRアッセイ:この活性アッセイでは、経時的な340nmの吸収の減少は、NADPH濃度としてのHMGR活性が、HMGRによるNADPへの転換のせいで減少することを示している。PAZのPF4フラクションは、このアッセイではHMGR活性を抑制しなかったようである。しかし、PAZのPF3ろ過物では特記される視認できる抑制が存在した。再び、CETP及びPLTP活性について観測されたPF3の効果を考慮すると、これらの結果を解釈する際の警告となるべきものである。
【0124】
コレステロール代謝に関与する4つの酵素へのPAZフラクションの効果について評価したことを以前に開示した。アッセイを行い、そして、上記したように、CETP、PLTP及びHMG−CoAレダクターゼについての予備的データが得られた。4番目の酵素、レシチン−コレステロールアシルトランスフェラー(LCAT;血漿HDL濃縮物の主要な決定因子(determinant))は、評価できなかった。上記データに基づいて、CETP、PLTP及びHMGRタンパク質へのPF4及びPF3の直接的効果に関する有意な発見はないと結論づけられる。
【0125】
これらのタンパク質は、LCATとともに、薬剤候補のHDL−コレステロールに関する効果を試験する際の、たびたび際立った評価ターゲットであるものの、HDL−コレステロールレベルを増加させるよう導くコレステロール逆転送パスウエイでの他の機序が関与し、この際に評価を検討すべきと考えられる。例えば、ApoA1は、HDL粒子のタンパク質成分の70%を構成し、そしてほとんどすべてのHDL粒子に存在する。多くの研究が、HDL−コレステロールレベルを上げる最良の策は、新規なHDLコレステロールの前駆体であるApoA1をより多く作ることであると信じている。この理由のため、内因性apoA−1タンパク質発現の上方制御が、HDL−コレステロールをターゲットとする新規な治療法を開発するための最も有望なアプローチのひとつである考えられる。検討されるべき追加の機序は、膜タンパク質であるクラスBスカベンジャレセプタータイプ1(SR−B1)及びATP−結合カセット1(ABC1)(前者はHDLの真性レセプター(bona fide receptor)として、後者は脂質転送者として)の制御であり、両者は、コレステロール流出に重要であると強く関係づけられている。LDLレセプターの発現とリサイクルの制御、そしてしたがってその利用性もまた、機序であり、これにより、コレステロールレベルが生理学的に調節され、そして評価されるべきである。
【0126】
データは、CETP、PLTP及びHMGR活性へのPF4及びPF3フラクションの効果に関する有意な発見があるかどうかをほとんど明らかにしていない。しかし、in vitro酵素アッセイで使用した同一のPAZフラクションは、in vivo動物高コレステロール血症モデルにおいてHDL−コレステロールレベルを上昇させる能力を示した。これらの明らかに矛盾する結果は、(a)in vivoでコレステロールレベルを下げるのに関与する機序は、われわれがin vitroで試験している特定の酵素と関係しない、(b)これらのタンパク質の一種以上の発現又はターンオーバーを変更するような別の機序、及び/又は、活性代謝物質を生成するために、PAZの成分に作用するin vivo前生物的変換(prebiotic conversion)パスウエイの要求のためである。この生体内活性化プロセスは、ヒト及び動物の消化管又は血流内、あるいはヒト及び動物の消化管内に存続する細菌性ミクロフローラの中のいずれかで起こり得る。
【0127】
実施例3及び4に記載された実験の目的は、(a)PAZ及びPAZのフラクションのコレステロール代謝に関与するキータンパク質をエンコードする遺伝子の発現を変更する能力を評価し、そしてそのような機序が同定できるかを評価すること、(b)PAZ抽出物のさらなる分別と究極の特徴の活性成分を促進するようなアッセイを採用することである。
【0128】
実施例3
【0129】
一の特定目的は、高脂肪食と同時に完全PAZ(PP)及びPAZのフラクション4(PF4)をハムスターに給餌することによりもたらされるより有益的な血漿脂質プロファイル(より低いTC、より高いHDL)を説明することであった(すなわち予防的モデル)。したがって、実施例1で採用した4週間の予防的プロトコル後に回収したハムスター肝臓から採取した組織内のHDL代謝に関わる遺伝子ApoA1、ABCA1、SR−B1及びCETPの発現レベルの評価を行った。もう一つの特定目的は、HepG2及びHUVEC細胞系のいずれかを採用するin vitroHDL遺伝子制御についてPAZ及びそのフラクションの効果を評価することであった(データは示さず)。この実施例では、5動物/群のデータを示し、1動物につき3回繰り返した。
【0130】
図13は、コレステロール逆転送パスウエイ、及びアテローム性因子(atherosclerosis factor)の発病に関するHDL作用の他のサイトの主成分を示す。ApoA1は、初期のHDL粒子の生成に関与する。ABCA1は、脂質を抹消組織から初期HDLに転送して、より大きなHDL粒子を形成させる。大きいHDL粒子は肝臓上のSR−B1レセプターを介して胆汁へと除去され、血漿からの除去が生起され、そしてApo1はリサイクルされる。CETPは、脂質をHDLから非HDL(LDL様)粒子へ転送する。この転送が減少することは有利である。
【0131】
細胞培養物、処置、RNA単離
【0132】
Hep−G2細胞をDMEM(+10%FBS、+5%PenStrep、+5%L−グルタミン)内で培養し、一方、HUVEC細胞をMedium199(+25mg内皮性成長因子、+50mgヘパリン、+20%FBS、+5%PenStrep、+5%L−グルタミン)内で培養した。3x10細胞を6−ウエルプレートへ静置した。静置24時間後、細胞を処理した(対照、Paz 1:100、Paz 1−20、Paz 1−10、新フラクション−4(1:100)、新フラクション−4(1:20)、新フラクション−4(1:10)、旧フラクション−4(1:100)、旧フラクション−4(1:20)、旧フラクション−4(1:10))。細胞を16時間処理した後、Qiagen RNeasy Mini Kit及び Qiagen QIAshredderを用いて、製造者により提供されるプロトコルに従って全RNAを分離した。
【0133】
RNAをcDNAへ
【0134】
High Capacity RNA−CDNA Master Mix(アプライド・バイオシステムズ社、Applied Biosystems)を用いて、製造者により提供されるプロトコルに従って、全RNA1μgから始めて、RNAをcDNAへ転換した。
【0135】
RT−PCR
【0136】
4種類のプライマーをアプライド・バイオシステムズ社から取得した。
1)ホモサピエンスコレステロールエステル転移タンパク質(CETP):
ファワードプライマー配列 ACCTTCTCGCCCACACTGCT(配列番号:1)、
リバースプライマー配列 TGAAGCCCCAGGTCTCCAGC (配列番号:2);
2)ホモサピエンスATP−結合カセット、サブファミリーA(ABCA1):
ファワードプライマー配列 AAGACCCTGGCTTCGGGACC(配列番号:3)、
リバースプライマー配列 ATGGTCTGGGGAACTGGGGC(配列番号: 4);
3ホモサピエンススカベンジャレセプタークラスB、メンバー 1(SR−B1):
ファワードプライマー配列 AAGAACGTGCGCATCGACCC(配列番号:5)、
リバースプライマー配列 TCATGAAGGCACGTTCGCCG(配列番号:6);
4)APOA1:
ファワードプライマー配列 CATTTCTGGCAGCAAGATGA(配列番号:7)、
リバースプライマー配列 GCCTTCAAACTGGGACACAT(配列番号:8)。
プライマーの最終濃度は、5μMであった。リアルタイムPCRを全25μL反応混合物(2μLcDNA、12.5μLの2xSYBR Green PCR Master Mix(アプライド・バイオシステムズ社製)、1.0μLの各5μmol/Lフォワード及びリバースプライマー、並びに10μLの蒸留水)で行った。PCRプログラムを、95℃10分間により開始した後、各サイクル95℃30秒間及び60℃1分間のサーマルサイクル50回を行った。データを、比較Ct法(comparative Ct method)に従って解析し、各サンプル中のグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ発現(インビトロジェン社、Invitrogen)に対して規格化した:
ファワードプライマー配列 ACCCAGAAGACTGTGGATGG(配列番号:9)、
リバースプライマー配列 CAGTGAGCTTCCCGTTCAG (配列番号:10)。
【0137】
ハムスター
【0138】
1.ABCA1
F:5’−ATAGCAGGCTCCAACCCTGAC−3’(配列番号:11)
【0139】
R:5’−GGTACTGAAGCATGTTTCGATGTT−3’(配列番号:12)
【0140】
2.CETP
F:F:5’−AAGGGTGTCGTGGTCAGTTCT−−3’(配列番号:13)
【0141】
R:F:5’−ACTGATGATCTCGGGGTTGAT−−3’(配列番号:14)
【0142】
3.apoA−I
F:5’−ACC−GTTCAG−GAT−GAA−AAC−TGT−AG−3’(配列番号:15)
【0143】
R:5’−GTGACT−CAG−GAG−TTC−TGG−GAT−AAC−3’(配列番号:16)
【0144】
4.SR−B1
F:5’−AAG−CCT−GCA−GGT−CTA−TGA−AGC−3’(配列番号:17)
【0145】
R:5’−AGA−AAC−CTT−CAT−TGG−GTG−GGT−A−3’(配列番号:18)
【0146】
ヒト
【0147】
CETP
F:ACCTTCTCGCCCACACTGCT(配列番号:19)
【0148】
R:TGAAGCCCCAGGTCTCCAGC(配列番号:20)
【0149】
配列(5’−>3’)
【0150】
ABCA1
F:AAGACCCTGGCTTCGGGACC(配列番号:21)
【0151】
R: ATGGTCTGGGGAACTGGGGC(配列番号:22)
【0152】
配列(5’−>3’)
【0153】
SRB1
F:AAGAACGTGCGCATCGACCC(配列番号:23)
【0154】
R:TCATGAAGGCACGTTCGCCG(配列番号:24)
【0155】
APO−A1
F:CATTTCTGGCAGCAAGATGA(配列番号:25)
【0156】
R:GCCTTCAAACTGGGACACAT(配列番号:26)
【0157】
実施例4
【0158】
高脂肪食を給餌したハムスター(予防的モデル)へ完全PAZ(PP)及びPAZのフラクション4(PF4)を投与することにより達成されるより有益な血漿脂質プロファイル(より低いTC、HDLはより高い)の原因である機序を探求するために、別法のアプローチを採用した。HDL代謝に関わる特定遺伝子、すなわち、ApoA1、ABCA1、SR−B1、及びCETPの転写の相対レベルを評価するのに、定量的RT−PCRを使用した。この実施例では、5動物/群のデータを示し、1動物につき3回繰り返した。
【0159】
図19は、高脂肪食+完全PAZ(PP)又はフラクション4(PF4)又は水(PW)を給餌した動物における特定遺伝子の相対的転写レベルを、定常(低脂肪)飼料及び水(CW)の対照群と対比したグラフである。高脂肪食及び水を給餌した動物はCETP発現の増大を示したが、これは、CW及びPP/PF4群と比べて血漿LDL及びTCが高いことを説明している。それらは、また、ApoA1発現の減少を示したが、これは、HDLCの産生減少と互いに関係がある。それらは、また、SR−B1発現の減少を示したが、これは、コレステロール逆転送パスウエイを介したコレステロール除去の抑制と互いに関係がある。
【0160】
図20は、高脂肪食+完全PAZ(PP)又はフラクション4(PF4)又は水(PW)を給餌した動物における特定遺伝子の相対的転写レベルを、高脂肪食及び水(PW)の対照群と対比したグラフである。PP及びPF4の場合のABCA1及びCETP発現レベルは同様であった。PPでのApoA1発現は、PF4と比較してより高められたが、これは、初期HDL粒子のより大量の生成と互いに関係がある。これは、ウエスタンブロット、及びHDL粒子径/密度によって同定することができる。SR−B1発現レベルは、PF4群でより高いが、これは、除去(clearance)の増大と互いに関係がある。これは、TCの有意な減少と互いに関係がある。
【0161】
要約すると、ハムスター肝臓サンプルからのmRNAを使用する遺伝子制御のqPCR分析は、実施例1の研究で特記した脂質血漿プロファイルの変化を実証し、そしてPAZ又はその成分の作用機序として、リポタンパク質代謝のキータンパク質をエンコードする遺伝子の発現を制御していることを支持する。
【0162】
実施例5
【0163】
たびたび究極のin vivo効果(正及び負の両方)を予測するのに失敗する、現代の医薬開発に代表的に採用される高スループットスクリーニング法と対照的に、PAZの活性成分は、in vivo活性のための厳格な評価(acid test)を提供するものの、PAZの活性成分の分別は、長期のin vivo法の主な用途によって著しく妨害されている。しかし、CETP遺伝子発現をモニターするためにHEPG2細胞を採用するin vitroアッセイがスクリーニングの代替エンドポイント(surrogate endpoint)を提供するかもしれないことを示す初期結果を考慮して、培養HEPG2細胞でのCETP発現に関するPAZの効果をさらに試験した。
【0164】
図21は、PAZのさまざまな製造ロットが、HEPG2細胞でのCETP発現の減少に潜在的活性を有することを示す。
【0165】
図22は、用量-反応研究結果を示し、ここで、培養培地中のPAZの希釈物を増大させると、CETP発現の抑制の増大と互いに関係があった。これらのデータは、(a)PAZはきわめて効能があり、有益な効果を達成するために低用量しか必要とされない、及び/又は、ある一定のレベルでPAZの有益な効果を減じるPAZの他の成分が存在し得ることを示す。
【0166】
実施例6
【0167】
コレステロール及びHDLレベル並びにリポタンパク質代謝に関わる一定のキー遺伝子の発現レベルの有意で有益な変化を、in vivo予防的モデル系で観察された。しかし、高コレステロール血症を持った個体を処置するために新規な薬剤の需要を考慮し、治療学的モデルでのコレステロール及びリポタンパク質プロファイルを改善するために、PAZ及びPAZに由来するフラクションの能力を評価することが重要であった。治療学的ハムスター実験モデルを採用し、ここで、動物(各群8動物)に、最初の28日間、高脂肪食を投与して、次いで、屠殺までの追加の21日間、高脂肪食+PAZ又はPAZに由来するフラクションを同時投与した。得られた結果を図23−25に示す。
【0168】
図23は、このプロトコルで処置したハムスターの血漿の総コレステロール(TC)、HDL、及びトリグリセリド類に関するPAZ及びPAZからのフラクション3の効果を表す。
【0169】
図24は、PAZのフラクション3でハムスターを治療学的に処置することによって及ぼされるコレステロール対HDLの比率の減少を示す。
【0170】
図25は、高コレステロール血症にためにPAZの治療学的処置にかけられた動物の肝臓においてApoA1をエンコードする遺伝子の発現の有意な上昇を示す。
【0171】
実施例7
【0172】
PAZ及びPAZに由来するフラクションの長期経口投与は、予防的及び治療学的モデル系の両方で有効であり、リポタンパク質代謝に関与する遺伝子の発現の有意で有益な変化が観察され、遺伝子発現を直接調節する薬剤がそのような変化を比較的迅速(リポタンパク質代謝のターンオーバー及びその結果のリポタンパク質プロファイルの変化は実質的に長く要求されるかもしれないが)に引き起こしそうであることを考慮し、動物を28日間、高脂肪食で前処置し、次いでPF3、PF4(その成分を濃縮するために様々な処理をするか、しない)を屠殺とmRNA抽出及びqPCR前の7日間(3動物/群)投与する短期治療学的モデルで、APOA1及びCETP遺伝子の発現を変更するPAZフラクションの能力を評価した。
【0173】
図26は、これらの結果を表す。意外にも、PF4もそれらの誘導体も、ApoA1発現の有意な強化を作らなかった。しかし、PF3フラクションは、長期治療学的及び予防的研究で得られた結果と矛盾せずに、短期治療学的実験モデルでApoA1の発現を有意に強化し、これは、この遺伝子を直接活性化するPF3中の成分の可能性を示唆している。これらのデータは、PF3について遺伝子発現の有益な変化が観察されたことを示すものの、PF4の短期治療学的研究については遺伝子発現の有益な変化が観察されなかった。しかし、長期治療学的及び予防的研究で得られた遺伝子発現の再現性のある有益な変化を考慮に入れると、これらのデータは、PF4成分中のPAZ成分による遺伝子制御についてのより複合的、たぶん間接的な機序を支持する。
【0174】
実施例8
【0175】
治療学的状態(すなわち、PF4投与前に高コレステロール血症を誘発させた動物モデルを採用する)のin vivoコレステロール及びリポタンパク質代謝に関するPAZに由来するPF4フラクションの効果を評価するために時間研究を行った。図27は、血漿脂質分析及び肝臓mRNA発現を含む研究デザインを示す。PF4は、実施例1に記載されたクラマトグラフィ法を用いてPAZから導出したフラクション4である。得られた結果を図27−32に表す。異なる時点で、図28は血漿総コレステロールを示し、図29は血漿HDL−cを示し、そして図30は血漿トリグリセリドを示す。図31は、異なる時点でPF4で処置した血漿脂質パラメータ(TC、HDL、TG)の変化を示し、図32は、異なる時点のApoA1及びCETPの遺伝子制御を示す。
【0176】
図33は、in vivo実験モデルでのリポタンパク質代謝パラメータの多様研究におけるPAZのフラクションPF4の得られた結果の対比である。この時間研究は、治療学的アプローチ(4週間のHF飼料に続いてPF4での処理)を使用した。ここで、21日目のPF4(ロット3)は、28日間予防的アプローチ(4週間の同時のHF及びPF4治療介入)後のPF4(ロット1)と極めて類似した脂質プロファイルを示す。治療学的時間研究(PF4/ロット3)では、ApoA1及びCETP発現の両方とも、21日目に増大した。PF4/ロットを使用する実施例4(図20参照)ではApoA1が増大し、一方、CETPが減少した。これらの研究の中に観察されたCETP発現の相違は、治療学的モデル系で効果を妨害する薬剤がなくても長期HF給餌の影響を反映していることがあり得る。
【0177】
本願を通して、米国特許を含むさまざまな刊行物が著者及び年並びに特許番号により参照される。刊行物の全引用を以下にリストする。本願が関係する従来技術の状態をより充分に説明するために、これらの刊行物及び特許の開示の全体が本願に編入される。
【0178】
本発明は、例証の方式で記載されており、使用される用語は、限定するよりも単語の説明を意図するのが道理であると理解される。
【0179】
自明なことに、上記の観点から本発明の多くの改変及び変更が可能である。したがって、添付の特許請求の範囲内で、特に説明したのと別の方法で実施できると理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の高コレステロール血症を処置する方法であって、
有効量の微生物発酵生成物を投与する、及び
リポタンパク質代謝に関わる遺伝子を制御する、
ステップを含む前記方法。
【請求項2】
患者のコレステロールレベルを制御する方法であって、
PAZ、PAZから単離された特異的成分、及びPAZ成分の化学合成類似体からなる群から選ばれる有効量の組成物を投与する、並びに、
リポタンパク質代謝に関わる遺伝子の発現を制御する、
ステップを含む前記方法。
【請求項3】
前記組成物が液状の経口サプリメントである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記組成物が機能性食品である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記組成物が食品添加物である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記投与ステップが、前記組成物を毎日投与することとしてさらに規定される、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記制御ステップが、総血漿コレステロール(TC)レベルを下げ、低密度リポタンパク質(LDL)レベルを下げ、及び高密度リポタンパク質(HDL)レベルを上げることとしてさらに規定される、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記制御ステップが、ABCA1、ApoA1及びSR−B1をエンコードする少なくとも一種の遺伝子の発現を上方制御することとしてさらに規定される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
さらに、CETPをエンコードする遺伝子を下方制御するステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
さらに、行われている上方制御及び下方制御ステップを確認するためのアッセイを行うステップを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
個体の高コレステロールを処置する方法であって、
有効量の微生物発酵生成物を投与する、
ABCA1、ApoA1及びSR−B1をエンコードする少なくとも一種の遺伝子の発現を上方制御する、及び
CETPをエンコードする遺伝子を下方制御する、
ステップを含む前記方法。
【請求項12】
前記微生物発酵生成物が、PAZ、PAZから単離された特異的成分、及びPAZ成分の化学合成類似体からなる群から選ばれる組成物からなる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記微生物発酵生成物が、液状の経口サプリメントである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
さらに、行われている上方制御及び下方制御ステップを確認するためのアッセイを行うステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
高コレステロールの発症を防止する方法であって、
PAZ、PAZから単離された特異的成分、及びPAZ成分の化学合成類似体からなる群から選ばれる有効量の組成物を投与する、
リポタンパク質代謝に関わる遺伝子を制御する、及び
高コレステロールの発症を防止する、
ステップを含む前記方法。
【請求項16】
前記組成物が、液状の経口サプリメントである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記組成物が、機能性食品である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記組成物が、食品添加物である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記組成物が、毎日投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記制御ステップが、ABCA1、ApoA1及びSR−B1をエンコードする少なくとも一種の遺伝子の発現を上方制御することとしてさらに規定される、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
さらに、CETPをエンコードする遺伝子を下方制御するステップを含む、請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公表番号】特表2013−520444(P2013−520444A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554091(P2012−554091)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【国際出願番号】PCT/US2011/025713
【国際公開番号】WO2011/103569
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(512216942)ヘルス エンハンスメント プロダクツ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】