説明

高コロナ処理された領域と低コロナ処理された領域とを有した柔軟なキャリア

複数の飲料容器を運ぶための柔軟なキャリア(30)が複数の容器保持部(25)を具備し、該容器保持部の各々が高エネルギ処理された部分(26)と低エネルギ処理された部分(24)とを有する。エネルギ処理は、コロナ処理またはプラズマ処理とすることができる。高エネルギ処理された部分(26)ではキャリアから容器への摩擦が改善される。エネルギ処理のレベルを変更することによって、処理された部分の相対的な大きさ、および、柔軟なキャリア(30)と容器との間の摩擦が制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は飲料用缶または瓶を保持するのに有用な柔軟なキャリアに関する。柔軟なキャリアは、消費者が容器をキャリアから比較的容易に取外すことができ可能でありながら、容器への摩擦力を制御する高エネルギ領域と低エネルギ領域とを有し、運搬、販売、消費者の取扱中に容器が該キャリアから比較的滑り落ちにくくなっている。
【背景技術】
【0002】
柔軟なキャリアは、4個パック、6個パック、8個パック、10個パック、12個パックなど、種々の飲料容器を運ぶのに用いられている。柔軟なキャリアは、キャリアを容器に取付ける際に引き伸される。容器はプラスチック、金属またはガラスによって形成可能であるが、柔軟なキャリアは典型的にプラスチックによって形成される。
【0003】
飲料工業における1つの問題は、柔軟なキャリアと充填された容器との間の摩擦と滑りとを適切にバランスさせることである。摩擦が小さすぎ、かつ、滑りが大きすぎると、複数容器パックの取扱中または運搬中に、充填された容器はキャリアから脱離する。摩擦が大きすぎると、消費者は、消費のために個々の容器をキャリアから比較的から分離することが難しくなる。また、キャリアの容器へ機械により装着することが一層困難になる。と言うのは、装着機械の把持顎がキャリアを解放しないからである。
【0004】
上述した問題は、柔軟なキャリアを比較的少量の安価なプラスチック材料から形成するという動機、また、これらの材料を異なるサイズ、形状、重量および材料組成の容器に適合させる必要性によって一層悪化する。柔軟なキャリアは、しばしばポリエチレンのようなポリオレフィン類から形成される。運搬すべき容器は、数グラムから数キログラムの重量、細い容器から太い容器、長さも短いものから長いものまで、更に、異なる種のプラスチック、金属、またはガラス容器、或いは、滑りやすいラベルを有したものや、その他の特徴を有したものというように、キャリアと容器との間の最適な摩擦を達成することを困難とする様々な容器を運搬する。
【0005】
【特許文献1】米国特許第6122893号明細書
【特許文献2】米国特許第5538790号明細書
【特許文献3】米国特許第5789029号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
a)スリップ剤や、付着性を変更する他の添加物を様々な量で加えること、および、b)キャリア帯と保持される容器との間の張力を変更することによって、様々な用途でキャリアと容器との摩擦を最適化する努力がなされてきた。これらの修正は、特に容器が大型で、重くかつ/または滑り易い外表面を有している場合に、柔軟なキャリアと容器との間の付着性の最適化には至らないこともある。
【0007】
柔軟なキャリアの保持性能を最適化するために広い範囲で調節可能な技術が必要であり望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、飲料容器に有効な柔軟なキャリアであって、少なくとも1つの高エネルギ処理された領域と、少なくとも1つの低エネルギ処理された領域とを各容器を包囲するにように設けた複数の容器保持部を具備する柔軟なキャリアを要旨とする。本明細書において「柔軟なキャリア」との語は、撓ませたり引き伸ばしたりして容器保持部を各容器の頸部、本体または出縁の周囲に装着するようにしたキャリアを意味する。「エネルギ処理」との語は、コロナ処理、プラズマ処理およびその組合せから成る群から選択された表面処理を意味する。エネルギ処理によって、酸化やイオン化等を通じてキャリアの表面エネルギが高まり、処理された領域で容器に対するキャリアの摩擦が高くなる。本明細書では「低エネルギ処理」との語は、コロナ処理またはプラズマ処理をしない或いは高エネルギ処理領域が受けるコロナ処理またはプラズマ処理よりも低いレベルのコロナ処理またはプラズマ処理を意味する。
【0009】
高エネルギ処理が望ましい領域を選択的にコロナ処理またはプラズマ処理することによって、高エネルギ処理領域および低エネルギ処理領域を得ることができる。選択的に処理によって、表面は酸化および/またはイオン化され容器に対するキャリアの摩擦が高くなる。
【0010】
高エネルギ処理領域によって、保持部の処理された部分と容器との間の摩擦が高くなり、複数容器パック通常の取扱および運搬の間に、容器の脱離が防止される。高エネルギ処理領域は、各容器保持部の周囲にのみ設けられる。低エネルギ処理領域は、各容器保持部の周囲の残りの部分に設けられる。低エネルギ処理領域によって摩擦が低くなり、キャリアの製造、および、機械による容器へのキャリアの装着が容易になることはもとより、消費者によるキャリアからの容器の取外が容易になる。特に、低エネルギ処理領域は、キャリアを容器に装着するアプリケータ機械の把持顎と接触する低摩擦面となる。アプリケータ機械の一例が特許文献1に開示されており、それを本明細書と一体をなすものとして参照する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1を参照すると、柔軟なキャリア20は、複数の容器穴22を有した柔軟なシートを含む。容器穴の各々は、容器を受容するための主開口部25を有している。柔軟なキャリア20はプラスチック材料、適当には上述したようにポリオレフィンから形成される。柔軟なキャリア20は、比較的高いエネルギ処理された内側の領域24と、比較的低いエネルギ処理された外側の2つの領域26とを有している。外側の領域26は、内側の領域24よりも少なくとも25%低い、適当には少なくとも50%低い、望ましくは75%低いエネルギ処理を受けるように、そして好ましくはエネルギ処理を受けないようにすることができる。エネルギ処理は、適当にはコロナ処理である。或いは、エネルギ処理はプラズマ処理であってもよい。
【0012】
高エネルギ処理された内側の領域24は、柔軟なキャリア20の長手方向に延在している。低エネルギ処理された外側の領域26もキャリア20の長手方向に延在する。内側の領域24は、容器保持部22の各々の容器と直接接触する部分が、高エネルギ処理され高い摩擦を有した部分21と、低エネルギ処理され低い摩擦を有する部分22とを有するように、十分な幅を有している。内側の領域24は、柔軟なキャリア20の幅の約10〜90%、適当には約20〜80%を占めるようにすることができる。
【0013】
主開口部25は、5.08mm(0.20inch)以上の直径または最大寸法を有し、容器保持部22を裂けることなく延伸して容器を受け入れることができる。また、主開口部の間に、柔軟なキャリア20のための把持部として作用する第2の開口部29を設けてることができる。
【0014】
主開口部25に挿入すべき容器は、種々の形状、直径を有した瓶または缶とすることができる。図1を参照すると、例えば、柔軟なキャリア20は、容器部22を横断方向に、矢印30で示すように互いに反対方向に引き伸ばして容器上に装着される。保持部は、引き伸ばされている間に容器の周囲に装着され、収縮(復帰)して容器のリブ、出縁または外表面にぴったりと適合することができる。柔軟なキャリア20およびその構成要素の平面寸法は、最終使用目的に従って変えることができる。特定の最終使用目的は、限定されないが、様々なサイズ、形状の飲料缶、瓶を含む。
【0015】
柔軟なキャリア20の一方の側面のみに選択的にエネルギ処理することが望ましい。図7を参照すると、柔軟なキャリア20が複数の容器70に装着されると、容器保持部22は曲りカールして、保持部22の各々の内面が容器70に対面し、保持部22の各々の外面66が容器70から離反方向に面する。適当には、柔軟なキャリアにおいて各保持部の内面を含む側面のみが選択的にエネルギ処理される。前駆フィルムの一方の表面のみにエネルギ処理を選択的に行い、そしてそれを裁断して柔軟なキャリア20を形成する場合にプロセス上有利である。フィルムにおいてエネルギ処理されていない側を裁断装置に適用することにより、裁断装置とフィルムとの間の過剰な摩擦を除去することが可能である。然しながら、柔軟なキャリア20またはキャリアを形成する前駆フィルムの両側面に選択的エネルギ処理を行うことも本発明の範囲に含まれる。
【0016】
柔軟なキャリア20は、望ましくはプラスチックフィルムから形成され、該プラスチックフィルムは、押出成形法により形成することができ、次いで、柔軟なキャリアに裁断される。柔軟なキャリア20は、所望数の容器を運ぶのに十分な構造的完全性を与える厚さを有している。例えば、柔軟なキャリア20は、2個、4個、6個、8個、10個または12個の、特定の重量、容積、形状および寸法を有した所望の製品である容器を運ぶのに十分な数の保持部22を有し、かつ、対応した数の容器受容部を有することができる。殆どの応用例で、柔軟なキャリア20は、約3〜50(mil)、適当には5〜30(mil)、一般的に10〜20(mil)の厚さを有している。
【0017】
柔軟なキャリア20を形成するために用いられるプラスチックフィルムは、ポリエチレンのようなポリオレフィンを含むポリマー組成物を用いて形成される。望ましくは、ポリエチレンは高圧低密度ポリエチレンである。このポリマーは、望ましくは枝分れし、従来の高圧重合プロセスを用いて準備される。低密度ポリエチレンポリマーは、チーグラー−ナッタ触媒またはシングルサイト触媒システムを用いて準備される。低密度ポリエチレンポリマーは、単独重合体またはエチレンと1または複数のC3〜C12アルファオレフィンコモノマーおよび/または一酸化炭素との共重合体とすることができる。望ましくは、低密度ポリエチレンポリマーは、一酸化炭素との共重合体を含み、そしてそれは、キャリアを紫外線により一層劣化し易くする。
【0018】
低密度ポリエチレンポリマー中に含まれる望ましい一酸化炭素との共重合体の量はポリマーブレンド組成物中の低密度ポリエチレンポリマーの割合によって変化する。存在する場合には、一酸化炭素との共重合体は、重量比で低密度ポリエチレンポリマーの約0.1〜20%、適切には約0.5〜10%、望ましくは約1〜4%とすることができる。
【0019】
低密度ポリエチレンポリマーは、約0.910〜0.950g/cm3、適切には約0.920〜0.940g/ cm3、望ましくは約0.92〜0.935g/ cm3の密度を有する。言い換えれば「低密度ポリエチレンポリマー」は、一般的に低密度を有すると考えられているエチレンポリマーはもとより、中間的な密度を有すると一般的に考えられているポリエチレンポリマーを含む。前記低密度ポリエチレンポリマーは、ASTM D1238を用いて190℃で測定した場合に、約0.2〜3.0g/10min、適切には約0.3〜1.5g/10min、望ましくは0.4〜0.7g/10minのメルトインデックスを有する。
【0020】
低密度ポリエチレンポリマーが、実質的にポリマー組成物の全体を構成するようにしたり、或いは、1または複数のポリマーを付加してもよい。ポリマー組成物は、また、約0.850〜0.905g/ cm3の密度を有しシングルサイト触媒により準備されたエチレン−アルファオレフィン共重合体プラストマーを重量比で約1〜50%含んでいる。適切には、プラストマーは、約0.865〜0.895g/ cm3、望ましくは約0.880〜0.890g/ cm3の密度を有する。アルファオレフィン共重合体は、3〜12炭素原子、望ましくは4〜8炭素原子を有する。共重合体の両は、望ましいプラストマー密度を達成するために必要な量とする。一般的に、エチレン−アルファオレフィン共重合体プラストマーは、重量比で約5〜30%、適切には約10〜25%の共重合体を含む。適切には、ポリマーブレンドは、重量比で約3〜30%、望ましくは5〜20%のプラストマーを含む。
【0021】
シングルサイト触媒エチレン−アルファオレフィン共重合体プラストマーは、ASTM D1238を用いて190℃で測定した場合に、約0.3〜10g/10min、適切には約0.5〜5g/10min、望ましくは0.8〜1.3g/10minのメルトインデックスを有する。適切なシングルサイト触媒エチレン−アルファオレフィン共重合体プラストマーは、エクソン−モービル社からEXACTの商標名で、また、ダウケミカル社からENGAGEの商標名で市販されている。適切なプラストマーは、アルベルドソン等(Arvedson et al.)に発行された特許文献2、ラムゼー等(Ramsey et al.)に発行された特許文献3に開示されており、その開示内容を本明細書と一体をなすものとして参照する。プラストマーは、キャリアに切欠や傷が形成されたときの引裂き抵抗を高め、破断点伸びを高め、および、ASTM D882-91を用いた応力−歪み試験を用いて測定した場合の伸長後の復帰を高める。
【0022】
紫外線下でキャリアを不安定化するエチレン−一酸化炭素共重合体は、マスターバッチまたは高い一酸化炭素濃度を有する濃縮物の形で提供することができる。或いは、一酸化炭素の一部または全部を低密度ポリエチレンおよび/またはシングルサイト触媒エチレンアルファオレフィンプラストマーと共重合してもよい。一酸化炭素を導入し密接に関連させていなくとも、ポリマーブレンドは、重量比で約0.1〜10%、適切には約0.5〜5%、望ましくは約1〜2%の一酸化炭素濃度を有するべきである。柔軟なキャリアの復帰、伸び、引張り強度、引裂き抵抗を実質的に維持または高める量、かつ/または、キャリアに低温抵抗や応力亀裂抵抗を与えたり、透明度を高めたり、その他望ましい特性を与える量を以て、他のポリマーを添加してもよい。ポリマー組成物は、乾燥状態で混合および/または溶融状態で混合することができる。ポリマー組成物は、典型的に、柔軟なキャリアシートを形成する押出成型機に個別に供給され、該押出成型機内で溶融混合される。
【0023】
ポリマー組成物は、また、1または複数のスリップ剤を含んでいてもよい。スリップ剤は、柔軟なキャリア20と容器との間の過度の摩擦、柔軟なキャリア20と該キャリアを容器に装着するために用いる装置との間の過度の摩擦、および、前駆フィルムからキャリアを製造する間の過度の摩擦を防止するために使用される。適当なスリップ剤は、約18〜21の炭素原子と極性末端基(例えばアミド)とを有した長鎖脂肪酸類含む。極性末端基によって、スリップ剤は柔軟なキャリア20の表面へ向けて移動する。適当なスリップ剤は、エルカ酸アミド(erucamide)(アミド末端基を備え21個の炭素原子を有している)およびオレアミド(アミド末端基を備え18個の炭素原子を有している)を含む。スリップ剤は、1000ppmまでの量を以て添加され、適切には約400〜600ppm添加される。
【0024】
上述したように、図1に示す実施形態の柔軟なキャリア20は、高エネルギ処理された内側の領域24と、境界線27より概ね分けられ低エネルギ処理された2つの外側の領域26とを含む。低エネルギ処理領域26は、好ましくは、エネルギ処理されない。領域24は、選択的エネルギ処理によって、領域26よりも高いキャリアと容器との摩擦を呈する。選択的エネルギ処理は、望ましくは、選択的コロナ処理である。領域24の選択的コロナ処理によって、容器保持部22は、低表面酸化部分21と、(コロナ処理によって生じる)高表面酸化部分23とを有する。部分21ではキャリアと容器との間の摩擦が低く、部分23ではキャリアと容器との間の摩擦が高くなる。
【0025】
選択的コロナ処理は、柔軟なキャリア20または前記フィルムを、コロナ処理ステーションの電極とステンレス鋼のプレートとの間を通過させることにより行うことができる。電極は、キャリアの領域24のみが処理されるように、領域24の幅に一致する幅を有することができる。柔軟なキャリア20またはフィルムは、コロナ処理ステーションを長手方向に通過するようにできる。領域24により受け取られるコロナ処理の量は、電極の長さ、柔軟なキャリアまたはフィルムが電極とプレートとの間を通過する速度、および、電極とプレートとの間に印加される電位によって決定される。
【0026】
図5は、コロナ処理装置40の略図である。直列に配置された2つの電極44、4の各々は、約152mm(約6inch)の長さと、約63.5mm(約2.5inch)の(紙面に対して垂直な)幅とを有することができる。或いは、一層多くの電極を直列に配設しても、2つの長い電極を用いてもよい。鋼製プレート42が電極の下側に配設されており、電極とプレートとの間に空間50が画成される。柔軟なキャリア20または柔軟なキャリア20を切出すフィルムは、プレートと電極との間を矢印48の方向に通過する。電極44、46の各々が、152mm(6inch)の長さを有する場合には、柔軟なキャリア20は305mm(12inch)のコロナ処理長さに曝される。
【0027】
コロナ処理によって領域24に長期に渡って失われない耐久力のある表面酸化を与えるために、非常に高電力密度にて領域24を処理することが望ましい。電力密度は、約210〜2160W/m2/min(約20〜200W/ft2/min)、適切には約320〜1620W/m2/min(約30〜150W/ft2/min)、特に約430〜1080W/m2/min(約40〜100W/ft2/min)の範囲とすることができる。高電力密度とすることにより、領域24における表面酸化は1年以上維持される。その結果、改善された容器とキャリアとの間の摩擦も同様に長期間に亘って維持される。
【0028】
上述したコロナ処理装置40を用いて、鋼製プレート42と電極44、46との間の50〜200mil、適切には60〜150milの空間で、15milの厚さの柔軟なキャリアまたはフィルムの領域24における所望の電力密度を得ることができる。柔軟なキャリアまたはフィルムの領域24は、前記プレートと電極との間を76.2m/min(250ft/min)までの速度で通過し、約0.30秒のコロナ処理滞留時間となる。こうした条件下で430〜1080W/m2/min(40〜100W/ft2/min)の所望の電力密度を達成するために、コロナ処理装置40は、1.5〜1.8kWで作動しなければならない。この電力量によって、空間50の空気は解離した酸素原子と窒素原子とに変換する電位が生じ、解離した酸素原子と窒素原子の一部が柔軟なキャリアまたはフィルムの表面と反応する。
【0029】
キャリア帯片を作るために用いるフィルムの製造とコロナ処理する時との間に待機時間が存在する場合に、領域24の選択的コロナ処理によって、柔軟なキャリアの容器への摩擦を最適に改善されることを見出した。つまり、表面をコロナ処理する前に、スリップ剤がフィルムの表面に到達することが望ましい。フィルムの製造後、コロナ処理が早すぎると、その後にスリップ剤が表面へ移動して、十分にコロナ処理の影響を受けない。フィルムの製造後コロナ処理までの待機時間は、約3日以上、適切には約7日、特に約10日以上とすべきである。
【0030】
或いは、領域24の選択的エネルギ処理は、選択的プラズマ処理とすることもできる。プラズマ処理装置は従来周知となっており、プラスチック製の布帛で用いられている強化繊維の貫通性、接着性を強化するために、該布帛を処理するために従前から利用されている。プラズマ処理は、また、メタライゼーションプロセスによって被覆されているフィルムのメタライゼーションを強めるために用いられてきた。
【0031】
典型的なプラズマ処理プロセスでは、高周波電磁放射の形でエネルギを供給し、プロセスガスをイオン化する。プロセスガスは、例えば酸素、窒素、アルゴン、ヘリウムまたはその組合せとすることができる。プラズマは、電子、イオンその他の準安定な高エネルギ化学種が含まれる。個々のプラズマ粒子のエネルギは、約3〜20電子ボルトの範囲とすることができる。これらの高エネルギ粒子が柔軟なキャリア20の領域24に接触すると、イオン化または化学反応(典型的には酸化)によって表面が励起する。
【0032】
現時点ではプラズマ処理はコロナ処理よりも費用を要する。従って、コロナ処理は、柔軟なキャリア20の領域24の選択的エネルギ処理を達成するための最も望ましい方法であると考えられる。プラズマ処理は、同じ結果、つまり、選択的に領域24における一層高い摩擦係数を達成するための代替方法、或いは、均等な方法として利用できる。当業者には、適切なライン速度および電力で、領域24の所望の摩擦係数を達成するために、プラズマ処理技術を最適化可能である。
【0033】
コロナ処理またはプラズマ処理によって得られる領域24の摩擦係数は、図6に示す斜面技術を用いて測定した場合に、約0.25〜1.0、適切には0.30〜0.50、特に0.35〜0.45とすべきである。図6を参照すると、平坦な支持面52が、その一端55において回動取付部56を用いて水平ベース54に取付けられる。関心のある容器または容器の被覆層と同じ材料(例えばアルミニウム)により形成されたシート58がプレート52の反対側の端部57の近傍に載置される。少なくとも76.2mm(3inch)の長さと、少なくとも25.5mm(1inch)の幅とを有し、柔軟なキャリアの材料から成るフィルム59が、プレート52の端部57の近傍においてシート58の上に重ねられる。657gの質量と、76.2mm×25.4mm(3inch×1inch)の下面とを有したスレッド60が、スレッド60の長手方向(76.2mm(3inch))を支持面52の傾斜方向に平行となるようにして、フィルム59の5810mm2(3inch2)の面上に配置される。
【0034】
支持プレート52の端部57を次第に上動して、傾斜をきつくし、支持プレート52とベース54との間の角度θを大きくする。プレート52の傾斜が十分に大きくなると、柔軟なキャリアの材料から成るフィルム59は、スレッド60に作用する重力によってシート58の表面に沿って滑り始める。その時点は、角度θが測定され、摩擦係数μは次の式で決定される。μ=tanθ
【0035】
図2〜4は、本発明の柔軟なキャリア20の他の実施形態を示しており、同様の構成要素には図1と同じ参照番号が付されている。図2は、狭い容器保持部22と、主開口部25とを有した本発明の柔軟なキャリア20を示している。高コロナ処理またはプラズマ処理された内側の領域24もまた比較的狭く、矩形状の各容器保持部22の一辺のみを含んでいる。低コロナ処理またはプラズマ処理された外側の領域26は、矩形状の各容器保持部22の三辺を包囲している。図2の柔軟なキャリア20は、把持部として作用する第2の開口部を有していない。キャリア20は、容器保持部22を横断方向に、矢印30で示すように互いに反対方向に引き伸ばして容器に装着される。
【0036】
図3は、本発明の柔軟なキャリア20の更に他の実施形態を示している。本実施形態は、高コロナ処理またはプラズマ処理した内側の領域24が格段に広くなっている点を除いて図2に示した実施形態と同様に構成されている。図3の柔軟なキャリア20では、高コロナ処理またはプラズマ処理された内側の領域24は、矩形状の容器保持部22の各々の三辺を包囲している。低コロナ処理またはプラズマ処理された外側の領域26は、各容器保持部22の一辺のみを包囲している。図3の柔軟なキャリア20は、柔軟なキャリアとの一層大きな摩擦から、一層滑り易く、かた/または、重い容器に有効である。低コロナ処理またはプラズマ処理され摩擦の低い領域26は、キャリア20と、キャリア20を引き伸ばして容器に装着するために用いられる装置の把持顎との間の過剰な摩擦を排除するのに十分な大きさを有している。
【0037】
図4は、本発明の柔軟なキャリア20の更に他の実施形態を示している。本実施形態は、高コロナ処理またはプラズマ処理した2つの内側の領域24が設けられ、かつ、低コロナ処理またはプラズマ処理された1つの内側の領域26と2つの外側の領域26とが設けられている点を除いて図2、3に示した実施形態と同様に構成されている。高コロナ処理またはプラズマ処理された領域24は、矩形状の容器保持部22の各々の2つの短辺と包囲している。低コロナ処理またはプラズマ処理された領域26は、各容器保持部22の2つの長辺を包囲している。
【0038】
図1〜図4の実施形態の各々では、高エネルギ処理領域24は、既述したようにコロナ処理プロセスを選択的に適用する、或いは、プラズマ処理プロセスを選択的に適用するすることによって形成することができる。低エネルギ処理領域26は、コロナ処理またはプラズマ処理を一層低く行う或いは行わないことによって形成することができる。
【実施例】
【0039】
以下に示す実施例では、図3に示す柔軟なキャリアに類似するキャリアを形成するのに有効なコロナ処理されたシートのサンプルの内側の領域に沿って選択的にエネルギ処理した。各柔軟なキャリアシートは、0.927g/ cm3の密度、0.5g/10minのメルトインデックス、重量比で0.75%の一酸化炭素コモノマー含有量を有したエチレン−一酸化炭素共重合体から形成されている。エチレン−一酸化炭素コモノマーに500ppmのオレアミドスリップ剤を組み合わせた。
【0040】
実施例では、コロナ処理していない5つのサンプルを準備し、また図5に示す装置に類似したコロナ処理装置を用いて出力1.6kW、ラインスピード24.4m/min(80ft/min)、滞留時間0.75秒の条件で1033W/m2/min(96W/ft2/min)の電力密度を発生させてコロナ処理した5つのサンプルを準備した。コロナ処理装置は、コロナデザイン社からPOWERHOUSEの商標名で製造されたものである。このコロナ処理されたシートは、コロナ処理に先だってスリップ剤が表面に移動することができるように、準備から数日後にコロナ処理された。
【0041】
REXAMの商標権付きの被覆アルミニウムから形成され「マット」仕上された表面を有した平坦な飲料缶材料を用いて、約1年後にキャリアシートは摩擦に関して測定された。図6に関して記載されたような傾斜摩擦係数試験器を用いて摩擦を測定した。以下の表1に示すように、コロナ処理されたキャリアシートサンプルは、一年後に、未処理のサンプルの約2倍の平均摩擦係数を有している。
【表1】

【0042】
実施例2では、コロナ処理していない5つのキャリアシートサンプルと、実施例1と同様にコロナ処理した5つのキャリアシートサンプルを準備した。この例では、キャリアシートは、同様の缶材料と技術を用いて約2年後に摩擦が測定された。表2に示すように、コロナ処理したサンプルは、2年後であっても未処理のサンプルの約2倍の平均摩擦係数を有している。
【表2】

【0043】
実施例3は、FLUMEの商標名でプラズマトリート(Plasmatreat)社市販されているプラズマ処理装置を用いて行われた。19.1mm(0.75inch)幅の細い帯材が選択的にプラズマ処理された。プラズマ処理装置は、約0.25kWの最高出力に設定された。シートサンプルは、滞留時間が0.25秒、0.125秒、0.083秒、0.0625秒となるように、6.1、12.2、18.3および24.4m/min(20、40、60および80feet/min)で選択的に処理された。選択的プラズマ処理は低速では一層重かったが、全ての速度で処置は行うことができた。これらのサンプルは更なる測定は行われなかった。
【0044】
ここに記載する本発明の実施形態は現時点で好ましいが、本発明の精神と範囲とを逸脱することなく、種々の修正と改良とが可能である。本発明の範囲は、特許請求の範囲に記載されており、その意味するところ、および、均等の範囲に入る全ての変更は、その中に含まれると考えるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】1つの高エネルギ処理領域と2つの低エネルギ処理領域とを有した本発明の柔軟なキャリアの一例を示す図である。
【図2】1つの高エネルギ処理領域と2つの低エネルギ処理領域とを有した本発明の柔軟なキャリアの他の例を示す図である。
【図3】大きな高エネルギ処理領域を有した図2の柔軟なキャリアに類似する柔軟なキャリアを示す図である。
【図4】2つの高エネルギ処理領域と3つの低エネルギ処理領域とを有した図2の柔軟なキャリアに類似する柔軟なキャリアを示す図である。
【図5】柔軟なキャリアまたは前駆フィルムの一部のみを選択的処理するためのコロナ処理装置の略図である。
【図6】キャリアから容器への摩擦を測定するための装置の略図である。
【図7】複数の容器と接触する本発明の柔軟なキャリアを示す図である。
【符号の説明】
【0046】
20 キャリア
22 容器保持部
25 主開口部
24 高エネルギ処理領域
26 低エネルギ処理領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の容器を運ぶための柔軟なキャリアにおいて、
柔軟なシートと、
前記シートに形成され、容器を受容するための主開口部を有した複数の容器保持部とを具備し、
容器保持部の各々は、一層高いエネルギ処理された容器と、一層低いエネルギ処理された部分とを有し、
前記エネルギ処理が、コロナ処理、プラズマ処理、およびその燃焼から成る群から選択される柔軟なキャリア。
【請求項2】
容器保持部において一層低いエネルギ処理された部分を用意する選択的エネルギ領域を更に具備する請求項1に記載の柔軟なキャリア。
【請求項3】
前記選択的エネルギ処理された領域はキャリアの長手方向に延設されている請求項2に記載の柔軟なキャリア。
【請求項4】
容器保持部低エネルギ処理された部分を包囲する全くエネルギ処理されていない1または複数の領域を更に具備する請求項2に記載の柔軟なキャリア。
【請求項5】
前記容器保持部において高エネルギ処理された部分は、少なくとも約210W/m2/min(約20W/ft2/min)のコロナ処理を受ける請求項1に記載の柔軟なキャリア。
【請求項6】
前記容器保持部において高エネルギ処理された部分は、少なくとも約430W/m2/min(約40W/ft2/min)のコロナ処理を受ける請求項1に記載の柔軟なキャリア。
【請求項7】
2〜12個の前記容器保持部を具備する請求項1に記載の柔軟なキャリア。
【請求項8】
把持部として作用する1または複数の第2の開口部を更に具備する請求項1に記載の柔軟なキャリア。
【請求項9】
複数の容器を運ぶための柔軟なキャリアにおいて、
ポリオレフィン組成物から成る柔軟なシートと、
前記シートに形成され容器を受容するための主開口部を有した複数の容器保持部であって、容器保持部の各々が、一層高いエネルギ処理された容器と、一層低いエネルギ処理された部分とを有して成る容器保持部と、
前記高エネルギ処理された部分を包囲する少なくとも1つの選択的エネルギ処理領域とを具備し、
前記エネルギ処理が、コロナ処理、プラズマ処理、およびその燃焼から成る群から選択される柔軟なキャリア。
【請求項10】
前記エネルギ処理がコロナ処理から成り、前記選択的エネルギ処理領域が選択的コロナ処理された領域である請求項9に記載の柔軟なキャリア。
【請求項11】
前記選択的コロナ処理された領域は、約210〜2690W/m2/min(約20〜250W/ft2/min)のコロナ処理を受ける請求項10に記載の柔軟なキャリア。
【請求項12】
前記選択的コロナ処理された領域は、約320〜1620W/m2/min(約30〜150W/ft2/min)のコロナ処理を受ける請求項10に記載の柔軟なキャリア。
【請求項13】
前記選択的コロナ処理された領域は、約430〜1080W/m2/min(約40〜100W/ft2/min)のコロナ処理を受ける請求項10に記載の柔軟なキャリア。
【請求項14】
前記エネルギ処理はプラズマ処理から成り、前記選択的エネルギ処理された領域は選択的プラズマ処理された領域を具備する請求項9に記載の柔軟なキャリア。
【請求項15】
前記ポリオレフィン組成物は、高圧低密度ポリエチレンポリマーを具備する請求項9に記載の柔軟なキャリア。
【請求項16】
前記低密度ポリエチレンポリマーは、エチレン−一酸化炭素共重合体を具備する請求項15に記載の柔軟なキャリア。
【請求項17】
前記ポリオレフィン組成物は、更に、シングルサイト触媒エチレン−アルファオレフィン共重合体プラストマーを具備する請求項15に記載の柔軟なキャリア。
【請求項18】
前記ポリオレフィン組成物は、更に、スリップ剤を具備する請求項9に記載の柔軟なキャリア。
【請求項19】
前記スリップ剤は、エルカ酸アミド(erucamide)を具備する請求項18に記載の柔軟なキャリア。
【請求項20】
前記スリップ剤は、オレアミドを具備する請求項18に記載の柔軟なキャリア。
【請求項21】
複数の容器を運ぶための柔軟なキャリアにおいて、
ポリマー組成物により形成された柔軟なシートと、
前記シートに形成され、容器を受容するための主開口部を有した複数の容器保持部とを具備し、
前記容器保持部の各々の一部を包囲する少なくとも1つの選択的エネルギ処理された領域と、
前記容器保持部の各々の他の部分を包囲する少なくとも1つのエネルギ処理されていない領域とを具備する柔軟なキャリア。
【請求項22】
前記選択的エネルギ処理された領域は、選択的コロナ処理された領域を具備する請求項21に記載の柔軟なキャリア。
【請求項23】
前記選択的コロナ処理された領域は、少なくとも約210W/m2/min(約20W/ft2/min)のコロナ処理を受ける請求項22に記載の柔軟なキャリア。
【請求項24】
前記選択的コロナ処理された領域は、少なくとも約320W/m2/min(約30W/ft2/min)のコロナ処理を受ける請求項22に記載の柔軟なキャリア。
【請求項25】
前記選択的コロナ処理された領域は、少なくとも約430W/m2/min(約40W/ft2/min)のコロナ処理を受ける請求項22に記載の柔軟なキャリア。
【請求項26】
前記選択的エネルギ処理された領域は、選択的プラズマ処理された領域を具備する請求項21に記載の柔軟なキャリア。
【請求項27】
前記ポリマー組成物は、エチレンポリマーとスリップ剤とを具備する請求項21に記載の柔軟なキャリア。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2007−514616(P2007−514616A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541218(P2006−541218)
【出願日】平成16年11月3日(2004.11.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/036592
【国際公開番号】WO2005/051646
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(591203428)イリノイ トゥール ワークス インコーポレイティド (309)
【Fターム(参考)】