高スループットの非対称メンブレン
【課題】大量の流体の濾過および一定量の液体の高速濾過に適した、高スループットで高流速のメンブレンを提供する。
【解決手段】メンブレンの「目の詰んだ(tight)」側2が、「目の粗い(open)」面8または高多孔性の網目状の表面を有する、1つまたは複数の層で形成される微孔性非対称メンブレンを記述する。その微孔性非対称メンブレンは、たとえ、血清または血漿などの粘性物質を濾過するために使用する場合でも、大きなスループットおよび高い流速を有する。メンブレン表面は、注型ドープ剤を適切に選択することにより、アブレーションまたは溶媒和によって、あるいは2層以上の層状構造として、形成することができる。
【解決手段】メンブレンの「目の詰んだ(tight)」側2が、「目の粗い(open)」面8または高多孔性の網目状の表面を有する、1つまたは複数の層で形成される微孔性非対称メンブレンを記述する。その微孔性非対称メンブレンは、たとえ、血清または血漿などの粘性物質を濾過するために使用する場合でも、大きなスループットおよび高い流速を有する。メンブレン表面は、注型ドープ剤を適切に選択することにより、アブレーションまたは溶媒和によって、あるいは2層以上の層状構造として、形成することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、非対称メンブレンに関し、より詳しくは、実質的に網目状の表面微細構造を有する非対称メンブレンに関する。
【背景技術】
【0002】
長年使用されている非対称メンブレンは、メンブレンの厚さの範囲内で、メンブレンの細孔径を位置の関数として変化させることを特徴とする。最も一般的な非対称メンブレンは、細孔径が、一方の面(しばしば、「目の詰んだ」側と呼ばれる)から他方の面(しばしば「目の粗い」側と呼ばれる)に向かって、徐々にかつ連続的に増加する、傾斜構造をしている。これらのメンブレンは、同様の対称メンブレンよりも大きな流速を有するので、価値がある。これらのメンブレンは、細孔径の大きい方の側を上流に向けた構成で使用するとき、同様の対称メンブレンと比較して、多くの場合、より大きなスループットを有する。1981年4月14日付けのD.M de Winterの米国特許第4,261,834号を参照のこと。非対称メンブレンは、食物および飲料水の濾過、薬剤および生物薬剤の製造、実験室用の濾過、水の濾過などの様々な分野で使用されている。ポリエーテルスルホンなどの芳香族スルホンをベースとした非対称メンブレンは、高温、ならびに強い酸性および塩基性条件で使用できるので、好ましい。
【0003】
非対称メンブレンはすべて、厚い密な表面領域、あるいは多くの場合、表面上に形成され、いくらか深さ方向に延びている皮を有する。1986年12月16日付けのW. Wrasidloの米国特許第4,629,563号を参照のこと。密な表面および/または皮は、顕微鏡写真を用いて見ることができる。密な表面は、無数の細孔によって区切られた、連続した密なフィルム表面として示される。皮は、断面顕微鏡写真では、メンブレンの厚み中に延びる密な層として見ることができる。米国特許第4,629,563号を参照のこと。
【0004】
もっと最近では、多層非対称メンブレンが生産されている。PCT国際公開WO01/89673を参照のこと。このメンブレンは、メンブレン前駆体材料の2種以上の異なる溶液から、同時に注型される2つ以上の層から形成される。独特の非対称構造が、本発明のメンブレンを用いて形成される。
【0005】
大抵の非対称メンブレンは、水または水ベースの溶液に対しては満足すべき働きをするが、粘性のあるまたは高負荷の流れに関しては、たとえ、目の粗い側を上流に向けた好ましい構成で使用した場合でも、早期に詰まる傾向があり、スループットが不十分である。そのような流れは、比較的ありふれたものであり、シロップおよび砂糖を含む製品などの様々な食物の流れ、生物製剤または実験室の環境あるいは血液、血漿およびその他の血液製品で使用される血清の流れが含まれ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,261,834号明細書
【特許文献2】米国特許第4,629,563号明細書
【特許文献3】国際公開第01/89673号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のことに照らして、大量の流体の濾過および一定量の液体の高速濾過に適した、高スループットで高流速のメンブレンが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、メンブレンの「目の詰んだ」側が、「目の粗い」またはその他の形の高多孔性の網目状表面を有し、前記表面が高スループットを促進するように構成されている、1層または複数の層からできている、微孔性非対称メンブレンを対象とする。この微細孔非対称メンブレンは、血清や血漿などの粘性流体用に使用したときでさえも、高スループットおよび高流速を有する。
【0009】
本発明は、その説明に用いられるどの理論にも限定されるものではないが、高多孔性の網目状表面は、流れに対して比較的より多くの開口を提供し、構造内の異なった細孔間により大きな相互接続性をもたらし、それによって細孔が完全に詰まる傾向を低下させると考えられている。
【0010】
注型ドープを適切に選択することを含む、いわゆる「共注型(co−cast)」法を用いて、メンブレンの表面を、アブレーションまたは溶媒和によって、あるいは2つの層以上の構造として形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】「皮のない」非対称メンブレンの断面を示す顕微鏡写真である。
【図1B】図1Aのメンブレンの、目の詰んだ表面を示す顕微鏡写真である。
【図2A】本発明による2層非対称メンブレンの断面を示す顕微鏡写真である。
【図2B】図2Aのメンブレンの、目の詰んだ表面を示す図である。
【図3】実施例1のメンブレンの滞留時間を示すグラフである。
【図4】実施例1のメンブレンの流速を示すグラフである。
【図5】実施例2のメンブレンの滞留時間を示すグラフである。
【図6】実施例2のメンブレンの流速を示すグラフである。
【図7】従来技術による低多孔性表面メンブレンの目の詰んだ表面を示す顕微鏡写真である。
【図8】本発明の技術によって表面が改変された後の、従来技術による低多孔性表面メンブレンの目の詰んだ表面を示す顕微鏡写真である。
【図9】最隣接細孔データを示すグラフである。
【図10】従来技術によるメンブレンの目の詰んだ表面を示す顕微鏡写真である。
【図11】本発明によるメンブレンの目の詰んだ表面を示す顕微鏡写真である。
【図12】実施例7に記載のデータをプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ある種の微孔性非対称メンブレンは、目の詰んだ側に形成された「皮」を有する。米国特許第4,629,536号を参照のこと。この「皮」を持っていないものは、しばしば「皮の表面」またはその他の形で多孔度が減少した目の詰んだ表面を有する。図1Aおよび1Bは、そのような従来技術を示し、それぞれ皮が表面にある非対称メンブレンの、断面および目の詰んだ表面の顕微鏡写真を示す。図1Bでは、メンブレンの目の詰んだ表面は、相対的に低い多孔度を有する。
【0013】
対照的に、本発明は、高スループット濾過によく適した、微孔性非対称メンブレンを提供するものであり、そのメンブレンは、皮または皮タイプの表面よりもむしろ、またはその代わりに、メンブレン上に形成され、または設けられた、網目状の多孔性表面を特徴とする。この網目状の多孔性表面は、その他の構造上の特徴とあいまって、泡立ち点正規化血清滞留時間が2未満であるように構成され、したがってそれを提供する。
【0014】
本発明の一実施形態を図2Aおよび2Bに示す。この実施例では、構造は、PCT国際公開WO01/89673に別のやり方で記載されている基本的な方法に従って、2つの層で形成されており、それぞれがメンブレン前駆体の異なる溶液から注型される。図2Aに見られるように、この構造は、一方の側6から他方の側8へ、構造全体を通して非対称の多孔性度を有する2つの層2および4を示す。上の層2は下部の層より相対的に薄い。図2Bに見られるように、メンブレンの目の詰んだ側の表面は、目の粗い、網目状の高多孔性表面を有する。
【0015】
本発明の第2の実施形態は、予め成形された単層または多層の非対称メンブレンから作製されており、予め定められた、所期の使用のための、許容されるスループットまたは流速をもたらすには目の詰んだ側の多孔度は低すぎる。本発明によれば、メンブレンの目の詰んだ側の表面は改変されて、高多孔度の表面(すなわち、表面が「目の粗い」)を作りだし、目の粗い網目状の表面をもたらす。
【0016】
この成形後の改変は、WO01/89673に従って作製された(すなわち、目の詰んだ側の多孔度が、許容されるスループットまたは流速をもたらすには依然として低すぎる)、単層非対称メンブレンおよび2層メンブレンの両方に施すことができる。
【0017】
成形後の表面改変は、様々な方法で、たとえば、機械的に、化学的に、または照射にさらすことにより達成できる。
【0018】
機械的には、ある種のメンブレン表面を、目の粗い網目状の表面をもたらすのに十分な条件の下で、細かいサンドペーパーまたはエメリ材料(600グリット以上)で研磨するか、あるいは砂、シリカ、粉砕したトウモロコシ殻、または堅果の殻によってサンドブラストすることができる。
【0019】
化学的には、ある種のメンブレンの表面は、それを溶媒にさらして表面のポリマー材料を部分的に除去することができる。化学的改変には、いくつかの利点があり、その1つは、溶媒が除去に影響を及ぼす深さを制御できることである。たとえば、メンブレンの細孔を、表面改変溶媒とは不混和の非溶媒で満たして、露出された非溶媒に対する溶媒の相互作用を制限することができ、あるいは他の希釈剤が溶媒の濃度に、従って反応性に影響することになる。望ましい方法は、細孔を非混和性の非溶媒で満たすことと、溶媒の濃度を制御することの両方を組み合わせて用いることである。
【0020】
ある種のメンブレン表面を、表面にあるポリマー材料の電磁波に暴露された部分を除去するために、または除去可能にするために十分な強度、波長の電磁波に、十分な時間、暴露することもできる。照射方法には、それだけに限らないが、コロナ放電、プラズマアブレーション、およびレーザアブレーションが含まれる。かかる方法の詳細は、特許および技術文献で入手できる。
【0021】
多層構造を形成する際は、好ましい方法は、PCT国際公開WO01/89673に規定された手順に厳密に従う。特に、2種の異なるメンブレン前駆体溶液を、担体上に同時に流し込んで、その上に2つ以上の層を形成する。次いで、溶液で被覆された担体を、凝析浴中で処理する。場合によっては、その溶媒または複数の溶媒を抽出する。次に、担体を、一時的にせよ、除去する。次いで、その結果得られた2層のメンブレンを乾燥し、基本的に何時でも使用できるようにする。
【0022】
ポリマー、溶媒または非溶媒の濃度、および粘度、添加剤、または溶液の処理、またはこれらのいずれかによる組み合わせを変えることにより、異なる層に適した、異なる溶液を形成して、所望の多層構造を生み出すことができる。順次注型(sequential casting)、空気注型(air casting)、融液注型(melt casting)、および他の転相型(phase inversion type)の方法を含む他の方法は、よく知られており、多層構造を作製するために用いることができる。
【0023】
米国特許第4,629,563号、5,444,097号、5,869,174号、および5,886,059号のいずれかに従って、単層構造を作製することができる。これらの方法では、安定した、または準安定の溶液を形成し、次に、その溶液を担体上に流し込み、場合によってその材料を所定の時間、大気に曝し、次いで、メンブレンを凝析浴中に置く。場合によっては、一時的にせよ、溶媒および担体を除去し、次いで、その結果得られたメンブレンを乾燥する。
【0024】
どちらの実施形態にとっても好ましいポリマーには、それだけに限らないが、PVDF、Nylon66などのナイロン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアリールスルホン、PVC、PET、ポリカーボネート、セルロース、再生セルロース、酢酸セルロースや硝酸セルロースなどのセルロースエステル、ポリスチレン、ポリエーテルイミド、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、アクリルポリマーまたはメタクリルポリマーのコポリマー、または上記のいずれかの混合物が含まれる。
【0025】
通常、本発明のポリマー溶液は、少なくとも1種のポリマーと、1種または複数のポリマー用の少なくとも1種の溶媒とを含む。この溶液は、前記1種または複数のポリマーにとって、不十分な溶媒または非溶媒を含有することができる。かかる成分は、当業界では時々「ポロジェン(porogen)」と呼ばれる。溶液は、好ましくは均質である。溶液は、場合によっては、ポリマーにとって非溶媒である、1種または複数の成分を含むことができる。ポリマー溶液は、時として安定であり(良好な溶媒品質)、時として準安定でありうる。溶液はまた、潜在的により低い臨界溶解温度またはより高い臨界溶解温度を有し得る。このような溶液の成分の例は、当業界ではよく知られている。有用な溶媒には、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、テトラメチル尿素、アセトン、ジメチルスルホキシドが含まれる。有用なポロジェンには、ホルムアミド、種々のアルコールおよび多価ヒドロキシ化合物、水、種々のポリエチレングリコール、および塩化カルシウムおよび塩化リチウムなど種々の塩が含まれる。
【0026】
化合物の濃度、粘度、添加剤、および(形成の前、間、後の)処理を変えて、同じポリマーおよび溶媒から、多層構造の層を形成することができ、または異なる層に異なるポリマーを使用することができる。異なるポリマーを使用する場合は、相容性のポリマーを選択しなければならない。加えて、溶媒および相分離材料は、他の層に悪影響を及ぼさないように、できれば同一であり、少なくとも相溶性でなければならない。
【0027】
本発明の微細構造は、約0.01ミクロン〜約10ミクロン、好ましくは約0.01ミクロン〜約2ミクロンの平均細孔径を有することができる。
【0028】
非対称メンブレンは、約2:1から約1000:1、好ましくは約2:1から約100:1の細孔径勾配を有することができる。この非対称性は、層の片側の主表面の平均細孔径と、この層の、もう一方の主表面の平均細孔径を比較することによって測定される。本発明に従って、それぞれが異なるまたは同一の非対称性を有する、2つ以上の非対称層を作製することができる。
【0029】
加えて、メンブレンの厚さを変えることができ、2つ以上の層を使用するときは、それぞれの層の厚さを広範囲に変えることができ、自立性の一体化された多層構造を得ることができる。通常、メンブレンの厚さが、50ミクロンと200ミクロンの間にあると、濾過特性が良好で自立性があるので、これが望ましい。本発明によって、同じ全体厚さを達成することができると同時に、残りの層の厚さに対する、ある1つの層の相対的な厚さを制御することができて、独特の、望ましいメンブレン構造を作製することができる。一般的に、1つの層を10ミクロンという薄さにすることができ、残りの構造が適切な厚さである限り、一体化した多層構造が得られることになる。したがって、たとえば、150ミクロンの厚さのメンブレンで、約10から約140ミクロンの厚さの、最初の層を得ることができ、一方で残りの層は、それに対応して約140ミクロンから約10ミクロンの厚さとなる。
【実施例1】
【0030】
Fetal Bovine Serum(牛胎児血清)(FBS)(JRH Bioscience、Inc.レネクサ、カンサス州、から市販)1リットル、Dubelco Modified Eagle 培地(133.7g)(Invitrogen/Gibco、カールズバッド、カリフォルニア州、から市販)1瓶、重炭酸ナトリウム37グラム、100mlのHepes緩衝液(Sigma−Aldrich US、セントルイス、ミズリー州、から市販)、および脱イオン水10リットルを含む、試験溶液を調製した。使用する前にこの溶液を攪拌した。
【0031】
真空濾過器のホールダ中に47mmの円板を設置した。異なる3種類の非対称メンブレン、すなわち、US Filter Corporation(現在は、Pall Corporation、East Hills、ニューヨーク)からの非対称ポリスルホンメンブレン;Millipore Corporation、ベッドフォード、マサチューセッツ州、から市販の0.2ミクロンのExpressメンブレン;および本発明による4個のメンブレン(試料 1A〜D)について、16水銀柱インチの圧力を用いて、秒で表した滞留時間を、500mlの水および種々の容積の溶液について測定した。
【0032】
水の流量は以下の通りである。
【0033】
【表1】
【0034】
溶液の一定量を濾過するのに必要な滞留時間をプロットすると、図3に示すグラフが得られる。本発明のメンブレンは、従来技術のメンブレンに対して、明らかな利点、滞留時間の短さを有することがそこから読み取れる。このようなメンブレンによって濾過できる全容積、およびこのようなメンブレンが、溶液の標準量(500ml)を濾過する速度について、良好な結果が得られる。
【0035】
驚くべきことに、試料メンブレンの流速は、従来技術のメンブレンより速く、速いまま留まっている。(図4を参照のこと)。
【0036】
このデータに基づいて、これらのフィルタにより、十分大きい流速で濾過できる流体の全量を、外挿して推定することができる。
【0037】
【表2】
【実施例2】
【0038】
New Born Calf Serum(新生児牛血清)(Gibco BRL)250ml、Dubelco Modified Eagle培地(133.7g)1瓶、重炭酸ナトリウム37グラム、Hepes緩衝液100ml、および脱イオン水10リットルから構成される試験溶液を調製した。使用する前に、この溶液を攪拌した。
【0039】
真空濾過器のホールダ中、47mmの円板を設置した。16水銀柱インチの圧力を用いて、Millipore Corporation、ベッドフォード、マサチューセッツ州、から市販の0.2ミクロンのExpressメンブレンおよび本発明による4個のメンブレン(試料 2A〜D)上で、種々の容積の溶液の、秒で表した滞留時間を測定した。
【0040】
この実施例のデータから作成した図5および6から、本発明の試料メンブレンが、従来技術のメンブレンを凌ぐ性能であることが分かる。
【0041】
この溶液の一定容積を濾過することができる滞留時間をプロットすると、試料メンブレンが、濾過されうる流れおよび全容積の両方で、現在のメンブレンを上回る利点を有することが示される。この実験のデータに基づいて、47mmの直径の円板を通って濾過されうる容積を推定すると、以下のようになる。
【0042】
【表3】
【実施例3】
【0043】
PCT国際公開WO01/89673に記載の手順により、共注型されたメンブレンを作製した(18%+12%PES(ポリエーテルスルホン)−NMP(Nメチルピロリドン)−TEG(トリエチレングリコール))。得られたメンブレンの全厚さは、約140ミクロンであり、メンブレン内の、上の方の層は約10ミクロンの厚さであった。このメンブレンは、0.45定格Suporメンブレン(Pall−Gelman)と類似の泡立ち点を有していた。水および牛胎児血清(fetal bovine serum)の両方について、流れを試験した。次の表は、このメンブレンが47mmの円板を通して血清500mlを濾過することができる時間の減少分を示す。参照として、0.2定格Express(商標)メンブレンを使用した。
【0044】
【表4】
【実施例4】
【0045】
異なる4種類のメンブレンについて牛胎児血清(fetal bovine serum)試験を実施した。従来技術の単層非対称メンブレン(Express(商標))、PES共注型メンブレン、Sartopore2非対称メンブレン(両方の層は、両方の層が取り出されるカートリッジの方向に向いている)、およびSartopore2製品の0.2定格メンブレン層(Sartorius AG、ゲッチンゲン、ドイツ、から市販)。
【0046】
この結果、FBS500mlを濾過するための時間(秒表示)は、以下の通りであった。
【0047】
【表5】
【実施例5】
【0048】
2個の異なる泡立ち点を有する、単層微孔性非対称メンブレン(Millipore Corporation、ベッドフォード、マサチューセッツ州、から市販、Millipore Express 0.2ミクロンメンブレン)を得た。それぞれのメンブレンの、目の詰んだ側の低多孔度表面を、プラズマチャンバ内で、酸素を使用してアブレーションした。図7は、プラズマアブレーションを行う前の、メンブレンの中の、1つの目の詰んだ表面を示す。図8は、プラズマアブレーション後の、そのメンブレンの目の詰んだ表面を示す。
【0049】
アブレーションしたメンブレンについて、流れと流量の試験をした。
【0050】
観測されたように、低多孔度の層をプラズマアブレーションによって除去すると、処理していない試料より性能が向上した。特に、処理していないメンブレンと比較して、水の滞留時間はほぼ25%減少した。牛胎児血清(fetal bovine serum)(FBS)については、滞留時間は、約17%減少した。
【0051】
データによれば、改善された性能は、単に泡立ち点の変化の関数ではないことが示唆される。この点については、水の泡立ち点および水の滞留時間およびFBSの滞留時間の間には、直線関係が存在すると仮定することができる。経験的データから求めた前記関係は、水の滞留時間では4.8秒/psi、FBSでは2.8秒/psiであった。この関係を用いて、性能改善を、泡立ち点の変化のみに帰すことはできない。泡立ち点のみの変化であれば、水の滞留時間でほんの約10%、FBSで4%の予期された性能向上がもたらされるはずである。表面多孔度の増大により、メンブレン性能は、測定できる明白な効果を受ける。
【実施例6】
【0052】
従来技術による、通常の目の詰んだ側の非対称メンブレンおよび本発明による高度に網目状化された構造との差を定量化するために、従来技術のメンブレン(Millipore Express0.2メンブレン)および本発明のメンブレン(0.2ミクロンの定格の細孔径を有する2層構造)の目の詰んだ側の細孔分布を分析した。それぞれの目の詰んだ表面の顕微鏡写真を使用して、2つの測定を行った:「分別化領域パーセント」、これは表面多孔度の尺度である;「最隣接距離」、これは細孔間の平均距離の尺度である。これらの測定に基づいて、以下のデータを集めた。
【0053】
【表6】
【0054】
図9は、2つのメンブレンの、最隣接データのグラフによる表示を示す。
【0055】
図10は、この実施例で使用した本発明の目の詰んだ表面の顕微鏡写真を示す。
【0056】
図11は、この実施例で使用した従来技術の目の詰んだ表面の顕微鏡写真を示す。
【0057】
本発明のメンブレンの分別化領域パーセントは、従来技術のメンブレンの2倍より大きい。加えて、本発明のメンブレンの、目の詰んだ表面上の隣接細孔間の間隔は、従来技術のメンブレンの約半分である。
【実施例7】
【0058】
共注型メンブレンを、PCT国際公開WO01/89673に記載の手順に従って、作製した。得られた「低泡立ち点」表面改変共注型メンブレンについて、牛胎児血清(fetal bovine serum)(FBS)試験および水の滞留時間試験を実施した。41秒の滞留時間(FBSの500ml)および21.5psiで見える水の泡が観測され、1.9の比率(すなわち、FBS滞留時間を、水の滞留時間で割る)をもたらした。
【0059】
FBSの滞留時間試験は、実施例1に記載したように実施した。特に、試験溶液は、Fetal Bovine Serum1リットル、Dobelco Modified Eagle medium1瓶、重炭酸ナトリウム塩37g、Hepes溶液100mlおよび脱イオン水10リットルから作製した。使用する前に、この溶液を攪拌した。47mmの円板を真空フィルタホールダに設置し、真空ホールダファンネルで密閉した。16水銀柱インチの真空を使用して、血清を500ml濾過するときの秒で表した滞留時間を測定し、41秒を得た。円盤上で測定した水の泡立ち点は、21.5psiであった。
【0060】
上のデータを使用し、次に、FBS滞留時間(秒)を水泡立ち点(psi)で割り算した。この比率を図12および以下の表に示した。
【0061】
【表7】
発明したメンブレン(実施例3、4、および7)は、それぞれ、泡立ち点補正したFBS滞留時間が、2より小さかった。残りの市販メンブレンの値は、著しく高い。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、非対称メンブレンに関し、より詳しくは、実質的に網目状の表面微細構造を有する非対称メンブレンに関する。
【背景技術】
【0002】
長年使用されている非対称メンブレンは、メンブレンの厚さの範囲内で、メンブレンの細孔径を位置の関数として変化させることを特徴とする。最も一般的な非対称メンブレンは、細孔径が、一方の面(しばしば、「目の詰んだ」側と呼ばれる)から他方の面(しばしば「目の粗い」側と呼ばれる)に向かって、徐々にかつ連続的に増加する、傾斜構造をしている。これらのメンブレンは、同様の対称メンブレンよりも大きな流速を有するので、価値がある。これらのメンブレンは、細孔径の大きい方の側を上流に向けた構成で使用するとき、同様の対称メンブレンと比較して、多くの場合、より大きなスループットを有する。1981年4月14日付けのD.M de Winterの米国特許第4,261,834号を参照のこと。非対称メンブレンは、食物および飲料水の濾過、薬剤および生物薬剤の製造、実験室用の濾過、水の濾過などの様々な分野で使用されている。ポリエーテルスルホンなどの芳香族スルホンをベースとした非対称メンブレンは、高温、ならびに強い酸性および塩基性条件で使用できるので、好ましい。
【0003】
非対称メンブレンはすべて、厚い密な表面領域、あるいは多くの場合、表面上に形成され、いくらか深さ方向に延びている皮を有する。1986年12月16日付けのW. Wrasidloの米国特許第4,629,563号を参照のこと。密な表面および/または皮は、顕微鏡写真を用いて見ることができる。密な表面は、無数の細孔によって区切られた、連続した密なフィルム表面として示される。皮は、断面顕微鏡写真では、メンブレンの厚み中に延びる密な層として見ることができる。米国特許第4,629,563号を参照のこと。
【0004】
もっと最近では、多層非対称メンブレンが生産されている。PCT国際公開WO01/89673を参照のこと。このメンブレンは、メンブレン前駆体材料の2種以上の異なる溶液から、同時に注型される2つ以上の層から形成される。独特の非対称構造が、本発明のメンブレンを用いて形成される。
【0005】
大抵の非対称メンブレンは、水または水ベースの溶液に対しては満足すべき働きをするが、粘性のあるまたは高負荷の流れに関しては、たとえ、目の粗い側を上流に向けた好ましい構成で使用した場合でも、早期に詰まる傾向があり、スループットが不十分である。そのような流れは、比較的ありふれたものであり、シロップおよび砂糖を含む製品などの様々な食物の流れ、生物製剤または実験室の環境あるいは血液、血漿およびその他の血液製品で使用される血清の流れが含まれ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,261,834号明細書
【特許文献2】米国特許第4,629,563号明細書
【特許文献3】国際公開第01/89673号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のことに照らして、大量の流体の濾過および一定量の液体の高速濾過に適した、高スループットで高流速のメンブレンが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、メンブレンの「目の詰んだ」側が、「目の粗い」またはその他の形の高多孔性の網目状表面を有し、前記表面が高スループットを促進するように構成されている、1層または複数の層からできている、微孔性非対称メンブレンを対象とする。この微細孔非対称メンブレンは、血清や血漿などの粘性流体用に使用したときでさえも、高スループットおよび高流速を有する。
【0009】
本発明は、その説明に用いられるどの理論にも限定されるものではないが、高多孔性の網目状表面は、流れに対して比較的より多くの開口を提供し、構造内の異なった細孔間により大きな相互接続性をもたらし、それによって細孔が完全に詰まる傾向を低下させると考えられている。
【0010】
注型ドープを適切に選択することを含む、いわゆる「共注型(co−cast)」法を用いて、メンブレンの表面を、アブレーションまたは溶媒和によって、あるいは2つの層以上の構造として形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】「皮のない」非対称メンブレンの断面を示す顕微鏡写真である。
【図1B】図1Aのメンブレンの、目の詰んだ表面を示す顕微鏡写真である。
【図2A】本発明による2層非対称メンブレンの断面を示す顕微鏡写真である。
【図2B】図2Aのメンブレンの、目の詰んだ表面を示す図である。
【図3】実施例1のメンブレンの滞留時間を示すグラフである。
【図4】実施例1のメンブレンの流速を示すグラフである。
【図5】実施例2のメンブレンの滞留時間を示すグラフである。
【図6】実施例2のメンブレンの流速を示すグラフである。
【図7】従来技術による低多孔性表面メンブレンの目の詰んだ表面を示す顕微鏡写真である。
【図8】本発明の技術によって表面が改変された後の、従来技術による低多孔性表面メンブレンの目の詰んだ表面を示す顕微鏡写真である。
【図9】最隣接細孔データを示すグラフである。
【図10】従来技術によるメンブレンの目の詰んだ表面を示す顕微鏡写真である。
【図11】本発明によるメンブレンの目の詰んだ表面を示す顕微鏡写真である。
【図12】実施例7に記載のデータをプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ある種の微孔性非対称メンブレンは、目の詰んだ側に形成された「皮」を有する。米国特許第4,629,536号を参照のこと。この「皮」を持っていないものは、しばしば「皮の表面」またはその他の形で多孔度が減少した目の詰んだ表面を有する。図1Aおよび1Bは、そのような従来技術を示し、それぞれ皮が表面にある非対称メンブレンの、断面および目の詰んだ表面の顕微鏡写真を示す。図1Bでは、メンブレンの目の詰んだ表面は、相対的に低い多孔度を有する。
【0013】
対照的に、本発明は、高スループット濾過によく適した、微孔性非対称メンブレンを提供するものであり、そのメンブレンは、皮または皮タイプの表面よりもむしろ、またはその代わりに、メンブレン上に形成され、または設けられた、網目状の多孔性表面を特徴とする。この網目状の多孔性表面は、その他の構造上の特徴とあいまって、泡立ち点正規化血清滞留時間が2未満であるように構成され、したがってそれを提供する。
【0014】
本発明の一実施形態を図2Aおよび2Bに示す。この実施例では、構造は、PCT国際公開WO01/89673に別のやり方で記載されている基本的な方法に従って、2つの層で形成されており、それぞれがメンブレン前駆体の異なる溶液から注型される。図2Aに見られるように、この構造は、一方の側6から他方の側8へ、構造全体を通して非対称の多孔性度を有する2つの層2および4を示す。上の層2は下部の層より相対的に薄い。図2Bに見られるように、メンブレンの目の詰んだ側の表面は、目の粗い、網目状の高多孔性表面を有する。
【0015】
本発明の第2の実施形態は、予め成形された単層または多層の非対称メンブレンから作製されており、予め定められた、所期の使用のための、許容されるスループットまたは流速をもたらすには目の詰んだ側の多孔度は低すぎる。本発明によれば、メンブレンの目の詰んだ側の表面は改変されて、高多孔度の表面(すなわち、表面が「目の粗い」)を作りだし、目の粗い網目状の表面をもたらす。
【0016】
この成形後の改変は、WO01/89673に従って作製された(すなわち、目の詰んだ側の多孔度が、許容されるスループットまたは流速をもたらすには依然として低すぎる)、単層非対称メンブレンおよび2層メンブレンの両方に施すことができる。
【0017】
成形後の表面改変は、様々な方法で、たとえば、機械的に、化学的に、または照射にさらすことにより達成できる。
【0018】
機械的には、ある種のメンブレン表面を、目の粗い網目状の表面をもたらすのに十分な条件の下で、細かいサンドペーパーまたはエメリ材料(600グリット以上)で研磨するか、あるいは砂、シリカ、粉砕したトウモロコシ殻、または堅果の殻によってサンドブラストすることができる。
【0019】
化学的には、ある種のメンブレンの表面は、それを溶媒にさらして表面のポリマー材料を部分的に除去することができる。化学的改変には、いくつかの利点があり、その1つは、溶媒が除去に影響を及ぼす深さを制御できることである。たとえば、メンブレンの細孔を、表面改変溶媒とは不混和の非溶媒で満たして、露出された非溶媒に対する溶媒の相互作用を制限することができ、あるいは他の希釈剤が溶媒の濃度に、従って反応性に影響することになる。望ましい方法は、細孔を非混和性の非溶媒で満たすことと、溶媒の濃度を制御することの両方を組み合わせて用いることである。
【0020】
ある種のメンブレン表面を、表面にあるポリマー材料の電磁波に暴露された部分を除去するために、または除去可能にするために十分な強度、波長の電磁波に、十分な時間、暴露することもできる。照射方法には、それだけに限らないが、コロナ放電、プラズマアブレーション、およびレーザアブレーションが含まれる。かかる方法の詳細は、特許および技術文献で入手できる。
【0021】
多層構造を形成する際は、好ましい方法は、PCT国際公開WO01/89673に規定された手順に厳密に従う。特に、2種の異なるメンブレン前駆体溶液を、担体上に同時に流し込んで、その上に2つ以上の層を形成する。次いで、溶液で被覆された担体を、凝析浴中で処理する。場合によっては、その溶媒または複数の溶媒を抽出する。次に、担体を、一時的にせよ、除去する。次いで、その結果得られた2層のメンブレンを乾燥し、基本的に何時でも使用できるようにする。
【0022】
ポリマー、溶媒または非溶媒の濃度、および粘度、添加剤、または溶液の処理、またはこれらのいずれかによる組み合わせを変えることにより、異なる層に適した、異なる溶液を形成して、所望の多層構造を生み出すことができる。順次注型(sequential casting)、空気注型(air casting)、融液注型(melt casting)、および他の転相型(phase inversion type)の方法を含む他の方法は、よく知られており、多層構造を作製するために用いることができる。
【0023】
米国特許第4,629,563号、5,444,097号、5,869,174号、および5,886,059号のいずれかに従って、単層構造を作製することができる。これらの方法では、安定した、または準安定の溶液を形成し、次に、その溶液を担体上に流し込み、場合によってその材料を所定の時間、大気に曝し、次いで、メンブレンを凝析浴中に置く。場合によっては、一時的にせよ、溶媒および担体を除去し、次いで、その結果得られたメンブレンを乾燥する。
【0024】
どちらの実施形態にとっても好ましいポリマーには、それだけに限らないが、PVDF、Nylon66などのナイロン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアリールスルホン、PVC、PET、ポリカーボネート、セルロース、再生セルロース、酢酸セルロースや硝酸セルロースなどのセルロースエステル、ポリスチレン、ポリエーテルイミド、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、アクリルポリマーまたはメタクリルポリマーのコポリマー、または上記のいずれかの混合物が含まれる。
【0025】
通常、本発明のポリマー溶液は、少なくとも1種のポリマーと、1種または複数のポリマー用の少なくとも1種の溶媒とを含む。この溶液は、前記1種または複数のポリマーにとって、不十分な溶媒または非溶媒を含有することができる。かかる成分は、当業界では時々「ポロジェン(porogen)」と呼ばれる。溶液は、好ましくは均質である。溶液は、場合によっては、ポリマーにとって非溶媒である、1種または複数の成分を含むことができる。ポリマー溶液は、時として安定であり(良好な溶媒品質)、時として準安定でありうる。溶液はまた、潜在的により低い臨界溶解温度またはより高い臨界溶解温度を有し得る。このような溶液の成分の例は、当業界ではよく知られている。有用な溶媒には、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、テトラメチル尿素、アセトン、ジメチルスルホキシドが含まれる。有用なポロジェンには、ホルムアミド、種々のアルコールおよび多価ヒドロキシ化合物、水、種々のポリエチレングリコール、および塩化カルシウムおよび塩化リチウムなど種々の塩が含まれる。
【0026】
化合物の濃度、粘度、添加剤、および(形成の前、間、後の)処理を変えて、同じポリマーおよび溶媒から、多層構造の層を形成することができ、または異なる層に異なるポリマーを使用することができる。異なるポリマーを使用する場合は、相容性のポリマーを選択しなければならない。加えて、溶媒および相分離材料は、他の層に悪影響を及ぼさないように、できれば同一であり、少なくとも相溶性でなければならない。
【0027】
本発明の微細構造は、約0.01ミクロン〜約10ミクロン、好ましくは約0.01ミクロン〜約2ミクロンの平均細孔径を有することができる。
【0028】
非対称メンブレンは、約2:1から約1000:1、好ましくは約2:1から約100:1の細孔径勾配を有することができる。この非対称性は、層の片側の主表面の平均細孔径と、この層の、もう一方の主表面の平均細孔径を比較することによって測定される。本発明に従って、それぞれが異なるまたは同一の非対称性を有する、2つ以上の非対称層を作製することができる。
【0029】
加えて、メンブレンの厚さを変えることができ、2つ以上の層を使用するときは、それぞれの層の厚さを広範囲に変えることができ、自立性の一体化された多層構造を得ることができる。通常、メンブレンの厚さが、50ミクロンと200ミクロンの間にあると、濾過特性が良好で自立性があるので、これが望ましい。本発明によって、同じ全体厚さを達成することができると同時に、残りの層の厚さに対する、ある1つの層の相対的な厚さを制御することができて、独特の、望ましいメンブレン構造を作製することができる。一般的に、1つの層を10ミクロンという薄さにすることができ、残りの構造が適切な厚さである限り、一体化した多層構造が得られることになる。したがって、たとえば、150ミクロンの厚さのメンブレンで、約10から約140ミクロンの厚さの、最初の層を得ることができ、一方で残りの層は、それに対応して約140ミクロンから約10ミクロンの厚さとなる。
【実施例1】
【0030】
Fetal Bovine Serum(牛胎児血清)(FBS)(JRH Bioscience、Inc.レネクサ、カンサス州、から市販)1リットル、Dubelco Modified Eagle 培地(133.7g)(Invitrogen/Gibco、カールズバッド、カリフォルニア州、から市販)1瓶、重炭酸ナトリウム37グラム、100mlのHepes緩衝液(Sigma−Aldrich US、セントルイス、ミズリー州、から市販)、および脱イオン水10リットルを含む、試験溶液を調製した。使用する前にこの溶液を攪拌した。
【0031】
真空濾過器のホールダ中に47mmの円板を設置した。異なる3種類の非対称メンブレン、すなわち、US Filter Corporation(現在は、Pall Corporation、East Hills、ニューヨーク)からの非対称ポリスルホンメンブレン;Millipore Corporation、ベッドフォード、マサチューセッツ州、から市販の0.2ミクロンのExpressメンブレン;および本発明による4個のメンブレン(試料 1A〜D)について、16水銀柱インチの圧力を用いて、秒で表した滞留時間を、500mlの水および種々の容積の溶液について測定した。
【0032】
水の流量は以下の通りである。
【0033】
【表1】
【0034】
溶液の一定量を濾過するのに必要な滞留時間をプロットすると、図3に示すグラフが得られる。本発明のメンブレンは、従来技術のメンブレンに対して、明らかな利点、滞留時間の短さを有することがそこから読み取れる。このようなメンブレンによって濾過できる全容積、およびこのようなメンブレンが、溶液の標準量(500ml)を濾過する速度について、良好な結果が得られる。
【0035】
驚くべきことに、試料メンブレンの流速は、従来技術のメンブレンより速く、速いまま留まっている。(図4を参照のこと)。
【0036】
このデータに基づいて、これらのフィルタにより、十分大きい流速で濾過できる流体の全量を、外挿して推定することができる。
【0037】
【表2】
【実施例2】
【0038】
New Born Calf Serum(新生児牛血清)(Gibco BRL)250ml、Dubelco Modified Eagle培地(133.7g)1瓶、重炭酸ナトリウム37グラム、Hepes緩衝液100ml、および脱イオン水10リットルから構成される試験溶液を調製した。使用する前に、この溶液を攪拌した。
【0039】
真空濾過器のホールダ中、47mmの円板を設置した。16水銀柱インチの圧力を用いて、Millipore Corporation、ベッドフォード、マサチューセッツ州、から市販の0.2ミクロンのExpressメンブレンおよび本発明による4個のメンブレン(試料 2A〜D)上で、種々の容積の溶液の、秒で表した滞留時間を測定した。
【0040】
この実施例のデータから作成した図5および6から、本発明の試料メンブレンが、従来技術のメンブレンを凌ぐ性能であることが分かる。
【0041】
この溶液の一定容積を濾過することができる滞留時間をプロットすると、試料メンブレンが、濾過されうる流れおよび全容積の両方で、現在のメンブレンを上回る利点を有することが示される。この実験のデータに基づいて、47mmの直径の円板を通って濾過されうる容積を推定すると、以下のようになる。
【0042】
【表3】
【実施例3】
【0043】
PCT国際公開WO01/89673に記載の手順により、共注型されたメンブレンを作製した(18%+12%PES(ポリエーテルスルホン)−NMP(Nメチルピロリドン)−TEG(トリエチレングリコール))。得られたメンブレンの全厚さは、約140ミクロンであり、メンブレン内の、上の方の層は約10ミクロンの厚さであった。このメンブレンは、0.45定格Suporメンブレン(Pall−Gelman)と類似の泡立ち点を有していた。水および牛胎児血清(fetal bovine serum)の両方について、流れを試験した。次の表は、このメンブレンが47mmの円板を通して血清500mlを濾過することができる時間の減少分を示す。参照として、0.2定格Express(商標)メンブレンを使用した。
【0044】
【表4】
【実施例4】
【0045】
異なる4種類のメンブレンについて牛胎児血清(fetal bovine serum)試験を実施した。従来技術の単層非対称メンブレン(Express(商標))、PES共注型メンブレン、Sartopore2非対称メンブレン(両方の層は、両方の層が取り出されるカートリッジの方向に向いている)、およびSartopore2製品の0.2定格メンブレン層(Sartorius AG、ゲッチンゲン、ドイツ、から市販)。
【0046】
この結果、FBS500mlを濾過するための時間(秒表示)は、以下の通りであった。
【0047】
【表5】
【実施例5】
【0048】
2個の異なる泡立ち点を有する、単層微孔性非対称メンブレン(Millipore Corporation、ベッドフォード、マサチューセッツ州、から市販、Millipore Express 0.2ミクロンメンブレン)を得た。それぞれのメンブレンの、目の詰んだ側の低多孔度表面を、プラズマチャンバ内で、酸素を使用してアブレーションした。図7は、プラズマアブレーションを行う前の、メンブレンの中の、1つの目の詰んだ表面を示す。図8は、プラズマアブレーション後の、そのメンブレンの目の詰んだ表面を示す。
【0049】
アブレーションしたメンブレンについて、流れと流量の試験をした。
【0050】
観測されたように、低多孔度の層をプラズマアブレーションによって除去すると、処理していない試料より性能が向上した。特に、処理していないメンブレンと比較して、水の滞留時間はほぼ25%減少した。牛胎児血清(fetal bovine serum)(FBS)については、滞留時間は、約17%減少した。
【0051】
データによれば、改善された性能は、単に泡立ち点の変化の関数ではないことが示唆される。この点については、水の泡立ち点および水の滞留時間およびFBSの滞留時間の間には、直線関係が存在すると仮定することができる。経験的データから求めた前記関係は、水の滞留時間では4.8秒/psi、FBSでは2.8秒/psiであった。この関係を用いて、性能改善を、泡立ち点の変化のみに帰すことはできない。泡立ち点のみの変化であれば、水の滞留時間でほんの約10%、FBSで4%の予期された性能向上がもたらされるはずである。表面多孔度の増大により、メンブレン性能は、測定できる明白な効果を受ける。
【実施例6】
【0052】
従来技術による、通常の目の詰んだ側の非対称メンブレンおよび本発明による高度に網目状化された構造との差を定量化するために、従来技術のメンブレン(Millipore Express0.2メンブレン)および本発明のメンブレン(0.2ミクロンの定格の細孔径を有する2層構造)の目の詰んだ側の細孔分布を分析した。それぞれの目の詰んだ表面の顕微鏡写真を使用して、2つの測定を行った:「分別化領域パーセント」、これは表面多孔度の尺度である;「最隣接距離」、これは細孔間の平均距離の尺度である。これらの測定に基づいて、以下のデータを集めた。
【0053】
【表6】
【0054】
図9は、2つのメンブレンの、最隣接データのグラフによる表示を示す。
【0055】
図10は、この実施例で使用した本発明の目の詰んだ表面の顕微鏡写真を示す。
【0056】
図11は、この実施例で使用した従来技術の目の詰んだ表面の顕微鏡写真を示す。
【0057】
本発明のメンブレンの分別化領域パーセントは、従来技術のメンブレンの2倍より大きい。加えて、本発明のメンブレンの、目の詰んだ表面上の隣接細孔間の間隔は、従来技術のメンブレンの約半分である。
【実施例7】
【0058】
共注型メンブレンを、PCT国際公開WO01/89673に記載の手順に従って、作製した。得られた「低泡立ち点」表面改変共注型メンブレンについて、牛胎児血清(fetal bovine serum)(FBS)試験および水の滞留時間試験を実施した。41秒の滞留時間(FBSの500ml)および21.5psiで見える水の泡が観測され、1.9の比率(すなわち、FBS滞留時間を、水の滞留時間で割る)をもたらした。
【0059】
FBSの滞留時間試験は、実施例1に記載したように実施した。特に、試験溶液は、Fetal Bovine Serum1リットル、Dobelco Modified Eagle medium1瓶、重炭酸ナトリウム塩37g、Hepes溶液100mlおよび脱イオン水10リットルから作製した。使用する前に、この溶液を攪拌した。47mmの円板を真空フィルタホールダに設置し、真空ホールダファンネルで密閉した。16水銀柱インチの真空を使用して、血清を500ml濾過するときの秒で表した滞留時間を測定し、41秒を得た。円盤上で測定した水の泡立ち点は、21.5psiであった。
【0060】
上のデータを使用し、次に、FBS滞留時間(秒)を水泡立ち点(psi)で割り算した。この比率を図12および以下の表に示した。
【0061】
【表7】
発明したメンブレン(実施例3、4、および7)は、それぞれ、泡立ち点補正したFBS滞留時間が、2より小さかった。残りの市販メンブレンの値は、著しく高い。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
網目状の多孔性表面を有し、約2未満の泡立ち点正規化血清滞留時間を有するポリマー材料を含む、高スループットの応用例に適した非対称微孔性メンブレン。
【請求項2】
前記メンブレンが単一の多孔層を含み、前記層が目の詰んだ側および目の粗い側を有し、前記網目状の多孔性表面が前記目の詰んだ側に設置されている請求項1に記載の非対称微孔性メンブレン。
【請求項3】
前記メンブレンが複数の多孔性層を含み、目の詰んだ側および目の粗い側を有し、前記網目状の多孔性表面が前記目の詰んだ側に設置されている請求項1に記載の非対称微孔性メンブレン。
【請求項4】
前記網目状の多孔性表面が、機械的手段によって前記ポリマー材料を部分的に除去することにより形成される請求項1に記載の非対称微孔性メンブレン。
【請求項5】
前記網目状の多孔性表面が、化学薬品によって前記ポリマー材料を部分的に除去することにより形成される請求項1に記載の非対称微孔性メンブレン。
【請求項6】
前記網目状の多孔性表面が、電磁放射に曝すことによって前記ポリマー材料を部分的に除去することにより形成される請求項1に記載の非対称微孔性メンブレン。
【請求項1】
網目状の多孔性表面を有し、約2未満の泡立ち点正規化血清滞留時間を有するポリマー材料を含む、高スループットの応用例に適した非対称微孔性メンブレン。
【請求項2】
前記メンブレンが単一の多孔層を含み、前記層が目の詰んだ側および目の粗い側を有し、前記網目状の多孔性表面が前記目の詰んだ側に設置されている請求項1に記載の非対称微孔性メンブレン。
【請求項3】
前記メンブレンが複数の多孔性層を含み、目の詰んだ側および目の粗い側を有し、前記網目状の多孔性表面が前記目の詰んだ側に設置されている請求項1に記載の非対称微孔性メンブレン。
【請求項4】
前記網目状の多孔性表面が、機械的手段によって前記ポリマー材料を部分的に除去することにより形成される請求項1に記載の非対称微孔性メンブレン。
【請求項5】
前記網目状の多孔性表面が、化学薬品によって前記ポリマー材料を部分的に除去することにより形成される請求項1に記載の非対称微孔性メンブレン。
【請求項6】
前記網目状の多孔性表面が、電磁放射に曝すことによって前記ポリマー材料を部分的に除去することにより形成される請求項1に記載の非対称微孔性メンブレン。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−130916(P2012−130916A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−4190(P2012−4190)
【出願日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【分割の表示】特願2009−296857(P2009−296857)の分割
【原出願日】平成15年5月15日(2003.5.15)
【出願人】(504115013)イー・エム・デイー・ミリポア・コーポレイシヨン (33)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【分割の表示】特願2009−296857(P2009−296857)の分割
【原出願日】平成15年5月15日(2003.5.15)
【出願人】(504115013)イー・エム・デイー・ミリポア・コーポレイシヨン (33)
【Fターム(参考)】
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